JP2004538452A - 診断法と診断薬 - Google Patents
診断法と診断薬 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004538452A JP2004538452A JP2003509148A JP2003509148A JP2004538452A JP 2004538452 A JP2004538452 A JP 2004538452A JP 2003509148 A JP2003509148 A JP 2003509148A JP 2003509148 A JP2003509148 A JP 2003509148A JP 2004538452 A JP2004538452 A JP 2004538452A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- cancer
- lim kinase
- antibody
- cells
- subject
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/53—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
- G01N33/574—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for cancer
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61P—SPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
- A61P35/00—Antineoplastic agents
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K16/00—Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies
- C07K16/40—Immunoglobulins [IGs], e.g. monoclonal or polyclonal antibodies against enzymes
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
- C12Q1/6876—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes
- C12Q1/6883—Nucleic acid products used in the analysis of nucleic acids, e.g. primers or probes for diseases caused by alterations of genetic material
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/53—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
- G01N33/573—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for enzymes or isoenzymes
-
- G—PHYSICS
- G01—MEASURING; TESTING
- G01N—INVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
- G01N33/00—Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
- G01N33/48—Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
- G01N33/50—Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
- G01N33/53—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor
- G01N33/574—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for cancer
- G01N33/57484—Immunoassay; Biospecific binding assay; Materials therefor for cancer involving compounds serving as markers for tumor, cancer, neoplasia, e.g. cellular determinants, receptors, heat shock/stress proteins, A-protein, oligosaccharides, metabolites
-
- A—HUMAN NECESSITIES
- A61—MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
- A61K—PREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
- A61K39/00—Medicinal preparations containing antigens or antibodies
- A61K2039/505—Medicinal preparations containing antigens or antibodies comprising antibodies
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12Q—MEASURING OR TESTING PROCESSES INVOLVING ENZYMES, NUCLEIC ACIDS OR MICROORGANISMS; COMPOSITIONS OR TEST PAPERS THEREFOR; PROCESSES OF PREPARING SUCH COMPOSITIONS; CONDITION-RESPONSIVE CONTROL IN MICROBIOLOGICAL OR ENZYMOLOGICAL PROCESSES
- C12Q2600/00—Oligonucleotides characterized by their use
- C12Q2600/158—Expression markers
Abstract
癌細胞を速やかに検出し、癌の早期検診及び癌の治療若しくは予防における臨床的処置を実施するための情報を発見し、これを癌の早期診断に利用すること。
【解決手段】
本発明は被験体若しくは該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法、及びその検出法に有用な物質を提供する。より具体的には、本発明は、LIMキナーゼタンパク質若しくは関連酵素の存在の相対的な増加、又はLIMキナーゼ活性の相対的な増加、又はLIMキナーゼ若しくは関連タンパク質をコードする遺伝子由来の発現物質の存在の相対的な増加を測定することにより、被験体若しくは該被験体由来の生体試料中の癌に関与する細胞、又は癌細胞を発生する傾向を有する細胞を検出する方法を提供する。
Description
【0001】
本発明は一般的に、被験体若しくは該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法、及びその検出法に有用な薬物に関する。異常細胞若しくは異常細胞群の存在は、ある特定の病気又は状態、又は病気若しくは状態が発生する傾向の指標となる。より具体的には、本発明は、LIMキナーゼタンパク質若しくは関連酵素の存在の相対的な増加、又はLIMキナーゼ活性の相対的な増加、又はLIMキナーゼ若しくは関連タンパク質をコードする遺伝子由来の発現物質の存在の相対的な増加を測定することにより、被験体若しくは該被験体由来の生体試料における癌に関与する細胞、又は癌細胞に発達する傾向を有する細胞を検出する方法を意図する。本発明は更に、細胞若しくは細胞群にあるLIMキナーゼ又は関連タンパク質の高レベル調節をスクリーニングすることにより、又はMキナーゼ又は関連タンパク質をコードする遺伝子配列の発現産物の存在の高レベル調節をスクリーニングすることにより、被験体若しくは該被験体由来の生体試料における癌又は癌のような増殖の存在を診断する方法又は浸潤性の癌と非浸潤性の癌を識別する方法を提供する。本発明は、LIMキナーゼ又はLIMキナーゼをコードする遺伝子物質の発現産物を検出するのに有用な診断薬を提供する。このような診断薬には、抗体などの免疫相互作用分子やLIMキナーゼ遺伝子の発現産物を検出するための遺伝子プローブが含まれる。本発明は更に、LIMキナーゼレベルの改変を示す遺伝的に改変された動物を提供する。このような動物は、抗癌剤のスクリーニングに有用なモデルである。
【背景技術】
【0002】
本明細書で参照する文献の詳細は、本明細書の末尾にまとめる。
【0003】
本明細書における先行技術の参照は、その先行技術がどの国においても共通する一般知識の一部を形成することを認識、又は示唆するものではなく、そのように解釈されるべきではない。
【0004】
癌は、人に影響を与える最も身体を衰弱させる疾病状態の一つであり、癌の発生率及び罹患率は増加し続けている。多くの危険因子が癌の発生又は癌の発生の可能性に関与しており、これらには遺伝的疾病素質、癌の家系的形態、及び環境的因子が含まれる。環境は常に変化しており、人々は毎日毎日毒性の可能性のある化合物に高レベルで曝されている。集団及び社会の豊かさが向上することは産業努力の拡大を意味し、これらの産業の多くは毒性の可能性のある化合物を使用している。
【特許文献1】
記載なし。
【非特許文献1】
記載なし。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、癌細胞を速やかに検出し、癌の早期検診及び癌の治療若しくは予防における臨床的処置を実施するためにこの情報を用いる必要がある。
【0006】
多くの癌マーカーが提案されてきた。しかしながら、癌の脅威が増すに連れ、そして人々が年をとるにつれ、癌検定におけるより効果的且つより正確な新しいマーカーを探し求めることが重要となる。更に、卵巣癌に対する診断テストが現在存在しないことは重要である。結果として、この癌は検出されたときはいつも転移性となっており、従って進行阻止のための治療若しくは予防のための治療には遅すぎることがよくある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明につながる研究において、本発明者らはLIMキナーゼを研究した。この酵素は分子のN末端部に二つのLIMモチーフを含む。LIMキナーゼには、LIMキナーゼ1とLIMキナーゼ2の二つの型が知られている。LIMキナーゼはアクチンの原動力を調節する際に重要であり、従って細胞の分裂、発達及び遊走において一定の役割を果たす。本発明者らは今回、LIMキナーゼが癌細胞、特に浸潤性の癌においては正常細胞若しくは非浸潤性の癌と比べ高レベル調節されていることを決定した。これは、免疫検定並びに遺伝子検定による癌の診断にとって有用なマーカーを提供し、癌造影用の癌を標的とする薬物の開発と抗癌剤の作製を可能にする。
【0008】
発明の概要
本明細書を通して、論旨が別意を要求しない限り、語「含む(comprise)」、又はその変化形である「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などは、述べられた要素又は整数又は要素若しくは整数の群の含有を意味するが他の如何なる要素又は整数又は要素若しくは整数の群の排除を意味するものではないと解する。
【0009】
本発明は、部分的には、LIMキナーゼが癌細胞において、そして特に浸潤性の癌においては正常細胞若しくは非浸潤性の癌細胞と比べて高レベル調節されているという決定に基づいている。LIMキナーゼはアクチン原動力の調節に関与する酵素であり、細胞の分裂、発達及び遊走に特に重要である。癌特異性マーカーを同定すれば、癌造影剤及び治療に利用しうる癌標的化薬物などの、様々な診断薬の開発が可能になる。
【0010】
従って本発明は、一つの側面では、被験体若しくは被験体由来の生体試料から得た細胞、細胞抽出物、血清又はその他の試料をLIMキナーゼ若しくはその抗原性部分に特異的な免疫相互作用性分子と接触させ、免疫相互作用分子−LIMキナーゼ複合体形成のレベルをスクリーニングすることにより、被験体又はその被験体由来の生体試料内の異常細胞を検出する方法を意図する。ここで正常細胞と比べ複合体の存在の上昇は異常細胞であることを示す。
【0011】
別の実施態様では、異常細胞はLIMキナーゼをコードする遺伝子の発現レベルをスクリーニングすることにより、遺伝子レベルで検出される。ここで正常細胞と比べて発現産物のレベルの上昇は異常細胞であることを示す。実時間PCR並びに他のPCR法は、転写活性を測定するのに有用である。LIMキナーゼ遺伝子転写活性レベルの上昇は、癌又は癌の発生の傾向を示すと提唱する。
【0012】
これらの方法は、被験体における癌又は癌類似の増殖の有無を診断するのにとりわけ有用である。例えば、LIMキナーゼレベルの上昇の存在について細胞又は細胞抽出物を免疫学的にスクリーニングする。また、mRNAを被験体の細胞から又は被験体由来の生体試料から取得し、cDNAを任意選択的に形成させる。このmRNA又はcDNAを次にLIMキナーゼをコードするヌクレオチド配列又はその相補ヌクレオチド配列の全部又は一部とハイブリッド形成できる及び/又はこれらを増幅できる遺伝子プローブと接触させ、その後mRNA若しくはcDNAのレベルを検出する。ここで、正常な対照と比べてレベルが上昇したmRNA又はcDNAの存在は癌の存在を示す。
【0013】
これらのテストは原発生癌の有無を診断するのに有用なだけでなく、残りの癌細胞の監視に基づいて緩解の危険を評価するのにも役立つ。
【0014】
本発明は更に、診断薬及び治療薬を意図する。一つの実施態様では、本発明はLIMキナーゼに対するモノクローナル抗体により認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子を提供する。この脱免疫化抗体の可変領域のCDRの少なくとも一方はLIMキナーゼに対するモノクローナル抗体に由来するものであり、脱免疫化抗体分子の免疫グロブリンに由来する残りの部分は、抗体がそれに対して脱免疫化された宿主に由来する免疫グロブリン又はその類似体から誘導される。
【0015】
この脱免疫化抗体は、例えば癌造影に用いても良い。一つの実施態様では、この方法はレポーター分子で標識したヒトLIMキナーゼ又はその上の抗原決定基に特異的な非ヒト由来のモノクローナル抗体の脱免疫化形を患者に導入する工程、循環系全体又は循環系の選択された部分に標識化抗体を拡散させる工程、次いで該患者をレポーター分子検出処理にかけて抗体の場所を同定する工程を含む。
【0016】
本発明のまた別の側面は、ヒトLIMキナーゼに特異性を有する抗体を癌細胞増殖抑止に効果的量でヒトに投与することにより癌を保有する患者を治療する方法であって、該抗体が実質的に非免疫原性であり、該抗体がそれに融合、結合又その他の方法で結合した細胞増殖阻止物質若しくは殺細胞物質を更に含むものである方法を意図する。この方法は、代わりにLIMキナーゼ遺伝子発現を阻止する遺伝子的手段の使用を含んでも良い。本発明はまた、LIMキナーゼを阻害しそして癌細胞の増殖を減少させるLIMキナーゼ活性モジュレーターの使用に及んでもよい。いくつかの状態は、LIMキナーゼ活性を高レベル調節することにより細胞の増殖を促進して恩恵を受けることがある。LIMキナーゼ活性の「モジュレーター」と言うときは、タンパク質レベル又はLIMキナーゼ遺伝子発現又は転写後工程のレベルで作用する薬物が含まれる。従って本発明は、本発明の癌標的化薬物及び一つ以上の薬学的に許容し得る担体及び/又は希釈剤を含む組成物を意図する。これらの組成物はまたLIMキナーゼ遺伝子発現若しくはタンパク質活性のモジュレーターを含んでも良い。
【0017】
本発明のまた別の側面は、患者からの疑わしい癌細胞内のLIMキナーゼの相対レベルを測定するための定量的若しくは半定量的な診断キットの製造における、LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体の使用を意図する。このキットには使用説明書が同梱されていても良く、自動又は半自動であってもよく、又は自動化された機械もしくはソフトウェアと互換性のある形であっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は部分的には、異常細胞及び特に癌細胞、更には浸潤性癌細胞又は癌細胞を発生する傾向を有する細胞が、正常細胞又は非浸潤性癌細胞と比べてLIMキナーゼのレベルを高めたという測定に基づいている。後者の酵素はタンパク質キナーゼであり、とりわけ初期の胚発生のパターン化及びアクチン原動力の調節に関与する。高レベルのLIMキナーゼ又は高レベルのLIMキナーゼ活性を生じる細胞は、本発明によれば、異常細胞でありそして癌や関連症状などの疾病若しくは障害に関わる又は関わる可能性がある細胞であると考えられる。LIMキナーゼ又はLIMキナーゼをコードする遺伝子物質の発現産物を検出する能力により、癌又は癌や関連症状を発生する傾向を検出する手段、及び浸潤性癌と非浸潤性癌を識別する手段が得られる。更に、LIMキナーゼ活性の拮抗薬などのモジュレーターは、癌細胞増殖の阻害又は低減に役立つであろう。
【0019】
従って本発明の一つの側面は、被験体又は該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法であって、該被験体又は該生体試料からの細胞、細胞抽出物又は血清又はその他の試料をLIMキナーゼに特異的な免疫相互作用分子又はその抗原部分と接触させる工程、及び免疫相互作用分子−LIMキナーゼ複合体の形成レベルをスクリーニングする工程を含み、このスクリーニングでは正常細胞と比べて該複合体の存在の上昇が異常細胞を示すものである方法を意図する。
【0020】
上記「試料」は、循環液などの被験体由来の生体試料を含む。
【0021】
関連する実施態様では、本発明は被験体又は該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法であって、LIMキナーゼをコードする遺伝子の発現産物のレベルをスクリーニングする工程を含み、正常細胞と比べて該発現産物レベルの上昇が異常細胞の存在を示すものである方法を提供する。
【0022】
本明細書で言う「被験体」は、ヒト、霊長類、実験用テスト動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウマ)又は愛玩動物(例えば、ネコ、イヌ)などの哺乳類を含む動物を含む。好ましい被験体はヒトである。
【0023】
被験体由来の「生体試料」は生検を含み、細胞、細胞抽出物、組織、組織液、排出物、循環液又は呼吸液又はその他の物質の任意の試料であって良い。「循環液」というときは、血液、血清及びリンパ液が含まれる。生体試料は被験体から抽出され、処理され、処理されず、希釈され又は濃縮されても良い。
【0024】
「正常」細胞と言うときは、異常若しくは癌性であるとみなされない細胞を含み、正常な細胞型の「平均」であると考えても良い。LIMキナーゼレベルの比較は、非浸潤性癌細胞に対しても行われる。
【0025】
「免疫相互作用分子」は、LIMキナーゼ又はその抗原部分又はその同族体若しくは誘導体に特異性と結合親和性を有する任意の分子である。好ましい免疫相互作用分子は免疫グロブリン分子であるが、本発明は抗体断片、単鎖抗体、ヒト化などの脱免疫化抗体並びにT細胞関連抗原結合分子(TABM)などの他の免疫相互作用分子に及ぶ。免疫相互作用分子がポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体などの抗体であるのが最も好ましい。抗体がモノクローナル抗体であることが最も好ましい。
【0026】
免疫相互作用分子はLIMキナーゼに、より具体的にはLIMキナーゼ上の抗原決定基若しくはエピトープに特異性を示す。LIMキナーゼ上の抗原決定基若しくはエピトープは、免疫反応がそれに向けられる分子のその部分を含む。抗原決定基又はエピトープは、B細胞エピトープであっても良く、適切な場合には、T細胞エピトープであっても良い。用語「抗原部分」は抗原決定基又はエピトープを含む。
【0027】
「発現産物」は一般にmRNA又はcDNAであり、発現産物の量はLIMキナーゼ発現レベルの指標となり、従ってLIMキナーゼの存在の間接的な証拠となる。mRNA又はcDNAのプールを取得し、又は総mRNAを含む細胞抽出物を取得し、そしてLIMキナーゼ遺伝子に特異的なmRNA若しくはcDNAの全て又は一部に相補的な遺伝子プローブを取得することが好都合である。次いでプローブの結合は定量化又は半定量化しうる。
【0028】
本明細書で言うLIMキナーゼは、LIMキナーゼ1とLIMキナーゼ2の両方への言及、又はこれらの同族体又は誘導体への言及をも含む。
【0029】
LIMキナーゼの「レベル」と言うときは、定量的、半定量的、又は定性的に測定した量を含む。
【0030】
本発明に基づき、癌細胞及び特に浸潤性癌細胞などの癌と関連する細胞は、LIMキナーゼレベルの上昇を生ずることを提唱する。従って、LIMキナーゼのレベル又はLIMキナーゼをコードする遺伝子物質の発現産物のレベルの定量的又は定性的検出は、細胞が異常であり癌に関与しているか又は癌を発生する傾向を有することの指標となる。
【0031】
LIMキナーゼレベルが上昇したことの検出は、初期治療の後であっても緩解の蓋然性を評価するのに重要である。残留癌細胞の早期検出及び/又は監視は、発展的初期治療後にLIMキナーゼを産生する細胞を治療又は標的とし、それにより緩解の危険性を減少させる治療プロトコルを開発する場合の助けとなる。。
【0032】
従って、本発明の別の一側面は、被験体における癌又は癌様増殖の有無を診断する方法であって、該被験体又は該被験体由来の生体試料からの細胞又は細胞抽出物をLIMキナーゼに結合するのに効果的量の該LIMキナーゼ又はその上の抗原決定基若しくはエピトープに特異性を有する抗体と接触させる工程、次いでLIMキナーゼ−抗体複合体のレベルを定量的又は定性的に測定する工程を含み、正常細胞と比べて該複合体の存在のレベルの上昇が癌の存在を示すものである方法を意図する。
【0033】
関連する実施態様では、本発明は、被験体における癌の有無を診断する方法であって、該被験体又は該被験体由来の生体試料に由来する細胞からmRNAを得て、選択的にcDNAを産生し、該mRNA又はcDNAをLIMキナーゼをコードするヌクレオチド配列又はその相補的ヌクレオチド配列の全部又は一部とハイブリッド形成できる及び/又は増幅できる遺伝子プローブと接触させる工程、次いで該mRNA又はcDNAのレベルを検出する工程を含み、正常な対照と比べて該mRAN又はcDNAの存在のレベルの上昇が癌の存在を示すものである方法を提供する。
【0034】
本発明のこれらの側面はまた、浸潤性癌と非浸潤性癌の識別にも適用し得る。この場合、LIMキナーゼのレベルは非浸潤性癌細胞と比較する。
【0035】
LIMキナーゼを検出するための抗体、とりわけモノクローナル抗体の使用は、本発明の好ましい方法である。抗体は数多くの方法のいずれかにより調製して良い。ヒトLIMキナーゼの検出には、抗体は一般的には霊長類、家畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ブタ、ヤギ、ウマ)、実験用テスト動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ)及び愛玩動物(例えば、イヌ、ネコ)などの非ヒト動物から誘導されるが、そうである必要はない。一般的に抗体に基づく分析は、細胞又は組織生検についてインビトロで実施される。しかしながら、抗体が適切に脱免疫化されていれば、又はヒトに用いる場合にはヒト化されていれば、抗体は例えば核標識で標識し、患者に投与でき、核標識蓄積の部位を放射線技術で測定することができる。従って、LIMキナーゼ抗体は癌を標的とする物質とみなされる。従って本発明は、ヒト及び非ヒトの患者の癌造影に用いる脱免疫化した形の抗体に及ぶ。これは後で更に説明する。
【0036】
従って、本発明はインビボにおけるLIMキナーゼ又は癌造影のための免疫学的検定に用いる抗体、特にモノクローナル抗体を提供する。
【0037】
LIMキナーゼに対する抗体を作成するためには、生体試料がヒト組織を含む動物由来のものであろうと組換え手段で生産された場合には細胞培養由来のものであろうと生体試料からこの酵素を抽出する必要がある。LIMキナーゼは任意の適切な手段を用いて生体試料から分離できる。例えばこの分離には、LIMキナーゼの表面荷電特性、サイズ、密度、生物活性及び別の実体(例えば、それに結合又はその他の方法で結び付く別のタンパク質又は化合物)に対するその親和性のいずれか一つ以上をうまく利用して良い。従って、例えば生体流体からLIMキナーゼを分離するには、超遠心分離、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー)、電気泳動(例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動)、サイズ分離(例えば、ゲル濾過、限外濾過)及び親和性媒介分離(例えば、(Dynabead(商標)などの磁気ビーズ分離、免疫クロマトグラフィー、免疫沈降法を含むがこれらに限定されない免疫親和性分離)のいずれか一つ以上によって行って良い。採用する分離技術(単数又は複数)の選択は、求められる特定のLIMキナーゼの生物活性又は物理的特性又は特定のLIMキナーゼがそれから得られる組織に依存する。
【0038】
生体液からのLIMキナーゼの分離はキナーゼ上に存在する立体構造的エピトープを保っていることが好ましく、従って酵素の変性を惹起する技法を適切に避けることが好ましい。当業者らは、動物に接触するLIMキナーゼ上の抗原決定基又は活性部位(単数又は複数)が天然の酵素のものと構造的に同一であることを確実にするため、LIMキナーゼに特有の生理学的条件(例えば、LIMキナーゼがそれから得られた生体液)に可能な限り近い条件を維持するか又は模倣することが重要であると認識するはずである。これは天然の酵素を認識するであろう免疫化動物での適切な抗体の形成を確実にする。好ましい実施態様では、このキナーゼは親和性分離、ゲル濾過及び限外濾過の一つ以上を用いて生体液から分離される。
【0039】
免疫化及びそれに続くモノクローナル抗体の生産は、例えばケーラーとミルシュタイン(ケーラーとミルシュタイン,Nature 256: 495-499, 1975、ケーラーとミルシュタイン,Eur. J. Immunol. 6(7): 511-519, 1976)、コリガンら("Current Protocols in Immunology",ジョン ワイリー アンド サンズ インコーポレイテッド,1991-1997)又はトーヤマら("Monoclonal Antibody, Experiment Manual", コーダンシャ サイエンティフィックより出版,1987)に記載の標準的手順を用いて実施できる。基本的には、標準的な方法により、動物をLIMキナーゼを含む生体液又はその画分又はLIMキナーゼの組換え体で免疫化して、抗体生産細胞、特に抗体生産性体細胞(例えば、Bリンパ球)を作成する。次いで、これらの細胞を免疫化動物から取り出して不死化させることができる。
【0040】
LIMキナーゼの断片が抗体を生産するために用いられる場合、まず担体と結び付ける必要があるかもしれない。「担体」とは、非免疫原性の物質又は免疫原性が低い物質(例えばハプテン)が自然に又は人工的に結合してその免疫原性を強化する通常高分子量の物質を意味する。
【0041】
抗体生産細胞の不死化は、当業界で良く知られる方法を用いて実施してよい。例えば、不死化はエプスタイン・バーウイルス(EVB)(コズボーら,Methods in Enzymology 121: 140, 1986)を用いる形質転換法で行って良い。好ましい実施態様では、抗体生産細胞は細胞融合法(コリガンら,1991-1997,上掲)を用いて不死化される。これはモノクローナル抗体の生産に広く採用される方法である。この方法では、抗体特にB細胞を生産する能力を持つ抗体生産体細胞を骨髄腫細胞株と融合する。これらの体細胞は初回抗原刺激を受けた動物、好ましくはマウスやラットなどの齧歯動物のリンパ節、脾臓及び末梢血から誘導されうる。マウスの脾臓細胞は特に有用である。しかしながら、ラット、ウサギヒツジ又はヤギの細胞、又はその他の動物種からの細胞を代わりに用いることも可能であろう。
【0042】
ハイブリドーマを生産する融合法に用いるために特殊な脾臓細胞株をリンパ腫瘍から開発した(ケーラーとミルシュタイン,1976,上記、シャルマンら,Nature 276: 269-270, 1978、フォルクら,J. Viol. 42(1): 220-227, 1982)。これらの細胞株は少なくとも三つの理由から開発された。一つ目は、未融合であり同様に無限に自己増殖する骨髄腫細胞から融合ハイブリドーマを選択するのが容易であることである。通常、これはハイブリドーマの増殖を助ける一定の選択培地中で増殖できなくする酵素欠損を持つ骨髄腫を用いて行われる。二つ目の理由は、それ自体の抗体を生産するリンパ腫瘍細胞に固有の能力から生ずる。ハイブリドーマによる腫瘍細胞抗体の生産を排除するため、内因性免疫グロブリンの軽鎖若しくは重鎖を生産できない骨髄腫細胞を用いる。これらの細胞株を選択する三つ目の理由は、その融合適合性と融合効率である。
【0043】
例えばP3X63−Ag8、P3X63−AG8.653、P3/NS1−Ag4−1(NS−1)、Sp2/0−Ag14及びS194/5.XXO.Bu.1.などの、骨髄腫細胞株の多くは、融合細胞ハイブリッドの生産に用いて良い。P3X63−Ag8及びNS−1細胞株は、ケーラーとミルシュタイン(1976,上掲)に記載されている。シャルマンら(1978,上掲)はSp2/0−Ag14骨髄腫株を開発した。S194/5.XXO.Bu.1株はトローブリッジ(J. Exp. Med. 148(1): 313-323, 1978)により報告された。
【0044】
抗体生産性の脾臓又はリンパ節の細胞と骨髄腫細胞のハイブリッドを作成する方法は、通常、細胞膜の融合を促進する因子(単数又は複数)(化学的、ウイルス性の又は電気的因子)の存在下で、10:1の比率で体細胞と骨髄腫細胞をそれぞれ混合する(この比率は約20:1から約1:1に変化することがあるが)工程を含む。融合法は既に記載されている(ケーラーとミルシュタイン,1975,上掲、ケーラーとミルシュタイン,1976,上掲、ゲフテルら,Somatic Cell Genet. 3: 231-236, 1977、フォルクら,1982,上掲)。これらの研究者らにより用いられた融合促進物質はセンダイウイルス及びポリエチレングリコール(PEG)である。
【0045】
融合法は生存可能なハイブリッドを極めて低い頻度でしか生じないため(例えば、脾臓を体細胞の供給源として用いた場合、およそ1×105の脾臓細胞ごとに一つのハイブリドーマしか得られない)、残りの未融合細胞、特に未融合骨髄腫細胞から融合細胞ハイブリッドを選択する手段を持つことが好ましい。得られた他の融合細胞ハイブリッドの中から所望の抗体生産ハイブリドーマを検出する手段もまた必要である。一般に、融合細胞ハイブリッドの選択は、通常は無限に分裂を続けるであろう未融合骨髄腫細胞の増殖を防止するがハイブリドーマの増殖を助ける培地中で細胞を培養することにより達成される。融合に用いられる体細胞はインビトロ培地では生存能力を長時間維持せず、従って問題を起こさない。本発明の例では、ヒポキサンチン・ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠いている(HPRT−陰性)骨髄腫細胞を用いた。これらの細胞に対する選択はヒポキサンチン/アミノプテリン/チミジン(HAT)培地中で行われる。この培地では、融合した細胞ハイブリッドは脾臓細胞のHPRT陽性遺伝子型のため生き残る。遺伝子型的に能力のあるハイブリッドの増殖を支える培地で逆選択することができる、異なる遺伝子欠陥(薬物感受性など)を持つ骨髄腫細胞の使用も可能である。
【0046】
融合細胞ハイブリッドを選択的に培養するには数週間が必要である。この期間の初期には、ハイブリッドが続いてクローニングされ増殖されうるように、所望の抗体を生産するこれらのハイブリッドを同定する必要がある。一般に、得られたハイブリッドの約10%が所望の抗体を生産するが、約1から約30%までの範囲も稀ではない。抗体を生産するハイブリッドの検出は、例えば、ケネットら(「モノクローナル抗体とハイブリドーマ:生物検定の新次元」376〜384頁,プレナムプレス,ニューヨーク,1980)に記載されたような酵素結合免疫検定法や放射免疫検定法、及びFACS分析(オライリーら,Biotechniques 25: 824-830, 1998)などの幾つかの標準的検定法のいずれか一つにより行なうことができる。
【0047】
所望の融合細胞ハイブリッドが選択され、個々の抗体生産細胞株にクローニングされると、各細胞株は二つの標準的な方法のいずれかで増殖して良い。ハイブリドーマ細胞の懸濁液は組織適合性の動物に注射できる。注射された動物は次いで、融合細胞ハイブリッドにより生産される特異的なモノクローナル抗体を分泌する腫瘍を発生するであろう。血清や腹水液などの動物の体液を採取し、モノクローナル抗体を高濃度で得ることができる。また、個々の細胞株は実験室の培養器中でインビトロで増殖させても良い。単一のモノクローナル抗体を高濃度に含む培地は、デカンテーション、濾過又は遠心分離により収集し、続いて精製することができる。
【0048】
細胞株は任意の適切な免疫検出法によりその特異性をテストし、目的のLIMキナーゼを検出する。例えば、細胞株は多数のウェル中に分注して培養し、各ウェルからの上清を酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、間接蛍光抗体法などにより分析する。標的のLIMキナーゼを認識できるが標的でないエピトープは認識しないモノクローナル抗体を生産する細胞株(単数又は複数)は同定し、次いでインビトロで直接培養するか又は組織適合性の動物に注射して腫瘍を形成させ、必要な抗体を生産し、採取し及び精製する。
【0049】
これらの抗体はLIMキナーゼに特異的である。これは、これらの抗体が他の分子からLIMキナーゼを識別できることを意味する。正常細胞の分子と交差反応しないのであれば、より広範囲スペクトルの抗体を用いても良い。特に有用なLIMキナーゼ特異的抗体の一つを記載する。上述の方法はLIMキナーゼ1又は2に適用できる。
【0050】
モノクローナル抗体がインビボでの癌造影に用いられることになっている場合は、それが導入されるであろう宿主(例えばヒト)に関して脱免疫化する必要がある。脱免疫化工程は、本発明に基づいて調製したモノクローナル抗体と同じか又は類似する特異性を有するキメラ抗体の調製を含む、幾つかの形態のいずれをとっても良い。キメラ抗体はその軽鎖若しくは重鎖の遺伝子が、通常は遺伝子操作により、別の種に属する免疫グロブリンの可変領域及び定常領域から構築された抗体である。従って、本発明に基づき、所望のモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマが得られれば、一方の種の結合領域が他方の種の抗体の非結合領域と結びつく異種間モノクローナル抗体を生産するために技術が用いられる(リューら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443, 1987)。例えば、非ヒト(例えばネズミ)モノクローナル抗体由来の相補性決定領域(CDR)はヒト抗体に移植でき、それによりネズミ抗体を「ヒト化」する(ヨーロッパ特許第0239400号、ジョーンズら,Nature 321 : 522-525, 1986 、バーホイエンら,Science 239: 1534-1536, 1988、リッチマンら,Nature 332 : 323-327, 1988 )。この事例では、脱免疫化工程はヒトに特異的である。より具体的には、CDRはヒト定常領域を持つか又は持たないヒト抗体可変領域に移植できる。CDRを提供する非ヒト抗体は通常「ドナー」と呼ばれ、フレームワークを提供するヒト抗体は通常「受容体(acceptor)」と呼ばれる。定常領域は存在する必要はないが、もしあるのであれば、これらの領域は実質的にヒト免疫グロブリン定常領域と同一、即ち少なくとも約85〜90%、好ましくは約95%かそれ以上同一でなければならない。従って、ヒト化抗体の全ての部分は、恐らくはCDRを除き、実質的に天然のヒト免疫グロブリン配列の相当する部分に実質的に同一である。従って、「ヒト化抗体」はヒト化軽鎖及びヒト化重鎖免疫グロブリンを含む抗体である。ドナー抗体は、その結果得られるヒト化抗体がCDRを提供するドナー抗体と同じ抗原に結合すると予測されるため、「ヒト化」の工程により「ヒト化される」と言われる。本明細書で言う「ヒト化される」には、特定の宿主、この事例ではヒト宿主に対して脱免疫化された抗体への言及も含まれる。
【0051】
脱免疫化抗体が、実質的に抗原結合又は他の免疫グロブリン機能に影響を与えない付加的な同類アミノ酸置換を有する場合があることを理解されたい。代表的な同類置換は、表1に基づいて行われ得る。
【0052】
【表1】
【0053】
本発明の脱免疫化抗体を生産するために採用される代表的な方法は、例えば、リッチマンら,1988,上掲、ヨーロッパ特許第0239400号、米国特許第6,056,957号、米国特許第6,180,370号、米国特許第6,180,377号に記載されている。
【0054】
従って一つの実施態様では、本発明はLIMキナーゼに対するモノクローナル抗体により認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子であって、該脱免疫化抗体の可変領域のCDRの少なくとも一つが該LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体に由来するものであり、該脱免疫化抗体分子の残りの免疫グロブリン由来部分が宿主由来の免疫グロブリン又はその類似体に由来するものであり、その宿主に対して抗体が脱免疫化されるものである脱免疫化抗体分子を意図する。
【0055】
本発明のこの側面は、非ヒト抗体のフレームワーク領域の操作を含む。
【0056】
本発明は、LIMキナーゼに対する特異性をなお保持する本抗体の変異体及び誘導体にまで及ぶ。
【0057】
用語「変異体」又は「誘導体」は一つ以上のアミノ酸の置換、付加及び/又は欠失を含む。
【0058】
本明細書で用いるとき、用語「CDR」は、分子の結合部位上にβ−ストランドを架橋する抗体フレームワーク領域の可変部分にある3個の軽鎖領域及び3個の重鎖領域まで包含するCDR構造ループを含む。これらのループは、特徴的なカノニカル構造を含む(コーシアら,J. Mol. Biol. 196: 901, 1987;コーシアら,J. Mol. Biol. 227: 799, 1992)。
【0059】
「フレームワーク領域」とは、CDRとも呼ばれる3個の超可変領域によって中断される免疫グロブリンの軽鎖若しくは重鎖可変領域の部分を意味する。フレームワーク領域及びCDRの範囲は正確に定義されている(例えば、カバットら,「免疫学的に重要な他の配列」米国ディパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サイエンス,1983参照)。異なる軽鎖若しくは重鎖のフレームワーク領域の配列は、種の範囲内で比較的保存されている。本明細書で用いるとき、「ヒトフレームワーク領域」は、天然に生ずるヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域と実質的に同一な(約85%以上、通常は90〜95%以上)フレームワーク領域である。抗体のフレームワーク領域は構成的な軽鎖及び重鎖が組み合わさったフレーム枠領域であり、CDRを位置付け且つ整列させるのに役立つ。CDRは主にLIMキナーゼのエピトープの結合を担う。
【0060】
本明細書で用いるとき、用語「重鎖可変領域」とは、約110から125までの長さのアミノ酸残基であるポリペプチドを意味し、そのアミノ酸配列が本発明のモノクローナル抗体の重鎖のアミノ酸配列に相当し、重鎖のアミノ末端(N末端)アミノ酸残基から始まる。同様に、用語「軽鎖可変領域」とは約95から130までの長さのアミノ酸残基のポリペプチドを意味し、そのアミノ酸配列が本発明のモノクローナル抗体の軽鎖のアミノ酸配列に相当し、軽鎖のN末端アミノ酸残基から始まる。完全長の免疫グロブリン「軽鎖」(約25Kd又は214アミノ酸)はNH2末端(約110アミノ酸)にある可変領域遺伝子及びCOOH末端にあるκ若しくはλ定常領域遺伝子によりコードされる。完全長の免疫グロブリン「重鎖」(約50Kd又は440アミノ酸)は、同様に可変領域遺伝子(約116アミノ酸)及び上述の他の定常領域遺伝子の一つ、例えばγ(約330のアミノ酸をコードする)によりコードされる。
【0061】
用語「免疫グロブリン」又は「抗体」は、本明細書では免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされる一つ以上のポリペプチドから成るタンパク質を指すのに用いる。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、κ,λ,α,γ(IgG1,IgG2,IgG3,IgG4),δ,ε及びμ定常領域遺伝子類、並びに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンの一つの形が抗体の基本的構造単位を構成する。この形は4量体であり免疫グロブリン鎖の二つの同一の対からなり、それぞれの対が一つの軽鎖と一つの重鎖を有する。各対において、軽鎖及び重鎖の可変領域は共に抗原への結合を担い、そして定常領域は抗体エフェクター機能を担う。抗体に加え、免疫グロブリンは、例えばFv、Fab、Fab’及び(Fab’)2 などを含む他の様々な形で存在することがある。
【0062】
本発明はまた、例えばFv、Fab、Fab’及びF(ab’)2断片を含む本発明の方法により生産されるモノクローナル抗体の断片の使用及び生産を意図する。このような断片は例えばコリガンら(1991-1997,上掲)に記載された標準的な方法により調製して良い。
【0063】
本発明はまた、本発明のモノクローナル抗体と同じか又は類似した特異性を持つ合成若しくは組換えの抗原結合分子を意図する。このタイプの抗原結合分子は合成的に安定化されたFv断片を含んでも良い。このタイプの代表的な断片には単鎖Fv断片(sFv、しばしばscFvと呼ばれる)が含まれ、その中では、ぺプチドリンカーがVH領域のN末端又はC末端をVL領域のC末端又はN末端にそれぞれ架橋するのに使用される。ScFvは抗体全体の定常部分を全て欠いており、補体を活性化することができない。
【0064】
VHとVL領域を結合するのに適したペプチドリンカーは、VHとVL領域がFv断片がそこから誘導される抗体全体の抗原結合部位の三次元構造と類似した三次元構造を持つ抗原結合部位を有する単一のポリペプチド鎖に折り畳まれることを可能にするものである。所望の特性を有するリンカーは、米国特許第4,946,778号に記載されている方法によって得てもよい。しかしながら、リンカーが存在しない場合もある。ScFvsは、例えば、クレベルら(J. Immunol. Methods 201(1): 35-55, 1997)に概説された方法で調製されうる。また、これらは米国特許第5,091,513号、ヨーロッパ特許第239,400号又はウィンターとミルシュタイン(Nature 349: 293, 1991)及びプリュックサンら(「抗体工学:実用的アプローチ, 203-252, 1996)の論文に記載の方法に基づいて調製されうる。
【0065】
また、合成により安定化したFv断片はジスルフィド安定化Fv(dsFv)を含むが、そこではシステイン残基が、完全に折り畳まれたFv分子において二つの残基がその二つの間でジスルフィド結合を形成するよう、VH及びVL領域に導入される。dsFvを生産する適切な方法は、例えば、(グロックシューバーら,Biochem. 29: 1363-1367, 1990、ライターら,J. Biol. Chem. 269: 18327-18331, 1994、ライターら,Biochem.33: 5451-5459, 1994、ライターら,Cancer Res. 54:2714-2718, 1994、ウェーバーら,Mol. Immunol. 32: 249-258, 1995)に記載されている。
【0066】
合成又は組換えの抗原結合分子としては、例えば(ウォードら,Nature 341: 544-546, 1989、ハマーズ−キャスターマンら,Nature 363: 446-448, 1993、デービーズとリーヒマン,FEBS Lett. 339: 285-290, 1994)に記載されているような、単一可変領域ドメイン(dAbsと呼ばれる)も意図される。
【0067】
また、合成又は組換えの抗原結合分子は「ミニボディ」を含んでも良い。これについては、ミニボディは抗体全体の小さな形であるが、これは単一鎖の中に抗体全体の必須要素をコードする。ミニボディは、例えば米国特許第5,837,821号に記載されているように、免疫グロブリン分子のヒンジ領域及びCH3ドメインに融合した天然の抗体のVH領域とVL領域から成るのが適切である。
【0068】
別の実施態様では、合成又は組換えの抗原結合分子は、非免疫グロブリン由来のタンパク質フレームワークを含むことがある。例えば、抗原結合で選択された相補性決定領域(CDR)を生産するためにランダム化した二つのループを有する四重らせん束のタンパク質チトクロームb562を開示するクーとシュッツ(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6552-6556, 1995)を参照されたい。
【0069】
合成又は組換えの抗原結合分子は多価(即ち、二つ以上の抗原結合部位を有する)であっても良い。このような多価分子は一つ以上の抗原に対して特異的でありうる。この種の多価分子は、例えば(アダムスら,Cancer Res. 53: 4026-4034, 1993、カンバーら,J. Immunol. 149: 120-126, 1992)に開示されたように、二つの抗体断片をシステインを含むペプチドを通して二量体化することにより調製されることがある。また二量体化は、抗体を自然に二量体化する両親媒性のらせん体に融合する(プリュックサン、Biochem. 31: 1579-1584, 1992)ことにより、又は優先的にヘテロ二量体化するドメイン(ロイシンジッパーjun及びfosなど)の使用(コステルニーら、J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992)により促進しても良い。多価抗体は、例えば、LIMキナーゼ及び他の癌マーカーの別の形態を識別するのに有用である。
【0070】
本発明は更に、被験体の抗体におけるアミノ酸の化学的類似体を包含する。アミノ酸の化学的類似体の使用は、とりわけ被験体に投与する必要がある場合などに分子を安定化させるのに有用である。本発明が意図するアミノ酸の類似体には、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の合成中の非天然アミノ酸及び/又はその誘導体の組み込み、及びタンパク質性分子若しくはその類似体に立体構造上の制約を課す架橋結合子及びその他の方法の使用が含まれるが、これらに限定されない。LIMキナーゼ又はその断片又は誘導体の類似体もまた、LIMキナーゼ活性の潜在的な拮抗薬又は作用薬(例えばモジュレーター)として意図される。
【0071】
本発明で意図する側鎖修飾の例には、アルデヒドとの反応後のNaBH4での還元による還元的アルキル化、メチルアセチミデート(methylacetimidate)によるアミジン化、無水酢酸によるアシル化、シアン酸によるアミノ基のカルバモイル化、2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化、無水コハク酸及び無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化、及びピリドキサル−5−リン酸塩によるリジンのピリドキシル化に続くNaBH4による還元などの、アミノ基の修飾が含まれる。
【0072】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3−ブタンジオン、フェニルグリオキサール及びグリオキサールなどの試薬との複素環式縮合産物の形成によって修飾されても良い。
【0073】
カルボキシル基は、O−アシルイソ尿素形成を介したカルボジイミド活性化に続く、例えば対応するアミドへの誘導化により修飾しても良い。
【0074】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸またはヨードアセトアミドでのカルボキシメチル化、システイン酸への過ギ酸酸化、他のチオール化合物との混合ジスルフィドの形成、マレイミド、無水マレイン酸又は他の置換マレイミドとの反応、4−クロロメルクリ安息香酸、4−クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2−クロロメルクリ−4−ニトロフェノール及び他の水銀物質を用いた水銀誘導体の形成、アルカリ性pHでのシアン酸によるカルバモイル化などの方法により修飾しても良い。
【0075】
トリプトファン残基は、例えばN−ブロモコハク酸イミドによる酸化又は2−ヒドロキシ−5−ニトロベンジルブロミド又はハロゲン化スルフェニルなどによって修飾しても良い。一方チロシン残基は、テトラニトロメタンによるニトロ化により改変して3−ニトロチロシン誘導体を形成しても良い。
【0076】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体でのアルキル化又はジエチルピロカルボネートによるN−カルベトキシル化によって行って良い。
【0077】
ペプチド合成の間の非天然アミノ酸及び誘導体の組込みの例には、ノルロイシン、4−アミノ酪酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ−5−フェニルペンタン酸、6−アミノヘキサン酸、t−ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4−アミノ−3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸、2−チエニルアラニン及び/又はアミノ酸のD異性体の使用が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で意図する非天然アミノ酸の一覧を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
【表2−1】
【0080】
【表2−2】
【0081】
【表2−3】
【0082】
架橋結合子は、例えば、n=1からn=6の(CH2)nスペーサー基を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルなどのホモ二官能性架橋結合子、及びN−ヒドロキシスクシンイミドなどのアミノ反応性部分とマレイミド又はジチオ部分(SH) 又はカルボジイミド(COOH)などの別の基に特異的に反応する部分とを通常含むヘテロ二官能性試薬を用いて、3D立体構造を安定化するために使用できる。さらに、ペプチドは、例えば、Cα及びNα−メチルアミノ酸の組込み、アミノ酸のCα原子とCβ原子の間への二重結合の導入、及びN末端とC末端の間、二つの側鎖の間、又は側鎖とN末端若しくはC末端の間のアミド結合の形成などの共有結合の導入による環状ペプチド又は類似体の形成によって立体構造的に制約することができる。
【0083】
本発明は更に、
(1)LIMキナーゼ又はその上の抗原決定基に特異的なモノクローナル抗体を該LIMキナーゼを含む細胞を含んでいると思われる生体試料と接触させる工程、及び
(2)工程(1)で形成された複合体をシグナル検出工程にかける工程
を含む、LIMキナーゼの検出法を意図する。
【0084】
このシグナル検出工程には、ELISA又は任意の他のレポーター分子に基づく検定法が含まれる。この検出工程の一部として、そのシグナルを最初に増幅する必要があることもある。
【0085】
本発明の脱免疫化モノクローナル抗体はまた、インビボにおける癌造影として役立つだけでなく、癌細胞を細胞増殖遅延物質又は細胞障害性物質、即ち細胞分裂停止物質又は細胞破壊物質と接触させるために癌細胞を標的とするのに役立つ。
【0086】
癌造影に関しては、レポーター分子を脱免疫化モノクローナル抗体に付着させ、次にこれをヒトなどの宿主に導入する。レポーター分子を検出することにより、癌の増殖が可視化できる。レポーター分子の特に有用な形の一つは、核標識である。
【0087】
従って、本発明の別の一側面は、ヒト患者における癌細胞を検出する方法であって、ヒトLIMキナーゼ又はその上の抗原決定基に特異的な、レポーター分子で標識された非ヒト由来のモノクローナル抗体の脱免疫化形を該患者に導入し、標識抗体を循環系全体又は循環系の選択した部分に拡散させる工程、次いで該患者をレポーター分子検出手段にかけて抗体の部位を同定する工程を含む方法を意図する。
【0088】
免疫学に基づいたLIMキナーゼ検出計画は、様々な形をとる場合がある。例えば複数の抗体を、それぞれがLIMキナーゼを含む特定の抗原若しくは癌細胞に異なる特異性を有するアレイ中に固定化しても良い。次いで、生検からの細胞を抗体アレイと接触させ、固定化される細胞に基づき癌の種類に関して診断を行いうる。
【0089】
ELISA、ウェスタンブロット分析、免疫沈降分析、免疫蛍光分析、免疫化学分析又はFACS分析などの他のより慣習的な検定法を実施しても良い。
【0090】
従って本発明は、試料中のLIMキナーゼ又はその断片、変異体若しくは誘導体を検出する方法であって、試料を抗体又はその断片若しくは誘導体と接触させ、該抗体とLIMキナーゼ若しくはその断片、変異体、誘導体を含む複合体のレベルを正常な対照と比較して検出する工程を含み、LIMキナーゼのレベルの上昇が癌の増殖を示すものである方法を提供する。
【0091】
上で議論したように、複合体の形成を測定するのに適切な如何なる技術を用いても良い。例えば、レポーター分子の結合した本発明の抗体は、免疫検定に用いても良い。このような免疫検定には、当業者らに良く知られる放射免疫検定(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)及び免疫クロマトグラフィー技術(ICT)、ウェスタンブロット法が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明に従って用いられる様々な免疫検定法を開示しているコリガンら,1991-1997、上掲、を参照されたい。免疫検定法は比較検定を含んでも良い。本発明が定性的及び定量的な免疫検定法を包含することを理解されたい。
【0092】
適切な免疫検定技術は、例えば米国特許第4,016,043号、第4,424,279号及び第4,018,653号に記載されている。これらは非競争型の片側検定と両側検定の双方及び伝統的な競争結合検定をも含む。これらの検定法はまた、標識した抗原結合分子の標的抗原への直接結合をも含む。この場合その抗原はLIMキナーゼ又はその断片である。
【0093】
両側検定は本発明で使用するのに特に好ましい。これらの検定法には多数の変法が存在し、本発明はそれら全てを包含することを意図する。簡単に言えば、典型的な前方検定では、非標識抗体などの非標識抗原結合分子を固体の基体上に固定化し、テスト対象の試料をその結合分子と接触させる。適当な期間、即ち抗体−抗原複合体を形成するのに十分な時間、インキュベートした後、別の抗原結合分子好ましくは検出可能なシグナルを生産できるレポーター分子で標識された抗原に特異的な第二の抗体を添加し、抗体−抗原−標識抗体という別の複合体が形成するのに十分な時間インキュベートする。反応しなかった全ての物質を洗い流し、抗原の存在をレポーター分子が発するシグナルを観察することにより測定する。その結果は、可視性のシグナルを単に観察することによる定性的なものか、又は既知量の抗原を含む対照試料と比較することによる定量的なもののいずれかになりうる。前方検定法の変法には、試料と標識抗体の両方を結合した抗体に同時に加える同時検定が含まれる。これらの技術は、容易に明らかなように僅かな変法をも含めて、当業者らに良く知られている。
【0094】
典型的な前方検定では、抗原又はその抗原性部分に特異性を有する第一抗体を固体表面に共有的か受動的かのいずれかで結合させる。固体表面は通常はガラス又は重合体で、最も普通に用いられるポリマーはセルロース、ポリアクリルアミド、ナイロン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル又はポリプロピレンである。この固体支持体は管、ビーズ、ミクロプレートの円盤、又は免疫検定を行うのに適した他の任意の表面であって良い。結合工程は当業者らに良く知られており、一般的に架橋共有結合か又は物理的吸着から成り、ポリマー−抗体複合体はテスト試料の調製では洗浄する。テスト対象のサンプルの部分標本を次いで固相複合体に加え、存在する抗原を抗体に結合させるのに十分な時間及び条件の下でインキュベートする。インキュベーション期間の後、抗原−抗体複合体を洗浄し、乾燥し、抗原の部分に特異的な第二抗体と共にインキュベートする。この第二抗体は一般的に第二抗体と抗原の結合を示すのに用いられるレポーター分子と結合している。結合しているレポーター分子により測定された、結合する標識抗体の量は、固定化された第一抗体に結合した抗原の量に比例する。
【0095】
別の方法は、生体試料中の抗原を固定化する工程、次いで固定化した抗原をレポーター分子で標識した又は標識していない特異的な抗体と接触させる工程を含む。標的の量とレポーター分子のシグナルの強度に応じて、結合した抗原は抗体で直接標識化することにより検出可能となりうる。また、第一抗体に特異的な第二の標識化抗体を、標的−第一抗体複合体と接触させて標的−第一抗体−第二抗体の三重複合体を形成させる。この複合体はレポーター分子が発するシグナルにより検出される。
【0096】
上記のことから、抗原結合分子と結合するレポーター分子は
(a)レポーター分子の抗体への直接付着、
(b)レポーター分子の抗体への間接付着、即ち、その後に抗体に結合する別の検定試薬へのレポーター分子の付着、及び
(c)抗体の次の反応産物への付着
を含むことが認められるであろう。
【0097】
レポーター分子は色素原、触媒、酵素、蛍光色素、化学発光性分子、常磁性イオン、ユウロピウム(Eu34)などのランタニドイオン、他の核標識を含む放射性同位元素及び直接可視標識を含む群から選択して良い。
【0098】
直接可視標識の場合、金属性又は非金属性コロイド粒子、色素粒子、酵素若しくは基質、有機重合体、ラテックス粒子、リポソーム、又はシグナル発生物質を含む他の小胞などを利用して良い。
【0099】
レポーター分子として用いるのに適した多数の酵素が米国特許第4,366,241号、第4,843,000号、及び第4,849,338号で開示されている。本発明に有用な適切な酵素には、アルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼなどが含まれる。これらの酵素は単独で又は溶液中の第二の酵素と組み合わせて使用しうる。
【0100】
適当な蛍光色素には、フルオレッセインイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、R−フィコエリトリン(RPE)、及びテキサスレッドが含まれるが、これらに限定されない。他の代表的な蛍光色素には、国際特許公開番号第WO93/06121で論じられたものが含まれる。米国特許第5,573,909号、及び第5,326,692号に記載の蛍光色素も参照されたい。また、米国特許第5,227,487号、第5,274,113号、第5,405,975号、第5,433,896号、第5,442,045号、第5,451,663号、第5,453,517号、第5,459,276号、第5,516,864号、第5,648,270号及び第5,723,218号も参照されたい。
【0101】
酵素免疫検定の場合、酵素は第二抗体に一般的にはグルタルアルデヒド又は過ヨウ素酸塩により結合させる。しかしながら、容易に認識できるように、当業者が容易に利用できる様々な広範囲の異なる結合技術が存在する。特定の酵素と共に用いられる基質は一般に、対応する酵素で加水分解すると検出可能な色変化を生じることにより選択される。適当な酵素の例には上に記載したものが含まれる。上で述べた色素発生性基質ではなく、蛍光性産物を生ずる蛍光発生性基質を採用することも可能である。全ての場合において、酵素で標識した抗体は、第一抗体−抗原複合体に添加し、結合させ、次いで余分な試薬を洗浄する。次いで、適切な基質を含む溶液を抗体−抗原−抗体複合体に加える。この基質は第二抗体に結合した酵素と反応し、定性的な可視シグナルを発する。この可視シグナルは、通常は分光高度計によりさらに定量化して試料中に存在した抗原の量の指標を与える。
【0102】
また、フルオレセイン、ローダミン及びランタニド、ユーロピウム(EU)などの蛍光化合物は、その結合能力を変えることなしに抗体と化学的に共役しうる。ある特定の波長の光での照射により活性化された場合、蛍光色素で標識した抗体は光エネルギーを吸収して分子を励起状態に誘導し、その後、光学顕微鏡で可視的に検出できる特有の色の光を放射する。蛍光で標識した抗体は第一抗体−抗原複合体に結合させられる。結合していない試薬を洗い落とした後、残りの三重複合体を次に適切な波長の光に曝す。蛍光が観察されれば、それは目的の抗原の存在を表す。免疫蛍光定量検定(IFMA)は当分野では充分に確立されており、特に本方法で有用である。しかしながら、放射性同位元素、化学発光性又は生物発光性の分子のような他のレポーター分子も採用して良い。
【0103】
LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体はまた、特に血清又は他の循環液中のLIMキナーゼをELISAで検出するのにも用いうる。これは抗LIMキナーゼ抗体を固体支持体に固定化しこれらの固定化抗体を血清、血液、リンパ液又は他の体液、細胞抽出物又は細胞生検などの生物学的抽出物と接触させるなどの幾つかの方法で行いうる。次に標識された抗LIMキナーゼ抗体を用いて固定されたLIMキナーゼを検出する。この検定は様々な方法で修正され、どの変法も本発明に包含される。このアプローチは、例えば血清に基づく検定を用いた、LIMキナーゼレベルの迅速な検出及び定量化を可能にする。
【0104】
別の実施態様では、検出方法は、LIMキナーゼをコードするポリヌクレオチドの細胞における発現レベルを検出する工程を含む。該ポリヌクレオチドの発現は任意の適切な技術を用いて測定して良い。例えば、LIMキナーゼをコードする標識されたポリヌクレオチドを、細胞から得られるRNA抽出物のノーザンブロットにおけるプローブとして利用しても良い。RT・PCRなどの核酸増幅反応においては、動物由来の核酸抽出物を、該キナーゼ又はその両側に隣接する配列をコードするポリヌクレオチドのセンス配列及びアンチセンス配列に相当するオリゴヌクレオチドプライマーと共に用いることが好ましい。様々な自動化した固相検出技術もまた適当である。例えば、極めて大規模な固定化プライマーアレイ(VLSIPS(商標))は、例えばフォーダーら(Science 251: 767-777, 1991)及びカザールら(Nature Medicine 2: 753-759, 1996)に記載されているように、核酸の検出に用いられる。上述の遺伝子技術は当業者らに良く知られている。
【0105】
例えば、RNA転写物をコードするLIMキナーゼを検出するには、RNAを、例えばヒトの癌組織から単離された総RNAなどの、LIMキナーゼRNAを含んでいると思われる細胞試料から単離する。RNAは、例えばTRIZOL(商標)試薬(ギブコ−BRL/ライフ テクノロジーズ、ゲーサーズバーグ、メリーランド州)を用いて、当分野で知られている方法で単離できる。オリゴ−dT、又は不規則配列オリゴヌクレオチド、並びに配列特異的オリゴヌクレオチドは、単離したRNAから最初のcDNA鎖を調製するための逆転写酵素反応におけるプライマーとして採用できる。その結果生じる最初のcDNA鎖を次いでPRC反応において配列特異的オリゴヌクレオチドで増幅すると、増幅産物が得られる。
【0106】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又はPCRは、核酸、RNA及び/又はDNAの事前に選択された断片の量を米国特許第4,683,195号に記載されているように増幅する手順又は技術を指す。一般的に、目的の領域の末端又はそれを越えた領域からの配列情報は、オリゴヌクレオチドプライマーの設計するのに用いられる。これらのプライマーは増幅対象となる鋳型の反対鎖と配列において同一か又は類似する。PCRは特定のRNA配列及び総細胞RNAから転写されたcDNAを増幅するのに用いることができる。一般的には、マリスら(Quant. Biol. 51: 263, 1987 、アーリック編,PCRテクノロジー、ストックトンプレス、ニューヨーク州、1989)を参照されたい。従って、PCRによる特定の核酸配列の増幅は、ヌクレオチドの保存配列を有するオリゴヌクレオチド即ち「プライマー」に依存し、この保存配列は関連する遺伝子又はタンパク質配列の整列、例えば哺乳類LIMキナーゼ遺伝子の配列比較、から推論される。例えば、アンチセンス鎖とアニールすると予測される一つのプライマーを調製し、LIMキナーゼをコードするcDNA分子のセンス鎖とアニールすると予測される別のプライマーを調製する。
【0107】
増幅産物を検出するためには、反応混合物は通常、アガロースゲル電気泳動法又は他の便利な分離技術にかけられ、LIMキナーゼに特異的な増幅DNAの相対的な存在を検出する。例えば、LIMキナーゼ増幅DNAは、特定のオリゴヌクレオチドプローブとのサザンハイブリダイゼーションを用いて検出してもよく、比較は既知の分子量のDNA鎖による電気泳動の移動度である。増幅されたLIMキナーゼDNAの単離、精製及び特性決定は、ゲルから断片を切除又は溶出し(例えば、ローンら、Nucleic Acids Res. 2: 6103, 1981、ゲッデルら、Nucleic cids Res. 8: 4057- 1980の文献を参照)、増幅産物をpCRIIベクター(インビトロゲン)などの適切なベクターのクローニング部位にクローニングし、クローニングした挿入断片の配列を決定し、そのDNA配列をLIMキナーゼの既知の配列と比較することにより行われうる。次いで、LIMキナーゼmRNA及びLIMキナーゼcDNAの相対量を測定できる。
【0108】
実時間PCRは、PCRを用いて増幅したLIMキナーゼ遺伝子の転写レベルを測定するのに特に有用である。転写活性の測定には、入手可能なmRNA転写物に基づく潜在的な転写活性の測定も含まれる。実時間PCR並びに他のPCR手法は、DNA結合蛍光団、5’エンドヌクレアーゼ、隣接する直鎖オリゴプローブ及びヘアピンオリゴプローブ、及び自己蛍光性アンプリコンの結合を含むPCR産物の検出のために多くの化学技術を用いる。これらの化学技術及び実時間PCRは、例えばマッカイら,Nucleic Acids Res 30(6):1292-1305, 2002、ウォーカー,J. Biochem. Mol. Toxicology 15(3): 121-127, 2001、ルイスら,J. Pathol. 195: 66-71, 2001により一般的に論じられている。
【0109】
本発明は、LIMキナーゼレベルの上昇を示す細胞を含む任意の癌の検出に用いうる。一般的に、この癌は非浸潤性というより浸潤性であろう。
【0110】
本方法は、例えば骨髄系、リンパ系又は赤血球系の系統、又はそれらの前駆細胞などの造血器官起源の過形成/新生の細胞の検出に用いうる。例えば本発明は、急性前骨髄性白血病(acute promyeloid leukemia)(APML)、急性骨髄性白血病(AML)、及び慢性骨髄性白血病(CML)を含むがこれらに限定しない様々な骨髄性障害の検出を包含する。本方法で検出され得るリンパ球悪性腫瘍には、B系ALL及びC系ALL、慢性リンパ球白血病(CLL)、前リンパ球性白血病(PLL)、毛様細胞性白血病(HLL)及びヴァルデンストレームマクログロブリン血症(WM)を含む急性リンパ芽球性白血病(ALL)が含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法で検出できる悪性リンパ腫の更なる種類には、非ホジキンリンパ腫及びその変種、周辺T細胞リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATL)、皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)、大顆粒リンパ性白血病(LGF)及びホジキン病が含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
本方法はまた、肺道、乳路、リンパ球管、胃腸管及び泌尿生殖器道に影響を与えるもの、並びに殆どの結腸癌、腎細胞癌、前立腺癌及び/又は精巣腫瘍、肺の非小細胞性癌、小腸癌及び食道癌などの悪性腫瘍を含む腺癌などの様々な器官系の悪性腫瘍を検出するのに使用できる。本発明の方法に基づいて検出できる固形癌には、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルム腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、黒色腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、及び網膜芽細胞腫などではあるがこれらに限定されない肉腫及び悪性腫瘍が含まれる。卵巣癌、乳癌及び黒色腫の検出が特に好ましい。
【0112】
用語「新形成」の一般的な医学的な意味は、例えば新生細胞増殖などの正常な増殖の制御に対する応答性の喪失から生ずる「新しい細胞の増殖」を指す。「過形成」は異常に高速の増殖をしている細胞を指す。しかしながら、本明細書で用いられるとき、用語「新形成」及び「過形成」は、一般的に以上な細胞増殖速度を示している細胞を指し、互いに置き換えて用いることができる。新形成及び過形成は、良性、前癌性、若しくは悪性のいずれかである「腫瘍」を含む。
【0113】
本明細書で用いるとき、用語「過増殖(hyperproliferative)」及び「新形成」は、互換的に使用され、急速な増殖又は新生物で特徴付けられる異常な状況又は状態にあるこれらの細胞を指す。これらの用語は、非浸潤性の組織病理学的な種類又は状態に関係なく、全ての種類の癌性増殖又は腫瘍形成の過程、転移性組織又は悪性に転じた細胞、組織又は器官を含むことを意図する。「病理学的過増殖」細胞は、悪性腫瘍増殖を特徴とする疾病状態で発生する。
【0114】
用語「癌腫(carcinoma)」は当業者らにより認められており、呼吸器系癌、胃腸系癌、泌尿生殖器系癌、精巣癌、乳癌、前立腺癌、内分泌系癌及び黒色腫を含む、上皮組織又は内分泌組織の悪性腫瘍を指す。具体的な癌としては、頚部、肺、前立腺、乳腺、頭及び首、結腸、及び卵巣の組織から生成するものが挙げられる。この用語はまた、例えば癌性及び肉腫性組織で構成される悪性腫瘍を含む癌肉腫を含む。「腺癌」は腺組織に由来する癌腫、又はその中で腫瘍細胞が識別可能な腺構造を形成する癌腫を指す。
【0115】
癌に特異的な分子としてLIMキナーゼを同定したことから、癌細胞の増殖を破壊するか又は少なくとも遅らせる標的に向かう物質を作成することが可能になる。とりわけ、LIMキナーゼに特異的な抗体を含む癌を標とする物質を、細胞増殖阻害物質又は殺細胞物質と融合、結合またはその他の方法で結び付ける。このような物質には、タンパク質レベルで又は対応するmRNA若しくはDNAレベルで作用する殺細胞性物質又は細胞増殖抑制性物質が含まれるがこれらに限定されない。例えば、細胞増抑制殖物質又は殺細胞物質は、核標識であっても良いし又はLIMキナーゼRNAi又はRNAオリゴヌクレオチドの拮抗薬の誘発を促進する物質であっても良い。
【0116】
従って、本発明の別の一側面は癌を有する患者を治療する方法であって、ヒトLIMキナーゼに特異性を有し実質的に非免疫原性でありさらに細胞増殖抑制物質若しくは殺細胞物質を融合、結合若しくはその他の方法で結び付けられた抗体を、癌細胞の増殖を抑制するのに効果的な量で該ヒトに投与する工程を含む方法を意図する。
【0117】
また別の実施態様では、本発明は癌または関連する状態を有する患者を治療する方法であって、LIMキナーゼの活性を阻害するか又はLIMキナーゼのレベルを減少させて癌細胞の増殖を低減させるのに十分な時間及び条件の下で、該患者にある物質をLIMキナーゼを抑制するのに効果的量で投与する工程を含む方法を提供する。
【0118】
この物質は、LIMキナーゼ活性の修飾因子の一例である。このような物質はLIMキナーゼ自体に、又はLIMキナーゼ遺伝子若しくはLIMキナーゼmRNAの発現に作用する場合がある。この物質は化学的類似体などのLIMキナーゼの誘導体であっても良く、又は自然産物スクリーニング若しくは化学ライブラリーのスクリーニングの後に同定化しても良い。ある状況では、修飾因子は細胞増殖が促進される状況において作用薬となることがある。
【0119】
本発明は更に、LIMキナーゼの活性又は遺伝子発現のモジュレーターとして作用できる物質、及び薬学的に許容しうる一つ以上の担体及び/又は希釈剤を含む組成物を意図する。
【0120】
注射使用に適した医薬的な剤形には無菌水溶液が含まれる。これらは製造及び保存の条件下で安定していなければならず、細菌や菌類などの微生物の汚染作用から保護されていなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物及び植物油を含む溶媒又は希釈培地であり得る。適切な流動性は、例えばスーパーファクタント(superfactant)の使用により維持できる。微生物の作用の阻止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌物質及び抗真菌物質により達成することができる。多くの場合、例えば糖や塩化ナトリウムなどの等張性物質を含めることが好ましい。注射用組成物の持続吸収性は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収を遅延させる物質を組成物に入れて用いることによりもたらされる。
【0121】
無菌注射溶液は、必要量の活性化合物を、活性成分及び任意選択的に他の必要な活性成分と適当な溶媒中に混合し、その後濾過滅菌又は他の適切な滅菌処理を行なって調製する。
【0122】
薬学的に許容しうる担体及び/又は希釈剤には、溶媒、分散媒、被覆剤、抗細菌物質及び抗真菌物質、等張物質及び吸収遅延物質などのいずれか又は全てが含まれる。このような培地及び物質の医薬的な活性物質への使用は当分野では良く知られており、従来の培地又は物質が活性成分と配合禁忌である場合を除き、これらを治療組成物に使用することが意図される。補充的な活性成分もまた組成物に混合できる。別の実施態様では、本発明はアンチセンス、センス及びリボザイム構築物又はRNAiもしくはRNAオリゴヌクレオチドなどの遺伝子構築物を意図する。このような遺伝子構築物もまた、DNAワクチン組成物と呼ばれ、特にLIMキナーゼをコードするヌクレオチド配列の転写レベル又は翻訳レベルでの発現の調節に向けられる。
【0123】
従って、本発明の別の側面は、癌を有する患者を治療する方法であって、LIMキナーゼをコードする遺伝子の発現を低レベルに調節する遺伝子構築物を含む遺伝子組成物を該ヒトに投与する工程を含む方法を意図する。
【0124】
本明細書で言う「発現」は、転写、翻訳又はこれら双方の工程を低レベルに調節することを含む。特に好ましい遺伝子構築物は、LIMキナーゼ遺伝子の共抑制を誘発するか、又はRNAiが媒介するLIMキナーゼmRNA転写物の低レベル調節を誘発する、LIMキナーゼに対するアンチセンス構築物である。
【0125】
本発明は更に、患者由来の癌の疑いがある細胞のLIMキナーゼの相対レベルを測定するための定量的又は半定量的な診断キットの製造における、LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体の使用を意図する。このキットは使用説明書が付属していても良く、自動化又は半自動化されていても良く、また自動化された機械またはソフトウェアに適合する形であっても良い。
【0126】
LIMキナーゼに対する抗体の作成は、本発明に基づき、この分子の活性形または非活性形に対して行なわれても良い。活性なLIMキナーゼ、即ちトレオニン又はキナーゼ領域の活性ループ内のその同等物のリン酸化により活性化されたLIMキナーゼに対する抗体は、LIMキナーゼ活性の増加又は減少の検出に特に有用である。従って本発明は、異なってリン酸化されたLIMキナーゼに対する抗体、及びLIMキナーゼ活性を阻害する物質のスクリーニングにおけるその使用に及ぶ。
【0127】
本発明は、以下の非限定的な実施態様により更に説明される。
【実施例1】
【0128】
癌細胞中の上昇したLIMキナーゼの検出
LIMキナーゼに対するラットモノクローナル抗体を作成し、様々な正常細胞株及び癌細胞株中のLIMキナーゼ(LIMK)のウェスタンブロット分析に用いた。各ウェルへの添加レベルを制御するため、細胞をネズミモノクローナル抗−HSP−70抗体でプローブした。その結果を図1に示す。
【0129】
LIMKタンパク質発現は、検査した全ての組織培養細胞中で検出された。非形質転換細胞株である293T(レーン3)とNIH−3T3(レーン4)で、低レベルが検出された。中レベルはマウス嗅上皮細胞(4.4.2,レーン1)で発現した。Ras形質転換したNIH−3T3繊維芽細胞(レーン5)、非転移性ヒト乳上皮癌(MCF−7,レーン6)、非転移性ヒト前立腺癌(LNCap,レーン7)及び形質転換サル腎臓上皮細胞(COS−7,レーン2)。高レベルのLIMKは転移性ヒト前立腺癌(PC−3,レーン8)及び転移性ヒト乳癌(MDA・MB231)で発現した。
【0130】
これらの結果は、LIMキナーゼが癌細胞において正常細胞と比べて高レベルに調節され、転移性癌では更に高レベルで発現し、従ってLIMキナーゼが非転移性及び転移性癌の発生のマーカーであることを示す。癌細胞が、非癌細胞と比べて高レベルの活性化LIMK(より高い分子量帯域)を含むことも注目すべきである。
【実施例2】
【0131】
LIMKの過剰発現は非転移性乳癌細胞において浸潤性を誘発する
LIMK1をコードする遺伝子配列を含む発現構築物をpCDNAベクターにクローニングし、非転移性ヒト乳上皮癌細胞株、MCF−7に、標準技術を用いてトランスフェクトする。LIMK1をコードする配列を1、2又は3コピー有する発現構築物を含むベクターを作成する。比較のため、細胞をvRhoA及びΔ4ROCKを含むベクターでもトランスフェクトする。
【0132】
ベクター単独でトランスフェクトしたMCF−7細胞は、特に浸潤性ではなく、1,000個より少ない細胞を浸潤する。これはこれらの細胞の既知の非転移的な性質と一致する。しかしながら、LIMK1を一、二又は三コピーでトランスフェクトした場合、MCF−7細胞は浸潤性がより増加する。
【実施例3】
【0133】
LIMKは転移性ヒト乳癌細胞の浸潤性を増加させる
転移性ヒト癌細胞の浸潤の程度に対するLIMK1の効果を検査する。LIMK1をコードする配列又はそのドミナントネガティブ(DN)変異体を含む若しくは含まないベクターを標準的手法を用いて転移性ヒト乳癌細胞株であるMDA−MB−231中にトランスフェクトする。LIMK1をコードする配列又はそのドミナントネガティブ(DN)変異体を一、二又は三コピー有する発現構築物を含むベクターを作成して用いる。次いで、LIMK1トランスフェクト、DN−LIMK1トランスフェクト及びベクタートランスフェクトした乳癌細胞による浸潤の程度をマトリゲルチャンバーで検査する。
【0134】
単独のベクターでトランスフェクトした転移性MDA−MB−231細胞は、非転移性細胞株MCF−7よりも浸潤性が高い。一、二又は三コピーのLIMK1でトランスフェクトした場合、MDA−MB−231細胞は更に浸潤性が高くなる。
【0135】
MDA−MB−231をLIMK−DN変異体でトランスフェクトすると、その浸潤性は逆転する。
【実施例4】
【0136】
インビボでの骨へのMDA−MB−231乳癌細胞の転移
LIMK1を発現するインビボのヒト癌細胞の浸潤性の程度を実証する。ヌードマウスにMDA−MB−231ヒト乳癌細胞を心臓内注射する。この乳癌細胞はベクター単独又はLIMK1をコードする遺伝子配列を含むベクター又はLIMK1のドミナントネガティブ(DN)変異体をコードする遺伝子配列を含むベクターでトランスフェクトされている。
【0137】
3週間後、動物を犠牲にし、分析する。この結果は、ベクター単独を受容した動物と比べて、野生型LIMK1をコードする配列でトランスフェクトした細胞を受容した動物では転移が2倍であることを示す。さらに、ドミナントネガティブ変異体を含むベクターでトランスフェクトした細胞を受容した動物では、転移は実質的に消滅している。この転移の程度は同時に行なわれた病巣の数及びそれぞれの場合におけるその大きさの分析と合致する。
【0138】
さらに、マウスの骨格構造を調べ、マウスの骨格への浸潤の程度をLIMKに特異的なラットモノクローナル抗体の検出によるLIMK1の可視化により測定する。これはLIMK1を発現するMDA−MB−231細胞中のLIMK1がマウスの骨格構造全体に転移することを確認する。
【実施例5】
【0139】
ヒトの癌組織生検におけるLIMキナーゼの発現
ヒトにおける転移性癌及び非転移性がんの予測的テストとしてのLIMキナーゼの確認は、とりわけ乳房、前立腺、腎臓及び結腸を含む様々な癌細胞型からの生検材料を用いて行う。
【0140】
組織試料(少なくとも、各指標に付き100)を入院している癌患者から採取し、後の分析用に凍結する。各組織試料は、ウェスタンブロットとELISAの二つの方法の一方または両方を用いて、LIMキナーゼの発現について検査する。
【0141】
(a)ウェスタンブロット分析
冷凍生検組織試料の総タンパク質を抽出し、定量化する。タンパク質の一部(50μg)を10%w/vのポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、標準技術を用いてニトロセルロース濾紙上に移す。次いでこの濾紙をラット抗−LIMキナーゼモノクローナル抗体で精査してLIMキナーゼを可視化する。
【0142】
(b)ELISA
冷凍生検視組織試料又は血清若しくは血液の総タンパク質を抽出し、定量化する。次いでLIMK1の発現を標準的手法の後にELISAテストを用いて可視化する。
【実施例6】
【0143】
ヒト前立腺癌におけるLIMキナーゼのインビボ発現の影響
LIMK1をコードする遺伝子配列を含む発現構築物をpEGFPベクターにクローニングし、非転移性ヒト前立腺癌細胞株、LNCap及びC−4に標準的技術を用いてトランスフェクトする。LIMK1をコードする配列を一、二又は三コピー有する発現構築物を含むベクターを作成する。対照として、空ベクターのトランスフェクションも実施する。
【0144】
同時に、ベクター単独及びLIMK1をコードする配列を含むベクターも転移性ヒト前立腺癌細胞株、PC−3及びDU−145にトランスフェクトする。この場合、ドミナントネガティブLIMK変異体をコードする配列を含むベクターも用いる。
【0145】
全ての場合に、各処理用に三つの細胞株及びそれぞれの対照用に一つの細胞株を、マトリゲルチャンバー上での更なる分析のために選択する。
【0146】
この結果は、ベクター単独でトランスフェクトされた非転移性のLNCap及びC−4細胞は、特に浸潤性であるわけではないことを示すであろう。しかしながら、単一、二又は三コピーのLIMK1でトランスフェクトした場合、LNCap及びC−4細胞は、乳癌細胞でそうであったように、ますます浸潤性が高くなる。
【0147】
比較により、転移性細胞株PC−3及びDU−145は、単一、二又は三コピーのLIMK1でトランスフェクトした場合、空ベクターだけでトランスフェクトしたものよりも更に高い浸潤性を示す。乳癌のように、LIMK−DN変異体で転移性PC−3及びDU−145細胞をトランスフェクトすると、その浸潤性は逆転する。
【実施例7】
【0148】
インビボでのヒト前立腺癌細胞の転移
LIMK1を発現するヒト前立腺癌細胞のインビボでの浸潤性の程度も、乳癌細胞で実施したのと類似の方法で測定する。ヌードマウスに選択したヒト前立腺癌細胞を心臓内注射する。これらの細胞はベクター単独、又はLIMK1をコードする遺伝子配列を含むベクター、又はLIMK1のドミナントネガティブ変異体をコードする遺伝子配列を含むベクターでトランスフェクトしてある。
【0149】
3週間後、動物を犠牲にし、分析する。その結果は、ベクター単独を受容した動物と比べて、野性型のLIMK1をコードする配列でトランスフェクトした細胞を受容した動物で転移の程度が高いことを示すであろう。更に、ドミナントネガティブ変異体を含むベクターでトランスフェクトした細胞を受容した動物では、転移は実質的に消滅している。マウスの骨格構造及び骨への浸潤の程度の検査は、LIMK1に特異的なラットモノクローナル抗体の検出によりLIMK1を可視化して測定する。
【実施例8】
【0150】
実時間PCR
LIMキナーゼ遺伝子発現は、転写活性の測定に用いても良い。上昇した転写活性が癌細胞で予測されうる。実時間PCRは特に遺伝子発現の測定法として便利である。実時間PCRの方法は、マッカイら,2002,上掲、ウォーカー,2001,上掲、及びルイスら,2001,上掲に見られるであろう。上昇した転写活性の検出は癌又は癌の発生を示す。
【実施例9】
【0151】
転移性黒色腫及び卵巣癌組織における上昇したLIMK1の検出
ウェスタンブロット分析を用いて、細胞下部と正常組織を比べ、極めて高レベルのLIMK1発現が、ヒト黒色腫及び卵巣癌組織で検出された。これらの組織におけるLIMK1のレベルは、これらの組織中の総タンパク質の0.1%にもなる程高いと推定される。この結果を図2に示す。
【実施例10】
【0152】
転移性の前立腺、肺、及び乳の癌組織におけるLIMK1発現の免疫化学分析
パラフィンに埋め込んだ組織切片をラット抗LIMK1モノクローナル抗体で染色した。転移性腫瘍は茶色に見える高レベルのLIMK1タンパク質を示すが、正常組織は示さない(図3)。この図では、(A)は正常な乳腺組織、(B)は転移性乳癌、(C)は正常な肺組織、(D)は転移性肺癌、(E)は転移性前立腺癌組織(濃褐色)と隣接する正常組織であり、(F)は前立腺組織の同基準標本対照である。
【実施例11】
【0153】
LIMK1阻害剤の探索
特に転移性乳腺細胞株及び前立腺細胞株の浸潤性をインビボで阻害又は抑制するのに潜在的に有用なLIMK1活性の阻害剤を探索する。
【0154】
(a)ポリクローナル抗体の作成
リン酸化したLIMK1を認識するポリクローナル抗体を作成する。これらの抗体は、処理量が高い一時スクリーンで、LIMキナーゼのリン酸化を阻害する化合物を探すのに用いられる。GFP−LIMK1を発現する細胞をマイクロタイタープレートに播種し、阻害剤の存在下又は非存在下で24時間培養した後、溶解する。フルオレセインで標識された抗ホスホLIMK1抗体を添加し、蛍光(FRET)の変化を測定する。LIMKリン酸化が阻害され抗体がGFP−LIMK1に結合できなければ、FRETの変化は観察されないであろう。
【0155】
(b)二次スクリーンによる検証
LIMK1活性を阻害する能力、即ち、上述の実施例2、3及び6で記載さたのと同様の方法を用いてそのインビトロの転移性乳腺細胞株及び前立腺細胞株の浸潤性を阻害する能力について、陽性の「ヒット」を検査する。活性分子が一旦同定されると、これらを上述の実施例4及び7に記載の転移性疾病のインビボモデルでテストする。
【0156】
当業者らは、本明細書に記載の発明が具体的に記載されたもの以外のものに変化及び修正を許すことを認めるであろう。本発明が、このような変化形及び修正形を全て含むことを理解されたい。本発明はまた、本明細書で言及した又は示した全ての工程、特性、組成物及び化合物を個々にまたは集合的に含み、該工程若しくは特性のいずれか二つ以上の組み合わせのいずれか又は全てを含む。
【0157】
引用文献
1. アダムスら、Cancer Res. 53: 4026-4034, 1993。
2. ブリンクリーら、米国特許第5,326,692号.
3. コーシアら、J. Mol. Biol. 196: 901, 1987。
4. コーシアら、J. Mol. Biol. 227: 799, 1992。
5. シューら。(米国特許第6,056,957号)。
【0158】
6. コリガンら、"Current Protocols in Immunology",ジョン ワイリー アンド サンズ インコーポレイテッド,1991-1997。
7. カンバーら、J. Immunol. 149: 120-126, 1992。
8. デービーズとリーヒマン、FEBS Lett. 339: 285-290, 1994。
9. ダワーら、国際特許公開番号 WO93/06121。
10. アーリック編、PCRテクノロジー、ストックトンプレス、ニューヨーク州、1989。
【0159】
11. ヨーロッパ特許公開第0239400。
12. フォーダーら、Science 251: 767-777, 1991。
13. ゲフテルら、Somatic Cell Genet. 3: 231-236, 1977。
14. グロックシューバーら、Biochem. 29: 1363-1367, 1990。
15. ゲッデルら、Nucleic Acids Res. 8: 4057, 1980。
【0160】
16. ハマーズ−キャスターマンら、Nature 363: 446-448, 1993。
17. ジョーンズら、Nature 321: 522-525, 1986。
18. カバットら、"Sequences of Proteins of Immunological Interest",米国ディパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サイエンス,1983。
19. カザールら、Nature Medicine 2: 753-759, 1996。
20. ケネットら編、"Monoclonal Antibodies and Hybridomas: A New Dimension in Biological Analyses", 376-384,プレナムプレス,ニューヨーク州,1980.
【0161】
21. ケーラーとミルシュタイン、Eur. J. Immunol. 6(7): 511-519, 1976。
22. ケーラーとミルシュタイン、Nature 256: 495-499, 1975。
23. コステルニーら、J. Immunol. 148: 1547-1553, 1992。
24. コズボーら、Methods in Enzymology 121: 140, 1986。
25. クレベルら、J. Immunol. Methods 201(1): 35-55, 1997。
【0162】
26. クーとシュッツ、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6552-6556, 1995。
27. ローンら、Nucleic Acids Res. 2: 6103, 1981。
28. ルイスら、J. Pathol. 195: 66-71, 2001。
29. リューら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 3439-3443, 1987。
30. マッカイら、Nucleic Acids Res 30(16): 1292-1305, 2002。
【0163】
31. モーガンら。(米国特許第6,180,377)。
32. マリスら、Cold Spring Harbor Symp., Quant. Biol. 51: 263, 1987。
33. オーライリーら、Biotechniques 25: 824-830, 1998。
34. プリュックサンら、In Antibody engineering: A Practical approach, 203-252, 1996。
35. プリュックサン、Biochem. 31: 1579-1584, 1992。
【0164】
36. クイーンら。(米国特許第6,180,370)。
37. ライターら、Biochem. 33: 5451-5459, 1994。
38. ライターら、Cancer Res. 54:2714-2718, 1994。
39. ライターら、J. Biol. Chem. 269: 18327-18331, 1994。
40. リッチマンら、Nature 332: 323-327, 1988。
【0165】
41. シャルマンら、Nature 276: 269-270, 1978。
42. シンガーら、米国特許第5,573,909。
43. トーヤマら、"Monoclonal Antibody, Experiment Manual", コーダンシャ サイエンティフィックより出版,1987。
44. トローブリッジ、J. Exp. Med. 148(1): 313-323, 1978。
45. バーホイエンら、Science 239: 1534-1536, 1988。
【0166】
46. フォルクら、J. Viol. 42(1): 220-227, 1982。
47. ウォーカーら、J. Biochem. Mol. Toxicology 15(3): 121-127, 2001。
48. ウォードら、Nature 341: 544-546, 1989。
49. ウェーバーら、Mol. Immunol. 32: 249-258, 1995。
50. ウィンターとミルシュタイン、Nature 349: 293, 1991。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1は、様々な正常、非転移性及び転移性組織培養細胞株におけるLIMキナーゼ(LIMK)タンパク質発現のウェスタンブロット分析の写真である。上段:ラット抗LIMKモノクローナル抗体を用いたLIMKの検出。下段:マウスモノクローナル抗HSP−70抗体を用いてタンパク質負荷を実証するための一般的な熱ショックタンパク質(HSP−70)の検出。レーン1:NIH3T3線維芽細胞、レーン2:Ras形質転換NIH3T3線維芽細胞、レーン3:MCF−7(非転移性乳癌細胞株)、レーン4:LNCap(非転移性前立腺癌細胞株)、レーン5:PC−3(転移性前立腺癌細胞株)、レーン6:MDA・MB231(転移性乳癌細胞株)。
【図2】図2は、細胞株と比較してヒト転移性黒色腫及び卵巣癌組織におけるLIMK1・Iタンパク質を示すLIMK1発現のウェスタンブロット分析の写真である。転移性卵巣癌組織(第1〜第7レーン)、転移性黒色腫(第9〜第12レーン)及び癌細胞株(第13〜第15レーン)から抽出したタンパク質溶解物50μg中の、LIMK1の内因性発現。
【図3】図3は、ヒト転移性腫瘍及び正常組織におけるLIMK1タンパク質の免疫組織化学染色を示す写真である。パラフィンに埋め込まれた組織を抗LIMK1抗体(A〜E)又は同基準標本適合対照(F)で染色した。(A)正常な肺組織、(B)転移性肺癌、(C)正常な乳腺組織、(D)転移性乳癌組織、(E)転移性前立腺癌及び(E)イソ形適合対照。
Claims (34)
- 被験体又は該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法であって、該被験体又は該生体試料由来の細胞、細胞抽出物、血清、若しくは他の試料を、LIMキナーゼ若しくはその抗原部分に特異的な免疫相互作用分子と接触させる工程及び免疫相互作用分子−LIMキナーゼ複合体形成のレベルをスクリーニングする工程を含み、正常細胞と比べて高い該複合体の存在が異常細胞を示すものである方法。
- 被験体が哺乳動物である、請求項1の方法。
- 被験体がヒトである、請求項2の方法。
- 免疫相互作用分子が免疫グロブリンである、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
- 免疫グロブリンがモノクローナル抗体である、請求項4の方法。
- 免疫グロブリンがポリクローナル抗体である、請求項4の方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ1である、請求項1の方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ2である、請求項1の方法。
- 被験体又は該被験体由来の生体試料中の異常細胞を検出する方法であって、LIMキナーゼをコードする遺伝子の発現産物のレベルをスクリーニングする工程を含み、正常細胞と比べて高い該発現産物のレベルが異常細胞を示すものである方法。
- 被験体が哺乳動物である、請求項9記載の方法。
- 被験体がヒトである、請求項10記載の方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ1である、請求項9記載の方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ2である、請求項記載9の方法。
- 発現産物がmRNA又はcDNAである、請求項記載9の方法。
- 被験体における癌又は癌様増殖の存在を診断する方法であって、該被験体若しくは該被験体由来の生体試料からの細胞若しくは細胞抽出物を、LIMキナーゼ結合に効果的な量の該LIMキナーゼ又はその上の抗原決定基若しくはエピトープに特異性を有する抗体と接触させる工程、及び次にLIMキナーゼ−抗体複合体のレベルを定量的又は定性的に測定する工程を含み、正常細胞と比べて高レベルの該複合体の存在が癌の存在を示すものである方法。
- 被験体における癌の存在を診断する方法であって、該被験体細胞から若しくは該被験体由来の生体試料からmRNAを取得しそして任意選択的にcDNAを作成する工程、及び該mRNA又はcDNAを、LIMキナーゼをコードするヌクレオチド配列若しくはその相補的なヌクレオチド配列の全部又は部分とハイブリッド形成できる及び/又はそれらを増幅できる遺伝子プローブと接触させる工程、次いで該mRNA又はcDNAのレベルを検出する工程を含み、正常細胞と比べて高いレベルの該mRNA又はcDNAの存在量が癌の存在を示すものである方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ1である、請求項15又は請求項16記載の方法。
- LIMキナーゼがLIMキナーゼ2である、請求項15又は請求項16記載の方法。
- 被験体が哺乳動物である、請求項15又は請求項16記載の方法。
- 哺乳動物がヒトである、請求項19記載の方法。
- mRAレベルがPCRによって測定されるものである、請求項16記載の方法。
- PCRが実時間PCRである、請求項21記載の方法。
- LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体によって認識されるエピトープに特異性を有する脱免疫化抗体分子であって、該脱免疫化抗体の可変ドメインのCDRの少なくとも一つが該LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体に由来するものであり、該脱免疫化抗体分子の残りの免疫グロブリンに由来する部分がその抗体がそれに対して脱免疫化される宿主由来の免疫グロブリン若しくはその類似体に由来するものである脱免疫化抗体分子。
- ヒト患者における癌細胞を検出する方法であって、レポーター分子で標識されたヒトLIMキナーゼ若しくはその上の抗原決定基に特異的な非ヒト由来のモノクローナル抗体の脱免疫化形を該患者に導入する工程、循環系全体又は循環系の選択した部分に標識された抗体を拡散させる工程、次いで該患者をレポーター分子検出手段にかけて抗体の位置を同定する工程を含む方法。
- 癌が造血器官起源の過形成/新生物の細胞を含むものである、請求項24記載の方法。
- 癌が、急性前骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、前リンパ性白血病、毛様細胞性白血病又はヴァルデンストレームマクログロブリン血症から選択される、請求項25記載の方法。
- 癌が乳癌である、請求項25又は請求項26記載の方法。
- 癌が、肺道、胃腸管、又は泌尿生殖路の中にある、請求項25又は請求項26記載の方法。
- 癌が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫、滑膜性腫瘍、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭状癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝臓癌、胆管癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルム腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫(oliogdendroglioma)、髄膜腫、黒色腫、神経芽細胞腫、又は網膜芽細胞腫である、請求項25又は請求項26記載の方法。
- 癌を有する患者を治療する方法であって、ヒトLIMキナーゼに特異性を有し、実質的に非免疫原性であり、それに細胞増殖阻害物質若しくは殺細胞物質が更に融合、結合又はその他の方法で結び付いている抗体を癌細胞の増殖を阻害するのに効果的な量で投与する工程を含む方法。
- 癌又は関連症状を有する患者を治療する方法であって、該患者にLIMキナーゼの活性を阻害し又はLIMキナーゼのレベルを低減し又は癌細胞の増殖を低減させるのに十分な時間及び条件下でLIMキナーゼを阻害するのに効果的な量の物質を投与する工程を含む方法。
- LIMキナーゼ活性若しくはLIMキナーゼ遺伝子発現のモジュレーターとして作用できる物質、及び一つ以上の薬学的に許容しうる担体及び/又は希釈剤を含む組成物。
- 癌を有する患者を治療する方法であって、LIMキナーゼをコードする遺伝子の発現を低レベルに調節する遺伝子構築物を含む遺伝子組成物を該ヒトに投与する工程を含む方法。
- 患者由来の癌の疑いがある細胞におけるLIMキナーゼの相対的レベルを測定するための、定量的若しくは半定量的な診断キットの製造における、LIMキナーゼに対するモノクローナル抗体の使用。
Applications Claiming Priority (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
AUPR5965A AUPR596501A0 (en) | 2001-06-27 | 2001-06-27 | Diagnostic methods and agents |
US33036101P | 2001-10-18 | 2001-10-18 | |
PCT/AU2002/000834 WO2003003016A1 (en) | 2001-06-27 | 2002-06-27 | Diagnostic methods and agents |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004538452A true JP2004538452A (ja) | 2004-12-24 |
Family
ID=25646737
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003509148A Pending JP2004538452A (ja) | 2001-06-27 | 2002-06-27 | 診断法と診断薬 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US20050008643A1 (ja) |
EP (1) | EP1412754A4 (ja) |
JP (1) | JP2004538452A (ja) |
CA (1) | CA2452202A1 (ja) |
WO (1) | WO2003003016A1 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CA2513584A1 (en) * | 2003-01-20 | 2004-08-05 | Vib Vzw | The use of yop proteins or rho gtpase inhibitors as caspase-1 inhibitors |
CA2786730A1 (en) | 2010-01-22 | 2011-07-28 | Lexicon Pharmaceuticals, Inc. | 5-(1h-pyrazol-5-yl)thiazole-based compounds for the treatment of diseases and disorders of the eye |
US20120171694A1 (en) * | 2010-07-30 | 2012-07-05 | Vermillion, Inc. | Predictive markers and biomarker panels for ovarian cancer |
US9408832B2 (en) * | 2012-03-14 | 2016-08-09 | University Of Central Florida Research Foundation, Inc. | LIM kinasemodulating agents for neurofibromatoses therapy and methods for screening for same |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP0727487A1 (en) * | 1995-02-17 | 1996-08-21 | K.U. Leuven Research & Development | Multiple-tumor aberrant growth genes |
AU1339701A (en) * | 1999-10-22 | 2001-05-08 | Lifespan Biosciences, Inc. | Anti-cancer nucleic acid and protein targets |
DE60237917D1 (de) * | 2001-06-05 | 2010-11-18 | Exelixis Inc | Gfats als modifikatoren des p53-wegs und verwendungsverfahren |
-
2002
- 2002-06-27 EP EP02748418A patent/EP1412754A4/en not_active Withdrawn
- 2002-06-27 JP JP2003509148A patent/JP2004538452A/ja active Pending
- 2002-06-27 WO PCT/AU2002/000834 patent/WO2003003016A1/en not_active Application Discontinuation
- 2002-06-27 US US10/481,849 patent/US20050008643A1/en not_active Abandoned
- 2002-06-27 CA CA002452202A patent/CA2452202A1/en not_active Abandoned
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
CA2452202A1 (en) | 2003-01-09 |
WO2003003016A1 (en) | 2003-01-09 |
EP1412754A4 (en) | 2005-10-19 |
EP1412754A1 (en) | 2004-04-28 |
US20050008643A1 (en) | 2005-01-13 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP5847755B2 (ja) | 細胞を検出する方法、およびこれに有用な薬剤 | |
JP6691060B2 (ja) | 診断用の細胞表面前立腺癌抗原 | |
KR20090003308A (ko) | Reg4 단백질을 이용한 췌장암 진단 방법 | |
KR20100015438A (ko) | He4 모노클로날 항체 및 이의 사용 방법 | |
JP2008539271A (ja) | csPCNAイソ型抗体およびその使用 | |
JP2011157363A (ja) | Cyp1b1に特異的な抗体 | |
JP2022526131A (ja) | 肝細胞癌診断用バイオマーカーセレブロンと、これに特異的な新規なモノクローナル抗体 | |
JP2004538452A (ja) | 診断法と診断薬 | |
US9040018B2 (en) | Monoclonal antibodies against alpha-actinin-4 antigens, and uses therefor | |
WO2006123829A1 (ja) | PAP2aに対する抗体ならびにその診断的および治療的使用 | |
JPH06245791A (ja) | リン酸化ヒストンh1と非リン酸化ヒストンh1を識別するモノクローナル抗体及びその用途 | |
US20080241066A1 (en) | Anti-PRL-3 antibodies and methods of use thereof | |
KR102055350B1 (ko) | 대장암의 항암제 내성 진단용 바이오마커 및 이의 용도 | |
EP1701166A1 (en) | SP1 as a marker in diagnosis and prognosis of non-alcoholic steatohepatitis (nash) and target in drug screening for nash | |
CN107709362B (zh) | Igf-1r抗体及其用于癌症诊断的用途 | |
JP4628674B2 (ja) | 診断および治療の方法ならびにそのために有用な作用物質 | |
US10060925B2 (en) | Miox antibody and assay | |
JP4705469B2 (ja) | 抗bambi抗体、及びそれを含有する大腸癌及び肝臓癌の診断剤又は治療剤 | |
JP4473870B2 (ja) | 新規キメラ蛋白質およびそれをコードする遺伝子、並びに、これらの遺伝子と蛋白質を用いた白血病の判別手段 | |
JP6793514B2 (ja) | 新規甲状腺癌関連抗原に結合する抗体および甲状腺癌診断剤 | |
JP2022032795A (ja) | 子宮内膜癌の発症の予測方法 | |
JP2020520250A (ja) | Mrsに特異的に結合するモノクローナル抗体 | |
JPWO2006059712A1 (ja) | ヒトステロイドサルファターゼに結合するモノクローナル抗体 | |
JP2008503718A (ja) | 良性前立腺過形成のマーカーとしてのjm−27 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050615 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821 Effective date: 20060227 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20060227 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060315 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20070824 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20080319 |