JPWO2004113525A1 - α−グルカンホスホリラーゼ(GP)の耐熱化方法 - Google Patents

α−グルカンホスホリラーゼ(GP)の耐熱化方法 Download PDF

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Abstract

天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼおよびこの耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの調製方法が提供される。天然のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、この耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、モチーフ配列1Lもしくは1H中の4位に相当する位置、モチーフ配列2中の4位に相当する位置、またはモチーフ配列3Lもしくは3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し、かつこの耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である。

Description

本発明は、耐熱性α−グルカンホスホリラーゼおよびこの耐熱性α−グルカンホスホリラーゼをコードする遺伝子に関する。さらに本発明は、耐熱性α−グルカンホスホリラーゼの製造方法に関する。
α−グルカンホスホリラーゼ(以下、GPともいう)は、例えば、グルコース−1−リン酸(以下、G−1−Pともいう)の合成、グルカン合成などに利用されている酵素である。G−1−Pは例えば、医療用抗菌剤、抗腫瘍剤(白金錯体)、心臓病の治療薬(アミン塩)、グルカン合成の基質として利用されている。GPは、馬鈴薯塊茎などの植物、ウサギ筋肉などの動物、酵母などの微生物に広く分布している。
なかでも植物由来のGPは、一般に高分子量のグルカンを合成する能力を有するので有用である。
G−1−Pまたはグルカンの製造には、種々のGPが用いられ得、中でも馬鈴薯由来のGPが用いられることが多い。なぜなら、比較的大量の酵素が得やすいからである。
GPを用いたG−1−Pまたはグルカンの工業的な生産においては、GP酵素に夾雑する他の酵素活性、特にホスファターゼ活性およびアミラーゼ活性をできるだけ除去する必要がある。GPを大量に製造するために、GP遺伝子を発現させる宿主としては、大腸菌および枯草菌が望ましい。ところが、図4および図5に示したように、大腸菌はアミラーゼ活性およびホスファターゼ活性を、枯草菌はアミラーゼ活性をそれぞれ菌体内に有している。しかしながら、図4および5に示したように、これら宿主の有する酵素は、55℃の熱処理で失活させることはできないが、熱処理温度を60℃にすると、ほぼ失活させることができる。したがって、60℃の熱処理でも活性を失わないという耐熱性を有する植物由来GPが望まれていた。
参考として、種々の細菌(大腸菌TG−1株、大腸菌BL21株、および枯草菌ANA−1株)の菌体抽出液中の加熱前および加熱後のアミラーゼ活性およびホスファターゼ活性の具体的な数値を以下の表1に示す。
Figure 2004113525
しかし、高分子量のグルカンを合成できる植物由来のGPで耐熱性を有するもの、特に高温(例えば、60℃〜75℃)で充分な活性を維持できるGPは知られていない。植物以外の生物由来のGPについては、耐熱性の高いGPとして、高度好熱菌(Thermus aquaticus、Thermococcus litoralis、Aquifex aeolicusなど)のGPが報告されている。しかし、このような植物以外の生物由来のGPは高分子量のグルカンを合成する能力を有さないため有用性が低い。
GPはアミノ酸配列の相同性比較から、2つのグループに分けられる(非特許文献1を参照のこと)。GPは、アミノ酸配列を比較した場合に、馬鈴薯由来のGPと30%以上の同一性を有するGPのグループ(グループA)と、馬鈴薯由来のGPとは30%未満の同一性しか有さないが、Thermus aquaticusとは30%以上の同一性を有するGPのグループ(グループB)とに分けられる。
グループBに属するThermus由来のGPを用いて製造されるグルカンは、グループAに属する馬鈴薯由来のGPを用いて製造されるグルカンに比べて分子量がかなり低い。そのため、Thermus由来のGPを用いた場合では、高分子量のグルカンを得ることができないという問題がある。
これらの問題を解決するために、工業的利用に有利な、耐熱性が高い、植物由来のGPが必要とされている。
一方、一般的な酵素の耐熱化については、プロリンセオリー、酵素の立体構造情報に基づくアミノ酸置換などの理論的方法が試みられているが、必ずしも成功していない。そのため、現在でも依然として、ランダム変異による方法またはランダム変異と理論的方法との組み合わせによる方法が主に行われている。いずれの方法でも、それぞれのタンパク質ごとに試行錯誤的に試す必要がある。
GP以外の酵素に関しては、耐熱化にかかわる特定のアミノ酸の位置を決定できれば、特定した1箇所または複数箇所の位置のアミノ酸残基を他のアミノ酸残基に置換することによって、酵素を耐熱化できることが報告されている(例えば、非特許文献3〜5を参照のこと)。
耐熱化GPの例は、大腸菌マルトデキストリンホスホリラーゼに関して報告されている(非特許文献2を参照のこと)。この文献においては、耐熱性大腸菌マルトデキストリンホスホリラーゼが開示されている。マルトデキストリンホスホリラーゼは、GPの一種である。この耐熱化GPは、天然のGPと比較して、133位のアスパラギンがアラニンに置換されている。この133位のアスパラギンは、活性中心に存在し、酵素反応に必須な補酵素であるピリドキサール5’−リン酸の結合部位である。この耐熱性GPは、天然のGPと比較して、耐熱性が約15℃向上し、反応至適温度が約45℃から約60℃へと上昇し、そして約67℃で変性した。しかし、この大腸菌のGPも、Termus由来のGPと同様に、高分子量のグルカンを合成する能力を有さない。さらに、この文献に記載される耐熱化GPの至適温度での酵素活性は、天然のGPの至適温度での酵素活性よりも低い。つまり、変異により、グルカンを合成する能力が低下している。それゆえ、この文献は、少なくともグルカン合成能の観点では133位を置換することが好ましくないことを教示している。
通常、酵素タンパク質は、不安定であり、pH、温度、その他物理的な要因、タンパク質分解酵素の影響を受け、分解されやすい。酵素タンパク質の中には、精製度が高くなるほど、不安定になり、分解されやすくなる酵素もある。そのため、酵素タンパク質の調製をできるだけ低温で行い、かつ使用する度に調製しなければならない。酵素タンパク質を冷凍保存することにより、タンパク質の分解を抑制できる。しかし、凍結した酵素タンパク質を解凍する際にタンパク質が分解されることがあり、酵素タンパク質を冷凍保存し、解凍して使用する際には取り扱いが難しい。一般に、酵素タンパク質が分解されると、立体構造が変化したり、至適pH、pH安定性、反応速度、基質親和性などの酵素の性質が変化したりする。場合によっては、酵素活性が低下したり、失活したりする。このように酵素タンパク質の分解は、酵素反応に及ぼす影響が大きい。それゆえ、酵素を産業利用する上では、できるかぎり安定性に優れた酵素を使用することが望ましい。
天然の馬鈴薯タイプL GPも分解されやすい酵素であることがわかっており、精製したGPを冷蔵保存した場合であっても、精製直後から徐々に分解される。GPタンパク質の分解を抑制できれば、GPを大量調製して長期保存することが可能となり、生産効率が上がり、酵素の保存時および使用時に有利である。それゆえ、長期保存可能な分解が抑制されたGPを提供することもまた好ましい。
Takeshi Takahaら、「Structure and Properties of Thermus aquaticus α−Glucan Phosphorylase Expressed in Escherichia coli」、J.Appl.Glycosci.、2001、Vol.48、No.1、pp.71−78 Richard Grie β lerら著、「Mechanism of thermal denaturation of maltodextrin phosphorylase from Escherichia coli」、Biochem.J.、2000、346、pp.255−263 Martin LehmannおよびMarkus Wyss著、「Engineering proteins for thermostability:the use of sequence alignments versus rational design and directed evolution」、Current Opinion in Biotechnology、2001、12、pp.371−375 M.Lehmannら著、「The consensus concept for thermostability engineering of proteins」、Biochemica Biophysica Acta、2000、1543、pp.408−415 Junichi Miyazakiら著、「Ancestral Residues Stabilizing 3−Isopropylmalate Dehydrogenase of an Extreme Thermophile:Experimental Evidence Supporting the Thermophilic Common Ancestor Hypothesis」、J.Biochem、2001、129、pp.777−782
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、従来のα−グルカンホスホリラーゼよりも耐熱性が高い、植物由来のα−グルカンホスホリラーゼを提供することを目的とする。本発明はより特定の場合には、耐熱性に加えて、保存安定性の優れた、植物由来のα−グルカンホスホリラーゼを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、植物由来のGPのアミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸残基を置換することによって、耐熱性が向上した植物由来のGPが得られることを最終的に見出し、これに基づいて本発明を完成させた。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
該天然のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、または前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされ得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼが、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、馬鈴薯およびシロイヌナズナ由来であり得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも2つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、I、LおよびVからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、IおよびLからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列2中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、A、C、D、E、G、H、I、L、M、F、S、T、VおよびYからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列2中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、C、G、SおよびVからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、C、I、L、VおよびWからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、C、I、LおよびVからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性は、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の30%以上であり得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で65℃で2分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性は、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の10%以上であり得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、天然のα−グルカンホスホリラーゼと比較して、保存安定性が向上し得る。
本発明の方法は、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを調製する方法であって、
第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る工程;
該第二の核酸分子を含む発現ベクターを作製する工程;
該発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現させる工程;および
該発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを回収する工程
を包含し、
該第一のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、または前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基は、前記第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なり得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは馬鈴薯およびシロイヌナズナ由来であり得る。
本発明の核酸分子は、上記の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む。
本発明のベクターは、上記の核酸分子を含む。
本発明の細胞は、上記の核酸分子を含む。
本発明のグルカンの合成方法は、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明の別のグルカン合成方法は、上記の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明のグルコース−1−リン酸の合成方法は、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ、グルカンおよび無機リン酸を含む反応溶液を反応させて、グルコース−1−リン酸を生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上であり、かつ
該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、重量平均分子量600kDa以上のアミロースを合成する能力を有する。
本発明の別の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、該天然のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し、かつ該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置または706位トレオニン(T706)に相当する位置において、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有し得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされ得る。
1つの実施形態では、上記塩基配列は、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼは、馬鈴薯またはシロイヌナズナ由来であり得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも2つの位置において、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置において、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し得る。
1つの実施形態では、上記F39に相当する位置におけるアミノ酸残基は、イソロイシン、バリンおよびロイシンからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記F39に相当する位置におけるアミノ酸残基は、イソロイシンまたはロイシンであり得る。
1つの実施形態では、上記N135に相当する位置におけるアミノ酸残基は、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、バリンおよびチロシンからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記N135に相当する位置におけるアミノ酸残基は、システイン、グリシン、セリンおよびバリンであり得る。
1つの実施形態では、上記T706に相当する位置におけるアミノ酸残基は、システイン、イソロイシン、ロイシン、バリンおよびトリプトファンからなる群より選択され得る。
1つの実施形態では、上記T706に相当する位置におけるアミノ酸残基は、システイン、イソロイシン、ロイシンおよびバリンであり得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性は、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の30%以上であり得る。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で65℃で2分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性は、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の10%以上であり得る。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを調製する方法は、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る工程;該第二の核酸分子を含む発現ベクターを作製する工程;該発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現させる工程;および該発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを回収する工程を包含し、該第一のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、かつ該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である。
1つの実施形態では、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置または706位トレオニン(T706)に相当する位置におけるアミノ酸残基は、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なり得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり得る。
1つの実施形態では、上記第一のα−グルカンホスホリラーゼは、馬鈴薯またはシロイヌナズナ由来であり得る。
本発明の核酸分子は、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む。
本発明のベクターは、上記核酸分子を含む。
本発明の細胞は、上記核酸分子を含む。
本発明のグルカンの合成方法は、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明のグルカンの合成方法は、上記の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明のグルコース−1−リン酸の合成方法は、上記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ、グルカンおよび無機リン酸を含む反応溶液を反応させて、グルコース−1−リン酸を生産する工程を包含する。
1つの実施形態では、上記反応は、60℃〜75℃の温度で行われ得る。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上であり、かつ該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、重量平均分子量600kDa以上のアミロースを合成する能力を有する。
本発明によって、高温(例えば60℃以上)での耐熱性に優れた植物由来のGP酵素が得られた。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼによれば、天然のGP酵素では反応できない高温条件下(例えば60℃以上)でのグルカン合成反応が可能である。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする遺伝子(例えば、馬鈴薯由来のGPを耐熱化して得られる耐熱化GPをコードする遺伝子)を大腸菌などの中温菌を宿主として高発現させた場合、耐熱性の酵素を含む菌体抽出液を60℃で加熱することにより、宿主菌由来の夾雑酵素を簡単に除去できるという利点が得られる。特にGP酵素の産業利用上大きな問題となる、アミラーゼ活性とホスファターゼ活性を、熱処理により大幅に削減できた。従って、本発明の方法は、酵素精製において有利となる。
本発明の方法は、馬鈴薯由来のGPおよびシロイヌナズナ由来のGPのみに有効というわけではなく、馬鈴薯由来のGPまたはシロイヌナズナ由来のGPのアミノ酸配列に対して高い相同性を示す他のグループAのGPの耐熱化にも好適に応用できる。
従って、モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有する、他の生物種由来の耐熱性GPを得ることができる。
配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する他の生物種由来の耐熱性GPを得ることができる。
本発明によってまた、保存安定性が向上した耐熱化GPを提供できる。
[図1A]図1Aは、GENETYX−WIN Ver.4.0のマルチプルアライメントを用いてアライメントした、種々の植物由来のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列を示す図である。
[図1B]図1Aの続きである。モチーフ配列1および2の位置を示す。
[図1C]図1Bの続きである。
[図1D]図1Cの続きである。
[図1E]図1Dの続きである。
[図1F]図1Eの続きである。
[図1G]図1Fの続きである。モチーフ配列3の位置を示す。
[図1H]図1Gの続きである。
[図1I]図1Hの続きである。
[図2]図2は、プラスミド中でのα−グルカンホスホリラーゼ遺伝子の挿入部位の模式図である。
[図3]図3は、種々の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを60℃で30分間または65℃で2分間インキュベートした場合の残存活性(%)を示すグラフである。
[図4]図4は、種々の細菌(大腸菌TG−1および大腸菌BL21)を50℃、55℃、60℃または65℃で30分間加熱した後のホスファターゼの残存活性(%)を示すグラフである。
[図5]図5は、種々の細菌(大腸菌TG−1、大腸菌BL21および枯草菌ANA−1)を50℃、55℃、60℃または65℃で30分間加熱した後のアミラーゼの残存活性(%)を示すグラフである。
[図6]図6は、耐熱化GP酵素(三重変異体(F39L+N135S+T706I))および天然の馬鈴薯タイプL GP酵素の比活性の経時的変化を示すグラフである。
[図7]図7は、耐熱化GP酵素(三重変異体(F39L+N135S+T706I))および天然の馬鈴薯タイプL GP酵素を用いて37℃、50℃、55℃または60℃で18時間保持した場合の、アミロース合成量を示すグラフである。
[図8]図8は、天然の馬鈴薯タイプL GPおよびF39で各種アミノ酸で置換したGPを、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を示すグラフである。
[図9]図9は、天然の馬鈴薯タイプLGPおよびN135で各種アミノ酸で置換したGPを、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を示すグラフである。
[図10]図10は、天然の馬鈴薯タイプLGPおよびT706で各種アミノ酸で置換したGPを、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を示すグラフである。
[図11]図11は、天然の馬鈴薯タイプH GPおよび三重変異体(Y36L+N133S+T628I)馬鈴薯タイプH GPを58℃で10分間、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を示すグラフである。
[図12]図12は、天然のシロイヌナズナタイプH GPおよび三重変異体(Y40L+N136S+N631I)シロイヌナズナタイプH GPを58℃で10分間、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を示すグラフである。
[図13]図13は、精製直後および4℃で5ヶ月間保存した後の、天然の馬鈴薯タイプL GPおよび7種類の耐熱化GPの分子量を示す、ポリアクリルアミドゲル電気泳動写真である。レーン1は、天然の馬鈴薯タイプL(Wild type)GPを示し、レーン2は、F39L GPを示し、レーン3は、N135S GPを示し、レーン4は、T706I GPを示し、レーン5は、F39L+N135S GPを示し、レーン6は、F39L+T706I GPを示し、レーン7は、N135S+T706I GPを示し、レーン8は、F39L+N135S+T706I GPを示す。
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(1.α−グルカンホスホリラーゼ)
本明細書において「α−グルカンホスホリラーゼ」および「GP」は特に示さない限り互換可能に用いられ、α−グルカンホスホリラーゼ活性を有する酵素を意味する。α−グルカンホスホリラーゼは、EC2.4.1.1に分類される。α−グルカンホスホリラーゼ活性とは、無機リン酸とα−1,4−グルカンとから、グルコース−1−リン酸およびα−1,4−グルカンの部分分解物を作る反応またはその逆反応を触媒する活性をいう。α−グルカンホスホリラーゼは、ホスホリラーゼ、スターチホスホリラーゼ、グリコーゲンホスホリラーゼ、マルトデキストリンホスホリラーゼなどと呼ばれる場合もある。α−グルカンホスホリラーゼは、加リン酸分解の逆反応であるα−1,4−グルカン合成反応をも触媒し得る。反応がどちらの方向に進むかは、基質の量に依存する。生体内では、無機リン酸の量が多いので、グルカンホスホリラーゼは加リン酸分解の方向に反応が進む。無機リン酸の量が少ないと、α−1,4−グルカンの合成の方向に反応が進む。
全ての既知のα−グルカンホスホリラーゼは、活性のためにピリドキサール5’−リン酸を必要とし、そして類似した触媒機構を共有するようである。異なった起源に由来する酵素は、基質の優先性および調節形態が異なっているが、全てのα−グルカンホスホリラーゼは、多数のα−グルカンホスホリラーゼを含む大きなグループに属する。この大きなグループは、細菌、酵母および動物由来のグリコーゲンホスホリラーゼ、植物由来のデンプンホスホリラーゼ、ならびに細菌由来のマルトデキストリンホスホリラーゼを含む。
α−グルカンホスホリラーゼのグルカン合成反応のための最小のプライマー分子はマルトテトラオースであることが報告されている。グルカン分解反応のために有効な最小の基質はマルトペンタオースであることも報告されている。一般に、これらは、α−グルカンホスホリラーゼに共通の特徴であると考えられていた。しかし、近年、Thermus thermophilus由来のα−グルカンホスホリラーゼおよびThermococcus litor alis由来のα−グルカンホスホリラーゼは、他のα−グルカンホスホリラーゼとは異なる基質特異性を有すると報告されている。これらのα−グルカンホスホリラーゼについては、グルカン合成についての最小のプライマーがマルトトリオースであり、グルカン分解についての最小の基質がマルトテトラオースである。
α−グルカンホスホリラーゼは、デンプンまたはグリコーゲンを貯蔵し得る種々の植物、動物および微生物中に普遍的に存在すると考えられる。
α−グルカンホスホリラーゼを産生する植物の例としては、馬鈴薯(ジャガイモともいう)、サツマイモ、ヤマイモ、サトイモ、キャッサバなどの芋類、キャベツ、ホウレンソウなどの野菜類、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、アワなどの穀類、ソラマメ、エンドウマメ、ダイズ、アズキ、ウズラマメなどの豆類、シロイヌナズナなどの実験植物、Citrus hybrid cultivar、藻類などが挙げられる。
α−グルカンホスホリラーゼを産生する生物はこれらに限定されない。
本発明の方法に用いられる第一のα−グルカンホスホリラーゼは、天然のα−グルカンホスホリラーゼであり、植物由来であることが好ましい。一般に、植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼは、高分子量のアミロースを合成する能力を有する。しかし、これらのα−グルカンホスホリラーゼは耐熱性が低い。そのため、高温(例えば、約60℃以上)では反応を触媒できない。そのため、植物(例えば、馬鈴薯)由来のGPの反応至適温度に合わせて反応を約30℃〜約40℃で行うと、雑菌汚染という問題またはグルカンの老化という問題が生じ、グルカンまたはG−1−Pを効率よく生産できない。
植物のα−グルカンホスホリラーゼは、グリコーゲンへの親和性によって、タイプLとタイプHとに分けられる。タイプL α−グルカンホスホリラーゼとは、グリコーゲンへの親和性が低いα−グルカンホスホリラーゼをいう。一般に、タイプLのα−グルカンホスホリラーゼは、基質として、グリコーゲンよりも、マルトデキストリン、アミロースおよびアミロペクチンを好む(Hiroyuki Moriら著、「A Chimeric α−Glucan Phosphorylase of Plant Type L and H Isozymes」、The Journal of Biological Chemistry、1993、vol.268,No.8,pp.5574−5581)。タイプH α−グルカンホスホリラーゼとは、グリコーゲンへの親和性が高いα−グルカンホスホリラーゼをいう。一般に、タイプH α−グルカンホスホリラーゼは、グリコーゲンを含め、種々のグルカンについての極めて高い親和性を有する。
例えば、Toshio Fukuiら、Biochemistry of Vitamin B、1987、267−276頁によれば、馬鈴薯の葉由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの、グリコーゲンへのK(ミカエリス定数)は、1.4×10−3(M)であり、一方、馬鈴薯の葉由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼの、グリコーゲンへのKは、4×10−6(M)である。また、馬鈴薯の塊茎由来のα−グルカンホスホリラーゼの主成分の、グリコーゲンへのKは、2.4×10−3(M)であり、タイプLに分類される。副成分のα−グルカンホスホリラーゼの、グリコーゲンへのKは、1×10−6(M)であり、タイプHに分類される。
当該分野で公知のように、ミカエリス定数は、酵素反応における初速度の基質濃度依存性から得られる動力学パラメーターの一つである。ミカエリス定数は、初速度が最大速度Vmaxの1/2になる時の基質濃度である。ミカエリス定数は、濃度の次元を有する。ミカエリス定数は、それぞれの測定条件下で各酵素に特有の定数である。この定数は、各酵素の基質への親和性を表す尺度となる。ミカエリス定数が小さいほど、基質への親和性は大きい。
タイプLのα−グルカンホスホリラーゼとタイプHのα−グルカンホスホリラーゼとでは、例えば、以下のような性質の違いを有する。
Figure 2004113525
本発明の方法に用いられるα−グルカンホスホリラーゼは、特定の実施形態では、タイプL(Type Lとも示される)α−グルカンホスホリラーゼであることがさらに好ましい。馬鈴薯のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼは、馬鈴薯のタイプHのグルカンホスホリラーゼと比較して長く、ポリペプチド鎖の中央に、タイプHには見られない78残基のアミノ酸配列が挿入されている。そのため、例えば、馬鈴薯の葉由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのサブユニットの分子量は約104,000Daであり、馬鈴薯の葉由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのサブユニットの分子量は約94,000Daである。馬鈴薯の塊茎由来のα−グルカンホスホリラーゼの主成分のサブユニットの分子量は約104,000Daであり、馬鈴薯の塊茎由来のα−グルカンホスホリラーゼの副成分のサブユニットの分子量は約94,000Daである。特定のα−グルカンホスホリラーゼがタイプLであるかタイプHであるかは、実際に親和性を測定せずに、この78残基のアミノ酸配列と相同な領域を有するか否かによっても推定され得る。
一般に、タイプLとタイプHとは、酵素の性質として、酵素活性、分子量、基質特異性、酵素の所在、一次配列の相同性、挿入配列の存在などを総合的に勘案して決定される。従って、一般的には、タイプLとタイプHとの境界は明確でない場合もあるが、便宜上、本発明においては、そのα−グルカンホスホリラーゼがタイプLであるかタイプHであるかは、α−グルカンホスホリラーゼ中のトランジットペプチドの存在によって決定され得る。トランジットペプチドの配列の特徴は当該分野で公知である。トランジットペプチドの配列をコードしているものがタイプLであり、トランジットペプチドの配列をコードしていないものがタイプHである。
タイプL α−グルカンホスホリラーゼを産生する植物の例としては、馬鈴薯(ジャガイモともいう)、サツマイモ、ソラマメ、シロイヌナズナ、ホウレンソウ、トウモロコシ、イネなどが挙げられる。
本発明の方法に用いられる第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼは、別の実施形態では、タイプH(Type Hとも示される)α−グルカンホスホリラーゼであることが好ましい。タイプH α−グルカンホスホリラーゼを産生する植物の例としては、馬鈴薯、コムギ、Citrus hybrid cultivar、イネ、ソラマメ、シロイヌナズナ、サツマイモなどが挙げられる。
馬鈴薯の天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号1に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号2の1位〜916位に示す。
サツマイモの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号3に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号4の1位〜912位に示す。
馬鈴薯の別の天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号5に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号6の1位〜893位に示す。
ソラマメの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号7に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号8の1位〜939位に示す。
シロイヌナズナの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号9に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号10の1位〜962位に示す。
ホウレンソウの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号11に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号12の1位〜971位に示す。
トウモロコシの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号13に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号14の1位〜983位に示す。
イネの天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号15に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号16の1位〜928位に示す。
イネの別の天然のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号17に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号18の1位〜951位に示す。
小麦の天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号19に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号20の1位〜832位に示す。
Citrus hybrid cultivarの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号21に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号22の1位〜840位に示す。
イネの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号23に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号24の1位〜841位に示す。
ソラマメの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号25に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号26の1位〜842位に示す。
シロイヌナズナの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号27に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号28の1位〜841位に示す。
馬鈴薯の天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNA配列を配列番号29に示し、そしてアミノ酸配列を配列番号30の1位〜838位に示す。
サツマイモの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのcDNAの部分配列を配列番号31に示し、そしてそのアミノ酸配列を配列番号32に示す。サツマイモの天然のタイプH α−グルカンホスホリラーゼの完全配列は、この部分配列を用いて従来の方法に従って得ることができる。
本発明の方法に用いられる第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であることが好ましく、馬鈴薯、サツマイモ、ソラマメ、シロイヌナズナ、ホウレンソウ、トウモロコシ、イネ、小麦またはCitrus hybrid cultivarに由来することが好ましく、馬鈴薯、サツマイモ、ソラマメ、シロイヌナズナ、ホウレンソウ、トウモロコシまたはイネに由来することがより好ましく、馬鈴薯に由来することが最も好ましい。本発明の方法に用いられる第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼは、タイプLのα−グルカンホスホリラーゼであることが好ましい。本発明の方法に用いられる第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼは、馬鈴薯のタイプL、L2もしくはH、サツマイモのタイプLもしくはH、ソラマメのタイプLもしくはH、シロイヌナズナのタイプLもしくはH、ホウレンソウのタイプL、トウモロコシのタイプL、イネのタイプLもしくはH、小麦のタイプHまたはCitrus hybrid cultivarのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼであることが好ましく、馬鈴薯のタイプLもしくはL2、サツマイモのタイプL、ソラマメのタイプL、シロイヌナズナのタイプL、ホウレンソウのタイプL、トウモロコシのタイプLまたはイネのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼであることがより好ましく、馬鈴薯のタイプL α−グルカンホスホリラーゼであることが最も好ましい。
本明細書中では、酵素がある生物に「由来する」とは、その生物から直接単離したことのみを意味するのではなく、その生物を何らかの形で利用することによりその酵素が得られることをいう。例えば、その生物から入手したその酵素をコードする遺伝子を大腸菌に導入して、その大腸菌から酵素を単離する場合も、その酵素はその生物に「由来する」という。
馬鈴薯由来タイプL GPの遺伝子は例えば、次の手順により調製できる。
まず、Takahaら(Journal of Biological Chemistry,268巻、1391−1396頁、1993年)が記載しているように、馬鈴薯塊茎より、mRNAを周知の方法で調製し、cDNAライブラリーを市販のキットなどを用いて作製する。
次に既知のGP遺伝子配列(データベースGenBankアクセッションナンバーD00520)を基に、PCRプライマーを調製し、上述のcDNAライブラリーを鋳型として、PCRを行う。例えばPCRプライマーとして
Figure 2004113525
および
Figure 2004113525
を用いたときは、以下の条件で遺伝子を増幅できる。
94℃で30秒、50℃で1分、72℃で3分を1サイクルとして、30サイクルのPCR反応。
なおPCRプライマー1のアンダーラインの部分が、タイプL GPの成熟タンパク質のN末端部分の構造遺伝子配列に対応しており、PCRプライマー2のアンダーラインの部分が、タイプL GP構造遺伝子の終止コドン直後の塩基配列に対応している。
また、既知のGP遺伝子配列情報をもとに、cDNAライブラリー作製をへることなく、化学合成により直接GP遺伝子を作製することも可能である。遺伝子の合成方法は、例えばTe’oら(FEMS Microbiological Letters、190巻、13−19頁、2000年)などに記載されている。
得られたGP遺伝子は、当業者に周知の方法で、適切なベクターに挿入できる。例えば、大腸菌用のベクターであれば、pMW118(日本ジーン株式会社製)、pUC18(タカラバイオ(株)製)、pKK233−2(Amersham−Pharmacia−Biotech製)、pET3d(STRATAGENE製)などが使用でき、枯草菌用のベクターであれば、pUB110(American Type Culture Collectionから購入可能)、pHY300PLK(タカラバイオ(株)製)などが使用できる。
例えば、上記のPCRプライマー1および2を用いて遺伝子を増幅した場合、増幅された遺伝子をSmaIであらかじめ切断したプラスミドpMW118に挿入することにより、図2のような配列をもった、プラスミドを選択できる。これを用いて例えば、大腸菌TG−1を形質転換して、アンピシリン耐性株を選択し、得られた組換えプラスミド保持株を培養し、この菌株からプラスミドを抽出することにより、GP遺伝子を得ることができる。
(2.α−グルカンホスホリラーゼの耐熱化)
本発明の方法は、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る工程;該第二の核酸分子を含む発現ベクターを作製する工程;該発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現させる工程;および該発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを回収する工程を包含する。
(2.1 第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子の単離)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子もまた、本発明の範囲内にある。このような核酸分子は、本明細書の開示に基づいて、当該分野で公知の方法を用いて得ることができる。
天然のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子は、上記のような自然界に存在する、α−グルカンホスホリラーゼを産生する植物から直接単離され得る。
例えば、まず、馬鈴薯、シロイヌナズナ、ホウレンソウなどから天然のα−グルカンホスホリラーゼが単離される。馬鈴薯由来のα−グルカンホスホリラーゼについての手順を例示すると、最初に、市販されている馬鈴薯塊茎1.4kgの皮をむく。皮をむいた塊茎をジューサーですりつぶしてすりつぶし液を得る。次いで、このすりつぶし液をガーゼで濾過して濾液を得る。濾液に、Tris緩衝液(pH7.0)を最終濃度100mMになるように加えて、酵素液を得る。この酵素液を、55℃の水浴中で、液温が50℃に達してからさらに10分間加熱する。加熱後、この酵素液を、遠心機(ベックマン社製、AVANTI J−25I)を用いて、8,500rpmにて、20分間遠心分離し、不溶性のタンパク質などを除去し、上清を得る。
得られた遠心上清に、硫酸アンモニウムを100g/Lになるように加えてから、4℃にて2時間放置し、タンパク質を沈澱させる。次いで、遠心機(ベックマン社製、AVANTI J−25I)を用いて、8,500rpmにて20分間遠心分離し、不溶性のタンパク質などを除去し、上清を得る。さらに、得られた上清に硫酸アンモニウムを最終濃度250g/Lになるように加えてから、4℃にて2時間放置し、タンパク質を沈澱させる。次いで、遠心機(ベックマン社製、AVANTI J−25I)を用いて、8,500rpm、20分間遠心分離し、不溶性のタンパク質を回収する。
回収された不溶性のタンパク質を25mM Tris緩衝液(pH7.0)150mlで懸濁する。懸濁した酵素液を同じ緩衝液に対して一晩透析する。透析後のサンプルを、あらかじめ平衡化しておいた陰イオン交換樹脂Q−Sepharose(ファルマシア社製)に吸着させ、200mM塩化ナトリウムを含む緩衝液で洗浄する。続いて、400mM塩化ナトリウムを含む緩衝液で溶出させ、溶出液を回収し、部分精製馬鈴薯塊茎由来グルカンホスホリラーゼ含有溶液とする。
購入した馬鈴薯によっては、この段階でトリプシン処理に用い得るα−グルカンホスホリラーゼ含有溶液になるが、さらなる精製を必要とする場合がある。このような場合、必要に応じて、Sephacryl S−200HR(ファルマシア社製)などを用いたゲルフィルトレーションクロマトグラフィーによる分画、Phenyl−TOYOPEARL 650M(東ソー社製)などを用いた疎水クロマトグラフィーによる分画を組み合わせることにより、精製馬鈴薯α−グルカンホスホリラーゼ含有溶液を得ることができる。他の植物種からのα−グルカンホスホリラーゼの精製も同様に行い得る。
このようにして得た精製α−グルカンホスホリラーゼをトリプシン処理して、得られるトリプシン処理断片をHPLCにより分離し、分離されたいずれかのペプチド断片のN末端のアミノ酸配列を、ペプチドシークエンサーにより同定する。次いで、同定したアミノ酸配列をもとに作製した合成オリゴヌクレオチドプローブを用いて、適切なゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、天然のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子(遺伝子ともいう)を得ることができる。オリゴヌクレオチドプローブおよびDNAライブラリーを調製するための、ならびに核酸のハイブリダイゼーションによりそれらをスクリーニングするための基本的な戦略は、当業者に周知である。例えば、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(1989);DNA Cloning,第IおよびII巻(D.N.Glover編 1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait編 1984);Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins編 1984)を参照のこと。
あるいは、α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列が、既知のある種のα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列に対する相同性に基づいて、この塩基配列の少なくとも一部を含む核酸プローブを用いたハイブリダイゼーションによってcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーなどをスクリーニングして、別種のα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列を含む核酸分子を獲得することもできる。このような方法は当該分野で公知である。
あるいは、種々のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列において保存された領域に対応する縮重プライマーを作製し、目的の種のcDNAライブラリーまたはゲノムライブラリーなどをテンプレートとしてPCRを行うことによってその種由来のα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列を獲得することも可能である。このような方法は当該分野で公知である。
ゲノムライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングする場合、得られた核酸分子は、当業者に周知の方法を用いてサブクローニングされ得る。例えば、目的の遺伝子を含むλファージと、適切な大腸菌と、適切なヘルパーファージとを混合することにより、容易に目的の遺伝子を含有するプラスミドを得ることができる。その後、プラスミドを含有する溶液を用いて、適切な大腸菌を形質転換することにより、目的の遺伝子をサブクローニングし得る。得られた形質転換体を培養して、例えばアルカリSDS法によりプラスミドDNAを得、目的の遺伝子の塩基配列を決定し得る。塩基配列を決定する方法は、当業者に周知である。さらに、DNAフラグメントの塩基配列を基に合成されたPCRプライマーを用い、馬鈴薯などのゲノムDNAまたはcDNAを鋳型に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて直接α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を増幅することもできる。
本明細書において「核酸分子」は、天然のヌクレオチドのみからなっていてもよく、非天然のヌクレオチドを含んでもよく、非天然のヌクレオチドのみからなっていてもよい。非天然のヌクレオチドの例としては、誘導体ヌクレオチド(ヌクレオチドアナログともいう)が挙げられる。「誘導体ヌクレオチド」および「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのような誘導体ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド−核酸(PNA)が挙げられるが、これらに限定されない。
(2.2 第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子の改変)
第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る。第一の核酸分子は、上記(2.1)のようにして得た、天然のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子であり得る。第一の核酸分子はまた、天然のα−グルカンホスホリラーゼの酵素活性と実質的に同様の酵素活性を有し、天然のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列に対して1もしくは数個またはそれを超えるアミノ酸が置換、欠失もしくは付加されたα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子であり得る。「実質的に同様の酵素活性を有する」とは、改変後のα−グルカンホスホリラーゼを、改変前のα−グルカンホスホリラーゼと同一条件下で測定したときの酵素活性が、改変前のα−グルカンホスホリラーゼの酵素活性の±20%以内であることをいう。好ましくは±10%以内、より好ましくは±5%以内である。
改変は、当該分野で周知の方法を用いて、例えば、部位特異的変異誘発法、変異原を用いた変異誘発法(対象遺伝子を亜硝酸塩などの変異剤で処理すること、紫外線処理を行うこと)、エラープローンPCRを行うことなどによって行われ得る。目的の変異を得やすい点から、部位特異的変異誘発を用いることが好ましい。部位特異的変異誘発を用いれば、目的とする部位で目的とする改変を導入することができるからである。あるいは、目的とする配列をもつ核酸分子を直接合成してもよい。そのような化学合成の方法は、当該分野において周知である。
本発明者らは、植物の天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列中の特定の位置のアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置換することによって、得られるα−グルカンホスホリラーゼの耐熱性が向上することを見出した。このような特定の位置は、以下のモチーフ配列のいずれかまたは配列番号2のアミノ酸配列と、比較対象のアミノ酸配列とをアライメントすることによって決定され得る:
Figure 2004113525
モチーフ配列1L、2および3Lは、馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号2)中に存在する。これらのモチーフ配列は、馬鈴薯タイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいて、以下の位置に存在する:モチーフ配列1L:配列番号2のアミノ酸配列の36位〜44位;モチーフ配列2:配列番号2のアミノ酸配列の132位〜139位;モチーフ配列3L:配列番号2のアミノ酸配列の700位〜708位。モチーフ配列1H、2および3Hは、イネ由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列中に存在する。これらのモチーフ配列は、イネタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいて、以下の位置に存在する:モチーフ配列1H:配列番号24のアミノ酸配列の36位〜44位;モチーフ配列2:配列番号24のアミノ酸配列の132位〜139位;モチーフ配列3H:配列番号24のアミノ酸配列の625位〜633位。一般に、天然のα−グルカンホスホリラーゼは、これらのモチーフ配列またはそれらに対して高い相同性を有する配列を有する。植物由来の他のα−グルカンホスホリラーゼについてのこれらのモチーフ配列の位置は、当業者によって容易に決定され得る。
本発明の方法においては、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子は、改変核酸分子によってコードされる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼが、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有するように改変される。好ましくは、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子は、改変核酸分子によってコードされる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置または706位トレオニン(T706)に相当する位置におけるアミノ酸配列が、上記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるように改変される。
本明細書中で用いられる「配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置」とは、対象のアミノ酸配列と配列番号2のアミノ酸配列とを相同性が最も高くなるように、必要に応じて一方の配列にギャップを挿入して並べた場合に、配列番号2の39位のフェニルアラニンと並置される位置をいう。なお、配列番号2にギャップが挿入された場合にそのギャップはアミノ酸残基の数として数えない。より好ましくは、GENETYX−WIN Ver.4.0のマルチプルアライメントにおいて、デフォルトのスコアテーブルを用い、GAP Penalty(Peptide):Insert=−10、Extend=−3、gap Extend on top position:設定あり(チェック)、Match Mode:Local Matchの条件で配列番号2のアミノ酸配列と対象のアミノ酸配列とをアライメントした場合に、配列番号2の39位のフェニルアラニンと並置される位置をいう。アミノ酸についてのデフォルトのスコアテーブルを以下の表3に示す。
Figure 2004113525
GENETYX−WIN Ver.4.0のマルチプルアライメントは、以下のようなアルゴリズムに基づいている。このアライメントプログラムは、アライメントする対象の全ての配列について総当りで2配列のアライメントを行い(ペアワイズアライメント)、その中から共通する配列の保存割合(ペアワイズアライメントにおけるスコア)が高い組み合わせの配列について、共通の配列から仮想配列(共通部分はそのまま、一致しない部分はどちらか一方の配列を選択する)を作成する。仮想配列を構成する配列を除く全ての配列と仮想配列との総当りを同じ手順で、最後の仮想配列が作られるまで繰り返す。その後、仮想配列が作られるときのGAPの挿入およびずれの情報を、もとの配列に対して適用して全体を構成することによってマルチアライメントを完成させる。このペアワイズアライメントの計算式は以下のとおりである。
配列長がそれぞれm、nの配列a、bがあり、それぞれの配列を
Figure 2004113525
と表現するとき、GAPペナルティgは次の式で表される:
−g=s(ai,φ)=s(φ,bj)。
アライメントのスコアを得るための式は以下のとおりである:
Figure 2004113525
αはGAP挿入のペナルティであり、βはGAP伸長のペナルティである。E、F、Gはスコア行列であり、これを基にパス行列が作成される。
135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置についても同様に解釈される。
GENETYX−WIN Ver.4.0のマルチプルアライメントにおいて、上記の条件で、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30を配列番号2とアライメントした。その結果、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置にはフェニルアラニンまたはチロシンが、135位アスパラギン(N135)に相当する位置にはアスパラギンが、そして706位トレオニン(T706)に相当する位置にはトレオニン、アスパラギンまたはアスパラギン酸が並置された。このアライメントの結果を図1A〜図1Iに示す。図1A〜図1Iにおいて、「馬鈴薯タイプL」は、馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号2)を示す。「馬鈴薯タイプL2」は、馬鈴薯由来の第2のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号6)を示す。「サツマイモタイプL」は、サツマイモ由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号4)を示す。「ソラマメタイプL」は、ソラマメ由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号8)を示す。「シロイヌナズナタイプL」は、シロイヌナズナ由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号10)を示す。「ホウレンソウ」は、ホウレンソウ由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号12)を示す。「イネタイプL」は、イネ由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号16)を示す。「イネタイプL2」は、イネ由来の第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号18)を示す。「トウモロコシタイプL」は、トウモロコシ由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号14)を示す。「馬鈴薯タイプH」は、馬鈴薯由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号30)を示す。「ソラマメタイプH」は、ソラマメ由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号26)を示す。「シロイヌナズナタイプH」は、シロイヌナズナ由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号28)を示す。「イネタイプH」は、イネ由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号24)を示す。「コムギ」は、コムギ由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号20)を示す。「CitrusタイプH」は、Citrus hybrid cultivar由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号22)を示す。「Ecoli MalQ」は、大腸菌由来のマルトデキストリンホスホリラーゼのアミノ酸配列(配列番号35)を示す。マルトデキストリンホスホリラーゼは、α−グルカンホスホリラーゼの一種である。
例えば、サツマイモ由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置は、配列番号4のアミノ酸配列の39位であり、135位アスパラギン(N135)に相当する位置は、配列番号4のアミノ酸配列の135位であり、そして706位トレオニン(T706)に相当する位置は、配列番号4のアミノ酸配列の702位である。
例えば、馬鈴薯由来の第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号6のアミノ酸配列の11位であり、N135に相当する位置は、配列番号6のアミノ酸配列の107位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号6のアミノ酸配列の683位である。
例えば、ソラマメ(Fava bean)由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号8のアミノ酸配列の43位であり、N135に相当する位置は、配列番号8のアミノ酸配列の139位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号8のアミノ酸配列の729位である。
例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号10のアミノ酸配列の106位であり、N135に相当する位置は、配列番号10のアミノ酸配列の202位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号10のアミノ酸配列の752位である。
例えば、ホウレンソウ由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号12のアミノ酸配列の112位であり、N135に相当する位置は、配列番号12のアミノ酸配列の208位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号12のアミノ酸配列の761位である。
例えば、トウモロコシ由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号14のアミノ酸配列の95位であり、N135に相当する位置は、配列番号14のアミノ酸配列の191位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号14のアミノ酸配列の773位である。
例えば、イネ由来のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号16のアミノ酸配列の41位であり、N135に相当する位置は、配列番号16のアミノ酸配列の137位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号16のアミノ酸配列の718位である。
例えば、イネ由来の別のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号18のアミノ酸配列の91位であり、N135に相当する位置は、配列番号18のアミノ酸配列の187位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号18のアミノ酸配列の741位である。
例えば、コムギ由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号20のアミノ酸配列の31位であり、N135に相当する位置は、配列番号20のアミノ酸配列の127位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号20のアミノ酸配列の622位である。
例えば、Citrus hybrid cultivar由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号22のアミノ酸配列の42位であり、N135に相当する位置は、配列番号22のアミノ酸配列の138位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号22のアミノ酸配列の630位である。
例えば、イネ由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号24のアミノ酸配列の39位であり、N135に相当する位置は、配列番号24のアミノ酸配列の135位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号24のアミノ酸配列の631位である。
例えば、ソラマメ由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号26のアミノ酸配列の43位であり、N135に相当する位置は、配列番号26のアミノ酸配列の139位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号26のアミノ酸配列の632位である。
例えば、シロイヌナズナ由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号28のアミノ酸配列の40位であり、N135に相当する位置は、配列番号28のアミノ酸配列の136位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号28のアミノ酸配列の631位である。
例えば、馬鈴薯由来のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼにおいては、配列番号2のアミノ酸配列のF39に相当する位置は、配列番号30のアミノ酸配列の36位であり、N135に相当する位置は、配列番号30のアミノ酸配列の133位であり、そしてT706に相当する位置は、配列番号30のアミノ酸配列の628位である。
耐熱性を向上させるアミノ酸残基の位置は、916アミノ酸残基長の配列番号2とアライメントすることのみならず、上記のモチーフ配列1Lもしくは1H、2、および3Lもしくは3Hからなる群より選択される1以上の配列とアライメントすることによって決定され得る。これまで公知の植物由来のα−グルカンホスホリラーゼについてアライメントした限り、このようにして決定される位置は、配列番号2を用いた場合も、モチーフ配列1Lもしくは1H、2、および3Lもしくは3Hを用いた場合も、同じ位置となる。
モチーフ配列1Lは、タイプL α−グルカンホスホリラーゼでよく保存されており、一方、モチーフ配列1Hは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼでよく保存されている。配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置は、モチーフ配列1Lまたは1H中の4位に相当する位置ということができる。
モチーフ配列2は、タイプLおよびタイプHのα−グルカンホスホリラーゼで共通して保存されている。配列番号2のアミノ酸配列の135位アスパラギン(N135)に相当する位置は、モチーフ配列2中の4位に相当する位置ということができる。
モチーフ配列3Lは、タイプL α−グルカンホスホリラーゼでよく保存されており、一方、モチーフ配列3Hは、タイプH α−グルカンホスホリラーゼでよく保存されている。配列番号2のアミノ酸配列の706位トレオニン(T706)に相当する位置は、モチーフ配列3Lまたは3H中の7位に相当する位置ということができる。
このように、耐熱性を向上させるアミノ酸残基の位置はまた、モチーフ配列を用いることによっても特定され得る。耐熱性を向上させるアミノ酸残基の位置は、モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、およびモチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置であり得る。
従って、本発明の方法においては、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子は、改変核酸分子によってコードされる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼが、モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、およびモチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有するように改変されるということができる。
本明細書中では、「モチーフ配列」とは、複数のタンパク質のアミノ酸配列の間で見られる、共通または高度に保存された部分配列をいう。一般に、モチーフ配列は、特定の機能を有することが多いが、本明細書中では、そのような特定の機能を有さなくとも、複数のアミノ酸配列間で保存されていれば、モチーフ配列と呼ぶ。
「モチーフ配列1L中の4位の」アミノ酸残基とは、モチーフ配列1LのN末端(左端)のアミノ酸残基を1位として順番に数えたときに4番目のアミノ酸残基をいう。「モチーフ配列1H中の4位」、「モチーフ配列2中の4位」、「モチーフ配列3L中の7位」、「モチーフ配列3H中の7位」、などについても同様である。
これらのモチーフ配列は、一般に、植物のα−グルカンホスホリラーゼにおいてよく保存されている。モチーフ配列1Lもしくは1Hおよび3Lもしくは3Hは、植物のα−グルカンホスホリラーゼにおいてよく保存されているが、動物、微生物などのα−グルカンホスホリラーゼにおいては保存されていない。モチーフ配列2は、植物、動物、微生物などのほぼ全ての生物のα−グルカンホスホリラーゼにおいてよく保存されている。モチーフ配列2は、基質の結合および補酵素であるピリドキサール5’−リン酸の結合に関与すると推定されているアミノ酸残基を含んでおり、活性に必須な領域の一部である。モチーフ配列1Lおよび1Hの位置、ならびにモチーフ配列2の位置を、図1Bに示す。モチーフ配列3Lおよび3Hの位置を図1Gに示す。
本明細書中で用いられる「モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置」とは、対象のアミノ酸配列とモチーフ配列1Lもしくはモチーフ配列1Hとを相同性が最も高くなるように、ギャップを挿入せず並べた場合に、モチーフ配列1Lもしくはモチーフ配列1H中の4位のアミノ酸残基と並置される位置をいう。より好ましくは、GENETYX−WIN Ver.4.0(株式会社ゼネティックス)のマキシマムマッチングをギャップなしの条件で実施した際に、モチーフ配列1Lもしくはモチーフ配列1H中の4位のアミノ酸残基と並置される位置をいう。
モチーフ配列2中の4位に相当する位置、およびモチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置についても同様に解釈される。
GENETYX−WIN Ver.4.0のマキシマムマッチングは、解析対象となる配列データに対して、比較対象となる配列データとを置き換えおよび欠損を考慮しながら、配列間で一致するアミノ酸対が最大になるように並べ替え、その際、一致(Matches)、不一致(Mismatches)、ギャップ(Gaps)についてそれぞれ得点を与え合計を算出して最小となるアライメントを出力したものである(参考文献:Takashi,K.,およびGotoh,O.1984.Sequence Relationships among Various 4.5 S RNA Spacies J.Biochem.92:1173−1177)。好ましくは、アライメントは、Matches=−1;Mismatches=1;Gaps=なし;*N+=2の条件で行われる。
GENETYX−WIN Ver.4.0のマキシマムマッチングを用いて、モチーフ配列1Lもしくはモチーフ配列1Hに対して、馬鈴薯のタイプL(配列番号2)、サツマイモのタイプL(配列番号4)、馬鈴薯の第2のタイプL(配列番号6)、ソラマメ(Fava bean)のタイプL(配列番号8)、シロイヌナズナのタイプL(配列番号10)、ホウレンソウのタイプL(配列番号12)、トウモロコシのタイプL(配列番号14)、イネのタイプL(配列番号16)、イネの第2のタイプL(配列番号18)、コムギのタイプH(配列番号20)、Citrus hybrid cultivarのタイプH(配列番号22)、イネのタイプH(配列番号24)、ソラマメのタイプH(配列番号26)、シロイヌナズナのタイプH(配列番号28)および馬鈴薯のタイプH(配列番号30)をアライメントした。ただし、マキシマムマッチングの解析は、Matches=−1;Mismatches=1;Gaps=0;*N+=2の条件で行った。
GENETYX−WIN Ver.4.0のマキシマムマッチングにおいて、上記の条件で、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30を、各モチーフ配列(モチーフ配列1L、1H、2、3L、または3H)とアライメントした。その結果、モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H中の4位に相当する位置にはフェニルアラニンまたはチロシンが、モチーフ配列2中の4位に相当する位置にはアスパラギンが、そしてモチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置にはトレオニン、アスパラギンまたはアスパラギン酸が並置された。モチーフ配列1L、2および3Lは、配列番号2の部分配列であり、モチーフ配列1H、2および3Hは配列番号24の部分配列である。
配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のそれぞれについて、配列番号2の全長を用いてライメントした結果と、モチーフ配列1L、1H、2、3Lおよび3Hを用いてアライメントした結果とを比較した。その結果、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28および配列番号30のそれぞれにおいて、配列番号2の39位に相当する位置と、モチーフ配列1Lまたは1H中の4位に相当する位置とは、同一であった。配列番号2の135位に相当する位置と、モチーフ2中の4位に相当する位置とは、同一であった。配列番号2の706位に相当する位置と、モチーフ3Lまたは3H中の7位に相当する位置とは、同一であった。このように、モチーフ配列を用いてアライメントを行っても、配列番号2のアミノ酸配列を用いた場合と同じ位置が特定されることが確認された。
配列表の配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸分子に対して改変を行って得られる改変塩基配列を含む核酸分子は、本発明の範囲内にある。
配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27または配列番号29に示される塩基配列を含む核酸分子に対して改変を行って得られる改変塩基配列を含む核酸分子は、本発明の範囲内にある。
配列表の配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有するアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸分子に対して改変を行って得られる改変塩基配列を含む核酸分子は、本発明の範囲内にある。
本発明において、アミノ酸配列、塩基配列などの配列の「同一性」とは、2つの配列の間で同一のアミノ酸(塩基配列を比較する場合は塩基)の出現する程度をいう。同一性は、一般に、2つのアミノ酸または塩基の配列を比較して、付加または欠失を含み得る最適な様式で整列されたこれら2つの配列を比較することによって決定される。同一性パーセントは、アミノ酸(塩基配列を比較する場合は塩基)がこの2つの配列間で同一である位置の数を決定し、比較した位置の総数で同一の位置の数を除算し、そしてこれら2つの配列間の同一性パーセントを得るために、得られた結果に100を掛けることによって算出される。
例示として、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを得るために用いられる天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列は、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列(すなわち、対照アミノ酸配列)と同一、すなわち、100%同一であってもよく、あるいはこのアミノ酸配列は、対照アミノ酸配列と比較してある一定の数までアミノ酸が変化していてもよい。このような変化は、少なくとも1個のアミノ酸の欠失、保存および非保存置換を含む置換、または挿入からなる群より選択され得る。この変化は対照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシル末端の位置で生じてもよく、またはこれら末端以外のどの位置で生じてもよい。アミノ酸残基の変化は、1残基ずつ点在していてもよく、数残基連続していてもよい。
本明細書では配列の同一性は、GENETYX−WIN Ver.4.0(株式会社ゼネティックス)のマキシマムマッチングを用いて算出される。このプログラムは、解析対象となる配列データに対して、比較対象となる配列データとを置き換えおよび欠損を考慮しながら、配列間で一致するアミノ酸対が最大になるように並べ替え、その際、一致(Matches)、不一致(Mismatches)、ギャップ(Gaps)についてそれぞれ得点を与え合計を算出して最小となるアライメントを出力しその際の同一性を算出する(参考文献:Takashi,K.,およびGotoh,O.1984.Sequence Relationships among Various 4.5 S RNA Spacies J.Biochem.92:1173−1177)。
GENETYX−WIN Ver.4.0のマキシマムマッチングを用いて、馬鈴薯のタイプL(配列番号2)に対する、サツマイモのタイプL(配列番号4)、馬鈴薯の第2のタイプL(配列番号6)、ソラマメ(Fava bean)のタイプL(配列番号8)、シロイヌナズナのタイプL(配列番号10)、ホウレンソウのタイプL(配列番号12)、トウモロコシのタイプL(配列番号14)、イネのタイプL(配列番号16)、イネの第2のタイプL(配列番号18)、コムギのタイプH(配列番号20)、Citrus hybrid cultivarのタイプH(配列番号22)、イネのタイプH(配列番号24)、ソラマメのタイプH(配列番号26)、シロイヌナズナのタイプH(配列番号28)および馬鈴薯のタイプH(配列番号30)を馬鈴薯のタイプL(配列番号2)の同一性を算出した結果を表4に示した。ただし、マキシマムマッチングの解析は、Matches=−1;Mismatches=1;Gaps=1;*N+=2の条件で行った。
Figure 2004113525
配列表の配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27および配列番号29からなる群より選択される塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子に対して改変を行って得られる改変塩基配列を含む核酸分子は、本発明の範囲内にある。当業者は、所望のα−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を容易に選択することができる。
本明細書中で使用する用語「ストリンジェントな条件」とは、特異的な配列にはハイブリダイズするが、非特異的な配列にはハイブリダイズしない条件をいう。ストリンジェントな条件の設定は、当業者に周知であり、例えば、Moleculer Cloning(Sambrookら、前出)に記載される。具体的には、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液(0.2% BSA、0.2% Ficoll 400および0.2%ポリビニルピロリドン)、10%硫酸デキストラン、および20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄するという条件を用いることにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。
本発明の方法で用いられる改変核酸分子は、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子に対して保存的に改変された核酸分子であってもよい。「第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む核酸分子に対して保存的に改変された核酸分子」とは、第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列がコードするアミノ酸配列と同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含む核酸分子をいう。「第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列がコードするアミノ酸配列と本質的に同一のアミノ酸配列」とは、第一のα−グルカンホスホリラーゼと本質的に同じ酵素活性を有するアミノ酸配列をいう。遺伝コードの縮重のため、機能的に同一な多数の塩基配列が任意の所定のアミノ酸配列をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCTはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、GCAコドンによってアラニンが特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたアラニンを変更することなく、GCC、GCGまたはGCTに変更され得る。同様に、複数のコドンによってコードされ得るアミノ酸に関しては、コドンによってそのアミノ酸が特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされた特定のアミノ酸を変更することなく、そのアミノ酸をコードする任意の別のコドンに変更され得る。このような塩基配列の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての塩基配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント改変を包含する。サイレント変異は、コードする核酸が変化しない「サイレント置換」と、そもそも核酸がアミノ酸をコードしない場合を包含する。ある核酸がアミノ酸をコードする場合、サイレント変異は、サイレント置換と同義である。本明細書において「サイレント置換」とは、塩基配列において、あるアミノ酸をコードする塩基配列を、同じアミノ酸をコードする別の塩基配列に置換することをいう。遺伝コード上の縮重という現象に基づき、あるアミノ酸をコードする塩基配列が複数ある場合(例えば、グリシンなど)、このようなサイレント置換が可能である。したがって、サイレント置換により生成した塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドは、もとのポリペプチドと同じアミノ酸配列を有する。したがって、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼにおいて、本発明の目的とする改変(モチーフ配列1Lもしくは1H中の4位に相当する位置、モチーフ配列2中の4位に相当する位置、もしくはモチーフ配列3Lもしくは3H中の7位に相当する位置、または配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有するように置換すること)に加えて、塩基配列レベルでは、サイレント置換を含ませることも可能である。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンをコードする唯一のコドンであATG、および通常トリプトファンをコードする唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列は、発現のために導入される生物におけるコドンの使用頻度にあわせて変更され得る。コドン使用頻度は、その生物において高度に発現される遺伝子での使用頻度を反映する。例えば、大腸菌において発現させることを意図する場合、公開されたコドン使用頻度表(例えば、Sharpら,Nucleic Acids Research 16 第17号,8207頁(1988))に従って大腸菌での発現のために最適にすることができる。
(2.3 発現ベクターの作製)
上記のようにして改変された塩基配列を含む核酸分子を用いて、発現ベクターが作製される。特定の核酸配列を用いて発現ベクターを作製する方法は、当業者に周知である。
本明細書において核酸分子について言及する場合、「ベクター」とは、目的の塩基配列を目的の細胞へと移入させることができる核酸分子をいう。そのようなベクターとしては、目的の細胞において自律複製が可能であるか、または目的の細胞の染色体中への組込みが可能で、かつ改変された塩基配列の転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。本明細書において、ベクターはプラスミドであり得る。
本明細書において使用される「発現ベクター」とは、改変された塩基配列(すなわち、改変されたα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列)を目的の細胞中で発現し得るベクターをいう。発現ベクターは、改変された塩基配列に加えて、その発現を調節するプロモーターのような種々の調節エレメント、および必要に応じて、目的の細胞中での複製および組換え体の選択に必要な因子(例えば、複製起点(ori)、および薬剤耐性遺伝子のような選択マーカー)を含む。発現ベクター中では、改変された塩基配列は、転写および翻訳されるように作動可能に連結されている。調節エレメントとしては、プロモーター、ターミネーターおよびエンハンサーが挙げられる。また、発現された酵素を細胞外へ分泌させることが意図される場合は、分泌シグナルペプチドをコードする塩基配列が、改変された塩基配列の上流に正しいリーディングフレームで結合される。特定の生物(例えば、細菌)に導入するために使用される発現ベクターのタイプ、その発現ベクター中で使用される調節エレメントおよび他の因子の種類が、目的の細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
本明細書において使用される「ターミネーター」は、タンパク質コード領域の下流に位置し、塩基配列がmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。
本明細書において使用される「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、また転写頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。プロモーターの領域は、通常、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモーター領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本明細書において使用される「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。そのようなエンハンサーは当該分野において周知である。エンハンサーは複数個用いられ得るが1個用いられてもよいし、用いなくともよい。
本明細書において使用される「作動可能に連結された(る)」とは、所望の塩基配列が、発現(すなわち、作動)をもたらす転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター、エンハンサーなど)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。
改変した核酸配列を、上記調節エレメントに作動可能に連結するために、目的のα−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を加工すべき場合がある。例えば、プロモーターとコード領域との間が長すぎて転写効率の低下が予想される場合、またはリボゾーム結合部位と翻訳開始コドンとの間隔が適切でない場合などである。加工の手段としては、制限酵素による消化、Bal31、ExoIIIなどのエキソヌクレアーゼによる消化、あるいはM13などの一本鎖DNAまたはPCRを使用した部位特異的変異誘発の導入が挙げられる。
(2.4 耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの発現)
次いで、上記のようにして作製された発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼが発現される。
本明細書において酵素の「発現」とは、その酵素をコードする塩基配列が、インビボまたはインビトロで転写および翻訳されて、コードされる酵素が生産されることをいう。
発現ベクターを導入する細胞(宿主ともいう)としては、原核生物および真核生物が挙げられる。発現ベクターを導入する細胞は、α−グルカンホスホリラーゼの発現の容易さ、培養の容易さ、増殖の速さ、安全性などの種々の条件を考慮して容易に選択され得る。例えば、α−グルカンホスホリラーゼを高分子量のアミロースの合成に用いる場合、α−グルカンホスホリラーゼは、夾雑物としてアミラーゼを含まないことが好ましいので、アミラーゼを産生しないかまたは低レベルでしか発現しない細胞を用いることが好ましい。このような細胞の例としては、細菌、真菌などの微生物が挙げられる。より好ましい細胞の例としては、中温菌(例えば、大腸菌、枯草菌)が挙げられる。本明細書において、「中温菌」とは、生育温度が通常の温度環境にある微生物のことであり、特に生育至適温度が20℃〜40℃である微生物をいう。細胞は、微生物細胞であってもよいが、植物、動物などの細胞であってもよい。用いる細胞によっては、本発明の酵素は、翻訳後プロセシングを受けたものであり得る。植物としては、例えば、双子葉植物、イネ、コムギ、オオムギ、トウモロコシなどの単子葉植物が挙げられるがそれらに限定されない。イネなどの穀物は、貯蔵タンパク質を種子に蓄積する性質を持っており、貯蔵タンパク質系を用いて、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを種子に蓄積するように発現させることが可能である(特開2002−58492号明細書を参照のこと)。
本発明の方法において、発現ベクターを細胞に導入する技術は、当該分野で公知の任意の技術であり得る。このような技術の例としては、例えば、形質転換、形質導入、トランスフェクションなどが挙げられる。そのような核酸分子の導入技術は、当該分野において周知であり、かつ、慣用されるものであり、例えば、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載される。
細胞として植物の細胞を用いる場合、形質転換体を組織または植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法の例は、以下に記載される:Rogersら,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabataら,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Shimamotoら,Nature 338:274(1989);およびMaligaら,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995)。木本植物を形質転換する方法については、Molecular Biology of Woody Plants(Vol.I,II)(ed.S.Mohan Jain,Subhash C.Minocha)、Kluwer Academic Publishers、(2000)に記載されている。また、木本植物を形質転換する方法は、例えば、Plant Cell Reports(1999)19:106−110に詳細に記載されている。従って、当業者は、目的とするトランスジェニック植物に応じて上記周知方法を適宜使用して、形質転換体を再分化させることができる。このようにして得られたトランスジェニック植物には、目的の遺伝子が導入されており、そのような遺伝子の導入は、ノーザンブロット、ウェスタンブロット分析のような公知の方法または他の周知慣用技術を用いて確認することができる。
発現ベクターが導入されて耐熱化されたα−グルカンホスホリラーゼを発現する能力を獲得した細胞(形質転換細胞ともいう)を培養することにより、耐熱化されたα−グルカンホスホリラーゼを細胞に発現させることができる。形質転換細胞の培養条件は、使用する宿主細胞の種類、発現ベクター内の発現調節因子の種類などに応じて、適切に選択される。例えば、通常の振盪培養方法が用いられ得る。
形質転換細胞の培養に用いる培地は、使用する細胞が増殖して目的の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現し得るものであれば特に限定されない。培地には、炭素源、窒素源の他、無機塩、例えば、リン酸、Mg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Fe3+、Zn2+、Co2+、Ni2+、Na、Kなどの塩が必要に応じて、適宜混合して、または単独で用いられ得る。また、必要に応じて形質転換細胞の増殖、目的の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの発現に必要な各種無機物または有機物が添加され得る。
形質転換細胞を培養する温度は、用いる形質転換細胞の増殖に適するように選択され得る。通常15℃〜60℃である。形質転換細胞の培養は、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの発現のために十分な時間続行される。
誘導性プロモーターを有する発現ベクターを使用する場合、誘導物質の添加、培養温度の変更、培地成分の調整などにより発現が制御され得る。例えば、ラクトース誘導性プロモーターを有する発現ベクターを使用する場合は、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加することにより発現が誘導され得る。
(2.5 耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの回収)
このようにして発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、次いで回収され得る。例えば発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼが形質転換細胞内に生産される場合、このようにして形質転換細胞を培養した後、培養物を遠心分離または濾過することによって細胞を回収する。回収した細胞を適当な緩衝液に懸濁した後、通常の手段(超音波、フレンチプレス、リゾチーム処理)を用いて破砕し、粗酵素液を得る。さらに、粗酵素液を遠心分離、クロマトグラフィー、膜分画、電気泳動、塩析などの通常の酵素精製手段を適宜組み合わせた方法で精製することによって、比活性が向上した粗酵素液または精製酵素が得られる。α−アミラーゼなどのグルカンを加水分解する酵素が含まれていなければ、粗酵素をそのまま、例えば、高分子量のグルカンの製造に用い得る。
上述のようにして耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを生産することにより、天然のα−グルカンホスホリラーゼの耐熱性を大幅に向上させることが可能となる。また、発現させた耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、その耐熱性を利用して簡便に精製され得る。簡単に述べると、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを含む細胞抽出液を60℃程度で加熱処理することにより、夾雑酵素が不溶化する。この不溶化物を遠心分離などで除去して透析処理を行うことにより、精製された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼが得られる。
(3.耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ)
上記のような方法によって得られた本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、およびモチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、これらの位置でのアミノ酸残基の置換に加えて、天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含んでもよい。
1つの実施形態では、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、植物由来のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する。
本発明の酵素はまた、植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列に対して1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を含み、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する。
本発明の酵素は、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも2つの位置において天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有することが好ましい。本発明の酵素は、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置の全ての位置において、天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有することが最も好ましい。
天然のα−グルカンホスホリラーゼの上記の3つの位置は、α−グルカンホスホリラーゼの立体構造の中で、周囲のアミノ酸と相互に作用し、酵素を不安定にする立体的部分構造を形成していると考えられる。これらの位置の残基を、別のアミノ酸残基に変更することによって、酵素が安定化され、耐熱性が向上する。また、これらの位置の残基は周囲のアミノ酸残基と立体構造的に相互作用しているので、そのアミノ酸残基を置換することに重要な意義がある。例えば、馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼの場合は、F39の位置のFをそれ以外に置換することに重要な意義がある。また、例えば、馬鈴薯由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼにおいては、F39に相当する位置のアミノ酸はYであるが、Yを他のアミノ酸に置換することに重要な意義がある。
本発明の酵素においては、モチーフ配列1Lもしくは1H中の4位またはF39に相当する位置におけるアミノ酸残基は、天然のα−グルカンホスホリラーゼに見出されるアミノ酸残基以外のアミノ酸であり得る。モチーフ配列1Lもしくは1H中の4位またはF39に相当する位置におけるアミノ酸残基は、脂肪族アミノ酸または複素環式アミノ酸であることが好ましく、脂肪族アミノ酸であることがより好ましく、分枝アミノ酸(すなわち、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)であることが特に好ましく、イソロイシンまたはロイシンであることが殊に好ましく、ロイシンであることが最も好ましい。
本発明の酵素においては、モチーフ配列2中の4位またはN135に相当する位置におけるアミノ酸残基は、天然のα−グルカンホスホリラーゼに見出されるアミノ酸残基以外のアミノ酸であり得る。モチーフ配列2中の4位またはN135に相当する位置におけるアミノ酸残基は、脂肪族アミノ酸または複素環式アミノ酸であることが好ましく、アラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、バリンまたはチロシンであることがより好ましく、システイン、グリシン、セリンまたはバリンであることが特に好ましい。
本発明の酵素においては、モチーフ配列3Lもしくは3H中の7位またはT706に相当する位置におけるアミノ酸残基は、天然のα−グルカンホスホリラーゼに見出されるアミノ酸残基以外のアミノ酸であり得る。モチーフ配列3Lもしくは3H中の7位またはT706に相当する位置におけるアミノ酸残基は、脂肪族アミノ酸であることが好ましく、分枝アミノ酸(すなわち、バリン、ロイシンまたはイソロイシン)または含硫アミノ酸(すなわち、システイン、シスチン、メチオニン)であることがより好ましく、システイン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはトリプトファンであることが特に好ましく、システイン、イソロイシン、ロイシン、またはバリンであることが特に好ましく、イソロイシンであることが最も好ましい。
本発明の方法において、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを作製するために、本発明の目的の改変(配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有するように置換すること)に加えて、アミノ酸の置換、付加、欠失または修飾を行うことができる。アミノ酸の置換とは、1つのアミノ酸を別の1つのアミノ酸に置き換えることをいう。アミノ酸の付加とは、もとのアミノ酸配列中のどこかの位置に、1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を挿入することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのアミノ酸配列から1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を除去することをいう。アミノ酸修飾の例としては、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、ペプチド合成方法によって合成されてもよく、このような場合、置換または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸またはアミノ酸アナログであってもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、α−グルカンホスホリラーゼとしての酵素活性を有する、酵素アナログであってもよい。本明細書において使用される用語「酵素アナログ」とは、天然の酵素とは異なる化合物であるが、天然の酵素と少なくとも1つの化学的機能または生物学的機能が等価であるものをいう。したがって、酵素アナログには、もとの天然の酵素に対して、1つ以上のアミノ酸アナログが付加または置換されているものが含まれる。酵素アナログは、その機能(例えば、α−ホスホリラーゼ活性または耐熱性)が、もとの天然の酵素の機能と実質的に同様またはそれよりも良好であるように、このような付加または置換がされている。そのような酵素アナログは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。したがって、酵素アナログは、アミノ酸アナログを含むポリマーであり得る。本明細書において「酵素」は、特に言及しない限り、この酵素アナログを包含する。
本明細書において、「アミノ酸」は、天然のアミノ酸であっても、非天然アミノ酸であっても、誘導体アミノ酸であっても、アミノ酸アナログであってもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
用語「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体であるが、D体のアミノ酸を用いた形態もまた本発明の範囲内にある。
用語「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
「誘導体アミノ酸」とは、アミノ酸を誘導体化することによって得られるアミノ酸をいう。
「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
目的の改変に加えて、天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列に対して1もしくは数個またはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失による改変を含む耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、本発明の範囲内にある。そのような1もしくは数個またはそれを超えるアミノ酸の置換、付加または欠失を含む耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38,JohnWiley & Sons(1987−1997)、Nucleic Acids Research,10,6487(1982)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,79,6409(1982)、Gene,34,315(1985)、Nucleic Acids Research,13,4431(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci USA,82,488(1985)、Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,81,5662(1984)、Science,224,1431(1984)、PCT WO85/00817(1985)、Nature,316,601(1985)等に記載の方法に準じて調製することができる。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、当該分野において周知の方法を利用して製造され得る。例えば、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、周知技術である部位特異的変異誘発法により実施することができる。部位特異的変異誘発の手法は、当該分野では周知である。例えば、Nucl.Acid Research,Vol.10,pp.6487−6500(1982)を参照のこと。
本明細書において、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼについて用いられるとき「1もしくは数個またはそれを超える複数のアミノ酸の置換、付加または欠失」または「少なくとも1つのアミノ酸の置換、付加または欠失」とは、α−グルカンホスホリラーゼの酵素活性が喪失しない、好ましくはその酵素活性が基準となるもの(例えば、天然のα−グルカンホスホリラーゼ)と同等以上となるような程度の数の置換、付加または欠失をいう。当業者は、所望の性質を有する耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを容易に選択することができる。あるいは、目的とする耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを直接化学合成してもよい。そのような化学合成の方法は、当該分野において周知である。
このようにして作製された本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、第一の(天然の)α−グルカンホスホリラーゼ(好ましくは、馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼ)のアミノ酸配列に対して、好ましくは約40%、より好ましくは約45%、より好ましくは約50%、より好ましくは約55%、より好ましくは約60%、より好ましくは約65%、より好ましくは約70%、より好ましくは約75%、より好ましくは約80%、より好ましくは約85%、より好ましくは約90%、より好ましくは約95%、そして最も好ましくは約99%の同一性を有する。
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);トレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることは、当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換が挙げられるがこれらに限定されない:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびトレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン。
(3.2 耐熱性の評価方法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上であることを1つの特徴とする。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性は、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の約20%以上であることが好ましく、約25%以上であることがより好ましく、約30%以上であることがより好ましく、約40%以上であることがより好ましく、約50%以上であることがより好ましく、約55%以上であることが好ましく、約60%以上であることがより好ましく、約65%以上であることがさらに好ましく、約70%以上であることがいっそう好ましく、約80%以上であることが特に好ましく、約90%以上であることが最も好ましい。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で65℃で2分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の約40%以上であることが好ましく、約45%以上であることがより好ましく、約50%以上であることがさらに好ましく、約55%以上であることがいっそう好ましく、約60%以上であることが特に好ましく、約65%以上であることが最も好ましい。
(3.2.1 α−グルカンホスホリラーゼ(GP)活性測定法)
このGP酵素活性測定法は、G−1−Pから生じた遊離の無機リン酸(Pi)を定量する。
(i)200μlの反応液(100mM酢酸緩衝液(pH6.0)中、12.5mM G−1−P、1%デキストリンおよび酵素液を含む)を37℃に15分間インキュベートする。
(ii)800μlのモリブデン試薬(15mMモリブデン酸アンモニウム、100mM酢酸亜鉛)を加え、攪拌し反応を停止する。
(iii)200μlの568mMのアスコルビン酸(pH5.8)を加え、混合する。
(iv)37℃に15分間インキュベートした後、分光光度計を用いて850nmの吸光度を測定する。
(v)濃度既知の無機リン酸を用いて同様に吸光度を測定し、標準曲線を作成する。
(vi)この標準曲線に試料で得られた吸光度を当てはめ、試料中の無機リン酸を求める。無機リン酸は、リン酸イオンとして定量される。グルコース−1−リン酸の量は定量されない。本明細書において、1単位のα−グルカンホスホリラーゼ活性とは、この測定法で測定して、1分間に1μmolの無機リン酸(Pi)を生成する活性を1単位(U)とする。
(3.2.2耐熱性の測定法)
耐熱性は、以下の手順に従って測定される。
(i)0.2U/mlの酵素液(20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中)を55℃、60℃または65℃で0〜60分間インキュベートする。
(ii)各時間で取り出した酵素液を氷中に保持する。
(iii)(ii)の酵素液を10倍希釈し、GP活性測定法に従って酵素活性を測定する。20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性Aの割合は、加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性Aから、(A)÷(A)×100(%)によって算出される。加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの酵素活性Aに対する加熱後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの酵素活性Aの割合を、残存活性ともいう。
(3.3アミロースを合成する能力の評価方法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、重量平均分子量が、好ましくは約60kDa以上、より好ましくは約100kDa以上、さらに好ましくは約150kDa以上、さらに好ましくは約200kDa以上、さらに好ましくは約250kDa以上、さらに好ましくは約300kDa以上、さらに好ましくは約350kDa以上、さらに好ましくは約400kDa以上、さらに好ましくは約450kDa以上、さらに好ましくは約500kDa以上、さらに好ましくは約550kDa以上、さらに好ましくは約600kDa以上、最も好ましくは約650kDa以上のグルカン(特にアミロース)を合成する能力を有することを1つの特徴とする。重量平均分子量が約5kDa〜約599kDaのグルカンは水に溶けにくいのに対し、重量平均分子量が約600kDa以上のグルカンは特に、水溶性であるという利点を示す。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼによって合成されるグルカンの重量平均分子量には、特に上限はないが、例えば、1000kDaまで、1万kDaまで、10万kDaまでのグルカンが良好な生産性で合成され得る。
「重量平均分子量60kDa以上のアミロースを合成する能力を有する」とは、40μMマルトテトラオース、250mMグルコース−1−リン酸、200mM酢酸緩衝液(pH5.5)、4U/ml反応液の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ(精製酵素)を用いて、37℃にて18時間インキュベートすることによってアミロースを合成したときに合成されるアミロースの重量平均分子量が60kDa以上であることをいう。他の重量平均分子量のアミロースを合成する能力についても同様に定義され、例えば、「重量平均分子量600kDa以上のアミロースを合成する能力を有する」とは、この条件で合成されるアミロースの重量平均分子量が600kDa以上であることを有する。
アミロースの重量平均分子量は、例えば、以下の方法で測定され得る。
まず、合成したアミロースを1N水酸化ナトリウムで完全に溶解し、適当量の塩酸で中和した後、アミロース約30〜300μg分を、示差屈折計と多角度光散乱検出器とを併用したゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより平均分子量を求める。
詳しくは、カラムとしてShodex SB806M−HQ(昭和電工製)を用い、検出器としては多角度光散乱検出器(DAWN−DSP、Wyatt Technology社製)および示差屈折計(Shodex RI−71、昭和電工製)をこの順序で連結して用いる。カラムを40℃に保ち、溶離液としては0.1M硝酸ナトリウム溶液を流速1mL/分で用いる。得られるシグナルを、データ解析ソフトウェア(商品名ASTRA、Wyatt Technology社製)を用いて収集し、同ソフトを用いて解析することにより、重量平均分子量を求める。
(3.4保存安定性の評価方法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、好ましくは、天然のα−グルカンホスホリラーゼと比較して、保存安定性が向上している。本明細書中で「保存安定性が向上した」とは、天然のα−グルカンホスホリラーゼと比較して、保存中に分解されにくいことをいう。
1つの局面では、保存安定性とは、4℃で保存したときの安定性をいう。この場合、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、精製後、4℃にて一定期間保存したとき、酵素タンパク質の分子量が、精製直後とほぼ同等である。一般に、天然のα−グルカンホスホリラーゼは、4℃にて長期間保存すると、分解して、酵素タンパク質の分子量が、精製直後よりも低下する。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、好ましくは4℃にて1ヶ月間保存した後、より好ましくは4℃にて3ヶ月間保存した後、最も好ましくは4℃にて5ヶ月間保存した後、精製直後とほぼ同等の分子量を有する。
別の局面では、保存安定性とは、37℃で保存したときの安定性をいう。この場合、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、精製後、37℃にて一定期間保存したとき、酵素タンパク質の分子量が、精製直後とほぼ同等である。一般に、天然のα−グルカンホスホリラーゼは、37℃にて長期間保存すると、分解して、酵素タンパク質の分子量が、精製直後よりも低下する。別の形態では、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、好ましくは37℃にて4日間保存した後、より好ましくは37℃にて7日間保存した後、最も好ましくは37℃にて10日間保存した後、精製直後とほぼ同等の分子量を有する。
もちろん、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、通常保存に用いられる任意の温度で保存され得る。保存に用いられる温度は、例えば、約4℃〜約37℃の間の任意の温度(例えば、約4℃、約5℃、約10℃、約20℃、約25℃、約37℃など)であり得る。
保存安定性は、当該分野で公知の任意の方法によって評価され得る。例えば、精製直後の酵素タンパク質と、所定の温度にて一定期間保存した後の酵素タンパク質とを、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Native−PAGE)によって泳動し、これらの酵素タンパク質の分子量を比較することによって評価され得る。
(4.本発明の酵素を用いたグルカンの製造法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、グルカンの合成方法において有利に用いられ得る。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いるグルカンの合成方法は、当該分野で公知の任意のグルカンの合成方法であり得るが、スクロースとプライマーにスクロースホスホリラーゼとα−グルカンホスホリラーゼを同時に作用させる方法(SP−GP法ともいう)において用いることが好ましい。SP−GP法は、安価な基質を用いて直鎖状グルカンを製造できるという利点を有する。
本発明のグルカンの合成方法は、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
本発明のグルカンの合成方法は、もちろん、SP−GP法によらない方法であってもよい。このような方法の場合、本発明のグルカンの合成方法は、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する。
本明細書中では「グルカン」とは、D−グルコースを構成単位とする、糖であって、α−1,4−グルコシド結合によって連結された糖単位を少なくとも2糖単位以上有する糖をいう。グルカンは、直鎖状、分岐状または環状の分子であり得る。直鎖状グルカンとα−1,4−グルカンとは同義語である。直鎖状グルカンでは、α−1,4−グルコシド結合によってのみ糖単位の間が連結されている。α−1,6−グルコシド結合を1つ以上含むグルカンは、分岐状グルカンである。グルカンは、好ましくは、直鎖状の部分をある程度含む。分岐のない直鎖状グルカンがより好ましい。
グルカンは、場合によっては、分岐の数(すなわち、α−1,6−グルコシド結合の数)が少ないことが好ましい。このような場合、分岐の数は、代表的には0〜10000個、好ましくは0〜1000個、より好ましくは0〜500個、さらに好ましくは0〜100個、さらに好ましくは0〜50個、さらに好ましくは0〜25個、さらに好ましくは0個である。
本発明のグルカンでは、α−1,6−グルコシド結合を1としたときのα−1,6−グルコシド結合の数に対するα−1,4−グルコシド結合の数の比は、好ましくは1〜10000であり、より好ましくは2〜5000であり、さらに好ましくは5〜1000であり、さらに好ましくは10〜500である。
α−1,6−グルコシド結合は、グルカン中に無秩序に分布していてもよいし、均質に分布していてもよい。グルカン中に糖単位で5個以上の直鎖状部分ができる程度の分布であることが好ましい。
グルカンは、D−グルコースのみから構成されていてもよいし、グルカンの性質を損なわない程度に修飾された誘導体であってもよい。修飾されていないことが好ましい。
グルカンは、代表的には約8×10以上、好ましくは約1×10以上、より好ましくは約5×10以上、さらに好ましくは約1×10以上、さらに好ましくは約6×10以上の分子量を有する。グルカンは、代表的には約1×10以下、好ましくは約3×10以下、より好ましくは約1×10以下、さらに好ましくは約5×10以下、さらに好ましくは約1×10以下の分子量を有する。本発明ではグルカンの分子量とは、特に制限がない限り重量平均分子量をいう。
当業者は、本発明の製造方法で用いられる基質の量、酵素の量、反応時間などを適宜設定することによって所望の分子量のグルカンが得られることを容易に理解する。
生産効率の良いSP−GP法は、国際公開第WO02/097107号パンフレットに記載される。
本発明の製造法では、例えば、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸と、緩衝剤と、それを溶かしている溶媒とを主な材料として用いる。これらの材料は通常、反応開始時に全て添加されるが、反応の途中でこれらのうちの任意の材料を追加して添加してもよい。本発明の製造方法では、必要に応じて、枝切り酵素、ブランチングエンザイム、4−α−グルカノトランスフェラーゼおよびグリコーゲンデブランチングエンザイムからなる群より選択される酵素を用いることができる。枝切り酵素、ブランチングエンザイム、4−α−グルカノトランスフェラーゼおよびグリコーゲンデブランチングエンザイムからなる群より選択される酵素は、目的とするグルカンの構造に応じて、本発明の製造方法の最初から反応溶液中に添加してもよく、途中から反応溶液中に添加してもよい。
本明細書中では、「スクロースホスホリラーゼ」とは、スクロースのα−グリコシル基をリン酸基に転移して加リン酸分解を行う任意の酵素をいう。スクロースホスホリラーゼによって触媒される反応は、次式により示される:
Figure 2004113525
スクロースホスホリラーゼは、自然界では種々の生物に含まれる。スクロースホスホリラーゼを産生する生物の例としては、Streptococcus属に属する細菌(例えば、Streptococcus thermophilus、Streptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、およびStreptococcus mitis)、Leuconostoc mesenteroides、Pseudomonas sp.、Clostridium sp.、Pullularia pullulans、Acetobacter xylinum、Agrobacterium sp.、Synecococcus sp.、E.coli、Listeria monocytogenes、Bifidobacterium adolescentis、Aspergillus niger、Monilia sitophila、Sclerotinea escerotiorum、およびChlamydomonas sp.が挙げられるがこれらに限定されない。
スクロースホスホリラーゼは、スクロースホスホリラーゼを産生する任意の生物由来であり得る。スクロースホスホリラーゼは、ある程度の耐熱性を有することが好ましい。スクロースホスホリラーゼは、単独で存在する場合の耐熱性が高ければ高いほど好ましい。例えば、スクロースホスホリラーゼを4%のスクロース存在下で55℃にて30分間加熱した場合に加熱前のスクロースホスホリラーゼの活性の20%以上の活性を保持するものであることが好ましい。スクロースホスホリラーゼは、好ましくはStreptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Leuconostoc mesenteroides、Oenococcus oeni、Bifidobacterium longum、Agrobacterium vitis、Pseudomonas saccharophila、Escherichia coliおよびListeria innocuaからなる群より選択される細菌由来であり得、より好ましくはStreptococcus mutans、Streptococcus pneumoniae、Leuconostoc mesenteroidesおよびOenococcus oeniからなる群より選択される細菌由来であり得、そしてさらに好ましくはStreptococcus mutansまたはStreptococcus pneumoniaeに由来し得る。
スクロースは、C122211で示される、分子量約342の二糖である。スクロースは、光合成能を有するあらゆる植物中に存在する。スクロースは、植物から単離されてもよいし、化学的に合成されてもよい。コストの面からみて、スクロースを植物から単離することが好ましい。スクロースを多量に含む植物の例としては、サトウキビ、サトウダイコンなどが挙げられる。サトウキビは、汁液中に約20%のスクロースを含む。サトウダイコンは、汁液中に約10〜15%のスクロースを含む。スクロースは、スクロースを含む植物の汁液から精製糖に至るいずれの精製段階のものとして提供されてもよい。
本発明の製造法に用いられる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼおよびスクロースホスホリラーゼはそれぞれ、精製酵素または粗酵素を問わず、固定化されたものでも反応に使用し得、反応の形式は、バッチ式でも連続式でもよい。固定化の方法としては、担体結合法、(例えば、共有結合法、イオン結合法、あるいは物理的吸着法)、架橋法あるいは包括法(格子型あるいはマイクロカプセル型)が使用され得る。
プライマーの例としては、マルトオリゴ糖、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、デキストリン、プルラン、カップリングシュガー、澱粉およびこれらの誘導体が挙げられる。
本明細書中において、無機リン酸とは、SPの反応においてリン酸基質を供与し得る物質をいう。ここでリン酸基質とは、グルコース−1−リン酸のリン酸部分(moiety)の原料となる物質をいう。スクロースホスホリラーゼによって触媒されるスクロース加リン酸分解において、無機リン酸はリン酸イオンの形態で基質として作用していると考えられる。当該分野ではこの基質を慣習的に無機リン酸というので、本明細書中でも、この基質を無機リン酸という。無機リン酸には、リン酸およびリン酸の無機塩が含まれる。通常、無機リン酸は、アルカリ金属イオンなどの陽イオンを含む水中で使用される。この場合、リン酸とリン酸塩とリン酸イオンとは平衡状態になるので、リン酸とリン酸塩とは区別をしにくい。従って、便宜上、リン酸とリン酸塩とを合わせて無機リン酸という。本発明において、無機リン酸は好ましくは、リン酸の任意の金属塩であり、より好ましくはリン酸のアルカリ金属塩である。無機リン酸の好ましい具体例としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸(HPO)、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウムなどが挙げられる。
無機リン酸は、反応開始時のSP−GP反応系において、1種類のみ含有されてもよく、複数種類含有されてもよい。
無機リン酸は、例えば、ポリリン酸(例えば、ピロリン酸、三リン酸および四リン酸)のようなリン酸縮合体またはその塩を、物理的、化学的または酵素反応などによって分解したものを反応溶液に添加することによって提供され得る。
本明細書において、グルコース−1−リン酸とは、グルコース−1−リン酸(C13P)およびその塩をいう。グルコース−1−リン酸は好ましくは、狭義のグルコース−1−リン酸(C13P)の任意の金属塩であり、より好ましくはグルコース−1−リン酸(C13P)の任意のアルカリ金属塩である。グルコース−1−リン酸の好ましい具体例としては、グルコース−1−リン酸二ナトリウム、グルコース−1−リン酸二カリウム、グルコース−1−リン酸(C13P)、などが挙げられる。本明細書において、括弧書きで化学式を書いていないグルコース−1−リン酸は、広義のグルコース−1−リン酸、すなわち狭義のグルコース−1−リン酸(C13P)およびその塩を示す。
グルコース−1−リン酸は反応開始時のSP−GP反応系において、1種類のみ含有されてもよく、複数種類含有されていてもよい。
本発明のグルカン製造法において、α−1,6−グルコシド結合を含有する出発材料を用いる場合などの、生成物に分岐が生じる場合には、必要に応じて、枝切り酵素を用いることができる。
本発明で用いられ得る枝切り酵素は、α−1,6−グルコシド結合を切断し得る酵素である。枝切り酵素は、アミロペクチンおよびグリコーゲンにともによく作用するイソアミラーゼ(EC 3.2.1.68)と、アミロペクチン、グリコーゲンおよびプルランに作用するα−デキストリンエンド−1,6−α−グルコシダーゼ(プルラナーゼともいう)(EC 3.2.1.41)との2つに分類される。
枝切り酵素は、微生物、細菌、および植物に存在する。枝切り酵素を産生する微生物の例としては、Saccharomyces cerevisiae、Chlamydomonas sp.が挙げられる。枝切り酵素を産生する細菌の例としては、Bacillus brevis、Bacillus acidopullulyticus、Bacillus macerans、Bacillus stearothermophilus、Bacillus circulans、Thermus aquaticus、Klebsiella pneumoniae、Thermoactinomyces thalpophilus、Thermoanaerobacter ethanolicus、Pseudomonas amyloderamosaなどが挙げられる。枝切り酵素を産生する植物の例としては、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、オートムギ、サトウダイコンなどが挙げられる。枝切り酵素を産生する生物はこれらに限定されない。
本発明の方法において、生成物に分岐を生じさせることが所望される場合には、必要に応じて、ブランチングエンザイムを用いることができる。
本発明で用いられ得るブランチングエンザイムは、α−1,4−グルカン鎖の一部をこのα−1,4−グルカン鎖のうちのあるグルコース残基の6位に転移して分枝を作り得る酵素である。ブランチングエンザイムは、1,4−α−グルカン分枝酵素、枝つくり酵素またはQ酵素とも呼ばれる。
ブランチングエンザイムは、微生物、動物、および植物に存在する。ブランチングエンザイムを産生する微生物の例としては、Bacillus stearothermophilus、Bacillus subtilis、Bacillus caldolyticus、Bacillus licheniformis、Bacillus amyloliquefaciens、Bacillus coagulans、Bacillus caldovelox、Bacillus thermocatenulatus、Bacillus smithii、Bacillus megaterium、Bacillus brevis、Alkalophillic Bacillus sp.、Streptomyces coelicolor、Aquifex aeolicus、Synechosystis sp.、E.coli、Agrobacteirum tumefaciens、Thermus aquaticus、Rhodothermus obamensis、Neurospora crassa、酵母などが挙げられる。ブランチングエンザイムを産生する動物の例としてはヒト、ウサギ、ラット、ブタなどの哺乳類が挙げられる。ブランチングエンザイムを産生する植物の例としては、藻類、馬鈴薯、サツマイモ、ヤマイモ、キャッサバなどの芋類、ホウレンソウなどの野菜類、トウモロコシ、イネ、コムギ、オオムギ、ライムギ、アワなどの穀類、えんどう豆、大豆、小豆、うずら豆などの豆類などが挙げられる。ブランチングエンザイムを産生する生物はこれらに限定されない。
本発明の方法において、生成物に環状構造を生じさせる場合には、必要に応じて、4−α−グルカノトランスフェラーゼを用いることができる。
本発明で用いられ得る4−α−グルカノトランスフェラーゼは、ディスプロポーショネーティングエンザイム、D−酵素、アミロマルターゼ、不均化酵素などとも呼ばれ、マルトオリゴ糖の糖転移反応(不均一化反応)を触媒し得る酵素である。4−α−グルカノトランスフェラーゼは、供与体分子の非還元末端からグルコシル基あるいは、マルトシルもしくはマルトオリゴシルユニットを受容体分子の非還元末端に転移する酵素である。従って、酵素反応は、最初に与えられたマルトオリゴ糖の重合度の不均一化をもたらす。供与体分子と受容体分子とが同一の場合は、分子内転移が生じ、その結果、環状構造をもつ生成物が得られる。
4−α−グルカノトランスフェラーゼは、微生物および植物に存在する。4−α−グルカノトランスフェラーゼを産生する微生物の例としては、Aquifex aeolicus、Streptococcus pneumoniae、Clostridium butylicum、Deinococcus radiodurans、Haemophilus influenzae、Mycobacterium tuberculosis、Thermococcus litralis、Thermotoga maritima、Thermotoga neapolitana、Chlamydia psittaci、Pyrococcus sp.、Dictyoglomus thermophilum、Borrelia burgdorferi、Synechosystis sp.、E.coli、Thermus aquaticusなどが挙げられる。4−α−グルカノトランスフェラーゼを産生する植物の例としては、馬鈴薯、サツマイモ、ヤマイモ、キャッサバなどの芋類、トウモロコシ、イネ、コムギ、などの穀類、えんどう豆、大豆、などの豆類などが挙げられる。4−α−グルカノトランスフェラーゼを産生する生物はこれらに限定されない。
本発明の方法において、生成物に環状構造を生じさせる場合には、必要に応じて、グリコーゲンデブランチングエンザイムを用いることができる。
本発明で用いられ得るグリコーゲンデブランチングエンザイムは、α−1,6−グルコシダーゼ活性と、4−α−グルカノトランスフェラーゼ活性との2種類の活性をもつ酵素である。グリコーゲンデブランチングエンザイムが持つ、4−α−グルカノトランスフェラーゼ活性により、環状構造を持つ生成物が得られる。
グリコーゲンデブランチングエンザイムは、微生物および動物に存在する。グリコーゲンデブランチングエンザイムを産生する微生物の例としては、酵母などが挙げられる。グリコーゲンデブランチングエンザイムを産生する動物の例としては、ヒト、ウサギ、ラット、ブタなどの哺乳類が挙げられる。グリコーゲンデブランチングエンザイムを産生する生物はこれらに限定されない。
本発明の製造法に用いる溶媒は、スクロースホスホリラーゼおよびα−グルカンホスホリラーゼの酵素活性を損なわない溶媒であれば任意の溶媒であり得る。
なお、グルカンを生成する反応が進行し得る限り、溶媒が本発明の製造法に用いる材料を完全に溶解する必要はない。例えば、酵素が固体の担体上に担持されている場合には、酵素が溶媒中に溶解する必要はない。さらに、スクロースなどの反応材料も全てが溶解している必要はなく、反応が進行し得る程度の材料の一部が溶解していればよい。
代表的な溶媒は、水である。溶媒は、上記スクロースホスホリラーゼまたはα−グルカンホスホリラーゼを調製する際にスクロースホスホリラーゼまたはα−グルカンホスホリラーゼに付随して得られる細胞破砕液のうちの水分であってもよい。
α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む溶液中には、スクロースホスホリラーゼとスクロースとの間の相互作用およびα−グルカンホスホリラーゼとプライマーとの間の相互作用を妨害しない限り、任意の他の物質を含み得る。このような物質の例としては、緩衝剤、α−グルカンホスホリラーゼを産生する微生物(例えば、細菌、真菌など)の成分、スクロースホスホリラーゼを産生する微生物(例えば、細菌、真菌など)の成分、塩類、培地成分などが挙げられる。
これらの材料の使用量は、公知であり、当業者によって適切に設定され得る。
本発明の製造法においては、まず、反応溶液を調製する。反応溶液は、例えば、適切な溶媒に、α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、固体状のスクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを添加することにより調製され得る。あるいは、反応溶液は、α−グルカンホスホリラーゼ、スクロースホスホリラーゼ、スクロース、プライマー、または無機リン酸もしくはグルコース−1−リン酸をそれぞれ含む溶液を混合することによって調製してもよい。あるいは、反応溶液は、α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とのうちのいくつかの成分を含む溶液に固体状の他の成分を混合することによって調製してもよい。この反応溶液には、酵素反応を阻害しない限り、必要に応じて、pHを調整する目的で任意の緩衝剤を加えてもよい。この反応溶液には、必要に応じて枝切り酵素、ブランチングエンザイム、4−α−グルカノトランスフェラーゼおよびグリコーゲンデブランチングエンザイムからなる群より選択される酵素を添加してもよい。
次いで、反応溶液を、当該分野で公知の方法によって必要に応じて加熱することにより、反応させる。反応温度は、本発明の効果が得られる限り、任意の温度であり得る。反応開始時の反応溶液中のスクロース濃度が約5〜約100%である場合には、反応温度は代表的には、約30℃〜約75℃の温度であり得る。この反応工程における溶液の温度は、所定の反応時間後に反応前のこの溶液に含まれるスクロースホスホリラーゼおよびα−グルカンホスホリラーゼの少なくとも一方、好ましくは両方の活性の約20%以上、好ましくは約30%以上の活性が残る温度であることが好ましい。この温度は好ましくは約55℃〜約75℃であり、より好ましくは約60℃〜約75℃であり、さらに好ましくは約60℃〜約70℃、特に好ましくは約60℃〜約65℃である。
反応時間は、反応温度、反応により生産されるグルカンの分子量および酵素の残存活性を考慮して、任意の時間で設定され得る。反応時間は、代表的には約1時間〜約100時間、より好ましくは約1時間〜約72時間、さらにより好ましくは約2時間〜約36時間、最も好ましくは約2時間〜約24時間である。
このようにして、グルカンを含有する溶液が生産される。
(5.本発明の酵素を用いたグルコース−1−リン酸の合成方法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、グルコース−1−リン酸の合成方法においても有利に用いられ得る。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いるグルコース−1−リン酸の合成方法は、当該分野で公知の任意のグルコース−1−リン酸の合成方法であり得る。
本発明のグルコース−1−リン酸の合成方法は、本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ、グルカンおよび無機リン酸を含む反応溶液を反応させて、グルコース−1−リン酸を生産する工程を包含する。
本発明のグルコース−1−リン酸の合成方法において用いられるグルカンおよび無機リン酸の定義は、上記4と同様である。
グルコース−1−リン酸の合成方法に用いられる材料の使用量は、公知であり、当業者によって適切に設定され得る。
本発明のグルコース−1−リン酸の合成方法においては、まず、反応溶液を調製する。反応溶液は、例えば、適切な溶媒に、α−グルカンホスホリラーゼと、グルカンと、無機リン酸とを添加することにより調製され得る。あるいは、反応溶液は、α−グルカンホスホリラーゼ、グルカン、または無機リン酸をそれぞれ含む溶液を混合することによって調製してもよい。あるいは、反応溶液は、α−グルカンホスホリラーゼと、グルカンと、無機リン酸とのうちのいくつかの成分を含む溶液に固体状の他の成分を混合することによって調製してもよい。この反応溶液には、酵素反応を阻害しない限り、必要に応じて、pHを調整する目的で任意の緩衝剤を加えてもよい。この反応溶液には、必要に応じて枝切り酵素を添加してもよい。
次いで、反応溶液を、当該分野で公知の方法によって必要に応じて加熱することにより、反応させる。反応温度は、本発明の効果が得られる限り、任意の温度であり得る。反応温度は代表的には、約30℃〜約75℃の温度であり得る。この反応工程における溶液の温度は、所定の反応時間後に反応前のこの溶液に含まれるα−グルカンホスホリラーゼの活性の約20%以上、より好ましくは約30%以上の活性が残る温度であることが好ましい。この温度は好ましくは約55℃〜約75℃であり、より好ましくは約60℃〜約75℃であり、さらに好ましくは約60℃〜約70℃、特に好ましくは約60℃〜約65℃である。
反応時間は、反応温度および酵素の残存活性を考慮して、任意の時間で設定され得る。反応時間は、代表的には約1時間〜約100時間、より好ましくは約1時間〜約72時間、さらにより好ましくは約2時間〜約36時間、最も好ましくは約2時間〜約24時間である。
このようにして、グルコース−1−リン酸を含有する溶液が生産される。
(6.本発明の酵素を用いたその他の製造法)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、上記の製造法以外にも、α−グルカンホスホリラーゼを使用する、当該分野で公知の任意の製造法において使用され得る。これらの製造法に本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを利用することは当業者に容易に行われ得る。
(7.本発明の製造法によって得られたグルカンの用途)
本発明の製造法によって得られたグルカンは、グルカンについて当該分野で公知の用途に使用され得る。グルカンのなかでも特に、不溶性のアミロースには、食物繊維と同様の働きが予想され、健康食品への利用も期待できる。さらに、アミロースは、例えばヨウ素、脂肪酸などを分子内に包接し得る特徴を持つことから、医薬品、化粧品、サニタリー製品分野での用途が期待される。アミロースはまた、アミロースと同様の包接能力を持つシクロデキストリンおよびシクロアミロースの製造用原料に利用できる。さらに、アミロースを含有したフィルムは、汎用プラスチックに劣らない引張強度を持ち、生分解性プラスチックの素材として非常に有望である。このようにアミロースには、多くの用途が期待されている。
(8.本発明の合成方法によって得られたグルコース−1−リン酸の用途)
本発明の合成方法によって得られたグルコース−1−リン酸は、グルコース−1−リン酸について当該分野で公知の用途に使用され得る。グルコース−1−リン酸は、例えば、医療用抗菌剤、抗腫瘍剤(白金錯体)、心臓病の治療薬(アミン塩)、グルカン合成の基質として利用されている。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記発明の詳細な説明にも下記実施例にも限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
(1.測定方法および計算方法)
本発明における各種物質は、以下の測定方法によって測定した。
(1.1グルコースの定量)
グルコースを、市販されている測定キットを用いて定量した。グルコースAR−II発色試薬(和光純薬社製)を用いて測定する。
(1.2フルクトースの定量)
フルクトースを、市販されている測定キットを用いて定量した。F−キットD−グルコース/D−フルクトース(ロシュ社製)を用いて測定する。
(1.3グルコース−1−リン酸の定量)
グルコース−1−リン酸を、以下の方法により定量した。300μlの測定試薬(200mM Tris−HCl(pH7.0)、3mM NADP、15mM塩化マグネシウム、3mM EDTA、15μMグルコース−1,6−二リン酸、6μg/mlホスホグルコムターゼ、6μg/mlグルコース−6−リン酸脱水素酵素)に、適切に希釈したグルコース−1−リン酸を含む溶液600μlを加えて攪拌し、得られた反応混合物を37℃で30分間反応させる。その後、分光光度計を用いて340nmでの吸光度を測定する。濃度既知のグルコース−1−リン酸ナトリウムを用いて同様に吸光度を測定し、標準曲線を作成する。この標準曲線に試料で得られた吸光度を当てはめ、試料中のグルコース−1−リン酸濃度を求める。通常は、1分間に1μmolのグルコース−1−リン酸を生成する活性を1単位とする。この定量法では、グルコース−1−リン酸のみが定量され、無機リン酸の量は定量されない。
(1.4無機リン酸の定量)
無機リン酸を、リン酸イオンとして以下の方法により求めた。無機リン酸を含む溶液(200μl)に対し、800μlのモリブデン試薬(15mMモリブデン酸アンモニウム、100mM酢酸亜鉛)を混合し、続いて200μlの568mMアスコルビン酸(pH5.0)を加えて攪拌し、得られた反応混合物を37℃で30分間反応させる。その後、分光光度計を用いて850nmでの吸光度を測定する。濃度既知の無機リン酸を用いて同様に吸光度を測定し、標準曲線を作成する。この標準曲線に試料で得られた吸光度を当てはめ、試料中の無機リン酸を求める。この定量法では、無機リン酸の量が定量され、グルコース−1−リン酸の量は定量されない。
(1.5グルコース−1−リン酸から製造したグルカンの収率の計算方法)
スクロースホスホリラーゼを用いず、α−グルカンホスホリラーゼおよび出発物質としてグルコース1−リン酸を用いて製造したグルカン(例えば、アミロース)の収率は、反応終了後の溶液中の無機リン酸、グルコースの量から、以下の式により求められる。
Figure 2004113525
(1.6スクロースから製造したグルカンの収量の計算方法)
SP−GP法において出発物質として無機リン酸を用いて製造したグルカン(例えば、アミロース)の収量は、反応終了後の溶液中の、グルコース、フルクトース、およびグルコース−1−リン酸の量から、以下の式により求められる。
Figure 2004113525
この式は、以下の原理に基づく。
本発明の方法では、まず、以下の式の反応(A)が起き得る。
Figure 2004113525
この反応は、スクロースホスホリラーゼにより触媒される。この反応では、スクロースと無機リン酸とが反応して、同じモル量のグルコース−1−リン酸とフルクトースとが生じる。生じたフルクトースはそれ以上他の物質と反応しないので、フルクトースのモル量を測定することによって生じたグルコース−1−リン酸のモル量がわかる。
スクロースホスホリラーゼは、上記の反応(A)の他に、以下の反応(B)のスクロースの加水分解も副反応として触媒し得る。
Figure 2004113525
グルカンに取り込まれたグルコース量は以下によって計算される。
Figure 2004113525
反応(B)で生成するフルクトースを考慮すると、反応(A)により生成されたフルクトースの量は、以下によって算出される:
Figure 2004113525
したがって、グルカンの収量は、以下の式により求められる。
Figure 2004113525
出発物質として、グルコース−1−リン酸を用いて製造したグルカンの収量は、初発のグルコース−1−リン酸の量、ならびに反応終了後の溶液中のグルコース、フルクトースおよびグルコース−1−リン酸の量から、以下の式により求められる。
Figure 2004113525
この式は以下の原理に基づく。
反応溶液中では、初発のグルコース−1−リン酸に加えて、反応(A)によって、グルコース−1−リン酸が生成される。つまり、初発のグルコース−1−リン酸と生成されたグルコース−1−リン酸とが、グルカンの合成に使われ得る。グルカンの合成に使われ得るグルコース−1−リン酸の量から、反応終了後に反応溶液に残存するグルコース−1−リン酸の量を差し引くことによって、反応に使用されたグルコース−1−リン酸の量、すなわち、グルカンに取り込まれたグルコースの量を算出できる。したがって、グルカンに取り込まれたグルコースの量は上記に示す式により求められる。なお、この式は、SP−GP反応系において出発材料として無機リン酸とグルコース−1−リン酸とを併用した場合にも適用できる。
(1.7 スクロースから製造したグルカンの収率の計算方法)
出発物質として無機リン酸を用いて製造した場合のグルカンの収率は、以下の式によって求められる。
Figure 2004113525
出発物質としてグルコース−1−リン酸を用いて製造した場合のグルカンの収率は、以下の式によって求められる。
Figure 2004113525
なお、この式は、SP−GP反応系において出発材料として無機リン酸とグルコース−1−リン酸とを併用した場合にも適用できる。
(実施例1:耐熱化馬鈴薯α−グルカンホスホリラーゼの作製、スクリーニングおよび配列決定)
概略を述べると、馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子にランダム変異を導入し、ランダム変異の導入された遺伝子を大腸菌に導入して、ランダム変異の導入されたα−グルカンホスホリラーゼを発現させ、発現されたα−グルカンホスホリラーゼのうち、60℃で10分間加熱した後、グルカンを合成する能力を有する耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現する大腸菌を選択し、この大腸菌から耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を単離してその配列を決定した。
詳細には、以下の通りである。
まず、馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼ(GP)の遺伝子を調製した。Takahaら(Journal of Biological Chemistry,268巻、1391−1396頁、1993年)の記載に従って、馬鈴薯塊茎より、mRNAを周知の方法で調製し、cDNAライブラリーを市販のキットを用いて作製した。
次に、既知のGP遺伝子配列(データベースGenBankアクセッションナンバーD00520)を基に、PCRプライマー1およびPCRプライマー2を設計した。上述のcDNAライブラリーを鋳型として、PCRプライマー1および2として
Figure 2004113525
および
Figure 2004113525
を用いてPCRを行い、馬鈴薯由来のGPの遺伝子を増幅した。PCRの条件は、94℃で30秒間、50℃で1分間、72℃で3分間を1サイクルとして、30サイクルというPCR反応であった。なおPCRプライマー1のアンダーラインの部分が、タイプL GPの成熟タンパク質のN末端部分の構造遺伝子配列に対応しており、PCRプライマー2のアンダーラインの部分が、タイプL GP構造遺伝子の終止コドン直後の塩基配列に対応している。
増幅されたGP遺伝子を、SmaIであらかじめ切断したプラスミドpMW118(日本ジーン株式会社製)に挿入し、図2のような配列をもった、プラスミドを選択した。このプラスミドを、リン酸カルシウム沈澱法によって大腸菌TG−1に導入し、アンピシリン耐性株を選択し、このアンピシリン耐性株を培養し、このアンピシリン耐性株からプラスミドを回収することにより、馬鈴薯由来のタイプL GP遺伝子を得た。
得られた馬鈴薯由来タイプL GP遺伝子に対して、当業者に公知のエラープローンPCR法(参考文献Leungら(Technique 1,11−15,1989)およびCadwellおよびJoyce(PCR Methods Applic.2,28−33,1992))により、PCRプライマー3およびPCRプライマー4として
Figure 2004113525
および
Figure 2004113525
Figure 2004113525
を用いて、94℃30秒間の後、94℃30秒間、68℃3分間を1サイクルとして25サイクル、その後、68℃1分間のPCR反応を行った。増幅されたDNA断片には平均2〜3ヶ所の塩基置換が導入された。なおPCRプライマー3のアンダーラインの部分が、タイプL GPの成熟タンパク質のN末端部分の構造遺伝子配列に対応しており、PCRプライマー4のアンダーラインの部分が、タイプL GP構造遺伝子の終止コドン直後の塩基配列に対応している。
ランダム変異の導入されたGP遺伝子増幅断片を、BamHIであらかじめ切断したプラスミドpET3d(STRATAGENE製)に挿入し、ランダム変異の導入された耐熱性GPのスクリーニングのためのプラスミドライブラリーを作製した。このプラスミドで大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、形質転換体をアンピシリン含有LB寒天培地(50μg/mlアンピシリン、Difco製トリプトン1%、Difco製酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%、1.5% アガロース、pH7.3)に、独立したコロニーが得られるように希釈して塗布し、30℃で24時間培養した。得られたプレート上のコロニーをナイロンメンブレンフィルターにうつしとった。コロニーが付着したフィルターの表面を充分乾かした後、このフィルターを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で、60℃10分間インキュベートした。コロニーをうつしとった後のプレートをさらに37℃で数時間インキュベートし、その後、マスタープレートとして4℃で保存した。熱処理したフィルターをグルカン合成の基質を含むゲル(0.05% デキストリン、50mM G−1−P、100mMクエン酸緩衝液(pH6.7)、0.7% アガロースを含む)にコロニー付着面がゲル表面と密着するように合わせ、50℃で2時間インキュベートした。ゲルからはがしたフィルターをヨウ素液(0.1% ヨウ化カリウム、0.01% ヨウ素)にひたし、フィルター上に合成されたグルカンをヨウ素デンプン反応で検出した。青く染まったスポットに対応するコロニーをマスタープレートから単離した。
このようにして得られた各々の大腸菌から当該分野で公知の方法に従ってプラスミドを回収し、DNAシークエンサー(ABI社製)を用いてこのプラスミド中の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子の塩基配列を決定した。
この耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子によってコードされるアミノ酸配列を、天然の馬鈴薯タイプLの(すなわち、変異させる前の)α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列と比較したところ、天然の馬鈴薯タイプLのα−グルカンホスホリラーゼの39位、135位、または706位のアミノ酸の位置に変異が導入されており、それぞれF39→L、N135→S、T706→Iにアミノ酸置換されていた。また、F39においてL以外のアミノ酸、N135においてS以外のアミノ酸、T706においてI以外のアミノ酸に変異したものについても耐熱化が見られた。
(実施例2−1A:部位特異的変異誘発による耐熱化馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼの作製)
本実施例では、実施例1で耐熱化に寄与することが判明した位置の置換を1つのみ有する耐熱化GPと、いずれか2つの組み合わせで有する耐熱化GPと、3つ全てを有する耐熱化GPとを作製した。例として、3つすべての変異を有する耐熱化GP(F39L+N135S+T706I)のアミノ酸配列を配列番号34に、そしてそれをコードする塩基配列を配列番号33に示す。また、比較のために、39位、135位および706位のアミノ酸は置換せず、かつ、これらのアミノ酸位置と全く関係のない位置のアミノ酸を置換したGP(467位のリジンのみをアスパラギンに置換したGPおよび711位のトレオニンのみをアラニンに置換したGP)を作製した。アミノ酸置換の方法は多数公開されている(参考文献:Kinkel,T.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:488(1995),Vandeyar,M.ら,Gene,65:129−133(1988),Sugimoto,M.ら,Anal.Biochem.,179:309−311(1989),Taylor,J.W.およびEckstein,F.,Nucl.Acids Res.,13:8764(1985),Nelson,M.およびMcClelland,M.,Methods Enzymol.,216:279−303(1992))が、本発明ではQuick change XL Site−Directed Mutagenesisキット(STRATAGENE製)を使用した。実施例1で示した、プラスミドpMW−118中に挿入された馬鈴薯由来タイプL GP遺伝子を含むプラスミドを鋳型として、F39L、N135S、T706I、K467DまたはT711Aという変異を導入するために、それぞれの変異導入位置を中心に約35bp程度の相補的なそれぞれ1組の変異導入プライマーを作製して用い、PCRをすることによって部位特異的変異誘発を行った。このようにして得られた耐熱化GPをコードする遺伝子を含むプラスミドpMW−PGPを作製した。このプラスミドで、大腸菌TG−1を形質転換し、形質転換体をアンピシリン含有LB寒天培地(50μg/mlアンピシリン、Difco製トリプトン1%、Difco製酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%、1.5% アガロース、pH 7.3)に独立したコロニーが得られるように希釈して塗布し、37℃で一晩培養した。このアンピシリン含有LB寒天培地で増殖した大腸菌は、導入したプラスミドを保有する。このようにして、耐熱化GPを発現する大腸菌が作製できた。なお、本実施例で得られた大腸菌に含まれるプラスミドが、目的の変異を有する耐熱化GPをコードする変異GP遺伝子を有することを、得られたそれぞれの大腸菌からプラスミドを抽出し、GPをコードする遺伝子の配列決定をすることによって確認した。
本実施例で得られた大腸菌が発現するGPが耐熱化されていることは、以下の通りに確認した。導入したプラスミドを保持する大腸菌TG−1をアンピシリン含有LB培地(50μg/mlアンピシリン、Difco製トリプトン1%、Difco製酵母エキス0.5%、NaCl 0.5%、pH 7.3)に植菌し、まず37℃で対数中期まで増殖させたあと温度を22℃程度にまで下げ、遺伝子発現誘導物質であるイソプロピルβ−D−チオガラクトシドを終濃度0.1mMになるように、そして塩酸ピリドキシンを終濃度1mMになるように添加して22℃で約20時間培養した。培養液を遠心分離することにより、菌体を回収し、菌体を緩衝液に懸濁し、超音波処理することにより、菌体抽出液を得た。この菌体抽出液を60℃で30分処理することにより、GP標品を得た。
得られたGP標品を用いて、スクロースおよびプライマーにスクロースホスホリラーゼとα−グルカンホスホリラーゼとを作用させる方法(国際公開第WO02/097107号パンフレットに記載された方法)により、グルカン製造を行ったところ、いずれの耐熱化α−グルカンホスホリラーゼについても、高い収率で高分子グルカンを得ることができた。
一方、耐熱化に無関係な位置のアミノ酸を置換したGPは、60℃で30分間の処理によって失活し、グルカンを製造することができなかった。
(実施例2−1B:種々のアミノ酸で置換された改変体馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼの作製)
F39、N135およびT706をそれぞれ1箇所ずつ、別のアミノ酸残基に置換するように設計したプライマーを用いたこと以外は実施例2−1Aと同様にして、改変体α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を含むプラスミドを作製し、そして種々の改変体GP標品を得た。
これらの改変体GP標品の耐熱性については、以下の実施例3−1(3−1)において詳細に検討した。
(実施例2−2A:部位特異的変異誘発による耐熱化馬鈴薯タイプH α−グルカンホスホリラーゼの作製)
馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの遺伝子の代わりに馬鈴薯由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼの遺伝子を用いたこと以外は実施例2−1Aと同様にして、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を含むプラスミドを作製し、そしてGP標品を得た。本実施例では、実施例1で耐熱化に寄与することが判明した位置の置換のうち、馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列のN135SまたはT706Iに相当する位置(それぞれ、馬鈴薯タイプH α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列の133位および628位)の置換を1つのみ有する耐熱化GPを作製した。
これらのGP標品を用いて、実施例2−1Aと同様に60℃で30分間処理した後グルカン製造を行ったところ、いずれの耐熱化α−グルカンホスホリラーゼについても、天然の馬鈴薯タイプH α−グルカンホスホリラーゼと同様に高分子グルカンを得ることができた。
(実施例2−2B:部位特異的変異誘発による耐熱化馬鈴薯タイプH α−グルカンホスホリラーゼの作製)
馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの遺伝子の代わりに馬鈴薯由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼの遺伝子を用い、F39に相当する位置(Y36)、N135に相当する位置(N133)およびT706に相当する位置(T628)のアミノ酸残基をそれぞれ、ロイシン(L)、セリン(S)およびイソロイシン(I)に置換するように設計した変異導入プロモーターを用いたこと以外は実施例2−1Aと同様にして、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を含むプラスミドを作製し、そして三重変異体(Y36L+N133S+T628I)のGP標品を得た。本実施例では、実施例1で耐熱化に寄与することが判明した3箇所全ての位置の置換を有する耐熱化GPを作製した。
これらの改変体GP標品の耐熱性については、以下の実施例3−2(2)において詳細に検討した。
(実施例2−2C:部位特異的変異誘発による耐熱化シロイヌナズナタイプH α−グルカンホスホリラーゼの作製)
まず、シロイヌナズナ由来のタイプH α−グルカンホスホリラーゼ(GP)の遺伝子を市販のArabidopsis由来cDNA(PCR Ready First Strand cDNA、和光純薬工業株式会社製)を用いて作製した。
詳細には、既知のシロイヌナズナGP遺伝子配列(データベースGenBank アクセッションナンバー AL133292;CAB61943.1)を基に、PCRプライマー5および6を設計した。上述のArabidopsis由来cDNAを鋳型とし、
Figure 2004113525
および
Figure 2004113525
を用いてPCRを行い、シロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子を増幅した。PCR反応の条件は、94℃30秒間、60℃1分間、72℃3分間を1サイクルとして30サイクルであった。なお、PCRプライマー1のアンダーラインの部分はシロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子の成熟タンパクのN末端部分の構造遺伝子に対応しており、PCRプライマー2のアンダーラインの部分はシロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子の成熟タンパクのC末端部分の構造遺伝子に対応している。
増幅されたシロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子を、SmaIであらかじめ切断したプラスミドpMW118(日本ジーン株式会社製)に挿入し、このプラスミドをコンピテントセル法によって大腸菌TG−1に導入し、アンピシリン耐性株を選択し、このアンピシリン耐性株を培養し、このアンピシリン耐性株からプラスミドを回収することによりシロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子を得た。
得られたシロイヌナズナ由来のタイプH GP遺伝子を、馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの遺伝子の代わりに用い、F39に相当する位置(Y40)、N135に相当する位置(N136)およびT706に相当する位置(N631)のアミノ酸残基をそれぞれ、ロイシン(L)、セリン(S)およびイソロイシン(I)に置換するように設計した変異導入プロモーターを用いたこと以外は実施例2−1Aと同様にして、耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ遺伝子を含むプラスミドを作製し、そして三重変異体(Y40L+N136S+N631I)のGP標品を得た。本実施例では、実施例1で耐熱化に寄与することが判明した3箇所全ての位置の置換を有する耐熱化GPを作製した。
これらの改変体GP標品の耐熱性については、以下の実施例3−2(2)において詳細に検討した。
(実施例3−1:各種耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの大量調製および耐熱性比較)
(1)酵素の大量調製
上記実施例2−1Aおよび2−1Bで作製した、耐熱化GPを発現する大腸菌をそれぞれ、TB培地(Terrific broth(GIBCO)47g/L、グリセロール4ml/Lおよび50μg/mlアンピシリンを含む)で37℃で5時間培養し、最終濃度が0.1mM IPTGおよび1mM塩酸ピリドキシンとなるようにこの培養液にIPTGおよび塩酸ピリドキシンを加え、さらに22℃で24時間培養した。次いで、培養液を遠心分離することにより菌体を回収し、20mMクエン酸緩衝液で培地成分を洗浄し、除去した。洗浄後の菌体を20mMクエン酸緩衝液に懸濁し、超音波破砕機によって菌体を破砕し、遠心分離し、その上清を菌体抽出液とした。得られた菌体抽出液を、予め平衡化されたQ−SepharoseFFカラムにロードし、20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中、0.1Mから0.3MのNaClの濃度勾配で溶出する、耐熱化GP含有画分を回収した。回収した酵素画分を、予め平衡化したPhenyl−TOYOPEARL650Mカラムにロードし、20mMクエン酸緩衝液中17.5%から7.5%の飽和硫安濃度勾配で溶出する、耐熱化GP含有画分を回収した。回収した酵素画分を、予め平衡化したHiTrap HQPカラムにロードし、20mMクエン酸緩衝液中、0.1Mから0.4MのNaClの濃度勾配で溶出し、活性画分を回収した。得られた活性画分をさらに、予め平衡化されたResource Qのカラムにロードし、20mMクエン酸緩衝液中、0.1Mから0.4MのNaClの濃度勾配で溶出し、精製酵素含有活性画分を回収した。
得られた精製酵素含有活性画分を、約1μgのネイティブPAGE(Native polyacrylamide gel electrophoresis)を行った。その結果、耐熱化GPを発現するいずれの大腸菌についても、分子量約210kDaのところに単一のバンドが認められ、他の場所にはバンドが見られなかった。GPは、アミノ酸配列から分子量が約104kDaであると推定されるので、ダイマー構造をとっていると考えられる。このようにして、耐熱化GPが均質に精製されたことが示された。
(2)精製された耐熱化GPの活性測定
上記(1)で精製された耐熱化GPの活性を測定した。測定は、以下の通りに行った。まず、200μlの反応液(100mM 酢酸緩衝液(pH6.0)中、12.5mM G−1−P、1%デキストリンおよび酵素液を含む)を37℃に15分間インキュベートした。次いで、800μlのモリブデン試薬(15mM モリブデン酸アンモニウム、100mM 酢酸亜鉛)を加え、攪拌し反応を停止させた。次いで、200μlの568mMのアスコルビン酸(pH5.8)を加え、混合し、37℃に15分間インキュベートした後、分光光度計を用いて850nmの吸光度を測定した。なお、本実施例において、GP酵素活性はG−1−Pから生じた遊離の無機リン酸を定量することによって測定された。1分間に1μmolの無機リン酸を生成する酵素量を1単位(U)とした。
(3−1)実施例2−1Aで作製された耐熱化GPの60℃および65℃での耐熱性比較
実施例2−1Aで作製され、上記(1)で大量調製および精製されたそれぞれの耐熱化GPの60℃および65℃での耐熱性を比較した。対照として、同じ方法で精製した天然の(変異させていない)馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼを用いた。
まず、0.2U/mlの精製酵素液(20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中)を60℃または65℃で0〜30分間インキュベートした。0、2、10、20、30分などの各時間で酵素液の一部を取り出し、氷中に保持した。氷中に保持された酵素液を20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)で10倍希釈し、上記(2)に記載の活性測定法に従い酵素活性を測定した。酵素の耐熱性を、60℃または65℃にインキュベートする前の酵素の37℃における酵素活性を100%としたときの、インキュベート後の酵素の37℃における酵素活性の割合(すなわち、残存活性)によって判断した。60℃でインキュベートした場合の結果を以下の表5に示す。65℃でインキュベートした場合の結果を以下の表6に示す。
Figure 2004113525
Figure 2004113525
上記の表5および表6において、天然の馬鈴薯タイプLとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼを示す。F39Lとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの39位のフェニルアラニンがロイシンに置換されたものを示す。T706Iとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの706位のトレオニンがイソロイシンに置換されたものを示す。N135Sとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの135位のアスパラギンがセリンに置換されたものを示す。F39L+T706Iとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの39位のフェニルアラニンがロイシンに置換され、かつ706位のトレオニンがイソロイシンに置換されたものを示す。N135S+T706Iとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの135位のアスパラギンがセリンに置換され、かつ706位のトレオニンがイソロイシンに置換されたものを示す。F39L+N135Sとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの39位のフェニルアラニンがロイシンに置換され、かつ135位のアスパラギンがセリンに置換されたものを示す。F39L+N135S+T706Iとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼの39位のフェニルアラニンがロイシンに置換され、かつ、135位のアスパラギンがセリンに置換され、かつ、706位のトレオニンがイソロイシンに置換されたものを示す。表5および表6の結果のうち、60℃で30分間の加熱の結果および65℃で2分間加熱の結果を図3にグラフとして示す。
この結果、本発明の耐熱化GPが天然の馬鈴薯タイプL GPと比較して耐熱性が非常に向上していることがわかった。耐熱性の劣ったものから、耐熱性の優れたものまで順に並べると次のようになる:天然の馬鈴薯タイプL GP<F39L<T706I<N135S<F39L+T706I<N135S+T706I<F39L+N135S<F39L+N135S+T706I。耐熱性に寄与する3箇所のアミノ酸残基は、1箇所置換されるだけでも耐熱性が向上した。さらに、これらのアミノ酸残基が多重置換されることによって、耐熱性が劇的に向上することがわかった。
(3−2)実施例2−1Bで作製された改変体GPの60℃および65℃での耐熱性比較
実施例2−1Bで作製され、実施例3−1(1)で大量調製および精製されたそれぞれの改変体GPの60℃および65℃での耐熱性を比較した。対照として、同じ方法で精製した天然の(変異させていない)馬鈴薯由来タイプL α−グルカンホスホリラーゼを用いた。
まず、0.2U/mlの精製酵素液(20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中)を60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートした。所定の時間(10分間または2分間)で酵素液の一部を取り出し、氷中に保持した。氷中に保持された酵素液を20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)で10倍希釈し、上記(2)に記載の活性測定法に従い酵素活性を測定した。酵素の耐熱性を、60℃10分間または65℃2分間インキュベートする前の酵素の37℃における酵素活性を100%としたときの、インキュベート後の酵素の37℃における酵素活性の割合(すなわち、残存活性)によって判断した。結果を以下の表7および図8〜10に示す。
Figure 2004113525
Figure 2004113525
上記の表7において、WTとは、天然の馬鈴薯由来のタイプL α−グルカンホスホリラーゼを示す。各列において1文字略語で示したアミノ酸は、改変体において置換されているアミノ酸を示す。例えば、左端の、F39との標記された列においてIと記載されたものは、39位のフェニルアラニン(F)がイソロイシン(I)に置換された改変体GPを示す。他の列の改変体GPについても同様である。
アミノ酸の1文字略語は、当業者に周知であり、以下の通りである:A アラニン;C システイン;D アスパラギン酸;E グルタミン酸;F フェニルアラニン;G グリシン;H ヒスチジン;I イソロイシン;K リジン;L ロイシン;M メチオニン;N アスパラギン;P プロリン;Q グルタミン;R アルギニン;S セリン;T トレオニン;V バリン;W トリプトファン;Y チロシン。
この結果、39位、135位および706位のアミノ酸は、上記実施例2−1Aで置換された特定のアミノ酸以外に置換された場合にも、天然の馬鈴薯由来タイプL GPの耐熱性を向上させることがわかった。
60℃で10分間インキュベートした後の残存活性を見ると、39位のフェニルアラニンをイソロイシン、ロイシンまたはバリンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。39位の置換については、ロイシンに置換した場合(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性61.2%)が最も耐熱性が優れていた。135位のアスパラギンをアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、バリンまたはチロシンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。135位の置換については、アラニン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性76.2%)、システイン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性85.0%)、グリシン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性85.2%)、イソロイシン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性60.0%)、セリン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性65.4%)、トレオニン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性73.4%)またはバリン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性82.8%)に置換した場合、特に耐熱性が優れていた。706位のトレオニンをシステイン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはトリプトファンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。706位の置換については、システイン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性65.4%)、イソロイシン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性70.5%)またはバリン(60℃で10分間インキュベートした後の残存活性68.7%)に置換した場合、特に耐熱性が優れていた。
65℃で2分間インキュベートした後の残存活性を見ると、39位のフェニルアラニンをイソロイシン、ロイシンまたはバリンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。39位の置換については、ロイシンに置換した場合(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性61.2%)が最も耐熱性が優れていた。135位のアスパラギンをアラニン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、バリンまたはチロシンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。135位の置換については、アラニン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性79.0%)、システイン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性76.9%)、グリシン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性58.4%)、メチオニン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性52.6%)、セリン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性86.5%)、トレオニン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性62.4%)またはバリン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性79.3%)に置換した場合、特に耐熱性が優れていた。706位のトレオニンをシステイン、イソロイシン、ロイシン、バリンまたはトリプトファンに置換した場合、改変体GPの耐熱性は、天然の馬鈴薯由来タイプL GPよりも優れていた。706位の置換については、ロイシン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性57.8%)またはバリン(65℃で2分間インキュベートした後の残存活性59.2%)に置換した場合、特に耐熱性が優れていた。
この結果、本発明の改変体GPが天然の馬鈴薯タイプL GPと比較して耐熱性が非常に向上していることがわかった。
(実施例3−2:耐熱化タイプH GP酵素の調製)
(1)酵素の大量調製
上記実施例2−2Bおよび2−2Cで作製した、耐熱化馬鈴薯タイプH GPを発現する大腸菌および耐熱化シロイヌナズナタイプH GPを発現する大腸菌をそれぞれTB培地(Terrific broth(GIBCO)47g/L、グリセロール4ml/Lおよび50μg/mlアンピシリンを含む)で37℃で5時間培養し、最終濃度が0.1mM IPTGおよび1mM 塩酸ピリドキシンとなるようにこの培養液にIPTGおよび塩酸ピリドキシンを加え、さらに22℃で24時間培養した。次いで、培養液を遠心分離することにより菌体を回収し、20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)で培地成分を洗浄し、除去した。洗浄後の菌体を20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)に懸濁し、超音波破砕機によって菌体を破砕し、遠心分離し、その上清を菌体抽出液とした。得られた菌体抽出液を、イオン交換クロマトグラフィーおよび疎水性クロマトグラフィーを用いて精製し、ネイティブPAGE(Native polyacrylamide gel electrophoresis)で単一のバンドを示す精製酵素含有活性画分を回収した。
(2)耐熱化タイプH GP酵素の耐熱性比較
(1)で精製されたそれぞれの耐熱化GPの60℃および65℃での耐熱性を比較した。対照として、同じ方法で精製した天然の(変異させていない)馬鈴薯タイプH GPおよびシロイヌナズナタイプH GPを用いた。
0.2U/mlの精製酵素液(20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)を60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートしたのち、氷中に保持した。氷中に保持された酵素液を20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)で10倍希釈し、実施例3−1(2)に記載の活性測定法に従い酵素活性を測定した。酵素の耐熱性を、58℃で10分間、60℃で10分間または65℃で2分間インキュベートする前の酵素の37℃における酵素活性を100%としたときの、インキュベート後の酵素の37℃における酵素活性の割合(すなわち、残存活性)によって判断した。耐熱化馬鈴薯タイプH GPおよび天然の馬鈴薯タイプH GPについての結果を以下の表8および図11に示す。耐熱化シロイヌナズナタイプH GPおよび天然のシロイヌナズナタイプH GPについての結果を、以下の表9および図12に示す。
Figure 2004113525
Figure 2004113525
Figure 2004113525
これらの結果から、本発明の耐熱化馬鈴薯タイプH GPは、65℃で2分間加熱した後も34.5%の残存活性を有した。一方、天然の馬鈴薯タイプH GPは、65℃で2分間加熱した後の残存活性は0%であった。このことから、本発明の耐熱化馬鈴薯タイプH GPが、天然の馬鈴薯タイプH GPと比較して高い耐熱性を有することがわかった。
また、本発明の耐熱化シロイヌナズナタイプH GPは、65℃で2分間加熱した後も29.2%の残存活性を有した。一方、天然のシロイヌナズナタイプH GPは、65℃で2分間加熱した後の残存活性は0.5%であった。このことから、本発明の耐熱化シロイヌナズナタイプH GPが、天然のシロイヌナズナタイプH GPと比較して高い耐熱性を有することがわかった。
(実施例4:耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いた、重量平均分子量600kDa以上のアミロースの合成)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いて、重量平均分子量600kDa以上のアミロース合成が可能であることを調べた。耐熱化α−グルカンホスホリラーゼとして、上記実施例3−1(1)で調製された各種耐熱化GP(一重変異体F39L、一重変異体N135S、一重変異体T706I、二重変異体(F39L+N135S)、二重変異体(F39L+T706I)、二重変異体(N135S+T706I)および三重変異体(F39L+N135S+T706I)のうちのいずれかを用いた。
対照として、Bacillus stearothermophillus由来のα−グルカンホスホリラーゼ(Bacillus stearothermophillusとも示す)、Thermus aquaticus由来のα−グルカンホスホリラーゼ(Thermus aquaticusとも示す)を用いた。
アミロース合成反応を、以下の表10に記載の組成の反応系を用いて50℃で18時間行った。
Figure 2004113525
この反応によって合成されたアミロースの収率を上記の「1.測定方法および計算方法」の1.5に記載の計算方法により計算した。
この反応によって合成されたアミロースの重量平均分子量を以下の方法により測定した。この反応によって合成されたアミロースを1N水酸化ナトリウムで完全に溶解し、適当量の塩酸で中和した後、アミロース約30〜300μg分を、示差屈折計と多角度光散乱検出器を併用したゲル濾過クロマトグラフィーに供することにより重量平均分子量を求めた。
詳しくは、カラムとしてShodex SB806M−HQ(昭和電工製)を用い、検出器としては多角度光散乱検出器(DAWN−DSP、Wyatt Technology社製)および示差屈折計(Shodex RI−71、昭和電工製)をこの順序で連結して用いた。カラムを40℃に保ち、溶離液としては0.1M硝酸ナトリウム溶液を流速1mL/分で用いた。得られたシグナルを、データ解析ソフトウェア(商品名ASTRA、Wyatt Technology社製)を用いて収集し、同ソフトを用いて解析することにより、重量平均分子量を求めた。この方法を、MALLS分析法ともいう。
このようにして求められた、合成されたアミロースの収率および分子量を、以下の表11に示す。
Figure 2004113525
Figure 2004113525
以上のように、本発明の耐熱化GPは、重量平均分子量約600kDa以上の高分子量のアミロースを合成し得ることがわかった。また、本発明の耐熱化GPは、アミロースの収率が約40%以上であることがわかった。比較例として用いたBacillus stearot hrmophillus GPとThermus aquaticus GPとは耐熱性を有する酵素であるが高分子量のアミロースを合成することはできなかった。
(実施例5:耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いたスクロースからのアミロース合成)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いてスクロースを原料としてアミロースを合成した。耐熱化α−グルカンホスホリラーゼとして、上記実施例3−1(1)で調製された各種耐熱化GP(一重変異体F39L、一重変異体N135S、一重変異体T706I、二重変異体(F39L+N135S)、二重変異体(F39L+T706I)、二重変異体(N135S+T706I)および三重変異体(F39L+N135S+T706I))のうちのいずれかを用いた。
アミロース合成反応を、以下の表12に記載の組成の反応系を用いて50℃で18時間行った。
Figure 2004113525
Figure 2004113525
この反応によって合成されたアミロースの収率(%)を、上記の「1.測定方法および計算方法」の1.7に記載の計算式により計算した。
この反応によって合成されたアミロースの重量平均分子量を上記実施例4と同様の方法により測定した。このようにして求められた、合成されたアミロースの収率および重量平均分子量を以下の表13に示す。
Figure 2004113525
以上のように、本発明の耐熱化GPは、天然のGPと同様にスクロースを原料としたアミロースを合成した場合も、約600kDaの高分子量のアミロースを合成しうることがわかった。また、アミロース収率も天然のGPと同様に約40%以上と高いことがわかった。
(実施例6:高温条件下(50℃、55℃および60℃)での耐熱化GPを用いた、グルコース−1−リン酸からのグルカン合成)
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いて、グルコース−1−リン酸を原料として、高温条件下でアミロースを合成した。実施例3−1(1)で調製された耐熱化GP(三重変異体(F39L+N135S+T706I))を用い、対照として同じ方法で精製された天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた。
G−1−P6.1g/L、マルトテトラオース(G4)0.3g/L、GP20U/Lを含む反応液を37℃、50℃、55℃または60℃に18時間保持することによって、アミロース合成反応を行った。反応生成物中のアミロース合成量を経時的に調べた。アミロース合成量(g/L)を、以下の式に基づいて計算した。
Figure 2004113525
18時間反応後のアミロース合成量を以下の表14および図7に示す。
Figure 2004113525
耐熱化GPを用いた場合、37℃、50℃および55℃では約3g/Lのアミロースが合成され、60℃でも、約1.5g/Lのアミロースが合成できた。一方、天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた場合、37℃、50℃および55℃ではアミロースが合成されたが、60℃ではアミロースはまったく合成されなかった。これは、天然の馬鈴薯タイプL GPは、60℃では、反応の初期段階にGPが失活したためと考えられる。一方、耐熱化GPは60℃でも安定に酵素活性を保持していたため、アミロース合成反応が充分行われたと考えられる。また、37℃、50℃、55℃および60℃の各温度において、耐熱化GPを用いた場合、天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた場合よりもアミロース合成量が多かった。耐熱化GPを用いた場合のアミロース合成量は、反応時間が延長されるとさらに増加すると考えられる。以上のように、本発明の耐熱化GPは、天然の馬鈴薯タイプL GPでは反応できない60℃において、グルカン合成が可能であることがわかった。
(実施例7 65℃および70℃での耐熱化GPを用いたグルコース−1−リン酸からのグルカン合成)
実施例6と同様に実施例3−1(1)で調製された耐熱化GP(三重変異体(F39L+N135S+T706I))を用いて、さらに高温条件下でのグルコース−1−リン酸からのグルカン合成を行った。対照として天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた。
G−1−P15.2g/L、マルトテトラオース(G4)2.7g/L、GP200U/Lを含む反応液を37℃、65℃または70℃に4時間保持することによって、アミロース合成反応を行った。アミロース合成量を、実施例6と同様に計算した。反応4時間後、天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた場合、65℃および70℃ではアミロースはまったく合成されなかったが、耐熱化GPを用いた場合、15.2gのG−1−Pから、65℃では約5.6g/Lのアミロースが、70℃では約0.3g/Lのアミロースが合成された。この結果、天然の馬鈴薯タイプL GPは、65℃〜70℃ではアミロースを合成できないが、耐熱化GPは70℃という高温でもGP活性を保持しており、アミロース合成能を有することがわかった。
実施例6および7の結果から、本発明の耐熱化GPは、天然の馬鈴薯タイプL GPではまったく反応できない高温条件下において、アミロース合成能を有することがわかった。
(実施例8:加熱処理による夾雑タンパク質の除去の確認)
加熱処理によって耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの精製が容易にできることを以下の方法で確認した。
実施例2−1Aで作製した耐熱化GP(三重変異体(F39L+N135S+T706I)遺伝子を発現する大腸菌(TG−1)を、実施例2−1Aと同様にLB培地で培養した。コントロールとして天然の馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼを発現する大腸菌(TG−1)を、実施例2−1Aと同様にLB培地で培養した。培養液を遠心分離することにより、菌体を回収し、菌体を緩衝液に懸濁し、超音波処理することにより、菌体抽出液を得た。この菌体抽出液を60℃の水浴中で0〜60分間加熱後、遠心分離することにより不溶性のタンパク質を除去し、上清を得た。この上清のGP活性およびタンパク量を測定し、GP酵素の比活性を求めた。GP活性は実施例3−1(2)に記述した活性測定方法を用いて測定し、タンパク量はブラッドフォード法(Bradford,M.,Anal.Biochem.,72,248〜254(1976)を用いて測定した。ブラッドフォード法は溶液中に含まれる全てのたんぱく質に発色性基質を結合させる、比色検定法である。ここでは、プロテインアッセイキット(日本バイオラッドラボラトリーズ(株))を用いウシグロブリンを標準として測定した。
以下の方法でGP酵素の比活性を算出した。
比活性(U/ml)
=(α−グルカンホスホリラーゼ活性)/(上清中に含まれるタンパク質の質量mg)
図6に耐熱化GP酵素(図6において耐熱化GP(F39L+N135S+T706Iと示す))および天然の馬鈴薯タイプL GP酵素の比活性の経時的変化を示した。
図6に示したように耐熱化GPは60℃の加熱により、比活性が約10倍になった。夾雑タンパク質はほとんど熱変性し除去された。これに比べて天然の馬鈴薯タイプL GPの比活性は、経時的に低下した。これは夾雑タンパク質だけでなくGPタンパク質も変性したためと考えられる。このように耐熱化GPは熱処理により簡便に精製され得ることがわかった。
(実施例9:加熱処理による夾雑タンパク質の除去の確認)
実施例8と同様に、耐熱化GP(三重変異体(F39L+N135S+T706I))遺伝子を発現する大腸菌(TG−1)を培養した後、菌体抽出液を調製した。この菌体抽出液を用いて、60℃の熱処理により、アミラーゼ活性およびホスファターゼ活性を、アミロースまたはG−1−Pの工業的な生産に利用できるレベルに低下させることができることを確認した。
実施例8と同様に、菌体抽出液を60℃の水浴中で30分間加熱後、遠心分離することにより不溶性のタンパク質を除去し、上清を得た。この上清のホスファターゼ活性およびアミラーゼ活性を測定した。
ホスファターゼ活性は、この上清100μlと50mMグルコース−1−リン酸100μlを含む反応液を37℃60分間保持した後、反応液中のグルコース1リン酸から生じた遊離の無機リン酸を(1.測定方法および計算方法)に記述された方法で定量することにより測定した。1分間に1μmolの無機リン酸を生成する酵素量を1単位(U)とした。アミラーゼ活性は上清25μlと0.5%アミロース(重量平均分子量約50kDa)25μlとを含む反応液を37℃60分間保持した後、1mlのヨウ素液((0.1% ヨウ化カリウム、0.01%)を加え、反応液中のアミロースの低分子化に伴うヨウ素呈色の減少率を測定することにより求めた。1分間にA660の吸光度を10%低下させる活性を1Uとした。
Figure 2004113525
以下の表15に菌体抽出液中のホスファターゼ活性ならびにアミラーゼ活性の残存率を示した。
表15に示したように菌体抽出液の加熱前の各活性を100%としたときのホスファターゼ活性ならびにアミラーゼ活性は、60℃加熱後、ホスファターゼ活性が約3%、アミラーゼ活性が約0.3%と、これら2つの夾雑タンパク質はほとんど失活した。
Figure 2004113525
このように本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、60℃の熱処理でも活性を失わない植物GP酵素であり、60℃での熱処理を行うことにより、アミラーゼ活性およびホスファターゼ活性をほとんど含まない、優れたGPを容易に製造することが可能であるとわかった。
(実施例10:GPタンパク質の安定性)
天然の馬鈴薯由来タイプL GPタンパク質は分解されやすいことが報告されている。これらのGPは、精製後に冷蔵保存しても、保存中に徐々に分解されていく。一般に、酵素は、分解されると、構造の変化、酵素の性質の変化、活性低下などが起こる。GPタンパク質の安定性を高めることができれば、これらの影響を低減することができ、酵素の保存時および使用時に有利である。
天然の馬鈴薯由来タイプL GPタンパク質および実施例3−1(1)で調製した7種類の耐熱化GPタンパク質(一重変異体F39L、一重変異体N135S、一重変異体T706I、二重変異体F39L+N135S、二重変異体F39L+T706I、二重変異体N135S+T706I、三重変異体F39L+N135S+T706I)を4℃に保存し、5ヶ月間GPタンパク質の分子量を経時的に調べた。また、37℃に10日間保存した場合のGPタンパク質の分子量も同様に調べた。精製直後および4℃で5ヶ月間保存後に、分子量をポリアクリルアミドゲル電気泳動(Native−PAGE)により調べた結果を図13に示す。ゲルにロードしたタンパク質量は、全てのGPタンパク質について等しかった。
この結果、精製直後の天然の馬鈴薯タイプL GPおよび7種類の耐熱化GPは、すべて、分子量約210kDa(GPの単量体は分子量約104kDaであり、二量体を形成する)の位置にバンドを示した。他方、4℃で5ヶ月保存した後の天然の馬鈴薯タイプLGPおよびN135S変異体は、分子量が約140kDaであり、精製直後よりも小さかった。このことは、天然の馬鈴薯タイプL GPおよび一重変異体135Sが、保存中に分解されたことを示す。天然の馬鈴薯タイプLGPおよびN135S変異体は、37℃で10日間保存した場合も、保存中に分解された。4℃で5ヶ月保存した後の他の6種類の耐熱化GP(一重変異体F39L、一重変異体T706I、二重変異体F39L+N135S、二重変異体F39L+T706I、二重変異体N135S+T706I、三重変異体F39L+N135S+T706I)は、分子量が約210kDaであり、精製直後と同じであり、タンパク質の分解は認められなかった。また、これら6種類の耐熱化GPは、37℃で10日間保持した後も分子量の変化はなく、GPタンパク質の分解は認められなかった。このことは、これらの耐熱化GPが、4℃〜37℃の間で、天然の馬鈴薯タイプL GPよりも、分解耐性に優れ、安定性が高いことを示す。このことから、F39位での置換およびT706位での置換が、耐熱性向上効果だけでなく、分解抑制効果をGPタンパク質に与えることがわかった。
(実施例11:グルコース−1−リン酸の合成)
(1)65℃で耐熱化GPを用いたG−1−Pの合成
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを用いて、グルカンおよび無機リン酸を原料として、65℃でG−1−Pを合成した。実施例3−1(1)で調製された耐熱化GP(三重変異体(F39L+N135S+T706I))を用い、対照として同じ方法で精製された天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた。300mMリン酸緩衝液(pH7.0)、10g/Lデキストリン、いずれかのGPを1000U/Lを含む反応液を37℃または65℃に18時間保持し、G−1−P合成反応を行った。G−1−Pの合成量を、上記の「1.測定方法および計算方法」の1.3に記載されたグルコース−1−リン酸の定量法により求めたG−1−P濃度(mM)にG−1−Pの分子量260を乗じて計算した。反応後のG−1−P合成量を以下の表16に示す。
Figure 2004113525
天然の馬鈴薯タイプL GPを用いた場合、65℃ではG−1−Pは合成されなかった。しかしながら、耐熱性GPを用いた場合、65℃においてもG−1−Pの製造が可能であった。
(2)70℃で耐熱化GPを用いたG−1−Pの合成
上記実施例11(1)と同様に、本発明の耐熱化GPまたは天然の馬鈴薯タイプL GPを用いて、グルカンおよび無機リン酸を原料として、70℃でG−1−Pを合成した。300mMリン酸緩衝液(pH7.0)、10g/Lデキストリン、いずれかのGPを10,000U/Lを含む反応液を70℃に4時間保持し、G−1−P合成を行った。G−1−Pの合成量を、上記実施例と同様に計算した。
天然の馬鈴薯タイプLGPを用いた場合、70℃ではG−1−Pはまったく合成されなかったが、耐熱化GPを用いた場合、約1gのG−1−Pが合成された。
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
本発明によって、高温(例えば60℃以上)での耐熱性に優れた植物由来のGP酵素が得られる。本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、天然のGP酵素では反応できない高温条件下(例えば60℃以上)でのグルカン合成反応に有用である。
本発明の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする遺伝子(例えば、馬鈴薯由来のGPを耐熱化して得られる耐熱化GPをコードする遺伝子)を大腸菌などの中温菌を宿主として高発現させた場合、耐熱性の酵素を含む菌体抽出液を60℃で加熱することにより、宿主菌由来の夾雑酵素を簡単に除去できる。特にGP酵素の産業利用上大きな問題となる、アミラーゼ活性とホスファターゼ活性を、熱処理により大幅に削減できる。従って、本発明の酵素は、酵素精製において特に有用である。
本発明の方法は、馬鈴薯由来のGPおよびシロイヌナズナ由来のGPのみに有効というわけではなく、馬鈴薯由来のGPまたはシロイヌナズナ由来のGPのアミノ酸配列に対して高い相同性を示す他のグループAのGPの耐熱化にも好適に応用できる。本発明の方法を用いることにより、馬鈴薯およびシロイヌナズナ以外の生物種由来の耐熱性GPを作製することができる。
本発明によってまた、酵素タンパク質の分解が抑制された、保存安定性が向上した耐熱化GPが提供される。
(配列表の説明)
配列番号1:馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号2:馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号3:サツマイモのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号4:サツマイモのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号5:馬鈴薯の第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号6:馬鈴薯の第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号7:ソラマメ(Fava bean)のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号8:ソラマメ(Fava bean)のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号9:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号10:シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号11:ホウレンソウのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号12:ホウレンソウのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号13:トウモロコシのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号14:トウモロコシのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号15:イネのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号16:イネのタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号17:イネの第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号18:イネの第2のタイプLのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号19:コムギのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号20:コムギのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号21:Citrus hybrid cultivarのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号22:Citrus hybrid cultivarのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号23:イネのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号24:イネのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号25:ソラマメのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号26:ソラマメのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号27:シロイヌナズナのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号28:シロイヌナズナのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号29:馬鈴薯のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号30:馬鈴薯のタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号31:サツマイモのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼの塩基配列の部分配列;
配列番号32:サツマイモのタイプHのα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号33:耐熱化馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼの塩基配列;
配列番号34:耐熱化馬鈴薯タイプL α−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号35:大腸菌のマルトデキストリンホスホリラーゼのアミノ酸配列;
配列番号36および37:図2に示す、プラスミドpMW118との連結部付近の塩基配列;
配列番号38:PCRプライマー1の塩基配列;
配列番号39:PCRプライマー2の塩基配列;
配列番号40:PCRプライマー3の塩基配列;
配列番号41:PCRプライマー4の塩基配列;
配列番号42:PCRプライマー5の塩基配列;
配列番号43:PCRプライマー6の塩基配列;
配列番号44:モチーフ配列1Lのアミノ酸配列;
配列番号45:モチーフ配列1Hのアミノ酸配列;
配列番号46:モチーフ配列2のアミノ酸配列;
配列番号47:モチーフ配列3Lのアミノ酸配列;
配列番号48:モチーフ配列3Hのアミノ酸配列。

Claims (40)

  1. 天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
    該天然のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
    モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
    モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
    モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
    からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である、
    耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  2. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼが、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、または前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  3. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列が、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  4. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列が、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択されるアミノ酸配列をコードする塩基配列からなる核酸分子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされる、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  5. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼが、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有している、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  6. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼが、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有している、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  7. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸配列が、配列番号2の1位〜916位、配列番号4の1位〜912位、配列番号6の1位〜893位、配列番号8の1位〜939位、配列番号10の1位〜962位、配列番号12の1位〜971位、配列番号14の1位〜983位、配列番号16の1位〜928位、配列番号18の1位〜951位、配列番号20の1位〜832位、配列番号22の1位〜840位、配列番号24の1位〜841位、配列番号26の1位〜842位、配列番号28の1位〜841位および配列番号30の1位〜838位からなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  8. 前記天然のα−グルカンホスホリラーゼが、馬鈴薯およびシロイヌナズナ由来である、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  9. 前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも2つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  10. 前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有する、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  11. 前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基が、I、LおよびVからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  12. 前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基が、IおよびLからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  13. 前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基が、A、C、D、E、G、H、I、L、M、F、S、T、VおよびYからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  14. 前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置におけるアミノ酸残基がC、G、SおよびVからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  15. 前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基が、C、I、L、VおよびWからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  16. 前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基がC、I、LおよびVからなる群より選択される、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  17. 20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の30%以上である、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  18. 20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で65℃で2分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の10%以上である、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  19. 天然のα−グルカンホスホリラーゼと比較して、保存安定性が向上した請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  20. 耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを調製する方法であって、
    第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る工程;
    該第二の核酸分子を含む発現ベクターを作製する工程;
    該発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現させる工程;および
    該発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを回収する工程
    を包含し、
    該第一のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
    モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
    モチーフ配列2:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
    モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
    からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である、
    方法。
  21. 請求項20に記載の方法であって、
    前記耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、または前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置もしくは前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置におけるアミノ酸残基が、前記第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なる、方法。
  22. 前記第一のα−グルカンホスホリラーゼが、タイプL α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1L中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3L中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有している、請求項20に記載の方法。
  23. 前記第一のα−グルカンホスホリラーゼが、タイプH α−グルカンホスホリラーゼであり、前記モチーフ配列1H中の4位に相当する位置、前記モチーフ配列2中の4位に相当する位置、および前記モチーフ配列3H中の7位に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、前記天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有している、請求項20に記載の方法。
  24. 前記第一のα−グルカンホスホリラーゼが馬鈴薯およびシロイヌナズナ由来である、請求項20に記載の方法。
  25. 請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む、核酸分子。
  26. 請求項25に記載の核酸分子を含む、ベクター。
  27. 請求項25に記載の核酸分子を含む、細胞。
  28. グルカンの合成方法であって、該方法は、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する、方法。
  29. 前記反応が、60℃〜75℃の温度で行われる、請求項28に記載の方法。
  30. グルカンの合成方法であって、該方法は、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する、方法。
  31. 前記反応が、60℃〜75℃の温度で行われる、請求項30に記載の方法。
  32. グルコース−1−リン酸の合成方法であって、該方法は、請求項1に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ、グルカンおよび無機リン酸を含む反応溶液を反応させて、グルコース−1−リン酸を生産する工程を包含する、方法。
  33. 前記反応が、60℃〜75℃の温度で行われる、請求項32に記載の方法。
  34. 植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、
    モチーフ配列1L:H−A−E−F−T−P−V−F−S中の4位に相当する位置もしくはモチーフ配列1H:H−A−Q−Y−S−P−H−F−S中の4位に相当する位置、
    モチーフ配列2L:A−L−G−N−G−G−L−G中の4位に相当する位置、および
    モチーフ配列3L:R−I−V−K−F−I−T−D−V中の7位に相当する位置もしくはモチーフ配列3H:R−I−V−K−L−V−N−D−V中の7位に相当する位置
    において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上であり、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、重量平均分子量600kDa以上のアミロースを合成する能力を有する、
    耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  35. 天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
    該天然のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼとは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である、
    耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
  36. 耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを調製する方法であって、
    第一のα−グルカンホスホリラーゼをコードする塩基配列を含む第一の核酸分子を改変して、改変塩基配列を含む第二の核酸分子を得る工程;
    該第二の核酸分子を含む発現ベクターを作製する工程;
    該発現ベクターを細胞に導入して耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを発現させる工程;および
    該発現された耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを回収する工程
    を包含し、
    該第一のα−グルカンホスホリラーゼは、植物由来であり、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該第一のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上である、
    方法。
  37. グルカンの合成方法であって、該方法は、請求項35に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、スクロースホスホリラーゼと、スクロースと、プライマーと、無機リン酸またはグルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する、方法。
  38. グルカンの合成方法であって、該方法は、請求項35に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼと、プライマーと、グルコース−1−リン酸とを含む反応溶液を反応させて、グルカンを生産する工程を包含する、方法。
  39. グルコース−1−リン酸の合成方法であって、該方法は、請求項35に記載の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ、グルカンおよび無機リン酸を含む反応溶液を反応させて、グルコース−1−リン酸を生産する工程を包含する、方法。
  40. 植物由来の天然のα−グルカンホスホリラーゼを改変して得られる耐熱化α−グルカンホスホリラーゼであって、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、配列番号2のアミノ酸配列の39位フェニルアラニン(F39)に相当する位置、135位アスパラギン(N135)に相当する位置および706位トレオニン(T706)に相当する位置からなる群より選択される少なくとも1つの位置において、該天然のα−グルカンホスホリラーゼのアミノ酸残基とは異なるアミノ酸残基を有し、
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼを20mMクエン酸緩衝液(pH6.7)中で60℃で10分間加熱した後の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性が、該加熱前の耐熱化α−グルカンホスホリラーゼの37℃における酵素活性の20%以上であり、かつ
    該耐熱化α−グルカンホスホリラーゼは、重量平均分子量600kDa以上のアミロースを合成する能力を有する、
    耐熱化α−グルカンホスホリラーゼ。
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