JP2009105898A - 適応変調方法およびその装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】チャネルのドップラー周波数がより高いことによりチャネル状態情報の品質が劣化した場合においても、システムの伝送品質を確保でき、且つより低い複雑度を有する適応変調方法およびその装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る適応変調方法およびその装置は、主に、単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
【選択図】図5
【解決手段】本発明に係る適応変調方法およびその装置は、主に、単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
【選択図】図5
Description
本発明は、無線通信技術分野に関し、特に高速無線通信システムに適用する適応変調方法およびその装置に関する。
多入力多出力(MIMO:Multiple−Input Multiple−Output)技術は、無線通信システムのスペクトル効率を大幅に高めることができる。直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術は、一定の循環プレフィックスを追加して、周波数選択性チャネルをフラットフェージングチャネルに転化させることにより、マルチパス遅延時間に有効に対抗することができる。MIMOおよびOFDMの両技術の優位性を組み合わせて提出されたMIMO−OFDMシステムが、高速無線通信システムとして広く注目されている。
非適応システムに対して、適応変調技術は、現在のチャネル状態情報に基づいて送信パラメータを合理的に調整することにより、システム性能を著しく高めることができる。MIMO−OFDMシステムにおいて適応変調技術を使用し、MIMO−OFDMのチャネル状況により変調モードを合理的に調整して、周波数利用率の向上および通信品質の確保の目的を遂げることができる。
通常、従来の適応変調方法は、チャネル推定または予測によりチャネル状態情報が精確に得られるという仮定の下で行われる。しかし、受信側のチャネル状態情報の推定値を直接利用して適応変調を行う方法は、チャネルフェージングの変化が十分に遅い場合のみに適用される。ドップラー周波数がより高い場合、チャネル変化が速すぎるため、当該方法はより大きな性能損失を招き、ひいてはビット誤り率が高すぎるため適応変調方法が使用不可になる。チャネルの高速変化による性能損失に対抗するために、適応変調システムにチャネル予測器を導入してチャネル変化を予測するようにしてよい。しかしながら、このように予測によりチャネル状態情報を取得する方法は、チャネルの高速変化による性能損失をある程度のみで軽減することができる。ドップラー周波数が高まるに従って、チャネル予測誤差が大きくなり、適応変調アルゴリズムのビット誤り率の性能が著しく劣化する。実際のシステムにおいて、一旦ビット誤り率がシステムの許容可能な最大値を超えれば、情報伝送が無効伝送になり、これによって、このような適応変調方法の応用が制限されている。
ここからわかるように、ドップラー周波数がより高いことによりチャネル状態情報の品質がある程度まで低下した場合、従来の適応変調方法は、基本的にシステムのビット誤り率の要求を満たすことができない。これによって、実際の通信システムにおける適応変調技術の応用は制限されている。
本発明は、上記技術問題を解決するために、ドップラー周波数がより高い場合においてもシステムのビット誤り率の要求を満足することができる適応変調方法およびその装置を提供している。
本発明の実施例に係る適応変調方法において、
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
本発明の実施例に係るMIMO−OFDMの適応変調方法において、
前記MIMO−OFDMシステムのチャネルと等価なK組の単一入力単一出力並列サブチャネル(各組の個数はNT)のために、NT個のマルコフモデルを確立し、各組のNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルがそれぞれ1つのマルコフモデルに対応し、ここで、Kはシステムのサブキャリア数であり、NTはMIMO−OFDMシステムの送信アンテナ数であり、
各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、それぞれ各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
前記MIMO−OFDMシステムのチャネルと等価なK組の単一入力単一出力並列サブチャネル(各組の個数はNT)のために、NT個のマルコフモデルを確立し、各組のNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルがそれぞれ1つのマルコフモデルに対応し、ここで、Kはシステムのサブキャリア数であり、NTはMIMO−OFDMシステムの送信アンテナ数であり、
各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、それぞれ各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することを含む。
本発明の実施例に係る適応変調装置において、
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定するモード行列生成手段と、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に選択して用いる変調モードを決定する変調モード選択手段とを含む。
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定するモード行列生成手段と、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に選択して用いる変調モードを決定する変調モード選択手段とを含む。
本発明に係る適応変調方法およびその装置からわかるように、チャネルのドップラー周波数がより高いことによりチャネル状態情報の品質が劣化した場合においても、本発明の実施例により提供される適応変調方法およびその装置は、やはりシステムのビット誤り率の要求を満足できる。また、実験の証明によると、本発明の実施例に係る適応変調方法およびその装置の実現複雑度は、チャネル予測器を利用する従来の適応変調方法より顕著に低い。
また、本発明の実施例により提供される適応変調方法およびその装置は、適応変調の最適化目標の相違によって、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モードを選択し、例えば、情報信号伝送速度がより大きい変調モードを選択することにより、システムのビット誤り率の要求を満足する場合において、さらにシステムの情報伝送の性能を最適化することができる。
本発明の目的、解決手段をさらに明確にするように、以下、図面を参照して実施例を挙げながら、本発明についてさらに詳しく説明する。
以下、MIMO−OFDMシステムを応用環境として、本発明により提供される適応変調方法およびその装置について詳しく説明する。
本発明の実施例に係るMIMO−OFDMシステムにおいて、K個のサブキャリアと、NT個の送信アンテナと、NR個の受信アンテナとがあり、ここで、
である。MIMO−OFDMシステムの循環プレフィックス(CP:Cycle Prefix)が十分に長いとすれば、MIMO−OFDMシステムにシンボル間干渉(ISI:Inter−Symbol Interference)が存在しないが、ドップラー周波数の影響のため、MIMO−OFDMシステムにはサブキャリア間干渉(ICI:Inter−carrier Interference)が存在する。MIMO−OFDMシステムの送信側は、直並列変換によって情報信号を各アンテナに多重化し、且つチャネル状況に基づいてm+1種の変調モード
のうちのいずれかの変調モードを適応選択して上記情報信号を送信することができる。ここで、M0はこのシンボル間隔内で当該アンテナが情報を送信しないことを表し、
はm個の異なる変調モードを表す。また、MIMO−OFDMシステムにおける各送信アンテナの電力が同じであり、且つ総送信電力が一定であると仮定し、受信側はこの時刻のチャネル状態情報を精確に推定でき、第K個のサブキャリアの第t個のシンボル間隔内でのチャネルフェージング係
数行列を
で表す。
数行列を
上記条件を満足するMIMO−OFDMシステムに基づいて、本実施例に係る適応変調方法の最適化目標は、システムのビット誤り率の要求を満足する前提で、情報信号伝送速度を最大化するように変調モードを選択し、即ち、以下の数式1を満足することにある。
ここで、
は第k個のサブキャリアに対応する第j個のアンテナ上の伝送速度を表し、
であり、BERはシステムのビット誤り率を表し、
はシステムの許容可能な最大ビット誤り率である。
マルチアンテナ間の干渉を除去することにより、ビット誤りの伝播を考えない場合において、上記MIMO−OFDMシステムの多入力多出力チャネルは、K組(各組はNT個)の単一入力単一出力並列サブチャネルと等価になる。ここで、KはMIMO−OFDMシステムのサブキャリア数である。この場合において、式1により表される最適化目標をさらに容易に算出するために、上記最適化目標を、各単一入力単一出力並列サブチャネルのビット誤り率が要求を満足することを確保する前提で、各単一入力単一出力並列サブチャネルの伝送速度を最大化し、即ち、以下の数式2を満足することと近似的に等価にしてよい。
ここで、
は第k個のサブキャリアに対応する第j個の並列サブチャネル上の伝送速度を表し、
であり、BERは各単一入力単一出力並列サブチャネルのビット誤り率を表す。
上記最適化目標を実現するために、本実施例に係る適応変調方法は、プリトレーニング過程および伝送過程という2つの過程により実現されることができる。
具体的に、図1に示すように、本実施例に係るプリトレーニング過程は主に下記のステップを含む。
ステップ101において、持続時間がT個のシンボル間隔である時間帯内で、送信側は既知シンボルを送信し、受信側は受信したシンボルに基づいてチャネル推定を行う。
ステップ102において、受信側はチャネル推定結果に基づいて、MIMO−OFDMシステムの多入力多出力チャネルと等価な各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルのために、それぞれマルコフモデルを確立する。
ステップ103において、受信側は、確立されたマルコフモデルに基づいて、モード選択行列を決定する。
ここで、前記モード選択行列は、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルがそれぞれ各マルコフ状態に対応する際、次の時刻に用いるべき変調モードを示している。
上記ステップ102およびステップ103に記載の方法については、後に詳しく説明する。
本実施例に係る伝送過程は、図2に示すように、主に下記のステップを含む。
ステップ201において、受信側はチャネル推定を行い、且つチャネル推定値に基づいて各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態を決定する。
具体的に、当該ステップにおいて、上記ステップ102で各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルのために確立されたマルコフモデルに対応して、受信側はチャネル推定値に基づいて各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態をそれぞれ決定する。
ステップ202において、受信側は、決定された各サブキャリアの各並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいてモード選択行列を検索し、各サブキャリアの各並列サブチャネルのために変調モードを決定し、且つこの変調モードを送信側にフィードバックする。
前記モード選択行列は各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルがそれぞれ各マルコフ状態に対応して次の時刻に用いるべき変調モードを示しているため、ステップ201により決定された当該並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列から当該単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いるべき変調モードを検索して得ることができる。
ステップ203において、送信側は、受信側からフィードバックされた変調モードに基づいて、それぞれ各サブキャリアの各並列サブチャネルに対して適応変調を行うことにより、適応伝送を実現する。
以下、本実施例の上記ステップ102において各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルのためにマルコフモデルを確立する過程について詳しく説明する。
1つのマルコフモデルが、状態集合と、定常分布シーケンスと、状態遷移確率行列との3つの要素により構成されることは既知である。
本実施例において、1つの単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの状態集合は、Δ(単位:dB)を量子化間隔として当該単一入力単一出力並列サブチャネルの信号対雑音比(SNR:Signal Noise Ratio)の主区間
を均一に量子化して得られた信号対雑音比のN個のサブ区間
である。ここで、各サブ区間は1つのマルコフ状態
に対応する。
本実施例において、1つの単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの定常分布シーケンスは
であり、ここで、
はマルコフ状態
における当該単一入力単一出力並列サブチャネルの定常分布確率を表す。実際の応用において、各マルコフ状態における各単一入力単一出力並列サブチャネルの定常分布確率は、当該単一入力単一出力並列サブチャネルの信号対雑音比の確率密度関数により得られ、即ち、下記の数式3によって算出されることができる。
ここで、
はマルコフ状態
に対応する信号対雑音比のサブ区間を表し、
は当該単一入力単一出力並列サブチャネル(例えば第j個のサブチャネル)の信号対雑音比の確率密度関数を表し、数学の導出またはシミュレーションにより得られることができる。例えば、シミュレーション過程において、各並列サブチャネルの各時刻に表れたチャネルの信号対雑音比の状況をエルゴード性に基づいてそれぞれ考察することにより、各単一入力単一出力並列サブチャネルの信号対雑音比の確率密度関数を決定するようにしてよい。
各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの定常分布シーケンスは、上記数式3による算出方法の他に、プリトレーニング過程において当該単一入力単一出力並列サブチャネルが各マルコフ状態にある回数を統計することによっても取得されることができる。
本実施例において、1つの単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの状態遷移確率行列は、プリトレーニング過程において当該単一入力単一出力並列サブチャネルが各マルコフ状態間で遷移する回数を統計することによって取得されることができる。説明を簡単にするために、本実施例において、当該単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフ状態
からマルコフ状態
への遷移確率を
で表す。これにより、当該単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの状態遷移確率行列
が得られる。
プリトレーニング過程において、上記算出または統計過程により、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルの状態集合と、定常分布シーケンスと、状態遷移確率行列とが決定されることができる。これにより、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルが決定される。
上記MIMO−OFDMシステムにおいて、各サブキャリアのチャネルが同じ分布であることは既知であるため、MIMO−OFDMシステムの多入力多出力チャネルと等価なK組の単一入力単一出力並列サブチャネルは、マルコフモデルを共用することができる。しかし、各組のNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルが異なる分布である場合が多いため、各組のNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルのためにマルコフモデルをそれぞれ確立しなければならない。つまり、本実施例に係るMIMO−OFDMシステムにおいて、異なるサブキャリアの対応する単一入力単一出力並列サブチャネルは1つのマルコフモデルを共用することができ、即ち、当該MIMO−OFDMシステムの第1個のサブキャリアから第K個のサブキャリアまでの第1個の単一入力単一出力並列サブチャネルは、第1個のマルコフモデルを共用することができ、第1個のサブキャリアから第K個のサブキャリアまでの第2個の単一入力単一出力並列サブチャネルは、第2個のマルコフモデルを共用することができ、…、順次類推して、第1個のサブキャリアから第K個のサブキャリアまでの第NT個の単一入力単一出力並列サブチャネルは、第NT個のマルコフモデルを共用することができる。従って、MIMO−OFDMシステムでは、K×NT個のマルコフモデルを確立することなく、総NT個の単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルを確立する必要がある。また、このNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルによって、1つのMIMOチャネルのマルコフモデルが構成されることができる。ここからわかるように、MIMO−OFDMシステムの各サブキャリアにおいてチャネルの分布が同じである特性を利用して、確立されるマルコフモデルの個数をK×NT個からNT個に減少することができ、これにより、本実施例に係る適応方法の複雑度を大いに低下することができる。
さらに、MIMO−OFDMシステムの各サブキャリアにおいてチャネルの分布が同じである特性を利用して、持続時間の長さがT個のシンボル間隔であるMIMO−OFDMチャネルの1回のプリトレーニングを、持続長がTである同一サブキャリアのMIMOチャネルのK回のプリトレーニングと見なしてよい。つまり、T個のシンボルの持続時間内で同時にK個のサブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの状態遷移状況を観察することは、総K×T回のプリトレーニング結果を得ることができ、K×T回のプリトレーニングと等価である。従って、プリトレーニング期間内でMIMO−OFDMシステムの全部のサブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの状態を同時に観察して統計することによって、より短いプリトレーニング時間内で相対的に精確なマルコフモデルを取得し、プリトレーニング過程に必要な時間を大いに短縮することができる。
以下、本実施例のステップ103において受信側は確立されたマルコフモデルに基づいてモード選択行列を決定する方法について詳しく説明する。図3に示すように、本実施例に係るモード選択行列は下記のステップにより決定されることができる。
ステップ1031において、確立された各サブキャリアの各並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、いずれかのマルコフ状態における各サブキャリアの各並列サブチャネルの各変調モードに対応するビット誤り率をそれぞれ算出する。
上記のように、本実施例に係るMIMO−OFDMシステムの各サブキャリアが1つのマルコフモデルを共用することができるため、上記ステップ1031を、いずれかのマルコフ状態における各単一入力単一出力並列サブチャネルの各変調モードに対応するビット誤り率をそれぞれ算出するように簡略化してよい。
本実施例において、マルコフ状態
における第j個の単一入力単一出力並列サブチャネルが第Miの変調モードを用いる際のビット誤り率が
であると仮定する。
は下記の数式4によって算出されることができる。
ここで、
は、第Miの変調モードにおいて信号対雑音比が
であるときの近似ビット誤り率を表し、実際のシミュレーション測定によって得られ、または理論的に導出される各変調モードでの信号対雑音比とビット誤り率との関係式によって得られることができる。
ステップ1032において、ステップ1031で算出されたビット誤り率に基づいて、各マルコフ状態に対応して、それぞれ各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率を算出する。
同様に、本実施例に係るMIMO−OFDMシステムの各サブキャリアが1つのマルコフモデルを共用することができるため、上記ステップ1032を、各マルコフ状態に対応して、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率をそれぞれ算出するように簡略化してよい。
具体的に、本実施例において、マルコフ状態
における第j個の単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に第Miの変調モードを用いる際の予想ビット誤り率が
であるとすれば、
は下記の数式5によって算出されることができる。
ここで、
は第j個の並列サブチャネルのマルコフ状態Slからマルコフ状態Snに遷移する確率であり、
は上述したように、マルコフ状態Snにおける第j個の並列サブチャネルの第Miの変調モードでのビット誤り率を表し、Nは単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに含まれるマルコフ状態の数を表す。
上記の数式5からわかるように、現在のマルコフ状態
における第j個の単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に第Miの変調モードを用いる際の予想ビット誤り率は、当該単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に遷移可能なマルコフ状態
、およびマルコフ状態
からマルコフ状態
への遷移確率と関係があり、即ち、当該単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態からいずれかのマルコフ状態に遷移する状態遷移確率を用いて、当該単一入力単一出力並列サブチャネルの遷移先のマルコフ状態に対応するビット誤り率を重み付け平均して得られる重み付け平均値である。
ステップ1033において、上記ステップ1032で決定された各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの各マルコフ状態に対応する次の時刻の予想ビット誤り率によって、各マルコフ状態に対応して、各サブキャリアの各並列サブチャネルの次の時刻に選択可能な、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モードからなる変調モード集合をそれぞれ決定し、つまり、予想ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率以下となる変調モードからなる集合を決定する。
上記ステップ1032に対応して、下記の数式6を満足する変調モード
が、システムのビット誤り率の要求を満足する選択可能な変調モードである。
ステップ1034において、上記ステップ1033で得られた変調モード集合から1つの変調モード、例えば最大の情報信号伝送速度を有する変調モードを選択する。
説明すべきものとして、上記ステップ1034における変調モードの選択方法は、システムの適応変調方法の最適化目標と関係がある。例えば、本実施例に対応すると、上述したように、本実施例により提供される適応変調方法の最適化目標は、システムのビット誤り率の要求を満足する前提で、情報信号伝送速度を最大化するように、変調モードを選択することにあるため、上記ステップ1034において、具体的に変調モード集合から最大の情報信号伝送速度を有する変調モードを選択する。従って、異なる適応変調方法の最適化目標に対応して、変調モード集合から変調モードを選択する異なる方法を用いてよい。例えば、システムの適応変調方法の最適化目標は、情報信号伝送速度がシステムの目標伝送速度に達した場合において、最小ビット誤り率を最小化することであれば、上記ステップ1034を、上記ステップ1033で得られた変調モード集合から、情報信号速度がシステムの目標伝送速度以上であり、且つ最小の予想ビット誤り率を有する変調モードを選択することに取り替えるようにしてよい。
上記ステップ1031〜1034により、各マルコフ状態に対応する各サブキャリアの各並行サブチャネルが次の時刻に用いるべき変調モード、即ちモード選択行列を得ることができる。前記モード選択行列を決定した後、受信側は前記モード選択行列を保存する。
図4は、上記実施例に係る方法により決定されるモード選択行列の例を示している。ここで、用いられるチャネルモデルは、COST207の6パスのチャネルモデルであり、具体的なパラメータは表1に示す通りである。
上記のチャネルモデルにおいて、各チャネルの中心周波数は5GHzであり、帯域幅は2.5MHzであり、平均信号対雑音比は35dBであり、MIMO−OFDMシステムには、256個のサブキャリアと、4個の送信アンテナと、4個の受信アンテナとがあり、移動局の移動速度は40km/hである。4個の送信アンテナおよび4個の受信アンテナのMIMOチャネルによって、総4個の等価な単一入力単一出力並列サブチャネルが形成されることができるため、総4個のマルコフモデルを確立する必要がある。送信側には、BPSK、QPSK、8PSK、16QAM、32QAMおよび64QAMである6種の選択可能な変調モードがあり、モード選択行列においてそれらの変調モードをそれぞれ1、2、3、4、5、6で表す。また、送信側は信号対雑音比が極めて低い場合に情報を送信しないことを選択することができるため、この場合を0で表す。信号対雑音比の量子化主区間は5dBから30dBまでであり、量子化間隔は0.1dBであり、全部で251個のマルコフ状態がある。ここで、より小さい量子化主区間を選択することにより、チャネル状態数を減少することができるとともに、基本的にアルゴリズムの性能に影響を及ぼさない。
図4に示すモード選択行列は5欄に分け、各欄の左側の列の番号は各マルコフ状態の番号1〜251を表し、各欄の最上の行は各並列サブチャネルの番号1〜4を表す。例えば、モード選択行列の第150行第2列の要素が4であることは、MIMOチャネルの第2個の等価な単一入力単一出力並列サブチャネルが第150個のマルコフ状態にある際、このサブチャネルが、次の送信時刻に情報を送信するために、第4の変調モード、即ち16QAMを選択すべきであることを表す。
受信側が上記のモード選択行列を得た後、プリトレーニング過程が終了し、伝送過程を実行する。図2に示すように、伝送過程において、受信側は、チャネル推定値に基づいて各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在の状態を決定し、上記モード選択行列を検索することにより、この並列サブチャネルの次の送信時刻の変調モードを決定し、この情報を送信側にフィードバックする。送信側において、フィードバックされた変調パラメータに基づいて各サブチャネルに対して適応変調を行なうことにより、適応変調を実現する。
また、上記実施例に係る適応変調方法に対応して、本発明の実施例は適応変調装置を提供している。図5に示すように、その内部構成は主に、
各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルに対応するマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いるべき変調モードからなるモード選択行列を決定するモード行列生成手段501と、
情報信号の伝送過程で、それぞれ各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する変調モード選択手段502とを含む。
各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルに対応するマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いるべき変調モードからなるモード選択行列を決定するモード行列生成手段501と、
情報信号の伝送過程で、それぞれ各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する変調モード選択手段502とを含む。
ここで、前記モード行列生成手段501は、
プリトレーニング過程でチャネル推定を行う第1チャネル推定モジュール5011と、
第1チャネル推定モジュールのチャネル推定結果に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並行サブチャネルのためにマルコフモデルをそれぞれ確立するマルコフモデル確立モジュール5012(具体的な過程はステップ102を参照)と、
確立された各サブキャリアの単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの各変調モードでのビット誤り率をそれぞれ算出するビット誤り率算出モジュール5013(具体的な過程はステップ1031を参照)と、
算出されたビット誤り率に基づいて、各マルコフ状態に対応して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率をそれぞれ決定し、決定された予想ビット誤り率に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いることが可能な、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モード集合を決定する変調モード集合生成モジュール5014(具体的な過程はステップ1032および1033を参照)と、
各マルコフ状態に対応して、それぞれ前記変調モード集合から1つの変調モードを選択して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードとする変調モード選択モジュール5015(具体過程はステップ1034を参照)とを含む。
プリトレーニング過程でチャネル推定を行う第1チャネル推定モジュール5011と、
第1チャネル推定モジュールのチャネル推定結果に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並行サブチャネルのためにマルコフモデルをそれぞれ確立するマルコフモデル確立モジュール5012(具体的な過程はステップ102を参照)と、
確立された各サブキャリアの単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの各変調モードでのビット誤り率をそれぞれ算出するビット誤り率算出モジュール5013(具体的な過程はステップ1031を参照)と、
算出されたビット誤り率に基づいて、各マルコフ状態に対応して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率をそれぞれ決定し、決定された予想ビット誤り率に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いることが可能な、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モード集合を決定する変調モード集合生成モジュール5014(具体的な過程はステップ1032および1033を参照)と、
各マルコフ状態に対応して、それぞれ前記変調モード集合から1つの変調モードを選択して、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードとする変調モード選択モジュール5015(具体過程はステップ1034を参照)とを含む。
具体的な操作過程において、変調モード選択モジュール5015は、異なる適応変調の最適化目標を実現するために、前記変調モード集合から、例えば伝送速度が最大となる変調モードを選択し、または他の選択方式を用いるようにしてよい。
前記変調モード選択手段502は、
情報信号の伝送過程でチャネル推定を行う第2チャネル推定モジュール5021と、
第2チャネル推定モジュール5021からのチャネル推定結果に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態をそれぞれ決定する状態決定モジュール5022と、
各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いるべき変調モードを決定する変調モード決定モジュール5023とを含む。
情報信号の伝送過程でチャネル推定を行う第2チャネル推定モジュール5021と、
第2チャネル推定モジュール5021からのチャネル推定結果に基づいて、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態をそれぞれ決定する状態決定モジュール5022と、
各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各サブキャリアの各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いるべき変調モードを決定する変調モード決定モジュール5023とを含む。
上記実施例からわかるように、チャネルのドップラー周波数がより高いことによりチャネル状態情報の品質が劣化した場合においても、本発明の実施例により提供される適応変調方法およびその装置は、やはりシステムの伝送品質を確保することができる。これにより、適応変調方法の適用範囲が広がっている。
また、本発明の実施例により提供される適応変調方法およびその装置は、適応変調の最適化目標の相違によって、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モードを選択することにより、システムのビット誤り率の要求を満足する場合において、さらにシステムの情報伝送の性能を最適化することができる。例えば、適応変調方法の最適化目標が、システムのビット誤り率の要求を満足する場合において、システムの伝送速度を最大化することであれば、本発明の実施例により提供される適応変調方法およびその装置は、システムのビット誤り率の要求を満足する全部の変調モードから、伝送速度が最大となる変調モードを選択するようにしてよい。これにより、システムの有効情報速度とスループットが著しく向上することができる。
説明すべきものとして、上記の実施例はすべてMIMO−OFDMシステムの適応変調を例として説明されたが、本願に係る適応変調方法およびその装置が、他のいかなるシステム(例えば単一入力単一出力システム)にも応用できることは、当業者にとって理解できるものである。
以下、単一入力単一出力システムにおいて適応変調を行う方法を示す。当該方法は主に、
まず、単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、モード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定して、送信側にフィードバックすることを含む。
まず、単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、モード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定して、送信側にフィードバックすることを含む。
上記のモード選択行列の決定方法は具体的に、以下のステップを含む。
まず、各マルコフ状態に対応して、前記単一入力単一出力チャネルの各変調モードを用いる際のビット誤り率を決定する。
当該ステップにおいて、
によって、マルコフ状態
における単一入力単一出力チャネルの次の時刻に第Miの変調モードを用いる際の予期ビット誤り率
を算出するようにしてよい。ここで、
は当該単一入力単一出力チャネルのマルコフ状態
からマルコフ状態
への遷移確率を表し、
はマルコフ状態
における単一入力単一出力チャネルの第Miの変調モードを用いる際のビット誤り率を表す。
次に、各マルコフ状態に対応して、決定されたビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率を決定する。
最後に、各マルコフ状態に対応して、前記予想ビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する。
当該ステップにおいて、各マルコフ状態に対応して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率以下となる変調モードを決定し、各マルコフ状態に対応して、決定された変調モードから最大の情報信号伝送速度を有する変調モードをそれぞれ選択して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードとする。上述したように、システムの適応変調の最適化目標の相違に基づいて、他の方法によって、決定された変調モードから1つの変調モードを選択して前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードとするようにしてもよい。
以下、具体例を通じて本発明の実施例により提供される適応変調方法の性能について説明する。
図6の(a)〜(c)は、256個のサブキャリアと、4個の送信アンテナと、4個の受信アンテナとを有するMIMO−OFDMシステムにおいて、システムの許容可能な最大ビット誤り率が
である場合に、本発明の実施例により提供される適応変調方法と、従来の適応変調方法と、理想的な適応変調方法との間で、ビット誤り率、有効情報速度、およびスループット性能の比較をそれぞれ示す図である。当該MIMO−OFDMシステムにおける適応変調の最適化目標は、システムのビット誤り率の要求を満足する変調モードを選択し、且つ情報信号伝送速度を最大化することである。比較に用いられる従来の適応変調方法は、正規化最小二乗平均(NLMS:Normalized Least Mean Square)のチャネル予測器を利用する適応変調方法である。前記理想的な適応変調方法とは、理想的な場合において、精確なチャネル状態情報が既知となっている適応変調方法であるが、実際には精確なチャネル状態情報を知ることができないため、このような方法は現実で応用することができない。図6の(a)〜(c)において、四角印の曲線は本発明の実施例に用いられる適応変調方法を表し、三角印の曲線はNLMSチャネル予測器を利用する従来の適応変調方法を表し、星印の曲線は理想的な適応方法を表す。図6の(a)〜(c)において、横座標は移動局の移動速度を表し、縦座標はビット誤り率と、有効情報速度と、スループットとをそれぞれ表す。ここで、有効情報速度は、単位帯域幅および単位時間内における有効ビットの伝送速度を表す。MIMO−OFDMフレームの瞬間ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率以下である場合、このフレームのすべてのビットは有効ビットであり、MIMO−OFDMフレームの瞬間ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率より大きい場合、このフレームのすべてのビットは無効ビットである、ということは既知である。スループットは、単位帯域幅および単位時間内における瞬間ビット誤り率が0であるフレームに含まれるビットの伝送速度を表す。
シミュレーションが行われたMIMO−OFDMシステムの主なシミュレーションパラメータとして、チャネルの中心周波数が5GHz、帯域幅が2.5MHz、チャネル平均信号対雑音比が30dB、各OFDMが1フレームである。送信側において選択可能な変調方式は、それぞれBPSK、QPSK、8PSK、16QAM、32QAMおよび64QAMである。受信側は直交三角分解(QR分解:Orthogonal−Triangular Decomposition)方式を用いて復調する。チャネルは6パスのレイリーフェージングチャネルを用い、具体的なチャネルパラメータも表1に示す通りである。
図6の(a)〜(c)に示すように、移動局の移動速度が高まる(ドップラー周波数が高まることに対応)に従って、本発明の実施例により提供される適応方法は、一貫してシステムのビット誤り率の要求を満足できるが、NLMS予測器を利用する適応アルゴリズムは、ビット誤り率が高すぎるため使用不可になる。一方、本発明により提供される適応アルゴリズムを利用した場合の有効情報速度およびスループットは、NLMS予測器を利用する適応アルゴリズムの場合より顕著に高く、理想的な適応変調アルゴリズムの場合に近づく。ここからわかるように、本発明により提供される適応アルゴリズムは、より高いドップラー周波数の場合においてシステムの伝送品質を確保することができるだけでなく、システムの有効情報速度およびスループットを著しく向上させることができる。
以下、また具体例を通じて本発明の実施例に係る適応変調方法の複雑度について分析する。
プリトレーニングが総T個のOFDMシンボル間隔を持続し、マルコフモデルに総n個の状態があり、送信側にm種の変調モードがあると仮定する。QR分解方法を用いてMIMOチャネルを並列サブチャネルに転化させると仮定する。簡単のために、ここで加算および乗算のみの複雑度を算出する。プリトレーニング段階において、まず、QR分解を用いてMIMOチャネルを等価サブチャネルに転化させ、この過程には、
回の浮動小数点演算が必要である。第2ステップにおいて、等価サブチャネルの信号対雑音比を算出し且つその状態を決定し、この過程には、
回の浮動小数点演算が必要である。第3ステップにおいて、状態遷移行列を算出し、
回の浮動小数点演算が必要である。第4ステップにおいて、モード選択行列を決定し、
回の浮動小数点演算が必要である。そのため、プリトレーニング段階において、全部で
回の浮動小数点演算が必要である。伝送段階において、各送信シンボル間隔内において、等価サブチャネルの信号対雑音比を算出し且つその状態を決定するだけでよく、全部で
回の浮動小数点演算が必要である。
NLMSチャネル予測器に総N個のタップがあり、その初期化段階に、
個のOFDMシンボル間隔が必要であると仮定する。NLMSチャネル予測器を利用する適応変調アルゴリズムの初期化段階に、
回の浮動小数点演算が必要である。伝送段階の各シンボル間隔内において、当該アルゴリズムは、
回の浮動小数点演算が必要である。
図7は、本発明の実施例に係る適応変調方法と従来の適応変調方法との複雑度の比較を示す図である。ここで、菱形印の曲線は本発明の実施例に用いられる適応変調方法を表し、星印の曲線はNLMSチャネル予測器を利用する従来の適応変調方法を表す。本発明に係るアルゴリズムでは、プリトレーニングの長さを1000個のOFDMシンボル間隔、NLMSチャネル予測器のタップ数を3個、初期化の長さを10個のOFDMシンボル間隔とする。図7において、横座標は伝送シンボルの個数を表し、縦座標は浮動小数点演算の総回数である。図7に示すように、100個のシンボルを伝送した後、本発明により提供されるアルゴリズムの複雑度が、NLMSチャネル予測器を利用する適応変調アルゴリズムより低くなり、且つ両方の複雑度の間の差は伝送シンボル個数の増加に従って増大する。
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の精神と原則内で行われる種々の修正、均等置換え、改善などは全て本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
501:モード行列生成手段
5011:第1チャネル推定モジュール
5012:マルコフモデル確立モジュール
5013:ビット誤り率算出モジュール
5014:変調モード集合生成モジュール
5015:変調モード選択モジュール
502:変調モード選択手段
5021:第2チャネル推定モジュール
5022:状態決定モジュール
5023:変調モード決定モジュール
5011:第1チャネル推定モジュール
5012:マルコフモデル確立モジュール
5013:ビット誤り率算出モジュール
5014:変調モード集合生成モジュール
5015:変調モード選択モジュール
502:変調モード選択手段
5021:第2チャネル推定モジュール
5022:状態決定モジュール
5023:変調モード決定モジュール
Claims (14)
- 適応変調方法であって、
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する、
ことを含むことを特徴とする方法。 - モード選択行列を決定することは、
各マルコフ状態に対応して、前記単一入力単一出力チャネルの各変調モードでのビット誤り率を決定し、
各マルコフ状態に対応して、決定されたビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率を決定し、
各マルコフ状態に対応して、前記予想ビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 前記各マルコフ状態に対応して、前記予想ビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することは、
各マルコフ状態に対応して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻の予想ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率以下となる変調モードを決定し、
各マルコフ状態に対応して、決定された変調モードから最大の情報信号伝送速度を有する変調モードをそれぞれ選択して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードとする、
ことを含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。 - 前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することは、
チャネル推定結果に基づいて前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態を決定し、
決定されたマルコフ状態に基づいて前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定して、送信側にフィードバックする、
ことを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 多入力多出力直交周波数分割多重(MIMO−OFDM)システムの適応変調方法であって、
前記MIMO−OFDMシステムのチャネルと等価なK組の単一入力単一出力並列サブチャネル(各組の個数はNT)のために、NT個のマルコフモデルを確立し、各組のNT個の単一入力単一出力並列サブチャネルがそれぞれ1つのマルコフモデルに対応し、ここで、Kはシステムのサブキャリア数であり、NTはMIMO−OFDMシステムの送信アンテナ数であり、
各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定し、
情報信号の伝送過程で、それぞれ各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する、
ことを含むことを特徴とする方法。 - 前記各単一入力単一出力並列サブチャネルのマルコフモデルに基づいてモード選択行列を決定することは、
各マルコフ状態に対応して、各単一入力単一出力並列サブチャネルの各変調モードでのビット誤り率をそれぞれ決定し、
各マルコフ状態に対応して、決定されたビット誤り率に基づいて、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率を決定し、
各マルコフ状態に対応して、前記予想ビット誤り率に基づいて、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードをそれぞれ決定する、
ことを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。 - 前記各マルコフ状態に対応して、前記予想ビット誤り率に基づいて、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードをそれぞれ決定することは、
各マルコフ状態に対応して、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻の予想ビット誤り率がシステムの許容可能な最大ビット誤り率以下となる変調モードをそれぞれ決定し、
各マルコフ状態に対応して、決定された変調モードから最大の情報信号伝送速度を有する変調モードをそれぞれ選択して、各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードとする、
ことを含むことを特徴とする請求項7に記載の方法。 - 前記各単一入力単一出力並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定することは、
チャネル推定結果に基づいて各単一入力単一出力並列サブチャネルの現在のマルコフ状態をそれぞれ決定し、
決定されたマルコフ状態に基づいて前記モード選択行列を検索し、各並列サブチャネルの次の時刻に用いる変調モードをそれぞれ決定して、送信側にフィードバックする、
ことを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。 - 前記NT個のマルコフモデルを確立することは、
プリトレーニング過程で、MIMO−OFDMシステムにおけるK個のサブキャリア上の各単一入力単一出力並列サブチャネルの状態を同時に統計し、前記NT個のマルコフモデルを決定する、
ことを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。 - 適応変調装置であって、
単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードが示されているモード選択行列を決定するモード行列生成手段と、
情報信号の伝送過程で、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する変調モード選択手段と、
を含むことを特徴とする装置。 - 前記モード行列生成手段は、
プリトレーニング過程でチャネル推定を行う第1チャネル推定モジュールと、
第1チャネル推定モジュールからのチャネル推定結果に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルのためにマルコフモデルを確立するマルコフモデル確立モジュールと、
確立された前記単一入力単一出力チャネルのマルコフモデルに基づいて、各マルコフ状態に対応する前記単一入力単一出力チャネルの各変調モードでのビット誤り率を算出するビット誤り率算出モジュールと、
算出されたビット誤り率に基づいて、各マルコフ状態に対応して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に各変調モードを用いる際の予想ビット誤り率を決定し、決定された予想ビット誤り率に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いることが可能な変調モード集合を決定する変調モード集合生成モジュールと、
各マルコフ状態に対応して、それぞれ前記変調モード集合から1つの変調モードを選択して、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードとする変調モード選択モジュールと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。 - 前記変調モード選択手段は、
情報信号の伝送過程でチャネル推定を行う第2チャネル推定モジュールと、
第2チャネル推定モジュールからのチャネル推定結果に基づいて、前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態を決定する状態決定モジュールと、
前記単一入力単一出力チャネルの現在のマルコフ状態に基づいて、前記モード選択行列を検索し、前記単一入力単一出力チャネルの次の時刻に用いる変調モードを決定する変調モード決定モジュールと、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
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