JPWO2004018513A1 - 糖タンパク質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或いは糖タンパク質若しくは細胞分画のためのレクチンライブラリの使用 - Google Patents

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Abstract

細胞等の微妙な違いを反映する細胞表面の炭水化物、例えば糖鎖や、細胞表面糖タンパク質の違いを認識し、それにより各種の細胞等を識別、同定或いは分画するのに役立つレクチンおよび当該レクチンにより構成されるレクチンライブラリーを提供する。

Description

本発明は、複数の種類のレクチンから所定の解析能を有するレクチンを選別する方法およびその方法で選別されたレクチンに関する。
近年の糖鎖工学の進歩は目ざましく、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、および、細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等の高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは、阻害し合いながら高度で精密な生体反応を制御する機構が明らかにされようとしている。また、細胞表面の糖鎖や、糖鎖−レセプター間の相互作用異常による疾病の発生、あるいは、エイズ等のウイルス感染における糖鎖の役割等に関して盛んに研究されている。
特に、正常細胞と癌細胞、あるいは分化段階の異なる細胞等、ある細胞を他の細胞と分別し同定するために、細胞がその表面に持つ糖鎖を利用できる。例えば、糖鎖は、癌細胞については悪性度に応じて、幹細胞についてはその分化段階に応じて変化するといった報告が数多くなされている。従って、糖鎖の解析(例えば、分別や同定)は、細胞の識別・同定や分画においても極めて重要なものと考えられている。
このような糖鎖に代表される細胞表面等の炭水化物解析の手段において、特異的糖鎖(炭水化物)結合活性を有するレクチンの利用は、大変有効であると考えられる。しかしながら、天然に存在するレクチンの種類は限られており、特に、上記のような糖鎖解析に十分な種類のレクチンが利用できないのが現状である。即ち、糖鎖解析を含む炭水化物解析では糖鎖等の微妙な違いの判別が極めて重要となり、それを判別し得る様々な特異性を示すレクチンが十分且つ系統的に準備される得ることが、当該解析の鍵を握る課題となる。
本発明は、細胞等の微妙な違いを反映する細胞表面の炭水化物、例えば糖鎖や、細胞表面糖タンパク質の違いを認識し、それにより各種の細胞等を識別、同定或いは分画するのに役立つレクチンおよび当該レクチンにより構成されるレクチンライブラリーを提供する。
特に、本発明では、複数の種類のレクチンから、指標となる特定の細胞等に対するパニングまたはその他の方法で所望の解析能を有するレクチンを選別する。このようにして選別された1またはそれ以上のレクチンを用いて、細胞等の解析を行うことができる。更に、選別されたレクチンは、診断薬または診断キットととして利用することができる。また、そのようにして選別されたレクチンの中には、その他の手段では分離できないような特定の細胞等に対して、極めて強固且つ特異的に結合するものが存在することが明らかとなった。本発明は、かかるレクチンによる細胞等の分画、ひいてはそのようなレクチンを利用したプラズマフェレシスの方法も提供する。
従って、本発明の第一の局面は;
複数の種類のレクチンから、指標となる細胞若しくは擬細胞体または糖タンパク質若しくは糖鎖に対する親和性に基づいて選別した少なくとも1種類以上のレクチンを含む、糖タンパク質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或いは糖タンパク質若しくは細胞分画用レクチンライブラリである。
指標となる細胞等は、必ずしも識別・診断・分画の対象となる細胞自体等である必要がないことが知見された。すなわち、識別対象の細胞と同一の細胞に対する親和性に基づいて特定のレクチンを選別するのではなく、識別対象と何らかの特性において関連付けられる細胞等に対する親和性に基づいたとしても、本発明におけるレクチンの選別が所与の目的を達成し得る。これは、本発明のライブラリの作製において、必ずしも識別対象の糖鎖(炭水化物)情報に関する完全な知見が必要ないことを意味する。
例えば、IgAや骨芽細胞の識別に使用するレクチンライブラリは、赤血球やグライコフィリンを指標に用いて、それらに対する親和性に基づき構築することができる。そして、この方法は、IgAや骨芽細胞等の上に存在するO−結合型糖鎖を認識するためのレクチンの選別に有用である。特に、そのようにして選別されたレクチンから構成されるライブラリは、IgAグライコフォーム識別、骨芽細胞亜集団識別に好適に用い得ることが示された。また、他のレクチンライブラリも、間葉系幹細胞由来の細胞亜集団識別または癌細胞転移性識別に好適に使用できることが判明した。
次なる、本発明の局面は;
レクチンと被検体との相互作用の表示が、被検体に対する他の親和性物質により行われる方法に関する。
すなわち、上記のようにして作製されたレクチンライブラリによる細胞等の識別において、その識別結果を表示する方法として、例えば、追加的な抗原−抗体反応のような、細胞等の他の特異性を利用できる。
更に、本発明のもう一つの局面は;
上記のレクチンライブラリを含む診断キットの提供にある。つまり、本発明のレクチンライブラリは、任意の形態のキットとして利用でき、その非限定的例としては、診断試薬、レクチンチップおよび各種のセンサーを挙げることができる。
更に、本発明の最後の局面では;
少なくとも1種以上のレクチンを含む本発明のレクチンライブラリを、細胞の分画/分取の手段として用いる方法が提供される。
驚くべきことに、本発明のレクチンライブラリの作製において、特定の細胞に対して非常に高い特異性と親和性を有するレクチンが存在することが見出された。そして、これにより、当該細胞の該レクチンによる分画/分取或いは除去が効率的に達成し得ることが判明した。これにより、本発明のレクチンライブラリは、プラズマフェレシス等への応用が可能であることも示されたのである。
図1Aは、MAHモデルの立体構造を示すものである。
図1Bは、MAHの立体構造を模式的に示したものである。図中、ループCとDは、その間に糖鎖を挟み込み、所定の糖鎖に結合性を示すことにより、糖鎖の異同を認識すると考えられる。
図1Cは、糖鎖とMAHの結合の様子を示している。
図2は、MAHをコードしたcDNAの塩基配列と予想されるアミノ酸配列を示した図である。図2のMAHのアミノ酸の配列表で、ループDの位置が、3番目(一番下)の下線によって示されているが、その中でも、糖鎖との結合性に大きな影響を及ぼすと思われる5つのアミノ酸が四角で囲われている。尚、図中▲1▼は、Xho I(ctcgag)制限酵素部位を、▲2▼は、Bgl II(agatct)制限酵素部位を、▲3▼は、Spe I(actagt)制限酵素部位を、示している。
図3は、野生型イヌエンジュマメレクチン(MAH)の認識する糖鎖構造である。
図4は、IgA1糖鎖構造のバラエティを図解する図である。
図5は、MAHのループCのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
図6は、ファージデイスプレー型レクチンライブラリの概略である。
図7は、パニングによる人工レクチンの回収手順である。
図8は、細胞表面に発現している糖鎖を模式的に示した図である。細胞40の細胞膜42には、膜貫通タンパク質がはまり込んでおり、細胞の外側に出ている。この出た先にO−結合型糖鎖52やN−結合型糖鎖54が葉のように結合している。赤血球膜上に発現している糖タンパク質であるグリコフォリンもよく似た構造を持つ。
図9は、糖鎖グライコフォームの異なるIgAの識別および間葉系幹細胞由来の細胞の亜集団識別に用いたレクチンライブラリに含まれるレクチンのアミノ酸配列を示す図である。
図10は、ヒト赤血球によるパニングにより得られたクローンの糖鎖特異性を示す図である。
図11は、レクチンチップの一例およびその使用方法(IgAについて)を示す図である。
図12は、糖鎖グライコフォームの異なるIgAのレクチンライブラリに対する結合パターンを示す図である。
図13は、レクチンチップの一例およびその使用方法(骨芽細胞の分化度プロファイリングについて)を示す図である。
図14は、間葉系幹細胞由来細胞の亜集団のレクチンライブラリにおける結合パターンを示す図である。
図15は、MAHのループDのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
図16は、転移性の異なる癌細胞のレクチンライブラリに対する結合パターンを示す図である。
図17は、KUM5細胞(間葉系幹細胞由来細胞の亜集団)のレクチンライブラリにおける結合パターンを示す図(図17A)とライブラリ内のY−9レクチンの他の亜集団(KUSA−A1および9−15C)に対する結合性の比較(図17B)を示す。
発明の詳細な説明
レクチン
本発明において、複数の種類のレクチンは、天然のレクチンおよび/または人工のレクチンから構成される。
本発明の天然のレクチンには、動物性のレクチンおよび植物性のレクチン並びにその他のレクチンが含まれる。好ましい天然レクチンの非限定的な例として、植物性のレクチン、特に、マメ科のレクチンを挙げることができ、いっそう好ましいマメ科のレクチンとして、Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)由来のレクチンを挙げることができる。
人工のレクチンには、例えば、既知の化学的な手法により合成したレクチンも含み得るが、生命工学的手法により作製したレクチンが好ましい。特に、遺伝子工学を利用して、天然のレクチンを遺伝子的に改変して得られるレクチンが好適に利用できる。特に好ましい遺伝子改変は、レクチン遺伝子内の特定の領域のDNAを操作することにより達成され得るが、これに限定されない。
DNA操作を行う特定の領域としては、天然レクチンの糖鎖結合(認識)部位をコードする領域が挙げられ、当該DNA操作は、レクチンの糖鎖結合部位のアミノ酸配列に対して、当該部位の糖鎖結合活性を完全に損ねない範囲において、欠失、置換および/または付加を導入するものであり得る。
そのようなDNA操作は、レクチンの立体構造解析からも設計することができる。図1Aおよび図1Bは、MAHレクチンの立体構造模式的に示すものであり、図1Cは、更に、当該レクチンと糖鎖との結合の様子を示しているが、これらの図から、図中のループCとDは、その間に糖鎖を挟み込むことで、糖鎖認識および結合部位を形成することが判る。従って、当該糖鎖認識部位であるループCおよびDをコードするDNAが操作の対象となり得る。同じくMAHレクチンにはループAとBが存在し(図示せず)、これらのループをコードするDNA領域もDNA操作の対象として好適であり得る。
より詳細には、例えば、図2に示されるMAHレクチンの塩基配列およびアミノ酸配列において、塩基配列466〜498(アミノ酸配列127〜137)が、ループCに、塩基配列721〜780(アミノ酸配列212〜231)が、ループDに対応する。従って、これらの領域が改変の対象領域として含まれてよい。ループCの非限定的な改変例は、図5に示すような、位置127〜137のアミノ酸配列に対するアミノ酸の挿入や図6に示すような、所定のアミノ酸を固定しての、残りのアミノ酸のランダム改変が挙げられる。また、ループDでは、図15に示すような、アミノ酸配列219〜224に対する挿入や置換が例示できる。尚、本明細書においては、塩基配列は、開始コドンから数え、アミノ酸配列は、N末端アミノ(Met)酸残基から数える。
MAH以外のマメ科のレクチンにも、同様に、ループAとループBおよびループCとループDが存在し、それらが糖鎖認識−結合に関与しているとされており、従って、それらのレクチンにおいても当該ループが改変の対象となり得る。
レクチンの選別
本発明では、複数種類のレクチンから、目的とする糖鎖解析に有用なレクチンを少なくとも1種以上選別し、それらによりレクチンライブラリを形成する。そして、形成されたレクチンライブラリを用いて糖鎖に代表される炭水化物自体或いは糖鎖(炭水化物)を持つ細胞および糖蛋白の同定を行うことができる。
上記レクチンの選別は、任意の手法によることもできるが、特定の糖鎖を有する、細胞若しくは擬細胞体、糖タンパク質或いは当該糖鎖自体またはその任意の構成単位を利用したパニングを利用することが有利である。該パニングは、複数の種類のレクチンの各々に対して個別に行ってもよく、また複数種類のレクチンを含むレクチン混合物全体に対して行ってもよい。パニングに用いる細胞や擬細胞、糖鎖(単糖を含む)等は、本発明のレクチンライブラリが、識別、診断または分画すべき対象である血清、細胞、および糖タンパク質の鍵となる特性を反映しえるものであり得る。
すなわち、特定の細胞の分化状態識別を目的とするライブラリの作製においては、特定の分化状態を反映し得る細胞をパニングに用いることができ、その際、当該細胞の糖鎖に関する詳細な知見は必ずしも必要でない。
更には、例えば、ヒト骨髄細胞から特定細胞への分化能を有する細胞の亜集団同定、プロファイリングまたはその性質の予測において用い得るレクチンライブラリを作製する目的で、複数のレクチンを、ヒト赤血球に対してパニングしてもよいのである。
ヒト骨髄細胞から心筋細胞への分化能を有する細胞は、CD34と呼ばれる幹細胞関連抗原を有しており、該CD34は、ムチン(後に詳述する)とよばれる糖タンパク質のひとつとして知られている。ヒトCD34には、N末端を含む細胞の外側の260アミノ酸残基が存在し、当該領域にO−結合型糖鎖が付加される。当該糖鎖が付加され得るアミノ酸であるスレオニン(T)とセリン(S)は、前記N末端から144番目までに特に集中している。すなわち、ヒトCD34は、当該領域において、TTT、STS等の連続するT/S反復配列をもち、これはムチン様糖タンパク質に特徴的な構造とされる(図8)。
このヒトCD34の糖鎖に関する構造は、ヒト赤血球のそれと類似しており、従って、当該CD34を発現しヒト骨髄細胞から心筋細胞への分化能を有する細胞、例えば、9−15C細胞と、骨髄細胞への分化能を有する細胞であるKUSA/A1細胞を識別するレクチンライブラリを作製するためには、その構成レクチンを選別するパニングにおいて、ヒト赤血球を使用してもよい。
同様に、IgA1分子は、そのヒンジ部アミノ酸配列にスレオニン(T)とセリン(S)を持っており、O−結合型糖鎖を付加した構造となっている(図4)。また、質量分析計等によって解析を行うと、IgA腎症患者のIgA1分子に付加されている糖鎖は、健常人と比較してシアル酸、ガラクトースが欠如した糖鎖不全IgA1分子であることが報告されている。一方、ヒト赤血球上にはグライコフォリンとよばれるシアル酸を含むO−結合型糖鎖がクラスター状にペプチドに付加している糖タンパク質が存在しており、IgA1ヒンジ部に近い糖鎖−ペプチド複合体としての構造をもつ。それ故、レクチンの集合体からヒト赤血球でパニングして選別したレクチンにより、IgAグライコフォーム識別のためのレクチンライブラリを作製し得る。
尚、前記のように、選別には、パニング以外の種々の方法をとることができる。また、選別とは、単一のレクチン集合体内から選別するのみならず、1または所定の数の種類のレクチン群を適宜組み合わせることにより、レクチンライブラリを形成することも含む。例えば、遺伝子改変レクチンにおいて、所定の位置(例えば、MAHレクチンのループD)に1のアミノ酸(1種類)を挿入することにより、1の種類の遺伝子改変レクチンを生成し、ストックしておく。同様に他の種類のアミノ酸を同じ位置に挿入することにより別の種類のレクチンのストックができる。更に、挿入する位置を変更することにより、更に多くの種類のレクチンをその種類ごとに分別してストックすることができる。これらのレクチンは、その特性が類似していると思われるが、種々の試験によりその違いも明らかにすることができる。このようにして、種類別に機能を特定したレクチンストックを適当にブレンドすることにより、同様に細胞等の識別に適切なレクチンライブラリを作成することができる。なお、本発明のレクチンライブラリには、その構成レクチン内に、識別しようとする1またはそれ以上の細胞等に対して検出可能な親和性または結合性を示すものが少なくとも1つ存在することが必要であり、また、識別しようとする細胞等が2以上の場合は、少なくとも2以上の細胞等のいずれもに対して親和性または結合性が高いものが更に含まれていることがより好ましい。また、識別しようとする2またはそれ以上の細胞等に対して共に親和性または結合性が低いものが更に含まれていることが更により好ましい。これらを比較することにより、細胞等の識別が的確に行われることとなるからである。このようにして、必要な種類および数のレクチンを含んだレクチンライブラリは、本発明において好適に使用され得る。
ライブラリの使用
上記のようにして作製されたレクチンライブラリは、糖タンパク質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或いは糖タンパク質若しくは細胞分画において使用することができ、特に病態における糖鎖の差異を識別するために有利に使用できる。
例えば、ムチンは、気管、胃腸等の消化管、生殖腺等の内腔を覆う粘液の主要な糖タンパク質である。ムチンは、O−グリコシド結合を介してポリペプチド(コアタンパク質、アポムチン)に結合した多数のO−結合型糖糖鎖を持つ。ほとんどのムチンが多くの反復配列ドメインを持っている。これらの反復配列ドメインはセリン、スレオニンに富み、完成されたムチンでは、ほとんどにO−結合型糖鎖が付加している。
MUC1ムチン上に発現する糖鎖と癌の進行に伴う悪性挙動との関連も示唆されており、これを識別し得るレクチンライブラリは有効であると考えられる。例えば、大腸癌においてMUC1ムチン上に発現している糖鎖であるシアリルルイスX抗原の発現が多いほど癌細胞の浸潤等が起こり、悪性度が高く、シアリルルイスX抗原の発現量は5年生存率と逆相関していることが報告されており(Cancer Research 53,3632−3637,August 1,1993)、本発明のレクチンライブラリは、当該悪性度の識別に有効であり得る。
更に、ムチンを含む細胞表層の糖質の変化が、細胞の癌化の特徴として認められている。これらの変化が、細胞の接着性の変化、あるいは転移のような癌細胞の異常な挙動、免疫による防御からの回避に関与していると考えられている。このことから、例えば糖タンパク質であるムチンの糖鎖修飾度合いを本発明のライブラリで測定することができれば、特定の癌細胞の悪性度を識別・予測できると考えられる。
とりわけ、癌の転移においては上述ムチン構造のうち、シアル酸の役割が大きいと報告されており、シアル酸を含むO−結合型糖鎖構造を認識するMAHとその遺伝子改変レクチンをレクチンライブラリとして用いることで、癌の転移についての血清或いは細胞診断が達成され得る。
一方で、ムチンに対する抗体で癌の悪性度を判別しようという試みもある。しかしながら、モノクローナル抗体は特定のムチン抗原に高い特異性を持つものの、その抗原となる糖鎖の発現は、各組織の分化の各段階で時間的・空間的に厳密に制御されており、従って、モノクローナル抗体による手法は、ある時点における糖鎖情報にすぎない。糖鎖の種類と特異性の強弱を識別できるレクチンライブラリにより糖鎖の時間的、質的、量的な変化を見ることで、病態そのものの診断だけでなく、効率的な早期診断・予後診断・治療が達成され得る。
感染、炎症、癌、神経障害、アルツハイマー等の病態に伴い変化する糖鎖は、上述のようなムチンに限られない。N−結合型糖鎖の変化を伴う疾患、その他の糖タンパク質または糖脂質の糖鎖の変化を伴う疾患も報告されており、糖鎖の種類と特異性の強弱を識別できるレクチンライブラリは、そのいずれに対しても糖鎖の時間的、質的、量的な変化を見るために有用と考えられる。
加えて、本発明のライブラリは、特定の糖タンパク質や細胞を分画する目的においても有用である。その目的においては、ただ1種類のレクチンからなるライブラリーでも十分であり得る。特に、遺伝子改変により作製したレクチンの中から選択されたレクチンにおいて、特定の細胞に対して極めて高い親和性を有するものが見出され、そのようなレクチンを単独、或いは組み合わせて、特定の糖タンパク質や細胞を効率的に分画し得る。更には、当該分画をプラズマ・フェレシスにも応用することが可能である。
以上のとおり、本発明のレクチンライブラリは、各種の細胞等の識別、診断および分画に有用であるが、特に、該ライブラリは、IgAグライコフオーム、転移性の異なる癌細胞、間葉系幹細胞由来の細胞集団を識別するために適用し得ることが示されており、それらは、本発明のレクチンライブラリの好適な使用例を構成する。
キットおよび装置
本発明のレクチンライブラリを適用して、各種の診断キットおよび装置を作製できる。例えば、本発明のレクチンライブラリ内の各レクチンを、基材上の所定の位置に、適当な順列で配列して固定し、細胞識別等のための装置を作製することができる。ここで、レクチンを固定する部分は、ウェルのようなようなものであってよく、単なるスポットであってもよい。また、基材は、チップ、プレート、ビーズ等、いかなる材質や形状を有してもよく、それがレクチンを固定できるものであればかまわない。
好ましくは、基材上に複数のレクチン固定する際、当該レクチンを、明瞭な識別パターンが表示さるように配列して固定する。例えば、細胞表面の糖鎖に対して異なる親和性により結合する複数のレクチンを特定の配置で固定することで、その配列パターンから容易に識別結果が判定できるようにする。
このような配列は、チップまたは各種のセンサーとして診断キット或いは装置を形成する際に特に有効であり、その製造は、公知のDNAチップ作製手順等を適宜変更して成し得る。
なお、上記のようなチップにおいては、目的の細胞若しくは疾病診断に最適となるように、個々のレクチンを固定する位置を適切に変化させることが好ましいことは言うまでもない。更に、上記材質の基材は、合成樹脂(プラスチックを含む)、金属(白金、銀、銅、金、シリコン等を含む)、雲母、および、これらの混合物を含んでよい。
一方で、キットは、本発明のレクチンライブライを含む試薬の形として供給され得、そのような試薬の調製方法も、当業者にとって標準的な手法により達成し得る。なお、レクチンと被検体の結合、例えば、レクチンと特定の細胞の結合を検出するためには、レクチンまたは該細胞を予め標識し、レクチン−細胞複合体内の標識を測定することでも達成できるが、両者を特に標識せずに、例えば、該細胞の有する他のエピトープを認識する抗体を用いて、それによりレクチン−細胞複合体の存在或いはその量を決定してもよい。
或いは、より複雑な態様においては、固体支持体に固定するための抗被検体抗体と本発明のレクチンライブラリおよび標識抗レクチン抗体から本発明のキットを構成し得る。そのキットでは、まず抗被検体抗体をウェル内等に固定し、次に、被検体を当該抗体と接触させて抗体−被検体複合体を形成し、次いで、本発明のレクチンを添加して被検体に結合させ、最後に結合したレクチンを標識抗レクチン抗体で検出する。
その他の様々なバリエーションも実施可能であり、それらのバリエーションもまた当業者にとって容易に理解されるであろう。
従って、本発明のキットには、レクチンライブラリ以外の追加の試薬が含まれ得、当該追加の試薬は、好ましくはレクチンと被検体の相互作用以外の親和性、例えば抗原−抗体反応に基づく親和性を有する物質であり得る。
また、試薬以外の特定の形態のキットとして本発明のライブラリを用いる場合においても、検出は、被検体そのものの染色を通して、または被検体を標識した蛍光により行ってよく、または分子間相互作用の質量変化若しくは電流として検出してもよい。分子間相互作用の質量変化は水晶発振子天秤でも表面プラスモン共鳴法であってもよい。または、糖タンパク質の糖鎖をレクチンライブラリで解析したのち、2次抗体によって糖タンパク質の蛋白を蛍光標識してもよく、糖タンパク質の蛋白をパルスレーザの照射によってイオン化した蛋白質を質量分析計によって検出してもよい。勿論、これらを組み合わせも可能である。
例えば、チップの例としては、本発明におけるレクチンライブラリの個々の種類のレクチンを所定の位置に固定して、異なる種類のレクチンを含むレクチン固定部を作り、その上に、例えば、血清サンプルを流して、該サンプルをレクチンに接触させる。サンプル中の、前記レクチンに結合しない、若しくは実質的な結合力を有さない血清糖蛋白を洗い流した後に、結合して固定された血清糖蛋白について、その糖以外の構造に結合性のマーカーを結合させる。余分なマーカーを洗い流した後に、発色等によりマーカー判読できるようにして、血清の識別を行うことができる。
また、血清糖蛋白の糖鎖以外の構造に結合性を有する抗体を固定しておき、その上に、血清サンプル等を流して抗体に接触させ、当該抗体の抗原(例えば血清糖蛋白)を固定し、前記抗体に対して結合しない、若しくは実質的な結合力を有さない抗原(血清糖蛋白)を洗い流した後に、結合して固定された血清糖蛋白の糖鎖構造を識別するための種々のレクチンを結合させ、余分なレクチンを洗い流した後に、発色等により判読できるようにして、血清の識別を行うことができる。
逆に、検体を固定した場合は、レクチンライブラリを含む識別剤をその上に流し、各レクチン固有のマーカー(例えば、タグを遺伝子工学的につけて、そのタグの発色等、または、タグ特有の結合性マーカーを用いる)により、結合したレクチンの種類を特定し、検体の識別や診断を行うことができる。
以下、本発明を具体的な例を上げ、図を参照しつつ、より詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
概要
シアル酸を含む糖鎖に特異的なマメ科レクチンであるMaackia amurensis hemagglutinin(MAH)の糖結合部位に関連すると思われる部分の少なくとも一部を遺伝子工学的手法でランダムに改変し、ランダムに改変したレクチンから複数の種類の異なる糖鎖のバリエーションを見分けられる複数の人工のレクチンを作製した。また、得られた人工レクチンの集合体を利用して、所定の細胞等を使用して種類の異なる細胞への結合パターンから細胞の種類の違いを見分けることができるレクチンを選別し、1つのレクチンライブラリを作成した。そして、このレクチンライブラリにより、生物学的に重要な糖鎖に特異的なレクチンを選別するための、スクリーニング系を確立することができた。ここで、哺乳類の細胞には、わずかな構造上の差異を有する多様な複合糖質が存在していることが知られている。また、このように多様な構造を識別できるレクチンを生成することは非常に有用であると考えられる。このレクチンライブラリは、糖鎖がシアル酸残基、即ち、Neu5Acα2−3Galβ1−3(Neu5Acα2−6)GalNAc(4)からなる炭化水素配列を認識することができる。また、別のイソレクチンエンジニアリングであるMaackia amurensis leukoagglutinin(MAL)は、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAc(5)配列を特異的に認識することができ、この両者のレクチンは、マメ科植物(legume)や他のレクチンの間でも独特なものである。MAHは、相対分子量(relative molecular mass)29,000であり、サブユニットのダイマーからなる。MAHにエンコードされたcDNAのヌクレオチド配列およびそれから導き出されたアミノ酸配列では、MAHは287のアミノ酸からなり、30のアミノ酸シングルペプチドを含んでいることを示している。推定されているMAHの糖鎖認識ドメインは、そのアミノ酸シーケンスを他のマメ科植物(legume)のレクチン(7)のアミノ酸シーケンスと比較すること、および、MAHにその結合特性を賦与するこれらのアミノ酸により定義されるこのドメインの遺伝的変異の古くからの研究により同定されている。また、Neu5Acα2−3Galβ1−3(Neu5Acα2−6)GalNAc(8)を含むMAHの3次元構造のコンピューターモデルから、これらの観察が確認された。
[ループC改変レクチンの赤血球パニング法によるレクチンライブラリの取得]
MAHレクチンのループCにおけるランダムな改変を行った。MAHのループCの糖鎖認識部位に相当するアミノ酸配列のうち、糖鎖の認識およびレクチンの構造保持のために必要と考えられるAsp127、His32、Asp135は保存して変異を加えなかった。
[ループC改変MAHの作製]
MAHレクチンはファージ上に発現し、赤血球を凝集することを確認したのちにMAHのループC糖鎖認識部位は、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold DNA polymerase(PE Biosystems社製))によって、パーキン・エルマー2400熱サイクル装置(Perkin−Elmer 2400 thermal cycler)でランダムに改変された。このとき用いたプライマーおよびリバース・プライマー(reverse primer)を表1に示す。
Figure 2004018513
PCR生成物を得るために次のようなプロトコールが用いられた。まず、95℃で9分間、(94℃で1分間、54℃で1分間、72℃1分間)のサイクルを30回である。生成物は、過剰量の制限酵素EcoRIおよびBamHIによって処理した。
生成物は、制限酵素EcoRI/BamHI処理野生型MAH−pComb3(EcoRI/BamHI−digested w.t.MAH−pComb3ファージミド(pComb3phagemid vector having w.t.MAH cDNA))にライゲートされた。
[ファージの準備]
MAHレクチン−pComb3は、大腸菌(E.coli)SURE2細胞(Stratagene社製、La Jolla、CA)に組み込まれた。この細胞を50μg/ml カルベニシリン(carbenicillin)を含むHEMプレート(24g/L tryptone、48g/L yeast extract、10g/L MOPS、pH7.0)上で、37℃で8時間培養した。細胞は、プレートを10ml HEMに浸して、はがし、回収した。細胞を含むHEM培地を、100ml HEM((pH6.9、supplemented with 1mM CaClおよび1mM MnCl)/carbenicillin)1−2時間培養した。A600を約0.3になるように調製し、培養細胞をVSCM13helper phage(約1012pfu;Stratagene社製、La Jolla、CA)に感染させた。感染したファージは、30℃で12時間振盪して培養し、ポリエチレン・グリコール8000およびとNaCl沈殿によって一晩かけ4℃で、培養物から単離した。遠心分離した後、ファージ・ペレットは、トリス緩衝生理食塩水(Tris−bufferd saline(TBS:50mM Tris−HCl,pH7.5 containing 150mM NaCl)+1%bovine serum albumin(BSA))に懸濁した。
[ヒト赤血球細胞によるパニング]
パニングには、ヒト赤血球細胞を用いた。各パニングにおいて、約1012pfuのファージを、1% BSAを含む600μlのTBSに5μlのヒト赤血球細胞を懸濁した液に加え、4℃で5時間の回転式培養した。細胞をペレットとして回収し、1mlのTBSで4℃で2回洗浄した。ファージを含む最終細胞ペレットに、2mlの(OD600=1)Sure cellsを加えて培養した。37℃で15分間培養した後、大腸菌細胞を、multiple HEM(pH7.0)/carbenicillin plates上に移し、37℃で8時間培養した。大腸菌細胞培養上澄みからファージ懸濁液を調製し、この操作を3回繰り返した。
[改変レクチンのDNA配列決定とフラグ・ペプチド導入]
1回目のパニングにより得られたクローンは2.74X10個、3回目のパニングののちに得られたクローンは1X10であった。ランダムに選んだ288クローンのアミノ酸配列を決定したところ、そのうちの10クローン(図9、Y1〜Y10)が野生型MAHと異なるアミノ酸配列を持っていた。
各改変MAH cDNA−pComb3は、センス・プライマー(sense primer)N−Flag−XhoI:5’−CCAGGTGAAACTGCTCGAGTCAGATG−3’を用い、また、アンチセンス・プライマー(antisense primer)N−Flag−BglII:5’−TCCACCGCCAGATCTCTATGCAGTGTAACG−3’を用いて、PCRされた。得られたPCR生成物は、PCR回収キット(pCR purificatin Kit(QIAGEN社製))を用いて回収し、制限酵素XhoIおよびBglIIによって処理した。処理されたものは、XhoI/BglII消化したpFlag−ATS(Sigma社製)にライゲートした。得られた各プラスミドは、大腸菌(E.coli)JM109に組み込んた。
[フラグ融合プロテインの発現]
既知の発現プラスミドを含む大腸菌(E.Coli)JM109を、37℃で3時間、1mM CaCl,MnCl,20mM MgClを含むHEM培地において培養した。isopropyl β−D−thiogalactoside(IPTG:final concentration 1mM)を加えてフラグ融合プロテインの発現を誘起したのち、さらに37℃で3時間培養した。培養した大腸菌を、9600rpmで遠心分離してペレットとし、TBS(Tris Buffered Saline)に懸濁した。この懸濁液を液体窒素と37℃のウォーターバスを用いて、凍結と解凍を5回繰り返した。得られた懸濁液は、4℃、30分間15000rpmで遠心分離した。フラグ融合プロテインが含まれている上澄みを取り、BCAプロテイン・アッセイ・キット(BCA protein assay kit(PIERCE社製))によって蛋白質成分を定量した。
[IgAグライコフォームの識別]
上述のレクチンライブラリをIgAグライコフォーム識別法に適用する場合の1例を以下に順序をおって説明する。
1)MAHレクチン(イヌエンジュマメレクチン)糖認識部位のアミノ酸配列を改変した遺伝子改変レクチンライブラリーを作成する。
2)IgA腎症患者IgAに親和性の高いレクチンをパニング法により選択し、レクチンサブライブラリーを作製する。
3)上記の2)で得られたレクチンサブライブラリーの中から必要に応じIgA腎症患者と健常人のIgAの違いをよく反映するレクチンを選び、マイクロタイタープレートに固定したレクチンプレートを作製する。
4)IgAのグライコフォームのレクチンライブラリーによる識別IgA腎症患者と健常人の血清IgAのレクチンプレートへの結合パターンの比較・解析を行う。
5)血清診断アッセイ条件の検討市販健常人IgAに糖鎖を酵素的・化学的に付加し、人工IgAを作製する。健常人血清に人工IgAを混合し、レクチンプレートを用いたパターン解析を行う。血清中に存在する他の血清蛋白質の影響を検討し、アッセイ条件の最適化を行う。
本方法のメカニズムをより詳しく説明すれば、IgA 腎症患者でO(オウ)−結合型糖鎖の糖鎖異常が見られるIgAヒンジ部分のアミノ酸配列のうち、O(オウ)−結合型糖鎖を付加できるのはセリンまたはスレオニン残基のある5箇所であり、O(オウ)−結合型糖鎖のパターンは6種類あるので、ヒンジ部分O(オウ)−結合型糖鎖の位置と糖鎖構造は理論上6通り、つまり7,776通りあることになる。ひとつひとつの可能性を従来から行われている煩雑な糖鎖解析によって調べるととは困難であるが、O(オウ)−結合型糖鎖を認識するレクチンへのON/OFFによってパターン解析を行うことができると考える。ひとつのレクチンに対するON/OFFでは2通りの糖鎖結合様式を調べることができ、n個のレクチンでは2通りのパターン認識が行えるはずである。したがって、計算上はヒンジ部分の糖鎖異常7,776通りを解析するために必要なレクチン数は13個である。実際には糖鎖構造および糖鎖の位置情報を顕著に示すことのできるレクチンがあっての理論上の数字ではあるが、基質にブロットできる数百個のレクチンからの情報でIgAヒンジ部分の糖鎖構造と位置を解析できる可能性が高い。有用なレクチンライブラリーを得るために、患者血清IgAと健常人血清IgAの違いをもっとも大きく反映するレクチン群をクラスター解析によって取得することができ、有効なレクチンライブラリーを構築することができる。そのレクチンライブラリーを用いて、IgA腎症患者と健常人血清IgAのグライコフォームの違いをパターンにより解析する(図11)。この図において、試験管62に入った血清IgAを含む液62をピペット64で取り、レクチンチップ70の上に固定させているレクチンライブラリの各種レクチン72の上に滴下し、洗浄後抗IgAにより発色させ、発色したスポット74としないスポット72により1つのパターンを作ることができる。これを表80にまとめれば、検査結果が定性および定量的に判断でき得る。この図では、複数のO−グリカンを含む糖タンパク質であるIgA1のプロファイリングを簡単に行うようすが示してある。慢性腎不全状態になっているような重症患者との違いのほか、IgA腎症と診断されていない軽症患者予備軍の早期診断への応用可能性もある。
以上のことを確認するために、以下の実験を表2に示す材料で行った。
Figure 2004018513
Figure 2004018513
96well−ELISA プレートにHuman−IgA1を50μl(0.25μg/well)ずつ入れ、4℃で一晩静置して抗体をウェルに固定した。ウェルをTBSで3回洗い、3%BSA/TBS 200μlを加え、室温でブロッキングした。3時間後、ウェルをTBSで3回洗い、各ウェルに人工レクチンを含むライセートを50μl(50μg/well)ずつ入れた。ここで用いたレクチンライブラリのペプチド配列を図9に示す。ここでは、N末から数えた127番目のアミノ酸のから137番目のアミノ酸の配列が記載されているが残りは天然のMAHレクチンのアミノ酸配列と同じである。図からわかるように、このレクチンライブラリには、クローン1から10(Y1〜Y10)までの種類の人工レクチンが含まれていた。室温で2時間おいてライセート中のレクチンを結合させたのち、ウェルをTBST(0.1%Tween/TBS)で3回洗い、mouse anti−FLAG M2 monoclonal抗体(SIGMA#F−3165)を50μlずつ入れた。室温で30分反応させてから、ウェルをTBSTで3回洗い,HRP−goat anti−mouse IgG(H+L)抗体(Zymed #62−6520)を50μlずつ入れた。室温で30分反応させたのち、ウェルをTBSTで3回洗い、各ウェルABTS/Hを50μlずつ加えて発色させ、プレートリーダーで吸光度(405、490nm)を測定した。IgA1および糖鎖が切断されたIgA1について、各人工レクチンへの結合が測定され、以下のような結果が出た(図10、12)。このことから、レクチンライブラリがIgAグライコフォームの検出に有用であることが確認された。また、このことから、本発明のレクチンライブラリが、いわゆるプラズマ・フェレシスにおいても有効であることが示された。
IgA1のシアル酸切断処理は以下表3に示す材料で以下のように行った。
Figure 2004018513
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Human−IgA1に等量の酢酸ナトリウム緩衝液を加え、溶液のpHを、ノイラミニダーゼを0.5μl(1unit)加える。37℃の水浴で一晩反応させ、IgA1のシアル酸を切断する。TBSを加え、溶液のpHを中性に戻す。シアル酸切断確認はビオチン標識精製PNA(ピーナッツレクチン;生化学工業 #300430)およびMALΠ(イヌエンジュレクチン;VECTOR #B−1625)への結合によって確認された。
[間葉系幹細胞由来骨芽細胞亜集団の識別]
上述のレクチンライブラリを骨芽細胞の識別や分化ステージの異なる亜集団を検出する方法に適用する場合の1例を以下に順序をおって説明する。
1)MAHレクチン(イヌエンジュマメレクチン)糖認識部位のアミノ酸配列を改変した遺伝子改変レクチンライブラリーを作成する。
2)レクチンライブラリーの作製骨芽細胞に親和性の高いレクチンをパニング法により選択し、レクチンサブライブラリーを作製する。
3)上記の2)で得られたレクチンサブライブラリーの中から必要に応じ分化のステージをよく反映するレクチンを選び、マイクロタイタープレートに固定化したレクチンプレートを作製する。
4)骨芽細胞の分化誘導とレクチンライブラリーによる識別培養した間葉系幹細胞を培養・分離する。より具体的には、間葉系幹細胞を培養後、骨芽細胞に分化させ、分化開始から5日目、10日目、15日目、20日目の細胞を分離する。
5)分化過程の各時点で分離した細胞をレクチンプレートにて分析し、細胞表面糖鎖構造と骨形成能との相関を検討する。骨形性能の測定には骨型アルカリフォスファターゼ活性の測定およびオステオカルシン含有量の測定を行う(標準の作成)。即ち、分離した細胞を骨芽細胞を足場となるb−TCPブロックとの複合体の形でラット背部皮下に移植し、移植後4週、8週において摘出後、(i)オステオカルシン含有量と、(ii)骨型アルカリファスファターゼ活性を測定する。
6)分化過程が不明の細胞をレクチンプレートで分析し、標準と比較する。図13では、骨芽細胞の分化度のプロファイリングを簡単に行うようすが示してある。
注射器90により採取した自己の骨髄細胞をペトリ皿等92にとり、分化誘導前に上述のレクチンチップ70上に滴下する。洗浄後細胞を染色して発色部78と非発色部76から1つのパターンを作ることができる。この結果を踏まえて、分化誘導後、骨芽細胞を骨再生のために注射器100で移植することができる。即ち、得られたパターン96のプロファイリングから、骨再生の基準を達成していることを確認することができる。
以下のような例を示すことができる。
表4に示す材料を用いて、C3H/Heマウス骨髄細胞から分化誘導を行うことによって得られた細胞のうち、心筋細胞への分化能をもつ9−15C細胞(Makino et al:The Journal of Clinical Investigation、March 1999、Volume 103、No5)と骨芽細胞への分化能をもつKUSA/A1細胞(Kohyama et al:Differentiation、2001、68:235−244)に対するレクチンライブラリの結合活性をReverse Cell ELISA法により測定した。
Figure 2004018513
Reverse Cell ELISA法は以下のように行った。96well−ELISAプレートに抗FLAG抗体を50μl(0.25μg/well)ずつ入れ、4℃で一晩静置して抗体をウェルに固定した。ウェルをTBSで3回洗い、3%BSA/TBS 200μlを加え、室温で3時間ブロッキングした。ウェルをTBSで3回洗い、各人工レクチンを含むライセートを50μl(50μg/well)ずつ入れ、室温で2時間おいてライセート中のレクチンを結合させた。ウェルをTBST(0.1%Tween/TBS)で3回洗い、各ウェルに細胞浮遊液を100μl(7.5×10cells/well)加えた。1000rpmで5分、室温でプレート遠心し、細胞をウェルの底へ沈める。室温で2時間静置し、細胞とレクチンを結合させる。ウェルをPBSで2,3回洗う。バッファーが細胞に直接当たらないようにする。ウェルに0.25%グルタルアルデヒド/PBSを100μl加え、レクチンに結合した細胞を30分間固定する。
ウェルをTBSで3回洗い、0.2%クリスタルバイオレット(25%メタノール)を適量(細胞が浸る程度)加えたのち、5〜10分室温で放置し、細胞を染色する。プレートを水洗いし、ウェルを風乾してからアッセイ用アルコール(10%メタノール、40%エタノール、50%水)を200μl加える。
37℃で10分インキュベートしたのちにプレートリーダーで吸光度(550nm)を測定した。結果は図14に示す。改変を行っていないワイルドタイプ(wt)との相対値を示した。
このことから、レクチンライブラリが間葉系幹細胞由来の細胞亜集団の分別同定に有用であることがわかった。
[他の間葉系幹細胞由来の細胞亜集団の識別/分画]
他の間葉系幹細胞由来の細胞亜集団として、KUM5細胞の識別を確認した。KUM5細胞は、KUSA−A1および9−15C細胞同様、不死化遺伝子を含むマウス間葉系幹細胞で、分化誘導をかけると軟骨細胞に分化する。人工レクチン(Y1〜Y10)および野生型レクチンを含むライセート(1mg/ml)を用いて上記間葉系幹細胞由来骨芽細胞亜集団の識別と同様に行った、Reverse Cell ELISAの結果を図17に示した。図17Bから、Y−9は、KUSA−A1および9−15C細胞を認識せず、これらに殆ど結合しないのに対し、KUM5細胞に強く結合することが示された。従って、当該Y−9またはY−9を含むレクチンライブラリにより、KUM5細胞のような軟骨細胞への分化を示す間葉系幹細胞を識別するのみならず、これを分画できることが示された。特に、KUM5細胞は、軟骨細胞に特異的に結合するので、ES細胞など幹細胞を分化させるときのnegative selectionに使うことが可能であることが理解される。また、今までのところ、軟骨に特異的なマーカーは存在せず、抗体もつくられていないことから、本発明のレクチンライブラリーが当該目的に極めて有効であることが示された。
colon38細胞は、C57BL/6マウスにin vivoで化学発癌によって作られ、マウス個体で継代されて確立された癌細胞株である(Corbett et al:Cancer Res35、2434−2439、1975)。
colon38細胞をマウス脾臓に注射したのちに肝転移をおこした細胞をin vitroで培養というin vivoとin vitroのサイクルを4回繰り返すことにより、同所移植の系でも高頻度の肝転移形成が見られる非常に転移性の高い細胞株SL4が得られた。
転移性能の異なる2つの細胞株と人工レクチンとの結合性を解析した。以下に方法を示す。
[ループDにおける延長]
癌細胞の転移性を判別するために以下の手順でレクチンライブラリを準備した。MAHのループDの中央部6箇所(アミノ酸配列219〜224の前)に1アミノ酸を挿入することにより、糖鎖認識特異性の異なる多様なレクチンを含むライブラリーを作製した。ベクターにN末にFLAGタグを付加するpFLAG−ATSを用いたが、マルチクローニングサイトにはMAHを組み込むのに都合の良い制限酵素部位が無かったので、Site−Directed Mutagenesisのプロトコールに従い、Bgl II siteをSpe I siteに作り変えた。まず、改変したい部位を含むプライマーをsense側、anti側でまったく相補的になるように設計した。次にPCRを行い、Dpn I 1μlを加え、37℃で1時間インキュベートした。このDNA溶液をそのまま用いてXL1−Blueにトランスフォーメーションした。再度に、得られたコロニーをショートカルチャーしてプラスミドを回収し、BigDye Terminator Cycle SequencingによりそのDNA配列を読んで、改pFLAG−ATSを同定した。(表5参照)
Figure 2004018513
[ベクターの移しかえ]
野生型MAH cDNAとMAH由来の人工のcDNAをpFLAG−CTSからPCRで増幅して制限消化(Xho I conc.とSpe I conc.(ロッシュ社製))し、改pFLAG−ATSに組み込んだ。これをJM109にトランスフォーメーションし、得られたクローンをBigDye Terminator Cycle Sequencingにより同定した。(表6参照)
Figure 2004018513
Figure 2004018513
[ループDの伸張]
制限酵素として(Xho I .concおよびBgl II .conc)を用いて上記と同様にクローンを作成し、単離・同定した。ランダムにアミノ酸を挿入するプライマーを用いた改変では、単離できなかったクローンについては、個別にプライマーを設計して同じように単離・同定した。(表7参照)
[改変MAH cDNAを持つクローンの単離・同定]
マルチクローニングサイトのBgl II siteをSpe I siteに変換することができた。目的の部分以外には変異は存在しなかった。理論上予測される120種類の改変MAHを単離・同定することができた。
Figure 2004018513
Figure 2004018513
Figure 2004018513
[BigDye Terminatior Cycle Sequencingプロトコールの変更]
今回のシーケンスでは、既知のプロトコールを変更して行っているので、その変更点を箇条書きにして表8に示す。
Figure 2004018513
[大腸菌溶解物(ライセートの作製)]
カルベニシリンを入れたHEM(Highly Enriched Medium)で単離してある大腸菌を一晩短期培養(small−culture(over night))した。翌日、HEM 20ml、CaCl(1M) 20μl、MnCl(1M) 20μl、MgCl(4.9M) 81.7μlからなる培地に短期培養(small−culture)した大腸菌を200μl加えて、3時間予備的培養(pre−culture)した。ここへ、100mM IPTGを200μl加えて、3時間培養し誘導をかけた。次に9,500rpmで10分間遠心して大腸菌を回収し、TBS 200μlに懸濁して−80℃に保存した。後日、大腸菌を凍結(液体窒素)と融解(37℃湯浴)を5回繰り返し、15,000rpmで20分間遠心して上清をライセートとして回収した。このライセートは、タンパク定量を行った後に−80℃に保存し、これを使用する準備が整ってからタンパク濃度1mg/mlに希釈して4℃保存した。
[SDS−PAGEおよびウエスタン・ブロッテイングによるフラグ融合プロテインの検出]
ライセート中に改変FLAG−MAHが存在しているのか調べるために、適当にサンプルを選んでSDS−PAGE、および、ウェスターン・ブロットを行った。抗体染色では、1次抗体として、anti−MAH rabbit polyclonal抗体、または、anti−FLAG M2 monoclonal抗体を用い、2次抗体にはそれぞれAP−goat anti−rabbit IgG抗体と、AP−goat anti−mouse IgG抗体を用いてABCキットで発色させた。フラグ改変レクチンは、フラグ融合タンパクとしてもMAHとしても発現が確認できた。
[2種の癌細胞の識別]
96well−ELISA用プレートにpoly−L−lysine(1μg/well)をひき(37℃で30分間インキュベート)、細胞溶液(10cells/well;Collon−38、SL−4、Caco−2、分化型Caco−2)を加え、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde(25%));(1μg/well)によりこれをプレートへ固定(室温で30分間静置)した。細胞を固定したプレートはTBSを入れて4℃保存し、更に、3%BSA/TBSでブロッキング(室温で3時間振盪)して、上で作製した改変MAHレクチンを含むライセート(50μg/well)を加えた(室温で2時間振盪)。1次抗体には、anti−FLAG M2 monoclonal抗体(1000倍希釈を50μl/well)2次抗体には、HRP−goat anti−mouse IgG抗体(1000倍希釈を50μl/well)を用いた(共に室温で30分間振盪)。ABTS/H2O2(50μl/well)で発色させ、OD405/490を測定した。
図16は、120種類の改変レクチンとColon−38またはSL−4との結合性を示す。ここで、Colon38、SL4は同じ起源であるが、転移性の異なる2つの癌細胞セルラインである。図中、1Qとは、図15において、1の位置にグルタミンが入ることを意味し、2Cとは、2の位置にシステイン(Cysteine)が入ることを意味し、3Dとは、3の位置にアスパラギン酸(Aspartic acid)が入ることを意味し、3Sとは、3の位置にセリン(Serine)が入ることを意味し、4Nとは、4の位置にアスパラギン(Asparagine)が入ることを意味する。即ち、一般には、”nX”とは、図5の”n”の位置に”X”というアミノ酸が挿入されたことを意味する。上述のように性質の異なる細胞との結合性が異なるのは、細胞表面の糖鎖の違いによるものと考えられ、従って、これらのレクチン群を用いれば、糖鎖若しくは細胞の特徴を判別できることになる。特に、Colon38とSL−4のように起源が同じ細胞等においても、それぞれ結合性が異なるレクチンが存在し、その差異を明確にすることができ癌細胞の転移性能の識別可能なライブラリが作製され得ることが示された。
本発明により、レクチンライブラリが血清診断・細胞の種類・分化ステージ等の違いを反映し、診断方法として有用であることがわかった。
そして、この新しい方法で細胞表面の糖鎖や炭水化物を分析することにより、遺伝子発現だけに依存していた細胞の同定が正確に行えることを意味し、細胞移植や細胞治療の開発に役立つと考える。また、本研究では人工レクチンライブラリをファージミド系ファージの表面に発現させることに成功した。改変レクチンライブラリから特異性の異なるものを選別する方法が確立したので、この系を用いて既存のレクチンやモノクローナル抗体にはない、新規な糖鎖特異性を有するものを得ることができると期待される。
更に、本発明のレクチンライブラリを用いるとIgAのグライコフォームの検出や骨芽細胞亜集団の分別・同定するツールを提供することができる。即ち、IgAを含む各種血清蛋白質のグライコフォームの解析を簡便・迅速に診断する対外診断薬を提供することも可能であり、再生医療や細胞医療を実用化段階に移行させるために必要な細胞の品質保証を行う規格設計ツールを提供することも可能である。例えば、リウマチや自己免疫疾患時の免疫グロブリンのグライコシレーション、癌患者のある特定のホルモン(卵巣癌における絨毛性性腺刺激ホルモンの糖鎖変化)や蛋白質のグライコシレーション(肝炎から肝癌に至る際のアルファーフェトプロテインの糖鎖変化)等、疾病の早期発見、病態の正確な把握、治療薬・予防薬への適用できる。
種差に由来して産生されるのが抗体の特徴であるので、線維芽細胞に対する特異的抗体を作製することが困難なため、骨髄由来の線維芽細胞にはいわゆる細胞表面マーカーが存在せず、骨芽細胞を直接アッセイする方法はなく、現在のところ動物を用いたバイオアッセイもしくは骨芽細胞の活性度を反映する間接的なアッセイ法が主として用いられている分野においても、本発明のレクチンライブラリを用いたレクチンチップで、骨芽細胞の識別・同定、とくに分化ステージの異なる亜集団を識別・同定することができると考えられる。同様のアプローチで骨髄由来樹状細胞および骨髄由来血管内皮細胞へ応用できる可能性がきわめて高く、再生医療で用いる細胞の品質確保のスタンダードツールとなりえる。
現在の癌遠隔診断ネットワークにおいては病理診断が主体であるが、遺伝子発現情報を追加することが検討されており、O(オウ)−結合型糖鎖が細胞間相互作用、細胞の浸潤、接着等に深く関与している知見も鑑み、糖鎖情報を追加することによって、より詳細な癌遠隔診断についての検討が可能となる。
【配列表】
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Claims (16)

  1. 複数の種類のレクチンから、指標となる細胞若しくは擬細胞体または糖タンパク質若しくは糖鎖に対する親和性に基づいて選別した少なくとも1種類以上のレクチンを含む、糖タンパク質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或いは糖タンパク質若しくは細胞分画用レクチンライブラリ。
  2. O−結合型糖鎖を認識するレクチンを少なくとも1種類以上含む請求の範囲第1項に記載のレクチンライブラリ。
  3. 前記指標となる細胞または擬細胞体が赤血球またはグライコフィリンである、請求の範囲第1または2項に記載のレクチンライブラリ。
  4. IgAグライコフォーム識別のための、請求の範囲第1乃至3項のいずれかに記載のレクチンライブラリ。
  5. 前記細胞識別が、骨芽細胞亜集団識別、間葉系幹細胞由来の細胞亜集団識別または癌細胞転移性識別のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第1乃至3項のいずれかに記載のレクチンライブラリ。
  6. 請求の範囲第1乃至4のいずれかに記載のレクチンライブラリを用いた糖タンパク質若しくは細胞の識別、血清若しくは細胞診断、或いは糖タンパク質若しくは細胞分画方法。
  7. レクチンと被検体との相互作用の表示が、被検体に対する他の親和性物質により行われる請求の範囲第6項に記載の方法。
  8. 前記被検体に対する他の親和性物質が被検体に対する抗体である、請求の範囲第6または7項に記載の方法。
  9. 前記血清診断が、IgAグライコフォーム識別である請求の範囲第6乃至8項のいずれかに記載の方法。
  10. 前記細胞識別が、骨芽細胞亜集団識別、間葉系幹細胞由来の細胞亜集団識別または癌細胞転移性識別のいずれかであることを特徴とする請求の範囲第6または8項に記載の方法。
  11. 請求の範囲第1乃至5項のいずれかに記載のレクチンライブラリを含む診断キット。
  12. 試薬の形態である請求の範囲第11項に記載のキット。
  13. 被検体に対する他の親和性物質を更に含む、請求の範囲第12項に記載のキット。
  14. レクチンチップまたはレクチンセンサーの形態である請求の範囲第11項に記載のキット。
  15. 請求の範囲第1乃至5項のいずれかに記載のレクチンライブラリを含む糖タンパク質若しくは細胞分画、分取または除去装置。
  16. プラズマ・フェレシスに用いる請求の範囲第15項に記載の装置。
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