JPWO2006070735A1 - ソリフェナシンまたはその塩の安定な粒子状医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
該ソリフェナシンまたはその塩を含む一連のキヌクリジン誘導体が、ムスカリンM3受容体に対する優れた選択的拮抗作用を有し、神経性頻尿、神経因性膀胱、夜尿症、不安定膀胱、膀胱痙縮や慢性膀胱炎等の泌尿器疾患や慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息や鼻炎等の呼吸器疾患の予防治療剤として有用であることは報告されている(特許文献1参照)。
該特許文献1の実施例8には、ソリフェナシン塩酸塩の製法が記載されており、アセトニトリル及びジエチルエーテルからなる混合溶媒中で結晶化された結晶が212〜214℃の融点であったこと、比旋光度([α]25 Dが98.1(c=1.00,EtOH))を示したことが記載されている。
このような技術水準下、ソリフェナシン製剤の安定化につき鋭意研究した結果、予想外にも製剤の製造過程において生成した非晶質体のソリフェナシンが、主薬経時的分解の主たる原因であり、一般的な結合剤であるHPMC等の使用がソリフェナシンの非晶質体生成に大きく関与していたことを知った。
そして更に、フィルムコーティングするのに適した安定なソリフェナシン又はその塩の粒子状医薬組成物の創製に当たり、例えば溶解させたソリフェナシンをPEGなどの高分子物質(結合剤)とともに核粒子に噴霧する場合、ソリフェナシンがその後非晶質体を維持しうるかどうかは高分子物質(結合剤)内でのソリフェナシンの流動性に起因するものではないかとの着想を得た。そこで、鋭意検討を行ったところ、核粒子に噴霧する際に用いる結合剤に関し、薬物の流動性に影響を与える可能性がある高分子固有の物性値(ガラス転移点(以下Tgと略す)や融点(以下、mpと略す))に着目したところ、Tgが高い結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては分解の指標となる類縁物質の初期値は低かったにもかかわらず、その後の安定性に関しては不安定であることを見出した。一方、Tgが一定値よりも低い特定の結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては、意外にも類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値が共に低く安定で、かつ、粒度が均一でかつ球形のフィルムコーティングに適したものであることを見出した。
さらに、鋭意検討した結果、加湿乾燥処理等の結晶化促進処理を施したほうがより安定な粒子状医薬組成物を創製することを見出し、本発明を完成するに至った。
1.ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有する安定な粒子状医薬組成物、
2.ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩の非晶質維持抑制作用を有する結合剤である前記1記載の医薬組成物、
3.結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする前記1又は2記載の医薬組成物、
4.結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
5. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
6. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
7. ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させものを用いて得られうる、ソリフェナシン又はその塩の安定な粒子状医薬組成物、
8. ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩と非晶質維持抑制作用を有する結合剤である前記7記載の医薬組成物、
9. 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする前記7又は8記載の医薬組成物、
10. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
11. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
12. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
13. 更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた前記1乃至12記載の医薬組成物、
14. 前記1乃至13記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠、に関するものである。
15. ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有してなる医薬組成物を、結晶化促進処理することにより、ソリフェナシン又はその塩を安定化させる方法、
16. ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有してなる安定な粒子状医薬組成物を、結晶化促進処理することにより、ソリフェナシン又はその塩の非晶質体を結晶に転移する方法、
に関する。
本発明において使用される「ソリフェナシンの塩」とは、特許文献1に記載されたソリフェナシンの塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩や四級アンモニウム塩を挙げることができる。中でも、ソリフェナシンのコハク酸塩が、医薬品として提供する上で好ましい。
ソリフェナシンまたはその塩の「結晶」あるいは「結晶体」とは、字義通り結晶学的に結晶構造を有するソリフェナシン又はその塩を意味する物質の意味であるが、本発明においては、製剤中に製品の安定化に影響を与えない範囲内で存在するときソリフェナシンの著しい経時的分解性を示す「非晶質体」とは異なる物質を意味し、一方、本発明においてソリフェナシンまたはその塩の「非晶質」あるいは「非晶質体」とは、結晶学的に非晶質の構造を有する物質の意味であるが、本発明においては、製剤中に製品の安定化に影響を与えない範囲以上存在するときソリフェナシンの経時的分解性の極めて少ない「結晶」あるいは「結晶体」とは異なる物質を意味する。
また、本発明の口腔内崩壊錠におけるソリフェナシンまたはその塩の配合量は、投与単位製剤当たりの有効量を含有していれば良いが、好ましくは0.001重量%〜97重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜50重量%であり、更に好ましくは0.05重量%〜10重量%であり、最も好ましくは0.05重量%〜4重量%である。
本発明でいう「非晶質維持抑制作用」の意味としては、非晶質体の状態で存在させにくくさせる作用、及び/又は非晶質体から結晶へ転移させやすくしうる作用のことをいう。
本発明でいう「ソリフェナシン又はその塩とソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させたもの」とは、ソリフェナシン又はその塩を水などの溶媒に溶解したものと一緒に、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を溶解させたものを意味するが、必ずしもソリフェナシン又はその塩の全部が溶媒に溶解している必要はなく、その後に行う、苦味マスキング等のコーティングに適した薬物含有の粒子を得ることが出来る範囲であればソリフェナシン又はその塩の一部が溶媒に溶解した懸濁状態のものを用いて、製して得た粒子になるようなものも含まれる。
また、本発明の粒子状組成物の形状については苦味マスキング等のコーティングできる状態のものであれば特に限定されないが、コーティング効率の点より、球状すなわち真球度が1に出来る限り近いものが望ましい。
超音波照射処理とは一概には限定できないが、例えば10kHz〜600kHzの振動数の音波のものが使用できる。また処理時間は初期の結晶化の程度および選択基剤に依存するが、例えば10秒から24時間行うことができる。照射自体は連続で行っても断続して実施してもよく、どの粒子状組成物を製造後どのようなタイミングで行ってもよい。
これら結晶化促進処理としては加湿処理、マイクロ波照射処理、超音波照射処理が好ましい。
また上述の粒子を用いた製剤としては散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、口腔内崩壊錠、ドライシロップ剤等が考えられるが、特に口腔内崩壊錠が好ましい。
本発明において、「口腔内崩壊錠」とは、水を摂取せずに錠剤を服用した場合、口腔内で実質的に唾液のみにより2分以内、好ましくは1分以内、更に好ましくは30秒以内に崩壊する錠剤、その他錠剤に類する製剤を意味する。
「結晶性の糖類」は医薬的に許容されるものであり、例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール等が挙げられる。これらは1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。「非晶質の糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばラクトース、白糖、ブドウ糖、ソルビトール、マルトース、トレハロース等が挙げられ、これらの糖類も1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
本発明の粒子状医薬組成物を含有させた口腔内崩壊錠に用いられる賦形剤の配合量は、本発明の粒子状医薬組成物の配合量及び/または錠剤の大きさ等に応じて適宜調整されるが、通常1錠当たり20〜1000mgが好ましく、更に好ましくは50〜900mgであり、特に100〜800mgが好適である。
その他の任意の添加剤の種類、その配合や配合量等については、前記口腔内崩壊錠の特許文献の記載が本明細書の記述として引用される。
また口腔内崩壊錠に本発明の粒子状医薬組成物を含有させる場合、口腔内崩壊錠全体の0.5〜90重量%相当の粒子状医薬組成物を含有させることができる。好ましくは1〜80重量%であり、さらに好ましくは5〜60重量%相当である。
本発明の粒子状医薬組成物を得るには、ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を、水又はエタノール等の有機溶媒を加えた混合液にスターラーを用いて攪拌溶解又は懸濁させ、薬物溶液を調整する。この場合、薬物溶液に含まれる水と有機溶媒は、任意で設定できる。そして、ソリフェナシンまたはその塩の薬物溶液を粉末(粒子)化させる手法としては、例えば、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、高速攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などが挙げられる。ソリフェナシンを溶解後に粉末(粒子)化できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されないが、特に好ましくは、噴霧乾燥法、流動層造粒法によるものであり、具体的には、適当な核となる添加物粒子(例えば結晶セルロース(粒)、精製白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒等)に薬物溶液を噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得ることが出来る。
国際公開95-20380号公報(米国対応特許第5576014号明細書)に記載された口腔内崩壊錠の場合を挙げると、本発明の粒子状医薬組成物と成形性の低い糖類を混合して、かかる混合物を成形性の高い糖類を結合剤として噴霧して被覆及び/または造粒して、該造粒物を圧縮成形する工程を採用することが出来る。さらに調製した成形物の硬度を高めるために、加湿、乾燥の工程を採用することが出来る。「加湿」は、含まれる糖類の見かけの臨界相対湿度により決定されるが、通常その臨界相対湿度以上に加湿する。例えば、湿度として30〜100RH%であり、好ましくは50〜90RH%である。このときの温度は15〜50℃であることが好ましく、20〜40℃がより好ましい。処理時間は1〜36時間であり、好ましくは12〜24時間である。「乾燥」は、加湿により吸収した水分を除去する工程であれば特に限定されない。例えば乾燥の温度条件として、10〜100℃を設定でき、好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜40℃を設定することができる。処理時間は、0.5〜6時間とすることができ、好ましくは1〜4時間とすることができる。
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC-SL、日本曹達製、以下 HPCと略す) 3.4部を水26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア、旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 1.00m3/min、結合液噴霧速度4.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、ポリエチレングリコール(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度10g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、マルトース(商品名サンマルト-S,三和澱粉工業製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度60℃、流動空気量 0.98m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシエチルセルロース(商品名HEC SE400、ダイセル化学工業製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度60℃、流動空気量 0.98m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、プルロニックF68(商品名Lutrol F68、BASF製) 3.4部をメタノール 26.6部および水26.6部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度54℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製)1部を水 16部とメタノール16部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度45℃、流動空気量 1.0 m3/min、結合液噴霧速度 2.0g/min、噴霧空気圧 2.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 10部を水 70部とメタノール70部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度60℃、流動空気量 1m3/min、結合液噴霧速度6.5g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
コハク酸ソリフェナシンおよびPEGの結晶セルロースへのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部を水 53.2部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度80℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度7.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部をメタノール 26.6部および水26.6部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度54℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。さらに上述の処方比で製した別の薬物溶液を同機器、同条件にてオーバーコーティングすることによって薬物含量の多い(薬物含量50%)の粒子状の粉末を得た。
HPMC(TC5E)を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース2910(商品名TC-5E、信越化学製、以下 HPMC と略す) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度7.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例2]
比較例1で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
PVP(K90)を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ポリビニルピロリドン(商品名PVP K90、BASF製、以下 PVP と略す) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度6g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例4]
比較例3で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
MCを結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品(2)
コハク酸ソリフェナシン 10部、メチルセルロース(商品名メトローズSM100、信越化学製、以下 MC と略す) 3.4部を水 53.2部とメタノール53.2部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度55℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度5g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例6]
比較例5で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
<粉末X線回折結果>
まず、薬物と用いた高分子の相互作用を評価した。
図1に今回実施例で用いたPEGと薬物、比較例で用いたHPMC,PVPと薬物よりなる噴霧乾燥品の粉末X線回折結果(装置としてRINT 1400:管球Cu、管電圧40 KV 、管電流40 mA、走査速度3000°/min(理学電機)を使用)を示す。対照にコハク酸ソリフェナシンの結晶体およびPEGのみの結果を併記する。その結果、実施例で示したPEGを用いて製したものはいずれもコハク酸ソリフェナシンの結晶体に由来するピークを示しており、粉末中の薬物が結晶で存在することが確認できた。それに対して比較例に示したサンプルは非晶質特有のハローパターンを示しており、非晶質状態で存在していることが明らかとなった。
さらに、図2には今回実施例で示したPEGを用いたセルフィアへのコーティング品(実施例3)および比較例1で示したHPMCを用いたコーティング品の粉末X線回折結果(装置としてRINT 2000:管球Cu、管電圧50 KV 、管電流300 mA、走査速度60000°/min(理学電機)を使用)を示す。図に示すようにコーティング品においても、PEGを用いたサンプルはソリフェナシン由来の結晶ピークが確認できた。
これら粒子状組成物の安定性予試験結果を表1、2に示す。経時保存後の分解物量は高速液体クロマトグラフィー法により測定し、得られた個々の分解物量のうちの最大値を示す(主分解物であるF1の生成量)。過酷な条件である40℃75%RH下での試験において、比較例1で示したHPMCの場合であるが、加湿処理をしない場合、保存開始時 0.04%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.34%と保存開始時の8倍量となる分解物が認められた。また、比較例3で示したPVPの場合であるが、加湿処理をしない場合、経時変化2ヶ月で0.53%と基準である0.4%を上回る分解物が認められた。さらに比較例5で示したMCの場合であるが、加湿処理をしない場合、保存開始時 0.06%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.74%と保存開始時の12倍量となる分解物が認められた。加湿処理をし結晶化を促進させた場合においても比較例2,4,6の分解物量は、実施例に比較して多かった。HPMCを用いた場合は保存開始時 0.07%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.92%と保存開始時の13倍量となる分解物が認められた。さらにMCを用いた場合は保存開始時 1.09%に対して、わずか経時変化2ヶ月で11.75%と保存開始時の11倍量となる分解物が認められた。
また、表3に今回使用した結合剤のTg(無い場合はmp)の値を示し、2ヶ月時点の主分解生成物量(F1(%))とTg(℃)の関係について直線回帰を調べたところ、図3に示すように相関性を示す相関係数の2乗( R2 )が加湿乾燥をしない場合で 0.73、加湿乾燥を施した場合で0.60と良好な正の相関を示した。
コハク酸ソリフェナシンを含有する粒子状組成物の安定性予試験結果
保存条件:40℃75%RH 密栓
包装形態:金属キャップ付HDPE bottle包装
試験項目:類縁物質(主分解物F1生成量,%)
ND:not detected,NT:not tested
コハク酸ソリフェナシンを含有する加湿処理を施した粒子状組成物の安定性予試験結果
保存条件:40℃75%RH 密栓
包装形態:金属キャップ付HDPE bottle包装
試験項目:類縁物質(主分解物F1生成量,%)
**出典[医薬品添加物ハンドブック] 薬事日報社 2001年10月10日発行
***出典「高分子辞典」丸善 平成6年9月20日発行
Claims (14)
- ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有する安定な粒子状医薬組成物。
- ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩の非晶質維持抑制作用を有する結合剤である請求項1記載の医薬組成物。
- 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
- ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させものを用いて得られうる、ソリフェナシン又はその塩の安定な粒子状医薬組成物。
- ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩と非晶質維持抑制作用を有する結合剤である請求項7記載の医薬組成物。
- 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする請求項7又は8記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
- 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
- 更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた請求項1乃至12記載の医薬組成物。
- 請求項1乃至13記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠。
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