JP2004016149A - 遺伝子改変レクチン及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】微妙な糖鎖の違いを区別する糖鎖解析に役立つレクチンを準備する方法であって、短時間に簡単に準備できるレクチンの製造方法を提供することである。
【解決手段】あるレクチンの糖鎖認識部位を該レクチンの三次元構造解析から割り出し、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定し、その特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入されたレクチンをベクターDNAにコード化し、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせること、を含むレクチンの製造方法を提供する。
【選択図】 図5
【解決手段】あるレクチンの糖鎖認識部位を該レクチンの三次元構造解析から割り出し、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定し、その特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入されたレクチンをベクターDNAにコード化し、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせること、を含むレクチンの製造方法を提供する。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レクチンの製造方法、特に遺伝子改変レクチンの製造法、及び、この製造法を用いて製造した改変レクチンを含む糖鎖解析ツールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の糖鎖工学の進歩は目ざましく、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び、細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等の高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは、阻害し合いながら高度で精密な生体反応を制御する機構が明らかにされようとしている。また、細胞表面の糖鎖や、糖鎖−レセプター間の相互作用異常による疾病の発生、あるいは、エイズなどのウイルス感染における糖鎖の役割等に関して盛んに研究されている。
【0003】
特に、正常細胞と癌細胞、あるいは分化段階の異なる細胞など、ある細胞を他の細胞と分別し同定するために、細胞がその表面に持つ糖鎖を利用でき、例えば、癌細胞については悪性度の変化に応じて、幹細胞についてはその分化段階により変化するといったような報告が数多くなされている。以上のように、糖鎖に基づく解析(例えば、分別や同定)は、大変有意義であると考える。
【0004】
このような糖鎖解析の手段として、レクチンは大変有用であると考えられるが、天然に存在するレクチンの種類が限られること、レクチンが利用されやすい形になっているかが重要な関心事である。即ち、多くの種類の糖鎖を識別するには、その数に見合うだけの異なる性質を持つレクチンが理論的に必要である。一方、利用しやすくするには、特定種のレクチンが単離されて担体(又は支持体)に固定されているのが望ましい。
【0005】
天然に存在するレクチン又は市販のレクチンを複数取り混ぜ、既知の糖鎖を利用してそれぞれの糖鎖認識性を調べ、未知の糖鎖の解析をすることができる。しかし、仮に識別すべき糖鎖の種類が、10000あったとすれば、理論的には、少なくとも14種類以上のレクチンが必要である(ここで、1種のレクチンに付き結合性有り又は無しの2種類の判定がされると仮定した)。しかし、異なる糖鎖に対し同じ糖鎖特異性を持つ異なる複数のレクチンが存在する可能性を考慮すれば、更にその数倍の数の種類のレクチンが必要になると考えられる。更に、糖鎖解析で大きく期待されているのは、上述の細胞の判別でもわかるような、微妙な違いを見分けることである。天然に存在するレクチン等は、種類が少ないばかりでなく、微妙な違い(グラディエーション)をもって段階的にレクチンが準備されているとは限らず、単なる絶対数を増やせばよいとは限らない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、微妙な糖鎖の違いを区別する糖鎖解析に役立つレクチンを準備する方法であって、短時間に簡単に準備できるレクチンの製造方法を提供することである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
上記課題に鑑みて、本発明では、あるレクチンの糖鎖認識部位を該レクチンの三次元構造解析から割り出し、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定し、その特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入されたレクチンをベクターDNAにコード化し、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせること、を含むレクチンの製造方法を提供する。
【0008】
ここで、「あるレクチン」とは、例えば、天然のレクチンでよく、また、人工のレクチンでもよい。「糖鎖認識部位」は、ある糖鎖に対して結合性を有する部位を含んでよい。「三次元構造解析」としたのは、立体構造において糖鎖を認識するからであり、この「解析」には、模型による解析やコンピュータシミュレーションによる解析を含んでよい。「特定されたアミノ酸配列位置」とは、主鎖における位置を含んでよく、側鎖の位置や側鎖内の位置を含んでよい。「その前後」とは、その位置の隣の位置を意味してよく、必ずしも序列を必要とするものではない。「1のアミノ酸」は、20種類の基礎アミノ酸を含んでよく、また、それ以外のアミノ酸を含むことを妨げない。アミノ酸が挿入されるため、主鎖又は側鎖が1つ長くなることを含む。このような改変を受けたレクチンは人工のレクチンであるが、天然に存在することを否定するものでない。「ベクターDNA」は、このようなアミノ酸配列に関する情報がコード化されるもので、いわゆる遺伝子操作に一般に用いられるものを含んでよい。この「コード化されたDNAを使用して」とは、いわゆる遺伝子工学的にタンパク(タンパク質を含んでよい)が作られることを含んでよい。
【0009】
より具体的に、本発明においては、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定する工程と、前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。
【0011】
(2)前記1のレクチンがマメ科のレクチンであることを特徴とする上記(1)に記載の改変レクチンの製造方法。
【0012】
(3)前記糖鎖認識部位がループC若しくはループDを含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の改変レクチンの製造方法。
【0013】
(4)改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と; [2]その部位に含まれる1つのアミノ酸の配列位置を選択する工程と; [3]グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程と; [4]前記選択されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に、前記選択された1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と; [5]前記[3]において選択しなかったアミノ酸がある場合は、前記[3]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法。
【0014】
(5)改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と; [2]前記糖鎖認識部位に含まれる複数のアミノ酸の配列位置を特定する工程と; [2]前記特定された複数のアミノ酸の配列位置から1のアミノ酸の配列位置を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化化する工程と; [4]前記[2]において、前記特定されたアミノ酸配列位置であって、未だ選択されていない配列位置がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法。
【0015】
(6)上記(4)又は(5)の方法で製造された改変レクチン群。
【0016】
(7)以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。(a)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号127〜138又は219〜224のいずれかの位置の前に、1のアミノ酸が挿入された、ポリペブチド。(b)(a)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。
【0017】
(8)上記(7)に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
【0018】
(9)改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、マメ科レクチンのループDの遺伝子を改変する工程と、この改変された遺伝子を使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。
【0019】
(10)以下の(c)または(d)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。(c)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号219〜224のいずれかの位置の前に1のアミノ酸が挿入された、若しくは、N末端から数えたアミノ酸配列番号219〜224の少なくとも1つのアミノ酸の種類を改変した、ポリペブチド。(d)(c)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。
【0020】
(11)請求項10に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
【0021】
(12)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法で製造された改変レクチン又は請求項4〜6のいずれかに記載の改変レクチン群又は請求項7若しくは9に記載の方法で製造された改変レクチンを含む糖鎖解析ツール。
【0022】
ここで、「改変した遺伝子」は、元となるレクチンの遺伝子を遺伝子工学的に改変した遺伝子を含んでよい。「改変」とは、遺伝子の基本的構造は変えずに、変更を加えることを含んでよい。より具体的には、遺伝子を長くする遺伝子の挿入、遺伝子を短くする遺伝子の抜出、遺伝子の長さは変らない遺伝子の種類を変える遺伝子の変更又は改変(ランダム、任意的、恣意的なものを含む。以下「変更」。)等を含んでよい。前記「1のレクチン」は、天然のレクチン又は人工のレクチンを含んでよく、植物若しくは植物由来の又は動物若しくは動物由来のレクチンを含んでよい。前記「糖鎖認識部位」は、何らかの方法で糖鎖の異同を区別できる部位を含んでよく、特に、立体的な構造に基づいて糖鎖の異同を区別できる部位を含んでよい。また、この「部位」は、1又はそれ以上の箇所に分かれて存在してよい。別の箇所に分かれて存在する場合は、1箇所だけで糖鎖の異同を区別してよく、また、2箇所又はそれ以上の部位が共同して糖鎖の異同を区別してもよい。ここで、1箇所に存在することは、その部位が実質的に連続して存在していることを含んでよい。前記「三次元構造」とは、立体的な構造を含んでよく、前記「三次元構造解析」は、図表による解析、模型による解析、コンピュータシミュレーションによる解析、及び、その他の解析を含んでよい。「糖鎖認識部位を割り出す」とは、そのような部位を見つけだすことを含んでよく、具体的には、1又はそれ以上のアミノ酸の配置位置を特定することを含んでよく、そのようなアミノ酸の配列をコードした塩基配列の配列位置を特定することを含んでよい。
【0023】
例えば、三次元構造の例を図1のモデルによって考えることができる。図1Aは、そのモデルの立体構造を示すものであり、図1Bは、それをより模式的に示したものである。図1Cは、更に、糖鎖との結合の様子を示している。この図から、ループCとDは、その間に糖鎖を挟み込み、所定の糖鎖に結合性を示すことにより、糖鎖の異同を認識すると考えられる。このような解析から、糖鎖認識部位として、ループC及びDを見出すことができるが、このような解析に限らず、その他の如何なる解析をも含んでよい。
【0024】
従って、上述の改変レクチン又は改変レクチン群を製造する方法に含まれてよい「1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程」は、コンピュータ解析に限らず、あらゆる方法が適用できることになり、このような工程を省いた「改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、糖鎖認識部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定する工程と、 前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法」も実質的に含むと考えることができる。同様に、「改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって、[1]糖鎖認識部位に含まれる1つのアミノ酸の配列位置を選択する工程と; [2]グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に、前記選択された1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と; [4]前記[2]において選択しなかったアミノ酸がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法」とすることも可能と考えられる。また、「改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]糖鎖認識部位に含まれる複数のアミノ酸の配列位置を特定する工程と; [2]前記特定された複数のアミノ酸の配列位置から1のアミノ酸の配列位置を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化化する工程と; [4]前記[2]において、前記特定されたアミノ酸配列位置であって、未だ選択されていない配列位置がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法」とすることが可能と考えられる。
【0025】
前記「その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸配列位置を特定する」とは、上述のように割り出された糖鎖認識部位から、好ましい1又はそれ以上のアミノ酸を特定することを含んでよい。ここで、「好ましい」とは、本発明の目的に照らして好ましいことを意味してよく、具体的には、糖鎖認識能力が、改変前のレクチンとは異なるような改変レクチンを生じる結果となることを含んでよい。
【0026】
前記「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」に換えて、「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1又はそれ以上のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」としてよいが、複数のアミノ酸が挿入される場合は、結果として得られるレクチンの糖鎖認識能力を失わせないように挿入することが望ましい。挿入されるアミノ酸は、所謂タンパク質を構成する20種のアミノ酸を含んでよく、それ以外のアミノ酸を除外するものではない。「20種類のアミノ酸」とは、タンパク質を作っているアミノ酸で、より具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンをいってよい。「ベクターDNA」は、遺伝子工学において用いられるDNAで、これをホストに組み込むことにより、コードされたポリペプチドを産生させることができるものを含んでよい。
【0027】
上記「マメ科のレクチン」は、図3に挙げられるような複数のレクチンを含んでよい。特に、Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)を含むことが好ましい。図2に、このMAHレクチンの塩基配列及びアミノ酸配列を示す。Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)において、塩基配列の配列位置が466〜498(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では127〜137)が、ループCのアミノ酸に対応する塩基配列位置で、塩基配列の配列位置が721〜780(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では212〜231)が、ループDのアミノ酸に対応する塩基配列と考えられ、このような領域が改変の対象領域として含まれてよい。また、ループDにおいて、より好ましくは、塩基配列の配列位置が742〜756(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では219〜223)の領域が改変の対象として含まれてよい。例えば、図4に示すようなMAHのループCの場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、127〜137の位置の前に、1〜11の挿入位置が示されており、仮に9の位置にXが挿入されると同図の ex. のような配列となる。また、図5に示すようなMAHのループDの場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、219〜224の位置の前に、1〜6の挿入位置が示されておいる。ここで、塩基配列は、開始コドンから数え、アミノ酸配列は、N末端アミノ酸基から数えた。また、図14に示すようなMAHのループDのアミノ酸の種類の変更(又は遺伝子の変更)の場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、219〜223の位置で少なくとも1の種類の変更を行うこともできる。
【0028】
MAH以外のマメ科のレクチンでは、図3のようなアミノ酸配列により各ループが規定される。これらループの中で、上記ループCとループDが糖鎖認識に関与しているといわれる。このように他の種類のレクチンのループのアミノ酸配列を見比べると、MAHのループCは比較的アミノ酸が詰まっているのに対し、ループDのアミノ酸は、図3からわかるように割とすいており、アミノ酸を挿入するループとしてより好ましいとも考えられる。また、図2のMAHのアミノ酸の配列表で、ループDの位置が、3番目(一番下)の下線によって示されているが、その中でも、糖鎖との結合性に大きな影響を及ぼすと思われる5つのアミノ酸が四角で囲われている。尚、図中マル1は、Xho I (ctcgag) 制限酵素部位を、図中マル2は、Bgl II (agatct) 制限酵素部位を、図中マル3は、Spe I (actagt) 制限酵素部位を、示している。
【0029】
上記(1)において、「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」では、前記「1のアミノ酸」の代わりに、「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンからランダムに選択された1のアミノ酸」としてもよい。ここで、「ランダムに」は、恣意的に選択しないことを含んでよい。ここに列挙されたアミノ酸は、所謂タンパク質を構成する20種類のアミノ酸である。
【0030】
上記「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程」において「順に」とは、挙げられたアミノ酸を重複しないように選択することを意味してよく、特にその順序が、列挙された順である必要はなく、いかなる順序であってもよい。また、上記「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程」に換えて、「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから選ばれる所定のアミノ酸集合から、1のアミノ酸を順に選択する工程」としてもよい。このとき「所定のアミノ酸集合」は、2以上であって20種に満たないアミノ酸の集合であり、その組合わせは、得られるレクチン群が糖鎖認識において所定の効果が発揮されるあらゆる場合を含んでよい。この所定の効果は、糖鎖を認識する能力が、少しずつ異なっており、複数のレクチンを組合わせると、糖鎖又は糖鎖の種若しくは属を判別できる効果である。
【0031】
また、「前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」の後に、「このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程」を更に含んでよい。
【0032】
上記の「糖鎖との結合活性」とは、所定の糖鎖に対して結合性、会合性、及び、その他の親和的な性質を含んでよく、この性質を利用することにより、糖鎖認識をすることもできる。
【0033】
上記「マメ科レクチンのループDの遺伝子を改変する」とは、マメ科レクチンのループDの遺伝子に改変を加えることで、より具体的には、遺伝子を長くする遺伝子の挿入、遺伝子を短くする遺伝子の抜出、遺伝子の長さは変らない遺伝子の変更(ランダム、任意的、恣意的を含む。)等を含んでよい。このとき、遺伝子全てを変更することも含まれるが、より好ましくは、糖鎖認識能力が十分担保されるように、変更する遺伝子の数と位置を特定し、その特定された遺伝子を変更することである。このような特定は、アミノ酸の立体構造を解析して行うことにより、実験により、又は、その他の方法により合目的的に行われてよい。また、ループDは、上述のように、図2又は3に示すようなアミノ酸の位置によって規定でき、特に、このループDから糖結合性に関与するアミノ酸の位置を特定してよい。「この改変された遺伝子を使用してタンパクを作らせる」とは、遺伝子工学的にタンパクを作らせることを含み、そのために必要なあらゆる手段を含むことができる。
【0034】
上記「糖鎖解析ツール」とは、例えば、ウェスタ−ンブロット法における分離成分が移し取られる膜や、カラム等の分析又は分離ツールを含んでよく、また、診断薬、治療薬等の薬を含んでよい。これらのツールには、1又はそれ以上の改変レクチンを糖鎖識別を行うのに適切な順列で配列して固定化された固体支持体を含んでよい。この適切な順列の配列には、視覚的にパターンを認識しやすくなるように表示させるため、予め決められた位置に選別されたレクチンを含むウェル(well)又はスポットを配列することを含んでよい。また、標準パターンを作成した場合は、その標準パターンに準じた位置に上記ウェル又はスポットを配列することを含んでよい。ここで、「表示させる」は、直接・間接のいずれであってもよい。また、同チップを用い視覚的にいうなれば、パターン情報に該当する情報を得、それを基に細胞同定をすることができる。但し、視覚的にいうなればパターン情報であっても、その数が膨大である場合は、肉眼その他の方法での目視では不十分なことが多く、比較したい検体のそれぞれについて糖鎖結合強度順に直線回帰したり、コンピュータを用いて、クラスター解析等により、細胞同定を行ってもよい。クラスター解析では、どの部分に比較したいもの(例えば、標準と検討対象物、又は、コントロールと比較物)の違いが大きく出ているかをコンピュータを利用して調べることであってよく、一般のクラスター解析ソフトを用いることもできる。
【0035】
解析ツールとして、例えば、細胞表面の糖鎖に対して特異的に結合し得る異なる種類のレクチンを所定の分布で固定した糖鎖解析用試験プレートがあげられる。このとき、異なる種類のレクチンを固定する位置は、目的の細胞若しくは疾病診断により決めてよい。目的の細胞若しくは疾病診断により適切な配列が種々存在していてもよく、目的の細胞若しくは疾病診断に合わせて配列を最適化すると好ましい。糖鎖解析用試験プレートは、ろ紙のような紙を使った試験紙を含み、ガラス板やその他の材質の基材の上に所定のレクチンを固定したものも含んでよい。ここで、その他の材質の基材は、プラスチック(合成樹脂を含む)、金属(白金、銀、銅、金、シリコン、等を含む)、雲母、及び、これらの混合物を含んでよい。また、これらの材料や物質からなる基材の形状は、シート状、板状等の平面的形状、球状(例えばビーズ)、箱状等の3次元的形状、その他のあらゆる形状を含んでよい。このような「糖鎖解析用試験プレート」は、診断薬としても用いることが可能である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な例を上げ、図を参照しつつ、より詳しく説明するが、1つの具体的な例として材料や構造等が挙げられているに過ぎず、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0037】
【実施例】
[実施例1 ループCにおける延長]
元となるレクチンは、Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)を用い、テンプレートとしてMAHのcDNAを使用してPCR法によりループCの延長をした。また、このとき、表1に示すのプライマー等も用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
[回収レクチン遺伝子のインサート側断片の作製]
野生型MAH遺伝子を鋳型にして、以下の表2の試薬・条件でPCRを行い、インサート側断片を作製した。
【0040】
【表2】
【0041】
PCR終了後、DpnIを1μlずつ添加し、37℃で2時間反応させた。反応産物はPCRPurification Kit(QIAGEN社製)で回収された。生成物は、制限酵素HindIII 及び BamHIで処理された。そして再び、反応産物はPCR Purification Kit(QIAGEN社製)で回収された。そして、生成物は、制限酵素で処理をした野生型MAH組込みファージ(HindIII/BamHI−digested w.t.MAH−pComb3 (pComb3 phagemid vector having w.t.MAH cDNA))にライゲーションされた。ここで、w.t.MAH−pComb3は、pGEX−2Tにおいて、野生型MAH(wild−type(w.t.) MAH)をコードしたcDNA 断片が制限酵素 SpeI と XhoIにより処理され、pComb3にライゲーションされた。
【0042】
[遺伝子組み替えMAHのクローニングと配列の検証]
改変MAH cDNA−pComb3 プラスミド(MAH cDNA−pComb3 phagmid)は、一晩37℃でE.Coli JM109に組み込まれた。適当な発現ファージミド(expression phagmid)を含む。大腸菌 JM109は、50 μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)とが補充されたHEM (24g/L トリプトン(trypton)と、48g/L イースト抽出(yeast extract)と、10g/L MOPS.pH7.0とからなる) で育てられた。そして、得られたコロニーは、取り出され、37℃で50 μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)を含むHEMの1mlの培地で一晩培養された。.Phagemid DNAは、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)により回収され、DNA配列は、プライマー 5’−TTCTTGCACCACCTGATTCTC−3’ によって、BigDye Terminator Cycle Sequencing, FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) 及び 3100DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA)を使って決定された。
【0043】
[フラグ融合型タンパクの発現]
各改変MAH cDNA−pComb3 は、センス・プライマー及びアンチ・センス・プライマーを用いてPCR処理された。得られたPCR生成物は、PCR浄化キット(QIAGEN社製)により回収され、XhoI 及び BglIIで処理された。そして、生成物は、 XhoI/BglII−digested pFlag−ATS (Sigma社製)にライゲーションされた。各プラスミドは、E.coli JM109に組み込まれた。コロニーは、37℃で一晩50 μg/ml カルベニシリン(carbenicillin)を含む2XYTの1mlの中で培養された。Phagemid DNAは、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)を用いて回収された。各クローンのDNA配列は、プライマーN−26 Seqencing Primer (5’−CATCATAACGGTTCTGGCAAATATTC−3’) 及び BigDye Terminator CycleSequencing, FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) 及び 3100 DNA Sequencingsystem (Applied Biosystem社製, CA, USA)を用いて決定された。各特定された発現プラスミドを含む大腸菌(E.Coli) JM109 は、37℃で3時間50 μg/ml carbenicillinが補充されたHEM中で培養された。フラグ融合型タンパク発現は、イソプロピルβ−D−チオガラクトシド(isopropyl β−D−thiogalactoside (IPTG:final concentration 1mM))によって導入され、37℃のインキュベーションが3時間継続した。培養生成物は、9600rpmで10分間遠心分離され、バクテリア・セル・ペレットは、TBS(Tris Buffered Saline)中で再び懸濁された。得られたバクテリア・セル懸濁液は、液体窒素での凍結及び37℃のウォーター・バスでの解凍サイクルを5回繰り返した。そして、懸濁液は、15000rpmで30分間遠心分離され、上澄みが取り出され、BCAプロテイン・アッセイ・キット(PIERCE社製)を用いてプロテイン・アッセイ処理された。
【0044】
[ウェスタ−ンブロット解析によるフラグ融合タンパクの検出]
フラグ融合プロテインを含む上澄みは、sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis によって分離され、ニトロセルロース膜に移された。その膜は、polyclonal anti−MAH antibodies or monoclonal anti−Flag antibodies (SIGMA社製)によって検出され、alkaline phosphatase−conjugated anti−rabbit IgG 又は anti−rat IgG antibodies (ZYMED社製, San Francisco,CA) によってインキュベートされた。アルカリ・フォスフォターゼ基板キットII(Vector Laboratories Inc.,社製 Burlingame, CA)よって、抗体が可視化された。
【0045】
[改変MAHレクチン]
ランダムに選ばれた1つのアミノ酸が、MAHのループC(図4参照)のアミノ酸の間に挿入された。PCRがアミノ酸を挿入するのに用いられた。改変レクチンMAHのcDNA(800bpあたり)は、アガロース・ゲル(agarose gel electrophoresis)により確認された。改変MAHのcDNAを含むファージミド(phagemid)の大腸菌(E. coli)への組込みがされ、180個の改変レクチンが生じた。
【0046】
[抗MAH抗体、抗フラグ抗体によるフラグ融合プロテインの検出]
クローンされた改変MAHのcDNAは、挿入位置の上流にフラグを持つXhoI/BglII−digested pFlag−ATSに挿入された。フラグ改変レクチン融合プロテインは、大腸菌(E. coli) JM109 をホストとして用いて、生産された。各クローンは、抗MAH抗体(anti−MAH pAb)及び 抗フラグ抗体(anti−Flag mAb)を用いたSDS−PAGE やウェスタ−ンブロット(Western blotting)により解析された。フラグ改変レクチン融合プロテインは、30 kDaあたりの対応する位置にあり、このことは、フラグ改変レクチン融合生成物と一致していた(図6)。このことより、フラグ改変レクチンは、フラグ蛋白としても、MAHとしても発現が確認できた。また、各フラグ改変レクチンの抗MAH抗体(anti−MAH pAb)及び 抗フラグ抗体(anti−Flag mAb)への結合性はほぼ同じであると考えられる。
【0047】
[改変MAHクローンの特徴]
ELISAにより、ここの改変MAHレクチンの結合性が評価された。まず、抗フラグ抗体(Sigma社製)が、一晩、4℃でTBS中において500 ng /wellの濃度で、マイクロタイタープレート(microtiter plate (Smiron cat. # MS−8896F))に適用された。TBSで3回洗浄した後、ウェルは、TBS中の3%ボビン血清アルブミンで満たされ、次に、改変MAHクローンを含む50 μg/well の大腸菌ライセート抽出物(E.coli lysate extracts)は、追加され、室温で2時間インキュベートされた。各クローンのプロテインが固定されているか、抗MAH抗体によって予め調べられた。洗浄後、50 μl の 2% のヒト(human(AB−type)), ウシ(bovine), ウマ(equine), ブタ(porcine), ニワトリ(chicken), ウサギ(rabbit), ネズミ(cavy)の赤血球を適用した。2時間のインキュベーション後、ウェルは3回0.01% Tweenを含むTBSで洗浄された。これらの動物の赤血球は、NIPPON BIOSUPP. CENTER Co.LTD. Tokyoより購入した。ABTSとH2O2の発色により改変レクチンの赤血球との結合性が調べられた。抗MAH抗体を利用し、各クローンのレクチンプロテインが各ウェルにおいて同量固定されていることが確認された。図7及び8に、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、ウサギ、ネズミの赤血球に対する結合結果示す。図7では、野生型のMAHレクチンに対する相対値がプロットされている。クローン7Gly(Glyアミノ酸をループCの7番目のアミノ酸配列に有するもの)は、ウマにのみ強い結合性を示した。しかし、他の動物の赤血球には結合しなかった。特異性は、野生型MAHとは異なっていた。他のクローンは野生型ほど強い結合性を示さなかった。図8は、最も強い結合性を持つものを1として相対値をプロットしたものである。このグラフは、改変レクチン間に大きな違いがあることを示している。ガラクトースを用いたインヒビッション・アッセイは、改変レクチンの赤血球に対する結合が一部糖質を介して行われていることを示していた。
【0048】
[実施例2 ループDにおける延長]
MAHのループDの中央部6箇所(アミノ酸配列219〜224の前)に1アミノ酸を挿入することにより、糖鎖認識特異性の異なる多様なレクチンを含むライブラリーを作製した。ベクターにN末にFLAGタグを付加するpFLAG−ATSを用いたが、マルチクローニングサイトにはMAHを組み込むのに都合の良い制限酵素部位が無かったので、Site−Directed Mutagenesisのプロトコールに従い、Bgl II siteをSpe I site に作り変えた。まず、改変したい部位を含むプライマーをsense側、anti側でまったく相補的になるように設計した。次にPCRを行い、Dpn I 1 μl を加え、37℃で1時間インキュベートした。このDNA溶液をそのまま用いてXL1−Blue にトランスフォーメーションした。再度に、得られたコロニーをショートカルチャーしてプラスミドを回収し、BigDye Terminator Cycle Sequencing によりそのDNA配列を読んで、改pFLAG−ATSを同定した。(表3参照)
【0049】
【表3】
【0050】
[ベクターの移しかえ]
野生型MAH cDNAとMAH由来の人工のcDNAをpFLAG−CTSからPCRで増幅して制限消化(Xho I conc. と Spe I conc. (ロッシュ社製))し、改pFLAG−ATSに組み込んだ。これをJM109にトランスフォーメーションし、得られたクローンをBigDye Terminator Cycle Sequencing により同定した。(表4参照)
【0051】
【表4】
【0052】
[ループDの伸張]
制限酵素として(Xho I .conc 及び Bgl II.conc)を用いて上記と同様にクローンを作成し、単離・同定した。ランダムにアミノ酸を挿入するプライマーを用いた改変では、単離できなかったクローンについては、個別にプライマーを設計して同じように単離・同定した。(表5参照)
【0053】
[改変MAH cDNAを持つクローンの単離・同定]
マルチクローニングサイトのBgl II site をSpe I site に変換することができた。目的の部分以外には変異は存在しなかった(図9参照)。理論上予測される120種類の改変MAHを単離・同定することができた(図10参照)。
【0054】
【表5】
【0055】
[BigDye Terminatior Cycle Sequencing プロトコールの変更]
今回のシーケンスでは、既知のプロトコールを変更して行っているので、その変更点を箇条書きにして表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
[大腸菌溶解物(ライセートの作製)]
カルベニシリンを入れたHEM(Highly Enriched Medium)で単離してある大腸菌を一晩短期培養(small−culture (over night))した。翌日、HEM 20 ml, CaCl2 (1M) 20 μl, MnCl2 (1M) 20 μl, MgCl2 (4.9M) 81.7 μl からなる培地に短期培養(small−culture)した大腸菌を 200 μl 加えて、3時間予備的培養(pre−culture)した。ここへ、100 mM IPTGを200μl 加えて、3時間培養し誘導をかけた。次に9,500 rpm で10分間遠心して大腸菌を回収し、TBS 200 μl に懸濁して −80℃に保存した。後日、大腸菌を凍結(液体窒素)と融解(37℃湯浴)を5回繰り返し、15,000 rpm で20分間遠心して上清をライセートとして回収した。このライセートは、タンパク定量を行った後に−80℃に保存し、これを使用する準備が整ってからタンパク濃度 1 mg/ml に希釈して 4 ℃保存した。
【0058】
[SDS−PAGE及びウエスタン・ブロッテイングによるフラグ融合プロテインの検出]
ライセート中に改変FLAG−MAHが存在しているのか調べるために、適当にサンプルを選んでSDS−PAGE、及び、ウェスターン・ブロットを行った。抗体染色では、1次抗体として、anti−MAH rabbit polyclonal 抗体、又は、anti−FLAG M2 monoclonal 抗体を用い、2次抗体にはそれぞれAP−goat anti−rabbit IgG 抗体と、AP−goat anti−mouse IgG 抗体を用いてABCキットで発色させた。フラグ改変レクチンは、フラグ融合タンパクとしてもMAHとしても発現が確認できた。
【0059】
[Cell−ELISA 法による改変MAHの細胞に対する結合性解析]
96 well−ELISA 用プレートに poly−L−lysine (1μg/well) をひき(37℃で30分間インキュベート)、細胞溶液(105 cells/well; Collon−38, SL−4, Caco−2, 分化型 Caco−2)を加え、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde (25%)) (1 μg/well) によりこれをプレートへ固定(室温で30分間静置)した。細胞を固定したプレートはTBSを入れて4℃保存し、更に、3%BSA/TBSでブロッキング(室温で3時間振盪)して、上で作製した改変MAHレクチンを含むライセート(50μg/well)を加えた(室温で2時間振盪)。1次抗体には、anti−FLAG M2 monoclonal抗体(1000倍希釈を50μl/well)、2次抗体には、HRP−goat anti−mouse IgG 抗体(1000倍希釈を50μl/well)を用いた(共に室温で30分間振盪)。ABTS/H2O2(50μl/well)で発色させ、OD405/490を測定した。
【0060】
[Cell−ELISA法による改変MAHの性質の異なる細胞への結合性の解析]
図11は、各細胞(Colon−38、SL−4、未分化型Caco−2、分化型Caco−2)の野生型及び改変MAHの結合強度を示す。ここで、Colon38、SL4は同じ起源であるが、転移性の異なる2つの癌細胞セルラインである。真上に野生型MAHを置き、そこから時計回りに1A、1C、1D、・・・、6V、6W、6Yという順番に並んでいる。この円状のグラフの一番外側の目盛りは0.2で、中心から離れるほど大きく(結合性が強く)なる。図12は、ある改変レクチンの各細胞(Colon−38、SL−4、Caco−2、分化型Caco−2)に対する結合性違いを示したものである。各改変レクチン(1Q,2C,3D,3S,4N)毎に、性質の異なる4種類の細胞との結合性がそれぞれ違っていることがわかる。ここで、1Qとは、図5において、1の位置にグルタミンが入ることを意味し、2Cとは、2の位置にシステイン(Cysteine)が入ることを意味し、3Dとは、3の位置にアスパラギン酸(Aspartic acid)が入ることを意味し、3Sとは、3の位置にセリン(Serine)が入ることを意味し、4Nとは、4の位置にアスパラギン(Asparagine)が入ることを意味する。即ち、一般には、”nX”とは、図5の”n”の位置に”X”というアミノ酸が挿入されたことを意味する。上述のように性質の異なる細胞との結合性が異なるのは、細胞表面の糖鎖の違いによるものと考えられ、従って、これらのレクチン群を用いれば、糖鎖若しくは細胞の特徴を判別できることになる。従って、最初に既知の糖鎖により、これらの改変レクチン群を分類し、それぞれの類を解析するための改変したレクチンの種類を選択しておけば、既知の糖鎖に基づいた糖鎖マッピングにおける未知の糖鎖の位置が判明すると考えられる。特に、Colon38とSL−4、又は、分化型Caco−2と未分化型Caco−2のように起源が同じ細胞等においても、それぞれ結合性が異なるレクチンが存在し、その差異を明確にできると考えられる。
【0061】
図13に、120種類の改変レクチンとColon−38又はSL−4との結合性を示す。この図で、数字とアルファベットで示されているものは、上述のように、改変位置と改変の種類を示すものである。このように、120種の改変レクチンを全て使って糖鎖解析をすることは、類似する糖鎖認識機能を有しながら、少しずつ異なると考えられるこれらのレクチンの集合により、多面的に未知の糖鎖を解析することができるだけでなく、この中から、さらに、別の切り口(例えば、挿入箇所を固定し、アミノ酸種を変えたもの、アミノ酸種を固定し挿入箇所を変えたもの、別の基準(例えば、パニング)により選択したもの等)で集めたレクチンの集合体は、より的確に糖鎖を解析できるものと考える。
【0062】
[実施例3 ループDにおける改変]
MAHレクチンのループDにおける改変(アミノ酸配列の長さを変えない改変又はアミノ酸種類を変更する改変)を行った。MAHのループDには、図14に示すように、野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では219から223番までのアミノ酸配列が含まれ、野生型MAHレクチンでは、APKAVというアミノ酸が並んでいる。ここでは、これらのアミノ酸の種類を変えることによりアミノ酸の改変を行った。即ち、図14において前後のGとFに挟まれたAPKAVをランダムなアミノ酸(XXXXX)に改変した。
【0063】
[ループD改変MAHの作製]
MAHのループD改変は、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold DNA polymerase (PE Biosystems社製))によって、パーキン・エルマー2400又は9700熱サイクル装置(Perkin−Elmer 2400 or 9700 thermal cycler)の中で行われた。このとき用いた、プライマー及びリバース・プライマー(reverse primer)を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
PCR生成物を得るために次のようなプロトコールが用いられた。まず、95℃で9分間、(94℃で1分間、54℃で1分間、72℃で2分間)のサイクルを30回、そして、72℃10分間である。得られたPCR生成物は、制限酵素DpnIによって37℃で2時間処理された。生成物は、PCRピュアリフィケーションキット(QIAGEN社製)により回収された。それから、生成物は、過剰な制限酵素 EcoRI 及び BglII によって処理され、アガロース・ゲルの電気泳動にかけられて、ゲル抽出キット(QIAGEN社製)によって回収された。生成物は、それから、制限酵素EcoRI/BglII処理野生型MAH−pComb3(EcoRI/BglII−digested w.t.MAH−pComb3 (pComb3 phagemid vector having w.t.MAH cDNA))にライゲートされた。
【0066】
[ファージの準備]
その表面に改変MAHレクチンを発現するファージミド(phagemid)粒子を発生させるために、改変レクチン−pComb3は、大腸菌(E.coli)SURE細胞(Stratagene社製, La Jolla,CA)に組み込まれた。この細胞は、50 μg/ml カルベニシリン(carbenicillin)を含むHEM プレート (24 g/L tryptone, 48 g/L yeast extract, 10 g/L MOPS, pH7.0)に置かれ、37℃で8−9時間培養された。細胞は、プレートを10ml HEMに浸して、はがすことにより回収された。細胞を含むHEM媒体は、100 ml HEM (pH 6.9,supplemented with 1mM CaCl2 and 1mM MnCl2)/carbenicillin)に集められ、1−2時間培養された。A600が約0.3になると、細胞培養を、VSCM13 helper phage (約1012 pfu; Stratagene社製, La Jolla,CA)に感染させた。感染されたものは、30℃で12時間振盪して培養され、ファージは、ポリエチレン・グリコール8000及びとNaCl沈殿によって一晩かけ4℃で、培養物から単離された。遠心分離した後、ファージ・ペレットは、トリス緩衝整理食塩水(Tris−bufferd saline(TBS:50mM Tris−HCl, pH 7.5 containing 150mM NaCl)+1% bovine serum albumin(BSA) )に懸濁された。
【0067】
[Caco−2細胞によるパニング]
パニングには、Caco−2細胞が用いられた。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から得たCaco−2細胞が培養された。分化のため、2mM酪酸ナトリウム(2 mM sodium butyrate)(和光純薬(株)社製)が加えられた。各パニングにおいて、約108 pfu のファージが、 1% BSAを含む10mlのTBSの中にある分化型Caco−2 の懸濁液に加えられた。4℃で一晩の回転式培養の後、細胞はペレット状にされ、5mlのTBSで4℃で3回洗浄された。ファージを含む最終細胞ペレットは、 2ml の (OD600=1) Sure cellsと共に培養された。37℃で15分間培養された後、細胞は、multiple HEM (pH 7.0)/carbenicillin plates に置かれ、37℃で8時間培養された。ファージ懸濁液は、上述のようにバクテリア上澄から準備され、ファージの濃度が滴定された。
【0068】
[改変レクチンのDNA配列]
3回目のパニングの後、HEMプレートの30コロニーは、集められ、ファージミドDNA(phagemid DNA)は、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)によって回収され、12種類の新規人工改変レクチンを得た。そして、DNA配列は、プライマー:loopD−Seq 5’−GTTAATAGCATCTCTAGTTTACCC−3’ と、BigDye Terminatr Cycle Sequencing と、FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) と、 3100 DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA) とを用いて決定された。そのアミノ酸配列を図15に示す。
【0069】
[フラグ融合プロテインの発現]
各改変MAH cDNA−pComb3 は、センス・プライマー(sense primer)N−Flag−XhoI:5’−CCAGGTGAAACTGCTCGAGTCAGATG−3’ を用い、また、アンチセンス・プライマー(antisense primer) Flag−SalI: 5’−GTGGTCGACTGCAGTGTAACGTG−3’ を用いて、PCRされた。得られたPCR生成物は、PCR回収キット(PCR purificatin Kit(QIAGEN社製))を用いて回収され、制限酵素XhoI 及び SalI によって処理された。処理されたものは、XhoI/SalI−digested pFlag−ATS(Sigma社製)によりライゲートされた。得られた各プラスミドは、大腸菌(E.coli) JM109 に組み込まれた。バクテリア・コロニーは、50 μg/ml carbenicillin を含む2XYT(16 g/l Trypton, 10g/l East Extract, 5g/l NaCl) プレート に置かれ、37℃で一晩培養された。各プレートのコロニーは、取り上げられ、37℃で50 μg/ml carbenicillinを含む2XYTの1 ml の培養物の中で一晩培養された。ファージミドDNA(phagemid DNA)は、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems(LIFE TECHNOLOGIES社製).によって回収された。そして、各クローンのDNA配列は、プライマーのN−26 Seqencing Primer (5’−CATCATAACGGTTCTGGCAAATATTC−3’)を用い、 BigDye Terminator Cycle Sequencing と、 FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) と、 3100 DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA) を用いて、決定された。既知の発現プラスミドを含む大腸菌(E.Coli) Sure.は、37℃で3時間、50 μg/ml carbenicillin を含むHEM媒体において培養され、isopropyl β−D−thiogalactoside (IPTG:final concentration 1mM) を加えてフラグ融合プロテイン発現が誘起され、上述の37℃での培養がやはり同じ温度で3時間継続された。培養されたものは、9600rpmで遠心分離され、バクテリア細胞ペレットは、TBS (Tris Buffered Saline)によって再び懸濁された。そして、このバクテリア細胞懸濁液について、液体窒素と37℃のウォーターバスを用いた凍結と解凍のサイクルを5回行った。そして、懸濁液は、0℃で30分間15000rpmで遠心分離された。上澄を取り出し、BCAプロテイン・アッセイ・キット(BCA protein assay kit (PIERCE社製))によってプロテイン・アッセイが行われた。
【0070】
[フラグ融合プロテインの検出]
ソジウム・ドデシル・サルフェイト−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis)によって、フラグ融合プロテインを含む上澄が分離され、ニトロセルロースの膜に移された。そして、この膜は、ポリクロナール・抗MAH抗体(polyclonal anti−MAH antibodies)又は、モノクロナール・抗フラグ抗体(monoclonal anti−Flag antibodies (SIGMA社製))によって、そして、次に、alkaline phosphatase−conjugated anti−rabbit IgG 又は、 anti−rat IgG antibodies (ZYMED社製, San Francisco,CA)によって検証された。結合抗体は、アルカリ・フォスフォターゼ基板キットSK−5200(alkaline phosphatase substrate kit SK−5200 (Vector Laboratories, Inc.社製, Burlingame, CA) )によって、視覚化された。フラグ改変レクチンは、フラグ融合タンパクとしてもMAHとしても発現が確認できた。
【0071】
[ループD改変MAHクローンの糖結合特異性]
各改変MAHレクチンの結合特性がELISAによって評価された。まず、抗フラグ抗体(anti−flag antibodies (Sigma社製))が、一晩4℃でTBS中で 500 ng /wellの濃度でマイクロタイター・プレート(Smiron社製)に付けられた。TBSで3回洗浄された後、TBS中の3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)でウェルがブロックされた。次に、改変MAHクローンを含む 50 μg/well 大腸菌(E.coli)ライセート抽出物(50 μg/well E.coli lysate extracts)が加えられ、室温で培養された。各クローンのプロテインが各ウェルのプレートに付いていることは、抗MAH抗体によりあらかじめ確認された。洗浄後、oligosaccharides、Galactose(Gal)−sp−biotin、Mannose(Man)−sp−biotin、Glcose(Glc)−sp−biotin、GalNAc−sp−biotin、 GlcNAc−sp−biotin、 NeuAc−sp−biotin、 Lex−sp−biotin、 sialyl Lex−sp−biotin、 Lea−sp−biotin、 Sialyl Lea−sp−biotin、 Lec−sp−biotin、 LacNAc−sp−biotin、 及び、sialyl T−sp−biotin (Nicolai博士によるもの)のビオチン化ポリアクリルアミド・ポリマーのパネルが、TBS中で、1, 0.5,0.25, 0.125 μg/well の濃度で、そのプレートに付けられた。室温で2時間の培養の後、ウェル(well)は、0.01%ツィーン(Tween)を含むTBSで3回洗浄された。また、オリゴ糖と結合したビオチン化ポリアクリルアミド・ポリマーのプレートに対しては、洗浄後、HRP−conjugated streptavidin(Zymed社製) が30分間ウェルに加えられた。ウェルは、0.01%ツィーンを含むTBSで3回洗浄され、プレートは上述のように処理された。また、図17には、改変レクチンと一連のビオチン化した糖ポリマーとの結合性を示している。
【0072】
[ループD改変MAHクローンの異種動物赤血球への結合性]
各改変MAHレクチンの結合特性がELISAによって評価された。まず、抗フラグ抗体(anti−flag antibodies (Sigma社製))が、一晩4℃でTBS中で 500 ng /wellの濃度でマイクロタイター・プレート(Smiron社製)に付けられた。TBSで3回洗浄された後、TBS中の3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)でウェルがブロックされた。次に、改変MAHクローンを含む 50 μg/well 大腸菌(E.coli)ライセート抽出物(50 μg/well E.coli lysate extracts)が加えられ、室温で培養された。各クローンのプロテインが各ウェルのプレートに付いていることは、抗MAH抗体によりあらかじめ確認された。洗浄後、ヒト(AB型)( human(AB−type))、ウシ(bovine)、ウマ(equine)、ブタ(porcine)、ニワトリ(chicken)、ウサギ(rabbit)、そして、ネズミ(cavy)の50 μl の 2% 赤血球(erythrocytes)が、TBS中でウェルに付けられた。改変レクチンと赤血球との結合は、ABTSとH2O2を適用し、プレート・リーダーを用いて検証された。図16に、作られた改変レクチンのヒト及び6種類の動物の赤血球への結合性を表す。図中色が濃いものは結合性がより強い。この図から、各赤血球は、これら複数種類のレクチンに対して、異なる結合性を示していることがかわる。従って、今回選んだレクチンの組み合わせからなるレクチン群を用いて、糖鎖解析をすることができることがわかる。ここでも、各ポリマーは、複数種の改変レクチンに対して異なる結合性を持っており、このパターンにより、糖鎖解析ができることがわかる。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明の改変レクチン又は改変レクチン群及びそれらの製造方法によると、糖鎖認識特性が似つつも、異なる改変レクチンを製造でき、これらのレクチン又はレクチン群による糖鎖解析がより好ましく行われると期待される。また、天然に得られるレクチンは、その種類が限られるばかりでなく、量的にも不安定になりやすいが、本発明によれば、そのようなことが容易に解決できるという効果がある。
【0074】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】MAHの立体構造の予測図である。
【図2】MAHをコードしたcDNAの塩基配列と予想されるアミノ酸配列を示した図である。
【図3】マメ科レクチンの種類と各ループのアミノ酸配列を示す図である。
【図4】MAHのループCのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
【図5】MAHのループDのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
【図6】改変MAHレクチンのウェスターンブロット解析結果を示した図である。
【図7】ヒト等の赤血球に対する改変MAHレクチンの結合性を示した図である。
【図8】ヒト等の赤血球に対する改変MAHレクチンの結合性を示した図である。
【図9】新しいベクターの作製において、マルチクローニングサイト変更が行われたことを示す図である。
【図10】改変レクチンの分離・同定できたことを示す図である。
【図11】各種細胞への改変レクチンの結合強度を示す図である。
【図12】各種細胞と選択された改変レクチンの結合強度を示す図である。
【図13】SL−4とColon−38の細胞の改変レクチンへの結合強度を示す図である。
【図14】MAHのループDのアミノ酸配列を示し、挿入によらない改変によるアミノ酸の改変位置を示した図である。
【図15】改変MAH(挿入によらない)のループDのアミノ酸配列を示した図である。
【図16】ループD改変MAH(挿入によらない)ヒト等の赤血球との結合性を示した図である。
【図17】ループD改変MAH(挿入によらない)ヒト等のビオチン化糖ポリマーとの結合性を示した図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、レクチンの製造方法、特に遺伝子改変レクチンの製造法、及び、この製造法を用いて製造した改変レクチンを含む糖鎖解析ツールに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の糖鎖工学の進歩は目ざましく、細胞の安定化に寄与する植物細胞の細胞壁のプロテオグリカン、細胞の分化、増殖、接着、移動等に影響を与える糖脂質、及び、細胞間相互作用や細胞認識に関与している糖タンパク質等の高分子の糖鎖が、互いに機能を代行、補助、増幅、調節、あるいは、阻害し合いながら高度で精密な生体反応を制御する機構が明らかにされようとしている。また、細胞表面の糖鎖や、糖鎖−レセプター間の相互作用異常による疾病の発生、あるいは、エイズなどのウイルス感染における糖鎖の役割等に関して盛んに研究されている。
【0003】
特に、正常細胞と癌細胞、あるいは分化段階の異なる細胞など、ある細胞を他の細胞と分別し同定するために、細胞がその表面に持つ糖鎖を利用でき、例えば、癌細胞については悪性度の変化に応じて、幹細胞についてはその分化段階により変化するといったような報告が数多くなされている。以上のように、糖鎖に基づく解析(例えば、分別や同定)は、大変有意義であると考える。
【0004】
このような糖鎖解析の手段として、レクチンは大変有用であると考えられるが、天然に存在するレクチンの種類が限られること、レクチンが利用されやすい形になっているかが重要な関心事である。即ち、多くの種類の糖鎖を識別するには、その数に見合うだけの異なる性質を持つレクチンが理論的に必要である。一方、利用しやすくするには、特定種のレクチンが単離されて担体(又は支持体)に固定されているのが望ましい。
【0005】
天然に存在するレクチン又は市販のレクチンを複数取り混ぜ、既知の糖鎖を利用してそれぞれの糖鎖認識性を調べ、未知の糖鎖の解析をすることができる。しかし、仮に識別すべき糖鎖の種類が、10000あったとすれば、理論的には、少なくとも14種類以上のレクチンが必要である(ここで、1種のレクチンに付き結合性有り又は無しの2種類の判定がされると仮定した)。しかし、異なる糖鎖に対し同じ糖鎖特異性を持つ異なる複数のレクチンが存在する可能性を考慮すれば、更にその数倍の数の種類のレクチンが必要になると考えられる。更に、糖鎖解析で大きく期待されているのは、上述の細胞の判別でもわかるような、微妙な違いを見分けることである。天然に存在するレクチン等は、種類が少ないばかりでなく、微妙な違い(グラディエーション)をもって段階的にレクチンが準備されているとは限らず、単なる絶対数を増やせばよいとは限らない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の課題は、微妙な糖鎖の違いを区別する糖鎖解析に役立つレクチンを準備する方法であって、短時間に簡単に準備できるレクチンの製造方法を提供することである。
【0007】
【発明を解決するための手段】
上記課題に鑑みて、本発明では、あるレクチンの糖鎖認識部位を該レクチンの三次元構造解析から割り出し、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定し、その特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入されたレクチンをベクターDNAにコード化し、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせること、を含むレクチンの製造方法を提供する。
【0008】
ここで、「あるレクチン」とは、例えば、天然のレクチンでよく、また、人工のレクチンでもよい。「糖鎖認識部位」は、ある糖鎖に対して結合性を有する部位を含んでよい。「三次元構造解析」としたのは、立体構造において糖鎖を認識するからであり、この「解析」には、模型による解析やコンピュータシミュレーションによる解析を含んでよい。「特定されたアミノ酸配列位置」とは、主鎖における位置を含んでよく、側鎖の位置や側鎖内の位置を含んでよい。「その前後」とは、その位置の隣の位置を意味してよく、必ずしも序列を必要とするものではない。「1のアミノ酸」は、20種類の基礎アミノ酸を含んでよく、また、それ以外のアミノ酸を含むことを妨げない。アミノ酸が挿入されるため、主鎖又は側鎖が1つ長くなることを含む。このような改変を受けたレクチンは人工のレクチンであるが、天然に存在することを否定するものでない。「ベクターDNA」は、このようなアミノ酸配列に関する情報がコード化されるもので、いわゆる遺伝子操作に一般に用いられるものを含んでよい。この「コード化されたDNAを使用して」とは、いわゆる遺伝子工学的にタンパク(タンパク質を含んでよい)が作られることを含んでよい。
【0009】
より具体的に、本発明においては、以下のようなものを提供する。
【0010】
(1)改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と、その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定する工程と、前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。
【0011】
(2)前記1のレクチンがマメ科のレクチンであることを特徴とする上記(1)に記載の改変レクチンの製造方法。
【0012】
(3)前記糖鎖認識部位がループC若しくはループDを含むことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の改変レクチンの製造方法。
【0013】
(4)改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と; [2]その部位に含まれる1つのアミノ酸の配列位置を選択する工程と; [3]グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程と; [4]前記選択されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に、前記選択された1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と; [5]前記[3]において選択しなかったアミノ酸がある場合は、前記[3]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法。
【0014】
(5)改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と; [2]前記糖鎖認識部位に含まれる複数のアミノ酸の配列位置を特定する工程と; [2]前記特定された複数のアミノ酸の配列位置から1のアミノ酸の配列位置を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化化する工程と; [4]前記[2]において、前記特定されたアミノ酸配列位置であって、未だ選択されていない配列位置がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法。
【0015】
(6)上記(4)又は(5)の方法で製造された改変レクチン群。
【0016】
(7)以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。(a)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号127〜138又は219〜224のいずれかの位置の前に、1のアミノ酸が挿入された、ポリペブチド。(b)(a)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。
【0017】
(8)上記(7)に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
【0018】
(9)改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、マメ科レクチンのループDの遺伝子を改変する工程と、この改変された遺伝子を使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。
【0019】
(10)以下の(c)または(d)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。(c)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号219〜224のいずれかの位置の前に1のアミノ酸が挿入された、若しくは、N末端から数えたアミノ酸配列番号219〜224の少なくとも1つのアミノ酸の種類を改変した、ポリペブチド。(d)(c)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。
【0020】
(11)請求項10に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
【0021】
(12)上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法で製造された改変レクチン又は請求項4〜6のいずれかに記載の改変レクチン群又は請求項7若しくは9に記載の方法で製造された改変レクチンを含む糖鎖解析ツール。
【0022】
ここで、「改変した遺伝子」は、元となるレクチンの遺伝子を遺伝子工学的に改変した遺伝子を含んでよい。「改変」とは、遺伝子の基本的構造は変えずに、変更を加えることを含んでよい。より具体的には、遺伝子を長くする遺伝子の挿入、遺伝子を短くする遺伝子の抜出、遺伝子の長さは変らない遺伝子の種類を変える遺伝子の変更又は改変(ランダム、任意的、恣意的なものを含む。以下「変更」。)等を含んでよい。前記「1のレクチン」は、天然のレクチン又は人工のレクチンを含んでよく、植物若しくは植物由来の又は動物若しくは動物由来のレクチンを含んでよい。前記「糖鎖認識部位」は、何らかの方法で糖鎖の異同を区別できる部位を含んでよく、特に、立体的な構造に基づいて糖鎖の異同を区別できる部位を含んでよい。また、この「部位」は、1又はそれ以上の箇所に分かれて存在してよい。別の箇所に分かれて存在する場合は、1箇所だけで糖鎖の異同を区別してよく、また、2箇所又はそれ以上の部位が共同して糖鎖の異同を区別してもよい。ここで、1箇所に存在することは、その部位が実質的に連続して存在していることを含んでよい。前記「三次元構造」とは、立体的な構造を含んでよく、前記「三次元構造解析」は、図表による解析、模型による解析、コンピュータシミュレーションによる解析、及び、その他の解析を含んでよい。「糖鎖認識部位を割り出す」とは、そのような部位を見つけだすことを含んでよく、具体的には、1又はそれ以上のアミノ酸の配置位置を特定することを含んでよく、そのようなアミノ酸の配列をコードした塩基配列の配列位置を特定することを含んでよい。
【0023】
例えば、三次元構造の例を図1のモデルによって考えることができる。図1Aは、そのモデルの立体構造を示すものであり、図1Bは、それをより模式的に示したものである。図1Cは、更に、糖鎖との結合の様子を示している。この図から、ループCとDは、その間に糖鎖を挟み込み、所定の糖鎖に結合性を示すことにより、糖鎖の異同を認識すると考えられる。このような解析から、糖鎖認識部位として、ループC及びDを見出すことができるが、このような解析に限らず、その他の如何なる解析をも含んでよい。
【0024】
従って、上述の改変レクチン又は改変レクチン群を製造する方法に含まれてよい「1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程」は、コンピュータ解析に限らず、あらゆる方法が適用できることになり、このような工程を省いた「改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、糖鎖認識部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定する工程と、 前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法」も実質的に含むと考えることができる。同様に、「改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって、[1]糖鎖認識部位に含まれる1つのアミノ酸の配列位置を選択する工程と; [2]グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に、前記選択された1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と; [4]前記[2]において選択しなかったアミノ酸がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法」とすることも可能と考えられる。また、「改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって; [1]糖鎖認識部位に含まれる複数のアミノ酸の配列位置を特定する工程と; [2]前記特定された複数のアミノ酸の配列位置から1のアミノ酸の配列位置を順に選択する工程と; [3]前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化化する工程と; [4]前記[2]において、前記特定されたアミノ酸配列位置であって、未だ選択されていない配列位置がある場合は、前記[2]の工程に戻る工程と; を含む改変レクチン群の製造方法」とすることが可能と考えられる。
【0025】
前記「その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸配列位置を特定する」とは、上述のように割り出された糖鎖認識部位から、好ましい1又はそれ以上のアミノ酸を特定することを含んでよい。ここで、「好ましい」とは、本発明の目的に照らして好ましいことを意味してよく、具体的には、糖鎖認識能力が、改変前のレクチンとは異なるような改変レクチンを生じる結果となることを含んでよい。
【0026】
前記「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」に換えて、「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1又はそれ以上のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」としてよいが、複数のアミノ酸が挿入される場合は、結果として得られるレクチンの糖鎖認識能力を失わせないように挿入することが望ましい。挿入されるアミノ酸は、所謂タンパク質を構成する20種のアミノ酸を含んでよく、それ以外のアミノ酸を除外するものではない。「20種類のアミノ酸」とは、タンパク質を作っているアミノ酸で、より具体的には、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンをいってよい。「ベクターDNA」は、遺伝子工学において用いられるDNAで、これをホストに組み込むことにより、コードされたポリペプチドを産生させることができるものを含んでよい。
【0027】
上記「マメ科のレクチン」は、図3に挙げられるような複数のレクチンを含んでよい。特に、Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)を含むことが好ましい。図2に、このMAHレクチンの塩基配列及びアミノ酸配列を示す。Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)において、塩基配列の配列位置が466〜498(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では127〜137)が、ループCのアミノ酸に対応する塩基配列位置で、塩基配列の配列位置が721〜780(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では212〜231)が、ループDのアミノ酸に対応する塩基配列と考えられ、このような領域が改変の対象領域として含まれてよい。また、ループDにおいて、より好ましくは、塩基配列の配列位置が742〜756(野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では219〜223)の領域が改変の対象として含まれてよい。例えば、図4に示すようなMAHのループCの場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、127〜137の位置の前に、1〜11の挿入位置が示されており、仮に9の位置にXが挿入されると同図の ex. のような配列となる。また、図5に示すようなMAHのループDの場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、219〜224の位置の前に、1〜6の挿入位置が示されておいる。ここで、塩基配列は、開始コドンから数え、アミノ酸配列は、N末端アミノ酸基から数えた。また、図14に示すようなMAHのループDのアミノ酸の種類の変更(又は遺伝子の変更)の場合では、上述のような野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当で、219〜223の位置で少なくとも1の種類の変更を行うこともできる。
【0028】
MAH以外のマメ科のレクチンでは、図3のようなアミノ酸配列により各ループが規定される。これらループの中で、上記ループCとループDが糖鎖認識に関与しているといわれる。このように他の種類のレクチンのループのアミノ酸配列を見比べると、MAHのループCは比較的アミノ酸が詰まっているのに対し、ループDのアミノ酸は、図3からわかるように割とすいており、アミノ酸を挿入するループとしてより好ましいとも考えられる。また、図2のMAHのアミノ酸の配列表で、ループDの位置が、3番目(一番下)の下線によって示されているが、その中でも、糖鎖との結合性に大きな影響を及ぼすと思われる5つのアミノ酸が四角で囲われている。尚、図中マル1は、Xho I (ctcgag) 制限酵素部位を、図中マル2は、Bgl II (agatct) 制限酵素部位を、図中マル3は、Spe I (actagt) 制限酵素部位を、示している。
【0029】
上記(1)において、「前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」では、前記「1のアミノ酸」の代わりに、「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンからランダムに選択された1のアミノ酸」としてもよい。ここで、「ランダムに」は、恣意的に選択しないことを含んでよい。ここに列挙されたアミノ酸は、所謂タンパク質を構成する20種類のアミノ酸である。
【0030】
上記「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程」において「順に」とは、挙げられたアミノ酸を重複しないように選択することを意味してよく、特にその順序が、列挙された順である必要はなく、いかなる順序であってもよい。また、上記「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程」に換えて、「グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから選ばれる所定のアミノ酸集合から、1のアミノ酸を順に選択する工程」としてもよい。このとき「所定のアミノ酸集合」は、2以上であって20種に満たないアミノ酸の集合であり、その組合わせは、得られるレクチン群が糖鎖認識において所定の効果が発揮されるあらゆる場合を含んでよい。この所定の効果は、糖鎖を認識する能力が、少しずつ異なっており、複数のレクチンを組合わせると、糖鎖又は糖鎖の種若しくは属を判別できる効果である。
【0031】
また、「前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程」の後に、「このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程」を更に含んでよい。
【0032】
上記の「糖鎖との結合活性」とは、所定の糖鎖に対して結合性、会合性、及び、その他の親和的な性質を含んでよく、この性質を利用することにより、糖鎖認識をすることもできる。
【0033】
上記「マメ科レクチンのループDの遺伝子を改変する」とは、マメ科レクチンのループDの遺伝子に改変を加えることで、より具体的には、遺伝子を長くする遺伝子の挿入、遺伝子を短くする遺伝子の抜出、遺伝子の長さは変らない遺伝子の変更(ランダム、任意的、恣意的を含む。)等を含んでよい。このとき、遺伝子全てを変更することも含まれるが、より好ましくは、糖鎖認識能力が十分担保されるように、変更する遺伝子の数と位置を特定し、その特定された遺伝子を変更することである。このような特定は、アミノ酸の立体構造を解析して行うことにより、実験により、又は、その他の方法により合目的的に行われてよい。また、ループDは、上述のように、図2又は3に示すようなアミノ酸の位置によって規定でき、特に、このループDから糖結合性に関与するアミノ酸の位置を特定してよい。「この改変された遺伝子を使用してタンパクを作らせる」とは、遺伝子工学的にタンパクを作らせることを含み、そのために必要なあらゆる手段を含むことができる。
【0034】
上記「糖鎖解析ツール」とは、例えば、ウェスタ−ンブロット法における分離成分が移し取られる膜や、カラム等の分析又は分離ツールを含んでよく、また、診断薬、治療薬等の薬を含んでよい。これらのツールには、1又はそれ以上の改変レクチンを糖鎖識別を行うのに適切な順列で配列して固定化された固体支持体を含んでよい。この適切な順列の配列には、視覚的にパターンを認識しやすくなるように表示させるため、予め決められた位置に選別されたレクチンを含むウェル(well)又はスポットを配列することを含んでよい。また、標準パターンを作成した場合は、その標準パターンに準じた位置に上記ウェル又はスポットを配列することを含んでよい。ここで、「表示させる」は、直接・間接のいずれであってもよい。また、同チップを用い視覚的にいうなれば、パターン情報に該当する情報を得、それを基に細胞同定をすることができる。但し、視覚的にいうなればパターン情報であっても、その数が膨大である場合は、肉眼その他の方法での目視では不十分なことが多く、比較したい検体のそれぞれについて糖鎖結合強度順に直線回帰したり、コンピュータを用いて、クラスター解析等により、細胞同定を行ってもよい。クラスター解析では、どの部分に比較したいもの(例えば、標準と検討対象物、又は、コントロールと比較物)の違いが大きく出ているかをコンピュータを利用して調べることであってよく、一般のクラスター解析ソフトを用いることもできる。
【0035】
解析ツールとして、例えば、細胞表面の糖鎖に対して特異的に結合し得る異なる種類のレクチンを所定の分布で固定した糖鎖解析用試験プレートがあげられる。このとき、異なる種類のレクチンを固定する位置は、目的の細胞若しくは疾病診断により決めてよい。目的の細胞若しくは疾病診断により適切な配列が種々存在していてもよく、目的の細胞若しくは疾病診断に合わせて配列を最適化すると好ましい。糖鎖解析用試験プレートは、ろ紙のような紙を使った試験紙を含み、ガラス板やその他の材質の基材の上に所定のレクチンを固定したものも含んでよい。ここで、その他の材質の基材は、プラスチック(合成樹脂を含む)、金属(白金、銀、銅、金、シリコン、等を含む)、雲母、及び、これらの混合物を含んでよい。また、これらの材料や物質からなる基材の形状は、シート状、板状等の平面的形状、球状(例えばビーズ)、箱状等の3次元的形状、その他のあらゆる形状を含んでよい。このような「糖鎖解析用試験プレート」は、診断薬としても用いることが可能である。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的な例を上げ、図を参照しつつ、より詳しく説明するが、1つの具体的な例として材料や構造等が挙げられているに過ぎず、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0037】
【実施例】
[実施例1 ループCにおける延長]
元となるレクチンは、Maackia amurensis hemagglutinin(MAH)を用い、テンプレートとしてMAHのcDNAを使用してPCR法によりループCの延長をした。また、このとき、表1に示すのプライマー等も用いた。
【0038】
【表1】
【0039】
[回収レクチン遺伝子のインサート側断片の作製]
野生型MAH遺伝子を鋳型にして、以下の表2の試薬・条件でPCRを行い、インサート側断片を作製した。
【0040】
【表2】
【0041】
PCR終了後、DpnIを1μlずつ添加し、37℃で2時間反応させた。反応産物はPCRPurification Kit(QIAGEN社製)で回収された。生成物は、制限酵素HindIII 及び BamHIで処理された。そして再び、反応産物はPCR Purification Kit(QIAGEN社製)で回収された。そして、生成物は、制限酵素で処理をした野生型MAH組込みファージ(HindIII/BamHI−digested w.t.MAH−pComb3 (pComb3 phagemid vector having w.t.MAH cDNA))にライゲーションされた。ここで、w.t.MAH−pComb3は、pGEX−2Tにおいて、野生型MAH(wild−type(w.t.) MAH)をコードしたcDNA 断片が制限酵素 SpeI と XhoIにより処理され、pComb3にライゲーションされた。
【0042】
[遺伝子組み替えMAHのクローニングと配列の検証]
改変MAH cDNA−pComb3 プラスミド(MAH cDNA−pComb3 phagmid)は、一晩37℃でE.Coli JM109に組み込まれた。適当な発現ファージミド(expression phagmid)を含む。大腸菌 JM109は、50 μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)とが補充されたHEM (24g/L トリプトン(trypton)と、48g/L イースト抽出(yeast extract)と、10g/L MOPS.pH7.0とからなる) で育てられた。そして、得られたコロニーは、取り出され、37℃で50 μg/mlのカルベニシリン(carbenicillin)を含むHEMの1mlの培地で一晩培養された。.Phagemid DNAは、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)により回収され、DNA配列は、プライマー 5’−TTCTTGCACCACCTGATTCTC−3’ によって、BigDye Terminator Cycle Sequencing, FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) 及び 3100DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA)を使って決定された。
【0043】
[フラグ融合型タンパクの発現]
各改変MAH cDNA−pComb3 は、センス・プライマー及びアンチ・センス・プライマーを用いてPCR処理された。得られたPCR生成物は、PCR浄化キット(QIAGEN社製)により回収され、XhoI 及び BglIIで処理された。そして、生成物は、 XhoI/BglII−digested pFlag−ATS (Sigma社製)にライゲーションされた。各プラスミドは、E.coli JM109に組み込まれた。コロニーは、37℃で一晩50 μg/ml カルベニシリン(carbenicillin)を含む2XYTの1mlの中で培養された。Phagemid DNAは、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)を用いて回収された。各クローンのDNA配列は、プライマーN−26 Seqencing Primer (5’−CATCATAACGGTTCTGGCAAATATTC−3’) 及び BigDye Terminator CycleSequencing, FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) 及び 3100 DNA Sequencingsystem (Applied Biosystem社製, CA, USA)を用いて決定された。各特定された発現プラスミドを含む大腸菌(E.Coli) JM109 は、37℃で3時間50 μg/ml carbenicillinが補充されたHEM中で培養された。フラグ融合型タンパク発現は、イソプロピルβ−D−チオガラクトシド(isopropyl β−D−thiogalactoside (IPTG:final concentration 1mM))によって導入され、37℃のインキュベーションが3時間継続した。培養生成物は、9600rpmで10分間遠心分離され、バクテリア・セル・ペレットは、TBS(Tris Buffered Saline)中で再び懸濁された。得られたバクテリア・セル懸濁液は、液体窒素での凍結及び37℃のウォーター・バスでの解凍サイクルを5回繰り返した。そして、懸濁液は、15000rpmで30分間遠心分離され、上澄みが取り出され、BCAプロテイン・アッセイ・キット(PIERCE社製)を用いてプロテイン・アッセイ処理された。
【0044】
[ウェスタ−ンブロット解析によるフラグ融合タンパクの検出]
フラグ融合プロテインを含む上澄みは、sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis によって分離され、ニトロセルロース膜に移された。その膜は、polyclonal anti−MAH antibodies or monoclonal anti−Flag antibodies (SIGMA社製)によって検出され、alkaline phosphatase−conjugated anti−rabbit IgG 又は anti−rat IgG antibodies (ZYMED社製, San Francisco,CA) によってインキュベートされた。アルカリ・フォスフォターゼ基板キットII(Vector Laboratories Inc.,社製 Burlingame, CA)よって、抗体が可視化された。
【0045】
[改変MAHレクチン]
ランダムに選ばれた1つのアミノ酸が、MAHのループC(図4参照)のアミノ酸の間に挿入された。PCRがアミノ酸を挿入するのに用いられた。改変レクチンMAHのcDNA(800bpあたり)は、アガロース・ゲル(agarose gel electrophoresis)により確認された。改変MAHのcDNAを含むファージミド(phagemid)の大腸菌(E. coli)への組込みがされ、180個の改変レクチンが生じた。
【0046】
[抗MAH抗体、抗フラグ抗体によるフラグ融合プロテインの検出]
クローンされた改変MAHのcDNAは、挿入位置の上流にフラグを持つXhoI/BglII−digested pFlag−ATSに挿入された。フラグ改変レクチン融合プロテインは、大腸菌(E. coli) JM109 をホストとして用いて、生産された。各クローンは、抗MAH抗体(anti−MAH pAb)及び 抗フラグ抗体(anti−Flag mAb)を用いたSDS−PAGE やウェスタ−ンブロット(Western blotting)により解析された。フラグ改変レクチン融合プロテインは、30 kDaあたりの対応する位置にあり、このことは、フラグ改変レクチン融合生成物と一致していた(図6)。このことより、フラグ改変レクチンは、フラグ蛋白としても、MAHとしても発現が確認できた。また、各フラグ改変レクチンの抗MAH抗体(anti−MAH pAb)及び 抗フラグ抗体(anti−Flag mAb)への結合性はほぼ同じであると考えられる。
【0047】
[改変MAHクローンの特徴]
ELISAにより、ここの改変MAHレクチンの結合性が評価された。まず、抗フラグ抗体(Sigma社製)が、一晩、4℃でTBS中において500 ng /wellの濃度で、マイクロタイタープレート(microtiter plate (Smiron cat. # MS−8896F))に適用された。TBSで3回洗浄した後、ウェルは、TBS中の3%ボビン血清アルブミンで満たされ、次に、改変MAHクローンを含む50 μg/well の大腸菌ライセート抽出物(E.coli lysate extracts)は、追加され、室温で2時間インキュベートされた。各クローンのプロテインが固定されているか、抗MAH抗体によって予め調べられた。洗浄後、50 μl の 2% のヒト(human(AB−type)), ウシ(bovine), ウマ(equine), ブタ(porcine), ニワトリ(chicken), ウサギ(rabbit), ネズミ(cavy)の赤血球を適用した。2時間のインキュベーション後、ウェルは3回0.01% Tweenを含むTBSで洗浄された。これらの動物の赤血球は、NIPPON BIOSUPP. CENTER Co.LTD. Tokyoより購入した。ABTSとH2O2の発色により改変レクチンの赤血球との結合性が調べられた。抗MAH抗体を利用し、各クローンのレクチンプロテインが各ウェルにおいて同量固定されていることが確認された。図7及び8に、ヒト、ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、ウサギ、ネズミの赤血球に対する結合結果示す。図7では、野生型のMAHレクチンに対する相対値がプロットされている。クローン7Gly(Glyアミノ酸をループCの7番目のアミノ酸配列に有するもの)は、ウマにのみ強い結合性を示した。しかし、他の動物の赤血球には結合しなかった。特異性は、野生型MAHとは異なっていた。他のクローンは野生型ほど強い結合性を示さなかった。図8は、最も強い結合性を持つものを1として相対値をプロットしたものである。このグラフは、改変レクチン間に大きな違いがあることを示している。ガラクトースを用いたインヒビッション・アッセイは、改変レクチンの赤血球に対する結合が一部糖質を介して行われていることを示していた。
【0048】
[実施例2 ループDにおける延長]
MAHのループDの中央部6箇所(アミノ酸配列219〜224の前)に1アミノ酸を挿入することにより、糖鎖認識特異性の異なる多様なレクチンを含むライブラリーを作製した。ベクターにN末にFLAGタグを付加するpFLAG−ATSを用いたが、マルチクローニングサイトにはMAHを組み込むのに都合の良い制限酵素部位が無かったので、Site−Directed Mutagenesisのプロトコールに従い、Bgl II siteをSpe I site に作り変えた。まず、改変したい部位を含むプライマーをsense側、anti側でまったく相補的になるように設計した。次にPCRを行い、Dpn I 1 μl を加え、37℃で1時間インキュベートした。このDNA溶液をそのまま用いてXL1−Blue にトランスフォーメーションした。再度に、得られたコロニーをショートカルチャーしてプラスミドを回収し、BigDye Terminator Cycle Sequencing によりそのDNA配列を読んで、改pFLAG−ATSを同定した。(表3参照)
【0049】
【表3】
【0050】
[ベクターの移しかえ]
野生型MAH cDNAとMAH由来の人工のcDNAをpFLAG−CTSからPCRで増幅して制限消化(Xho I conc. と Spe I conc. (ロッシュ社製))し、改pFLAG−ATSに組み込んだ。これをJM109にトランスフォーメーションし、得られたクローンをBigDye Terminator Cycle Sequencing により同定した。(表4参照)
【0051】
【表4】
【0052】
[ループDの伸張]
制限酵素として(Xho I .conc 及び Bgl II.conc)を用いて上記と同様にクローンを作成し、単離・同定した。ランダムにアミノ酸を挿入するプライマーを用いた改変では、単離できなかったクローンについては、個別にプライマーを設計して同じように単離・同定した。(表5参照)
【0053】
[改変MAH cDNAを持つクローンの単離・同定]
マルチクローニングサイトのBgl II site をSpe I site に変換することができた。目的の部分以外には変異は存在しなかった(図9参照)。理論上予測される120種類の改変MAHを単離・同定することができた(図10参照)。
【0054】
【表5】
【0055】
[BigDye Terminatior Cycle Sequencing プロトコールの変更]
今回のシーケンスでは、既知のプロトコールを変更して行っているので、その変更点を箇条書きにして表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
[大腸菌溶解物(ライセートの作製)]
カルベニシリンを入れたHEM(Highly Enriched Medium)で単離してある大腸菌を一晩短期培養(small−culture (over night))した。翌日、HEM 20 ml, CaCl2 (1M) 20 μl, MnCl2 (1M) 20 μl, MgCl2 (4.9M) 81.7 μl からなる培地に短期培養(small−culture)した大腸菌を 200 μl 加えて、3時間予備的培養(pre−culture)した。ここへ、100 mM IPTGを200μl 加えて、3時間培養し誘導をかけた。次に9,500 rpm で10分間遠心して大腸菌を回収し、TBS 200 μl に懸濁して −80℃に保存した。後日、大腸菌を凍結(液体窒素)と融解(37℃湯浴)を5回繰り返し、15,000 rpm で20分間遠心して上清をライセートとして回収した。このライセートは、タンパク定量を行った後に−80℃に保存し、これを使用する準備が整ってからタンパク濃度 1 mg/ml に希釈して 4 ℃保存した。
【0058】
[SDS−PAGE及びウエスタン・ブロッテイングによるフラグ融合プロテインの検出]
ライセート中に改変FLAG−MAHが存在しているのか調べるために、適当にサンプルを選んでSDS−PAGE、及び、ウェスターン・ブロットを行った。抗体染色では、1次抗体として、anti−MAH rabbit polyclonal 抗体、又は、anti−FLAG M2 monoclonal 抗体を用い、2次抗体にはそれぞれAP−goat anti−rabbit IgG 抗体と、AP−goat anti−mouse IgG 抗体を用いてABCキットで発色させた。フラグ改変レクチンは、フラグ融合タンパクとしてもMAHとしても発現が確認できた。
【0059】
[Cell−ELISA 法による改変MAHの細胞に対する結合性解析]
96 well−ELISA 用プレートに poly−L−lysine (1μg/well) をひき(37℃で30分間インキュベート)、細胞溶液(105 cells/well; Collon−38, SL−4, Caco−2, 分化型 Caco−2)を加え、グルタルアルデヒド(glutaraldehyde (25%)) (1 μg/well) によりこれをプレートへ固定(室温で30分間静置)した。細胞を固定したプレートはTBSを入れて4℃保存し、更に、3%BSA/TBSでブロッキング(室温で3時間振盪)して、上で作製した改変MAHレクチンを含むライセート(50μg/well)を加えた(室温で2時間振盪)。1次抗体には、anti−FLAG M2 monoclonal抗体(1000倍希釈を50μl/well)、2次抗体には、HRP−goat anti−mouse IgG 抗体(1000倍希釈を50μl/well)を用いた(共に室温で30分間振盪)。ABTS/H2O2(50μl/well)で発色させ、OD405/490を測定した。
【0060】
[Cell−ELISA法による改変MAHの性質の異なる細胞への結合性の解析]
図11は、各細胞(Colon−38、SL−4、未分化型Caco−2、分化型Caco−2)の野生型及び改変MAHの結合強度を示す。ここで、Colon38、SL4は同じ起源であるが、転移性の異なる2つの癌細胞セルラインである。真上に野生型MAHを置き、そこから時計回りに1A、1C、1D、・・・、6V、6W、6Yという順番に並んでいる。この円状のグラフの一番外側の目盛りは0.2で、中心から離れるほど大きく(結合性が強く)なる。図12は、ある改変レクチンの各細胞(Colon−38、SL−4、Caco−2、分化型Caco−2)に対する結合性違いを示したものである。各改変レクチン(1Q,2C,3D,3S,4N)毎に、性質の異なる4種類の細胞との結合性がそれぞれ違っていることがわかる。ここで、1Qとは、図5において、1の位置にグルタミンが入ることを意味し、2Cとは、2の位置にシステイン(Cysteine)が入ることを意味し、3Dとは、3の位置にアスパラギン酸(Aspartic acid)が入ることを意味し、3Sとは、3の位置にセリン(Serine)が入ることを意味し、4Nとは、4の位置にアスパラギン(Asparagine)が入ることを意味する。即ち、一般には、”nX”とは、図5の”n”の位置に”X”というアミノ酸が挿入されたことを意味する。上述のように性質の異なる細胞との結合性が異なるのは、細胞表面の糖鎖の違いによるものと考えられ、従って、これらのレクチン群を用いれば、糖鎖若しくは細胞の特徴を判別できることになる。従って、最初に既知の糖鎖により、これらの改変レクチン群を分類し、それぞれの類を解析するための改変したレクチンの種類を選択しておけば、既知の糖鎖に基づいた糖鎖マッピングにおける未知の糖鎖の位置が判明すると考えられる。特に、Colon38とSL−4、又は、分化型Caco−2と未分化型Caco−2のように起源が同じ細胞等においても、それぞれ結合性が異なるレクチンが存在し、その差異を明確にできると考えられる。
【0061】
図13に、120種類の改変レクチンとColon−38又はSL−4との結合性を示す。この図で、数字とアルファベットで示されているものは、上述のように、改変位置と改変の種類を示すものである。このように、120種の改変レクチンを全て使って糖鎖解析をすることは、類似する糖鎖認識機能を有しながら、少しずつ異なると考えられるこれらのレクチンの集合により、多面的に未知の糖鎖を解析することができるだけでなく、この中から、さらに、別の切り口(例えば、挿入箇所を固定し、アミノ酸種を変えたもの、アミノ酸種を固定し挿入箇所を変えたもの、別の基準(例えば、パニング)により選択したもの等)で集めたレクチンの集合体は、より的確に糖鎖を解析できるものと考える。
【0062】
[実施例3 ループDにおける改変]
MAHレクチンのループDにおける改変(アミノ酸配列の長さを変えない改変又はアミノ酸種類を変更する改変)を行った。MAHのループDには、図14に示すように、野生型MAHのN末端のセリンから数えてアミノ酸配列相当では219から223番までのアミノ酸配列が含まれ、野生型MAHレクチンでは、APKAVというアミノ酸が並んでいる。ここでは、これらのアミノ酸の種類を変えることによりアミノ酸の改変を行った。即ち、図14において前後のGとFに挟まれたAPKAVをランダムなアミノ酸(XXXXX)に改変した。
【0063】
[ループD改変MAHの作製]
MAHのループD改変は、AmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold DNA polymerase (PE Biosystems社製))によって、パーキン・エルマー2400又は9700熱サイクル装置(Perkin−Elmer 2400 or 9700 thermal cycler)の中で行われた。このとき用いた、プライマー及びリバース・プライマー(reverse primer)を表7に示す。
【0064】
【表7】
【0065】
PCR生成物を得るために次のようなプロトコールが用いられた。まず、95℃で9分間、(94℃で1分間、54℃で1分間、72℃で2分間)のサイクルを30回、そして、72℃10分間である。得られたPCR生成物は、制限酵素DpnIによって37℃で2時間処理された。生成物は、PCRピュアリフィケーションキット(QIAGEN社製)により回収された。それから、生成物は、過剰な制限酵素 EcoRI 及び BglII によって処理され、アガロース・ゲルの電気泳動にかけられて、ゲル抽出キット(QIAGEN社製)によって回収された。生成物は、それから、制限酵素EcoRI/BglII処理野生型MAH−pComb3(EcoRI/BglII−digested w.t.MAH−pComb3 (pComb3 phagemid vector having w.t.MAH cDNA))にライゲートされた。
【0066】
[ファージの準備]
その表面に改変MAHレクチンを発現するファージミド(phagemid)粒子を発生させるために、改変レクチン−pComb3は、大腸菌(E.coli)SURE細胞(Stratagene社製, La Jolla,CA)に組み込まれた。この細胞は、50 μg/ml カルベニシリン(carbenicillin)を含むHEM プレート (24 g/L tryptone, 48 g/L yeast extract, 10 g/L MOPS, pH7.0)に置かれ、37℃で8−9時間培養された。細胞は、プレートを10ml HEMに浸して、はがすことにより回収された。細胞を含むHEM媒体は、100 ml HEM (pH 6.9,supplemented with 1mM CaCl2 and 1mM MnCl2)/carbenicillin)に集められ、1−2時間培養された。A600が約0.3になると、細胞培養を、VSCM13 helper phage (約1012 pfu; Stratagene社製, La Jolla,CA)に感染させた。感染されたものは、30℃で12時間振盪して培養され、ファージは、ポリエチレン・グリコール8000及びとNaCl沈殿によって一晩かけ4℃で、培養物から単離された。遠心分離した後、ファージ・ペレットは、トリス緩衝整理食塩水(Tris−bufferd saline(TBS:50mM Tris−HCl, pH 7.5 containing 150mM NaCl)+1% bovine serum albumin(BSA) )に懸濁された。
【0067】
[Caco−2細胞によるパニング]
パニングには、Caco−2細胞が用いられた。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)から得たCaco−2細胞が培養された。分化のため、2mM酪酸ナトリウム(2 mM sodium butyrate)(和光純薬(株)社製)が加えられた。各パニングにおいて、約108 pfu のファージが、 1% BSAを含む10mlのTBSの中にある分化型Caco−2 の懸濁液に加えられた。4℃で一晩の回転式培養の後、細胞はペレット状にされ、5mlのTBSで4℃で3回洗浄された。ファージを含む最終細胞ペレットは、 2ml の (OD600=1) Sure cellsと共に培養された。37℃で15分間培養された後、細胞は、multiple HEM (pH 7.0)/carbenicillin plates に置かれ、37℃で8時間培養された。ファージ懸濁液は、上述のようにバクテリア上澄から準備され、ファージの濃度が滴定された。
【0068】
[改変レクチンのDNA配列]
3回目のパニングの後、HEMプレートの30コロニーは、集められ、ファージミドDNA(phagemid DNA)は、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems (LIFE TECHNOLOGIES社製)によって回収され、12種類の新規人工改変レクチンを得た。そして、DNA配列は、プライマー:loopD−Seq 5’−GTTAATAGCATCTCTAGTTTACCC−3’ と、BigDye Terminatr Cycle Sequencing と、FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) と、 3100 DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA) とを用いて決定された。そのアミノ酸配列を図15に示す。
【0069】
[フラグ融合プロテインの発現]
各改変MAH cDNA−pComb3 は、センス・プライマー(sense primer)N−Flag−XhoI:5’−CCAGGTGAAACTGCTCGAGTCAGATG−3’ を用い、また、アンチセンス・プライマー(antisense primer) Flag−SalI: 5’−GTGGTCGACTGCAGTGTAACGTG−3’ を用いて、PCRされた。得られたPCR生成物は、PCR回収キット(PCR purificatin Kit(QIAGEN社製))を用いて回収され、制限酵素XhoI 及び SalI によって処理された。処理されたものは、XhoI/SalI−digested pFlag−ATS(Sigma社製)によりライゲートされた。得られた各プラスミドは、大腸菌(E.coli) JM109 に組み込まれた。バクテリア・コロニーは、50 μg/ml carbenicillin を含む2XYT(16 g/l Trypton, 10g/l East Extract, 5g/l NaCl) プレート に置かれ、37℃で一晩培養された。各プレートのコロニーは、取り上げられ、37℃で50 μg/ml carbenicillinを含む2XYTの1 ml の培養物の中で一晩培養された。ファージミドDNA(phagemid DNA)は、CONCERTTM Rapid Plasmid Purification Sysrems(LIFE TECHNOLOGIES社製).によって回収された。そして、各クローンのDNA配列は、プライマーのN−26 Seqencing Primer (5’−CATCATAACGGTTCTGGCAAATATTC−3’)を用い、 BigDye Terminator Cycle Sequencing と、 FS(Applied Biosystems社製, CA,USA) と、 3100 DNA Sequencing system (Applied Biosystem社製, CA, USA) を用いて、決定された。既知の発現プラスミドを含む大腸菌(E.Coli) Sure.は、37℃で3時間、50 μg/ml carbenicillin を含むHEM媒体において培養され、isopropyl β−D−thiogalactoside (IPTG:final concentration 1mM) を加えてフラグ融合プロテイン発現が誘起され、上述の37℃での培養がやはり同じ温度で3時間継続された。培養されたものは、9600rpmで遠心分離され、バクテリア細胞ペレットは、TBS (Tris Buffered Saline)によって再び懸濁された。そして、このバクテリア細胞懸濁液について、液体窒素と37℃のウォーターバスを用いた凍結と解凍のサイクルを5回行った。そして、懸濁液は、0℃で30分間15000rpmで遠心分離された。上澄を取り出し、BCAプロテイン・アッセイ・キット(BCA protein assay kit (PIERCE社製))によってプロテイン・アッセイが行われた。
【0070】
[フラグ融合プロテインの検出]
ソジウム・ドデシル・サルフェイト−ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動(sodium dodecyl sulfate−polyacrylamide gel electrophoresis)によって、フラグ融合プロテインを含む上澄が分離され、ニトロセルロースの膜に移された。そして、この膜は、ポリクロナール・抗MAH抗体(polyclonal anti−MAH antibodies)又は、モノクロナール・抗フラグ抗体(monoclonal anti−Flag antibodies (SIGMA社製))によって、そして、次に、alkaline phosphatase−conjugated anti−rabbit IgG 又は、 anti−rat IgG antibodies (ZYMED社製, San Francisco,CA)によって検証された。結合抗体は、アルカリ・フォスフォターゼ基板キットSK−5200(alkaline phosphatase substrate kit SK−5200 (Vector Laboratories, Inc.社製, Burlingame, CA) )によって、視覚化された。フラグ改変レクチンは、フラグ融合タンパクとしてもMAHとしても発現が確認できた。
【0071】
[ループD改変MAHクローンの糖結合特異性]
各改変MAHレクチンの結合特性がELISAによって評価された。まず、抗フラグ抗体(anti−flag antibodies (Sigma社製))が、一晩4℃でTBS中で 500 ng /wellの濃度でマイクロタイター・プレート(Smiron社製)に付けられた。TBSで3回洗浄された後、TBS中の3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)でウェルがブロックされた。次に、改変MAHクローンを含む 50 μg/well 大腸菌(E.coli)ライセート抽出物(50 μg/well E.coli lysate extracts)が加えられ、室温で培養された。各クローンのプロテインが各ウェルのプレートに付いていることは、抗MAH抗体によりあらかじめ確認された。洗浄後、oligosaccharides、Galactose(Gal)−sp−biotin、Mannose(Man)−sp−biotin、Glcose(Glc)−sp−biotin、GalNAc−sp−biotin、 GlcNAc−sp−biotin、 NeuAc−sp−biotin、 Lex−sp−biotin、 sialyl Lex−sp−biotin、 Lea−sp−biotin、 Sialyl Lea−sp−biotin、 Lec−sp−biotin、 LacNAc−sp−biotin、 及び、sialyl T−sp−biotin (Nicolai博士によるもの)のビオチン化ポリアクリルアミド・ポリマーのパネルが、TBS中で、1, 0.5,0.25, 0.125 μg/well の濃度で、そのプレートに付けられた。室温で2時間の培養の後、ウェル(well)は、0.01%ツィーン(Tween)を含むTBSで3回洗浄された。また、オリゴ糖と結合したビオチン化ポリアクリルアミド・ポリマーのプレートに対しては、洗浄後、HRP−conjugated streptavidin(Zymed社製) が30分間ウェルに加えられた。ウェルは、0.01%ツィーンを含むTBSで3回洗浄され、プレートは上述のように処理された。また、図17には、改変レクチンと一連のビオチン化した糖ポリマーとの結合性を示している。
【0072】
[ループD改変MAHクローンの異種動物赤血球への結合性]
各改変MAHレクチンの結合特性がELISAによって評価された。まず、抗フラグ抗体(anti−flag antibodies (Sigma社製))が、一晩4℃でTBS中で 500 ng /wellの濃度でマイクロタイター・プレート(Smiron社製)に付けられた。TBSで3回洗浄された後、TBS中の3%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)でウェルがブロックされた。次に、改変MAHクローンを含む 50 μg/well 大腸菌(E.coli)ライセート抽出物(50 μg/well E.coli lysate extracts)が加えられ、室温で培養された。各クローンのプロテインが各ウェルのプレートに付いていることは、抗MAH抗体によりあらかじめ確認された。洗浄後、ヒト(AB型)( human(AB−type))、ウシ(bovine)、ウマ(equine)、ブタ(porcine)、ニワトリ(chicken)、ウサギ(rabbit)、そして、ネズミ(cavy)の50 μl の 2% 赤血球(erythrocytes)が、TBS中でウェルに付けられた。改変レクチンと赤血球との結合は、ABTSとH2O2を適用し、プレート・リーダーを用いて検証された。図16に、作られた改変レクチンのヒト及び6種類の動物の赤血球への結合性を表す。図中色が濃いものは結合性がより強い。この図から、各赤血球は、これら複数種類のレクチンに対して、異なる結合性を示していることがかわる。従って、今回選んだレクチンの組み合わせからなるレクチン群を用いて、糖鎖解析をすることができることがわかる。ここでも、各ポリマーは、複数種の改変レクチンに対して異なる結合性を持っており、このパターンにより、糖鎖解析ができることがわかる。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明の改変レクチン又は改変レクチン群及びそれらの製造方法によると、糖鎖認識特性が似つつも、異なる改変レクチンを製造でき、これらのレクチン又はレクチン群による糖鎖解析がより好ましく行われると期待される。また、天然に得られるレクチンは、その種類が限られるばかりでなく、量的にも不安定になりやすいが、本発明によれば、そのようなことが容易に解決できるという効果がある。
【0074】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】MAHの立体構造の予測図である。
【図2】MAHをコードしたcDNAの塩基配列と予想されるアミノ酸配列を示した図である。
【図3】マメ科レクチンの種類と各ループのアミノ酸配列を示す図である。
【図4】MAHのループCのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
【図5】MAHのループDのアミノ酸配列を示し、改変によるアミノ酸の挿入位置を示した図である。
【図6】改変MAHレクチンのウェスターンブロット解析結果を示した図である。
【図7】ヒト等の赤血球に対する改変MAHレクチンの結合性を示した図である。
【図8】ヒト等の赤血球に対する改変MAHレクチンの結合性を示した図である。
【図9】新しいベクターの作製において、マルチクローニングサイト変更が行われたことを示す図である。
【図10】改変レクチンの分離・同定できたことを示す図である。
【図11】各種細胞への改変レクチンの結合強度を示す図である。
【図12】各種細胞と選択された改変レクチンの結合強度を示す図である。
【図13】SL−4とColon−38の細胞の改変レクチンへの結合強度を示す図である。
【図14】MAHのループDのアミノ酸配列を示し、挿入によらない改変によるアミノ酸の改変位置を示した図である。
【図15】改変MAH(挿入によらない)のループDのアミノ酸配列を示した図である。
【図16】ループD改変MAH(挿入によらない)ヒト等の赤血球との結合性を示した図である。
【図17】ループD改変MAH(挿入によらない)ヒト等のビオチン化糖ポリマーとの結合性を示した図である。
Claims (12)
- 改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、
1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と、
その部位に含まれる少なくとも1つのアミノ酸の配列位置を特定する工程と、
前記特定されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、
このコード化されたDNAを使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。 - 前記1のレクチンがマメ科のレクチンであることを特徴とする請求項1に記載の改変レクチンの製造方法。
- 前記糖鎖認識部位がループC若しくはループDを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の改変レクチンの製造方法。
- 改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって、
(1)1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と、
(2)その部位に含まれる1つのアミノ酸の配列位置を選択する工程と、
(3)グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、ヒスチジンから1のアミノ酸を順に選択する工程と、
(4)前記選択されたアミノ酸配列位置の前又は後のアミノ酸配列位置に、前記選択された1のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化する工程と、
(5)前記(3)において選択しなかったアミノ酸がある場合は、前記(3)の工程に戻る工程と、を含む改変レクチン群の製造方法。 - 改変した遺伝子を利用して改変レクチン群を製造する方法であって、
(1)1のレクチンの糖鎖認識部位を該1のレクチンの三次元構造解析から割り出す工程と、
(2)前記糖鎖認識部位に含まれる複数のアミノ酸の配列位置を特定する工程と、
(2)前記特定された複数のアミノ酸の配列位置から1のアミノ酸の配列位置を順に選択する工程と、
(3)前記選択されたアミノ酸配列位置の前の配列位置に所定のアミノ酸が挿入された改変レクチンをベクターDNAにコード化化する工程と、
(4)前記(2)において、前記特定されたアミノ酸配列位置であって、未だ選択されていない配列位置がある場合は、前記(2)の工程に戻る工程と、を含む改変レクチン群の製造方法。 - 請求項4又は5の方法で製造された改変レクチン群。
- 以下の(a)または(b)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。
(a)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号127〜138又は219〜224のいずれかの位置の前に、1のアミノ酸が挿入された、ポリペブチド。
(b)(a)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。 - 請求項7に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
- 改変した遺伝子を利用して改変レクチンを製造する方法であって、
マメ科レクチンのループDの遺伝子を改変する工程と、
この改変された遺伝子を使用してタンパクを作らせる工程と、を含む改変レクチンの製造方法。 - 以下の(c)または(d)に示すアミノ酸配列からなることを特徴とする改変レクチン。
(c)アミノ酸配列表1(MAH)において30番目に相当する、野生型MAHのN末端であるセリンから数えたアミノ酸配列番号219〜224のいずれかの位置の前に1のアミノ酸が挿入された、若しくは、N末端から数えたアミノ酸配列番号219〜223の少なくとも1つのアミノ酸の種類を改変した、ポリペブチド。
(d)(c)の一部が欠損、置換若しくは付加され、所定の糖鎖との結合活性を有する、ポリペプチド。 - 請求項10に記載のポリペプチドをコードする、遺伝子。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の方法で製造された改変レクチン又は請求項4〜6のいずれかに記載の改変レクチン群又は請求項7若しくは9に記載の方法で製造された改変レクチンを含む糖鎖解析ツール。
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JP2002177821A Withdrawn JP2004016149A (ja) | 2002-06-18 | 2002-06-18 | 遺伝子改変レクチン及びその製造方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JP2004016149A (ja) |
-
2002
- 2002-06-18 JP JP2002177821A patent/JP2004016149A/ja not_active Withdrawn
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