JPWO2004111258A1 - L−グルタミン酸の製造法 - Google Patents

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Abstract

特定のpHにおいて飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を超える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を有する微生物を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整され、かつ、パントテン酸を含む培地に培養し、該培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることにより、L−グルタミン酸を製造する。

Description

本発明は、発酵法によるL−グルタミン酸の製造法に関する。L−グルタミン酸は調味料原料等として広く用いられている。
L−グルタミン酸は、主としてブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属に属するいわゆるコリネ型L−グルタミン酸生産菌またはそれらの変異株を用いた発酵法により製造されている。また、バチルス属、ストレプトミセス属、ペニシリウム属、シュードモナス属、アースロバクター属、セラチア属、キャンディダ属に属する微生物、アエロバクター・アエロゲネス(現エンテロバクター・アエロゲネス)、及びエシェリヒア・コリの変異株を用いる方法等が知られている。また、本発明者らは、クレブシエラ属、エルビニア属又はパントエア属に属する微生物を用いたL−グルタミン酸の製造法(米国特許第6,197,559号明細書)、及びエンテロバクター属細菌を用いたL−グルタミン酸の製造法(米国特許第6,331,419号明細書)を提案している。
また、組換えDNA技術によりL−グルタミン酸の生合成酵素の活性を増強することによって、L−グルタミン酸の生産能を増加させる種々の技術が開示されている。例えば、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属細菌において、エシェリヒア・コリ又はコリネバクテリウム・グルタミクム由来のクエン酸シンターゼをコードする遺伝子の導入が、L−グルタミン酸生産能の増強に効果的であったことが報告されている(特公平7−121228号公報)。また、特開昭61−268185号公報には、コリネバクテリウム属細菌由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを保有した細胞が開示されている。さらに、特開昭63−214189号公報には、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、アコニット酸ヒドラターゼ遺伝子、及びクエン酸シンターゼ遺伝子を増幅することによって、L−グルタミン酸の生産能を増加させる技術が開示されている。
上記のような微生物の育種や製造法の改良により、L−グルタミン酸の生産性はかなり高まってはいるが、今後の需要の一層の増大に応えるためには、さらに安価かつ効率的なL−グルタミン酸の製造法の開発が求められている。
一方、本発明者らは、培養液中に蓄積するL−グルタミン酸を析出させながら発酵を行う方法を開発している(欧州特許出願公開第1078989号明細書)。従来、通常のL−グルタミン酸生産菌は酸性条件下では生育できないため、L−グルタミン酸発酵は中性で行われていた。それに対し、本発明者らは、酸性条件下でL−グルタミン酸生産能を有する微生物を探索することに成功した。そして、得られた微生物(エンテロバクター・アグロメランス)を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整された液体培地に培養することによって、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることができる。
また、本発明者らは、上記のような酸性条件下で生育できるL−グルタミン酸生産菌を、同細菌の生育を阻害する有機酸の合計含有量が前記細菌の生育を阻害しない量である培地中で培養するL−グルタミン酸の製造法(欧州特許出願公開第1233070号明細書)、及び、前記細菌を微生物の生育に適した第1のpHで培養し、次いで微生物によるL−グルタミン酸の生産に適した、第1のpHよりも低い第2のpHで培養することを含むL−グルタミン酸の製造法(欧州特許出願公開第1233068号明細書)を開示している。さらに、培地中にL−グルタミン酸を析出させながらL−グルタミン酸を生成蓄積させる際に、培地中のL−グルタミン酸濃度が、自然起晶が起こる濃度よりも低いときに、培地中にL−グルタミン酸の結晶を存在させる操作を行う方法(欧州特許公開公開第1233069号明細書)を開示している。
本発明は、L−グルタミン酸生産能を有するパントエア属細菌等の細菌を用いて、従来技術よりもさらに効率的にL−グルタミン酸を生産する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、パントエア属細菌に高いL−グルタミン酸生産能を付与すると、L−グルタミン酸とともにアセトイン、2,3−ブタンジオールの副生が生じることを見い出した。そして、これらの副生を抑制することが可能となれば、L−グルタミン酸の主原料(糖)あたりの収率は向上すると考えた。そこで、本発明者等は、種々検討を行った結果、培地にパントテン酸を添加することにより、アセトイン及び2,3−ブタンジオールの副生が削減され、その結果L−グルタミン酸発酵収率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)特定のpHにおいて飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を超える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を有する微生物を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整され、かつ、パントテン酸を含む培地に培養し、該培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることを特徴とする発酵法によるL−グルタミン酸の製造法。
(2)前記微生物がパントエア属に属することを特徴とする前記の方法。
(3)前記微生物がパントエア・アナナティスである前記の方法。
(4)培地中のパントテン酸がパントテン酸塩であり、同塩の濃度が1mg/L以上である前記の方法。
[図1]pTWVEK101のパントエア・アナナティス由来DNA断片の制限酵素地図。
[図2]gltA遺伝子、ppc遺伝子およびgdhA遺伝子を有するプラスミドpMWCPGの構築を示す図。
[図3]広宿主域プラスミドRSF1010の複製起点とテトラサイクリン耐性遺伝子を含むプラスミドRSF−Tetの構築を示す図である。
[図4]広宿主域プラスミドRSF1010の複製起点、テトラサイクリン耐性遺伝子、gltA遺伝子、ppc遺伝子およびgdhA遺伝子を有するプラスミドRSFCPGの構築を示す図。
[図5]gltA遺伝子を有するプラスミドpSTVCBの構築を示す図。
[図6]パントテン酸添加によりL−グルタミン酸収率が向上する原理を説明する図。
[図7]培地に加えたパントテン酸カルシウム濃度とL−グルタミン酸発酵収率との関係を示す図。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定のpHにおいて飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を超える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を有する微生物(以下、「L−グルタミン酸蓄積微生物」ともいう)を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整され、かつ、パントテン酸を含む培地に培養し、該培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることを特徴とする発酵法によるL−グルタミン酸の製造法である。
上記L−グルタミン酸蓄積微生物は、例えば、以下のようにして取得することができる。微生物を含む試料を、特定のpHにおいて飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地に接種し、炭素源を代謝する菌株を選抜する。特定のpHとは、特に制限されないが、通常、約5.0以下、好ましくは約4.5以下、さらに好ましくは約4.3以下である。L−グルタミン酸蓄積微生物はL−グルタミン酸を析出させながら発酵生産するのに用いられるものであるが、前記pHが高すぎると、析出させるのに十分なL−グルタミン酸を微生物に生産させることが困難になる。したがってpHは前記の範囲が好ましい。
L−グルタミン酸を含む水溶液のpHを低下させると、L−グルタミン酸はγ−カルボキシル基のpKa(4.25、25℃)付近で溶解度は著しく減少し、等電点(pH3.2)で溶解度は最も低くなり、飽和濃度を越えるL−グルタミン酸は析出する。培地組成によっても異なるが、通常には、L−グルタミン酸は約30℃においては、pH3.2では10〜20g/L、pH4.0では30〜40g/L、pH4.7では50〜60g/L溶解する。尚、pHが一定の値を下回るとL−グルタミン酸を析出させる効果は頭打ちになるので、通常3.0以下にする必要はない。しかし、pHが3.0以下であっても差し支えない。
「炭素源を代謝できる」とは、増殖できるか、あるいは増殖しなくても炭素源を消費することができることをいい、すなわち、糖類、有機酸類等の炭素源を異化することをいう。具体的には、例えば、飽和濃度のL−グルタミン酸を含むpH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくは約pH4.0の液体培地中で、適当な温度、例えば28℃、37℃又は50℃にて、2〜4日間培養したときに増殖する微生物は、同培地中で炭素源を代謝できる微生物である。さらに、例えば、飽和濃度のL−グルタミン酸を含むpH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくは約pH4.0の液体合成培地中で、適当な温度、例えば28℃、37℃又は50℃にて、2〜4日間培養したときに増殖せずとも、培地中の炭素源を消費する微生物は、同培地中で炭素源を代謝できる微生物である。
炭素源を代謝できる微生物は、上記液体培地で生育できる微生物を包含する。
「生育できる」とは、増殖できるか、あるいは増殖しなくてもL−グルタミン酸を生産することができることをいう。具体的には、例えば、飽和濃度のL−グルタミン酸を含むpH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくは約pH4.0の液体培地中で、適当な温度、例えば28℃、37℃又は50℃にて、2〜4日間培養したときに増殖する微生物は、同培地中で生育できる微生物である。さらに、例えば、飽和濃度のL−グルタミン酸を含むpH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくは約pH4.0の液体合成培地中で、適当な温度、例えば28℃、37℃又は50℃にて、2〜4日間培養したときに増殖せずとも、培地中のL−グルタミン酸の量を増加させる微生物は、同培地中で生育できる微生物である。
上記の選抜は、同じ条件で、又はpHもしくはL−グルタミン酸の濃度を変えて2回又は3回以上繰り返してもよい。また、初期の選抜は、飽和濃度より低い濃度のL−グルタミン酸を含む培地で行い、後の選抜を飽和濃度のL−グルタミン酸を含む培地で行ってもよい。さらに、増殖速度に優れる菌株等、好ましい特性を有する菌株を選抜する操作を行ってもよい。
L−グルタミン酸蓄積微生物は、上記性質に加えて、液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を越える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を有する微生物である。前記液体培地のpHは、前記の性質を有する微生物のスクリーニングに用いた培地のpHと同じか、又はそれに近いpHであることが好ましい。通常、微生物はpHが低くなると高濃度のL−グルタミン酸に対して感受性となるため、L−グルタミン酸に対する耐性という観点からはpHは低くない方が好ましいが、L−グルタミン酸を析出させながら生産させるという観点からは、pHは低い方が好ましい。これらの条件を満足するpH条件としては、3〜5、好ましくは4〜5、より好ましくは4.0〜4.7、さらに好ましくは4.0〜4.5、特に好ましくは4.0〜4.3が挙げられる。
L−グルタミン酸蓄積微生物又はその育種の材料としては、例えば、パントテア(Pantoea)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、エシェリヒア(Escherichia)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、アリサイクロバチルス(Alicyclobacillus)属、バチルス(Bacillus)属、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等に属する微生物が挙げられるが、これらには限定されない。これらの中ではパントエア属に属する微生物が好ましい。以下、L−グルタミン酸蓄積微生物について、パントエア属に属する微生物を中心に説明するが、パントエア属に限られず他の属に属する微生物も同様に使用できる。
パントエア属に属する微生物として具体的には、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)が、好ましくはパントエア・アナナティスAJ13355株が挙げられる。同株は、静岡県磐田市の土壌から、低pHでL−グルタミン酸及び炭素源を含む培地で増殖できる株として分離された株である。
パントエア・アナナティスAJ13355は、平成10年2月19日に、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現名称、産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所)に、受託番号FERM P−16644として寄託され、平成11年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−6614が付与されている。尚、同株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)と同定され、エンテロバクター・アグロメランスAJ13355として寄託されたが、近年16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)に再分類されている(後記実施例参照)。
また、後述するAJ13355から誘導された菌株AJ13356、及びAJ13601も、同様にエンテロバクター・アグロメランスとして前記寄託機関に寄託されているが、本明細書ではパントエア・アナナティスと記述する。
L−グルタミン酸蓄積微生物は、元来L−グルタミン酸生産能を有していてもよいし、変異処理又は組換えDNA技術等による育種によってL−グルタミン酸生産能を付与、又は増強したものであってもよい。
L−グルタミン酸生産能は、例えば、L−グルタミン酸の生合成反応を触媒する酵素の活性を高めることによって、付与又は増強することができる。また、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下または欠損させることによっても、L−グルタミン酸生産能を増強することができる。
L−グルタミン酸の生合成反応を触媒する酵素としては、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」ともいう)、グルタミンシンセターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ(以下、「CS」ともいう)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(以下、「PEPC」ともいう)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、エノラーゼ、ホスホグリセロムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルクトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ等が挙げられるが、これらには限定されない。これらの酵素の中では、CS、PEPCおよびGDHのいずれか1種または2種もしくは3種が好ましい。さらに、L−グルタミン酸蓄積微生物においては、CS、PEPCおよびGDHの3種の酵素の活性がともに高められていることが好ましい。特に、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのCSは、α−ケトグルタル酸、L−グルタミン酸及びNADHによる阻害を受けないため、好ましいものである。
CS、PEPCまたはGDH活性を高めるには、例えば、CS、PEPCまたはGDHをコードする遺伝子を適当なプラスミド上にクローニングし、得られたプラスミドを用いて宿主微生物を形質転換すればよい。形質転換株の細胞内のCS、PEPC及びGDHをコードする遺伝子(以下、おのおのをこの順に「gltA遺伝子」、「ppc遺伝子」、「gdhA遺伝子」と略する)のコピー数が上昇し、その結果CS、PEPC及びGDH活性が高められる。
クローニングされたgltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子は、単独または任意の2種または3種の組合わせで、上記出発親株に導入される。2種または3種の遺伝子を導入する場合には、一種類のプラスミド上に2種又は3種の遺伝子がクローン化されて宿主に導入されるか、あるいは共存可能な2種類または3種類のプラスミド上に別々にクローン化されて宿主に導入される。
尚、同種の酵素をコードする遺伝子であって、由来が異なる2又は3以上の遺伝子を同一の宿主に導入してもよい。
上記プラスミドとしては、例えばパントエア属等に属する微生物の細胞中で自律複製可能なプラスミドであれば特に制限されないが、例えばpUC19、pUC18、pBR322、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218、pACYC177、pACYC184等が挙げられる。他にもファージDNAのベクターも利用できる。
形質転換は、例えば、D.A.Morrisonの方法(Methods in Enzymology 68,326(1979))、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))、あるいはエレクトロポレーション法(Miller J.H.,″A Short Course in Bacterial Genetics″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,U.S.A.,1992)等により行うことができる。
CS、PEPCまたはGDH活性を高めることは、gltA遺伝子、ppc遺伝子またはgdhA遺伝子を、宿主となる上記出発親株の染色体DNA上に多コピー存在させることによっても達成できる。パントエア属等に属する微生物の染色体DNA上にgltA遺伝子、ppc遺伝子、またはgdhA遺伝子を多コピーで導入するには、レペッティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーティッド・リピート等、染色体DNA上に多コピー存在する配列が利用できる。あるいは、gltA遺伝子、ppc遺伝子、またはgdhA遺伝子をトランスポゾンに搭載して、これを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。形質転換株の細胞内のgltA遺伝子、ppc遺伝子、またはgdhA遺伝子のコピー数が上昇し、その結果CS、PEPCまたはGDH活性が高められる。
コピー数を上昇させるgltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子の供給源となる生物としては、CS、PEPC及びGDH活性を有する生物ならいかなる生物でも良い。なかでも原核生物である細菌、たとえばパントエア属、エンテロバクター属、クレブシェラ属、エルビニア属、セラチア属、エシェリヒア属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、バチルス属に属する細菌が好ましい。具体的な例としては、エシェリヒア・コリ、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム等が挙げられるが、これらには限定されない。gltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子は、上記のような微生物の染色体DNAより得ることができる。
gltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子は、おのおのCS、PEPCもしくはGDH活性を欠失した変異株を用いてその栄養要求性を相補するDNA断片を上記微生物の染色体DNAから単離することによって取得できる。またエシェリヒア属のこれら遺伝子、コリネバクテリウム属細菌のこれら遺伝子は既に塩基配列が明らかにされていることから(Biochemistry、第22巻、5243〜5249頁、1983年;J.Biochem.、第95巻、909〜916頁、1984年;Gene、第27巻、193〜199頁、1984年;Microbiology、第140巻、1817〜1828頁、1994年;Mol.Gen.Genet.、第218巻、330〜339頁、1989年;Molecular Microbiology、第6巻、317〜326頁、1992年)それぞれの塩基配列に基づいてプライマーを合成し、染色体DNAを鋳型にしてPCR法により取得することが可能である。尚、エンテロバクター属又はクレブシエラ属細菌等の腸内細菌においては、同種の細菌由来のgltA遺伝子に比べて、コリネ型細菌由来のgltA遺伝子の導入が、L−グルタミン酸生産能の増強に有効であることが知られている(欧州特許出願公開第0999282号)。同公報においては、本願明細書に記載のパントエア・アナナティスの菌株はエンテロバクター・アグロメランスと記載されている。
CS、PEPCまたはGDH活性を高めるには、上記の遺伝子増幅による以外にも、gltA遺伝子、ppc遺伝子、またはgdhA遺伝子の発現が強化されることによって達成される。例えば、gltA遺伝子、ppc遺伝子、またはgdhA遺伝子のプロモーターをそれよりも強力な他のプロモーターに置換することによって発現が強化される。たとえば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、ラムダファージのPプロモーター、Pプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。プロモーターが置換されたgltA遺伝子、ppc遺伝子またはgdhA遺伝子は、プラスミド上にクローニングされて宿主微生物に導入されるか、またはレペッティブDNA、インバーティッド・リピート、またはトランスポゾン等を用いて宿主微生物の染色体DNA上に導入される。
また、CS、PEPCまたはGDH活性を高めるには、染色体上のgltA遺伝子、ppc遺伝子またはgdhA遺伝子のプロモーターを、それらよりも強力なプロモーターで置換する(WO87/03006号、特開昭61−268183号参照)か、またはそれぞれの遺伝子のコード配列の上流に、強力なプロモーターを挿入すること(Gene,29,(1984)231−241参照)によっても達成することができる。具体的には、強力なプロモーターに置換されたgltA遺伝子、ppc遺伝子もしくはgdhA遺伝子またはそれらの一部を含むDNAと、染色体上の対応する遺伝子との間で相同組換えを起こさせればよい。
L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、α−ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ(以下、「αKGDH」ともいう)、イソクエン酸リアーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼ等がある。これらの酵素の中では、αKGDHが好ましい。
パントエア属等に属する微生物において、上記のような酵素の活性を低下または欠損させるには、通常の変異処理法によって、あるいは遺伝子工学的手法によって、上記酵素の遺伝子に、細胞中の当該酵素の活性が低下または欠損するような変異を導入すればよい。
変異処理法としては、たとえばX線や紫外線を照射する方法、またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤で処理する方法等がある。遺伝子に変異が導入される部位は、酵素タンパク質をコードするコード領域であってもよく、プロモーター等の発現制御領域であってもよい。
また、遺伝子工学的手法には、例えば遺伝子組換え法、形質導入法、細胞融合法等を用いる方法がある。例えば、クローン化された目的遺伝子の内部に薬剤耐性遺伝子を挿入し、機能を失った遺伝子(欠失型遺伝子)を作製する。次いで、この欠失型遺伝子を宿主微生物の細胞に導入し、相同組み換えを利用して染色体上の目的遺伝子を前記欠失型遺伝子に置換する(遺伝子破壊)。
細胞中の目的酵素の活性が低下または欠損していること、および活性の低下の程度は、候補株の菌体抽出液または精製画分の酵素活性を測定し、野生株と比較することによって確認することができる。例えば、αKGDH活性は、Reedらの方法(L.J.Reed and B.B.Mukherjee,Methods in Enzymology 1969,13,p.55−61)に従って測定することができる。
また、目的とする酵素によっては、変異株の表現型によって目的変異株を選択することができる。例えば、αKGDH活性が欠損もしくは低下した変異株は、好気的培養条件ではグルコースを含む最少培地、あるいは、酢酸やL−グルタミン酸を唯一の炭素源として含む最少培地で増殖できないか、または増殖速度が著しく低下する。ところが、同一条件でもグルコースを含む最少培地にコハク酸またはリジン、メチオニン、及びジアミノピメリン酸を添加することによって通常の生育が可能となる。これらの現象を指標としてαKGDH活性が欠損もしくは低下した変異株の選抜が可能である。
相同組換えを利用したブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムのαKGDH遺伝子欠損株の作製法は、WO95/34672号に詳述されており、他の微生物にも同様の方法を適用することができる。
その他、遺伝子のクローニング、DNAの切断、連結、形質転換法等の技術については、Molecular Cloning,2nd edition,Cold Spring Harbor press(1989))等に詳述されている。
以上のようにして得られるαKGDH活性が欠損もしくは低下した変異株の具体例としては、パントエア・アナナティスAJ13356が挙げられる。パントエア・アナナティスAJ13356は、平成10年2月19日に、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現名称、産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所)に、受託番号FERM P−16645として寄託され、平成11年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−6615が付与されている。パントエア・アナナティスAJ13356は、αKGDH−E1サブユニット遺伝子(sucA)が破壊された結果、αKGDH活性を欠損している。
また、本発明に用いられる微生物の一例であるパントエア・アナナティスは、糖を含有する培地で培養を行うと、菌体外に粘液質を生成するために、操作効率がよくないことがある。したがって、このような粘液質を生成する性質を有するパントエア・アナナティスを用いる場合には、粘液質の生成量が野生株よりも低下した変異株を用いることが好ましい。変異処理法としては、たとえばX線や紫外線を照射する方法、またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤で処理する方法等がある。また、粘液質の生成量が低下した変異株は、変異処理した菌株を、糖を含む培地、例えば5g/Lのグルコースを含むLB培地プレートに撒き、プレートを約45°傾けて培養したときに、液質が流れ落ちないようになったコロニーを選抜することによって選択することができる。
本発明において、L−グルタミン酸生産能の付与又は増強、及び上記の粘液質低生産変異等の好ましい性質の付与は、任意の順序で行うことができる。
上記のようなL−グルタミン酸生産菌の育種に用いられる遺伝子として、パントエア・アナナティスのsucA遺伝子の塩基配列及び同遺伝子によってコードされるαKGDH−E1サブユニットのアミノ酸配列を、配列番号1及び配列番号3に示す。
また、エシェリヒア・コリ由来のgltA遺伝子、gdhA遺伝子、及びppc遺伝子を含むプラスミドRSFCPG(参考例1参照)の塩基配列を配列番号8に示す。配列番号8において、gltA遺伝子、、gdhA遺伝子、及びppc遺伝子のコード領域は、それぞれ塩基番号1770〜487(相補鎖によってコードされる)、2598〜3941、7869〜5218(相補鎖によってコードされる)に相当する。これらの遺伝子によってコードされるCS、GDH及びPEPCのアミノ酸配列を、配列番号9、10、11に示す。さらに、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のgltA遺伝子を含むプラスミドpSTVCB(参考例1参照)の塩基配列及び同遺伝子によってコードされるCSのアミノ酸配列を、配列番号12及び配列番号13に示す。
CS、GDH及びPEPCは、野生型の他に、各々の酵素の活性を実質的に損なわないような1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有するものであってもよい。ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、具体的には2から30個、好ましくは、2から20個、より好ましくは2から10個である。上記のCS、GDH及びPEPCの変異は、CS、GDH及びPEPCの活性が維持されるような保存的変異である。置換は、アミノ酸配列中の少なくとも1残基が除去され、そこに他の残基が挿入される変化である。CS、GDH及びPEPCの各タンパク質の元々のアミノ酸を置換し、かつ、保存的置換とみなされるアミノ酸としては、Alaからser又はthrへの置換、argからgln、his又はlysへの置換、asnからglu、gln、lys、his又はaspへの置換、aspからasn、glu又はglnへの置換、cysからser又はalaへの置換、glnからasn、glu、lys、his、asp又はargへの置換、gluからasn、gln、lys又はaspへの置換、glyからproへの置換、hisからasn、lys、gln、arg又はtyrへの置換、ileからleu、met、val又はpheへの置換、leuからile、met、val又はpheへの置換、lysからasn、glu、gln、his又はargへの置換、metからile、leu、val又はpheへの置換、pheからtrp、tyr、met、ile又はleuへの置換、serからthr又はalaへの置換、thrからser又はalaへの置換、trpからphe又はtyrへの置換、tyrからhis、phe又はtrpへの置換、及び、valからmet、ile又はleuへの置換が挙げられる。
上記のようなCS、GDH及びPEPCと実質的に同一のタンパク質又はペプチドをコードするDNAとしては、配列番号12に示す塩基配列、又は配列番号8に示す塩基配列中のそれぞれのオープンリーディングフレーム(ORF)又はそれらの塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつCS、GDH又はPEPCの活性を有するタンパク質をコードするDNAが挙げられる。ここで、「ストリンジェントな条件」とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC,0.1%SDS、好ましくは、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
プローブとして、配列番号12に示す塩基配列、又は配列番号8の塩基配列中の各ORF又はそれらの一部の配列を用いることもできる。そのようなプローブは、配列番号8又は12の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、配列番号8もしくは12又はそれらの一部の塩基配列を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製することができる。プローブとして、300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、50℃、2×SSC、0.1%SDSが挙げられる。
遺伝子破壊に用いる欠失型sucA遺伝子は、目的とする微生物の染色体DNA上のsucA遺伝子と相同組換えを起こす程度の相同性を有していればよい。このような相同性は、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上である。また、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNA同士であれば、相同組換えは起こり得る。
上記のようにして得られる菌株として具体的には、前記パントエア・アナナティスAJ13355株から誘導されたAJ13601株が挙げられる。同株は、AJ13355株からの粘液質低生産株の選択、αKGDH遺伝子の破壊、エシェリヒア・コリ由来のgltA、ppc、gdhAの各遺伝子、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のgltA遺伝子の導入、低pHにおける高濃度L−グルタミン酸耐性株の選択、及び増殖度及びL−グルタミン酸生産能が高い株の選択によって、取得された菌株である。
L−グルタミン酸蓄積微生物を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整された液体培地に培養することにより、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることができる。ここで前記微生物が「生産したL−グルタミン酸が析出する条件」とは、L−グルタミン酸蓄積微生物がL−グルタミン酸を生成蓄積したときにL−グルタミン酸が析出する条件をいう。この条件のpHは、微生物のL−グルタミン酸生産能に応じて変動するが、微生物がパントエア属細菌の場合には、通常3〜5、好ましくは4.5以下、より好ましくは4以下である。
尚、上記のL−グルタミン酸が析出する条件は、L−グルタミン酸蓄積微生物が、飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を超える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を示すことができるpHであることが前提となる。
上記条件でL−グルタミン酸蓄積微生物を培地で培養する際に、同培地にパントテン酸を含有させることによって、L−グルタミン酸の蓄積量を上昇させることができる。これは、培地にパントテン酸を添加することにより、アセトイン及び2,3−ブタンジオールの副生が削減され、その結果L−グルタミン酸発酵収率が向上すると推定される。
培地中のパントテン酸は、パントテン酸塩として添加することが好ましい。パントテン酸塩の含有量は、好ましくは1mg/L以上、より好ましくは4mg/L以上、特に好ましくは8mg/L以上である。パントテン酸塩としては特に制限されず、カルシウム塩、ナトリウム塩等が挙げられる。
尚、パントテン酸は、培養の全工程において培地に含有されていてもよいが、パントテン酸を含む培地で培養される期間を工程の一部に含んでいてもよい。例えば、本発明の方法が、L−グルタミン酸蓄積微生物を増殖させる段階と、L−グルタミン酸を産生させる段階を含む場合、少なくともL−グルタミン酸を産生させる段階においてパントテン酸を培地に含有させればよく、L−グルタミン酸蓄積微生物を増殖させる段階においては、パントテン酸を培地に含有させてもよく、含有させなくてもよい。また、L−グルタミン酸を産生させる段階においても、その段階の全期間でパントテン酸の含有量が前記の範囲である必要はなく、同段階の初期に含有量が前記範囲となるようにパントテン酸を含有させ、培養時間に応じて減少してもよい。パントテン酸を間欠的に追加添加してもよい。
本発明は、パントテン酸を含む培地を用いる以外は、L−グルタミン酸蓄積微生物を用いて、培地中でL−グルタミン酸を析出させながらL−グルタミン酸を製造する公知の方法を適用することができる(例えば、特開2001−333769(欧州特許出願公開第1078989号)、特開2002−238591(欧州特許出願公開第1233070号)、特開2002−238592(欧州特許出願公開第1233068号)、特開2002−238593(欧州特許出願公開第1233069号))。
例えば、本発明の方法の好ましい形態の一つは、パントテン酸塩を含有し、pHが5.0以下である培地であって、このpHでL−グルタミン酸蓄積微生物の生育を阻害する有機酸の合計含有量が微生物の生育を阻害しない量である培地中で培養することを含む、L−グルタミン酸の製造法である(特開2002−238591号(欧州特許出願公開第1233070号)公報参照)。この態様において、培地のpHで微生物の生育を阻害する有機酸は、そのpHの培地中に或る程度の濃度(通常には0.5g/L以上)で存在するときに微生物の生育の阻害を示す有機酸を意味し、通常には、炭素数1〜3の有機酸、すなわち、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸である。
有機酸の合計含有量は、好ましくは0.4g/L以下、より好ましくは0.3g/L以下、さらに好ましくは0.2g/L以下である。
本発明の方法の好ましい他の態様は、L−グルタミン酸蓄積微生物を、同微生物の生育に適した第1のpHで培養し、次いで微生物によるL−グルタミン酸の生産に適した、第1のpHよりも低い第2のpHで培養することを含み、少なくとも第2のpHでの培養をパントテン酸を含む培地で培養する、L−グルタミン酸の製造法である((特開2002−238592号(欧州特許出願公開第1233068号)公報参照))。
本発明の方法の好ましい別の態様は、L−グルタミン酸蓄積微生物を、培地中の有機酸による微生物の生育の阻害が生じない第1のpHで培養し、次いで微生物によるL−グルタミン酸の生産に適した、第1のpHより低い第2のpHで培養することを含み、少なくとも第2のpHでの培養をパントテン酸を含む培地で培養する、L−グルタミン酸の製造法である(特開2002−238591号(欧州特許出願公開第1233070号)公報参照)。
L−グルタミン酸生産菌は、一般に、酸性条件下で有機酸による生育の阻害を受ける一方、中性条件下では有機酸を消費することができる(特開2002−238591号(欧州特許出願公開第1233070号)公報参照)。この性質を利用して中性pHで菌体生育を行い、その後pHを酸性に変化させてL−グルタミン酸を生成させることにより、より高い生産性を得るとともに、広範な材料を糖源として使用することが可能となる。
この態様において、有機酸は、第2のpHの培地中に或る程度の濃度(通常には0.5g/L以上)で存在するときに微生物の生育の阻害を示す有機酸を意味し、通常には、炭素数1〜3の有機酸、すなわち、蟻酸、酢酸及びプロピオン酸である。
第1のpH及び第2のpHは、使用されるL−グルタミン酸蓄積微生物の性質に適合するように選択される。これらのpHは、当業者であれば容易に測定できる。例えば、培地中の有機酸による微生物の生育の阻害が生じないpHは、種々のpHに調整した有機酸含有培地でL−グルタミン酸蓄積微生物を培養し、吸光度などにより菌体量を測定して、その菌体量を、有機酸を含有しないこと以外は同一の条件で培養されたL−グルタミン酸蓄積微生物の菌体量と比較することにより決定できる。L−グルタミン酸の生産に適したpHは、種々のpHの培地でL−グルタミン酸蓄積微生物を培養し、培地中にL−グルタミン酸が蓄積されるときのpHをいう。具体的には、当該種々のpHの培地中に蓄積されたL−グルタミン酸量を測定して比較することにより決定できる。
第1のpHは、培地中の有機酸による微生物の成育の阻害が生じなければ特に制限はなく、通常には5.0〜8.0である。
第2のpHは、生産されたL−グルタミン酸が析出するpHであることが好ましく、このようなpHは、通常には、3.0〜5.0である。生産されたL−グルタミン酸が析出するpHで培養することにより、L−グルタミン酸の高濃度蓄積による生産性の阻害を回避できる。
第1のpH及び第2のpHは、本発明の効果が得られる限り、培養中において厳密に一定の値を示す必要はなく、変動しても差し支えない。
第1のpHでの培養は、このpHであっても、L−グルタミン酸蓄積微生物がL−グルタミン酸を生産するので、生産されるL−グルタミン酸によるpHの低下が生じるため、アルカリ化物質を培地に添加することにより培地のpHを第1のpHに維持しながら行うことが好ましい。
アルカリ化物質は、L−グルタミン酸蓄積微生物の生育やL−グルタミン酸生産に悪影響を与えないものであれば特に限定されないが、アンモニアガスが好ましい。
第1のpHから第2のpHへの、培地のpHの低下は、酸性物質を培地に添加することにより行ってもよいが、上述のように、L−グルタミン酸蓄積微生物により生産されるL−グルタミン酸によるpHの低下が培養中に生じるので、第1のpHから第2のpHへの、培地のpHの低下は、アルカリ化物質の添加量を調整することにより行うことが、酸性物質の添加を省略できるので好ましい。
第1のpHでの培養は、培地中の有機酸が枯渇するまで継続すればよい。枯渇とは、有機酸の量が第2のpHにおける培養において、L−グルタミン酸蓄積微生物の生育を阻害しないレベルに低下することをいう。このような有機酸のレベルを測定することは当業者にとって容易である。例えば、第2のpHにおいて種々の濃度の有機酸を含む培地で培養を行い、L−グルタミン酸蓄積微生物の菌体量を測定して、その菌体量を、有機酸を含有しないこと以外は同一の条件で培養されたL−グルタミン酸蓄積微生物の菌体量と比較することにより決定できる。一般に、第2のpHが低くなればなるほど、有機酸のレベルも低くなる。
本発明の方法の好ましいさらに別の態様は、L−グルタミン酸蓄積微生物を、pHが当該微生物によって生産されたL−グルタミン酸が析出する条件に調整された液体培地に培養し、該培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることを含む、発酵法によるL−グルタミン酸の製造法において、培地中のL−グルタミン酸濃度が、自然起晶が起こる濃度よりも低いときに、培地中にL−グルタミン酸の結晶を存在させる操作を行い、前記培地はパントテン酸を含む方法である(特開2002−238593号(欧州特許出願公開第1233069号)公報参照)。前記「自然起晶」とは、L−グルタミン酸を生産する能力を有する微生物がL−グルタミン酸を蓄積することにより、培地中のL−グルタミン酸濃度が飽和濃度を超えて自然に培地中にL−グルタミン酸が析出することをいう。
培地中にL−グルタミン酸の結晶を存在させる操作とは、人為的に培地中に結晶を存在させる操作を意味する。このような操作の例としては、培地に結晶を添加すること、培養開始時に或る量のL−グルタミン酸を培地に溶解させておき、培養途中でpHを下げることにより、強制的に析出させること等が挙げられる。結晶を培地中に存在させる量は、通常には0.01〜10g/Lである。また、存在させる時期は、培地中のL−グルタミン酸の蓄積量が飽和濃度近くまで(例えばpH4.5の場合、25g/L以上)上昇した時が好ましい。培地中のL−グルタミン酸の結晶の存在量やL−グルタミン酸の濃度は、当業者に周知の方法で測定することができる。L−グルタミン酸の結晶は、培養液を静置し、デカントにより培養液から採取して存在量を測定する。培地中のL−グルタミン酸の濃度とは、溶解しているL−グルタミン酸の濃度である。培地中に結晶が析出している場合は、遠心分離(又は濾過)により固形分を分離し、得られた清澄液のL−グルタミン酸濃度の測定値を指す。
培地中にL−グルタミン酸の結晶を存在させる操作は、好ましくは、L−グルタミン酸の結晶を添加することである。
L−グルタミン酸の結晶にはα型とβ型の結晶が存在する(H.Takahashi,T.Takenishi,N.Nagashima,Bull.Chem.Soc.Japan,35,923(1962);J.D.Bernal,Z.Krist.,78,363(1931);S.Hirokawa,Acta Cryst.,8,637(1955))。α型の結晶を得る場合には、添加する結晶はα型であることが好ましい。
好ましい結晶の添加量は、結晶の結晶型等の条件で変わるが、α型の結晶である場合には、通常には0.2g/L以上である。この濃度以上であると、再現性良くα型の結晶を得ることができる。α型の結晶は、その形状の点から、β型の結晶に比べて取り扱いが容易である。
本発明に用いる培地は、パントテン酸を含有し、かつ、pHが所定の条件に調整されること以外は、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の栄養培地を用いることができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用される炭素源および窒素源は、培養する菌株の利用可能なものならばよい。
炭素源としてはグルコース、グリセロール、フラクトース、シュークロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、でんぷん加水分解物、糖蜜等の糖類が使用され、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸等も単独あるいは他の炭素源と併用して用いられる。
窒素源としてはアンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用される。
有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、さらにこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆蛋白分解物等が使用され、代謝又は生育にアミノ酸等を要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添する事が必要である。
無機塩類としてはリン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用される。
培養方法は、pHが所定の値に調整される以外は、通常には、発酵温度20ないし42℃での通気培養である。
培養終了後、培養液中に析出したL−グルタミン酸は、遠心分離又は濾過等により採取することができる。また、培地中に溶解しているL−グルタミン酸は、公知の方法に従って採取することができる。例えば、濃縮晶析する方法、あるいはイオン交換クロマトグラフィー等によって単離することができる。培養液中に析出したL−グルタミン酸は、培地中に溶解しているL−グルタミン酸を晶析した後に、併せて単離してもよい。
飽和濃度を超えるL−グルタミン酸が析出する態様では、培地中に溶解しているL−グルタミン酸の濃度は一定量に保たれ、微生物が高濃度のL−グルタミン酸から受ける影響を低減することができる。したがって、L−グルタミン酸生産能が一層向上した微生物を育種することも可能となる。また、L−グルタミン酸は結晶として析出してくるため、L−グルタミン酸の蓄積に伴う培養液の酸性化が少なく、培養液のpHを維持するために使用されるアルカリの量を大幅に削減することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
参考例1
〈1〉酸性環境下にてL−グルタミン酸耐性を有する微生物の探索
酸性環境下にてL−グルタミン酸耐性を有する微生物の探索は、以下のようにして行った。1gの土壌、果実、植物体、河川水などの自然界より得られたサンプルおよそ500点を、それぞれ5mLの滅菌水に懸だくし、そのうち200μLを塩酸にてpHを4.0に調製した固体培地20mLに塗布した。同培地の組成は、以下のとおりである。グルコース3g/L、硫酸アンモニウム1g/L、硫酸マグネシウム七水塩0.2g/L、リン酸二水素カリウム0.5g/L、塩化ナトリウム0.2g/L、塩化カルシウム二水塩0.1g/L、硫酸第一鉄七水塩0.01g/L、硫酸マンガン四水塩0.01g/L、硫酸亜鉛二水塩0.72mg/L、硫酸銅五水塩0.64mg/L、塩化コバルト六水塩0.72mg/L、ホウ酸0.4mg/L、モリブデン酸ナトリウム2水塩1.2mg/L、ビオチン50μg/L、パントテン酸カルシウム50μg/L、葉酸50μg/L、イノシトール50μg/L、ナイアシン50μg/L、パラアミノ安息香酸50μg/L、ピリドキシン塩酸塩50μg/L、リボフラビン50μg/L、チアミン塩酸塩50μg/L、シクロヘキシミド50mg/L、寒天20g/L。
上記のサンプルを塗布した培地を、28℃、37℃又は50℃にて、2〜4日間培養し、コロニーを形成する菌株を378株取得した。
続いて、上記のようにして得られた菌株を、飽和濃度のL−グルタミン酸を含む液体培地(塩酸にてpH4.0に調整)3mLを注入した長さ16.5cm、径14mmの試験管に植菌し、24時間〜3日間、28℃、37℃又は50℃にて振とう培養を行い、増殖する菌株を選抜した。前記培地の組成は、以下のとおりである。グルコース40g/L、硫酸アンモニウム20g/L、硫酸マグネシウム七水塩0.5g/L、リン酸二水素カリウム2g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、塩化カルシウム二水塩0.25g/L、硫酸第一鉄七水塩0.02g/L、硫酸マンガン四水塩0.02g/L、硫酸亜鉛二水塩0.72mg/L、硫酸銅五水塩0.64mg/L、塩化コバルト六水塩0.72mg/L、ホウ酸0.4mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水塩1.2mg/L、酵母エキス2g/L。
このようにして、酸性環境下にてL−グルタミン酸耐性を有する微生物78株を取得することに成功した。
〈2〉酸性環境下にてL−グルタミン酸耐性を有する微生物からの増殖速度に優れた菌株の選抜
上記のようにして得られた、酸性環境下にてL−グルタミン酸耐性を有する種々の微生物を、M9培地(J.Sambrook,E.F.Fritsh,T.Maniatis″Molecular Cloning″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,U.S.A.,1989)に20g/Lのグルタミン酸と2g/Lのグルコースを加え、pHを塩酸で4.0に調整した培地3mLを注入した長さ16.5cm、径14mmの試験管に植菌し、培地の濁度を経時的に測定することによって、増殖速度の良好な菌株の選抜を行った。その結果、生育が良好な菌株として、静岡県磐田市の土壌より採取されたAJ13355株が得られた。本菌株は、菌学的性質から、エンテロバクター・アグロメランスと判定された。エンテロバクター・アグロメランスは、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパントエア・アナナティス(P.ananatis)、パントエア・スチューアルティ(P.stewartii)等に再分類されているものがあり、前記AJ13355株は、これらのうち、パントエア・アナナティスに分類されている。
〈3〉パントエア・アナナティスAJ13355株からの粘液質低生産株の取得
パントエア・アナナティスAJ13355株は糖を含有する培地で培養を行うと、菌体外に粘液質を生成するために、操作効率がよくない。そこで、粘液質低生産株の取得を、紫外線照射法(Miller,J.H.et al.,″A Short Cource in Bacterial Genetics;Laboratory Manual″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,U.S.A.,p.150,1992)により行った。
60Wの紫外線ランプから60cm離した位置で、パントエア・アナナティスAJ13355株に紫外線を2分間照射した後、LB培地で終夜培養して変異を固定した。変異処理した菌株を、5g/Lのグルコースと20g/Lの寒天を含むLB培地に、プレート当たり約100個程度のコロニーが出現するように希釈して撒き、プレートを約45°傾けて30℃で終夜培養を行い、粘液質が流れ落ちないようになったコロニーを20個選抜した。
選抜された株の中から、5g/Lのグルコースと20g/Lの寒天を含むLB培地で5回継代培養を行っても復帰変異株が出現せず、さらに、LB培地及び5g/Lのグルコースを含むLB培地ならびにM9培地(Sambrook,J.et al.,Molecular Cloning,2nd edition,Cold Spring Harbor press,U.S.A.(1989))に20g/LのL−グルタミン酸と2g/Lのグルコースを加え、pHを塩酸で4.5に調製した培地で親株と同等の生育を示すという条件を満たす菌株として、SC17株を選抜した。
〈4〉パントエア・アナナティスSC17株からのグルタミン酸生産菌の構築
(1)パントエア・アナナティスSC17株からのαKGDH欠損株の作製
パントエア・アナナティスSC17株から、αKGDHを欠損し、さらにL−グルタミン酸生合成系が強化された株を作製した。
(i)パントエア・アナナティスAJ13355株のαKGDH遺伝子(以後「sucAB」という)のクローニング
パントエア・アナナティスAJ13355株のsucAB遺伝子は、エシェリヒア・コリのαKGDH−E1サブユニット遺伝子(以後「sucA」という)欠損株の酢酸非資化性を相補するDNA断片を、パントエア・アナナティスAJ13355株染色体DNAより選択することによって、クローニングした。
パントエア・アナナティスAJ13355株の染色体DNAは、エシェリヒア・コリにおいて通常染色体DNAを抽出するのに使用されるのと同様の方法(生物工学実験書、日本生物工学会偏、97−98頁、培風館、1992年)で単離した。ベクターとして使用したpTWV228(アンピシリン耐性)は宝酒造社製の市販品を用いた。
AJ13355株の染色体DNAをEcoT221で消化したもの、およびpTWV228をPstIで消化したものをT4リガーゼにより連結し、sucA欠損のエシェリヒア・コリJRG465株(Herbert J.らMol.Gen.Genetics 1969,105巻、182頁)を形質転換した。こうして得た形質転換株より、酢酸最少培地にて増殖する株を選択し、これよりプラスミドを抽出してpTWVEK101と命名した。pTWVEK101を持つエシェリヒア・コリJRG465株は酢酸非資化性という形質の他にコハク酸もしくはL−リジンおよびL−メチオニンの要求性も回復していた。このことよりpTWVEK101にはパントエア・アナナティスのsucA遺伝子が含まれていると考えられる。
pTWVEK101のパントエア・アナナティス由来DNA断片の制限酵素地図を図1に示した。図1の斜線にて示した部分の塩基配列を決定した結果を配列番号1に示した。この配列の中には、2つの完全長のORFと、2つのORFの部分配列と思われる塩基配列が見いだされた。これらのORFまたはその部分配列がコードし得るアミノ酸配列を、5’側から順に配列番号2〜5に示す。これらのホモロジー検索をした結果、塩基配列を決定した部分は、サクシネートデヒドロゲナーゼアイロン−スルファープロテイン遺伝子(sdhB)の3’末端側の部分配列、完全長のsucAとαKGDH−E2サブユニット遺伝子(sucB)、サクシニルCoAシンセターゼβサブユニット遺伝子(sucC)の5’末端側の部分配列を含んでいることが明らかとなった。これらの塩基配列から推定されるアミノ酸配列をそれぞれエシェリヒア・コリのもの(Eur.J.Biochem.,141,351−359(1984)、Eur.J.Biochem.,141,361−374(1984)、Biochemistry,24,6245−6252(1985))と比較したところ、各アミノ酸配列は非常に高い相同性を示した。また、パントエア・アナナティス染色体上でもエシェリヒア・コリと同様に(Eur.J.Biochem.,141,351−359(1984)、Eur.J.Biochem.,141,361−374(1984)、Biochemistry,24,6245−6252(1985))、sdhB−sucA−sucB−sucCとクラスターを構成していることが判明した。
(ii)パントエア・アナナティスSC17株由来のαKGDH欠損株の取得
上記のようにして取得されたパントエア・アナナティスのsucAB遺伝子を用い、相同組換えによりパントエア・アナナティスのαKGDH欠損株の取得を行った。
pTWVEK101をSphIで切断してsucAを含む断片を切り出した後、クレノーフラグメント(宝酒造(株))で平滑末端化した断片を、EcoRIで切断しクレノーフラグメントで平滑末端化したpBR322(宝酒造(株))とを、T4DNAリガーゼ(宝酒造(株))を用いて結合した。得られたプラスミドを、sucAのほぼ中央部分に位置する制限酵素BglII認識部位で同酵素を用いて切断し、クレノーフラグメントで平滑末端化し、再びT4DNAリガーゼで結合した。以上の操作によって、新たに構築されたプラスミド中のsucAにはフレームシフト変異が導入され、同遺伝子は機能しなくなると考えられた。
上記のようにして構築されたプラスミドを制限酵素ApaLIで切断した後、アガロースゲル電気泳動を行い、フレームシフト変異が導入されたsucA及びpBR322由来のテトラサイクリン耐性遺伝子を含むDNA断片を回収した。回収したDNA断片を再びT4DNAリガーゼで結合し、αKGDH遺伝子破壊用プラスミドを構築した。
上記のようにして得られたαKGDH遺伝子破壊用プラスミドを用いて、パントエア・アナナティスSC17株を、エレクトロポレーション法(Miller J.H.,″A Short Course in Bacterial Genetics;Handbook″,Cold Spring Harbor Laboratory Press,U.S.A.,p.279,1992)によって形質転換し、テトラサイクリン耐性を指標にプラスミドが相同組換えによって染色体上のsucAが変異型に置換された菌株を取得した。取得された株をSC17sucA株と命名した。
SC17sucA株がαKGDH活性を欠損していることを確認するために、LB培地で対数増殖期まで培養した同株の菌体を用いて、Reedらの方法(L.J.Reed and B.B.Mukherjee,Methods in Enzymology 1969,13,p.55−61)に従って酵素活性を測定した。その結果、SC17株からは0.073(ΔABS/min/mgタンパク)のαKGDH活性が検出されたのに対し、SC17sucA株ではαKGDH活性を検出できず、目的通りsucAが欠損していることが確かめられた。
(2)パントエア・アナナティスSC17sucA株のL−グルタミン酸生合成系の強化
続いてSC17sucA株に、エシェリヒア・コリ由来のクエン酸シンターゼ遺伝子、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ遺伝子、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入した。
(i)エシェリヒア・コリ由来のgltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子を有するプラスミドの作製
gltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子を有するプラスミドの作成の手順を、図2、3に基づいて説明する。
エシェリヒア・コリ由来のgdhA遺伝子を有するプラスミドpBRGDH(特開平7−203980号)をHindIII、SphI消化し、T4DNAポリメラーゼ処理で両末端を平滑末端にした後、gdhA遺伝子を有するDNA断片を精製回収した。一方、エシェリヒア・コリ由来のgltA遺伝子およびppc遺伝子を有するプラスミドpMWCP(WO97/08294号)をXbaIで消化後、T4DNAポリメラーゼで両末端を平滑末端にした。これに、上で精製したgdhA遺伝子を有するDNA断片を混合後、T4リガーゼにより連結し、pMWCPに更にgdhA遺伝子を搭載したプラスミドpMWCPGを得た(図2)。
同時に、広宿主域プラスミドRSF1010の複製起点を有するプラスミドpVIC40(特開平8−047397号)をNotIで消化し、T4DNAポリメラーゼ処理した後、PstI消化したものと、pBR322をEcoT14I消化し、T4DNAポリメラーゼ処理した後、PstI消化したものとを混合後、T4リガーゼにより連結し、RSF1010の複製起点及びテトラサイクリン耐性遺伝子を有するプラスミドRSF−Tetを得た(図3)。
次に、pMWCPGをEcoRI、PstI消化し、gltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子を有するDNA断片を精製回収し、RSF−Tetを同様にEcoRI、PstI消化し、RSF1010の複製起点を有するDNA断片を精製回収したものと混合後、T4リガーゼにより連結し、RSF−Tet上にgltA遺伝子、ppc遺伝子、およびgdhA遺伝子を搭載したプラスミドRSFCPGを得た(図4)。得られたプラスミドRSFCPGがgltA遺伝子、ppc遺伝子およびgdhA遺伝子を発現していることは、エシェリヒア・コリのgltA遺伝子、ppc遺伝子、あるいはgdhA遺伝子欠損株の栄養要求性の相補と各酵素活性の測定によって確認した。
(ii)ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のgltA遺伝子を有するプラスミドの作製
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム由来のgltA遺伝子を有するプラスミドは、以下のようにして構築した。コリネバクテリウム・グルタミカムのgltA遺伝子の塩基配列(Microbiology,1994,140,1817−1828)をもとに、配列番号6及び7に示す塩基配列を有するプライマーDNAを用い、ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869の染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、約3kbのgltA遺伝子断片を得た。この断片をSmaI消化したプラスミドpHSG399(宝酒造(株)より購入)に挿入し、プラスミドpHSGCBを得た(図5)。次に、pHSGCBをHindIIIで切断し切り出された約3kbのgltA遺伝子断片をHindIII消化したプラスミドpSTV29(宝酒造(株)より購入)に挿入し、プラスミドpSTVCBを得た(図5)。得られたプラスミドpSTVCBがgltA遺伝子を発現していることは、パントエア・アナナティスAJ13355株中での酵素活性の測定によって確認した。
(iii)RSFCPG及びpSTVCBのSC17sucA株への導入
パントエア・アナナティスSC17sucA株を、RSFCPGを用いてエレクトロポレーション法にて形質転換し、テトラサイクリン耐性を示す形質転換体SC17sucA/RSFCPG株を取得した。さらにSC17sucA/RSFCPG株をpSTVCBを用いてエレクトロポレーション法にて形質転換し、クロラムフェニコール耐性を示す形質転換体
SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株を取得した。
〈4〉低pH環境下でL−グルタミン酸に対する耐性が向上した菌株の取得
パントエア・アナナティスSC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株から、低pH環境下で高濃度のL−グルタミン酸に対する耐性が向上した菌株(以下、「低pH下高濃度Glu耐性株」ともいう)の分離を行った。
SC17sucA/RSFCPG+pSTVCB株をLBG培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L、NaCl10g/L、グルコース5g/L)にて30℃一夜培養後、生理食塩水にて洗浄した菌体を適宜希釈して、M9−E培地(グルコース4g/L、NaHPO・12HO17g/L、KHPO3g/L、NaCl0.5g/L、NHCl1g/L、10mM MgSO、10μM CaCl、L−リジン50mg/L、L−メチオニン50mg/L、DL−ジアミノピメリン酸50mg/L、テトラサイクリン25mg/L、クロラムフェニコール25mg/L、L−グルタミン酸30g/L、アンモニア水にてpH4.5に調整)プレートに塗布した。32℃、2日間培養後出現したコロニーを低pH下高濃度Glu耐性株として取得した。
得られた株について、M9−E液体培地での増殖度の測定、及びL−グルタミン酸生産試験培地(グルコース40g/L、硫酸アンモニウム20g/L、硫酸マグネシウム七水塩0.5g/L、リン酸二水素カリウム2g/L、塩化ナトリウム0.5g/L、塩化カルシウム二水塩0.25g/L、硫酸第一鉄七水塩0.02g/L、硫酸マンガン四水塩0.02g/L、硫酸亜鉛二水塩0.72mg/L、硫酸銅五水塩0.64mg/L、塩化コバルト六水塩0.72mg/L、ホウ酸0.4mg/L、モリブデン酸ナトリウム二水塩1.2mg/L、酵母エキス2g/L、L−リジン塩酸塩200mg/L、L−メチオニン200mg/L、DL−α,ε−ジアミノピメリン酸200mg/L、テトラサイクリン塩酸塩25mg/L、クロラムフェニコール25mg/L)5mlを注入した50ml容大型試験管におけるL−グルタミン酸生産能の検定を実施し、増殖度が最もよく、L−グルタミン酸生産能が親株SC17/RSFCPG+pSTVCB株と変わらなかった株は、パントエア・アナナティスAJ13601と命名された。AJ13601株は、1999年8月18日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現名称、産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所)(郵便番号305−8566 日本国茨城県つくば市東一丁目1番3号)に受託番号FFRM P−17516として寄託され、2000年7月6日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−7207が付与されている。
パントエア・アナナティスAJ13601株を、パントテン酸カルシウムを含む(12mg/L)培地、及び含まない培地で培養し、L−グルタミン酸の生産性を調べた。
具体的には、次のようにして培養を行った。パントエア・アナナティスAJ13601株を、テトラサイクリン塩酸塩25mg/L、クロラムフェニコール25mg/Lを含有するLBG寒天培地(トリプトン10g/L、酵母エキス5g/L/、NaCl10g/L、寒天15g/L)にて30℃で14時間培養した菌体を1枚のプレートから掻き取り、以下に示す組成の種培養培地300mlを注入した1L容ジャーファメンターに植菌し、34℃、pH6.0の条件で種培養を行った。
〔種培養培地組成〕
シュークロース 50g/L
MgSO・7HO 0.4g/L
KHPO 2.0g/L
酵母エキス 4.0g/L
FeSO・7HO 0.01g/L
MnSO・5HO 0.01g/L
L−リジン塩酸塩 0.4g/L
DL−メチオニン 0.4g/L
ε−ジアミノピメリン酸 0.4g/L
テトラサイクリン塩酸塩 25mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
培養中のpHは、6.0となるようにアンモニアガスを添加することにより調整を行った。培地中の糖の枯渇を指標に種培養を終了し、本培養培地300mlを注入した1L容ジャーファメンターに、本培養培地体積の20%に当たる種培養液を植菌し、34℃、pH4.5で本培養を行った。本培養培地組成は以下に示す。
〔本培養培地組成〕
グルコース 50g/L
(NHSO 5.0g/L
MgSO・7HO 0.4g/L
KHPO 6.0g/L
NaCl 1.5g/L
FeSO・7HO 0.01g/L
MnSO・5HO 0.01g/L
L−リジン塩酸塩 0.8g/L
DL−メチオニン 0.6g/L
DL−α,ε−ジアミノピメリン酸 0.6g/L
テトラサイクリン塩酸塩 25mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
塩化カルシウム二水塩 0.75g/L
パントテン酸カルシウム 12mg/L(パントテン酸添加培養時のみ添加)
培養中のpHは、pH4.5となるようにアンモニアガスを添加することにより調整を行った。培地中の糖が消費され枯渇した後は、700g/Lのグルコース水溶液を連続的に添加した(5ml/hr)。培養液中のL−グルタミン酸濃度が45g/Lに達した段階でL−グルタミン酸結晶1.0g/Lを種晶として培地に添加し、培養液中のL−グルタミン酸の析出を促した。
本培養を50時間行った結果、ジャーファメンター内には著量のL−グルタミン酸結晶が析出した。その後、アンモニアガスを添加してpH6.0に上昇させ、ジャーファメンター内の全てのL−グルタミン酸結晶を溶解させた後、生成L−グルタミン酸量の測定を行った。L−グルタミン酸濃度は、旭化成社製Automatic enzyme electrode analyzer As210を用いて測定した。
その結果、表1に示す通り、L−グルタミン酸発酵収率は、パントテン酸を添加することにより大幅に向上した。
Figure 2004111258
パントテン酸カルシウム添加によるL−L−グルタミン酸収率の向上の原因を解析した結果、アセトイン、2,3−ブタンジオール、及びCOの生成の減少を確認した(表2)。尚、アセトイン及び2,3−ブタンジオール濃度は、島津社製ガスクロマトグラフィーGC1700を用いて、以下の条件で測定した。
〔使用カラム〕
J&Wサイエンティフィック社製 DB−210 123−0233
カラム長:30m、カラム径:0.32mm、Film厚:5μm
〔測定条件〕
気化室温度:250℃
キャリアガス:He
圧力:85.6kPa
全流量:97.2ml/min
カラム流量:0.93ml/min
線速度:25.0cm/sec
パージ流量:3.0ml/min
スプリット比:100
カラム温度:70℃
メイクアップガス:He
メイクアップ流量:30.0ml/min
流量:47ml/min
Air流量:400ml/min
また、排出CO量は、ABLE社製Exhaust oxygen carbon dioxide meter Model EX−1562を用いて測定した。アセトイン及び2,3−ブタンジオールの生成量、及びこれらの値から計算されるCOの生成量(それぞれ炭素量に換算した値)を表2に示す。また、培地から排出されたCOの測定値は、パントテン酸無添加の場合は26.5%、添加した場合は27.6%であった。
パントテン酸カルシウムを培地に添加した場合、無添加の場合と比較してアセトイン、2,3−ブタンジオール、及びこれらの物質の副生に伴い発生するCO(アセトイン、2,3−ブタンジオール1モルに対し2モルのCOが生成する)が、炭素収支にして併せて約14.3%減少した。この値はパントテン酸カルシウムの添加の有無によるL−グルタミン酸発酵の収率差約13.1%とほぼ等しいことから、パントテン酸カルシウム添加による収率向上効果は、アセトイン及び2,3−ブタンジオール副生の減少が主原因と考えられる。
Figure 2004111258
以上のことから、パントテン酸添加によるL−グルタミン酸発酵収率向上のプロセスを、次のように推測した。すなわち、L−グルタミン酸発酵収率が向上したのは、パントテン酸添加により補酵素A(CoA)の不足を補うことができたためと考えられる。パントテン酸はCoAの構造の中にパンテテインの形で含まれていており、CoAの構成要素の一つである。CoAは、代謝経路においてピルビン酸からアセチルCoAへと進む過程で補酵素として用いられている。他方、アセトイン及び2,3−ブタンジオールはピルビン酸から生成し、アセトインの生成に伴いCOが排出される。前記L−グルタミン酸生産菌の培養に用いた培地にパントテン酸を加えない場合は、アセトイン及び2,3−ブタンジオールが培地に蓄積したことから、前記細菌ではもともとCoAが不足しており、十分なアセチルCoAが生成せず、アセトイン及び2,3−ブタンジオールが副成したと考えられる。
一方、パントテン酸添加によりCoAが十分量供給されると、CoA不足により律速となっていたピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の反応(ピルビン酸→アセチルCoA)が促進され、TCAサイクルへの炭素の流入が進む。その結果、α−ケトグルタル酸(αKG)を介してL−グルタミン酸生成が進むと考えられる。さらに、アセトイン及び2,3−ブタンジオールの生成が減少すると、ピルビン酸からこれらの物質が生成する際に排出されるCOもまた減少するため(アセトイン、2,3−ブタンジオール1モルに対しCO2モル)、その減少分もまたL−グルタミン酸収率向上に関与したと考えられる(図6)。
上記のプロセスから、パントテン酸に代えて、又はパントテン酸とともに、D−パント酸、β−アラニン、D−パンテテイン等の成分を添加すると、同等又はそれ以上の収率向上効果が得られると考えられる。
培地に添加するパントテン酸カルシウム濃度を、0mg/Lから196mg/Lまで変化させ、パントテン酸カルシウム濃度がL−グルタミン酸発酵収率に及ぼす影響を測定した。培養は、実施例1と同様に行い、パントテン酸カルシウム濃度を0,1,2,4,8,12,24,48,96,192mg/Lとそれぞれ変化させて培養を行った。その結果を図7に示した。この結果から確認されるように、パントテン酸カルシウム濃度に依存してL−グルタミン酸発酵収率が向上した。特にパントテン酸カルシウムを1mg/L添加した場合においても無添加(0mg/L)と比較して約5%収率が向上した。添加パントテン酸カルシウム濃度が12mg/Lに達するまでは、添加濃度に応じて収率向上効果が得られていることから、1mg/L以下においても収率向上効果が得られると考えられる。
パントテン酸カルシウムをパントテン酸ナトリウムに置き換えて添加し、本培養を行った。培養条件は実施例1と同様に行った。パントテン酸ナトリウム濃度はパントテン酸カルシウム12mg/L添加時のパントテン酸のモル数と等量になるように、12.15mg/L添加した。結果を表3に示す。
その結果、L−グルタミン酸発酵収率は、パントテン酸カルシウム及びパントテン酸ナトリウムのそれぞれで同等であった。従って、収率向上要因は、パントテン酸のカウンターイオンではなくパントテン酸そのものであることが明らかとなった。
Figure 2004111258
産業上の利用の可能性
本発明により、パントエア属細菌等の細菌を用いて、従来技術よりもさらに効率的にL−グルタミン酸を生産することができる。

Claims (4)

  1. 特定のpHにおいて飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を超える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力を有する微生物を、pHがL−グルタミン酸が析出する条件に調整され、かつ、パントテン酸を含む培地に培養し、該培地中にL−グルタミン酸を析出させながら生成蓄積させることを特徴とする発酵法によるL−グルタミン酸の製造法。
  2. 前記微生物がパントエア属に属することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 前記微生物がパントエア・アナナティスである請求項2に記載の方法。
  4. 培地中のパントテン酸がパントテン酸塩であり、同塩の濃度が1mg/L以上である請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
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