この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、分析物の抽出と検出とを並行して行う場合でも測定誤差の少ない分析装置および分析物抽出カートリッジを提供することである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による分析装置は、被験者から分析物を抽出して分析物を分析する分析装置であって、被験者から抽出された分析物または分析物が反応することに起因して生成される生成物が供給される供給面を含むセンサ部材と、供給面に供給された分析物または生成物に基づく信号を出力する信号出力手段と、供給面に接触する第1の面と、被験者の皮膚に接触する第2の面とを有するとともに、分析物または生成物を第2の面から供給面に供給するための液体を保持可能である液体保持部材とを備え、液体保持部材は、皮膚に接触している間、供給面と皮膚との距離を実質的に一定に保つように構成されている。
この第1の局面による分析装置では、上記のように、分析物または生成物を第2の面から供給面に供給するための液体を保持可能である液体保持部材を設けるとともに、液体保持部材を、皮膚に接触している間、供給面と皮膚との距離を実質的に一定に保つように構成することによって、分析物を抽出しているときのセンサ部材の供給面と皮膚との距離をほぼ一定に保つことができる。従ってセンサ部材の供給面と皮膚との距離が実質的に変化せず、分析物または生成物がセンサ部材に到達するまでの時間をほぼ一定に保つことができる。これにより、分析物の抽出と検出とを並行して行う場合でも、皮膚とセンサ部材との距離のばらつきに起因する測定誤差が生じるのを抑制することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、信号出力手段は、センサ部材に光を照射する光源と、センサ部材を通過した光を検出する光検出器とを含む。このように構成すれば、信号出力手段の光検出器により、センサ部材を通過した光を検出することによって、容易に、信号出力手段により信号を出力することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、信号出力手段は、分析物または生成物の供給面への供給と並行して、分析物または生成物に基づく信号を出力する。このように構成すれば、分析物を抽出しながら、信号出力手段により信号を出力することができるので、分析物の抽出を開始してから分析物の分析結果を算出するまでの時間を短縮することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材の第1の面に接触するように配置される電極と、電極に接続される電源とをさらに備える。このように構成すれば、電源と接続された電極により、液体保持部材を介して被験者の皮膚に電場を付与することができるので、被験者の皮膚から抽出される分析物を電極に向かって移動させることができる。これにより、被験者の皮膚から分析物をより効率良く抽出することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材は、シート状に形成されている。このように構成すれば、皮膚とセンサ部材との距離を小さくすることができるので、分析物が抽出されてからセンサ部材の供給面に到達するまでの時間を短縮することができる。これにより、分析物の抽出を開始してから分析物の分析結果を算出するまでの時間をより短縮することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材は、供給面と皮膚とに挟まれたときに、実質的に一定の厚みを保つ。このように構成すれば、容易に、分析物を抽出しているときのセンサ部材の供給面と皮膚との距離をほぼ一定に保つことができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材は、ナイロン製である。このようにナイロン製の液体保持部材を用いれば、ナイロンは、親水性がよいので、確実に、液体を保持することができる。また、ナイロンは、ほとんど伸縮しないので、センサ側の面と皮膚側の面との距離が変化しにくい液体保持部材を、容易に形成することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材は、1mm以下の厚みを有する。このように1mm以下の厚みを有する液体保持部材を用いれば、1mmよりも大きい厚みを有する液体保持部材を用いる場合に比べて、被験者の皮膚から抽出された分析物がセンサ部材に到達するまでの時間を短縮することができるので、分析物が抽出されてからセンサ部材が分析物または生成物を検出するまでの時間を短縮することができる。これにより、分析物の抽出を開始してから分析物の分析結果を算出するまでに要する時間を短縮することができる。
上記第1の局面による分析装置において、好ましくは、液体保持部材は、第1の面と第2の面とを貫通する複数の貫通孔を含む。このように構成すれば、第1の面と第2の面とを貫通する複数の貫通孔に液体を保持することができるので、被験者から抽出された分析物または生成物を、容易に供給面に到達させることができる。
この発明の第2の局面による分析物抽出カートリッジは、被験者から分析物を抽出して分析物を分析する分析装置に装着可能な分析物抽出カートリッジであって、被験者から抽出された分析物または分析物が反応することに起因して生成される生成物が供給される供給面を含むセンサ部材と、供給面に接触する第1の面と、被験者の皮膚に接触する第2の面とを有するとともに、分析物または生成物を第2の面から供給面に供給するための液体を保持可能である液体保持部材とを備え、液体保持部材は、皮膚に接触している間、供給面と皮膚との距離を実質的に一定に保つように構成されている。
この第2の局面による分析物抽出カートリッジでは、上記のように、分析物または生成物を第2の面から供給面に供給するための液体を保持可能である液体保持部材を設けるとともに、液体保持部材を、皮膚に接触している間、供給面と皮膚との距離を実質的に一定に保つように構成することによって、分析物を抽出しているときのセンサ部材の供給面と皮膚との距離をほぼ一定に保つことができる。従ってセンサ部材の供給面と皮膚との距離が実質的に変化せず、分析物または生成物がセンサ部材に到達するまでの時間をほぼ一定に保つことができる。これにより、分析物の抽出と検出とを並行して行う場合でも、皮膚とセンサ部材との距離のばらつきに起因する測定誤差が生じるのを抑制することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、センサ部材は、分析物に対する触媒となる第1酵素を供給面に含む。このように構成すれば、皮膚と第1酵素との距離をほぼ一定に保つことができるので、測定誤差が生じるのをさらに抑制することができる。
この場合、好ましくは、センサ部材は、分析物から生成される第1物質に対する触媒となる第2酵素を供給面にさらに含む。このように構成すれば、皮膚と第2酵素との距離をほぼ一定に保つことができるので、測定誤差が生じるのをさらに抑制することができる。
上記分析物から生成される第1物質を含む構成において、好ましくは、センサ部材は、第1物質から生成される第2物質と反応する発色色素を供給面にさらに含む。このように構成すれば、皮膚と発色色素との距離をほぼ一定に保つことができるので、測定誤差が生じるのをさらに抑制することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、シート状に形成されている。このように構成すれば、皮膚とセンサ部材との距離を小さくすることができるので、分析物が抽出されてからセンサ部材が分析物または生成物を検出するまでの時間を短縮することができる。これにより、分析物の抽出を開始してから分析物の分析結果を算出するまでの時間をより短縮することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、供給面と皮膚とに挟まれたときに、実質的に一定の厚みを保つ。このように構成すれば、容易に、分析物を抽出しているときのセンサ部材の供給面と皮膚との距離をほぼ一定に保つことができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、ナイロン製である。このようにナイロン製の液体保持部材を用いれば、ナイロンは、親水性がよいので、確実に、液体を保持することができる。また、ナイロンは、ほとんど伸縮しないので、センサ側の面と皮膚側の面との距離が変化しにくい液体保持部材を、容易に形成することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、1mm以下の厚みを有する。このように1mm以下の厚みを有する液体保持部材を用いれば、1mmよりも大きい厚みを有する液体保持部材を用いる場合に比べて、被験者の皮膚から抽出された分析物がセンサ部材に到達するまでの時間を短縮することができるので、分析物が抽出されてからセンサ部材が分析物または生成物を検出するまでの時間を短縮することができる。これにより、分析物の抽出を開始してから分析物の分析結果を算出するまでに要する時間を短縮することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、第1の面と第2の面とを貫通する複数の貫通孔を含む。このように構成すれば、第1の面と第2の面とを貫通する複数の貫通孔に液体を保持することができるので、被験者から抽出された分析物または生成物を、容易に供給面に到達させることができる。
この場合、液体保持部材の複数の貫通孔は、格子状に配列されていてもよい。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、センサ部材と液体保持部材とにより挟まれるように配置される電極をさらに備える。このように構成すれば、電極を電源に接続するだけで、容易に、液体保持部材を介して被験者の皮膚に電場を付与することができるので、被験者の皮膚から抽出される分析物を電極に向かって移動させることができる。これにより、被験者の皮膚から分析物をより効率良く抽出することができる。
上記第2の局面による分析物抽出カートリッジにおいて、好ましくは、液体保持部材は、供給面の全体を覆うように配置されている。このように構成すれば、液体保持部材を介してセンサ部材に供給された分析物を、供給面全体を用いて検出することができるので、分析物をより精度良く分析することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態による抽出カートリッジが装着される血糖値測定装置を被験者の手首に装着した状態を示した斜視図である。図2〜図4は、図1に示した血糖値測定装置の内部構造を示した図である。図5は、図3に示した血糖値測定装置を被験者の手首に装着した状態を示した拡大図である。図6は、図2に示した血糖値測定装置に装着される抽出カートリッジの構造を示した平面図である。図7は、図1に示した血糖値測定装置の検知部の構成を示した概略図である。図8〜図11は、本発明の一実施形態による抽出カートリッジセットを収容した抽出カートリッジセットを示した斜視図である。図12は、前処理に用いるマイクロニードルを示した斜視図である。図13は、図12に示したマイクロニードルによる前処理が施された皮膚の状態を示した断面図である。まず、図1〜図7、図12および図13を参照して、本発明の一実施形態による抽出カートリッジ2が装着された血糖値測定装置100の全体構成について説明する。
本発明の一実施形態による血糖値測定装置100は、生体から生化学成分の一つであるグルコースを抽出するとともに、抽出されたグルコースを分析することにより血糖値を算出する装置である。この血糖値測定装置100は、図1に示すように、バンド部材110を用いて被験者の手首120に装着されるように構成されている。バンド部材110には、所定の位置に開口を有する固定具(図示せず)が取り付けられている。被験者は、固定具の開口を介して、被験者の手首120の抽出部位にニードルローラ130(図12参照)を用いて前処理を施す。
ニードルローラ130は、図12に示すように、アーム131と、アーム131に回転可能に支持される複数のローラ132とにより構成されている。このローラ132の外周面には、所定の間隔を隔てて複数の微小な針133が形成されている。この針133は、皮下組織まで達することはないが、角質層を含む表皮を貫通可能な程度の突出量(約0.3mm)を有している。このニードルローラ130を用いると、図13に示すように、皮膚に、表皮を貫通し、真皮までは到達するが、皮下組織までは到達しない微細な抽出孔121を形成することができるので、これらの複数の抽出孔121を介して生体から体液を抽出することが可能である。これにより、図1に示した血糖値測定装置100を用いて生体からグルコースを抽出する際に、被験者が感じる痛みを軽減することが可能である。なお、本実施形態では、ニードルローラ130として、たとえば、Top−Rol社製のダーマローラを使用する。
血糖値測定装置100は、図2および図3に示すように、装置本体としての分析ユニット1と、分析ユニット1に着脱可能に保持される抽出カートリッジ2とを備えている。分析ユニット1は、図2および図3に示すように、制御部11と、表示部12(図1参照)と、直流方式の定電圧電源13(図3参照)と、定電圧電源13から流される電流を測定し、その測定結果を制御部11に出力する電流計14(図3参照)と、2つの係合フック15とを含んでいる。また、分析ユニット1には、図7に示した検知部3を構成する単色光源31、レンズ32、レンズ33および受光素子34が設けられている。制御部11は、CPU、ROM、RAMなどから構成され、グルコース量を算出した後、その算出したグルコース量から血糖値を算出するための機能を有している。また、表示部12は、制御部11により算出されたグルコース量および血糖値を表示するために設けられている。
また、定電圧電源13は、図3および図5に示すように、後述する抽出カートリッジ2の陽極24の端子部24cと陰極25の端子部25cとに接続されている。この定電圧電源13から0.8Vの電圧が陽極24および陰極25の間に印加される。また、2つの係合フック15は、図2および図4に示すように、抽出カートリッジ2を分析ユニット1に固定するために設けられている。また、分析ユニット1に設けられた検知部3を構成する単色光源31およびレンズ32は、図3および図7に示すように、後述するセンサ部材26に分析用の光を供給するための機能を有している。センサ部材26内を通過した光は、レンズ33を介して受光素子34に入射するように構成されている。
また、抽出カートリッジ2は、図2および図4に示すように、抽出カートリッジ2に形成された2つの取付孔21に上記した分析ユニット1の係合フック15を各々係合させることによって分析ユニット1に着脱可能に固定されている。この抽出カートリッジ2は、血糖値の測定毎に交換して使用可能なように構成されている。
ここで、本実施形態では、抽出カートリッジ2は、図5および図6に示すように、アクリル製の樹脂からなるカートリッジ本体22と、純水を保持する媒体として機能するメッシュシート23と、陽極24および陰極25と、グルコースを検知するため検知部3(図7参照)を構成するセンサ部材26と、両面テープ27と、実質的に絶縁体の電極シート28とを含んでいる。カートリッジ本体22には、図6に示すように、四角形状の凹状の段差部22aが設けられている。また、段差部22aの中央部には、図5に示すように、カートリッジ本体22の下面にまで達する貫通孔22bが形成されている。また、段差部22aの貫通孔22bを挟んで対向する位置には、それぞれ、円形状の凹部22cが形成されている。この2つの凹部22cには、後述する陽極24および陰極25の端子部24cおよび25cが各々嵌め込まれる。貫通孔22bの内部には、メッシュシート23と、活性炭電極24bおよび25bと、作用部24dおよび25dとが保持されている。また、電極シート28は、凹状の段差部22aに嵌め込まれるとともに、作用部24dおよび25dと、センサ部材26との間に配置されている。この電極シート28には、約9mm×約3mmの大きさの開口部28aが形成されている。センサ部材26の計測面26aは、上記電極シート28の開口部28aを介してメッシュシート23側に露出している。
また、本実施形態では、メッシュシート23は、図3〜図5に示すように、血糖値測定装置100が被験者の手首120に装着された際にセンサ部材26の計測面26aに接触するセンサ接触面23aと、被験者の手首120の皮膚に接触する皮膚接触面23bとを有している。また、メッシュシート23は、図5に示すように、活性炭電極24bおよび25bの下面に接触するとともに、約20μmの厚みを有する両面テープ27により、カートリッジ本体22の下面側から固定されている。この両面テープ27は、皮膚の測定箇所(抽出部位)を規定する開口部27aを有しており、カートリッジ本体22の下面全体に渡って貼り付けられている。メッシュシート23は、グルコースの抽出時には純水を含んだ状態になる。また、メッシュシート23は、両面テープ27の開口部27aを介して被験者の手首120の皮膚の盛り上がりにより上方に向けて押し上げられることにより、センサ部材26の下面に接触するように構成されている。本実施形態において使用されるメッシュシート23は、ナイロン製で、約10mmの長さ、約4mmの幅、および、約50μmの厚みを有している。なお、メッシュシート23の厚みは、好ましくは約1μm以上約1mm(1000μm)以下であり、より好ましくは、約30μm以上約500μm以下である。このように、約30μm以上の厚みを有するメッシュシート23を用いれば、測定時の皮膚からの押圧力などによりメッシュシート23が破損するのを容易に抑制することができる。
また、約500μm以下の厚みを有するメッシュシート23を用いることによって、約500μmより大きい厚みを有するメッシュシート23を用いる場合に比べて、被験者の皮膚から抽出されたグルコースがセンサ部材26の計測面26aに到達するまでの時間を短縮することができるので、グルコースの抽出を開始してからセンサ部材26がグルコースを検出するまでの時間を短縮することが可能になる。これにより、グルコースや血糖値の測定時間を短縮することが可能である。このメッシュシート23は、可撓性を有する一方、実質的に伸縮性を有さず、厚みがほとんど変化しないように構成されている。すなわち、メッシュシート23は、被験者の手首120の皮膚と接触するとともに、センサ部材26の計測面26aと被験者の手首120の皮膚との間に挟まれた状態で、実質的に一定の厚みを保つように構成されている。これにより、被験者の手首120の皮膚と、センサ部材26の計測面26aとの間の距離は、メッシュシート23の厚みとほぼ一致し、本実施形態では、約50μmである。また、メッシュシート23は、約30μmの太さのナイロン繊維を編み込んで形成されており、縦横それぞれ約33μmの正方形状の網目構造を有している。すなわち、メッシュシート23は、網目を構成する複数の貫通孔23c(図22〜図24参照)を有する多孔質構造を有している。この複数の貫通孔23cは、センサ接触面23aから皮膚接触面23bに向かってメッシュシート23を貫通するように形成されている。なお、被験者の手首120の皮膚と、陽極24および陰極25との間の距離は、メッシュシート23の厚みとほぼ一致し、本実施形態では、約50μmである。
陽極24および陰極25は、図5および図7に示すように、それぞれ、塩化銀(AgCl)からなる集電極24aおよび25aと、多孔質導電物質としての活性炭からなる活性炭電極24bおよび25bとにより構成されている。集電極24aおよび25aは、カートリッジ本体22の段差部22aに形成された2つの凹部22cに各々嵌め込まれた円形状の端子部24cおよび25cと、端子部24cおよび25cに各々接続された作用部24dおよび25dとにより構成されている。また、活性炭電極24bおよび25bは、集電極24aおよび25aの作用部24dおよび25dの下方に各々貼り付けられており、約1000m2/g〜約3000m2/gの比表面積を有している。陽極24の端子部24cおよび陰極25の端子部25cは、分析ユニット1に設けられた直流方式の定電圧電源13に接続されている。
また、センサ部材26は、図5に示すように、電極シート28の上面に配置されている。このセンサ部材26は、下面側にグルコースの分析を行う計測面26aを有している。この計測面26aには、グルコースが反応することに起因して発色する発色色素と、所定の酵素とを含む混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。
具体的には、センサ部材26の計測面26aには、グルコースに対する触媒としての酸化酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)と、グルコースがGODを触媒として反応することによって生成される過酸化水素(H2O2)に対する触媒としての酸化還元酵素であるペルオキシダーゼ(POD)と、H2O2がPODを触媒として反応することによって生成されるO*(活性酸素)と反応して発色する発色色素とをゲルに混合した混合ゲルが塗布され、その混合ゲルを乾燥させる処理が施されている。
また、センサ部材26は、図7に示すように、ガラス製の基板26bと、基板26bの下方に取り付けられた第1光導波路層26cと、第1光導波路層26cの下方の中央部に取り付けられた第2光導波路層26dと、第2光導波路層26dを挟むように第1光導波路層26cの下方に形成された保護膜26eと、保護膜26eの外側を覆う遮光層26fとにより構成されている。第1光導波路層26cは、基板26bより高い屈折率を有している。また、第2光導波路層26dは、側方が傾斜した台形状を有するとともに、第1光導波路層26cより高い屈折率を有している。センサ部材26の計測面26aは、第2光導波路層26dのうちの保護膜26eから露出した部分であり、図5に示すように、測定時にはメッシュシート23の上面と接触する。このセンサ部材26と、上記した分析ユニット1の単色光源31、レンズ32、レンズ33および受光素子34とにより、本実施形態の検知部3が構成されている。
次に、図3、図4、図6および図8〜図11を参照して、上記した血糖値測定装置100に装着される未使用の抽出カートリッジ2を収容した抽出カートリッジセット200の構成について説明する。
抽出カートリッジセット200は、血糖値測定装置100に装着される前の未使用の抽出カートリッジ2を乾燥した状態で収容するとともに、血糖値測定装置100に装着する際には、抽出カートリッジ2のメッシュシート23に所定量の純水を含ませることが可能なように構成されている。本実施形態による抽出カートリッジセット200は、図8および図9に示すように、支持部材40と、上述した抽出カートリッジ2(図9参照)と、乾燥剤50(図9参照)と、液体供給部材60(図9参照)と、分離部材70とを備えている。
支持部材40は、可撓性を有するシート状に形成されている。この支持部材40は、PET(ポリエチレンテレフタレート)と、アルミ箔と、ポリエチレンとをこの順番に積層した3層構造を有している。また、支持部材40は、ポリエチレン層が内側になるようにU字状に折り曲げられている。また、支持部材40は、カートリッジ支持部41と、カートリッジ支持部41と対向して配置される液体供給部材支持部42と、カートリッジ支持部41および液体供給部材支持部42を連結する折り曲げ部43とから構成されている。また、カートリッジ支持部41の2つの角部41aと液体供給部材支持部42の2つの角部42aとは、図8に示すように、角部41aおよび42aの表面を構成するポリエチレン層が熱により溶着されることにより固定されている。これにより、支持部材40は、実質的に袋のような形状に構成されるので、カートリッジ支持部41、液体供給部材支持部42および折り曲げ部43により囲まれる領域内に抽出カートリッジ2および液体供給部材60を保持(収容)することが可能になる。なお、カートリッジ支持部41の角部41aと液体供給部材支持部42の角部42aとの固定状態は、容易に解除することが可能な溶着力で溶着されている。
抽出カートリッジ2は、図9に示すように、支持部材40のカートリッジ支持部41の内面側に一対の弱粘着性の両面テープ81により容易に離脱可能なように接着されている。また、抽出カートリッジ2は、メッシュシート23の皮膚に配置される側の面が液体供給部材60側(図9の上向き)になるように配置されている。
乾燥剤50は、抽出カートリッジ2と所定の間隔を隔てた位置に配置されており、支持部材40のカートリッジ支持部41の内面側に接着剤82により強固に固定されている。乾燥剤50は、抽出カートリッジ2のメッシュシート23(図6参照)が空気中の水分などを吸収して湿った状態になるのを抑制するために設けられている。
液体供給部材60は、不織布である脱脂綿(カット綿)からなり、約15mmの長さ、約15mmの幅、および、約50μmの厚みを有する。また、液体供給部材60は、所定量(本実施形態では、約150μl)の純水を吸収保持している。なお、本実施形態で使用する純水は、18.3MΩ・cmの電気抵抗率(比抵抗)を有しており、実質的に絶縁体(非導電性物質)である。この液体供給部材60は、図9に示すように、支持部材40のカートリッジ支持部41に取り付けられた抽出カートリッジ2のメッシュシート23と対向するように、支持部材40の液体供給部材支持部42の内面側に接着剤83により強固に固定されている。上記のように、抽出カートリッジ2のセンサ部材26の計測面26a側に配置された電極シート28の開口部28a(約9mm×約3mm)よりも大きい面積の液体供給部材60(約15mm×約15mm)を用いることによって、抽出カートリッジ2と液体供給部材60との接触時に互いの位置が多少ずれたとしても、確実に液体供給部材60から抽出カートリッジ2のメッシュシート23に純水を供給することが可能である。なお、本実施形態では、液体供給部材60が吸収している純水(約150μl)のうち約1%の純水(約1.5μl)が、液体供給部材60から抽出カートリッジ2のメッシュシート23に供給される。このように、液体供給部材60が吸収保持している純水のうちの一部をメッシュシート23に供給することによって、液体供給部材60が吸収保持している純水が多少蒸発したとしても、適切な量の純水をメッシュシート23に供給することができるため、抽出カートリッジ2の保存期間を長くすることができる。
分離部材70は、上記した支持部材40と同様、可撓性を有するシート状に形成されており、PET(ポリエチレンテレフタレート)層(内表面)と、アルミ箔と、ポリエチレン層(外表面)とからなる3層構造を有している。この分離部材70は、図8および図9に示すように、U字状の支持部材40のカートリッジ支持部41、液体供給部材支持部42および折り曲げ部43により囲まれる領域内に収容されている。また、分離部材70のポリエチレン層からなる外表面の所定部分が、支持部材40のポリエチレン層からなる内表面の所定部分に対して熱による溶着により取り付けられている。分離部材70は、図9に示すように、支持部材40のカートリッジ支持部41に対向して配置されるカートリッジ収容部71と、支持部材40の液体供給部材支持部42に対向して配置される液体供給部材収容部72と、カートリッジ収容部71および液体供給部材収容部72に挟まれて配置される挟持部73とを含んでいる。カートリッジ収容部71および液体供給部材収容部72は、図10に示すように、挟持部73の所定の辺73aから2つに分離して延びるように、挟持部73に一体的に形成されている。
カートリッジ収容部71は、図9、図10および図11に示すように、支持部材40のカートリッジ支持部41との間に抽出カートリッジ2および乾燥剤50を収容可能な凹部71aを有している。このカートリッジ収容部71の凹部71aは、平面的に見て五角形のホームベース形状を有している。また、カートリッジ収容部71の凹部71aの周囲は、図11に示すように、外表面を構成するポリエチレン層が熱により支持部材40の内表面を構成するポリエチレン層に溶着されることにより支持部材40のカートリッジ支持部41の内面側に固定されている。これにより、支持部材40のカートリッジ支持部41および分離部材70のカートリッジ収容部71の凹部71aにより形成される外部から密閉された空間内に、抽出カートリッジ2および乾燥剤50を保持することが可能になる。その結果、支持部材40および分離部材70により形成される空間内に抽出カートリッジ2を乾燥した状態で保存することが可能である。また、カートリッジ収容部71の凹部71aをホームベース形状に形成することにより、凹部71aを四角形状に形成する場合と異なり、カートリッジ収容部71の凹部71aの角部71bを起点として分離部材70が支持部材40から剥離されるので、小さい力で、容易に分離部材70を支持部材40から取り外すことが可能である。
液体供給部材収容部72は、支持部材40の液体供給部材支持部42との間に純水を含んだ状態の液体供給部材60を収容可能な凹部72aを有している。この液体供給部材収容部72の凹部72aは、平面的に見て五角形のホームベース形状を有している。また、液体供給部材収容部72の凹部72aの周囲は、外表面を構成するポリエチレン層が熱により支持部材40の内表面を構成するポリエチレン層に溶着されることにより支持部材40の液体供給部材支持部42の内面側に固定されている。これにより、支持部材40の液体供給部材支持部42および分離部材70の液体供給部材収容部72の凹部72aより形成される外部から密閉された空間内に、純水を含んだ液体供給部材60を保持することが可能になる。また、液体供給部材収容部72の凹部72aをホームベース形状に形成することにより、凹部72aを四角形状に形成する場合と異なり、液体供給部材収容部72の凹部72aの角部72bを起点として分離部材70が支持部材40から剥離されるので、小さい力で、容易に分離部材70を支持部材40から取り外すことが可能である。
挟持部73は、分離部材70を支持部材40から取り外す際に被験者によって挟持されるために設けられている。この挟持部73は、図9に示すように、支持部材40の折り曲げ部43と対向する位置から所定の長さだけ外部に向かって突出している。この挟持部73の突出した部分を被験者が挟持して矢印C方向に引っ張ることによって、その引っ張り力が挟持部73を介してカートリッジ収容部71および液体供給部材収容部72に伝達されるので、カートリッジ収容部71および液体供給部材収容部72を、各々の凹部71aおよび72aの角部71bおよび72bを起点として支持部材40のカートリッジ支持部41および液体供給部材支持部42から徐々に剥離させることが可能である。
図14は、図1に示した血糖値測定装置を使用した血糖値測定の動作手順を示したフローチャートである。図15〜図19は、図8に示した抽出カートリッジセットから抽出カートリッジを取り出す際の動作を説明するための図である。図20は、抽出カートリッジセットの液体供給部材に吸収保持されている純水量と、液体供給部材から抽出カートリッジのメッシュシートに転写(供給)された純水量との関係を示した相関図である。図21〜図24は、図1に示した血糖値測定装置を用いたグルコースの抽出原理を説明するための模式図である。次に、図1、図5、図6、図9および図12〜図24を参照して、血糖値測定装置100を用いた血糖値測定の動作手順を説明する。
まず、図14に示したステップS1において、被験者の手首120にバンド部材110を装着する。このとき、測定箇所(抽出部位)がバンド部材110の固定具の開口(図示せず)内に位置するようにバンド部材110を装着する。
そして、ステップS2において、被験者は、未使用の抽出カートリッジ2を抽出カートリッジセット200から取り出す。具体的には、被験者は、図8および図9に示した抽出カートリッジセット200の支持部材40のカートリッジ支持部41の外面側と液体供給部材支持部42の外面側とを、2つの指を用いて矢印A方向および矢印B方向から挟み込むことにより抽出カートリッジセット200を保持する。この抽出カートリッジセット200には、未使用の乾燥した抽出カートリッジ2と、所定量(約150μl)の純水を吸収保持している液体供給部材60とが互いに接触しない状態で収容されている。そして、被験者は、抽出カートリッジセット200の支持部材40から外部に突出した分離部材70の挟持部73を、指を用いて挟持するとともに矢印C方向に引っ張る。これにより、図15および図16に示すように、分離部材70の挟持部73が矢印C方向に移動される。この挟持部73の矢印C方向への移動に伴って、分離部材70のカートリッジ収容部71および液体供給部材収容部72が、カートリッジ収容部71の凹部71aの角部71bと、液体供給部材収容部72の凹部72aの角部72bとを起点として、支持部材40のカートリッジ支持部41および液体供給部材支持部42から徐々に剥離される。
そして、図17に示すように、乾燥した抽出カートリッジ2と純水を吸収保持している液体供給部材60との間から分離部材70が取り除かれるとともに、支持部材40のカートリッジ支持部41および液体供給部材支持部42が被験者の指により矢印A方向および矢印B方向から押圧される。これにより、乾燥した抽出カートリッジ2のメッシュシート23と純水を吸収保持している液体供給部材60とが接触して、液体供給部材60に吸収保持されている純水(約150μl)のうちの約1%(約1.5μl)が抽出カートリッジ2のメッシュシート23(図6参照)に転写(供給)される。
ここで、図20を参照して、本実施形態による転写(供給)方法を用いた場合の転写精度(転写率)および再現性について行った実験について説明する。図20では、横軸に、カット綿からなる液体供給部材60に吸収保持されている純水量(μl)が取られており、縦軸に、液体供給部材60からナイロン製のメッシュシート23に転写された純水量(μl)が取られている。この実験では、75μl、150μlおよび200μlの純水を吸収保持した3種類の液体供給部材60について、それぞれ3回ずつ、メッシュシート23と接触させることにより液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写を行った。そして、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写量を各々測定した。その結果、図20に示すように、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が75μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23に転写された純水量の平均値は、約0.40μlであった。また、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が150μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23に転写された純水量の平均値は、約1.40μlであった。また、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が200μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23に転写された純水量の平均値は、約1.90μlであった。
これにより、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が75μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写量の平均値(約0.40μl)は、液体供給部材60に吸収保持されている純水量(75μl)の約0.5%程度であることが判明した。また、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が150μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写量の平均値(約1.40μl)は、液体供給部材60に吸収保持されている純水量(150μl)の約1.0%程度であることが判明した。また、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が200μlの場合には、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写量の平均値(約1.90μl)は、液体供給部材60に吸収保持されている純水量(200μl)の約1.0%程度であることが判明した。この結果、液体供給部材60に吸収保持されている純水の量が多い(150μlおよび200μl)場合には、液体供給部材60に吸収保持されている純水の量が少ない(75μl)場合(約0.5%の転写率)に比べて、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写率(液体供給部材60に含まれる純水量に対する転写量の割合)が大きくなる(約1.0%の転写率)ことがわかった。これは、液体供給部材60に吸収保持されている純水の量が少ないと、純水が液体供給部材60から外部に移動しにくくなるためであると考えられる。
また、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が150μlの場合と200μlの場合とで、液体供給部材60からメッシュシート23への純水の転写率にほとんど差が生じないことがわかった。これにより、液体供給部材60に吸収保持されている純水量が比較的多い(約150μl)場合には、カット綿(脱脂綿)からなる液体供給部材60からナイロン製のメッシュシート23への純水の転写率が約1.0%で安定する傾向にあることがわかった。また、転写量の再現性としてのCV(変動係数:実質的なデータのばらつきを評価する尺度)値は、約10%程度であった。このことから、カット綿(脱脂綿)からなる液体供給部材60からナイロン製のメッシュシート23への純水の転写の再現性も十分に高いことが判明した。
上記のように、液体供給部材60から純水をメッシュシート23に転写した後、支持部材40のカートリッジ支持部41の2つの角部41aと液体供給部材支持部42の2つの角部42aとの固定状態を解除して、支持部材40の液体供給部材支持部42を折り曲げ部43を支点として図17に示す矢印D方向に回動させることによって、図18および図19に示す状態にする。そして、所定量(約1.5μl)の純水を含んだメッシュシート23を含む抽出カートリッジ2をカートリッジ支持部41に片面が取り付けられた一対の両面テープ81から取り外す。
そして、ステップS3において、抽出カートリッジ2の一対の取付孔21に血糖値測定装置100の一対の係合フック15を係合させることにより、血糖値測定装置100に所定量(約1.5μl)の純水を含んだメッシュシート23を含む未使用の抽出カートリッジ2を取り付ける。そして、ステップS4において、図13に示すように、ニードルローラ130(図12参照)を用いて抽出部位の皮膚に複数の微細な抽出孔121を形成することにより、前処理を行う。このニードルローラ130を用いた前処理により皮膚に形成された抽出孔121には、図21に示すように、皮膚の真皮中にもともと溜まっていたグルコースを含む体液が徐々に滲み出してくる。そして、ステップS5において、血糖値測定装置100をバンド部材110の固定具に取り付ける。これにより、抽出カートリッジ2の下面側が被験者の皮膚に接触した状態で、血糖値測定装置100が被験者の手首120に装着される。具体的には、図5に示すように、手首120の測定箇所(抽出部位)がバンド部材110(図1参照)の締め付けにより盛り上がることにより、メッシュシート23と皮膚とが接触するとともに、メッシュシート23の中央部が上方向に移動してセンサ部材26の下面(計測面26a)に接触した状態になる。
このとき、図22に示すように、メッシュシート23に含まれる純水が皮膚に形成された抽出孔121の内部に入っていく。そして、図23に示すように、皮膚の抽出孔121に滲み出た体液とメッシュシート23からの純水とが混ざり合うことにより、抽出孔121内部の体液がメッシュシート23の貫通孔23cに保持されている純水中に拡散される。これにより、抽出孔121の内部の浸透圧が皮膚の真皮の浸透圧に比べて低くなるので、再び、真皮から体液が抽出孔121に滲み出す。その結果、抽出カートリッジ2の陽極24および陰極25に定電圧電源13から電圧を印加する前に、皮膚に形成された抽出孔121を介して滲み出てきた体液がメッシュシート23の貫通孔23cに保持されている純水中にある程度拡散された状態になる。この状態で、図14のステップS6において、血糖値測定装置100の測定開始スイッチ(図示せず)を押すことによって、定電圧電源13により定電圧(0.8V)を陽極24および陰極25に約3分間印加する。これにより、抽出孔121に存在する電荷を帯びたイオン成分が陽極24および陰極25に向かって積極的に移動するので、図24に示すように、生体から検知部3によって検知可能な量のグルコースを含む体液がメッシュシート23に保持された純水中に収集される。
ここで、抽出カートリッジ2の陽極24および陰極25に電圧を印加することによるメッシュシート23に保持された純水への体液の収集のメカニズムについて説明する。定電圧電源13により陽極24および陰極25に電圧が印加されると、陽極24側の集電極24aは、正(+)の電荷を帯びるとともに、陰極25側の集電極25aは、負(−)の電荷を帯びる。陽極24の集電極24aおよび陰極25の集電極25aの下方に各々貼り付けられた活性炭電極24bおよび25bは、分極性を有している。このため、陽極24側の活性炭電極24b内の下部は、正(+)に帯電し、陰極25側の活性炭電極25b内の下部は、負(−)に帯電する。これにより、抽出孔121内部に抽出されている体液に含まれるナトリウムイオン(Na+)および塩化物イオン(Cl−)が、それぞれ、活性炭電極25bおよび活性炭電極24bに向かってメッシュシート23に保持された純水中を移動する。この体液中のナトリウムイオン(Na+)および塩化物イオン(Cl−)の活性炭電極25bおよび24bへの移動に伴って、体液中のグルコースなどの生化学成分が、メッシュシート23に保持された純水中に移動する。そして、グルコースなどの生化学成分は、センサ部材26の計測面26aに到達する。
ステップS6と並行して、ステップS7において、センサ部材26を用いてグルコース量を測定する。このステップS7でのグルコース量の算出は、定電圧電源13が陽極24および陰極25に定電圧を印加している間に、所定時間ごと(例えば1秒ごと)に継続して行われる。
具体的には、本実施形態のセンサ部材26の計測面26aに塗布された混合ゲル中の酸化酵素であるグルコースオキシダーゼ(GOD)が触媒として作用することにより、計測面26aに到達したグルコースから過酸化水素(H2O2)およびグルコン酸が生成される。次に、センサ部材26の計測面26aに塗布されている混合ゲル中の酸化還元酵素であるペルオキシダーゼ(POD)が触媒として作用することにより、過酸化水素(H2O2)から活性酸素(O*)および水(H2O)が生成される。そして、センサ部材26の計測面26aに塗布されている混合ゲル中の発色色素が、生成された活性酸素(O*)と反応することにより発色する。
これにより、純水を含んだメッシュシート23に接しているセンサ部材26の第2光導波路層26d(図7参照)内を全反射しながら通過する光は、生体から抽出されたグルコースの量に応じて発色する発色色素により吸収された後、受光素子34に到達する。この受光素子34から出力される信号に基づいて、制御部11がグルコース量を算出する。なお、純水に含有される発色色素としては、たとえば、N,N−ビス(2−ヒドロキシ−3−サルフォプロピル)トリジンジカリウム塩、および、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジリデンなどを用いることができる。そして、ステップS8において、制御部11により、ステップS7で1秒ごとに算出したグルコース量から以下の式(1)の解析法に基づいて血糖値を算出するとともに、算出された単位時間当たりのグルコース抽出量および血糖値を表示部12(図1参照)に表示する。
BG = C/P
= C/(A×I+B) ・・・(1)
なお、上記式(1)において、「BG」は、算出血糖値を表し、「C」は、ステップS7で得られる1秒ごとのグルコース量から算出される単位時間当たりのグルコース抽出量を表し、「P」は、抽出部位のグルコース透過率(グルコースの通しやすさ)を表し、「I」は、電圧の印加中に電流計14により測定された平均電流値を表している。また、「A」および「B」は、予め実験により決定された定数である。そして、図14のステップS9において、バンド部材110の固定具から血糖値測定装置100を取り外す。
そして、ステップS10において、抽出カートリッジ2の一対の取付孔21と、血糖値測定装置100の一対の係合フック15との係合状態を解除することにより、血糖値測定装置100から使用済の抽出カートリッジ2を取り外す。この使用済の抽出カートリッジ2は、破棄してもよいし、適切な処理を施して再利用してもよい。その後、ステップS11において、被験者の手首120からバンド部材110を取り外す。これにより、血糖値測定装置100を用いた血糖値測定が終了する。
本実施形態では、上記のように、グルコースを皮膚接触面23bから計測面26aに供給するための純水を保持可能であるナイロン製のメッシュシート23を設けるとともに、メッシュシート23を、皮膚に接触している間、計測面26aと皮膚との距離を実質的に一定に保つように構成することによって、グルコースを抽出しているときの計測面26aと皮膚との距離をほぼ一定に保つことができる。従って計測面26aと皮膚との距離が実質的に変化せず、グルコースがセンサ部材26に到達するまでの時間をほぼ一定に保つことができる。これにより、グルコースの抽出と検出とを並行して行っているにもかかわらず、皮膚とセンサ部材26との距離のばらつきに起因する測定誤差が生じるのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、メッシュシート23を、抽出カートリッジ2の保存中には乾燥しているように構成することによって、センサ部材26に含まれる酵素(グルコースオキシダーゼ(GOD)およびペルオキシダーゼ(POD))が、水分と接触することに起因して、短時間で劣化してしまうのを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の貫通孔23cを有するメッシュシート23を用いることによって、容易に、メッシュシート23の網目を構成する複数の貫通孔23cに液体供給部材60から供給される純水を保持することができるので、被験者から抽出されたグルコースを、貫通孔23cの内部の純水を介して計測面26aに容易に到達させることができる。
また、本実施形態では、上記のように、血糖値測定装置100の定電圧電源13に接続される陽極24および陰極25が単一のメッシュシート23と接触するように、単一の抽出カートリッジ2を構成することによって、定電圧電源13に接続された陽極24および陰極25により、メッシュシート23を介して被験者の手首120の皮膚に電場を付与することができるので、被験者の皮膚から抽出されるグルコースを陽極24および陰極25に向かって移動させることができる。これにより、単一のメッシュシート23に保持された純水に、陽極24および陰極25に向かって移動するグルコースが保持されるので、被験者の皮膚からグルコースをより効率良く抽出することができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、本発明の分析物保持部材としてナイロン製の網目構造を有するメッシュシートを用いる例について示したが、本発明はこれに限らず、ナイロン以外の紙および樹脂などの絶縁材料により形成されたメッシュシートを用いてもよい。また、メッシュシートに代えて、レーザなどを用いて樹脂などに孔を空けることにより形成された多孔質構造の部材を用いてもよい。
また、上記実施形態では、液体供給部材からメッシュシートに供給する液体として実質的に非導電性物質である純水を用いる例について示したが、本発明はこれに限らず、液体供給部材からメッシュシートに供給する液体として純水以外の生理食塩水などの導電性物質を用いてもよい。
また、上記実施形態では、グルコースを検知するセンサ部材として、光学センサを用いたが、本発明はこれに限らず、グルコースを検知するセンサ部材として、国際公開WO96/00110号公報に記載のセンサ電極アセンブリなどの電気的なセンサを用いてもよい。この場合、図5に示したセンサ部材26に代えて、センサ電極をメッシュシート23のセンサ接触面23aに接触するように配置し、センサ電極によって検出される電流値を制御部11(図3参照)に出力する電流値出力部を設け、グルコースオキシダーゼ(GOD)をメッシュシート23またはセンサ電極に保持しておくとよい。このように構成すれば、被験者からメッシュシート23中の純水に抽出されたグルコースがGODを触媒として反応すると、過酸化水素が生成され、この過酸化水素の生成に起因して生成される電荷がセンサ電極に供給されることによって電流が発生する。そして、電流値出力部は、発生した電流の電流値を制御部11に出力し、制御部11は、その電流値に基づいてグルコース量を算出する。
また、上記実施形態では、定電圧電源により抽出カートリッジの電極に電圧を印加する例について示したが、本発明はこれに限らず、定電圧電源に代えて定電流電源を用いてもよいし、定電圧電源を用いることなく、自然抽出、超音波抽出、陰圧による抽出などにより生体からグルコースを抽出してもよい。
また、上記実施形態では、抽出カートリッジと液体供給部材(脱脂綿)とを同一の支持部材内に収容する例について示したが、本発明はこれに限らず、抽出カートリッジを収容する支持部材と、液体供給部材(脱脂綿)を収容する支持部材とを個別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、可撓性を有するシート状の支持部材に抽出カートリッジおよび液体供給部材(脱脂綿)を収容する例について示したが、本発明はこれに限らず、可撓性を有さない箱のような部材に抽出カートリッジおよび液体供給部材(脱脂綿)を収容してもよい。
また、上記実施形態では、可撓性を有するシート状の分離部材を用いる例について示したが、本発明はこれに限らず、分離部材として可撓性を有さない板状の部材などを用いてもよい。また、分離部材は、支持部材から離脱可能に構成されていなくてもよい。
また、上記実施形態では、分離部材の挟持部を挟持して引っ張ることにより分離部材を支持部材から離脱させる例について説明したが、本発明はこれに限らず、分離部材の支持部材から突出した部分に被験者の指を挿入可能な孔を形成するとともに、分離部材の孔に指を挿入して引っ張ることにより分離部材を支持部材から離脱させてもよい。また、分離部材に指を挿入して引っ張るためのリング状の部材を別途取り付けてもよい。このように構成すれば、一本の指を用いて支持部材から分離部材を取り外すことが可能である。
また、上記実施形態では、カートリッジ収容部の凹部と液体供給部材収容部の凹部とを直線状のホームベース形状に形成することにより、カートリッジ収容部および液体供給部材収容部の各々の凹部の角部を起点として分離部材が支持部材から剥離される例について示したが、本発明はこれ限らず、分離部材が支持部材から剥離される起点となるカートリッジ収容部の凹部の部分と液体供給部材収容部の凹部の部分とを円弧状に形成してもよい。また、カートリッジ収容部の凹部と液体供給部材収容部の凹部とを円形状や四角形状に形成してもよい。
また、上記実施形態では、図2に示すように、抽出カートリッジ2が、血糖値測定装置100の定電圧電源13の陽極側に接続される陽極24と、血糖値測定装置100の定電圧電源13の陰極側に接続される陰極25とを有するように構成した例について示したが、本発明はこれに限らず、図25に示す変形例のように、抽出カートリッジ2が、血糖値測定装置100の定電圧電源13の陰極側に接続される2つの陰極125を有するように構成してもよい。このとき、血糖値測定装置100の定電圧電源13の陽極側に電気的に接続される陽極端子124を別途設けるとともに、その陽極端子部124を被験者の皮膚の別の部位にセットする。なお、この場合、純水に代えて生理食塩水などの導電性液体を使用することが好ましい。
また、上記実施形態では、液体供給部材として、不織布の一種である脱脂綿(カット綿)を用いる例を示したが、本発明はこれに限らず、メッシュシート(液体保持部材)に接触することにより、供給する液体の量を正確に制御可能な材料であれば、脱脂綿(カット綿)以外の不織布からなる液体供給部材や不織布以外の材料からなる液体供給部材を用いてもよく、例えばスポンジ、紙、濾紙、およびゲルなどを用いてもよい。
また、上記実施形態では、直流方式の定電圧電源を使用して陽極および陰極に電圧を印加する例について説明したが、本発明はこれに限らず、交流方式の定電圧電源を使用して陽極および陰極に電圧を印加するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、本発明を、生体からグルコースを抽出して血糖値を算出する血糖値測定装置に適用する例について説明したが、本発明はこれに限らず、生体からグルコース以外の他の分析物を抽出する分析物抽出装置に本発明を適用してもよい。本発明を適用可能な分析物抽出装置が抽出する分析物としては、たとえば、生化学成分や被験者に投与された薬剤などが挙げられる。生化学成分としては、生化学成分の一種であるたんぱく質の、アルブミン、グロブリンおよび酵素などが挙げられる。また、たんぱく質以外の生化学成分として、クレアチニン、クレアチン、尿酸、アミノ酸、フルクトース、ガラクトース、ペントース、グリコーゲン、乳酸、ピルビン酸およびケトン体などが挙げられる。また、薬剤としては、ジギタリス製剤、テオフィリン、不整脈用剤、抗てんかん剤、アミノ酸糖体抗生物質、グリコペプチド系抗生物質、抗血栓剤および免疫抑制剤などが挙げられる。
また、上記実施形態の血糖値測定装置において、または、生体からグルコース以外の他の分析物を抽出する分析物抽出装置に本発明を適用した場合において、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)法等の他の測定法を用いてたんぱく質またはたんぱく質以外の生化学成分および薬剤を分析するように検知部および制御部を構成してもよい。