JPWO2006070735A1 - ソリフェナシンまたはその塩の安定な粒子状医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、ソリフェナシンまたはその塩の製剤を臨床現場に提供するに当たり、コーティングに適した球形で、かつ、経時的な分解を抑制できる安定なソリフェナシンまたはその塩の粒子状医薬組成物の提供に関する。より詳細には、ソリフェナシンの粒子状組成物の製剤化にあたり、Tgあるいはmpが174℃未満の結合剤を用いて得られうる粒子状医薬組成物に関するものである。また、該粒子状医薬組成物の製造後に結晶化促進処理を加えることで、さらに安定なソリフェナシン又は塩の粒子状組成物を提供することができる。

Description

本発明は、ソリフェナシンまたはその塩と特定の結合剤を用いてなる安定な粒子状医薬組成物及びその製造方法、当該粒子状医薬組成物を含有した口腔内崩壊錠、並びに当該粒子状医薬組成物の安定化方法に関する。
ソリフェナシンは、下記式(I)
Figure 2006070735
で示され、化学名を(1R,3′R)−3′−キヌクリジニル 1−フェニル−1,2,3,4−テトラヒドロ−2−イソキノリンカルボキシレートと称する。
該ソリフェナシンまたはその塩を含む一連のキヌクリジン誘導体が、ムスカリンM3受容体に対する優れた選択的拮抗作用を有し、神経性頻尿、神経因性膀胱、夜尿症、不安定膀胱、膀胱痙縮や慢性膀胱炎等の泌尿器疾患や慢性閉塞性肺疾患、慢性気管支炎、喘息や鼻炎等の呼吸器疾患の予防治療剤として有用であることは報告されている(特許文献1参照)。
該特許文献1の実施例8には、ソリフェナシン塩酸塩の製法が記載されており、アセトニトリル及びジエチルエーテルからなる混合溶媒中で結晶化された結晶が212〜214℃の融点であったこと、比旋光度([α]25 Dが98.1(c=1.00,EtOH))を示したことが記載されている。
しかしながら、ソリフェナシンまたはその塩の非晶質体について、或いはソリフェナシンのコハク酸塩を一般的な製剤化法で製剤化するとき、製造された製剤において主薬であるコハク酸ソリフェナシンが経時的に著しく分解することについては、特許文献1には記載は勿論のこと、示唆すらされていない。
2003年6月に厚生労働省より発表された非特許文献1には、製剤の規格設定、つまり、安定性試験において認められる製剤中の分解生成物(不純物)に関する考え方が記されている。これによると、1日に投与される原薬の量が10 mg 未満の場合には製剤中の分解生成物の安全性確認が必要とされる閾値は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が1.0%あるいは分解生成物の1日総摂取量が50 μg のいずれか低い方であり、1日に投与される原薬の量が10 mg 以上100 mg以下の場合には製剤中の分解生成物の安全性確認が必要とされる閾値は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が0.5%あるいは分解生成物の1日総摂取量200 μg のいずれか低い方と記されている。そのため、一般的に分解生成物の安全性確認をせずに設定することのできる分解性生物量の規格値としては、例えば薬物含量が5 mgの製剤の場合は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が1.0%以下であり、例えば薬物含量が10 mgの製剤の場合は、原薬中に含まれる分解生成物の百分率が0.5%以下である。
現在臨床試験の結果に基づいて市販を予定しているソリフェナシン製剤は、2.5 mg錠、5 mg錠及び10 mg錠であり、それらの製剤が非特許文献1にある安定性を具備する為には、コハク酸ソリフェナシン及びその分解物の総量に対するコハク酸ソリフェナシンの主分解物(以下、F1と略す)の量を0.5%以下に設定すべきであり,より好ましくは製品のロット間や試験時の誤差も含めて0.4%以下に制御する必要があると考えられた。
一方で、ソリフェナシンおよびその塩は種々の溶媒に対して非常に高い溶解度および非常に強い苦味・収斂性を有することが知られている。従って、ソリフェナシン又はその塩の口腔内崩壊錠に含有させる粒子や、散剤等の利便性の高い製剤を開発するためには、苦味・収斂味をマスクする必要があり、高分子基剤を用いたフィルムコーティング方法を適用する必要があった。具体的には、高分子基剤を薬物にフィルムコーティングする場合には均一に薬物表面を被覆する必要があるため、薬物は粒度のそろった球形の微粒子である必要があった。
欧州特許第801067号明細書 医薬審発第0624001号「新有効成分含有医薬品のうち製剤の不純物に関するガイドラインの改定について」
このように、ソリフェナシンまたはその塩の製剤を臨床現場に提供するに当たり、フィルムコーティングに適した球形で、かつ、経時的な分解を抑制できる安定なソリフェナシンまたはその塩の粒子状医薬組成物を提供する必要があった。
課題を解決する手段
本発明者らは、コハク酸ソリフェナシンを頻尿、尿失禁の優れた治療剤として開発するに当たり、流動層造粒法等により通常当業者が行う一般的な結合剤(ポリビニルピロリドン(以下、PVPと略す)又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略す))を用いて薬物コーティングし、得られた製剤を一般的な安定性試験の1つである加速試験条件(40℃,75%RH(相対湿度),ボトル密栓条件)において2ヶ月間に亘って安定性予備試験を行った。その結果、コハク酸ソリフェナシンの残存率低下が認められ、加速試験における最終判断時である保存後6ヶ月後にはコハク酸ソリフェナシン及びその分解物の総量に対するF1(コハク酸ソリフェナシンの酸化体)の生成量が0.4%を超えることが示唆された(詳しくは後述の表1参照のこと)。このような一般的な製剤化によって製薬的に十分な安定性を有する製剤を得ることは困難であることを知った。
このような技術水準下、ソリフェナシン製剤の安定化につき鋭意研究した結果、予想外にも製剤の製造過程において生成した非晶質体のソリフェナシンが、主薬経時的分解の主たる原因であり、一般的な結合剤であるHPMC等の使用がソリフェナシンの非晶質体生成に大きく関与していたことを知った。
一方、ソリフェナシンの苦味・収斂味をマスクした顆粒状物質を得るために、本発明者は、例えば結晶セルロースからなる核粒子に対し、薬物溶液を噴霧して微粒子(粒子状医薬組成物)を調製し、該微粒子に適切な高分子物質でフィルムコーティングを施す方法が有効であると考えた。しかしながら、当該微粒子を調製するためには、ソリフェナシン又はその塩を一度溶解した後に噴霧する必要があるが、その際ソリフェナシンは非晶質化されやすく、また、非晶質体から結晶体に変化する際に分解物が生じるというソリフェナシン特有の問題がすることが判明した。すなわち、ソリフェナシンの一部もしくは全部を溶媒に溶解させた後に粒子状の医薬組成物を製造する場合は、ソリフェナシンの安定性の確保が非常に困難であることがわかった。
このような条件下、まず本発明者らは、ポリエチレングリコール(別名マクロゴール、以下、PEGと略記する場合もある)などの酸化エチレン鎖を有する物質を結合剤として使用するときは、PEG自体が一般的に薬物を非晶質化させる目的で使用される物質であるにも拘わらず、意外にもソリフェナシンが非晶質化に維持することを抑制することによってソリフェナシンの経時的な分解を抑制しうる製剤を創製することを知見した。
そして更に、フィルムコーティングするのに適した安定なソリフェナシン又はその塩の粒子状医薬組成物の創製に当たり、例えば溶解させたソリフェナシンをPEGなどの高分子物質(結合剤)とともに核粒子に噴霧する場合、ソリフェナシンがその後非晶質体を維持しうるかどうかは高分子物質(結合剤)内でのソリフェナシンの流動性に起因するものではないかとの着想を得た。そこで、鋭意検討を行ったところ、核粒子に噴霧する際に用いる結合剤に関し、薬物の流動性に影響を与える可能性がある高分子固有の物性値(ガラス転移点(以下Tgと略す)や融点(以下、mpと略す))に着目したところ、Tgが高い結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては分解の指標となる類縁物質の初期値は低かったにもかかわらず、その後の安定性に関しては不安定であることを見出した。一方、Tgが一定値よりも低い特定の結合剤を用いた粒子状医薬組成物に関しては、意外にも類縁物質の初期値及びその後に生成する類縁物質の値が共に低く安定で、かつ、粒度が均一でかつ球形のフィルムコーティングに適したものであることを見出した。
さらに、鋭意検討した結果、加湿乾燥処理等の結晶化促進処理を施したほうがより安定な粒子状医薬組成物を創製することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
1.ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有する安定な粒子状医薬組成物、
2.ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩の非晶質維持抑制作用を有する結合剤である前記1記載の医薬組成物、
3.結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする前記1又は2記載の医薬組成物、
4.結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
5. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
6. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記3記載の医薬組成物、
7. ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させものを用いて得られうる、ソリフェナシン又はその塩の安定な粒子状医薬組成物、
8. ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩と非晶質維持抑制作用を有する結合剤である前記7記載の医薬組成物、
9. 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする前記7又は8記載の医薬組成物、
10. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
11. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
12. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である前記9記載の医薬組成物、
13. 更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた前記1乃至12記載の医薬組成物、
14. 前記1乃至13記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠、に関するものである。
一般的に、流動性の指標としては高分子中の非晶質体部分に起因するガラス転移点(Tg,単位℃)あるいは軟化点(単位℃)および結晶部分に起因する融点(mp,単位℃)といった物質固有の熱力学的パラメータを用いることが多い。これらの値は物質の熱力学的な状態変化を示す温度であるが, Tg未満の温度では、分子の運動は抑制されるため、結晶状態に近い状態もしくはガラス状態をとり可塑性が低下しやすいのに対して,物質の温度がTg以上にある場合、分子の活動度は高まり、ゴム状になって柔軟性が増す。さらに温度の上昇によって高分子中の結晶部分が壊れて流動性を示すようになるのが高分子の融解である。このことを踏まえると、ある温度において非晶質状態の薬物が高分子中に存在していた場合,その高分子のTgが高いほど高分子自体が流動しにくいため、初期の状態である非晶質として存在しやすく、逆に低い高分子ほど結晶析出が早いことを意味している(Int. J. Pharm. 282(2004)151-162)。一方、低分子化合物については物質構造が結晶性のためTgを持たないことが多いが、熱運動性の変化を示すパラメーターという点で、低分子化合物については融点を指標として採用し、高分子については、変化がより早く出現する温度のTgを採用した。
また、本発明は、
15. ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有してなる医薬組成物を、結晶化促進処理することにより、ソリフェナシン又はその塩を安定化させる方法、
16. ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有してなる安定な粒子状医薬組成物を、結晶化促進処理することにより、ソリフェナシン又はその塩の非晶質体を結晶に転移する方法、
に関する。
以下に、本発明組成物につき詳述する。
本発明において使用される「ソリフェナシンの塩」とは、特許文献1に記載されたソリフェナシンの塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩や四級アンモニウム塩を挙げることができる。中でも、ソリフェナシンのコハク酸塩が、医薬品として提供する上で好ましい。
本発明に用いられる「ソリフェナシンまたはその塩」は、上記特許文献1に記載された方法により、或いはそれに準じて、或いは常法によって、容易に入手可能である。
ソリフェナシンまたはその塩の「結晶」あるいは「結晶体」とは、字義通り結晶学的に結晶構造を有するソリフェナシン又はその塩を意味する物質の意味であるが、本発明においては、製剤中に製品の安定化に影響を与えない範囲内で存在するときソリフェナシンの著しい経時的分解性を示す「非晶質体」とは異なる物質を意味し、一方、本発明においてソリフェナシンまたはその塩の「非晶質」あるいは「非晶質体」とは、結晶学的に非晶質の構造を有する物質の意味であるが、本発明においては、製剤中に製品の安定化に影響を与えない範囲以上存在するときソリフェナシンの経時的分解性の極めて少ない「結晶」あるいは「結晶体」とは異なる物質を意味する。
本発明に用いられるソリフェナシン又はその塩の配合量は、通常薬物の種類あるいは医薬用途(適応症)により適宜選択されるが、治療学的に有効な量あるいは予防学的に有効な量であれば特に制限されない。具体的には、ソリフェナシンまたはその塩の一日量として0.01 mg〜100 mgであり、好ましくは0.5 mg〜50 mgであり、より好ましくは、0.5 mg〜10 mgであり、最も好ましくは0.5 mg〜4 mgである。
また、本発明の口腔内崩壊錠におけるソリフェナシンまたはその塩の配合量は、投与単位製剤当たりの有効量を含有していれば良いが、好ましくは0.001重量%〜97重量%であり、より好ましくは0.05重量%〜50重量%であり、更に好ましくは0.05重量%〜10重量%であり、最も好ましくは0.05重量%〜4重量%である。
本発明に用いられる「ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤」とは、ソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制させうる結合剤を意味し、具体的には非晶質体維持抑制作用によりソリフェナシン又はその塩の経時的分解を抑制させうる結合剤のことである。また、単独ではソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有さない結合剤、例えばHPMCやPVPなどの結合剤であっても、結合剤としての作用を強化する目的で、本発明に用いられる結合剤と一緒に用いる場合は、本発明の課題である製剤の安定性の規格設定を超えない範囲において使用することが出来る。
本発明でいう「非晶質維持抑制作用」の意味としては、非晶質体の状態で存在させにくくさせる作用、及び/又は非晶質体から結晶へ転移させやすくしうる作用のことをいう。
また、本発明に用いられるソリフェナシン又はその塩の安定化作用又は非晶質体維持抑制作用を有する結合剤としては、ソリフェナシンのF1の量を0.5%以下にさせうる結合剤であり、さらに好ましくはF1の量を0.4%以下にさせうる結合剤である。具体的には、Tgもしくはmpの範囲が174℃未満のものであり、好ましくは0℃以上174℃未満のものであり、より好ましくは0℃以上156℃未満のものであり、更に好ましくは0℃以上137℃未満である。最も好ましくは10℃以上137℃未満である。結合剤としての種類として具体的には、Tgが前記範囲未満であれば特に制限されるもので無いが、好ましくは酸化エチレン鎖を有する物質、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、スターチ及びマルトースである。但し、製造法上の観点からいうと、上記結合剤のうちポリビニルアルコール、メタアクリル酸コポリマー、アミノアルキルメタアクリレートコポリマー、スターチは結合力が弱く粒子へのコーティングは難しいことが想定されるため、より好ましくはPEG、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーなどの酸化エチレン鎖を有する物質、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースであり、更に好ましくは、PEG、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ヒドロキシプロピルセルロースであり、特に好ましくはPEG、ヒドロキシプロピルセルロースであり、最も好ましくはPEGである。これらの結合剤は、その添加によりソリフェナシンまたはその塩の非晶質化を抑制する本発明の目的を達成するものである限り、その分子量種、重合度等には特に限定はないが、分子量種では重量平均分子量が400〜1,000,000の範囲が好ましく、さらに、好ましくは重量平均分子量が2,000〜200,000の範囲である。また、上記に記載した結合剤は2種以上の結合剤を一緒に使用することが出来る。
ここでいう酸化エチレン鎖を有する物質は、酸化エチレン鎖を有していれば特に限定はないが、その添加によりソリフェナシンまたはその塩の非晶質化を抑制する本発明の目的を達成するものである限り、その分子量種、重合度等には特に限定はないが、分子量種では重量平均分子量が400〜1,000,000の範囲が好ましく、さらに、好ましくは重量平均分子量が2,000〜200,000の範囲である。酸化エチレン鎖を有する物質は1種又は2種以上のものを混合して用いても良い。本発明において、酸化エチレン鎖をもつ物質として具体的には、PEG、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられるが、これらの中でも本発明においては、PEG、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーが好ましく、特にPEGが好ましい。PEGとしては、常温で固形のPEGが好適である。具体的には、マクロゴール 4000(日局、分子量2600〜3800、商品名:マクロゴール4000/三洋化成工業、日本油脂、ライオン等)、マクロゴール6000(日局、分子量7,300〜9,300、商品名:マクロゴール6000/三洋化成工業、日本油脂、ライオン等)、マクロゴール 20000(日局、分子量15,000〜25,000、商品名:マクロゴール20000/三洋化成工業、日本油脂、ライオン等)、ポリエチレングリコール8000(USP/NF、分子量7,000〜9,000、商品名:Polyethylene glycol 8000/Dow Chemical等)などが挙げられる。PEGの好ましい重量平均分子量としては、400〜40,000の範囲であり、より好ましくは2,000〜25,000の範囲であり、さらに好ましくは2,000〜10,000の範囲である。
本発明のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマーとは、酸化プロピレンと酸化エチレンの共重合物であり、その組成比により種々のものが存在するが、ソリフェナシン又はその塩の非晶質化を抑制する性質を有する組成比のものであればよい。具体的には、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール及びポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール(別名プルロニックF68)などが使用される。
本発明でいう「ソリフェナシン又はその塩とソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させたもの」とは、ソリフェナシン又はその塩を水などの溶媒に溶解したものと一緒に、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を溶解させたものを意味するが、必ずしもソリフェナシン又はその塩の全部が溶媒に溶解している必要はなく、その後に行う、苦味マスキング等のコーティングに適した薬物含有の粒子を得ることが出来る範囲であればソリフェナシン又はその塩の一部が溶媒に溶解した懸濁状態のものを用いて、製して得た粒子になるようなものも含まれる。
本発明における、ソリフェナシン又はその塩とソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解させたものを「用いて得られうる」組成物とは、苦味マスキング等のコーティングに適した薬物含有の粒子のことであり、例えば結晶セルロースのような核粒子に溶液状の薬物を噴霧コーティングして得られるような組成物や、液状の薬物を噴きつけるわけでなく不溶性の核粒子とこれら共溶解させたものを混合した後に薬物を析出させて不溶性核粒子の周囲に均一に薬物を配置させて得られうる組成物などが挙げられる。また、核粒子を用いずに行う方法で製したものとしては、例えば薬物および結合剤の溶液を噴霧乾燥あるいは凍結乾燥させて得られた粉自体が挙げられ、これらを苦味マスキング等に用いる薬物含有の粒子に用いることができる。但し、製造上の効率を考慮すると、核粒子にソリフェナシン又はその塩とソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解させものを噴霧コーティングして得られうるような組成物が好ましい。
本発明にいう「安定な粒子状医薬組成物」とは、ソリフェナシンまたはその塩等を用いて得られうる粒子で、かつ、経時的分解を抑制させた安定な粒子であれば特に限定はない。ここでいう「安定な」とは、具体的にはソリフェナシン又はその塩のF1生成量が0.5%以下、より好ましくは0.4%以下である粒子を意味する。また、本発明の医薬組成物が顆粒剤のような粒子の場合、その粒子状医薬組成物の粒径は、最長径が2mm以下であれば特に制限されない。口腔内崩壊錠に含有させる場合に関しては、服用時に砂のようなザラツキ感を不快に感じなければ特に限定されないが、好ましくは、平均粒子径は350μm以下に調製される。より好ましい平均粒子径は、1〜350μmであり、特に好ましくは20〜350μmである。粒度分布の観点から言えば、苦味マスキング等のコーティングするのに適した粒子であれば特に限定されないが、好ましくは1〜350μmに全重量の80%が分布し、より好ましくは50〜300μmに全重量の80%が分布し、特に好ましくは、100〜250μmに全重量の80%が分布するようなものである。
また、本発明の粒子状組成物の形状については苦味マスキング等のコーティングできる状態のものであれば特に限定されないが、コーティング効率の点より、球状すなわち真球度が1に出来る限り近いものが望ましい。
本発明の粒子状医薬組成物が顆粒剤の場合、当該粒子状医薬組成物における結合剤の配合量は、ソリフェナシンまたはその塩のコーティング可能な量でかつ本発明の目的を達成するものである限り特に制限されないが、好ましくは、粒子状医薬組成物全体の0.01〜91重量%であり、さらに好ましくは0.5〜75重量%である。最も好ましい配合量は5〜50重量%である。また、本発明の医薬組成物が顆粒剤のような粒子の場合の結合剤の配合量を、結晶体及び非晶質体のソリフェナシンまたはその塩の1重量部に対して考えると、好ましくは1〜1,000重量%の割合であり、より好ましくは5〜500重量%の割合であり、さらに好ましくは10〜100重量%の割合である。
本発明の粒子状医薬組成物は、溶液状態のソリフェナシンおよびその塩より製するが、核粒子にソリフェナシン溶液を噴霧コーティングさせる場合、当該核粒子として、例えば塩化ナトリウム、微結晶セルロース、炭酸カルシウム、乳糖、マルトース、マンニトール、好ましくは、微結晶セルロース、乳糖、マンニトール等が挙げられる。より好ましくは、微結晶セルロース、乳糖である。本発明においてこれらの物質群から1種又は2種以上のものを組み合わせて使用することが出来る。
またここでいう結晶化促進処理とは結晶化を促進する処理であれば特に制限は無いが、例えば加湿処理、マイクロ波照射処理、超音波照射処理、低周波照射処理、熱電子照射処理などが挙げられる。また加湿処理とは例えば温度20〜30℃、湿度60〜85%、6〜24時間の加湿処理を行った後に、温度30〜40℃、湿度30〜40%RH、2〜6時間の乾燥を行うことをいう。マイクロ波照射処理とは一概には限定できないが、例えば10MHz〜25GHzの波長のものが使用できる。また処理時間は初期の結晶化の程度および選択基剤に依存するが、例えば10秒から60分行うことができる。照射自体は連続で行っても断続して実施してもよく、どの粒子状組成物を製造後どのようなタイミングで行ってもよい。
超音波照射処理とは一概には限定できないが、例えば10kHz〜600kHzの振動数の音波のものが使用できる。また処理時間は初期の結晶化の程度および選択基剤に依存するが、例えば10秒から24時間行うことができる。照射自体は連続で行っても断続して実施してもよく、どの粒子状組成物を製造後どのようなタイミングで行ってもよい。
これら結晶化促進処理としては加湿処理、マイクロ波照射処理、超音波照射処理が好ましい。
本発明の粒子状医薬組成物には、さらに各種医薬賦形剤が適宜使用され、製剤化される。かかる医薬賦形剤としては、乳糖などが挙げられる。また、その他の添加剤としては製薬的に許容され、かつ薬理的に許容されるものであれば本発明の目的を損なわない範囲で使用できる。例えば、崩壊剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、緩衝剤、抗酸化剤、界面活性剤などを使用でき、特に制限されることはない。例えば崩壊剤としては、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、カルメロースカルシウム、カルメロースナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。酸味料としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸などが挙げられる。発泡剤としては、例えば重曹などが挙げられる。人工甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。香料としては、例えばレモン、レモンライム、オレンジ、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、ステアリン酸などが挙げられる。着色剤としては、例えば黄色三二酸化鉄、赤色三二酸化鉄、食用黄色4号、5号、食用赤色3号、102号、食用青色3号などが挙げられる。緩衝剤としては、クエン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、アスコルビン酸またはその塩類、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、アスパラギン酸、アラニン、アルギニンまたはその塩類、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、リン酸、ホウ酸またはその塩類などが挙げられる。抗酸化剤としては、例えばアスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、酢酸トコフェロール、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、などが挙げられる。界面活性剤としては、例えばラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル(ポリソルベート80)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。医薬賦形剤としては、1種または2種以上組合せて適宜適量添加することができる。
本発明でいう「非晶質体含有量」とは、ソリフェナシンまたはその塩の非結晶体と結晶体を合わせた全体に対する割合を意味するものである。
また上述の粒子を用いた製剤としては散剤、顆粒剤、丸剤、錠剤、カプセル剤、口腔内崩壊錠、ドライシロップ剤等が考えられるが、特に口腔内崩壊錠が好ましい。
以下に本発明粒子状医薬組成物を含有させた口腔内崩壊錠に関して説明する。
本発明において、「口腔内崩壊錠」とは、水を摂取せずに錠剤を服用した場合、口腔内で実質的に唾液のみにより2分以内、好ましくは1分以内、更に好ましくは30秒以内に崩壊する錠剤、その他錠剤に類する製剤を意味する。
本発明の粒子状医薬組成物はこのような口腔内崩壊錠に含有させることができ、例えば、国際公開95-20380号公報(米国対応特許第5576014号明細書)、国際公開2002-92057号公報(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)、米国特許第4305502号明細書、米国特許第4371516号明細書、特許第2807346号(米国対応特許第5466464号明細書)、特開平5-271054号公報(欧州対応特許第553777号明細書)、特開平10-182436号公報(米国対応特許第5958453号明細書)、特許第3412694号(米国対応特許第5223264号明細書)、及び、国際公開パンフレットWO98/02185(米国対応特許第6287596号明細書)に記載の公知の口腔内崩壊錠の薬物として該粒子状医薬組成物を適用し、該公報に記載の口腔内崩壊錠基剤を用い、該公報記載の方法に従い、口腔内崩壊錠とすることができる。このように粒子状医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠としては、特許第3412694号(米国対応特許第5223264号明細書)、特開2003-55197に記載された口腔内崩壊錠が挙げられ、本発明の粒子状医薬組成物はこれらの口腔内崩壊錠に含有させることができる。
上に例示したように口腔内崩壊錠は、一般に鋳型タイプ、湿製タイプ、通常打錠タイプに大別され、本発明の粒子状医薬組成物はいずれのタイプの口腔内崩壊錠に含有させてもよい。鋳型タイプの口腔内崩壊錠は、例えば特許第2807346号(米国対応特許第5466464号明細書)にも開示されているように、賦形剤等の溶液または懸濁液を鋳型に充填し、乾燥して製するものである。本発明の粒子状医薬組成物を含有する鋳型タイプの口腔内崩壊錠は、例えば本発明の粒子状医薬組成物、糖類などの賦形剤、及びゼラチン、寒天などの結合剤の溶液または懸濁液をPTPポケットに充填後、凍結乾燥、減圧乾燥、低温乾燥などの方法により水分を除去して製することができる。湿製タイプの口腔内崩壊錠は特許3069458号(米国対応特許第5501861号明細書、米国対応特許第5720974号明細書)に示されているように、糖類等の賦形剤を湿潤させ、低圧で打錠した後、乾燥して製するものである。従って、例えば本発明の粒子状医薬組成物、糖類などの賦形剤を少量の水あるいは水とアルコールの混液で湿潤させ、この湿潤混合物を低い圧力で成形後、乾燥させ製することができる。
通常打錠タイプの場合は、国際公開95-20380号公報(米国対応特許第5576014号明細書)、国際公開2002-92057号公報(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)、特開平10-182436号公報(米国対応特許第5958453号明細書)、特開平9-48726号公報特開平8-19589号公報(米国対応特許第5672364号明細書)、特許2919771号、特許3069458号(米国対応特許第5501861号明細書、米国対応特許第5720974号明細書)に開示されているように、通常の打錠工程を経て調製するものである。本発明の粒子状医薬組成物を含有する通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば国際公開95-20380号公報(米国対応特許第5576014号明細書)、特許2919771号に開示されているように、本発明の粒子状医薬組成物と成形性の低い糖類などの賦形剤とを、成形性の高い糖類または水溶性高分子の溶液または懸濁液を用いて造粒後、この造粒物を圧縮成形して圧縮成形物とするか、さらに該圧縮成形物を加湿乾燥して口腔内崩壊錠を製することができる。また、国際公開99-47124号公報(米国対応特許第6589554号明細書)に示されているような通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば本発明の粒子状医薬組成物と結晶性の糖類などの賦形剤と、非晶質の糖類を用いて圧縮成形後、加湿乾燥して口腔内崩壊錠を製することができる。さらに、国際公開2002-92057号公報(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)に開示されているような通常打錠タイプの口腔内崩壊錠を調製するには、例えば本発明の粒子状医薬組成物と賦形剤と、前記賦形剤よりも融点の低い糖類との混合物を圧縮成形後、加熱して、融点の低い糖類の溶融固化物により架橋を形成して口腔内崩壊錠を調製することができる。このような加湿乾燥あるいは加熱処理により、口腔内崩壊錠の錠剤強度を向上させることができる。
本発明の口腔内崩壊錠に用いられる賦形剤としては、一般的な賦形剤も使用できるが、特に製薬学的に許容される糖類を用いるのが好ましく、糖類の成形性を利用する技術においては成形性の低い糖類、糖類の結晶/非晶質性と加湿乾燥による錠剤強度の向上技術を用いるときは結晶性の糖類、糖類の溶融固化物による架橋化技術を使用する場合は、一般的な賦形剤の他、融点の高い糖類が使用することができる。
「成形性の低い糖類」とは、例えば糖類150mgを直径8mmの杵を用いて打錠圧10〜50kg/cm2で打錠したとき、錠剤の硬度が0〜2kpを示すものを意味し、また「成形性の高い糖類」とは同様の方法による硬度が、2kp以上を示すものを意味する。成形性の低い糖類は、医薬的に許容されるものであり、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、白糖、キシリトール、エリスリトール等を挙げることが出来る。これらの1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。成形性の高い糖類は、医薬的に許容されるものであり、例えばマルトース、マルチトール、ソルビトール、トレハロース等を挙げることが出来る。かかる糖類についても、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
「結晶性の糖類」は医薬的に許容されるものであり、例えばマンニトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール等が挙げられる。これらは1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。「非晶質の糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばラクトース、白糖、ブドウ糖、ソルビトール、マルトース、トレハロース等が挙げられ、これらの糖類も1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
また、「融点の低い糖類よりも融点の高い賦形剤」は、医薬的に許容されるものであり、例えばキシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、ブドウ糖、白糖、マルチトール、マンニトール等から選択することが出来る。これらの1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。「融点の低い糖類」は、医薬的に許容されるものであり、例えばキシリトール、トレハロース、マルトース、ソルビトール、エリスリトール、ブドウ糖、白糖、マルチトール、マンニトール等から選択することが出来る。かかる糖類についても、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。口腔内崩壊錠用結合剤としては、マルチトール、コポリビドン、エリスリトール等を挙げることが出来る。かかる結合剤についても、1種または2種以上を適宜組み合わせて用いることも可能である。
成形性の高い糖類に代えて水溶性高分子を使用するときは、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、ポリビニルアルコール、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが好適である。
本発明の粒子状医薬組成物を含有させた口腔内崩壊錠に用いられる賦形剤の配合量は、本発明の粒子状医薬組成物の配合量及び/または錠剤の大きさ等に応じて適宜調整されるが、通常1錠当たり20〜1000mgが好ましく、更に好ましくは50〜900mgであり、特に100〜800mgが好適である。
また、成形性の高い糖類、水溶性高分子、非晶質の糖類、融点の低い糖類の配合量は、個々の技術によって適宜選択して使用すれば特に制限されないが、賦形剤の重量に対して0.5〜40重量%が好ましく、更に好ましくは2〜30重量%であり、特に5〜20重量%であるか、製剤全体に対し1〜20重量%が好適である。
その他の任意の添加剤の種類、その配合や配合量等については、前記口腔内崩壊錠の特許文献の記載が本明細書の記述として引用される。
また口腔内崩壊錠に本発明の粒子状医薬組成物を含有させる場合、口腔内崩壊錠全体の0.5〜90重量%相当の粒子状医薬組成物を含有させることができる。好ましくは1〜80重量%であり、さらに好ましくは5〜60重量%相当である。
以下に本発明の粒子状医薬組成物の製造法を説明する。
本発明の粒子状医薬組成物を得るには、ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を、水又はエタノール等の有機溶媒を加えた混合液にスターラーを用いて攪拌溶解又は懸濁させ、薬物溶液を調整する。この場合、薬物溶液に含まれる水と有機溶媒は、任意で設定できる。そして、ソリフェナシンまたはその塩の薬物溶液を粉末(粒子)化させる手法としては、例えば、凍結乾燥法、噴霧乾燥法、高速攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法などが挙げられる。ソリフェナシンを溶解後に粉末(粒子)化できる方法であれば、装置、手段とも特に制限されないが、特に好ましくは、噴霧乾燥法、流動層造粒法によるものであり、具体的には、適当な核となる添加物粒子(例えば結晶セルロース(粒)、精製白糖球状顆粒、白糖・デンプン球状顆粒等)に薬物溶液を噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得ることが出来る。
噴霧コーティングする際に使用される装置としては、例えば流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)、スプレードライヤー(DL41、ヤマト化学社製)等が挙げられる。
以下に本発明の粒子状医薬組成物を含有させた口腔内崩壊錠の製造法を説明する。
国際公開95-20380号公報(米国対応特許第5576014号明細書)に記載された口腔内崩壊錠の場合を挙げると、本発明の粒子状医薬組成物と成形性の低い糖類を混合して、かかる混合物を成形性の高い糖類を結合剤として噴霧して被覆及び/または造粒して、該造粒物を圧縮成形する工程を採用することが出来る。さらに調製した成形物の硬度を高めるために、加湿、乾燥の工程を採用することが出来る。「加湿」は、含まれる糖類の見かけの臨界相対湿度により決定されるが、通常その臨界相対湿度以上に加湿する。例えば、湿度として30〜100RH%であり、好ましくは50〜90RH%である。このときの温度は15〜50℃であることが好ましく、20〜40℃がより好ましい。処理時間は1〜36時間であり、好ましくは12〜24時間である。「乾燥」は、加湿により吸収した水分を除去する工程であれば特に限定されない。例えば乾燥の温度条件として、10〜100℃を設定でき、好ましくは20〜60℃、より好ましくは25〜40℃を設定することができる。処理時間は、0.5〜6時間とすることができ、好ましくは1〜4時間とすることができる。
国際公開2002-92057号公報(米国対応特許出願公開第2003/099701号明細書)に記載された口腔内崩壊錠の場合、本発明の粒子状医薬組成物、融点の高い賦形剤、融点の低い糖類を混合して、かかる混合物を口腔内崩壊錠用結合剤で噴霧して被覆及び/または造粒して、該造粒物を圧縮成形することも出来る。噴霧条件としては例えば流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)を用いる場合、ソリフェナシンの溶液濃度はポンプにて送液可能な粘度であれば制限はないが、固形分濃度として0.01〜30%(w/w)が望ましい。噴霧速度は噴霧乾燥できる条件であれば制限はないが、0.1〜20g/minが望ましい。噴霧温度は製品温度として10〜60℃になるように設定できれば特に制限はない。これら噴霧条件は製造スケール、機器種によって異なるが、粒子状組成物となれば特に制限はない。また融点の高い賦形剤と低い糖類を組み合わせる場合、調製した成形物の硬度を高めるために、加熱の工程を採用することが出来る。「加熱」は、含まれる融点の低い糖類の融点により決定されるが、通常低い糖類の融点以上で高い賦形剤の融点未満の温度に加熱する。処理時間は、0.5〜120分とすることが出来、好ましくは1〜60分とすることができる。
また、本発明の粒子状医薬組成物の安定化方法、及び本発明の粒子状医薬組成物におけるソリフェナシン又はその塩の非晶質体を結晶体へ転移させる方法については、上記にようにして製造した本発明の粒子状組成物を上述の結晶化促進処理方法を用いて行うことが出来る。
コハク酸ソリフェナシンの結晶体、PEG8000(商品名マクロゴール6000、三洋化成製)、PEG8000を用いて製したコハク酸ソリフェナシンの噴霧乾燥品、HPMC(商品名TC-5E、信越化学製)を用いて製したコハク酸ソリフェナシンの噴霧乾燥品及びポリビニルピロリドン(商品名PVP K90、BASF製、以下 PVP と略す)を用いて製したコハク酸ソリフェナシンの噴霧乾燥品それぞれの粉末X線回折結果を示すものである。 実施例3で得られたPEG8000(商品名マクロゴール6000、三洋化成製)を用いた結晶セルロース(商品名セルフィア、旭化成製)へのコーティング品及び比較例1で得られたHPMCを用いたコーティング品それぞれの粉末X線回折結果を示すものである。 2ヶ月保存時のソリフェナシンの主分解物F1生成量と併用した結合剤のTg又はmpの関係を示すものである(○:加湿処理なし,●:加湿処理あり)。
本発明におけるソリフェナシンまたはその塩の粒子状医薬組成物について詳細に説明する。以下、実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定解釈されるものではない。
HPC−SL を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシプロピルセルロース(商品名HPC-SL、日本曹達製、以下 HPCと略す) 3.4部を水26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア、旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 1.00m3/min、結合液噴霧速度4.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
実施例1にて得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した本発明の粒子状組成物を得た。
PEG6000を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ポリエチレングリコール(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度10g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
実施例3にて得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した本発明の粒子状組成物を得た。
マルトース を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、マルトース(商品名サンマルト-S,三和澱粉工業製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度60℃、流動空気量 0.98m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
実施例5にて得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した本発明の粒子状組成物を得た。
HEC を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシエチルセルロース(商品名HEC SE400、ダイセル化学工業製) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度60℃、流動空気量 0.98m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
実施例7にて得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した本発明の粒子状組成物を得た。
プルロニックを結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、プルロニックF68(商品名Lutrol F68、BASF製) 3.4部をメタノール 26.6部および水26.6部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度54℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより本発明の粒子状組成物を得た。
コハク酸ソリフェナシンおよびPEGの結晶セルロースへのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製)1部を水 16部とメタノール16部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度45℃、流動空気量 1.0 m3/min、結合液噴霧速度 2.0g/min、噴霧空気圧 2.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
コハク酸ソリフェナシンおよびPEGの結晶セルロースへのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 10部を水 70部とメタノール70部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度60℃、流動空気量 1m3/min、結合液噴霧速度6.5g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
異なる溶媒組成を用いた場合
コハク酸ソリフェナシンおよびPEGの結晶セルロースへのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部を水 53.2部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度80℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度7.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。
コハク酸ソリフェナシンおよびPEGの結晶セルロースへのコーティング品(薬物含量50%)
コハク酸ソリフェナシン 10部、PEG(商品名マクロゴール6000、三洋化成製) 3.4部をメタノール 26.6部および水26.6部にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、結晶セルロース(商品名セルフィア:旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液を結晶セルロースに吸気温度54℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度3.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状の粉末を得た。さらに上述の処方比で製した別の薬物溶液を同機器、同条件にてオーバーコーティングすることによって薬物含量の多い(薬物含量50%)の粒子状の粉末を得た。
[比較例1]
HPMC(TC5E)を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース2910(商品名TC-5E、信越化学製、以下 HPMC と略す) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.94 m3/min、結合液噴霧速度7.0g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例2]
比較例1で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
[比較例3]
PVP(K90)を結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品
コハク酸ソリフェナシン 10部、ポリビニルピロリドン(商品名PVP K90、BASF製、以下 PVP と略す) 3.4部を水 26.6部とメタノール26.6部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度50℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度6g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例4]
比較例3で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
[比較例5]
MCを結合剤としたコハク酸ソリフェナシンの結晶セルロース核粒子へのコーティング品(2)
コハク酸ソリフェナシン 10部、メチルセルロース(商品名メトローズSM100、信越化学製、以下 MC と略す) 3.4部を水 53.2部とメタノール53.2部の混合液にスターラー(MGM-66、SHIBATA製)を用いて攪拌溶解させ薬物溶液を調製した。次に、セルフィア(旭化成製)60部を流動層造粒機(FLO-1、グラット社製)に仕込み、前薬物溶液をセルフィアに吸気温度55℃、流動空気量 0.97m3/min、結合液噴霧速度5g/min、噴霧空気圧 3.0kg/cm2下で噴霧コーティングすることにより粒子状組成物を得た。
[比較例6]
比較例5で得られた粒子状組成物を25℃75% 12時間加湿し、さらに30℃40% 3時間乾燥して結晶化処理を施した粒子状組成物を得た。
[実験例]
<粉末X線回折結果>
まず、薬物と用いた高分子の相互作用を評価した。
図1に今回実施例で用いたPEGと薬物、比較例で用いたHPMC,PVPと薬物よりなる噴霧乾燥品の粉末X線回折結果(装置としてRINT 1400:管球Cu、管電圧40 KV 、管電流40 mA、走査速度3000°/min(理学電機)を使用)を示す。対照にコハク酸ソリフェナシンの結晶体およびPEGのみの結果を併記する。その結果、実施例で示したPEGを用いて製したものはいずれもコハク酸ソリフェナシンの結晶体に由来するピークを示しており、粉末中の薬物が結晶で存在することが確認できた。それに対して比較例に示したサンプルは非晶質特有のハローパターンを示しており、非晶質状態で存在していることが明らかとなった。
さらに、図2には今回実施例で示したPEGを用いたセルフィアへのコーティング品(実施例3)および比較例1で示したHPMCを用いたコーティング品の粉末X線回折結果(装置としてRINT 2000:管球Cu、管電圧50 KV 、管電流300 mA、走査速度60000°/min(理学電機)を使用)を示す。図に示すようにコーティング品においても、PEGを用いたサンプルはソリフェナシン由来の結晶ピークが確認できた。
<安定性予試験結果>
これら粒子状組成物の安定性予試験結果を表1、2に示す。経時保存後の分解物量は高速液体クロマトグラフィー法により測定し、得られた個々の分解物量のうちの最大値を示す(主分解物であるF1の生成量)。過酷な条件である40℃75%RH下での試験において、比較例1で示したHPMCの場合であるが、加湿処理をしない場合、保存開始時 0.04%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.34%と保存開始時の8倍量となる分解物が認められた。また、比較例3で示したPVPの場合であるが、加湿処理をしない場合、経時変化2ヶ月で0.53%と基準である0.4%を上回る分解物が認められた。さらに比較例5で示したMCの場合であるが、加湿処理をしない場合、保存開始時 0.06%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.74%と保存開始時の12倍量となる分解物が認められた。加湿処理をし結晶化を促進させた場合においても比較例2,4,6の分解物量は、実施例に比較して多かった。HPMCを用いた場合は保存開始時 0.07%に対して、わずか経時変化2ヶ月で0.92%と保存開始時の13倍量となる分解物が認められた。さらにMCを用いた場合は保存開始時 1.09%に対して、わずか経時変化2ヶ月で11.75%と保存開始時の11倍量となる分解物が認められた。
一方、実施例1〜7で示したサンプルについては2ヶ月時点の分解物量は加湿処理する、しないにかかわらず、0.2%以下と絶対値が比較例の2分の1から390分の1と値が小さかった。また、変化の度合いも小さいことより製剤中のソリフェナシンは経時的に安定であることが分かった。一方、実施例2,4,6および8に示すように加湿処理をし結晶化を促進させた場合のほうが、ほとんど分解物の増加はなく安定な傾向であることがわかった。
また、表3に今回使用した結合剤のTg(無い場合はmp)の値を示し、2ヶ月時点の主分解生成物量(F1(%))とTg(℃)の関係について直線回帰を調べたところ、図3に示すように相関性を示す相関係数の2乗( R2 )が加湿乾燥をしない場合で 0.73、加湿乾燥を施した場合で0.60と良好な正の相関を示した。
以上、併用した添加剤の熱力学的パラメータが製剤中のソリフェナシン安定性の支配要因であることが明らかである。この現象は前述したように結合剤の流動性すなわちTgに起因し、Tgが高いほど製剤中に存在する非晶質体が非晶質状態として安定に存在しやすいため分解物が生成されやすいと考えられた。
コハク酸ソリフェナシンを含有する粒子状組成物の安定性予試験結果
保存条件:40℃75%RH 密栓
包装形態:金属キャップ付HDPE bottle包装
試験項目:類縁物質(主分解物F1生成量,%)
Figure 2006070735
*HDPE: High Density Polyethylene
ND:not detected,NT:not tested
コハク酸ソリフェナシンを含有する加湿処理を施した粒子状組成物の安定性予試験結果
保存条件:40℃75%RH 密栓
包装形態:金属キャップ付HDPE bottle包装
試験項目:類縁物質(主分解物F1生成量,%)
Figure 2006070735
各結合剤のTgガラス転移点(℃)
Figure 2006070735
*融点(mp,℃)にて代用
**出典[医薬品添加物ハンドブック] 薬事日報社 2001年10月10日発行
***出典「高分子辞典」丸善 平成6年9月20日発行
本発明の技術的な特徴とするところは、ソリフェナシン又はその塩を含有する粒子状医薬組成物において、特定の結合剤を用いて製することで安定な粒子状医薬組成物を製造でき、必要に応じて加湿乾燥等の結晶化促進処理を行うことによって、経時的に更に安定な粒子状医薬組成物を提供することが可能となった点に産業上の顕著な効果を有する。また本発明による粒子状医薬組成物を用いることで、頻尿・尿失禁の優れた医薬品としての開発が切望されているソリフェナシンまたはその塩の種々の安定な製剤の提供を可能にする技術として有用である。

Claims (14)

  1. ソリフェナシン又はその塩、及びソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を含有する安定な粒子状医薬組成物。
  2. ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩の非晶質維持抑制作用を有する結合剤である請求項1記載の医薬組成物。
  3. 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする請求項1又は2記載の医薬組成物。
  4. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
  5. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
  6. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項3記載の医薬組成物。
  7. ソリフェナシン又はその塩と、ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤を共溶解及び/又は懸濁させものを用いて得られうる、ソリフェナシン又はその塩の安定な粒子状医薬組成物。
  8. ソリフェナシン又はその塩の安定化作用を有する結合剤が、ソリフェナシン又はその塩と非晶質維持抑制作用を有する結合剤である請求項7記載の医薬組成物。
  9. 結合剤が、そのガラス転移点あるいは融点が174℃未満である結合剤であることを特徴とする請求項7又は8記載の医薬組成物。
  10. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース、メタアクリル酸コポリマーL、メタアクリル酸コポリマーLD、メタアクリル酸コポリマーS、コーンスターチ、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタアクリレートコポリマーRS、及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
  11. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びマルトースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
  12. 結合剤が、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、及びヒドロキシプロピルセルロースからなる群より選択された1種又は2種以上の物質である請求項9記載の医薬組成物。
  13. 更に結晶化促進処理を行うことにより安定性を高めた請求項1乃至12記載の医薬組成物。
  14. 請求項1乃至13記載の医薬組成物を含有する口腔内崩壊錠。
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