本発明は、光通信システム等において使用される光受信用前置増幅器に関する。
光通信システム等に用いられる光受信回路では、光ファイバからの光信号がフォトダイオードにより電流に変換された後、該電流が光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。光ファイバによる信号伝送距離が長い場合、ファイバ内での伝送損失が大きくなるため、フォトダイオードから光受信用前置増幅器に入力される電流信号は非常に微小な振幅の電流信号となる。逆に、光ファイバによる信号伝送距離が短い場合、ファイバ内での伝送損失が小さくなるため、フォトダイオードから光受信用前置増幅器に入力される電流信号は大きな振幅の電流信号となる。このように、光受信用前置増幅器に入力される電流信号は、小さな振幅から大きな振幅までの様々な振幅を持った電流信号となる。
従って、微小な信号を検出するために光受信用前置増幅器の電流電圧変換利得(トランスインピーダンス利得)を上げると、大きな信号が入力された時に出力電圧が飽和して波形が歪むので、正確に信号を検出することができなくなる。一方、出力電圧の飽和を低減するために電流電圧変換利得を下げると、微小信号が入力された時に十分に増幅することができないので、微小信号の検出が困難になる。
このような問題点を解決するために、特許文献1に開示された光受信用前置増幅器においては、反転増幅器の入出力端子間に接続された帰還抵抗(Rf)に並列にダイオードを接続している。これにより、帰還抵抗での電圧降下をクランプすることができるので、出力電圧の飽和を低減することができる。また、特許文献2に開示された光受信用前置増幅器においては、前記の帰還抵抗に並列にトランジスタを接続すると共に該トランジスタのインピーダンスを変調している。これにより、帰還抵抗値つまり電流電圧変換利得を変化させ、それによって出力電圧の飽和を防止している。
特開平03−060208号公報 特開平09−232877号公報
しかしながら、前述の従来技術においては、帰還抵抗の値を直接変調しているので、光受信用前置増幅器の動作が不安定になるという欠点がある。
具体的には、ワンポールシステムの反転増幅器を想定した場合、トランスインピーダンス型前置増幅器の伝達関数は次式のように表される。
ZT(S)=−ZT0/(1+2ζS/ωn+S2/ωn 2)
ここで、反転増幅器の伝達関数はA(S)=−A0/(1+S/ωh)である。また、低周波トランスインピーダンス利得はZT0=RfA0/(1+A0)である。また、ダンピング係数はζ=(1+CinRfωh)・ωn/(2・(1+A0)・ωh)である。また、トランスインピーダンス帯域はωn=(ωh・(1+A0)/CinRf)0.5=(1+CinRfωh)/2CinRfζである。尚、Cinは入力端子の全寄生容量であり、Rfは帰還抵抗であり、A0は反転増幅器の低周波利得であり、ωhは反転増幅器帯域である。
以上のように、従来の光受信用前置増幅器においては、過大電流の入力時に、帰還抵抗Rfに並列に接続されたトランジスタ又はダイオードの作用により帰還抵抗Rfが等価的に減少すると、ダンピング係数ζが減少するので、帰還量が増大する。これに伴いトランスインピーダンス帯域ωnが増大する一方、反転増幅器帯域ωhには変化がないので、ωnがωhに漸近することになる。しかしながら、安定した動作のためにはωh≫ωnであることが必要なため、ωnがωhに漸近するにしたがって、従来の光受信用前置増幅器の動作は不安定になり、最終的には出力電圧が発振してしまうことになる。
前記に鑑み、本発明は、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる光受信用前置増幅器を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る光受信用前置増幅器は、反転増幅器と、該反転増幅器の入出力端子間に接続された電流電圧変換素子とを備えた光受信用前置増幅器であって、反転増幅器は、反転増幅器の入力端子にゲートが接続された第1のトランジスタと、第1のトランジスタのドレインにソースが接続され且つゲートに所定の電圧が与えられた第2のトランジスタと、第2のトランジスタのドレインに接続された負荷とを有し、反転増幅器の入力端子と第2のトランジスタのソースとの間に接続された第3のトランジスタをさらに備えている。
本発明の光受信用前置増幅器によると、大電流の入力時には第3のトランジスタのゲート電圧を上昇させてそのインピーダンスを下げることにより、入力電流の一部が第3のトランジスタに流れるようになるので、その分だけ電流電圧変換素子に流れる電流が減少する。このため、出力電圧の飽和を抑制することができ、それによって入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
また、本発明の光受信用前置増幅器によると、従来構成のように、電流電圧変換素子に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタの作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に反転増幅器の開放利得を減少させるので、動作が不安定になることがない。
以上のように、本発明の光受信用前置増幅器によると、動作の安定性を保持しつつ、入力ダイナミックレンジの大幅な拡大が可能となる。言い換えると、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第2のトランジスタのゲートに与えられる所定の電圧(つまりゲート電圧)は、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように制御されることが好ましい。
このようにすると、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
また、この場合、第2のトランジスタのソースに反転入力端子が接続され、反転増幅器の入力端子に非反転入力端子が接続され、且つ第2のトランジスタのゲートに出力端子が接続された演算増幅器をさらに備えていると、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように第2のトランジスタのゲート電圧を確実に制御することができる。すなわち、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。また、演算増幅器を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
また、この場合、第2のトランジスタのソースに反転入力端子が接続され且つ第2のトランジスタのゲートに出力端子が接続された演算増幅器と、演算増幅器の非反転入力端子に出力端子が接続され且つ反転増幅器の入力端子電圧と同じ大きさの電圧を出力する電圧発生回路とをさらに備えていると、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように第2のトランジスタのゲート電圧を確実に制御することができる。すなわち、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。また、演算増幅器の入力端子を反転増幅器の入力端子に接続する必要がないので、光受信用前置増幅器の入力端子の寄生容量を増加させることなく、前述の効果を達成できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第3のトランジスタのゲートに接続された複数のスイッチよりなるスイッチ群と、スイッチ群を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源とをさらに備え、第3のトランジスタのゲートには、複数の電圧源のそれぞれの出力電圧の中からスイッチ群により選択された電圧が与えられることが好ましい。
このようにすると、スイッチ群を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源に第3のトランジスタのゲートを高速で接続することができるので、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第3のトランジスタは複数個あって、各第3のトランジスタのゲートに接続された複数のスイッチよりなるスイッチ群と、スイッチ群を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源とをさらに備え、各第3のトランジスタのゲートにはそれぞれ、複数の電圧源のそれぞれの出力電圧の中からスイッチ群により選択された電圧が与えられることが好ましい。
このようにすると、スイッチ群を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源に各第3のトランジスタのゲートを高速で接続することができるので、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、反転増幅器の出力端子に入力端子が接続され且つ該入力端子に入力される信号の振幅に応じた電圧を出力する振幅検出回路をさらに備え、振幅検出回路から出力された電圧が第3のトランジスタのゲートに与えられることが好ましい。
このようにすると、光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなるに従って、第3のトランジスタのゲート電圧が上昇してそのインピーダンスが減少するため、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量が大きくなる。これにより、光受信用前置増幅器の出力電圧の飽和が抑制されるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。また、振幅検出回路を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、前記のスイッチ群(第3のトランジスタのゲートと複数の電圧源との間に接続されたスイッチ群)を備えている場合、一方の入力端子に反転増幅器から出力された電圧が与えられ且つ他方の入力端子に所定の電圧が与えられた少なくとも1つのコンパレータよりなるコンパレータ群をさらに備え、コンパレータ群の比較結果に基づいてスイッチ群が制御されることが好ましい。このようにすると、光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなってコンパレータに与えられている所定の電圧を超えると、コンパレータの出力が反転するため、該出力結果に基づいてスイッチ群が第3のトランジスタのゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。このため、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができ、それにより、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、前記のスイッチ群(第3のトランジスタのゲートと複数の電圧源との間に接続されたスイッチ群)を備えている場合、反転増幅器の入力端子にソースが接続され且つ反転増幅器の出力端子にゲートが接続された第4のトランジスタと、第4のトランジスタのドレインに接続された他の電流電圧変換素子と、一方の入力端子に他の電流電圧変換素子に加えられた電圧が与えられ且つ他方の入力端子に所定の電圧が与えられた少なくとも1つのコンパレータよりなるコンパレータ群とをさらに備え、コンパレータ群の比較結果に基づいてスイッチ群が制御されることが好ましい。このようにすると、反転増幅器つまり光受信用前置増幅器への入力電流が大きくなって出力電圧が降下すると、第4のトランジスタがオンとなり、過剰な入力電流に比例した電流が他の電流電圧変換素子に流れることになる。また、これによって生じる他の電流電圧変換素子での電圧降下により、過剰な入力電流の大きさをより広い範囲でモニターすることができる。すなわち、他の電流電圧変換素子に加えられた電圧をコンパレータを用いて所定の電圧と比較し、その結果に基づいてスイッチ群が第3のトランジスタのゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。従って、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタはそれぞれバイポーラトランジスタであることが好ましい。
このようにすると、より広帯域の光受信用前置増幅器を実現できる。
本発明に係る光通信用光受信機は、本発明の光受信用前置増幅器を備えた光通信用光受信機を前提とし、光ファイバを通じて伝送されてきた光信号を電流信号に変換するフォトダイオードを備え、該電流信号が本発明の光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。
本発明の光通信用光受信機によると、本発明の光受信用前置増幅器を用いているため、バースト信号等の信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光通信用光受信機を実現できる。
本発明に係る光検出器は、本発明の光受信用前置増幅器を備えた光検出器であって、集光された光信号を電流信号に変換するフォトダイオードを備え、該電流信号が本発明の光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。
本発明の光検出器によると、本発明の光受信用前置増幅器を用いているため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光検出器を実現できる。
本発明によると、入力電流の一部を第3のトランジスタに流すことによって、電流電圧変換素子に流れる電流を低減できるため、出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。また、従来構成のように、電流電圧変換素子に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタの作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に反転増幅器の開放利得を減少させるので、動作が不安定になることがない。従って、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
図1は本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図2は従来構成の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図3は本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図4は本発明の第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図5は本発明の第2及び第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図6は本発明の第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図7は本発明の第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図8は本発明の第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図9は本発明の第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図10は本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図11は本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図12は本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成と、本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成とを組み合わせた光受信用前置増幅器の構成図である。
図13は本発明の第9の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図14は本発明の第10の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
符号の説明
1 反転増幅器
2 電流電圧変換素子
3 第1のトランジスタ
4 第2のトランジスタ
5 負荷
6 第3のトランジスタ
7 演算増幅器
8 電圧発生回路
9 スイッチ群
10 電圧源
11 振幅検出回路
12 コンパレータ
13 第4のトランジスタ
14 他の電流電圧変換素子
15 ソースフォロワ
16 フォトダイオード
17 光ファイバ
18 レンズ
19 光
20 光信号
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。
図1に示すように、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器は、反転増幅器1と、反転増幅器1の入力端子Inと出力端子Outとの間に接続された電流電圧変換素子(Rf)2とを備えたトランスインピーダンス型の前置増幅器である。ここで、電流電圧変換素子2としては例えば通常抵抗が用いられる。
本実施形態の第1の特徴は、反転増幅器1が、ソースがグランドに接続され且つゲートが反転増幅器1の入力端子Inに接続された第1のトランジスタ(M1)3と、該第1のトランジスタ3のドレインにソースが接続され且つゲートに所定の電圧Vbが与えられた第2のトランジスタ(M2)4と、該第2のトランジスタ4のドレインに接続された負荷5とを有することである。ここで、負荷5としては、例えば抵抗、又はダイオード接続されたトランジスタ(ドレインとゲートとが接続されたトランジスタ)が用いられる。ここで、第1のトランジスタ3、第2のトランジスタ4及び負荷5によってカスコード増幅器が構成されている。また、該カスコード増幅器の出力ノードの電圧、つまり第2のトランジスタ4のドレインの電圧は、ソースフォロワ15を通して反転増幅器1の出力端子Outに与えられている。
また、本実施形態の第2の特徴は、電流バイパス用トランジスタである第3のトランジスタ6が、反転増幅器1の入力端子Inと第2のトランジスタ4のソースとの間に接続されていることである。
以上のような本実施形態の構成においては、大電流の入力時に第3のトランジスタ6のゲート電圧Vctを上昇させてそのインピーダンスを下げることにより、入力電流I1の一部I3が第3のトランジスタ6に流れるようになるので、電流電圧変換素子2に流れる電流がI2=I1−I3と減少する。これにより、出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。しかも、本実施形態の構成によれば、従来構成のように、電流電圧変換素子2に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタ6の作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に前記のカスコード増幅器の利得(つまり反転増幅器1の開放利得A0)を減少させるので、動作が不安定になることがない。
従って、第1の実施形態によると、動作の安定性を保持しつつ、入力ダイナミックレンジの大幅な拡大が可能となる。言い換えると、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
図2は、従来構成の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示し、図3は、本実施形態の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す。図2に示すように、従来構成によると、出力電圧が完全に発振している一方、図3に示すように、本実施形態によると、安定した出力電圧波形が得られている。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図4は、第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図4において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施形態が第1の実施形態と異なっている点は、演算増幅器7を備えていることである。すなわち、第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に演算増幅器7が付加された構成を有している。ここで、演算増幅器7の反転入力端子は第2のトランジスタ4のソースに接続されている。また、演算増幅器7の非反転入力端子は反転増幅器1の入力端子Inに接続されている。さらに、演算増幅器7の出力端子は第2のトランジスタ4のゲートに接続されている。
以上のような本実施形態の構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しくなるように、第2のトランジスタ4のゲート電圧(Vb)が制御される。
ところで、第1の実施形態によれば、簡単な構成によって、動作の安定性を確保しつつ入力ダイナミックレンジを拡大することが可能であった。しかし、第1の実施形態においては、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが大きく異なる場合、出力電圧の振幅レベルが変化してしまうという問題点がある。具体的には、図3は、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが大きく異なっている状態で第1の実施形態の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合の出力電圧のシミュレーション結果を示している。図3に示すように、第1の実施形態によると、出力電圧レベルが変化している。
図5は、本実施形態の構成により反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しい状態を保ちながら第3のトランジスタ6のゲート電圧Vctを上昇させた場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す。図5に示すように、本実施形態によると、出力電圧レベルは変化せず、一定に保たれている。
以上に説明したように、第2の実施形態によると、第1の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、演算増幅器7を付加するという簡単な構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが一致するように第2のトランジスタ4のゲート電圧を制御できる。これにより、出力電圧レベルを一定に保持しつつ、安定動作と入力ダイナミックレンジの拡大とを同時に実現できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図6は、第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図6において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、第3の実施形態が第1の実施形態と異なっている点は、演算増幅器7及び電圧発生回路8を備えていることである。すなわち、第3の実施形態は、第1の実施形態の構成に演算増幅器7及び電圧発生回路8が付加された構成を有している。ここで、演算増幅器7の反転入力端子は第2のトランジスタ4のソースに接続されている。また、演算増幅器7の非反転入力端子は電圧発生回路8の出力端子に接続されている。また、演算増幅器7の出力端子は第2のトランジスタ4のゲートに接続されている。さらに、電圧発生回路8は、反転増幅器1の入力端子電圧と同じ大きさの電圧を出力する。
以上のような本実施形態の構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しくなるように、第2のトランジスタ4のゲート電圧(Vb)が制御される。
ところで、第2の実施形態によれば、演算増幅器7の入力端子が反転増幅器1の入力端子Inに接続されていたため、トランスインピーダンス型前置増幅器(光受信用前置増幅器)の入力端子の寄生容量が増加してしまうという問題点があった。ここで、既述したように、トランスインピーダンス帯域は、
ωn=(ωh・(1+A0)/CinRf)0.5
と表されるので、入力端子の寄生容量Cinの増加はトランスインピーダンス帯域の減少をもたらすものとなる。
それに対して、第3の実施形態によると、演算増幅器7の入力端子を反転増幅器1の入力端子Inに接続する必要がないため、トランスインピーダンス型前置増幅器の入力端子の寄生容量を増加させることなく、第2の実施形態と同等の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図7は、第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図7において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、第4の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、第3のトランジスタ6のゲートに接続された複数のスイッチ(SW1、SW2、・・・)よりなるスイッチ群9と、スイッチ群9を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源10とを備えていることである。すなわち、第4の実施形態は、第3の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10が付加された構成を有している。ここで、複数の電圧源10はそれぞれ異なる電圧V1、V2、・・・を出力している。また、第3のトランジスタ6のゲートには、複数の電圧源10の出力電圧の中からスイッチ群9により選択された電圧(例えば電圧V1)が与えられる。
第4の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、スイッチ群9を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源10に第3のトランジスタ6のゲートを高速で接続することができるため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、入力信号の振幅の急激な変化に応答して出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。
尚、第4の実施形態において、第3の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10を付加したが、これに代えて、第1又は第2の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第4の実施形態において、スイッチ群9の各スイッチに1つずつ電圧源10が接続された構成を用いたが、スイッチ群9と電圧源10との接続関係は特に限定されるものではない。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図8は、第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図8において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、第5の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、第3のトランジスタ6が複数個のトランジスタ(M3a、M3b、M3c、・・・)であって、各第3のトランジスタ6のゲートに接続された複数のスイッチ(SW1、SW2、SW3、・・・)よりなるスイッチ群9と、スイッチ群9を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源(本実施形態では2個の電圧源)10とを備えていることである。ここで、2個の電圧源10はそれぞれ異なる電圧V1及びV2を出力している。また、各第3のトランジスタ6のゲートには、2個の電圧源10の出力電圧V1及びV2の中からスイッチ群9により選択されたいずれかの電圧(V1又はV2)が与えられる。
第5の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、スイッチ群9を用いて、各第3のトランジスタ6のゲート電圧を2個の電圧源10の出力電圧V1又はV2に高速で切り替えることができる。このため、反転増幅器1の入力端子Inと第2のトランジスタ4のソースとの間のインピーダンスを高速に切り替えることができる。従って、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができるため、バースト信号等の振幅が急速に変化する入力信号に対しても、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
尚、第5の実施形態において、第3の実施形態の構成を前提として複数の第3のトランジスタ6、スイッチ群9及び複数の電圧源10を用いたが、これに代えて、第1又は第2の実施形態の構成を前提として複数の第3のトランジスタ6、スイッチ群9及び複数の電圧源10を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第5の実施形態において、複数の電圧源10の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。また、各第3のトランジスタ6にスイッチ群9のスイッチが1つずつ接続され且つ該各スイッチに複数の電圧源10が接続された構成を用いたが、第3のトランジスタ6とスイッチ群9との接続関係及びスイッチ群9と電圧源10との接続関係は特に限定されるものではない。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図9は、第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図9において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示すように、第6の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、振幅検出回路11を備えていることである。すなわち、第6の実施形態は、第3の実施形態の構成に振幅検出回路11が付加された構成を有している。ここで、振幅検出回路11は、入力信号の振幅に比例した電圧を出力する(本実施形態では、入力信号の振幅が増大するに伴い出力電圧が増大する振幅検出回路11を想定する)。また、振幅検出回路11の入力端子は反転増幅器1の出力端子Outに接続されていると共に、振幅検出回路11の出力端子は第3のトランジスタ6のゲートに接続されている。すなわち、振幅検出回路11から出力された電圧が第3のトランジスタ6のゲートに与えられる。
第6の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1の出力信号つまり光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなるに従って、振幅検出回路11により第3のトランジスタ6のゲート電圧が上昇してそのインピーダンスが減少するため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量(図1の電流I3の大きさ)が大きくなる。これにより、電流電圧変換素子2に流れる電流(図1の電流I2)が減少するため、光受信用前置増幅器の出力電圧の飽和が抑制されるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。また、振幅検出回路11を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図10は、第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図10において、図7に示す第4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10に示すように、第7の実施形態は、第4の実施形態の構成に、例えば2個のコンパレータ12よりなるコンパレータ群が付加された構成を有している。具体的には、各コンパレータ12の一方の入力端子は反転増幅器1の出力端子Outに接続されている。すなわち、各コンパレータ12の一方の入力端子には反転増幅器1から出力された電圧が与えられる。また、各コンパレータ12の他方の入力端子にはそれぞれ所定の電圧(互いに異なる電圧:例えばVr1及びVr2)が与えられる。さらに、スイッチ群9の動作は各コンパレータ12の比較結果に基づいて制御される。
第7の実施形態によると、第4の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1の出力信号つまり光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなって、いずれかのコンパレータ12に与えられている所定の電圧(Vr1又はVr2)を超えると、該コンパレータ12の出力が反転するため、該出力結果に基づいてスイッチ群9が第3のトランジスタ6のゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源10のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。このため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。従って、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
尚、第7の実施形態において、第4の実施形態の構成にコンパレータ12を付加したが、これに代えて、第5の実施形態の構成にコンパレータ12を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第7の実施形態において、コンパレータ12の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。
(第8の実施形態)
以下、本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図11は、第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図11において、図7に示す第4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11に示すように、第8の実施形態は、第4の実施形態の構成に、例えば2個のコンパレータ12よりなるコンパレータ群と、第4のトランジスタ(M4)13と、他の電流電圧変換素子14とが付加された構成を有している。ここで、他の電流電圧変換素子14としては、例えば抵抗が用いられる。具体的には、第4のトランジスタ13のソースが反転増幅器1の入力端子に接続されており、第4のトランジスタ13のゲートが反転増幅器1の出力端子に接続されており、第4のトランジスタ13のドレインが他の電流電圧変換素子14の一方の端子に接続されている。また、他の電流電圧変換素子14の他方の端子はグランドに接続されている。また、各コンパレータ12の一方の入力端子には他の電流電圧変換素子14に加えられた電圧が与えられると共に、各コンパレータ12の他方の入力端子にはそれぞれ所定の電圧(互いに異なる電圧:例えばVr3及びVr4)が与えられる。さらに、スイッチ群9の動作は各コンパレータ12の比較結果に基づいて制御される。
第8の実施形態によると、第4の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1つまり光受信用前置増幅器への入力電流が大きくなって出力電圧が降下すると、第4のトランジスタ13がオンとなり、過剰な入力電流に比例した電流が他の電流電圧変換素子14に流れることになる。また、これによって生じる他の電流電圧変換素子14での電圧降下により、過剰な入力電流の大きさをより広い範囲でモニターすることができる。従って、他の電流電圧変換素子14に加えられた電圧をコンパレータ12を用いて所定の電圧(Vr3又はVr4)と比較し、その結果に基づいてスイッチ群9が第3のトランジスタ6のゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源10のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。これにより、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができるため、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
尚、第8の実施形態において、第4の実施形態の構成にコンパレータ12、第4のトランジスタ13及び他の電流電圧変換素子14を付加したが、これに代えて、第5の実施形態の構成にコンパレータ12、第4のトランジスタ13及び他の電流電圧変換素子14を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第8の実施形態において、コンパレータ12の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。
また、図11に示す第8の実施形態の構成と、図10に示す第7の実施形態の構成とを組み合わせた構成(図12参照)を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第1〜第8の実施形態において、第1のトランジスタ3及び第2のトランジスタ4としてバイポーラトランジスタを用いてもよい。この場合、第1〜第8の実施形態の前述の各説明において、ゲートをベースに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタにそれぞれ置き換えて考えればよい。このようにすると、より広帯域の光受信用前置増幅器を実現できる。
(第9の実施形態)
以下、本発明の第9の実施形態に係る光通信用光受信機、具体的には、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いた光通信用光受信機について図面を参照しながら説明する。
図13は、第9の実施形態に係る光通信用光受信機の概略構成を示している。尚、図13において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の光通信用光受信機は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に加えて、光ファイバ17を通じて伝送されてきた光信号を電流信号に変換するフォトダイオード16を備えている。具体的には、図1に示す第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の入力端子にフォトダイオード16が接続されていると共に、フォトダイオード16と光ファイバ17とが結合されている。
第9の実施形態によると、フォトダイオード16からの電流信号が、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器により電圧信号に変換され且つ増幅されるので、バースト信号等の信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光通信用光受信機を実現できる。
尚、第9の実施形態において、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いたが、これに代えて、第2〜第8の実施形態のいずれかに係る光受信用前置増幅器を用いてもよい。
(第10の実施形態)
以下、本発明の第10の実施形態に係る光検出器、具体的には、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いた光検出器について図面を参照しながら説明する。
図14は、第10の実施形態に係る光検出器の概略構成を示している。尚、図14において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図14に示すように、本実施形態の光検出器は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に加えて、レンズ18によって光19が集光されてなる光信号20を電流信号に変換するフォトダイオード16を備えている。具体的には、図1に示す第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の入力端子にフォトダイオード16が接続されていると共に、フォトダイオード16とレンズ18とが結合されている。
第10の実施形態によると、フォトダイオード16からの電流信号が、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器により電圧信号に変換され且つ増幅されるので、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光検出器を実現できる。
尚、第10の実施形態において、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いたが、これに代えて、第2〜第8の実施形態のいずれかに係る光受信用前置増幅器を用いてもよい。
本発明は、光受信用前置増幅器に関し、光通信システム等に用いられる光受信回路に適用した場合に特に有用である。
本発明は、光通信システム等において使用される光受信用前置増幅器に関する。
光通信システム等に用いられる光受信回路では、光ファイバからの光信号がフォトダイオードにより電流に変換された後、該電流が光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。光ファイバによる信号伝送距離が長い場合、ファイバ内での伝送損失が大きくなるため、フォトダイオードから光受信用前置増幅器に入力される電流信号は非常に微小な振幅の電流信号となる。逆に、光ファイバによる信号伝送距離が短い場合、ファイバ内での伝送損失が小さくなるため、フォトダイオードから光受信用前置増幅器に入力される電流信号は大きな振幅の電流信号となる。このように、光受信用前置増幅器に入力される電流信号は、小さな振幅から大きな振幅までの様々な振幅を持った電流信号となる。
従って、微小な信号を検出するために光受信用前置増幅器の電流電圧変換利得(トランスインピーダンス利得)を上げると、大きな信号が入力された時に出力電圧が飽和して波形が歪むので、正確に信号を検出することができなくなる。一方、出力電圧の飽和を低減するために電流電圧変換利得を下げると、微小信号が入力された時に十分に増幅することができないので、微小信号の検出が困難になる。
このような問題点を解決するために、特許文献1に開示された光受信用前置増幅器においては、反転増幅器の入出力端子間に接続された帰還抵抗(Rf)に並列にダイオードを接続している。これにより、帰還抵抗での電圧降下をクランプすることができるので、出力電圧の飽和を低減することができる。また、特許文献2に開示された光受信用前置増幅器においては、前記の帰還抵抗に並列にトランジスタを接続すると共に該トランジスタのインピーダンスを変調している。これにより、帰還抵抗値つまり電流電圧変換利得を変化させ、それによって出力電圧の飽和を防止している。
特開平03ー060208号公報
特開平09ー232877号公報
しかしながら、前述の従来技術においては、帰還抵抗の値を直接変調しているので、光受信用前置増幅器の動作が不安定になるという欠点がある。
具体的には、ワンポールシステムの反転増幅器を想定した場合、トランスインピーダンス型前置増幅器の伝達関数は次式のように表される。
ZT (S)=−ZT0/(1+2ζS/ωn +S2 /ωn 2)
ここで、反転増幅器の伝達関数はA(S)=−A0 /(1+S/ωh )である。また、低周波トランスインピーダンス利得はZT0=Rf A0 /(1+A0 )である。また、ダンピング係数はζ=(1+CinRf ωh )・ωn /(2・(1+A0 )・ωh )である。また、トランスインピーダンス帯域はωn =(ωh ・(1+A0 )/CinRf )0.5
=(1+CinRf ωh )/2CinRf ζである。尚、Cinは入力端子の全寄生容量であり、Rf は帰還抵抗であり、A0 は反転増幅器の低周波利得であり、ωhは反転増幅器帯域である。
以上のように、従来の光受信用前置増幅器においては、過大電流の入力時に、帰還抵抗Rf に並列に接続されたトランジスタ又はダイオードの作用により帰還抵抗Rf が等価的に減少すると、ダンピング係数ζが減少するので、帰還量が増大する。これに伴いトランスインピーダンス帯域ωn が増大する一方、反転増幅器帯域ωh には変化がないので、ωn がωh に漸近することになる。しかしながら、安定した動作のためにはωh ≫ωn であることが必要なため、ωn がωh に漸近するにしたがって、従来の光受信用前置増幅器の動作は不安定になり、最終的には出力電圧が発振してしまうことになる。
前記に鑑み、本発明は、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる光受信用前置増幅器を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る光受信用前置増幅器は、反転増幅器と、該反転増幅器の入出力端子間に接続された電流電圧変換素子とを備えた光受信用前置増幅器であって、反転増幅器は、反転増幅器の入力端子にゲートが接続された第1のトランジスタと、第1のトランジスタのドレインにソースが接続され且つゲートに所定の電圧が与えられた第2のトランジスタと、第2のトランジスタのドレインに接続された負荷とを有し、反転増幅器の入力端子と第2のトランジスタのソースとの間に接続された第3のトランジスタをさらに備えている。
本発明の光受信用前置増幅器によると、大電流の入力時には第3のトランジスタのゲート電圧を上昇させてそのインピーダンスを下げることにより、入力電流の一部が第3のトランジスタに流れるようになるので、その分だけ電流電圧変換素子に流れる電流が減少する。このため、出力電圧の飽和を抑制することができ、それによって入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
また、本発明の光受信用前置増幅器によると、従来構成のように、電流電圧変換素子に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタの作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に反転増幅器の開放利得を減少させるので、動作が不安定になることがない。
以上のように、本発明の光受信用前置増幅器によると、動作の安定性を保持しつつ、入力ダイナミックレンジの大幅な拡大が可能となる。言い換えると、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第2のトランジスタのゲートに与えられる所定の電圧(つまりゲート電圧)は、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように制御されることが好ましい。
このようにすると、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
また、この場合、第2のトランジスタのソースに反転入力端子が接続され、反転増幅器の入力端子に非反転入力端子が接続され、且つ第2のトランジスタのゲートに出力端子が接続された演算増幅器をさらに備えていると、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように第2のトランジスタのゲート電圧を確実に制御することができる。すなわち、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。また、演算増幅器を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
また、この場合、第2のトランジスタのソースに反転入力端子が接続され且つ第2のトランジスタのゲートに出力端子が接続された演算増幅器と、演算増幅器の非反転入力端子に出力端子が接続され且つ反転増幅器の入力端子電圧と同じ大きさの電圧を出力する電圧発生回路とをさらに備えていると、反転増幅器の入力端子電圧と第2のトランジスタのソース電圧とが一致するように第2のトランジスタのゲート電圧を確実に制御することができる。すなわち、出力電圧レベルの変動を抑制しつつ、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。また、演算増幅器の入力端子を反転増幅器の入力端子に接続する必要がないので、光受信用前置増幅器の入力端子の寄生容量を増加させることなく、前述の効果を達成できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第3のトランジスタのゲートに接続された複数のスイッチよりなるスイッチ群と、スイッチ群を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源とをさらに備え、第3のトランジスタのゲートには、複数の電圧源のそれぞれの出力電圧の中からスイッチ群により選択された電圧が与えられることが好ましい。
このようにすると、スイッチ群を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源に第3のトランジスタのゲートを高速で接続することができるので、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第3のトランジスタは複数個あって、各第3のトランジスタのゲートに接続された複数のスイッチよりなるスイッチ群と、スイッチ群を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源とをさらに備え、各第3のトランジスタのゲートにはそれぞれ、複数の電圧源のそれぞれの出力電圧の中からスイッチ群により選択された電圧が与えられることが好ましい。
このようにすると、スイッチ群を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源に各第3のトランジスタのゲートを高速で接続することができるので、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、反転増幅器の出力端子に入力端子が接続され且つ該入力端子に入力される信号の振幅に応じた電圧を出力する振幅検出回路をさらに備え、振幅検出回路から出力された電圧が第3のトランジスタのゲートに与えられることが好ましい。
このようにすると、光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなるに従って、第3のトランジスタのゲート電圧が上昇してそのインピーダンスが減少するため、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量が大きくなる。これにより、光受信用前置増幅器の出力電圧の飽和が抑制されるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。また、振幅検出回路を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
本発明の光受信用前置増幅器において、前記のスイッチ群(第3のトランジスタのゲートと複数の電圧源との間に接続されたスイッチ群)を備えている場合、一方の入力端子に反転増幅器から出力された電圧が与えられ且つ他方の入力端子に所定の電圧が与えられた少なくとも1つのコンパレータよりなるコンパレータ群をさらに備え、コンパレータ群の比較結果に基づいてスイッチ群が制御されることが好ましい。このようにすると、光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなってコンパレータに与えられている所定の電圧を超えると、コンパレータの出力が反転するため、該出力結果に基づいてスイッチ群が第3のトランジスタのゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。このため、第3のトランジスタによってバイパスされる電流量を高速で変化させることができ、それにより、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、前記のスイッチ群(第3のトランジスタのゲートと複数の電圧源との間に接続されたスイッチ群)を備えている場合、反転増幅器の入力端子にソースが接続され且つ反転増幅器の出力端子にゲートが接続された第4のトランジスタと、第4のトランジスタのドレインに接続された他の電流電圧変換素子と、一方の入力端子に他の電流電圧変換素子に加えられた電圧が与えられ且つ他方の入力端子に所定の電圧が与えられた少なくとも1つのコンパレータよりなるコンパレータ群とをさらに備え、コンパレータ群の比較結果に基づいてスイッチ群が制御されることが好ましい。このようにすると、反転増幅器つまり光受信用前置増幅器への入力電流が大きくなって出力電圧が降下すると、第4のトランジスタがオンとなり、過剰な入力電流に比例した電流が他の電流電圧変換素子に流れることになる。また、これによって生じる他の電流電圧変換素子での電圧降下により、過剰な入力電流の大きさをより広い範囲でモニターすることができる。すなわち、他の電流電圧変換素子に加えられた電圧をコンパレータを用いて所定の電圧と比較し、その結果に基づいてスイッチ群が第3のトランジスタのゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。従って、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
本発明の光受信用前置増幅器において、第1のトランジスタ及び第2のトランジスタはそれぞれバイポーラトランジスタであることが好ましい。
このようにすると、より広帯域の光受信用前置増幅器を実現できる。
本発明に係る光通信用光受信機は、本発明の光受信用前置増幅器を備えた光通信用光受信機を前提とし、光ファイバを通じて伝送されてきた光信号を電流信号に変換するフォトダイオードを備え、該電流信号が本発明の光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。
本発明の光通信用光受信機によると、本発明の光受信用前置増幅器を用いているため、バースト信号等の信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光通信用光受信機を実現できる。
本発明に係る光検出器は、本発明の光受信用前置増幅器を備えた光検出器であって、集光された光信号を電流信号に変換するフォトダイオードを備え、該電流信号が本発明の光受信用前置増幅器により電圧信号に変換される。
本発明の光検出器によると、本発明の光受信用前置増幅器を用いているため、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光検出器を実現できる。
本発明によると、入力電流の一部を第3のトランジスタに流すことによって、電流電圧変換素子に流れる電流を低減できるため、出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。また、従来構成のように、電流電圧変換素子に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタの作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に反転増幅器の開放利得を減少させるので、動作が不安定になることがない。従って、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図1は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。
図1に示すように、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器は、反転増幅器1と、反転増幅器1の入力端子Inと出力端子Outとの間に接続された電流電圧変換素子(Rf)2とを備えたトランスインピーダンス型の前置増幅器である。ここで、電流電圧変換素子2としては例えば通常抵抗が用いられる。
本実施形態の第1の特徴は、反転増幅器1が、ソースがグランドに接続され且つゲートが反転増幅器1の入力端子Inに接続された第1のトランジスタ(M1)3と、該第1のトランジスタ3のドレインにソースが接続され且つゲートに所定の電圧Vbが与えられた第2のトランジスタ(M2)4と、該第2のトランジスタ4のドレインに接続された負荷5とを有することである。ここで、負荷5としては、例えば抵抗、又はダイオード接続されたトランジスタ(ドレインとゲートとが接続されたトランジスタ)が用いられる。ここで、第1のトランジスタ3、第2のトランジスタ4及び負荷5によってカスコード増幅器が構成されている。また、該カスコード増幅器の出力ノードの電圧、つまり第2のトランジスタ4のドレインの電圧は、ソースフォロワ15を通して反転増幅器1の出力端子Outに与えられている。
また、本実施形態の第2の特徴は、電流バイパス用トランジスタである第3のトランジスタ6が、反転増幅器1の入力端子Inと第2のトランジスタ4のソースとの間に接続されていることである。
以上のような本実施形態の構成においては、大電流の入力時に第3のトランジスタ6のゲート電圧Vctを上昇させてそのインピーダンスを下げることにより、入力電流I1 の一部I3 が第3のトランジスタ6に流れるようになるので、電流電圧変換素子2に流れる電流がI2 =I1 −I3 と減少する。これにより、出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。しかも、本実施形態の構成によれば、従来構成のように、電流電圧変換素子2に並列に接続されたトランジスタにより帰還抵抗の値を直接変調するのではなく、第3のトランジスタ6の作用により、過剰な入力電流をバイパスさせると共に前記のカスコード増幅器の利得(つまり反転増幅器1の開放利得A0 )を減少させるので、動作が不安定になることがない。
従って、第1の実施形態によると、動作の安定性を保持しつつ、入力ダイナミックレンジの大幅な拡大が可能となる。言い換えると、従来トレードオフの関係にあった安定動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを同時に実現できる。
図2は、従来構成の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示し、図3は、本実施形態の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す。図2に示すように、従来構成によると、出力電圧が完全に発振している一方、図3に示すように、本実施形態によると、安定した出力電圧波形が得られている。
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図4は、第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図4において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図4に示すように、第2の実施形態が第1の実施形態と異なっている点は、演算増幅器7を備えていることである。すなわち、第2の実施形態は、第1の実施形態の構成に演算増幅器7が付加された構成を有している。ここで、演算増幅器7の反転入力端子は第2のトランジスタ4のソースに接続されている。また、演算増幅器7の非反転入力端子は反転増幅器1の入力端子Inに接続されている。さらに、演算増幅器7の出力端子は第2のトランジスタ4のゲートに接続されている。
以上のような本実施形態の構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しくなるように、第2のトランジスタ4のゲート電圧(Vb)が制御される。
ところで、第1の実施形態によれば、簡単な構成によって、動作の安定性を確保しつつ入力ダイナミックレンジを拡大することが可能であった。しかし、第1の実施形態においては、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが大きく異なる場合、出力電圧の振幅レベルが変化してしまうという問題点がある。具体的には、図3は、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが大きく異なっている状態で第1の実施形態の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合の出力電圧のシミュレーション結果を示している。図3に示すように、第1の実施形態によると、出力電圧レベルが変化している。
図5は、本実施形態の構成により反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しい状態を保ちながら第3のトランジスタ6のゲート電圧Vctを上昇させた場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す。図5に示すように、本実施形態によると、出力電圧レベルは変化せず、一定に保たれている。
以上に説明したように、第2の実施形態によると、第1の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、演算増幅器7を付加するという簡単な構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが一致するように第2のトランジスタ4のゲート電圧を制御できる。これにより、出力電圧レベルを一定に保持しつつ、安定動作と入力ダイナミックレンジの拡大とを同時に実現できる。
(第3の実施形態)
以下、本発明の第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図6は、第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図6において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図6に示すように、第3の実施形態が第1の実施形態と異なっている点は、演算増幅器7及び電圧発生回路8を備えていることである。すなわち、第3の実施形態は、第1の実施形態の構成に演算増幅器7及び電圧発生回路8が付加された構成を有している。ここで、演算増幅器7の反転入力端子は第2のトランジスタ4のソースに接続されている。また、演算増幅器7の非反転入力端子は電圧発生回路8の出力端子に接続されている。また、演算増幅器7の出力端子は第2のトランジスタ4のゲートに接続されている。さらに、電圧発生回路8は、反転増幅器1の入力端子電圧と同じ大きさの電圧を出力する。
以上のような本実施形態の構成によって、反転増幅器1の入力端子電圧と第2のトランジスタ4のソース電圧とが等しくなるように、第2のトランジスタ4のゲート電圧(Vb)が制御される。
ところで、第2の実施形態によれば、演算増幅器7の入力端子が反転増幅器1の入力端子Inに接続されていたため、トランスインピーダンス型前置増幅器(光受信用前置増幅器)の入力端子の寄生容量が増加してしまうという問題点があった。ここで、既述したように、トランスインピーダンス帯域は、
ωn =(ωh ・(1+A0 )/CinRf )0.5
と表されるので、入力端子の寄生容量Cinの増加はトランスインピーダンス帯域の減少をもたらすものとなる。
それに対して、第3の実施形態によると、演算増幅器7の入力端子を反転増幅器1の入力端子Inに接続する必要がないため、トランスインピーダンス型前置増幅器の入力端子の寄生容量を増加させることなく、第2の実施形態と同等の効果を得ることができる。
(第4の実施形態)
以下、本発明の第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図7は、第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図7において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、第4の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、第3のトランジスタ6のゲートに接続された複数のスイッチ(SW1、SW2、・・・)よりなるスイッチ群9と、スイッチ群9を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源10とを備えていることである。すなわち、第4の実施形態は、第3の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10が付加された構成を有している。ここで、複数の電圧源10はそれぞれ異なる電圧V1、V2、・・・を出力している。また、第3のトランジスタ6のゲートには、複数の電圧源10の出力電圧の中からスイッチ群9により選択された電圧(例えば電圧V1)が与えられる。
第4の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、スイッチ群9を用いて、入力信号振幅に応じた適切な電圧源10に第3のトランジスタ6のゲートを高速で接続することができるため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。このため、入力信号の振幅の急激な変化に応答して出力電圧の飽和を抑制することができるので、入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。
尚、第4の実施形態において、第3の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10を付加したが、これに代えて、第1又は第2の実施形態の構成にスイッチ群9及び複数の電圧源10を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第4の実施形態において、スイッチ群9の各スイッチに1つずつ電圧源10が接続された構成を用いたが、スイッチ群9と電圧源10との接続関係は特に限定されるものではない。
(第5の実施形態)
以下、本発明の第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図8は、第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図8において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図8に示すように、第5の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、第3のトランジスタ6が複数個のトランジスタ(M3a、M3b、M3c、・・・)であって、各第3のトランジスタ6のゲートに接続された複数のスイッチ(SW1、SW2、SW3、・・・)よりなるスイッチ群9と、スイッチ群9を構成する各スイッチと接続された複数の電圧源(本実施形態では2個の電圧源)10とを備えていることである。ここで、2個の電圧源10はそれぞれ異なる電圧V1及びV2を出力している。また、各第3のトランジスタ6のゲートには、2個の電圧源10の出力電圧V1及びV2の中からスイッチ群9により選択されたいずれかの電圧(V1又はV2)が与えられる。
第5の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、スイッチ群9を用いて、各第3のトランジスタ6のゲート電圧を2個の電圧源10の出力電圧V1又はV2に高速で切り替えることができる。このため、反転増幅器1の入力端子Inと第2のトランジスタ4のソースとの間のインピーダンスを高速に切り替えることができる。従って、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができるため、バースト信号等の振幅が急速に変化する入力信号に対しても、入力ダイナミックレンジを拡大することができる。
尚、第5の実施形態において、第3の実施形態の構成を前提として複数の第3のトランジスタ6、スイッチ群9及び複数の電圧源10を用いたが、これに代えて、第1又は第2の実施形態の構成を前提として複数の第3のトランジスタ6、スイッチ群9及び複数の電圧源10を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第5の実施形態において、複数の電圧源10の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。また、各第3のトランジスタ6にスイッチ群9のスイッチが1つずつ接続され且つ該各スイッチに複数の電圧源10が接続された構成を用いたが、第3のトランジスタ6とスイッチ群9との接続関係及びスイッチ群9と電圧源10との接続関係は特に限定されるものではない。
(第6の実施形態)
以下、本発明の第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図9は、第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図9において、図6に示す第3の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図9に示すように、第6の実施形態が第3の実施形態と異なっている点は、振幅検出回路11を備えていることである。すなわち、第6の実施形態は、第3の実施形態の構成に振幅検出回路11が付加された構成を有している。ここで、振幅検出回路11は、入力信号の振幅に比例した電圧を出力する(本実施形態では、入力信号の振幅が増大するに伴い出力電圧が増大する振幅検出回路11を想定する)。また、振幅検出回路11の入力端子は反転増幅器1の出力端子Outに接続されていると共に、振幅検出回路11の出力端子は第3のトランジスタ6のゲートに接続されている。すなわち、振幅検出回路11から出力された電圧が第3のトランジスタ6のゲートに与えられる。
第6の実施形態によると、第3の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1の出力信号つまり光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなるに従って、振幅検出回路11により第3のトランジスタ6のゲート電圧が上昇してそのインピーダンスが減少するため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量(図1の電流I3 の大きさ)が大きくなる。これにより、電流電圧変換素子2に流れる電流(図1の電流I2 )が減少するため、光受信用前置増幅器の出力電圧の飽和が抑制されるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。また、振幅検出回路11を付加するという簡単な構成によって、前述の効果を達成できる。
(第7の実施形態)
以下、本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図10は、第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図10において、図7に示す第4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図10に示すように、第7の実施形態は、第4の実施形態の構成に、例えば2個のコンパレータ12よりなるコンパレータ群が付加された構成を有している。具体的には、各コンパレータ12の一方の入力端子は反転増幅器1の出力端子Outに接続されている。すなわち、各コンパレータ12の一方の入力端子には反転増幅器1から出力された電圧が与えられる。また、各コンパレータ12の他方の入力端子にはそれぞれ所定の電圧(互いに異なる電圧:例えばVr1及びVr2)が与えられる。さらに、スイッチ群9の動作は各コンパレータ12の比較結果に基づいて制御される。
第7の実施形態によると、第4の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1の出力信号つまり光受信用前置増幅器の出力信号の振幅が大きくなって、いずれかのコンパレータ12に与えられている所定の電圧(Vr1又はVr2)を超えると、該コンパレータ12の出力が反転するため、該出力結果に基づいてスイッチ群9が第3のトランジスタ6のゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源10のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。このため、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができる。従って、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
尚、第7の実施形態において、第4の実施形態の構成にコンパレータ12を付加したが、これに代えて、第5の実施形態の構成にコンパレータ12を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第7の実施形態において、コンパレータ12の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。
(第8の実施形態)
以下、本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器について図面を参照しながら説明する。
図11は、第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の概略構成を示している。尚、図11において、図7に示す第4の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図11に示すように、第8の実施形態は、第4の実施形態の構成に、例えば2個のコンパレータ12よりなるコンパレータ群と、第4のトランジスタ(M4)13と、他の電流電圧変換素子14とが付加された構成を有している。ここで、他の電流電圧変換素子14としては、例えば抵抗が用いられる。具体的には、第4のトランジスタ13のソースが反転増幅器1の入力端子に接続されており、第4のトランジスタ13のゲートが反転増幅器1の出力端子に接続されており、第4のトランジスタ13のドレインが他の電流電圧変換素子14の一方の端子に接続されている。また、他の電流電圧変換素子14の他方の端子はグランドに接続されている。また、各コンパレータ12の一方の入力端子には他の電流電圧変換素子14に加えられた電圧が与えられると共に、各コンパレータ12の他方の入力端子にはそれぞれ所定の電圧(互いに異なる電圧:例えばVr3及びVr4)が与えられる。さらに、スイッチ群9の動作は各コンパレータ12の比較結果に基づいて制御される。
第8の実施形態によると、第4の実施形態と同等の効果に加えて次のような効果が得られる。すなわち、反転増幅器1つまり光受信用前置増幅器への入力電流が大きくなって出力電圧が降下すると、第4のトランジスタ13がオンとなり、過剰な入力電流に比例した電流が他の電流電圧変換素子14に流れることになる。また、これによって生じる他の電流電圧変換素子14での電圧降下により、過剰な入力電流の大きさをより広い範囲でモニターすることができる。従って、他の電流電圧変換素子14に加えられた電圧をコンパレータ12を用いて所定の電圧(Vr3又はVr4)と比較し、その結果に基づいてスイッチ群9が第3のトランジスタ6のゲート電圧を適切な電圧値(複数の電圧源10のいずれかの出力電圧)に高速で切り替えることができる。これにより、第3のトランジスタ6によってバイパスされる電流量を高速で変化させることができるため、入力信号の振幅の急速な変化に対しても出力電圧の飽和を抑制できるので、入力ダイナミックレンジを拡大させることができる。
尚、第8の実施形態において、第4の実施形態の構成にコンパレータ12、第4のトランジスタ13及び他の電流電圧変換素子14を付加したが、これに代えて、第5の実施形態の構成にコンパレータ12、第4のトランジスタ13及び他の電流電圧変換素子14を付加してもよいことは言うまでもない。
また、第8の実施形態において、コンパレータ12の個数が限定されるものではないことは言うまでもない。
また、図11に示す第8の実施形態の構成と、図10に示す第7の実施形態の構成とを組み合わせた構成(図12参照)を用いてもよいことは言うまでもない。
また、第1〜第8の実施形態において、第1のトランジスタ3及び第2のトランジスタ4としてバイポーラトランジスタを用いてもよい。この場合、第1〜第8の実施形態の前述の各説明において、ゲートをベースに、ソースをエミッタに、ドレインをコレクタにそれぞれ置き換えて考えればよい。このようにすると、より広帯域の光受信用前置増幅器を実現できる。
(第9の実施形態)
以下、本発明の第9の実施形態に係る光通信用光受信機、具体的には、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いた光通信用光受信機について図面を参照しながら説明する。
図13は、第9の実施形態に係る光通信用光受信機の概略構成を示している。尚、図13において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態の光通信用光受信機は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に加えて、光ファイバ17を通じて伝送されてきた光信号を電流信号に変換するフォトダイオード16を備えている。具体的には、図1に示す第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の入力端子にフォトダイオード16が接続されていると共に、フォトダイオード16と光ファイバ17とが結合されている。
第9の実施形態によると、フォトダイオード16からの電流信号が、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器により電圧信号に変換され且つ増幅されるので、バースト信号等の信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光通信用光受信機を実現できる。
尚、第9の実施形態において、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いたが、これに代えて、第2〜第8の実施形態のいずれかに係る光受信用前置増幅器を用いてもよい。
(第10の実施形態)
以下、本発明の第10の実施形態に係る光検出器、具体的には、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いた光検出器について図面を参照しながら説明する。
図14は、第10の実施形態に係る光検出器の概略構成を示している。尚、図14において、図1に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図14に示すように、本実施形態の光検出器は、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に加えて、レンズ18によって光19が集光されてなる光信号20を電流信号に変換するフォトダイオード16を備えている。具体的には、図1に示す第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の入力端子にフォトダイオード16が接続されていると共に、フォトダイオード16とレンズ18とが結合されている。
第10の実施形態によると、フォトダイオード16からの電流信号が、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器により電圧信号に変換され且つ増幅されるので、信号振幅が急速に変化する入力信号に対しても出力電圧の飽和を抑制でき、それにより入力ダイナミックレンジの拡大が可能となる。すなわち、安定した動作と広入力ダイナミックレンジ特性とを併せ持った光検出器を実現できる。
尚、第10の実施形態において、第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器を用いたが、これに代えて、第2〜第8の実施形態のいずれかに係る光受信用前置増幅器を用いてもよい。
本発明は、光受信用前置増幅器に関し、光通信システム等に用いられる光受信回路に適用した場合に特に有用である。
図1は本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図2は従来構成の光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図3は本発明の第1の実施形態に係る光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図4は本発明の第2の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図5は本発明の第2及び第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器に大電流を入力した場合における出力電圧のシミュレーション結果を示す図である。
図6は本発明の第3の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図7は本発明の第4の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図8は本発明の第5の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図9は本発明の第6の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図10は本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図11は本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図12は本発明の第7の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成と、本発明の第8の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成とを組み合わせた光受信用前置増幅器の構成図である。
図13は本発明の第9の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
図14は本発明の第10の実施形態に係る光受信用前置増幅器の構成図である。
符号の説明
1 反転増幅器
2 電流電圧変換素子
3 第1のトランジスタ
4 第2のトランジスタ
5 負荷
6 第3のトランジスタ
7 演算増幅器
8 電圧発生回路
9 スイッチ群
10 電圧源
11 振幅検出回路
12 コンパレータ
13 第4のトランジスタ
14 他の電流電圧変換素子
15 ソースフォロワ
16 フォトダイオード
17 光ファイバ
18 レンズ
19 光
20 光信号