JP2006129840A - L−グルタミン酸の製造法 - Google Patents

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裕 泉井
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Abstract

【課題】 L−グルタミン酸の発酵生産の効率を向上させる。
【解決手段】 L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、NADHにより阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を導入したγ−プロテオバクテリアを培地中で培養し、該培地中または菌体内にL―グルタミン酸を生成蓄積させ、同培地中又は菌体内からL−グルタミン酸を回収することにより、L−グルタミン酸を製造する。
【選択図】 なし

Description

本発明は、L−グルタミン酸の製造法に関する。L−グルタミン酸は調味料原料等として広く用いられている。
L−グルタミン酸は、主としてブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属、ミクロバクテリウム属に属するいわゆるコリネ型L−グルタミン酸生産菌またはそれらの変異株を用いた発酵法により製造されている。また、バチルス属、ストレプトミセス属、ペニシリウム属、シュードモナス属、アースロバクター属、セラチア属、キャンディダ属、セラチア属に属する微生物、アエロバクター・アエロゲネス(現エンテロバクター・アエロゲネス)、及びエシェリヒア・コリの変異株を用いる方法等が知られている。また、本発明者らは、クレブシエラ属、エルビニア属又はパントエア属に属する微生物を用いたL−グルタミン酸の製造法(特許文献1)、及びエンテロバクター属細菌を用いたL−グルタミン酸の製造法(特許文献2)を提案している。
また、組換えDNA技術によりL−グルタミン酸の生合成酵素の活性を増強することによって、L−グルタミン酸の生産能を増加させる種々の技術が開示されている。例えば、コリネバクテリウム属またはブレビバクテリウム属細菌において、エシェリヒア・コリ又はコリネバクテリウム・グルタミカム由来のクエン酸シンターゼをコードする遺伝子の導入が、L−グルタミン酸生産能の増強に効果的であったことが報告されている(特許文献3)。また、コリネバクテリウム属細菌由来のグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を含む組換え体DNAを保有した微生物(特許文献4)を用いたL−グルタミン酸製造方法や、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子、アコニット酸ヒドラターゼ遺伝子、及びクエン酸シンターゼ遺伝子を増幅することによって、L−グルタミン酸の生産能を増加させる技術(特許文献5)が開示されている。
これまでに発明者らは、コリネ型細菌由来のクエン酸シンターゼ遺伝子を導入したエンテロバクター属のL−グルタミン酸生産菌(特許文献6)またエシェリヒア属細菌のクエン酸シンターゼ遺伝子とグルタミン酸デヒドロゲナーゼ、及びフォスフォエノールピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子を導入したエンテロバクター属あるいはセラチア属のL−グルタミン酸生産菌の開発を行ってきた。
上記のような微生物の育種や製造法の改良により、L−グルタミン酸の生産性はかなり高まってはいるが、今後の需要の一層の増大に応えるためには、さらに安価かつ効率的な
L−グルタミン酸生産能を有する菌株の開発が望まれていた。
L-グルタミン酸の製造においては、NADHが過剰になることが多く、副生物として2−オキソグルタル酸が副生することが多い。
しかし、エシェリヒア属細菌等の腸内細菌由来のクエン酸シンターゼは、NADH、2−オキソグルタル酸に阻害を受け、活性が低下する。(非特許文献1、2)従って、L−グルタミン酸発酵時のクエン酸シンターゼ活性は、培養中に生成するNADH、2−オキソグルタル酸により阻害を受けることにより、L-グルタミン酸の生産は途中で頭打ちになり、クエン酸シンターゼの活性は充分ではなかった。従って、NADH、2−オキソグルタル酸に阻害を受けないクエン酸シンターゼを増幅した菌株を用いたL-グルタミン酸生産菌の開発が求められていた。
これまでにエシェリヒア・コリ由来のクエン酸シンターゼの207番目のCys残基をSerに変換したクエン酸シンターゼタンパク質は、NADHに対する阻害が緩和されることが明らかになっている。(非特許文献3)
しかし、上記タンパク質をコードする遺伝子を導入した菌株を用いたL-グルタミン酸の製造法は知られていなかった。
米国特許第6,197,559号明細書 米国特許第6,331,419号明細書 特公平7−121228号公報 特開昭61−268185号公報 特開昭63−214189号公報 特開2000−189175号公報 Biochem.J., 101, 44c, (1966)、 Biochem.Biophys.Res.Commun., 29, 34, (1967) J.Biol.Chem., vol.266, No.31(5), 20709-20713, (1991))
本発明は、L−グルタミン酸を効率よく生産することのできる菌株を提供すること、及び該菌株を用いてL−グルタミン酸を効率よく生産する方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、L-グルタミン酸を有するパントエア属細菌にエシェリヒア属細菌由来の207番目のCys残基をSerに変換したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を導入することにより、L−グルタミン酸の発酵収率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下のとおりである。
(1) L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、NADHに阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子をを保有することによって、L-グルタミン酸生産能が向上することを特徴とするγ−プロテオバクテリア。
(2) 前記クエン酸シンターゼが 下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子である(1)に記載のγ―プロテオバクテリア
(A)配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、
又は
(B)配列番号11に記載のアミノ酸配列において207番目のSer残基を有し、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、NADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質。
(3)前記数個が2〜20個である、(2)に記載のγ―プロテオバクテリア。
(4)下記(a)又は(b)に示すDNAである(1)記載のγ―プロテオバクテリア。
(a)配列番号10に記載の塩基配列を含むDNA
又は
(b)配列番号10に記載の塩基配列又は同塩基配列から調整され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ、NADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
(5)NADHに阻害を受けないような変異を染色体上のクエン酸シンターゼ遺伝子のコード領域内に導入したことを特徴とする(1)〜(4)に記載のγ―プロテオバクテリア。
(6)前記NADHに阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は該遺伝子の発現調節配列を改変することにより遺伝子の発現が増強されたことを特徴とする(5)に記載のγ―プロテオバクテリア。
(7)パントエア属、エンテロバクター属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属より成る群から選択される微生物である(1)〜(6)に記載のγ―プロテオバクテリア。
(8)pH3〜5において飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地でL−グルタミン酸の飽和濃度を越える量のL−グルタミン酸を培地中に蓄積する能力を有する(1)〜(7)に記載のγ−プロテオバクテリア。
(9)(1)〜(8)に記載のγ―プロテオバクテリアを培地中で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。
本発明のγ―プロテオバクテリアを用いることにより、L−グルタミン酸を効率よく発酵生産することができる。また、本発明の遺伝子はL−グルタミン酸生産菌の育種に好適に使用することができる。
<1>本発明のγ―プロテオバクテリア
本発明のγ―プロテオバクテリアは、L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、NADHにより阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を導入することによって、L-グルタミン酸生産能が向上することを特徴とすることを特徴とするγ−プロテオバクテリアである。「L−グルタミン酸生産能」とは、本発明のγ―プロテオバクテリアを培地中で培養したときに、L−グルタミン酸を細胞又は培地から回収できる程度に、細胞又は培地中に生成、蓄積する能力をいう。L−グルタミン酸生産能を有する微生物としては、本来的にL−グルタミン酸生産能を有するものであってもよいが、以下に示すような微生物を、変異法や組換えDNA技術を利用してL−グルタミン酸生産能を有するように改変したものや、本発明の遺伝子を導入することによってL−グルタミン酸生産能が付与されたγ-プロテオバクテリアであってもよい。
本発明のγ―プロテオバクテリアは、親株にNADHに阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を導入することによって、L-グルタミン酸生産能が向上することを特徴とするγ―プロテオバクテリアである。遺伝子の導入に関しては、染色体上のクエン酸シンターゼをコードする遺伝子を改変してもよいし、プラスミド上でクエン酸シンターゼを有する遺伝子を増幅してもよい。
改変に用いるγ―プロテオバクテリアの親株としては、エシェリヒア属(Escherichia)パントエア(Pantoea)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属細菌を用いることが望ましく、中でもエンテロバクター属細菌、パントエア属細菌を用いることが望ましい。
エンテロバクター属細菌としては、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)等、パントエア属細菌としてはパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)が挙げられる。尚、近年、エンテロバクター・アグロメランスは、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)アグロメランス等に再分類されているものがある。パントエア・アナナティスを遺伝子工学的手法を用いて育種する場合には、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP−6614)、AJ13356株(FERM BP−6615)、AJ13601株(FERM BP−7207)及びそれらの誘導体を用いることができる。これらの株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランスと同定され、エンテロバクター・アグロメランスとして寄託されたが、上記のとおり、16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティスに再分類されている。
上述したようなγ―プロテオバクテリアにL−グルタミン酸生産能を付与するための改変の方法としては、例えば、L−グルタミン酸生合成に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が増強するように改変する方法を挙げることができる。L−グルタミン酸生合成に関与する酵素としては、例えば、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(以下、「GDH」ともいう)、グルタミンシンテターゼ、グルタミン酸シンターゼ、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ、アコニット酸ヒドラターゼ、クエン酸シンターゼ(以下、「CS」ともいう)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ(以下、「PEPC」ともいう)、ピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸キナーゼ、ホスホエノールピルビン酸シンターゼ、エノラーゼ、ホスホグリセルムターゼ、ホスホグリセリン酸キナーゼ、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、フルトースビスリン酸アルドラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼなどをが挙げられる。これらの酵素の中では、CS、PEPCおよびGDHのいずれか1種以上が好ましく、3種全てがより好ましい。またCSに関しては本発明のNADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼを使用するのが望ましい。
以上のような方法によりクエン酸シンターゼ遺伝子、フォスフォエノールピルベートカルボキシラーゼ遺伝子、及び/又はグルタミン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子の発現が増強するように改変された微生物としては、特開平2001-333769号公報、特開2000-106869号公報、特開2000-189169号公報に記載された微生物が例示できる。
L−グルタミン酸生産能を付与するための改変は、L−グルタミン酸の生合成経路から分岐して他の化合物を生成する反応を触媒する酵素の活性を低下または欠損させることにより行ってもよい。L−グルタミン酸の生合成経路から分岐してL−グルタミン酸以外の化合物を生成する反応を触媒する酵素としては、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ、イソクエン酸リアーゼ、リン酸アセチルトランスフェラーゼ、酢酸キナーゼ、アセトヒドロキシ酸シンターゼ、アセト乳酸シンターゼ、ギ酸アセチルトランスフェラーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、1−ピロリンデヒドロゲナーゼなどが挙げられる。この中では特に、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を低下又は欠損させることが好ましい。
上記のような酵素の活性を低下または欠損させるには、通常の変異処理法によって、あるいは遺伝子工学的手法によって、上記酵素の遺伝子に、細胞中の当該酵素の活性が低下または欠損するような変異を導入すればよい。変異処理法としては、たとえばX線や紫外線を照射する方法、またはN−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン等の変異剤で処理する方法等がある。遺伝子に変異が導入される部位は、酵素タンパク質をコードするコード領域であってもよく、プロモーター等の発現制御領域であってもよい。また、遺伝子工学的手法には、例えば遺伝子組換え法、形質導入法、細胞融合法等を用いる方法がある。
細胞中の目的酵素の活性が低下または欠損していること、および活性の低下の程度は、候補株の菌体抽出液または精製画分の酵素活性を測定し、野生株と比較することによって確認することができる。例えば、2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性は、Reedらの方法(L.J.Reed and B.B.Mukherjee, Methods in Enzymology 1969, 13, p.55-61)に従って測定することができる。
γ―プロテオバクテリアにおいて2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性を欠損もしくは低下させる方法は、特開2000-106869号公報、2000-189169号公報に記載されている。2−オキソグルタル酸デヒドロゲナーゼ活性が欠損もしくは低下したγ―プロテオバクテリアとしては、具体的には、
パントエア・アナナティス AJ13601 (FERM BP-7207)
クレブシエラ・プランティコーラ AJ13410株(FERM BP-6617)
パントエア・アナナティス AJ13355 (FERM BP-6614)
等が挙げられる。
本発明の「クエン酸シンターゼ」とは、NADHに対して阻害を受けないよう改変されたクエン酸シンターゼであり、「クエン酸シンターゼをコードする遺伝子の発現が増強した」ことは、NADHの阻害を受けないように改変されたクエン酸シンターゼ活性が上昇していることをいう。クエン酸シンターゼ活性は、Biochem., Vol.8, No.11, 4497に記載の方法で測定出来る。また本発明において、「NADHに阻害を受けない」とは、培地中に存在するNADHによって、gltAがコードするクエン酸シンターゼ活性が低下しないことを意味し、上記記載の方法でNADH存在下で活性を測定したときに、0.2mMのNADH添加下で活性が70%以上、望ましくは80%以上、さらに望ましくは90%以上残存していることを意味する。
本発明のγ―プロテオバクテリアは、上述したようなL−グルタミン酸生産能を有するγ―プロテオバクテリアをNADHに阻害を受けないように改変されたクエン酸シンターゼをコードするgltA遺伝子を染色体上に導入するか、プラスミドに増幅することによって達成出来る。ただし、先にgltA遺伝子の発現が増強するように改変を行った後に、L−グルタミン酸生産能を付与してもよい。また、NADHに阻害を受けないように改変されたクエン酸シンターゼをコードするgltA遺伝子の増幅により、L−グルタミン酸生産能が付与されたγ―プロテオバクテリアでもよい。
本発明による「gltA遺伝子」とは、本発明のクエン酸シンターゼをコードする遺伝子(以下gltA)は、本来NADHに阻害を受ける遺伝子をNADHに阻害を受けないように改変したものであり、γ―プロテオバクテリア、特にエシェリヒア属細菌のgltA遺伝子、及びそのホモログ由来の遺伝子を意味する。エシェリヒア・コリのgltA遺伝子としては、配列番号11に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子を例示することができる。配列番号11に示す遺伝子は、配列番号9に示す野生型タンパク質の207番目の残基をCys残基からSer残基に変換したものである。
gltA遺伝子は、上記で例示された遺伝子との相同性に基づいて、パントエア属、エンテロバクター属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属、エルシニア属等のγ―プロテオバクテリアからクローニングされる遺伝子の上記207番目のCysに該当する残基をSerに置換したものでもよい。
上記Cys残基からSer残基への変異は、野生型gltA遺伝子に部位特異的変異法(kramer,W.and Frits,H.J.,Methods in Enzymology,154,350(1987))によって変異を導入することが出来る。即ち、野生型gltA遺伝子では配列番号9に示すアミノ酸配列において、207番目のコドンはCys残基をコードしているが、これをSerをコードするコドンに置換すればよい。例えば、Cys残基を塩基をtcc,tct,tca,tcgに変換することによって取得出来る。またこれらの変異は突然変異処理を用いて取得してもよい。突然変異処理は、紫外線照射またはN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)もしくは亜硝酸等の通常人工変異処理に用いられている変異剤によって処理する方法が挙げられる。
gltA遺伝子は、コードされるタンパク質の活性、すなわち、NADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性が損なわれない限り、配列番号11のアミノ酸配列において、207番目のSer残基を有し、かつ、1若しくは数個の位置で1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入または付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするものであってもよい。ここで、数個とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構造における位置や種類によっても異なるが、好ましくは2〜20個、より好ましくは2〜10個、特に好ましくは2〜5個である。さらに、gltA遺伝子は、配列番号10の遺伝子配列全体に対して、70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有し、かつ、NADHによって阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質をコードするものであってもよい。
本発明のgltA遺伝子は、さらに、配列番号10 の塩基番号からなる塩基配列を有するDNAまたはこれらの塩基配列を有するDNAから調製され得るプローブと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNAであってもよい。
ここでいう「ストリンジェントな条件」とはいわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいう。この条件を明確に数値化することは困難であるが、一例を示せば、相同性が高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80%以上、より好ましく90%以上、特に好ましくは95%以上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイズし、それより相同性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条件、あるいは、通常のサザンハイブリダイゼーションの洗いの条件である60℃、1×SSC, 0.1%SDS、好ましくは0.1×SSC, 0.1%SDSに相当する塩濃度でハイブリダイズする条件が挙げられる。
プローブは、gltA遺伝子の一部の配列を有するものであってもよい。そのようなプローブは、当業者によく知られた方法により、各遺伝子の塩基配列に基づいて作製したオリゴヌクレオチドをプライマーとし、各遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCR反応により作製することができる。なお、プローブに300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には、上記の条件でハイブリダイズさせた後の洗いの条件としては、50℃、2×SSC, 0.1%SDSが挙げられる。
本発明のgltA遺伝子をγ―プロテオバクテリアに導入する方法について説明する。
1つ目の方法は、上記方法により、Cys残基をコードする塩基をSer残基をコードする塩基に置換した遺伝子を適当なプラスミド上にクローニングし、得られたプラスミドを用いてγ―プロテオバクテリアを形質転換することにより、該遺伝子のコピー数を高める方法である。
形質転換に用いるプラスミドは、γ―プロテオバクテリアに属する微生物の中で自律複製可能なプラスミドが挙げられ、pUC19、pUC18、pBR322、RSF1010、pHSG299、pHSG298、pHSG399、pHSG398、pSTV28、pSTV29(pHSG、pSTVはタカラバイオ社より入手可)、pMW119、pMW118、pMW219、pMW218(pMWはニッポンジーン社より入手可)等が利用出来る。なお、プラスミドの代わりにファージDNAをベクターとして用いてもよい。
形質転換法としては、例えば、エシェリヒア・コリ K−12について報告されているような、受容菌細胞を塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel,M.and Higa,A.,J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))、バチルス・ズブチリスについて報告されているような増殖段階の細胞からコンピテントセルを調製してDNAを導入する方法( Duncan,C.H.,Wilson,G.A.and Young,F.E., Gene, 1, 153 (1977))などが挙げられる。あるいは、バチルス・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知られているような、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたはスフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法( Chang,S.and Choen,S.N.,Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979);Bibb,M.J.,Ward,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature, 274, 398 (1978);Hinnen,A.,Hicks,J.B.and Fink,G.R.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 1929 (1978))も応用できる。また、電気パルス法(特開平2-207791号公報)によっても、微生物の形質転換を行うこともできる。
遺伝子のコピー数を高めることは、目的遺伝子を微生物の染色体DNA上に多コピー導入することによっても達成できる。微生物の染色体DNA上に遺伝子を多コピーで導入するには、染色体DNA上に多コピー存在する配列を標的に利用して、相同組換え法(Experimentsin Molecular Genetics, Cold Spring Harbor Lab. (1972))により行うことができる。染色体DNA上に多コピー存在する配列としては、レペティティブDNA、転移因子の端部に存在するインバーテッド・リピートが利用できる。あるいは、特開平2-109985号公報に開示されているように、目的遺伝子をトランスポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DNA上に多コピー導入することも可能である。さらに、Muファージを用いる方法(特開平2-109985号公報)で宿主染色体に目的遺伝子を組み込むこともできる。
2つ目の方法は、染色体上の野生型のgltA遺伝子を部位特異的変異法によって、NADHに阻害を受けないように改変されたgltA遺伝子に置き換える方法である。このような遺伝子置換は、Molecular Cloningに記載されているoverlap extention 方法等により、変異型のgltA遺伝子を作成し、相同組換えによって、染色体上に導入することによって達成出来る。
3つ目の方法は、染色体DNA上またはプラスミド上において、目的遺伝子のプロモーター等の発現調節配列を強力なものに置換することによって目的遺伝子の発現を増強させる方法である。例えば、lacプロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター等が強力なプロモーターとして知られている。また、WO00/18935号国際公開パンフレットに開示されているように、遺伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強力なものに改変することも可能である。発現調節配列の置換は、例えば、温度感受性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様にして行うことができる。本発明のγ―プロテオバクテリアに用いることが出来る、温度感受性複製起点を有するベクターとしては、例えばWO 99/03988号国際公開パンフレットに記載のプラスミドpMAN997等が挙げられる。また、λファージのレッド・リコンビナーゼ(Red recombinase)を利用した方法(Datsenko, K.A., PNAS (2000) 97(12), 6640-6645)によっても、発現調節配列の置換を行うことができる。なお、発現調節配列の改変は、上述したような遺伝子のコピー数を高める方法、染色体上に変異を導入する方法と組み合わせてもよい。
本発明のγ―プロテオバクテリアは、酸性条件下で培養したときに液体培地中にL−グルタミン酸の飽和濃度を越える量のL−グルタミン酸を蓄積する能力(以下、酸性条件下でのL−グルタミン酸蓄積能ということがある)を有する微生物であってもよい。このような微生物は、本発明の変異型gltA遺伝子の発現が増強することによって、酸性条件下でのL−グルタミン酸蓄積能を有するようになったものであってもよいし、本来的に酸性条件下でのL−グルタミン酸蓄積能を有するものであってもよい。
本来的に酸性条件下でのL−グルタミン酸蓄積能を有する微生物として具体的には、パントエア・アナナティスAJ13355株(FERM BP−6614)、AJ13356株(FERM BP−6615)、及びAJ13601株(FERM BP-7207)(以上、特開2001−333769号公報参照)などが挙げられる。パントエア・アナナティスAJ13355は、平成10年2月19日に、通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現名称、産業技術総合研究所生命工学工業技術研究所)に、受託番号FERM P−16644として寄託され、平成11年1月11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−6614が付与されている。尚、同株は、分離された当時はエンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)と同定され、エンテロバクター・アグロメランスAJ13355として寄託されたが、近年16S rRNAの塩基配列解析などにより、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)に再分類されている(後記実施例参照)。また、AJ13355から誘導された菌株AJ13356、及びAJ13601も、同様にエンテロバクター・アグロメランスとして前記寄託機関に寄託されているが、本明細書ではパントエア・アナナティスと記述する。AJ13601は、1999年8月18日に経済産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号)に受託番号FERMP17156として寄託され、2000年7月6日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-7207が付与されている。
<2>本発明のL−グルタミン酸の製造方法
本発明の微生物を培地に培養し、培地中にL−グルタミン酸を生成蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することにより、L−グルタミン酸を製造することが出来る。
培養に用いる培地は、炭素源、窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン等の有機微量栄養素を含有する通常の培地を用いることができる。合成培地または天然培地のいずれも使用可能である。培地に使用される炭素源および窒素源は培養する菌株が利用可能であるものならばいずれの種類を用いてもよい。
炭素源としては、グルコース、グリセロール、フラクトース、スクロース、マルトース、マンノース、ガラクトース、澱粉加水分解物、糖蜜等の糖類が使用でき、その他、酢酸、クエン酸等の有機酸、エタノール等のアルコール類も単独あるいは他の炭素源と併用して用いることができる。窒素源としては、アンモニア、硫酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、りん酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等のアンモニウム塩または硝酸塩等が使用することができる。有機微量栄養素としては、アミノ酸、ビタミン、脂肪酸、核酸、更にこれらのものを含有するペプトン、カザミノ酸、酵母エキス、大豆たん白分解物等が使用でき、生育にアミノ酸などを要求する栄養要求性変異株を使用する場合には要求される栄養素を補添することが好ましい。無機塩類としてはりん酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等が使用できる。
培養は、好ましくは、発酵温度20〜45℃、pHを3〜9に制御し、通気培養を行う。培養中にpHが下がる場合には、例えば、炭酸カルシウムを加えるか、アンモニアガス等のアルカリで中和する。このような条件下で、好ましくは10時間〜120時間程度培養することにより、培養液中に著量のL−グルタミン酸が蓄積される。
また、L−グルタミン酸が析出するような条件に調整された液体培地を用いて、培地中にL−グルタミン酸を析出させながら培養を行うことも出来る。L−グルタミン酸が析出する条件としては、例えば、pH5.0〜4.0、好ましくはpH4.5〜4.0、さらに好ましくはpH4.3〜4.0、特に好ましくはpH4.0を挙げることができる。
培養終了後の培養液からL−グルタミン酸を採取する方法は、公知の回収方法に従って行えばよい。例えば、培養液から菌体を除去した後に濃縮晶析する方法あるいはイオン交換クロマトグラフィー等によって採取される。L−グルタミン酸が析出するような条件下で培養した場合、培養液中に析出したL−グルタミン酸は、遠心分離又は濾過等により採取することができる。この場合、培地中に溶解しているL−グルタミン酸を晶析した後に、併せて単離してもよい。

[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
<1−1>変異型gltA遺伝子の作成
NADHに対して阻害を受けないクエン酸シンターゼをコードする変異型gltA断片は「Molecular Cloning third edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York, 2001年))記載の「Overlap Extension」の手法に準じて行った。また、PCRプライマーの設計はGenBank accession No. AE000175(配列番号8)に記載の塩基配列に従った。すなわち1回目のPCRにはプライマーとしてはオリゴヌクレオチドGLTES1(配列番号1)とGLTEASE1(配列番号2)の組合せ、オリゴヌクレオチドGLTESSE1(配列番号3)とGLTEA1(配列番号4)の組合せでそれぞれPCRを行った。鋳型DNAとしてはエシェリヒア・コリW3110株(国立遺伝研究所より分譲)の染色体DNAを用い、宝酒造製のLA-Taqポリメラーゼを用いてその標準条件にてDNA断片の増幅を行った。続いて、2回目のPCRを行った。1回目のPCRにて増幅した2種のDNA断片を等量加えたものを鋳型DNAとし、PCRプライマーとしてオリゴヌクレオチドGLTES2(配列番号5)とGLTEA2(配列番号6)を用い、宝酒造製のLA-Taqポリメラーゼを用いてその標準条件にて変異型gltAを含むDNA断片の増幅を行った。
増幅したDNA断片をPromega社製のプラスミドベクターpGEM-Teasyに連結し、変異型gltA遺伝子を搭載したプラスミドpGEMgltAMを作成した。さらに、プラスミドpGEMgltAMを制限酵素SmaIとHindIIIにて処理し、宝酒造製のpSTV28の同サイトに挿入することで、pSTVgltAMを作成した。
プラスミドpSTVgltAMにおける変異導入を確認するために、Applied Biosystems社製の蛍光DNAシーケンサーABI310により塩基配列の確認を行った。PCRプライマーとしてオリゴヌクレオチドGLTEB3(配列番号7)を用い、Applied Biosystems社製DNAシーケンシングキットBigDyeTerminater ver2.0を用いた。その結果、開始コドンから数えて619塩基目のgがcに目的通りに置換されていることを確認した。なお、この変異によって予想されるアミノ酸配列の変化は、N末端のMetから数えて207番目のシステイン残基がセリンへと置換するものである。
一方、実験の対象として野生型のgltA断片のクローニングを同時に行った。PCRプライマーとしてオリゴヌクレオチドGLTES2(配列番号5)とGLTEA2(配列番号6)を用い、鋳型DNAとしてはE.coli W3110株のクロモゾームDNAを用い、宝酒造製のLA-Taqポリメラーゼを用いてその標準条件にてDNA断片の増幅を行った。増幅したDNA断片をPromega社製のプラスミドベクターpGEM-Teasyに連結し、野生型gltA遺伝子を搭載したプラスミドpGEMgltAWを作成した。さらに、プラスミドpGEMgltAWを制限酵素SmaIとHindIIIにて処理し、宝酒造製のpSTV28の同サイトに挿入することで、pSTVgltAWを作成した。

<1−2>変異型gltA遺伝子導入株のグルタミン酸生産菌への導入
パントエア・アナナティスAJ13601株を親株として、変異型gltA遺伝子の導入効果を検証する菌株の構築を行った。なお、パントエア・アナナティスAJ13601株は1999年8月18日に経済産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(郵便番号305−8566 茨城県つくば市東1丁目1番3号)に受託番号FERMP17156として寄託され、2000年7月6日にブタペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP-7207が付与されている。
パントエア・アナナティスAJ13601株にはコリネ型細菌由来のクエン酸シンターゼの遺伝子を搭載したプラスミドpSTVCBが既に導入されている(特開2001-333769)。そこで、pSTVCBを脱落した菌株の取得を行った。具体的には、pSTVCBにはクロラムフェニコール耐性遺伝子が搭載されているため、クロラムフェニコール耐性の消失を指標に目的株を取得し、パントエア・アナナティスG106S株と命名した。
続いてG106S株をプラスミドpSTVgltAWもしくはpSTVgltAMにてエレクトロポレーション法にて形質転換を行い、それぞれパントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAW株、パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAM株を取得した。

<1−3> <変異型gltA遺伝子増幅のL−グルタミン酸生産の効果>
パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAW株、パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAM株を下記に示す組成の培地300mLを注入した1L溶のジャーファーメンターに植菌し、34℃、pH6.0にて15時間培養を行った。培養pHの制御は培地にアンモニアガスを注入することによって行った。その結果、パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAW株では21g/Lのグルタミン酸蓄積が得られたのに対し、パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAM株では24g/Lのグルタミン酸蓄積が得られ、変異型クエン酸シンターゼ遺伝子を導入することによりグルタミン酸生産量の向上が確認された。

〔培養培地組成〕
シュークロース 50g/L
MgSO4・7H20 0.4g/L
(NH4)2SO4 4.0g/L
KH2PO4 2.0g/L
酵母エキス 4.0g/L
FeSO4・7H20 0.01g/L
MnSO4・5H20 0.01g/L
L−リジン塩酸塩 0.4g/L
DL-メチオニン 0.4g/L
ε−ジアミノピメリン酸 0.4g/L
テトラサイクリン塩酸塩 25mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L
続いて、以上のようにして得られた培養液60mLを加えることで下記に示す組成となるように調整した培地300mLを注入した1L溶のジャーファーメンターに植菌し、34℃、pH4.5にて32時間培養を行った。培養pHの制御は培地にアンモニアガスを注入することによって行った。また、最初に加えたグルコースの枯渇に伴い700g/Lのグルコース溶液を連続的に添加した。
以上のようにして得られた培養液中のグルタミン酸生産量を表1に示す。なお、パントエア・アナナティスG106S/pSTVgltAM株を用いた培養ではグルタミン酸の結晶の析出が観察されたため、培養終了後に培養液にアンモニアガスを注入しpH6.0に調整することにより結晶グルタミン酸をすべて溶解して測定した。その結果、パントエア・アナナティスpSTVgltAW株では30.8/LのL-グルタミン酸蓄積が得られたのに対し、一方、パントエア・アナナティスG106S/ pSTVprpC株では100.8g/LのL-グルタミン酸蓄積が得られ、野生型gltA遺伝子を導入したときよりさらに高いL-グルタミン酸生産量の向上が確認された。

〔培養培地組成〕
グルコース 50g/L
MgSO4・7H20 0.4g/L
(NH4)2SO4 5.0g/L
KH2PO4 6.0g/L
酵母エキス 6.0g/L
FeSO4・7H20 0.02g/L
MnSO4・5H20 0.02g/L
L−リジン塩酸塩 0.6g/L
DL-メチオニン 0.6g/L
ε−ジアミノピメリン酸 0.6g/L
CaCl2 0.75g/L
テトラサイクリン塩酸塩 25mg/L
クロラムフェニコール 25mg/L

Figure 2006129840
本発明のγ―プロテオバクテリアを用いることにより、L−グルタミン酸の生産効率を向上させることが出来る。

Claims (9)

  1. L−グルタミン酸生産能を有し、かつ、NADHに阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子をを保有することによって、L-グルタミン酸生産能が向上することを特徴とするγ−プロテオバクテリア。
  2. 前記クエン酸シンターゼが 下記(A)又は(B)に示すタンパク質をコードする遺伝子である請求項1に記載のγ―プロテオバクテリア
    (A)配列番号11に記載のアミノ酸配列を有するタンパク質、
    (B)配列番号11に記載のアミノ酸配列において207番目のSer残基を有し、1若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むアミノ酸配列を有し、かつ、NADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質。
  3. 前記数個が2〜20個である、請求項2に記載のγ―プロテオバクテリア。
  4. 下記(a)又は(b)に示すDNAである請求項1記載のγ―プロテオバクテリア。
    (a)配列番号10に記載の塩基配列を含むDNA
    (b)配列番号10に記載の塩基配列又は同塩基配列から調整され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、かつ、NADHに阻害を受けないクエン酸シンターゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA。
  5. NADHに阻害を受けないような変異を染色体上のクエン酸シンターゼ遺伝子のコード領域内に導入したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のγ―プロテオバクテリア。
  6. 前記NADHに阻害を受けないように改変したクエン酸シンターゼをコードする遺伝子のコピー数を高めること、又は該遺伝子の発現調節配列を改変することにより遺伝子の発現が増強されたことを特徴とする請求項5に記載のγ―プロテオバクテリア。
  7. パントエア属、エンテロバクター属、クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア属より成る群から選択される請求項1〜6のいずれか一項に記載のγ―プロテオバクテリア。
  8. pH3〜5において飽和濃度のL−グルタミン酸及び炭素源を含む液体培地で同炭素源を代謝することができ、かつ、前記pHの液体培地でL−グルタミン酸の飽和濃度を越える量のL−グルタミン酸を培地中に蓄積する能力を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載のγ−プロテオバクテリア。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載のγ―プロテオバクテリアを培地中で培養し、該培地中にL−グルタミン酸を生成・蓄積せしめ、L−グルタミン酸を該培地から採取することを特徴とする、L−グルタミン酸の製造法。


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