明 細 書 蛋白間相互作用を調節することによる新規アポトーシス調節方法と、 そ れを用いる医薬 技術分野
本発明は,細胞のアポトーシスを誘導する方法、 ならびに該方法を用い る各種治療法、 予防法、 および医薬に関する。 背景技術
細胞死は、形態学的な特徴に基づいてアポトーシス( a p o p 10 s i s; K e r r、 Wyll ie及ぴ Currie : 1972年) とネクローシス (necrosi s) とに分類さ れる。 ネクローシスが細胞の障害、 酸素欠乏、 栄養不足等の刺激による 受動的な細胞死 ·細胞崩壊 (壊死) であるのに対し、 アポドーシスは programed cel l deathとも呼ばれる遺伝子的に制御された細胞死で、 多 細胞生物の個体発生の過程と恒常性維持に必要な普遍的プロセスである。 アポトーシスの過程では、 細胞内外の様々な生理的 ·病理的因子が細胞 死の開始のシグナルと して働き、 多様な経路をたどって細胞中に情報伝 達される。 (1)核全体の凝縮 ·縮小(染色体凝集、染色体 DNAの断片化) ; (2)細胞縮小 ·空胞化 (細胞質凝集) ; (3)細胞表面の微絨毛消失による 平滑化; (4)細胞の断片化によるアポトーシス小体 (apoptotic body) の 形成; (5)マクロファージ等によるアポトーシス小体の食食;という一連 の形態変化を生じるのが特徴である。 近年に至って、 細胞死制御におけ る変化 (抑制、 低下等) は、 癌、 自己免疫疾患、 脱髄性疾患等、 多くの ヒ ト疾患の病因の一つにであると考えられている。
システィ ンプロテアーゼのファ ミ リ ーの一つであるカスパーゼ
(caspase) は、アポトーシス機構における中心的蛋白質と考えられてレヽ るが、 一方で、 遺伝子のノックアウトまたは各種阻害剤でカスパーゼを 不活性化しても、殆どのアポトーシス刺激剤で細胞死が起きることから、 カスパーゼの活性化が細胞死に必ずしも必要ではないことが明らかとな つている。 カスパーゼ依存的アポトーシス以外にもカスパーゼ非依存的 経路があって、 該非依存的経路が並列的に機能していると考えられてい る。
アポトーシスシグナル伝達において、 ミ トコンドリアが重要な役割を 担うことが知られている。 細胞死刺激剤によって、 ミ トコンドリアはシ トクローム c ytochrome-c) 、 AIF poptosis inducing factor) 、 カスパーゼ 'チモーゲン (caspase zymogen) 等、 様々なアポトーシス誘 導因子を遊離する。 該因子の一つである ミ トコン ドリ ア蛋白質 Smac/DIABLO は、 アポトーシスを促進するカスパーゼ活性化蛋白質で、 ターゲッ トシークェンスが切断されて成熟型になると、 アポトーシス刺 激剤の刺激に応答して細胞質へ放出され、 そこでァラニン残基で始まる N 末端部位がアポトーシスタンパク質阻害因子 IAP ( inhibitor of apoptosi s protein) の BIR3および BIR2 ドメインに結合し、 IAPのカス パーゼ阻害作用を抑えることが知られている。 ショ ウジョ ゥバエ (Drosophi la) のアポトーシス誘導蛋白質である Reaper、 Hid, および Grimも、 同様にァラニン残基で始まる自身の N末端部位を通じて IAPと 相互作用してカスパーゼを活性化する作用を有し、 Smac/DIABLO は、 構 造的にも機能的にも、 ショウジョゥバエのアポトーシス誘導蛋白質のヒ トホモログ蛋白質であると考えられている。
ミ トコンドリァのセリンプロテアーゼである 0mi/HtrA2 (以下、 「0mi」 と略す。 ) も、 ショウジヨウバエのアポトーシス誘導蛋白質に対するヒ トホモログ蛋白質とされる。 Omiはその C末端に PDZ ドメインとよばれ
るドメインを有しており、 該 PDZ ドメインは、 様々な調節蛋白質に見ら れるドメインで、 蛋白質ターゲッティングや蛋白質複合体形成において 重要な役割を担っていることで知られる。 Omi は、 アポトーシス誘導刺 激に応じてミ トコンドリアの膜間スペースから細胞質に放出されて、 異 なる 2つの機序で細胞死を引き起こすことが明らかになつている。 第 1 の機序は、 N末端が切り出されて形成された成熟型 Omiの更にこの N末 端モチーフが IAPに結合して IAPのカスパーゼ活性化阻害を遮断する機 序;第 2の機序は、 カスパーゼの活性化を経ずに Omiプロテアーゼ活性 依存的に細胞死を誘導する機序である。 最近の研究から、 Omi における IAP 結合モチーフが必ずしも全哺乳動物に保存されたものではないこと がわかっている。
warts遺伝子 (wtsまたは latsとして知られる。 ) は、 当初ショウジ ョゥバエの癌抑制遺伝子として同定され、 セリン Zトレオニンリン酸化 酵素をコードする遺伝子で、 多くの分裂過程に関与する筋緊張性ジスト 口フィー蛋白質ジン酸ィ匕酵素 (myotonic dystrophy protein kinase: DMPK) ファミ リーとの間に高度な相同性を有する。 この wts遺伝子に関 して、 wts 遺伝性の突然変異を有するハエの体細胞は巨大化して組織中 に大きな腫瘍を形成するとの報告があり、 wts はショウジヨウバエの細 胞の形態形成 ·増殖に関わっていると考えられている。
一方、 RTS/LATS1 (以下、 「WARTS」 と略記する。 ) は、 wts に対す る哺乳類ホモログ遺伝子として同定された(例えば、特許文献 1参照)。 ショウジョゥバエの場合と同様、 WARTS 遺伝子が欠損したマウスでも悪 性腫瘍の形成がみられたとの報告もあり、 WARTS は哺乳動物細胞におい て癌抑制遺伝子として機能していると考えられている。 本発明者らは、 かって、 分裂期に WARTSが分裂装置に動的に局在し、 そこで Zyxinとい ぅァクチン重合促進蛋白質と相互作用していることと、 WARTS が Zyxin
を含む複合体を形成して分裂制御において中心的働きを担っていること とを報告している。
前記 Omiによる IAP結合とそれによる IAP活性阻害が細胞死 (アポト 一シス)に必須であるとは必ずしもいえず、 Omi誘導細胞死においては、 これ以外に、 カスパーゼ非依存性経路が重要な役割を担っていると考え られる。
—方、 RTS が機能しない場合、 クロモソーム不安定化に至る通常の 細胞分裂が進行しないというだけの事実で、 WARTS 蛋白質の癌抑制作用 を説明し解明するのは不可能であり、 より詳細な WARTSの機能解明が必 要である。
他方、アポトーシスの抑制または低下は、各種癌疾患、自己免疫疾患、 神経変性疾患、 等の疾患の病因に関与していると考えられ、 アポトーシ ス機序の解明は、 前記各種疾患を治療 ·予防するための方法とそのため の薬剤の開発とを可能にすると期待することができる。
即ち、 本発明の目的は、 Omiプロテアーゼの活性化機構、 および、 Omi を介するカスパーゼ非依存的アポトーシスの経路 ·機序を明らかにする ことにより、 Omiを介するカスパーゼ非依存的アポトーシスの調節法(誘 導 '抑制法) を探索し見出すこと、 並びに、 アポトーシスが関与する各 種疾患の治療法、 予防法およびそのための医薬を見出すこと、 にある。
[特許文献 1 ]
特開平 1 1— 0 8 9 5 8 0号公報 (配列表における配列番号: 1 ) 発明の開示
本発明者らは、 上記事情に鑑みて精力的に検討と研究を重ねた。 その 結果、 予想外にも、
(1) WARTSの C末端 20アミノ酸を使ったスクリ一ユングにより、 WARTS
の C末端の 3個のアミノ酸 (Val - Tyr - Val) と Omi PDZ ドメインとが直接 結合すること ;
(2)正常型 Omi/プロテアーゼ不活性型 (S306A) Omi のインビトロ (in vitro) アツセィで、 全長 WARTSは Omiにより切断されるが、 C末端結合 部位を欠失させた WARTSは切断を受けないこと ;
(3)細胞質内局在を呈する Omi を過剰発現させると細胞内でも内因性 WARTSが切断を受けること ; ならびに -
(4)スタウロスポリ ン (Staurosporine) によるアポトーシス刺激でも 細胞内 WARTSの切断が生じたこと、 等を見出した。 そして、 研究を継続 した結果、
(5)成熟型 Omiの基質は WARTS蛋白質であり、両者の相互作用によって Omiが活性化されること ;
(6) Omi を介するカスパーゼ非依存性アポトーシス過程には Omi と WARTS の相互作用が必要不可欠であること ; とを初めて見出して、 本発 明を完成するに至った。 即ち、 本発明は、 [ 1 ] 配列番号: 1に記載の アミノ酸配列からなる蛋白質(以下、 「WARTSJ と称する。) と配列番号: 2に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質 (以下、 「0mi」 と称する。 ) の 間における相互作用を亢進または抑制することを含む、 細胞のアポトー シス調節方法; [ 2 ] 細胞内における Omiおよび Zまたは WARTSの量を 増加させることによりアポトーシスを誘導することを特徴とする、 前記
[ 1 ]に記載のアポトーシス調節方法; [ 3 ]細胞内における Omi と WARTS の間における相互作用を阻害することによりアポトーシスを抑制するこ とを特徴とする、 前記 [ 1 ] に記載のアポトーシス調節方法; [ 4 ] (1) 細胞に外部より Omiおよび/"または WARTS、 あるいはそれらに実質的に 同質な蛋白質またはその塩を加えること、 (2) Omiおよび/または WARTS をコードする DNAで組換えた組換えベクターを与えて細胞を形質転換す
ること、 (3) Omiおよび Zまたは WARTSをコードする DNAで形質転換した 細胞を被検患者に戻すこと、または(4)0miおよび Zまたは WARTSのモノ クローナル抗体を外部より加えることによって WARTSと Omiの相互作用 を亢進または抑制することを特徴とする、 前記 [ 1] に記載のアポトー シス調節方法;
[5] (1) WARTS, それに実質的に同質な蛋白質、 もしくはそれらの塩、 または(2)0mi、 それに実質的に同質な蛋白質、 もしくはそれらの塩を有 効成分として含む、 医薬組成物; [6] アポトーシスを調節するための 医薬である、 前記 [5] に記載の組成物; [7] 各種癌疾患、 自己免疫 疾患または神経変性疾患の治療剤または予防剤である、 前記 [5] 記載 の組成物; [8] 前記 [ 1 ] に記載の方法を用いることを含む、 各種癌 疾患、 自己免疫疾患または神経変性疾患の治療または予防法。
[9] (1)細胞に外部より Omiおよび または WARTS、 あるいはそれらに 実質的に同質な蛋白質またはその塩を加えるこ.と、 (2) Omiおよび/また は WARTSをコードする DNAで組換えた組換えベクターを与えて細胞を形 質転換すること、 (3) Omiおよび/または WARTSをコードする DNAで形質 転換した細胞を被検患者に戻すこと、 または(4) Omi および/または WARTSのモノクローナル抗体を外部より加えることによって WARTSと Omi の相互作用を亢進または抑制することを特徴とする、 前記 [8] に記載 の治療または予防法; [ 1 0] WARTSおよび Zまたは Omi の蛋白質量を 定量することにより細胞にアポトーシスの起こる程度を評価することを 含む、 各種癌疾患、 自己免疫疾患または神経変性疾患の診断方法; [ 1 1 ] Omiおよび または WARTSを用いることを特徴とする、 アポ小一シ ス調節活性を有する化合物のスクリーニング方法; [ 1 2] Omi および /または WARTSを用いることを特徴とする、 アポトーシス調節活性を有 する化合物のスクリーニング用キット ; [ 1 3] 前記 [ 1 1 ] に記載の
スクリーニング法または前記 [ 1 2] に記載のスクリーエング用キット の使用により得られうる、 アポトーシス調節活性を有する化合物または その塩; [ 1 4] 前記 [ 1 3] に記載の化合物またはその塩を含む医薬 組成物; [ 1 5] 各種癌疾患、 自己免疫疾患または神経変性疾患の治療 剤または予防剤である、 前記 [ 1 4] に記載の組成物、 に関する。 図面の簡単な説明
図 1は、 各種試験に用いた WARTSと Omiの各種発現フラグメントを示 す。
図 2は、 ノ キュロウィルスで産生した WARTS全長タンパクと GST - Omi の結合実験を示す。
図 3は、 WARTSが Omiの PDZと特異的に結合することを示す。
図 4は、 WARTSの C末端 3アミノ酸が 0MI との結合に必須であること を示す。
図 5は、 Omiに対する抗体の作成と、 その特異性の検定を示す。
図 6は、 内在性 Wartsの免疫沈降と Omiの検出を示す。
図 7は、 活性型 Omiによる in vitroでの WARTS分解を示す。
図 8は、 WARTSの C末端欠失蛋白質が Omi と結合できず蛋白質分解を 受けないことを示す。
図 9は、 各種試験に用いた Omiの各種発現フラグメントと細胞内での 局在を示す。
図 1 0は、 前記図 9の Omiを WARTS全長の発現プラスミ ドと共にトラ ンスフエタションして WARTSのレベルを比べた結果を示す。
図 1 1は、 細胞内 Omi発現による RTS レベルの変化を示す。
図 1 2は、 前記図 1 1の定量化を示す。
図 1 3は、 Omiの発現を siRNAで抑えた時の WARTS発現量を示す。
図 1 4は、 Omi の発現を siRNAで抑えてスタゥロスポリン刺激を与え た時の細胞死の割合を示す。
図 1 5は、 WARTS分解におけるスタウロスポリンの影響を示す。
図 1 6は、 カスパーゼ阻害剤とスタゥロスポリンの存在下で WARTSが 分解されることを示す。
図 1 7は、 WARTSの発現が siRNAで抑えられることを示す。
図 1 8は、 WARTSの発現を siRNAで抑え、 z- vad- fmk存在下スタウロス ポリン刺激で有意に細胞死が抑制されたことを示す。
図 1 9は、 細胞に Omi と WARTSを一緒にトランスフエクションした時 の細胞死を示す。
図 2 0は、 前記図 1 9の実験の顕微鏡像を示す図である。 発明を実施するための最良の形態
次に、 本発明の実施の形態について、 記号、 用語等の意義を示しつつ 説明する。 以下の実施形態は、 本発明を説明するための例示であり、 本 発明をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。 本発明は、 その要旨 を逸脱しない限り、 さまざまな形態で実施することができる。
本発明にかかるアポトーシス誘導方法は、 WARTS蛋白質と Omi蛋白質 との相互作用を用いる点に第 1の特徴がある。 これまで、 アポトーシス 誘導に必要不可欠な Orai蛋白質がどのような機構でアポトーシスを誘導 するのかが、 全く知られていなかつたが、 本発明者らによりそれが明ら かとなつた。 即ち、 本発明者らは、 以下の検討と試験の結果、 WARTS 蛋 白質が Omiプロテア一ゼの基質であり、 Omiは WARTS との相互作用によ つて活性化される機構と、 そして、 WARTS蛋白質と WARTS— Omi相互作用 がアポトーシス誘導に必要であることとを見出したものである。
なお、 WARTS蛋白質は配列表の配列番号: 1、 Omi蛋白質は配列表の配
列番号: 2で示すアミノ酸配列を有する。
( 1 ) WARTSの Omi PDZ ドメインへの結合
以下に示すように、 酵母ツーハイブリッド (yeast two-hybrid) スク リーニング法を用いて、 HeLa cDNAライブラリーを探索した。 WARTSの C 末端 20アミノ酸 (Ser- Asp- Glu- Asp- Asp- Gin- Asn- Thr- Gly- Ser- Glu- lie - Lys- Asn- Arg- Asp - Leu- Val- Tyr- Val ; 図 1に示される SS フラグメント) を含む Gal4_結合ドメイン融合蛋白質を作製し、 該 SSフラグメントを bait として HeLa cDNAライブラリーをスクリーニン グした結果、 8個の独立且つ配列の重なった同じ遺伝子の cDNAクローン が得られ、 これらはセリンプロテアーゼ 0mi/HtrA2であることがわかつ た (図 1 ) 。
Omiが WARTSに直接的に結合することは、 以下の in vitro結合ァッセ ィによって示された。即ち、単離した 0mi/C70の cDNA断片を細菌の発現 ベクター pGEXにクローニングし、 GST-Omi/C70または GSTをグルチオン ーァガロースビーズ上に固定した。 WARTSに対する Omi PDZ ドメインの 特異性を示すために、 NE- digの 3つの PDZ ドメィンを含む GST融合蛋白 質も使用した。 結果、 バキュロウィルスで作製して精製した全長 RTS は GST- 0mi/C70とは共沈したが、 GST- NE- dig PDZや GST単独では見られ なかった (図 2 ) 。
また、 同由来の WARTSを、全長 GST- Omiまたは GST- Omi A PDZ融合蛋白 質とインキュベートしたところ、 全長 GST- Omi は WARTS と結合したが GST - Omi A PDZ融合蛋白質はしなかった (図 3 ) 。 即ち、 Omi PDZ ドメイ ンは WARTSとの相互作用に特異的なドメィンであることが示された。
PDZ ドメインを含む殆どの蛋白質は、 自己の C末端配列を介してター ゲッ トに結合することで知られるが、 WARTS においても、 やはり、 PDZ ドメインとの結合に用いられる共通モチーフ (consensus mot if) に同じ
ような C末端 DLVYVが見出されている。 C末端と Omi との相互作用を確 認する目的で、 HAタグを有する WARTS Δ Ν1 (図 1 ) 、 Δ Ν1- A SSおよび Δ Ν1- A VYVを発現している C0S7細胞の Lysate (可溶化液) を、 クルチ オンーァガロースビーズに固定した GST- 0mi/C70とィンキュベートした ところ、 A M- A SSも Δ Ν1 - A VYVも GST- 0mi/C70に結合しなかったが、 Δ Ν1は結合をした (図 4 ) 。 即ち、 WARTSの C末端の VYVは Omi蛋白質 と相互作用をすることが示された。 ·
更に、 WARTS と Omi との in vivoにおける物理的相互作用を試験する 目的で、 細菌で精製した Hi s6- tagged 0mi/C70蛋白質をラッ トに注入し て、 ァフィ二ティーで精製し、 抗 Omi抗体 RC70を作製した。 RC70の特 異性はウェスターンブロッティングで確認した。 C末を FLAGでタグした 全長 Omiを C0S7細胞に発現させ、 抗 FLAGモノクローナル抗体 (M2) で 免疫沈降させたところ、 該複合体の Omi_FLAGは RC70抗体により認識さ れた (図 5 ) 。 また、 内在性の WARTSを抗 WARTS抗体 (G3) で HaLa細胞 の Lysateを処理したところ、 RC70抗体は当該免疫沈降に内在性 Omiの 成熟型をとらえた (図 6 ) 。 即ち、 WARTSは in vivoで Omi の成熟型と 相互作用していることが示された。
( 2 ) Omiによる WARTSの in vitro加水分解反応
WARTSが Omiプロテア一ゼの基質であるかを確認すべく、 in vitroプ 口テアーゼアツセィを行った。 全長 WARTSを精製し、 細菌に生産させた Omi と 37°Cでインキュベートし、 抗 WARTS抗体 (C2) とィムノブロッテ イングして解析した (図 7 ) 。 WARTS蛋白質量は野生体 (wi ld-type) の 組換え Omi とのインキュベーションで濃度依存的に減少し、 一方で、 プ 口テアーゼ不活性な Omi変異体 (S306:以下、 S/Aと称する。 ) は WARTS 蛋白質量に何ら影響を与えなかった。 更に、 セリンプロテアーゼ阻害剤 であ る N— ト シル リ シンク ロ ロ メ チルケ ト ン ( N - tosyl lysine
chloromethyl ketone : TLCK) が野生体 Omiのプロテアーゼ活性を阻害す ることが示された。 即ち、 Omiは in vitroで WARTSを蛋白質分解するこ とが示された。
次に、 N末が切断された WARTS ( Δ Ν2) と更にこれの C末端 3アミノ酸 を欠失させた WARTS (図 1の Δ Ν2— A VYV) を用いて in vitroプロテア ーゼアツセィを行った。 HA タグをしたこれらの WARTS 変異体は、 C0S7 細胞に発現され、 HA—ァフィ二ティーマトリックスクロマトグラフィー で精製後、 in vitro プロテアーゼアツセィに用いられた。 結果、 Δ Ν2 は Omi野生体によって直接消化されたがプロテアーゼ不活性な S/A Omi には消化されなかった (図 8 ) 。 これに対し、 Omi が結合できない変異 体 Δ Ν2— A VYVは、 Omi の野生体とィンキュベートしても蛋白質分解を 受けなかった。 従って、 Omi PDZ ドメインと WARTSの C末端領域は、 Omi による WARTSの消化に必要であることが示された。
( 3 ) Omiの in vivo基質 (WARTS) の確認
図 9に示す様々なフォームの Omiを全長 WARTSとともに過剰発現させ た時の HEK293T細胞における WARTSの量を調べた。 24時間のトランスフ ェクションの後、 SDS-PAGEと抗 WARTS抗体 (C2) とのィムノブロッティ ングを行ったところ、 図 1 0に示すように、 成熟型 Omiの過剰発現によ つて WARTSの発現が減少し (図 1 0の lane 4) 、 野生体の全長 Omiをト ランスフエタ トしたものでも RTSの発現が減少したが (図 1 0の lane 2) 、 しかしながら、 プロテアーゼ不活性な変異体 Omi (全長または成熟 型)では、 WARTSの発現量には何ら影響が見られなかった(図 1 0の lane 3と 5) 。
本発明者らは、 ミ トコンドリアリーダー配列を欠損する Omiは細胞質 に局在するが、 全長 Omiは核とミ トコンドリァ内に局在することを、 実 験的に示した (図 1 1 ) 。 図 1 1で示されるように、 様々な Omi関連蛋
白質でトランスフエク トされた HeLa細胞において、成熟型の Omiを発現 させると内在性の WARTSの染色が減少するが、 プロテアーゼ不活性にし た Omi (S/A) では WARTS染色に何ら影響を与えなかった。 既に報告され ているように、 成熟型の wild-type Omiを過剰に発現させると、 クロマ チン凝集や細胞質凝集といった細胞死の形態を呈することがわかってい るが、 本発明者らは、 WARTS の染色に対応してこれらの形態変化が発現 することを示した (図 1 1 ) 。 同時に、 全長 wi ld-type Omiの発現によ り、 内在性 WARTSの発現が減少した細胞の割合が増加することを見出し た (図 1 2 ) 。 図 1 2で示す結果は、 図 1 0における解析結果に合致す るものである。
更に、 本発明者らは、 内在性 Omiの WARTS発現調節への関与を確認す る目的で、 二本鎖 siRNA ( small interfering RNA) を用いる RNA干渉法 により、 二本鎖 RNAでトランスフエタ トして遺伝子発現を抑制 (破壌) する試験、 ここでは、 HeLa細胞の Omiの発現を破壊して、 その効果を見 た。 その結果、 Omi の発現を抑制 (破壊) し内在する Omi の発現量を減 少させると、内在性 WARTSの発現量が有意に増加することが示された(図 1 3 ) 。
以上の知見に基づいて、 本発明者らは、 WARTSが Omi の生理学的基質 であることを見出すことができた。
( 4 ) スタロスポリン (Staurosporine) による Omiプロテアーゼ活性化 と WARTS蛋白質分解誘導
本発明者らは、 スタロスポリン (Staurosporine;以下、 「STS」 と略 記することがある。 ) による Omi プロテアーゼ活性の活性化と、 WARTS 蛋白質の分解について試験を行った。 STS には、 カスパーゼ阻害剤の存 在下で細胞死を誘導すると報告や、 Omi がミ トコンドリアから細胞質へ 転移するのを誘導するとの報告がある。 本発明者らは、 これらの知見か
ら、 STSが Omi を介し、 且つカスパーゼに非依存的なアポトーシスを活 性化することができると考え、 Omi siRNA実験を行って Omi発現が抑制 された細胞の STS に対する感受性を調べた。 その結果、 コントロール siRNAと比較して、 Omi siRNAでトランスフエタ トした細胞では、 STSに 対する有意な耐性が確認された (図 1 4 ) 。 図 1 4で示されるように、 特に、 カスパーゼ阻害剤である z - VAD- fmk存在下では、 STS に対して 8 倍もの耐性を獲得していた。
この結果に基づいて、 本発明者らは、 HEK293細胞を全長 WARTS、 また は C末端 3アミノ酸を欠失させた WARTS ( A VYV)でトランスフヱク トし、 STSで活性化された Omiプロテアーゼと WARTSの蛋白質分解との関連を 調べた。 HEK293細胞にトランスフエクシヨ ンして 48時間後、 該細胞を 更に 12時間 STSで処理してから、 抗 HA抗体でィムノプロッティング解 析をしたところ、 全長 WARTS の発現量は、 STS処理に対し濃度依存的に 減少し、 一方で、 A VYV の発現量には STSによる影響が見受けられなか つた (図 1 5 ) 。 この知見から、 本発明者らは、 WARTSは、 STSに誘導さ れたアポトーシスの過程において活性型の Omiプロテアーゼと相互作用 し、 そして消化されることを見出した。
次に、 本発明者らは、 カスパーゼ阻害剤である z - VAD - fmkの存在下で WARTSの発現に対する STSの効果を調べた。 これは、 WARTSを分解する酵 素がカスパーゼであるとする可能性を除くことが目的であった。 結果、 図 1 6で示すように、 ポリ ADP リボースポロメラーゼ (poly ADP- ribose polymerase : PARP) が切断されない条件下で、 内在性 WARTSが消化を受 けることはなかった (図 1 6の lane 3と 6) 。 この知見から、 本発明者 らは、 STSで誘導されたアポトーシス過程において、 全長 WARTSの蛋白 質分解にはカスパーゼの活性が必要ではなく、 該アポトーシス過程にお いては、 Omiプロテアーゼが活性化されて Omiが WARTSをカスパーゼ非
依存的に分解することを見出した。
( 5 ) WARTS遺伝子発現の抑制実験
本発明者らは、 HeLa細胞を s iRNAで処理して WARTS蛋白質をノックダ ゥン (knock- down) する試験を行い、 Omi を介するアポトーシスにおけ る効果を調べた。 その結果、 Z- VAD- fmkと 2 μ ΙΑの STSの存在下にてコン トロール s iRNAで処理した細胞では、 vi ab i l i tyが 38土 8. 5%であったが (図 1 8 ) 、 WARTS特異的な s iRNAを用いて WARTSの発現を充分に抑え た細胞群では、 死に至った細胞数が 10土 1. 9%まで減少した (図 1 7、 1 8 ) 。 これに対し、 HEK293細胞を用いた実験で、 正常型の WARTS蛋白質 を過剰発現させると、 Omiを介する細胞死が増加した (図 1 9、 2 0 ) 。 これらの知見より、 本発明者らは、 WARTS の発現ならびに WARTS と Omi との相互作用が、 Omi を介するアポトーシスに必要であることを初めて 見出すに至った。
本願明細書における 「0mi と WARTS の相互作用を亢進または抑制」 に おける 「相互作用を亢進」 とは、 Omi蛋白質と WARTS蛋白質との相互作 用の頻度を実質的に増加させることを意味し、ここでいう実質的にとは、 Omi と WARTSが直接相互作用 (結合) する力、 または、 WARTSと同質の生 理作用を有する物質を Omi と相互作用させることにより Omiを活性化す ることを意味する。 また、 「相互作用を抑制」 とは、 Omi と WARTS との 相互作用の頻度を減少させることにより Omiを不活性化することを意味 する。
本願明細書における 「アポトーシスを調節する」 とは、 細胞のアポト 一シスを誘導または抑制することを意味する。
( 1 )本発明における 「アポトーシスを誘導する」 方法とは、 Omi蛋白質 と WARTS蛋白質とが相互作用し、 且つ、 Omi による WARTS の蛋白質分解 反応を亢進する方法に基づく。 そのためには、 (a)細胞内の Omiの量を増
やす方法、 (b) WARTSの量を増やす方法または(c) Omi と WARTSの量いずれ をも増やす方法を直接的にまたは間接的に行う手法が有効である。また、 WARTS蛋白質を増やす以外にも、 例えば(d) WARTSと同等の生理活性を有 する実質的に同質な蛋白質を細胞内に投与し増やす方法や(e) Omi に対 して WARTS 蛋白質と同等の生理活性を発揮しうる化合物を投与して RTS活性を事実上亢進し Omi を活性化する方法、 等が可能である。 蛋 白質量を増やす方法としては、 蛋白質を直接添加する方法や、 該蛋白質 をコードする DNAを細胞に組み込んで発現させ間接的に増やす方法、 等 がある。 ここで、 実質的に同質な蛋白質とは、 Omi または WARTSそれぞ れと活性の性質が同質であることを意味する。
(2)本発明における 「アポトーシスを抑制する」 方法とは、 Omi蛋白質 と WARTS蛋白質との相互作用を抑制 ·阻害して WARTSの蛋白質分解反応 を抑制する方法に基づく。 そのためには、 (a)細胞内の Omiの量を減らす 方法、(b) WARTSの量を減らす方法または(c) Omi と WARTSの量いずれをも 減らす方法を直接的にまたは間接的に行う手法が有効である。 また、 WARTS蛋白質を減らす以外にも、 例えば(d) Omiまたは MRTSの特異的抗 体 (モノクローナル抗体) を投与して Omi と WARTS との相互作用を阻害 する方法、 (e) Omi と WARTSとの相互作用を拮抗阻害し得るアンタゴニス トを投与して Omiを不活性化する方法、 等が可能である。
なお、 WARTS、 Omiおよび前記各種モノクローナル抗体は、 当業者であ れば自体公知の方法に同じかまたはそれに準じて容易に製造することが できる。
本発明にかかるアポトーシス調節法は、 各種癌疾患、 自己免疫疾患、 神経変性疾患等の治療または予防に有用であり、 具体的疾患としては、 例えば脳腫瘍、 頭頸部癌、 食道癌、 胃癌、 大腸癌、 肝癌、 膝癌、 肺癌、 乳癌、 皮膚癌、 卵巣癌、 前立腺癌、 腎癌、 膀胱癌、 リンホーマ、 白血病、
各種急性神経変性疾患、 脳血管障害急性期、 頭部外傷、 脊髄損傷、 低酸 素による神経障害、 低血糖による神経障害、 各種慢性神経変性疾患、 ァ ルツハイマー病、 パーキンソン病、 ハンチントン舞踏病、 筋萎縮性側索 硬化症、 脊髄小脳変性症、 てんかん、 肝性脳症、 末梢神経障害、 パーキ ンソン症候群、 痙性麻痺、 痛み、 神経痛、 精神分裂病、 不安、 薬物依存 症、 嘔気、 嘔吐、 排尿障害、 緑内障による視力障害、 抗生物質による聴 覚障害、 食中毒、 感染性脳脊髄炎、 脳血管性痴呆、 髄膜炎による痴呆、 神経症状、 HIV 性脳脊髄炎、 各種脱髄性疾患 (脳炎、 急性散在性脳脊髄 炎、 多発性硬化症、 急.性多発性根神経炎、 ギラン-バレー症候群、 慢性炎 症性脱髄性多発神経障害、 Marchifava-Bignami病、中心性橋延髄崩壊症、 視神経脊髄炎、 デビック病、 パロ病、 HIV性ミエ口パシー、 HTLV性ミエ 口パシー、 進行性多巣性白質脳症、 二次性脱髄性疾患 (CNS エリテマト 一デス、 結節性多発動脈炎、 シヱーダレン症候群、 サルコィ ドーシス、 乖離性脳血管炎等) 等) 等があげられる。 また、 本発明にかかる前記ァ ポトーシス調節法は、 哺乳類 (例えばヒ ト、 マウス、 ラッ ト、 モルモッ ト、 ゥサギ、 ィヌ、 ゥマ、 サル等) 、 特にヒ トに用いられるのが好適で ある。
本発明にかかるアポトーシス調節法を用いれば、 細胞内の WARTS蛋白 質おょぴ Zまたは Omi蛋白質の量を調節することにより、 容易にアポト —シスを誘導し或いは抑制することができる。
(1)例えば、 癌細胞では、 アポトーシス制御なされず、 分裂 ·増殖が進 行するが、 本発明を癌細胞に適用して、 WARTSまたは Omi のいずれか一 方、 或いは WARTSと Omiの両方の量を増やすことにより、 アポトーシス を誘導して癌細胞を細胞死させることができる。 これを利用して抗癌剤 を提供することもできる。 特に、 抗癌剤を投与された患者には耐性によ りアポトーシスが起こりにくくなっている患者が多くみられ、 該患者に
は本発明にかかるアポトーシス誘導法や医薬が極めて有効である。 WARTS または Omiの量を増やす方法としては、 (a) WARTSまたは Omiを癌患者に 投与して該患者の細胞内の WARTSまたは Omiの存在量を増やす方法や、 (b) RTSまたは Omiをコードする DNAを該患者に投与して該患者の生体 内で発現させることにより細胞内の WARTSまたは Omiの存在量を増やす 方法や、(c)治療等の対象である細胞に WARTSまたは Omiの蛋白質をコー ドする DNAを組み込んで発現させた後に、 該細胞を対象患者の体内に移 植して戻してやり、 WARTSまたは Omi の発現量を増やす方法、 (e) WARTS または Omi と実質的に同質な蛋白質を投与または発現させる方法、 等を 用いることができる。
(2)これとは逆に、アポトーシスが亢進していると考えられる疾患(自 己免疫疾患等) がある。 本発明をこれらの疾患に適用して、 WARTS また は Omiのいずれか一方、 或いは WARTSと Omiの両方の量を減らすことに より、 アポトーシスを抑制して疾患の治療または予防をすることができ る。 WARTSまたは Omi の量を減らす方法としては、 (a) WARTSまたは Omi の抗体を対象患者に投与して該患者の細胞内における WARTSと Omiの相 互作用を阻害する方法や、 (b) WARTSまたは Omiの発現を阻害する RNAを 直接該患者に投与するか、 あるいは該 RNAから逆転写して作成した DNA を該患者に投与して該患者の生体内で発現させることにより、 細胞内の WARTSまたは Omiの発現量を減らす方法や、 (c)治療等の対象である細胞 に前記(b)記載の RNAまたは DNAを組み込んで発現させた後に、該細胞を 対象患者の体内に移植して戻してやり、 WARTSまたは Omi の発現量を減 らす方法、 等を用いることができる。
本発明者らが見出した WARTSと Omi の相互作用を利用すれば、 前記癌 疾患、 自己免疫疾患、神経変性疾患等、各種疾患の診断が容易に行える。 即ち、 WARTSおよび/または Omi の細胞内蛋白質量を定量し、 これらの
数値を健常者のそれと比較して、 数値が増加している被験者ではアポト 一シスが亢進され (例えば自己免疫疾患患者) 、 逆に数値が低下してい る被験者ではアポトーシスが抑制されている (例えば癌患者) とする診 断が可能である。 ここで、 WARTSまたは Omi の蛋白質量の定量は、 当業 者に用いられる定量法を用いて容易に行うことができ、 例えば ELISA法 はじめ、 各種免疫染色法 (蛍光抗体法、 酵素抗体法、 放射性同位元素標 識) 等の使用が可能である。
また、 被験者の WARTSおよび または Omiの蛋白質量を定量して、 健 常者の WARTSと Omiの蛋白質量と比較することにより、 該被験者におい てアポトーシスが起こる程度を診断することが容易に可能である。更に、 該診断に基づいて、 癌疾患、 自己免疫疾患、 神経変性疾患等の診断も容 易に実施可能である。 特に、 抗癌剤や、 放射線治療による癌細胞の感受 性の評価 ·診断が容易であるし、 また、 自己免疫疾患では、 Omiや WARTS の量的増加や活性上昇によりアポトーシスが亢進している可能性がある ことから、 該疾患の診断法として有用である。
本発明は、 アポトーシスを誘導または抑制する活性を有する化合物を スクリ一ユングするための新規な方法と、 それに使用するスクリ一ニン グ用キットをも提供する。 かかるスクリーニング法は、 WARTS 蛋白質お ょぴ Zまたは Omi蛋白質を用いることを特徴とする方法である。例えば、 動物の試料 (血液、 細胞、 臓器、 その他組織) を採取して、 これらをそ のまま用いる力、或いは、細胞または組織の粗酵素抽出液を用いるか Omi 蛋白質標本を調製して、適当な条件下において被検化合物を添加し、 Omi による WARTS蛋白質の分解量を定量し、 阻害剤不存在下で WARTSを添加 した場合の分解量と比較することにより、 目的とする化合物をスクリ一 ユングすることが容易に可能である。 WARTS の分解量の定量は、 WARTS を直接定量することにより分解量を求めるか、 または、 分解産物を直接
定量することにより求めてもよい。 定量法には、 WARTS またはその分解 産物のモノクローナル抗体を用いる免疫染色法 (ELISA 法を含む) が有 効であり、 当業者であれば容易に実施することができる。
前記スクリ一ユング法により得られる化合物は、 アポトーシスを誘導 または抑制する作用を有する化合物であり、 前記各種癌疾患、 自己免疫 疾患または神経変性疾患の治療や予防に有用である。
本発明は新規な医薬組成物をも提供する。 本発明にかかる医薬組成物 は、 (l) WARTS蛋白質、 それに実質的に同質な蛋白質、 もしくはそれらの 塩、 および Zまたは(2) 0mi蛋白質、 それに実質的に同質な蛋白質、 もし くはそれらの塩を有効成分として含む医薬組成物と、 前記スクリーニン グ法により得られうる化合物またはその塩を含む医薬組成物であり、 医 薬の有効成分としては新規な蛋白質または化合物を含有し、 該医薬組成 物は、 前記各種癌疾患、 自己免疫疾患または神経変性疾患の治療や予防 に有用である。
前記塩は、 薬理学的に許容される塩である限りにおいて特に種類は限 定されず、 塩酸塩、 硫酸塩、 炭酸塩、 重炭酸塩、 臭化水素酸塩、 ヨウ化 水素酸塩などの無機酸の付加塩;酢酸塩、 マレイン酸塩、 乳酸塩、 酒石 酸塩、 トリフルォロ酢酸塩などの有機カルボン酸の付加塩; メタンスル ホン酸塩、 ヒ ドロキシメタンスルホン酸塩、 ヒ ドロキシエタンスルホン 酸塩、 ベンゼンスルホン酸塩、 トルエンスルホン酸塩、 タウリン塩など の有機スルホン酸の付加塩; トリメチルァミン塩、 トリェチルァミン塩、 ピリジン塩、 プロ力イン塩、 ピコリン塩、 ジシクロへキシルァミン塩、 N , N ' —ジベンジルエチレンジァミン塩、 N—メチルダルカミン塩、 ジ エタノールアミン塩、 トリエタノールアミン塩、 トリス (ヒ ドロキシメ チルァミノ) メタン塩、 フエネチルベンジルァミン塩などのァミンの付 加塩; アルギニン塩、 リジン塩、 セリン塩、 グリシン塩、 ァスパラギン
酸塩、 グルタミン酸塩などのアミノ酸の付加塩等が好適である。
本発明にかかる医薬組成物を医薬として使用する場合は、 投与形態は 特に限定されず、経口でも非経口的投与でもよい。哺乳類(例えばヒ ト、 マウス、 ラッ ト、 モルモッ ト、 ゥサギ、 ィヌ、 ゥマ、 サル、 等) 、 特に ヒ トに投与する場合の投与量は、症状の程度、患者の年齢、性別、体重、 感受性差、 投与方法、 投与時期、 投与間隔、 医薬製剤の性質、 調剤、 種 類、 有効成分の種類等によって異なり特に限定されないが、 30 § ない し 10g、好ましくは 100 ^ gないし 500mg、 さらに好ましくは 100 μ gない し lOOmgを、 注射投与で約 1 ないし 3000 μ §/1¾、 好ましくは 3ないし lOOO ^ g/kgを、それぞれ 1回または数回に分けて投与することができる。 本発明にかかる医薬組成物は、 蛋白質またはその塩、 あるいは化合物 またはその塩をそのまま用いるか、 または自体公知の薬学的に許容でき る担体等と混合し、慣用される方法により製剤化することが可能である。 好ましい剤形としては錠剤、 散剤、 細粒剤、 顆粒剤、 被覆錠剤、 カプセ ル剤、 シロップ剤、 トローチ剤、 吸入剤、 坐剤、 注射剤、 軟膏剤、 眼軟 膏剤、 点眼剤、 点鼻剤、 点耳剤、 パップ剤、 ローション剤等があげられ る。 製剤化には、 通常用いられる賦形剤、 結合剤、 崩壌剤、 滑沢剤、 着 色剤、矯味矯臭剤や、および必要により安定化剤、乳化剤、吸収促進剤、 界面活性剤、 p H調整剤、防腐剤、抗酸化剤などを使用することができ、 一般に医薬品製剤の原料として用いられる成分を配合して常法により製 剤化可能である。
例えば大豆油、 牛脂、 合成グリセライ ド等の動植物油 ;流動パラフィ ン、 スクヮラン、 固形パラフィン等の炭化水素; ミリスチン酸ォクチル ドデシル、 ミ リスチン酸ィソプロピル等のエステル油 ; セトステアリル アルコール、 ベへニルアルコール等の高級アルコール; シリコン樹脂; シリコン油 ; ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、 ソルビタン脂肪酸ェ
ステル、 グリセリン脂肪酸エステル、 ポリオキシエチレンソルビタン脂 肪酸エステル、 ポリオキシエチレン硬化ひまし油、 ポリオキシエチレン ポリォキシプロピレンプロックコポリマー等の界面活性剤; ヒ ドロキシ ェチノレセノレロース、 ポリアク リル酸、 カノレポキシビニノレポリマー、 ポリ エチレングリコー/レ、 ポリ ビエノレピロリ ドン、 メチノレセノレロースなどの 水溶性高分子; ェタノール、 ィソプロパノールなどの低級アルコール ; グリセリン、 プロピレングリ コール、 ジプロピレングリコール、 ソルビ トールなどの多価アルコール; グルコース、 ショ糖などの糖;無水ケィ 酸、 ケィ酸アルミニウムマグネシウム、 ケィ酸アルミニウムなどの無機 粉体;精製水などがあげられる。 賦形剤としては、 例えば乳糠、 コーン スターチ、 白糖、 ブドウ糖、 マンニ トール、 ソルビッ ト、 結晶セルロー ス、 二酸化ケイ素等 ;結合剤としては、 例えばポリ ビニルアルコール、 ポリ ビエルエーテル、 メチノレセルロース、 ェチノレセノレロース、 アラビア ゴム、 トラガント、 ゼラチン、 シ工ラック、 ヒ ドロキシプロピノレセノレ口 ース、 ヒ ドロキシプロピノレメチノレセノレロース、 ポリ ビニノレピロ リ ドン、 ポリプロピレングリコール · ポリオキシエチレン · ブロックポリマー、 メダルミン、 クェン酸カルシウム、 デキス トリン、 ぺクチン等;崩壌剤 としては、 例えば澱粉、 寒天、 ゼラチン末、 結晶セルロース、 炭酸カル シゥム、 炭酸水素ナトリ ゥム、 クェン酸カルシウム、 デキス トリン、 ぺ クチン、カルボキシメチルセルロース 'カルシウム等;滑沢剤としては、 例えばステアリン酸マグネシゥム、 タルク、 ポリエチレングリコール、 シリカ、 硬化植物油、 等;着色剤としては医薬品に添加することが許可 されているものであれば、いかなるものでもよく;矯味矯臭剤としては、 ココア末、 ハツ力脳、 芳香散、 ハツ力油、 竜脳、 桂皮末等 ;抗酸化剤と しては、 ァスコルビン酸、 α—トコフエロール、 等、 医薬品に添加する ことが許可されているものがそれぞれ用いられる。
経口製剤は、 賦形剤、 さらに必要に応じて結合剤、 崩壊剤、 滑沢剤、 着色剤、矯味矯臭剤などを加えた後、常法により散剤、細粒剤、顆粒剤、 錠剤、 被覆錠剤、 カプセル剤等とする。
錠剤 ·顆粒剤の場合には、 糖衣、 ゼラチン衣、 その他必要により適宜 コーティングすることはもちろん差支えない。
シロップ剤、 注射用製剤、 点眼剤、 等の液剤の場合は、 p H調整剤、 溶解剤、等張化剤、等と、必要に応じて溶解補助剤、安定化剤、緩衝剤、 懸濁化剤、 抗酸化剤、 等を加えて、 常法により製剤化する。 該液剤の場 合、 凍結乾燥物とすることも可能で、 また、 注射剤は静脈、 皮下、 筋肉 内に投与することができる。 懸濁化剤における好適な例としては、 メチ ノレセノレロース、 ポリ ソノレべ一ト 8 0、 ヒ ドロキシェチノレセノレロース、 ァ ラビアゴム、 トラガント末、 カルボキシメチルセルロースナトリウム、 ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、 等;溶解補助剤におけ る好適な例としては、 ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、 ポリソルベー ト 8 0、 ニコチン酸ァミ ド、 ポリォキシエチレンソルビタンモノラウレ ート等;安定化剤における好適な例としては、 亜硫酸ナトリウム、 メタ 亜硫酸ナトリウム、 エーテル等;保存剤における好適な例としては、 ノ ラオキシ安息香酸メチル、 パラォキシ安息香酸ェチル、 ソルビン酸、 フ ェノール、 クレゾール、 クロ口タレゾール等があげられる。
外用剤の場合は、 特に製法が限定されず、 常法により製造することが できる。 使用する基剤原料としては、 医薬品、 医薬部外品、 化粧品等に 通常使用される各種原料を用いることが可能で、 例えば動植物油、 鉱物 油、 エステル油、 ワックス類、 高級アルコール類、 脂肪酸類、 シリ コン 油、 界面活性剤、 リ ン脂質類、 アルコール類、 多価アルコール類、 水溶 性高分子類、 粘土鉱物類、 精製水などの原料が挙げられ、 必要に応じ、 p H調整剤、 抗酸化剤、 キレート剤、 防腐防黴剤、 着色料、' 香料などを
添加することができる。 さらに、 必要に応じて分化誘導作用を有する成 分、 血流促進剤、 殺菌剤、 消炎剤、 細胞賦活剤、 ビタミン類、 アミノ酸、 保湿剤、 角質溶解剤、 等の成分を配合することもできる。
以下に示す本発明の参考例、 実施例および試験例は例示的なものであ り、 本発明は以下の具体例に制限されるものではない。 当業者は、 以下 に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を最大限に実施することがで き、 かかる変更は本願特許請求の範囲に包含される。
実施例 1 酵母ツーハイブリット法
WARTS のカルボキシル末端 20 アミ ノ酸の塩基配列を導入した pAS2-lc/SS発現ベクターを作成した。酵母 CG1945株を用い、 pAS2- lc/SS 安定発現株を樹立した。 この株を HeLa cDNA l ibrary発現ベクターを用 いて形質転換し、 栄養要求性の変化 (Hi s+) 、 beta- gal活性の有無を指 標にスクリ一二ングを行った。 9. 3 X 106個の独立したクローンより最終 的に 540個の発現クローンを得た。
実施例 2 細胞培養、 トランスフヱクシヨン
HeLa, C0S7, HEK293, 293T細胞は 10%仔牛血清加 DMEM/F12培地にて 37°C、 5%C02の条件下に培養した。 トランスフヱクシヨ ンは FuGENE6ま たは LipofectAMINE, PLUS reagentを用い標準的手法にて行った。
実施例 3 発現ベクター、 特異的抗体
培養細胞の発現ベクターは p CGN, pcDNA3 ベクターを用いた。 大腸菌 発現ベクターは pGEX-2TH, pGEX4T-lベクターを用いた。 PCRにて増幅し た塩基断片をこれらベクターに挿入して発現ベクターを得た。 変異導入 へクターは Stratagene社の s ite directed mutagenes is kitを用レヽ 作成した。
各々の特異的抗体は、 大腸菌を用いて作成し、 精製した以下のリコン ビナント蛋白をゥサギ(Newzealand white)またはラッ ト(Wi ster rat)に
注入して作成した。
WARTS60 - 4: GST-WARTS (a. a. 136-700) 、 ゥサギ
RC70: Hi s- Omi (a. a. 362-458)、 ラット
C70: GST-Omi (a. a. 362-458)、 ゥサギ
他の市販抗体は以下より得た。
抗 FLAG抗体(M2) : SIGMA, 抗 HA抗体( 3 F10) : Roche, 抗 GST抗体: Pharmacia,
抗 tubul in (B- 5- 1- 2)抗体: SIGMA, 抗 PARP p85抗体: Promega 実施例 4 GSTおよぴ免疫沈降実験
GST 沈降実験は以下の如く行った。 細胞に発現ベクターをトランスフ ェクションした後、 5%NP-401ysi s buffer (0. 5%NP-40, 25mM Tri s - Cl, pH 7. 5, 137mM NaCl, ImM EDTA, 5% glycerol, ImM DTT, 20mM β -glycerophosphate, ImM sod
ium vanadate, 2 μ g/ml aprotinin, ImM AEBSF, 10 M leupeptin, and ImM p
epstatin) を用レヽ可溶ィ匕した。 この可溶ィ匕溶液を glutathione-agarose に結合させた GSTまたは GST - Omi (a. a. 362 - 458)と混合沈降した後、 SDS 電気泳動、 ウェスタンプロッ トにて解析した。 なお、 免疫沈降および試 験管内結合試験は Hirotaら (JCB 149, 1073, 2000) の方法に拠った。 実施例 5 試験管内プロテアーゼ実験
大腸菌に発現させた全長 0mi、不活性 Omi (S306A)は Ni- agarose beads を用い精製した。これらリコンビナント蛋白の濃度は BCA法にて求めた。 バキユウロウィルスを用いて作成した全長 WARTS を前述した Omi また Omi (S306A)と共に 50mM Tri s溶液内で 37°Cで 2時間ィンキュペートし、 試験管内プロテアーゼ実験を行った。 これらを SDS電気泳動、 ゥエスタ ンプロッ トにて解析した。
実施例 6 細胞蛍光免疫染色
35mm petri dishに培養した細胞を 4% paraf ormaldehyde/PBS (pH7. 5) にて固定したのち、 0. 2% Triton X - 100/PBSにて 15分処理した。 PBSで の洗浄後、 一次抗体と して rabbit anti-WARTS 抗体(60- 4), mouse ant:L - F G抗体(M2)、 二次抗体として FITC- conjugated ant :i- rabbit IgG ίτΜ本 (Bioresource) まには Texas red-conjugated ant i-mouse IgG 饥 体 (Molecular Probes) を用い、 免疫染色を行った。 これらの検体は共 焦点レーザー顕微鏡 (Olympus) を用いて観察した。
実施例 7 RNA干渉法
HeLa細胞を 6ゥエルプレートに各ゥエル 2 X 104個ずっ播き、 1 日培養 した後に siRNAをトランスフェクショ ンした。 siRNA二量体の作成およ ぴトランスフエクシヨン手技は Elbashir ら (Nature 411, 494, 2001) の方法に拠った。 トランスフエクション後 86時間目に、スタウロスポリ ンを加え、 さらに 12時間培養を行ったのち細胞を回収した。 これらの一 部を SDS電気泳動、 ウェスタンプロットに供し、 細胞死判定はトリパン ブルー染色排除試験にて行った。 s iRNA オリゴヌクレオチドは日本バイ ォサービスより得た。 配列は以下の如くである。
Control sense, 5' -AGCCAUCUGAUGCCGCAAAdT dT- 3';
Control anti sense, 5' -UUUGCGGCAUCAGAUGGCUdTdT-3';
WARTSsense, 5, - AUUCGGGAAUCCCUUAGGA dTdT- 3';
WARTS anti sense, 5' - UCCUAAGGGAUUCCCGAAUdTdT - 3' ;
Omi sense, 5' - CGG CUCAGGAUUCGUGGUGdTdT-3';
Omi anti sense, 5' -CACCACGAAUCCUGAGCCGdTdT-3'
実施例 8 細胞死誘導試験
35mm petri dish 【こ培養した HEK293 糸田月包(こ Lipof ectAMINE, PLUS reagentを用いて以下の発現ベクターを共トランスフエクシヨンした。
0. 1 μ g pEGFP (膜局在 GFP)
0. 05 μ g FLAG-成熟型 Omi
2 μ gの pCGN全長またはカルボキシル末端 3ァミノ酸欠失 A VYV WARTS (非結合型)
トランスフエクシヨン後 24時間目に細胞を固定、 PI染色を行った。 死細胞は蛍光顕微鏡観察での細胞胞体および核の形態変化により判定し た。
実施例 9
本発明にかかるアポトーシス調節法または医薬の、 各種癌疾患、 自己 免疫疾患または神経変性疾患への有効性は、 いずれも公知の手法に準じ て容易に試験可能である。 例えば、 ヒ ト大腸癌に対する抗癌効果は以下 のように確認可能であった。 即ち、 ヒ ト大腸癌株 HCT15 (ATCC) を、 5% 炭酸ガスインキュベータ一にて RPMIIMO ( 10%FBS含) で約 80%コンフル ェントとなるまで培養し、 その後細胞を回収して、 該細胞懸濁液を用意 したヌードマウスの体側皮下に移植した。 所定の平均腫瘍体積に成長し た後、本発明にかかる医薬を投与して腫瘍体積を観察し、効果を調べた。 なお、腫瘍体積 =腫瘍長径(mm) X腫瘍短径(mm) 2/2の計算式にて計算をし た。 . その結果、 本発明にかかる医薬組成物は優れた抗癌作用を示した。 そ の他の各種自己免疫疾患およぴ神経変性疾患においても同じく優れた治 療効果を示した。
産業上の利用可能性
本発明により、 新規なアポトーシス調節方法を提供することができ、 該方法により、 アポトーシスの誘導または抑制ができるようになった。
また、 本発明にかかるアポトーシス調節方法を用いることにより、 新規 な医薬組成物、 新規な疾患の治療法および予防法を提供することができ た。 本発明にかかる前記医薬組成物、 治療法および予防法は、 アポトー シスの調節が有効な疾患 (例えば、 癌疾患、 自己免疫疾患、 神経変性疾 患) の治療 ·予防に有用である。