以下、本発明の実施の形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する説明を省略する。
以下の実施形態では、観測対象物の観測に用いる積分型検出器として原子核乾板を使用し、荷電粒子としてミューオンの飛跡を原子核乾板に記録するケースを一例として説明する。
[飛跡の選別方法]
<原子核乾板の構成>
図1は、ミューオンの飛跡の記録に用いる原子核乾板の構成を説明するための概略的な模式図である。
原子核乾板10は、支持体91と、支持体91上に塗布された検出部92とを備える。支持体91は、例えばガラス板またはプラスチックフィルム等で形成されている。検出部92は、乳剤層または感材層とも呼ばれ、荷電粒子に感度を有する例えばハロゲン化銀感材(例えば、臭化銀結晶93)が高密度に塗布されることにより形成されている。原子核乾板10は、検出部92を支持体91の片面にのみ備えてもよいし、図示するように、支持体91の両面に検出部92を備えてもよい。支持体91の例示的な厚さは約170μmであり、検出部92の例示的な厚さは約60μmである。
検出部92の一部の領域Pを拡大して、ミューオンの3次元的な飛跡Tを検出する過程を説明する。検出部92には、例示的な値として粒径約0.2μmの臭化銀結晶93が含まれている。荷電粒子であるミューオンが検出部92を通過すると、ミューオンの飛跡Tに沿って、臭化銀結晶93内に潜像核という非常に小さな銀の塊が形成される。この潜像核に、化学現像および物理現像などを含む写真現像処理を施すと、潜像核が成長して銀粒子94となる。この銀粒子94を、例えば光学顕微鏡を用いて焦点面を移動させながら観察することにより、ミューオンの3次元的な飛跡Tが検出される。観察に用いる光学顕微鏡の一例としては、例えば特開2010-101676号公報に記載の飛跡認識装置を用いることができる。
原子核乾板10は、電源不要かつ薄いフィルム状であるため、容易に大面積化が可能である。原子核乾板10のこれらの特徴は、屋内外を問わず、大型構造物等の巨大な対象物を観測する宇宙線ミューオンラジオグラフィの検出器として適している。
原子核乾板10は、露光を防ぐために、観測期間以外は、遮光フィルムにより覆われる、または暗室または暗箱等の遮光ができる構造内に載置されることが好ましい。また、原子核乾板10は、真空パックにより密封することにより、大気圧より減圧された環境に保管されることが好ましい。より好ましくは、真空パックを遮光フィルムにより形成する。原子核乾板10を真空パック内に密封することにより、例えば以下の3つの効果を奏する。第1に、真空パック内に原子核乾板10を入れて真空引きすることにより、真空パック内で原子核乾板10の位置を動かないようにすることができると同時に、原子核乾板10の位置を真空パックの外から把握することが可能となる。第2に、原子核乾板10を例えばアクリル板と重ねて真空パックすることにより、原子核乾板10の性能劣化を軽減することが可能となる。第3に、複数の原子核乾板10を積層して使用する際に、それぞれを密着して固定することが可能となる。
<選別方法の詳細>
図2は、本発明の飛跡選別方法を説明するための模式図である。ミューオンラジオグラフィにおいて、観測期間中に飛来したミューオンの飛跡を、1つの原子核乾板10を用いて記録する場合を(A)に示し、2つの原子核乾板10a,10bを用いて記録する場合を(B)に示す。以下の説明では、原子核乾板10を検出器10とも記載する。
ミューオンラジオグラフィを行う場合を例にとると、検出器10に記録されている飛跡は、次の3種類に分類される。破線で記述する飛跡1は、検出器10の製造直後から観測前までの間に記録された飛跡を示す。実線で記述する飛跡2は、ミューオンラジオグラフィにおいて観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡を示す。点線で記述する飛跡3は、観測後から現像処理までの間に記録された飛跡を示す。
ミューオンラジオグラフィにより観測対象物の内部をイメージングするためには、図示する3種類の飛跡1,2,3のうち、実線で記述する、観測期間中に記録された飛跡2のみを用いて行うことが望ましい。飛跡2以外の飛跡1および飛跡3は、いずれも観測期間中に記録された飛跡ではないため、ノイズ成分となる。
しかしながら、図2(A)に示すように、1つの検出器10を用いて飛跡を記録する場合には、実際には、飛跡がいつ記録されたものなのかを区別することができない。したがって、観測に用いる検出器10が1つの場合には、3種類の飛跡1,2,3を区別することができず、観測期間中に記録された飛跡2のみを選別することはできない。
また、ミューオンラジオグラフィを行う実際の環境では、通常、観測対象物である大型構造物を観測している期間よりも、検出器10である原子核乾板10を製造してから実際に観測を行うまでの期間の方が長く、飛跡2の本数よりも飛跡1の本数の方が圧倒的に多い。すなわち、記録されている飛跡の多くは観測期間外の飛跡1および飛跡3(特に飛跡1が圧倒的に多い)であり、観測に検出器10を1つしか用いない場合、イメージングができない程度にまでS/N比が著しく低下する。
これに対して、本発明の飛跡選別方法では、図2(B)に示すように、少なくとも2つの検出器10a,10bを用いて、観測期間中に記録された飛跡2のみを選別する。例えば図2(B)に示す状態では、幅方向の寸法が略同一である、板状の2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように、端部を揃えてかつ重ねて配置された組合せとなっている。観測期間中に2つの検出器10a,10bの組合せ(すなわち相対的な位置関係)を作成することにより、観測期間中に2つの検出器10a,10bを通過したミューオンの飛跡は1つの直線となる。すなわち、第1の検出器10aに記録されている飛跡2aと、第2の検出器10bに記録されている飛跡2bとは、1つの直線状の飛跡となる。よって、検出器10の現像処理後に、1つの直線となる飛跡2aおよび飛跡2bの組合せを、第1の検出器10a内の飛跡および第2の検出器10b内の飛跡について特定することにより、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡2のみを選別することが可能になる。
[第1の実施形態]
図3は、本発明の第1の実施形態に係る飛跡選別方法の手順を示すフローチャートであり、図4は、本発明の第1の実施形態に係る飛跡選別方法を説明するための模式図である。
本発明の第1の実施形態では、2つの検出器10a,10bの観測期間中の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測期間中の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡2を選別する。
ステップS1aにおいて、検出器10a,10bとして用いる2つの原子核乾板10を準備する。原子核乾板10は、本発明を実施する者が製造してもよいし、製造業者により予め作成され市販されているものを入手して使用してもよい。
ステップS2aにおいて、2つの検出器10a,10bを分離して保管する。図4(A)に示すように、2つの検出器10a,10bが分離して保管されている状態では、検出器10a,10bには、破線で記述する飛跡1がランダムに記録される。ここで、2つの検出器10a,10bが分離して保管されている状態とは、単に、2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係が特定されていない状態を意味する。好ましくは、2つの検出器10a,10bが分離して保管されている状態とは、板状の2つの検出器10a,10bが互いに向かい合うように配置されていない状態を意味する。
ステップS3aにおいて、2つの検出器10a、10bを、観測期間中に用いる所定の位置関係に配置する。本実施形態では、図4(B)に示すように、観測期間中の位置関係とは、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように、端部を揃えてかつ重ねて配置された位置関係である。ここで、板状の2つの検出器10a,10bが互いに向かい合う位置関係とは、板状の2つの検出器10a,10bが完全に平行に配置されることを意味するものではない。
ステップS4aにおいて、ステップS3aにおいて配置した検出器10a,10bの位置関係の状態で、観測対象物を観測する。図4(B)において実線で記述する飛跡2は、このステップS4aの観測工程において記録された飛跡であり、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡である。
ここで、観測とは、図1に示す板状の検出器10の表面に形成されている面状の検出部92が、観測対象物に向けられている状態を意味する。例えば、ピラミッドを観測対象物とし、ピラミッドの底部に位置する下部玄室からピラミッドの頂部方向の内部構造を観測するのであれば、検出部92の法線方向をピラミッドの頂部方向へ向けて、板状の検出器10を下部玄室の床面に配置する。検出器10に記録される飛跡は、ピラミッドを透過したミューオンにより記録された飛跡であり、記録される飛跡の方向分布は、ピラミッドの内部構造の物質量に応じて変化する。その理由は、ミューオンの通過経路中により多くの物質が存在すると、より多くのミューオンが物質中でエネルギーを失って物質を通過することができず、記録される飛跡の数が減少するからである。また例えば、原子炉の内部を観測対象物とするのであれば、原子炉の下部に検出器10を配置することが困難(または不可能)な場合がある。このような場合には、板状の検出器10を床面に立てて設置して、検出部92の法線方向が横を向くような状態とし、原子炉を横方向に横切るミューオンを観測する。検出部92の法線方向は、床面に対して垂直または水平を向く方向に限られず、検出部92は、法線方向が床面または観測対象物に対して傾くように配置されてもよい。すなわち、板状の検出器10が観測対象物の方向を向くように検出器10を配置すれば、検出器10に記録される飛跡は、観測対象物を透過するなどして検出器10に飛来したミューオンによる飛跡となる。さらに、この際の検出器10a,10bの位置関係を特定すると、観測期間中に記録された飛跡2のみを特定することが可能となる。ミューオンイメージングでは、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された、この飛跡2を精度良く特定することにより、ノイズを低減しS/N比を向上させることが可能となる。
ステップS5aにおいて、観測を終了し、2つの検出器10a,10bを回収し分離して保管する。図4(C)に示すように、2つの検出器10a,10bが分離して保管されている状態では、ステップS2aと同様に、検出器10a,10bには、点線で記述する飛跡3がランダムに記録される。
ステップS6aにおいて、回収した検出器10a,10bを現像処理し、現像処理により得られた飛跡をデータ化して記録する。検出器10である原子核乾板10の現像処理については、公知の種々の現像方法を適用して行うことができる。現像処理後の飛跡を読み取る処理および読み取った飛跡をデータ化して記録する処理については、本実施形態では、特開2010-101676号公報に記載の飛跡認識装置200を用いて行う。飛跡認識装置200を用いると、検出器10の所定の区画毎に飛跡のデータ化が行われる。区画のサイズ(面積)は任意に設定が可能である。飛跡をデータ化した後のステップS7a~ステップS8aの処理については、本実施形態では演算装置100を用いて行う。すなわち演算装置100は、飛跡選別装置として機能する。
図5は、飛跡認識装置に接続して使用する演算装置のハードウェア構成を示すブロック図である。演算装置100は、演算部50と、入力部56と、表示部57とを備え、飛跡認識装置200に接続される。
演算部50は、例えば汎用コンピュータで構成されており、後述するデータ処理を行うCPU51と、データ処理の作業領域に使用するメモリ52と、処理データを記録する記録部53と、各部の間でデータを伝送するバス54と、外部機器とのデータの入出力を行うインタフェース部55(以下、I/F部と記す)とを備えている。
演算部50は、ステップS7a~ステップS8aの処理を行うためのプログラムを、例えば実行形式(例えばプログラミング言語からコンパイラにより変換されて生成される)で記録部53に予め記録しており、演算部50は、記録部53に記録したプログラムを使用して処理を行う。これに代えて、演算部50は、ステップS7a~ステップS8aの処理を実行する回路または手段を備えてもよい。
入力部56および表示部57は演算部50に接続されている。入力部56と表示部57とは一体化されて、タッチパネル式の入力表示装置として構成されていてもよい。
以下の説明においては、特に断らない限り、演算部50が行う処理は、記録部53またはメモリ52に格納されたプログラムに基づいて、実際には演算部50のCPU51が行う処理を意味する。CPU51はメモリ52を作業領域として必要なデータ(処理途中の中間データ等)を一時記憶し、記録部53に演算結果等の長期保存するデータを適宜記録する。
飛跡認識装置200からは、検出器10a,10bに記録されている飛跡の3次元の位置座標(以下、位置座標を単に座標とも記載する)および3次元の角度が、例えばベクトルデータとして出力される。演算装置100は、飛跡認識装置200から出力される飛跡の座標および角度のデータを、記録部53に記録する。記録部53には、飛跡の座標と、飛跡の角度と、が対応付けられた飛跡データが記録される。
図4(C)に示す例では、飛跡認識装置200を用いると、第1の検出器10aからは4本分の飛跡データが取得され、第2の検出器10bからは5本分の飛跡データが取得される。取得された9本分の飛跡データは、飛跡が記録されていた検出器10a,10bを区別する識別子と共に、演算装置100の記録部53に記録される。
なおこの時点では、飛跡のデータは、上記した3種類の飛跡1,2,3のどれであるのかが区別されずに記録部53に記録されており、本実施形態では、それぞれの飛跡データに付与される、3種類の飛跡を区別する識別子には、例えば値「NULL」が初期値として設定されていることとする。識別子には、例えば値「1」、値「2」、値「3」、および値「NULL」のいずれかが設定される。値「1」は、検出器10の製造直後から観測前までの間に記録された飛跡であることを示し、値「2」は、観測期間中に記録された飛跡であることを示し、値「3」は、観測後から現像処理までの間に記録された飛跡であることを示す。値「NULL」は、値「1」~値「3」のどの種類の飛跡かが特定されていないことを示す。
ステップS7aにおいて、観測期間中における検出器10a,10b間の相対的な位置関係を取得する。本実施形態では、観測期間中の位置関係とは、図4(B)に示すように、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように、端部を揃えてかつ重ねて配置された位置関係である。演算部50は、例えばパターンマッチングの処理により、観測期間中の位置関係として、ずれ量(=0)を取得する。本実施形態では、2つの検出器10a,10bのそれぞれに記録されている複数の飛跡同士をパターンマッチングすることにより、2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を取得する。パターンマッチングの処理は演算部50が行うことができる。パターンマッチングの処理は、検出器10a,10bの各区画毎に行うことができる。処理を適用する対象である観測期間中に記録された飛跡2の数が十分に得られるように、検出器10a,10bの区画のサイズを調整することが好ましい。
パターンマッチングの処理では、2つの検出器10a,10bに記録されている複数の飛跡を対象として、2つの検出器10a,10b間の位置、角度、傾きについての平行移動、回転、および伸び縮みについての変換パラメータ(例えば、アフィン変換のパラメータ)を設定し、これら変換パラメータのうち最も確からしいものを求める。これら得られた最も確からしい変換パラメータから、2つの検出器10a,10b間の位置関係を、飛跡のサイズの精度(概ね1μm程度)で取得することができる。これにより、観測期間中の位置関係の情報を高精度に取得することができ、後続の工程において、観測期間中に記録された飛跡を高精度に選別することが可能になる。
なお、ステップS3aにおける2つの検出器10a,10bの位置合わせの精度が、例えば1mm程度である場合、飛跡のパターンマッチングは、少なくとも1mm以上の範囲内に含まれる飛跡同士で行う。
ステップS8aにおいて、ステップS7aにおいて取得した、観測期間中における検出器10a,10b間の相対的な位置関係に基づいて、観測期間中に記録された飛跡を選別する。飛跡を選別する処理とは、図2(B)を参照して説明した方法であり、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡の1つと、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡の1つとの組合せのうち、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを選別する処理である。なお、実際にはミューオンは物質中で散乱している。散乱の頻度は、ミューオンと対象物質との間の物理的な確率過程であり、ミューオンの運動量に依存している。散乱の程度(散乱の角度)も、ミューオンの運動量に応じた、ミューオンと対象物質との間の物理的な作用により決定される。したがって、本明細書において1つの直線となる2つの飛跡の組合せを選別する処理とは、このような物理的な作用により飛跡が僅かに曲がることも考慮して飛跡を選別してもよいことを意味する。
判別処理を行う際には、ステップS7aにおいて取得した、観測期間中における検出器10a,10b間の相対的な位置関係を考慮して、第1の検出器10a中の飛跡のベクトルと、第2の検出器10b中の飛跡のベクトルとが、1つの直線上に位置するか否かを判別する。1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測期間中に記録された飛跡であることを示す値「2」が設定され、これら2本の飛跡のベクトルから合成された合成飛跡データを、飛跡の種類を区別する識別子の値「2」と共に演算装置100の記録部53に記録する。記録部53には、飛跡の座標と、飛跡の角度と、飛跡の識別子とが対応付けられた合成飛跡データが記録される。あるいは、合成飛跡データを記録するこのような態様に代えて、1つの直線上に位置すると判別した、合成飛跡データを構成する2本の飛跡データのそれぞれに割り振られた対応関係を、リスト化して保存してもよい。
このような、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを選別する処理を、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡と、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡との全ての組合せに対して行う。識別子に値「2」が設定されている飛跡データおよび合成飛跡データが、観測期間中に記録された飛跡である。識別子に値「NULL」が設定されている飛跡データは、観測期間中に記録された飛跡ではなく、ノイズ成分である。
このように、本発明の第1の実施形態に係る飛跡選別方法によると、検出器10である原子核乾板10に記録されている複数の飛跡のうち、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡2を選別することが可能になる。
[第2の実施形態]
図6は、検出器である原子核乾板に記録される飛跡の数が多い場合の問題点を説明するための模式図である。
図2を参照して説明したように、ミューオンラジオグラフィにより観測対象物の内部をイメージングするためには、図示する3種類の飛跡1,2,3のうち、実線で記述する、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡2のみを用いて行うことが望ましい。飛跡2以外の飛跡1および飛跡3は、いずれも観測期間中に記録された飛跡ではないため、ノイズ成分となるからである。
しかしながら、図6に示すように、検出器10a,10bに記録されている飛跡の数が多い場合には、例えば以下に説明する2つの問題点が発生する。
・問題点1
検出器10の製造直後から観測前までの間に記録された飛跡1の数が増加すると、1つの直線上に位置すると誤って判別されてしまう飛跡が増加し、観測期間中の飛跡2に対するノイズ成分が増加するという問題がある。
具体的には、検出器10の製造直後から観測前までの間に記録された飛跡1と、観測期間中に記録された飛跡2とが、たまたま1つの直線上に位置すると判別されてしまう場合が該当する。例えば図6に図示する例では、符号M1で示すように、飛跡1mが飛跡2aと大差ない傾きで第1の検出器10aに記録されており、飛跡1mと飛跡2bとが1つの直線上に位置すると誤って判別されてしまう。
また、複数の飛跡1同士がたまたま1つの直線上に位置すると判別されてしまう場合が該当する。例えば図6に図示する例では、符号M2で示すように、飛跡1amおよび飛跡1bmはそれぞれ、大差ない傾きで第1の検出器10aおよび第2の検出器10bにそれぞれ記録されており、飛跡1amと飛跡1bmとが1つの直線上に位置すると誤って判別されてしまう。
このように誤って判別された飛跡は、観測期間中の飛跡2に対するノイズ成分となる。
・問題点2
第1の実施形態のステップS7aの処理では、観測期間中の2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を、パターンマッチングの処理により取得している。しかしながら、観測期間中の飛跡2の本数に対して、飛跡1または飛跡3の本数がそもそも多すぎると、パターンマッチングの処理が機能しなくなるという問題がある。これは、パターンマッチングにより位置関係を求める際に、ノイズが多すぎると、観測期間中の飛跡2の組合せに対して、ノイズとなる飛跡1と飛跡1との組合せ、飛跡1と飛跡3との組合せ、飛跡3と飛跡3との組合せのランダムな組合せの数が勝ってしまうためである。このようなケースでは、飛跡1や飛跡3のデータを除いてから、観測期間中の飛跡2の組合せに対してパターンマッチングを行うことにより、パターンマッチングの処理が機能する。
本発明の第2の実施形態では、第1の実施形態の手順に加えてさらに、2つの検出器10a,10bの観測前の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測前の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡1を特定する。特定した飛跡1はノイズ成分であるので、観測期間中に記録された飛跡を選別する処理を行う前に、選別の対象から除外する。
図7は、本発明の第2の実施形態に係る飛跡選別方法の手順を示すフローチャートであり、図8は、本発明の第2の実施形態に係る飛跡選別方法を説明するための模式図である。なお、第1の実施形態と同様に、飛跡をデータ化した後のステップS7b~ステップS11bの処理は、演算装置100を用いて行う。演算部50は、ステップS7b~ステップS11bの処理を行うためのプログラムを、例えば実行形式で記録部53に予め記録しており、演算部50は、記録部53に記録したプログラムを使用して処理を行う。
ステップS1bの処理は、第1の実施形態のステップS1aの処理と同じである。
ステップS2bにおいて、2つの検出器10a、10bを、観測前に用いる所定の位置関係に配置する。本実施形態では、図8(A)に示すように、観測前の位置関係とは、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x1ずれて配置された位置関係である。本実施形態では、第2の検出器10b側を平面方向のずれの基準とし、図8(A)に示す例では、平面方向のずれΔxは、Δx=-x1である。破線で記述する飛跡1は、2つの検出器10a、10bが平面方向のずれΔx=-x1の位置関係において記録された飛跡であり、後の工程においてノイズ成分として除去される飛跡である。
ステップS3bにおいて、2つの検出器10a、10bを、観測期間中に用いる所定の位置関係に配置する。本実施形態では、図8(B)に示すように、観測期間中の位置関係とは、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x2ずれて配置された位置関係である。寸法x2は、寸法x1と異なる大きさである。図8(B)に示す例では、2つの検出器10a,10bは端部を揃えて配置されており、平面方向のずれΔxは、Δx=x2(x2=0)である。
ステップS4bにおいて、ステップS3bにおいて配置した検出器10a,10bの位置関係の状態で、観測対象物を観測する。図8(B)において実線で記述する飛跡2は、このステップS4bの観測工程において記録された飛跡であり、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡である。
ステップS5bにおいて、観測を終了し、2つの検出器10a,10bを回収し分離して保管する。図8(C)に示すように、2つの検出器10a,10bが分離して保管されている状態では、検出器10a,10bには、点線で記述する飛跡3がランダムに記録される。
ステップS6bにおいて、回収した検出器10a,10bを現像処理し、現像処理により得られた飛跡をデータ化して記録する。本ステップS6bの処理は、第1の実施形態のステップS6aの処理と同じである。
図8(C)に示す例では、飛跡認識装置200を用いると、第1の検出器10aからは5本分の飛跡データが取得され、第2の検出器10bからは5本分の飛跡データが取得される。取得された10本分の飛跡データは、飛跡が記録されていた検出器10a,10bを区別する識別子と飛跡の種類を区別する識別子と共に、演算装置100の記録部53に記録される。なおこの時点では、飛跡のデータは、3種類の飛跡1,2,3のどれであるのかが区別されずに記録部53に記録されている。
ステップS7bにおいて、観測前における検出器10a,10b間の相対的な位置関係を取得する。本実施形態では、観測前の位置関係とは、図8(A)に示すように、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x1ずれて配置された位置関係である。演算部50は、観測前の位置関係として、ずれ量x1を取得する。2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係は、2つの検出器10a,10bのそれぞれに記録されている複数の飛跡同士をパターンマッチングすることにより行う。
ステップS8bにおいて、ステップS7bにおいて取得した、観測前の検出器10a,10b間の相対的な位置関係に基づいて、観測前に記録された飛跡を特定する。飛跡を特定する処理とは、図2(B)を参照して説明した方法であり、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡の1つと、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡の1つとの組合せのうち、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを特定する処理である。
特定処理を行う際には、ステップS7bにおいて取得した、観測前の検出器10a,10b間の相対的な位置関係を考慮して行う。本実施形態では、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x1ずれて配置されていたので、特定処理において2つの検出器10a,10b間の横方向(平面方向)のずれとして、寸法x1を考慮したうえで、第1の検出器10a中の飛跡のベクトルと、第2の検出器10b中の飛跡のベクトルとが、1つの直線上に位置するか否かを判別する。1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測前に記録された飛跡であることを示す値「1」が設定される。
このような、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを特定する処理を、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡と、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡との全ての組合せに対して行う。
ステップS9bにおいて、観測前に記録された飛跡のデータを解析から除外する。観測前に記録された飛跡データには、識別子に値「1」が設定されているので、記録部53に記録されている飛跡データのうち、識別子に値「1」が設定されているものを、例えば記録部53から削除する。
あるいは、飛跡データを記録部53から削除する態様に代えて、識別子に値「1」が付与されている飛跡データを、以後のデータ処理では用いない態様としてもよい。例えば、データ処理において使用するか否かを示すフラグ値を、飛跡データに設けておき、本ステップS9bにおいて、フラグ値を「FALSE」(使用しない)に設定する。そして、以後のデータ処理では、フラグ値が「FALSE」に設定されている飛跡データを、データ処理において使用しないようにすればよい。
ステップS10bにおいて、観測期間中における検出器10a,10b間の相対的な位置関係を取得する。本実施形態では、観測期間中の位置関係とは、図8(B)に示すように、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x2ずれて配置された位置関係である。演算部50は、観測期間中の位置関係として、ずれ量x2(=0)を取得する。2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係は、2つの検出器10a,10bのそれぞれに記録されている複数の飛跡同士をパターンマッチングすることにより行う。
本実施形態では、ずれ量の初期値をたよりにパターンマッチングを行い、パターンマッチングにより得られた、相対的な位置関係の結果について、妥当性の判断を行う。例えば、観測中の状態を、検出器10a,10bがほぼ重なった状態(X=0)とし、その前後の状態をそれぞれX=-5mm、X=+5mmとして設定して、観測を実施する場合について説明する。まず、5mmという値は観測毎に決めるため、観測前、観測中、および観測後のそれぞれの時点における検出器10a,10bの位置関係を、ノート等の紙媒体または電子データに記録しておく。この5mmという値は、検出器10a,10bを、検出器10を支持するアルミ板等のどの位置に合わせたかの記録となる。このような、検出器10を支持するアルミ板の相対的な位置を移動させずに、観測前、観測中、および観測後で検出器10a,10bの位置を貼り替える態様に代えて、検出器10a,10bをアルミ板に予め貼り付けておき、観測前、観測中、および観測後でアルミ板の位置を相対的に移動させる態様であってもよい。すなわち、何らかの手段で検出器10とアルミ板等との相対的な位置関係を決めることができればよく、位置決めの方法は手動であっても電動であってもよい。検出器10を支持する構成部材の材料もアルミに限定されず、アルミに代えて、例えば鉄等の金属、プラスチック、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、およびゴム板等の何らかの材料であってもよい。観測前、観測中、および観測後の3つのアライメント(位置関係)が存在するので、これらそれぞれの位置関係における検出器10a,10b間のずれ量の初期値を、プログラムの入力パラメータ(引数)としている。演算装置100には、オペレータから初期値として、複数の位置関係のずれ量が入力され、演算装置100は、入力された初期値をたよりとして、飛跡のパターンマッチングの処理を行う。演算装置100は、パターンマッチングにより得られた飛跡の特定結果と、それぞれの観測時間と、設置環境に対応する飛跡の本数および角度分布であるか否か(観測期間中と観測前または観測後とでは、得られる飛跡のイメージが異なる)とを、最終的な判断として使用する。
ステップS11bにおいて、ステップS10bにおいて取得した、観測期間中における検出器10a,10b間の相対的な位置関係に基づいて、観測期間中に記録された飛跡を選別する。本ステップS11bの処理は、第1の実施形態のステップS8aの処理と同じである。
識別子に値「2」が設定されている飛跡データおよび合成飛跡データが、観測期間中に記録された飛跡である。識別子に値「NULL」が設定されている飛跡データは、2つの検出器10a,10bが観測前の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡および観測期間中に記録された飛跡のいずれでもなく、ノイズ成分である。
このように、本発明の第2の実施形態に係る飛跡選別方法では、観測期間中に記録された飛跡を選別する工程を行う前に、2つの検出器10a,10bの観測前の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測前の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡1を特定する。この特定した飛跡1をノイズ成分として選別の対象から除外することにより、検出器10である原子核乾板10に記録されている複数の飛跡のうち、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡2をより高精度に選別することが可能になる。
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態では、第2の実施形態の手順に加えてさらに、2つの検出器10a,10bの観測後の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測後の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡3を特定する。特定した飛跡3はノイズ成分であるので、観測期間中に記録された飛跡を選別する工程を行う前に、選別の対象から除外する。
図9は、本発明の第3の実施形態に係る飛跡選別方法の手順を示すフローチャートであり、図10は、本発明の第3の実施形態に係る飛跡選別方法を説明するための模式図である。なお、第1の実施形態と同様に、飛跡をデータ化した後のステップS7c~ステップS14cの処理は、演算装置100を用いて行う。演算部50は、ステップS7c~ステップS14cの処理を行うためのプログラムを、例えば実行形式で記録部53に予め記録しており、演算部50は、記録部53に記録したプログラムを使用して処理を行う。
ステップS1c~ステップS4cの処理は、第2の実施形態のステップS1b~ステップS4bの処理と同じである。
ステップS5cにおいて、観測を終了し、2つの検出器10a、10bを、観測後に用いる所定の位置関係に配置し、その位置関係を保持したまま2つの検出器10a、10bを回収する。本実施形態では、図10(C)に示すように、観測後の位置関係とは、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x3ずれて配置された位置関係である。寸法x3は、寸法x1および寸法x2のいずれとも異なる大きさである。図10(C)に示す例では、平面方向のずれΔxは、Δx=x3である。点線で記述する飛跡3は、2つの検出器10a、10bが平面方向のずれΔx=x3の位置関係において記録された飛跡であり、後の工程においてノイズ成分として除去される飛跡である。
ステップS6cにおいて、回収した検出器10a,10bを現像処理し、現像処理により得られた飛跡をデータ化して記録する。本ステップS6cの処理は、第1の実施形態のステップS6aの処理と同じである。
図10(C)に示す例では、飛跡認識装置200を用いると、第1の検出器10aからは6本分の飛跡データが取得され、第2の検出器10bからは6本分の飛跡データが取得される。取得された12本分の飛跡データは、飛跡が記録されていた検出器10a,10bを区別する識別子と飛跡の種類を区別する識別子と共に、演算装置100の記録部53に記録される。なおこの時点では、飛跡のデータは、3種類の飛跡1,2,3のどれであるのかが区別されずに記録部53に記録されている。
ステップS7c~ステップS9cの処理は、第2の実施形態のステップS7b~ステップS9bの処理と同じである。これにより、観測前に記録された飛跡のデータを解析から除外する。
ステップS10cにおいて、観測後における検出器10a,10b間の相対的な位置関係を取得する。本実施形態では、観測後の位置関係とは、図10(C)に示すように、2つの検出器10a,10bが、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x3ずれて配置された位置関係である。演算部50は、観測後の位置関係として、ずれ量x3を取得する。2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係は、2つの検出器10a,10bのそれぞれに記録されている複数の飛跡同士をパターンマッチングすることにより行う。
ステップS11cにおいて、ステップS10cにおいて取得した、観測後の検出器10a,10b間の相対的な位置関係に基づいて、観測後に記録された飛跡を特定する。飛跡を特定する処理とは、図2(B)を参照して説明した方法であり、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡の1つと、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡の1つとの組合せのうち、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを特定する処理である。
特定処理を行う際には、ステップS10cにおいて取得した、観測後の検出器10a,10b間の相対的な位置関係を考慮して行う。本実施形態では、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x3ずれて配置されていたので、特定処理において2つの検出器10a,10b間の横方向(平面方向)のずれとして、寸法x3を考慮したうえで、第1の検出器10a中の飛跡のベクトルと、第2の検出器10b中の飛跡のベクトルとが、1つの直線上に位置するか否かを判別する。1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測後に記録された飛跡であることを示す値「3」が設定される。
このような、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを特定する処理を、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡と、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡との全ての組合せに対して行う。
ステップS12cにおいて、観測後に記録された飛跡のデータを解析から除外する。観測後に記録された飛跡データには、識別子に値「3」が設定されているので、記録部53に記録されている飛跡データのうち、識別子に値「3」が設定されているものを、例えば記録部53から削除する。
ステップS13c~ステップS14cの処理は、第2の実施形態のステップS10b~ステップS11bの処理と同じである。これにより、観測期間中に記録された飛跡を選別する。識別子に値「2」が設定されている飛跡データおよび合成飛跡データが、観測期間中に記録された飛跡である。
このように、本発明の第3の実施形態に係る飛跡選別方法では、第2の実施形態の手順に加えてさらに、観測期間中に記録された飛跡を選別する工程を行う前に、2つの検出器10a,10bの観測後の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測後の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡3を特定する。この特定した飛跡3をノイズ成分として選別の対象から除外することにより、検出器10である原子核乾板10に記録されている複数の飛跡のうち、観測期間中に飛来したミューオンにより記録された飛跡2をより高精度に選別することが可能になる。
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施の形態によって説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではない。
上記した第1~第3の実施形態では、観測期間中に設定されている2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係は1つであり(ステップS3a~S4a、ステップS3b~S4b、ステップS3c~S4c)、観測期間中のこの1つの相対的な位置関係に基づいて、観測期間中に記録された飛跡を選別している(ステップS8a,S11b,S14c)が、観測期間中に設定する2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係は1つに制限されない。観測期間中に2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を複数設定し、設定された複数の位置関係のそれぞれに基づいて、2つの検出器10a,10bがそれぞれの位置関係の状態にあるときに記録された飛跡を選別し、選別した飛跡を観測期間中に記録された飛跡としてもよい。観測期間中に2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を複数設定することにより、観測期間中に記録された飛跡をより高精度に選別することが可能となる。すなわちこのようにすることで、複数の位置関係の状態のそれぞれについて、時刻の情報を付与することが可能となり、観測期間中に記録された飛跡について、時間的な前後関係を把握することが可能となる。
図11は、観測期間中に2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を複数設定する場合の飛跡選別方法を説明するための模式図である。例えば、上記した第2の実施形態において、観測期間中に2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を複数設定し、観測期間中に記録された飛跡を選別する場合を一例として説明する。なお、以下で説明するサブステップA~サブステップFの処理は、第2の実施形態に係る飛跡選別方法にのみ適用されるのではなく、第1および第3の実施形態に係る飛跡選別方法についても適用することができる。
すなわち、第2の実施形態に係る飛跡選別方法のステップS3b~ステップS4bにおいて、以下に説明するサブステップA~サブステップCの処理を行い、ステップS10b~ステップS11bにおいて、以下に説明するサブステップD~サブステップFの処理を行う。サブステップFの処理を終了した後、識別子に値「2」が設定されている飛跡データおよび合成飛跡データが、観測期間中に記録された飛跡である。演算部50は、サブステップA~サブステップFの処理を行うためのプログラムを、例えば実行形式で記録部53に予め記録しており、演算部50は、記録部53に記録したプログラムを使用して処理を行う。
サブステップAでは、図11(B-1)に示すように、観測期間中の時刻t1において、2つの検出器10a,10bを、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x21ずれて配置された位置関係に配置する。図11(B-1)に示す例では、平面方向のずれΔxは、Δx=x21(x21=0)である。寸法x21は、寸法x1と異なる大きさである。実線で記述する飛跡21は、2つの検出器10a,10bが平面方向に所定の寸法x21ずれて配置された位置関係において記録された飛跡である。
サブステップBでは、図11(B-2)に示すように、観測期間中の時刻t2において、2つの検出器10a,10bを、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x22ずれて配置された位置関係に配置する。図11(B-2)に示す例では、平面方向のずれΔxは、Δx=x22である。寸法x22は、寸法x1および寸法x21のいずれとも異なる大きさである。実線で記述する飛跡22は、2つの検出器10a,10bが平面方向に所定の寸法x22ずれて配置された位置関係において記録された飛跡である。
サブステップCでは、図11(B-3)に示すように、観測期間中の時刻t3において、2つの検出器10a,10bを、互いに向かい合うように重ねて配置された位置関係であり、第1の検出器10aと第2の検出器10bとが平面方向に所定の寸法x23ずれて配置された位置関係に配置する。図11(B-3)に示す例では、平面方向のずれΔxは、Δx=x23である。寸法x23は、寸法x1、寸法x21および寸法x22のいずれとも異なる大きさである。実線で記述する飛跡23は、2つの検出器10a,10bが平面方向に所定の寸法x23ずれて配置された位置関係において記録された飛跡である。
サブステップDでは、観測期間中の時刻t1における検出器10a,10b間の相対的な位置関係の情報として寸法x21を取得し、取得した相対的な位置関係寸法x21に基づいて、時刻t1から時刻t2までの間に記録された飛跡を選別する。本サブステップDでは、図11(B-1)に実線で記述する飛跡21が、観測期間中の時刻t1から時刻t2までの間に記録された飛跡として選別される。
選別工程では、2つの検出器10a,10b間の横方向(平面方向)のずれとして、寸法x21を考慮したうえで、第1の検出器10a中の飛跡のベクトルと、第2の検出器10b中の飛跡のベクトルとが、1つの直線上に位置するか否かを判別する。1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測期間中の時刻t1から時刻t2までの間に記録された飛跡であることを示す値「2-1」が設定され、これら2本の飛跡のベクトルから合成された合成飛跡データを、飛跡の種類を区別する識別子の値「2-1」と共に演算装置100の記録部53に記録する。このような、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを選別する処理を、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡と、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡との全ての組合せに対して行う。
サブステップEでは、観測期間中の時刻t2における検出器10a,10b間の相対的な位置関係の情報として寸法x22を取得し、取得した相対的な位置関係寸法x22に基づいて、時刻t2から時刻t3までの間に記録された飛跡を選別する。本サブステップEでは、図11(B-2)に実線で記述する飛跡22が、観測期間中の時刻t2から時刻t3までの間に記録された飛跡として選別される。サブステップEの処理は、サブステップDの処理と同様であるが、1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測期間中の時刻t2から時刻t3までの間に記録された飛跡であることを示す値「2-2」が設定される。
サブステップFでは、観測期間中の時刻t3における検出器10a,10b間の相対的な位置関係の情報として寸法x23を取得し、取得した相対的な位置関係寸法x23に基づいて、時刻t3から観測を終了した時刻(すなわち、ステップS5a,S5b,S5cを開始する時刻)までの間に記録された飛跡を選別する。本サブステップFでは、図11(B-3)に実線で記述する飛跡23が、観測期間中の時刻t3から観測を終了した時刻までの間に記録された飛跡として選別される。サブステップFの処理は、サブステップDの処理と同様であるが、1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測期間中の時刻t3から観測を終了した時刻までの間に記録された飛跡であることを示す値「2-3」が設定される。
以上、サブステップA~サブステップFの処理を行うことにより、観測期間中に2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係を複数設定し、観測期間中に記録された飛跡をより高精度に選別することが可能となる。観測期間中に記録された飛跡には、値「2」をさらに細分化した値である「2-1」、「2-2」、「2-3」が設定されており、この細分化した値を参照することにより、観測期間中に記録された飛跡について、時刻の情報を付与することが可能となり、時間的な前後関係を把握することが可能となる。
上記した第1~第3の実施形態では、板状の2つの検出器10a,10bは、幅方向の寸法が略同一であるが、幅方向の寸法は、一方の検出器が他方の検出器よりも大きくてもよい。また、板状の2つの検出器10a,10bは重ねて配置されているが、飛跡を選別することができる限り、2つの検出器10a,10b間には隙間が生じていてもよい。検出器10を遮光フィルムまたは真空パックにて覆う態様においても同様である。
上記した第1~第3の実施形態では、飛跡認識装置200は、飛跡の座標および角度のデータを出力しているが、飛跡認識装置200が出力するデータはこれに限定されない。飛跡認識装置200はさらに、飛跡の濃さや直進性の情報として、例えば信号強度(またはパルスハイトとも呼ばれている)のデータを出力し、演算装置100は、信号強度のデータを、飛跡の座標および角度のデータと対応付けて記録部53に記録してもよい。信号強度のデータには、原子核乾板中における荷電粒子の種々の相互作用が反映されており、ノイズ除去に用いることができる。信号強度のデータには、例えば、荷電粒子が原子核乾板10中で失ったエネルギーや、荷電粒子が検出部92(乳剤層または感材層)において受けた散乱の程度(散乱の角度、すなわち飛跡の曲がりによるずれ)が反映されている。特に、環境放射線等のエネルギーが低い粒子(例えば、電子等)は、検出部92において大きく散乱されるために、このような振る舞いが信号強度のデータにも表れる。すなわち、記録部53に記録されている、飛跡の座標、角度、信号強度のデータを予め複合的に解析しておくことにより、飛跡が、観測対象粒子のミューオンにより記録された飛跡であるのか、あるいはミューオン以外の例えば電子等の荷電粒子により記録された、ノイズとすべき飛跡であるのかを識別することが可能となり、ノイズを低減することが可能となる。
上記した第3の実施形態では、2つの検出器10a,10bの観測後の位置関係を特定し、特定した位置関係に基づいて、2つの検出器10a,10bが観測後の位置関係の状態にあるときに記録された飛跡を解析から除外する処理を、第2の実施形態の手順に加えてさらに行っているが、これら観測後の位置関係を特定し観測後に記録された飛跡をノイズとして特定し除去する処理を、第1の実施形態の手順に加えてさらに行っても良い。
上記した第3の実施形態では、観測後の位置関係のずれを示す寸法x3は、寸法x1および寸法x2のいずれとも異なる大きさであるが、寸法x3は、少なくとも、観測期間中の位置関係のずれを示す寸法x2と異なる大きさであればよく、寸法x3は、観測前の位置関係のずれを示す寸法x1と同一の大きさであってもよい。観測前に記録された飛跡および観測後に記録された飛跡はどちらもノイズ成分として除去される飛跡である。
上記した第1~第3の実施形態では、演算部50は、2つの検出器10a,10bのそれぞれに記録されている複数の飛跡同士をパターンマッチングすることにより、観測期間中の位置関係を取得しているが、観測期間中の位置関係を取得する方法はこれに限定されない。パターンマッチング以外の方法としては、検出器10a,10bに予め基準となるマークを作成しておき、そのマークを用いて2つの検出器10a,10b間のお互いの位置関係を取得する方法がある。検出器10a,10bにマークを作成する方法としては、例えば放射線やX線、可視光を用いる方法がある。基準となるマークから取得される位置関係の情報は、例えばオペレータにより入力部56を介して演算部50に入力されてもよく、基準となるマークを例えば光学的な手段により読み取る装置から、I/F部55を介して演算部50に入力されてもよい。
また、上記したように複数の飛跡同士をパターンマッチングする場合であっても、ミューオンによる飛跡同士をパターンマッチングするのではなく、ミューオンよりも低いエネルギーの粒子による飛跡同士をパターンマッチングすることにより、観測期間中の位置関係を取得してもよい。ミューオンよりも低いエネルギーの粒子の例としては、例えば、環境放射線中のガンマ線や電子、陽子等が挙げられる。ミューオンよりもエネルギーが低いこのような粒子は、乳剤層または感材層中で飛跡が曲げられて、検出器10には曲がった飛跡が記録されるものの、検出器10a,10b同士を密着させて観測する場合には、パターンマッチングが可能であり、観測期間中の位置関係を取得することが可能である。ガンマ線や電子、陽子等のように、乳剤層または感材層(検出部92)中で飛跡が曲げられる粒子であっても、粒子は検出器10a,10b間の接触面を通過するため、2つの検出器10a,10bそれぞれの検出部92の表面では、同じ粒子により記録された同じ飛跡のパターンを観察することができる。
上記した第1~第3の実施形態では、検出器10として原子核乾板10を使用し、荷電粒子としてミューオンの飛跡を原子核乾板10に記録するケースを一例として説明しているが、検出器10および荷電粒子はこれらに制限されない。使用する検出器10は原子核乾板10に限られず、写真乾板、蛍光飛跡検出器、ガラス飛跡検出器、およびCR-39固体飛跡検出器等の固体飛跡検出器であればよく、荷電粒子の飛跡を記録する積分型検出器であればよい。固体飛跡検出器は、固体飛跡記録器と呼ぶこともでき、積分型検出器は、積分型飛跡記録器と呼ぶこともできる。観測に用いる荷電粒子もミューオンに限定されず、陽子、電子、π中間子、K中間子、τ粒子、チャーム粒子等の荷電粒子であり、積分型検出器に飛跡を記録することができる荷電粒子であればよい。また、積分型検出器に飛跡を記録する荷電粒子とは、飛来する荷電粒子自体が直接的に飛跡を記録するケースに限られず、中性粒子である中性子によって散乱される荷電粒子(例えば、陽子)が間接的に、または電磁波であるガンマ線、X線等によって散乱される荷電粒子(例えば、電子)が間接的に飛跡を記録するケースも含まれる。
上記した第1~第3の実施形態では、2つの検出器10a,10bを重ねて使用しているが、使用する検出器10の構成はこれに限定されない。例えば図12(A)に示すように、3つの検出器10a,10b,10cを重ねて使用してもよい。この場合、飛跡を選別する処理において、3つの検出器のそれぞれから飛跡を1つずつ選択し、例えば1つの直線となる3つの飛跡の組合せを判別すればよい。すなわち本発明において使用する検出器10の枚数は少なくとも2枚であり、2枚以上であればよい。また、例えば3つの検出器10a,10b,10cを重ねて使用する上記したケースにおいて、検出器の効率を考慮して飛跡の組合せを判別してもよい。すなわち、検出器10を3つ使用するケースであっても、3つの検出器10a,10b,10cの全てを一直線に貫く飛跡の組合せだけを判別するのではなく、2つの検出器を一直線に貫く飛跡の組合せを判別してもよい。
また、例えば図12(B)に示すように、3つの検出器10a,10b,10cのそれぞれの間に、物質層20a,20bが介装されていてもよい。物質層20a,20bとしては、例えばプラスチック板、金属板などの固体層、水などの液体層、および空気などの気体層等の、種々の物質、素材からなるあらゆる材料の層(材料層)が例示される。この場合、物質層20a,20bが介装されることにより、第1の検出器10aと第2の検出器10bとの相対的な位置関係は、平面方向のずれだけではなく、平面方向に垂直な法線方向に、物質層20a,20bの厚さの分だけずれて配置される。よって、図2(B)を参照して説明した、第1の検出器10aに記録されている複数の飛跡の1つと、第2の検出器10bに記録されている複数の飛跡の1つとの組合せのうち、1つの直線となる2つの飛跡の組合せを選別する処理では、2つの検出器10a,10b間の相対的な位置関係として、横方向(平面方向)のずれの寸法と、縦方向(法線方向)のずれの寸法とを考慮したうえで、第1の検出器10a中の飛跡のベクトルと、第2の検出器10b中の飛跡のベクトルとが、1つの直線上に位置するか否かを判別する。物質層20aの厚さと物質層20bの厚さとが異なっていてもよく、物質層20aの構成物質と物質層20bの構成物質とが異なっていてもよい。
また、例えば図12(C)に示すように、物質層20が介装される位置も制限されず、検出器10a,10bと物質層20との積層構造は不規則であってもよい。
上記第1~第3の実施形態では、演算部50は処理を行うためのプログラムを記録部53に予め記録しているが、プログラムは、DVD-ROM等の、コンピュータ読み取り可能であって一時的でない有形の記録媒体98から演算装置50にインストールしてもよいし、演算装置50をコンピュータネットワーク99と接続し、コンピュータネットワーク99を介して例えば外部サーバ(図示せず)からプログラムをダウンロードしてインストールしてもよい。
上記第1~第3の実施形態では、飛跡認識装置200は演算装置100に直接接続されているが、飛跡認識装置200と演算装置100との接続態様はこれに限定されない。飛跡認識装置200は、ネットワーク99を介して演算装置100に接続されてもよい。
上記第1~第3の実施形態では、演算装置100は一体の装置として実現されているが、演算装置100は一体の装置である必要はなく、CPU51、メモリ52、記録部53等が別所に配置され、これらがネットワークで接続されていてもよい。演算装置100と、入力部56と、表示部57とについても、一ヶ所に配置される必要は必ずしもなく、それぞれ別所に配置されて互いにネットワークで通信可能に接続されていてもよい。
また、上記第1~第3の実施形態では、演算部50は、上述の演算処理を単一のCPU51で実行しているが、これら各演算処理を単一のCPU51で実行する必要は必ずしもなく、複数のCPUで分散して処理してもよい。また、演算装置100が行う演算処理も演算部50のCPU51に限らず、例えばGPU(Graphics Processing Unit)をアクセラレータとして用いて、CPU51が行う並列演算処理を補助してもよい。また、CPU51に代えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)を用いて演算処理を行ってもよい。すなわち本明細書においてCPU51が行う処理とは、CPUまたはFPGAが、GPU等のアクセラレータを用いて行う処理も含むことを意味する。
上記した第1~第3の実施形態では、演算装置100は、飛跡認識装置200から出力されるデータを一旦記録部53に記録したうえで、観測期間中に記録された飛跡を選別しているが、演算装置100は飛跡認識装置200から出力されるデータをリアルタイムで処理することで、観測期間中に記録された飛跡を選別してもよい。
上記した第1~第3の実施形態では、1つの直線上に位置すると判別された2本の飛跡データの識別子には、観測期間中に記録された飛跡であることを示す値「2」が設定されているが、例えば1つの直線上に位置する可能性とノイズである可能性とが同程度である場合には、両方の可能性を示す値を飛跡データの識別子に設定してもよい。これにより、より高精度な解析を行うことが可能となる。両方の可能性を示す値としては、例えば、ノイズを示す値「1」または値「3」と、観測期間中の飛跡を示す値「2」との両方の値を設定してもよいし、例えば値「4」等の新たな値を割り当てて使用してもよい。あるいは、ノイズを示す値「1」および値「3」と、観測期間中の飛跡を示す値「2」とを設定して、取り得る可能性があるものをすべて値として保持してもよい。すなわちノイズ成分の飛跡とは、飛跡データの識別子に、ノイズを示す値が1つまたは複数設定されている飛跡を示している。
上記した第2の実施形態では、観測前に記録された飛跡のデータを解析から除外するステップS9bの処理を、観測中の飛跡を選別するステップS11bの処理を行う前に実行しているが、ステップS9bの処理はステップS11bの処理の後に実行してもよい。さらに引き続き、ステップS9bの処理後に、ステップS11bによる飛跡選別処理の結果からステップS9bの処理の結果を差し引いて、観測中の飛跡を選別してもよい。同様に、上記した第3の実施形態において、ステップS9cの処理またはステップS12cの処理を、ステップS14cの処理の後に実行してもよい。
上記した第3の実施形態では、観測前に記録された飛跡のデータを解析から除外するためのステップS7c~ステップS9cの一連の処理を先に実行し、観測後に記録された飛跡のデータを解析から除外するためのステップS10c~ステップS12cの一連の処理を後に実行しているが、処理の順序はこれに制限されない。例えば観測後のノイズが観測前のノイズよりも多い場合には、観測後の飛跡に関するステップS10c~ステップS12cの一連の処理を先に実行し、観測前の飛跡に関するステップS7c~ステップS9cの一連の処理を後に実行してもよい。
上記した第2の実施形態では、ノイズ成分として特定した飛跡1を選別の対象から除外しているが、ノイズ成分として特定した飛跡1は、観測期間中の飛跡2のアライメントを特定する際のノイズ除去に用いることができる。同様に、上記した第3の実施形態において、ノイズ成分として特定した飛跡1または飛跡3は、観測期間中の飛跡2のアライメントを特定する際のノイズ除去に用いることができる。この際、ノイズ成分として特定した飛跡1および飛跡3のいずれかを除去してもよいし、飛跡1および飛跡3の両方を除去してもよい。
また、ノイズ成分として特定した飛跡は、常に除去された状態で処理されるのではなく、位置関係の取得時と、位置関係に基づいた飛跡の選別時とで、ノイズ成分の飛跡を含めて処理するか否かを適宜選択すればよい。例えば、ノイズ成分として特定した飛跡1の数が多く、観測期間中の飛跡2のアライメントをうまく特定することができない場合には、次に説明する手順にて、観測期間中の飛跡2を選別してもよい。まず、第1の手順として、ノイズ成分として特定した飛跡1を解析対象から除外したデータセットにて、観測期間中の飛跡2の位置関係を取得する。次に、第2の手順として、ノイズ成分として特定した飛跡1を含む飛跡のデータセットについて、先程取得した観測期間中の飛跡2の位置関係から、観測期間中の飛跡2を選別する。このような手順にする理由は、ノイズ成分である飛跡1の数が多すぎる場合には、飛跡1を選別する際に、観測期間中の飛跡2が誤って紛れてしまう可能性があるからである。このような場合には、飛跡2の検出効率が低下してしまう。したがって、飛跡2の選別時には、ノイズ成分である飛跡1を除かずに、例えば全ての飛跡データに対して選別を行い、たとえ飛跡1のノイズ成分が多少混入したとしても、総合的な判断により、観測期間中の飛跡2を選別すればよい。このようなケースでは、1つの飛跡に対して複数の識別子「1」および「2」を同時に付与してもよい。