JP5143396B2 - 癒着防止材 - Google Patents
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Description
このような状況で、本発明では(A)癒着を低減させる、(B)生体適合性に優れ、異物反応が少ない、(C)取り扱い性に優れる、(D)製造方法が容易である、(E)生体吸収性である、(F)抗菌性を有する、の6つの条件を同時に満たすことを、鋭意検討した結果、以下の結果に詳記する発明を完成させたものである。
前記内層(2)は、乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの共重合体より形成し、
当該共重合のモル比は、ポリL−乳酸/ポリグリコール酸/ポリε−カプロラクトン=60〜80/5〜15/15〜25であり、
前記内層(2)の両側に配置した前記外層(3、4)は、プルランにより形成し、
前記プルランの10重量%水溶液粘度は、50〜250mm 2 /sであり、
当該プルランに、ニューキノロン系の抗菌剤を混合し、
前記乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの共重合体よりなる内層(2)と、前記ニューキノロン系の抗菌剤を混合したプルランによりなる外層(3、4)の各層を、シート状三層構造の複合マトリクッスに形成し、
当該複合マトリクッス全体の厚みを、0.01mm〜5mmに形成した、
癒着防止材(1)を提供する。
本発明の癒着防止材は、多糖類、脂肪族エステル及び薬剤の複合マトリックスで形成された癒着防止材に関する。
本発明は癒着防止材を形成する複合マトリックスの一成分として、多糖類を含有する。多糖類は、天然多糖類及び/又はこれらの誘導体などを含む。なおこれら多糖類のなかで、好適な多糖類としては、水溶性であり、また含水時に増粘作用を有するものが好適である。例えばプルラン及び/又はプルラン誘導体が好適である。
これら多糖類の増粘作用としては、10重量%水溶液の粘度が50〜250mm2/sであることが好ましい。50mm2/s未満であると増粘作用が弱すぎ、臓器に密着した際に、臓器との間に十分な表面張力を有することなく密着性が乏しい。また、250mm2/sを超えると、臓器表面の体液に馴染むのみ時間がかかるために、結果として表面密着性は低くなる。
また患部へ適応した際、異物反応を起こさぬよう、生体適合性を有することが必要である。さらに癒着防止材の形状によるところであるが、目的とする複合マトリックスの形状に加工可能な材料であることが必要である。さらには、その形状に加工したときの、耐屈曲疲労性や衝撃強さで表される耐割れ性は優れているほうがよい。
また本発明は癒着防止材を形成する複合マトリックスの一成分として、脂肪族エステルを含有する。脂肪族エステルは脂肪族のポリエステルであることが望ましい。目的とする癒着防止材の形状に成形できることも重要である。脂肪族のポリエステルとしては、生体内分解吸収性高分子が使用される。生体内分解吸収性高分子とは、生体内で分解吸収され、分解吸収の段階においては、加水分解や酵素分解されて最終的には代謝されて生体内より排出される高分子である。このような脂肪族のポリエステルであるところの分解吸収性高分子は、特に限定するものではないが、例えば生体内で加水分解ないし吸収される、乳酸、グリコール酸、ε−カプロラクトン等の脂肪族のポリエステルが好適である。これらの脂肪族ポリエステルの中で、3種程度の共重合させたものが好適である。脂肪族のポリエステル化合物としては、乳酸、グリコール酸などを、それぞれを重合単位として、単独重合や共重合が可能であり、且つ共重合単位で分解吸収速度や物性が異なるためで、それぞれの共重合比、分子量での分解吸収性や物性を制御可能であるために好適である。
この共重合体では、ポリ乳酸の比率で物性をコントロールしているが、60mol%未満では強度が不足し、縫合に耐えられないし、80mol%を超えると、剛性が高くなりすぎて可とう性が失われる。また、グリコール酸の比率は、分解性を制御している。分解性の制御はポリ乳酸との共重合比率によっても変わるが、ポリ乳酸の共重合比率が60〜80のときは概ね、ポリグリコール酸の比率は5〜15mol%が好ましい。5mol%未満では、分解期間が長くなりすぎる可能性があり、速やかに生体内で分解されないために好ましくない。ε−カプロラクトンの比率は、可とう性など柔軟性を制御している。また、ε‐カプロラクトンの比率が、15mol%未満では柔軟性が不足し、25mol%を超えると柔軟性を得ることはできるが、分解吸収性が遅くなり、また強度も低くなりやすい。いずれにしても3成分のmol%の比率が大きく物性に関わることとなるが、好適には前記に示した、ポリL−乳酸/ポリグリコール酸/ポリε−カプロラクトン=60〜80/5〜15/15〜25の間にあることが好ましい。
本発明は癒着防止材を形成する複合マトリックスの一成分として、薬剤を含有する。癒着防止材に使用する薬剤としては、いかなるものにも限定されるものではない。癒着防止材は消化器官への適応症例が多く、消化器官には常在菌の存在が知られている。常在菌は、例えば腸管の吻合部を介して、腹腔内に拡散し、感染症を引き起こし、患部の治癒を遅くするとともに、重篤な場合は、敗血症などの生命の危機を引き起こす可能性がある。
そのようなことから本発明における癒着防止材への適応は抗菌剤が好ましく、さらにその中では広範な抗菌スペクトルを有する、ニューキノロン系の抗菌剤が好ましい。
さらには、ニューキノロン系の抗菌剤には、スパルフロキサシン、エンロフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、エノキサシン、シプロフロキサシン、ロメフロキサシン、トスフロキサシン、フレロキサシン、レボフロキサシン又はこれらの混合物などがあるが、その中でも好適なものはノルフロキサシンである。
本発明の癒着防止材の形状としては、上記3成分からなる複合マトリックスであればいかなる形状であっても許容されるが、複合マトリックスを利用するに当たっては、層状(シート状ともいう)であることが好適である。また、複合マトリックスの複合化に関しては、組み合わせたそれぞれの性能を発揮するため、本発明の最良の実施形態では層状の構造である。詳しくは、脂肪族エステルと多糖類の層がそれぞれ存在し、機能を発現できるようにした。さらに詳述すれば、図1に例示するように、内層2(中間層)に脂肪族エステルの層を形成し、その両側の外層3、4に多糖類の層を形成して、三層構造としたものである。
薬剤成分は薬剤の効能や目的とする効果によって、考慮するべきであるが、上記の抗菌剤の場合、外層3、4の多糖類に含有(混合)させることが望ましい。
更に、それらの三層構造のシートの全体の厚みは、内層の脂肪族エステルの物性にもよるが、厚みは、0.1から5mm、好ましくは0.2mm以下である。薄膜であれば、生体内に導入した際、臓器と臓器の間を想定するが、そもそも間隙などない腹腔内に入れるので、その構造は薄膜のほうが好都合である。
(共重合体からなる内層の作製)
重量平均分子量が11万の乳酸/グリコール酸/カプロラクトンの共重合体をホットプレスにて0.035mmに成形し内層を得た。乳酸/グリコール酸/カプロラクトンの共重合体の共重合比は表1に記載の3種類を用いた。
(多糖類からなる外層の作製)
多糖類1.5%水溶液を作製し、その多糖類量に対して0.3重量%になるようにノルフロキサシンを添加し、加熱し溶解させた。その水溶液25mLを約40cm2に垂涎し、50℃のオーブン中で乾燥させて、外層となるキャストフィルムを得た。多糖類は、表1及び表2に記載の4種類を用いた。
前記内層の両面に外層を積層し、ホットプレスによって圧着し、3層構造の複合マトリックスを作製した。複合マトリックスは、表2の共重合体と多糖類の組み合わせによって、計9種類作製した。前記3層構造、3成分からなる複合マトリックスを5cm×5cm、厚さ0.1mmに切り出して、実験用のサンプルを作製した。
(動物実験)
ラットの盲腸の一部と、腹壁を損傷させ、その間に複合マトリックス(2cm×2cm)を挿入した。2週間後、4週間後に開腹し目視により癒着の程度を確認した(各5症例)。その際、手術における取り扱い性の良し悪しを、医師に確認した。
実施例のNO1は、実使用に問題はなかった。
実施例のNO2は、実使用に問題はなかった(膜の色は、淡黄色)
比較例のNO3は、適応した際周辺組織に異物反応を生じた。製造時にキャストフィルムで厚みの均一な薄膜を作製するのが困難であった。
比較例のNO4、15は、製造時に多糖類の薄膜を作製するのが困難であり、作製した薄膜は脆かった。
比較例のNO5、8、11は、多糖類を使用していないので臓器との密着性が乏しく、癒着を防止するまで臓器間に留まることが出来ず、癒着を軽減する性能が乏しかった。
比較例のNO6、7、8は、3ヵ月後の分解吸収性が乏しかった。また、膜が柔軟すぎて、製造上、煩雑であった。
比較例のNO9、10、11は、3ヵ月後の分解吸収性が乏しかった。また膜が硬くなりすぎて臓器の曲線部への適応が困難であった。
比較例のNO12、13、14、15は、脂肪族エステルを使用していないため、臓器間に長時間依存することができず、癒着を低減する性能が乏しかった。
(実験用サンプルの作製)
実施例1と同様に、本発明の実施例のサンプルとして、3層構造からなる複合マトリックス(20mm×20mm、厚さ0.1mm)を作製した。なお抗菌剤(ノルフロキサシン)の添加量を、多糖類に対して重量比0.3重量%(サンプルNO16)と3重量%(サンプルNO17)のものを二種類作製した。比較例のサンプルとして、カルボキシメチルセルロースとヒアルロン酸ナトリウムのみからなるキャスト膜(20mm×20mm、厚さ0.07mm、抗菌剤の添加なし)を二種類作製した。それぞれサンプルNO18、NO19。
ラットを開腹し大腸より便じゅうを採取した。大腸菌のみを分離培養し増量させた後、菌数を109CFU/mlの溶液を作成した。ラットを開腹し、正中創直下にサンプルNO16、17(実施例)(20×20mm)、サンプルNO18、19(比較例)(20mm×20mm)を留置し、大腸菌浮遊液1ml滴下し、縫合閉鎖した。3日後にそれぞれのラットの腹壁を綿棒で擦過し、生存率を確認した。綿棒より採取された標本を白金耳により、徐々に希釈してはん種し培養してディスクのコロニーの状態を肉眼的に確認し細菌を測定した。結果を表4に示す。
2 内層
3、4 外層
Claims (1)
- 内層(2)の両側に、外層(3、4)を積層し、
前記内層(2)は、乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの共重合体より形成し、
当該共重合のモル比は、ポリL−乳酸/ポリグリコール酸/ポリε−カプロラクトン=60〜80/5〜15/15〜25であり、
前記内層(2)の両側に配置した前記外層(3、4)は、プルランにより形成し、
前記プルランの10重量%水溶液粘度は、50〜250mm 2 /sであり、
当該プルランに、ニューキノロン系の抗菌剤を混合し、
前記乳酸、グリコール酸及びε−カプロラクトンの共重合体よりなる内層(2)と、前記ニューキノロン系の抗菌剤を混合したプルランによりなる外層(3、4)の各層を、シート状三層構造の複合マトリクッスに形成し、
当該複合マトリクッス全体の厚みを、0.01mm〜5mmに形成した、
ことを特徴とする癒着防止材(1)。
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