JPWO2004101796A1 - 改良された形質転換体およびそれを用いたポリエステルの製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、変異の導入されたアエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸(PHA)合成酵素遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット;該遺伝子発現カセットを酵母に導入してなる形質転換体;該形質転換体を用いたポリエステルの製造方法である。本発明により、生分解性及び優れた物性を有する、3−ヒドロキシアルカン酸を共重合してなる共重合ポリエステルを、酵母において効率的に生産することが可能になった。

Description

本発明は、共重合ポリエステルを酵素合成するために必要な遺伝子、同遺伝子を利用してポリエステルを発酵合成する微生物、及び、その微生物を用いたポリエステルの製造方法に関する。
現在までに数多くの微生物において、エネルギー貯蔵物質としてポリヒドロキシアルカン酸(以下、PHAと略す)等のポリエステルを菌体内に蓄積することが知られている。その代表例としては3−ヒドロキシ酪酸(以下、3HBと略す)のホモポリマーであるポリ−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P(3HB)と略す)であり、1925年にバシラス・メガテリウム(Bacillus megaterium)で最初に発見された(非特許文献1参照)。P(3HB)は熱可塑性高分子であり、自然環境中で生物的に分解されることから、環境にやさしいプラスチックとして注目されてきた。しかし、P(3HB)は結晶性が高いため、硬くて脆い性質を持っていることから実用的には応用範囲が限られる。この為、この性質の改良を目的とした研究がなされてきた。
その中で、3−ヒドロキシ酪酸(3HB)と3−ヒドロキシ吉草酸(以下、3HVと略す)とからなる共重合体(以下、P(3HB−co−3HV)という)の製造方法が開示されている(特許文献1、2参照)。このP(3HB−co−3HV)はP(3HB)に比べると柔軟性に富むため、幅広い用途に応用できると考えられた。しかしながら、実際のところP(3HB−co−3HV)は3HVモル分率を増加させても、それに伴う物性の変化が乏しく、特にフィルム等に使用するのに要求される程、柔軟性が向上しないため、シャンプーボトルや使い捨て剃刀の取っ手等硬質成型体の分野にしか利用されなかった。
近年、3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下、3HHと略す)との2成分共重合ポリエステル(以下、P(3HB−co−3HH)という)及びその製造方法について研究がなされた(特許文献3、4参照)。これら特許文献のP(3HB−co−3HH)の製造方法は、土壌より単離されたアエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)を用いて、オレイン酸等の脂肪酸やオリーブオイル等の油脂から発酵生産するものであった。また、P(3HB−co−3HH)の性質に関する研究もなされている(非特許文献2参照)。この報告では炭素数が12個以上の脂肪酸を唯一の炭素源としてA.caviaeを培養し、3HHが11〜19mol%のP(3HB−co−3HH)を発酵生産している。このP(3HB−co−3HH)は3HHモル分率の増加にしたがって、P(3HB)の硬くて脆い性質から次第に柔軟な性質を示すようになり、P(3HB−co−3HV)を上回る柔軟性を示すことが明らかにされた。しかしながら、上記製造方法では菌体生産量4g/L、ポリマー含量30%であり、ポリマー生産性が低いことから、実用化に向けさらに高い生産性が得られる方法が探索された。
P(3HB−co−3HH)を生産するアエロモナス・キャビエ(A.caviae)よりPHA合成酵素遺伝子がクローニングされた(特許文献5、非特許文献3参照)。本遺伝子をラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eutropha、旧Alcaligenes eutrophus)に導入した形質転換株を用いて、炭素源として植物油脂を用いて培養した結果、菌体含量4g/L、ポリマー含量80%が達成された(非特許文献4参照)。また、大腸菌等の細菌や植物を宿主としたP(3HB−co−3HH)の製造方法も開示されているが、その生産性は記載されていない(特許文献6参照)。
上記ポリマーP(3HB−co−3HH)は3HHモル分率を変えることで、硬質ポリマーから軟質ポリマーまで幅広い物性を持つため、テレビの筐体等のように硬さを要求されるものから、糸やフィルム等のような柔軟性を要求されるものまで、幅広い分野への応用が期待できる。しかしながら、先に述べた製造方法ではP(3HB−co−3HH)の生産性が依然として低く、P(3HB−co−3HH)の実用化に向けた生産方法としては未だ不十分といわざるを得ない。
最近、吉瀬らによりA.caviae由来のP(3HB−co−3HH)合成酵素を進化工学的に改変し、大腸菌に遺伝子導入することで、野生型の遺伝子を導入した大腸菌に比べ、P(3HB−co−3HH)を高蓄積する大腸菌を作製する方法が示された(非特許文献5参照)。その中でP(3HB−co−3HH)合成酵素比活性が向上した株としてE2−50株及びT3−11株が得られている。E2−50株はP(3HB−co−3HH)合成酵素の149番目のアミノ酸であるアスパラギンがセリンに置換され、T3−11株は171番目のアスパラギン酸がグリシンに置換された変異株である。E2−50株の変異酵素比活性は天然型の約1.5倍、T3−11株では約1.2倍に向上している。しかし、通常大腸菌は、炭素源として安価な油脂を資化することができず、またP(3HB−co−3HH)の構成単位を合成する経路に必要なアセチルCo−Aの2量化酵素を有しないため、別途油脂分解系や基質供給系の遺伝子を導入する等しなければ、安価で効率的な生産系が得られない。またアマラらも比活性が5倍に向上する変異体を取得しているが、グルコースを炭素源としたときのポリマー生産性は僅かに向上したにすぎなかった(非特許文献6参照)。大腸菌においては、活性の向上した変異型ポリマー合成酵素は、十分にその能力を発揮できないし、また大腸菌は安価な植物油脂を炭素源として直接利用することは出来ない等、経済性の面でポリマー生産宿主としての実用性に乏しい。
菌体生産性の高い酵母を宿主とした生分解性ポリエステルの生産研究がLeafらによって行われた(非特許文献7参照)。酵母の一種であるサッカロマイセス・セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)にラルストニア・ユートロファ(R.eutropha)のポリエステル合成酵素遺伝子を導入して形質転換体を作製し、グルコースを炭素源として培養することによってP(3HB)の蓄積を確認している。しかし、上記研究で生産されるポリマー含量は0.5%に留まり、そのポリマーは硬くて脆い性質を有するP(3HB)であった。脂肪酸を炭素源として、酵母サッカロマイセス・セルビシエにシュードモナス属(Pseudomonas aeruginosa)由来のポリエステル合成酵素遺伝子を発現させ、炭素数5以上のモノマーを含む共重合ポリマーを生産する検討もなされた。この場合も生産されるポリマー含量は0.5%に留まった(非特許文献8参照)。さらに、酵母ピキア・パストリス(Pichia Pastoris)のペルオキソームに、同シュードモナス種由来のポリエステル合成酵素遺伝子を配向発現させ、オレイン酸を炭素源としてポリエステルを生産させる検討もなされている。この研究によれば乾燥菌体当たり1%重量のポリマーを蓄積することが示されている(非特許文献9参照)。しかしこの程度の蓄積量では、全く不十分である。
酵母は増殖が早く菌体生産性が高いことで知られている。その中でもキャンディダ(Candida)属に属する酵母は、過去Single Cell Proteinとして注目され、ノルマルパラフィンを炭素源とした飼料用菌体生産が研究されてきた。また、近年キャンディダ(Candida)属の宿主ベクター系が開発され、遺伝子組換え技術を用いた物質生産が報告されている(非特許文献10参照)。キャンディダ・ユーティリス(Candida utilis)を宿主としたαアミラーゼの生産性は約12.3g/Lと高く、このように高い物質生産能力を有するキャンディダ(Candida)属は、ポリマー生産用宿主として期待される。さらに、細菌と比べて菌体と培養液との分離が容易であることから、ポリマーの抽出精製工程をより簡単にすることも可能である。
そこで、優れた物性を有するP(3HB−co−3HH)をキャンディダ(Candida)属酵母等を用いて生産する方法が開発されているが、ポリマー生産性の点でさらに改良を加える必要があった(特許文献7参照)。菌体当たりのポリマー生産量を向上させる方法の一つとして、ポリマー合成酵素の菌体内量を増加させる方法が挙げられる。ポリマー合成酵素の菌体内量を増加させる方法としては、強力なプロモーターを用いる方法やコピー数の多いプラスミドを用いる方法、プラスミドあるいは染色体に酵素発現ユニットを多数導入する方法等がある。しかしながら、菌体当たりの酵素の分子数を増すと、生産されるポリマーの分子量低下が起こることが知られている(非特許文献11、12参照)。ポリマーの分子量は生分解性ポリマーの物性に多大な影響を与えるため、分子量の低下を招くことなく、生産性を向上させる方法の開発が望まれていた。
:特開昭57−150393号公報 :特開昭59−220192号公報 :特開平5−93049号公報 :特開平7−265065号公報 :特開平10−108682号公報 :国際公開第00/43525号パンフレット :国際公開第01/88144号パンフレット :M.Lemoigne,Ann.Inst.Pasteur,39,144(1925) :Y.Doi,S.Kitamura,H.Abe,Macromolecules 28,4822−4823(1995) :T.Fukui,Y.Doi,J.Bacteriol,vol.179,No.15,4821−4830(1997) :T.Fukui等Appl.Microbiol.Biotechnol.49,333(1998) :T.Kichise等Appl.Environ.Microbiol.68,2411−2419(2002) :Amara AA.等Appl.Microbiol.Biotechnol.59,477−482(2002) :Microbiology,vol.142,pp1169−1180(1996) :Poirier Y.等Appl.Microbiol.Biotechnol.67,5254−5260(2001) :Poirier Y.等FEMS Microbiology Lett.,vol.207,pp97−102(2002) :化学と生物vol.38,No.9,614(2000) :Sim S.J.等Nature Biotechnology,vol.15,pp63−67(1997) :Gerngross T.U.,Martin D.P.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.92,pp6279−6283(1995)
本発明は、上記現状に鑑み、酵母で機能的かつ効率よく発現できるPHA合成酵素変異遺伝子、同変異遺伝子から成る遺伝子発現カセットを酵母に形質転換した形質転換体、及び得られた形質転換体を培養することにより、生分解性及び優れた物性を有するP(3HB−co−3HH)等のポリエステルを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは様々な検討を行った結果、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素のアミノ酸配列に特定の変異を導入した変異体のアミノ酸配列をコードする遺伝子を作製し、これら遺伝子のそれぞれに、酵母で実質的に機能するプロモーター、ターミネーターを連結することにより遺伝子発現カセットを作製し、さらに本遺伝子発現カセットを酵母に導入して形質転換株を作製し、本形質転換株を培養することにより、その培養物から極めて高い生産性が期待できる方法でポリエステルを製造できることを見いだした。
即ち、本発明は、酵母におけるアエロモナス・キャビエ由来PHA合成酵素変異体の遺伝子の利用に関する。
具体的には、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素に、以下の(a)〜(h)のアミノ酸置換を少なくとも1つ行ってなるPHA合成酵素変異体をコードするPHA合成酵素変異遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなる遺伝子発現カセットに関する。
(a)Asn−149をSerに
(b)Asp−171をGlyに
(c)Phe−246をSer又はGlnに
(d)Tyr−318をAlaに
(e)Ile−320をSer、Ala又はValに
(f)Leu−350をValに
(g)Phe−353をThr、Ser又はHisに
(h)Phe−518をIleに
また、本発明は、上記PHA合成酵素変異体をコードするPHA合成酵素変異遺伝子に、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAが付加されてなる遺伝子に関する。
その好ましい実施態様としては、ペルオキシソーム配向シグナルが、配列番号2又は配列番号3によって示されるアミノ酸配列からなる上記遺伝子;さらに好ましくは、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAの塩基配列が、配列番号4又は配列番号5によって示されるものである上記遺伝子に関する。
別の好ましい実施態様としては、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素をコードする遺伝子の遺伝暗号CTGの少なくとも1つが、TTA、TTG、CTT、CTC又はCTAに変換されているものである上記遺伝子に関する。
さらに、本発明は、上記遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなる遺伝子発現カセットに関する。
また、本発明は、該遺伝子発現カセットが、酵母に1つ以上導入されてなることを特徴とする形質転換体;好ましくは、酵母がキャンディダ・マルトーサである上記形質転換体に関する。
さらに、本発明は、該形質転換体を培養して得られる培養物から、ポリエステルを採取することを特徴とするポリエステルの製造方法に関し;好ましくは、ポリエステルが、下記式(1)で示される3−ヒドロキシ酪酸と下記式(2)で示される3−ヒドロキシヘキサン酸とを共重合してなる共重合ポリエステルである上記ポリエステルの製造方法に関する。
Figure 2004101796
以下に、本発明を詳細に説明する。
(1)ポリエステル合成酵素の有用な変異体
本発明においては、配列番号1で表されるアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素のアミノ酸配列に、以下の(a)〜(h)のアミノ酸置換を少なくとも1つ行って得られるPHA合成酵素変異体を、有用な変異体として用いる。
(a)Asn−149をSerに
(b)Asp−171をGlyに
(c)Phe−246をSer又はGlnに
(d)Tyr−318をAlaに
(e)Ile−320をSer、Ala又はValに
(f)Leu−350をValに
(g)Phe−353をThr、Ser又はHisに
(h)Phe−518をIleに
ここで、例えば、「Asn−149」というのは、アミノ酸配列において149番目のアスパラギンを意味し、(a)のアミノ酸置換は149番目のアスパラギンをセリンに変換することを意味する。
上記変異体を得る方法としては、例えば以下のような方法等が挙げられる。アエロモナス・キャビエ(Aeromonas caviae)等の細菌由来のポリエステル合成酵素のアミノ酸配列を改変し、酵素活性・基質特異性・熱安定性等の性質の改良された変異体を取得する方法は種々知られているが、特に分子進化工学的手法(特開2002−199890号公報)等が、迅速に所望の変異体を得られることから有用性が高い。また、コンピュータ上で酵素の立体構造又は予想される立体構造を基に、有用なアミノ酸変異を特定することも、例えばプログラムShrike(特開2001−184831号公報)等を用いて可能である。
このようにして特定されたアミノ酸置換(変異)が、目的宿主に対して予想通りの効果を示すものであるか否かは、実際に適応してみて初めて確認が出来る。なぜならば、前述のT.Kichise等Appl.Environ.Microbiol.68,2411−2419(2002)や、Amara AA.等Appl.Microbiol.Biotechnol.59,477−482(2002)の大腸菌を用いた分子進化工学的手法で得られる変異体は、その変異体を取得するのに用いた大腸菌生育条件において最も適応した変異体であり、異なる生育条件やましてや別の菌種において適応する保証はなく、また、コンピュータ上で作製される変異体は確度が未だ十分では無いからである。
また、分子進化工学的手法等によって得られた変異は、それらを組み合わせることでさらに好適な変異体を得ることができ、本発明においては、上記(a)〜(h)のアミノ酸置換を2つ以上行って得られた変異体も好ましく用いられる。
(2)酵母用変異遺伝子の作製
上記(1)に記載の方法によって得られた変異体をコードする遺伝子としては、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素遺伝子に、上記(1)のアミノ酸置換に対応するDNA変異を行ったもの等が挙げられる。また、酵母に適応したPHA合成酵素遺伝子中に、上記(1)のアミノ酸置換に対応するDNA変異を導入したものが好ましい。
酵母に適応したPHA合成酵素遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、アエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素遺伝子と同じアミノ酸配列をキャンディダ・マルトーサにおいてコードする遺伝子であるORF2(WO01/88144の配列番号3に記載)等が挙げられる。
即ち、細菌由来の遺伝子をそのまま用いると、宿主酵母の中には遺伝暗号読みとりに異常を示す場合があり、例えば、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)(H.Sugiyama et al,Yeast 11 43−52(1995))では遺伝暗号CTGが、ロイシンではなくセリンに翻訳される。このような問題は、予め遺伝子内に含まれる遺伝暗号CTGの少なくとも1つを、ロイシンに対応する他の遺伝暗号(TTA,TTG,CTT,CTC,CTA)に変換した遺伝子を使用することによって解決することができる。さらに、使用宿主における遺伝子を構成する遺伝暗号使用頻度を考慮し、使用頻度の高い遺伝暗号に変更した遺伝子を作製・利用することが出来る。
上記(1)に記載のアミノ酸置換(変異)を、上述の酵母に適応したPHA合成酵素遺伝子中に導入するためには、部位特異的変異法を用いて所望の部位に、遺伝子暗号の変異を導入することができる。遺伝子のアミノ酸配列を部位特異的に変異させる方法は、組換えDNA法、PCR法等を用いて行うことが出来る。例えば、PHA合成酵素遺伝子中の変異導入を希望する目的の部位の両側に適当な制限酵素認識配列が存在する場合に、そこを前記制限酵素で切断し、変異導入を希望する部位を含む領域を除去した後、化学合成等によって目的の部位のみに変異導入したDNA断片を挿入するカセット変異法によって行うことが出来る。また、PCRによる部位特異的変異の導入は、PHA合成酵素遺伝子中の変異導入を希望する目的の部位に目的の変異を導入した変異用プライマーと、前記遺伝子の末端部位の配列を含む変異を有しない増幅用プライマーとで、前記遺伝子の片側を増幅し、前記変異用プライマーに対して相補的な配列を有する変異用プライマーと、前記遺伝子のもう一方の末端部位の配列を含む変異を有しない増幅用プライマーとで、もう片方を増幅し、得られた2つの増幅断片をアニール後、さらに前記2種類の増幅用プライマーでPCRをする事により行うことが出来る。得られた部位特異的構築物について、塩基配列を決定することにより確認を行う。塩基配列の決定は、当該技術分野で公知の手法により、自動塩基配列決定器等を用いて行うことが出来る。
一般に、酵母を用いてポリエステルを発酵生産させる場合、炭素源はブドウ糖や油脂類、脂肪酸類等、酵母が利用できるものであれば特に制限なく利用することができる。特に、油脂類、脂肪酸類あるいはn−パラフィン等を炭素源としてポリエステルを発酵生産する場合、これらの炭素源はβ酸化経路を経て代謝されるが、β酸化経路の代謝中間体は効率よくポリエステル合成の基質として利用される(T.Fukui,Y.Doi,J.Bacteriol.,179,No.15,4821−4830(1997);Q.Ren等,J.Bacteriol.,182,No.10,2978−2981(2000))。ここで、酵母におけるβ酸化は細胞内小器官であるペルオキシソーム内で行われることから、ポリエステルの効率の良い合成のためには、ポリエステル合成に関与する酵素がペルオキシソームに局在することが好ましい。
ペルオキシソームへ輸送されるタンパク質は、遊離のリボソーム上で合成され、そのタンパク質配列中にあるペルオキシソーム配向シグナルの働きにより、ペルオキシソームへ輸送される(S.Subramani,J.Membrane Biol.,125,99−106(1992)、板井康能,化学と生物,35,No.10,687−695(1997)、E.H.Hettema,Biochim.Biophys.Acta,1451,17−34(1999))。
従って、本発明においては、これらペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAを、ポリエステルの合成に関与する酵素をコードする遺伝子、即ち上記PHA合成酵素変異遺伝子に付加させるのが好ましく、このことにより、ポリエステルの合成に関与する酵素、即ちPHA合成酵素変異体をペルオキシソームに局在化させることができ、ポリエステルを効率よく合成することができる。
カルボキシル末端にあるペルオキシソーム配向シグナルとして、3つのアミノ酸配列から成る「(セリン/アラニン/システイン)−(リジン/アルギニン/ヒスチジン)−ロイシン」が知られている。ここで、例えば、(セリン/アラニン/システイン)とは、セリン、アラニン又はシステインのいずれかであるということを意味する。PHA合成酵素変異体をペルオキシソームに配向させるためには、前記3アミノ酸を同酵素のカルボキシル末端に付加すればよい。このうち、一般的なカルボキシル末端ペルオキシソーム配向シグナルとして知られている「セリン−リジン−ロイシン」(以下SKLと略す)(配列番号2)や、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)でカルボキシル末端ペルオキシソーム配向シグナルとして知られている(J.D.Aitchison et al,J.Biol.Chem.266,23197−23203(1991))「アラニン−リジン−イソロイシン」(以下AKIと略す)(配列番号3)をカルボキシル末端に付加するのが好ましい。
上記アミノ酸に対応する塩基配列に特に制限はなく、例えばSKLであれば配列番号4、AKIであれば配列番号5の塩基配列を使用することができる。
また、N末端付近に存在する9つのアミノ酸配列「(アルギニン/リジン)−(ロイシン/バリン/イソロイシン)−(5アミノ酸)−(ヒスチジン/グルタミン)−(ロイシン/アラニン)」もペルオキシソーム配向シグナルとして知られている。これらの配列をPHA合成酵素変異体に挿入、付加することによっても、同酵素をペルオキシソームに局在させることができる。
上記ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAをPHA合成酵素変異遺伝子に付加させるためには、化学合成法、PCR法等を用いることが出来る。
(3)遺伝子発現カセットの構築
本発明の遺伝子発現カセットは、上記(2)の変異遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなるものである。
上記(2)の変異遺伝子を酵母で発現させるには、当該遺伝子の5′上流にプロモーター、上流活性化領域(UAS)等のDNA配列が、当該遺伝子の3′下流にポリA付加シグナル、ターミネーター等のDNA配列が必要である。酵母の染色体上に上記条件を満たす適当な部位があれば、当該遺伝子を直接挿入しても良いし、また、適当なプロモーター及びターミネーターを有するプラスミドに当該遺伝子を挿入し、このプラスミドを酵母に形質転換させることもできる。
本発明においては、当該遺伝子の5’上流にプロモーター、3’下流にターミネーターを連結した遺伝子発現カセットを構築し、これを酵母に形質転換するのが好ましい。
使用するプロモーター、ターミネーターは、宿主となる酵母で機能するものであればどのような配列でも利用できる。プロモーターには構成的に発現を行うものや誘導的に発現を行うものがあるが、いずれのプロモーターも用いてもよい。本発明において、宿主としてキャンディダ・マルトーサを使用する場合には、上記プロモーター、ターミネーターが、キャンディダ・マルトーサで機能するものであることが好ましく、上記プロモーター、ターミネーターがキャンディダ・マルトーサ由来であることが好ましい。より好ましくは、キャンディダ・マルトーサのALK1、ALK2、ALK5遺伝子由来のプロモーター、ALK1遺伝子由来のターミネーターを利用する。
例えば、プロモーターとしてはキャンディダ・マルトーサのALK1遺伝子(GenBank D00481)のプロモーターALK1p(WO01/88144)、ALK5遺伝子のプロモーターALK5p(配列番号6)等を用いることができる。さらに、これらのプロモーターの上流にARR(アルカン レスポンシブル リージョン)配列を複数個付加することによりプロモーター活性を向上させたプロモーター(木暮ら2002年日本農芸化学大会講演要旨集p191)を利用することもできる(配列番号7)。また、ターミネーターとしてはキャンディダ・マルトーサのALK1遺伝子のターミネーターALK1t(WO01/88144)等を用いることができる。
なお、上記プロモーター、ターミネーターの塩基配列は、キャンディダ・マルトーサで機能する配列であれば、1つ若しくは複数個の塩基が欠失、置換及び/又は、付加された塩基配列であってもよい。ここで、「1つ若しくは複数個の塩基が欠失、置換および/または付加された塩基配列」とは、蛋白核酸酵素 増刊 遺伝子増幅PCR法 TAKKAJ 35(17),2951−3178(1990)又はHenry A.Erlich編 加藤郁之進鑑訳 PCRテクノロジー(1990)等に記載の当業者に周知の方法により、欠失、置換および/または付加できる程度の数の塩基が、欠失、置換および/または付加されてなる塩基配列を意味する。
上記プロモーターは、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAが付加されたアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素変異体をコードする遺伝子の5’上流に、ターミネーターは、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAが付加されたPHA合成酵素変異体をコードする遺伝子の3’下流に、それぞれ連結される。
遺伝子発現カセットの構築に用いられるベクターは、大腸菌において自律増殖するプラスミドであればどのようなベクターでもよく、さらに酵母において自律増殖可能な領域を合わせ持っていてもよい。酵母において自律増殖できるベクターは、菌体内に保持される。また、遺伝子発現カセットを染色体上に組み込むこともできる。ベクターの一例として、キャンディダ・マルトーサにおいて自律増殖可能なpUTU1を用いることができる(M.Ohkuma,et al,J.Biol.Chem.,vol.273,3948−3953(1998))。
プロモーター及びターミネーターと構造遺伝子を連結し、本発明の遺伝子発現カセットを構築する方法は、特に限定されるものではない。後述の本実施例に記載の方法の他に、制限酵素部位を作製するためにPCR法も利用できる。例えば、WO01/88144に記載の方法が使用できる。
(4)宿主
本発明でいう酵母には特に制限はなく、菌株の寄託機関(例えばIFO、ATCC等)に寄託されている、アシクロコニディウム属(Aciculoconidium属),アンブロシオザイマ属(Ambrosiozyma属),アルスロアスカス属(Arthroascus属),アルキシオザイマ属(Arxiozyma属),アシュビア属(Ashbya属),バブジェビア属(Babjevia属),ベンシングトニア属(Bensingtonia属),ボトリオアスカス属(Botryoascus属),ボトリオザイマ属(Botryozyma属),ブレッタノマイセス属(Brettanomyces属),ビュレラ属(Bullera属),ビュレロマイセス属(Bulleromyces属),キャンディダ属(Candida属)、シテロマイセス属(Citeromyces属),クラビスポラ属(Clavispora属),クリプトコッカス属(Cryptococcus属),シストフィロバシディウム属(Cystofilobasidium属),デバリオマイセス属(Debaryomyces属),デッケラ属(Dekkara属),ディポダスコプシス属(Dipodascopsis属),ディポダスカス属(Dipodascus属),エニエラ属(Eeniella属),エンドマイコプセラ属(Endomycopsella属),エレマスカス属(Eremascus属),エレモセシウム属(Eremothecium属),エリスロバシディウム属(Erythrobasidium属),フェロマイセス属(Fellomyces属),フィロバシディウム属(Filobasidium属),ガラクトマイセス属(Galactomyces属),ゲオトリクム属(Geotrichum属),ガイラーモンデラ属(Guilliermondella属),ハンセニアスポラ属(Hanseniaspora属),ハンセヌラ属(Hansenula属),ハセガワエア属(Hasegawaea属),ホルターマンニア属(Holtermannia属),ホルモアスカス属(Hormoascus属),ハイフォピキア属(Hyphopichia属),イサットヘンキア属(Issatchenkia属),クロエケラ属(Kloeckera属),クロエケラスポラ属(Kloeckeraspora属),クルイベロマイセス属(Kluyveromyces属),コンドア属(Kondoa属),クライシア属(Kuraishia属),クルツマノマイセス属(Kurtzmanomyces属),ロイコスポリディウム属(Leucosporidium属),リポマイセス属(Lipomyces属),ロデロマイセス属(Lodderomyces属),マラセジア属(Malassezia属),メトシュニコウィア属(Metschnikowia属),ムラキア属(Mrakia属),マイクソザイマ属(Myxozyma属),ナドソニア属(Nadsonia属),ナカザワエア属(Nakazawaea属),ネマトスポラ属(Nematospora属),オガタエア属(Ogataea属),オースポリディウム属(Oosporidium属),パチソレン属(Pachysolen属),ファチコスポラ属(Phachytichospora属),ファフィア属(Phaffia属),ピキア属(Pichia属),ロドスポリディウム属(Rhodosporidium属),ロドトルラ属(Rhodotorula属),サッカロマイセス属(Saccharomyces属),サッカロマイコーデス属(Saccharomycodes属),サッカロマイコプシス属(Saccharomycopsis属),サイトエラ属(Saitoella属),サカグチア属(Sakaguchia属),サターノスポラ属(Saturnospora属),シゾブラストスポリオン属(Schizoblastosporion属),シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces属),シュワニオマイセス属(Schwanniomyces属),スポリディオボラス属(Sporidiobolus属),スポロボロマイセス属(Sporobolomyces属),スポロパキデミア属(Sporopachydermia属),ステファノアスカス属(Stephanoascus属),ステリグマトマイセス属(Sterigmatomyces属),ステリグマトスポリディウム属(Sterigmatosporidium属),シンビオタフリナ属(Symbiotaphrina属),シンポディオマイセス属(Sympodiomyces属),シンポディオマイコプシス属(Sympodiomycopsis属),トルラスポラ属(Torulaspora属),トリコスポリエラ属(Trichosporiella属),トリコスポロン属(Trichosporon属),トリゴノプシス属(Trigonopsis属),ツチヤエア属(Tsuchiyaea属),ウデニオマイセス属(Udeniomyces属),ワルトマイセス属(Waltomyces属),ウィカーハミア属(Wickerhamia属),ウィカーハミエラ属(Wickerhamiella属),ウィリオプシス属(Williopsis属),ヤマダザイマ属(Yamadazyma属),ヤロウィア属(Yarrowia属),ザイゴアスカス属(Zygoascus属),ザイゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces属),ザイゴウィリオプシス属(Zygowilliopsis属),ザイゴザイマ属(Zygozyma属)等の酵母を使用することができる。
また、本発明の形質転換体の宿主として用いられる酵母としては、特に限定されないが、上記のなかでも、キャンディダ属、ヤロウィア属のものが好ましく、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ヤロウィア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)がより好ましく、キャンディダ・マルトーサが特に好ましい。
なお、宿主として用いられる酵母のうち、Candida maltosa AC16株は、受託番号FERM BP−7366として、平成12年11月15日に、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
(5)形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、上記(3)の遺伝子発現カセットが、酵母に1つ以上導入されてなるものである。
ポリマー合成に関与する遺伝子発現カセット組換えベクターを酵母に導入するためには、公知の方法により行うことができる。例えば、カルシウム法(Lederberg.E.M.et al.,J.Bacteriol.119.1072(1974))やエレクトロポレーション法(Current Protocols in Morecular Biology、1巻、1.8.4頁、1994年)等を用いることができる。また、Fast TrackTM−Yeast Transformation KitSM(Geno Technology)のような市販の形質転換キットを利用することもできる。
一例として宿主として、キャンディダ・マルトーサCHA1株(S.Kawai,et al,Agric.Biol.Chem.,vol.55,59−65(1991))を用いることができる。上記の形質転換法を用いて、ポリマー合成に関与する遺伝子発現カセットを含むプラスミドベクター等で、本菌株を形質転換し、後述の実施例に示すようなpARR−ORF2S等のプラスミドを有するキャンディダ・マルトーサ形質転換体を作製することができる。
なお、プラスミドpARR−149NSx2が導入された形質転換体であるAC16 pUTA−149NSx2(受託番号FERM BP−10019、原寄託日平成15年5月8日の国内寄託をブダペスト条約に基づく国際寄託に移管)、
プラスミドpARR−149NS/171DGx2(受託番号FERM BP−10017、寄託日平成16年4月27日、ブダペスト条約に基づく国際寄託)、
はそれぞれ、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
(6)ポリエステルの製造
本発明のポリエステルの製造方法では、本発明の上記形質転換体を培養して得られる培養物から、ポリエステルを採取する。
つまり、本発明のポリエステルの製造は、培養培地に上記形質転換体を添加して培養した後、得られた当該培養菌体又は培養物からポリエステルを回収することにより行うことができる。ここで、培養温度は、その菌の生育可能な温度、好ましくは15℃〜40℃、より好ましくは20℃〜40℃、さらに好ましくは28℃〜34℃である。また、培養時間は、特に限定されないが、例えばバッチ培養では1〜7日間が好ましく、また連続培養も可能である。
培養培地は、酵母が利用できるものである限り特に限定されない。例えば、炭素源、窒素源、無機塩類、その他の有機栄養源等を含有する培地を使用することができる。
炭素源としては、酵母が資化できるものである限り特に限定されず、例えば炭水化物、油脂類、脂肪酸類、n−パラフィン等を用いることができる。炭水化物としては、例えばグルコース、シュークロース、グリセリン等が挙げられる。油脂類としては、例えばナタネ油、ヤシ油、パーム油、パーム核油等が挙げられる。脂肪酸類としては、例えばヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ラウリン酸、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリスチン酸等の飽和・不飽和脂肪酸、あるいはこれら脂肪酸のエステルや塩等の脂肪酸誘導体が挙げられる。n−パラフィンとしては、例えばドデカン、テトラデカン等が挙げられる。
また、プロモーターの発現が誘導型である場合には、適時誘導物質(例えば、アルコール等)を添加すればよい。誘導物質が主要炭素源である場合もある。
一例として、キャンディダ・マルトーサの培養において、炭素源として油脂類を用いて培養することもできる。また、油脂を資化できないかまたは効率よく資化できない酵母では、培地中にリパーゼを添加することによって改善することもできる。さらに、リパーゼ遺伝子を形質転換することにより、油脂資化能を付与することもできる。
窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。
無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。
その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸類;ビタミンB1、ビタミンB12、ビオチン、ニコチン酸アミド、パントテン酸、ビタミンC等のビタミン類等が挙げられる。
本発明において、ポリエステルの菌体からの回収は、例えば次のような方法が使用できる。培養終了後、培養液から遠心分離器等で菌体を分離し、その菌体を蒸留水及びメタノール等により洗浄した後、乾燥させる。この乾燥菌体からクロロホルム等の有機溶剤を用いてポリエステルを抽出する。このポリエステルを含んだ有機溶剤溶液から濾過等によって菌体成分を除去し、その濾液にメタノールやヘキサン等の貧溶媒を加えてポリエステルを沈殿させる。沈殿したポリエステルから濾過や遠心分離によって上澄み液を除去し、乾燥させてポリエステルを回収することができる。本発明では、ポリエステルを生産する菌体として酵母を使用するため、上記のような簡便な分離回収方法が利用可能である。
得られたポリエステルの分析は、例えば、ガスクロマトグラフ法や核磁気共鳴法等により行う。分子量の測定には、GPC法が利用できる。回収した乾燥ポリマーをクロロホルムで溶解したのち、この溶液を、Shodex K805L(昭和電工社製)を装着した島津製作所製GPCシステムを用い、クロロホルムを移動相として分析する事が出来る。分子量標準サンプルには市販の標準ポリスチレン等が使用できる。
上述したように、本発明においては、酵素活性の改良されたアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素変異体をコードする遺伝子、又は、酵素活性の改良されたアエロモナス・キャビエ由来のPHA合成酵素変異体をコードする遺伝子に、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAを付加した遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターを有する遺伝子発現カセットを用いて、キャンディダ・マルトーサ組み換え株を作製し、該形質転換体を培養する方法により、ポリエステルを効率よく合成することができる。
また、本発明においては、ポリエステルとして、式(1)で示される3−ヒドロキシ酪酸と式(2)で示される3−ヒドロキシヘキサン酸とを共重合してなる共重合ポリエステルP(3HB−co−3HH)が好ましく製造できる。
Figure 2004101796
本発明により、生分解性及び優れた物性を有する、上記式(1)、(2)で示される3−ヒドロキシ酪酸や3−ヒドロキシヘキサン酸をはじめとする3−ヒドロキシアルカン酸を共重合してなる共重合ポリエステルを、酵母において効率的に生産することが可能になった。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これら実施例にその技術範囲を限定するものではない。
(実施例1)PHA合成酵素遺伝子の合成と改変
配列番号1に示されるアエロモナス・キャビエの由来のPHA合成酵素(T.Fukui,et al,FEMS Microbiology Letters,vol.170,69−75(1999))のアミノ酸配列をもとに、当該PHA合成酵素遺伝子を合成した。
また、キャンディダ・マルトーサは、CTGコドンをロイシンではなくセリンに翻訳する酵母である。このため、ロイシンコドンにはCTGを割り当てなかった。各アミノ酸に対応するコドンは、キャンディダ・マルトーサにおいて使用頻度の高いコドンを優先的に選択した。コドンの使用頻度は、Klaus Wolf著のNonconvendtional Yeast in Biotechnology(Springer出版)を参考にした。このようにしてPHA合成酵素遺伝子ORF2(WO01/88144の配列番号3)を設計し、化学合成した後、ベクターpUCNT(WO94/03613に記載)にクローニングした。
次に、該PHA合成酵素の149番目のアミノ酸であるアスパラギンをセリンに置換するため、PCR用プライマーとして配列番号8と配列番号9を用いてPHA合成酵素遺伝子のクローニングされているpUCNTを増幅した。増幅にはStratagene社製Pfuポリメラーゼを用いた。PCRの条件は96℃で1分、60℃で1分、68℃で11分を1サイクルとし、これを18回繰り返した後、制限酵素DpnIを加え、鋳型としたプラスミドを切断し、大腸菌JM109株を形質転換し、形質転換体よりプラスミドを得た。配列番号10から14のプライマーを使用し、塩基配列を確認した。塩基配列決定は、PERKIN ELMER APPLIED BIOSYSTEMS社製のDNAシークエンサー310 Genetic Analyzerを用いた。このようにして遺伝子変異が目的部位のみに導入されたPHA合成酵素変異遺伝子ORF2−149NSを作製した。
(実施例2)PHA合成酵素変異遺伝子発現カセットの構築
キャンディダ・マルトーサでPHA合成酵素を発現させるために、実施例1に記載のPHA合成酵素変異遺伝子ORF2、ORF2−149NSにおける、それぞれの5’上流にキャンディダ・マルトーサ由来プロモーターを、3’下流にターミネーターを連結することにした。プロモーターとしては、Alk2遺伝子(GenBank X55881)のプロモーターの上流にARR配列を付加したプロモーターARRpを用い、3’下流には共にキャンディダ・マルトーサのAlk1遺伝子(GenBank D00481)のターミネーターALK1tを連結することにした。ARRpは、東京大学より分与された遺伝子(配列番号15)のPstIサイトにEcoRI−XhoIリンカーを結合させ、EcoT14Iサイトに配列番号16に示した合成DNAを結合させることにより、XhoI及びNdeIで切り出すことの出来る形に変換した。ベクターpUAL1(WO01/88144に記載)をEcoRIで切断後、平滑末端化しライゲーションを行うことにより、EcoRI切断部位を除去したpUAL2を作製した。pUAL2をPvuI/PvuIIで切断し、pSTV28(宝酒造社製)のPvuI/SmaIサイトに結合させ、pSTAL1を作製した。このpSTAL1をEcoRI/NdeIで切断し、先に述べたARRpと結合させ、pSTARRを作製した。図1にpUAL1からpSTARRを作製した模式と、それぞれのプラスミドの模式図を示した。
実施例1に記載のORF2、ORF2−149NSがキャンディダ・マルトーサで発現し、ペルオキシソームに配向するように、カルボキシル末端にペルオキシソーム配向シグナルを付加することにした。付加するペルオキシソーム配向シグナルとしては、カルボキシル末端にSer−Lys−Leu(SKL)のアミノ酸を使用することにした。pUCNTにクローニングされたORF2及びORF2−149NSを鋳型にして、配列番号17と18をプライマーとして使用して、ORF2S及びORF2S−149NSを作製した。pSTARRのNdeI、PstIサイトに、これらPHA合成酵素変異遺伝子を結合させ、pSTARR−ORF2S、pSTARR−ORF2S149NSを構築した。
最終的にPHA合成酵素変異遺伝子を連結するベクターには、pUTA−1(WO01/88144に記載)を使用した。pSTARR−ORF2S、pSTARR−ORF2S149NSより、XhoI/SalIで発現カセットを切り出し、pUTA−1のSalIサイトを結合させ、pARR−ORF2S及びpARR−149NSを構築した。さらに、作製したpARR−ORF2S及びpARR−149NSをSalIで切断し、pSTARR−ORF2SとpSTARR−ORF2S149NSより切り出したXhoI/SalIの発現カセットを結合させ、pARR−ORF2Sx2及びpARR−149NSx2を構築した。図2に、pSTARRからpARR−149NSx2等を作製した模式と、それぞれのプラスミドの簡単な図を示した。
(実施例3)形質転換体の構築
酵母菌の培養用に使用した試薬は、特に断らない限り和光純薬から販売されているものを用いた。宿主には、ADE1遺伝子破壊株であり、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されているキャンディダ・マルトーサAC16株(FERM BP−7366)を使用し、上記の本発明の遺伝子発現カセットを含むプラスミドpARR−ORF2S、pARR−149NS、pARR−ORF2Sx2及びpARR−149NSx2をそれぞれ導入した。宿主に構築したプラスミドを導入する方法は、電気パルス法で行った。遺伝子導入装置はBTX社製のELECTRO CELL MANIPULATOR600を用いた。キュベットはBIO MEDICAL CORPORATION CO.LTD製のBM6200を用いた。コンピテント細胞100μlにプラスミド1μlを加え、調製したコンピテント細胞/プラスミド溶液を100μl取り、キュベットに注入し、パルス装置にセットした。続いて、静電容量40μF、抵抗値246ohm、電圧1.9KVの条件で電気パルスをかけた。パルス後、それぞれのキュベットに1Mソルビトールを1ml加え、穏やかに混合し、室温で1時間放置した。プラスミドを導入後、選択プレート(0.67w/v%Yeast Nitrogen base without amino acid(Difco社製)、2w/v%グルコース、2w/v%寒天)で培養し、形質転換体を取得した。このうち、プラスミドpARR−149NSx2が導入された形質転換体は、AC16 pUTA−149NSx2(FERM BP−10019)として、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
(実施例4)形質転換体を使用したポリマー生産
ポリマー生産に必要な遺伝子を導入したキャンディダ・マルトーサ形質転換体を次のように培養した。培地は、YNB培地(0.67w/v%Yeast Nitrogen base without amino acid、2w/v%Glucose)を前培養用培地として用い、M2培地(12.75g/L硫酸アンモニウム、1.56g/Lリン酸2水素カリウム、0.33g/Lリン酸1水素カリウム・3水和物、0.08g/L塩化カリウム、0.5g/L塩化ナトリウム、0.41g/L硫酸マグネシウム・7水和物、0.4g/L硝酸カルシウム・7水和物、0.01g/L塩化鉄(III)・4水和物)に、2w/v%パームオイルと塩酸に溶解したトレースエレメント(1g/mL硫酸鉄(II)・7水和物、8g/mL硫酸亜鉛(II)・7水和物、6.4g/mL硫酸マンガン(II)・4水和物、0.8g/mL硫酸銅(II)・5水和物)0.45ml/Lを添加した培地を生産培地として使用した。
各形質転換体のグリセロールストック500μlを、50mlの前培養用培地が入った500ml坂口フラスコに接種して20時間培養し、300mLの生産培地を入れた2L坂口フラスコに10v/v%接種した。これを培養温度30℃、振盪速度90rpm、2日間培養という条件で培養した。培養液から遠心分離によって菌体を回収し、80mlの蒸留水に懸濁して、超高圧ホモジナイザー(APV社製Rannie2000;15000Psiで15分間)で破砕した後、遠心分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄した後、凍結乾燥した。
得られた乾燥菌体を粉砕し、クロロホルムを100ml添加し、一晩攪拌して抽出した。濾過して菌体を除去し、濾液をエバポレーターで1−2mlにまで濃縮し、濃縮液に約10mlのヘキサンを添加して、ポリマーを析出させた。このときの培養結果を表1に示す。分子量の測定は、以下のようにして行った。回収した乾燥ポリマー10mgを、クロロホルム5mlに溶解したのち、不溶物を濾過により除いた。この溶液をShodex K805L(300x8mm、2本連結)(昭和電工社製)を装着した島津製作所製GPCシステムを用い、クロロホルムを移動相として分析した。分子量標準サンプルには市販の標準ポリスチレンを用い、重量平均分子量として求めた。3HHモル分率は、NMR分析(JOEL、JNM−EX400)により測定した。
Figure 2004101796
上記結果が示すように、野生型のPHA合成酵素をコードする遺伝子からなる発現カセットを含むプラスミドpARR−ORF2S、pARR−ORF2Sx2によって形質転換された酵母に比べて、本発明のPHA合成酵素変異体をコードする変異遺伝子からなる発現カセットを含むプラスミドpARR−149NS、及びpARR−149NSx2によって形質転換された酵母では、ポリマー含有量及び3HH分率が向上し、本発明のPHA合成酵素変異体の活性向上効果が確認できただけではなく、得られるPHAの分子量も増加する傾向が見られた。このように、本発明のPHA合成酵素変異体の有用性が確認された。
(実施例5)二重変異体
PHA合成酵素の171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸をグリシンに置換した変異体を、実施例1に記載の方法を用いて作製した。変異を導入するためのプライマーとしては配列番号19と配列番号20を用いた。また、149番目のアミノ酸であるアスパラギンをセリンに、171番目のアミノ酸であるアスパラギン酸をグリシンに置換した二重変異体を、実施例1で作製したPHA合成酵素変異遺伝子ORF2−149NSを鋳型として、実施例1と同様の手法で作製した。このようにして、PHA合成酵素変異遺伝子ORF2−171DG及びPHA合成酵素二重変異遺伝子ORF2−149NS/171DGを完成した。
次に、これらの変異遺伝子を用いて、実施例2に記載の方法により、配列番号17と18をプライマーとして使用してシグナル配列を付加し、プラスミドpSTARRにクローニングして、pSTARR−ORF2S171DG、pSTARR−ORF2S149NS/171DGを構築した。この変異遺伝子発現カセットを、実施例2に記載の方法によりpUTA−1に導入し、プラスミドpARR−171DG及びpARR−149NS/171DGを作製した。次に、ターミネーターとしてALK1tの代わりにLAC4遺伝子(GenBank M84410)のターミネーターLACt(配列番号21)を用いた発現カセットを作製した。pSTARR−ORF2S171DG及びpSTARR−ORF2S149NS/171DGのALK1tをPstI/SalIで除去し、代わりに配列番号22と23に示すプライマーで増幅したLAC4tを導入したプラスミドを作製した。このターミネーターの置換されたPHA合成酵素変異体発現カセットを、それぞれXhoI/SalIで切り出し、プラスミドpARR−171DG及びpARR−149NS/171DGのSalIサイトに結合させ、PHA合成酵素変異遺伝子カセットの2個導入されたプラスミドpARR−171DGx2及びpARR−149NS/171DGx2を完成した。このうち、プラスミドpARR−149NS/171DGx2(FERM BP−10017)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに国際寄託されている。
これらのプラスミドを実施例3に記載の方法で、キャンディダ・マルトーサAC16株(FERM BP−7366)に導入し、実施例4に記載の方法でポリマー生産とポリマー分析を行い、その結果を表2に示し、実施例4の結果と比較した。
Figure 2004101796
Figure 2004101796
上記結果が示すように、野生型のPHA合成酵素をコードする遺伝子からなる発現カセットを含むプラスミドpARR−ORF2Sx2によって形質転換された酵母に比べて、本発明のPHA合成酵素変異体をコードする変異遺伝子からなる発現カセットを含むプラスミドpARR−171DGx2によって形質転換された酵母では、ポリマー含有量が向上し、PHA合成酵素二重変異体をコードする二重変異遺伝子からなる発現カセットを含むプラスミドpARR−149NS/171DGx2によって形質転換された酵母では、ポリマー含有量がさらに向上すると共に3HH分率が向上する事が明らかとなった。このように、本発明のPHA合成酵素変異体の有用性が確認された。
本発明により、生分解性及び優れた物性を有する、上記式(1)、(2)で示される3−ヒドロキシ酪酸や3−ヒドロキシヘキサン酸をはじめとする3−ヒドロキシアルカン酸を共重合してなる共重合ポリエステルを、酵母において効率的に生産することが可能になった。
[図1]実施例において、pUAL1からpSTARRを作製した模式と、それぞれのプラスミドの簡単な図である。
[図2]実施例において、pSTARRからpARR−149NSx2等を作製した模式と、それぞれのプラスミドの簡単な図である。

Claims (10)

  1. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるアエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素に、以下の(a)〜(h)のアミノ酸置換を少なくとも1つ行ってなるポリヒドロキシアルカン酸合成酵素変異体をコードするポリヒドロキシアルカン酸合成酵素変異遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
    (a)Asn−149をSerに
    (b)Asp−171をGlyに
    (c)Phe−246をSer又はGlnに
    (d)Tyr−318をAlaに
    (e)Ile−320をSer、Ala又はValに
    (f)Leu−350をValに
    (g)Phe−353をThr、Ser又はHisに
    (h)Phe−518をIleに
  2. 配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるアエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素に、以下の(a)〜(h)のアミノ酸置換を少なくとも1つ行ってなるポリヒドロキシアルカン酸合成酵素変異体をコードするポリヒドロキシアルカン酸合成酵素変異遺伝子に、ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAが付加されてなる遺伝子。
    (a)Asn−149をSerに
    (b)Asp−171をGlyに
    (c)Phe−246をSer又はGlnに
    (d)Tyr−318をAlaに
    (e)Ile−320をSer、Ala又はValに
    (f)Leu−350をValに
    (g)Phe−353をThr、Ser又はHisに
    (h)Phe−518をIleに
  3. ペルオキシソーム配向シグナルが、配列番号2又は配列番号3によって示されるアミノ酸配列からなる請求項2記載の遺伝子。
  4. ペルオキシソーム配向シグナルをコードするDNAの塩基配列が、配列番号4又は配列番号5によって示されるものである請求項3記載の遺伝子。
  5. アエロモナス・キャビエ由来のポリヒドロキシアルカン酸合成酵素をコードする遺伝子の遺伝暗号CTGの少なくとも1つが、TTA、TTG、CTT、CTC又はCTAに変換されているものである請求項2〜4のいずれかに記載の遺伝子。
  6. 請求項2〜5のいずれかに記載の遺伝子と、酵母で機能するプロモーター及びターミネーターからなる遺伝子発現カセット。
  7. 請求項1又は6記載の遺伝子発現カセットが、酵母に1つ以上導入されてなることを特徴とする形質転換体。
  8. 酵母がキャンディダ・マルトーサである請求項7記載の形質転換体。
  9. 請求項7又は8記載の形質転換体を培養して得られる培養物から、ポリエステルを採取することを特徴とするポリエステルの製造方法。
  10. ポリエステルが、下記式(1)で示される3−ヒドロキシ酪酸と下記式(2)で示される3−ヒドロキシヘキサン酸とを共重合してなる共重合ポリエステルである請求項9記載のポリエステルの製造方法。
    Figure 2004101796
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