JPWO2006059712A1 - ヒトステロイドサルファターゼに結合するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Abstract
Description
子宮体癌は子宮体部の内膜にできる癌であるが、近年日本人において増加傾向が見られる。子宮体癌細胞において、STS活性の存在が確認されている(非特許文献8)。
子宮内膜症とは、子宮内膜に類似した組織が、子宮内腔以外の場所に異所性に存在する類腫瘍性の良性疾患である。子宮内膜はエストロゲンによって増殖するので、子宮内膜症ではエストロゲンによって増生する。子宮腺筋症とは、子宮内膜症の亜型で、子宮内膜が子宮筋層内に侵入したものである。21例の子宮腺筋症患者のうち、その78%の腺筋組織にSTSの発現が認められ、STSの発現は腺上皮細胞に限局していた(非特許文献7)。一方、正常子宮組織においては、内膜基底層の腺上皮細胞にSTSの発現が認められたことから、内膜基底層および腺筋組織がSTSによって産生されたエストロゲンの供給原となっていると考えられる。
ヒトSTSに対する抗体としては、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の報告されている(非特許文献6、10)。
LancetI,70(1978) Endocrinology,90,390(1972) J.steroid Biochem.,33,1049(1989) Asia−Oceania,J.Obstet.Gynaecol.,15,101(1989) Breast Cancer,6,331(1999) Cancer Research,63,276(2003) Obstetrics & Gynecology,98,815(2001) Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism,65,164(1987) Cancer Research,59,377(1999) Cell,49,443(1987)
(1)ヒトステロイドスルファターゼ(以下、STSと略記する)と特異的に結合し、ヒトSTS以外のアリルスルファターゼに結合しない抗体または抗体断片。
(2)ヒトSTS以外のアリルスルファターゼが、アリルスルファターゼA、アリルスルファターゼB、アリルスルファターゼD、アリルスルファターゼEまたはアリルスルファターゼFである(1)に記載の抗体または抗体断片。
(3)抗体が、モノクローナル抗体である(1)または(2)に記載の抗体または抗体断片。
(5)ハイブリドーマKM1053(FERM BP−10015)から生産される(3)に記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
(6)(3)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片を生産するハイブリドーマ。
(7)ハイブリドーマが、ハイブリドーマKM1053(FERM BP−10015)である(6)に記載のハイブリドーマ。
(9)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いることを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的定量方法。
(10)免疫学的定量方法が、酵素免疫測定法である(9)に記載の方法。
(11)検体が、ヒト由来の生体試料である(8)〜(10)のいずれか1項に記載の方法。
(13)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(12)に記載の方法。
(14)ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である(13)に記載の方法。
(15)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤を選択するための、検体中のヒトSTSの免疫学的検出方法または免疫学的定量方法。
(17)ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である(16)に記載の方法。
(18)ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤がホルモン療法剤またはSTS阻害剤である(15)〜(17)のいずれか1項に記載の方法。
(19)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の病態を判定するための、ヒトSTSの免疫学的検出方法または免疫学的定量方法。
(20)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(19)に記載の方法。
(22)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的検出用試薬またはキット。
(23)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的定量用試薬またはキット。
(24)免疫学的定量が、酵素免疫測定法を用いる定量である(23)に記載の試薬またはキット。
(26)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患判定用試薬またはキット。
(27)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(26)に記載の試薬またはキット。
(29)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤選択用試薬またはキット。
(30)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(29)に記載の試薬またはキット。
(32)ヒトSTS関連疾患治療に適する薬剤が、ホルモン療法剤またはSTS阻害剤である(29)〜(31)のいずれか1項に記載の試薬またはキット。
(33)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の病態判定用試薬またはキット。
(34)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(33)に記載の試薬またはキット。
(36)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の診断薬。
(37)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(36)に記載の診断薬。
(39)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の病態の診断薬。
(40)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(39)に記載の診断薬。
(42)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患を診断する方法。
(43)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(42)に記載の方法。
(45)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤を選択する方法。
(46)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(45)に記載の方法。
(48)ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤がホルモン療法剤またはSTS阻害剤である(45)〜(47)のいずれか1項に記載の方法。
(49)(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の病態を診断する方法。
(50)ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である(49)に記載の方法。
(52)(22)〜(41)のいずれか1項に記載の試薬、キットまたは診断薬を製造するための(1)〜(5)のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片の使用。
(53)(6)または(7)に記載のハイブリドーマを培地に培養し、培養物中に(3)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片を生成蓄積させ、培養物から抗体または抗体断片を採取することを特徴とする(3)〜(5)のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片の製造方法。
ヒトSTS以外のARSとしては、ARSのA、B、D、EおよびFがあげられる。本発明のヒトSTSと特異的に結合し、ヒトSTS以外のARSに結合しない抗体としては、ヒトSTS(ARS C)に特異的に結合し、ARSのA、B、D、EおよびFには結合しない抗体などがあげられる。
ポリクローナル抗体としては、免疫を施された動物の抗血清、または該抗血清から精製されたポリクローナル抗体をあげることができる。本発明のポリクローナル抗体としては、ヒトSTSと特異的に結合し、STS以外のARSに交叉反応性を示さないポリクローナル抗体であればいかなるものも包含されるが、具体的には、ヒト以外の哺乳動物にヒトSTSを免疫して、その動物の血清を採取し、ヒトSTS以外のARSであるARSのA、B、D、EおよびFに反応性を示す画分を除去した画分を公知のアフィニティー精製法により、調製したポリクローナル抗体などがあげられる。ヒト以外の哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリなどがあげられる。
本発明のモノクローナル抗体の具体例としては、ハイブリドーマ細胞株KM1053が生産する抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053をあげることができる。ハイブリドーマ細胞株KM1053は平成16年4月27日付でブタペスト条約に基づき独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にFERM BP−10015として寄託されている。
遺伝子組換え抗体は、上記本発明のモノクローナル抗体を遺伝子組換え技術を用いて改変したものである。遺伝子組換え抗体としては、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体または抗体断片など、遺伝子組換えにより製造される抗体などがあげられる。本発明の遺伝子組換え抗体をしては、遺伝子組換え抗体において、モノクローナル抗体の特徴を保持している抗体があげられる。
本発明のヒト型キメラ抗体の構造としては、いずれのイムノグロブリン(Ig)クラスに属するものでもよいが、IgG型、さらにはIgG型に属するIgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのイムノグロブリンのC領域が好ましい。
ヒト化抗体は、本発明のモノクローナル抗体のVHおよびVLのCDR配列で任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配列をそれぞれ置換したV領域をコードする遺伝子を構築し、ヒト抗体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ導入し、発現させることにより製造することができる。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリー、およびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体なども包含する。
ヒト抗体ファージライブラリーは、B細胞またはリンパ球などのヒト抗体産生細胞から調製した抗体cDNAをファージベクター中に挿入することにより、Fab、scFvなどの抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーのことをいう。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、さらに遺伝子工学的手法を用いて、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子に変換することも可能である。
本発明のFabは、本発明のモノクローナル抗体を酵素パパインで処理して取得することができる。または、該抗体のFab断片をコードするDNAを原核生物発現ベクターあるいは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物に導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
本発明のFab’は、本発明のモノクローナル抗体のF(ab’)2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。また、該抗体のFab’断片をコードするDNAを原核生物発現ベクターあるいは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物に導入することにより発現させ、Fab’を製造することもできる。
本発明のF(ab’)2は、本発明のモノクローナル抗体を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のF(ab’)2断片をコードするDNAを原核生物発現ベクターあるいは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物に導入することにより発現させ、F(ab’)2を製造することができる。
本発明のscFVは、本発明のモノクローナル抗体から、VHならびにVLをcDNAを取得し、該抗体のscFv断片をコードするDNAを原核生物発現ベクターあるいは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物に導入することにより発現させ、scFvを製造することができる。
本発明のDiabodyは、本発明のモノクローナル抗体から、VHならびにVLをcDNAを取得し、該抗体のDiabody断片をコードするDNAを原核生物発現ベクターあるいは真核生物発現ベクターに挿入し、該ベクターを原核生物あるいは真核生物に導入することにより発現させ、Diabodyを製造することができる。
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRを含むペプチドは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることによって製造することができる。
本発明の抗体の誘導体は、本発明のモノクローナル抗体または抗体断片のH鎖あるいはL鎖の、N末端側あるいはC末端側、さらには抗体あるいは抗体断片中の適当な置換基あるいは側鎖、さらには抗体または抗体断片中の糖鎖に放射性同位元素、蛋白質、または薬剤などを化学的に結合させることにより製造することができる[抗体工学入門、金光修著、(株)地人書館(1994)]。
薬剤としては、放射線同位元素、蛋白質、低分子などいかなるものでもよい。
上述のように、免疫学的測定法は標識方法の違いにより、放射免疫測定法(RIA)、酵素免疫測定法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫測定法(FIA)、発光免疫測定法(luminescent immunoassay)、物理化学的検出法(TIA、LAPIA、PCIA)などがあげられるが、好ましくは酵素免疫測定法があげられる。
発光免疫測定法で用いる標識体としては、任意の公知[今井一洋編、生物発光と化学発光、廣川書店;臨床検査42(1998)]の発光物質を用いることができる。例えば、アクリジニウムおよびその誘導体、ルテニウム錯体化合物、ロフィンなどを用いることができる。ルテニウム錯体化合物としては、例えばClin.Chem.37,1534(1991)などに記載されたものが好ましい。該化合物は電子供与体と共に電気化学的に発光する。
サンドイッチ法は、固相に第一の抗体を結合させた後、測定したい抗原をトラップさせ、標識した第二の抗体を反応させる方法である。サンドイッチ法に用いる抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、上述したFab、Fab’、F(ab)2などの抗体断片を用いてもよい。サンドイッチ法で用いる2種類の抗体の組み合わせとしては、異なるエピトープを認識する抗体あるいは抗体断片の組み合わせでもよいし、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体あるいは抗体断片の組み合わせでもよい。具体的には、本発明のモノクローナル抗体の一例である抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053および公知の抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049[Cancer Research,63,2762(2003)]の組み合わせなどがあげられる。
免疫酵素抗体法とは、ヒトSTSを含むと考えられる検体に、本発明の抗体または抗体断片を反応させ、さらにペルオキシダーゼなどの酵素標識を施した抗マウスIg抗体またはIgG抗体あるいは抗体断片を反応させた後、酵素の基質が酵素反応の結果色原体を生ずる物質であった場合には、その色素呈色反応を吸光光度計などで測定する方法である。該方法は、酵素で直接的に本発明の抗体または抗体断片を標識した誘導体も使用可能であり、また、ビオチンなどで該抗体または抗体断片で標識した誘導体を反応せしめ、次にまたは同時に、酵素で標識された2次標識物質を反応させた後、色素呈色反応を吸光光度計などで測定する方法であってもよい。
免疫細胞染色法は、ヒトまたは動物の生体組織などから採取した細胞または微生物、ヒトまたは動物あるいは昆虫などに由来する培養細胞などに、本発明の抗体または抗体断片を結合させた後、フローサイトメトリーなど単一細胞の抗体の結合量または結合状態を解析する手技を用いて、ヒトSTSの発現を解析する方法である。免疫細胞染色法は、上記の細胞をスライドガラス上に直接固着またはスライドガラス上で培養した後、本発明の抗体または抗体断片を反応させた後、該細胞に含まれるヒトSTSの発現を顕微鏡またはカメラなどを用いて観察または定量する方法も包含する。また、免疫細胞染色法は、上記の細胞を固定液を用いて固定化した後または固定化せず、アガロースなどにて凝塊を作製し、その後、該凝塊を凍結またはパラフィンへ包埋し、該組織片を切片へスライスし、該切片をガラスなどのスライドガラスに固着せしめ、上記と同様の処置によってヒトSTSの発現を顕微鏡またはカメラなどを用いて観察または定量する方法であってもよい。
ウェスタンブロッティング法とは、ヒトSTSまたはヒトSTSを発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞などの細胞抽出液などをSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(1988)]で分画した後、分画した蛋白質群をゲルからPVDF膜あるいはニトロセルロース膜にブロッティングし、該膜に本発明の抗体または抗体断片を反応させ、さらにFITCなどの蛍光物質、ペルオキシダーゼ、ビオチンなどの酵素標識を施した、本発明の抗体に結合できる二次抗体抗体または抗体断片を反応させた後、確認する方法である。
以下に、本発明の抗体の作製方法、並びに該抗体の利用方法を詳細に説明する。
1.本発明の抗体の作製
(1)抗原の調製
ヒトSTSをコードするcDNAを含む発現ベクターを大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などに導入して組換えヒトSTSを得る。免疫原である組換え蛋白質のC末又はN末にタグ蛋白質を融合させた融合蛋白質を免疫原として用いることもできる。ここで、「タグ蛋白質」とは、目的蛋白質のアフィニティー精製により分離を容易に行うためやその他、目的蛋白質の挙動を追跡するためなどの目的で、所望の蛋白質の末端に余分に付加する蛋白質をいう。タグ蛋白質としては、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、プロテインA、β−ガラクトシダーゼ、マルトース−バインディングプロテイン(MBP)などがあげられる。あるいは、胎盤などのSTSを多量に発現しているヒト組織からヒトSTSを精製し、抗原に用いることもできる。また、ヒトSTS部分配列を有する合成ペプチドを抗原に用いることもできる。
3〜20週令のマウス、ラットまたはハムスターに上記(1)に記載の方法で調製した抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体産生細胞を採取する。
免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund’s Adjuvant)や水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、ウシ血清アルブミン(以下、BSAと略記する)やキーホーリンプトヘモシアニン(Keyhole Limpet hemocyanin;以下、KLHと略記する)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology,18,1(1978)]、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)[European J.Immunology,6,511(1976)]、SP2/O−Ag14(SP−2)[Nature,276,269(1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J.Immunology,123,1548(1979)]、P3−X63−Ag8(X63)(Nature,256:495−497,1975)などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10−5mol/L)、ジェンタマイシン(10μg/mL)および牛胎児血清(FCS)を加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×107個以上の細胞数を確保する。
上記(2)で免疫した抗体産生細胞と上記(3)で得られた骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1000(PEG−1000)2g、MEM 2mLおよびジメチルスルホキシド0.7mLの混液を108個の抗体産生細胞当たり0.2〜1mLを加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10−4mol/L)、チミジン(1.5×10−5mol/L)およびアミノプテリン(4×10−7mol/L)を加えた培地〕100mL中に懸濁する。この懸濁液を96穴培養用プレートに100μL/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
プリスタン処理〔2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mLを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(4)で得られた抗ヒトSTSモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞2×106〜5×107細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析した後、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGあるいは、IgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白質量の定量は、ローリー法または280nmでの吸光度より算出する。
抗原としては、精製された組換えヒトSTS、ヒト胎盤などから得られた精製ヒトSTSあるいはヒトSTS部分ペプチドを用いる。抗原が部分ペプチドである場合には、BSAやKLHなどのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製して、これを用いる。
本発明の抗体は、免疫学的手法を用いて、検体中に含まれるヒトSTSまたはヒトSTSを発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞などを検出または定量することができる。免疫学的手法としては、任意の公知の免疫学的測定法などが用いられるが、本発明の免疫学的測定法としては、ウェスタンブロッティング、免疫沈降法、免疫細胞染色、免疫組織染色またはサンドイッチELISA法などが好適に用いられる。
ヒト由来の生体試料としては、ヒトSTSが関連する疾患に羅患したことが疑われるヒト個体から採取した生体試料などがあげられる。生体試料としては、具体的には、疾患部位の組織または細胞、あるいは疾患部位から遊離し血液やリンパ液、腹腔液、乳汁、子宮粘液、尿、汗などの体液に含まれる組織または細胞も包含される。さらに、上記組織または細胞中から遊離したSTSを含む上記体液も包含される。また、生体試料としては、ヒト腫瘍培養細胞、ヒトSTSが関連する疾患に羅患したことが疑われるヒト個体から採取した組織または細胞および該組織または該細胞より調製した抽出液なども包含される。また、これらのヒト個体から採取した生体試料を加工処理したサンプルも生体試料として使用してもよい。加工処理としては、例えば希釈、濃縮、抽出、病理切片作製上の処理などがあげられる。病理切片作製上の処理としては、例えばホルマリン固定、切出し、包埋、薄切、伸展などの一連の処理があげられる。
血液、リンパ液、腹腔液、乳汁、子宮粘液、尿、汗などの体液サンプルは、遠心分離またはフィルター処理などにより、血漿または血清などの液体画分と細胞などの固体画分を分画してから使用することが望ましい。この場合、分画した液体画分と固体画分を生体試料として、用いることもできる。組織または細胞は、疾患部位から直接採取することが望ましいが、疾患部位から遊離した生体試料であっても本発明の検体として用いることができる。疾患部位としては、例えば、STSが関連する疾患が転移性の癌である場合には、原発巣であっても、転移巣であってもよい。
以下に、具体的にヒトSTSまたはヒトSTSを発現した微生物、動物細胞あるいは昆虫細胞などを検出または定量する方法について記載する。
本発明の抗体を用い、ヒトSTSをウェスタンブロッティングにより検出するには、以下のように行うことができる。
抗原としては大腸菌などで発現した組換えヒトSTSを用いるか(1〜10μg/レーン)、あるいはヒト胎盤組織、各種ヒト腫瘍培養細胞またはバイオプシーなどにより患者より採取した細胞から調製した細胞溶解液(5×106〜5×107細胞/mL)を用いる(10〜50μg/レーン)。SDS−ポリアクリルアミド電気泳動〔Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,1988〕にて分画後、PVDF膜あるいはニトロセルロース膜にブロッティングする。BSA−PBSでブロッキング後、本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの培養上清もしくは精製した本発明のモノクローナル抗体1〜10μg/mLを室温で2時間または4℃で一晩反応させる。PBSまたはTween−PBSでよく洗浄した後、第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物などで標識した抗イムノグロブリン抗体1〜50μg/mLを室温1〜2時間反応させる。よく洗浄した後、第二抗体の標識物質に応じた反応を行ない、ヒトSTSと特異的に結合し、STS以外のARSに結合しない抗体がヒトSTSのアミノ酸配列より予測される分子量の蛋白質と反応し、ヒトSTSを含まない抗原およびSTS以外のARSとは反応しないことを確認する。
本発明の抗体を用いた免疫沈降は以下の方法で行うことができる。
抗原としては大腸菌などで発現した組換えヒトSTSを用いるか(1〜10μg/レーン)、あるいはヒト胎盤組織、各種ヒト腫瘍培養細胞またはバイオプシーなどにより患者より採取した細胞から調製した細胞溶解液(5×106〜5×107細胞/mL)を用いる(10〜50μg/レーン)。
本発明の抗体を用い、以下のようにして、ヒトSTSの免疫細胞染色により検出することができる。
各種ヒト腫瘍細胞は、浮遊細胞はPBSにて洗浄し、付着細胞はトリプシン、EDTAなどで浮遊化させた後PBSで洗浄する。またバイオプシーなどにより患者より採取した細胞魂はコラゲナーゼなどで処理した後、PBSで洗浄する。これらの細胞は抗体の通過性を良くするため界面活性剤やメタノールなどで処理する。正常ヒト血清などを用いてブロッキングした後1×105〜1×106細胞/チューブで分注し、本発明のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの培養上清もしくは精製した本発明のモノクローナル抗体1〜10μg/mLを室温で30分間反応させる。洗浄後、蛍光色素で標識した抗イムノグロブリン抗体1〜50μg/mLを100〜500μL/チューブずつ分注し、室温30分間遮光反応させる。よく洗浄した後、グリセリンで封入し蛍光顕微鏡にて顕鏡するか、あるいはフローサイトメトリーにて解析する。
本発明の抗体を用い、以下のようにして、ヒトSTSを免疫組織染色により検出または定量することができる。
ヒト組織の採取については、手術時あるいはバイオプシーなどによって得られる病変部位など目的とする組織を含む組織を採取する方法などがあげられる。採取した組織はそのまま検体として使用することができる。
検体は、採取後、適当な方法により切片を作製して抗体との反応に供する。また、必要に応じて抗原の賦活化、内因性物質の阻止反応などの操作を加えて行ってもよい。
未固定で凍結し、凍結切片を作製後、固定する方法としては、組織を細切した後、OCTコンパウンドなどの凍結包埋剤に入れてドライアイス・アセトンなどにて急速に凍結し、アセトンを風乾後、切片を作製し、下記の固定液を用いて固定する方法などが用いられる。直ちに切片を作製しない場合には、アセトン風乾後、密封して凍結細胞塊としてディープフリーザー中で保管することができる。
切片を作製する方法としては、凍結切片の場合にはクリオスタットを用いる方法が、またはパラフィン切片の場合にはミクロトームを用いる方法があげられる。
凍結切片の場合には、切片を適切な洗浄液で洗浄後、内因性物質の活性阻止を行った後、ブロッキング液にてブロッキングを行う。ブロッキング後、酵素標識した本発明の抗体または抗体断片を希釈液で希釈した液を反応させ、後述する洗浄液で洗浄後、発色反応を行う。適宜、メチルグリーンなどで核染色を行うこともできる。あるいは、細胞像を明瞭にするためにヘマトキシリンなどで染色を行うこともできる。
また、内因性物質の活性化阻止は、本発明の抗体または抗体断片の反応後に行ってもよい。
内因性物質としては、免疫組織染色において、作製した切片中に存在する、反応に影響を与える物質があげられ、具体的には、内因性ペルオキシダーゼ、内因性アルカリフォスファターゼおよび内因性ビオチンなどがあげられる。
ブロッキング液としては、正常動物血清、BSA、スキムミルク、カゼイン溶液などが好適に用いられる。正常動物血清に用いられる動物としては、ヒトまたはマウス以外ではすべての動物種が使用できるが、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、ブタなどが好適である。後述の酵素非標識の本発明の抗体により免疫組織染色法を行う場合には、二次抗体として用いる抗マウスIgまたはIgG抗体の由来の動物種と同種の正常血清を用いるのが好ましい。使用する際の血清の濃度は0.1〜20%の範囲で任意に選べるが、1〜5%が好適である。ブロッキング温度は4℃〜37℃の範囲で自由に設定できる。ブロッキング時間は反応温度にしたがって適切に設定できるが、室温の場合には10分〜1時間が好ましい。
アルカリフォスファターゼを標識酵素とする場合には、ファストレッドまたはファストレッドバイオレットまたはファストブルーの各塩を発色剤とすることもができ、また、ニューフクシン液(Merck社製)あるいはBCIP/NBT液(Sigma社製)を利用することもできる。
酵素非標識の本発明の抗体または抗体断片を上記希釈液で希釈した液を検体に反応させ、上記洗浄液などで洗浄後、本発明の抗体または抗体断片に結合できる二次抗体を反応させ、洗浄液で再び洗浄した後に、発色反応を行うことも可能である。
酵素非標識の本発明の抗体または抗体断片の反応条件および本発明の抗体または抗体断片結合できる、酵素標識した二次抗体の反応条件については、上記酵素標識した本発明の抗体または抗体断片を反応させる際の反応条件と同様である。
賦活化処理としては、例えば、該切片を蛋白質分解酵素処理または加熱処理などがあげられる。蛋白質分解酵素は抗原上の抗体認識部位に対して切断活性がなければ任意のものが使用できるが、特に限定分解酵素が好ましく、例えば、トリプシン、プロナーゼ、ペプシン、アクチナーゼ、フィシン、プロテイナーゼK、サブチリシン、パパインなどがあげられる。
また、賦活化処理としては、酸またはアルカリ処理などの処理も用いることができる。アルカリ処理には、NaOH、KOHなどが用いられ、酸処理には、塩酸、ギ酸、酢酸などが用いられる。さらに、抗原の賦活化処理には、尿素、グアニジンなどの蛋白質変性剤を用いることもできる。
高感度染色法としては、PAP(peroxidase anti−peroxidase)法あるいはその変法としての四段階PAP法、Double bridge PAP法、Fab fragmentを用いるPAP法、Hapten sandwich法、アビジン・ビオチン複合体形成の原理を応用したABC(avidin biotinylated−peroxidase complex)法、LAB(labeled avidin−biotin)法、BRAB(bridge avidin−biotin)法、streptavidinを利用したLSAB(labelled strept avidin biotin)法、SABC(strept avidin biotin complex)法、ビオチン化したtyramidを使用したCSA(catalyzed signal ampification)法、ABC法の変法として抗アビジン抗体を用いる方法、ビオチン化プロテインAを用いる方法、PAP法とABC法を組み合わせる方法、コロイド金標識抗ペルオキシダーゼ抗体によるABC法、酵素標識プロテインAを用いる方法、酵素標識ポリマー法、金属標識抗体を用いたイムノコロイド法などが用いられる。
また、高感度染色法としては、発色酵素をペルオキシダーゼの代わりにアルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼなどの発色酵素を利用できる。アビジン・ビオチン複合体とこれらの発色酵素の組み合わせ、APAAP(alkaline phosphatase−antialkaline phosphatase)法またはペルオキシダーゼ標識抗FITC抗体を用いる間接法などもあげられる。
本発明の抗体あるいは抗体断片の反応後または内因性物質の活性阻止の後、洗浄液で洗浄し、ビオチン標識抗マウスIg抗体またはビオチン標識抗マウスIgG抗体を反応し、次いでアビジン標識ペルオキシダーゼまたはストレプトアビジン標識ペルオキシダーゼを反応させる。ビオチン標識抗マウスIg抗体またはビオチン標識抗マウスIgG抗体およびアビジン標識ペルオキシダーゼの反応条件については、上記の酵素標識した本発明の抗体または抗体断片の反応条件と同様である。
免疫染色像の定性的または定量的判定方法としては、抗体の標識物質に応じて適した方法を利用することができる。すなわち、酵素を標識物質として選択した場合には光学顕微鏡、共焦点レーザースキャン顕微鏡などを、蛍光物質を標識物質として選択した場合には蛍光顕微鏡、共焦点レーザースキャン顕微鏡、蛍光画像解析装置などを、放射性物質の場合にはオートラジオグラフィー、放射線画像解析装置などを、発光物質の場合には発光画像解析装置などを用いることができる。
あるいは、顕微鏡で得られた画像に対して、目的に合った画像処理を行い、鮮明に表現するために、デジタルカメラなどのデジタル画像入力システムを用いて画像解析装置に画像データをデジタル信号として入力することができる。画像解析装置では、染色陽性部位の面積、最短径、最長径、周長などの計測、および染色陽性部位の透過率、光学的濃度、吸光度などを計測可能で、これらの測定値に基づいた反応産物の陽性率、分布など目的に応じた定量解析ができる。
本発明の抗体を用いたサンドイッチELISAにより、検体中のヒトSTSは例えば、以下の方法により定量することができる。
ELISA用96穴プレートに第一の抗ヒトSTS抗体を固相化した後、BSA−PBSによりブロッキングする。BSA−PBSを捨てPBSでよく洗浄した後、濃度既知のヒトSTS標品あるいは濃度未知の被験サンプルを加え、4℃で1晩あるいは室温2時間反応させる。Tween−PBSでよく洗浄した後、固層化した第一抗体とは認識するエピトープが異なる第二の抗ヒトSTS抗体を反応させる。第二抗体はあらかじめビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物などで標識しておく。二次抗体の反応後、洗浄し、第二抗体の標識物質に応じた検出反応を行う。濃度既知のヒトSTS標準物質を段階的に希釈して作製した検量線より、被験サンプルの濃度を算出することができる。該方法に用いられる第一の抗ヒトSTS抗体と第2のヒトSTS抗体のうちのいずれか一方の抗体が本発明の抗体であれば、STSのみを特異的に測定することができる。第一の抗ヒトSTS抗体と第2のヒトSTS抗体の、具体的な組み合わせとしては、例えば、本発明のハイブリドーマFERM BP−10015が生産する抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053と公知の抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049[Cancer Research,63,2762(2003)]の組み合わせなどがあげられる。
抗ヒトSTS抗体としては、ヒトSTSに特異的に結合し、STS以外のARSに交叉反応性を示さない抗体であれば特に制限はないが、例えば本発明のハイブリドーマFERM BP−10015が生産する抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053などが好適に用いられる。本発明に用いられる抗ヒトSTS抗体は、必要に応じて断片化した抗体断片を用いることができる。
上記の抗体あるいは抗体断片は、二次抗体を用いて検出することができ、また、該抗体を標識化して直接検出することもできる。
二次抗体を用いて検出する場合の、二次抗体としては、抗体に結合できる抗体であれば、いかなる抗体でも用いることができ、該抗体はポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体よく、あるいはFab、Fab’、F(ab’)2、scFv、dsFv、diabodyおよびCDRを含むペプチドなどを用いることができる。二次抗体に用いられる抗体あるいは抗体断片は、検出のために標識化して使用される。
酵素がペルオキシダーゼである場合には、例えば吸光度法、蛍光法などによりペルオキシダーゼ量を測定することができる。吸光度法によりペルオキシダーゼ量を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および酸化発色型色原体の組み合わせとを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計などで測定する方法などがあげられる。酸化発色型色原体としては、例えばロイコ型色原体、酸化カップリング発色型色原体などがあげられる。
抗ヒトSTS抗体を固定化するための担体としては、抗体を結合させて保持できるものであればいかなるものも包含されるが、各種高分子素材を用途に合うように成形した素材が用いられる。
上記の抗ヒトSTS抗体を固定化させた固相は、ブロッキングにより、担体上に残存する官能基を保護する。免疫学的測定法のブロッキングに用いられる物質としては、通常蛋白質、界面活性剤および市販のブロッキング試薬などが用いられるが、本発明のブロッキングに用いられる通常の蛋白質としては、BSA、KLHまたはガゼインなどが用いられる。
洗浄液としては、通常未反応の物質を除去、洗浄でき、抗原抗体反応に影響を与えなければ、いかなるものも使用することができる。また、必要に応じて、緩衝剤、界面活性剤、BSAやカゼインなどの蛋白質、防腐剤あるいは安定化剤などを添加してもよい。例えば、Tween−PBSなどが使用される。
防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質などがあげられる。試薬中のこれらの防腐剤の含量としては、測定において、検体中の被測定物質が適切に測定されるような含量であれば特に制限はない。
本発明の検体中のヒトSTSの免疫学的検出試薬またはキット、並びに免疫学的定量試薬またはキットは、ヒトSTS関連疾患の判定または診断、ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤の選択、ヒトSTS関連疾患の病態の判定または診断などに用いることができる。
本発明の検体中のヒトSTSの免疫学的検出試薬またはキット、並びに免疫学的定量試薬またはキットによる検出または定量の結果、検体中のヒトSTSが検出され、またはヒトSTSが健常人または通常組織と比較して、ヒトSTSの存在量が増大している場合には、ヒトSTSが陽性である、またはヒトSTSが発現亢進していると判断される。このような患者は、ヒトSTS関連疾患であると判定または診断される。
ヒトSTS関連疾患の治療に適した薬剤としては、具体的には、STS阻害剤があげられる。
STS阻害剤としては、STSの機能を阻害する機能を有する薬剤であれば、いかなるものでもよいが、具体的にはnortropinyl−arylsulfonylureaまたはその誘導体[Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,13,3673(2003)]、estrone−3−O−sulfamateまたはその誘導体、2−difluoromethyloestrone 3−O−sulphamate[Biochemical & Biophysical Research Communications,317,169(2004)]、biphenyl−4−O−sulfamateまたはその誘導体、2’,4’−dicyanobiphenyl−4−O−sulfamate[Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology,87,141(2003)]、エストロン誘導体[Bioorganic & Medicinal Chemistry,11,1685(2003)]、2−Alkylchromen−4−one 6−O−sulfamates[Journal of Medicinal Chemistry,46,5091(2003)]、クマリン誘導体、667 COUMATE、2−methoxyoestradiol bis−sulphamate[Journal of Steroid Biochemistry & Molecular Biology,86,423(2003)]、3−sulfamoyloxy−17alpha−p−tert−butylbenzyl(or benzyl)estra−1,3,5(10)−trien−17beta−ol、並びに2−methoxy−3−sulfamoyloxy−17alpha−benzylestra−1,3,5(10)−trien−17beta−olまたはこれらの類縁体[Cancer Research,63,6442(2003)]などがあげられる。
ヒトSTS関連疾患の病態の判定または診断としては、例えばヒトSTS関連疾患の現状を把握することや予後を予測することなどがあげられる。ヒトSTS関連疾患の現状としては、例えば疾患の進展度、進行度、増悪度または治療薬投与後の寛容度などがあげられる。疾患の予後としては、再発の可能性、病巣の転移度または罹患患者の生存率などがあげられる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(1)抗原の調製
ヒト胎盤組織から以下のようにして精製ヒトSTSを取得した。操作は全て4℃で行った。
胎盤組織ははさみで細断後、バッファーA[0.25mol/Lサッカロース,5mmol/L EDTAで含む10mmol/Lトリス−酢酸緩衝液(pH7.0)]中で細胞懸濁液を調製し、該細胞顕濁液を10000×gで20分間遠心分離し、上清を回収した。回収した上清をさらに105000×gで1時間遠心分離して得られた沈殿をミクロソーム画分とした。
上記(1)で得られた精製ヒトSTSをアルミニウムゲル2mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1×109細胞とともに5週令雌マウス(Balb/c)に投与し、2週間後より同様に調製した免疫原を1週間に1回、計4回投与した。眼底静脈叢より採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したマウスから最終免疫の3日後に脾臓を摘出した。
アッセイ用の抗原には上記(1)で得られた精製ヒトSTSを用いた。陰性対照の抗原にはBSAを用いた。
8−アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3−U1[European Journal of Immunology,6,511(1976)]を正常培地で培養し、細胞融合時に2×107個以上の細胞を確保し、細胞融合に供した。
上記(2)で得られたマウス脾細胞と(4)で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を除き、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1000(PEG−1000)2g、MEM培地2mLおよびジメチルスルホキシド0.7mLの混液を1×108個マウス脾細胞当たり0.2〜1mLを加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにした。遠心分離(900rpm、5分間)した後、上清を除き、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吸出しでゆるやかに細胞をHAT培地100mL中に懸濁した。
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(Balb/c)に上記(5)で得られたハイブリドーマ株を5〜20×106細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後に、ハイブリドーマは腹水癌化した。腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1〜8mL/匹)し、遠心分離(3000rpm、5分間)して固形分を除去した。得られた腹水は、カプリル酸沈殿法[Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)]により精製し、精製モノクローナル抗体とした。
上記(5)で選択された抗ヒトSTSモノクローナル抗体の精製ヒトSTSとの反応性を(3)に示した酵素免疫測定法にて調べた。図2に示すように、得られた抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053および抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049はいずれも精製ヒトSTSに特異的に結合した。
(1)大腸菌発現組換えヒトSTSの作製
ヒトSTS遺伝子を含むプラスミドpSVL−STS[J.Biol.Chem.,264,13865(1989)](1ng/μL)を0.5μL、10倍濃度のPfu polymerase緩衝液5μL、2mmol/L dNTP 2μL、40μmol/Lの配列番号1および2に示された塩基配列のプライマーをそれぞれ0.5μL、DMSO 5μL、Pfu polymerase(STRATAGENE社製)0.5μL、滅菌水36μLからなる溶液にミネラルオイルを上層し、94℃で5分間加熱した後、94℃で1分間、50℃で1分間、72℃で2分間からなる反応サイクルを16サイクル行い、続けて72℃で7分間反応させた。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で分画し、得られた約1.7kbの増幅断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。得られた抽出断片をBamHIとSmaIで消化し、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)によりBamHIとSmaIで消化したpQE30(QIAGEN社製)に連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(QIAGEN社製)を用いてプラスミドを抽出し、発現プラスミドpQE−STSを取得した。pQE−STSのDNA配列をDNAシークエンサー373(Perkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin Elmer社製)を使用して確認したところ、意図的にプライマーに変異を導入した箇所以外に変異は認められなかった。
(2)ウェスタンブロッティング
実施例1(5)で得られた抗ヒトSTSモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロッティングによるヒトSTSを以下のようにして検出した。
回収したヒトSTS発現大腸菌株体およびヒト胎盤由来精製ヒトSTSを1倍濃度のPAGE buffer[2%SDS、62mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH6.8)、10%Glycerol]に溶解して95℃で5分間加熱処理し、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動〔Antibodies−A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)〕にて分画後、PVDF膜にブロッティングした。該膜をBSA−PBSでブロッキング後、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053または抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049を室温で2時間反応させた。反応後、Tween−PBSで洗浄した後、第二抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体(DAKO社製)を室温で1時間反応させた。Tween−PBSでよく洗浄した後、検出はECL−detection kit(アマシャム社製)を用いて行い、X線フィルム上に感光させた。
以上のことから、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053および抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049はウェスタンブロッティングによりヒトSTSを検出することができ、STSが関与する各種疾病の判定または診断に応用できることが示された。
ヒトSTS遺伝子を含むプラスミドpSVL−STS[J.Biol.Chem.,264,13865(1989)]を制限酵素XbaIおよびBamHIで消化し、得られた消化断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、約2.4kbのヒトSTS遺伝子を含む断片を抽出した。抽出した断片をXbaIとBamHIで消化したpBlueScriptIISK(−)に連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌DH5α株を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(QIAGEN社製)を用いてプラスミドを抽出し、pBS−STSを取得した。pBS−STSをNotIおよびXhoIで消化し、上記と同様にしてヒトSTS遺伝子含む断片を得た。該断片を動物細胞発現用ベクターpcDNA3(Invitrogen社製)のNotI−XhoIサイトに挿入し、発現プラスミドpcSTSを取得した。
CHO/dDXB11細胞は、5%ウシ胎児血清(Life technologies社製)、0.09%重曹(Life technologies社製)、1%Penicillin−streptomycin(Life technologies社製)を添加したαMEM1900培地(Life technologies社製)(以下、A3培地とする)で継代培養した細胞を用いた。
上記で取得された形質転換細胞のアリルサルファターゼ活性を測定することにより、ヒトSTSが導入された細胞を選択した。TT緩衝液[1%トリトンX−100を含む50mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)]に懸濁した細胞を超音波破砕し、約8000×gで5分間遠心分離した上清50μLとp−Nitrophenylsulfate(NPS)基質溶液[20mmol/L NPSを含む250mmol/Lトリス−酢酸緩衝液(pH8.2)]50μLを混和し、37℃、1時間反応を行った。反応後、該反応液に1N NaOH 400μLを添加して反応を停止し、420nmにおける吸光度(OD420)をMicroplate reader Benchmark(BIO−RAD社製)を用いて測定し、細胞の酵素活性を求めた。p−Nitrophenol(NP)のモル吸光係数をE1mmol/L=19.6、1時間に1μmol/LのNPを生じる酵素量を1Unitとして定義した。
従って、ヒトSTS遺伝子の導入により、アリルサルファターゼ酵素活性を発現する細胞株が得られたことが確認できた。
実施例1(5)で得られた抗ヒトSTSモノクローナル抗体を用いて、免疫沈降によるヒトSTSを以下のようにして検出した。
上記(3)で造成したヒトSTS遺伝子導入細胞株cs3−1細胞を溶解緩衝液[1%トリトンX−100を含む50mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.2)]にて溶解した後、遠心分離を行い、上清を回収した。
以上のことから、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053は免疫沈降により、ヒトSTSを検出することができ、STSが関与する各種疾病の診断に応用できることが示された。
実施例1(5)で得られた抗ヒトSTSモノクローナル抗体を用いた免疫細胞染色法によりヒトSTSを以下のようにして検出した。
細胞は、上記(3)で造成したヒトSTS遺伝子導入細胞株cs3−1細胞と、陰性対照として親株であるCHO/dDXB11細胞にヒトSTS遺伝子が含まれていないpcDNA3プラスミドを導入したcDNA3−1細胞用いた。
細胞をEDTAにより剥離し、PBSで洗浄した後、細胞膜の抗体透過性を上げるため、氷冷した100%メタノールにて4℃で10分間処理した。PBSで洗浄後、1mg/mLヒトイムノグロブリン(カッペル社製)にて室温で30分間ブロッキングした。反応当たり1×105細胞/となるように分注し、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053産生ハイブリドーマの培養上清を加えて室温で30分間反応させた。反応後、PBSで洗浄後、FITC標識抗マウスイムノグロブリン抗体(マウスイムノグロブリンに特異的に反応する抗体;和光純薬)を100μL/チューブで分注し、4℃、30分間遮光反応させた。PBSで洗浄した後、セルアナライザー(コールター社;EPICS XL systemII)にて解析した。
以上のことから、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053は免疫細胞染色により、ヒトSTSを検出することができ、STSが関与する各種疾病の診断に応用できることが示された。
実施例1(5)で選択された抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053を用いて、免疫組織染色法によるヒトSTSを以下のようにして検出した。
乳管癌標本25例を用いた。標本は、10%ホルマリンで固定後、パラフィン包埋されたブロックから、切片を調製して使用した。
DAB発色後、洗浄し、細胞像をわかりやすくするために、定法に従ってヘマトキシリン染色を行った後、顕微鏡下で観察した。
結果は、(2+)と判定された標本は9例(36%)、(1+)と判定された標本は14例(54%)、(−)と判定された標本は2例(8%)であった。一方、第一次抗体に陰性対照を用いた場合には、全ての標本においてシグナルは観察されなかった。
(1)各種ARS遺伝子導入細胞株の造成
(1−1)ARS A遺伝子導入細胞の造成
human placenta cDNA library(Clontech社製)よりARS A遺伝子のPCRクローニングを行った。cDNA library(0.5μg/μL)20μL、10倍濃度のKOD polymerase緩衝液5μL、2mmol/L dNTP2μL、40μmol/Lの配列番号1および2記載の塩基配列で示されるプライマーをそれぞれ0.5μL、DMSO5μL、KOD polymerase(東洋紡社製)0.5μL、滅菌水21.5μLからなる溶液にミネラルオイルを上層し、94℃で5分間加熱した後、94℃で1分間、45℃で1分間、72℃で2分間の反応サイクルを25サイクル行い、続いて72℃で10分間反応を行なった。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で分画し、得られた約1.5kbの増幅断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。抽出した断片を鋳型として上記と同様のPCR反応を行い、上記と同様にして増幅断片の抽出を行なった。得られた増幅断片をHindIIIとXbaIで消化し、DNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)によりHindIIIとXbaIで消化したpBluescript SK(−)に連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌JM110(dam−,dcm−)に形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(Promega社製)を用いてプラスミドを抽出し、pBS−ARS A2とpBS−ARS 5を得た。pBS−ARS A2とpBS−ARS 5のDNA配列をDNAシークエンサー377(Perkin Elmer社製)およびBigDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin Elmer社製)を使用して確認したところ、pBS−ARS A2には一ヶ所の変異、pBS−ARS A5には464−526位に欠失変異が存在することがわかった。それぞれ変異が導入された領域が異なっていたので、pBS−ARS A2をHindIIIおよびBsmBIで消化しアガロースゲル電気泳動で分離後、抽出した断片(0.8kbp)をpBS−ARS A5のHindIII−BsmBI断片(3.5kbp)に挿入することにより完全型ARS Aの翻訳領域を含むpBS−ARS A’を取得した。pBS−ARS A’をApaI消化してアガロース電気泳動の解析により0.5、0.6および3.4kbpの断片が出現すること、および変異点近傍のシーケンスを行うことにより、目的としたプラスミドpBS−ARS A’を取得したことを確認した。
pAGE210−ARS AはFspIで消化し、線状化した。フェノールクロロホルム抽出処理の後、エタノール沈殿を行い、回収した線状化プラスミドをTEに1μg/μLとなるよう溶解した。一方、CHO/DG44細胞[Somatic Cell and Moleculer Genetics,12,555(1986)]は、10%ウシ胎児血清(Life technologies社製)、1% HT Supplement(Life technologies社製)、1% Penicillin−streptomycin(Life technologies社製)を添加したIMDM培地(Life technologies社製)(以下、A1培地とする)で継代したものを用いた。CHO/DG44細胞をK−PBS緩衝液[137nmol/L塩化カリウム、2.7nmol/L塩化ナトリウム、8.1mmol/Lリン酸一水素二ナトリウム、1.5nmol/Lリン酸二水素一ナトリウム、4mmol/L塩化マグネシウム緩衝液]に懸濁して8×106細胞/mLとし、細胞懸濁液200μL(1.6×106個の細胞を含む)を上記線状化プラスミド4μgと混和した。該混和液を電極間距離2mmのキュベットに移し、GenePulserII(BioRad社製)装置を用いてパルス電圧0.30kV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。キュベットを氷上で静置後、キュベット中の細胞懸濁液を10mLのA1培地に懸濁し、100μLずつ96穴plateに分注したものを37℃、5%炭酸ガス培養器中で培養した。1日間培養後、10%ウシ胎児透析血清(Life technologies社製)、1%Penicillin−streptomycin(Life technologies社製)、300μg/mLハイグロマイシンBを添加したIMDM培地(Life technologies社製)(以下、B1培地とする)に培地交換し、培養を続けた。途中希釈しながら継代を続け、遺伝子導入より約2週間後に、ハイグロマイシンBに耐性を持つ形質転換細胞株を取得した。
形質転換細胞の培養上清100μLとp−Nitrocatecholsulfate(NCS)基質溶液[10mmol/L K2NCSを含む500mmol/L酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.0)]100μLを混和し、37℃で反応を行った。反応開始から0および30分後に該反応液を100μL抜き取り、1N NaOH 50μLと混和して反応を停止後、490nmにおける吸光度をMicroplate reader Benchmark(BIO−RAD社製)を用いて測定し、細胞の酵素活性を求めた。その結果を、図7−Aに示した。ARS A遺伝子を含まないプラスミドpAGE210を導入したコントロール細胞株Vector1細胞株およびARS A遺伝子を含むpAGE210−ARS Aプラスミドを導入した形質転換株A7(100)細胞株のアリルサルファターゼ活性を比較したところ、形質転換株A7(100)細胞株は、アリルサルファターゼ活性を有していることが確認された。
ヒト由来ARS B遺伝子を含むプラスミドpMPSVHE−ASB[Gene,68,213(1988)]を制限酵素EcoRIで消化しBlunting Kit(宝酒造)により平滑末端化したものを、BamHIで消化した。得られた消化断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、約2.3kbのARS Bを含む断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。抽出断片をDNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)により動物細胞発現用ベクターpAGE210[J.Biochem.,101,1307(1987)]のBamHI−SmaIサイトに挿入し、該断片挿入ベクターを用いてコーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌JM110株(dam−,dcm−)を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(Promega社製)を用いてプラスミドを抽出し、pAGE210−ARS Bを取得した。
導入遺伝子の増幅を行うため、得られた形質転換細胞を、50、100または500nmol/LのMethotrexate(MTX)を添加したB1培地中で順次3回の継代(約2週間)を行い、各濃度のMTXに耐性を有する株を取得した。また、得られた発現株をEX−CELL 301(JRH Bioscience社製)培地で継代培養することにより無血清馴化を行なった。
ヒト由来ARS D遺伝子を含むプラスミドpcDL−SR296(ARSD)[Cell,81,15(1995)]を制限酵素XhoIで消化し、得られた消化断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、約2kbのARS D遺伝子を含む断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。抽出断片をDNAライゲーションキットver.2(T宝酒造社製)により動物細胞発現用ベクターpAGE210[J.Biochem.,101,1307(1987)]のSalIサイトに挿入し、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌JM109株を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(Promega社製)を用いてプラスミドを抽出し、pAGE210−ARS Dを取得した。
pAGE210−ARS DはBstEIIで消化し、線状化した。該反応液をフェノールクロロホルム抽出したの後、エタノール沈殿法を行い回収し、回収した線状化プラスミドをTEに溶解した。一方、CHO/DG44細胞は、10%ウシ胎児血清(Life technologies社製)、1%のHT Supplement(Life technologies社製)、1%Penicillin−streptomycin(Life technologies社製)を添加したIMDM培地(Life technologies社製)(以下、A4培地とする)で継代したものを用いた。CHO/DG44細胞をK−PBS緩衝液[137nmol/L塩化カリウム、2.7nmol/L塩化ナトリウム、8.1mmol/Lリン酸一水素二ナトリウム、1.5nmol/Lリン酸二水素一ナトリウム、4mmol/L塩化マグネシウム緩衝液]に懸濁して8×106細胞/mLとし、細胞懸濁液200μL(1.6×106個の細胞を含む)を上記線状化プラスミド4μgと混和した。該混和液をキュベット(電極間距離2mm)に移し、GenePulserII(BioRad社製)装置を用いてパルス電圧0.30kV、電気容量250μFの条件で遺伝子導入を行った。キュベットを氷上で静置後、キュベット中の細胞懸濁液を12mLのA培地を含む10cmディッシュ4枚に懸濁し、37℃、5%CO2インキュベーター中で培養した。1日間培養後、10%ウシ胎児透析血清(Life technologies社製)、1%Penicillin−streptomycin(Life technologies社製)、300μg/mLハイグロマイシンBを添加したIMDM培地(Life technologies社製)(以下、B4培地とする)に培地交換し、培養を続けた。途中希釈しながら継代を続け、遺伝子導入より約2週間後に、ハイグロマイシンBに耐性を持つ形質転換細胞株を取得した。
上記で取得された形質転換細胞のアリルサルファターゼ活性を測定することにより、ARS Dが導入された細胞を選択した。100mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した細胞を超音波破砕し、約8000×gで5分間遠心分離した上清の蛋白質量をBCA Protein assay reagent kit(PIERCE社製)を用いて測定した。2mg/mL蛋白質濃度に調製した該上清50μLとp−Nitrophenylsulfate(NPS)基質溶液[20mmol/L NPSを含む100mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)]50μLを混和し、37℃、4時間反応を行った。該反応液の415nmにおける吸光度をMicroplate reader Benchmark(BIO−RAD社製)を用いて測定し、細胞のアリルサルファターゼ活性を求めた。
ヒト由来ARS E遺伝子を含むプラスミドpcDL−SR296(ARSE)[Cell,81,15(1995)]を制限酵素XhoIおよびClaIで消化し、得られた消化断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、約2.5kbのARS Eを含む断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。抽出断片をDNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)によりXhoIとClaIで消化したpBluescript SK(−)に連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌JM109株を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(Promega社製)を用いてプラスミドを抽出し、pBS−ARS Eを取得した。pBS−ARS EをKpnIおよびHindIIIで消化し、上記と同様にしてARS Eを含む断片を得た。該断片を動物細胞発現用ベクターpAGE210[J.Biochem.,101,1307(1987)]のKpnI−HindIIIサイトに挿入し、発現プラスミドpAGE210−ARS Eを取得した。
得られた形質転細胞を1.25細胞/mLとなるようB4培地で希釈し、96穴プレートに200μLずつ分注し、シングルセルクローニングを行った。さらに、導入遺伝子の増幅を行うため、得られた形質転換細胞を、50、100または500nmol/LのMethotrexate(MTX)を添加したB4培地中で順次3回の継代(約2週間)を行い、各濃度のMTXに耐性を有する株を取得した。また、得られた発現株をB4培地で継代培養することにより無血清馴化を行なった。
ヒト由来ARS F遺伝子を含むプラスミドpcDL−SR296(ARS F)[GENOMICS,42,192(1997)]を制限酵素EcoRIで消化し、得られた消化断片をアガロースゲル電気泳動で分離後、約2kbのARS Fを含む断片をGENECLEAN Spin Kit(BIO101社製)を用いて抽出した。抽出断片をDNAライゲーションキットver.2(宝酒造社製)によりEcoRIで消化したpBluescript SK(−)に連結した後、コーエンらの方法[Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,69,2110(1972)]により大腸菌JM109株を形質転換した。得られた形質転換体よりプラスミド抽出キット(Promega社製)を用いてプラスミドを抽出し、pBS−ARS Fを取得した。pBS−ARS FをXbaIおよびHindIIIで消化し、上記と同様にしてARS Fをコードする遺伝子を含む断片を得た。該断片を動物細胞発現用ベクターpAGE210[J.Biochem.,101,1307(1987)]のXbaI−HindIIIサイトに挿入し、発現プラスミドpAGE210−ARS Fを取得した。
得られた形質転換細胞を1.25細胞/mLとなるようB4培地で希釈し、96穴プレートに200μLずつ分注し、シングルセルクローニングを行った。さらに、導入遺伝子の増幅を行うため、得られた形質転換細胞を、50、100または500nmol/LのMethotrexate(MTX)を添加したB4培地中で順次3回の継代(約2週間)を行い、各濃度のMTXに耐性を有する形質転換細胞株を取得した。
上記(1)で造成した各種ARS遺伝子導入細胞を用いて抗ヒトSTSモノクローナルKM1049のSTS特異性を以下のように検討した。
上記(1−1)で得られたARS A遺伝子導入細胞および上記(1−2)で得られたARS B遺伝子導入細胞の無血清培養上清(7.5μL/レーン)、実施例1(1)で得られたヒトSTS遺伝子導入細胞の無細胞抽出液[100mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した細胞を超音波破砕し、約8000×gで5分間遠心分離した上清の蛋白質5μg/レーン]、およびARS D、ARS E、ARS F各遺伝子導入細胞の無細胞抽出液[100mmol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した細胞を超音波破砕し、約8000×gで5分間遠心分離した上清の蛋白質、20μg/レーン]をSDS−ポリアクリル電気泳動にて分画後、PVDF膜に転写した。BSA−PBSでブロッキング後、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049を室温で2時間反応させた。Tween−PBSでよく洗浄した後、第二抗体としてペルオキシダーゼ標識抗マウスイムノグロブリン抗体〔ダコ社製〕を室温で1時間反応させた。Tween−PBSで洗浄した後、検出はECL−detection kit(アマシャム社製)を用いて行い、X線フィルム上に感光させた。
結果を図8に示した。抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049はSTS(ARS C)以外にも、ARS D、ARS E、ARS Fに対しても結合することが明らかになった。
上記(1)で造成した各種ARS遺伝子導入細胞を用いて抗ヒトSTSモノクローナルKM1053のヒトSTS特異性を、免疫沈降を用いて以下のようにして検討した。
Protein A Sepharoseビーズ(Protein A SepharoseTM CL−4B、Amersham Biosciences、Buckinghamshire、UK)をマイクロチューブ中で蒸留水に膨潤させながら、ビーズの量が約20μLになるように目で確認しながら加えた。ボルテックスで攪拌後、氷上で10分間静置し、ビーズを自然沈降させた後、上清を捨て、再度蒸留水1mLでビーズを洗浄後、卓上簡易遠心機で12秒間遠心してビーズを沈降させた(以降、ビーズの沈降は同様に卓上簡易遠心機を用いた)。上清を捨て、Wash buffer[0.05%トゥイーン20を含む0.1mol/Lトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)]を1mL加え、氷上で10分間静置した後、ビーズを自然沈降させ、上清を除去した。2μgの抗ヒトSTSモノクローナルKM1053を、ビーズを含む反応液に添加し、ボルテックスで攪拌した。Wash bufferを980μL加えボルテックスで攪拌後、ローテーターで攪拌しながら4℃で一晩反応させた。ビーズを沈降後、Wash buffer 980μLで2回ビーズを洗浄した。
(4)抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049および抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053のARS A、ARS Bに対する交叉反応性の検討
ARS A、ARS BおよびARS CであるヒトSTSを固層化したバインディングELISAにより抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049および抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053のARS A、ARS Bに対する交叉反応性を検討した。動物細胞発現精製ARS A、ARS Bおよび実施例1(1)に記載の方法で取得した精製ヒトSTSを2μg/mLでプレートに固相化し、実施例1(3)に記載の方法と同様にしてバインディングELISAを行い、結果を図10に示した。
上記(2)、(3)および(4)の結果、抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053はヒトSTS以外のアリルサルファターゼに反応せず、ヒトSTSに特異的なモノクローナル抗体であることが示された。
(1)抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049のビオチン化
抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049精製抗体を、NHS−Lc−Biotin(PIERCE社製)を用いてビオチン化した。すなわち、1mLの1mg/mLの濃度の精製された抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049に、250μLの0.5mol/L炭酸緩衝液(pH9.2)を加え、250μLの1mg/mLの濃度のNHS−Lc−Biotin(1mg/mL)を加えて、室温で、3時間撹拌した。PBSで終夜透析したものを、ビオチン化抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049として用いた。
ヒトSTS遺伝子導入細胞株cs3−1細胞より抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053抗体カラムを用いて、以下のようにしてヒトSTSを精製した。
96穴のEIA用プレートに10μg/mLの濃度の精製した抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1053を50μL/穴で分注し、4℃で一晩放置して吸着させた。洗浄後、1%BSA−PBSを100μL/穴で加え、室温1時間反応させて残っている活性基をブロックした。1%BSA−PBSを捨て、上記(2)で取得した精製ヒトSTSあるいはコントロール蛋白質(組換え精製IL−1β)を1μg/mLから作製した2倍希釈系列の溶液を50μL/穴で分注し4℃で一晩反応させた。Tween−PBSで洗浄後、上記(1)で調製した10μg/mLの濃度のビオチン化抗ヒトSTSモノクローナル抗体KM1049を50μL/穴で加えて50μL/穴で分注し、さらにTween−PBSで洗浄後アビジン−HRP(VECTOR社製)を50μL/穴で分注し室温、1時間反応させた。Tween−PBSで洗浄後、ABTS基質液を用いて発色させOD415nmの吸光度をプレートリーダー(NJ2001;日本インターメッド社製)にて測定した。図11に結果を示した。
配列番号2−人工配列の説明:合成DNA
配列番号3−人工配列の説明:合成DNA
配列番号4−人工配列の説明:合成DNA
Claims (53)
- ヒトステロイドスルファターゼ(以下、STSと略記する)と特異的に結合し、ヒトSTS以外のアリルスルファターゼに結合しない抗体または抗体断片。
- ヒトSTS以外のアリルスルファターゼが、アリルスルファターゼA、アリルスルファターゼB、アリルスルファターゼD、アリルスルファターゼEまたはアリルスルファターゼFである請求項1記載の抗体または抗体断片。
- 抗体が、モノクローナル抗体である請求項1または2に記載の抗体または抗体断片。
- モノクローナル抗体が、ハイブリドーマKM1053(FERM BP−10015)から生産されるモノクローナル抗体が結合するエピトープと結合するモノクローナル抗体である請求項3に記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
- ハイブリドーマKM1053(FERM BP−10015)から生産される請求項3に記載のモノクローナル抗体または抗体断片。
- 請求項3〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片を生産するハイブリドーマ。
- ハイブリドーマが、ハイブリドーマKM1053(FERM BP−10015)である請求項6に記載のハイブリドーマ。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いることを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的検出方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いることを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的定量方法。
- 免疫学的定量方法が、酵素免疫測定法である請求項9に記載の方法。
- 検体が、ヒト由来の生体試料である請求項8〜10のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、ヒトSTS関連疾患を判定するための、検体中のヒトSTSの免疫学的検出方法または免疫学的定量方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項12記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項13記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤を選択するための、検体中のヒトSTSの免疫学的検出方法または免疫学的定量方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項15に記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項16記載の方法。
- ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤がホルモン療法剤またはSTS阻害剤である請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の病態を判定するための、ヒトSTSの免疫学的検出方法または免疫学的定量方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項19に記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項20記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的検出用試薬またはキット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、検体中のヒトSTSの免疫学的定量用試薬またはキット。
- 免疫学的定量が、酵素免疫測定法を用いる定量である請求項23に記載の試薬またはキット。
- 検体が、ヒト由来の生体試料である請求項22〜24のいずれか1項に記載の試薬またはキット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患判定用試薬またはキット。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項26に記載の試薬またはキット。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項27記載の試薬またはキット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤選択用試薬またはキット。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項29に記載の試薬またはキット。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項30記載の試薬またはキット。
- ヒトSTS関連疾患治療に適する薬剤が、ホルモン療法剤またはSTS阻害剤である請求項29〜31のいずれか1項に記載の試薬またはキット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の病態判定用試薬またはキット。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項33に記載の試薬またはキット。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が、悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項34記載の試薬またはキット。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の診断薬。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項36に記載の診断薬。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項37に記載の診断薬。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を含有することを特徴とする、ヒトSTS関連疾患の病態の診断薬。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項39に記載の診断薬。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項40に記載の診断薬。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患を診断する方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項42に記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項43に記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤を選択する方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項45に記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項46に記載の方法。
- ヒトSTS関連疾患の治療に適する薬剤がホルモン療法剤またはSTS阻害剤である請求項45〜47のいずれか1項に記載の方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片を用いて、検体中のヒトSTSを免疫学的に検出または定量し、検出または定量結果よりヒトSTS関連疾患の病態を診断する方法。
- ヒトSTS関連疾患が、ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患である請求項49に記載の方法。
- ヒトSTSが関与するエストロゲン依存性疾患が悪性腫瘍、良性腫瘍および皮膚疾患から選ばれる疾患である請求項50に記載の方法。
- 請求項22〜41のいずれか1項に記載の試薬、キットまたは診断薬を製造するための請求項1〜5のいずれか1項に記載の抗体または抗体断片の使用。
- 請求項6または7に記載のハイブリドーマを培地に培養し、培養物中に請求項3〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片を生成蓄積させ、培養物から抗体または抗体断片を採取することを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体または抗体断片の製造方法。
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2005
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WO2006059712A1 (ja) | 2006-06-08 |
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