以下、本発明の実施の形態を図面にもとづいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る天井埋込み形空気調和機を分解した斜視図、図2は空気調和機の断面図である。
天井埋込み形空気調和機として、被空調室の天井板に設けられる取付け用開口部に挿入され、吊りボルト等を介して天井裏(いずれも図示しない)に吊持固定される空気調和機本体(以下、筐体と呼ぶ)1を備えている。
筐体1は、下面部全面が開口されていて、この開口部1aに化粧パネル2が取付けられる。化粧パネル2は、筐体1に取付けられた状態で室内に露出するとともに、天井板に合わせた高さ位置になる。そして、化粧パネル2は、天井板に設けられる取付け用開口部と筐体1側面部との間隙を遮蔽している。
筐体1は、その長手方向が、長手方向と直交する方向である幅方向よりも長い、横長矩形箱状に成型される。下面開口部1aを除く他の面部全ての外装が、金属薄板を板金加工して成形され、内面には断熱材が組み込まれて断熱構造をなしている。
筐体1の幅方向両側面部1bには、それぞれ一対ずつの取付け用金具3が離間して取付けられる。それぞれの取付け用金具3は、上端部が筐体側面部1bから水平方向に突出する吊り金具部3Aとなっている。吊り金具部3Aは、突出端縁から側面部1bに向かって切欠き加工され、この切欠き部分が天井裏から吊持される吊りボルト(図示しない)に掛止される。
さらに、取付け用金具3は、下面開口部1aを形成する筐体1の下面端部に沿って折曲形成される固定金具部3Bを一体に備えている。この固定金具部3Bには、化粧パネル2の筐体1の取付け用と、後述するドレンパン10の取付け用としてのねじ孔が設けられる。
筐体1の一方(図の右側面)の側面部1bで、取付け用金具3の近傍部位に2本の冷媒接続管4と1本のケーブル用パイプ5端部が突出している。冷媒接続管4は、筐体1内に配置される後述する熱交換器10に連通されるとともに、これら冷媒接続管4には室外機から延出する冷媒渡り管(いずれも図示しない)が接続される。ケーブル用パイプ5には、室内機と室外機及び電源部と電気的に接続する渡りケーブル(図示しない)が挿通する。
筐体1内の幅方向における略半分の長さ位置には、仕切り板6が筐体の長手方向に亘って設けられる。したがって、筐体1内部は仕切り板6により、幅方向に二室7A,7Bに区分される。仕切り板6で区分される一方室を送風室7Aと呼び、ここには送風機8が配置される。仕切り板6で区分される他方室を熱交換室7Bと呼び、ここには熱交換器9と、この熱交換器の下部にドレンパン10が配置される。
送風機8は、中央部にファンモータFMを備えていて、このファンモータは左右両側部から回転軸100nが突出する二軸モータである。それぞれの回転軸100nには、回転にともなって軸方向から空気を吸込んで周方向へ吹出すタイプのファン(いわゆる多翼型ファン)Fが連結され、さらにそれぞれのファンFはファンケーシング8aで囲撓される。
ファンケーシング8aは、軸方向の両側部に空気吸込み案内用の開口部100mが設けられる。
ファンケーシング8aの仕切り板6側端部には吹出口体Kが突設され、仕切り板6に取付け固定される。仕切り板6には連通孔6aが開口され、ここにファンケーシング8aの吹出口体Kが接続される。したがって、連通孔6aは送風機8の駆動にともなってファンケーシング8aの吹出口体Kから吹出される風を、熱交換室7B側へ送風案内できる。
一方、熱交換室7Bに配置される熱交換器9は、後述する受け皿状のドレンパン10上にあり、上下方向が斜めに傾斜した姿勢で配置される。これは、筐体1の上下方向寸法を可能な限り短縮して薄型化を図るところから、熱交換器9の上下方向寸法を充分な長さに設定することができない。
その一方で、熱交換器9の熱交換面積を可能な限り確保して、熱交換効率の向上を図る必要がある。したがって、熱交換器9を上下方向に斜めに傾斜させた状態として、上下方向寸法を抑えながら、充分な熱交換面積を確保することができる。
このような熱交換器9を平面視で見た場合、この平面視面積よりも、ドレンパン10の平面視面積の方が大に形成されている。そのため、後述するような冷房運転をなした場合に、運転にともなって熱交換器9に生成される結露水(ドレン水)をドレンパン10は確実に捕捉できる。
一方、化粧パネル2は、軽量化と美観の向上化を得るために、合成樹脂材である、例えばPS(ポリスチレン)材の成型品から構成される。この化粧パネル2は、筐体1の下面開口部1aに取付けられるところから、下面開口部形状に合わせて幅方向よりも長手方向が長い横長矩形状をなす。
化粧パネル2の幅方向の一側部には吸込み口12が開口され、吸込みグリル13が嵌め込まれる。吸込みグリル13は、化粧パネル2に対して別体に備えられるものであるが、化粧パネル2に一体成形してもよい。そして、吸込みグリル13は、化粧パネル2裏面に着脱自在に取付けられるフィルタ14によって覆われる。
化粧パネル2が筐体1の下面開口部1aに取付けられた状態で、吸込みグリル13は送風室7Aと対向する。吸込みグリル13の長手方向は、化粧パネル2の長手方向の略全長に亘って設けられるので、筐体下面開口部1aの長手方向とも略一致する。
吸込みグリル13の幅方向の一側縁は、化粧パネル2の一側縁近傍位置に形成され、他側縁は仕切り板6の下端部に対向する位置に設定される。したがって、吸込みグリル13は送風室7A全面と略同一の形状面積に形成される。
また、化粧パネル2の幅方向の他側縁に沿って吹出口15が開口されていて、この吹出口15にはルーバ16が回動自在に枢着される。吹出口15の一側部には駆動源16Mが取付けられ、ルーバ16とは図示しない連結機構を介して連結される。したがって、駆動源16Mが駆動することにより、ルーバ16は回動制御され、吹出口15からの吹出し角度が調整自在である。
なお、この吹出口15について説明すると、吹出口15は化粧パネル2が筐体1の下面開口部1aに取付けられた状態で、熱交換室7Bと対向する。吹出口15は、仕切り板6とは所定間隔を存して平行な、化粧パネル2の長手方向に沿う側縁に沿って、かつ化粧パネル2の長手方向の略全長に亘って開口されるとともに、長手方向に対して幅方向が極端に短い横長形状をなす。
そして、この吹出口15の長手方向の略中間部に位置して、後述する補強用連結部材20が設けられる。
図3は、吹出口15に取付けられる補強用連結部材20の構成と、取付け構造を説明するための補強用連結部材20との取付け部分を示す断面図、図4は補強用連結部材20が取付けられた吹出口15の周辺の構成を説明する化粧パネル2の一部斜視図である。
この補強用連結部材20は、耐油性合成樹脂材(ABS材等)から構成され、吹出口15の長手方向に沿う両側部間に掛け渡されて、その両脚部20aが取付けねじ17を介して化粧パネル2に取付けられ、中間部20bは上方へ略三角状に屈曲形成される。
上述したように、吹出口15に回動自在に支持されるルーバ16は、吹出口15を完全閉成する状態から、ほとんど全開となるまで姿勢が可変である。特に、図3に示すように吹出口15を全開もしくはそれに近い状態としたとき、ルーバ16の一側部が吹出口15の奥方まで、具体的には筐体1内まで侵入する軌跡をなす。そこで補強用連結部材20の中間部20bは、ルーバ16の回動軌跡を避けて形成される。
補強用連結部材20の両脚部20aは水平方向に延出され、その側端部には取付け用孔100cが設けられる。そして、これら両脚部20aを、吹出口15の周辺に沿って上方へ一体に突出形成される突堤部15a上に載置し、補強用連結部材20の取付け用孔100cを突堤部15aに設けられるねじ孔100dに連通する。そのうえで、補強用連結部材20の取付け用孔100cを介してねじ孔100dに取付け用ねじ17を螺挿することで、補強用連結部材20は化粧パネル2に取付け固定される。
また、補強用連結部材20の水平方向に延出された脚部20aの一方側(ルーバ16取付け側)で、かつ取付け用ねじ17が挿通する取付け用孔100cの近傍部位には、脚部20aから上方へ突出するボス部20cが一体に設けられる。なお説明すると、このボス部20cの上面は脚部20a上面から所定の高さをもって突出し、かつボス部下面は脚部下面から凹状に形成される。
これに対して、突堤部15a上面部位は突出形成されていて、この突部100eにボス部20cの下面凹状部が嵌め込まれる。したがって、補強用連結部材20の突堤部15aに対する位置決めが容易に行える。
補強用連結部材ボス部20cと化粧パネル突堤部15aには、互いに連通する孔部100gが設けられるとともに、これら孔部100gと対向する筐体1部位には、ねじ孔100hを備えたナット部18が設けられている。化粧パネル2を筐体1に取付け固定するにあたって、特に補強用連結部材20においても固定具である固定ねじ23がボス部20cと突堤部15aの孔部100gを介して筐体1に取付けられたナット部18のねじ孔100hに螺挿される。
このようにして化粧パネル2に補強用連結部材20が取付けられた状態で、特に図4に示すように、補強用連結部材20の上に弾性部材22が吹出口15の周辺部に沿って取付けられる。
すなわち、弾性部材22は、例えばスポンジ材などのクッション性を備えていて、同図では、吹出口15の幅方向一側部と化粧パネル2一辺部に亘って既に弾性部材22が取付けられ、別途用意された2本の弾性部材22A,22Bが吹出口15の長手方向に取付けられる以前の状態を示している。
特に、補強用連結部材20のボス部20cが形成された脚部20a側の辺部に取付けられる弾性部材22Aには、ボス部20cの直径と略同等の直径の孔部100fが設けられている。したがって、弾性部材22Aを突堤部15aに取付けると、弾性部材の孔部100fに補強用連結部材ボス部20cが嵌め込まれる。この弾性部材22Aの厚さはボス部20cの高さ寸法よりも大に形成されていて、弾性部材22Aを突堤部15aに取付けるとボス部20cは孔部100f内に没入する。
この状態にしてから、化粧パネル2を筐体1の下面開口部1aに宛がって、取付け用金具3に折曲形成される固定金具部3Bのねじ孔に化粧パネル2を介して取付け用ねじを螺挿し、化粧パネル2を筐体1に取付け固定する。補強用連結部材20においても、上述したように化粧パネル突部100eとボス部20cに設けられる孔部100gを介して筐体1に設けられるナット部18のねじ孔100hに固定ねじ23が螺挿される。
特に、化粧パネル2の吹出口15を形成する突堤部15aと筐体1の下面開口部1a周辺部との間に介在する弾性部材22は、化粧パネル2と筐体1との間に挟持固定されて、そのままでは本来の肉厚が数分の一に圧縮されてしまう。
しかしながら、ここでは補強用連結部材20の脚部20aに一体にボス部20cが上方へ突出形成されるから、弾性部材22Aが筐体1と化粧パネル2との間に圧縮されても、ボス部20cの高さ以下への圧縮はボス部が規制する。すなわち、弾性部材22Aは必要不可欠の厚みを保持し、よってシール性が確保される。
図5は、吹出口15に枢支されるルーバ16を示す断面図、図6Aはルーバ16単体を示す斜視図、図6Bはルーバ16の一端部を示す斜視図である。
特に図6Aに示すように、ルーバ16は4つの軸25A〜25Dで、吹出口15に軸支されている。ここで示す図の右側端部に設けられる軸25Dを除いた3つの軸25A〜25Cは、単純に吹出口15の一側部と中間部に設けられる図示しない支持部の孔に差し込まれるだけのものであり、右側端部の軸25Dは駆動源16Mに連結される駆動軸である。
すなわち、3つの軸25A〜25Cは、単なる支軸であるので直径が細くてよいが、駆動軸25Dは駆動力を伝達するために力が加わるところから、ある程度強度を確保する必要があり、3つの軸よりも直径が太い。そして、後述する理由により、駆動軸25Dのみ他の3つの軸25A〜25Cとは相違して、ローレット状の溝付き軸に形成してある。
このように構成された天井埋込み形空気調和機において、送風機8が駆動されると室内空気が吸込み口12を形成する吸込みグリル13とフィルタ14を介して、筐体1内の送風室7Aに吸込まれる。室内空気は、送風機8を構成するファンケーシング8aと、仕切り板6に設けられる連通孔6aを介して熱交換室7Bに導かれ、熱交換器9と熱交換される。
熱交換器9と熱交換した後の熱交換空気は、吹出口15に導かれルーバ16を介して室内へ吹出され、室内の熱交換作用をなす。特に冷房運転時には、熱交換器9の熱交換作用にともなって結露水が生成され滴下する。これら結露水をドレンパン10が受けて集溜し、最終的に室外へ排水する。
冷房運転及び暖房運転のいずれの空調運転においても、化粧パネル2に設けられる1つの吹出口15から熱交換空気が吹出される、一方向吹出しである。しかしながら、吹出口15のルーバ16に対する姿勢制御によって、室内のさらに広い範囲に亘って均一に熱交換空気を吹出し案内でき、効率のよい空調作用が得られる。
しかも、吹出口15は、化粧パネル2の幅方向の一側縁に沿って設けられ、かつ化粧パネル2の長手方向の略全長に亘って開口しているから、室内に対してより広い範囲で吹出しがなされ、一方向吹出しであっても吹出し特性がよい。
吹出口15自体、強度の低い化粧パネル2に設けられ、化粧パネルの長手方向の略全長に亘って開口しているので、吹出口15を形成する周辺部の強度が低い。しかしながら、ここでは吹出口15の長手方向の略中間部に位置し、吹出口15の長手方向に沿う両側部間に掛け渡した状態で取付け用ねじ17を介して補強用連結部材20を化粧パネル1に取付けている。
さらにそのうえ、固定ねじ23が化粧パネル2とともに補強用連結部材20を筐体1に取付け固定する。したがって、化粧パネル2が美麗を保持するために強度の低い合成樹脂材を用いて構成され、吹出口15が長手方向に沿って長尺状に形成されていても、この吹出口15周辺部の強度不足を補って破損の恐れなどが一切ない。
また、筐体1の下面開口部1a周縁部と化粧パネル2の周縁部との間に、シール用の弾性部材22が介在されるが、補強用連結部材20に弾性部材22の厚みを確保するためのボス部20cを突設したので、特に弾性部材22Aにおける必要最小限の厚さは保証され、シール性が確保される。
化粧パネル2を、PS(ポリスチレン)材の成型品としたから構成したから、板金製に比べて軽量化が図れるとともに、成形性が良いので成形形状の自由度が高く、美観を向上するための形状に成形することが容易である。またリサイクル性も良い。
補強用連結部材20を、耐油性合成樹脂材(ABS等)の成型品としたから、油や薬品の付着による、いわゆるソルベントクラックの発生がなく、強度の増大化を図れる。そして、補強用連結部材20は合成樹脂材であるために熱伝導率が低く、よって金属素材のように結露の発生もない。
先に説明したように、ルーバ16は4つの軸25A〜25Dで吹出口15に軸支されている。ここで示す図の右側端部に設けられる軸25Dを除いた3つの軸25A〜25Cは、単純に吹出口15の一側部と中間部に設けられる図示しない支持部の孔に差し込まれるだけであり、右側端部の軸25Dは駆動源16Mに連結される駆動軸である。すなわち、3つの軸25A〜25Cは、単なる支軸であるので直径が細くてよいが、駆動軸25Dは駆動力を伝達するために力が加わるところから、ある程度強度を確保する必要があり、3つの軸よりも直径が太く形成されている。
この結果、冷房運転時における冷風吹出し中には駆動軸25Dの下流部分において霜が付く場合がある。そこで、駆動軸25Dのみ他の3つの軸25A〜25Cとは相違してローレット状の溝付き軸となし露を付き難くするとともに、露が付いた場合でも落下し難くしている。すなわち、駆動軸25Dでの露付きや露の落下が低減できる。なお、他の軸25A〜25Cは直径が細いために、もともと露付きがなく、滑らかな円柱状をなしていても特に問題はない。
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。