JPWO2006035496A1 - α線量率測定方法 - Google Patents

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Abstract

固体飛跡検出器12と試料10とを重ね合わせた状態で所定時間放置する第1のステップと、固体飛跡検出器をエッチングすることにより、固体飛跡検出器に入射したα線の飛跡に応じたエッチピット20を固体飛跡検出器に形成する第2のステップと、固体飛跡検出器に形成されたエッチピットの数と放置時間とに基づいて、試料から放出されたα線の線量率を求める第3のステップとを有している。試料と固体飛跡検出器とを比較的長時間放置しておき、エッチピットの数を放置時間で除算することによりα線の線量率を求めるため、放置時間を長く設定するほどバックグラウンドの影響を小さくすることができる。従って、極めて高精度にα線の線量率を求めることが可能となる。

Description

本発明は、α線量率測定方法に係り、特に試料から放出されるα線の線量率を高精度に測定し得るα線量率測定方法に関する。
半田材料、配線材料、封止材料等には微量の放射性物質が含まれており、これらの材料からα線が放出される場合がある。これらの材料から放出されたα線は半導体素子の動作に影響を与え、いわゆるソフトエラーが生じてしまうことがあった。近時では、より信頼性の高い半導体装置を提供すべく、ソフトエラーに対する対策が極めて重要となっている。
ソフトエラーの生じにくい半導体装置を提供するためには、放出されるα線の量が少ない材料を用いることが極めて重要である。放出されるα線の量が少ない材料を選択するためには、材料から放出されるα線の量を正確に測定することが必要である。
従来より、試料から放出されるα線の量を測定する装置として、ガスフロー型比例計数装置が知られている。ガスフロー型比例計数装置を用いれば、検出下限が0.001cph/cm程度の測定を行うことが可能である。なお、cph/cmは、count per hour/cmの略であり、単位面積当たりの線量率を示す単位である。線量率とは、単位時間当たりの放射線の量のことである。cph/cmなる単位は、試料表面1cm当たりにおいて、1時間にいくつのα粒子が放出されるかを示す際に用いられる。
α線の量を測定する技術は、特許文献1や特許文献2においても提案されている。
特開2003−50279号公報 特開平9−15336号公報
しかしながら、ガスフロー型比例計数装置は、上述したように検出下限が0.001cph/cm程度であり、検出下限が必ずしも十分に低いとはいえなかった。よりソフトエラーの起こりにくい半導体装置を提供するためには、放出されるα線の線量率が0.001cph/cmより十分に小さい材料を用いることが要求される。このため、より低い検出下限でα線の線量率を測定し得る技術が待望されていた。
本発明の目的は、試料から放出されるα線の線量率を極めて低い検出下限で高精度に測定し得るα線量率測定方法を提供することにある。
本発明の一観点によれば、固体飛跡検出器と試料とを重ね合わせた状態で所定時間放置する第1のステップと、前記固体飛跡検出器をエッチングすることにより、前記固体飛跡検出器に入射したα線の飛跡に応じたエッチピットを前記固体飛跡検出器に形成する第2のステップと、前記固体飛跡検出器に形成された前記エッチピットの数と前記放置時間とに基づいて、前記試料から放出されたα線の線量率を求める第3のステップとを有するα線量率測定方法が提供される。
本発明によれば、試料と固体飛跡検出器とを比較的長時間放置しておき、エッチピットの数を放置時間で除算することによりα線の線量率を求めるため、放置時間を長く設定するほどバックグラウンドの影響を小さくすることができる。従って、本発明によれば、極めて高精度にα線の線量率を求めることが可能となる。
また、本発明によれば、試料と固体飛跡検出器とを重ね合わせた状態で放置するため、試料から放出されるα線が固体飛跡検出器内に確実に入射される。このため、本発明によれば、試料から放出されるα線の線量率を高精度に測定することができる。
また、本発明によれば、チャンバ内を真空にした状態で試料と固体飛跡検出器とをチャンバ内に放置するため、空気中に存在する放射性物質に起因して固体飛跡検出器にα線の飛跡が生ずるのを防止することができる。また、試料と固体飛跡検出器との間に空気が存在しないため、試料から放出されるα線の固体飛跡検出器への到達が空気により妨げられることも防止することができる。従って、本発明によれば、試料から放出されるα線の線量率を正確に測定することができる。
また、本発明によれば、互いに重なり合わせた試料と固体飛跡検出器とを、真空パックした状態で放置するため、真空ポンプを長時間稼働させることなく、α線の線量率を簡便な構成で正確に測定することができる。
また、本発明によれば、試料と固体飛跡検出器とを重ね合わせた部分の周囲を封止材により封止するため、封止材により封止した後においては、放射性物質を含む大気が試料と固体飛跡検出器との間に新たに入り込むことがない。従って、試料から放出されるα線を高精度に測定することができる。しかも、本発明によれば、試料をチャンバ内や真空パック用容器内に収める必要がないため、試料が比較的大きい場合であっても、試料から放出されるα線の線量率を正確に測定することができる。
図1は、本発明の第1実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。 図2は、本発明の第2実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。 図3は、本発明の第3実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。 図4は、本発明の第4実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図(その1)である。 図5は、本発明の第4実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図(その2)である。 図6は、本発明の第5実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。 図7は、本発明の第6実施形態によるα線量率測定方法を示す断面図である。
符号の説明
10…試料
12、12a、12b…固体飛跡検出器
14…チャンバ
16…配管
18…真空ポンプ
20…エッチピット
22、22a…真空パック用容器
24…封止材
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態によるα線量率測定方法を図1を用いて説明する。図1は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。
まず、測定対象となる試料10と固体飛跡検出器(Solid State Track Detector、SSTD)12とを用意する。試料10は、例えば、半田材料、電極材料、配線材料、封止材料等である。固体飛跡検出器12としては、例えばアリルジグリコールカーボネート(商標名:CR−39)より成る平板を用いる。固体飛跡検出器12のサイズは、例えば90mm×90mm×1mmとする。
α線等の重荷電粒子が絶縁性の固体中を通過すると、重荷電粒子の通路に沿って固体中の原子配列に歪みが生じ、荷電粒子の飛跡(放射線損傷)が形成される。飛跡が形成された固体を薬液を用いてエッチングすると、飛跡に沿って比較的速いレートでエッチングが進行し、光学顕微鏡で観測可能な蝕孔(エッチピット、Etch pit)が形成される。固体飛跡検出器とは、このような原理により放射線の量を検出し得る放射線検出器のことである。
次に、互いに重ね合わせた試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に導入する(図1(a)参照)。試料10から放出されるα線が確実に固体飛跡検出器12内に入射するようにするため、試料10と固体飛跡検出器12とを互いに密着させることが望ましい。チャンバ14には、配管16を介して真空ポンプ18が接続されている。チャンバ14としては、例えばステンレス製のチャンバを用いる。固体飛跡検出器12の面のうちの試料10に接する側の面は、試料10から放出されるα線を検出する検出面として機能する。
次に、真空ポンプ18を用いてチャンバ14内の空気を排気し、チャンバ14内を真空状態にする。チャンバ14内の圧力は、例えば1×10−1Pa以下とする。
この後、チャンバ14内を真空状態に維持したまま、試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に所定時間放置する。試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に放置する時間は、例えば、数百時間から数千時間、即ち、数週間から数箇月程度とする。
試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせる前の段階において、α線等による飛跡が固体飛跡検出器12に数箇所形成されている場合があり得る。このような飛跡は、例えば、空気中に存在するラドン等の放射性物質によって生じると考えられる。また、固体飛跡検出器12自体に微量に含まれている放射性物質によっても、かかる飛跡が生じると考えられる。このように固体飛跡検出器12に予め形成されている飛跡の数は、バックグラウンドと称される。
α線の線量率を高精度に測定するためには、バックグラウンドの影響を無視できる程小さくすることが重要である。バックグラウンドの影響を無視できる程小さくするためには、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせておく時間、即ち、放置時間を長めに設定すればよい。本実施形態では、後述するように、エッチピットの数を放置時間で除算することによりα線の線量率を求めるためである。
本実施形態でチャンバ14内を真空状態にするのは、以下のような理由によるものである。
即ち、一般に、空気中にはラドン(218Rn、219Rn、220Rn)等の放射性物質が含まれている。このため、試料10と固体飛跡検出器12とを単に重ね合わせた状態で放置した場合には、空気中に存在する放射性物質が試料10と固体飛跡検出器12との間に入り込んでしまう場合がある。そうすると、空気中に存在する放射性物質によるα線の飛跡が固体飛跡検出器10に形成されてしまう場合があり、試料10のみから放出されるα線の量を正確に測定することが困難となる。本実施形態では、チャンバ14内の空気を真空にした状態で試料10と固体飛跡検出器12とを放置するため、空気中に存在する放射性物質の影響を受けることなく、試料10のみから放出されるα線の量を正確に測定することが可能となる。
また、試料10と固体飛跡検出器12との間に空気が存在している場合には、試料10から放出されたα線の固体飛跡検出器12表面への到達が、空気により妨げられる場合がある。そうすると、試料10から放出されるα線の量を正確に測定することが困難となる。本実施形態では、チャンバ14内の空気を排気した状態で、試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に放置するため、試料10から放出されるα線の固体飛跡検出器12への到達が空気により妨げられることがなく、試料10から放出されるα線の線量を正確に測定することが可能となる。
なお、チャンバ14からα線が放出されることも考えられる。しかし、α線は透過性が低いという性質を有しているため、チャンバ14からα線が放出されたとしても、試料10や固体飛跡検出器12の表面から数十μm程度の深さまでしかα線は達し得ない。このため、チャンバ14から放出されるα線が、固体飛跡検出器12の検出面、即ち、試料10と固体飛跡検出器12とが互いに密着している部分にまで到達することはあり得ない。従って、チャンバ14からα線が放出されたとしても、試料10から放出されるα線の量を測定する上で、特段の問題は生じない。
所定時間が経過した後、試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ内14から取り出す。
次に、固体飛跡検出器12をエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、例えば、NaOH溶液やKOH溶液を用いる。固体飛跡検出器12のうちのα線が入射した箇所(飛跡)においては、固体飛跡検出器12を構成する分子に化学変化が生じているため、α線が入射していない箇所と比較してエッチングが速い速度で進行する。このため、固体飛跡検出器12をエッチング液に浸漬すると、α線の飛跡が拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット(Etch Pit、蝕孔)20が固体飛跡検出器12表面に形成される(図1(b)参照)。エッチピット20の直径は、例えば10μm程度となる。
次に、光学顕微鏡等を用い、エッチピット20の数を観測する。
次に、エッチピット20の数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。単位面積当たりのα線の線量率は、n/t/Sにより求められる。上述したように、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせる前の段階において、固体飛跡検出器12にα線の飛跡が形成されている場合がある。かかるバックグラウンドは、数個から数十個程度と考えられる。本実施形態では、エッチピットの数を放置時間により除算することによりα線の線量率を求めるため、バックグラウンドの影響は、放置時間を長く設定するほど小さくなる。従って、本実施形態によれば、極めて高精度にα線の線量率を求めることが可能となる。
こうして、試料10から放出されるα線の線量率が測定される。
本実施形態によるα線量率測定方法は、試料10から放出されるα線の量を固体飛跡検出器12を用いて測定することに主な特徴の一つがある。
上述したように、ガスフロー型比例計数装置を用いてα線の線量率を測定する場合には、検出下限は0.001cph/cm程度と比較的大きかった。
これに対し、本実施形態によれば、試料10と固体飛跡検出器12とを比較的長時間放置しておき、エッチピットの数を放置時間で除算することによりα線の線量率を求めるため、放置時間を長く設定するほどバックグラウンドの影響を小さくすることができる。従って、本実施形態によれば、極めて高精度にα線の線量率を求めることが可能となる。
また、本実施形態によるα線量率測定方法は、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせた状態、より好ましくは密着させた状態で放置することに主な特徴の一つがある。
本実施形態によれば、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせた状態で放置するため、試料10から放出されるα線が固体飛跡検出器12内に確実に入射される。このため、本実施形態によれば、試料10から放出されるα線の線量率を高精度に測定することができる。
また、本実施形態によるα線量率測定方法は、チャンバ14内を真空にした状態で試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に放置することにも主な特徴の一つがある。
本実施形態によれば、チャンバ14内を真空にした状態で試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に放置するため、空気中に存在する放射性物質に起因して固体飛跡検出器12にα線の飛跡が生ずるのを防止することができる。また、試料10と固体飛跡検出器12との間に空気が存在しないため、試料10から放出されるα線の固体飛跡検出器12への到達が空気により妨げられることも防止することができる。従って、本実施形態によれば、試料10から放出されるα線の線量率を正確に測定することができる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態によるα線量率測定方法を図2を用いて説明する。図2は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。図1に示す第1実施形態によるα線量率測定方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態によるα線量率測定方法は、互いに重なり合わせた試料10と固体飛跡検出器12とを真空パックした状態で放置することに主な特徴がある。
まず、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、試料10と固体飛跡検出器12とを用意する。
次に、互いに重なり合わせた試料10と固体飛跡検出器12とを、真空パック用容器(真空パック用袋)22内に導入する。
次に、真空パック用容器22内の空気を真空ポンプ(図1(a)参照)18を用いて排気し、真空パック用容器22内を真空状態にする。これにより、試料10と固体飛跡検出器12とが密着する。この後、真空パック用容器22を封止する(図2(a)参照)。
この後、試料10と固体飛跡検出器12とを所定時間放置する。試料10と固体飛跡検出器12とを放置する時間は、第1実施形態と同様に、例えば、数百時間から数千時間程度とする。
なお、真空パック用容器22からα線が放出されることも考えられる。しかし、上述したように、α線は透過性が低いため、真空パック用容器22からα線が放出されたとしても、試料10や固体飛跡検出器12の表面から数十μm程度の深さまでしかα線は達し得ない。このため、真空パック用容器22から放出されるα線が、固体飛跡検出器12の検出面、即ち、試料10と固体飛跡検出器12とが互いに密着している部分にまで到達することはあり得ない。従って、真空パック用容器22からα線が放出されたとしても、試料10から放出されるα線の量を測定する上で、特段の問題は生じない。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とを真空パック用容器22内から取り出す。
次に、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、固体飛跡検出器12をエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、例えば、NaOH溶液、KOH溶液を用いる。こうして、固体飛跡検出器12に入射したα線による飛跡がエッチングにより拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット20が固体飛跡検出器12に形成される(図2(b)参照)。
次に、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、光学顕微鏡を用いてエッチピット20の数を観測する。
次に、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、エッチピット20の数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。
こうして、試料10から放出されるα線の線量率が測定される。
このように、互いに重なり合わせた試料10と固体飛跡検出器12とを、真空パックした状態で放置してもよい。本実施形態によれば、真空ポンプ18を長時間稼働させることなく、α線の線量率を簡便な構成で正確に測定することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態によるα線量率測定方法を図3を用いて説明する。図3は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。図3(a)は平面図であり、図3(b)は図3(a)のA−A′線断面図であり、図3(b)は平面図である。図1及び図2に示す第1又は第2実施形態によるα線量率測定方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態によるα線量率測定方法は、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせた部分の周囲を封止した状態で、試料10と固体飛跡検出器12とを放置することに主な特徴がある。
まず、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、試料10と固体飛跡検出器12とを用意する。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせる。これにより、試料10と固体飛跡検出器12とが互いに密着する。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とが重なり合っている部分の周囲を封止材24により封止する(図3(a)及び図3(b)参照)。封止材24としては、例えば樹脂より成る封止材を用いる。そして、試料10と固体飛跡検出器12とを所定時間放置する。試料10と固体飛跡検出器12とを放置する時間は、上記実施形態と同様に、例えば、数百時間から数千時間程度とする。
なお、空気中に存在する放射性物質に起因して、試料10や固体飛跡検出器12の露出している面にα線が入射することも考えられる。しかし、上述したように、α線は透過性が低いため、試料10や固体飛跡検出器12の露出している面から数十μm程度の深さまでしかα線は達し得ない。このため、空気中に存在する放射性物質に起因するα線が、固体飛跡検出器12の検出面、即ち、試料10と固体飛跡検出器12とが互いに密着している部分にまで到達することはあり得ない。従って、試料10と固体飛跡検出器12とを空気中に放置したとしても、試料10から放出されるα線の量を測定する上で、特段の問題は生じない。
次に、封止材24を剥離する。
次に、上記実施形態によるα線量率測定方法と同様に、固体飛跡検出器12をエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、上記実施形態によるα線量率測定方法と同様に、例えばNaOH溶液やKOH溶液を用いる。こうして、固体飛跡検出器12に入射したα線による飛跡がエッチングにより拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット20が固体飛跡検出器12に形成される(図3(c)参照)。
次に、上記実施形態によるα線量率測定方法と同様に、光学顕微鏡を用いてエッチピット20の数を観測する。
次に、上記実施形態によるα線量率測定方法と同様に、エッチピットの数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。
こうして、試料10から放出されるα線の線量率が測定される。
このように、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせた部分の周囲を封止材24により封止してもよい。本実施形態によれば、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせた部分の周囲が封止材24により封止されているため、封止材24により封止した後においては、放射性物質を含む大気が試料10と固体飛跡検出器12との間に新たに入り込むことはない。従って、本実施形態によっても、試料10から放出されるα線を高精度に測定することができる。しかも、本実施形態によれば、試料10をチャンバ14(図1参照)内や真空パック用容器22(図2参照)内に収める必要がないため、試料10が比較的大きい場合であっても測定することが可能である。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態によるα線量率測定方法を図4及び図5を用いて説明する。図4及び図5は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。図1乃至図3に示す第1乃至第3実施形態によるα線量率測定方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態によるα線量率測定方法は、固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の複数の固体飛跡検出器12a、12bを互いに重ね合わせた状態で所定時間放置し、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピット20の数に基づいて求められるα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピット20の数に基づいて求められるα線の線量率を減算することに主な特徴がある。
まず、同じロットで製造された3枚の固体飛跡検出器12、12a、12bと、試料10とを用意する。
次に、互いに重ね合わせた試料10と固体飛跡検出器12とを、チャンバ14内に導入する。また、互いに重ね合わせた他の2枚の固体飛跡検出器12a、12bを、チャンバ14内に導入する。
次に、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様にして、真空ポンプ18を用いてチャンバ14内の空気を排気し、チャンバ14内を真空状態にする。
この後、第1実施形態によるα線量率測定方法と同様に、チャンバ14内を真空にした状態で、試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bとを所定時間放置する。試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bとを放置する時間は、上記と同様に、例えば数百時間から数千時間とする。チャンバ14内の圧力は、上記と同様に、例えば10−1Pa以下とする。
次に、試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bとを、チャンバ14内から取り出す。
次に、各々の固体飛跡検出器12、12aをエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、上記と同様に、NaOH溶液やKOH溶液を用いる。こうして、固体飛跡検出器12、12aに入射したα線による飛跡がエッチングにより拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット20が固体飛跡検出器12、12aに形成される。
次に、光学顕微鏡を用い、各々の固体飛跡検出器12、12aに形成されたエッチピット20の数を観測する。
次に、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。また、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′と、放置時間t′と、検出面の面積S′とに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。そして、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nに基づいて求められたα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′に基づいて求められたα線の線量率を減算する。
本実施形態において、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピット20の数に基づいて求められたα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピット20の数に基づいて求められたα線の線量率を減算するのは、以下のような理由によるものである。
即ち、上述したように、固体飛跡検出器12には、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせる前の段階において、α線等による飛跡が形成されている場合があり得る。また、固体飛跡検出器12自体から放出されるα線によっても、固体飛跡検出器12に飛跡が形成されることがあり得る。固体飛跡検出器12と同じロットで製造された固体飛跡検出器12a、12bを、互いに重ね合わせた状態で固体飛跡検出器12と同じ条件下に放置すれば、固体飛跡検出器12aに予め形成されている飛跡の数と固体飛跡検出器12a自体から放出されるα線による飛跡の数との和は、固体飛跡検出器12に予め形成されている飛跡の数と固体飛跡検出器12自体から放出されるα線による飛跡の数との和とほぼ等しい値となる。このため、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピット20の数に基づいて求められたα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピット20の数に基づいて求められたα線の線量率を減算すれば、固体飛跡検出器12に予め形成されている飛跡の分や固体飛跡検出器12自体から放出されるα線による飛跡の分を除外することができ、試料10のみから放出されるα線の線量率をより高精度に求めることが可能となる。
(評価結果(その1))
次に、本実施形態によるα線量率測定方法の評価結果(その1)について説明する。
試料10としては、シリコン基板上にCu膜を成膜したものを用意した。試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bとをチャンバ14内に放置する時間は、2689.85時間とした。試料10と重ね合わせて放置した固体飛跡検出器12に対してエッチングを行ったところ、46個のエッチピット20が観測された。一方、固体飛跡検出器12bと重ね合わせて放置した固体飛跡検出器12aに対して対してエッチングを行ったところ、12個のエッチピット20が観測された。固体飛跡検出器12、12aの検出面の面積は、いずれも171.8cmであった。
これらの結果から、単位面積当たりの線量率を求めると、
(46−12)/171.8/2689.85=7.4×10−5cph/cm
となる。
このことから、本実施形態によれば、10−5cph/cmという極めて低いオーダーでα線の線量率を求め得ることがわかる。即ち、本実施形態によれば、極めて高精度にα線の線量率を求めることができる。
(評価結果(その2))
次に、本実施形態によるα線量率測定方法の評価結果(その2)について説明する。
試料10としては、鉛はんだより成る板状体を用意した。試料10と固体飛跡検出器12とをチャンバ14内に放置する時間は、620.41時間とした。試料10と重ね合わせて放置した固体飛跡検出器12に対してエッチングを行ったところ、7200個のエッチピット20が観測された。一方、固体飛跡検出器12bと重ね合わせて放置した固体飛跡検出器12aに対して対してエッチングを行ったところ、6個のエッチピット20が観測された。固体飛跡検出器12、12aの検出面の面積は、56.5cmであった。
これらの測定結果から、単位面積当たりの線量率を求めると、
(7200−6)/56.5/640.41=0.21cph/cm
となる。
本実施形態によるα線量率測定方法は、上述したように、固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の複数の固体飛跡検出器12a、12bを互いに重ね合わせた状態で所定時間放置し、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピット20の数に基づいて求められるα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピット20の数に基づいて求められるα線の線量率を減算することに主な特徴がある。
本実施形態によれば、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nに基づいて求められるα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′に基づいて求められるα線の線量率を減算するため、試料10のみから放出されるα線の線量率をより高精度に測定することができる。
[第5実施形態]
本発明の第5実施形態によるα線量率測定方法を図6を用いて説明する。図6は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す工程図である。図1乃至図5に示す第1乃至第4実施形態によるα線量率測定方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態によるα線量率測定方法は、試料10に重ね合わせた固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の固体飛跡検出器12a、12bを、互いに重ね合わせた状態で真空パックして放置することに主な特徴がある。
まず、互いに同じロットで製造された3枚の固体飛跡検出器12、12a、12bと試料10とを用意する。
次に、互いに重ね合わせた試料10と固体飛跡検出器12とを、真空パック用容器22内に収める。
次に、真空パック用容器22内の空気を真空ポンプ18(図1参照)を用いて排気し、真空パック用容器22内を真空状態にする。そして、真空パック用容器22を封止する。
次に、互いに重ね合わせた他の2枚の固体飛跡検出器12a、12bを、他の真空パック用容器22a内に収める。
次に、真空パック用容器22a内の空気を真空ポンプ18を用いて排気し、真空パック用容器22a内を真空状態にする。そして、真空パック用容器22aを封止する。
この後、真空パックされた試料10及び固体飛跡検出器12、並びに、真空パックされた他の固体飛跡検出器12a、12bを所定時間放置する。放置時間は、上記実施形態と同様に、例えば、数百時間から数千時間とする。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とを真空パック用容器22内から取り出す。また、他の固体飛跡検出器12a、12bを真空パック容器22a内から取り出す。
次に、固体飛跡検出器12、12aをエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、上記と同様に、例えばNaOH溶液やKOH溶液を用いる。こうして、固体飛跡検出器12、12aに入射したα線の飛跡がエッチングにより拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット20が固体飛跡検出器12、12aにそれぞれ形成される。
次に、光学顕微鏡を用い、各々の固体飛跡検出器12、12aに形成されたエッチピット20の数を観測する。
次に、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。また、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′と、放置時間t′と、検出面の面積S′とに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。そして、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nに基づいて求められたα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′に基づいて求められたα線の線量率を減算する。
こうして、試料10から放出されるα線の線量率が測定される。
このように、試料10と固体飛跡検出器12とを真空パックした状態で放置する場合には、固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の固体飛跡検出器12a、12bをも真空パックした状態で放置すればよい。
[第6実施形態]
本発明の第6実施形態によるα線量率測定方法を図7を用いて説明する。図7は、本実施形態によるα線量率測定方法を示す断面図である。図1乃至図6に示す第1乃至第5実施形態によるα線量率測定方法と同一の構成要素には、同一の符号を付して説明を省略または簡潔にする。
本実施形態によるα線量率測定方法は、試料10に重ね合わせる固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の複数の固体飛跡検出器12a、12bを互いに重ね合わせ、これら他の固体飛跡検出器12a、12bの周囲を封止材24により封止することに主な特徴がある。
まず、互いに同じロットで製造された3枚の固体飛跡検出器12、12a、12bと試料10とを用意する。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とを重ね合わせる。
次に、試料10と固体飛跡検出器12とが重なり合っている部分の周囲を封止材24により封止する。封止材24としては、上記と同様に、例えば樹脂より成る封止材を用いる。
次に、固体飛跡検出器12aと固体飛跡検出器12bとを重ね合わせる。
次に、固体飛跡検出器12aと固体飛跡検出器12bとが重なり合っている部分の周囲を封止材24により封止する。
この後、試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bを所定時間放置する。試料10と固体飛跡検出器12、12a、12bとを放置する時間は、上記と同様に、例えば、数百時間から数千時間程度とする。
次に、封止材24を剥離する。
次に、固体飛跡検出器12、12aをエッチング液に浸漬する。エッチング液としては、上記と同様に、例えばNaOH溶液やKOH溶液を用いる。こうして、固体飛跡検出器12、12aに入射したα線の飛跡がエッチングにより拡大され、α線の飛跡に応じたエッチピット20が固体飛跡検出器12、12aにそれぞれに形成される。
次に、光学顕微鏡を用い、各々の固体飛跡検出器12、12aに形成されたエッチピット20の数を観測する。
次に、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピットの数nと、放置時間tと、検出面の面積Sとに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。また、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピットの数n′と、放置時間t′と、検出面の面積S′とに基づいて、単位面積当たりのα線の線量率を求める。そして、固体飛跡検出器12に形成されたエッチピット20の数nに基づいて求められたα線の線量率から、他の固体飛跡検出器12aに形成されたエッチピット20の数n′に基づいて求められたα線の線量率を減算する。
こうして、試料10から放出されるα線の線量率が測定される。
このように、試料10と固体飛跡検出器12とが重なり合っている部分の周囲を封止材24により封止する場合には、固体飛跡検出器12と同じロットで製造された他の複数の固体飛跡検出器12a、12bを互いに重ね合わせ、重ね合わせた部分の周囲を封止材24により封止した状態で放置すればよい。
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、固体飛跡検出器の材料としてアリルジグリコールカーボネートを用いる場合を例に説明したが、固体飛跡検出器の材料はアリルジグリコールカーボネートに限定されるものではない。α線の飛跡に応じたエッチピットが得られる他のあらゆる樹脂を、固体飛跡検出器の材料として適宜用いることが可能である。
本発明によるα線量率測定方法は、試料から放出されるα線の線量率を高精度で測定するのに有用である。

Claims (9)

  1. 固体飛跡検出器と試料とを重ね合わせた状態で所定時間放置する第1のステップと、
    前記固体飛跡検出器をエッチングすることにより、前記固体飛跡検出器に入射したα線の飛跡に応じたエッチピットを前記固体飛跡検出器に形成する第2のステップと、
    前記固体飛跡検出器に形成された前記エッチピットの数と前記放置時間とに基づいて、前記試料から放出されたα線の線量率を求める第3のステップと
    を有することを特徴とするα線量率測定方法。
  2. 請求の範囲第1項記載のα線量率測定方法において、
    前記第1のステップでは、前記固体飛跡検出器と前記試料とを、減圧したチャンバ内に放置する
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  3. 請求の範囲第1項記載のα線量率測定方法において、
    前記第1のステップでは、前記固体飛跡検出器と前記試料とを、排気した真空パック用容器内に放置する
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  4. 請求の範囲第1項記載のα線量率測定方法において、
    前記第1のステップでは、前記固体飛跡検出器と前記試料とが重なり合っている部分の周囲を封止した状態で、前記固体飛跡検出器と前記試料とを放置する
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  5. 請求の範囲第1項乃至第4項のいずれか1項に記載のα線量率測定方法において、
    前記固体飛跡検出器は、樹脂より成る
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  6. 請求の範囲第5項記載のα線量率測定方法において、
    前記樹脂は、アリルジグリコールカーボネートである
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  7. 請求の範囲第6項記載のα線量率測定方法において、
    前記第2のステップでは、NaOH溶液又はKOH溶液を用いてエッチングを行う
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  8. 請求の範囲第1項乃至第7項のいずれか1項に記載のα線量率測定方法において、
    前記第3のステップでは、光学顕微鏡により前記エッチピットの数を観測する
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
  9. 請求の範囲第1項乃至第8項のいずれか1項に記載のα線量率測定方法において、
    前記第1のステップでは、前記固体飛跡検出器と同じロットで製造された他の2枚の固体飛跡検出器を互いに重ね合わせた状態で所定時間放置し、
    前記第2のステップでは、前記他の2枚の固体飛跡検出器のうちの一方をエッチングすることにより、前記他の一方の固体飛跡検出器に入射したα線の飛跡に応じたエッチピットを、前記他の一方の他の固体飛跡検出器にも形成し、
    前記第3のステップでは、前記固体飛跡検出器に形成された前記エッチピットの数に基づいて求められるα線の線量率から、前記他の一方の固体飛跡検出器に形成された前記エッチピットの数に基づいて求められるα線の線量率を減算することにより、前記試料から放出されるα線の線量率を求める
    ことを特徴とするα線量率測定方法。
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