JPWO2005094915A1 - 癒着防止用キット、癒着防止用キットの製造方法および癒着防止方法 - Google Patents

癒着防止用キット、癒着防止用キットの製造方法および癒着防止方法 Download PDF

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Abstract

損傷または欠損した組織端部周辺においても、癒着を防止する効果を有する癒着防止用キットおよび癒着防止方法の開発が求められている。本発明は、損傷した組織の誘導再生治療時における癒着を防止する癒着防止用キットに関する。具体的には、(A)生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、または、(B)生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む癒着防止用キットに関する。

Description

本発明は、損傷した組織の誘導再生治療時における癒着を防止する癒着防止用キットに関する。本発明は、(A)生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、または、(B)生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む癒着防止用キットに関する。
各種の外科手術においては、患部の切除および損傷部位の修復などを行うことが多い。特に肺、心臓、肝臓、脳、消化器官および胆嚢などの各種臓器を対象とする場合は、その切断面や欠損部などに、該臓器の組織を覆う膜状物を補填または補綴しなければならない。これらの処置を不完全に行うと、臓器の機能不全により死亡する場合がある。また、臓器自身の機能はかろうじて維持できたとしても、これらの臓器から滲出または漏出した体液、消化液または内容物などにより感染、他臓器への攻撃または浸食を引き起こし、生命の危機を招くこともある。
さらに、上記臓器の損傷または欠損部とその周辺に位置する組織(以下、周辺組織とも呼ぶ)との間には癒着が高頻度に発生する。その結果として、経時的に臓器の機能不全を誘発する事もある。特に、心臓手術分野において心膜を切除して心臓の手術を行うが、術後の経過によっては再手術することがある。この時、心膜が心臓および周囲の組織と癒着してしまい、癒着の剥離作業から開始しなければならない。その作業は、患者の出血を最小限に留めるように細心の注意を図りながら作業を行うため、この作業のみで約3〜5時間程時間を要する場合も少なくない。
このような各種の問題点を解決する目的で、臓器または該臓器の組織を覆う補綴膜が、様々な材料により開発されている。しかしながら、上記補綴膜が合成繊維などから製造された場合、生体適合性の不足から、過度の石灰化、異物反応および炎症反応などの様々な不都合が生じる。また、生体吸収性材料を用いた場合であっても、材料自身が、損傷または欠損した組織と、それに対応する別組織との癒着を媒介してしまう材料は使用できない。
さらに、上記材料は癒着を防止する機能を有する材料でなくてはならない。以上の条件を満足する材料としては、例えば、ヒアルロン酸およびゼラチンなどが挙げられる。これらの材料は主に動物などの生体より抽出、精製されるものであるから、生体適合性も良好であり、既に医薬品をはじめ、様々な医療分野で実用化が成されている。例えば、ヒアルロン酸を利用する癒着防止膜などが挙げられる(特許文献1〜4)。
しかしながら、上記生分解性材料で製造された膜は、補綴膜として縫合に絶えうる強度を有していなかった。本発明者らは、かかる問題を解決し、縫合強度に優れ、かつ補綴膜を構成する材料が全て生体内分解吸収性の材料で構成された癒着防止膜を開発し、特許出願を行っている(特許文献5〜9)。
しかしながら、これらの癒着防止膜は、図5に示すような形態で損傷または欠損した部分を補綴するのみであった。例えば、膜、袋および管状の組織の損傷または欠損した部分を補綴した場合、補綴した面の反対側に対向する周辺組織と直接接触する箇所があり(図5中のA)、損傷した組織端と周辺組織が癒着する場合があった。
特開昭61−234864号公報 特開平06−073103号公報 特開平08−157378号公報 特開平08−333402号公報 特開2000−093497号公報 特開2000−210376号公報 特開2000−271207号公報 特開2003−235955号公報 特開2003−245351号公報
したがって、損傷または欠損した組織端部周辺においても、癒着を防止することができる癒着防止用キットおよび癒着防止方法の開発が求められている。
本発明は、
(1) 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キット;
(A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、
(B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜、
(2) 生分解性基材層が、コラーゲン、ポリ乳酸またはポリグリコール酸を含む(1)に記載の癒着防止用キット、
(3) 生分解性基材層が、織物、不織布、シートまたはスポンジで構成された(1)に記載の癒着防止用キット、
(4) 生分解性基材層が、コラーゲンの不織布である(1)に記載の癒着防止用キット、
(5) 癒着防止層が、ヒアルロン酸、コラーゲンまたはゼラチンを含む(1)に記載の癒着防止用キット、
(6) 癒着防止層が、シートまたはスポンジで構成された(1)に記載の癒着防止用キット、
(7) 癒着防止層が、コラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物のスポンジである(1)に記載の癒着防止用キット、
(8) (B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む癒着防止用キットの製造方法であって、該生分解性基材層の周辺部を膜面法線方向に分岐させることを特徴とする癒着防止用キットの製造方法、
(9) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の膜を作製し、該膜2枚を、該生分解性基材層が対向するように重ね、中央部のみを接着または縫製することを特徴とする(8)に記載の癒着防止用キットの製造方法、
(10) 2つの生分解性基材層を重ねあわせ、中央部を接着または縫製した後、該生分解性基材層の外表面に癒着防止層を設けることを特徴とする(8)に記載の癒着防止用キットの製造方法、
(11) 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キットを用いて、該損傷または欠損した組織と、該損傷または欠損した組織の周辺に位置する周辺組織との癒着を防止することを特徴とする癒着防止方法;
(A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、
(B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜、
(12) 組織が、心膜、胸膜、横隔膜、脳硬膜、胃、食道または消化器官である(11)に記載の癒着防止方法、
(13) 組織が心膜であり、周辺組織が心臓である(11)に記載の癒着防止方法、
(14) 損傷または欠損した組織と、周辺組織を、少なくとも癒着防止層で隔てることを特徴とする(11)に記載の癒着防止方法、
および(15) 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キットの使用;
(A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層からなる第2の膜、
(B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜に関する。
本発明は、従来の癒着防止膜以上に癒着の頻度および程度がさらに減少するため、再手術の際に癒着の剥離作業に要する時間が減少する。つまり、術者の手術における労力が減少し、手術時における患者の出血量が大きく抑えられ、患者への負担も減少することができる。
本発明の第1の形態の癒着防止用キットを使用した手術形態の概念図である。 本発明の第1の形態の癒着防止用キットを使用した図1とは異なる手術形態の概念図である。 本発明の第2の形態の癒着防止用キットの概念図である。 本発明の第2の形態の癒着防止用キットを使用した手術形態の概念図である。 従来の癒着防止膜を使用した手術の概念図である。 実施例2におけるビーグル犬の心膜欠損部の写真。 ビーグル犬の心臓表面に配置した第2の膜の写真。 ビーグル犬の心膜に縫合した第1の膜の写真。 ビーグル犬心膜の欠損部に本発明の癒着防止用キットを埋殖後、3ヶ月経過した時の心膜−心臓間の写真。 比較例1における雄ビーグル犬の心膜に縫合した第1の膜の写真。 比較例1における雄ビーグル犬の心膜欠損部に第1の膜を埋殖後、3ヶ月経過した時の心膜−心臓間の写真(80%癒着したもの)。 比較例1における雄ビーグル犬の心膜欠損部に第1の膜を埋殖後、3ヶ月経過した時の心膜−心臓間の写真(50%癒着したもの)。 比較例2における雄ビーグル犬の心膜に縫合した市販のePTFE製膜の写真。 比較例2における雄ビーグル犬の心膜欠損部に市販のePTFE製膜を適用後、3ヶ月経過した時の心膜−心臓間の写真。 本発明の第2の形態の癒着防止用キットの斜めから見た写真である(組織狭持部をY軸と平行な部分をZ軸方向に広げている)。 図15における本発明の第2の形態の癒着防止用キットのXZ平面から見た写真である。 図16における癒着防止用キットの組織狭持部をX軸と平行な部分をZ軸方向に広げた写真である。
符号の説明
1 第1の形態(A)における第1の膜
2 第1の形態(A)における第2の膜
3 第2の形態(B)の膜
4 生分解性基材層
5 癒着防止層
6 損傷または欠損した組織
7 周辺組織
8 組織狭持部
9 従来の癒着防止膜
本発明の癒着防止用キットとは、事故などにより損傷した組織の再生または外科手術時に切開もしくは切除した組織を補綴、再生させる際に、該損傷または欠損した組織と物理的に接触可能な位置にある周辺組織との癒着を防止するために用いるものをいう。
本発明における組織とは、生体内における臓器、当該臓器を覆う膜組織および器官をいう。臓器としては、例えば、心臓、肝臓、胃、膵臓、胆のうおよび脳などが挙げられる。臓器を覆う膜組織としては、心膜、胸膜、腹膜、横隔膜および脳硬膜などが挙げられる。器官としては、例えば、気管、食道および消化器官などが挙げられる。
本発明における損傷とは、その組織が傷ついた状態をいい、例えば、体外からの異物によって損傷した事故的損傷および外科手術における切開などにより損傷した手術的損傷などが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、欠損とはその組織の一部が欠落している状態をいい、例えば、外科手術における患部の切除による手術的欠損などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明における周辺組織とは、上記損傷または欠損した組織の周囲に位置し、上記損傷または欠損した組織が再生する際、癒着が起こりうる位置に存在する組織をいう。例えば、損傷または欠損した組織が心膜である場合、その周辺組織は心臓、胸骨および肺である。また、気管、食道および消化器官など器官である場合は、当該器官における損傷または欠損部と対向する壁面も含む。
本発明の癒着防止用キットは、以下の(A)または(B)の2つの形態があり、当業者は、どちらを選択してもよい。
(A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、
(B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜。
本発明の癒着防止用キットの第1の形態(A)は、生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜を含む形態をいう。上記第1の膜および第2の膜は、組織誘導再生を行う損傷または欠損した組織にもよるが、例えば、心臓手術において切除した心膜を誘導再生する場合、膜の面積は約1〜200cm、好ましくは約15〜150cmであり、全体の厚さは約0.1〜30mm、好ましくは約0.5〜8mmであるが、これに限定されるものではない。
上記第1の膜は、少なくとも生分解性基材層および癒着防止層を含む、当該生分解性基材層および癒着防止層がそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の膜であり、損傷または欠損した組織の再生時において、当該損傷または欠損した組織と周辺組織との癒着を防止すると共に、該組織の再生を促進する効果を有するものをいう。
上記生分解性基材層とは、生体内に埋殖した際に、生体適合性がよく、一定期間後に分解、吸収される生体内分解吸収性高分子で作製され、損傷または欠損した組織が当該生分解性基材層を足場として誘導再生しうるものをいう。生体内分解吸収性高分子とは、生体内に埋殖後、一定期間後に生体内で分解、吸収されうる材料をいう。例えば、コラーゲン、ポリ乳酸およびポリグリコール酸などが挙げられ、生体内に埋殖後の安全性、細胞の接着性および増殖性に優れるという観点から、コラーゲンが好ましい。
上記コラーゲンは、溶媒に溶解できるよう処理が施されたコラーゲンを選択することができ、例えば、酵素可溶化コラーゲン、酸可溶化コラーゲン、アルカリ可溶化コラーゲンおよび中性可溶化コラーゲンなどの可溶化コラーゲンが挙げられる。中でも取り扱いの容易性の観点から、酸可溶化コラーゲンが好ましい。さらに、生体内埋殖時の安全性の観点から、抗原決定基であるテロペプチドの除去処理が施されているアテロコラーゲンが好ましいが、これに限定されるものではない。また、コラーゲンの由来については、ウシ、ブタ、鳥類、魚類、ウサギ、ヒツジ、ネズミおよびヒトなどの動物種の皮膚、腱、骨、軟骨および臓器などから抽出されるものであり、入手容易性の観点から、ブタ皮膚由来のものが好ましいが、これに限定されるものではない。さらに、コラーゲンのタイプとしては、I型、II型およびIII型などが挙げられ、取り扱いが容易である観点からI型およびIII型が好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明の生分解性基材層の形態としては、織布、不織布、スポンジおよびシートなどが挙げられる。中でも縫合強度の観点から、織布および不織布が好ましい。さらに、製造容易性およびコストの観点から、不織布が好ましいが、これに限定されるものではない。
上記織布または不織布を用いる場合、これらの形態を構成する糸状物を製造する。糸状物の外径は、縫合強度の向上の観点から、約0.01〜1000μm、好ましくは約0.05〜200μmであり、さらに好ましくは約0.1〜200μmであるが、これに限定されるものではない。
上記糸状物は常法に従って製造することができる。例えば、上記生体内分解吸収性高分子の溶液から連続紡糸して製造することができる。上記溶液の濃度は、糸の強度の観点から、約0.1〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%であるが、これに限定されるものではない。溶液の吐出に用いる装置は、例えば、ギアポンプ、ディスペンサー、各種押し出し装置などが挙げられ、均一な紡糸を行うためには脈動が少なく安定して溶液を定量吐出する観点から、ディスペンサーが好ましいが、これに限定されるものではない。
湿式紡糸で用いられる凝固浴の溶媒としては、上記生体内分解吸収性高分子を凝固させうる溶媒、懸濁液、乳濁液および溶液であればよい。例えば、糸状物の原材料としてコラーゲンを用いる場合、無機塩類水溶液、無機塩類含有有機溶媒、アルコール類およびケトン類などが挙げられる。無機塩類水溶液としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化カルシウムもしくは塩化マグネシウムなどの水溶液、特に塩化ナトリウム、硫酸ナトリウムもしくは硫酸アンモニウムなどの水溶液が挙げられる。これらの無機塩類をアルコール類またはアセトン類に溶解もしくは分散させた溶媒などを用いてもよい。アルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アミルアルコール、ペンタノール、ヘキサノールおよびエチレングリコールなどが挙げられる。ケトン類としてはアセトンおよびメチルエチルケトンなどが挙げられる。これらの中でも、紡糸した糸の強度の観点から、エタノール、塩化ナトリウムのエタノール溶液および塩化ナトリウムのエタノール分散溶液を用いることが好ましいが、これに限定されるものではない。
生分解性基材層として、織布を選択した場合、糸状物の間隔は約0.01〜500μm、好ましくは約0.1〜200μmであり、各糸状物の間隔は均等であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
上記織布は、例えば、織り機などを用いた方法で製造することができる。ここで、織り機を使用する際に、糸状物が切断を防止する観点から、上記糸状物を縒糸にして使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。
また、生分解性基材層として、不織布を選択した場合、糸状物の間隔は、縫合強度の観点から、約0.01〜500μm、好ましくは約0.1〜200μmであるが、部分的に接触していてもよい。
上記不織布は、例えば、複数本糸状物が略平行に配列されてなる第1の層と、糸状物を複数本略平行に配列されてなる第2の層との糸状物の配列方向のなす鋭角の角度が、約70°〜90°である層状体として製造される形態が挙げられる。さらに、第2の層の上に、糸状物が複数本略平行に配列された第3の層を、該第2の層の糸状物の配列方向と、第3の層の糸状物の配列方向との糸状物の配列方向のなす鋭角の角度が約70°〜90°である形態が挙げられる。つまり、本発明の不織布は、縫合強度の観点から、糸状物を複数本略平行に配列されてなる層(n層、nは2以上の整数)の当該糸状物の配列方向と、該n層に接触した上下の層(n−1層またはn+1層、nは2以上の整数)の当該糸状物とのなす鋭角の角度が、約70°〜90°である形態が好ましいが、これに限定されるものではない。また、これらの層状体の総数は、縫合強度および膜の重量の観点から、約2〜20層、好ましくは約4〜16層であるが、これに限定されるものではない。上記の層状形態の不織布を、本発明では層状不織布と呼ぶ。
さらに、上記シートとは、一面が略均一に生体内分解吸収性高分子で構成された平面状の膜をいう。例えば、押出成型、圧縮成型および溶剤キャスティング法などにより製造する方法が挙げられ、製造容易性の観点から、溶剤キャスティング法が好ましいが、これに限定されるものではない。
また、上記スポンジとは、目視判定および顕微鏡下で観察して、均一または不均一な大きさの多数の間隙を有する区画が連続または不連続に分散した多孔質を構成したものをいう。例えば、目的の組織損傷部の形状に合わせて作製した型に、生分解性高分子の溶液を流し込み、自然乾燥、真空乾燥、凍結融解、真空凍結乾燥などの方法により形成させる方法が挙げられる。中でも、均一に形成させる観点から、真空凍結乾燥法で形成することが好ましいが、これに限定されるものではない。上記真空凍結乾燥法としては、製造の容易性の観点から、例えば、約0.05〜30重量%の溶液を、約0.08Torr以下で乾燥する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。凍結乾燥後、型から取り出すことにより、スポンジを得ることができる。さらに、上記スポンジは、縫合強度の観点から、例えば、プレスなどで圧縮することが好ましいが、これに限定されるものではない。
さらに生分解性基材層は、強度を向上させる観点から、さらに生体内分解吸収性高分子溶液に浸漬、風乾することが好ましいが、これに限定されるものではない。このような処理をバインダー処理という。バインダー処理における生体内分解吸収性高分子は、生分解性基材層との相溶性および強度の観点から、生分解性基材層と同じ物質を使用することが好ましいが、これに限定されるものではない。上記生分解性基材層を生体内分解吸収性高分子の溶液などに含浸させた後、自然乾燥、送風下乾燥、減圧乾燥、低温下乾燥または真空凍結乾燥などの適当な乾燥方法で乾燥を行う。このバインダー処理により得られる生分解性基材層は、未処理の生分解性基材層よりも縫合強度が格段に向上する。また、バインダー処理を行う際の生体内分解吸収性高分子の濃度は、溶液の取り扱い性の観点から、約0.05〜30重量%、好ましくは約0.1〜10重量%であるが、これに限定されるものではない。
本発明の生分解性基材層は、製造容易性、縫合強度、耐分解性および生体内の埋殖後の安全性などの観点から、コラーゲン糸で構成された不織布が最も好ましい。
本発明の癒着防止層とは、損傷または欠損した組織再生時における当該組織と周辺組織との癒着を防止する効果を有するものをいう。原材料としては、癒着防止効果を有する高分子が挙げられる。例えば、コラーゲン、ゼラチンおよびヒアルロン酸などが挙げられ、好ましくは癒着防止効果に優れたヒアルロン酸であり、特に好ましくは耐分解性を改善したコラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物である。
上記ヒアルロン酸は動物由来、微生物由来のどちらでもよい。さらに、アルカリ金属(例、ナトリウム、カリウム)などの塩として用いてもよい。中でも、生体内に埋植する観点から、医療用グレードのものが好ましい。
また、コラーゲンおよびヒアルロン酸の混合比は、癒着防止および耐分解性の観点から、約3:7〜7:3、好ましくは5:5であるが、これに限定されるものはない。
さらに、上記癒着防止層の形状はシートおよびスポンジが挙げられる。中でも生分解性基材層への積層の容易性の観点から、スポンジが好ましい。シートまたはスポンジの製造方法は上記生分解性基材層の製造方法と同様であればよいが、これに限定されるものではない。
本発明の癒着防止層は、製造容易性、癒着防止効果、耐分解性および生体内の埋殖後の安全性などの観点から、コラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物で構成されたスポンジが最も好ましい。
上記第1の膜における生分解性基材層と癒着防止層との積層は、例えば、生分解性基材層に癒着防止層を直接形成する方法、ならびに生分解性基材層と癒着防止層をそれぞれ作成した後、積層する方法が挙げられる。中でも製造容易性の観点から、生分解性基材層と癒着防止層をそれぞれ作成した後、積層する方法が好ましいが、これに限定されるものではない。
上記生分解性基材層に癒着防止層を直接形成する方法としては、例えば、不織布からなる生分解性基材層を、生体内分解吸収性高分子の溶液に浸漬後、凍結乾燥法により形成する方法が挙げられるが、これに限定されるものではない。
一方、生分解性基材層と癒着防止層をそれぞれ作成した後、積層する方法としては、上記バインダー処理および糸を用いた縫合などが挙げられる。中でも製造容易性の観点から、生体内分解吸収性高分子を用いた上記バインダー処理が好ましいがこれに限定されるものではない。上記バインダー処理は、上述した方法に従えばよいが、これに限定されるものではない。
上記縫合は、市販されている手術糸および上記生体内分解吸収性高分子で作製された糸状物などを使用する方法が挙げられる。中でも、生体内埋殖時における安全性の観点から、上記生体内分解吸収性高分子で作製された糸状物で縫製することが好ましいが、これに限定されるものではない。また、縫製の間隔は、膜の強度の観点から、約1〜20mm、好ましくは約2〜10mmであり、ミシンピッチの間隔は約1〜20mm、好ましくは約2〜10mmであるが、これに限定されるものではない。
また、上記生分解性基材層および癒着防止層は必要によりさらに架橋処理を施すことが好ましい。この架橋処理により、癒着防止膜の生体内における分解時間を適時制御することができる。架橋方法としては、化学的架橋法、γ線照射、紫外線照射、電子線照射、プラズマ照射および熱脱水架橋処理などが挙げられる。中でも、上記生分解性基材層および癒着防止層がコラーゲンを含む場合は、生体内埋殖後における安全性の観点から、熱脱水架橋処理が好ましいが、これに限定されるものではない。この架橋処理では、架橋温度と架橋時間により、生体内における分解吸収性をコントロールすることが可能である。
上記第2の膜は、少なくとも癒着防止層を含む。当該癒着防止層は、上記第1の膜の癒着防止層と同様の方法で製造されるものであればよい。中でも、製造コストの観点から、上記第1の膜の癒着防止層と同じ形態であることが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明の癒着防止用キットの第1の形態(A)の好ましい例としては、製造コスト、製造容易性、膜の強度および生体内埋殖時の安全性などの観点から、コラーゲン不織布からなる生分解性基材層ならびにコラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物のスポンジからなる癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面にコラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物のスポンジからなる癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜を含む形態である。
本発明の癒着防止用キットの第2の形態(B)は、生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜であり、該膜の周辺部に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む形態である。図3には概念図を、図15〜17には実際に作成した写真を示す。上記膜の面積および膜厚は、上記第1の形態(A)と同様であればよい。
第2の形態(B)における、生分解性基材層および癒着防止層は、上記第1の形態(A)における生分解性基材層および癒着防止層と同様の方法で製造されうるものであればよいが、これに限定されるものではない。
本発明における組織挟持部とは、組織端を挟むことにより、組織端を保護するものをいう。膜面法線方向とは、図3における矢印方向または図15〜17におけるZ軸方向をいう。また、狭持部の大きさは、当該膜の強度および組織狭持の容易性の観点から、例えば、癒着防止膜の膜面の面積を100%とした場合、組織挟持部が占有する面積は約0.5〜90%、好ましくは5〜75%、さらに好ましくは約10〜50%であるが、これに限定されるものではない。
本発明の組織狭持部は、例えば、
(i) 生分解性基材層および癒着防止層からなる2層の膜2枚を、該生分解性基材層が対になるように重ねあわせ、中央部のみを接着または縫製する方法、
(ii) 生分解性基材層からなる膜2枚を重ねあわせ、中央部を接着または縫製後、当該生分解性基材層の外面に癒着防止層を積層する方法、
(iii) 生分解性基材層および癒着防止層からなる膜状物と、癒着防止層からなる膜状物をそれぞれ作製後、これらの膜の積層時に中央部を接着または縫製する方法、
(iv) 生分解性基材層の両面に癒着防止層を積層した膜を作製し、癒着防止層、生分解性基材層、もしくは癒着防止層および生分解性基材層との層間に膜面と平行な切れ込みを入れる方法、
および、(v) 生分解性基材層に膜面と平行な切れ込みを入れた後、当該生分解性基材層の外面に癒着防止層を積層する方法、
などが挙げられる。中でも、膜の強度および製造容易性の観点から、(ii)生分解性基材層からなる膜2枚を重ねあわせ、中央部を接着または縫製後、当該生分解性基材層の外面に癒着防止層を積層する方法が好ましいが、これに限定されるものではない。上記生分解性基材層および癒着防止層からなる2層の膜状物とは、本発明の第1の形態(A)における第1の膜と同じ構造である。
上記生分解性基材層と癒着防止層との積層、バインダー処理および縫合は、上記第1の形態(A)で説明した方法に従えばよいが、これに限定されるものではない。
さらに、上記切れ込みは、例えばミクロトームおよびナイフなどの汎用の器具などを用いることにより達成することができる。
本発明の癒着防止用キットの第2の形態(B)の特に好ましい例としては、製造コスト、製造容易性、膜の強度および生体内埋殖時の安全性などの観点から、コラーゲン不織布からなる生分解性基材層ならびにコラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物のスポンジからなる癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜の周辺部に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む形態である。
本発明の癒着防止用キットは、損傷または欠損した組織と、その周辺組織との癒着を防止する新規な方法を提供することができる。以下に図面を用いて各例における癒着防止方法を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図1は、本発明の癒着防止用キットの第1の形態(A)を使用した癒着防止方法の一例を示す。損傷または欠損した組織6の片面において、第1の膜の生分解性基材層4を損傷または欠損した組織6側に向けた状態で、損傷または欠損した部分を覆うように第1の膜1で補綴する。次に、損傷または欠損した組織6のもう一方の面において、第2の膜2を補綴する。つまり、損傷または欠損した部分を第1の膜1および第2の膜2で挟み、損傷または欠損した部分が露出されない状態で配置しているために、周辺組織71、72と物理的に接触することがなく、従来よりも効率のよい癒着防止方法を提供することができる。ここで、第1の膜および第2の膜の位置は逆転していてもよい。
図1に示した例は、主に心膜、胸膜、脳硬膜、横隔膜、胃、食道または消化器官などの組織が損傷または欠損した場合に適用することができるが、これに限定されるものではない。
図2は、本発明の癒着防止用キットの第1の形態(A)を使用した癒着防止方法の他の一例を示す。損傷または欠損した組織6の周辺組織71において、損傷または欠損した部分と対向する位置に第2の膜2を配置する。次に、損傷または欠損した組織6における周辺組織71とは反対の面において、第1の膜の生分解性基材層41を損傷または欠損した組織6側に向けた状態で、損傷または欠損した部分を覆うように第1の膜1で補綴する。つまり、損傷または欠損した部分が周辺組織71、72などに物理的に接触することがなく、従来よりも効率のよい癒着防止方法を提供することができる。
図2に示した例は、主に心膜、胸膜、横隔膜または脳硬膜などの組織が損傷または欠損した場合に適用することができるが、これに限定されるものではない。
図4は、本発明の癒着防止用キットの第2の形態(B)を使用した癒着防止方法の一例を示す。損傷または欠損した組織6を、組織狭持部8で狭持する。つまり、損傷または欠損した部分が露出されないため、周辺組織71、72などに物理的に接触することがなく、従来よりも効率のよい癒着防止方法を提供することができる。
図4に示した例は、主に心膜、胸膜、脳硬膜、横隔膜、胃、食道または消化器官などの組織が損傷または欠損した場合に適用することができるが、これに限定されるものではない。
したがって、本発明の第1の形態(A)および第2の形態(B)の癒着防止用キットを用いた癒着防止方法または使用とは、損傷または欠損した組織と、周辺組織を、癒着防止層で隔てることを特徴としている。
以下に本発明を、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1:癒着防止用キットの第1の形態(A)の作製
(1)癒着防止層の作製
ヒアルロン酸1重量%水溶液と等量のコラーゲン1重量%水溶液を混合し、コラーゲンとヒアルロン酸との等量混合物250mLを得た。酸性状態にある該混合物を0.1N水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、直方体状に空間を有する金属製の器(約10cm四方)の中に充填し、−20℃で約12時間凍結した。次に、該凍結物を凍結乾燥機(EYELA社製:FDU−830型)にて減圧下(0.1torr以下)で約24時間凍結乾燥した後、圧縮機(井内盛栄堂社製:15tプレス機)にて100kgf/cmの圧力で圧縮した。このようにしてコラーゲンとヒアルロン酸との混合物のスポンジからなる癒着防止層(約10cm四方)を得た。
(2)生分解性基材層の作製
酸可溶化コラーゲン7重量%水溶液150mLを99.5容量%エタノール3L凝固浴中に押し出し脱水凝固後、得られたコラーゲン糸を、特開2000−93497号公報の記載に準ずる方法に従って積層させコラーゲン層状不織布を得た。次に、得られたコラーゲン層状不織布をクリーンベンチ内で風乾させた後、バキュームドライオーブン(EYELA社製:VOS−300VD型)中にて減圧下(1torr以下)、120℃で24時間熱脱水架橋反応を施した。架橋反応終了後、架橋されたコラーゲン層状不織布の糸間の隙間を埋めるために、バインダー処理として、コラーゲン1重量%水溶液をコラーゲン不織布に塗り込んだあと、乾燥を行った。続いて、塗り込み操作と乾燥操作を3回繰り返した後、バキュームドライオーブンで120℃、12時間の条件で、熱脱水架橋反応を施した。次に7.5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、クリーンベンチ内で風乾させ、コラーゲン不織布からなる組織再生補綴膜の生分解性基材層(約10cm四方)を得た。
(3)第1の膜の作製
実施例1(1)で得られた癒着防止層を、実施例1(2)で得られたコラーゲン不織布からなる生分解性基材層上に、中和したコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む溶液を塗布し、癒着防止層と生分解性基材層を接着した。クリーンベンチ内で風乾させた後、バキュームドライオーブン中にて減圧下(1torr以下)、110℃で24時間加熱し、熱脱水架橋反応を行うことで、第1の膜を得た。
(4)第2の膜の作製
実施例1(1)で作製した癒着防止層を、そのまま第2の膜とした。
(5)滅菌処理
実施例1(3)で作製した第1の膜および実施例1(4)で作製した第2の膜に、照射線量25kGyの条件でγ線滅菌を施して、本発明の第1の形態の癒着防止用キットを得た。
実施例2:本発明の癒着防止用キットを用いた癒着防止実験
(1)心膜欠損作製
ビーグル犬6頭(平均体重約10.5kg)を持続麻酔下で左肋間開胸し、心臓を露出させ、続いて心臓表面を覆う心膜約4cm四方を切除して心膜欠損を作製した(図6)。
(2)第2の膜の配置
次に心膜欠損部を通して実施例1(4)で作製した第2の膜を約5cm四方にトリミングして挿入し、実施例2(1)で作製した心膜欠損部と対向する位置で第2の膜を心臓表面に配置した(図7)。
(3)第1の膜の配置
実施例1(3)で作製した第1の膜を、約5cm四方にトリミングし、注射用滅菌蒸留水中に約5〜10分間浸漬して十分に軟化させた。次に、第1の膜のコラーゲン不織布を実施例2(1)で作製した心膜欠損側に向けた状態で、連続縫合にて固定した(図8)。その後閉胸し、3ヶ月間経過観察を行った。
比較例1:本発明の第1の膜のみ使用した癒着防止実験
(1)心膜欠損作製および第1の膜の配置
実施例2(2)の工程を行わないこと以外は全て実施例2と同様に行った。つまり、実施例2(1)および(3)のみ行った。図10に、比較例1における第1の膜を心膜欠損部に連続縫合にて固定した写真を示す。
実施例3:統計的評価
3ヶ月間の経過観察中、実施例2および比較例1のビーグル犬各6例全てにおいて、特に異常は認められず、健康な状態の維持が確認された。3ヶ月経過時点で正中切開にて再開胸し、心膜−心臓間の癒着面積率および癒着の程度について評価を行った。ここで、癒着面積率とは、心膜の欠損面積を100%とした時の癒着の発生面積の割合をいう。また、癒着の程度は表1の判別基準に基づいて目視で判定した。
その結果、実施例2の癒着確認例数は6例中2例であった。2例とも癒着の程度は3級であったが、癒着面積率は2例とも10%であった。つまり、術者の癒着剥離作業に要する手間はほとんどないと言えるものであった。一方、比較例1の癒着確認例数は3件であり、癒着の程度は全て3級であった。しかしながら、癒着面積率はそれぞれ、50、80および100%であった。以上のことから、本発明の癒着防止用キットが優れた癒着防止能を有し、心膜欠損に心膜を再生する機能を有することが明らかとなった。表2に癒着防止効果の評価結果を示す。
また、実施例2の試料No.1の癒着の状態を撮影した写真を、図9に示す。第1の膜および第2の膜は分解吸収された上で、心膜欠損部には心膜様の膜状物が再生し、心膜と心臓の癒着はなかった。
比較例1の試料No.1および4の癒着の状態を撮影した写真を、図11および12にそれぞれ示す。第1の膜は分解吸収され、心膜欠損部には心膜様の膜状物が再生していたが、心膜と心臓間で一部癒着が見られた。
比較例2:市販の癒着防止膜を使用した癒着防止実験
(1)心膜欠損作製および市販の癒着防止膜の配置
比較例1に用いた第1の膜の代わりに、約5cm四方にトリミングした市販の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)製の癒着防止膜(登録商標:ゴアテックス)を用いたこと以外は、比較例1と同様に行った。図13に、比較例2における市販の癒着防止膜を心膜欠損部に連続縫合にて固定した写真を示す。
(2)実験結果
3ヶ月間の経過観察中、ビーグル犬には特に異常は認められず、健康な状態の維持が確認された。3ヶ月経過時点で正中切開にて再開胸し、評価を行ったところ、ゴアテックス(登録商標)は生体内で残存したままであった。さらに、心膜−心臓間にて重度の癒着を形成していた(図14)。
実施例3:癒着防止用キットの第2の形態(B)の作製
実施例1(2)と同様の方法で、コラーゲン1重量%水溶液でバインダー処理されたコラーゲン層状不織布を2枚作製し、中央部2cm四方上に、コラーゲン水溶液をそれぞれ塗り込んだ後、バインダー処理された層状不織布同士を接着した。その後、バキュームドライオーブン中にて高真空下(1torr以下)、120℃で12時間熱脱水架橋を行うことで、生分解性基材層を得た。続いて、7.5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液中に30分間浸して中和処理を行った後、蒸留水により洗浄し、クリーンベンチ内で風乾して、組織狭持部を設けた生分解性基材層(10cm四方)を得た。この生分解性基材層の両面に、中和したコラーゲンとヒアルロン酸との混合物を含む溶液を塗布し、生分解性基材層2層の膜の両面に実施例1の(1)で得た癒着防止層をそれぞれ積層した。クリーンベンチ内で風乾させた後、バキュームドライオーブン中にて高真空下(1torr以下)、110℃で24時間加熱し、熱脱水架橋反応を行うことで、本発明の第2の形態(B)の癒着防止用キットを作製した。図15〜17にその写真を示す。
本発明は、外科手術分野において画期的な発明である。具体的には、従来の癒着防止膜以上に癒着の頻度および程度がさらに減少するため、再手術の際に癒着の剥離作業に要する時間が大幅に減少する。つまり、術者の手術における労力が大幅に減少する上、手術時における患者の出欠量が大きく抑えられ、患者への負担も減少することができる。

Claims (15)

  1. 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キット;
    (A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、
    (B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜。
  2. 生分解性基材層が、コラーゲン、ポリ乳酸またはポリグリコール酸を含む請求項1に記載の癒着防止用キット。
  3. 生分解性基材層が、織物、不織布、シートまたはスポンジで構成された請求項1に記載の癒着防止用キット。
  4. 生分解性基材層が、コラーゲンの不織布である請求項1に記載の癒着防止用キット。
  5. 癒着防止層が、ヒアルロン酸、コラーゲンまたはゼラチンを含む請求項1に記載の癒着防止用キット。
  6. 癒着防止層が、シートまたはスポンジで構成された請求項1に記載の癒着防止用キット。
  7. 癒着防止層が、コラーゲンおよびヒアルロン酸の混合物のスポンジである請求項1に記載の癒着防止用キット。
  8. (B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜を含む癒着防止用キットの製造方法であって、該生分解性基材層の周辺部を膜面法線方向に分岐させることを特徴とする癒着癒着防止用キットの製造方法。
  9. 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の膜を作製し、該膜2枚を、該生分解性基材層が対向するように重ね、中央部のみを接着または縫製することを特徴とする請求項8に記載の癒着癒着防止用キットの製造方法。
  10. 2つの生分解性基材層を重ねあわせ、中央部を接着または縫製した後、該生分解性基材層の外表面に癒着防止層を設けることを特徴とする請求項8に記載の癒着癒着防止用キットの製造方法。
  11. 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キットを用いて、該損傷または欠損した組織と、該損傷または欠損した組織の周辺に位置する周辺組織との癒着を防止することを特徴とする癒着防止方法;
    (A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層の第2の膜、
    (B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜。
  12. 組織が、心膜、胸膜、横隔膜、脳硬膜、胃、食道または消化器官である請求項11に記載の癒着防止方法。
  13. 組織が心膜であり、周辺組織が心臓である請求項11に記載の癒着防止方法。
  14. 損傷または欠損した組織と、周辺組織を、少なくとも癒着防止層で隔てることを特徴とする請求項11に記載の癒着防止方法。
  15. 以下の(A)または(B)を含む癒着防止用キットの使用;
    (A) 生分解性基材層および癒着防止層をそれぞれ最外面に設けた少なくとも2層の第1の膜と、最外面に癒着防止層を設けた少なくとも1層からなる第2の膜、
    (B) 生分解性基材層および癒着防止層を含む膜であって、該膜の最外面は癒着防止層であり、該膜に組織挟持部を設けた癒着防止膜。
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