JPWO2005030255A1 - CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することによる糖尿病の治療方法 - Google Patents

CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することによる糖尿病の治療方法 Download PDF

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Abstract

HtrA2と相互作用するCREBL1およびHNF−4αを見出し、さらに活性型HtrA2によりCREBL1、ATF6およびHNF−4αが分解されることを初めて明らかにした。 そして、HtrA2の機能を阻害することを特徴とするCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害手段、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする糖尿病の防止手段および/または治療手段、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする細胞死阻害手段(例えば膵臓β細胞の細胞死阻害手段)、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することを特徴とする2型糖尿病の防止手段および/または治療手段、並びに試薬キットを提供した。

Description

本発明は、CREBL1(サイクリックAMP レスポンシブ エレメント バインディング プロテイン ライク 1、cAMP responsive element binding protein−like 1)、ATF6(アクティベーティング トランスクリプション ファクター 6、activating transcription factor 6)およびHNF−4α(ヘパトサイト ヌクレアー ファクター 4α、hepatocyte nuclear factor 4α)のうちの少なくとも1の分解阻害方法、並びにCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2(ハイ テンパレイチャー リクワイアメント プロテイン A2、high temperature requirement protein A2)による分解を阻害することを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。より具体的には、HtrA2の機能を阻害すること(例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害すること、またはCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2の相互作用を阻害すること)を特徴とするCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法に関する。また、前記分解方法を用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。さらに、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法、並びに該化合物を1つ以上含んでなる糖尿病の防止剤および/または治療剤に関する。また、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解を阻害する化合物の同定方法に関する。さらに、糖尿病の防止剤および/または治療剤の有効成分である化合物の同定方法に関する。また、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする細胞死阻害方法に関する。さらに、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする細胞死阻害方法、並びに該化合物を1つ以上含んでなる細胞死阻害剤に関する。また、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することを特徴とする2型糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。さらに、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる2型糖尿病の防止剤および/または治療剤に関する。また、HtrA2、HtrA2をコードするポリヌクレオチドおよびHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1と、CREBL1、ATF6、HNF−4α、CREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチド、およびCREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1とを含んでなる試薬キットに関する。
生物は、細胞の生存とアポトーシス(細胞死)を調節することにより外界のストレスから身を守るが、生存とアポトーシス制御機構の調節の乱れによる過剰な細胞死は、種々の疾患を招く可能性がある(非特許文献1)。
近年、ストレスを感知し調節する場としてミトコンドリアや小胞体の研究が進み、ミトコンドリア膜に局在するHtrA2蛋白質(以下、HtrA2と称する)は、UVや熱ショック等のストレスによりミトコンドリア膜から細胞質へ移行し(非特許文献2−5)、カスパーゼ依存的な細胞死とカスパーゼ非依存的な細胞死の二つの細胞死を誘導することが報告された(非特許文献6)。HtrA2は、前駆体蛋白質(配列番号2)からN末133アミノ酸が切り離された成熟型(配列番号4)になり、ミトコンドリアから細胞質に移行する。成熟型HtrA2はプロテアーゼ活性を有する。以下、プロテアーゼ活性を有するHtrA2を活性型HtrA2と称することもある。
カスパーゼ非依存的な細胞死は、HtrA2自身のセリンプロテアーゼとしての性質に依存し、その前駆体蛋白質のアミノ酸配列中306番目(成熟型においては174番目に相当する)のセリンをアラニンに置換したHtrA2変異体によりカスパーゼ非依存的な細胞死は引き起こされないことが知られている(非特許文献3−5)。かかるHtrA2変異体はプロテアーゼ活性を有さない。以下、プロテアーゼ活性を有さないHtrA2を不活性型HtrA2と称することもある。このようにHtrA2は、カスパーゼ非依存的な細胞死を誘導する機構において重要な役割を担う因子である。
以下に本明細書において引用した文献を列記する。
「細胞工学」、2002年、第21巻、第4号、p.360−394。 ヤマグチ(H.Yamaguchi)ら、「キャンサー リサーチ(Cancer Research)」、2003年、第63巻、p.1483−1489。 スズキ(Y.Suzuki)ら、「モレキュラー セル(Molecular Cell)」、2001年、第8巻、p.613−621。 ヘッジ(R.Hegde)ら、「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、2002年、第277巻、p.432−438。 マーチンズ(L.M.Martins)ら、「ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(The Journal of Biological Chemistry)」、2002年、第277巻、p.439−444。 「実験医学」、2002年、第20巻、第1号、p.73−75。 「内科」、2003年、第91巻、第1号、p.63−67。 カウフマン(R.J.Kaufman)ら、「ザ ジャーナル オブ クリニカル インベスティゲーション(The Journal of Clinical Investigation)」、2002年、第110巻、p.1389−1398。 ハゼ(K.Haze)ら、「ザ バイオケミカル ジャーナル(The Biochemical Journal)、2001年、第355巻、p.19−28。 「ジャーナル オブ モレキュラー エンドクリノロジー(Journal of Molecular Endocrinology)」、2001年、第27巻、第1号p.11−29。 「臨床病理」、2001年、第49巻、第2号、p.161−164。 ウルマー(K.M.Ulmer)、「サイエンス(Science)」、1983年、第219巻、p.666−671。 「ペプチド合成」、丸善株式会社、1975年。 「ペプチド シンテシス(Peptide Synthesis)」、インターサイエンス(Interscience)、ニューヨーク(New York)、1996年。
近年、小胞体ストレスにより膵臓のβ細胞が細胞死を起こし、糖尿病を発症することが報告されている。膵臓β細胞はインスリンの産生分泌を行う細胞で、小胞体が非常に発達しており、小胞体ストレスに感受性が高い。すなわち、小胞体ストレス応答における防御機構の破綻が引き起こす細胞死によりβ細胞が脱落し、その結果インスリン分泌不全により糖尿病が亢進すると考えられている(非特許文献7)。一方、小胞体ストレスによりHtrA2の発現が亢進することが報告されている。これらから、HtrA2が、糖尿病の新たな標的となる可能性が高く、また小胞体ストレスによる細胞死を阻害することは、新規な創薬標的になると考えられる。
本発明の課題は、HtrA2によるカスパーゼ非依存的な細胞死の機構およびHtrA2の基質が未だ明らかになっていない状況において、HtrA2と相互作用する蛋白質を見出し、HtrA2による該蛋白質の分解に基づく疾患の防止および/または治療を可能にする手段を提供することである。
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意努力し、HtrA2がCREBL1およびHNF−4αと相互作用することをインシリコ(in silico)で予測し、さらに活性型HtrA2によりCREBL1、CREBL1のファミリーであるATF6およびHNF−4αが分解されることを実験的に証明して本発明を完成した。
すなわち本発明は、HtrA2の機能を阻害することを特徴とするCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法に関する。
また本発明は、HtrA2の機能を阻害することがCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害することであり、ここでCREBL1のHtrA2による切断を阻害することによりCREBL1の分解が阻害され、ATF6のHtrA2による切断を阻害することによりATF6の分解が阻害され、および、HNF−4αのHtrA2による切断を阻害することによりHNF−4αの分解が阻害される前記CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法に関する。
さらに本発明は、HtrA2の機能を阻害することがCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2の相互作用を阻害することであり、ここでCREBL1とHtrA2の相互作用を阻害することによりCREBL1の分解が阻害され、ATF6とHtrA2の相互作用を阻害することによりATF6の分解が阻害され、および、HNF−4αとHtrA2の相互作用を阻害することによりHNF−4αの分解が阻害される前記CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法に関する。
さらにまた本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。
また本発明は、前記CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法を用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。
さらに本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。
さらにまた本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる糖尿病の防止剤および/または治療剤に関する。
また本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法であって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を可能にする条件下、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2をある化合物(被検化合物)と接触させ、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1を検出し得るシグナルおよび/マーカーを使用する系を用いて、このシグナルおよび/マーカーの存在若しくは不存在および/または変化を検出することにより、被検化合物がCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解を阻害するか否かを決定することを特徴とする同定方法に関する。
さらに本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法であって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を可能にする条件下、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2をある化合物(被検化合物)と接触させ、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の存在若しくは不存在の検出および/またはその量の変化の測定により、あるいはCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解物の存在若しくは不存在の検出および/またはその量の変化の測定により、被検化合物がCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解を阻害するか否かを決定することを特徴とする同定方法に関する。
さらにまた本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法が、糖尿病の防止剤および/または治療剤の有効成分である化合物の同定方法である、前記同定方法に関する。
また本発明は、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする細胞死阻害方法に関する。
さらに本発明は、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする細胞死阻害方法に関する。
さらにまた本発明は、細胞死が膵臓β細胞の細胞死である前記細胞死阻害方法に関する。
また本発明は、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる細胞死阻害剤に関する。
さらに本発明は、細胞死が膵臓β細胞の細胞死である前記細胞死阻害剤に関する。
さらにまた本発明は、前記細胞死阻害方法を用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。
また本発明は、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することを特徴とする2型糖尿病の防止方法および/または治療方法に関する。
さらに本発明は、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる2型糖尿病の防止剤および/または治療剤に関する。
さらにまた本発明は、HtrA2、HtrA2をコードするポリヌクレオチドおよびHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1と、CREBL1、ATF6、HNF−4α、CREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチド、およびCREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1とを含んでなる試薬キットに関する。
本発明によれば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することにより、これら蛋白質のうちの少なくとも1の減少または消失を阻害することができ、その結果、糖尿病の防止および/または治療が可能になる。
CREBL1およびATF6はいずれも、小胞体ストレスを感知してシャペロン遺伝子群の転写を誘導し、細胞における小胞体ストレスの回復とその生存に関与していると考えられている(非特許文献8および9)。また、小胞体ストレスにより膵臓のβ細胞が細胞死を起こし、糖尿病を亢進することが報告されている(非特許文献7)。これらから、CREBL1および/またはATF6がHtrA2により分解されて減少または消失することにより、ストレス等による細胞死、例えば膵臓β細胞の細胞死が亢進し、その結果、糖尿病が亢進すると考える。したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害してこれら蛋白質の減少または消失を阻害することにより細胞死(例えば膵臓のβ細胞の細胞死)を阻害でき、その結果、糖尿病の防止および/または治療が可能になる。
HNF−4αは、その機能欠損が糖代謝の異常を招くこと、および遺伝子2型糖尿病MODY1の原因遺伝子であることが明らかにされている(非特許文献10および11)。これらから、HNF−4αの減少または消失によっても糖代謝の異常が生じ、糖尿病(例えば2型糖尿病)が亢進すると考えられる。すなわち、HNF−4αがHtrA2により分解されて減少または消失することにより、糖代謝の異常が生じ、その結果、糖尿病(例えば2型糖尿病)が亢進すると考える。したがって、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害してHNF−4αの減少または消失を阻害することにより糖代謝を正常化することができ、糖尿病(例えば2型糖尿病)の防止および/または治療が可能になる。
CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解の阻害とHNF−4αのHtrA2による分解の阻害とは、異なったメカニズムを介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解とHNF−4αのHtrA2による分解とをいずれも阻害することにより、異なったメカニズムの両方を介して糖尿病の防止および/または治療が達成できるため、高い効果が得られると考える。
また本発明により、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法を実施できる。本同定方法で得られた化合物は、糖尿病の防止および/または治療に使用できる。
活性型HtrA2(成熟型HtrA2)によりCREBL1がインビトロで分解されたことを説明する図である。活性型HtrA2とCREBL1を1晩(O/N)反応させることにより、CREBL1を示すバンドが著しく減少した。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))ではCREBL1の分解が認められなかった。(実施例2)
活性型HtrA2(成熟型HtrA2)によりATF6がインビトロで分解されたことを説明する図である。活性型HtrA2とATF6を4時間(4h)または1晩(O/N)反応させることにより、ATF6を示すバンドが著しく減少した。一方不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))ではATF6の分解が認められなかった。(実施例2)
活性型HtrA2変異体(活性型HtrA2(成熟型HtrA2)のN末4アミノ酸残基を欠失させた成熟型HtrA2(ΔAVPS)または活性型HtrA2のN末のアラニンをグリシンに置換した成熟型HtrA2(GVPS))により、CREBL1が細胞内で分解されたことを説明する図である(上図)。成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS)とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドが著しく減少した(上図)。一方、不活性型HtrA2変異体(成熟型HtrA2 S306(ΔAVPS)または成熟型HtrA2 S306(GVPS))とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドの減少は認められなかった(上図)。細胞内における各HtrA2変異体の発現は、各細胞間でほとんど差がなかった(下図)。(実施例3)
活性型HtrA2変異体(活性型HtrA2(成熟型HtrA2)のN末4アミノ酸残基を欠失させた成熟型HtrA2(ΔAVPS)または活性型HtrA2のN末のアラニンをグリシンに置換した成熟型HtrA2(GVPS))により、ATF6が細胞内で分解されたことを説明する図である(上図)。成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS)とATF6とを共発現させた細胞を用いた解析では、ATF6を示すバンドが著しく減少した(上図)。一方、不活性型HtrA2変異体(成熟型HtrA2 S306(ΔAVPS)または成熟型HtrA2 S306(GVPS))とATF6とを共発現させた細胞を用いた解析では、ATF6を示すバンドの減少は認められなかった(上図)。細胞内における各HtrA2変異体の発現は、各細胞間でほとんど差がなかった(下図)。(実施例3)
蛋白質内部のリジン残基がビオチン化され且つN末にTagが付加されたCREBL1を用いて、ビオチンを検出することにより、活性型HtrA2(成熟型HtrA2)によるCREBL1の分解が検出されたことを説明する図である。活性型HtrA2とCREBL1を4時間(4h)または1晩(O/N)反応させることにより、ビオチン化CREBL1を示すバンドが著しく減少し、50kDa近辺にCREBL1分解産物を示すと考えられるバンドが検出された。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))ではCREBL1の分解が認められず、上記50kDa近辺のバンドも検出されなかった。(実施例4)
蛋白質内部のリジン残基がビオチン化され且つN末にTagが付加されたCREBL1を用いて、N末に付加されたTagを検出することにより、活性型HtrA2(成熟型HtrA2)によりCREBL1が分解されたことを説明する図である。活性型HtrA2とCREBL1を4時間(4h)または1晩(O/N)反応させることにより、N末にTagが付加されたCREBL1を示すバンドが著しく減少した。図3で検出された50kDa近辺のCREBL1分解産物を示すと考えられるバンドは、抗Tag抗体では検出されなかった。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))ではCREBL1の分解は認められなかった。(実施例4) 活性型HtrA2(成熟型HtrA2)によりCREBL1がインビトロで分解されたことを説明する図である。活性型HtrA2とCREBL1を1晩(O/N)反応させることにより、CREBL1を示すバンドが著しく減少した。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))ではCREBL1の分解が認められなかった。(実施例6) 活性型HtrA2変異体(活性型HtrA2(成熟型HtrA2)のN末4アミノ酸残基を欠失させた成熟型HtrA2(ΔAVPS)または活性型HtrA2のN末のアラニンをグリシンに置換した成熟型HtrA2(GVPS))により、CREBL1が細胞内で分解されたことを説明する図である。成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS)とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドが著しく減少した(上図)。一方、不活性型HtrA2変異体(成熟型HtrA2 S306(ΔAVPS)または成熟型HtrA2 S306(GVPS))とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドの減少は認められなかった。(実施例7)
本発明は、参照によりここに援用されるところの、日本特許出願番号第2003−342587号からの優先権を主張するものである。
本明細書においては単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「ポリペプチド」という用語を使用することがある。ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドはペプチド結合または修飾されたペプチド結合により互いに結合している2個以上のアミノ酸を含むものである。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
本発明においては、HtrA2とCREBL1およびHNF−4αとが相互作用することを、国際公開WO01/67299号パンフレット記載の方法に従ってインシリコで予測した。さらに実験的に、CREBL1、CREBL1のファミリー蛋白質であるATF6、およびHNF−4αが活性型HtrA2により分解されることを初めて明らかにした。
CREBL1はATF6ファミリーの1つであり、ATF6βとも称される。CREBL1は小胞体に局在し、小胞体ストレスによりS1P、S2Pによりプロセッシングを受けて一部が核移行し、転写因子として働くことが知られている。CREBL1およびATF6はいずれも、小胞体ストレスを感知してシャペロン遺伝子群の転写を誘導し、細胞における小胞体ストレスの回復とその生存に関与していると考えられている(非特許文献8および9)。また、小胞体ストレスにより膵臓のβ細胞が細胞死を起こし、糖尿病を亢進することが報告されている(非特許文献7)。これらから、CREBL1および/またはATF6がHtrA2により分解されて減少または消失することにより、ストレス等による細胞死、例えば膵臓β細胞の細胞死が亢進し、その結果、糖尿病が亢進すると考える。
したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することにより、これら蛋白質のうちの少なくとも1の減少または消失を阻害でき、その結果、ストレス等による細胞死、例えば膵臓β細胞の細胞死を阻害できる。さらには、糖尿病の防止および/または治療を実施できる。
HNF−4αは、その機能欠損が糖代謝の異常を招くこと、および遺伝子2型糖尿病MODY1の原因遺伝子であることが明らかにされている(非特許文献10および11)。これらから、HNF−4αの減少または消失によっても糖代謝の異常が生じ、糖尿病(例えば2型糖尿病)が亢進すると考えられる。すなわち、HNF−4αがHtrA2により分解されて減少または消失することにより、糖代謝の異常が生じ、その結果、糖尿病(例えば2型糖尿病)が亢進すると考える。
したがって、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することにより、HNF−4αの減少または消失を阻害でき、その結果、糖代謝を正常化することができる。さらには、糖尿病、例えば2型糖尿病の防止および/または治療を実施できる。
このように、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害し、これら蛋白質のうちの少なくとも1の減少または消失を阻害することにより、糖尿病の防止および/または治療を実施できる。これら蛋白質のうちのいずれか1の分解を阻害することにより得られる糖尿病の防止および/または治療の効果と比較して、これら蛋白質のうちの2つまたは3つのHtrA2による分解を阻害することにより、より高い効果が得られると考える。
CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解の阻害とHNF−4αのHtrA2による分解の阻害とは、異なったメカニズムを介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解の阻害は、膵臓β細胞の細胞死の阻害を介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。他方、HNF−4αのHtrA2による分解の阻害は、糖代謝の正常化を介して糖尿病(例えば2型糖尿病)の防止および/または治療に効果を示すと考える。したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解とHNF−4αのHtrA2による分解とをいずれも阻害することにより、異なったメカニズムの両方を介して糖尿病の防止および/または治療が達成できるため、高い効果が得られると考える。
これら知見に基づいて本発明においては、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解の阻害方法を提供する。さらに、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解に基づく疾患、例えば糖尿病の防止方法および/または治療方法を提供する。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法はHtrA2の機能を阻害することにより実施できる。
HtrA2の機能として、例えば、そのプロテアーゼ活性によるCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の切断が挙げられる。プロテアーゼによる蛋白質分解においては一般的に、プロテアーゼが蛋白質に作用して蛋白質のペプチド結合を1箇所または2箇所以上で切断することにより蛋白質分解が行われる。実際に、HtrA2はCREBL1のペプチド結合を数箇所で切断することによりCREBL1を分解した(実施例4)。同様に、HtrA2は、ATF6およびHNF−4αのペプチド結合を1箇所または2箇所以上で切断することによりこれら蛋白質を分解すると考える。
したがって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害することにより、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法を実施できる。本分解阻害方法においては、CREBL1のHtrA2による切断を阻害することによりCREBL1の分解が阻害され、ATF6のHtrA2による切断を阻害することによりATF6の分解が阻害され、および、HNF−4αのHtrA2による切断を阻害することによりHNF−4αの分解が阻害される。
HtrA2の機能としてまた、例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1との相互作用が挙げられる。本明細書中で「CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2が相互作用する」とは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2がある様式により互いに作用を及ぼし、その結果、具体的にはCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1がHtrA2により分解されることを意味する。前記「ある様式」とは、結合、接触あるいは近接等を含むものであり、結果として互いに作用を及ぼし得る様式であればいずれのものであってもよい。
したがって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とのHtrA2との相互作用を阻害することにより、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法を実施できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法は、好ましくは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2とを少なくとも含む生体外試料において、HtrA2の機能を阻害することにより実施できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法は具体的には、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害する化合物を用いて実施できる。このような化合物として、HtrA2のプロテアーゼ活性を阻害する化合物が挙げられる。好ましくは、HtrA2のプロテアーゼ活性を特異的に阻害する化合物が挙げられる。HtrA2のプロテアーゼ活性を特異的に阻害する化合物とは、HtrA2のプロテアーゼ活性を強く阻害するが、他の酵素の活性は阻害しないか、弱く阻害する化合物を意味する。HtrA2のプロテアーゼ活性を阻害する化合物は、例えば、CREBL1、ATF6またはHNF−4αを基質として用いてHtrA2による当該基質の分解を検出する系にある化合物(以下、被検化合物と称する)を添加し、被検化合物が当該基質の分解を阻害するか否かを判定することにより同定し取得できる。HtrA2のプロテアーゼ活性を特異的に阻害する化合物は、他の酵素活性に対する阻害効果と比較して、HtrA2のプロテアーゼ活性を強く阻害するものを、上記のように同定された化合物から選択することにより取得できる。また、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害する化合物として、CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2の各アミノ酸配列において、CREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2とが相互作用する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示できる。特に、HtrA2の基質となるCREBL1、ATF6またはHNF−4α由来のかかるポリペプチドは、CREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2との相互作用を競合的に阻害し、HtrA2によるこれら各蛋白質の切断を阻害できる。このようなポリペプチドであって、さらにCREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2との相互作用を特異的に阻害するポリペプチドがより好ましく本分解阻害方法に用いられる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を特異的に阻害するポリペプチドとは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を強く阻害するが、他の蛋白質間相互作用は阻害しないか、弱く阻害するポリペプチドを意味する。また、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害する化合物として、CREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2により分解される部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、かかるポリペプチドとして好適である。このようなポリペプチドであって、さらにCREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を特異的に阻害するポリペプチドがより好ましく本分解阻害方法に用いられる。CREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を特異的に阻害するポリペプチドとは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を強く阻害するが、HtrA2による他の蛋白質の分解は阻害しないか、弱く阻害するポリペプチドを意味する。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法はまた、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を阻害する化合物を用いて実施できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を阻害する化合物であって、さらに該相互作用を特異的に阻害する化合物がより好ましく本分解阻害方法に用いられる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を特異的に阻害する化合物とは、該相互作用を強く阻害するが、他の蛋白質間相互作用は阻害しないか、弱く阻害する化合物を意味する。このような化合物として、CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2の各アミノ酸配列において、CREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2とが相互作用する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドを例示できる。特に、HtrA2の基質となるCREBL1、ATF6またはHNF−4α由来のかかるポリペプチドは、CREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2との相互作用を競合的に阻害し、ひいてはHtrA2によるこれら各蛋白質の分解を阻害できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法に用い得るポリペプチドは、CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2のアミノ酸配列から設計し、自体公知のペプチド合成法により合成したものから、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害するものを選択することにより取得できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのアミノ酸配列において、HtrA2と相互作用する部位またはHtrA2により分解される部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドは、かかるポリペプチドとして好適である。このように特定されたポリペプチドに、1個乃至数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入等の変異を導入したものも本発明の範囲に包含される。このような変異を導入したポリペプチドは、CREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を阻害するものが好ましい。変異を有するポリペプチドは天然に存在するものであってよく、人工的に変異を導入したものであってもよい。このような変異を導入する手段は自体公知であり、例えばウルマー(Ulmer)の技術(非特許文献12)を利用して実施できる。このような変異の導入において、当該ポリペプチドの基本的な性質(物性、機能または免疫学的活性等)を変化させないという観点から、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互の置換は容易に想定される。さらに、これら利用できるポリペプチドは、その構成アミノ基またはカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない程度に改変できる。
上記ポリペプチドは、ペプチド化学において知られる一般的な方法で製造できる。例えば、成書(非特許文献13および14)に記載の方法が例示されるが、これらに限らず公知の方法が広く利用できる。具体的には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法、例えばFmoc法等が挙げられる。または市販のアミノ酸合成装置を用いて上記ポリペプチドを製造できる。あるいは遺伝子工学的手法により上記ポリペプチドを取得することもできる。例えば目的とするポリペプチドをコードする遺伝子を宿主細胞中で発現できる組換え発現ベクターを作成し、これを適当な宿主細胞、例えば大腸菌にトランスフェクションして形質転換した後に該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から目的とするポリペプチドを回収することにより製造できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法は、CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2を認識する抗体であって、CREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を阻害する抗体を用いることによっても実施できる。かかる抗体は、CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2自体、あるいはCREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2とが相互作用する部位のアミノ酸配列からなるポリペプチド等を抗原として自体公知の抗体作製法により取得できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害する化合物は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を指標にして、医薬品スクリーニングにおいてよく知られている同定方法を用いて取得できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害することによりこれら蛋白質の分解が阻害されることから、これら蛋白質の切断を阻害する化合物はこれら蛋白質の分解を阻害すると考える。したがって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害する化合物の同定方法により、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物も取得できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断および分解を阻害する化合物の同定方法は、例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断および分解を可能にする条件を選択し、当該条件下でCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2とを調べようとする化合物(以下、被検化合物と称する)と接触させ、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の切断および分解を検出し得るシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を用いて、このシグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断および分解を阻害する化合物を同定できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断および分解を可能にする条件は、インビトロのものであってよく、インビボのものであってもよい。例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2とを共発現させた細胞を用いて、上記化合物の同定方法を実施できる。細胞における共発現は、CREBL1、ATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターとHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターとを用いて慣用の遺伝子工学的方法でこれらを細胞にトランスフェクションすることにより達成できる。CREBL1、ATF6、HNF−4αまたはHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含むベクターは、単独で、または組合せて細胞のトランスフェクションに使用できる。細胞は、真核細胞、好ましくは動物細胞、より好ましくは動物培養細胞株、さらに好ましくは哺乳動物培養細胞株を使用できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2と被検化合物との接触は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断および分解の反応以前に行なってもよいし、該切断および分解の反応に共存させることにより行なってもよい。ここでシグナルとは、そのもの自体がその物理的または化学的性質により直接検出され得るものを指す。ここでマーカーとは、それ自体は物理的または化学的性質により検出され得ないが、化学的反応を経ることにより前記シグナルを生成させるものであって、該生成されるシグナルの物理的、化学的または生物学的性質を指標として間接的に検出され得るものを指す。シグナルおよび/またはマーカーとして、レポーター遺伝子(例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等)、放射性同位体、タグペプチド類(His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tagまたはXpress−tag等)、GST等の酵素類、ビオチン、および蛍光蛋白質等、公知のものが利用できるが、これら例示に限らず、一般的に化合物の同定方法に用いられている標識物質であれば、いずれも利用できる。これらシグナルおよび/またはマーカーの検出方法は当業者には周知である。簡便には、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の切断および分解は、これら蛋白質量またはこれら蛋白質の分解物量の存在若しくは不存在および/または変化の検出により測定できる。これら蛋白質量またはこれら蛋白質の分解物量の定量は、自体公知の蛋白質またはペプチドの検出方法、例えばウェスタンブロッティング等を用いて実施できる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との相互作用を阻害する化合物は、上記同定方法により取得できる。
HtrA2、CREBL1およびATF6はいずれも公知蛋白質であり、ジェンバンク(Gen Bank)にそれぞれアクセッションナンバーNM_013247、NM_00438およびNM_007348として開示されている。また、HNF−4αも公知蛋白質であり、スイスプロットデータベース(Swiss−Prot database)にアクセッションナンバーP41235(登録遺伝子名はHNF4A)として開示されている。
本実施例において用いたHtrA2のアミノ酸配列を配列番号4に示す。また、配列番号4に記載のアミノ酸配列をコードするHtrA2 DNAの塩基配列を配列番号3に示す。配列番号4に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドは、成熟型HtrA2である。成熟型HtrA2とは、HtrA2前駆体蛋白質(配列番号2)からN末133アミノ酸残基が切り離されて生じた成熟型蛋白質であり、プロテアーゼ活性を有する。以下、プロテアーゼ活性を有するHtrA2を活性型HtrA2と呼称することがある。また、活性型HtrA2として、成熟型HtrA2のN末の4残基(AVPS)を欠失させた蛋白質(配列番号8、成熟型HtrA2(ΔAVPS)と称することがある)または成熟型HtrA2のN末の4残基のうちのアラニンをグリシンに置換した蛋白質(配列番号10、成熟型HtrA2(GVPS)と称することがある)を用いることができる。このような変異を導入したHtrA2は、そのプロテアーゼ活性には変化がないため、活性型HtrA2として用いることができる。一方、プロテアーゼ活性を有さないHtrA2を不活性型HtrA2と呼称することがある。不活性型HtrA2として、HtrA2のアミノ酸配列においてHtrA2のプロテアーゼ活性に必要な部位のアミノ酸残基に変異を有し、該変異の結果プロテアーゼ活性を示さないHtrA2変異体が例示できる。HtrA2のプロテアーゼ活性に必要な部位として、プロテアーゼ活性ドメイン、より好ましくは成熟型HtrA2(配列番号4)の174番目(前駆体蛋白質(配列番号2)では306番目に相当)のセリン残基が挙げられる。不活性型HtrA2として、より具体的には、成熟型HtrA2の174番目(前駆体蛋白質(配列番号2)では306番目に相当)のセリン残基がアラニンに置換したHtrA2変異体(配列番号6、成熟型HtrA2(S306A)と呼称する)が例示できる。また、不活性型HtrA2として、成熟型HtrA2(S306A)のN末の4残基(AVPS)を欠失させた蛋白質(配列番号12、成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)と称することがある)または成熟型HtrA2のN末の4残基のうちのアラニンをグリシンに置換した蛋白質(配列番号14、成熟型HtrA2(S306A、GVPS)と称することがある)を用いることができる。
本実施例において用いたCREBL1のアミノ酸配列を配列番号16に示す。また、配列番号16に記載のアミノ酸配列をコードするCREBL1 DNAの塩基配列を配列番号15に示す。配列番号15に記載の塩基配列は、アクセッションナンバーNM_00438に開示されたCREBL1の塩基配列と比較して塩基の1つに相違が認められた(実施例2参照)。
本実施例において用いたATF6のアミノ酸配列を配列番号18に示す。また、配列番号18に記載のアミノ酸配列をコードするATF6 DNAの塩基配列を配列番号17に示す。配列番号17に記載の塩基配列は、アクセッションナンバーNM_007348に開示されたATF6の塩基配列と比較して15個の塩基に相違が認められた(実施例2参照)。
本実施例において用いたHNF−4αのアミノ酸配列を配列番号35に示す。また、配列番号35に記載のアミノ酸配列をコードするHNF−4α DNAの塩基配列を配列番号34に示す。配列番号35に記載のアミノ酸配列は、スイスプロットデータベース(Swiss−Prot database)のアクセッションナンバーP41235(登録遺伝子名はHNF4A)に開示されたHNF−4αのアミノ酸配列と同一であった(実施例6参照)。
本発明においてHtrA2、CREBL1、ATF6およびHNF−4α並びにこれら各蛋白質をコードする各遺伝子は、上記例示したアミノ酸配列または塩基配列で表される蛋白質または遺伝子に限定されず、一般的に報告されているHtrA2、ATF6およびCREBL1をいずれも含む。
本発明において使用するHtrA2、CREBL1、ATF6およびHNF−4αは、これらを遺伝子工学的手法で発現させた細胞や生体試料から調製したもの、無細胞系合成産物または化学合成産物であってよく、あるいはこれらからさらに精製されたものであってもよい。また、HtrA2、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのいずれか1つ以上を遺伝子工学的手法で発現させた細胞を使用することもできる。HtrA2、CREBL1、ATF6およびHNF−4αは、CREBL1、ATF6またはHNF−4αとHtrA2との相互作用、およびこれら蛋白質の機能、例えばHtrA2のプロテアーゼ活性やCREBL1、ATF6およびHNF−4αの酵素基質としての性質等に影響がなければ、N末側やC末側に別の蛋白質やポリペプチドを、直接的にまたはリンカーペプチド等を介して間接的に、遺伝子工学的手法等を用いて付加したものであってもよい。付加する別の蛋白質やポリペプチドとして、β−ガラクトシダーゼ、IgG等の免疫グロブリンFc断片、tagペプチド類(His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tag、またはXpress−tag等)を例示できる。
HtrA2、CREBL1、ATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドは、ヒトcDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により調製できる。HtrA2、CREBL1、ATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターは、当該ポリヌクレオチドを適当な発現ベクター、例えば細菌プラスミド由来のベクターに自体公知の遺伝子工学的手法で導入することにより得られる。
被検化合物として、例えば化学ライブラリーや天然物由来の化合物、あるいはHtrA2、CREBL1、ATF6またはHNF−4αの一次構造や立体構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等が挙げられる。その他、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のアミノ酸配列において、HtrA2と相互作用する部位またはHtrA2により切断される部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドの構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等も被検化合物として好適である。
本発明に係る化合物の同定方法は具体的には、例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2とを用いたインビトロにおけるプロテアーゼアッセイ(実施例2および6)に被検化合物を添加することにより実施できる。活性型である成熟型HtrA2は、ヒト腎臓cDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により取得した成熟型HtrA2 DNAを含む適当なベクターをトランスフェクションした大腸菌から調製できる。CREBL1は、ヒト脳cDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により取得したCREBL1 DNAを含む適当なベクターをトランスフェクションした動物細胞培養株(例えばHEK293T細胞)から調製できる。ATF6は、ヒト乳腺cDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により取得したATF6 DNAを含む適当なベクターをトランスフェクションした動物細胞(例えばHEK293T細胞)から調製できる。HNF−4αは、ヒト脳polyARNAから自体公知の遺伝子工学的手法により取得したHNF−4α DNAを含む適当なベクターをトランスフェクションした動物細胞培養株(例えばHEK293T細胞)から調製できる。CREBL1、ATF6、HNF−4αおよびHtrA2は、これら蛋白質をそれぞれ発現させた各細胞の細胞溶解液の可溶性画分に含まれる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αは、好ましくは、それらのN末またはC末にタグペプチド等が付加された蛋白質として発現させ、該タグペプチドに対する抗体で免疫沈降することにより精製して用いることが適当である。例えば、タグペプチドに対する抗体で免疫沈降した後、樹脂(プロテインG セファロース等)等に補足したものを使用できる。インビトロにおけるプロテアーゼアッセイは、樹脂等に補足したCREBL1、ATF6またはHNF−4αに、成熟型HtrA2を添加して37℃で一晩反応させた後、これら蛋白質をウエスタンブロッティングで検出することにより実施できる。ATF6については、37℃で4時間反応させることにより成熟型HtrA2により分解されるため、プロテアーゼアッセイにおける反応時間を4時間にすることもできる。ウエスタンブロッティングによる検出は、CREBL1、ATF6またはHNF−4αに付加させたタグペプチドに対する抗体を用いて実施できる。CREBL1、ATF6またはHNF−4αはHtrA2により分解されるため、ウエスタンブロッティングにより検出されるこれら蛋白質の量は、HtrA2を添加しないときと比較して減少または消失する。CREBL1、ATF6またはHNF−4αと成熟型HtrA2との反応に被検化合物を添加し、被検化合物を添加しないときと比較してCREBL1、ATF6またはHNF−4αの量の低減または消失が阻害される場合、該被検化合物はCREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を阻害すると判定できる。被検化合物は予めCREBL1、ATF6またはHNF−4αと、あるいは成熟型HtrA2と接触させ、その後、CREBL1、ATF6またはHNF−4αと成熟型HtrA2を反応させることもできる。
また、本発明に係る化合物の同定方法は具体的には、例えば、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2とを共発現させた細胞を用いた細胞内プロテアーゼアッセイ(実施例3および7)に被検化合物を添加することにより実施できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2との細胞での共発現は、上記のように作製したCREBL1 DNA、ATF6 DNAおよびHNF−4α DNAのそれぞれを含む適当なベクターとHtrA2 DNAを含む適当なベクターとを、自体公知の遺伝子工学的手法で動物細胞培養株(例えばHEK293T細胞)にトランスフェクションすることにより実施できる。CREBL1、ATF6およびHNF−4αは、これら蛋白質のN末またはC末にタグペプチド等が付加された蛋白質として発現させることが、これら蛋白質の検出を容易にするため、好ましい。HtrA2は、活性型HtrA2を用いる。活性型HtrA2として、成熟型HtrA2、好ましくはN末の4残基(AVPS)を欠失させた成熟型HtrA2(ΔAVPS)またはN末の4残基のうちのアラニンをグリシンに置換した成熟型HtrA2(GVPS)を用いることが適当である。成熟型HtrA2のN末の4残基(AVPS)は、アポトーシスの阻害に働くIAPs(Inhibitor of apoptosis proteins)ファミリー蛋白質との結合モチーフであり、IAPsと結合してその作用を阻害することによりカスパーゼ依存的な細胞死を促進すると報告されている。この作用は、細胞内でのプロテアーゼアッセイの検討に影響を与える可能性が考えられるため、IAPsと結合しない成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS)を使用することが好ましい。細胞内プロテアーゼアッセイは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2とを共発現させた細胞を被検化合物と共に37℃で48時間培養後、該細胞を溶解し、その溶解液中に含まれるCREBL1、ATF6またはHNF−4αをウエスタンブロッティングで検出することにより実施できる。ウエスタンブロッティングによる検出は、CREBL1、ATF6またはHNF−4αに付加させたタグペプチドに対する抗体を用いて実施できる。CREBL1、ATF6またはHNF−4αはHtrA2により分解されるため、ウエスタンブロッティングにより検出されるこれら蛋白質の量は、HtrA2を添加しないときと比較して減少または消失する。被検化合物を添加した場合のCREBL1、ATF6またはHNF−4αの量の低減または消失が、被検化合物を添加しないときと比較して阻害される場合、該被検化合物はCREBL1、ATF6またはHNF−4αのHtrA2による分解を阻害すると判定できる。
本発明に係る化合物の同定方法は、上記インビトロにおけるプロテアーゼアッセイや細胞内プロテアーゼアッセイを用いた具体的例示に限定されず、一般的に用いられている医薬品スクリーニングにおいてよく知られている同定方法を用いて実施できる。
本発明に係る化合物の同定方法で得られた化合物は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解の阻害剤として利用できる。当該化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することにより、医薬組成物として調製できる。医薬組成物の調製において、これら化合物は、単独で使用することもできるし、組合せて使用することもできる。
CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物は、糖尿病の防止剤および/または治療剤の有効成分として使用できる。すなわち、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いて、糖尿病の防止剤および/または治療剤を調製できる。このような化合物は上記化合物の同定方法により取得できる。CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物は、過剰な小胞体ストレス等により引き起こされる細胞死(例えば膵臓のβ細胞の細胞死)を阻害でき、その結果、糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。また、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物は、糖代謝を正常化することができ、糖尿病(例えば2型糖尿病)の防止および/または治療に効果を示すと考える。このように、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物と、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物とは、異なったメカニズムを介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物と、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物とを組合せて含む糖尿病の防止剤および/または治療剤は、異なったメカニズムの両方を介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すため、これら化合物のいずれかを含む糖尿病の防止剤および/または治療剤と比較してより効果が高く、より好ましい。
本発明に係る糖尿病の防止方法および/または治療方法は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することにより実施できる。CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することにより、過剰な小胞体ストレス等により引き起こされる細胞死(例えば膵臓のβ細胞の細胞死)を阻害でき、その結果、糖尿病の防止および/または治療の効果が得られると考える。また、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することにより糖代謝を正常化することができ、糖尿病(例えば2型糖尿病)の防止および/または治療の効果が得られると考える。このように、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解の阻害と、HNF−4αのHtrA2による分解の阻害とは、異なったメカニズムを介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すと考える。したがって、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解とHNF−4αのHtrA2による分解とをいずれも阻害することによる糖尿病の防止方法および/または治療方法は、異なったメカニズムの両方を介して糖尿病の防止および/または治療に効果を示すため、これら蛋白質の分解の一方を阻害することによる糖尿病の防止方法および/または治療方法と比較してより効果が高く、より好ましい。
本発明に係る糖尿病の防止方法および/または治療方法は、上記したCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を用いて実施できる。また、本糖尿病の防止方法および/または治療方法は、上記したCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法を用いて実施できる。
CREBL1およびATF6はいずれも、細胞における小胞体ストレスの回復とその生存に関与していると考えられている(非特許文献8および9)ことから、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することにより、細胞死阻害方法を実施できる。また、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物は、細胞死阻害剤として使用できる。すなわち、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物の1つ以上を用いて細胞死阻害剤を調製できる。さらに、小胞体ストレスにより膵臓のβ細胞が細胞死を起こすことが報告されている(非特許文献7)ことから、本発明に係る細胞死阻害方法および細胞死阻害剤は、好ましくは膵臓β細胞の細胞死阻害方法および細胞死阻害剤に使用できる。より好ましくは小胞体ストレスによる膵臓β細胞の細胞死阻害方法および細胞死阻害剤に使用できる。
本発明に係る細胞死阻害方法は、CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解の阻害方法を用いて実施できる。CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物は上記化合物の同定方法により取得できる。さらに、本細胞死阻害方法および本細胞死阻害剤を用いて、糖尿病の防止方法および/または治療方法を実施できる。本細胞死阻害方法は、好ましくは、CREBL1および/またはATF6とHtrA2とを少なくとも含む生体外試料においてCREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することにより実施できる。
HNF−4αの機能欠損は糖代謝の異常を招くこと、および遺伝子2型糖尿病MODY1の原因遺伝子であることが明らかにされている(非特許文献10および11)ことから、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することにより、2型糖尿病の防止方法および/または治療方法を実施できる。また、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物は、2型糖尿病の防止剤および/または治療剤の有効成分として使用できる。すなわち、HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物の1つ以上を用いて、2型糖尿病の防止剤および/または治療剤を調製できる。
本発明に係る2型糖尿病の防止方法および/または治療方法は、HNF−4αのHtrA2による分解の阻害方法を用いて実施できる。HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物は上記化合物の同定方法により取得できる。
本発明に係る糖尿病の防止剤および/または治療剤は、上記化合物の1つ以上を有効成分としてその有効量含む医薬として製造できる。通常は、1種または2種以上の医薬用担体を用いて医薬組成物として製造することが好ましい。
本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体は、製剤の使用形態に応じて一般的に使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤、希釈剤および賦形剤等を例示できる。これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択して使用される。
より具体的には、水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。これらは、本医薬組成物の剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組合せて使用される。
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、界面活性剤、およびpH調整剤等を適宜使用することもできる。
安定化剤は、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体等を例示できる。これらは単独でまたは界面活性剤等と組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。
界面活性剤も特に限定はなく、イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。界面活性剤には、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
緩衝剤は、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)等を例示できる。
等張化剤は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等を例示できる。
キレート剤は、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸等を例示できる。
本発明に係る医薬および医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生理的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することもできる。
医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg乃至1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量を変更できる。上記投与量は1日1回乃至数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
本発明の医薬組成物を投与するときには、該医薬組成物を単独で使用してもよく、あるいは目的の疾患の防止および/または治療に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択できる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与の他、皮下、皮内、筋肉内等への投与が挙げられる。あるいは経口経路で投与することができる。さらに、経粘膜投与または経皮投与も実施可能である。
投与形態は、各種の形態が目的に応じて選択できる。その代表的なものは、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
さらに本発明は、HtrA2、HtrA2をコードするポリヌクレオチドおよびHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1と、CREBL1、ATF6、HNF−4α、CREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチド、およびCREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1とを含んでなる試薬キットを提供する。当該試薬キットは、例えば本発明に係る同定方法に使用できる。
上記試薬キットは、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を検出するためのシグナルおよび/またはマーカー、緩衝液、並びに塩等、必要とされる物質を含むことができる。さらに、安定化剤および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。製剤化にあたっては、使用する各物質それぞれに応じた製剤化手段を導入すればよい。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されない。
(HtrA2と相互作用する機能を有する蛋白質のインシリコでの探索)
HtrA2と相互作用する機能を有する蛋白質を、国際公開第WO01/67299号パンフレットに記載の予測方法に従って予測した。すなわち、HtrA2のアミノ酸配列をある長さのオリゴペプチドに分解し、各オリゴペプチドのアミノ酸配列あるいはそのアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を持った蛋白質をデータベース中で検索し、得られた蛋白質とHtrA2との間でローカルアライメントを行い、ローカルアライメントのスコアの高いものをHtrA2と相互作用すると予測した。
解析の結果、HtrA2と相互作用する機能を有すると予測される蛋白質として、CREBL1を見出した。
(インビトロ プロテアーゼアッセイ)
CREBL1またはCREBL1のファミリーであるATF6とHtrA2の相互作用を実験的に検証するために、インビトロにおけるプロテアーゼアッセイを実施した。
<材料およびその調製>
本実施例においては、活性型HtrA2および不活性型HtrA2としてそれぞれ、いずれもC末Tagとしてヒスチジン(His)を付加した成熟型HtrA2(配列番号4)および成熟型HtrA2(S306A)(配列番号6)を用いた。また、HtrA2と相互作用すると予想した蛋白質として、いずれもN末Tagとしてc−Mycを付加したCREBL1(配列番号16)およびATF6(配列番号18)を用いた。
1.成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)のクローニングおよび発現プラスミドの作製
成熟型HtrA2(前駆体HtrA2(そのDNA塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列は配列番号1および配列番号2に記載)のアミノ酸残基134−458部分)をコードする遺伝子を得るために、Human Kidney QUICK−Clone cDNA(Clontech社製)を鋳型とし、HtrA2−F1プライマー(5´側にNdeI部位とATGを付加、配列番号19)とHtrA2−RSプライマー(終止コドンを除いてXhoI部位を付加、配列番号20)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plus(Toyobo社製)を用いてポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)により成熟型HtrA2遺伝子を増幅し、pCR−BluntII−TOPOベクター(Invitrogen社製)にクローニングした。また、シークエンサー(Applied Biosystems/Hitachi:ABI3100)により塩基配列を決定した。本実施例で得られた成熟型HtrA2 DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号3および配列番号4に記載した。成熟型HtrA2大腸菌発現プラスミドは、クローニングした成熟型HtrA2遺伝子をNdeIとXhoIで消化し、pET24bベクター(Novagen社製)に組込むことにより取得した。
成熟型HtrA2の174番目(前駆体蛋白質(配列番号2)では306番目に相当)のセリンをアラニンに置換した変異体(成熟型HtrA2(S306A))は、プロテアーゼ活性を示さないことが報告されている。そこで、不活性型である成熟型HtrA2(S306A)の大腸菌発現プラスミドを、成熟型HtrA2発現プラスミドを鋳型とし、HtrA2−MFプライマー(配列番号21)とHtrA2−MRプライマー(配列番号22)を用いてQuikChange XL Site−Directed Mutagenesis kit(Stratagene社製)により作製した。また、シークエンサーにより塩基配列を決定した。本実施例で得られた成熟型HtrA2(S306A)DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5および配列番号6に記載した。
2.成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)の発現および精製
成熟型HtrA2大腸菌発現プラスミドを大腸菌BL21 Star(DE3)コンピテントセル(Invitrogen社製)に導入した形質転換体を取得した。この形質転換体を、26℃にて100mlのLB培地で培養し、吸光度(OD)が0.68〜0.81に達したときにイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を最終濃度0.1mM添加することにより成熟型HtrA2蛋白質の発現誘導を行い、一晩培養した後、成熟型HtrA2を発現している大腸菌を遠心処理により分離回収した。得られた大腸菌を、リシスバッファーA(Lysis buffer:リン酸緩衝生理食塩水(PBS)/1% トライトンX−100、1μg/ml ペプスタチン、5μM E64)に懸濁し、氷冷下でソニケーター(15秒×10回)により菌体を破砕した。菌体破砕液を遠心処理し(15,000rpm、30分、4℃)、可溶性画分(上清)と不溶性画分に分離した。成熟型HtrA2の含まれる可溶性画分を、あらかじめ1% トライトンX−100、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)にて平衡化したプロボンドレジン(Invitrogen社製:1ml prepacked)に加え、4℃で30分間混和した後、洗浄バッファー(20mM リン酸ナトリウム(pH6.0)、500mM NaCl)にて3回洗浄した。レジンに吸着した成熟型HtrA2は、50、100、200、350、500mM イミダゾールをそれぞれ含む溶出バッファー(20mM リン酸ナトリウム(pH6.0)、500mM NaCl)にて段階的に溶出した。各溶出液についてSDS−PAGEを行い、成熟型HtrA2を含む画分を特定した。その結果、350−500mM イミダゾールで成熟型HtrA2が溶出された。成熟型HtrA2を含む画分を150mM NaCl、50mM Tris−HCl(pH7.5)に対して透析した後、遠心処理にて不溶物を除去した上清を濃縮し、牛血清アルブミン(BSA)を標準蛋白質としてクマシープラスプロテインアッセイ(Coomassie Plus Protein Assay、PIERCE社製)により蛋白質を定量した。また成熟型HtrA2(S306A)の発現および精製を同様に行った。
3.CREBL1およびATF6のクローニングおよび発現プラスミドの作製
CREBL1については、まずHuman Brain cDNAを鋳型とし、83−Fプライマー(ATGの直前にEcoRI部位とGCCを付加、配列番号23)と83−Rプライマー(終止コドンを除いてXhoI部位を付加、配列番号24)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plusを用いてPCR法によりCREBL1遺伝子を増幅させ、pCMV−Tag5にクローニングした。
次に、pCMV−Tag5に組込んだCREBL1遺伝子を鋳型とし、ATF6−NF1プライマー(ATGを除いてBamHI部位を付加、配列番号25)とATF6−NR1プライマー(終止コドンの後にXhoI部位を付加、配列番号26)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plusを用いてPCR法によりCREBL1遺伝子を増幅させ、pCR−BluntII−TOPOベクターにクローニングした。また、シークエンサーにより塩基配列を決定した。本実施例で得られたCREBL1 DNAの塩基配列は、GenBankにアクセッションナンバーNM_00438として既に登録された塩基配列と比較して塩基の1つに相違が認められた(T450C)。この相違によるアミノ酸の変化はなかった。また、終止コドンがTGAからTAAに変化した。これらの相違はPCRエラーではないことを確認した。本実施例で得られたCREBL1 DNAの塩基配列および該DNAにコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号15および配列番号16に記載した。CREBL1動物細胞発現プラスミドは、クローニングしたCREBL1遺伝子をBamHIとXhoIで消化し、pCMV−Tag3に組込むことにより取得した。
ATF6については、まず、Mammary Gland QUICK−Clone cDNA(Clontech社製)を鋳型とし、ATF6Fnプライマー(配列番号27)とATF6Rnプライマー(配列番号28)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plusを用いてPCR法によりATF6遺伝子を増幅させた。次に、この増幅されたATF6遺伝子を鋳型とし、ATF6F1Lプライマー(ATGの直前にEcoRV siteを付加、配列番号29)とATF6R1Lプライマー(終止コドンの直後にXhoI siteを付加、配列番号30)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plusを用いてPCR法によりATF6遺伝子をさらに増幅させ、pCR4Blunt−TOPOベクター(Invitrogen社製)にクローニングした。また、シークエンサーにより塩基配列を決定した(配列番号17)。本実施例で得られたATF6 DNAの塩基配列は、GenBankにアクセッションナンバーNM_007348として既に登録された塩基配列と比較して15個の塩基に相違が認められた。相違する15塩基は全てゲノム配列と一致することが判明した:T105C(アミノ酸の変化なし);T199A(LeuからMetへのアミノ酸の変化を伴う);A201G(LeuからMetへのアミノ酸の変化を伴う);C270T(アミノ酸の変化なし);A309G(アミノ酸の変化なし);C433G(ProからAlaへのアミノ酸の変化を伴う);T469C(SerからProへのアミノ酸の変化を伴う);G1228A(GlyからSerへのアミノ酸の変化を伴う);A1230C(GlyからSerへのアミノ酸の変化を伴う);C1389T(アミノ酸の変化なし);T1416C(アミノ酸の変化なし);T1491A(アミノ酸の変化なし);T1538C(ValからAlaへのアミノ酸の変化を伴う);G1540C(ValからLeuへのアミノ酸の変化を伴う);およびG1896A(アミノ酸の変化なし)。また、全てのアミノ酸の変化に関してSWISS−PROTではコンフリクトで記載がある。本実施例で得られたATF6 DNAの塩基配列および該DNAにコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号17および配列番号18に記載した。
ATF6遺伝子を動物細胞発現ベクターに組込むために、上記のpCR4Blunt−TOPOベクターにクローニングしたATF6遺伝子を鋳型とし、ATF6F2Lプライマー(ATGの直前にBglII siteを付加、配列番号31)とATF6R1Lプライマー(配列番号30)およびDNAポリメラーゼとしてKOD−plusを用いてPCR法によりATF6遺伝子を増幅し、pCR4Blunt−TOPOベクターにクローニングした。また、シークエンサーにより塩基配列を決定した(配列番号19)。このクローニングしたATF6遺伝子をBglIIとXhoIで消化し、BamHIとXhoIで消化した動物細胞発現ベクターであるpCMV−Tag3に組込んだ。
4.CREBL1およびATF6の発現
トランスフェクション前日に細胞数1.5×10/10cm ディッシュ(Dish)としたHEK293T細胞に、CREBL1またはATF6の発現プラスミドをFuGene6(Roche社製)にてトランスフェクションした(10μg/Dish)。48時間後、細胞をPBSで洗浄し、1mlのリシスバッファーB(50mM Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl、1% トライトンX−100、1% ノニデットP−40(NP−40)、コンプリートミニ(Complete Mini、EDTA(ethylenediamine tetra−acetate)不含))を添加し氷上で10分間静置した。その後、スクレーパーで細胞を集め、1.5mlのチューブに入れ、氷冷下でソニケーション処理(15秒×6回)を行い、氷中で20分静置後、ピペッティングで懸濁し、遠心処理(15,000rpm、30分間、4℃)により可溶性画分と不溶性画分を分離した。検討用試料として、可溶性画分を用いた。
5.成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)の活性の検討
カゼインザイモグラフィーおよびカゼインナトリウムのプロテアーゼアッセイにより成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)の活性の検討を行った。カゼインザイモグラフィーはプロトコール(Invitrogen社製)に従って実施した。具体的には、成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)を非還元下で2×SDS サンプルバッファーと等量混合し、室温で10分静置した後、4〜16% ザイモグラム(Blue casein)ゲル(Zymogram Gel、Invitrogen社製)による分離を行った。泳動終了後、2.5% トライトンX−100にてリネーチャー(renature)した後、ディベロピングバッファー(Developing buffer)中で37℃、一晩カゼイン分解反応を行った。
一方、カゼインナトリウムを基質としたプロテアーゼアッセイは、反応バッファー(150mM NaCl、50mM Tris−HCl(pH7.5))中で成熟型HtrA2あるいは成熟型HtrA2(S306A)を200μg/ml、カゼインナトリウムを400μg/mlの濃度となるように混合し、37℃でインキュベーションして反応させることにより行った。反応開始3時間後および一晩後に反応液の一部を採取して、2×SDS サンプルバッファーと等量混合し煮沸処理後、SDS−PAGEを行い、クマシーブリリアントブルー(CBB)染色によりカゼインナトリウムの分解の有無を検出した。
上記検討の結果、成熟型HtrA2によるカゼインの分解が認められたが、成熟型HtrA2(S306A)ではカゼインの分解が認められなかった。このことから、成熟型HtrA2はプロテアーゼ活性を有する活性型であるが、成熟型HtrA2(S306A)はプロテアーゼ活性を示さない不活性型であることが確認できた。
<方法>
CREBL1またはATF6の発現プラスミドをトランスフェクションした細胞から調製した可溶性画分に含まれる夾雑蛋白質の影響を除くために免疫沈降にて樹脂にそれぞれ捕捉したCREBL1およびATF6を実験に用いた。CREBL1およびATF6の各可溶性画分300μlを6本のチューブ(No.1−6)に分注し、各チューブにBSAでブロッキングした50%スラリーのプロテインG セファロース 4 FF(Amersham社製)を20μl添加し、4℃で1時間転倒混和後、遠心処理(10,000rpm、10秒間、4℃)にて上清を回収し前処理(pre−clean)を行った。得られた上清に抗Myc抗体(Invitrogen社製)を1.7μl(2μg)添加し、4℃で3時間転倒混和後に、BSAでブロッキングしたプロテインG セファロース 4 FFを20μl添加し4℃で1晩転倒混和し、プロテインG セファロース 4 FFにCREBL1およびATF6をそれぞれ捕捉した。
次にCREBL1またはATF6が捕捉されたプロテインG セファロース 4 FFを500μlの洗浄バッファー(50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.01% トライトンX−100)で5回洗浄した後、No.1および2のチューブには50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.01% トライトンX−100を、No.3および4のチューブには50μg/mlの成熟型HtrA2溶液100μlを、No.5および6のチューブには50μg/mlの成熟型HtrA2(S306A)溶液100μlをそれぞれ加えた。No.1、3および5のチューブは37℃で4時間、No.2、4および6のチューブは一晩反応させた後、遠心処理により上清を除去して500μlの洗浄バッファーにて3回、遠心洗浄を行い、2×SDS サンプルバッファー(β−メルカプトエタノール0.1%含む)を80μl加え煮沸処理した。得られた試料80μlのうち10μlを使用し、SDS−PAGE後、PVDF膜へ転写し、ウエスタンブロッティングにより、CREBL1およびATF6を検出した。検出用の1次抗体として抗c−Myc抗体(9E10)(Santa cruz社製)を、2次抗体としてホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗マウスIgG抗体(Cell Signaling社製)を用いた。また、検出はECL Western Blotting Detection System(Amersham社製)を用いて実施した。
<結果>
CREBL1およびATF6がいずれも、成熟型HtrA2によりインビトロで分解されることを認めた。図1−Aに示すように、活性型HtrA2とCREBL1を1晩(O/N)反応させることにより、CREBL1を示すバンドが著しく減少した。また、図1−Bに示すように、活性型HtrA2とATF6を4時間(4h)または1晩(O/N)反応させることにより、ATF6を示すバンドが著しく減少した。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))によるCREBL1およびATF6の分解は認められなかった(図1−Aおよび図1−B)。
(細胞内におけるプロテアーゼアッセイ)
CREBL1またはATF6とHtrA2の相互作用を細胞内におけるプロテアーゼアッセイにより検討した。
<材料およびその調製>
成熟型HtrA2のN末の4残基(AVPS)は、アポトーシスの阻害に働くIAPs(Inhibitor of apoptosis proteins)ファミリー蛋白質との結合モチーフであり、IAPsと結合してその作用を阻害することによりカスパーゼ依存的な細胞死を促進すると報告されている。この作用は、細胞内でのプロテアーゼアッセイの検討に影響を与える可能性が考えられる。そこで成熟型HtrA2または成熟型HtrA2(S306A)とIAPsとの相互作用を阻害するために、N末の4残基(AVPS)を欠失させたもの(ΔAVPS)または該4残基のうちのアラニンをグリシンに置換したもの(AVPS→GVPS)を成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)についてそれぞれ作製した。これら各種HtrA2はいずれもC末TagとしてFLAGを付加したものを用いた。
1.各種HtrA2の調製
成熟型HtrA2の変異体を作製するために、成熟型HtrA2を鋳型とし、センスプライマーとしてF1およびF2プライマー(ATGの直前にSacI siteを付加、それぞれ配列番号32および配列番号33)を、アンチセンスプライマーとしてHtrA2−RSプライマー(配列番号20)を用い、またDNAポリメラーゼとしてPfu turbo(STRATAGENE社製)を用いてPCR法により、成熟型HtrA2(ΔAVPS)および成熟型HtrA2(GVPS)の各遺伝子を増幅させ、pCR−BluntII−TOPOベクターにクローニングした。また、シークエンサーにより塩基配列を決定した。成熟型HtrA2(ΔAVPS)および成熟型HtrA2(GVPS)の各動物細胞発現プラスミドは、クローニングした成熟型HtrA2(ΔAVPS)および成熟型HtrA2(GVPS)の各遺伝子をSacIとXhoIで消化し、pCMV−Tag4に組込むことにより取得した。本実施例で得られた成熟型HtrA2(ΔAVPS)DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7および配列番号8に記載した。また、成熟型HtrA2(GVPS)DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号9および配列番号10に記載した。
成熟型HtrA2(S306A)の変異体を作製するために、同様に、成熟型HtrA2(S306A)を鋳型とし、PCR法により、成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)および成熟型HtrA2(S306A、GVPS)の各遺伝子を増幅させ、pCR−BluntII−TOPOベクターにクローニングした。成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)および成熟型HtrA2(S306A、GVPS)の各動物細胞発現プラスミドは、クローニングした成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)および成熟型HtrA2(S306A、GVPS)の各遺伝子をSacIとXhoIで消化し、それぞれpCMV−Tag4に組込むことにより取得した。本実施例で用いた成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号11および配列番号12に記載した。また、成熟型HtrA2(S306A、GVPS)DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号13および配列番号14に記載した。
2.各種HtrA2の酵素活性の検討
培養細胞で発現した各種HtrA2に関して、カゼインナトリウムを基質としたプロテアーゼアッセイにより、その酵素活性を測定した(実施例2参照)。その結果、成熟型HtrA2(ΔAVPS)および成熟型HtrA2(GVPS)はいずれもプロテアーゼ活性を有する活性型であること、成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)および成熟型HtrA2(S306A、GVPS)はいずれもプロテアーゼ活性を有さない不活性型であることが判明した。
3.CREBL1およびATF6の動物細胞用発現ベクターの作製
実施例2と同様の方法で作製したものを用いた。
<方法>
各種HtrA2発現プラスミドとCREBL1またはATF6の発現プラスミドとは、トランスフェクション前日に細胞数5×10/6cm DishとしたHEK293T細胞にFuGene6(Roche社製)を用いて導入した。各種HtrA2発現プラスミドはそれぞれ、CREBL1発現プラスミドまたはATF6発現プラスミドと組合せて、いずれも1μg/Dish添加した。48時間後、各種HtrA2とCREBL1またはATF6とを共発現させた細胞に、200μlのリシスバッファーBに2×SDS サンプルバッファー(β−メルカプトエタノール0.1%含む)を等量加え、ソニケーション後、煮沸処理したものを検討用試料とした。
上記各検討用試料10μlを用いてウエスタンブロッティングにより、CREBL1およびATF6の発現並びにこれら蛋白質の分解の有無を検出した。検出用の1次抗体として抗c−Myc(9E10)抗体を、2次抗体としてホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗マウスIgG抗体(Cell Signaling社製)を用いた。検出は、ECL Western Blotting Detection Systemを用いて実施した。
<結果>
プロテアーゼ活性を有する活性型変異体(成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS))とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドが著しく減少した(図2−Aの上図)。また、該活性型変異体とATF6とを共発現させた細胞を用いた解析では、ATF6を示すバンドが著しく減少した(図2−Bの上図)。一方、不活性型HtrA2変異体(成熟型HtrA2 S306(ΔAVPS)または成熟型HtrA2 S306(GVPS))とCREBL1とを共発現させた細胞を用いた解析では、CREBL1を示すバンドの減少は認められなかった(図2−Aの上図)。また、該不活性型HtrA2変異体とATF6とを共発現させた細胞を用いた解析では、ATF6を示すバンドの減少は認められなかった(図2−Bの上図)。細胞内における各HtrA2変異体の発現は、各細胞間でほとんど差がなかった(図2−AおよびBの下図)。
このように、CREBL1およびATF6はいずれも、活性型の成熟型HtrA2(ΔAVPS)または活性型の成熟型HtrA2(GVPS)により細胞内で分解されることが明らかになった。一方、CREBL1およびATF6はいずれも、不活性型の成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)または不活性型の成熟型HtrA2(S306A、GVPS)では分解されなかった。
(HtrA2による分解パターンの検討)
HtrA2によるCREBL1の分解パターンを検討した。検討は、ビオチン化したCREBL1を用いて、HtrA2によるインビトロ プロテアーゼアッセイにより行った。
<材料およびその調製>
1.成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)
成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)は、実施例2と同様の方法で調製したものを用いた。
2.CREBL1動物細胞発現プラスミド
CREBL1動物細胞発現プラスミドは、pCR−BluntII−TOPOベクターに実施例2と同様の方法でクローニングしたCREBL1をBamHIとXhoIで消化し、pcDNA3.1/Hisに組込むことにより取得した。
3.インビトロ翻訳反応系を用いたビオチン化CREBL1の調製
ビオチンで標識されたCREBL1の調製は、ウサギ網状赤血球ライセート(rabbit reticulocyte lysate)を用いたインビトロ翻訳反応系(T登録商標 Transcription/Translation System;Promega社製)で行った。
具体的にはまず、インビトロ翻訳反応溶液(T登録商標 Quick Master Mix)40μlにCREBL1動物細胞発現プラスミド(1μg/μl)1.5μl、1mM メチオニン1μl、ビオチン化リジンtRNA(Promega社製)1μl、ヌクレアーゼを含まない水(Nuclease free water)6.5μlを加えて全量50μlとし、30℃で1.5時間反応させた。その後、反応液50μlから12.5μlを採取し、2×SDS サンプルバッファーを加え煮沸処理後、ウエスタンブロッティングにより、ビオチンでラベルされたCREBL1の発現を検出した。検出は、ストレプトアビジン−HRP(Promega社製)、TranscendTM Chemiluminescent substrate(TranscendTM Non−Radioactive Translation detection system;Promega社製)を用いて行った。その結果、いずれもビオチン化されていることが確認できた。
<方法>
上記反応液をプロテアーゼアッセイの試料として用いた。反応液は12.5μlずつ3本のチューブ(No.2−4)に分注した。No.2のチューブにはコントロールとして、50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.01% TritonX−100を25μl、No.3のチューブには200μg/mlの成熟型HtrA2溶液を25μl、No.4のチューブには200μg/mlの成熟型HtrA2(S306A)溶液25μlをそれぞれ加え混合した。各チューブ(No.2−4)をさらに半量ずつ分注し、1つのチューブは37℃で4時間反応し、もう一方のチューブは、37℃で一晩反応させた。反応後、各チューブに2×SDS サンプルバッファーを加え煮沸処理後、ウエスタンブロッティングにより、ビオチン化CREBL1の分解パターンを検出した。
分解の検出は、CREBL1内部のビオチン化されたリジン残基を指標にして、ストレプトアビジン−HRPおよびTranscendTM Chemiluminescent substrateを用いて行った。
さらに分解箇所を調べる為、ウエスタンブロッティングに用いたメンブレンから、ストレプトアビジン−HRPを除去し、CREBL1のN末に付加されたTagに対する抗体で、ビオチン化CREBL1の分解パターンを検出した。抗体は、1次抗体として抗Xpress抗体(Invitrogen社製)を、2次抗体としてHRP標識化抗マウスIgG抗体(Cell Signaling社製)を用いた。分解の検出は、ECL Western Blotting Detection Reagents(Amersham社製)を用いて行った。
<結果>
CREBL1内部のビオチン化されたリジン残基を指標に、成熟型HtrA2によるCREBL1の分解パターンを検討した結果を図3に示した。また、CREBL1のN末に付加されたTagを指標として、CREBL1の分解パターンを検討した結果を図4に示した。
ビオチン化されたリジン残基を指標にした分解パターンの検討において、ビオチン化CREBL1を示すバンドの著しい減少が認められ、さらに50kDa近辺にCREBL1分解産物と考えられるバンドが検出された(図3)。しかし、抗Tag抗体による分解パターンの検討では、図3で認められた50kDa近辺のCREBL1分解産物と考えられるバンドだけでなく、別のサイズのCREBL1分解産物を示すバンドも全く検出できなかった(図4)。このことから、CREBL1はHtrA2により数箇所で切断されて分解されたと考えられる。
このように、CREBL1内部を標識化して標識物質を検出することにより、HtrA2によるCREBL1の分解が検出された。このことから、CREBL1のN末に付加したTagの検出により明らかになったHtrA2によるCREBL1の分解(実施例2および3)は、Tagが切断分離されたことによる見かけ上の分解ではなく、HtrA2がCREBL1に作用してそのペプチド結合を切断した結果生じた分解であることが判明した。
(HtrA2と相互作用する機能を有する蛋白質のインシリコでの探索)
HtrA2と相互作用する機能を有する蛋白質を、国際公開第WO01/67299号パンフレットに記載の予測方法に従って予測した。すなわち、HtrA2のアミノ酸配列をある長さのオリゴペプチドに分解し、各オリゴペプチドのアミノ酸配列あるいはそのアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を持った蛋白質をデータベース中で検索し、得られた蛋白質とHtrA2との間でローカルアライメントを行い、ローカルアライメントのスコアの高いものをHtrA2と相互作用すると予測した。
解析の結果、HtrA2と相互作用する機能を有すると予測される蛋白質として、HNF−4αを見出した。
(インビトロ プロテアーゼアッセイ)
HNF−4αとHtrA2の相互作用を実験的に検証するために、インビトロにおけるプロテアーゼアッセイを実施した。
<材料およびその調製>
本実施例においては、活性型HtrA2および不活性型HtrA2としてそれぞれ、いずれもC末Tagとしてヒスチジン(His)を付加した成熟型HtrA2(配列番号4)および成熟型HtrA2(S306A)(配列番号6)を用いた。また、HNF−4αとして、N末に(6×His)−Xpress−tagを付加したHNF−4α(配列番号35)を用いた。
1.成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)
成熟型HtrA2および成熟型HtrA2(S306A)は、実施例2と同様の方法で調製したものを用いた。
2.HNF−4α発現プラスミドの作製
HNF−4αについては、まずHuman Brain polyARNAを鋳型としてPCR法によりHNF−4α遺伝子を増幅させた。PCRエラーと思われる塩基置換は、QuickChange Site−Directed Mutagenesis kit(STRATAGENE社製)により修正した。その後、N末に(6×His)−Xpress−tagを付加させる動物細胞用発現プラスミドpcDNA3.1/His(Invitrogen社製)に組込み、HNF−4α発現プラスミド(HNF−4α/pcDNA3.1/His)を構築した。なお、クローニングしたHNF−4α DNAによりコードされる推定アミノ酸配列は、スイスプロットデータベース(Swiss−Prot database)のアクセッションナンバーP41235(登録遺伝子名はHNF4A)に開示されたHNF−4αのアミノ酸配列と同一であった。本実施例で得られたHNF−4α DNAの塩基配列および該DNAによりコードされるアミノ酸配列をそれぞれ配列番号34および配列番号35に記載した。
上記HNF−4α発現プラスミドを用いて、EcoRIサイトで、HNF−4αのDNA配列をN末にFLAG−tagを付加させる動物細胞用発現プラスミドpCMV−Tag2(STRATAGENE社製)に組換えを行い、HNF−4α発現プラスミド(HNF−4α/pCMV−Tag2)を構築した。
3.HNF−4αの調製
トランスフェクション前日に細胞数1.5×10/10cm ディッシュ(Dish)としたHEK293T細胞に、HNF−4α発現プラスミドをFuGene6(Roche社製)にて導入した(10μg/Dish)。48時間後、細胞をPBSで洗浄し、1mlのリシスバッファーB(50mM Tris−HCl(pH7.6)、150mM NaCl、1% トライトンX−100、1% ノニデットP−40(NP−40)、コンプリートミニ(Complete Mini、EDTA不含)を添加し氷上で10分間静置した。その後、スクレーパーで細胞を集め、1.5mlのチューブに入れ、氷冷下でソニケーション処理(15秒×6回)を行い、氷中で20分静置後、ピペッティングで懸濁し、遠心処理(15,000rpm、30分間、4℃)により可溶性画分と不溶性画分を分離した。検討用試料として、可溶性画分(以下、HNF−4α可溶性画分と称する)を用いた。
<方法>
HNF−4α可溶性画分に含まれる夾雑蛋白質の影響を除くために免疫沈降にて樹脂に捕捉したHNF−4αを実験に用いた。具体的には、まず、HNF−4α可溶性画分300μlを6本のチューブ(No.1−6)に分注し、各チューブにBSAでブロッキングした50%スラリーのプロテインG セファロース 4 FF(Amersham社製)を20μl添加し、4℃で1時間転倒混和後、遠心処理(10,000rpm、10秒間、4℃)にて上清を回収し前処理(pre−clean)を行った。得られた上清に抗FLAG抗体(Sigma社製)を0.4μl(2μg)添加し、4℃で3時間転倒混和後に、BSAでブロッキングしたプロテインG セファロース 4 FFを20μl添加し4℃で1晩転倒混和し、プロテインG セファロース 4 FFにHNF−4αを捕捉した。
次にHNF−4αが捕捉されたプロテインG セファロース 4 FFを500μlの洗浄バッファー(50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.01% トライトンX−100)で5回洗浄した後、No.1および2のチューブには50mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、0.01% トライトンX−100を、No.3および4のチューブには50μg/mlの成熟型HtrA2溶液100μlを、No.5および6のチューブには50μg/mlの成熟型HtrA2(S306A)溶液100μlをそれぞれ加えた。No.1、3および5のチューブは37℃で4時間、No.2、4および6のチューブは一晩反応させた後、遠心処理により上清を除去して500μlの洗浄バッファーにて3回、遠心洗浄を行い、2×SDS サンプルバッファー(β−メルカプトエタノール0.1%含む)を80μl加え煮沸処理した。得られた試料80μlのうち10μlを使用し、SDS−PAGE後、PVDF膜へ転写し、ウエスタンブロッティングにより、HNF−4αを検出した。検出用の1次抗体として抗FLAG抗体(Sigma社製)を、2次抗体としてホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗マウスIgG抗体(Cell Signaling社製)を用いた。また、検出はECL Western Blotting Detection System(Amersham社製)を用いて実施した。
<結果>
HNF−4αが成熟型HtrA2によりインビトロで分解されることを認めた。図5に示すように、活性型HtrA2とHNF−4αを1晩(O/N)反応させることにより、HNF−4αを示すバンドが著しく減少した。一方、不活性型HtrA2(成熟型HtrA2(S306A))によるHNF−4αの分解は認められなかった(図5)。
(細胞内におけるプロテアーゼアッセイ)
HNF−4αとHtrA2の相互作用を細胞内におけるプロテアーゼアッセイにより検討した。
<材料およびその調製>
HNF−4α発現用プラスミドとして、実施例6で作製したHNF−4α動物細胞発現用プラスミド(HNF−4α/pCMV−Tag2)を用いた。また、HtrA2発現用プラスミドとして、実施例3で作製した成熟型HtrA2(ΔAVPS)発現用プラスミド、成熟型HtrA2(GVPS)発現用プラスミド、成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)発現用プラスミドおよび成熟型HtrA2(S306A、GVPS)発現用プラスミドを用いた。
<方法>
各種HtrA2発現プラスミドとHNF−4α発現プラスミドは、トランスフェクション前日に細胞数5×10/6cm DishとしたHEK293T細胞にFuGene6(Roche社製)を用いて導入した。各種HtrA2発現プラスミドはそれぞれ、HNF−4α発現プラスミドと組合せて、いずれも1μg/Dish添加した。48時間後、各種HtrA2とHNF−4αとを共発現させた細胞に、200μlのリシスバッファーBと2×SDS サンプルバッファー(β−メルカプトエタノール0.1%含む)を等量加え、ソニケーション後、煮沸処理したものを検討用試料とした。
上記各検討用試料10μlを用いてウエスタンブロッティングにより、HNF−4αの発現並びにHNF−4αの分解の有無を検出した。検出用の1次抗体として抗FLAG抗体(Sigma社製)を、2次抗体としてホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)標識した抗マウスIgG抗体(Cell Signaling社製)を用いた。検出は、ECL Western Blotting Detection Systemを用いて実施した。
<結果>
プロテアーゼ活性を有する活性型変異体(成熟型HtrA2(ΔAVPS)または成熟型HtrA2(GVPS))とHNF−4αとを共発現させた細胞を用いた解析では、HNF−4αを示すバンドが著しく減少した(図6)。一方、不活性型HtrA2変異体(成熟型HtrA2 S306(ΔAVPS)または成熟型HtrA2 S306(GVPS))とHNF−4αとを共発現させた細胞を用いた解析では、HNF−4αを示すバンドの減少は認められなかった(図6)。
このように、HNF−4αは活性型の成熟型HtrA2(ΔAVPS)または活性型の成熟型HtrA2(GVPS)により細胞内で分解されることが明らかになった。一方、HNF−4αは不活性型の成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)または不活性型の成熟型HtrA2(S306A、GVPS)では分解されなかった。
本発明は、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解に基づく糖尿病の防止および/または治療、並びにCREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解に基づく細胞死(例えば膵臓β細胞の細胞死)の阻害のために利用可能であり、医薬分野において非常に有用性が高い。
配列番号1:HtrA2前駆体蛋白質をコードするDNA。
配列番号2:HtrA2前駆体蛋白質。
配列番号3:成熟型HtrA2をコードするDNA。
配列番号4:成熟型HtrA。
配列番号5:配列番号3と同じ塩基配列であってその520位の塩基がgである塩基配列からなるポリヌクレオチド;成熟型HtrA2(S306A)をコードするDNA。
配列番号6:配列番号4と同じアミノ酸配列であって174番目のアミノ酸残基がAlaに置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド;成熟型HtrA2(S306A)。
配列番号7:配列番号3と同じ塩基配列であってその4−15位の塩基を欠失させた塩基配列からなるポリヌクレオチド;成熟型HtrA2(ΔAVPS)をコードするDNA。
配列番号8:配列番号4と同じアミノ酸配列であって2−5番目のアミノ酸残基を欠失させたアミノ酸配列からなるポリペプチド;成熟型HtrA2(ΔAVPS)。
配列番号9:配列番号3に記載の塩基配列と同じ塩基配列であってその5位の塩基がgであるポリヌクレオチド;成熟型HtrA2(GVPS)をコードするDNA。
配列番号10:配列番号4と同じアミノ酸配列であって2番目のアミノ酸残基がGlyに置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド;成熟型HtrA2(GVPS)。
配列番号11:配列番号5と同じ塩基配列であってその4−15位の塩基を欠失させた塩基配列からなるポリヌクレオチド;成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)をコードするDNA。
配列番号12:配列番号6と同じアミノ酸配列であって2−5番目のアミノ酸残基を欠失させたアミノ酸配列からなるポリペプチド;成熟型HtrA2(S306A、ΔAVPS)。
配列番号13:配列番号5に記載の塩基配列と同じ塩基配列であってその5位の塩基がgであるポリヌクレオチド成熟型;HtrA2(S306A、GVPS)をコードするDNA。
配列番号14:配列番号6と同じアミノ酸配列であって2番目のアミノ酸残基がGlyに置換したアミノ酸配列からなるポリペプチド;成熟型HtrA2(S306A、GVPS)。
配列番号15:CREBL1をコードするDNA。
配列番号16:CREBL1。
配列番号17:ATF6をコードするDNA。
配列番号18:ATF6。
配列番号19:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて、成熟型HtrA2 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号20:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて成熟型HtrA2 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号21:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて、成熟型HtrA2(S306A)DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号22:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて、成熟型HtrA2(S306A)DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号23:配列番号15に記載の塩基配列に基づいて、CREBL1 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号24:配列番号15に記載の塩基配列に基づいて、CREBL1 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号25:配列番号15に記載の塩基配列に基づいて、CREBL1 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号26:配列番号15に記載の塩基配列に基づいて、CREBL1 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号27:配列番号17に記載の塩基配列に基づいて、ATF6 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号28:配列番号17に記載の塩基配列に基づいて、ATF6 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号29:配列番号17に記載の塩基配列に基づいて、ATF6 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号30:配列番号17に記載の塩基配列に基づいて、ATF6 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号31:配列番号17に記載の塩基配列に基づいて、ATF6 DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号32:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて、成熟型HtrA2(ΔAVPS)DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号33:配列番号3に記載の塩基配列に基づいて、成熟型HtrA2(GVPS)DNAを取得するために設計されたプライマー用ポリヌクレオチド。
配列番号34:HNF−4αをコードするDNA。
配列番号35:HNF−4α。

Claims (19)

  1. HtrA2(ハイ テンパレイチャー リクワイアメント プロテイン A2、high temperature requirement protein A2)の機能を阻害することを特徴とする、CREBL1(サイクリックAMP レスポンシブ エレメント バインディング プロテイン ライク 1、cAMP responsive element binding protein−like 1)、ATF6(アクティベーティング トランスクリプション ファクター 6、activating transcription factor 6)およびHNF−4α(ヘパトサイト ヌクレアー ファクター 4α、hepatocyte nuclear factor 4α)のうちの少なくとも1の分解阻害方法。
  2. HtrA2の機能を阻害することがCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による切断を阻害することであり、ここでCREBL1のHtrA2による切断を阻害することによりCREBL1の分解が阻害され、ATF6のHtrA2による切断を阻害することによりATF6の分解が阻害され、および、HNF−4αのHtrA2による切断を阻害することによりHNF−4αの分解が阻害される請求項1に記載のCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法。
  3. HtrA2の機能を阻害することがCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1とHtrA2の相互作用を阻害することであり、ここでCREBL1とHtrA2の相互作用を阻害することによりCREBL1の分解が阻害され、ATF6とHtrA2の相互作用を阻害することによりATF6の分解が阻害され、および、HNF−4αとHtrA2の相互作用を阻害することによりHNF−4αの分解が阻害される請求項1に記載のCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法。
  4. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法。
  5. 請求項1から3のいずれか1項に記載のCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解阻害方法を用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法。
  6. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法。
  7. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる糖尿病の防止剤および/または治療剤。
  8. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法であって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を可能にする条件下、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2をある化合物(被検化合物)と接触させ、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1を検出することができるシグナルおよび/マーカーを使用する系を用いて、このシグナルおよび/マーカーの存在若しくは不存在および/または変化を検出することにより、被検化合物がCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解を阻害するか否かを決定することを特徴とする同定方法。
  9. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法であって、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を可能にする条件下、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1および/またはHtrA2をある化合物(被検化合物)と接触させ、CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の存在若しくは不存在の検出および/またはその量の変化の測定により、あるいはCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解物の存在若しくは不存在の検出および/またはその量の変化の測定により、被検化合物がCREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1の分解を阻害するか否かを決定することを特徴とする同定方法。
  10. CREBL1、ATF6およびHNF−4αのうちの少なくとも1のHtrA2による分解を阻害する化合物の同定方法が、糖尿病の防止剤および/または治療剤の有効成分である化合物の同定方法である、請求項8または9に記載の同定方法。
  11. CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害することを特徴とする細胞死阻害方法。
  12. CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上用いることを特徴とする細胞死阻害方法。
  13. 細胞死が膵臓β細胞の細胞死である請求項11または12に記載の細胞死阻害方法。
  14. CREBL1および/またはATF6のHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる細胞死阻害剤。
  15. 細胞死が膵臓β細胞の細胞死である請求項14に記載の細胞死阻害剤。
  16. 請求項11から13のいずれか1項に記載の細胞死阻害方法を用いることを特徴とする糖尿病の防止方法および/または治療方法。
  17. HNF−4αのHtrA2による分解を阻害することを特徴とする2型糖尿病の防止方法および/または治療方法。
  18. HNF−4αのHtrA2による分解を阻害する化合物を1つ以上含んでなる2型糖尿病の防止剤および/または治療剤。
  19. HtrA2、HtrA2をコードするポリヌクレオチドおよびHtrA2をコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1と、CREBL1、ATF6、HNF−4α、CREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチド、およびCREBL1またはATF6またはHNF−4αをコードするポリヌクレオチドを含有するベクターのうちの少なくともいずれか1とを含んでなる試薬キット。
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