JPWO2005092557A1 - 摩擦肉盛ロッド、摩擦肉盛方法、金属積層板及び金属積層板の製造方法 - Google Patents

摩擦肉盛ロッド、摩擦肉盛方法、金属積層板及び金属積層板の製造方法 Download PDF

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Abstract

中空の棒状物である摩擦肉盛ロッド、およびこの摩擦肉盛ロッドを利用することによって、摩擦肉盛の幅や厚さを均一に行うことができる摩擦肉盛方法である。また、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理して、金属積層板を得る方法である。

Description

本発明は、摩擦肉盛ロッド、摩擦肉盛方法、金属積層板及び金属積層板の製造方法に関するものである。
従来、金属部材の接合方法として、接合対象部材をつき合わせた状態で回転運動をさせることにより、その摩擦面に発生する摩擦熱を利用する加熱・加圧による接合法が広く知られている。また、異種金属を溶接する際に、金属の母材を考慮して溶接材を肉盛して溶接することも知られている。この場合に溶接部分に対して摩擦肉盛ロッドを回転した状態で接触させて、摩擦肉盛を形成することも行われる。この方法により工具の表面改質も行われ、低コストで熱歪も少ないとされている(特許文献1 特開平9−262688号公報)。
本発明者らは、アルミニウム又はアルミニウム合金に積層する金属板の表面に、アルミニウム又はアルミニウム合金を摩擦肉盛することにより肉盛材を形成し、金属板と接合され、この肉盛材を切削加工して厚さを一定としたアルミニウム積層板又はアルミニウム合金積層板を、圧延加工することによるアルミニウム積層板又はアルミニウム合金積層板の発明を行った(特許文献2 特開2003−311315号公報)。
摩擦肉盛層の形成には際しては、アルミニウム製品の表面に溶射を施し、生成された溶射皮膜層に対して摩擦肉盛を行い硬質の肉盛層を形成することも行われている(特許文献3 特開10−15675号公報)。
平らな面を有する被肉盛材に対して摩擦肉盛を行う場合には、肉盛幅は摩擦肉盛用ロッドのロッド径より大きくなる。また、肉盛の高さも一定化しないなどの問題点が有る。このような場合に溝を設け、摩擦肉盛ロッドのロッド径が溝の溝幅より大きい摩擦肉盛ロッドを用いることも行われる(特許文献4 特開2000−117464、特許文献5 特開2001−138070)。また、チタン棒又はチタン合金棒を用いて摩擦圧接による接合部の強度向上と高信頼性を得るなどの点からチタン棒又はチタン合金棒の棒径を限定することなども行われている(特許文献6 特開2003−1424)。
摩擦肉盛法は、摩擦熱を利用した固相表面改質技術であり、素材を溶融せずに希釈の少ない高速成膜を可能とするものであり、厚膜層の形成も容易に行なうことができる方法であり、本発明者らも良好な肉盛法及び肉盛材の開発を行なってきた〔非特許文献1 軽金属学会第98回春期大会講演概要、(2000)、283〕。
しかしながら、摩擦肉盛を行なうにあたって、摩擦肉盛材が被肉盛材に対してできるだけ効率よく均等に付着することができるようにするために、摩擦肉盛材の構造や形状をどのようなものとするかについては、まだ、十分に検討されていない状態にある。このような研究の成果に裏付けられた摩擦肉盛材の構造や形状の開発が望まれている。又、摩擦肉盛の幅や厚さ均一に行うことができれば、摩擦肉盛を利用する上で有効に作用するし、また摩擦肉盛を行った後の次の処理,例えば圧延処理を良好に行うことができることとなる。
このようなことから,摩擦肉盛の幅や厚さ均一に行うことができる摩擦肉盛法の開発が望まれている。
本願の発明に関連する先行技術文献としては次のようなものがあり、これは参照して本願明細書中に取り込まれる。
特開平9−262688号公報 特開2003−311315号公報 特開10−15675号公報 特開2000−117464号公報 特開2001−138070号公報 特開2003−1424号公報 軽金属学会第98回春期大会講演概要、(2000)、283頁
本発明の課題は、新規な摩擦肉盛ロッド及びこれを用いた新規な摩擦肉盛方法並びに新規な摩擦肉盛ロッドを用いた金属積層板及び金属積層板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、かって、パイプと板の摩擦圧接について、その経過を観察した。そのときの結果によると、継手のバリはパイプのみから発生し、板側に殆ど変形は認められなかった。バリは、パイプ同士の圧接時と同様に内外に排出され、内側のバリは外側のバリに比較して大きく、内外のバリはともに摩擦時間が長くなるにつれて大きくなる傾向があることを見出した(軽金属 41巻、12月号(1991)、810頁)。これらの知見は、摩擦圧接に関するものであり、摩擦肉盛とは、その操作態様においては相違しており、この結果からは、摩擦肉盛に中空状のロッドを用いた場合にどのような結果が得られるのかということは、判断することはできない。
従来、摩擦肉盛ロッドは中実の円柱状のものを用いてきた。本発明者らは、前記課題について研究し、金属板の表面に摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて、摩擦肉盛する方法において、これを中空の棒状とし、この摩擦肉盛ロッドを用いると、意外にも、均一に、又、薄い状態で、かつ無駄がなく、金属板の表面に摩擦肉盛することができること、又、中空部分では、摩擦肉盛により巻き込まれた肉盛材が再び摩擦肉盛材として使用される結果、無駄がない肉盛の形成に役立っていることを見出した。
このように良好な結果が得られることは、本発明者らの前記知見に照らしてみても、意外性のあることであった。
この新たに見出したことを利用すると、従来の摩擦肉盛を更に効果的に行うことができる。1枚の金属材料からなる板材に、摩擦肉盛する場合に用いる摩擦肉盛ロッドは前記板材と同じ金属材料を用いることができるし、又、異なる金属材料を用いることができる。この金属板材の表面に摩擦肉盛する方法を、摩擦肉盛を利用して金属面や高圧処理装置や反応装置の補修方法として採用することができる。
また、この摩擦肉盛された金属板を、熱間圧延して金属積層板製造することができる。このようにして得られる金属積層板は、肉盛部及び基材部ともに繊細な組織を示し、肉盛部中央は、圧延前の肉盛層厚さの相違により金属積層板に占める肉盛部厚さに差が認められ、圧延前後の肉盛層と基材の厚さの比は、ほぼ同等であることを確認した。金属板に積層する金属板の接合面が密着しており、組織の乱れもなく、良好な接合手段であることを確認した。金属積層板の引張試験の結果、金属積層板のn値、塑性ひずみ比r及び耳率の結果も良好な結果であり、十分に満足できる結果であった。これらの結果から、本発明で得られる金属積層板は、固有の性質を付加することができる。即ち、金属積層板の表面と裏面を相違する金属の特性を付与することができる。その際に表面となる金属板と裏面となる金属板の厚さを適宜調節することができる。このことを利用して、表面に薄くて硬い表面層を形成組し、その裏面に厚くて軟質の裏面層を形成することができる。例えば、ジョラルミンなどのアルミニウム合金からなる固くて薄い表面層を形成し、その裏面に軟質で厚いアルミニウム層からなる金属積層板を形成することができる。また、材料特性の相違により、色や光の反射率の相違した積層板を製造することができる。また、多層金属板を製造することにより、中間部に表面や裏面金属板とは相違する金属板を積層することにより、より複雑な特性を有する金属板を製造することができる。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)中空の棒状物であることを特徴とする摩擦肉盛ロッド。
(2)金属板の表面に摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛する方法において、(1)記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを用いて金属板の表面に金属を摩擦肉盛することを特徴とする摩擦肉盛方法。
(3)金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛し、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理して得られることを特徴とする金属積層板。
(4)金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛し、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理することを特徴とする金属積層板の製造方法。
第1図は、パイプとロッドの摩擦肉盛の結果を示す図である。
第2図は、金属積層板の肉盛部及び基材部の状態を示す図である。
第3図は、金属積層板の引張試験結果を示す図である。
第4図は、金属積層板のn値を示す図である。
第5図は、金属積層板のr値を示す図である。
第6図は、金属積層板の限界深絞り比とブランク押え荷重の関係について示す図である。
第7図は、基材、一層の積層の場合、多層積層板についての耳率の比較を示す図である。
本発明では、金属板の表面に摩擦肉盛する方法である。
摩擦肉盛する材料としては、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金などの摩擦肉盛しようとする材料が適宜選択される。これらの摩擦肉盛しようとする材料に対して金属板としては、アルミニウム板、アルミニウム合金板、鋼板、ステンレス板材、銅板などを適宜使用することができる。
この板材は、金属板から適宜選ばれる。例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金は、軽量、或いは腐食に対して強いという工業材料として好ましい特性を有しているが、強度という点では使用する意図に反して特性が十分でないという場合には、例えば、ステンレス鋼板を板材とすることにより、アルミニウムやアルミニウム合金の持つ特性にアルミニウムが有していない強靱な特性や耐食性などの特性を付与することができる。
このように、アルミニウム、アルミニウム合金が有していない特性に着目し、板材として用いることにより、アルミニウムやアルミニウム合金が有していない、望ましい特性を付与することを可能とすることができる。
本発明では、前記のように、アルミニウム或いはアルミニウム合金、チタン或いはチタン合金に対して積層したい金属板を選択し、その金属板の表面にアルミニウム又はアルミニウム合金の摩擦肉盛を行う。
本発明では、従来板材の表面に肉盛を行うに際し、広範囲の板材の表面に肉盛を行う必要があり、そのためには、摩擦肉盛を行うこととし、その摩擦肉盛の操作は、以下のようにして行なう。
本発明では、摩擦肉盛ロッドとして中空棒状物を用いる。棒状物とは、丸棒、角棒を意味する。丸棒や角棒は、その内側に中空部を有している。中空部の形状は、丸棒であれば円柱状となり、角棒であればそれと同じ形状の角柱状である。丸棒に対して中空部の形状部分を角形とすることも可能であるが、加工を考えると便利であるということができず、適当ではない。又、同様に角形に中空部として円柱状とすることも可能であるが適当ではない。丸棒の中空部である円柱部の形状について、円の径をどの程度のものを使用するかは、どの程度の幅の摩擦肉盛を行なうかを考慮して、適宜決定することができる。また、どの程度の肉厚とするかについては、肉盛をどの程度の厚さにするかなどを考慮して適宜決定することができる。
本発明者らの知見によれば、丸棒の中空部分の径が小さ過ぎる場合には、却って良好な結果を得ることができない。このようなことから、外径に対して、中空の内径としては、1/3以上は、必要であり、これ以下であると前記のような効果を期待できない。1/2以上でその効果を期待することができる。上限は、中空肉盛ロッドが肉盛を行うことに耐えることができる強度を維持できる範囲であれば差しつけない。外径に対して、4/5程度であれば、十分に可能である。
中空棒状からなる摩擦肉盛ロッドを製造するには、鋳型により成形する方法、円管状に折り曲げて端部の溶接を行なう、中をくりぬくなどの公知の方法が採用される。
摩擦肉盛するには、金属板に肉盛しようとする中空棒状金属である回転部材を金属板と接触させ、回転部材の回転により摩擦熱を発生させると同時に肉盛しようとする金属を溶融状態とし、金属板表面に肉盛を行う。回転には、特定の回転操作を行なうことができるものであれば、使用することができる。
使用する金属を回転部材として、回転軸に固定される。回転軸はローターに固定され、ステーターの励磁により高速回転が得られるようになっている。回転部材は、使用時に押し下げて使用することができる。
回転部材の大きさを変化させることにより接合の面積を調節することができる。回転部材の直径が大きなものを用いれば、大きな接合面積のものを得ることができる。このようなことから、回転部材の大きさは、接合の面積などを考慮して適宜決定することができる。
板材の摩擦肉盛を行なうに際しては、回転部材を板材の表面に接触させ、回転部材を所要の速度で回転させ、その際に発生する摩擦による発生熱を利用するものである。摩擦により発生する熱量は、板材と回転部材との摩擦係数、回転速度、及び回転部材を板材に押し付ける時の圧力の積として与えられる。
回転部材の回転速度は、一般的には、1000〜6000rpm程度の範囲のものである。回転部材が板材を押さえつける圧力は、0.5〜5kg/mm程度であれば、十分である。
摩擦肉盛にはヒーテイングを行うことが有効である。この際には中空状円柱と金属を予め予熱することが有効である。ヒーテイング温度は、融点以下の温度に加熱することが行われ、アルミニウム或いはアルミニウム合金積層板を作製する場合には、約450〜550℃程度とすることが効果的である。
本発明では、1枚の金属板の上に更に1枚の金属板を貼り付ける場合、更に、2枚の金属板の上に更に1枚の金属板を貼り付ける場合には、貼りつけようとする板材の表面の全面に摩擦肉盛を行うことが重要である。
摩擦肉盛をどの程度の厚さに行うかは、求める積層板材の厚さを考慮して適宜定めることができる。
はじめに、摩擦肉盛を行った後、その表面に他の金属による摩擦肉盛を行うこともできる。このようにすると、三層或いはそれ以上の積層板を得ることもできる。その結果、より高度な特性を有する複合材を製造することが可能となる。
得られる金属板の厚さは、求める用途に応じて定め、その厚さにするために圧延装置の操作条件を定めるか、圧延装置の前までに、どの程度の厚さとするかを定め、その結果に応じて前記の摩擦肉盛をどの程度とするかが定められる。
通常、金属板材として、10mm以下、さらには5mm以下のものが用いられる。薄さの限界は、肉盛加工ができるものであれば、問題ない。1mm程度の厚さであっても差し支えない。この厚さに応じて、圧延装置の前までに、どの程度の厚さとするかが検討される。さらに、摩擦肉盛をどの程度とするかが定められる。
このようにして摩擦肉盛を行なった後に、必要に応じて、肉盛開始部と終了部を切除し、特定の厚さになるように切削加工する。この工程は、摩擦肉盛を薄く均一にできることから、かならず必要というものではない。その際に処理する肉盛その厚さは適宜定める。次に、熱間圧延を行なうことにより、目的とする厚さの金属積層板を得ることができる。厚さは1mm以下、使用する目的に応じて0.5mm程度のものも得ることができる。このようにして摩擦肉盛を行なった後に、肉盛開始部と終了部を切除し、特定の厚さになるように切削加工する。その厚さは適宜定める。次に、熱間圧延を行なうことにより、目的とする厚さの金属積層板を得ることができる。厚さは1mm以下、使用する目的に応じて0.5mm程度のものも得ることができる。
このようにして得られる金属積層板は、肉盛部及び基材部ともに繊細な組織を示し、肉盛部中央は、圧延前の肉盛層厚さの相違により金属積層板に占める肉盛部厚さに差が認められ、圧延前後の肉盛層と基材の厚さの比は、ほぼ同等であることを確認した。金属板に積層する金属板の接合面が密着しており、組織の乱れもなく、良好な接合手段であることを確認した。金属積層板の引張試験の結果、金属積層板のn値、塑性ひずみ比r及び耳率の結果も良好な結果であり、十分に満足できる結果であった。これらの結果から、本発明で得られる金属積層板は、固有の性質を付加することができる。即ち、金属積層板の表面と裏面を相違する金属の特性を付与することができる。その際に表面となる金属板と裏面となる金属板の厚さを適宜調節することができる。
例えば、このようにして製造されるアルミニウム積層板、アルミニウムとアルミニウム合金からなる積層板は、接着強度は、他の製法による金属積層板の接着強度と比較して、十分に強度を有するものであり、また、表面に酸化皮膜の形成などもなく、又、圧延中及び圧延後ともに、肉盛層と基材部の剥離は存在しないし、腐食の可能性も存在しないものである。また、両面には、割れや、さけ傷等による欠如は存在しない。本発明のアルミニウム、アルミニウム合金板積層板は、各種の工業用用途に対して、従来から知られている他の製法により得られる、アルミニウム、アルミニウム合金板積層板より、優れているものである。
なお、特願2004−089670明細書および特願2005−082087明細書に記載された内容を、本命最初に全て取り込む。
以下に実施例により、本発明の内容を、更に具体的に説明する。
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
肉盛金属として中空棒状物である市販の5052アルミニウムパイプ(直径27mm、中空内径18mm)を長さ112mmに切断したものを用いた。基材には、5052アルミニウム合金板(H34、板厚5mm)を幅50mm、長さ150mmに機械加工したものを用いた。摩擦肉盛には、NC制御全自動摩擦圧接機を使用した。
N=2500rpm、P=30MPa、f=13mm/sであった。
ヒーテイング工程として、パイプと板材基板が接触後、摩擦開始位置で3秒間、500℃程度に予熱した。その後、基材を固定したテーブルに送りを与えて、肉盛を行なった。
比較例として、市販の5052アルミニウム中実ロッド(直径20mm)を長さ108mmに切断したものを用いた。基材には、5052アルミニウム合金板(H34、板厚5mm)を幅50mm、長さ150mmに機械加工したものを用いた。
摩擦肉盛には、NC制御全自動摩擦圧接機を使用した。
ヒーテイング工程として、丸棒と板材基板が接触後、摩擦開始位置で3秒間、500℃程度に予熱した。その後、基材を固定したテーブルに送りを与えて、肉盛を行なった。
N=2500rpm、P=30MPa、f=13mm/sであった。
表面効率は、本発明のパイプは、55%、比較例の中実ロッドでは25%であった。
幅は、本発明のパイプによる幅は28mm、比較例の中実ロッドでは20mmであった。
長さは、本発明のパイプによる長さは111mm、比較例の中実ロッドでは108mmであった。
厚さは、本発明のパイプによる厚さは2mm、比較例の中実ロッドでは1mmであった。
結果を第1図に示した。本発明の場合について、幅広く均一に肉盛されている状態を観察することができた。
実施例2
基材に5052アルミニウム合金板(H34、板厚5mm)を輻50mm、長さ150mmに、肉盛金属として2017アルミニウム合金の中空状円柱(円柱直径20mm、中空内径7mm)を長さ100mmに機械加工した。各材料の機械的な性質は、以下の表1に示す通りである。
多層摩擦肉盛には、数値制御全自動摩擦圧接機を使用した。肉盛条件は以下の表2の条件とした。肉盛材は、肉盛金属の回転方向と肉盛方向が逆となる側(Retreating side:以下RSとも言う。これに対し反対側をAdvancing side:ASとも言う)に偏る傾向が認められた。このため、多層肉盛の第2層を肉盛金属の第2層を肉盛金属の中心をRS及びASにそれぞれ5、10、15mmの位相を与えて肉盛を行った(以後、RSに15mm位相を与えたものをG=RS15と記号により示す。)。
また、肉盛状態を一定にするために第1層を肉盛した後に、一旦室温まで冷却した後に第2層を肉盛した。肉盛後、一旦冷却した後に第2層を肉盛した。肉盛した後、熱間圧延(623K)によって最終板厚1mmの積層板を作成した。
得られた積層板の組織観察、引張試験(試験片は圧延方向に対し、0°、45°、90°方向より採取した)を行い、併せて加工硬化係数n値、塑性ひずみ比r値の測定及び深絞り試験を行った。
Figure 2005092557
Figure 2005092557
結果は以下の通りである。
このようにして得られる金属積層板の積層板は肉盛部及び基材部ともに繊細な組織を示し、肉盛部中央は、圧延前の肉盛層厚さの相違により金属積層板に占める肉盛部厚さに差が認められ、圧延前後の肉盛層と基材の厚さの比は、ほぼ同等であることを確認した(第2図)。図に示されているのは(a)単層の肉盛の場合、(b)第2層をRS及びASにそれぞれ位相0mmを与えて肉盛を行った場合、(c)第2層をRSに位相15mを与えて肉盛を行った場合を示している。摩擦肉盛による積層板の圧延が良好に行われたことを示している。
金属積層板の引張試験結果を、第3図に示した。金属積層板の引張試験は、0°及び90°方向の引張強さは、位相の大小による明瞭な差は認められなかった。しかし、45°方向は位相を大きくすることにより引張強さは向上した。伸びは45°方向で位相を大きくすることにより低下した。90°方向の伸びは位相をRSとすることにより向上し、位相をASとした場合は低下した。
第3図は、横軸にRS及びASに各々5、10、15mmの位相を与えた場合を示し,縦軸に引張試験(σ、左側)及び伸び(ε、右側)を表している。
金属積層板のn値を示す図は、第4図であり、金属積層板のr値を示す図は第5図である.比較のため単層肉盛材の積層板及び基材を同一圧延条件で圧延した圧延の測定結果を併記した。
第4図の横軸は、試験片は、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向から採取した試験片を示し、縦軸はn値を示している。Mase Metalは、基材のみの場合の結果であり、Monolayer depositは単層肉盛の場合の結果であり、G=0はRSの位相が0の場合であり、G=AS15は、ASの位相が15mmの場合であり、G=RS15は、RSの位相が15mmの各肉盛の結果を示している。
第5図の横軸は、第4図の場合と同じく、試験片は、圧延方向に対して0°、45°及び90°方向から採取した試験片を示し、縦軸はr値を示している。Mase Metalは、基材のみの場合の結果であり、Monolayer depositは単層肉盛の場合の結果であり、G=0はRSの位相が0の場合であり、G=AS15は、ASの位相が15mmの場合であり、G=RS15は、RSの位相が15mmの各肉盛の結果を示している。
加工硬化係数n値は、全条件で試験片採取方向による差は小さく、多層積層板では第2層の位相方向による差異は殆ど認められなかった。多層金属積層板のn値は、単層金属積層板に比較して高い値が得られたが、基材の圧延比に比較して若干低い値であった。
塑性ひずみ比rは、全条件で45°方向が高い値を示した。n値と同様に多層金属板のr値は単層金属積層板と基材の圧延比の中間値を示したが、その差は小さく、位相の方向による差異は認められなかった。このことにより多層肉盛する際に第2層の位相を大きくすることで肉盛層の面積拡大が可能となり省力化につながるものと考える。
図に示さないが、r値より算出される面内異方性Δr値は全条件で45°方向のr値が高いことにより負の値となり、位相の大小による明瞭な差は認められなかった。
深絞り試験によって得られる限界深絞り比(LDR:Limiting drawing ratio)とブランク押さえ荷重の関係を第6図に示した。横軸は限界深絞り比であり、縦軸はブランク押さえ荷重を示している。
Mase Metalは、基材のみの場合の結果であり、Monolayer depositは単層肉盛の場合の結果であり、G=0はRSの位相が0の場合であり、G=AS15は、ASの位相が15mmの場合であり、G=RS15は、RSの位相が15mmの各肉盛の結果を示している。
結果については、位相を与えないG=0を除く全ての条件で曲線は類似の傾向を示した。G=0において、ブランク押さえ荷重4.9kNでのLDRは低くなったが、ブランク押さえ荷重を大きくすることによりLDRが向上した。全ての積層板で母材とほぼ同等の成形性を有することが明らかになった。
深絞り試験による破断はポンチ肩部であり、破断箇所における肉盛部と基材部の剥離は観察されず、基材と完全に一体であった。得られた全てのカップ値にはn値、r値に対応して45°方向に耳の発生が認められた。
耳率について、基材のみの場合、一層のみ積層の場合、S及びASが15、0、15mmの位相を与えた積層の場合についての比較を、第7図は示している。深絞り試験によったカップの耳率の測定結果によると、n値、r値共に最高値を示した単層積層板の耳率が高く、基材の圧延板が最も低くなった。多層積層板の耳率には位相方向による明瞭な差異は認められなかった。以上の結果から、単一層を肉盛した場合であっても、この結果から得られる耳率であれば、積層板として十分に使用に耐えるものであり、また多層に肉盛した場合には、単一層を肉盛した場合比較して耳率を低くできるものであり、多層積層板として十分に使用に耐えるものである。
本発明によれば、中空の円柱状の摩擦肉盛ロッドを用いる結果、肉盛を均一に、かつ効率よく行うことができる。その結果、金属面や高圧処理装置や反応装置の補修方法として採用することができる。この摩擦肉盛された金属板を、熱間圧延して金属積層板製造することができる。このようにして得られる金属積層板は、肉盛部及び基材部ともに繊細な組織を示し、肉盛部中央は、圧延前の肉盛層厚さの相違により金属板の厚さの調節を適宜行うことができ、構成する金属板の特性を付与した金属積層板を製造することができる。
【0003】
本発明の課題は、新規な摩擦肉盛ロッド及びこれを用いた新規な摩擦肉盛方法並びに新規な摩擦肉盛ロッドを用いた金属積層板及び金属積層板の製造方法を提供することである。
本発明者らは、かって、パイプと板の摩擦圧接について、その経過を観察した。そのときの結果によると、継手のバリはパイプのみから発生し、板側に殆ど変形は認められなかった。バリは、パイプ同士の圧接時と同様に内外に排出され、内側のバリは外側のバリに比較して大きく、内外のバリはともに摩擦時間が長くなるにつれて大きくなる傾向があることを見出した(軽金属 41巻、12月号(1991)、810頁)。これらの知見は、摩擦圧接に関するものであり、摩擦肉盛とは、その操作態様においては相違しており、この結果からは、摩擦肉盛に中空状のロッドを用いた場合にどのような結果が得られるのかということは、判断することはできない。
従来、摩擦肉盛ロッドは中実の円柱状のものを用いてきた。本発明者らは、前記課題について研究し、金属板の表面に摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて、摩擦肉盛する方法において、これを中空の棒状とし、この摩擦肉盛ロッドを用いると、意外にも、均一に、又、薄い状態で、かつ無駄がなく、金属板の表面に摩擦肉盛することができること、又、中空部分では、摩擦肉盛により巻き込まれた肉盛材が再び摩擦肉盛材として使用される結果、無駄がない肉盛の形成に役立っていることを見出した。
このように良好な結果が得られることは、本発明者らの前記知見に照らしてみても、意外性のあることであった。
この新たに見出したことを利用すると、従来の摩擦肉盛を更に効果的に行うことができる。1枚の金属材料からなる板材に、摩擦肉盛する場合に用いる摩擦肉盛ロッドは前記板材と同じ金属材料を用いることができるし、又、異なる金属材料を用いることができる。この金属板材の表面に摩擦肉盛する方法を、摩擦肉盛を利用して金属面や高圧処理装置や反応装置の補修方法として採用することができる。
また、この摩擦肉盛された金属板を、熱間圧延して金属積層板を製造すること
【0004】
ができる。このようにして得られる金属積層板は、肉盛部及び基材部ともに繊細な組織を示し、肉盛部中央は、圧延前の肉盛層厚さの相違により金属積層板に占める肉盛部厚さに差が認められ、圧延前後の肉盛層と基材の厚さの比は、ほぼ同等であることを確認した。金属板に積層する金属板の接合面が密着しており、組織の乱れもなく、良好な接合手段であることを確認した。金属積層板の引張試験の結果、金属積層板のn値、塑性ひずみ比r及び耳率の結果も良好であり、十分に満足できる結果であった。これらの結果から、本発明で得られる金属積層板は、固有の性質を付加することができる。即ち、金属積層板の表面と裏面を相違する金属の特性を付与することができる。その際に表面となる金属板と裏面となる金属板の厚さを適宜調節することができる。このことを利用して、表面に薄くて硬い表面層を形成し、その裏面に厚くて軟質の裏面層を形成することができる。例えば、ジュラルミンなどのアルミニウム合金からなる固くて薄い表面層を形成し、その裏面に軟質で厚いアルミニウム層からなる金属積層板を形成することができる。また、材料特性の相違により、色や光の反射率の相違した積層板を製造することができる。また、多層金属板を製造することにより、中間部に表面や裏面金属板とは相違する金属板を積層することにより、より複雑な特性を有する金属板を製造することができる。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
1.中空の金属棒状物であることを特徴とする摩擦肉盛ロッド。
2.金属板の表面に摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛をする方法において、請求の範囲第1項記載の中空の金属棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを用いて金属板の表面に金属を摩擦肉盛することを特徴とする摩擦肉盛方法。
3.金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の金属棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に金属を摩擦肉盛して、摩擦肉盛された金属を圧延処理して得られることを特徴とする金属積層板。
4.金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の金属棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に金属を摩擦肉盛して、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理することを特徴とする金属積層板の製造方法。
【0006】
本発明では、従来板材の表面に肉盛を行うに際し、広範囲の板材の表面に肉盛を行う必要があり、そのためには、摩擦肉盛を行うこととし、その摩擦肉盛の操作は、以下のようにして行なう。
本発明では、摩擦肉盛ロッドとして中空棒状金属を用いる。棒状物とは、丸棒、角棒を意味する。丸棒や角棒は、その内側に中空部を有している。中空部の形状は、丸棒であれば円柱状となり、角棒であればそれと同じ形状の角柱状である。丸棒に対して中空部の形状部分を角形とすることも可能であるが、加工を考えると便利であるということができず、適当ではない。又、同様に角形に中空部として円柱状とすることも可能であるが適当ではない。丸棒の中空部である円柱部の形状について、円の径をどの程度のものを使用するかは、どの程度の幅の摩擦肉盛を行なうかを考慮して、適宜決定することができる。また、どの程度の肉厚とするかについては、肉盛をどの程度の厚さにするかなどを考慮して適宜決定することができる。
本発明者らの知見によれば、丸棒の中空部分の径が小さ過ぎる場合には、却って良好な結果を得ることができない。このようなことから、外径に対して、中空の内径としては、1/3以上は、必要であり、これ以下であると前記のような効果を期待できない。1/2以上でその効果を期待することができる。上限は、中空肉盛ロッドが肉盛を行うことに耐えることができる強度を維持できる範囲であれば差しつけない。外径に対して、4/5程度であれば、十分に可能である。
中空棒状からなる摩擦肉盛ロッドを製造するには、鋳型により成形する方法、円管状に折り曲げて端部の溶接を行なう、中をくりぬくなどの公知の方法が採用される。
摩擦肉盛するには、金属板に肉盛しようとする中空棒状金属である回転部材を金属板と接触させ、回転部材の回転により摩擦熱を発生させると同時に肉盛しようとする金属を溶融状態とし、金属板表面に肉盛を行う。回転には、特定の回転操作を行なうことができるものであれば、使用することができる。
使用する金属を回転部材として、回転軸に固定される。回転軸はローターに固定され、ステーターの励磁により高速回転が得られるようになっている。回転部材は、使用時に押し下げて使用することができる。
【0007】
回転部材の大きさを変化させることにより接合の面積を調節することができる。回転部材の直径が大きなものを用いれば、大きな接合面積のものを得ることができる。このようなことから、回転部材の大きさは、接合の面積などを考慮して適宜決定することができる。
板材の摩擦肉盛を行なうに際しては、回転部材を板材の表面に接触させ、回転部材を所要の速度で回転させ、その際に発生する摩擦による発生熱を利用するものである。摩擦により発生する熱量は、板材と回転部材との摩擦係数、回転速度、及び回転部材を板材に押し付ける時の圧力の積として与えられる。
回転部材の回転速度は、一般的には、1000〜6000rpm程度の範囲のものである。回転部材が板材を押さえつける圧力は、0.5〜5kg/mm程度であれば、十分である。
摩擦肉盛にはヒーテイングを行うことが有効である。この際には中空状円柱と金属を予め予熱することが有効である。ヒーテイング温度は、融点以下の温度に加熱することが行われ、アルミニウム或いはアルミニウム合金積層板を作製する場合には、約450〜550℃程度とすることが効果的である。
本発明では、1枚の金属板の上に更に1枚の金属板を貼り付ける場合、更に、2枚の金属板の上に更に1枚の金属板を貼り付ける場合には、貼りつけようとする板材の表面の全面に摩擦肉盛を行うことが重要である。
摩擦肉盛をどの程度の厚さに行うかは、求める積層板材の厚さを考慮して適宜定めることができる。
はじめに、摩擦肉盛を行った後、その表面に他の金属による摩擦肉盛を行うこともできる。このようにすると、三層或いはそれ以上の積層板を得ることもできる。その結果、より高度な特性を有する複合材を製造することが可能となる。
得られる金属板の厚さは、求める用途に応じて定め、その厚さにするために圧延装置の操作条件を定めるか、圧延装置の前までに、どの程度の厚さとするかを定め、その結果に応じて前記の摩擦肉盛をどの程度とするかが定められる。
通常、金属板材として、10mm以下、さらには5mm以下のものが用いられる。薄さの限界は、肉盛加工ができるものであれば、問題ない。1mm程度の厚さであっても差し支えない。この厚さに応じて、圧延装置の前までに、どの程度
【0009】
各種の工業用用途に対して、従来から知られている他の製法により得られる、アルミニウム、アルミニウム合金板積層板より、優れているものである。
なお、特願2004−089670明細書および特願2005−082087明細書に記載された内容を、本明細書に全て取り込む。
【実施例】
以下に実施例により、本発明の内容を、更に具体的に説明する。
本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
肉盛金属として中空棒状物である市販の5052アルミニウムパイプ(直径27mm、中空内径18mm)を長さ112mmに切断したものを用いた。基材には、5052アルミニウム合金板(H34、板厚5mm)を幅50mm、長さ150mmに機械加工したものを用いた。摩擦肉盛には、NC制御全自動摩擦圧接機を使用した。
N=2500rpm、P=30MPa、f=13mm/sであった。
ヒーテイング工程として、パイプと板材基板が接触後、摩擦開始位置で3秒間、500℃程度に予熱した。その後、基材を固定したテーブルに送りを与えて、肉盛を行なった。
比較例として、市販の5052アルミニウム中実ロッド(直径20mm)を長さ108mmに切断したものを用いた。基材には、5052アルミニウム合金板(H34、板厚5mm)を幅50mm、長さ150mmに機械加工したものを用いた。
摩擦肉盛には、NC制御全自動摩擦圧接機を使用した。
ヒーテイング工程として、丸棒と板材基板が接触後、摩擦開始位置で3秒間、500℃程度に予熱した。その後、基材を固定したテーブルに送りを与えて、肉盛を行なった。
N=2500rpm、P=30MPa、f=13mm/sであった。

Claims (4)

  1. 中空の棒状物であることを特徴とする摩擦肉盛ロッド。
  2. 金属板の表面に摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛する方法において、請求の範囲第1項記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを用いて金属板の表面に金属を摩擦肉盛することを特徴とする摩擦肉盛方法。
  3. 金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛し、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理して得られることを特徴とする金属積層板。
  4. 金属板の表面に請求の範囲第1項記載の中空の棒状物からなる摩擦肉盛ロッドを回転させた状態で接触させて金属板の表面に摩擦肉盛し、摩擦肉盛された金属表面を圧延処理することを特徴とする金属積層板の製造方法。
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