JPWO2006064788A1 - 口腔内洗浄液 - Google Patents

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Abstract

例えば白金コロイドなどの遷移金属微粒子の水性分散液を含む口腔内洗浄液。口腔内粘膜や歯周組織などの障害の原因となる活性酸素を簡便かつ迅速に除去できる。

Description

本発明は口腔内洗浄液に関する。より詳しくは、本発明は口腔内の活性酸素を簡便かつ速やかに除去できる口腔内洗浄液に関するものである。
口腔内の疾患として代表的な歯周病は病原菌感染により炎症が生じ、そこで産生される活性酸素が酸化ストレスとなる。歯周病では、この酸化ストレスに炎症メディエーターの作用が加わって歯肉組織破壊及び歯槽骨破壊が生じるところから、歯牙喪失の大きな原因となっている。また、近年、美容の観点から歯牙の着色や変色に対する漂白治療が歯科分野において行なわれている。歯牙の漂白は、過酸化水素、過酸化尿素、次亜塩素酸などの漂白剤を歯牙表面に接触させて一定時間保持することによって行われる。上述の漂白剤はいずれも活性酸素などのフリーラジカルを発生させることから、歯肉や口腔粘膜に障害を発生させる可能性がある。
口腔内の活性酸素を消去する組成物として、特許第3582537号にはアスコルビン酸リン酸エステルマグネシウムの活性酸素消去効果及び粘膜吸収性を向上させた口腔用組成物が開示されている。この刊行物には、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム塩とオイゲノールとを併用し、さらにメントールを併用すると、より効果的に歯肉炎が改善されることが教示されている。特開2004-231602号公報には、フリーラジカル消去活性を有する生薬抽出物を含み抗酸化作用を有する口腔用組成物が開示されている。この組成物は好ましくはコエンザイムQ10を含み、歯肉マッサージに用いることができる。また、特開2003-176225号公報には、イネ科イネ属植物抽出物やヤマモモ科ヤマモモ属植物抽出物などの1種又は2種以上を含む口腔用組成物が開示されている。しかしながら、これらの刊行物には遷移金属が口腔内の活性酸素を消去するために有効であることを示唆する記載はない。
特開2004-107231号公報には、歯牙漂白剤による漂白処理に対して歯肉や口腔 粘膜を防御するためのフリーラジカル消去物質を含む口腔用組成物が開示されている。フリーラジカル消去物質としては、典型的には酵素系抗酸化物質又は非酵素系抗酸化物質が用いられ、具体的にはカタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、 ペルオキシダーゼ等の酵素系抗酸化物質、あるいはビタミンE、ビタミンC、グルタチオン、カロチノイド、フラボノイド、ユビキノン、γ−オリザノール、メタロチオ ネイン、亜硫酸ナトリウム、クエン酸、システイン、糖類、鉄キレート剤、尿酸、セルロプラスミン、トランスフェリン、フェリチン、ハプトグロビン、アルブ ミン、ピリルビン、ピルビン酸、レシチン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、亜硝酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、ハイドロキノン等の非酵素系抗酸化物質が例示されている。しかしながら、この刊行物には、遷移金属自体は抗酸化物質として教示されていない。
一方、国際公開WO2004/73723には、貴金属の微粒子を含み、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患、リウマチ性疾患、虚血性心疾患、ストレス性潰瘍、皮膚炎、動脈硬化症、及び高脂血症の予防及び/又は治療のための医薬が開示されているが、この刊行物には、上記医薬の有効成分である貴金属微粒子が口腔内洗浄液の有効成分として有効であることは示唆ないし教示されていない。
本発明の課題は、口腔内粘膜や歯周組織などの障害の原因となる活性酸素を簡便かつ迅速に除去できる口腔内洗浄液を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、遷移金属、好ましくは貴金属又はその合金の微粒子、特に好ましくは白金コロイドを水性媒体中に含む口腔内洗浄液を用いると、極めて効率的かつ簡便に口腔内の活性酸素を除去できることを見出した。本発明は上記の知見を基にして完成されたものである。
すなわち、本発明は、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を含む口腔内洗浄液が提供される。本発明の好ましい態様によれば、貴金属微粒子の水性分散液を含む上記口腔内洗浄液;貴金属貴金属がルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金からなる群から選ばれる1種又は2種以上の貴金属である上記の口腔内洗浄液;貴金属が白金である上記の口腔内洗浄液;貴金属の微粒子が平均粒径10 nm以下の白金コロイドである上記の口腔内洗浄液;及び口内炎の予防及び/又は治療に用いる上記の口腔内洗浄液が提供される。
別の観点からは、上記の口腔内洗浄液の製造のための遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液の使用;及び、口腔内の活性酸素の除去方法であって、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を用いて例えば歯周、歯牙、舌、又は粘膜などの口腔内組織を洗浄する工程を含む方法が本発明により提供される。
本発明の口腔内洗浄液の作用を示した図である。
本発明の口腔内洗浄液は遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液を含むことを特徴としている。遷移金属とは、不完全なd又はf亜殻をもつ金属、又はそのような亜殻をもつ陽イオンを生じる金属のことであり、周期表の3A〜7A、8、及び1Bの各属の金属を含む。鉄、銅、モリブデン、白金などを例示することができる。貴金属の種類は特に限定されず、金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジム、又は白金のいずれを用いてもよいが、好ましい貴金属はルテニウム、ロジウム、パラジウム、又は白金である。遷移金属、好ましくは貴金属の微粒子は2種以上の貴金属を含んでいてもよい。また、少なくとも1種の遷移金属、好ましくは貴金属を含む合金の微粒子、あるいは1種又は2種以上の遷移金属、好ましくは貴金属の微粒子と、遷移金属、好ましくは貴金属以外の1種又は2種以上の金属の微粒子を含む混合物を用いることもできる。例えば、金及び白金からなる合金などを用いてもよい。これらのうち好ましいのは白金又は白金を含む合金であり、特に好ましいのは白金である。
遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子としては、比表面積が大きく、表面反応性に優れたコロイド状態を形成可能な微粒子が好ましい。微粒子の粒径は特に限定されないが、50 nm以下の平均粒径を有する微粒子を用いることができ、好ましくは平均粒径が20 nm以下、さらに好ましくは平均粒径が10 nm以下、特に好ましくは平均粒径が1〜6 nm程度の微粒子を用いることができる。さらに細かな微粒子を用いることも可能である。
遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の製造方法は種々知られており(例えば、特公昭57-43125号公報、特公昭59-120249号公報、及び特開平9-225317号公報、特開平10-176207号公報、特開2001-79382号公報、特開2001-122723号公報など)、当業者はこれらの方法を参照することによって微粒子を容易に調製することができる。例えば、貴金属微粒子の製造方法として、沈殿法又は金属塩還元反応法と呼ばれる化学的方法、あるいは燃焼法と呼ばれる物理的方法などを利用できる。本発明の口腔内洗浄液の有効成分としては、いずれの方法で調製された微粒子を用いてもよいが、製造の容易性と品質面から金属塩還元反応法で調製された微粒子を用いることが好ましい。以下、本発明の好ましい態様として貴金属微粒子の製造方法について言及するが、本発明の範囲は貴金属を用いる場合に限定されることはない。
金属塩還元反応法では、例えば、水溶性若しくは有機溶媒可溶性の貴金属塩又は貴金属錯体の水溶液又は有機溶媒溶液を調製し、この溶液に水溶性高分子を加えた後、溶液のpHを9〜11に調節し、不活性雰囲気下で加熱還流することにより還元して金属微粒子を得ることができる。貴金属の水溶性又は有機溶媒可溶性の塩の種類は特に限定されないが、例えば、酢酸塩、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、スルホン酸塩、又はリン酸塩などを用いることができ、これらの錯体を用いてもよい。
金属塩還元反応法に用いる水溶性高分子の種類は特に限定されないが、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、シクロデキストリン、アミロペクチン、又はメチルセルロースなどを用いることができ、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。好ましくはポリビニルピロリドンを用いることができ、より好ましくはポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)を用いることができる。また、水溶性高分子に替えて、あるいは水溶性高分子とともに各種の界面活性剤、例えばアニオン性、ノニオン性、又は脂溶性等の界面活性剤を使用することも可能である。還元をアルコールを用いて行う際には、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、n-アミルアルコール、又はエチレングリコール、有機酸などが用いられる。もっとも、貴金属微粒子の調製方法は上記に説明した方法に限定されることはない。
本発明の口腔内洗浄液としては、上記の方法により調製されたコロイド状態の遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子を含む水性分散物をそのまま用いてもよい。遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子が会合してクラスターを形成した水性分散液を本発明の口腔内洗浄液として用いてもよい。上記遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の水性分散液は、分散媒が実質的に水のみからなることが好ましいが、コロイド状態の微粒子の調製に用いられる上記の水性高分子や界面活性剤などを1種又は2種以上含んでいてもよい。また、遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の安定分散を阻害せず、かつ口腔内洗浄液として許容可能な範囲でエタノールやグリセリンなどの水と混じりあう有機溶媒を少量含んでいてもよい。
本発明の口腔内洗浄液に含まれる遷移金属微粒子、好ましくは貴金属微粒子の濃度は特に限定されないが、例えば、0.1μM〜100μM程度、好ましくは0.5μM〜10μM程度、特に好ましくは1μM〜5μM程度である。短時間の適用又は少量の適用により十分な効果を達成しようとする場合には10μM以上の濃度にするのがよい。本発明の口腔内洗浄液は、有効成分である線金属微粒子のほかに通常使用される製剤用添加物を1種又は2種以上含んでいてもよい。例えば、pH調節剤、緩衝剤、防腐剤、等張化剤、増粘剤、甘味剤などの矯味剤、着香剤、又は着色剤などを1種又は2種以上含むことができる。例えば、本発明の口腔内洗浄液に適宜の増粘剤を添加して適当な粘度属性を付与することにより、低濃度の遷移金属微粒子を含む口腔内洗浄液に長時間にわたる持続的作用を発揮させることができる。
本発明の口腔内洗浄液は、簡便な使用方法により口腔内の活性酸素を極めて効率的に除去することができるので、活性酸素が原因となって発生する歯周病や口腔内粘膜疾患などを予防及び/又は治療のために有用である。好ましくは、口内炎の予防及び/又は治療のために用いることができる。本発明の口腔内洗浄液により除去可能な活性酸素としては、例えば、スーパーオキシドアニオン、ヒドロキシラジカル、一重項酸素、過酸化水素などを例示することができるが、これらに限定されることはない。本発明の口腔内洗浄液の有効成分である遷移金属微粒子の作用は還元触媒的な作用であるところから、微粒子が口腔内の適用部位にとどまる限り、長時間にわたって活性酸素除去作用が発揮される。
本発明の口腔内洗浄液の使用方法及び適用部位は特に限定されず、口腔内の任意の部位における洗浄のために任意の方法で使用することができる。例えば、口腔内の粘膜、歯周組織、歯牙、舌などの洗浄に用いることができる。典型的には、本発明の口腔内洗浄液の適量を口に含み、患部周辺を数回すすいでから吐出することができる。このような態様は歯科治療における歯牙や歯周組織の治療、抜歯、あるいは美容歯科分野における歯牙の漂白処理の際に好適である。また、本発明の口腔内洗浄液を脱脂綿や綿棒に含浸させて口腔内の適用部位に塗布したり、注射筒や噴霧器に本発明の口腔内洗浄液を充填して適用部位に射出又は噴霧することもできる。さらに、本発明の口腔内洗浄液は、例えば、歯科医師や口腔外科医の治療に際して口をすすぐ水の代わりに用いてもよく、あるいは患者に本発明の口腔内洗浄液を処方して、家庭で1日あたり数回程度のすすぎを行なわせることもできる。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
例1:本発明の口腔内洗浄液の製造
アリール冷却管と三方コックを接続した100ml二口ナス底フラスコにポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)(和光純薬株式会社製, 0.1467g)を入れ、蒸留水23mlで溶解した。この溶液を10分間撹拌した後、塩化白金酸(H2PtCl6・6H2O、和光純薬株式会社製)を蒸留水に溶解した1.66×10-2 M溶液(2ml)を加えてさらに30分間撹拌した。反応系内を窒素置換し、特級エタノール25mlを加えて窒素雰囲気下を保ちながら100℃で2時間還流した。反応液のUVを測定し、白金イオンピークの消失と、金属固体特有の散乱によるピークの飽和を確認し、還元反応を終了した。有機溶媒を減圧留去して白金微粒子(平均粒径数2.4±0.7 nm)を含む白金コロイド水(PVP-Pt水)を調製した。この白金コロイド水を脱イオン蒸留水を用いて1μMに希釈して本発明の口腔内洗浄液を製造した。
例2:本発明の口腔内洗浄液の製造
例1と同様にして、ポリ(1-ビニル-2-ピロリドン)に替えてポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ社製、Ptに対して単位ユニットとして125倍)を用いて平均粒径2.0±0.4 nmの白金コロイド水(PAA-Pt水)を調製した。この白金コロイド水を注射用蒸留水を用いて1mM又は100μMに希釈して本発明の口腔内洗浄液を製造した。
例3:試験例1
例2で得た口腔内洗浄液を用いてヒドロキシラジカルの抑制効果を確認した。以下の溶液を用意した。
1. 0.1 Mリン酸緩衝液 (Na2HPO4-NaH2PO4、pH 7.4)
2. 100μM APF(アミノフェニルフルオレセイン:ヒドロキシラジカルなど活性酸素種を特異的に検出、第一化学薬品株式会社製、5 mM APFを上記1.のリン酸緩衝液で希釈したもの)
3. 5μM H2O2、10μM H2O2(9.7M H2O2を脱イオン蒸留水で希釈したもの)
4. 2μM HRP(ペルオキシダーゼ)(上記1.のリン酸緩衝液で希釈)
5. 100μM、1mM PAA-Pt (脱イオン蒸留水で希釈したもの)
Nunc社製フルオロプレート(96-well)(#237107)を用いて、1-wellあたり(1)20μlの 0.1 Mリン酸緩衝液、(2)50μlの過酸化水素水(0μM:コントロールとして脱イオン蒸留水、5μM 過酸化水素水、又は10μM 過酸化水素水)、及び10μlの2μM ペルオキシダーゼ溶液を加え、遮光下に37℃で20分間インキュベートした。この溶液に10μlのPAA-Pt(0μM:コントロールとして脱イオン蒸留水、100μM PAA-Pt、又は1mM PAA-Pt)を加えて遮光下に37℃で10分間インキュベートした。さらに10μlの 00μM APF溶液を加えて遮光下に37℃で5分間インキュベートし、Wallac 1420 ARVOsxマルチラベルカウンタ(PE社)にてPAA-Ptの10分後の作用を測定した(励起波長485nm、測定波長535nm)。結果を図1に示す。PAA-Ptは10μMでも過酸化水素から生じるヒドロキシラジカルを有意に抑制しており、100μMではコントロール(過酸化水素なし)と同程度までヒドロキシラジカルを抑制した。
試験例2
例2で得た口腔内洗浄液を患者に14日間使用させ(1日あたり3回、1回あたり7〜10 ml)、口腔内にどのような変化が生じたかを患者及び医師から問診表を用いて聴取した。患者の内訳は、歯周病治療中(67%)、メインテナンス中(17%)、外科処置を予定若しくは処置後(8%)、及び一般的な修復や補綴処置中(8%)であった。その結果、患者の65%から変化ありとの回答を得ることができ、58%の患者が本洗浄液を有効であると判断していた。また、医師の50%が本洗浄液の使用により効果があると判定した(非常によい洗浄液である:33%、どちらかと言えばよい洗浄液である:25%)。特に、歯ブラシ使用時の出血が減った(23%)、口内炎ができずらくなった若しくは治りやすくなった(8%)、口が渇きにくくなった(38%)、及び歯茎の痛みが和らいだ(15%)などの自覚症状の改善が報告された。
本発明の口腔内洗浄液を用いることにより、歯周や口腔内粘膜の炎症などの原因となる活性酸素を極めて迅速かつ簡便に除去することが可能になり、歯周病などの炎症性疾患などの各種口腔内疾患の発生を有効に予防することができる。

Claims (6)

  1. 遷移金属微粒子の水性分散液を含む口腔内洗浄液。
  2. 貴金属微粒子の水性分散液を含む請求の範囲第1項に記載の口腔内洗浄液。
  3. 貴金属がルテニウム、ロジウム、パラジウム、及び白金からなる群から選ばれる1種又は2種以上の貴金属である請求の範囲第1項に記載の口腔内洗浄液。
  4. 貴金属が白金である請求の範囲第2項に記載の口腔内洗浄液。
  5. 貴金属の微粒子が平均粒径10 nm以下の白金コロイドである請求の範囲第2項に記載の口腔内洗浄液。
  6. 口内炎の予防及び/又は治療に用いる請求の範囲第1項ないし第5項のいずれか1項に記載の口腔内洗浄液。
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