JPWO2005054398A1 - 冷却液組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、グリコール類を主成分とする冷却液組成物であって、(a)0.01〜10重量%の没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩のうち少なくとも1種と、(b)0.1〜10重量%の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はそれらの塩のうち少なくとも1種と、を含むことを特徴とする冷却液組成物とした。これらを含むことにより、内燃機関の冷却系統に使用される金属、特に、アルミニウム、アルミニウム合金の黒変防止効果に優れたものとすることができる。

Description

本発明は、主として内燃機関の冷却液に使用される冷却液組成物に関するものであり、さらに詳しくは、アルミニウム及びアルミニウム合金が冷却液中において黒く変色することを防止する冷却液組成物に関するものである。
エンジン等の内燃機関の冷却系統には、アルミニウム、アルミニウム合金、鋳鉄、鋼、黄銅、はんだ、銅などの金属が使用されている。これらの金属は、水あるいは空気との接触により腐食を生じる。これらの冷却系統における金属の腐食を防止するため、リン酸塩、ケイ酸塩、アミン塩、あるいはホウ酸塩といった腐食防止剤を含む冷却液組成物が提案されている。
ところが、これらの腐食防止剤にあっては、以下のような欠点を有していた。すなわち、リン酸塩は、これが河川等に流入すると、富栄養化を引き起こし、水中のBOD、CODが上昇して藻類が繁殖し、この結果、赤潮やスライムが発生するという問題があった。
また、リン酸塩は、冷却液中に含まれる硬水成分と反応して沈殿を生じ、これにより冷却液の腐食防止機能が低下し、さらには沈殿物が堆積して冷却系統の循環路が閉塞してしまうという事態を引き起こしていた。
アミン塩は、亜硝酸塩と反応して発ガン性物質であるニトロソアミンを生成し易いという欠点がある。また、ケイ酸塩は、冷却液中での安定性に劣り、熱やpHが変化した場合や他の塩類が共存する場合には、容易にゲル化してしまい、腐食防止機能が低下するという不具合があった。また、ホウ酸塩は、アルミニウムやアルミニウム合金を腐食させ易いという欠点があった。
そこで、上記不具合を有するリン酸塩、アミン塩、ケイ酸塩あるいはホウ酸塩に代わる腐食防止剤として炭化水素カルボン酸などのカルボン酸類を含ませた冷却液組成物が提案されている。しかし、この冷却液組成物にあっては、カルボン酸類が冷却液中においてアルミニウムまたはアルミニウム合金表面を黒変させていた。
このアルミニウム又はアルミニウム合金表面の黒変は、カルボン酸類が冷却液中において、アルミニウムやアルミニウム合金表面に黒色を呈する酸化アルミの不動態被膜を形成することにより生じるものである。従来、この黒色を呈する酸化アルミの不動態皮膜が形成されると見栄えは悪くなるものの、かえってアルミニウムやアルミニウム合金の表面を覆ってこれを保護し、腐食の進行を妨げる働きがあると考えられていた。しかしながら、最近の研究において、アルミニウム又はアルミニウム合金表面に形成される黒色を呈する酸化アルミの不動態皮膜と腐食との間には密接な関係があることが解明され、この黒色の不動態皮膜こそがアルミニウム又はアルミニウム合金表面の侵蝕の原因となることがわかった。そこで、金属、特にはアルミニウム又はアルミニウム合金に対して黒変防止効果に優れた冷却液組成物が求められていた。
一方、没食子酸やその誘導体が金属の腐食防止に有効であることが知られており、ボイラ等の高温水系腐食抑制剤に用いられている。没食子酸系化合物が用いられる腐食抑制剤としては、例えば、タンニン酸またはタンニン酸塩と、還元フェノール化合物としての没食子酸を含むものがある(特許第2845572号公報参照)。
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、冷却系統におけるアルミニウム、アルミニウム合金に対して優れた黒変防止性を有する冷却液組成物を提供することを課題とするものである。
上記課題を解決するため、本発明が採った手段は、グリコール類を主成分とする冷却液組成物であって、(a)0.01〜10重量%の没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩のうち少なくとも1種と、(b)0.1〜10重量%の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はそれらの塩のうち少なくとも1種と、を含むことを特徴とする冷却液組成物を要旨とするものである。
本発明者らは、金属の黒変防止について鋭意研究を重ねた結果、没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはその塩が、カルボン酸類存在下の冷却液中において、アルミニウム、アルミニウム合金の黒変防止に極めて有効であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の冷却液組成物(以下、単に組成物という)の主成分であるグリコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどが挙げられ、その中でもエチレングリコールあるいはプロピレングリコールが、化学安定性、取り扱い性、価格、入手容易性などの点から好ましい。
(a)成分である没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩のうち、没食子酸誘導体としては、例えば、没食子酸メチル、没食子酸エチル、没食子酸プロピル、没食子酸ブチル、没食子酸オクチル、没食子酸ラウリル、没食子酸ステアリルなどが挙げられ、その中でも没食子酸オクチルが好ましい。また、カテコール類としては、ピロカテコール、4−tert−ブチルカテコール、4−tert−オクチルカテコール、ピロガロールなどが挙げられる。また、没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩は、0.01〜10重量%の範囲で含まれる。含有量が0.01重量%を下回る場合、上述の黒変防止機能が不十分なものとなり、含有量が10重量%を上回る場合には、上回る分だけの効果がなく、不経済となるからである。
没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩は、カルボン酸類存在下の冷却液中において、アルミニウム、アルミニウム合金の表面が黒変することを防止する。そのメカニズムは、アルミニウム金属表面に配位して被膜を形成することにより、金属表面に黒色の酸化アルミの皮膜を形成させないようにするものと推測される。
(b)成分である脂肪族カルボン酸のうち脂肪族モノカルボン酸としては、酪酸、ペンタン酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、ステアリン酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸などが挙げられ、脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸、及びドデカン2酸、ブラシル酸、タプチン酸などを挙げることができる。芳香族カルボン酸としては、安息香酸、トルイル酸、イソプロピル安息香酸、4−tert−ブチル安息香酸、メルカプト安息香酸、クロロ安息香酸、アミノ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸、ニトロ安息香酸、3−メトキシ−2−ニトロ安息香酸、ジニトロ安息香酸、メトキシ安息香酸、ジメトキシ安息香酸、桂皮酸などが挙げられる。また、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩などを挙げることができる。
脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸またはそれらの塩は、0.1〜10重量%の範囲で含まれる。含有量が0.1重量%を下回る場合、腐食防止機能が不十分なものとなり、含有量が10重量%を上回る場合には、上回る分だけの効果がなく、不経済となるからである。
また、本発明に係る組成物においては、上記(a)成分及び(b)成分の他に、チアゾール類、トリアゾール類及びマグネシウム化合物を含ませることができる。チアゾール類としては、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールまたはその塩などが挙げられ、トリアゾール類としてはトリルトリアゾールやベンゾトリアゾールが挙げられる。これらチアゾール類及びトリアゾール類は、金属、特に銅に対して優れた腐食防止機能を有しており、そのような腐食防止機能を組成物中において十分に発揮する。さらに、チアゾール類と没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはその塩との共存により、黒変防止効果はより強固なものとなる。
マグネシウム化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、安息香酸マグネシウム、グルタミン酸マグネシウム、コハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、マレイン酸マグネシウムを挙げることができる。このマグネシウム化合物は、特にアルミニウムまたはアルミニウム合金に対して優れた腐食防止機能を有している。
チアゾール類、トリアゾール類及びマグネシウム化合物の含有量は、特には限定されないが、十分な腐食防止機能を得るため、チアゾール類及びトリアゾール類においては0.01〜1.0重量%の範囲で含まれることが好ましく、マグネシウム化合物においては0.001〜0.5重量%の範囲で含まれることが好ましい。
なお、本発明に係る組成物には、上記の成分以外にさらに消泡剤、着色剤等を含有させてもよいし、他の従来公知の腐食防止剤であるモリブデン酸塩、タングステン酸塩、硫酸塩、硝酸塩、アルカリ金属塩等を含有させてもよい。
本発明に係る冷却液組成物によれば、(a)0.01〜10重量%の没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩のうち少なくとも1種と、(b)0.1〜10重量%の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はそれらの塩のうち少なくとも1種とを含むことにより、内燃機関の冷却系統に使用される金属、特に、アルミニウム、アルミニウム合金の黒変防止効果に優れた冷却液組成物を提供することができる。
以下、本発明の組成物についてさらに詳細に説明する。
表1には、本発明の実施例1〜3及び比較例1〜3を示している。実施例1は、(a)成分としての没食子酸n−オクチルと、(b)成分としてのセバシン酸、トルイル酸の他に、さらに硝酸マグネシウムとトリルトリアゾールを含むものであり、実施例2は、実施例1にさらに2−メルカプトベンゾチアゾールソーダを含み、実施例3は実施例1における(a)成分としての没食子酸n−オクチルに代えて4−tert−ブチルカテコールを含むものである。また、比較例1は、実施例1からトルイル酸とセバシン酸を除いたものであり、比較例2は比較例1における没食子酸n−オクチルの配合量を1.0重量%としたもの、比較例3は、実施例1から(a)成分である没食子酸n−オクチルを除いたものである。
Figure 2005054398
上記実施例1〜3及び比較例1〜3の各サンプルについて、金属腐食試験を行い、各金属の質量変化を確認するとともに、外観の異状の有無を確認した。その結果を表2に示す。金属腐食試験は、JIS K 2234 金属腐食性の規定に基づいて行いこの試験に供する金属には、アルミニウム鋳物、鋳鉄、鋼、黄銅、はんだ、銅の各試験片を使用した。
Figure 2005054398
表2から、実施例1〜3のいずれも全ての金属において質量変化が少なく、また、外観にも何ら異状はみられなかった。これに対し、比較例1〜3は、いずれもアルミニウム鋳物に黒変がみられ、特に、比較例1及び2では鋳鉄、鋼における質量変化大きく、さらに全面に腐食が生じていた。この結果から、没食子酸n−オクチルまたは4−tert−ブチルカテコールと、カルボン酸が共存することで優れた黒変防止効果と腐食防止効果を発揮できるものと判断される。

Claims (5)

  1. グリコール類を主成分とするアルミニウム、アルミニウム合金の黒変防止効果を有する冷却液組成物であって、
    (a)0.01〜10重量%の没食子酸、没食子酸誘導体、カテコール類またはそれらの塩のうち少なくとも1種と、
    (b)0.1〜10重量%の脂肪族カルボン酸、芳香族カルボン酸又はそれらの塩のうち少なくとも1種と、
    を含むことを特徴とする冷却液組成物。
  2. チアゾール類をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の冷却液組成物。
  3. トリアゾール類をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の冷却液組成物。
  4. マグネシウム化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の冷却液組成物。
  5. マグネシウム化合物をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の冷却液組成物。
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