JPWO2005103257A1 - RhoAと結合するグアニンヌクレオチド交換因子をコードする遺伝子 - Google Patents

RhoAと結合するグアニンヌクレオチド交換因子をコードする遺伝子 Download PDF

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Abstract

低分子量GTP結合蛋白質の1グループであるRhoファミリー蛋白質に結合し、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性を示し得る新規な蛋白質をコードする遺伝子、すなわち配列番号1若しくは3に記載の塩基配列で表されるポリヌクレオチドまたはその相補鎖、該ポリヌクレオチドの相同物、前記ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質、前記ポリヌクレオチドを含むベクター、前記ベクターを含む形質転換体、前記ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質に対する抗体、前記ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質の機能および/または発現を阻害する化合物の同定方法、疾患の判定方法、医薬組成物および試薬キットを提供した。

Description

本発明は、低分子量GTP結合蛋白質の1グループであるRhoファミリー蛋白質に結合し、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性を示し得る蛋白質および該蛋白質をコードするポリヌクレオチドに関する。より詳しくは、Rhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質であるRhoAに結合する蛋白質、該蛋白質をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体に関する。また、前記蛋白質の製造方法、前記蛋白質に対する抗体に関する。さらに、前記蛋白質の機能および/または前記ポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物の同定方法に関する。また、前記ポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の診断方法に関する。さらに、前記蛋白質の機能阻害剤および/または前記ポリヌクレオチドの発現阻害剤を有効成分として含んでなる扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止剤および/または治療剤、前記蛋白質の機能阻害剤および/または前記ポリヌクレオチドの発現阻害剤を用いることを特徴とする、扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止方法および/または治療方法に関する。また、前記蛋白質、前記ポリヌクレオチド、前記組換えベクター、前記形質転換体および前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キットに関する。
Rhoファミリー低分子量GTP結合蛋白質(以下、単にRhoファミリー蛋白質と称することがある)は低分子量GTP結合蛋白質(以下、単に低分子量G蛋白質と称する)の1グループに属する蛋白質である。低分子量G蛋白質は、細胞膜受容体と細胞内情報伝達経路に関与する効果器(エフェクター)との間で、シグナルの増幅因子として作用する。また、低分子量G蛋白質は、グアノシン5´−三リン酸(GTP)またはグアノシン5´−二リン酸(GDP)と特異的に結合し、結合したGTPをGDPに加水分解する酵素活性をもつ。細胞膜受容体に細胞外情報物質が結合すると、そのシグナルが低分子量G蛋白質に伝達され、低分子量G蛋白質に結合しているGDPと細胞内に存在するGTPとの交換反応(以下、GDP/GTP交換反応と略称する)が起きる。その結果、活性型のGTP結合型低分子量G蛋白質が生じる。活性型低分子量G蛋白質は、エフェクターに作用してシグナルを増幅する。その後、GTP結合型低分子量G蛋白質は、その酵素活性により、結合しているGTPをGDPに加水分解し、それにより不活性化する。このように、低分子量G蛋白質は、グアニンヌクレオチドの交換により、細胞内情報伝達経路において分子スイッチとして働く。
Rhoファミリー蛋白質として、Cdc42、Rac1およびRhoA等が知られている。Cdc42は線維芽細胞でフィロポディアの形成を制御している。Rac1は、白血球やマクロファージではスーパーオキシドの産生を、線維芽細胞では細胞膜のラッフリングやラメリポディアの形成を制御している。また、Cdc42とRac1はc−Jun N末端キナーゼシグナル伝達経路を活性化し得る。このように、Rhoファミリー蛋白質は、細胞内情報伝達の制御を介して様々な細胞機能に関与している。Rhoファミリー蛋白質が関与する細胞機能として、例えば細胞骨格の再構成、細胞接着、遺伝子発現等が知られている。Rhoファミリー蛋白質を介するこのような作用は、発生時の形態形成、白血球等の遊走、神経突起退縮、および癌細胞の転移や浸潤に働くと考えられる。
Rhoファミリー蛋白質の分子スイッチとしての作用に関与している分子の1つがRhoグアニンヌクレオチド交換因子(Rho Guanine nucleotide Exchange Factor、以下Rho−GEFと略称する)である。Rho−GEFは、Rhoファミリー蛋白質のGDP/GTP交換反応を促進して、Rhoファミリー蛋白質をGDPが結合した不活性型からGTPが結合した活性型に変換する機能を有する。この機能により、Rho−GEFは、Rhoファミリー蛋白質が関与する細胞内情報伝達の制御に重要な役割を担う。以下、GDP/GTP交換反応を促進して、Rhoファミリー蛋白質をGDPが結合した不活性型からGTPが結合した活性型に変換することをGEF活性またはRhoファミリー蛋白質の活性化と称することがある。
Rho−GEFには、特徴的ドメイン構造、例えばDbl相同ドメイン(Dbl Homology Domain、以下DHドメインと略称する)およびプレックストリン相同ドメイン(Pleckstrin Homology Domain、以下PHドメインと略称する)が存在する。DH/PHのタンデム構造は、Rho−GEFに典型的なドメイン構造である。以下、DHドメインおよびPHドメインのタンデム構造を、DH/PHドメインと呼称する。
DH/PHドメインは、Rho−GEFによるRhoファミリー蛋白質の活性化に寄与する重要なドメインであり、Rho−GEFの活性ドメインであると考えられている。例えば、Rho−GEFのプロトタイプであるproto−Dblのアミノ酸配列のうち、DH/PHドメインを含むC末端側領域からなる蛋白質が、Rhoファミリー蛋白質を活性化することが報告されている(非特許文献1)。この報告において、proto−Dblの全長925アミノ酸残基からなるアミノ酸配列のうちN末端側第1番目から第497番目のアミノ酸残基の欠失により生じたC末端側領域からなる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質を活性化し、その結果、細胞形質転換に関与した。このことから、proto−Dblの活性化は腫瘍原性活性化(oncogenic activation)と考えられている。以下、proto−DblのC末端側領域からなるこのような蛋白質をoncogenic−Dblと呼称する。oncogenic−Dblが、RhoA、Cdc42およびRac1と結合すること、並びにCdc42およびRhoAに対してGEF活性を有する一方、Rac1にはGEF活性を示さないことが報告されている(非特許文献2)。
proto−Dblのファミリー蛋白質をコードする遺伝子として、例えばvav(非特許文献3および4)、ost(非特許文献5)、lbc(非特許文献6)等が知られている。これら遺伝子は癌に関与する遺伝子である。その他、Rho−GEFとして作用する蛋白質をコードする遺伝子として、Trio(非特許文献7)やkalirin(非特許文献8)等が報告されている。Trioは、そのノックアウトマウスにおいて胎仔発生時の骨格筋の異常および脳の構成異常を引き起こす。kalirinは、神経細胞における神経突起形成に関与する。このように、Rho−GEFとして作用する蛋白質が関与する細胞機能は各蛋白質ごとに固有であり、また、該蛋白質により活性化されるRhoファミリー蛋白質もそれぞれ異なる。
ビ(Bi,F.)ら、「モレキュラー アンド セルラー バイオロジー(Molecular and Cellular Biology)」、2001年、第21巻、p.1463−1474。 ハート(Hart,M.J.)ら、「ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」、1994年、第269巻、p.62−65。 カツァブ(Katzav,S.)ら、「エンボ ジャーナル(EMBO Journal)」、1989年、第8巻、p.2283−2290。 コステロ(Costello,P.S.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1999年、第96巻、p.3035−3040。 ホリイ(Horii,Y.)ら「エンボ ジャーナル(EMBO Journal)」、1994年、第13巻、p.4776−4786。 トクソズ(Toksoz,D.)ら、「オンコジーン(Oncogene)」、1994年、第9巻、p.621−628。 オブリエン(O’Brien,S.P.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、2000年、第97巻、p.12074−12078。 ペンゼス(Penzes,P.)ら、「ジャーナル オブ ニューロサイエンス(Jounal of Neuroscience)」、2001年、第21巻、p.8426−8434。
本発明の課題は、新規なRho−GEFおよび該Rho−GEFをコードする遺伝子を提供することである。また本発明の課題には、該遺伝子を含有する組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体を提供することも含まれる。さらに本発明の課題には、該Rho−GEFの製造方法および該Rho−GEFを認識する抗体を提供することも含まれる。また本発明の課題には、該Rho−GEFの機能および/または該遺伝子の発現を阻害する化合物の同定方法を提供することも含まれる。さらに本発明の課題には、該Rho−GEFの機能の異常および/または該遺伝子の発現の異常に基づく疾患の防止方法および/または治療方法、並びに該疾患の診断方法、試薬キットを提供することも含まれる。
本発明者らは上記課題解決のために鋭意努力し、Rho−GEFに特徴的なDH/PHドメインをコードする領域を有する新規遺伝子を見出し、さらに該遺伝子を取得することに成功した。そして、該遺伝子によりコードされる蛋白質が、Rhoファミリー蛋白質であるRhoAに結合することを実証した。さらに、該遺伝子の組織発現が、扁桃の扁平上皮腫瘍例および気管の腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma)例においてそれぞれ正常組織の少なくとも2.5倍以上および少なくとも1.5倍以上であることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて達成した。
すなわち本発明は、配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、または配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードするポリヌクレオチド若しくは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドに関する。
本発明はまた、下記の群から選ばれるポリヌクレオチドであって、RhoAと結合する蛋白質をコードするポリヌクレオチドに関する:
i)前記ポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、
ii)前記ポリヌクレオチドの塩基配列において、1乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異あるいは誘発変異を有するポリヌクレオチド、および
iii)前記ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド。
本発明はさらに、下記の群から選ばれるポリヌクレオチドであって、RhoAに対するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドに関する:
i)前記ポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、
ii)前記ポリヌクレオチドの塩基配列において、1乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異あるいは誘発変異を有するポリヌクレオチド、および
iii)前記ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド。
本発明はさらにまた、前記いずれかのポリヌクレオチドを含有する組換えベクターに関する。
本発明はまた、前記組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体に関する。
本発明はさらに、前記組換えベクターおよびRhoAをコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体に関する。
本発明はさらにまた、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質に関する。
本発明はまた、前記いずれかのポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質に関する。
本発明はさらに、前記形質転換体を培養する工程を含む、前記蛋白質の製造方法に関する。
本発明はさらにまた、前記蛋白質を認識する抗体に関する。
本発明はまた、前記蛋白質の機能および/または前記いずれかのポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物の同定方法であって、該化合物と該蛋白質および/または該ポリヌクレオチドとの相互作用を可能にする条件下で、該機能および/または該発現の存在、不存在または変化を検出することにより、該化合物が該蛋白質の機能および/または該ポリヌクレオチドの発現を阻害するか否かを判定することを特徴とする同定方法に関する。
本発明はさらに、蛋白質の機能が、RhoAに対するGEF活性である前記同定方法に関する。
本発明はさらにまた、ヒト扁桃組織由来の被検組織が、ヒト扁桃腫瘍由来組織であるか否かを判定する方法であって、該被検組織における前記いずれかのポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする判定方法に関する。
本発明はまた、被検組織における前記いずれかのポリヌクレオチドの発現量が、対照であるヒト正常扁桃由来組織における該ポリヌクレオチドの発現量の少なくとも2.5倍以上である場合に、被検組織がヒト扁桃腫瘍由来組織であると判定することを特徴とする、前記判定方法に関する。
本発明はさらに、ヒト気管組織由来の被検組織が、ヒト気管腫瘍由来組織であるか否かを判定する方法であって、該被検組織における前記いずれかのポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする判定方法に関する。
本発明はさらにまた、被検組織における前記いずれかのポリヌクレオチドの発現量が、対照であるヒト正常気管由来組織における該ポリヌクレオチドの発現量の少なくとも1.5倍以上である場合に、被検組織がヒト気管腫瘍由来組織であると判定することを特徴とする、前記判定方法に関する。
本発明はまた、前記蛋白質の機能を阻害する化合物および/または前記いずれかのポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物を有効成分として含んでなる扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止剤および/または治療剤に関する。
本発明はさらに、前記蛋白質の機能を阻害する化合物および/または前記いずれかのポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物を用いることを特徴とする扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止方法および/または治療方法に関する。
本発明はさらにまた、前記蛋白質、前記いずれかのポリヌクレオチド、前記組換えベクター、前記形質転換体および前記抗体のうち少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キットに関する。
本発明により、Rhoファミリー蛋白質に結合する新規蛋白質をコードするポリヌクレオチドおよび該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質を提供できる。本蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質であるRhoAに結合した。本蛋白質は、そのアミノ酸配列中にRho−GEFの活性ドメインと考えられるDH/PHドメインを有する。このことから、本蛋白質は、Rho蛋白質、例えばRhoAに結合して、GEF活性を示すと考える。
本発明によりまた、前記ポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、該組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体を提供できる。さらに、前記蛋白質の製造方法、前記蛋白質に対する抗体を提供できる。また、前記蛋白質の機能および/または前記ポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物の同定方法を提供できる。さらに、前記ポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする腫瘍疾患、例えば扁桃腫瘍および気管腫瘍の診断方法を提供できる。また、前記蛋白質の機能阻害剤および/または前記ポリヌクレオチドの発現阻害剤を有効成分として含んでなる腫瘍疾患、例えば扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止剤および/または治療剤、前記蛋白質の機能阻害剤および/または前記ポリヌクレオチドの発現阻害剤を用いることを特徴とする、腫瘍疾患、例えば扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止方法および/または治療方法を提供できる。さらに、前記蛋白質、前記ポリヌクレオチド、前記組換えベクター、前記形質転換体および前記抗体のうち、少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キットを提供できる。
本発明により、Rhoファミリー蛋白質、例えばRhoAが関与する情報伝達経路および細胞機能の解明とその調節が実施できる。さらに、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質の機能の異常および/または本ポリヌクレオチドの発現の異常に基づく疾患、例えば腫瘍疾患、より具体的には扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の診断、防止および/または治療が実施できる。
sh06537−F発現ベクターと、RhoA発現ベクターとをコトランスフェクションした細胞の細胞溶解液において、sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合を示すバンドが検出されたことを説明する図である(上段パネルのレーン2)。sh06537−F発現ベクターにより、配列表の配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質が、C末端にFLAG−tag(3×)が付加された蛋白質として発現される。結合の測定はプルダウン法により行った。一方、sh06537の部分配列からなるDNAであってDH/PHドメインコード領域を欠失したDNA(sh06537−D)を用いて構築したベクターとRhoA発現ベクターとをコトランスフェクションした細胞の細胞溶解液では、このようなバンドは検出さなかった(上段パネルのレーン3)。また、RhoA発現ベクターのみをトランスフェクションした細胞の細胞溶解液では、このようなバンドは検出されなかった(上段パネルのレーン1)。中段パネルは、各細胞溶解液のサンプルを用いてSDS−PAGEを行い、抗FLAG抗体を用いてsh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質を検出した図である。下段パネルは、各細胞溶解液のサンプルを用いてSDS−PAGEを行い、抗GST抗体を用いてGST融合RhoAを検出した図である。各細胞溶解液中の、sh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質の量はほぼ同量であった(中段パネルのレーン2および3)。また、各細胞溶解液中のRhoAの量もほぼ同量であった(下段パネルのレーン1−3)。(実施例3)
以下、本発明について発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。
本発明において、単離された完全長DNAおよび/またはRNA;合成完全長DNAおよび/またはRNA;単離されたDNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類;あるいは合成DNAオリゴヌクレオチド類および/またはRNAオリゴヌクレオチド類を意味する総称的用語として「ポリヌクレオチド」という用語を使用し、ここでそのようなDNAおよび/またはRNAは最小サイズが2ヌクレオチドである。
本発明において、単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「蛋白質」という用語を使用し、ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドは最小サイズが2アミノ酸である。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
(ポリヌクレオチド)
本発明の一態様は新規ポリヌクレオチドに関する。本ポリヌクレオチドは、ヒト脾臓由来cDNAライブラリーから、Rho−GEFに特徴的なドメインであるDH/PHドメインをコードする領域を有する遺伝子として同定し単離した。
本発明に係るポリヌクレオチドは、例えば配列表の配列番号1に記載の塩基配列またはその相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであり得る。配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、5541bpのポリヌクレオチドであり、1597アミノ酸残基(配列番号2)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含む。配列番号1に記載の塩基配列において第3706番目から第4245番目までのヌクレオチドからなる領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1178番目のバリン(Val)から第1357番目のアスパラギン(Asn)までの180アミノ酸残基からなるDHドメインをコードする。配列番号1に記載の塩基配列において第4345番目から第4680番目までのヌクレオチドからなる領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1391番目のロイシン(Leu)から第1502番目のグルタミン酸(Glu)までの112アミノ酸残基からなるPHドメインをコードする。配列番号1に記載の塩基配列において第3706番目から第4680番目までのヌクレオチドからなる領域は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1178番目のバリン(Val)から第1502番目のグルタミン酸(Glu)までの325アミノ酸残基からなるDH/PHドメインをコードする。
本発明の範囲には、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドも包含される。
本発明に係るポリヌクレオチドは、好ましくは、Rhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドである。本発明において「蛋白質間の結合」とは、ある蛋白質(蛋白質A)と別のある蛋白質(蛋白質B)が複合体を形成するように、水素結合、疎水結合または静電的相互作用などの非共有結合により、蛋白質Aと蛋白質Bが相互作用することを意味する。ここでの結合とは、蛋白質Aと蛋白質Bがそれら分子の一部分において結合すれば足りる。例えば、蛋白質Aまたは蛋白質Bを構成するアミノ酸中に、蛋白質Aと蛋白質Bの結合に関与しないアミノ酸が含まれていてもよい。
配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質であるRhoAと結合した。具体的には、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドとRhoAをコードする遺伝子とを共に発現させた動物細胞において、該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoAの結合が検出された(実施例3参照)。一方、配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドとRhoAをコードする遺伝子とを共に発現させた動物細胞において、該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoAの結合は検出されなかった(実施例3参照)。配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の塩基配列の第175番目から第3693番目までのヌクレオチドで表わされるポリヌクレオチドである。配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドが有するDH/PHドメインコード領域を欠失している。すなわち、DH/PHドメインコード領域を欠失しているポリヌクレオチド(配列番号3)によりコードされる蛋白質はRhoAに結合しなかった。このことから、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合に、DH/PHドメインが寄与していることが明らかになった。DH/PHドメインは、Rho−GEFとRhoファミリー蛋白質との結合、さらにRho−GEFのGEF活性に重要なドメインであることが知られている。
本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、その構造にDH/PHドメインを有し、Rhoファミリー蛋白質に結合する。DH/PHドメインは、Rho−GEFとRhoファミリー蛋白質との結合、さらにRho−GEFのGEF活性に重要なドメインである。したがって、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質に結合して、該Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を示すと考える。言い換えれば、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質に結合して、該Rhoファミリー蛋白質を活性化する。
「Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性」または「Rhoファミリー蛋白質の活性化」とは、Rhoファミリー蛋白質に結合したグアノシン5´−二リン酸(GDP)をグアノシン5´−三リン酸(GTP)に交換することによって、Rhoファミリー蛋白質をGDPが結合した不活性型からGTPが結合した活性型に変換することを意味する。本交換反応は、Rhoファミリー蛋白質からのGDPの解離反応と、その結果生成したヌクレオチドに結合していないRhoファミリー蛋白質へのGTPの結合反応からなる。具体的には、RhoAに対するGEF活性またはRhoAの活性化とは、RhoAに結合しているGDPと細胞内に存在するGTPとの交換反応により、RhoAを不活性型から活性型に変換することを意味する。
本明細書において「Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性」という用語と「Rhoファミリー蛋白質の活性化」という用語は交換可能に使用される。
本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質により活性化されるRhoファミリー蛋白質として、RhoAが好ましく例示できる。本発明においてRhoファミリー蛋白質というときは、好ましくはRhoAを指す。Rhoファミリー蛋白質はこれに限定されず、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質により活性化される限りにおいていずれのRhoファミリー蛋白質であってもよい。好ましくは、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質が結合して活性化されるRhoファミリー蛋白質が挙げられる。本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoファミリー蛋白質の結合は、例えばプルダウン法により測定できる(実施例3参照)。また、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質によるRhoファミリー蛋白質の活性化は、例えば後述するエフェクタープルダウン法により測定できる。
RhoAのアミノ酸配列およびRhoA遺伝子の塩基配列を、それぞれ配列番号9および8に記載する。RhoAおよびその遺伝子は、上記各配列で表わされるものに限らず、一般的に知られているRhoAの機能を有する限りにおいて、上記各配列において1乃至数個の変異を有する蛋白質および遺伝子であることができる。また、これらの機能を促進するあるいは欠失させるといった所望の目的のために上記各配列に1乃至数個の変異を導入した変異体を用いることもできる。RhoAは、例えば、その遺伝子を含有する組換えベクターを自体公知の遺伝子工学的方法により適当な宿主にトランスフェクションして形質転換体を作製し、該形質転換体を培養することにより取得できる。
本発明に係るポリヌクレオチドの取得は、本発明により開示されたその具体例、例えば配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドについての配列情報に基づいて、公知の遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;および村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社等を参照)により容易に実施できる。
具体的には、本発明に係るポリヌクレオチドの発現が確認されている適当な起源から、常法に従ってcDNAライブラリーを調製し、該cDNAライブラリーから所望のクローンを選択することにより本ポリヌクレオチドを取得できる。cDNAの起源として、本ポリヌクレオチドの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞、例えばヒトの脾臓由来の細胞等が例示できる。これら起源からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの取得とそのクローニング等はいずれも常法に従って実施できる。また、ヒト脾臓由来の市販されているpolyARNAからcDNAライブラリーを構築して用いることもできる。cDNAライブラリーから所望のクローンを選択する方法は特に制限されず、慣用の方法を利用できる。例えば、本ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプローブやプライマー等を用いて所望のクローンの選択を実施できる。具体的には、本ポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイゼーションするプローブを用いたプラークハイブリダイゼーション法、コロニーハイブリダイゼーション法等やこれらを組合せた方法等を例示できる。ここで用いるプローブとして、本ポリヌクレオチドの配列情報に基づいて化学合成したポリヌクレオチド等が一般的に使用できる。また、本ポリヌクレオチドやその部分塩基配列で表わされるポリヌクレオチドも好ましく使用できる。さらに、本ポリヌクレオチドの配列情報に基づき設計したセンスプライマー、アンチセンスプライマーをこのようなプローブとして使用できる。
cDNAライブラリーからの所望のクローンの選択は、例えば公知の蛋白質発現系を利用して各クローンについて発現蛋白質の確認を行い、さらに該蛋白質の機能を指標にして実施できる。蛋白質発現系は、自体公知の発現系がいずれも利用できる。例えば、無細胞蛋白質発現系により簡便に発現蛋白質を確認できる(マディン(Madin,K.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、2000年、第97巻、p.559−564)。
本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質の機能、または本発明に係る蛋白質の機能として、好ましくはRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す機能が例示される。言い換えれば、Rhoファミリー蛋白質の活性化、より好ましくはRhoファミリー蛋白質と結合してRhoファミリー蛋白質を活性化する機能が例示される。
本発明に係るポリヌクレオチドの取得にはその他、ポリメラーゼ連鎖反応(以下、PCRと略称する)によるDNA/RNA増幅法が好適に利用できる(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;エールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス;およびサイキ(Saiki,R.K.)ら、「サイエンス(Science)」、1985年、第230巻、p.1350−1354)。cDNAライブラリーから全長のcDNAが得られ難いような場合には、RACE法(「実験医学」、1994年、第12巻、第6号、p.615−618)、特に5´−RACE法(フローマン(Frohman,M.A.)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1988年、第85巻、第23号、p.8998−9002)等の採用が好適である。PCRに使用するプライマーは、ポリヌクレオチドの塩基配列情報に基づいて適宜設計でき、常法に従って合成により取得できる。増幅させたDNA/RNA断片の単離精製は、常法、例えばゲル電気泳動法等により実施できる。
ポリヌクレオチドの塩基配列の決定は、常法、例えばジデオキシ法(サンガー(Sanger,F)ら、「プロシーディングス オブ ザ ナショナル アカデミー オブ サイエンシズ オブ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ(Proceedings of The National Academy of Sciences of The United States of America)」、1977年、第74巻、p.5463−5467)やマキサム−ギルバート法(マキサム(Maxam A.M.)ら、「メソッズ イン エンザイモロジー(Methods in Enzymology)」、1980年、第65巻、p.499−560)等により、また簡便には市販のシーケンスキット等を用いて実施できる。
本発明に係るポリヌクレオチドは上記ポリヌクレオチドに限定されず、上記ポリヌクレオチドと配列相同性を有し、かつ好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドを包含する。配列相同性は、通常、塩基配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、好ましくは、DH/PHドメインコード領域を有するポリヌクレオチドが望ましい。DH/PHドメインコード領域における配列相同性は少なくとも70%であることが好ましい。より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、DH/PHドメインがその機能、例えばRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す機能を保持していることがさらに好ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドには、上記ポリヌクレオチドの塩基配列において1個以上、例えば1乃至100個、好ましくは1乃至30個、より好ましくは1乃至20個、さらに好ましくは1乃至10個、特に好ましくは1個乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加または挿入といった変異が存する塩基配列またはその相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドが包含される。変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有するポリヌクレオチドが、好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質をコードするポリヌクレオチドである限り特に制限されない。さらに好ましくはDH/PHドメインを有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドである。このような変異を有するポリヌクレオチドは、天然に存在するポリヌクレオチドであることができ、誘発変異を有するポリヌクレオチドであることができる。また、天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たポリヌクレオチドであることができる。変異を導入する方法は自体公知であり、例えば、部位特異的変異導入法、遺伝子相同組換え法、プライマー伸長法またはPCR等を、単独でまたは適宜組合せて使用できる。例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;および村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社)に準じて、あるいはそれらの方法を改変して実施することができ、ウルマーの技術(ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671)を利用して実施することもできる。
本発明に係るポリヌクレオチドとしてはまた、上記ポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドを例示できる。ハイブリダイゼーションの条件は、例えば成書に記載の方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)等に従うことができる。具体的には、「ストリンジェントな条件下」とは、例えば、6×SSC、0.5% SDSおよび50% ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5% SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件をいう。これらポリヌクレオチドは本ポリヌクレオチドにハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドであれば相補的配列を有するポリヌクレオチドでなくてもよい。好ましくは、DH/PHドメインを有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドであることが望ましい。より好ましくは、コードする蛋白質が好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質であることが望ましい。
本発明に係るポリヌクレオチドには、上記ポリヌクレオチドの指定された領域に存在する部分塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドが包含される。このようなオリゴヌクレオチドは、その最小単位として好ましくは該領域において連続する5個以上のヌクレオチド、より好ましくは10個以上、より好ましくは20個以上のヌクレオチドからなる。具体的には、配列番号5または6に記載の塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドを好ましく例示できる。これらオリゴヌクレオチドは、本遺伝子または本遺伝子断片を増幅するためのプライマー、本遺伝子またはその転写産物を検出するためのプローブ等として使用できる。これらオリゴヌクレオチドは、本ポリヌクレオチドの塩基配列情報に従って、所望の配列を設計し、自体公知の化学合成法により製造できる。簡便には、DNA/RNA自動合成装置を用いてオリゴヌクレオチドを製造できる。
本発明に係るポリヌクレオチドは、好ましくはヒト由来のポリヌクレオチドである。しかし、本ポリヌクレオチドと配列相同性を有し、好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質をコードするポリヌクレオチドである限りにおいて、哺乳動物由来のポリヌクレオチド、例えばマウス、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラットまたはウサギ等由来のポリヌクレオチドも本発明に包含される。配列相同性は、通常、塩基配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、好ましくは、DH/PHドメインコード領域を有するポリヌクレオチドが望ましい。DH/PHドメインコード領域における配列相同性は少なくとも70%であることが好ましい。より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。
本発明に係るポリヌクレオチドは、その発現あるいはそれによりコードされる蛋白質の機能が阻害されない限りにおいて、5´末端側や3´末端側に所望の遺伝子が付加されたポリヌクレオチドであることができる。本ポリヌクレオチドに付加し得る遺伝子として、具体的にはグルタチオン S−トランスフェラーゼ(GST)、β−ガラクトシダーゼ(β−Gal)、ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)またはアルカリホスファターゼ(ALP)等の酵素類、あるいはHis−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類等の遺伝子が例示できる。これら遺伝子から選択した1種類または複数種類の遺伝子を組合せて付加できる。これら遺伝子の付加は、慣用の遺伝子工学的手法により行うことができ、遺伝子やmRNAの検出を容易にするために有用である。
(ベクター)
本発明の一態様は、本発明に係るポリヌクレオチドを含有する組換えベクターに関する。本組換えベクターは、本ポリヌクレオチドを適当なベクターDNAに挿入することにより取得できる。
ベクターDNAは宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的により適宜選択される。ベクターDNAは、天然に存在するDNAを抽出して得られたベクターDNAの他、複製に必要な部分以外のDNAの部分が一部欠落しているベクターDNAであることができる。代表的なベクターDNAとして例えば、プラスミド、バクテリオファージおよびウイルス由来のベクターDNAが挙げられる。プラスミドDNAとして、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド等を例示できる。バクテリオファージDNAとして、λファージ等が挙げられる。ウイルス由来のベクターDNAとして、例えばレトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、パポバウイルス、SV40、鶏痘ウイルス、および仮性狂犬病ウイルス等の動物ウイルス由来のベクター、あるいはバキュロウイルス等の昆虫ウイルス由来のベクターが挙げられる。その他、トランスポゾン由来、挿入エレメント由来、酵母染色体エレメント由来のベクターDNA等を例示できる。あるいは、これらを組合せて作成したベクターDNA、例えばプラスミドおよびバクテリオファージの遺伝学的エレメントを組合せて作成したベクターDNA(コスミドやファージミド等)を例示できる。
ベクターDNAは、発現ベクターやクローニングベクター等、目的に応じていずれを用いることもできる。本発明に係るポリヌクレオチドを含有する組換え発現ベクターは、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質の製造に有用である。
ベクターDNAには、本発明に係るポリヌクレオチドの機能が発揮されるように該ポリヌクレオチドを組込むことが必要であり、少なくとも本ポリヌクレオチドとプロモーターとをその構成要素とする。これら要素に加えて、所望によりさらに、複製そして制御に関する情報を担持した遺伝子配列を組合せて自体公知の方法によりベクターDNAに組込むことができる。このような遺伝子配列として、例えば、リボソーム結合配列、ターミネーター、シグナル配列、エンハンサー等のシスエレメント、スプライシングシグナル、および選択マーカー(ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等)等を例示できる。これらから選択した1種類または複数種類の遺伝子配列をベクターDNAに組込むことができる。
ベクターDNAに本発明に係るポリヌクレオチドを組込む方法は、自体公知の方法を適用できる。例えば、本ポリヌクレオチドを含む遺伝子を適当な制限酵素により処理して特定部位で切断し、次いで同様に処理したベクターDNAと混合し、リガーゼにより再結合する方法が用いられる。あるいは、本ポリヌクレオチドに適当なリンカーをライゲーションし、これを目的に適したベクターのマルチクローニングサイトへ挿入することによっても、所望の組換えベクターが取得できる。
(形質転換体)
本発明の一態様は、本発明に係る組換えベクターにより、宿主を形質転換して得られる形質転換体に関する。本発明に係るポリヌクレオチドを含有する組換え発現ベクターを導入した形質転換体は、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質の製造に有用である。本形質転換体には、本ポリヌクレオチド以外の所望の遺伝子を含有するベクターDNAの1種類または複数種類をさらに導入することができる。本ポリヌクレオチド以外の所望の遺伝子を含有するベクターDNAとして、例えば、RhoA等のRhoファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含有するベクターDNAが挙げられる。本ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターとRhoファミリー蛋白質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターとにより形質転換して得られる形質転換体は、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質のRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性、言い換えればRhoファミリー蛋白質の活性化を阻害または促進する化合物の同定方法に使用できる。このような形質転換体として好ましくは、本ポリヌクレオチドを含有する組換えベクターとRhoAをコードする遺伝子を含有する組換えベクターとにより形質転換して得られる形質転換体が挙げられる。
宿主として、原核生物および真核生物のいずれも用いることができる。原核生物として、例えば大腸菌(エシェリヒアコリ(Escherichia coli))等のエシェリヒア属、枯草菌等のバシラス属、シュードモナスプチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウムメリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられる。真核生物として、酵母、昆虫細胞および哺乳動物細胞等の動物細胞を例示できる。酵母は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセスポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。昆虫細胞は、Sf9細胞やSf21細胞等を例示できる。哺乳動物細胞は、サル腎由来細胞(COS細胞、Vero細胞等)、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3細胞、ヒトFL細胞や293EBNA細胞等が例示できる。好ましくは哺乳動物細胞を用いる。最も好ましくは、293EBNA細胞を用いる。
組換えベクターによる宿主細胞の形質転換は、自体公知の手段を応用して実施できる。例えば成書に記載されている標準的な方法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)により実施できる。より好ましい方法として、遺伝子の安定性を考慮するならば染色体内へのインテグレート法が挙げられる。簡便には核外遺伝子を利用した自律複製系を使用できる。具体的には、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、陽イオン脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スクレープ負荷(scrape loading)、バリスティック導入(ballistic introduction)および感染等が例示できる。
原核生物を宿主とする場合、組換えベクターが該原核生物中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明に係るポリヌクレオチド、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。細菌を宿主とする場合、プロモーターとして、大腸菌等の細菌中で発現できるプロモーターであればいずれも利用できる。例えば、trpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーター等の、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーター等の人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、いずれも利用できる。好ましくは例えば、カルシウムイオンを用いる方法、エレクトロポレーション法等が利用される。
哺乳動物細胞を宿主とする場合、組換えベクターが該細胞中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、RNAスプライス部位、本発明に係るポリヌクレオチド、ポリアデニル化部位、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、所望により複製起点が含まれていてもよい。プロモーターとして、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられ、また、サイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。哺乳動物細胞への組換えベクターの導入方法は、好ましくは例えば、エレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が利用される。最も好ましくは、リポフェクション法が利用される。
酵母を宿主とする場合、プロモーターは、酵母中で発現できるプロモーターであれば特に限定されず、例えば、gal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。酵母への組換えベクターの導入方法は、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、好ましくは例えば、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、酢酸リチウム法等が利用される。
昆虫細胞を宿主とする場合、組換えベクターの導入方法は、好ましくは例えば、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法等が利用される。
(蛋白質)
本発明の一態様は、本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質に関する。
本発明に係る蛋白質として、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質を例示できる。より具体的には、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質を例示できる。配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質において、その第1178番目バリン(Val)から第1357番目アスパラギン(Asn)までのアミノ酸残基がDHドメインを構成する。第1391番目ロイシン(Leu)から第1502番目グルタミン酸(Glu)までのアミノ酸残基がPHドメインを構成する。第1178番目バリン(Val)から第1502番目グルタミン酸(Glu)までのアミノ酸残基がDH/PHドメインを構成する。
本発明に係る蛋白質は、好ましくは、Rhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質である。配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質であるRhoAに結合した。具体的には、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドとRhoAをコードする遺伝子とを共に発現させた動物細胞において、該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoAの結合が検出された(実施例3参照)。配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードする。したがって、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質が、RhoAと結合したと考える。一方、配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドとRhoAをコードする遺伝子とを共に発現させた動物細胞において、該ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質とRhoAの結合は検出されなかった(実施例3参照)。配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、配列番号1に記載の塩基配列の第175番目から第3693番目までのヌクレオチドで表わされるポリヌクレオチドである。配列番号3に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドは、配列番号4に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードする。配列番号4に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質は、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1174番目から第1597番目までのアミノ酸残基で表わされる領域を欠失している。該領域には、DH/PHドメインが含まれる。すなわち、配列番号4に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質はDH/PHドメインを欠失している。DH/PHドメインを欠失している配列番号4に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質がRhoAに結合しないことから、DH/PHドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質とRhoAとの結合に寄与していることが明らかになった。
本発明に係る蛋白質は、その構造にDH/PHドメインを有し、Rhoファミリー蛋白質に結合する。DH/PHドメインは、Rho−GEFとRhoファミリー蛋白質との結合、さらにRho−GEFのGEF活性に重要なドメインである。したがって、本蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質に結合して、該Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を示すと考える。より具体的には、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質は、Rhoファミリー蛋白質であるRhoAに結合してGEF活性を示すと考える。言い換えれば、本蛋白質は、RhoAに結合してこれを活性化すると考える。
本発明に係る蛋白質は上記蛋白質に限定されず、本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質であればいずれも本発明の範囲に包含される。好ましくは、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質であって、Rhoファミリー蛋白質と結合する蛋白質が包含される。より好ましくは、本ポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質であって、Rhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質を包含する。このような蛋白質として、例えば、配列番号1に記載の塩基配列またはその相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドおよび配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードするポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチドより選ばれるいずれか1のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質が例示できる。また、例えば、上記ポリヌクレオチド群より選ばれるいずれか1のポリヌクレオチドの塩基配列において1乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加等の変異あるいは誘発変異を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチドであって、Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質が例示できる。さらに、上記ポリヌクレオチド群より選ばれるいずれか1のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチドであって、好ましくはRhoファミリー蛋白質と結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質をコードするポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質が例示できる。
本発明に係るこのような蛋白質として、より具体的には、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質と配列相同性を有し、かつRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質が例示できる。より好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質と配列相同性を有し、かつRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質が例示できる。配列相同性は、通常、アミノ酸配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、好ましくは、DH/PHドメインを有するポリペプチドが望ましい。DH/PHドメインにおける配列相同性は少なくとも70%であることが好ましい。より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、DH/PHドメインがその機能を保持していることがさらに好ましい。また、本蛋白質として、配列番号2に記載のアミノ酸配列において1個以上、例えば1乃至100個、好ましくは1乃至30個、より好ましくは1乃至20個、さらに好ましくは1乃至10個、特に好ましくは1個乃至数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入といった変異を有するアミノ酸配列で表わされ、かつRhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質が例示できる。より好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質と配列相同性を有し、かつRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質が例示できる。アミノ酸の変異の程度およびそれらの位置等は、該変異を有する蛋白質が、Rhoファミリー蛋白質に結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質である限り特に制限されない。さらに好ましくは、DH/PHドメインを有する蛋白質である。このような変異を有する蛋白質は、天然において例えば突然変異や翻訳後の修飾等により生じたものであることができ、また天然由来の遺伝子に基づいて変異を導入して得たものであることができる。変異を導入する方法は自体公知であり、例えば、公知の遺伝子工学的技術を利用して実施できる。変異の導入において、当該蛋白質の基本的な性質(物性、機能、生理活性または免疫学的活性等)を変化させないという観点からは、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。
本発明に係る蛋白質にはさらに、上記蛋白質の部分配列で表わされる蛋白質が包含される。例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質の部分配列で表わされる蛋白質も本発明の範囲に包含される。このような蛋白質は、その最小単位として好ましくは5個以上、より好ましくは8個以上、さらに好ましくは12個以上、特に好ましくは15個以上の連続するアミノ酸で表わされる。
本発明に係る蛋白質は、好ましくはヒト由来の蛋白質である。しかし、本蛋白質と配列相同性を有し、かつ好ましくはRhoファミリー蛋白質と結合する蛋白質、より好ましくはRhoファミリー蛋白質に結合してGEF活性を示す蛋白質である限りにおいて、哺乳動物由来の蛋白質、例えばマウス、ウマ、ヒツジ、ウシ、イヌ、サル、ネコ、クマ、ラットまたはウサギ等由来の蛋白質も本発明に包含される。配列相同性は、通常、アミノ酸配列の全体で50%以上、好ましくは少なくとも70%であることが適当である。より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。また、好ましくはDH/PHドメインを有する蛋白質が望ましい。DH/PHドメインにおける配列相同性は少なくとも70%であることが好ましい。より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上であることが適当である。
本発明に係る蛋白質は、本蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子工学的手法で発現させた細胞や生体試料から調製したもの、無細胞系合成産物または化学合成産物であることができ、あるいはこれらからさらに精製されたものであることができる。また、本蛋白質は、本蛋白質をコードする遺伝子を含む細胞において発現しているものであることができる。該細胞は、本蛋白質をコードする遺伝子を含むベクターをトランスフェクションして得られた形質転換体であることができる。
本発明に係る蛋白質はさらに、その構成アミノ基またはカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない限りにおいて改変ができる。また、N末端側やC末端側に別の蛋白質等を、直接的に、またはリンカーペプチド等を介して間接的に、遺伝子工学的手法等を用いて付加することにより標識化できる。好ましくは、本蛋白質の基本的な性質が阻害されないような標識化が望ましい。標識化に用いる物質(標識物質)として、例えばGST、β−Gal、HRPまたはALP等の酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate)またはフィコエリスリン(phycoerythrin)等の蛍光物質類、マルトース結合蛋白質、免疫グロブリンのFc断片あるいはビオチン等が例示できるが、これらに限定されない。また、放射性同位元素による標識化もできる。標識物質は、1種類または複数種類を組合せて本蛋白質に付加できる。これら標識物質自体またはその機能の測定により、本蛋白質の検出または精製を容易に実施でき、また、例えば本蛋白質と他の蛋白質との結合の検出や本蛋白質の機能の測定が実施できる。
(蛋白質の製造方法)
本発明の一態様は、本発明に係る蛋白質の製造方法に関する。本蛋白質は、例えば本蛋白質をコードする遺伝子の塩基配列情報に基づいて一般的遺伝子工学的手法(サムブルック(Sambrook)ら編、「モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版」、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー;村松正實編、「ラボマニュアル遺伝子工学」、1988年、丸善株式会社;ウルマー(Ulmer,K.M.)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671;およびエールリッヒ(Ehrlich,H.A.)編、「PCRテクノロジー,DNA増幅の原理と応用」、1989年、ストックトンプレス等を参照)により取得できる。例えば、本発明に係るポリヌクレオチドの発現が確認されている各種の細胞や組織、またはこれらに由来する培養細胞から常法に従ってcDNAライブラリーをまず調製する。次いで、本蛋白質をコードする遺伝子に選択的にハイブリダイゼーションするプライマーを用いて、該cDNAライブラリーから本ポリヌクレオチドを増幅する。得られたポリヌクレオチドの発現誘導を公知の遺伝子工学的手法を利用して行うことにより、本蛋白質を取得できる。
具体的には例えば、本発明に係る形質転換体を培養し、次いで得られた培養物から本蛋白質を回収することにより、本蛋白質を製造できる。本形質転換体の培養は、形質転換体の作製に用いた宿主に最適な自体公知の培養条件および培養方法で行うことができる。培養は、形質転換体により発現される本蛋白質自体または本蛋白質の機能を指標にして実施できる。あるいは、宿主中または宿主外に産生された本蛋白質自体またはその蛋白質量を指標にして培養してもよく、培地中の形質転換体量を指標にして継代培養またはバッチ培養を行ってもよい。
本発明に係る蛋白質が形質転換体の細胞内あるいは細胞膜上に発現する場合には、形質転換体を破砕して本蛋白質を抽出する。また、本蛋白質が形質転換体外に分泌される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離処理等により形質転換体を除去した培養液を用いる。本蛋白質は、所望により、形質転換体を培養した培養液または形質転換体から、精製および/または分離することができる。
本発明に係る蛋白質の精製および/または分離は、本蛋白質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種分離操作方法により実施できる。分離操作方法として、具体的には、硫酸アンモニウム沈殿、限外ろ過、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、透析法等を例示できる。また、これら方法は適宜組合せて実施できる。好ましくは、本蛋白質に対する特異抗体を結合させたカラムを利用するアフィニティクロマトグラフィーが用いられる。本蛋白質に対する特異抗体は、本蛋白質のアミノ酸配列情報に基づき、自体公知の抗体作成法により取得できる。精製および/または分離を行なうとき、本蛋白質を得るための指標として、本蛋白質の機能を利用できる。
本発明に係る蛋白質はまた、一般的な化学合成法により製造できる。蛋白質の化学合成法として、成書(「ペプチド合成」、丸善株式会社、1975年;および「ペプチド シンテシス(Peptide Synthesis)」、インターサイエンス(Interscience)、ニューヨーク(New York)、1996年)に記載の方法が例示されるが、これらに限らず公知の方法が広く利用できる。具体的には、固相合成方法や液相合成方法等が知られているが、いずれも利用できる。かかる蛋白質合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させて鎖を延長させていくいわゆるステップワイズエロンゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメントコンデンセーション法とを包含する。本蛋白質の合成は、そのいずれによっても行うことができる。上記蛋白質合成法において利用される縮合法も常法に従って実施できる。縮合法として、例えば、アジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、ウッドワード法等が例示できる。化学合成により得られる本蛋白質はさらに、上記のような慣用の各種精製方法により適宜精製できる。
本発明に係る蛋白質の部分配列で表わされる蛋白質は、本蛋白質を適当なペプチダーゼにより切断することによっても取得できる。
(抗体)
本発明の一態様は、本発明に係る蛋白質を認識する抗体に関する。本抗体は、本蛋白質を抗原として用いて作製できる。抗原は、本蛋白質またはその断片でもよく、少なくとも8個、好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも12個、さらに好ましくは15個以上のアミノ酸で構成される。本蛋白質に特異的な抗体を作成するためには、本蛋白質に固有なアミノ酸配列からなる領域を抗原として用いることが好ましい。この領域のアミノ酸配列は、必ずしも本蛋白質またはその断片のアミノ酸配列と同一である必要はない。このようなアミノ酸配列として、蛋白質の立体構造上の外部への露出部位のアミノ酸配列が好ましい。露出部位のアミノ酸配列が一次構造上で不連続であっても、該露出部位について連続的なアミノ酸配列であればよい。本抗体は本蛋白質を特異的に認識する抗体であればいずれであってもよく、特に限定されない。本蛋白質を特異的に認識するとは、例えば本蛋白質に結合するが、本蛋白質以外の蛋白質は結合しないか、弱く結合することを意味する。認識の有無は、公知の抗原抗体結合反応により決定できる。
抗体の生産は、自体公知の抗体作製法により実施できる。例えば、抗原をアジュバントの存在下または非存在下で、単独でまたは担体に結合して動物に投与し、体液性応答および/または細胞性応答等の免疫誘導を行うことにより抗体を取得できる。担体は、それ自体が宿主に対して有害作用を示さずかつ抗原性を増強せしめる限りにおいて、公知の担体をいずれも使用できる。具体的には、セルロース、重合アミノ酸、アルブミンおよびキーホールリンペットヘモシアニン等を例示できる。アジュバントとして、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント(FIA)、Ribi(MPL)、Ribi(TDM)、Ribi(MPL+TDM)、百日咳ワクチン(Bordetella pertussis vaccine)、ムラミルジペプチド(MDP)、アルミニウムアジュバント(ALUM)、およびこれらの組合わせが例示できる。免疫される動物は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、ウマ等が好適に用いられる。
ポリクローナル抗体は、免疫手段を施された動物の血清から自体公知の抗体回収法により取得できる。好ましい抗体回収法として免疫アフィニティクロマトグラフィー法が例示できる。
モノクローナル抗体は、免疫手段が施された動物から採取した抗体産生細胞(例えば、脾臓またはリンパ節由来のリンパ球)と、自体公知の永久増殖性細胞(例えば、P3−X63−Ag8株等のミエローマ株)とを融合させて作製したハイブリドーマを用いて生産できる。例えば、抗体産生細胞と永久増殖性細胞とを自体公知の方法で融合させてハイブリドーマを作成し、次いでクローン化する。クローン化した数々のハイブリドーマから、本発明に係る蛋白質を特異的に認識する抗体を産生するハイブリドーマを選別し、該ハイブリドーマの培養液から抗体を回収する。
本発明に係る蛋白質を認識または結合し得るポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、該蛋白質の精製用抗体、試薬または標識マーカー等として利用できる。特に本蛋白質の機能を阻害する抗体は、本蛋白質の機能調節に使用でき、本蛋白質の機能異常や量的異常に起因する各種疾患の解明、防止、改善および/または治療のために有用である。
(化合物の同定方法)
本発明の一態様は、本発明に係る蛋白質の機能を阻害または促進する化合物、あるいは本発明に係るポリヌクレオチドの発現をを阻害または促進する化合物の同定方法に関する。本ポリヌクレオチドは扁桃扁平上皮腫瘍等の扁桃腫瘍や気管の腺様嚢胞癌等の気管腫瘍において発現が高いことが判明したので、本発明者らは、本蛋白質の機能を阻害および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害することにより、これらの疾患を防止および/または治療できると考える。したがって、本発明に係る同定方法として、好ましくは、本蛋白質の機能を阻害する化合物および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物の同定方法が挙げられる。
本発明に係る同定方法は、本蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体または抗体のうち少なくともいずれか1種類を用いて、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して実施可能である。本同定方法は、インビトロまたはインビボで実施されるいずれの方法も包含する。本同定方法により、本蛋白質の立体構造に基づくドラッグデザインによる拮抗剤の選別、蛋白質合成系を利用した遺伝子レベルでの発現の阻害剤の選別、または抗体を利用した抗体認識物質の選別等が実施できる。
本発明に係る蛋白質の機能を阻害または促進する化合物の同定方法は、本蛋白質の機能を測定し得る実験系において、本蛋白質と調べようとする化合物(被検化合物)の相互作用を可能にする条件下で、本蛋白質と被検化合物とを共存させてその機能を測定し、次いで、被検化合物の存在下における本蛋白質の機能と、被検化合物の非存在下における本蛋白質の機能とを比較し、本蛋白質の機能の存在、不存在または変化、例えば低減、増加、消失、出現を検出することにより実施できる。被検化合物の非存在下における本蛋白質の機能と比較して、被検化合物の存在下における本蛋白質の機能が低減または消失する場合、該被検化合物は本蛋白質の機能を阻害すると判定できる。逆に、被検化合物の存在下における本蛋白質の機能が増加する場合、該被検化合物は本蛋白質の機能を促進すると判定できる。機能の測定は、該機能の直接的な検出により、または機能の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより実施できる。シグナルとして、GST等の酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、または蛍光蛋白質等が例示できるが、一般的に化合物の同定方法に用いられている標識物質であればいずれも利用できる。
本発明に係る蛋白質の機能として、Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性が好ましく挙げられる。また、本発明者らは、本蛋白質がRho−GEF活性ドメインであるDH/PHドメインを有し、かつ該ドメインをRhoファミリー蛋白質への結合に必須とすることから、本蛋白質の機能を阻害する化合物は、Rhoファミリー蛋白質に対する本蛋白質の結合を指標として同定することができると考えている。
本発明に係る蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を指標にした同定方法は、例えば、本蛋白質を遺伝子工学的手法により発現させて取得し、被検化合物の存在下または非存在下におけるRhoファミリー蛋白質との結合の検出を行うことにより実施できる。具体的には、例えばRhoファミリー蛋白質を遺伝子工学的手法によりGST−tag融合蛋白質として発現させ、その後グルタチオンセファロースに結合させ、被検化合物の存在下または非存在下で、本蛋白質と反応させる。グルタチオンセファロースに結合させたRhoファミリー蛋白質に結合する本蛋白質を定量することにより、本蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を阻害または増強する化合物が同定できる。被検化合物の非存在下における両蛋白質の結合と比較して、被検化合物の存在下における両蛋白質の結合が低減または消失する場合、該被検化合物は本蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を阻害すると判定できる。逆に、被検化合物の存在下における両蛋白質の結合が増加する場合、該被検化合物は本蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を増強すると判定できる。本蛋白質の定量は、例えば、本発明に係る抗体を用いて実施できる。抗体は、HRPやALP等の酵素、放射性同位元素、蛍光物質またはビオチン等の標識物質で標識した抗体であることができる。あるいは、標識した二次抗体を用いてもよい。本蛋白質として、タグペプチドを融合した蛋白質を用いれば、抗タグ抗体を用いて定量を実施できる。または、本蛋白質を上記酵素、放射性同位元素、蛍光物質、ビオチン等の標識物質で直接標識して用いてもよい。このような場合、標識物質を測定することにより、本蛋白質の定量を実施できる。
本発明に係る蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を指標にした同定方法は、より具体的には、本蛋白質をコードするポリヌクレオチドとRhoファミリー蛋白質をコードするポリヌクレオチドとを共発現させた適当な細胞を用い、両蛋白質の結合をプルダウン法により検出する実験系を用いて実施できる。(実施例3参照)。
本発明に係る蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合を指標にした同定方法はまた、公知のツーハイブリッド(two−hybrid)法を用いて実施できる。例えば、本蛋白質とDNA結合蛋白質を融合蛋白質として発現するプラスミド、Rhoファミリー蛋白質と転写活性化蛋白質を融合蛋白質として発現するプラスミド、および適切なプロモーター遺伝子に接続したレポーター遺伝子を含有するプラスミドを、酵母または真核細胞等に導入する。次いで、被検化合物の存在下におけるレポーター遺伝子の発現量と、被検化合物の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現量との比較により、本蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合を阻害または増強する化合物を同定できる。被検化合物の非存在下におけるレポーター遺伝子の発現量と比較して、被検化合物の存在下におけるレポーター遺伝子の発現量が減少または消失する場合、該被検化合物は本蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を阻害すると判定できる。逆に、被検化合物の存在下におけるレポーター遺伝子の発現量が増加する場合、該被検化合物は本蛋白質のRhoファミリー蛋白質との結合を増強すると判定できる。レポーター遺伝子は、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子をいずれも使用できる。具体的には、ルシフェラーゼ、β−Galまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素活性を有する遺伝子が例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記例示したレポーター遺伝子の場合は酵素活性を検出することにより実施できる。
本発明に係る蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合を指標にした同定方法はまた、ビアコアシステム(BIACORE system)等の表面プラズモン共鳴センサーを用いて実施できる。あるいは、シンチレーションプロキシミティアッセイ法(Scintillation proximity assay、SPA)や蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence resonance energy transfer、FRET)を応用した方法を用いて、本同定方法を実施できる。
本発明に係る蛋白質が有するRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を指標にした同定方法は、例えば、本蛋白質と本蛋白質により活性化されるRhoファミリー蛋白質とを共存させ、活性化されたRhoファミリー蛋白質の量を、被検化合物の存在下または非存在下において測定することにより実施できる。活性化されたRhoファミリー蛋白質の量が被検化合物の非存在下と比較して被検化合物の存在下において減少する場合、該化合物は、本発明に係る蛋白質が有するRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を阻害すると判定できる。逆に、活性化されたRhoファミリー蛋白質の量が被検化合物の非存在下と比較して被検化合物の存在下において増加する場合、該化合物は、本発明に係る蛋白質が有するRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を増強すると判定できる。活性化されたRhoファミリー蛋白質の測定は、該蛋白質に対する抗体等を用いて実施できる。例えば、活性化されたRhoファミリー蛋白質の測定は、活性化されたRhoファミリー蛋白質には結合するが、活性化されていないRhoファミリー蛋白質には結合しないか弱く結合するエフェクター分子を用いて、エフェクタープルダウン法により実施できる。
より具体的には、本発明に係る蛋白質をコードするポリヌクレオチドとRhoファミリー蛋白質をコードするポリヌクレオチドとを共発現させた適当な細胞を用い、本蛋白質により活性化されたRhoファミリー蛋白質を定量する。活性化されたRhoファミリー蛋白質の定量は、該蛋白質との結合部位を含むエフェクター分子断片にGST−tagを付加した蛋白質を利用してエフェクタープルダウン法により実施できる。具体的には、まず、活性化されたRhoファミリー蛋白質とエフェクター分子断片にGST−tagを付加した蛋白質とを反応させる。その後、エフェクター分子断片を抗GST−tag抗体で回収する。次いで、回収されたエフェクター分子断片に結合した活性化されたRhoファミリー蛋白質の量を測定する。活性化されたRhoファミリー蛋白質の量は、電気泳動法およびウエスタンブロット法により測定できる。Rhoファミリー蛋白質の種類によって、活性化された該蛋白質と結合するエフェクター分子は異なる。したがって、用いるRhoファミリー蛋白質の種類により適当なエフェクター分子を選択して用いる。例えば、活性化されたRhoAが結合するエフェクターとしてローテキン(Rhotekin)が知られている。したがって、RhoAの活性化を阻害または増強する化合物を同定する場合は、エフェクター分子としてRhotekinを用いることが推奨される。
本発明に係る蛋白質が有するRhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を指標にした同定方法はまた、本蛋白質、本蛋白質により活性化されるRhoファミリー蛋白質であって放射性同位元素で標識したGDPと結合しているRhoファミリー蛋白質およびGTPを共存させ、活性化されたRhoファミリー蛋白質の量を被検化合物の存在下または非存在下において測定することにより実施できる。活性化されたRhoファミリー蛋白質は、放射性同位元素で標識したGDPと結合しているRhoファミリー蛋白質の量の減少により定量され得る。このような方法は、公知文献(「ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry」、1996年、第271巻、第44号、p.27374−27381)記載の方法等を参照して実施できる。
「Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を阻害する」とは、GDPが結合した不活性型のRhoファミリー蛋白質からGTPが結合した活性型のRhoファミリー蛋白質への変換を阻害することを意味する。より具体的には、GTPが結合した活性型のRhoファミリー蛋白質の量を低減させるまたは消失させることを意味する。「Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性を促進する」とは、GDPが結合した不活性型のRhoファミリー蛋白質からGTPが結合した活性型のRhoファミリー蛋白質への変換を促進することを意味する。より具体的には、GTPが結合した活性型のRhoファミリー蛋白質の量を増加させることを意味する。
本発明に係る同定方法において用いるRhoファミリー蛋白質は、本発明に係る蛋白質による活性化に影響がない限りにおいて、一部を欠損した蛋白質であってよく、あるいは上記のような標識物質が付加された蛋白質であってよい。標識物質として、上記標識物質が例示できる。
本発明に係るポリヌクレオチドの発現を指標にした化合物の同定方法は、本ポリヌクレオチドの発現を測定し得る実験系において、本ポリヌクレオチドと被検化合物の相互作用を可能にする条件下で、本ポリヌクレオチドと被検化合物とを共存させてその発現を測定し、次いで、被検化合物の存在下における本ポリヌクレオチドの発現と、被検化合物の非存在下における本ポリヌクレオチドの発現とを比較し、本ポリヌクレオチドの発現の存在、不存在または変化、例えば低減、増加、消失、出現を検出することにより実施できる。被検化合物の非存在下における本ポリヌクレオチドの発現と比較して、被検化合物の存在下における本ポリヌクレオチドの発現が減少または消失する場合、該被検化合物は本ポリヌクレオチドの発現を阻害すると判定できる。逆に、被検化合物の存在下における本ポリヌクレオチドの発現が増加する場合、該被検化合物は本ポリヌクレオチドの発現を促進すると判定できる。
具体的には、本発明に係るポリヌクレオチドの発現を指標にした化合物の同定方法は、例えば、本発明に係る形質転換体を用いて本ポリヌクレオチドを発現させる実験系において、該形質転換体と被検化合物とを接触させた後に、本ポリヌクレオチドの発現を測定することにより実施できる。発現の測定は、簡便には発現される蛋白質の量、あるいは該蛋白質の機能を指標にして実施できる。また、例えば発現の指標となるシグナルを実験系に導入して該シグナルを検出することにより、発現の測定を実施できる。シグナルとして、GST等の酵素類、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等のタグペプチド類、または蛍光物質等が使用できる。これらシグナルの検出方法は当業者には周知である。
本発明に係るポリヌクレオチドの発現を指標にした化合物の同定方法はまた、例えば本ポリヌクレオチドを含む遺伝子のプロモーター領域の下流に、該ポリヌクレオチドの代わりにレポーター遺伝子を連結したベクターを作成し、該ベクターを導入した細胞、例えば真核細胞等と被検化合物とを接触させ、レポーター遺伝子の発現の存在、不存在または変化を測定することにより実施できる。レポーター遺伝子として、レポーターアッセイで一般的に用いられている遺伝子をいずれも使用できる。具体的には、ルシフェラーゼ、β−Galまたはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ等の酵素活性を有する遺伝子が例示できる。レポーター遺伝子の発現の検出は、その遺伝子産物の活性、例えば、上記に例示したレポーター遺伝子の場合は酵素活性を検出することにより実施できる。
(化合物)
本発明に係る同定方法により得られた化合物は、本発明に係るポリヌクレオチドの発現阻害剤、本発明に係る蛋白質の機能の阻害剤や拮抗剤等の候補化合物として利用できる。該化合物は、例えば、Rhoファミリー蛋白質に対するGEF活性、言い換えればRhoファミリー蛋白質の活性化の阻害剤の候補化合物として利用できる。本同定方法により得られた化合物は、本発明に係るポリヌクレオチドの発現促進剤、または本発明に係る蛋白質の機能の促進剤の候補化合物として利用できる。本ポリヌクレオチドは扁桃扁平上皮腫瘍等の扁桃腫瘍や気管の腺様嚢胞癌等の気管腫瘍において発現が高いことが判明したので、本発明者らは、本蛋白質の機能を阻害および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害することにより、これらの疾患を防止および/または治療できると考える。したがって、本発明に係る同定方法により得られる化合物として、好ましくは、本蛋白質の機能を阻害する化合物および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物が挙げられる。これら候補化合物は、その有用性と毒性のバランスを考慮して選別することにより医薬として調製できる。このような医薬は、本蛋白質の機能の異常および/または本ポリヌクレオチドの発現の異常に起因する各種病的症状の防止および/または治療に有効である。本発明に係る化合物には、本同定方法以外の方法により得られた化合物であって、本蛋白質の機能を阻害するおよび/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物、あるいは本蛋白質の機能を促進するおよび/または本ポリヌクレオチドの発現を促進する化合物も含まれる。
(医薬組成物)
本発明の一態様は、本発明に係る蛋白質、ポリペプチド、組換えベクター、形質転換体、抗体、または化合物を有効成分として含み、本蛋白質の機能および/または本ポリペプチドの発現を阻害するまたは拮抗すること、あるいは本蛋白質の機能および/または本ポリペプチドの発現を促進することに基づく医薬または医薬組成物に関する。
本発明に係る医薬は、本発明に係る蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、抗体、または化合物のうち少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量含む医薬となしてもよい。通常は、1種類または2種類以上の医薬用に許容される担体(医薬用担体)を用いて医薬組成物を製造することが好ましい。
本発明に係る医薬組成物中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択される。通常約0.00001乃至70重量%、好ましくは0.0001乃至5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体は、医薬組成物の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤等の希釈剤や賦形剤等が例示できる。これらは得られる医薬組成物の使用形態に応じて適宜選択して使用される。
例えば水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。これらは、本発明に係る医薬組成物の使用形態に応じて適宜1種類または2種類以上を組合せて使用される。
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜使用して医薬組成物を調製することもできる。
安定化剤は、ヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体等が例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤等と組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。上記L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。
界面活性剤も特に限定はなく、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。これには、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)等が例示できる。
等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等が例示できる。
等張化剤として、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等を例示できる。
キレート剤は、エデト酸ナトリウム、クエン酸等が例示できる。
本発明に係る医薬および医薬組成物は、溶液製剤として使用できる。その他、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。
本発明に係る医薬および医薬組成物は、本発明に係る蛋白質の機能の異常および/または本ポリヌクレオチドの発現の異常に基づく疾患の防止剤および/または治療剤として使用できる。また、当該疾患の防止方法および/または治療方法に使用できる。
本発明に係る蛋白質の機能および/または本発明に係るポリヌクレオチドの発現の過剰に関連する異常な症状に対しては、例えば本蛋白質の機能および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害する有効量の阻害剤を医薬用担体とともに対象に投与することにより、異常な症状を防止、改善または治療するといった効果が得られる。あるいは、内在性の本ポリヌクレオチドの発現をブロックする方法を用いて阻害することにより同様の効果が得られる。本ポリヌクレオチドの発現の阻害は、例えば本ポリヌクレオチドの部分配列からなるオリゴヌクレオチドをアンチセンスオリゴヌクレオチドとして用いることにより実施できる。アンチセンスオリゴヌクレオチオドとして用いるオリゴヌクレオチオドは、本ポリヌクレオチドの翻訳領域のみでなく、非翻訳領域に対応するものであっても有用である。本ポリヌクレオチドの発現を特異的に阻害するためには、該ポリヌクレオチドに固有な領域の塩基配列を用いることが好ましい。
本発明に係る蛋白質の機能の異常および/または本発明に係るポリヌクレオチドの発現の異常に基づく疾患として、腫瘍疾患、好ましくは扁桃腫瘍や気管腫瘍が例示できる。本ポリヌクレオチドである配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドの組織発現は、扁桃腫瘍の1つである扁桃扁平上皮腫瘍で正常扁桃組織と比較して2.77倍高いことが判明した。また、該ポリヌクレオチドの発現は、気管の腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma)で正常気管組織と比較して1.65倍高いことが判明した。上記のように、配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質は、Rho蛋白質に結合することから、Rho−GEFとして作用すると考えられる。Rho−GEFとして単離された遺伝子には、癌に関与する次のような遺伝子が知られている:vav(非特許文献3および4);ost(非特許文献5);およびibc(非特許文献6)。これらから、本ポリヌクレオチドの高発現は腫瘍疾患、例えば、扁桃腫瘍や気管腫瘍に関連すると考える。本蛋白質の機能および/または本ポリヌクレオチドの発現を阻害することにより、これら疾患を防止および/または治療できると考える。発明に係る医薬および医薬組成物は、腫瘍疾患、例えば扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の、防止剤および/または治療剤として有用である。さらに、腫瘍疾患、例えば扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の、防止方法および/または治療方法に使用できる。
本発明に係る医薬および医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等に応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
本発明に係る医薬または医薬組成物を投与するときは、該医薬または医薬組成物を単独で使用してよく、あるいは治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択できる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内等への投与が挙げられる。あるいは経口経路で投与できる。さらに、経粘膜投与または経皮投与も実施できる。腫瘍疾患に用いる場合は、腫瘍に注射等により直接投与することもできる。
投与形態は、各種の形態が治療目的に応じて適宜選択できる。その代表的な例として、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
(診断方法)
本発明に係る蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、抗体または化合物は、それ自体を、診断マーカーや診断試薬等の疾患診断手段として使用できる。
本発明によれば、例えば本発明に係るポリヌクレオチドの一部または全部のポリヌクレオチドを利用することにより、個体または各種組織における該ポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドを含む遺伝子の異常の有無あるいは発現の有無を特異的に検出できる。本ポリヌクレオチドの検出により、該ポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドを含む遺伝子の量的異常および/または機能異常等に基づく疾患の易罹患性、発症、および/または予後の診断が実施できる。
疾患の診断は、例えば調べようとする試料(被検試料)について、本発明に係るポリヌクレオチドの存在を検出すること、その存在量を決定すること、および/またはその変異を同定することにより実施できる。正常な対照試料との比較において、本ポリヌクレオチドの存在の変化およびその量的変化を検出できる。あるいは、正常遺伝子型との比較において本ポリヌクレオチドを公知の手法により増幅した増幅生成物について、例えばサイズ変化を測定することにより、欠失や挿入といった変異を検出できる。また、被検試料から増幅したポリヌクレオチドを、例えば標識した本ポリヌクレオチドとハイブリダイゼーションさせることにより点突然変異を同定できる。このような変化および変異の検出により、上記診断を実施できる。
本発明には、被検試料中の本発明に係るポリヌクレオチドの定性的または定量的な測定方法、または該ポリヌクレオチドの特定領域における変異の定性的または定量的な測定方法も包含される。
配列番号1に記載の塩基配列で表わされるポリヌクレオチドの組織発現は、疾患データベース情報BioExpress(GeneLogic社)を用いて調べたところ、扁桃腫瘍の1つである扁桃扁平上皮腫瘍で正常扁桃組織と比較して2.77倍高いことが判明した。また、該ポリヌクレオチドの発現は、BioExpress(GeneLogic社)を用いて調べたところ、気管の腺様嚢胞癌で正常気管組織と比較して1.65倍高いことが判明した。上述したように、該ポリヌクレオチドの高発現は腫瘍疾患、例えば、扁桃腫瘍または気管腫瘍に関連すると考えられる。したがって、被検試料中の該ポリヌクレオチドの発現量の増加を検出することにより、該被検試料が腫瘍疾患、例えば、扁桃腫瘍または気管腫瘍由来の被検試料であるか否かを判定する方法を実施できる。このような判定方法も本発明の範囲に包含される。本判定方法において該ポリヌクレオチドの発現量の増加は、被検試料と正常な対照試料とを比較することにより検出できる。被検試料として、好ましくはヒト扁桃組織由来またはヒト気管組織由来の被検組織が挙げられる。対照試料として、好ましくはヒト正常扁桃由来組織またはヒト正常気管由来組織が挙げられる。ヒト扁桃組織由来の試料において、本ポリヌクレオチドの発現量が対照試料と比較して増加している場合、好ましくは少なくとも2.5倍以上、より好ましくは少なくとも3倍以上に増加している場合、被検試料がヒト扁桃腫瘍由来試料であると判定できる。また、ヒト気管組織由来の試料において、本ポリヌクレオチドの発現量が対照試料と比較して増加している場合、好ましくは少なくとも1.5倍以上、より好ましくは少なくとも2倍以上に増加している場合、被検試料がヒト気管腫瘍由来試料であると判定できる。本発明に係るポリヌクレオチドの発現量とは、該ポリヌクレオチドの転写産物の量を意味する。
被検試料は、ヒト扁桃組織由来またはヒト気管組織由来の被検組織に制限されず、生体由来のあらゆる組織や細胞を使用できる。具体的には、細胞、血液、尿、唾液、髄液、組織生検または剖検材料等の生体由来の試料を例示できる。所望により被検試料から核酸を抽出して核酸試料を調製して使用することもできる。核酸は、ゲノムDNA、RNAまたはcDNAのいずれであることもできる。核酸は、PCRまたはその他の増幅法により酵素的に増幅してもよい。核酸試料は、また、標的配列の検出を容易にする各種方法、例えば変性、制限消化、電気泳動またはドットブロッティング等により調製してもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドを含む遺伝子の検出には、自体公知の遺伝子検出法がいずれも使用できる。具体的には、プラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション、サザンブロット法、ノザンブロット法、NASBA法、または逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)等が例示できる。また、in situ RT−PCRやin situ ハイブリダイゼーション等を利用した細胞レベルでの遺伝子検出方法も使できる。このような遺伝子検出法においては、本ポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む遺伝子またはその変異遺伝子の同定および/またはその増幅の実施に、本ポリヌクレオチドの部分配列からなるオリゴヌクレオチドであってプローブとしての性質を有するものまたはプライマーとしての性質を有するものが有用である。プローブとしての性質を有するオリゴヌクレオチドとは、本ポリヌクレオチドのみに特異的にハイブリダイゼーションできる該ポリヌクレオチド特有の配列からなるものを意味する。プライマーとしての性質を有するものとは本ポリヌクレオチドのみを特異的に増幅できる該ポリヌクレオチド特有の配列からなるものを意味する。また、増幅できる変異遺伝子を検出する場合には、遺伝子内の変異を有する箇所を含む所定の長さの配列を持つプライマーあるいはプローブを作成して用いる。プローブまたはプライマーとしては、塩基配列長が一般的に5乃至50ヌクレオチド程度であるものが好ましく、10乃至35ヌクレオチド程度であるものがより好ましく、15乃至30ヌクレオチド程度であるものがさらに好ましい。本ポリヌクレオチドまたはその断片を増幅するためのプライマー、あるいは本ポリヌクレオチドを検出するためのプローブとして、具体的には、配列番号5または6に記載の塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドを好ましく例示できる。プローブは、通常は標識したプローブを用いるが、非標識のものであってもよい。また、直接的または間接的に標識したリガンドとの特異的結合により検出することができる。プローブおよびリガンドを標識する方法は、様々な方法が知られており、例えばニックトランスレーション、ランダムプライミングまたはキナーゼ処理を利用する方法等が例示できる。適当な標識として、放射性同位体、ビオチン、蛍光物質、化学発光物質、酵素、抗体等が挙げられる
遺伝子検出法は、PCRが感度の点から好ましい。PCRは、本発明に係るポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む遺伝子またはその変異遺伝子を特異的に増幅できるプライマーを用いる方法である限り、従来公知の方法のいずれも使用できる。例えばRT−PCRが例示できる。その他、当該分野で用いられる様々なPCRの変法が適用できる。
PCRにより、遺伝子の検出の他に、本発明に係るポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む遺伝子またはその変異遺伝子のDNAの定量も実施できる。このような分析方法として、MSSA法等の競合的定量法、または一本鎖DNAの高次構造の変化に伴う移動度の変化を利用した突然変異検出法として知られるPCR−SSCP法を例示できる。
本発明によればまた、例えば本発明に係る蛋白質を利用することにより、個体若しくは各種組織における該蛋白質およびその機能の異常の有無を特異的に検出できる。本蛋白質およびその機能の異常の検出により、該蛋白質の量的異常および/または機能の異常に基づく疾患の易罹患性、発症、および/または予後の診断が実施できる。
蛋白質の検出による疾患の診断は、例えば被検試料について、該蛋白質の存在を検出すること、その存在量を決定すること、および/またはその変異を検出することにより実施できる。すなわち、本発明に係る蛋白質および/またはその変異体を定量的あるいは定性的に測定する。正常な対照試料との比較において、本蛋白質の存在の変化、その量的変化が検出できる。正常蛋白質との比較において、例えばアミノ酸配列を決定することによりその変異を検出できる。このような変化および変異の検出により、上記診断を実施できる。被検試料は、本蛋白質および/またはその変異体を含むものである限り特に制限されず、例えば、細胞、血液、血清、尿、生検組織等の生体生物由来の生物学的試料を例示できる。
本発明に係る蛋白質および変異を有する該蛋白質の測定は、本蛋白質、例えば配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質、または該蛋白質のアミノ酸配列において1若しくは数個乃至複数のアミノ酸が欠失、置換、挿入または付加されたアミノ酸配列で表わされる蛋白質、これらの断片、または該蛋白質やその断片に対する抗体を用いることにより実施できる。
蛋白質の定量的あるいは定性的な測定は、この分野における慣用技術による蛋白質検出法あるいは定量法を用いて実施できる。例えば、本蛋白質のアミノ酸配列分析により変異蛋白質を検出できる。さらに好ましくは、抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル抗体)を用いることにより、蛋白質の配列の相違、または蛋白質の有無が検出できる。
本発明には、被検試料中の本蛋白質の定性的または定量的な測定方法、または該蛋白質の特定領域の変異の定性的または定量的な測定方法が包含される。
具体的には、被検試料について、本蛋白質に対する特異抗体を用いて免疫沈降を行い、ウェスタンブロット法またはイムノブロット法で本蛋白質の解析を行うことにより、上記検出が実施できる。また、本蛋白質に対する抗体を用いて、免疫組織化学的技術によりパラフィン切片または凍結組織切片中の本蛋白質を検出できる。
本蛋白質またはその変異体を検出する方法の好ましい具体例として、モノクローナル抗体および/またはポリクローナル抗体を用いるサンドイッチ法を含む、酵素免疫測定法(ELISA)、放射線免疫検定法(RIA)、免疫放射線検定法(IRMA)、および免疫酵素法(IEMA)等が例示できる。その他、ラジオイムノアッセイや競争結合アッセイ等が利用できる。
本発明に係る蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、および抗体はいずれも、それ自体を単独であるいは組合わせて、試薬等として使用できる。試薬は、本蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、および抗体のうちの少なくとも1種類の他に、緩衝液、塩、安定化剤、および/または防腐剤等の物質を含むことができる。なお、製剤化にあたっては、各性質に応じた自体公知の製剤化手段を導入すればよい。該試薬は、例えば、本発明に係る判定方法、化合物の同定方法、あるいは本蛋白質または本ポリヌクレオチドの測定方法に使用できる。該試薬はその他、本蛋白質またはポリヌクレオチドが関与する細胞内情報伝達経路の解明、および該蛋白質またはポリヌクレオチドの異常に基づく疾患等に関する基礎的研究等に有用である。
本発明はまた、本発明に係る蛋白質、ポリヌクレオチド、組換えベクター、形質転換体、および抗体のうちの少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キットを提供する。試薬キットにはその他、本蛋白質やポリヌクレオチドを検出するための標識物質、標識の検出剤、反応希釈液、標準抗体、緩衝液、洗浄剤および反応停止液等、測定の実施に必要とされる物質を含むことができる。標識物質として、上述の蛋白質や放射性同位元素等が例示できる。標識物質は、予め本蛋白質あるいはポリヌクレオチドに付加されていてもよい。本試薬キットは、本発明に係る判定方法、化合物の同定方法、あるいは本蛋白質または本ポリヌクレオチドの測定方法に使用できる。さらに、本試薬キットは、前記測定方法を用いる検査方法に、検査剤並びに検査用キットとして使用できる。また、前記測定方法を用いる診断方法にも、診断剤並びに診断用キットとして使用できる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。
(遺伝子のクローニング)
ヒト脾臓由来cDNAライブラリーは、小原らの方法(オハラ(Ohara,O.)ら、「ディーエヌエー リサーチ(DNA Research)」、1997年、第4巻、p.53−59)に従って構築した。具体的には、NotI部位を有するオリゴヌクレオチド(GACTAGTTCTAGATCGCGAGCGGCCGCCC(T)15)(配列番号12:GIBCO BRL社製)をプライマーとして用い、ヒト脾臓mRNA(Clontech社製:カタログ番号6542−1)をテンプレートにしてSuperscriptII逆転写酵素キット(GIBCO BRL社製)で2本鎖cDNAを合成した。SalI部位を有するアダプター(GIBCO BRL社製)をcDNAとライゲーションした後、NotI消化し、1%濃度の低融点アガロース電気泳動により、3kb以上のDNA断片を精製した。精製cDNA断片を、SalI−NotI制限酵素処理したpBluescriptII SK+プラスミドとライゲーションした。エレクトロポーレーション法により、大腸菌ElectroMax DH10B株(GIBCO BRL社製)に組換えプラスミドを導入した。構築したcDNAライブラリーから、約10,000個の組換え体を選択し、これらクローンの両末端DNA配列を決定した。この中から、新規遺伝子を含む約420個のクローンを選択し、そのcDNAについて全塩基配列の決定を行なった。配列決定には、株式会社島津製作所製のDNAシーケンサー(RISA)とPEアプライドバイオシステム社製の反応キットを使用した。大部分の配列は、ショットガンクローンをダイターミネーター法(ターミネーター標識法)を用いて決定した。
全塩基配列が決定されたcDNAクローンについて、コンピュータプログラムを用いた汎用解析方法によりORFを予想した。次いで、ORF領域についてモチーフドメイン検索を行い、Rho−GEFの活性ドメインであるDH/PHドメインをコードする領域を含むcDNAを同定した。
その結果、新規な塩基配列を有し、DH/PHドメインをコードする領域を含むcDNA(以下、sh06537と称する)が同定された。
シーケンス解析の結果、sh06537は、配列番号1に示す塩基配列(5541bp)からなり、配列番号2に示すアミノ酸配列(1597アミノ酸)をコードすることが判明した。sh06537において、DHドメインは、配列番号1に示す塩基配列の第3706番目から第4245番目のヌクレオチドからなる領域にコードされている。PHドメインは、配列番号1に示す塩基配列の第4345番目から第4680番目のヌクレオチドからなる領域にコードされている。また、sh06537によりコードされる蛋白質において、DHドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1178番目のバリン(Val)から第1357番目のアスパラギン(Asn)までの180アミノ酸残基からなる。PHドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列の第1391番目のロイシン(Leu)から第1502番目のグルタミン酸(Glu)までの112アミノ酸残基からなる。
(DNAの発現と精製)
実施例1で得られたsh06537の発現ベクターを、ゲートウェイTMクローニングテクノロジー(GATEWAYTM Cloning Technology、Invitrogen社製)を用いて作製した。次いで、該発現ベクターを用いて、sh06537によりコードされる蛋白質をFLAG−tag融合蛋白質として293EBNA細胞(Invitrogen社製)で発現させた。また、sh06537の、DH/PHドメインコード領域を欠失した部分塩基配列からなるDNA(以下、sh06537−Dと称する)を含む発現ベクターを同様に作製した。そして、該発現ベクターを用いて、sh06537によりコードされる蛋白質のDH/PHドメインを欠失した部分アミノ酸配列からなる蛋白質を、同様にFLAG−tag融合蛋白質として293EBNA細胞で発現させた。発現の確認はウエスタンブロット法により行った。
具体的には、実施例1で得られたsh06537(pBluescriptII SK+のSalI−NotIサイトに挿入されている)をテンプレートとし、pfu turbo(STRATAGENE社製)により、sh06537のORF領域(終止コドンを除く)を増幅した。増幅用プライマーには、配列番号5および6に記載の各塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドを用いた。その後、増幅産物をTOPO cloning systemを用いた反応にて、pENTR/SD/D−TOPOに挿入してエントリーベクターを作製した。作製したエントリーベクターをHindIII/EcoRIで切断した遺伝子断片および実施例1で得られたsh06537をHindIII/EcoRI/ScaIで切断した遺伝子断片をライゲーションした後、コンピテントセル(TOP10:Invitrogen社製)に導入した。形質転換した大腸菌より精製キット(QIAGEN社製)を用いてDNA(以下、sh06537−Fと称する)を精製した。増幅した領域の配列および制限酵素処理を行なった塩基配列前後の配列が正しい配列であることは、シーケンス解析により確認した。シーケンス反応はDYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit(Amersham Biosciences社製)を用いて、泳動および解析はABI PRISM 377を用いて、それぞれ実施した。次に、sh06537−FとBspEIで切断したC末端FLAG−tag(3×)融合蛋白質発現ベクターとを用いて、LRクロナーゼ酵素による組換え反応により、sh06537−F発現プラスミドを作製した。この発現プラスミドを用いることにより、sh06537−Fによりコードされる蛋白質は、C末端にFLAG−tag(3×)が付加された蛋白質として発現される。
次に、sh06537−D発現ベクターを、ゲートウェイTMクローニングテクノロジー(Invitrogen社製)を用いて構築した。具体的には、まず、実施例1で得られたsh06537(pBluescriptII SK+のSalI−NotIサイトに挿入されている)をテンプレートとし、sh06537のDH/PHコード領域を欠失した部分配列(配列番号1の第175番目から第3693番目までのヌクレオチド:配列番号3)を増幅した。増幅は、プライマーとして配列番号5および7に記載の各塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドを用い、pfu turbo(STRATAGENE社製)により行なった。その後、増幅産物をTOPO cloning systemを用いた反応にて、pENTR/SD/D−TOPOに挿入してエントリーベクターを作製した。作製したエントリーベクターをNaeI/EcoRI/PmaCIで切断した遺伝子断片および実施例1で得られたsh06537をNaeI/EcoRI/SalIで切断した遺伝子断片をライゲーションした後、コンピテントセル(TOP10:Invitrogen社製)に導入した。形質転換した大腸菌より精製キット(QIAGEN社製)を用いてDNAを精製した。増幅した領域の配列および制限酵素処理を行なった塩基配列前後の配列が正しい配列であることは、シーケンス解析により確認した。シーケンス反応はDYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit(Amersham Biosciences社製)を用いて、泳動および解析はABI PRISM 377を用いて、それぞれ実施した。次に、精製したDNAとBspEIで切断したC末端FLAG−tag(3×)融合蛋白質発現ベクターとを用いて、LRクロナーゼ酵素による組換え反応により、sh06537−D発現プラスミドを作製した。この発現プラスミドを用いることにより、sh06537−Dによりコードされる蛋白質は、C末端にFLAG−tag(3×)が付加された蛋白質として発現される。
sh06537−F発現ベクターおよびsh06537−D発現ベクターは、それぞれ293EBNA細胞にリポフェクション法によりトランスフェクションした。293EBNA細胞は、遺伝子導入の前日に24ウエルプレートに細胞数6×10/wellで播種し、培養培地(IMDM培地、SIGMA社製;10%牛胎仔血清;4mM グルタミン;および10μg/mL ゲンタマイシン)中で培養した。翌日、リポフェクトアミン2000(LipofectamineTM2000、Invitrogen社製)を用いた手法で遺伝子導入を実施した。具体的には、まず、各発現ベクターを添加した無血清のDMEM(SIGMA社製)とLipofectamineTM2000を添加したDMEMとを混合し、室温で20分間インキュベーションした。得られた混合液を、前日播種して37℃にて5%CO存在下で培養した293EBNA細胞に添加した。遺伝子導入処理した細胞は37℃にて5%CO存在下でさらに培養を行なった。遺伝子導入2日後、培地を除去してリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)にて細胞を洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテル(protease inhibitor cocktail、SIGMA社製)1%を含む溶解バッファー(Lysis buffer)にて細胞を溶解して細胞溶解液を調製した。溶解バッファーは、次の組成からなる:25mM Tris−HCl、pH7.5;150mM NaCl;1mM CaCl;および1% Triton X−100。
各細胞溶解液は、等量のSDS−PAGEサンプルバッファーと混合し、100℃で5分間加熱処理して電気泳動用サンプルを調製した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)を行い、泳動ゲルをブロッティングバッファーに5分間以上浸して平衡化した後、PVDF膜上に蛋白質をトランスファーした。ブロッティング終了後のPVDF膜は、TBS−Tにブロックエース(大日本製薬株式会社製)を3:1の割合で混合した溶液(TBS−T+BA)に4℃で一晩浸してブロッキングした。ブロッキング終了後に、PVDF膜をTBS−Tにて10分以上振とうしながら1回洗浄した。上記SDS−PAGEサンプルバッファーは、トリスSDSβMEサンプル処理液(第一化学薬品社製)を用いた。SDS−PAGEに用いた泳動バッファーは次の組成からなる:100mM Tris;192mM グリシン;0.1% SDS、pH8.3(Bio Rad社製)。上記ブロッティングバッファーは、次の組成からなる:25mM Tris;40mM ε−アミノ−n−カプロン酸;20%メタノール;および0.05% SDS。TBS−Tは、次の組成からなる:150mM NaCl;10mM Tris−HCl、pH7.5;および0.05% Tween−20。
PVDF膜に、抗FLAG M2モノクローナル抗体(SIGMA社製)をTBS−T+BAで1000倍希釈して添加し、37℃で1時間以上保温した。その後、PVDF膜をTBS−Tにて3回洗浄し(1回の洗浄に付き20分以上の振とう)、TBS−T+BAで1000倍に希釈したHRP標識ヤギ抗マウスIgG抗体(Cell Signaling Technology社製)を添加して、37℃で1時間以上保温した。最終的に、PVDF膜をTBS−Tにて3回洗浄した後(1回の洗浄に付き20分以上の振とう)、ECLプラスウエスタンブロッティングディテクションシステム(Amersham Biosciences社製)により、抗FLAG抗体に反応する発現蛋白質の検出を行った。化学発光シグナルは検出装置(Lumino Imaging Analyzer、東洋紡績株式会社製)にて可視化した。
sh06537−F発現ベクターをトランスフェクションした細胞から調製した細胞溶解液において、180KDa近辺に主要バンドが検出された。また、sh06537−D発現ベクターをトランスフェクションした細胞から調製した細胞溶解液において、130KDa近辺に主要バンドが検出された。sh06537−F発現ベクターによりFLAG−tag融合蛋白質として発現される蛋白質の予想分子量は、約180KDaである。また、sh06537−D発現ベクターによりFLAG−tag融合蛋白質として発現される蛋白質の予想分子量は、約180KDaである。一方、各発現ベクターを導入せずLipofectamineTM2000のみを添加した細胞から調製した細胞溶解液ではこのようなバンドは認められなかった。このことから、検出された主要バンドは、それぞれsh06537−Fによりコードされる蛋白質およびsh06537−Dによりコードされる蛋白質であると考えられる。かくして、sh06537−Fによりコードされる蛋白質およびsh06537−Dによりコードされる蛋白質を取得できた。
(sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合の検出)
sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合を、実施例2で構築したsh06537−F発現ベクターを用いて、プルダウン法により検討した。また、実施例2で構築したDH/PHドメインコード領域を欠失した部分塩基配列からなるDNA(sh06537−Dと称する)を含む発現ベクターを用いて、sh06537−Dによりコードされる蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合を同様に検討した。
Rhoファミリー蛋白質として、RhoAを用いた。RhoAをN末端GST−tag融合蛋白質として発現させるための発現ベクターは、ゲートウェイTMクローニングテクノロジー(Invitrogen社製)を用いて作製した。具体的には、まず、Multiple Tissue cDNA Panels(Clontech社製)のスプリーンファーストストランドDNA(spleen first strand DNA)をテンプレートとして、pfu turboを用いてRhoA遺伝子を増幅した。増幅産物を、TOPO cloning systemを用いた反応にてpENTR/Dに挿入してエントリーベクターを作製した。増幅反応にはプライマーとして、配列番号10および11に記載の各塩基配列で表わされるオリゴヌクレオチドを使用した。次に、構築したエントリーベクターについて、N末端GST−tag融合蛋白質発現ベクターであるpDEST27を用いてLRクロナーゼによる組換え反応よりGST融合Rho発現プラスミドを作製した。各遺伝子のコード領域の塩基配列が正しく挿入されていることをシーケンスを行って確認した。シーケンス反応はDYEnamic ET Terminator Cycle Sequencing Kit(Amersham Biosciences社製)を、泳動および解析はABI PRISM 377を用いて行なった。
sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoファミリー蛋白質との結合の検出のために、まず、sh06537−F発現ベクターとRhoA遺伝子発現ベクターとを293EBNA細胞にコトランスフェクションした。具体的には、両ベクターを添加した無血清のDMEMと、LipofectamineTM2000を添加した無血清のDMEMを混合し、室温で20分間インキュベーションした。得られた混合液を293EBNA細胞に添加した。293EBNA細胞は、遺伝子導入の前日に細胞数6.0×10/wellを24ウエルプレートへ播種し、37℃にて5%CO存在下で一晩培養した後に本実施例で用いた。遺伝子導入処理した細胞は37℃にて5%CO存在下で2日間インキュベーションした。培養終了後、PBSにて細胞を洗浄し、プロテアーゼインヒビターカクテル(protease inhibitor cocktail、SIGMA社製)1%を含む溶解バッファー(組成は実施例2を参照)にて細胞を溶解して細胞溶解液を調製した。また、sh06537−F発現ベクターの代わりにsh06537−D発現ベクターを用いてRhoA遺伝子発現ベクターとともに、上記方法により293EBNA細胞にコトランスフェクションした。得られた細胞から、実施例2に記載の方法により細胞溶解液を調製した。陰性コントロールとして、RhoA遺伝子発現ベクターのみを遺伝子導入した細胞の細胞溶解液を用いた。
各細胞溶解液について、sh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合をプルダウン法により検出した。各細胞溶解液300μL、溶解バッファーにけん濁した20μLのグルタチオンセファロース4B(Glutathione sepharose 4B)および溶解バッファー100μLを混合した。各サンプルは、MgClおよびジチオスレイトール(DTT)がそれぞれ最終濃度1mMとなるように調製した。回転盤にて回転させながら4℃で1時間反応させた後に、1mLの冷却した溶解バッファー(MgClの最終濃度1mM)を用いて遠心処理(1,000rpmで4℃にて15秒間)により3回洗浄した。洗浄後に上清を除去したGlutathione sepharose 4Bに、溶解バッファーと等量のSDS−PAGEサンプルバッファーを混合した溶液を40μL添加してミキサーにて撹拌後、100℃にて5分間加熱処理して電気泳動用サンプルを調製した。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行い、ブロッティングバッファーに5分間以上浸して平衡化した泳動ゲルから、PVDF膜上に蛋白質をトランスファーした。ブロッティング終了後のPVDF膜は、TBS−T+BAに4℃で一晩浸してブロッキングした。ブロッキング終了後に、PVDF膜をTBS−Tで洗浄した(10分以上の振とうを1回)。SDS−PAGEサンプルバッファー、ブロッティングバッファー、TBS−TおよびTBS−T+BAはいずれも、実施例2で使用した各バッファーと同一組成のバッファーを用いた。
抗FLAG M2モノクローナル抗体(SIGMA社製)をTBS−T+BAで1000倍希釈してPVDF膜に添加し、37℃で1時間以上保温した。その後、PVDF膜をTBS−Tにて3回洗浄し(1回の洗浄に付き20分以上の振とう)、TBS−T+BAで1000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体(Cell Signaling Technology社製)を添加して、37℃で1時間以上保温した。最終的に、PVDF膜をTBS−Tにて3回洗浄した後(1回の洗浄に付き20分以上の振とう)、ECLプラスウエスタンブロッティングディテクションシステム(Amersham Biosciences社製)により、抗FLAG抗体に反応する発現蛋白質の検出を行った。化学発光シグナルは検出装置(Lumino Imaging Analyzer、東洋紡績株式会社製)にて可視化した。
結果を図1に示す。sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoAとを共発現させた細胞から調製した細胞溶解液を用いたときは、sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合を示すバンドが検出された(図1の上段パネルのレーン2)。一方、sh06537−Dによりコードされる蛋白質とRhoAとを共発現させた細胞から調製した細胞溶解液を用いたときは、sh06537−Dによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合を示すバンドは検出されなかった(図1の上段パネルのレーン3)。また、sh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質の各細胞における発現が確認された(図1の中段パネル)。各細胞溶解液に含まれるsh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質の量は、ほぼ同量であった(図1の中段パネル)。また、各細胞溶解液に含まれるRhoAの量も、ほぼ同量であった(図1の下段パネル)。
sh06537−Fによりコードされる蛋白質またはsh06537−Dによりコードされる蛋白質と、RhoAとが結合するのであれば、抗FLAG抗体にて検出した場合に、それぞれの蛋白質に対応する位置にバンドが検出される。上記結果から、sh06537−Fによりコードされる蛋白質がRhoAに結合することが明らかになった。DH/PHドメインコード領域が欠失しているsh06537−Dによりコードされる蛋白質はRhoAに結合しなかった。このことから、sh06537−Fによりコードされる蛋白質とRhoAとの結合は、該蛋白質のDH/PHドメインに依存することが判明した。DH/PHドメインは、Rho−GEFによるRhoファミリー蛋白質の活性化に寄与する重要なドメインであり、Rho−GEFの活性ドメインであると考えられている。したがって、sh06537−Fによりコードされる蛋白質は、RhoA等のRhoファミリー蛋白質に結合し、GEF活性を示すと考える。
本発明に係るポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質はRhoファミリー蛋白質であるRhoAに結合した。本蛋白質がDH/PHドメインを介してRhoファミリー蛋白質に結合すること、Rho−GEFは通常、Rhoファミリー蛋白質に結合しDH/PHドメインによってRhoファミリー蛋白質を活性化することから、本蛋白質はRhoファミリー蛋白質に対してGEF活性を有すると考える。本蛋白質およびポリヌクレオチドの利用により、Rhoファミリー蛋白質が関与する情報伝達経路および細胞機能の解明とその調節、並びに本蛋白質またはポリヌクレオチドの異常に基づく疾患、例えば腫瘍疾患、より具体的には扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の診断、防止および/または治療が実施できる。したがって、本発明は基礎科学分野から医薬開発分野まで広く寄与する有用な発明である。
配列番号1:グアニンヌクレオチド交換因子としての機能を有する蛋白質(配列番号2)をコードするポリヌクレオチド。
配列番号1:(3706):(4245)Dbl相同ドメインをコードする領域。
配列番号1:(4345):(4680)プレックストリン相同ドメインをコードする領域。
配列番号3:配列番号1の第175番目から第3693番目までのヌクレオチドからなる部分配列であり、Dbl相同ドメインおよびプレックストリン相同ドメインをコードする領域を含まない配列からなるポリヌクレオチド。
配列番号3:配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド。
配列番号5:プライマー用に配列番号1の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号6:プライマー用に配列番号1の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号7:プライマー用に配列番号1の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号8:RhoAをコードするポリヌクレオチド。
配列番号9:RhoA。
配列番号10:プライマー用に配列番号8の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号11:プライマー用に配列番号8の配列に基づいて設計されたオリゴヌクレオチド。
配列番号12:プライマー用に設計されたオリゴヌクレオチド。

Claims (19)

  1. 配列表の配列番号1に記載の塩基配列若しくはその相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質をコードするポリヌクレオチド若しくは該ポリヌクレオチドの相補的塩基配列で表わされるポリヌクレオチド。
  2. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドであって、RhoAと結合する蛋白質をコードするポリヌクレオチド:
    i)請求項1に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、
    ii)請求項1に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において、1乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異あるいは誘発変異を有するポリヌクレオチド、および
    iii)請求項1に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド。
  3. 下記の群から選ばれるポリヌクレオチドであって、RhoAに対するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性を有する蛋白質をコードするポリヌクレオチド:
    i)請求項1に記載のポリヌクレオチドの塩基配列と少なくとも70%の相同性を有する塩基配列で表わされるポリヌクレオチド、
    ii)請求項1に記載のポリヌクレオチドの塩基配列において、1乃至数個のヌクレオチドの欠失、置換、付加などの変異あるいは誘発変異を有するポリヌクレオチド、および
    iii)請求項1に記載のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションするポリヌクレオチド。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  5. 請求項4に記載の組換えベクターにより形質転換されてなる形質転換体。
  6. 請求項4に記載の組換えベクターおよびRhoAをコードするポリヌクレオチドを含有する組換えベクターにより形質転換されてなる請求項5に記載の形質転換体。
  7. 配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列で表わされる蛋白質。
  8. 請求項2または3に記載のポリヌクレオチドによりコードされる蛋白質。
  9. 請求項5または6に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項7または8に記載の蛋白質の製造方法。
  10. 請求項7または8に記載の蛋白質を認識する抗体。
  11. 請求項7または8に記載の蛋白質の機能および/または請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物の同定方法であって、該化合物と該蛋白質および/または該ポリヌクレオチドとの相互作用を可能にする条件下で、該機能および/または該発現の存在、不存在または変化を検出することにより、該化合物が該蛋白質の機能および/または該ポリヌクレオチドの発現を阻害するか否かを判定することを特徴とする同定方法。
  12. 蛋白質の機能が、RhoAに対するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性である請求項11に記載の同定方法。
  13. ヒト扁桃組織由来の被検組織が、ヒト扁桃腫瘍由来組織であるか否かを判定する方法であって、該被検組織における請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする判定方法。
  14. 被検組織における請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現量が、対照であるヒト正常扁桃由来組織における該ポリヌクレオチドの発現量の少なくとも2.5倍以上である場合に、被検組織がヒト扁桃腫瘍由来組織であると判定することを特徴とする、請求項13に記載の判定方法。
  15. ヒト気管組織由来の被検組織が、ヒト気管腫瘍由来組織であるか否かを判定する方法であって、該被検組織における請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現量を測定することを特徴とする判定方法。
  16. 被検組織における請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現量が、対照であるヒト正常気管由来組織における該ポリヌクレオチドの発現量の少なくとも1.5倍以上である場合に、被検組織がヒト気管腫瘍由来組織であると判定することを特徴とする、請求項15に記載の判定方法。
  17. 請求項7または8に記載の蛋白質の機能を阻害する化合物および/または請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物を有効成分として含んでなる扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止剤および/または治療剤。
  18. 請求項7または8に記載の蛋白質の機能を阻害する化合物および/または請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドの発現を阻害する化合物を用いることを特徴とする扁桃腫瘍および/または気管腫瘍の防止方法および/または治療方法。
  19. 請求項7または8に記載の蛋白質、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の組換えベクター、請求項5または6に記載の形質転換体および請求項10に記載の抗体のうち少なくともいずれか1つを含んでなる試薬キット。
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