JP3591306B2 - モノクローナル抗体、ハイブリドーマ及び免疫測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素(以下、GnTともいう)−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体、ハイブリドーマ、及び、このモノクローナル抗体を用いたヒトGnT−Vの免疫測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
癌を診断する臨床の現場においては、癌であるか否かの診断はもとより、その癌が良性か悪性かを診断することが重要な関心事である。悪性の癌とは、転移能、浸潤性、接着能、遊走性等の強さを言い、これらのリスクの高さを癌の悪性度と言う。悪性度の診断に関しては、いわゆる癌胎児性抗原等の癌関連物質の糖鎖構造を解析する研究が広く行われている。例えば、癌関連物質である糖脂質や糖タンパク質等を特異的に認識するモノクローナル抗体が作成され、これを用いた免疫反応により、それらの糖鎖構造の相違を検出することが試みられている。また、細胞の癌化をより早い段階で検知するために、糖鎖合成に関与する糖転移酵素そのものを検出することも検討されている。
【0003】
癌の悪性度を診断するには、数ある糖転移酵素の中で、どの酵素が癌の悪性度と関係が深いかが重要な課題である。一般に、高等動物において、N−複合型糖鎖は、臓器種、組織型、細胞種等によって非常に多様な構造を示している。N−複合型糖鎖のコア構造を決定するのはGnT群である。このうち、癌の悪性度と深く関与があるのは、GnT−IIIとGnT−Vとの活性のバランスであることが報告されており、特に、GnT−Vが悪性度に深く関与していることが判明してきた。(サイエンス(Science)、236巻、582〜585頁、1987年、及び、プロシーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミイ・オブ・サイエンスイズ・オブ・ジ・ユナイティド・ステイツ・オブ・アメリカ(Proc.Natl.Acad.Sci.)、92巻、8754〜8758頁、1995年)。
【0004】
GnT−V活性を測定する試みとしては、GnT−Vの基質アクセプターを固定化したELISAプレートに、検体と基質であるUDP−N−アセチルグルコサミンとを添加し、検体中のGnT−V活性により生じる糖鎖構造を抗血清により認識する酵素活性測定方法が報告されている(アナリティカル・バイオケミストリー(Anal.Biochem.)、185巻、112〜117頁、1990年)。しかしながら、この方法は、生じた生成物の量から酵素活性を測定する方法であり、抗血清の有する特異性に問題があった。従って、GnT−Vをより一層特異的に検出することができる検出系の開発が望まれていた。
【0005】
一方、特異性に優れた免疫学的検出系としては、モノクローナル抗体を用いる方法が知られている。しかし、モノクローナル抗体を作成するためには大量の抗原となるタンパク質が必要である。ヒトGnT−Vは、培養細胞や組織における存在量が少ないので、それらから精製して天然型のヒトGnT−Vを多量に調製することは困難である。
【0006】
ヒトGnT−Vの遺伝子解析は、ラットの腎臓からGnT−Vを精製し、クローニングにより得られたラットの遺伝子解析データを元にして行われている(ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)、268巻、15381〜15385頁、1993年、及び、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミニュケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、198巻、318〜327頁、1994年)。
【0007】
モノクローナル抗体の作成に当たっては、通常、遺伝子配列を決定し、その配列情報から短いペプチドを作成し、これを利用することが広く行われている。しかし、この手法で得られるモノクローナル抗体の親和性は期待するほど高くないことが多く、高感度に検出しようとする場合には不向きである。従って、ヒトGnT−Vに対する特異性の高いモノクローナル抗体は未だ報告されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、ヒトGnT−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体、上記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ、及び、上記モノクローナル抗体を用いたヒトGnT−Vの免疫測定方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、高い親和性を有する抗ヒトGnT−Vモノクローナル抗体を得るべく鋭意努力した結果、クローニングにより得られたヒトGnT−V遺伝子から遺伝子組換え技術を用いて形質転換体を作成し、これから得たGnT−V部分ポリペプチドを免疫原として用いることによって、目的のモノクローナル抗体を得ることができ、更に、広く応用が可能な酵素免疫学手法も確立することができた。
【0010】
本発明は、ヒトGnT−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体である。
本発明は、また、上記モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマである。本発明は、更に、上記モノクローナル抗体を検体と反応させる工程、及び、モノクローナル抗体が結合した免疫複合体を測定することによって検体中のN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vを定量する工程からなることを特徴とするN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vの免疫測定方法である。
以下、本発明を詳述する。
【発明の実施の形態】
【0011】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒトGnT−Vに対する親和性が高く、ヒトGnT−V発現株として知られているColo205細胞(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Eur.J.Biochem.)、233巻、18〜26頁、1995年)に対する蛍光免疫染色法において、ヒトGnT−Vが局在するゴルジ体のみを染色し、核部分は全く染色しない特異性を発揮するものである。
上記モノクローナル抗体は、ヒトGnT−Vにのみ特異的に反応し、ヒトGnT−IIIには反応しないので、転移性の癌を検出することができると期待され、免疫測定方法においてより有益であるので、好ましい。
【0012】
上記モノクローナル抗体は、配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドを免疫原として使用して得ることができる。上記配列表の配列番号1のポリペプチドは、ヒトGnT−Vのアミノ酸番号431−741の領域に相当し、上記配列表の配列番号2のポリペプチドは、ヒトGnT−Vのアミノ酸番号314−741の領域に相当する。
【0013】
本発明においては、上記配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドを免疫原として用いることによって、天然型のヒトGnT−Vに近い抗原性を有していると考えられるので、ヒトGnT−Vに高い特異性を有するモノクローナル抗体を得ることができる。
【0014】
上記免疫原として用いるヒトGnT−Vは、配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドであり、また、必ずしも高純度に精製されたものでなくても、粗精製物であってもよい。なお、実質的に配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を含むとは、ヒトGnT−Vの機能又は立体構造に影響を及ぼさない範囲で、1又は数個のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸配列をも含むことを意味する。
【0015】
上記免疫原として用いるヒトGnT−Vは、遺伝子組換え技術を用いた以下のような方法によって得ることができる。
ヒトGnT−Vの公知の塩基配列(バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、198巻、318〜327頁、1994年)を参考に、GnT−V領域をPCR法によって増幅させ、制限酵素で切断することによって、上記配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドをコードする領域のDNA断片を得る。また、上記公知の塩基配列から、化学合成により、上記配列表の配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列を実質的に含むポリペプチドをコードする領域のDNA断片を得ることも可能である。こうして得たDNA断片を、アンピシリン耐性遺伝子等の適当な標識遺伝子を有するベクターに導入して得た組み換えDNAで、大腸菌等の宿主を形質転換し、形質転換体を得ることができる。この形質転換体を培養し、培養物を精製することによって上記GnT−Vを得ることができる。
【0016】
上記モノクローナル抗体は、上記ポリペプチドを免疫原として用いて動物を免疫し、その抗ヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素−V抗体産生細胞と腫瘍細胞とを細胞融合することによって得られるハイブリドーマにより産生させることができる。
【0017】
上記ハイブリドーマは、以下の方法で得ることができる。即ち、上述のようにして得たヒトGnT−Vをフロイントの完全アジュバンドとともに、数回に分けて、マウス等の動物に、2〜3週間おきに、腹腔内又は静脈投与することによって免疫する。次いで、脾臓等に由来する抗体産生細胞と、骨髄腫ラインからの細胞(ミエローマ細胞)等の試験管内で増殖可能な腫瘍細胞とを融合させる。
【0018】
上記融合方法としては、ケーラーとミルシュタインの常法(ネーチャー(Nature)、256巻、495頁、1975年)に従ってポリエチレングリコールによって行うことができ、又は、センダイウイルス等によって行うこともできる。
【0019】
上記融合した細胞からヒトGnT−V抗原を認識する抗体を産生するハイブリドーマを選択する方法としては、以下のようにして行うことができる。
即ち、上記融合した細胞から、限界希釈法によって、HAT培地及び/又はHT培地中で、生存している細胞をハイブリドーマとして選択することができる。次いで、上記ハイブリドーマの培養培地を、高純度に精製したヒトGnT−Vを固定化したアッセイプレート上で反応させた後、抗マウス免疫グロブリン(Ig)等と更に反応させるEIA法等によって、ヒトGnT−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
【0020】
本発明のハイブリドーマとしては、ヒトGnT−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマであれば特に限定されないが、例えば、本発明者らが上述の方法によって樹立した4種のハイブリドーマが挙げられる。
【0021】
上記4種のハイブリドーマは、それぞれ、ハイブリドーマGNTV13F4、ハイブリドーマGNTV21D9、ハイブリドーマGNTV22G12、及び、ハイブリドーマGNTV24D11と命名された。
【0022】
上記各ハイブリドーマは、工業技術院生命工学工業技術研究所〔あて名;日本国茨城県つくば市東1丁目1番3号(郵便番号305−0046)〕に、ハイブリドーマGNTV13F4は、識別表示GNTV13F4、受託番号FERM
P−16554(受託日;平成9年12月16日)として、ハイブリドーマGNTV21D9は、識別表示GNTV21D9、受託番号FERM P−16555(受託日;平成9年12月16日)として、ハイブリドーマGNTV22G12は、識別表示GNTV22G12、受託番号FERM P−16556(受託日;平成9年12月16日)として、及び、ハイブリドーマGNTV24D11は、識別表示GNTV24D11、受託番号FERM P−16557(受託日;平成9年12月16日)として、それぞれ寄託されている。
【0023】
上記各ハイブリドーマは、通常、細胞培養に用いられる培地において培養し、培養上清からモノクローナル抗体を回収することができる。また、ハイブリドーマが由来する動物に投与することによって、腹水を貯留させ、この腹水から回収することもできる。
【0024】
上記モノクローナル抗体の回収方法としては、通常行われている精製方法を用いることができ、例えば、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、プロテインAによるアフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
【0025】
本発明の免疫測定方法は、上記モノクローナル抗体を、検体及び標識した抗原又は抗体と反応させる工程、及び、標識物を測定することによって検体中のヒトGnT−Vを定量する工程からなるものである。
上記免疫測定方法としては、酵素免疫測定法、放射線免疫測定法、蛍光免疫測定法等が挙げられる。これらの測定法は、サンドイッチ法又は競合的結合測定法により、検体中の目的とする抗原の量を定量的に測定することができる。
【0026】
上記サンドイッチ法による免疫測定法とは、例えば、本発明のモノクローナル抗体を2種用意し、そのうち1種を常法によって酵素、放射線、蛍光物質等によって標識しておく。ELISAプレート;ラテックス、ゼラチン粒子、磁性粒子等の通常用いられる不溶性担体等の表面に標識していない本発明のモノクローナル抗体を吸着させ、その後、測定すべき抗原を含む検体を反応させる。次いで、結合した抗原に標識したモノクローナル抗体(第二抗体)を反応させ、不溶性担体に結合した標識物、即ち、標識モノクローナル抗体の量から測定すべき抗原の量を定量することができる。
【0027】
上記競合的結合測定法による免疫測定法とは、例えば、一定量のモノクローナル抗体に対して、酵素、放射線、蛍光物質等によって標識した一定量の抗原と、測定すべき抗原を含む検体とを競合的に反応させ、抗体と結合した、又は、結合しなかった標識抗原の量から測定すべき抗原の量を定量する。抗体と結合した標識抗原を結合しなかったものと分離するためには、抗体と同種の免疫グロブリンを加え、これに対する抗体を加えて、抗体と結合した標識抗原を沈殿させ分離し、測定する二抗体法、チャーコール、ミリポアフィルターを用いる方法等によって行うことができる。
【0028】
上記方法によって測定できる検体としては、ヒトGnT−Vを含むものであれば特に限定されず、例えば、ヒト由来の血清、血漿、及び、細胞又は組織のホモジネート等が挙げられる。
【0029】
また、ヒト由来の種々の細胞、組織等を固定化し、本発明のモノクローナル抗体を反応させることによって、細胞、組織等に分布するヒトGnT−Vを直接測定することも可能である。更に、本発明のモノクローナル抗体を用いて、いわゆるウェスタンブロッティング、アフィニティクロマトグラフィー等を行うこともできる。
【0030】
本発明のモノクローナル抗体を用いたヒトGnT−V抗体測定方法を、ヒト由来の種々の検体に適用することにより、癌の診断方法を実施することができる。
【0031】
本発明のモノクローナル抗体を用いることによって、免疫化学的方法や免疫組織化学的方法により、ヒト由来の種々の体液、細胞、組織等におけるヒトGnT−Vを直接測定することが可能となる。
特に、サンドイッチアッセイ法を適用することにより、溶液中のヒトGnT−V抗原を特異的に感度良く測定できる等の極めて有用な効果を得ることができる。
【0032】
【実施例】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0033】
実験例1 形質転換体の作成
バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)、198巻、318〜327頁、1994年に記載の方法でクローニングしたヒトGnT−VのcDNAを鋳型分子とし、配列表の配列番号1及び2に示したヒトGnT−VポリペプチドをコードするDNA断片をPCR法にて増幅した後、制限酵素EcoRIとBamHIで切断した。次いで、1%アガロールゲル電気泳動により、GnT−VのC末端側の領域を含むDNA断片1290bp及び940bpを分離した。これらのDNA断片を図1に示す発現用プラスミドpW6A(富士レビオ株式会社製)のEcoRI−BamHI部位に挿入し、1290bpのDNA断片を含むプラスミドpW6AGnT−V314−741及び940bpのDNA断片を含むプラスミドpW6AGnT−V431−741を作成した。これらのプラスミドを用い、大腸菌BL21(DE3)(東洋紡株式会社製)を形質転換させ、アンピシリン耐性の形質転換体大腸菌BL21(DE3)GnT−V314−741及びBL21(DE3)GnT−V431−741を得た。
【0034】
上記形質転換体大腸菌BL21(DE3)GnT−V314−741及びBL21(DE3)GnT−V431−741を、サンガー法(Sanger method)に従って、塩基配列を確認したところ、ヒトGnT−V由来の部分ポリペプチド(配列表の配列番号1に示すポリペプチドであって、ヒトGnT−Vのアミノ酸番号314−741に該当するポリペプチド(以下、ポリペプチド314−741という)、及び、配列表の配列番号2に示すポリペプチドであって、ヒトGnT−Vのアミノ酸番号431−741に該当するポリペプチド(以下、ポリペプチド431−741という))をコードする、配列表の配列番号3及び4に示すDNA断片であった。
【0035】
実施例1 組換えタンパク質の発現と精製
実験例1で作成した形質転換体を、50μg/mLのアンピシリンを含むLB培地2mL中37℃で培養した。予備培養にて600nmで吸光度を0.6〜0.8にした後、0.5mMのIPTG(イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトシド)を添加し発現誘導を行い、更に2時間培養した。1.5mL量の菌体培養液を5000rpmで2分間遠心分離して菌体を集め、100μLの緩衝液(10mMトリス−塩酸(pH8.0)、0.1M塩化ナトリウム、1mM EDTA)に懸濁し、15分間の超音波破砕により完全に菌体を破砕した。これを菌体試料とした。
【0036】
菌体試料8μLに3倍濃度のポリアクリルアミドゲル緩衝液(0.1Mトリス−塩酸(pH6.8)、6%SDS、24%グリセリン、6mM EDTA、3%2−メルカプトエタノール、0.003%BPB)4μLを加え、充分撹拌した後、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動を行った。
【0037】
泳動後ポリアクリルアミドゲルをタンパク染色し、菌体試料に含まれるタンパクの展開像を観察した。形質転換体BL21(DE3)GnT−V314−741及びBL21(DE3)GnT−V431−741試料中には、非形質転換体BL21(DE3)では認められない、分子量47Kd及び34Kdのポリペプチドがそれぞれ存在した。これは、それぞれ、プラスミドpW6AGnT−V314−741及びpW6AGnT−V431−741からの発現産物と考えられる。
【0038】
次に、プラスミドpW6AGnT−V314−741及びプラスミドpW6AGnT−V431−741を、それぞれ、宿主大腸菌BL21(DE3)に導入後、LB培地1L中で、37℃の条件下で培養した。予備培養にて波長600nmで吸光度約1.0の濁度とした後、1mMのIPTGを添加し、発現誘導を行った。一晩培養後、遠心を行い大腸菌を回収した。回収した大腸菌に3M尿素を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を200mL加え、氷冷下で超音波破砕処理を行った。こうして、形質転換体BL21(DE3)GnT−V314−741及びBL21(DE3)GnT−V431−741について、それぞれ発現したタンパク質は、遠心後不溶性成分として沈澱に回収された。
【0039】
これら沈澱物を、それぞれ6M尿素及び20mMジチオスレイトールを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)200mLに可溶化後、6M尿素を含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で平衡化したQFF陰イオン交換カラム(ファルマシア社製)でイオン交換精製した。塩化ナトリウムによる濃度勾配法で溶出したところ、約0.15M塩化ナトリウム溶出画分にヒトGnT−Vポリペプチドを回収した。次いで、これらQFF精製画分を、セントリプレップ10(アミコン社製)にて各々濃縮後、6M尿素及び0. 5M塩化ナトリウムを含む50mMトリス−塩酸緩衝液(pH9. 6)で平衡化したスーパーデックス200ゲルろ過カラム(ファルマシア社製)で精製した。分子量約50Kdに精製ヒトGnT−Vポリペプチド314−741、分子量約35Kdに精製ヒトGnT−Vポリペプチド431−741を回収した。
【0040】
実施例2 ハイブリドーマの作成
実施例1で得られたヒトGnT−V由来のポリペプチド314−741及びポリペプチド431−741の各100μgをフロイントの完全アジュバンドとともにBALB/cマウス(8週齢、雌性)に腹腔内投与した。2週間間隔でこれを3回繰り返し、更に3週間後、最終免疫として上記ヒトGnT−Vポリペプチド314−741及びポリペプチド431−741の各100mgを静脈内投与した。3日後摘出した脾臓をケーラーとミルシュタインの常法(ネーチャー(Nature)、256巻、495頁、1975年)に従って、細胞融合に供した。融合相手の親細胞に、マウス骨髄腫細胞株であるP3−X63−Ag8−U1(P3U1)を用い、融合剤としてはポリエチレングリコールを用いた。
【0041】
このようにして融合した細胞は、HAT培地に懸濁し、96穴のマイクロカルチャープレートに分注して培養した。約2週間後、ハイブリドーマが増殖したウエルの培養上清について、以下のような方法によって、ヒトGnT−Vに特異的なモノクローナル抗体を産生しているハイブリドーマを選択した。即ち、リン酸緩衝液(PBS)に上記実施例1で調製したヒトGnT−Vポリペプチド314−741及びポリペプチド431−741を500ng/mLの濃度で溶解し、96穴マイクロアッセイプレートに100μL/ウエルとなるように分注し、4℃で一晩放置して抗原固定化プレートを作成した。次に、非結合のヒトGnT−Vポリペプチドを含む溶液を除去し、0.05%ツィーン20を含むPBSで洗浄した後、1.0%のBSA(ウシ血清アルブミン)を含むPBSを分注し、37℃にて2時間放置してブロッキングした。同様にして洗浄後、ハイブリドーマ培養上清を100μL/ウエルとなるように分注し、37℃にて1時間放置した。続いて、同様にして洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗マウス免疫グロブリン抗体(ダコ社製) を1000倍に希釈したものを100μL/ウエルとなるように分注し、37℃にて1時間放置した。最後に、同様にして洗浄した後、ペルオキシダーゼ基質(ABTS−過酸化水素系)を100μL/ウエルとなるように加え、吸光度を測定した。
【0042】
以上のようにして選択されたハイブリドーマのうち、クローンGNTV13F4、GNTV21D9、GNTV22G12、GNTV24D11由来のモノクローナル抗体が、ヒトGnT−Vと特異的に反応した。
【0043】
実施例3 抗ヒトGnT−V抗体の調製
実施例2で得られたそれぞれのハイブリドーマ1×107 個を、プリスタン0.5mL投与後2週間のBALB/cマウス(8週齢、雌性)にそれぞれ腹腔内投与した。約10日後、マウス腹腔中に腹水が貯留し、この腹水中に抗ヒトGnT−V抗体が高濃度に含まれていた。採取した腹水は、クローンGNTV13F4及びGNTV21D9由来のものは、ゲル濾過クロマトグラフィーによって、また、クローンGNTV22G12、GNTV24D11由来のものは、プロテインAによるアフニティクロマトグラフィーで精製した。以下、ハイブリドーマGNTV13F4、GNTV21D9、GNTV22G12及びGNTV24D11から調製したモノクローナル抗体を、それぞれ、MAb13F4、MAb21D9、MAb22G12及びMAb24D11という。
【0044】
抗ヒトGnT−V抗体は以下の特徴を有していた。
MAb22G12、MAb24D11
i)免疫グロブリンのタイプ:IgG
ii) 分子量:約15万ダルトン,
iii)分子吸光係数:E280nm=14.0
MAb13F4、MAb21D9
i)免疫グロブリンのタイプ:IgM
ii) 分子量:約50万ダルトン,
iii)分子吸光係数:E280nm=14.0
【0045】
実施例4 抗ヒトGnT−Vモノクローナル抗体を用いたウエスタンブロッティング
GnT−V発現株であるヒト株化細胞Colo205(ATCCから入手)のライセイトを10%SDS、5%2−メルカプトエタノール及び5%グリセリン溶液で溶解した後、10%ポリアクリルアミドゲルにて電気泳動し、これを更にニトロセルロース膜に転写して転写膜を作成した。このように調製した転写膜を、1%BSAを含むPBS中に室温で2時間放置し、ブロッキングした。この転写膜と、実施例3で得られた抗ヒトGnT−Vモノクローナル抗体MAb13F4、MAb21D9、MAb22G12及びMAb24D11を、それぞれ2時間反応させた。0.05%ツィーン20を含むPBSで転写膜を洗浄後、ビオチン化抗マウス免疫グロブリン抗体(ベクタスティンABSキット、ベクター社製)と30分間反応させた。同様にして洗浄後、アビジンDH及びビオチン化ペルオキシダーゼの複合物と30分間反応させた。同様にして洗浄後、ペルオキシダーゼ不溶性基質(4−クロロナフトール−過酸化水素系)を加えて発色させた。
その結果、ヒト株化細胞Colo205ライセイトの転写膜には、得られたモノクローナル抗体MAb13F4、MAb21D9、MAb22G12及びMAb24D11に対して反応する、GnT−Vとして報告されている分子量に相当する約70〜80Kdのメジャーバンドと分解産物と思われる低分子量のマイナーバンドが得られた。
【0046】
次に、MAb22G12を用いて、癌患者の肝癌組織検体及びその癌組織周辺部の非癌組織検体のライセイトに対して、同様のウエスタンブロッティングを行った。ウエスタンブロッティングの結果は、スキャナー(パワールックII、ユーマックス社製)で取込み、インテリジェントクオンティファー(日本バイオイメージリミテッド社製)でバンドの相対強度を測定した。表1に、各検体のバンドの相対強度の測定結果を示す。いずれのライセイトに対しても、GnT−Vとして報告されている分子量に相当する約70〜80Kdのバンドが得られたが、発色は肝癌組織検体ライセイトの方が明らかに強かった。
【0047】
【表1】
【0048】
実施例5 細胞に対する蛍光免疫染色
GnT−V発現株として知られているColo205細胞をスライドグラス上にアルコール固定し、これに得られた抗ヒトGnT−Vモノクローナル抗体MAb13F4、MAb21D9、MAb22G12及びMAb24D11を、それぞれ湿潤箱中で37℃にて2時間反応させた。冷PBSで4回洗浄後、抗マウスイムノグロブリン(Ig)−FITC標識抗体を湿潤箱中で室温にて1時間反応させた。冷PBSで4回洗浄の後、蛍光顕微鏡にて、その染色像を観察した。その結果、どのモノクローナル抗体においても、GnT−Vが局在するゴルジ体と思われる細胞質部分が特異的に染色され、核部分は全く染色されなかった。
【0049】
実施例6 抗ヒトGnT−Vモノクローナル抗体を用いたサンドイッチ測定法
実施例3で得られたMAb24D11抗体をPBSで10μg/mLの濃度に調整し、96穴アッセイプレート(ヌンク社製)に100μL/ウエルとなるように分注し、4℃にて一晩放置して、抗体固定化プレートを作成した。次に、非結合のMAb24D11抗体を含む溶液を除去し、0.05%ツィーン20を含むPBSで洗浄した後、1.0%のBSAを含むPBSを100μL/ウエルに分注し、37℃2時間放置してブロッキングした。
【0050】
次に、実施例1で調製したヒトGnT−Vポリペプチド431−741を0、0.31、0.63、1.25、2.5及び5ng/mLとなるように含む1%BSA含有PBSを調製し、抗体固定化プレートに100μL/ウエルとなるように分注した。37℃にて2時間放置の後、同様にして洗浄し、アルカリフォスファターゼを結合させた酵素標識MAb22G12抗体を、100μL/ウエルとなるように分注した。37℃にて1時間放置後、同様にして洗浄し、アルカリフォスファターゼ基質PNPP(4−ニトロフェニルフォスフェイト)を100μL/ウエルとなるように加え、405nmの吸光度を測定した。結果を図2に示した。このサンドイッチ測定法は、数ng/mLのヒトGnT−Vを充分に検出することができた。
【0051】
【発明の効果】
本発明のモノクローナル抗体は、ヒトGnT−Vに対する特異性が極めて高いので、高感度な免疫測定方法に利用することができる。本発明のハイブリドーマは、ヒトGnT−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する手段を提供することができる。本発明のモノクローナル抗体を用いたGnT−Vの免疫測定方法は、肝癌、大腸癌、乳癌、メラノーマ、肺癌、胃癌、膵臓癌、骨髄腫、リンパ腫等の癌の悪性度の診断に寄与することが期待される。
【0052】
【配列表】
【0053】
【0054】
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】実験例1で使用した発現用プラスミドの制限酵素地図を示す図である。
【図2】実施例6における本発明のモノクローナル抗体を用いてのELISAの試験結果を示すグラフである。
Claims (3)
- ヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vを特異的に認識し、受託番号FERM P−16554、FERM P−16555、FERM P−16556又はFERM P−16557のハイブリドーマにより産生される、モノクローナル抗体。
- ヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vを特異的に認識するモノクローナル抗体を産生する、受託番号が、FERM P−16554、FERM P−16555、FERM P−16556又はFERM P−16557であるハイブリドーマ。
- 配列番号1又は2に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを免疫原に用いて得られたモノクローナル抗体を検体と反応させる工程、及び、モノクローナル抗体が結合した免疫複合体を測定することによって検体中のヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vを定量する工程からなることを特徴とするヒトN−アセチルグルコサミン転移酵素−Vの免疫測定方法。
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