JP2007056008A - m−カルパインおよび/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解を阻害することを特徴とする虚血性脳疾患の治療方法 - Google Patents

m−カルパインおよび/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解を阻害することを特徴とする虚血性脳疾患の治療方法 Download PDF

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Abstract

【課題】PEP−19を分解する蛋白質を見出し、該蛋白質によるPEP−19の分解に基づく疾患の防止および/または治療を可能にする手段を提供すること。
【解決手段】PEP−19がμ−カルパインおよびm−カルパインそれぞれにより分解されることを見出したことに基づいて、PEP−19のμ−カルパインによる分解、および/または、PEP−19のm−カルパインによる分解、を阻害することを特徴とする、神経細胞死の阻害手段、さらには神経細胞死に基づく疾患、例えば虚血性脳疾患または神経変性疾患の防止および/または治療のための手段を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19(brain specific polypeptide PEP−19;Purkinje Cell Protein 4とも称される;以下PEP−19と称する)の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法、該分解の阻害剤、該分解の阻害化合物の同定方法に関する。さらに、本発明は、前記分解阻害方法を用いることを特徴とする、虚血性神経細胞死の阻害方法に関する。また、本発明は、前記同定方法により同定された化合物および/または前記阻害剤を含有する虚血性神経細胞死の阻害剤に関する。さらに、本発明は、前記同定方法により同定された化合物および/または前記阻害剤を含有する、虚血性脳疾患または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病の防止剤、治療剤、改善剤に関する。また、本発明は、前記同定する方法により同定された化合物および/または前記阻害剤を用いることを特徴とする、虚血性脳疾患または神経変性疾患、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病の防止方法、治療方法、改善方法に関する。さらに、本発明は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパイン、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つと、PEP−19、PEP−19をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つ、を含有することを特徴とする試薬キットに関する。
生物は、細胞の生存とアポトーシス(細胞死)を調節することで外界のストレスから身を守るが、生存とアポトーシス制御機構の調節の乱れによる過剰な細胞死は、種々の疾患を招く可能性がある。特に、脳における神経細胞死は特別な意味を有する。脳には虚血等の侵襲によって脆弱性を示す特定の部位があることが知られている。該部位は海馬、基底核、小脳、あるいは大脳皮質等であり、これらの部位の細胞は脳のなかでも記憶や学習等の高次機能に関連している。したがって、この特定の部位の神経細胞死は記憶障害や痴呆等の脳疾患をもたらす。神経細胞死の病態を解明してその防御法を開発することはこれらの疾患の予防や治療に直接つながり、高齢化社会における医療において重要な課題である。
虚血から神経細胞死に至る過程においては、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸による神経の過剰興奮が関与していることが強く示唆されている(非特許文献1)。グルタミン酸は、中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であり、記憶・学習等の脳高次機能に重要な役割を果たしている。しかし、その機能的な重要性の反面、過剰なグルタミン酸は神経細胞障害作用を持ち、様々な神経疾患に伴う神経細胞死等の原因と考えられている。脳虚血は神経細胞膜の脱分極を招き、その結果、神経末端からグルタミン酸等の神経伝達物質が神経細胞外(シナプス間隙)に過剰に放出される。過剰量のグルタミン酸はイオンチャネル結合型の受容体に作用し、細胞内に大量のカルシウムが蓄積する。このことによりカルシウム依存性に活性化される酵素(カルモジュリン等)等が活性化され、さらに下流のカルモジュリン依存性因子に作用する結果、神経細胞死に至ると考えられている。
以下に本明細書において引用した文献を列記する。
桐野高明「脳虚血とニューロンの死」、1996年、中央医学社。 反町洋之、「生化学」2000年、第72巻、第11号、p.1297−1315。 Huang,Y.et al.,「TRENDS in Molecular Medicine」2001年,第7巻,p.355−362。 Matsusima−Nishiwaki,R.et al.,「Biochemical and Biophysical Research Communications」1996年,第225巻,p.946−951。 Pariat,M.,et al.,「Molecular and Cellular Biology」1997年,第17巻,p.2806−2815。 Watt F.et al.,「Nucleic Acids Research」1993年,第21巻,p.5092−5100。 Sasaki,T.et al.,「Journal of Biological Chemistry」1984年,第259巻,p.12489−12494。 Ravid,T.et al.,「Journal of Biological Chemistry」2000年,第275巻,p.35840−35847。 Debiasi,R.L.et al.,「Journal of Virology」1999年,第73巻,p.695−701。 Dutt,P.et al.,「FEBS Letter」1998年,第436巻,p.367−371。 Esser,R.E.et al.,「Arthritis and Rheumatism」1994年,第37巻,p.236−247。 Sasaki,T.et al.,「Journal of Biochemistry」1986年,第99巻,p.173−179。 Nath,R.et al.,「Biochemical and Biophysical Research Communications」2000年,第274巻,p.16−21。 Erhardt,J.A.et al.,「Neuroreport」2000年,第11巻,第17号,p3719−3723。 Utal,A.K.et al.,「Neuroscience」1998年,第86巻,第4号,p.1055−1063。 Nixon,R.A.,「Ageing Research Reviews」2003年,第2巻,p.407−418。 Slemmon,J.R.et al.,「Journal of Biological Chemistry」1996年,第271巻,第27号,p.15911−15917。 Johanson,R.A.et al.,「The Journal of Neuroscince」2000年,第20巻,第8号,p.2860−2866。 K.M.Ulmer,「Science」1983年,第219巻,p.666−671。 「ペプチド合成」丸善株式会社、1975年。 「Peptide Synthesis」Interscience,New York,1996年。 Ziai,M.R.et al.,「Journal of Neurochemistry」1998年、第51巻、第6号,p.1771−1776。
脳虚血性脳疾患の治療のためには神経細胞が虚血により細胞死に至る機構を明らかにすることが重要である。これまでに虚血性脳疾患に関する研究が数多くなされてきた。しかしながら、生体内で顕著な効果のある虚血性脳疾患の防止および/または治療手段は未だ確立されていない。したがって、本発明の課題は、脳虚血性疾患の防止および/または治療を可能にする手段を提供することである。
上記課題を解決すべく本発明者らは鋭意努力し、グルタミン酸刺激により誘導される神経細胞死においてニューロン特異的ポリペプチドであるPEP−19の細胞含量が低下すること、および本細胞死がPEP−19の一過性発現により抑制されることを見出した。さらに、PEP−19がm−カルパインと相互作用することをインシリコ(in silico)で予測し、m−カルパインおよびμ−カルパインがそれぞれカルシウム依存的にPEP−19を分解することを実験的に証明して本発明を完成した。
1.カルパイン阻害剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
2.ALLN(N−Acetyl−Leu−Leu−Nle−CHO)、ALLM(N−Acetyl−Leu−Leu−Met−CHO)、およびカルペプチン(calpeptin)からなる群より選ばれる少なくとも1のカルパイン阻害剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
3.グルタミン酸受容体拮抗剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
4.N−メチル−D−アスパラギン酸(N−methyl−D−aspartate;NMDA)受容体拮抗剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
5.前項1から4に記載の分解阻害方法のうち少なくともいずれか1の方法を用いることを特徴とする、虚血性神経細胞死の阻害方法、
6.虚血性神経細胞死が虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死である、前項5に記載の虚血性神経細胞死の阻害方法、
7.下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する化合物の同定方法であって、PEP−19とm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの相互作用を可能にする条件下、ある化合物とPEP−19、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを接触させ、次いで該分解により生じるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を用いて、該シグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、該化合物が該分解を阻害する化合物であるか否かを判定する同定方法、
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
8.下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する、カルパイン阻害剤、
(1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
(2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解、
9.前項7に記載の同定方法により同定された化合物および前項8に記載のカルパイン阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する虚血性神経細胞死の阻害剤、
10.虚血性神経細胞死が虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死である、前項9に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤、
11.前項7に記載の同定方法により同定された化合物、前項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに前項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを用いることを特徴とする、虚血性脳疾患若しくは神経変性疾患の防止方法および/または治療方法、
12.前項7に記載の同定方法により同定された化合物、前項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに前項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを用いることを特徴とする、アルツハイマー病またはハンチントン病の防止方法および/または治療方法、
13.前項7に記載の同定方法により同定された化合物、前項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに、前項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する、虚血性脳疾患もしくは神経変性疾患の防止剤および/または治療剤、
14.前項7に記載の同定方法により同定された化合物、前項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに、前項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する、アルツハイマー病またはハンチントン病の防止剤および/または治療剤、
15.m−カルパインおよび/またはμ−カルパイン、m−カルパインをコードするポリヌクレオチドおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つと、PEP−19、PEP−19をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つ、を含有することを特徴とする試薬キット、
に関する。
本発明では、PEP−19とカルパインが相互作用することを見出し、インビトロにおいてカルパインがPEP−19をカルシウム依存的に分解することを初めて明らかにした。さらに、本分解がカルパイン阻害薬により阻害されることを明らかにした。また、グルタミン酸刺激により誘導される細胞死の過程において、PEP−19の細胞内含量が時間経過により低下すること、本細胞死がPEP−19の一過性発現により抑制されること、ならびにカルパイン阻害薬およびグルタミン酸受容体拮抗薬によりグルタミン酸刺激を受けた細胞におけるPEP−19の含量低下が抑制されることを実証した。PEP−19は神経細胞に特異的に発現しており、神経細胞の生存と細胞死に重要な役割を果たしていると考えられる。これらから、本発明により、カルパインによるPEP−19の分解、に基づく虚血性神経細胞死の阻害、並びに虚血性神経細胞死に基づく疾患、例えば虚血性脳疾患、神経変性疾患の防止、治療または改善が可能となる。
以下、本発明について発明の実施の態様をさらに詳しく説明する。以下の詳細な説明は例示であり、説明のためのものに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。
本明細書においては単離された若しくは合成の完全長蛋白質;単離された若しくは合成の完全長ポリペプチド;または単離された若しくは合成の完全長オリゴペプチドを意味する総称的用語として「ポリペプチド」という用語を使用することがある。ここで蛋白質、ポリペプチド若しくはオリゴペプチドはペプチド結合または修飾されたペプチド結合により互いに結合している2個以上のアミノ酸を含むものである。以降、アミノ酸を表記する場合、1文字または3文字にて表記することがある。
本発明においては、ラット初代培養神経細胞にグルタミン酸刺激を行って細胞死を誘発させる過程で、PEP−19の細胞内含量が時間経過にしたがって低下すること、逆にPEP−19を細胞内に一過性に強制発現させることでグルタミン酸による細胞死が抑制されることを明らかにした。また、グルタミン酸処理と同時にカルパイン阻害剤であるカルペプチン(calpeptin)処理又はNMDA受容体拮抗剤であるAP−5処理を行うことで、PEP−19の蛋白質の分解が抑制されることを明らかにした。さらに、本発明においては、PEP−19とm−カルパインが相互作用することを国際公開WO01/67299号パンフレット記載の方法に従ってインシリコで予測した。さらに実験的に、カルシウム依存的にm−カルパインおよびμ−カルパインそれぞれによりPEP−19が分解されることを初めて明らかにした。
カルパイン(EC 3.4.22.17)は、カルシウム依存性システインプロテアーゼであり、蛋白質を限定的に切断してその構造や機能を変化させる酵素である。カルパインには、構造的特徴、組織局在およびカルシウム要求性等によって分類される多くのアイソザイムが知られており、これらからなるスーパーファミリーを構成している。
m−カルパインは、カルパインスーパーファミリーの1つであり、カルパイン2とも呼ばれ、多くの組織で発現している(非特許文献2)。m−カルパインは1mM程度のカルシウム濃度で活性化され、酵素活性を発現する。μ−カルパインは、カルパイン1とも呼ばれ、m−カルパインと同様に多くの組織で発現している(非特許文献2および3)。μ−カルパインは、m−カルパインと比較してカルシウム要求性が低く、数十μM程度のカルシウム濃度で活性化され、その酵素活性を発現する。
m−カルパインおよびμ−カルパインにより分解される蛋白質としては、p53やレチノイドXレセプター(RXR)等多くの転写因子が報告されている(非特許文献4〜6)。カルパインにより分解される蛋白質には、カルパインによって優先的に切断されるアミノ酸モチーフが存在する(非特許文献7)。例えば、ロイシン残基(Leu)またはバリン残基(Val)等の疎水性アミノ酸残基に続く、チロシン残基(Tyr)、メチオニン残基(Met)またはアルギニン残基(Arg)とそれに続くアミノ酸残基との間で切断される。
PEP−19は海馬の顆粒細胞、小脳のプルキンエ細胞等に含まれているニューロン特異的ポリペプチドである。IQドメインを介してカルシウム非依存的にカルモジュリンに結合する。これまでに、PC12細胞株を用いた実験でPEP−19過剰発現により紫外線照射による細胞死が抑制されることが示されている(非特許文献14)。細胞死は神経変性疾患の大きな要因の一つである。PEP−19と神経変性疾患の関連を示す報告としては、アルツハイマー病患者の小脳におけるPEP−19の発現が低下することや、ハンチントン病患者の脳において、尾状核、被殻、淡蒼球、黒質におけるPEP−19の発現が消失することが組織化学的染色法により確認されている(非特許文献15)。
カルパインと神経変性疾患の関連については、アルツハイマー病患者の黒質においてカルパインが活性化していること、アルツハイマー病モデルマウスにカルパイン阻害剤を投与したところ運動機能の低下抑制が観察されたこと等を示す報告(非特許文献16)があり、カルパインの活性化は神経変性過程に寄与している可能性があると考えられている。
細胞内カルシウムレベルは脳虚血後の病理学事象において重要な役割を担うことが知られている。PEP−19が結合するカルモジュリンは、細胞内カルシウム濃度の上昇により活性化され、下流の様々な蛋白質の機能を制御しており、細胞内カルシウム濃度上昇によるアポトーシスに大きく関与している(非特許文献17)。
PEP−19はカルモジュリンに結合し、PEP−19によってカルモジュリン依存性の酵素(CaM kinase II)の活性化が抑制されることがある(非特許文献18)。従って、神経細胞では、PEP−19がカルモジュリンに結合することで、カルモジュリンによる神経細胞の細胞死誘導が抑制されていると考えられる。しかし、脳虚血においては、シナプス間隙のグルタミン酸濃度が著しく上昇すると細胞内カルシウム濃度が上昇し、カルシウム濃度依存的にカルパインが活性化する。そして活性化されたカルパインによりPEP−19が分解される。本願発明において、μ−カルパインによるPEP−19の切断位置が、PEP−19のアミノ酸配列第47番目のグルタミン残基と第48番目のセリン残基との間であることを明らかにした(実施例5)。本切断位置は、PEP−19とカルモジュリンの結合に関与するPEP−19のIQドメイン内部に位置する為、μ−カルパインによるPEP−19の切断(分解)がPEP−19のカルモジュリンへの結合能を失わせたと考える。このことにより、PEP−19はカルモジュリンに結合できず、カルモジュリンがカルシウムにより活性化されて下流のカルモジュリン依存性因子に作用することで、細胞死が導かれる可能性が示唆される。したがって、カルパインによるPEP−19の分解を阻害することが創薬のターゲットとなると考えられる。
本発明においては、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法を提供する。
本明細書中において、「カルシウム存在下」におけるカルシウム濃度は、カルパインのカルシウム要求性を考慮し、カルパインを活性化してそれらの酵素活性を誘発できる濃度とする。例えば、m−カルパインを活性化するためには、好ましくは1mM以上のカルシウム濃度が好適である。μ−カルパインを活性化するためには、好ましくは約10μM以上、より好ましくは20μM以上、さらに好ましくは約30μM以上のカルシウム濃度が好適である。
「m−カルパインによるPEP−19の分解」とは、m−カルパインによりPEP−19が切断され、その結果PEP−19が断片化することを意味する。また、「μ−カルパインによるPEP−19の分解」とは、μ−カルパインによりPEP−19が切断され、その結果PEP−19が断片化することを意味する。
「m−カルパインによるPEP−19の分解の阻害」とは、m−カルパインによるPEP−19の切断とそれによるPEP−19の断片化を低減させること、またはm−カルパインによるPEP−19の切断とそれによるPEP−19の断片化を起こさせないことを意味する。また、「μ−カルパインによるPEP−19の分解」とは、μ−カルパインによるPEP−19の切断とそれによるPEP−19の断片化を低減させること、またはμ−カルパインによるPEP−19の切断とそれによるPEP−19の断片化を起こさせないことを意味する。
本発明はカルパイン阻害剤により実施できる。「カルパイン阻害剤」とは、カルパインの酵素活性を阻害する物質を意味する。酵素活性として、好ましくは、PEP−19の分解活性を挙げることができる。カルパイン阻害剤は、可逆的阻害剤および非可逆的阻害剤のいずれをも含む。非可逆的阻害剤は、競合阻害剤(competitive inhibitor)、非競合阻害剤(noncompetitive inhibitor)、不競合阻害剤(uncompetitive inhibitor)のいずれをも含む。このような阻害効果を有する物質(後述する例として競合阻害効果を有するポリペプチド類、抗体および低分子化合物等が挙げられる)を阻害剤と称する。
競合阻害剤はその相互作用が基質の反応性と拮抗的である為、カルパインの競合阻害剤は、カルパインと基質の反応性を拮抗的に阻害する。従って、カルパイン阻害剤として、好ましくはカルパインの競合阻害剤を例示可能である。このような競合阻害剤として、ALLM(N−Acetyl−Leu−Leu−Met−CHO、非特許文献8)、ALLN(N−Acetyl−Leu−Leu−Nle−CHO、非特許文献9)、およびカルペプチン(Z−Leu−Nle−CHO)、アンチパイン(antipain、[(S)−1−Carboxy−2−phenylethyl]−carbamoyl−Arg−Val−arginal)、ロイペプチン(leupeptin、N−acetyl−L−leucyl−L−leucyl−L−argininal)を例示できる。
不可逆的カルパイン阻害剤であるZ−Leu−Leu−Tyr−CHF(非特許文献10)、Mu−Val−HPh−CHF(非特許文献11)およびLeu−Leu−Pro−クロロメチルケトン(Chloromethylketone)(非特許文献12)等が市販されている。可逆的カルパイン阻害剤である4−フルオロフェニルスルホニル(Fluorophenyl sulfonyl)−Val−Leu−CHO(非特許文献13)等が市販されている(CALBIOCHEM社製)。
本発明において、グルタミン酸受容体拮抗剤の一つであるNMDA(N−methyl−D−aspartate)受容体拮抗剤であるAP−5、カルパイン阻害剤であるカルペプチンにより、グルタミン酸刺激により誘導された細胞死におけるPEP−19の減少を抑制することができた(実施例3)。さらに、PEP−19のカルパインによる分解を、カルパイン阻害剤であるALLN、ALLMおよびカルペプチンのいずれによっても阻害することができた(実施例4)。
グルタミン酸受容体はイオンチャネル型と代謝型とに大別され、イオンチャネル型はアゴニストに対する選択性に基づき3種に分類される。これらは各々、NMDA受容体、2−アミノ−3−(3−ヒドロキシ−5−メチルイソキサゾール4−イル)プロパン酸(AMPA)受容体、およびカイニン酸受容体と呼ばれる。虚血後の細胞内へのカルシウム流入には、NMDA受容体およびAMPA受容体が関与していることが知られている。NMDA受容体は、NMDA、イボテン酸等のアゴニストにより選択的に活性化される。このNMDA受容体への強い刺激は、大量のカルシウムイオンを神経細胞へ流入させ、これが神経細胞死の原因の一つと考えられている。
従って、本方法は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインのカルシウムによる活性化を阻害する手段により実施可能である。具体的には、グルタミン酸受容体拮抗剤、より具体的にはNMDA受容体拮抗剤により実施可能である。
NMDA受容体はイオンチャネルと複合体をなしており、その受容体部に対して選択的かつ競合的なアンタゴニズムを持つ試薬として、D−2−アミノ−5−ホスホバレリン酸(AP−5)、3−(2−カルボキシピペラジン−4−イル)プロピル−1−リン酸(CPP)が知られている。一方、NMDA受容体に直接作用する非競合的アンタゴニストとしては、ジゾシルピン(MK−801)、フェンサイクリジン(PCP)が知られている。さらにNMDA受容体に対する選択的・競合的アンタゴニズムを作用機序として開発された治療薬としては、キノキサリン−2,3−ジオン等のヘテロ原子含有の2環系・3環系の化合物が知られている(ACEA1201、ZD9379、GV1 50526等)。非競合的アンタゴニズムに基づく治療薬としては、MK−801を始め多種が開発されている(フェルバメート、フルピルチン、アマンタジン、ミメンチン、カルヴェディロール等)。
また、m−カルパインによるPEP−19の分解部位またはμ−カルパインによるPEP−19の分解部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドから、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害するポリペプチドを選択することにより、カルパイン阻害剤であるポリペプチドを取得することができる。選択されたポリペプチドに1個乃至数個のアミノ酸の欠失、置換、付加または挿入等の変異を導入したポリペプチドも本発明に含まれる。このように変異を導入したポリペプチドは、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害するものが好ましい。
m−カルパインによるPEP−19の分解、μ−カルパインによるPEP−19の分解、およびそれらの分解阻害の検出は、m−カルパインまたはμ−カルパインとPEP−19とをカルシウム存在下において接触させた後、ウェスタンブロット法等の公知の方法を使用して実施可能である。
本発明において、μ−カルパインによるPEP−19の切断位置が、PEP−19のアミノ酸配列第47番目のグルタミン残基と第48番目のセリン残基の間であることを明らかにした(実施例5および6)。従って、PEP−19のμ−カルパインにより分解される部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドとして、PEP−19のアミノ酸配列第47番目のグルタミン残基と第48番目のセリン残基を含む、PEP−19の部分ポリペプチドを例示できる。かかる部分ポリペプチドのアミノ酸配列長は、好ましくは5〜30アミノ酸残基、より好ましくは20アミノ酸残基程度であり得る。
変異を有するポリペプチドは天然に存在するものであってよく、また変異を導入したものであってもよい。欠失、置換、付加または挿入等の変異を導入する手段は自体公知であり、例えばウルマー(Ulmer)の技術(非特許文献19)を利用できる。このような変異の導入において、当該ポリペプチドの基本的な性質(物性、機能または免疫学的活性等)を変化させないという観点から、例えば、同族アミノ酸(極性アミノ酸、非極性アミノ酸、疎水性アミノ酸、親水性アミノ酸、陽性荷電アミノ酸、陰性荷電アミノ酸および芳香族アミノ酸等)の間での相互置換は容易に想定される。さらに、これら利用できるポリペプチドは、その構成アミノ基またはカルボキシル基等を、例えばアミド化修飾する等、機能の著しい変更を伴わない程度に改変が可能である。このようなポリペプチドの具体例として、ALLN(N−Acetyl−Leu−Leu−Nle−CHO)、ALLM(N−Acetyl−Leu−Leu−Met−CHO)、カルペプチン等が挙げられる。
上記ポリペプチドは、ペプチド化学において知られる一般的な方法で製造できる。例えば、成書(非特許文献20および21)に記載の方法が例示されるが、これらに限らず公知の方法が広く利用可能である。具体的には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法、例えばFmoc法等を挙げることができる。または市販のアミノ酸合成装置を用いて製造可能である。あるいは遺伝子工学的手法により取得することもできる。例えば目的とするポリペプチドをコードする遺伝子を宿主細胞中で発現できる組換えDNA(発現ベクター)を作成し、これを適当な宿主細胞、例えば大腸菌にトランスフェクションして形質転換した後に該形質転換体を培養し、次いで得られる培養物から目的とするポリペプチドを回収することにより製造可能である。
カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを認識する抗体であって、m−カルパインとPEP−19の相互作用および/またはμ−カルパインとPEP−19の相互作用を阻害する抗体を用いることによって達成可能である。かかる抗体は、PEP−19、m−カルパインまたはμ−カルパイン自体、PEP−19のm−カルパインによる分解部位、あるいはPEP−19のμ−カルパインによる分解部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドを抗原として、自体公知の抗体作製方法により得ることができる。
カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する阻害剤は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを特異的に阻害するものが好ましい。特異的とは、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを強く阻害するが、他の酵素は阻害しないまたは弱く阻害することを意味する。さらに、PEP−19を基質とする場合には強く阻害するが、他の基質の場合は阻害しないまたは弱く阻害する場合、より好ましく特異的である。
上記したように、本発明においては、グルタミン酸刺激により誘導される神経細胞死の過程で、PEP−19の細胞内含量が時間経過にしたがって低下すること、逆に細胞内にPEP−19を一過性強制発現させることによりグルタミン酸により誘導される細胞死が抑制されることを明らかにした。虚血性神経細胞死は、グルタミン酸刺激が主要因となり誘導されることから、本発明は虚血性神経細胞死の阻害方法、より詳しくは虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死の阻害方法を提供する。かかる阻害方法は、例えば、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法を使用することにより、実施可能である。さらに、PEP−19により実施可能である。
さらに、本発明は、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する化合物の同定方法を提供する。本方法は、自体公知の医薬品スクリーニングシステムを利用して構築可能である。
例えば、PEP−19とm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの相互作用を可能にする条件下、当該条件下で調べようとする化合物(被験化合物、候補化合物)とPEP−19、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを接触させ、次いで該分解により生じるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を用いて、該シグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、該化合物が該分解を阻害する化合物であるか否かを判定することができる。
PEP−19とm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの相互作用を可能にする条件は、インビトロのものであってよく、インビボのものであってもよい。例えば、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインとPEP−19とを共発現させた細胞を用いることもできる。細胞における発現は、PEP−19をコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターと、m−カルパインをコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチドを含む適当なベクターとを、慣用の遺伝子工学的方法でこれらを細胞にトランスフェクションすることにより達成可能である。また、例えば、カルシウム、PEP−19ならびにm−カルパインおよび/またはμ−カルパインが溶解している適当な緩衝液を用いるインビトロアッセイによっても実施可能である。カルシウム濃度は、用いるカルパインを活性化し、その酵素活性を誘発できる濃度であればよい。
被験化合物とPEP−19、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインの接触は、PEP−19の該カルパインによる分解反応の前に行なってもよいし、それらの反応と共存させることも可能である。
ここでシグナルとは、そのもの自体がその物理的または化学的性質により直接検出され得るものを指し、マーカーとはそのものの物理的または生物学的性質を指標として間接的に検出され得るものを指す。シグナルとしてはルシフェラーゼ、グリーン蛍光蛋白質、および放射性同位体等、マーカーとしては、レポーター遺伝子、例えばクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子等、または検出用のエピトープタグ、例えば6×His−tag等、公知のものが利用できる。これらシグナルまたはマーカーの検出方法は当業者には周知のものである。簡便には、m−カルパインによるPEP−19の分解および/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解は、これら蛋白質またはこれら蛋白質の分解物の存在若しくは不存在の検出および/またはその量の変化の測定により判定可能である。これら蛋白質量またはこれら蛋白質の分解物量の定量は、自体公知の蛋白質またはペプチドの検出方法、例えばウェスタンブロッティング法等を用いて実施できる。
本発明において使用するm−カルパインおよび/またはμ−カルパイン、PEP−19は、これらを遺伝子工学的手法で発現させた細胞、無細胞系合成産物、化学合成産物、または該細胞や生体試料から調製したものであってよく、これらからさらに精製されたものであってもよい。また、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインとPEP−19の相互作用、およびこれら蛋白質の機能、例えばm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの蛋白質分解酵素活性やPEP−19の酵素基質としての性質等に影響がなければ、N末端側やC末端側に別の蛋白質やポリペプチド、例えばβ−ガラクトシダーゼ、IgG等の免疫グロブリンFc断片、His−tag、Myc−tag、HA−tag、FLAG−tag、またはXpress−tag等のtagペプチド類を、直接的にまたはリンカーペプチド等を介して間接的に、遺伝子工学的手法等を用いて付加したものであってもよい。
本発明において、m−カルパイン、μ−カルパイン若しくはPEP−19又はその遺伝子を生体試料から調製、使用する場合、その由来はヒトに限らない。例えば、ラット、マウス、ブタ、ウシ等の生体由来試料からこれら蛋白質又は該蛋白質をコードする遺伝子を調製して使用することも可能である。
本発明において使用できる、ヒトPEP−19の蛋白質のアミノ酸配列を配列番号1に、ヒトPEP−19のDNAの塩基配列を配列番号2に、ヒトμ−カルパインラージサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号3に、ヒトμ−カルパインラージサブユニットのDNAの塩基配列を配列番号4に、ヒトμ−カルパインスモールサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号5に、ヒトμ−カルパインスモールサブユニットのDNAの塩基配列を配列番号6に、ラットm−カルパインラージサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号7に、ラットm−カルパインラージサブユニットのmRNAの塩基配列を配列番号8に、ラットm−カルパインスモールサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号9に、ラットm−カルパインスモールサブユニットのDNAの塩基配列を配列番号10に、ブタm−カルパインラージサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号11に、ブタm−カルパインスモールサブユニットの蛋白質のアミノ酸配列を配列番号12に、ブタm−カルパインスモールサブユニットのDNAの塩基配列の配列番号13に示す。
被検化合物としては、例えば化学ライブラリーや天然物由来の化合物、またはm−カルパイン、μ−カルパイン、PEP−19の一次構造や立体構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等が挙げられる。あるいは、PEP−19のm−カルパインにより分解される部位、またはPEP−19のμ−カルパインより分解される部位のアミノ酸配列からなるポリペプチドの構造に基づいてドラッグデザインして得られた化合物等も被検化合物・候補化合物として好適である。
さらに、本発明は、カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解およびカルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解からなる群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する、カルパイン阻害剤を提供する。カルパイン阻害剤として、好ましくはカルパインの競合阻害剤であり得る。
本発明において、カルパイン阻害剤であるカルペプチンにより、グルタミン酸刺激により誘導された細胞死におけるPEP−19の減少を抑制することができた(実施例3)。さらに、カルシウム存在下(実施例においては、6mM CaCl)におけるPEP−19のm−カルパインによる分解およびカルシウム存在下(実施例においては、6mM CaCl)におけるPEP−19のμ−カルパインによる分解を、カルパイン阻害剤であるALLN、ALLMおよびカルペプチンのいずれによっても阻害することができた(実施例4)。従って、本発明に係るカルパイン阻害剤として、ALLN、ALLMまたはカルペプチンを例示することができる。
また、上記同定方法で得られた化合物は、本発明に係るカルパイン阻害剤、本発明に係るカルパイン競合阻害剤、PEP−19のm−カルパインによる分解の阻害剤、PEP−19のμ−カルパインによる分解の阻害剤として利用可能である。当該化合物は、生物学的有用性と毒性のバランスを考慮して選別することにより、医薬用組成物として調製可能である。医薬用組成物の調製において、これらの化合物は、単独で使用することもできるし、複数を組合わせて使用することもできる。
PEP−19、上記同定方法で同定された化合物、本発明に係るカルパイン阻害剤、本発明に係るカルパイン競合阻害剤は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解に基づく神経細胞死の阻害剤、阻害方法に利用可能である。好ましくは、虚血性神経細胞死の阻害剤、阻害方法として有用である。より好ましくは、虚血性神経細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死の阻害剤、阻害方法に利用できる。
PEP−19、上記同定方法で同定された化合物、本発明に係るカルパイン阻害剤、本発明に係るカルパイン競合阻害剤、本発明に係る虚血性神経細胞死の阻害剤は、さらに、m−カルパインによるPEP−19の分解および/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解に基づく疾患の防止剤および/または治療剤、ならびに当該疾患の防止方法および/または治療方法に利用可能である。かかる疾患として、例えば神経細胞死に基づく疾患、具体的には虚血性脳疾患または神経変性疾患を挙げることができる。神経変性疾患としては、アルツハイマー病、ハンチントン病を挙げることができる。
本発明に係る疾患の防止剤および/または治療剤は、PEP−19、上記同定方法で同定された化合物、本発明に係るカルパイン阻害剤、本発明に係るカルパイン競合阻害剤、本発明に係る虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれか1つを有効成分としてその有効量を含む医薬としてなしてもよいが、通常は、1種または2種以上の医薬用担体を用いて医薬用組成物として製造することが好ましい。
本発明に係る医薬製剤中に含まれる有効成分の量は、広範囲から適宜選択されるが、通常約0.00001〜70重量%、好ましくは0.0001〜5重量%程度の範囲とするのが適当である。
医薬用担体としては、製剤の使用形態に応じて通常使用される、充填剤、増量剤、結合剤、付湿剤、崩壊剤、滑沢剤等の希釈剤や賦形剤等を例示でき、これらは得られる製剤の投与形態に応じて適宜選択使用される。
例えば水、医薬的に許容される有機溶剤、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、ペクチン、キサンタンガム、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、寒天、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、パラフィン、ステアリルアルコール、ステアリン酸、ヒト血清アルブミン、マンニトール、ソルビトール、ラクトース等が挙げられる。これらは、本発明に係る剤形に応じて適宜1種類または2種類以上を組合せて使用される。
所望により、通常の蛋白質製剤に使用され得る各種の成分、例えば安定化剤、殺菌剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調整剤、界面活性剤等を適宜使用して調製することもできる。
安定化剤としては、例えばヒト血清アルブミンや通常のL−アミノ酸、糖類、セルロース誘導体等を例示でき、これらは単独でまたは界面活性剤等と組合せて使用できる。特にこの組合せによれば、有効成分の安定性をより向上させ得る場合がある。上記L−アミノ酸は、特に限定はなく、例えばグリシン、システイン、グルタミン酸等のいずれでもよい。糖類も特に限定はなく、例えばグルコース、マンノース、ガラクトース、果糖等の単糖類、マンニトール、イノシトール、キシリトール等の糖アルコール、ショ糖、マルトース、乳糖等の二糖類、デキストラン、ヒドロキシプロピルスターチ、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等の多糖類等およびそれらの誘導体等のいずれでもよい。セルロース誘導体も特に限定はなく、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のいずれでもよい。界面活性剤も特に限定はなく、イオン性および非イオン性界面活性剤のいずれも使用できる。これには、例えばポリオキシエチレングリコールソルビタンアルキルエステル系、ポリオキシエチレンアルキルエ−テル系、ソルビタンモノアシルエステル系、脂肪酸グリセリド系等が包含される。
緩衝剤としては、ホウ酸、リン酸、酢酸、クエン酸、ε−アミノカプロン酸、グルタミン酸および/またはそれらに対応する塩(例えばそれらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩)等を例示できる。
等張化剤としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、糖類、グリセリン等を例示できる。
キレート剤としては、例えばエデト酸ナトリウム、クエン酸等を例示できる。
本発明に係る医薬および医薬組成物は、溶液製剤として使用できる他に、これを凍結乾燥化し保存し得る状態にした後、用時、水や生埋的食塩水等を含む緩衝液等で溶解して適当な濃度に調製した後に使用することも可能である。
医薬組成物の用量範囲は特に限定されず、含有される成分の有効性、投与形態、投与経路、疾患の種類、対象の性質(体重、年齢、病状および他の医薬の使用の有無等)、および担当医師の判断等応じて適宜選択される。一般的には適当な用量は、例えば対象の体重1kgあたり約0.01μg乃至100mg程度、好ましくは約0.1μg〜1mg程度の範囲であることが好ましい。しかしながら、当該分野においてよく知られた最適化のための一般的な常套的実験を用いてこれらの用量の変更を行うことができる。上記投与量は1日1〜数回に分けて投与することができ、数日または数週間に1回の割合で間欠的に投与してもよい。
本発明の医薬組成物を投与するときには、該医薬組成物を単独で使用してもよく、あるいは目的の疾患の防止、治療または改善に必要な他の化合物または医薬と共に使用してもよい。
投与経路は、全身投与または局所投与のいずれも選択することができる。この場合、疾患、症状等に応じた適当な投与経路を選択する。例えば、非経口経路として、通常の静脈内投与、動脈内投与のほか、皮下、皮内、筋肉内等への投与を挙げることができる。あるいは経口による投与も可能である。さらに、経粘膜投与または経皮投与も可能である。
投与形態としては、各種の形態が目的に応じて選択でき、その代表的なものとしては、錠剤、丸剤、散剤、粉末剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤等の固体投与形態や、水溶液製剤、エタノール溶液製剤、懸濁剤、脂肪乳剤、リポソーム製剤、シクロデキストリン等の包接体、シロップ、エリキシル等の液剤投与形態が含まれる。これらは更に投与経路に応じて経口剤、非経口剤(点滴剤、注射剤)、経鼻剤、吸入剤、経膣剤、坐剤、舌下剤、点眼剤、点耳剤、軟膏剤、クリーム剤、経皮吸収剤、経粘膜吸収剤等に分類され、それぞれ通常の方法に従い、調合、成形、調製することができる。
さらに、本発明は、m−カルパインおよび/またはμ−カルパイン、m−カルパインをコードするポリヌクレオチドおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および該ベクターで形質転換されてなる形質転換体の少なくともいずれか1つと、PEP−19、PEP−19をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換のうち少なくともいずれか1つ、を含有することを特徴とする試薬キットを提供する。当該キットは、例えば、本発明に係る同定方法に使用することができる。
m−カルパインおよびμ−カルパインは、標品として取得することができる。
m−カルパインをコードするポリヌクレオチドおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチドは、例えば、ヒトcDNAライブラリーから自体公知の遺伝子工学的手法により調製することができる。該ポリヌクレオチドを含有するベクターは該ポリヌクレオチドを適当な発現ベクターに自体公知の遺伝子工学的手法で導入することにより製造することができる。該ベクターで形質転換されてなる形質転換体は、適当な宿主を用い自体公知のトランスフェクション法を用いて製造することが可能である。
本キットは、m−カルパインによるPEP−19の分解、μ−カルパインによるPEP−19の分解等の検出に用いられるシグナルおよび/またはマーカー、緩衝液、並びに塩等の必要とされる物質を含むことができる。さらに、安定化剤および/または防腐剤等の物質を含んでいてもよい。製剤化にあたっては、使用する各物質それぞれに応じた製剤化手段を導入すればよい。
(PEP−19高発現のグルタミン酸毒性に対する作用)
初代培養神経細胞内でPEP−19を高発現させ、グルタミン酸刺激によりどのような影響を受けるのかを検討した。
<材料およびその調製>
Wistar系ラット(胎生17〜18日齢)大脳皮質より初代培養神経細胞を得た。発現ベクターはN末端側にFLAG−tagを付加したPEP−19の翻訳領域をpcDNA3.1(+)(Invitrogen社製)に組換えることにより作成したPEP−19発現プラスミド、およびβGal発現ベクターを用いた。
<方法>
初代培養神経細胞にPEP−19発現プラスミドを導入し、グルタミン酸により刺激した。具体的には、細胞数3×10/ウェル(N=6)の初代培養神経細胞をポリエチレンイミンでコートしたカバースリップを入れた24ウェルプレートに播種し、B27添加物を含むDMEM培地中で5% COの存在下、37℃にて5日間培養後、リン酸カルシウム法にてPEP−19発現プラスミドおよびβGal発現ベクターをトランスフェクションした。培養2日後に200μM グルタミン酸(東京化成工業社製)で処理を行い、細胞死を惹起した。6時間後に4% パラホルムアルデヒドで細胞を固定し、抗βGal抗体(Promega社製)で免疫染色、ヘキスト染色で核を染めた。その後、顕微鏡下でβGal発現細胞を観察し、細胞の生死を判定して計数した。
<結果>
グルタミン酸処理により、6時間後の死細胞の割合が3倍程度に増加するが、図1に示すようにPEP−19高発現により死細胞の割合はグルタミン酸無処理の細胞群とほとんど変わらなかった。このことからPEP−19を細胞内で高発現させることで、グルタミン酸誘導型細胞死を抑制できることがわかった。
(PEP−19と相互作用する機能を有する蛋白質のインシリコでの探索)
PEP−19と相互作用する機能を有する蛋白質を、国際公開第WO01/67299号パンフレットに記載の予測方法に従って予測した。
<材料および方法>
PEP−19のアミノ酸配列(配列番号1)をある長さのオリゴペプチドに分解し、各オリゴペプチドのアミノ酸配列あるいはそのアミノ酸配列と相同なアミノ酸配列を持った蛋白質をデータベース中で検索し、得られた蛋白質とPEP−19との間でローカルアライメントを行い、ローカルアライメントのスコアの高いものをPEP−19と相互作用すると予測した。
<結果>
図2に示すように、予測解析の結果、PEP−19由来のアミノ酸残基からなるオリゴペプチド(KKAGSQ(配列番号14)、EFDIDMD(配列番号16))と相同性のあるオリゴペプチド(KKADYQ(配列番号15)、EFDISED(配列番号17))が、m−カルパインのアミノ酸配列中に存在することがわかった。
(グルタミン酸によるPEP−19減少に対するNMDA受容体拮抗薬とカルパイン阻害薬の作用)
NMDA拮抗薬やカルパイン阻害薬による処理を行うことにより、グルタミン酸誘導性のPEP−19の分解を抑制できるか否かを検討した。
<材料およびその調製>
実施例1と同様にWistar系ラット(胎生17〜18日齢)大脳皮質より初代培養神経細胞を得た。抗PEP−19抗体は非特許文献22を参考にウサギに抗体作製用抗原PEP−19を免疫して作製した。
<方法>
初代培養神経細胞のグルタミン酸処理および薬剤処理を行った。具体的には、細胞数5×10/ディッシュ(N=1)の初代培養神経細胞を12ウェルプレートに播種し、B27添加物を含むDMEM培地中で5% COの存在下、37℃にて2週間培養後、NMDA拮抗薬であるAP−5 0.5mM(Research Biochemicals International社製)あるいはカルパイン阻害薬であるカルペプチン(CalbioChem社製)20μMを添加し、1時間後に500μMのグルタミン酸(東京化成工業社製)で処理をし、4時間培養した。その後細胞を回収し、細胞ライセートを調製し、SDS−PAGEを行ってイモビロンPVDF(Millipore社製)に転写した後、抗PEP−19抗体(第一製薬株式会社製)を用いてウエスタンブロットを行った。
<結果>
図3に示すようにグルタミン酸によるPEP−19の減少は、AP−5(NMDA拮抗薬)、カルペプチン(カルパイン阻害薬)により抑制された。このことから、グルタミン酸誘導性の細胞死において、NMDA受容体を介した細胞内のカルシウムの増加によって活性化されたカルパインがPEP−19を分解し、その結果、カルモジュリンが過剰に機能する可能性が示唆された。
(PEP−19のカルパインによる分解(in vitroプロテアーゼアッセイ))
カルパインによるPEP−19の分解を哺乳類培養細胞および大腸菌にて発現させたPEP−19蛋白質と精製カルパインを用いたin vitroプロテアーゼアッセイにて検討した。
1.哺乳類培養細胞発現PEP−19
<方法>
哺乳類培養細胞用発現ベクターpcDNA3.1−His(N末端His−Xpress−tag付加、Invitrogen社製)にPEP−19遺伝子を組み込み、発現ベクターPEP19/pcDNA3.1−Hisを構築した。HEK293T細胞にFuGENE6(Roche社製)を用いてPEP−19/pcDNA3.1−Hisをトランスフェクションし、48時間培養後、lysis buffer(20mM HEPES(pH7.5)/150mM NaCl/1% Triton−X 100)で細胞を溶解、4℃で15000rpm、30分間遠心した上清を細胞ライセートとした。作製した細胞ライセートにヒトμ−カルパイン、ラットm−カルパインまたはブタm−カルパイン(calbiochem社製)を添加し、200mM Tris−HCl(pH7.8)/1mM ジチオスレイトール(DTT)/6mM CaCl存在下で37℃、1時間インキュベーションした。カルシウム非存在下として、CaClの代わりに10mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を添加した試料を作製した。インキュベーション後の試料は等量の2×SDSサンプルバッファーを加え5分間加熱し、SDS−PAGEにより分離後、抗PEP−19抗体を用いたウエスタンブロットによりPEP−19を検出した。検出はECL−PLUS(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用して行った。
<結果>
図4に示すように、哺乳類培養細胞に発現させたPEP−19蛋白質はヒトμ−カルパイン、ラットm−カルパインおよびブタm−カルパインにより、カルシウム添加群において分解が認められた。一方、EDTA添加群では、カルパイン存在下でもPEP−19の分解が見られなかった。これらから、PEP−19はカルパインによってカルシウム依存的に分解されることが判明した。
2.大腸菌発現PEP−19
<方法>
大腸菌用発現ベクターpET24(+)(N末端His−tag、Novagen社製)にPEP−19遺伝子を組み込み、発現ベクターPEP−19/pET24(+)を構築した。大腸菌BL21star(DE3)株にPEP−19/pET24(+)をトランスフォーメーションし、His−tag付加PEP−19発現大腸菌を作製した。この大腸菌を0.1mM イソプロピル 1−チオ−β−D−ガラクトシド(IPTG)で誘導し、6時間培養後、菌体を遠心により回収した。Bug Buster Protein Extraction Reagent(Novagen社製)で菌体を溶解し、4℃、16000rpmにて20分間遠心後、上清を分離した。得られた上清からTALON Metal Affinity Resins(Clontech社製)でHis−tag付加PEP−19蛋白質を精製した。精製したHis−tag付加PEP−19は8kDa Frame Dialysis Membrane(PIERCE社製)で透析を行い、溶液をPBSと置換し、プロテアーゼアッセイの基質とした。His−tag付加PEP−19蛋白質をヒトμ−カルパイン、ラットm−カルパインまたはブタm−カルパイン(calbiochem社製)と200mM Tris−HCl(pH7.8)/1mM DTT/6mM CaCl存在下で37℃、1時間インキュベーションした。カルシウム非存在下としてCaClの代わりに10mMのEDTAを添加した試料を作製した。インキュベーション後の試料は等量の2×SDSサンプルバッファーを加え5分間加熱し、SDS−PAGEにより分離後、抗PEP−19抗体を用いたウエスタンブロットによりPEP−19を検出した。なお、検出はECL−PLUS(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用した。
<結果>
図5に示すように、大腸菌で発現させたPEP−19蛋白質はヒトμ−カルパイン、ラットm−カルパインおよびブタm−カルパインにより、カルシウム添加群おいて分解が確認された。一方、EDTA添加群ではカルパイン存在下でもPEP−19の分解が見られなかったことにより、PEP−19はカルパインによってカルシウム依存的に分解されることが示された。
3.カルパイン阻害薬による分解阻害
<方法>
実施例4の1.における哺乳類培養細胞発現PEP−19と同様にPEP−19/pCDNA3.1−His発現ベクターでPEP−19蛋白質を発現させた細胞ライセートを作製した。細胞ライセートにヒトμ−カルパインまたはラットm−カルパイン(calbiochem社製)を添加し、200mM Tris−HCl(pH7.8)/1mM DTT/6mM CaCl存在下で37℃、1時間インキュベーションした。カルシウム非存在下としてCaClの代わりに10mMのEDTAを添加した試料を、またカルパイン阻害薬添加群として最終濃度50μMとなるようにALLN、ALLMまたはカルペプチン(calbiochem社製)を添加した試料をそれぞれ作製した。インキュベーション後の試料は等量の2×SDSサンプルバッファーを加えて5分間加熱し、SDS−PAGEにより分離後、抗PEP−19抗体を用いたウエスタンブロットによりPEP−19を検出した。なお、検出はECL−PLUS(Amersham Pharmacia Biotech社製)を使用した。
<結果>
図6に示すようにPEP−19蛋白質のヒトμ−カルパインおよびラットm−カルパインによる分解はALLN、ALLM、カルペプチンのいずれかのカルパイン阻害薬によって阻害された。
(MS装置「4700 Proteomics Analyzer」を用いたHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)消化ペプチドの分析)
μ−カルパイン処理前後のPEP−19の質量情報を得ることを目的としてMALDI−TOF/TOF−MS装置「4700 Proteomics Analyzer」を用いた質量分析を行った。
PEP−19として、N末端およびC末端にそれぞれT7−tagおよびHis−tagが付加されたPEP−19(以下、T7−PEP−19−Hisと称する)を大腸菌発現系にて発現させて用いた。
<方法>
大腸菌発現系にて発現させたT7−PEP−19−HisをTALON Metal Affinity Resins(Clontech社製)を用いて精製し、試料(1)(μ−カルパイン添加前の試料)とした。これに、200mM Tris−HCl(pH7.8)、1mM DTT、および6mMCaCl共存下、等量のμ−カルパインを添加し、37℃で1時間酵素反応させ、試料(2)(μ−カルパイン添加後の試料)とした。分析装置には、MALDI−TOF型MS装置「4700 proteomics analyzer」(Applied Biosystems社製)を使用した。
5 μlの試料(1)および(2)に各々5 μlの2%ギ酸を添加し、Zip tip C18(Millipore社製)を用いて試料を脱塩後、2 μlに濃縮した。その0.5μlをマトリックスとともにMALDI用サンプルプレートに塗布し、乾固後、「4700 Proteomics Analyzer」でMALDI−TOF/TOF−MS分析を行った。マトリックスにはα−CHCAを使用した。試料(1)はLinear mode、試料(2)はReflectron modeで測定した。
<結果>
図7に示すように、試料(1)のMS測定の結果、強度の高いm/z 9200のイオンが検出された。また、図8に示すように、試料(2)のMS測定の結果、m/z 6393.9および2818.6をモノアイソトピック質量(Mm.)とするイオンが観測された。さらに、m/z2818.6のイオンをMS/MS測定したところ、m/z841.3、704.3、567.2、430.2のフラグメントが観測された。これらのイオンの質量差(約137)は、連続したHisの存在の可能性を示した。m/z 2818.6のペプチドがHis−tagを有すると仮定した場合、m/z841.3のイオンはy6イオン(His−His−His−His−His−His)の質量(841.4)と一致した。以上の結果から、消化前のT7−PEP−19−Hisの質量は約9200であること、それにμ−カルパインを添加することで、Mm.6393.9と2818.6の2つのペプチドが生成すること、さらに、Mm.2818.6のペプチドにはHis−tagが存在することが示唆された。
T7−PEP−19−Hisのアミノ酸配列をもとに作成した質量テーブルを用いて、得られたMS測定結果を照合した。その結果、消化前のT7−PEP−19−Hisのアミノ酸配列は、T7−tagのアミノ末端(Met)が1残基切断された配列にPEP−19の配列およびHis−tagの配列が連結されたもの、すなわちASMTGGQQMGRDPMSERQGAGPTNGKDKTSGENDGQKKVQEEFDIDMDAPETERAAVAIQSQFRKFQKKKAGSQSLEHHHHHHと推測された。また、消化後のサンプルから検出されたペプチドの一方(Mm.6393.9)はアミノ末端側(ASMTG・・・AVAIQ、Mm.:6393.9)、他方(Mm.2818.6)はカルボキシル末端側(SQFRK・・・LEHHHHHH、Mm.:2818.4)であり、μ−カルパインによるPEP−19切断部位は47位(Gln)と48位(Ser)の間であると推測された。
(MS装置「LTQ−FT」を用いたHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)消化ペプチドの分析)
実施例5で導き出した推測の正否を確認するため、より分解能・質量精度が高いLC/MS/MS装置「LTQ−FT」を用いて、μ−カルパインで分解したT7−PEP−19−Hisおよび分解前のT7−PEP−19−Hisの分析を行った。
<方法>
大腸菌発現系にて発現させたT7−PEP−19−HisをTALON Metal Affinity Resins(Clontech社製)を用いて精製し、試料(1)(μ−カルパイン添加前の試料)とした。これに、200mM Tris−HCl(pH7.8)、1mM DTT、および6mM CaCl共存下、等量のμ−カルパインを添加し、37℃で1時間酵素反応させ、試料(2)(μ−カルパイン添加後の試料)とした。各試料を0.01%トリフルオロ酢酸で100倍希釈し、その1μlをLC/ESI−MS/MS分析した。分析装置には、HPLC装置「ParadigmMS4」(AMR社製)とオートサンプラー「HTCPAL」(AMR社製)を接続し、nanoESIを搭載した、ESI−IT−FTICR型MS装置「LTQ−FT」(ThermoELECTRON社製)を使用した。
<結果>
試料(1)では、HPLC溶出時間25.7分にピークが検出され、スペクトル上にm/z 1315.3および1151.0のイオンが観測された。それらのイオンをdeconvolution(デコンボリューション)したところ、前駆体の平均質量9200.0が算出された。先のイオンは各々その7価および8価イオンであった。また、試料(2)では、HPLC溶出時間22.2分のピークのスペクトル上にm/z1280.6の5価イオンが観測され、デコンボリューションの結果、前駆イオンの平均質量6399.0が算出された。さらに、図9に示すように、前記5価イオンをMS/MS測定したところ、m/z1251.58、1228.96、および1214.75の5価イオンが観測され、その質量差から、本ペプチドの末端配列がAIQであることが明らかとなった。
このことから、消化前のT7−PEP−19−Hisの平均質量は9200であること、および、T7−PEP−19−Hisをμ−カルパイン処理することで生成するペプチドの1つは、末端配列がAIQである平均質量6399.0のペプチドであることが明らかとなった。本結果は、実施例5で導き出した推測内容を明確に支持した。
以上の結果を総合的に判断し、図10に示すように、μ−カルパインによるPEP−19切断部位(推定)は47位(Gln)と48位(Ser)の間である、という結論を得た。
本発明はPEP−19とm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの相互作用、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインによるPEP−19の分解、に基づく虚血性神経細胞死の阻害、並びに虚血性神経細胞死に基づく疾患、例えば虚血性脳疾患、神経変性疾患の防止、治療または改善のために利用可能であり、医薬分野において非常に有用性が高い。さらに、グルタミン酸誘導性神経細胞死の機構の解明等の研究分野にも利用可能である。
グルタミン酸処理6時間後の死細胞の割合はコントロールと比較して3倍程度に増加した。これに対し、PEP−19高発現により死細胞の割合はグルタミン酸無処理の細胞群と変わらなかった。(実施例1) PEP−19とm−カルパインとの相互作用をインシリコで予測した結果を示す。PEP−19とm−カルパインのローカルアライメントを行い、高いスコアを示した領域を表示した。上の配列および下の配列はそれぞれ、PEP−19に存在する配列およびm−カルパインに存在する配列である。(実施例2) グルタミン酸による細胞死誘導において、グルタミン酸によるPEP−19の発現の減少はAP−5(NMDA拮抗薬)、カルペプチン(カルパイン阻害薬)により抑制された。(実施例3) HEK293T細胞で発現させたHis−Xpress−tag付加PEP−19蛋白質(His−Xpress−PEP19)はカルシウム依存的にm−カルパインおよびμ−カルパインによって分解された。(実施例4) 大腸菌で発現させたHis−tag付加PEP−19蛋白質(His−PEP19)がカルシウム依存的にm−カルパインおよびμ−カルパインによって分解された。(実施例4) HEK293T細胞で発現させたHis−Xpress−tag付加PEP19蛋白質(His−Xpress−PEP19)のm−カルパインおよびμ−カルパインによる分解が、カルパイン阻害剤(ALLN、ALLM、カルペプチン)によって阻害された。(実施例4) μ−カルパイン未処理のHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)の平均質量が9200であることを示すMALDI−TOF−MSスペクトルである。(実施例5) μ−カルパイン処理後のHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)から、Mm.6393.9および2818.6のイオンが観測されることを示すMALDI−TOF−MSスペクトルである。(実施例5) μ−カルパイン処理後のHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)から得られたm/z 1280.6のイオンから、末端配列がAIQであることを示唆するm/z1251.6、1229.0、1214.8のフラグメントが生成することを示すLC/ESI−FTMS/MSスペクトルである。(実施例6) μ−カルパインによるHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)の推定切断部位を示す。μ−カルパインによるHis−tag付加PEP−19(T7−PEP−19−His)切断部位はPEP−19の47位(Gln)と48位(Ser)の間に存在する。下線部は、それぞれT7−tagの一部あるいはHis−tagを示し、太字部分(MSERQGA・・・KKAGSQS)はPEP−19本体のアミノ酸配列を示す。(実施例6)
配列番号1:ヒトPEP−19のアミノ酸配列。
配列番号2:ヒトPEP−19の遺伝子配列。
配列番号3:ヒトμ−カルパインラージサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号4:ヒトμ−カルパインラージサブユニットの遺伝子配列。
配列番号5:ヒトμ−カルパインスモールサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号6:ヒトμ−カルパインスモールサブユニットの遺伝子配列。
配列番号7:ラットm−カルパインラージサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号8:ラットm−カルパインラージサブユニットの遺伝子配列。
配列番号9:ラットm−カルパインスモールサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号10:ラットm−カルパインスモールサブユニットの遺伝子配列。
配列番号11:ブタm−カルパインラージサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号12:ブタm−カルパインスモールサブユニットのアミノ酸配列。
配列番号13:ブタm−カルパインスモールサブユニットの遺伝子配列。
配列番号14:PEP−19とm−カルパインとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPEP−19の部分オリゴペプチド。
配列番号15:PEP−19とm−カルパインとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したm−カルパインの部分オリゴペプチド。
配列番号16:PEP−19とm−カルパインとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したPEP−19の部分オリゴペプチド。
配列番号17:PEP−19とm−カルパインとのローカルアライメントにおいて高いスコアを示したm−カルパインの部分オリゴペプチド。

Claims (15)

  1. カルパイン阻害剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  2. ALLN(N−Acetyl−Leu−Leu−Nle−CHO)、ALLM(N−Acetyl−Leu−Leu−Met−CHO)、およびカルペプチン(calpeptin)からなる群より選ばれる少なくとも1のカルパイン阻害剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  3. グルタミン酸受容体拮抗剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  4. N−メチル−D−アスパラギン酸(N−methyl−D−aspartate;NMDA)受容体拮抗剤により、下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する方法;
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  5. 請求項1から4に記載の分解阻害方法のうち少なくともいずれか1の方法を用いることを特徴とする、虚血性神経細胞死の阻害方法。
  6. 虚血性神経細胞死が虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死である、請求項5に記載の虚血性神経細胞死の阻害方法。
  7. 下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する化合物の同定方法であって、PEP−19とm−カルパインおよび/またはμ−カルパインの相互作用を可能にする条件下、ある化合物とPEP−19、m−カルパインおよび/またはμ−カルパインを接触させ、次いで該分解により生じるシグナルおよび/またはマーカーを使用する系を用いて、該シグナルおよび/またはマーカーの存在若しくは不存在または変化を検出することにより、該化合物が該分解を阻害する化合物であるか否かを判定する同定方法。
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  8. 下記の群より選ばれる少なくとも1の分解を阻害する、カルパイン阻害剤。
    (1)カルシウム存在下におけるm−カルパインによるPEP−19の分解、および
    (2)カルシウム存在下におけるμ−カルパインによるPEP−19の分解。
  9. 請求項7に記載の同定方法により同定された化合物および請求項8に記載のカルパイン阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する虚血性神経細胞死の阻害剤。
  10. 虚血性神経細胞死が虚血性細胞外グルタミン酸濃度上昇を起因とする虚血性神経細胞死である、請求項9に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤。
  11. 請求項7に記載の同定方法により同定された化合物、請求項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに請求項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを用いることを特徴とする、虚血性脳疾患若しくは神経変性疾患の防止方法および/または治療方法。
  12. 請求項7に記載の同定方法により同定された化合物、請求項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに請求項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを用いることを特徴とする、アルツハイマー病またはハンチントン病の防止方法および/または治療方法。
  13. 請求項7に記載の同定方法により同定された化合物、請求項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに、請求項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する、虚血性脳疾患もしくは神経変性疾患の防止剤および/または治療剤。
  14. 請求項7に記載の同定方法により同定された化合物、請求項8に記載のカルパイン阻害剤、ならびに、請求項9および10に記載の虚血性神経細胞死の阻害剤のうち少なくともいずれかを含有する、アルツハイマー病またはハンチントン病の防止剤および/または治療剤。
  15. m−カルパインおよび/またはμ−カルパイン、m−カルパインをコードするポリヌクレオチドおよび/またはμ−カルパインをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つと、PEP−19、PEP−19をコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、および、該ベクターで形質転換されてなる形質転換体のうち少なくともいずれか1つ、を含有することを特徴とする試薬キット。
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