JP2004506874A - 炭水化物ポリマーを分析するための方法および組成物 - Google Patents
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Abstract
炭水化物ポリマーに結合する少なくとも2つの結合因子を同定することによって、炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法が、開示される。結合は、好ましくは、炭水化物ポリマーを基材と接触させることによって決定され、この基材は、この基材上の予め決定した位置に付着された複数の第1糖結合因子を含む。炭水化物ポリマーを基材と、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間の第1複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。好ましくは標識を含む第2糖結合因子をまた炭水化物ポリマーと、第2結合因子と第1複合体との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。第1結合因子および第2結合因子の同定によって、多糖の特徴付けを可能にする。
Description
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般的に、多糖を含む分子を分析するための方法に関し、より詳細には、レクチンのような糖結合因子の使用に基づいて多糖を分析するための方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
多糖は、互いにグリコシド結合を介して連結した単糖(monosaccharide)(糖(sugar))単位を含むポリマーである。これらのポリマーは、多糖の二次元構造として公知である、単糖部分単位の線状配列に関して描写され得る構造を有する。多糖はまた、その成分である単糖部分単位によって間隔を空けて形成された構造に関しても描写され得る。
【0003】
多糖を形成する単糖の鎖は、2つの異なる末端を有する。一方の端は、アルデヒド基を含み、そして還元末端として知られている。他方の端は、非還元末端として知られている。多糖鎖はまた、この鎖が連結される糖単位がヘキソースである場合、C1原子、C2原子、C3原子、C4原子、またはC6原子のうちのいずれかに連結され得る。さらに、所定の単糖は、2つより多くの異なる単糖に連結され得る。さらに、C1原子への連結は、α配置またはβ配置のいずれかであり得る。従って、炭水化物ポリマーの二次元構造および三次元構造の両方は、高度に複雑であり得る。
【0004】
多糖の構造決定は、糖生物学の発展のために基本的に重要である。糖生物学における研究は、ウイルス疾患および自己免疫疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病、慢性関節リウマチ、および異常細胞増殖(例えば、癌において生じるような増殖))に関与する、細菌細胞の壁合成、血液グリカン、増殖因子ならびに細胞表面レセプター構造に影響を与える抗生物質の同定および特徴付けのように種々の目的に関する。
【0005】
多糖はまた、コンタクトレンズ、人工皮膚、および補綴デバイスのための生体適合材料の開発に使用されている。さらに、多糖は、多数の非医療分野(例えば、製紙産業)において使用される。さらに、当然ながら、食品および医薬産業が、大量の種々の多糖およびオリゴ糖を使用する。
【0006】
上記の分野全てにおいて、改善された糖分析技術の必要性が存在する。糖分析情報は、例えば、品質管理、研究における構造決定のため、および構造−機能分析を実行するために有用である。
【0007】
多糖の構造的な複雑性によってその分析が妨げられていた。例えば、多糖は、温度独立機構で合成されると考えられている。従って、構造情報が無い場合、研究者らは、構築単位が今日知られているいずれかの多糖単位から選択されることを想定しなければならない。さらに、これらの単位は、合成の間に、例えば、スルフェート基の付加によって改変されているかもしれない。
【0008】
第2に、糖は、この鎖が連結される糖単位がヘキソースである場合、いずれかの炭素部分(例えば、C1原子、C2原子、C3原子、C4原子、またはC6原子)に連結され得る。さらに、C1原子への連結は、α配置またはβ配置のいずれかであり得る。
【0009】
第3に、糖は、分枝し得、これによってさらに、その構造ならびに同数および同一種類の糖単位を有する可能な構造の数が、複雑になり得る。
【0010】
第4の困難性は、多くの糖の間の差異が微細であるという事実によって示される。なぜなら、糖単位は、単にヒドロキシル基の位置によって別のものと異なり得る(エピマー)からである。
【0011】
このような糖結合因子の複数の使用は(基材に固定されようとおよび/または第2(可溶性)糖結合因子として使用されようと)、糖の「フィンガープリント」を提供することによって目的の炭水化物ポリマーを特徴付ける。次いで、このようなフィンガープリントは、炭水化物ポリマーに関するより多くの情報を得るために、分析され得る。不運なことに、炭水化物ポリマーフィンガープリントに関するデータの特徴付けおよび解析のプロセスは、他の生物学的ポリマー(例えば、DNAなど)に対してよりも、はるかに複雑である。特徴付けの目的のためのDNAサンプルへのDNAプローブの結合と異なり、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、必ずしも炭水化物ポリマー自体の成分の直接的な指標ではない。DNAプローブの結合は、DNAサンプル自体の配列に関する比較的に直接的な情報を提供する。なぜなら、適切な条件下で、DNAへのプローブの認識および結合は、明確に直接的なプロセスであるからである。従って、プローブ結合から得られたDNA「フィンガープリント」は、サンプル中のDNAの実際の配列に関する直接的な情報をもたらし得る。
【0012】
対照的に、炭水化物ポリマーへの因子の結合は、とうてい直接的ではない。前に記載したように、炭水化物ポリマーの二次元構造(配列)でさえも、DNAのものよりも、より複雑である。なぜなら、炭水化物ポリマーは、分枝し得るからである。これらの分枝は、ポリマーの三次元構造に明らかに影響を与え、ゆえに、結合因子に対する認識部位の構造に影響を与える。さらに、結合因子による炭水化物ポリマー上の結合エピトープの認識が、このエピトープを取り囲む分子の一部の「隣接部」によって影響され得る。従って、目的の炭水化物ポリマーへの因子の結合についてのこのような「フィンガープリント」データの分析は、例えば、DNAプローブ結合についてのものよりも、明らかにより困難である。
【0013】
この問題に対する有用な解決によって、炭水化物ポリマーを特徴付けるために、フィンガープリントを分析することを可能にする。このような分析は、多糖結合因子を炭水化物ポリマーとインキュベートする以前に記載したプロセスから得られる生のデータを、それ自体が情報を含むフィンガープリントに変換する必要がある。このフィンガープリントをまた、異なるセットの実験条件にわたって比較するために、および異なる型の糖結合因子について比較するために、標準化する必要がある。不運なことに、このような解決は、現在、利用可能ではない。
【0014】
これらの困難にもかかわらず、糖の構造分析のための多数の方法が、開発されている。例えば、PCT出願 WO93/24503は、単糖を還元末端でそのケト形態またはアルデヒド形態へと変換し、次いで、オリゴ糖鎖におけるこの単糖と次の単糖との間のグリコシド結合をヒドラジンを用いて切断することによって、単糖単位が、オリゴ糖の還元末端から逐次除去される方法を開示する。遊離の単糖は、オリゴ糖鎖から分離され、そしてクロマトグラフィー方法によって同定される。次いで、このプロセスは、全ての単糖が切断されるまで繰り返される。次いで、このプロセスは、すべての単糖が切断されるまで、反復される。
【0015】
PCT出願 WO93/22678は、それらの基本構造を仮定し、次いで、多数の配列決定ツール(例えば、グリコシダーゼ)から、最大量の構造情報を与えると予測されるツールを選択することによって未知のオリゴ糖を配列決定する方法を開示する。この方法は、オリゴ糖構造についてのいくつかの基本情報(通常、単糖組成)を必要とする。この方法はまた、配列決定試薬を用いた反応が高価でかつ時間がかかるという事実を例示し、それゆえ、これらの費用を削減する方法についての必要性が存在する。
【0016】
PCT出願 WO93/22678は、VLSIチップ上に固定されたモノリシックプローブアレイ(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)をプローブすることによって分子を検出するための方法を開示する。この刊行物は、固定された表面に多数のプローブが結合され得、そして分析物とのそれらの反応が、VLSIチップ上の論理回路を用いて種々の方法によって検出され得ることを教示する。
【0017】
欧州特許出願 EP 421,972は、オリゴ糖の一つの末端を標識し、標識されたオリゴ糖をアリコートに分け、各アリコートを異なる試薬混合物(例えば、グリコシダーゼの混合物)で処理し、異なる反応混合物をプールし、次いで、クロマトグラフィー方法を用いて反応産物を分析することによって、オリゴ糖を配列決定するための方法を開示する。N結合型グリカンは糖鎖がタンパク質に連結している点で共通の構造を有するので、この方法は、N結合型グリカンのみに有用である。O結合型グリカンはより変動し、そしてこの方法は、より大きな多様性をその基本構造に有するオリゴ糖には未だに適応されていない。
【0018】
それゆえ、多糖に結合する因子を同定するための正確で高スループットの方法を使用する、多糖を特徴付けるためのシステムおよび方法についての需要がある。
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、所定の炭水化物ポリマーに結合する因子を迅速かつ正確に同定するための方法の発見に一部基づく。糖結合因子への炭水化物ポリマーの結合パターンに基づく、炭水化物ポリマーのフィンカープリントを作製する方法もまた、本発明によって提供される。
【0020】
1つの局面において、本発明は、炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法を特徴とする。炭水化物ポリマーを、表面上の予め決定された位置に付着した少なくとも1つの第1糖結合因子を含む表面と、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間の第1複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、この表面を、少なくとも1つの第2糖結合因子と、第1複合体と第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、この第1糖結合因子と第2糖結合因子を同定し、それによって炭水化物ポリマーを特徴付ける。
【0021】
炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する方法がまた、本発明によって提供され、この方法は、炭水化物ポリマーを第1糖結合因子と接触させる工程、この炭水化物ポリマーが糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程、炭水化物ポリマーを第2糖結合因子と接触させる工程、ならびにこの炭水化物ポリマーが第2糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程による。第1糖結合因子および第2糖結合因子の同定を使用して、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する。
【0022】
他に規定されない限り、本明細書中に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料に類似または等価な方法および材料が、本発明の実施および試験に使用され得るが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。相反する場合、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみであり、そして限定を意図しない。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白である。
【0024】
(発明の詳細な説明)
糖結合因子に関して炭水化物ポリマーの結合状態を説明する情報の表示を体系的に整理することによって、炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法が、本発明によって提供される。
【0025】
結合状態を評価するために、炭水化物ポリマーを、表面上の予め決定された位置に付着された少なくとも1つの糖結合因子を含む表面に添加する。炭水化物ポリマーをこの表面と、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、所望する場合、この表面を洗浄して、結合していない炭水化物ポリマーを除去し得る。次いで、この表面を第2の糖結合因子と、第1複合体と第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる。第2因子は、好ましくは、検出可能な標識を保有し、第2複合体の検出を可能にする。予め決定された結合因子の位置に対応する基材上の位置における第2複合体の検出は、第1結合因子および第2結合因子を炭水化物ポリマーに結合する因子として同定することを可能にする。第1結合因子および第2結合因子の検出は、炭水化物ポリマーに関する構造的な情報を提供する。
【0026】
この方法は、最初に炭水化物ポリマーを表面と接触させること、次いで、検出可能な標識を添加することによって記載されているが、この順序が必須ではないことが理解される。従って、いくつかの実施形態において、第2因子を、炭水化物ポリマーと混合し、そしてこの混合物を、表面に添加する。
【0027】
いくつかの実施形態において、複数の糖結合因子を、表面に結合させる。同様に、複数の第2の検出可能な糖結合因子を、使用し得る。好ましい実施形態において、複数の第1糖結合因子および複数の第2糖結合因子の両方を、使用する。
【0028】
従って、種々の実施形態において、少なくとも5、10、15、25、30、もしくは50またはそれより多くの第1糖結合因子を、表面に付着させる。好ましくは、第1糖結合因子の各々を、基材の空間的に別個の領域に付着させる。
【0029】
他の実施形態において、少なくとも5、10、15、25、30、もしくは50またはそれより多くの第2糖結合因子を使用する。好ましくは、第2糖結合因子の各々は、それらに識別可能な標識(すなわち、1つの第2糖結合因子を別の第2糖結合因子と識別する標識)が結合している。
【0030】
本明細書中に使用される場合、「炭水化物ポリマー」は、多糖成分を有する任意の分子を含む。例としては、多糖、糖タンパク質、および糖脂質が挙げられる。炭水化物ポリマーとしては、2つ以上の連結した単糖残基を含む任意の多糖分子が挙げられるが、ほとんどの実施形態において、炭水化物ポリマーは、10、25、50、1000、もしくは10,000またはそれより多くの単糖単位を含む。所望される場合、炭水化物ポリマーを、糖切断因子を用いた消化後に、表面に添加し得る。あるいは、炭水化物ポリマーを、表面に添加し、この表面に結合した第1多糖結合因子への結合を可能にし、次いで、糖切断因子を用いて消化し得る。
【0031】
一般的に、多糖に結合する任意の因子が、第1または第2の糖結合因子として使用され得る。当該分野で公知のように、糖に結合する多くの因子が記載されている。因子の1つのクラスはレクチンである。これらのタンパク質の多くは、特定の短いオリゴ糖配列に特異的に結合する。因子の第2のクラスは、糖構造を特異的に認識する抗体である。糖結合因子の第3のクラスは、炭水化物残基に結合するタンパク質である。例えば、グリコシダーゼは、糖鎖中のグリコシド結合を切断する酵素である。いくつかのグリコシダーゼは、特定のオリゴ糖配列を特異的に認識し得る。酵素の別のクラスはグリコシルトランスフェラーゼであり、この酵素は糖鎖を切断するが、さらに、糖ユニットを新たに形成された末端の1つに転移させる。
【0032】
本出願の目的のために、用語「レクチン」はまた、動物種由来の糖結合タンパク質(例えば、「哺乳動物レクチン」)を包含する。従って、DNAまたはタンパク質のような炭水化物ポリマーは、より詳細に研究されるべき重要な生物学的機能を明らかに有する。
【0033】
糖結合因子は、好ましくは、必須配列特異的因子である。本明細書中で用いる場合、「必須配列特異的因子」は、糖に結合し得る因子を意味する。この結合は、通常、配列特異的である。すなわち、この因子は、単糖ユニット特定の配列にのみ結合する。しかし、この配列特異性は完全ではないかもしれない。なぜなら、この因子は、他の無関連配列(例えば、1つ以上の糖が欠失、変更、または挿入された単糖配列)に結合し得るからである。この因子はまた、所定の配列の単糖に加えて、1つ以上の関連配列または単糖に結合し得る。
【0034】
必須配列特異的因子は通常、レクチン、糖特異的抗体、またはグリコシダーゼもしくはグリコシルトランスフェラーゼのようなタンパク質である。
【0035】
糖結合因子の例として、以下の植物から単離されたレクチンが挙げられる:Conavalia ensiformis、Anguilla anguilla、Triticum vulgaris、Datura stramonium、Galanthus nivalis、Maackia amurensis、Arachis hypogaea、Sambucus nigra、Erythrina cristagalli、Lens culinaris、Glycine max、Phaseolus vulgaris、Allomyrina dichotoma、Dolichos biflorus、Lotus tetragonolobus、Ulex europaeus、およびRicinus communis。
【0036】
他の生物学的に活性な炭水化物結合化合物として、サイトカイン、ケモカイン、および増殖因子が挙げられる。これらの化合物はまた、本特許出願についてはレクチンであるとみなされる。
【0037】
グリコシダーゼの例として、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、α−フコシダーゼなどが挙げられる。これらの酵素のいくつかは、それらの単離の供給源に依存して、異なる特異性を有し得る。上記の酵素は、例えば、Oxford Glycosystems Ltd.、Abingdon、OX14 1RG、UK、Sigma Chemical Co.、St.Louis、Mo.、USA、またはPierce、POB.117、Rockford、61105 USAから市販されている。
【0038】
糖結合因子はまた、切断因子でもあり得る。「切断因子」は、その認識配列で糖鎖を切断する必須配列特異的因子である。代表的な切断因子は、グリコシダーゼ(エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼを含む)、およびグリコシルトランスフェラーゼである。しかし、グリコシド結合を切断し得る化学的因子もまた、それらが必須配列特異的である限り、切断因子として作用し得る。用語「切断因子(cleaving agent)」または「切断因子(cleavage agent)」は、本明細書の文脈内で、用語「切断し得る必須配列特異的因子」と同義語である。
【0039】
切断因子は、認識配列において作用し得る。本明細書中で用いる場合、「認識配列」は、必須配列特異的因子により認識される単糖の配列である。通常、認識配列は、2〜4の単糖ユニットを含む。認識配列の例は、Archis hypogaeaから精製されるレクチンにより認識されるGal β1−3 GalNAcである。必須配列特異的因子により特異的に認識される場合、本開示の目的のために、単一の単糖は、認識配列として規定され得る。
【0040】
種々の必須配列特異的因子のための反応条件は、当該分野で公知である。あるいは、当業者は、種々の反応条件下で各必須配列特異的因子を用いた、それらの結合活性を測定する一連の試験を容易に実施し得る。有利なように、特定の必須配列特異的因子が反応する反応条件、および不活性状態を維持する条件の知見は、いくつかの必須配列特異的試薬が存在する反応を制御するために用いられ得る。例えば、第2および第3の配列特異的因子は、この反応に同時に添加され得るが、反応条件の変化を通して、第2の必須配列特異的因子のみが活性であることを可能にする。次いで、反応条件におけるさらなる変化は、第2の必須配列特異的因子の不活性化および第3の必須配列特異的因子の活性化のために選択され得る。反応条件のいくつかの例示的な例を以下の表1に列挙する。表1に列挙されるpHおよび温度データに加えて、他の因子(例えば、Znのような金属の存在、Mn、Ca,Na(例えば、塩化ナトリウム塩)のようなカチオンの塩)が、最適な反応条件または特定の必須配列特異的因子が活性であり、他の因子が不活性である条件を見出すために吟味され得る。
【0041】
(表1:いくつかの必須配列特異的因子の反応条件)
【0042】
【表1】
記号は、外部条件によって分離可能な酵素の群を表わす。Diversa Corp.は、種々のpHおよび温度において広範な種々の活性を有する好熱性エンド/エキソグリコシダーゼを製造している。
【0043】
第1糖結合因子は、当該分野で認識されている任意の方法を用いて固定され得る。例えば、固定化は、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシル、またはチオール基のようなタンパク質の官能基を使用し得る。例えば、ガラス支持体が、上記のPCT公開に記載されるように、エポキシシランとの反応によって、エポード(epode)基で官能基化され得る。このエポード基は、アミノ基(例えば、リジン残基の遊離ε−アミノ基)と反応する。別の機構は、電位計物質(例えば、金)との表面の変換に存する。これはまた、上記PCT公開に記載されている。このような物質は、チオール基との安定な結合体を形成するので、タンパク質は、システイン残基の遊離チオール基によって直接的に、このような物質に連結され得る。あるいは、チオール基は、従来の化学によってか、または1以上のチオール基および遊離アミノ基と反応する基を含む分子(例えば、システインのN−ヒドロキシルスクシンイミジルエステル)との反応によって、タンパク質に導入され得る。また、チオール切断可能な架橋剤(例えば、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))が、タンパク質のアミノ基と反応され得る。次いで、スルフヒドリル剤を用いた還元は、架橋剤の遊離チオール基を露出させる。
【0044】
第2の検出可能な標識に取り付けられた標識は、検出されるかまたは検出され得る任意の標識であり得る。適切な標識の例として、例えば、色素標識、放射標識、蛍光標識、およびビオチン化標識が挙げられる。従って、標識は、例えば、着色したレクチン、蛍光レクチン、ビオチン標識レクチン、蛍光標識、蛍光抗体、ビオチン標識抗体、および酵素標識抗体であり得る。好ましい実施形態において、標識は、色素標識である。用語「色素結合因子」は、本明細書中で用いる場合、糖に結合し、そして明確な色か、そうでなければ検出可能なマーカーを有し、その結果、糖に結合した後、その糖が色または他のマーカーを獲得する全ての因子を含む。内在性の、可視範囲で容易に観察可能な色を有する化学構造に加えて、用いられる他のマーカーとして、蛍光基、ビオチンタグ、酵素(着色した生成物の形成を生じる反応に用いられる酵素)、磁気マーカーおよび同位体マーカーなどが挙げられる。前述の検出可能なマーカーの列挙は、例示の目的のみのためであり、限定または網羅することを意図しない。同様の文脈において、本明細書中で用いる場合(例えば、上述の方法の工程(e)の文脈において)、用語「色」はまた、任意の検出可能なマーカーを含む。
【0045】
標識は、当該分野で公知の方法を用いて第2糖結合因子に取り付けられ得る。標識として、糖または必須配列特異的因子に取り付けられた、その機能を妨害しない任意の検出可能な基が挙げられる。標識は、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼのような酵素であり得る。原則として、グルコースオキシダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼのような酵素もまた、使用され得る。次いで、糖が、このような酵素と反応する単糖単位を含む場合、改変され得るということを考慮しなければならない。さらに、使用され得る標識としては、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド(Texas Red)、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、ローダミン、ナイルレッド(Nile−red)、テトラメチル−ローダミン−5−イソチオシアネート、1.6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、シス−パリナリン酸(cis−Parinaric acid)、フィコエリトリン(Phycoerythrin)、アロフィコシアニン(Allophycocyanin)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、Hoechst 33258、2−アミノベンズアミドなど)が挙げられる。さらなる標識としては、電子高密度金属(electron dense metal)(例えば、金)、リガンド、ハプテン(例えば、ビオチン)、放射性標識などが挙げられる。
【0046】
第2糖結合因子は、酵素標識を用いて検出され得る。酵素標識の検出は、ELISAの分野および酵素検出が慣用的に使用される他の技術分野で周知である。酵素は、例えば、Pierceのような会社から市販されている。
【0047】
いくつかの実施形態において、標識は、蛍光標識を用いて検出される。蛍光標識は、特定の波長での励起および異なる波長での検出を必要とする。蛍光標識のための方法は当該分野で周知であり、そして多くの論文および教科書が刊行されている。この議題についての刊行物の選択は、Pierceの1994年度カタログのO−124〜O−126頁に見出される。蛍光標識は、SIGMAのような会社または上記のPierceカタログから市販されている。
【0048】
第2糖結合因子はそれ自体、炭水化物部分および/またはタンパク質を含む。タンパク質および糖への標識のカップリングは当該分野で周知の技術である。例えば、糖を蛍光標識または放射性標識で標識するための市販のキットは、Oxford Glycosystems,Abingdon,UKから入手可能であり、タンパク質を標識するためのそれらの使用のための試薬および説明書は、上記のPierceカタログから入手可能である。
【0049】
カップリングは、通常、官能基(例えば、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケト基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボン酸基など)を使用することによって実施される。これらの基と反応する多数の標識(例えば、蛍光標識)が、市販されている。さらに、一方の側で標識と反応し、そして他方でタンパク質または糖と反応する二重官能性架橋剤が、用いられ得る。架橋剤の使用は、タンパク質または糖の機能の喪失を回避するために有利であり得る。
【0050】
標識は、当該分野で公知の方法を用いて検出され得る。いくつかの検出方法は、上記のWO93/22678(この開示は、その全体において本明細書中に援用される)に記載されている。本発明の特に適切な方法は、上記刊行物中に記載されているCCD検出方法である。この方法は、特定の振動数で光を吸収し、それによりVLSI表面への試験光源の通過をブロックし、その結果、CCDセンサが、標識剤が結合した領域における減少した光量を検出する標識と組み合わせて、使用され得る。この方法はまた、このような標識が励起振動数にて光を吸収するという事実を利用する蛍光標識とともに使用され得る。あるいは、CCDセンサは、励起後に、蛍光標識の放射を検出するために使用され得る。励起光からの放射シグナルの分離は、異なる波長に対して異なる感度を有するセンサを使用することによってか、または時間的な分離によってか、あるいはその両方の組合せによってかのいずれかで達成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、本方法はさらに、第1糖結合因子および糖結合因子の1つ以上の画像を獲得する工程を包含する。この情報は、例えば、写真またはデジタル画像として保存され得る。あるいは、第1および第2の結合画像により提供された情報は、データベースに保存され得る。
【0052】
本発明はまた、複数の複合体を含む基質を含む。各複合体は、基質の所定の位置に結合した第1糖結合因子を含む。この基質はまた、第1糖結合因子に結合した糖および/または検出可能な第2糖結合因子を必要に応じて含む。いくつかの実施形態において、基質は、所定の順番で、糖または糖配列もしくはフラグメントの複数の可視的な表示か、そうでなければ検出可能なマーカーの表示を含む固体支持体の形態で提供される。
【0053】
所望の場合、複数の第1糖結合因子を含む基質は、キットの形態で提供され得る。本発明の方法を用いる診断手順は、診断的な研究所、実験的な研究所、開業医、または一私人により実施され得る。本発明は、これらの設定で用いられ得る診断キットを提供する。特定の炭水化物ポリマーの存在または非存在は、糖結合因子と反応するそのパターンにより明らかにされる場合、提供されるサンプルにおいて明らかにされ得る。サンプルは、例えば、個々のサンプルまたは他のサンプルから獲得される臨床サンプルであり得る。
【0054】
各キットは、糖結合因子またはその手順を特異的にする因子を必ず含む。試薬は、好ましくは、在庫保存に適切な、試験が実施される場合、後の交換または反応培地中への添加に適切な固体形態または液体緩衝液で提供される。適切な包装が提供される。このキットは、必要に応じて、この手順に有用なさらなる成分を提供し得る。これらの任意の成分として、緩衝液、捕捉試薬、展開試薬、標識、反応表面、検出のための手段、コントロールサンプル、説明書、および解析情報が挙げられる。
【0055】
キットは、必要に応じて、検出可能な第2糖結合因子を含み、そして所望の場合、この第2の結合因子を検出する試薬を含み得る。複数の第1糖結合因子は、好ましくは、基質および検出可能な第2糖結合因子の所定の位置に取り付けられる。他の実施形態において、キットは、基質およびこの基質に取り付けられ得る第1糖結合因子、ならびに第2糖結合因子と共に提供される。
【0056】
(炭水化物ポリマーのフィンガープリントの作製)
上記の方法および試薬は、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製するために用いられ得る。本明細書中で用いる場合、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭水化物ポリマーと複数の糖結合因子(scattered−binding agent)との結合状態についての情報の寄せ集めである。いくつかの実施形態において、フィンガープリントは、糖結合因子による炭水化物ポリマーへの結合の存在の検出の数字上の表示である。
【0057】
炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭水化物ポリマーと第1糖結合因子とを接触させ、そして炭水化物ポリマーがこの糖結合試薬に結合するか否かを決定することにより、作製され得る。炭水化物ポリマーはまた、第2糖結合因子と接触され、そしてこの第2の結合因子が炭水化物ポリマーに結合するか否かに関する決定がなされる。
【0058】
炭水化物ポリマーは好ましくは、少なくとも5つの糖結合因子と接触され、そしてこの炭水化物ポリマーが少なくとも5つの糖結合試薬の各々と結合するか否かに関する決定がなされる。好ましい実施形態において、少なくとも10、15、20、または25またはそれ以上の因子との炭水化物ポリマーの結合が決定される。
【0059】
好ましい実施形態において、第1および第2糖結合因子の結合が、少なくとも1つの第1糖結合因子を含む表面(第1の因子はこの表面の所定の位置に取り付けられている)を提供し、この表面と炭水化物ポリマーを、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間で第1の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることにより決定される。非結合ポリマーは所望の場合除去され、そしてこの表面は、少なくとも1つの第2糖結合因子と、第1の複合体と第2糖結合因子との間で第2の複合体の形成を可能にする条件下で接触される。次いで、第1および第2糖結合因子が同定され、そして作成された情報は、炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントを提供する。複数の第1および/または第2糖結合因子を含有することにより、炭水化物ポリマーの詳細なフィンガープリントを作成することが可能である。当然、炭水化物ポリマーへの第1または第2糖結合因子の結合の非存在はまた、多糖について作成されるフィンガープリントに寄与することは、当業者に明らかである。
【0060】
第2の糖因子は、好ましくは、検出可能な試薬を含む。第2糖結合因子が標識されている場合、第2の標識の同定は、第2糖結合因子の同定を決定する。第2の標識の基質上の位置はまた、第1糖結合因子の同定を明らかにする。
【0061】
本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、この実施例は添付の特許請求の範囲を限定しない。
【0062】
(実施例1)
(第1および第2の配列特異的因子として抗体を用いる糖分子の分析)
本実施例は、本発明に従い糖分子を分析する技術をさらに説明する。第1および第2の配列特異的因子として、抗体を用いる。以下の表は、説明の目的のためにHSおよびNSと命名された2つの異なる糖を用いる反応の結果を列挙する。糖の構造は、以下のようなものである。
【0063】
【表2】
表2は、糖と第1および第2の必須配列特異的因子(T抗原、Lewisx(Lex)、またはLewisb抗原(Leb)に対する抗体)との間の反応の結果を列挙する。第1必須配列特異的因子をマトリクス、好ましくは固相微粒子に固定する。第2必須配列特異的因子を蛍光試薬(すなわち、ナイルレッド、緑色)を用いて標識する。さらに、糖の還元末端を、第2必須配列特異的因子として作用する、ナイルレッドまたは緑色と明確に区別可能な標識を用いて標識する。表2は、糖HSについての反応を列挙し、表3は、糖NSについての反応を列挙する。
【0064】
【表3】
ここで、要約すると、第1必須配列特異的因子として示される抗体(列)を使用する場合、以下のシグナルが糖HSまたはNS(行)の反応において検出可能である。
【0065】
【表4】
標識を検出し、各反応について結果を記録した後、第3必須配列特異的因子を添加する。この実施例において、第3必須配列特異的因子との2つの独立した反応を用いる。ここで、糖分子を保持する固相を、α1−2フコシダーゼまたはエキソβガラクトシダーゼのいずれか(第3必須配列特異的因子)との反応のために、有利にアリコートに分割する。あるいは、3つのセットの第1および第2の必須配列特異的因子との反応を実施し得る。
【0066】
(表5:)
(α1−3,4フコシダーゼ適用後の反応:)
【0067】
【表5】
(表6:)
(D.pneumoniae(EC3.2.1.23カタログ番号1088718(Boehringer Mannheim,68298 Mannheim,Germanyより))由来のExoβガラクトシダーゼ適用後の反応)
【0068】
【表6】
(表7:)
(αl−2フコシダーゼ適用後の反応:)
【0069】
【表7】
上記に説明される集められたデータから、糖分子同一性(GMID)カードをここで作製し得る。そのような情報の例を、糖HSに関して表8にそして糖NSに関して表9に列挙する。
【0070】
(表8)
【0071】
【表8】
(表9)
【0072】
【表9】
第2および第3の本質的に配列特異的な因子の同一性は、このようなデータリストに開示される必要はない。比較目的のためには、特定のコード数(上記の表中の1、2または3)が常に試薬の特定の組合せを同定することが十分である。
【0073】
(実施例2)
(還元末端の連続標識のためのスキーム)
上記の説明および実施例に示されるように、本発明の方法は、その還元末端で探索されるべき糖の標識を有利に使用する。しかし、この標識技術は、糖内の部位まで拡張され得、従ってより多くの情報を提供することによって本発明の方法に寄与する。エンドグリコシダーゼを用いた切断、続く還元末端の標識によって鎖内の糖の標識が可能であるように、それゆえ糖鎖内に標識還元末端を得ることが可能である。還元末端は、本来の還元末端と比較して、第1、第2および第3の本質的に配列特異的な因子に対する結合部位に必然的に接近するので、内部に作製された標識還元末端の使用は、さらなる情報を提供する。さらに、以下にさらに記載される方法に従う還元末端の連続標識によって、探索される糖鎖上の連続した順序において異なるグリコシダーゼに関する部位を同定することが可能である。
【0074】
還元末端を連続標識する方法は、ここに、以下の工程でより詳細に記載される:
(1.ブロッキング:)
還元末端を有する多糖を、NaBH4/NaOHを含む溶液(pH 11.5)中でインキュベートする。
【0075】
この処理は、還元末端をブロックし、その結果、ここで多糖は還元末端(RE)を欠く。
【0076】
(2.露出:)
工程1の多糖を、エンドグリコシダーゼを用いて処理する。このエンドグリコシダーゼに対する認識部位が多糖内に存在する場合、新規の還元末端が多糖の切断によって作製される。この溶液はここで、2つの糖:エンドグリコシダーゼ部位において新規に露出されるREを有するフラグメントおよびREがブロックされる第2のフラグメントを含む。
【0077】
(3:還元末端の標識)
この反応を、例えば、2−アミノベンズアミド(Oxford Glycosystems Inc.(1994年、カタログ62頁)による糖の標識のためのキット形態で市販される)を用いて実行し得る。高濃度の水素かつ高温度(H+/T)条件下での反応、続く還元が完了した後、この混合物は2つのフラグメントを含み、これらのうちの1つはその還元末端で標識されているが、もう一方は、還元末端がブロックされているという事実に起因して標識されないままである。
【0078】
還元末端を標識するための別の方法は、還元的アミノ化による方法である。アリールアミン基を含む蛍光化合物を、還元末端のアルデヒド官能性と反応させる。次いで、得られたCH=N二重結合を、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いてCH2−N単結合に還元する。この技術は、Glyko Inc.、Novato、CA、USAから入手可能なFACE(フルオロホア(fluorophore)補助の炭水化物電気泳動)キットの一部であり、例えば、Glyko、Inc.カタログ8〜13頁(これは本明細書中に参考として援用される)に詳述される。
【0079】
(4.第2のエンドグリコシダーゼとの反応)
ここで、第2のエンドグリコシダーゼを糖混合物と反応させ得る。新規の反応混合物はここで、3つのフラグメントを有する。1つ目はインタクトな還元末端を有し、2つ目は2−アミノベンズイミドによって標識される還元末端を有し、そして3つ目はブロックされた還元末端を有する。
【0080】
(実施例3)
(本質的に配列特異的な因子との一連の反応からの構造的情報の誘導)
本実施例は、本発明の方法、すなわち上記にさらに記載されるような反応セットを用いることによる糖の構造に関するデータの作製をさらに例示する。本実施例はさらに、配列情報が上記の反応セットから推定され得ることを実証する。
【0081】
いくつかの場合、使用される試薬は、刊行されたデータ(例えば、カタログから取得)から予想されるように正確には反応しなくてもよい。例えば、以下にさらに記載されるようなレクチンシロバナヨウシュチョウセンアサガオ凝集素が、結合GluNacとしてSigmaカタログに列挙される。しかし、以下にさらに詳述される反応において、DSAは、クマリン120誘導体化Glc(Glc−AMC)に結合することが示される。これらの化合物間の構造的類似性に起因して、Glc−AMCは全ての目的に対してGlcNacと同様に作用するようである。さらに、以下の結果から明らかなように、使用されるエンドガラクトシダーゼは、ガラクトース残基だけでなく、残りの糖に対してGlc−AMC基を連結する結合もまた切断する。
【0082】
本発明の実施で使用される本質的に配列特異的な因子が、いくつかの場合、刊行された材料(例えば、カタログ)中で提供されるこれらの因子の特異性と異なる良好な特異性を有し得ることが明らかである。このような反応を、既知の構造の糖を用いて本発明の方法を使用することによって、迅速に同定し得る。次いで見出された結果を予想された結果と比較し得、そしてその差異によって、使用される本質的に配列特異的な因子の種々の特異性の同定を可能にする。次いで、本質的に配列特異的な因子の良好な特異性における刊行されたデータからのこのような多様性を、これらの因子を用いた未知の糖構造のさらなる分析のために貯蔵し得る。
【0083】
以下に、本発明の方法を、末端標識五糖(pentasaccharide)および種々のレクチンおよびグリコシダーゼを用いて例示する。五糖は、構造Gal−β(1,4)[Fuc−α(1,3)]−GlcNAc−β(1,3)−Galβ(1,4)−Glcを有する。五糖は、GluNAc位で分枝し、それぞれ3位および4位において五糖に結合したフコースおよびガラクトースを有する。五糖を、その還元末端(Glu)で、クマリン−120(7−アミノ−4−メチルクマリン、例えば、Sigma、カタログ番号A9891から入手可能)を用いて標識する。カップリング反応を、アリールアミン官能基を使用することによって、還元末端の標識について上記されたように実施し得る。クマリン−120は、312nm励起される場合、青色蛍光を発する。第1および第2の本質的に配列特異的な因子として、エンド−β−ガラクトシダーゼ(EG,Boehringer Mannheim)およびエキソ−1,3−フコシダーゼ(FD,New England Biolabs)を使用する。両試薬に関する反応条件は、エキソ−1,3−フコシダーゼに関するNEBカタログ中に記載されるような条件である。
【0084】
3つの反応を実行した。第1は、フコシダーゼ(FD)およびエンド−ガラクトシダーゼ(EG)を含み、第2はFDのみを含み、そして第3はEGのみを含んだ。酵素を欠く第4の反応は、コントロールとして働いた。
【0085】
酵素が糖を消化したことを確認するために、種々の反応を、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてサイズ分離する。
【0086】
分離後、TLCプレート上の糖を、プレートを紫外線光に対して曝露することによって検出し得る。この結果を、以下の例示に示す。
【0087】
【表10】
反応4において、グリコシダーゼを添加せず、その結果、糖はインタクトでありかつプレート上で小さい距離のみ移動する。反応2のフラグメントは、分子量が2番目であるが、反応1および3のフラグメントは、等しいように見える。これらのデータから、糖上のグリコシダーゼ部位の配列は、FD−−EG−−還元末端(クマリン標識)であると結論付けられ得る。
【0088】
ここで上記の五糖を、上記にさらに記載されるような反応セットによって試験する。第1および第2の本質的に配列特異的な因子として、レクチンを使用した。レクチン(Anguilla Anguilla凝集素(AAA)カタログ番号L4141、Arachis Hypogaea凝集素(PNA)カタログ番号L0881、Ricinus communis凝集素(RCA I)カタログ番号L9138、レンズマメ(Lens Culinaris)凝集素(LCA)カタログ番号L9267、アラブスプレカトリウス(Arabs Precatorius)凝集素(APA)カタログ番号L9758)は、Sigmaから入手可能である。レクチンはまた、他の企業から入手可能である。例えば、RCA Iは、Pierce(カタログ番号39913)から入手可能であり得る。レクチンを、ニトロセルロースフィルター上にブロッティングすることによって固定化する。
【0089】
反応緩衝液は、lmM CaClおよび1mM MgClを有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。レクチンの結合後、このフィルターを反応緩衝液中の1%BSAを用いてブロックした。コントロールとして、レクチンなしおよび固定化タンパク質として10μg BSAを含む反応を使用した。
【0090】
反応結果を表10に示す。プラス(+)は、312nmの蛍光の存在を示し、これは、クマリン標識還元末端の存在を示す。表中の番号1〜4は、上記に定義されるような反応を示す。
【0091】
(表10)
【0092】
【表11】
表10(反応4−コントロール)に列挙されるような結果から、レクチンAAA、PNA、DSAおよびRCA−Iが糖に結合することは明らかである。従って、フコース、Gal(1−3)GlcNAc、GlcNAcおよびガラクトース/GalNAcは、糖の中に存在しなければならない。なぜなら、これらは、AAA、PNA、DSAおよびRCA−Iによって認識されるそれぞれの糖構造であるからである。上記のグリコシダーゼフコシダーゼおよびエンド−β−ガラクトシダーゼが、糖の中の切断配列を認識することはさらに明らかである。これらの配列は、それぞれ、Fuc(1−3/1−4)GlcNAcおよびGlcNAcβ(1−3)Galβ(1−3/4)Glc/GlcNAcである。
【0093】
両方のグリコシダーゼ部位がフコース糖と還元末端との間に位置することがさらに推測され得る。なぜなら、AAA(これはフコースに結合する)を固定化されたレクチンとして使用する場合、上記末端は、いずれかのグリコシダーゼによって切断されるからである。一方、DSAとの反応により、GlcNAc単糖がグリコシダーゼ部位と還元末端との間に位置するか、またはGlcが直接クマリンに結合するかのいずれかの推測が可能になる。なぜなら、DSAを固定化因子として使用する場合、いずれのグリコシダーゼも還元末端を切断しないからである。
【0094】
さらに、固定化因子としてのPNAとの反応は、エンド−βガラクトシダーゼを使用する場合(反応1および3)のみ、還元末端が切断されることを示す。これは、エンド−βガラクトシダーゼ部位が、PNAに関する部位と還元末端との間に位置することを示す。一方、フコシダーゼ部位は、PNA部位と糖のもう一方の末端との間に位置しなければならない。
【0095】
上記のデータを考慮すると、ここで以下のように糖の配列を提案することが可能になる:
【0096】
【化1】
上記の実験は、本発明の方法が比較的少ない反応に基づいて種々のデータ(配列情報を含む)をもたらし得ることを明らかに実証する。配列情報におけるいくつかの詳細は、上記の糖におけるフコースとGlcNAcとの間の(1−3)または(1−4)連結のように、完全でないかもしれない。五糖の単糖組成が既知であった場合、上記の分析は上記の五糖の全ての詳細をもたらしたであろう。それにもかかわらず、単糖組成のデータの非存在下でさえ得られた情報は、先行技術の方法と比較して非常に正確である。
【0097】
(実施例4)
(部分的または完全な配列情報の誘導)
本発明の方法は、自動化に適している。従って、上記の工程(例えば、実施例1〜3)を、混合、アリコート化、反応および検出のための自動化システムを用いて実行し得る。次いで、このような自動化プロセスによって得たデータを、部分的または完全な配列情報に対するマッピング情報を「崩壊(collapse)」させるために、さらに処理し得る。このようなデータ処理のための方法を、以下にさらに詳細に記載する。
【0098】
すべてのデータを収集した後、比較を、グルコシダーゼの添加の前に反応物から得た検出シグナルとグルコシダーゼの添加(およびグルコシダーゼとの反応)の後に得たシグナルとの間で行う。グルコシダーゼとの反応後に消失したこれらのシグナルを、マークする。これは、これらのシグナルのリストを調製することによって有利に行われ得、このリストを、本明細書中以降、第1リストとしていう。多糖上の2つの部位の同一性を、ここで、各々のこのようなデータ入力について達成し得る。(必要に応じて、仮想的な)アレイにおける位置は、第1の本質的に配列特異的な因子を示す。シグナルを、グリコシダーゼとの反応の前に検出した場合、その因子についての認識部位は、多糖中に存在しなければならない。シグナル(例えば、第2の本質的な配列特異的因子に関連するシグナル)の消失は、ここで、グリコシダーゼが第1および第2の本質的に配列特異的因子の認識部位の間を切断することを示す。従って、認識部位の配列は、(第1の本質的な配列特異的因子)−(グリコシダーゼ)−(第2の本質的に配列特異的因子)である。還元末端についてのシグナルが、グリコシダーゼを用いる消化の後になお存在する場合、還元末端に関する認識配列の相対的順序が、確立され得る;そうでなければ、両方の可能性(a−b−cおよびc−b−a)を考慮しなければならない。例示の目的のために、用語「第1の本質的に配列特異的因子の認識部位」を、以下の「第1認識部位」と示し、用語「第2の本質的に配列特異的因子についての認識部位」を、「第2認識部位」と示し、そして用語「グリコシダーゼについての認識部位」を、「グリコシダーゼ」と示す。
【0099】
ここで、上記の型の認識部位の三つ組の第2のリスト(1型の三つ組)を作製することが、可能である:
(第1認識部位)−(グリコシダーゼ)−(第2認識部位)。
【0100】
同様に、第3のリスト(2型三つ組)を、ここで、(必要に応じて、仮想的な)アレイ位置に対して作製し得、ここで、すべてのシグナルは、グリコシダーゼの添加後に残存する:
(グリコシダーゼ)−(第1認識部位)−(第2認識部位)。
【0101】
明らかに、十分な数の三つ組は、その配列に関して分子を規定する、すなわち、見出されたすべての三つ組を含む糖の1つの配列が唯一存在し得る。より少数の三つ組は、分子長上の情報が利用可能である場合に必要とされ得る。必要な三つ組の数は、分子の総糖含有量が既知である場合に、さらに少なくあり得る。糖分子量および総単糖含有量の両方を、当業者に周知の先行技術の方法から導き得る。
【0102】
配列情報を得るプロセス、すなわち、三つ組を認識部位のマップへ崩壊させるプロセスを、以下に記載する。
【0103】
三つ組認識部位の第2リストおよび第3リストを、同一性(3つの認識部位の3つが同一)、高類似性(3つの認識部位の2つが同一)、および低類似性3つの認識部位の1つが同一)について評価する。例示の目的のために、ここで、多糖が、直線状の多糖(例えば、グリカンヘパリンの糖部分)であると仮定する。
【0104】
次いで、上記の第2および第3リストを使用して、これらから三つ組のリストのセットを調製する。ここで、このリストのセット中の各リストは、同じグリコシダーゼ認識配列を共有する三つ組を含む。特定のグリコシダーゼ認識配列を含有するすべての三つ組を第2のグリコシダーゼ認識配列を含有するすべての三つ組と比較することによって、ここで、多糖配列を4つの領域に分割することが可能である。この4つの領域は、分子の第1末端からグリコシダーゼ1まで(フラグメントa)、グリコシダーゼ1からグリコシダーゼ2まで(フラグメントb)、およびグリコシダーゼ2から分子の第2末端まで(フラグメントc)の範囲である:
<第1末端><グリコシダーゼ1><グリコシダーゼ2><第2末端>。
【0105】
異なるグリコシダーゼ部位を有する、2型の三つ組内の同一な認識部位(ここで、この認識部位は、それぞれのグリコシダーゼ部位に関して同一の方向で位置する)は、この位置に依存して、領域aまたはcのいずれか内の位置についての候補である。異なるグリコシダーゼ部位を有する2型の三つ組内の同一の認識部位(ここで、これらの認識部位は、異なる方向で位置する(例えば、1つは、還元末端の方向で、もう一方は、非還元末端の方向で))は、領域b内、すなわち、2つのグリコシダーゼ部位の間の位置についての候補である。
【0106】
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型の三つ組内の同一な認識部位は、領域a(またはc)における第1または第2の認識部位のうちの1つの位置についての候補であり、そしてこの第1または第2の認識部位のうちのもう一方は、領域c(またはa)に位置する。つまり、第1または第2の認識部位のうちの1つが、領域aに位置する場合、この第1または第2の認識部位のもう一方は、領域bに位置しなければならず、その逆も同様である。この第1または第2の認識部位のなかで、領域bに位置し得るものはない。
【0107】
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型の三つ組内の同一な認識部位(ここで、所定の認識部位は、三つの組のうち1つでは還元末端の方向で位置し、そしてこの三つの組のうち他方では非還元末端の方向で位置する)は、領域b内の認識部位の位置についての候補である。
【0108】
三つ組内の多くの認識部位について上記の位置関係を確立することによって、認識配列の全体は、ここで、理論的判断を用いて特定の順序で配列され得る。この段階は、配列マップといわれる。十分な数の認識配列が配列される場合、糖の完全配列を、これらから導き得る。この方法は、糖の分子量を決定しないので、鎖長は、未知である。従って、種々の認識部位の間の重複の程度が十分でない場合、さらなる糖単位が存在し得る領域が配列中に存在し得る。このような糖単位は、それらが、使用される本質的に配列特異的因子のいずれかの認識部位内にない場合、検出されないかもしれない。しかし、全配列情報をまた、この糖の分子量を最初に得ることによってこの場合において得ることができ、これは、その鎖長、および第2にその総単糖含量を示す。
【0109】
配列マップにおけるクローニングギャップの別の可能性は、実施例2の方法であり、ここで、グリコシダーゼによる配列分解を使用して、配列情報を引き出す。
【0110】
糖における分枝点の存在は、上記の概略のような方法を複雑にし得る。それに対する1つの改善法は、グリコシダーゼを使用してこの分子の画分を調製し、そしてこれらの部分的構造を分析することである。このような部分的構造における分枝の程度は、明らかに、全分子においてよりは低い。さらに、分枝点を特異的に認識する試薬を、使用し得る。このような試薬の例としては、例えば、上記の実施例1に使用された抗体である。これらの抗体の各々は、少なくとも1つの分枝点を含有する糖配列に結合する。さらに,分枝状糖構造を認識する特定の酵素およびレクチンが、利用可能である。例えば、酵素プラナーゼ(pullanase)(EC 3.2.1.41)は、分枝構造を認識する。さらに、抗体は、分枝状糖構造を抗原として使用することによって、産生され得る。さらに、分枝状構造を含む特定の糖構造に結合するペプチドを産生することが、可能である(例えば、Deng SJ,MacKenzie CR,Sadowska J,Michniewicz J,Young NM,Bundle DR,Narang;Selection of antibody single−chain variable fragments with improved carbohydrate binding by phage display.J.Biol.Chem.269,9533−38,1994を参照のこと)。
【0111】
さらに、既存の炭水化物の構造の知識は、多くの場合、分枝点の存在を正確に予測する。例えば、N結合グリカンは、oxford Glycosystemsカタログの6頁に列挙されるように、限定された数の構造を有する。これらの構造は、モノアンテナからペンタアンテナの範囲である。より複雑な構造は、添加されるさらなる糖残基とより単純な構造で似ている。従って、モノアンテナ構造が同定される場合、より複雑な構造における分枝点のすべてを予測することが可能であり、これは単に、さらなる残基を同定し、そしてこれらのデータをN結合グリカン構造のライブラリーと比較することによる。
【0112】
さらに、本発明の方法に従って集められたデータを分析することによって、理論的に分枝点の存在および位置を推定することがしばしば可能である。例えば、2つの認識部位(aおよびbと示される)が異なる分枝上に位置する場合、部位が還元末端と分枝点との間に位置するグリコシダーゼで消化することは、還元末端マーカーの損失を生じる。しかし、認識部位aおよびbの両方についてのマーカーは、残存する。分枝点と認識部位との間に位置するグリコシダーゼを使用する場合、認識部位bについてのマーカーおよび還元末端マーカーは、切断される。分枝点の可能性を考慮しない場合、これは、認識部位bが、認識部位aと還元末端との間に位置することを示す。しかし、認識部位bと分枝点との間に位置するグリコシダーゼが使用される場合、還元末端マーカーおよび認識部位aは、切断される。また、分枝の可能性を考慮しない場合、これは、認識部位aが、還元末端と認識部位bとの間に位置することを示す。これらの推定は、明らかに、互いに不適合であり、認識部位aおよびbが2つの異なる分枝上に位置すると仮定する場合にのみ、決定され得る。この分枝点は、認識部位aおよびbと第1の上記のグリコシダーゼとの間に位置する。使用される他の上記のグリコシダーゼは、各分枝上(分枝点とそれぞれの認識部位(aまたはb)との間)に位置する。
【0113】
従って、本質的に配列特異的な因子として、本発明の方法において分枝した構造を認識する因子を用いる場合、糖(サッカライド)分子中の分枝した点の存在または位置の情報を駆動することが可能である。次いで、この情報は、この構造の各分枝の配列マッピングを構築するために用いられ得、分枝した構造全体の配列マッピングを生じる。次いで、このような構造におけるギャップは、本発明に従って、すなわち、さらなる反応を用いることにより、グリコシダーゼで消化することにより(これによりギャップの存在する分子の領域が本発明の方法によってさらなる分析のために特異的に単離される)、および上記にさらに記載したように引き続くグリコシダーゼ消化によって、分枝した糖の場合のように閉じられ得る。
【0114】
要するに、本発明によって、糖の配列を決定するための方法および/またはこのような糖の構造をマッピングするための方法は、以下の工程:
1.1型および2型のトリプレットを収集する工程
2.このトリプレットを類似性によってソートする工程
3.トリプレットを異なるグリコシダーゼ認識部位と比較する工程
4.このトリプレットを糖の上での出現の順序で整列する工程
5.グリコシダーゼ認識部位を整列する工程
6.このトリプレットに対する適合性をチエックする工程
7.一列の順序でグリコシダーゼの認識配列ならびに因子特異的な第一および第二の本質配列を整列する工程
8.この認識配列(部位)を多糖配列へ変換する工程
9.「重複する」問題を補正する工程
10.配列を出力する工程
11.全ての利用可能なデータに対してチェックする工程
上記の第5工程実行後、グリコシダーゼ部位の予備的な順序を確立した。第6工程では、それに基づいた予測がその順序と一致していようといまいと各トリプレットについて、ここでチェックする。次いで、このデータにおける食い違いに基づいて、このトリプレットのデータに適合する新しいモデルを作成する。次いでこのモデルを全てのトリプレットのデータに対して試験する。さらに、このトリプレットを含む認識部位に関して、さらなる方向の情報を抽出するためにさらなる反応を実行し得る。
【0115】
上記の第8工程後(ここで、連続的に整列した認識部位を、実際の単糖類の配列に変換する)糖配列のモデルが示唆され得る。このモデルを試験するため、多数の疑問が回答される必要がある。これらの第一は、同じ配列マッピングをなおも有する最小の配列は何か?ということである。この段階では、分子量および単糖組成物に関する情報は、利用可能であっても、考慮されない。このアプローチは食い違いができるだけ少ない利用可能なデータの全てを組み込む配列を作成するようにだけ働く。その点において、回答されるべき第二の疑問は、この最小配列はなお、そのポイントで利用可能な全てのデータ(至適分子量および単糖組成物のデータを除く)に一致するか?ということである。回答されるべき第三の疑問は、確立された場合、この配列マッピングに適合する他の配列が存在するか?ということである。肯定の場合、さらなる配列を以下の疑問を用いて試験し得る:各配列モデルは、どのようにしてこのトリプレット情報に、そしてさらなる任意のデータ(例えば、分子量、単糖組成物、および生物学から公知のモデルの糖構造に対する情報)に一致するか?
最後に、上記の工程1〜10によって最高であると見出された配列モデルを、次に、全てのトリプレット、単糖組成物、この糖の分子量および構造組成物に対する事前の知識、ならびに生物学的に既存の類似の構造からの予想に対して試験する。このような反復した試験によって、利用可能なデータと配列モデルとの間の食い違いを同定し、もし可能であれば、この配列モデルを、このデータをさらによく示すように適合させる。
【0116】
(実施例5)
(ミルクサンプルの糖分子同一性(glycomolecule identity)(GMID)分析)
本実施例の目的は、ミルクサンプルの分析および比較のためのGMID技術の適用を実証することである。
【0117】
A.膜および第一層レクチン:
本明細書中において下記される実験において用いた支持表面は、ニトロセルロースメンブレン(膜)である。このメンブレンは以下のように調製した:
1.ニトロセルロースメンブレンを切り取り、そしてその表面に9×6の四角(各四角は3mm2)のアレイを印した。次いでこのメンブレンを吸収紙上に置き、そして各々のメンブレンの左上の四角をペンで記した。
2.凍結乾燥したレクチンを、水中に再懸濁して、最終濃度1mg/mlとした。再懸濁したレクチン(およびコントロール溶液:5%ウシ血清アルブミン)をボルテックスして混合し、そして各溶液の1μlをこのブロットの上の28の四角(代表的なブロットの以下の例示的図示において影付で示した)のうちの1つに添加する。
【0118】
【表12】
この実験で用いたレクチンを表11に列挙する。
【0119】
【表13】
3.調製したブロットを90mmペトリ皿中に置く
4.当業者に周知の任意の適切なブロッキング溶液10mlを各ペトリ皿に添加することによってこのブロットをブロックした(例えば、5%ウシ血清アルブミン)
5.室温で2時間、回転テーブル(50rpm)上での回転によって(または回転なしで4℃一晩)ブロッキング溶液中にこのブロットを含有する皿を穏やかに攪拌した
6.次いで各ペトリ皿への10mlの洗浄溶液の添加によってこのブロットを洗浄した。
この洗浄工程を実施するために任意の市販の緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)を、用い得る。この皿を5分間穏やかに回転(50rpm)して洗浄する。この手順を全部で3回実施し、その都度、古い洗浄溶液を廃棄して新しい溶液で置換する。
B:ミルクサンプルの添加:
用いたミルクサンプルは以下のとおりであった:
1.Ramat haGolan dairies(酪農場)、イスラエルから入手したウシUHTロングライフミルク(脂肪分3%)(ロット522104);
2.Mechek酪農場(イスラエル)から入手した殺菌ヤギミルク(ロット1および2);
3.2と同様に入手した非殺菌ヤギミルク(ロット3および4)。
【0120】
このミルクサンプルを10%v/vに希釈して、約5mlの各サンプルを別のブロットに適用した。
【0121】
前述のミルクサンプルの各々について二連のブロットを準備した。さらに、糖の添加なし(陰性コントロール)にさらなるブロットの対を準備した。
【0122】
次いで、このブロットを1時間攪拌しながら室温にインキュベートした。
C.着色レクチン
試験したミルクの単糖組成物の以前の知識から、そして実施例7において本明細書中に前記したアルゴリズムに基づいたコンピュータープログラムの適用によって、以下の着色レクチンを選択した:ConA、VVA。
【0123】
これらの2つのレクチンの混合物を含有する洗浄溶液を、各着色レクチンの濃度が2mg/mlとなるように準備した。
【0124】
500μlの各レクチン混合物を上記のように調製したブロット上でインキュベートした。各ブロットは、520nmでのフルオレセインの蛍光を測定することによって、そしてビオチン化レクチンの場合は、HRPストレプトアビジン溶液とのビオチンの反応後に生成したTMBブルーのシグナルを測定することによって、両方とも赤であった。
【0125】
FITC標識したレクチンおよびビオチン標識レクチンについて得た結果をそれぞれ、表12および13に示す。これらの表に示される結果を0〜3のスケールで測定する。ここで0は、ノイズレベル未満のシグナルを示し、1〜3は、非糖コントロールにおいて得られた結果の差引き後の陽性シグナル(ノイズ以上)を示す。
【0126】
殺菌ヤギミルク(ロット1および2)、非殺菌ヤギミルク(ロット3および4)およびウシミルクについてこれらの結果から得た糖分子同一性(glycomolecule identity)(GMID)を図1に示す(それぞれ、A〜E)。レクチン1〜24の位置を、各カード1の上部の左から右の1列に示す。
【0127】
(D.結果の解釈)
ウシミルクサンプルは、GMIDを生じ、このことは、このサンプル中のポリサッカライドが、以下について特異的なレクチンについて陽性の結果を生じる糖を含むことを示す。
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(WGAおよびDSA)。
【0128】
殺菌ヤギミルクサンプルは、以下について陽性の結果を生じた:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(DSA)。
【0129】
試験したロットの間のレクチン反応性において差異は観察されなかった。
【0130】
非殺菌ヤギミルクサンプルは、以下について陽性の結果を生じた:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(DSA)。
【0131】
まとめると、ウシミルクはヤギミルクとは、前者がWGAと反応した点でのみ異なる。殺菌ヤギミルクサンプルと非殺菌ヤギミルクサンプルとの間には、殺菌サンプルではシグナル強度が有意に低かったこと以外には、本質的に差異は存在しなかった。
【0132】
(実施例6)
(リポポリサッカライドの糖分子同一性(GMID)分析)
本質的には上記、実施例5に記載の方法を用いて、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Missouri,USA)から得た5つの異なる細菌リポポリサッカライド(LPS番号1、7、10、15および16)でGMID分析を実施した。用いた着色レクチンは、ECL、WGA、VVA、およびSBAであった。
【0133】
サンプルLPS番号1、7、10、15および16から得たGMIDカードを図2に示す(それぞれA〜E)。GMIDカードが異なるリポポリサッカライドの各々について特有の「フィンガープリント」を提供し、これが細菌またはこれらの産物の混合物を含むサンプル中でこれらの化合物の存在を同定するために用いられ得ることがこの図からわかる。
【0134】
(実施例7)
(着色レクチンを選択する方法)
実施例5および6に例示されつ多糖分析の方法において用いるための着色レクチンを選択する場合、多数の因子が、考慮されなければならない。これらの検討項目の中でも、レクチンの選択の各々について必要なのは、識別可能な色素マーカーまたは他の検出可能マーカーを有すること、ならびにレクチン間の相互作用を減少することである。着色マーカー選択における使用のためのアルゴリズムを図示するフローチャートを図3に示す。図3に示すアルゴリズムは、n個の着色したレクチン(または他の検出可能マーカー)の選択101で始まり、この最初の選択は、分析されるべき糖の部分的または完全単等組成物について得られた情報と一致している。
【0135】
次の工程102において、選択したレクチンの色を選択した色の同定/非同定についてチェックするために試験する。選択した群において同一の色が存在すれば、このプロセスを工程103に進行するか、さもなければフローを工程104に進める。工程103において、非特異的な色を有することが見出されたレクチンの1つを同じ結合カテゴリーに属する別のレクチン(すなわち、同じ単糖結合特異性を有するもの)で置換する;フローを工程102に進める。
【0136】
工程104において、n個の選択したレクチンを、お互いに対する、および実施例5において本明細書中上記された方法の第一段階において用いた非着色レクチンに対するなんらかの交差反応性を検出するため、試験する。交差反応性が見出されると、このプロセスを、工程105に続けるか、さもなければフローを工程106に進めて、ここでアルゴリズムを終了する。
【0137】
工程105において、別のレクチンと交差反応するように決定したレクチンの1つを、交差反応しないレクチンで置換する;次いでこのフローは102に進む。このアルゴリズムは工程106で終了する。
【0138】
小さいnの値について、そしてシンプルな単糖組成物を有する糖について、上記のアルゴリズムが、選択手順の各工程を通じて手動で働くオペレーター自身によって適用され得ることが強調されるべきである。あるいは(nがより大きい数であるかまたは単糖組成物がより複雑である特別な場合には)、本明細書中において上記されたアルゴリズムプロセスは、このようなプロセスを執行するために設計されたコンピュータープログラムによって実施され得る。
【0139】
上記の例は、本明細書において記載された方法の有用性を実証した。しかし、それは例示のみの目的のために追加された。用いられた本質的に配列特異性の因子において、そのための反応条件において、固定、反応および検出の工程の技術において、および標識の配列において、大きいバリエーションが、本発明の範囲から逸脱することなくもたらされ得ることが当業者に明白である。
【0140】
(他の実施形態)
上記の実施例は、本発明による特定のタイプのフィンガープリントアッセイおよび方法を記載する。これらのアッセイは、データを収集しそして分析するための「ウエット」なまたは実験的アッセイのデバイス、ハードウェアおよびソフトウェアについて種々の異なる構成で必要に応じて実施され得る。図4は、GMIDカードを用いてフィンガープリントアッセイを実施するための本発明による代表的方法の図式的ブロックダイヤグラムである。これは、フィンガープリントアッセイを実施するための本発明による合成的構成および操作の1つの型を例示している。本記載は例示の目的のみであっていかなる方法でも限定を意味しないことに注意すること。
【0141】
工程1において示されるように、必要に応じて、そして好ましくは、糖結合因子(糖結合剤)を、GMIDカードを用いたアッセイにおいてそれを使用する前の効率について試験する。本実施例において、糖結合剤はレクチンとして記載されているが、このような因子(薬剤)の他のコースは本発明の範囲内で必要に応じて使用され得る。より詳細には、このようなレクチンの各々を、陽性の活性について、最も好ましくは標準的糖分子との反応性を通じて、試験する。このような反応性は、レクチンが再生可能な様式でこのような標準的糖分子に結合し得ることを示す。さらに、そしてまた好ましくは、レクチンは、好ましい実施形態のアッセイにおいて糖結合剤(因子)を操作する(固体支持体の表面に結合されてもいなくても)能力について、または可溶性形態で存在する能力について試験されるべきである。
【0142】
工程2において、レクチンを、固定された糖結合剤(因子)についてGMIDカードのために固体支持体に結合する能力について、必要に応じてそして好ましくは試験する。さらに、必要に応じて、そして好ましくは、糖結合剤の可溶化形態を試験して、固体支持体に対する任意の非特異的結合(これはバックグラウンドのレクチン結合のレベルを増大し得、これによって特異的に結合したレクチンのシグナルを低減する)が存在するか否かを決定する。
【0143】
さらに、より好ましくはGMIDカードについての固体支持体を、種々のタイプの挙動(特定のレクチン結合の非存在におけるバックグラウンドシグナルの生成、および/またはこのようなシグナルのクエンチング)についてそれ自体を試験する。本発明のGMIDカードに特に好ましい固体支持体は、例えば、ニトロセルロースのような多孔性または半多孔性のメンブレンである。あるいは、固体支持体は、例えば、ガラススライドのようなニトロセルロースコートされた固体表面、または多孔性または半多孔性の材料でコートされた任意の他の適切な固体表面であり得る。
【0144】
工程3において、一旦レクチンのセットがGMIDカードのための固体支持体上での固定のために選択されれば、そして支持体自体がまた選択されれば、GMIDカードは固定されたレクチンで調製される。必要に応じて、GMIDカードは、「アレイヤー(arrayer)」デバイスまたは「スポッティング(spotting)」デバイスを用いて準備され得る。これらのデバイスは比較的少量かつ正確な量のレクチンを固体支持体上の特定のアレイに配置し、複数の「スポット」のアレイを形成し得る。これらのデバイスはまた、「微小分注システム(microdispensing system)」として公知である。なぜなら、それらのデバイスは、ナノリットルで代表的に測定される量の材料を(例えば、このような少量の材料を堆積させるためのピンのアレイを用いて)堆積させるからである。本発明での操作に適切なデバイスの例としては、HydraTM(Robbins Inc.,USA)、MicroGrid II/TAS/ProTM(BioRobotics Ltd.,英国)およびGMS417TM(Genetic Microsystems Affymetrix Inc.,USA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
必要に応じて、そして好ましくは、固体表面に固定されるか、または可溶化形態でGMIDカードを用いてインキュベートされる前に、レクチンを前処理する。例えば、このような前処理は、必要に応じてシグナル対ノイズ比を改善するためのレクチンの過ヨウ素酸化を含み得る。
【0146】
工程4において、必要に応じてそしてさらに好ましくは、GMIDカードとのインキュベーションの前に、糖分子を処理して、この支持体上で固定されたレクチンに結合する効率比を最小にし、そしてまた固定されたレクチン、支持体および可溶化されたレクチンに対する非特異的結合を減少する。さらに、好ましくは、この糖分子を適切な緩衝液と混合して、サンプル溶液を形成する。
【0147】
工程5において、サンプル溶液を、固定されたレクチンを含有する固体支持体と接触させる。必要に応じて、このサンプル溶液を固体支持体と接触させる前に、この固体支持体を、サンプル緩衝液のみを用いて洗浄する。次いでこの糖分子を有するこのサンプル溶液を、適切な時間固体支持体とともにインキュベートする。必要に応じてコントロール溶液をまた、非特異的結合についての測定値として、少なくとも一部分の固体支持体とともにインキュベートする。
【0148】
工程6において、次いで、複合体化した糖分子を有するこの固体支持体を、好ましくは、適切な洗浄緩衝液、および適切なブロッキング緩衝液を用いて少なくとも1回洗浄する。工程7において、次いで、この支持体を第二の糖結合剤(因子)として、可溶化した標識したレクチンとともにインキュベートする。工程8において、適切な洗浄手順を好ましくは実施する。
【0149】
工程9において、標識したレクチン由来のシグナルを適切な検出デバイスを用いて検出する。例えば、標識が色素生産性であれば、この検出デバイスはCCD(電化結合素子)カメラであり得る。明確に、当業者は、レクチン上の標識のタイプによって適切な検出デバイスを選択し得る。
【0150】
本発明の好ましい実施形態に従って、以前に記載のように、標識は蛍光色素である。このような好ましい実施形態について、検出デバイスはまた、好ましくは、蛍光色素標識を励起させる適切な波長の光源、およびまたこの光源からの光を必要に応じてフィルターし、得られたシグナルをフィルターするための適切なフィルターセット、を備える。このようなフィルターは単色の光源(例えば、レーザーなど)を必要としないことに注意すべきである。各色素または蛍光色素の光標識化の可能性および効率性の補助因子が、以下に詳細に記載するように、好ましくは分析相において考慮される。
【0151】
GMIDカードの全体または少なくとも大部分の画像は、(例えば、複数の単一シグナルの検出とは対照的に)必要に応じて入手され得る。適切な検出デバイスの例としては、複数の「スポット」由来の複数のシグナルを用いて、GMIDカードの画像の少なくとも一部を得るための「スキャナー」が挙げられる。このようなデバイスは必要に応じて単一バンド(単一波長の光が検出される);二本のバンド(別々の波長の光が検出される);またはスペクトルデバイス(少なくとも2つの光、ただし好ましくは多数の波長の光が検出される)であり得る。
【0152】
工程10において、最も好ましくは、レクチンに特異的に結合するシグナルの適切な閾値を決定するため、そしてシグナル対ノイズ比を決定するため、などのために、1つ以上のコントロール「サンプル」由来の種々のシグナルを分析する。さらに、これらの種々のシグナルを、必要に応じて、種々のアッセイ由来の結果と比較して、例えば、アッセイの質を確認し得る。
【0153】
工程11において、必要に応じてそして好ましくは、例えば、バックグラウンドシグナルの差引きによって、およびレクチンに特異的に結合する閾値を比較することによって、シグナルを試験して、もしあれば、特定の結合のレベルを決定する。バックグラウンドノイズは、好ましくは平均ノイズ±標準偏差の関数として決定される。
【0154】
工程9〜11は、必要に応じて、そして好ましくは、例えば、画像データの形式で、シグナルを捕獲するプロセスを制御する;コントロールシグナルを分析する;そして実際のアッセイデータを得るためにサンプルシグナルを分析するためのソフトウェアプログラムで実施される。適切なソフトウェアプログラムの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:GeneToolsTM(BioRobotics Ltd.,United Kingdom);GenePix Pro 3.0TM(Axon Instruments Inc.)およびQuantArrayTM(GSI Lumonics Inc.)。あるいは、これらの工程は、フォームウェアおよび/またはハードウェア、またはそれらのいくつかの組み合わせで実施され得る。
【0155】
本発明の好ましい実施形態によって、これらの工程は好ましくは「スポット」のアレイをまず規定する工程を包含する。このようなアレイは、必要に応じて、そしてより好ましくは、自動的に規定され、そしてこの「スポット」由来の任意の特定のシグナルの予期される位置を決定するためのグリッドの規定を含む。次に、スポットの最初の位置は好ましくはこのグリッドに関して規定される。次いで、各々の個々のスポットを中心に集め、その後、好ましくはエッジ検出を実施して各スポットの境界を位置付ける。必要に応じて、スポットのサイズおよび形状の自由形式の決定;サイズおよび形状の固定形式の決定;あるいは固定サイズだが自由形状の決定プロセスに従って、エッジ検出を実施する。これらの工程のいずれかを自動的に実施し得るか、または手動で実施し得る。
【0156】
次に、各スポットのシグナルの強度を決定する。このような強度は好ましくは、例えば、検出デバイスによって検出される生のシグナルデータからのバックグラウンドシグナルの差引きによって、バックグラウンドシグナルおよびシグナル対ノイズ比に対して決定される。
【0157】
本発明を、その詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を例示するものであって本発明の範囲を限定する意図はない。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、低温殺菌したヤギミルク(AおよびB)、低温殺菌していないヤギミルク(CおよびD)、およびウシミルク(E)から得られた、糖分子同一性(GMID)カードを示す。
【図2】図2は、種々のリポ多糖サンプルから得られたGMIDカードの複製である。カードA〜Eは、それぞれ、LPS番号1、7、10、15および16に対応する。
【図3】図3は、着色したレクチンのセットを選択するためのアルゴリズムを示す、高レベル論理フローチャートである。
【図4】図4は、GMIDカードを用いてフィンガープリントを実行するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。
(発明の分野)
本発明は、一般的に、多糖を含む分子を分析するための方法に関し、より詳細には、レクチンのような糖結合因子の使用に基づいて多糖を分析するための方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
多糖は、互いにグリコシド結合を介して連結した単糖(monosaccharide)(糖(sugar))単位を含むポリマーである。これらのポリマーは、多糖の二次元構造として公知である、単糖部分単位の線状配列に関して描写され得る構造を有する。多糖はまた、その成分である単糖部分単位によって間隔を空けて形成された構造に関しても描写され得る。
【0003】
多糖を形成する単糖の鎖は、2つの異なる末端を有する。一方の端は、アルデヒド基を含み、そして還元末端として知られている。他方の端は、非還元末端として知られている。多糖鎖はまた、この鎖が連結される糖単位がヘキソースである場合、C1原子、C2原子、C3原子、C4原子、またはC6原子のうちのいずれかに連結され得る。さらに、所定の単糖は、2つより多くの異なる単糖に連結され得る。さらに、C1原子への連結は、α配置またはβ配置のいずれかであり得る。従って、炭水化物ポリマーの二次元構造および三次元構造の両方は、高度に複雑であり得る。
【0004】
多糖の構造決定は、糖生物学の発展のために基本的に重要である。糖生物学における研究は、ウイルス疾患および自己免疫疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病、慢性関節リウマチ、および異常細胞増殖(例えば、癌において生じるような増殖))に関与する、細菌細胞の壁合成、血液グリカン、増殖因子ならびに細胞表面レセプター構造に影響を与える抗生物質の同定および特徴付けのように種々の目的に関する。
【0005】
多糖はまた、コンタクトレンズ、人工皮膚、および補綴デバイスのための生体適合材料の開発に使用されている。さらに、多糖は、多数の非医療分野(例えば、製紙産業)において使用される。さらに、当然ながら、食品および医薬産業が、大量の種々の多糖およびオリゴ糖を使用する。
【0006】
上記の分野全てにおいて、改善された糖分析技術の必要性が存在する。糖分析情報は、例えば、品質管理、研究における構造決定のため、および構造−機能分析を実行するために有用である。
【0007】
多糖の構造的な複雑性によってその分析が妨げられていた。例えば、多糖は、温度独立機構で合成されると考えられている。従って、構造情報が無い場合、研究者らは、構築単位が今日知られているいずれかの多糖単位から選択されることを想定しなければならない。さらに、これらの単位は、合成の間に、例えば、スルフェート基の付加によって改変されているかもしれない。
【0008】
第2に、糖は、この鎖が連結される糖単位がヘキソースである場合、いずれかの炭素部分(例えば、C1原子、C2原子、C3原子、C4原子、またはC6原子)に連結され得る。さらに、C1原子への連結は、α配置またはβ配置のいずれかであり得る。
【0009】
第3に、糖は、分枝し得、これによってさらに、その構造ならびに同数および同一種類の糖単位を有する可能な構造の数が、複雑になり得る。
【0010】
第4の困難性は、多くの糖の間の差異が微細であるという事実によって示される。なぜなら、糖単位は、単にヒドロキシル基の位置によって別のものと異なり得る(エピマー)からである。
【0011】
このような糖結合因子の複数の使用は(基材に固定されようとおよび/または第2(可溶性)糖結合因子として使用されようと)、糖の「フィンガープリント」を提供することによって目的の炭水化物ポリマーを特徴付ける。次いで、このようなフィンガープリントは、炭水化物ポリマーに関するより多くの情報を得るために、分析され得る。不運なことに、炭水化物ポリマーフィンガープリントに関するデータの特徴付けおよび解析のプロセスは、他の生物学的ポリマー(例えば、DNAなど)に対してよりも、はるかに複雑である。特徴付けの目的のためのDNAサンプルへのDNAプローブの結合と異なり、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、必ずしも炭水化物ポリマー自体の成分の直接的な指標ではない。DNAプローブの結合は、DNAサンプル自体の配列に関する比較的に直接的な情報を提供する。なぜなら、適切な条件下で、DNAへのプローブの認識および結合は、明確に直接的なプロセスであるからである。従って、プローブ結合から得られたDNA「フィンガープリント」は、サンプル中のDNAの実際の配列に関する直接的な情報をもたらし得る。
【0012】
対照的に、炭水化物ポリマーへの因子の結合は、とうてい直接的ではない。前に記載したように、炭水化物ポリマーの二次元構造(配列)でさえも、DNAのものよりも、より複雑である。なぜなら、炭水化物ポリマーは、分枝し得るからである。これらの分枝は、ポリマーの三次元構造に明らかに影響を与え、ゆえに、結合因子に対する認識部位の構造に影響を与える。さらに、結合因子による炭水化物ポリマー上の結合エピトープの認識が、このエピトープを取り囲む分子の一部の「隣接部」によって影響され得る。従って、目的の炭水化物ポリマーへの因子の結合についてのこのような「フィンガープリント」データの分析は、例えば、DNAプローブ結合についてのものよりも、明らかにより困難である。
【0013】
この問題に対する有用な解決によって、炭水化物ポリマーを特徴付けるために、フィンガープリントを分析することを可能にする。このような分析は、多糖結合因子を炭水化物ポリマーとインキュベートする以前に記載したプロセスから得られる生のデータを、それ自体が情報を含むフィンガープリントに変換する必要がある。このフィンガープリントをまた、異なるセットの実験条件にわたって比較するために、および異なる型の糖結合因子について比較するために、標準化する必要がある。不運なことに、このような解決は、現在、利用可能ではない。
【0014】
これらの困難にもかかわらず、糖の構造分析のための多数の方法が、開発されている。例えば、PCT出願 WO93/24503は、単糖を還元末端でそのケト形態またはアルデヒド形態へと変換し、次いで、オリゴ糖鎖におけるこの単糖と次の単糖との間のグリコシド結合をヒドラジンを用いて切断することによって、単糖単位が、オリゴ糖の還元末端から逐次除去される方法を開示する。遊離の単糖は、オリゴ糖鎖から分離され、そしてクロマトグラフィー方法によって同定される。次いで、このプロセスは、全ての単糖が切断されるまで繰り返される。次いで、このプロセスは、すべての単糖が切断されるまで、反復される。
【0015】
PCT出願 WO93/22678は、それらの基本構造を仮定し、次いで、多数の配列決定ツール(例えば、グリコシダーゼ)から、最大量の構造情報を与えると予測されるツールを選択することによって未知のオリゴ糖を配列決定する方法を開示する。この方法は、オリゴ糖構造についてのいくつかの基本情報(通常、単糖組成)を必要とする。この方法はまた、配列決定試薬を用いた反応が高価でかつ時間がかかるという事実を例示し、それゆえ、これらの費用を削減する方法についての必要性が存在する。
【0016】
PCT出願 WO93/22678は、VLSIチップ上に固定されたモノリシックプローブアレイ(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)をプローブすることによって分子を検出するための方法を開示する。この刊行物は、固定された表面に多数のプローブが結合され得、そして分析物とのそれらの反応が、VLSIチップ上の論理回路を用いて種々の方法によって検出され得ることを教示する。
【0017】
欧州特許出願 EP 421,972は、オリゴ糖の一つの末端を標識し、標識されたオリゴ糖をアリコートに分け、各アリコートを異なる試薬混合物(例えば、グリコシダーゼの混合物)で処理し、異なる反応混合物をプールし、次いで、クロマトグラフィー方法を用いて反応産物を分析することによって、オリゴ糖を配列決定するための方法を開示する。N結合型グリカンは糖鎖がタンパク質に連結している点で共通の構造を有するので、この方法は、N結合型グリカンのみに有用である。O結合型グリカンはより変動し、そしてこの方法は、より大きな多様性をその基本構造に有するオリゴ糖には未だに適応されていない。
【0018】
それゆえ、多糖に結合する因子を同定するための正確で高スループットの方法を使用する、多糖を特徴付けるためのシステムおよび方法についての需要がある。
【0019】
(発明の要旨)
本発明は、所定の炭水化物ポリマーに結合する因子を迅速かつ正確に同定するための方法の発見に一部基づく。糖結合因子への炭水化物ポリマーの結合パターンに基づく、炭水化物ポリマーのフィンカープリントを作製する方法もまた、本発明によって提供される。
【0020】
1つの局面において、本発明は、炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法を特徴とする。炭水化物ポリマーを、表面上の予め決定された位置に付着した少なくとも1つの第1糖結合因子を含む表面と、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間の第1複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、この表面を、少なくとも1つの第2糖結合因子と、第1複合体と第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、この第1糖結合因子と第2糖結合因子を同定し、それによって炭水化物ポリマーを特徴付ける。
【0021】
炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する方法がまた、本発明によって提供され、この方法は、炭水化物ポリマーを第1糖結合因子と接触させる工程、この炭水化物ポリマーが糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程、炭水化物ポリマーを第2糖結合因子と接触させる工程、ならびにこの炭水化物ポリマーが第2糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程による。第1糖結合因子および第2糖結合因子の同定を使用して、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する。
【0022】
他に規定されない限り、本明細書中に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する当業者によって通常理解される意味と同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料に類似または等価な方法および材料が、本発明の実施および試験に使用され得るが、適切な方法および材料は、以下に記載される。本明細書中に言及される全ての刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、その全体が参考として援用される。相反する場合、本明細書(定義を含む)が支配する。さらに、材料、方法、および実施例は、例示のみであり、そして限定を意図しない。
【0023】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明白である。
【0024】
(発明の詳細な説明)
糖結合因子に関して炭水化物ポリマーの結合状態を説明する情報の表示を体系的に整理することによって、炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法が、本発明によって提供される。
【0025】
結合状態を評価するために、炭水化物ポリマーを、表面上の予め決定された位置に付着された少なくとも1つの糖結合因子を含む表面に添加する。炭水化物ポリマーをこの表面と、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間の複合体の形成を可能にする条件下で接触させる。次いで、所望する場合、この表面を洗浄して、結合していない炭水化物ポリマーを除去し得る。次いで、この表面を第2の糖結合因子と、第1複合体と第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で、接触させる。第2因子は、好ましくは、検出可能な標識を保有し、第2複合体の検出を可能にする。予め決定された結合因子の位置に対応する基材上の位置における第2複合体の検出は、第1結合因子および第2結合因子を炭水化物ポリマーに結合する因子として同定することを可能にする。第1結合因子および第2結合因子の検出は、炭水化物ポリマーに関する構造的な情報を提供する。
【0026】
この方法は、最初に炭水化物ポリマーを表面と接触させること、次いで、検出可能な標識を添加することによって記載されているが、この順序が必須ではないことが理解される。従って、いくつかの実施形態において、第2因子を、炭水化物ポリマーと混合し、そしてこの混合物を、表面に添加する。
【0027】
いくつかの実施形態において、複数の糖結合因子を、表面に結合させる。同様に、複数の第2の検出可能な糖結合因子を、使用し得る。好ましい実施形態において、複数の第1糖結合因子および複数の第2糖結合因子の両方を、使用する。
【0028】
従って、種々の実施形態において、少なくとも5、10、15、25、30、もしくは50またはそれより多くの第1糖結合因子を、表面に付着させる。好ましくは、第1糖結合因子の各々を、基材の空間的に別個の領域に付着させる。
【0029】
他の実施形態において、少なくとも5、10、15、25、30、もしくは50またはそれより多くの第2糖結合因子を使用する。好ましくは、第2糖結合因子の各々は、それらに識別可能な標識(すなわち、1つの第2糖結合因子を別の第2糖結合因子と識別する標識)が結合している。
【0030】
本明細書中に使用される場合、「炭水化物ポリマー」は、多糖成分を有する任意の分子を含む。例としては、多糖、糖タンパク質、および糖脂質が挙げられる。炭水化物ポリマーとしては、2つ以上の連結した単糖残基を含む任意の多糖分子が挙げられるが、ほとんどの実施形態において、炭水化物ポリマーは、10、25、50、1000、もしくは10,000またはそれより多くの単糖単位を含む。所望される場合、炭水化物ポリマーを、糖切断因子を用いた消化後に、表面に添加し得る。あるいは、炭水化物ポリマーを、表面に添加し、この表面に結合した第1多糖結合因子への結合を可能にし、次いで、糖切断因子を用いて消化し得る。
【0031】
一般的に、多糖に結合する任意の因子が、第1または第2の糖結合因子として使用され得る。当該分野で公知のように、糖に結合する多くの因子が記載されている。因子の1つのクラスはレクチンである。これらのタンパク質の多くは、特定の短いオリゴ糖配列に特異的に結合する。因子の第2のクラスは、糖構造を特異的に認識する抗体である。糖結合因子の第3のクラスは、炭水化物残基に結合するタンパク質である。例えば、グリコシダーゼは、糖鎖中のグリコシド結合を切断する酵素である。いくつかのグリコシダーゼは、特定のオリゴ糖配列を特異的に認識し得る。酵素の別のクラスはグリコシルトランスフェラーゼであり、この酵素は糖鎖を切断するが、さらに、糖ユニットを新たに形成された末端の1つに転移させる。
【0032】
本出願の目的のために、用語「レクチン」はまた、動物種由来の糖結合タンパク質(例えば、「哺乳動物レクチン」)を包含する。従って、DNAまたはタンパク質のような炭水化物ポリマーは、より詳細に研究されるべき重要な生物学的機能を明らかに有する。
【0033】
糖結合因子は、好ましくは、必須配列特異的因子である。本明細書中で用いる場合、「必須配列特異的因子」は、糖に結合し得る因子を意味する。この結合は、通常、配列特異的である。すなわち、この因子は、単糖ユニット特定の配列にのみ結合する。しかし、この配列特異性は完全ではないかもしれない。なぜなら、この因子は、他の無関連配列(例えば、1つ以上の糖が欠失、変更、または挿入された単糖配列)に結合し得るからである。この因子はまた、所定の配列の単糖に加えて、1つ以上の関連配列または単糖に結合し得る。
【0034】
必須配列特異的因子は通常、レクチン、糖特異的抗体、またはグリコシダーゼもしくはグリコシルトランスフェラーゼのようなタンパク質である。
【0035】
糖結合因子の例として、以下の植物から単離されたレクチンが挙げられる:Conavalia ensiformis、Anguilla anguilla、Triticum vulgaris、Datura stramonium、Galanthus nivalis、Maackia amurensis、Arachis hypogaea、Sambucus nigra、Erythrina cristagalli、Lens culinaris、Glycine max、Phaseolus vulgaris、Allomyrina dichotoma、Dolichos biflorus、Lotus tetragonolobus、Ulex europaeus、およびRicinus communis。
【0036】
他の生物学的に活性な炭水化物結合化合物として、サイトカイン、ケモカイン、および増殖因子が挙げられる。これらの化合物はまた、本特許出願についてはレクチンであるとみなされる。
【0037】
グリコシダーゼの例として、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、N−アセチルヘキソサミニダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ、α−フコシダーゼなどが挙げられる。これらの酵素のいくつかは、それらの単離の供給源に依存して、異なる特異性を有し得る。上記の酵素は、例えば、Oxford Glycosystems Ltd.、Abingdon、OX14 1RG、UK、Sigma Chemical Co.、St.Louis、Mo.、USA、またはPierce、POB.117、Rockford、61105 USAから市販されている。
【0038】
糖結合因子はまた、切断因子でもあり得る。「切断因子」は、その認識配列で糖鎖を切断する必須配列特異的因子である。代表的な切断因子は、グリコシダーゼ(エキソグリコシダーゼおよびエンドグリコシダーゼを含む)、およびグリコシルトランスフェラーゼである。しかし、グリコシド結合を切断し得る化学的因子もまた、それらが必須配列特異的である限り、切断因子として作用し得る。用語「切断因子(cleaving agent)」または「切断因子(cleavage agent)」は、本明細書の文脈内で、用語「切断し得る必須配列特異的因子」と同義語である。
【0039】
切断因子は、認識配列において作用し得る。本明細書中で用いる場合、「認識配列」は、必須配列特異的因子により認識される単糖の配列である。通常、認識配列は、2〜4の単糖ユニットを含む。認識配列の例は、Archis hypogaeaから精製されるレクチンにより認識されるGal β1−3 GalNAcである。必須配列特異的因子により特異的に認識される場合、本開示の目的のために、単一の単糖は、認識配列として規定され得る。
【0040】
種々の必須配列特異的因子のための反応条件は、当該分野で公知である。あるいは、当業者は、種々の反応条件下で各必須配列特異的因子を用いた、それらの結合活性を測定する一連の試験を容易に実施し得る。有利なように、特定の必須配列特異的因子が反応する反応条件、および不活性状態を維持する条件の知見は、いくつかの必須配列特異的試薬が存在する反応を制御するために用いられ得る。例えば、第2および第3の配列特異的因子は、この反応に同時に添加され得るが、反応条件の変化を通して、第2の必須配列特異的因子のみが活性であることを可能にする。次いで、反応条件におけるさらなる変化は、第2の必須配列特異的因子の不活性化および第3の必須配列特異的因子の活性化のために選択され得る。反応条件のいくつかの例示的な例を以下の表1に列挙する。表1に列挙されるpHおよび温度データに加えて、他の因子(例えば、Znのような金属の存在、Mn、Ca,Na(例えば、塩化ナトリウム塩)のようなカチオンの塩)が、最適な反応条件または特定の必須配列特異的因子が活性であり、他の因子が不活性である条件を見出すために吟味され得る。
【0041】
(表1:いくつかの必須配列特異的因子の反応条件)
【0042】
【表1】
記号は、外部条件によって分離可能な酵素の群を表わす。Diversa Corp.は、種々のpHおよび温度において広範な種々の活性を有する好熱性エンド/エキソグリコシダーゼを製造している。
【0043】
第1糖結合因子は、当該分野で認識されている任意の方法を用いて固定され得る。例えば、固定化は、アミノ、カルボキシ、ヒドロキシル、またはチオール基のようなタンパク質の官能基を使用し得る。例えば、ガラス支持体が、上記のPCT公開に記載されるように、エポキシシランとの反応によって、エポード(epode)基で官能基化され得る。このエポード基は、アミノ基(例えば、リジン残基の遊離ε−アミノ基)と反応する。別の機構は、電位計物質(例えば、金)との表面の変換に存する。これはまた、上記PCT公開に記載されている。このような物質は、チオール基との安定な結合体を形成するので、タンパク質は、システイン残基の遊離チオール基によって直接的に、このような物質に連結され得る。あるいは、チオール基は、従来の化学によってか、または1以上のチオール基および遊離アミノ基と反応する基を含む分子(例えば、システインのN−ヒドロキシルスクシンイミジルエステル)との反応によって、タンパク質に導入され得る。また、チオール切断可能な架橋剤(例えば、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))が、タンパク質のアミノ基と反応され得る。次いで、スルフヒドリル剤を用いた還元は、架橋剤の遊離チオール基を露出させる。
【0044】
第2の検出可能な標識に取り付けられた標識は、検出されるかまたは検出され得る任意の標識であり得る。適切な標識の例として、例えば、色素標識、放射標識、蛍光標識、およびビオチン化標識が挙げられる。従って、標識は、例えば、着色したレクチン、蛍光レクチン、ビオチン標識レクチン、蛍光標識、蛍光抗体、ビオチン標識抗体、および酵素標識抗体であり得る。好ましい実施形態において、標識は、色素標識である。用語「色素結合因子」は、本明細書中で用いる場合、糖に結合し、そして明確な色か、そうでなければ検出可能なマーカーを有し、その結果、糖に結合した後、その糖が色または他のマーカーを獲得する全ての因子を含む。内在性の、可視範囲で容易に観察可能な色を有する化学構造に加えて、用いられる他のマーカーとして、蛍光基、ビオチンタグ、酵素(着色した生成物の形成を生じる反応に用いられる酵素)、磁気マーカーおよび同位体マーカーなどが挙げられる。前述の検出可能なマーカーの列挙は、例示の目的のみのためであり、限定または網羅することを意図しない。同様の文脈において、本明細書中で用いる場合(例えば、上述の方法の工程(e)の文脈において)、用語「色」はまた、任意の検出可能なマーカーを含む。
【0045】
標識は、当該分野で公知の方法を用いて第2糖結合因子に取り付けられ得る。標識として、糖または必須配列特異的因子に取り付けられた、その機能を妨害しない任意の検出可能な基が挙げられる。標識は、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼのような酵素であり得る。原則として、グルコースオキシダーゼおよびβ−ガラクトシダーゼのような酵素もまた、使用され得る。次いで、糖が、このような酵素と反応する単糖単位を含む場合、改変され得るということを考慮しなければならない。さらに、使用され得る標識としては、蛍光標識(例えば、フルオレセイン、テキサスレッド(Texas Red)、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、ローダミン、ナイルレッド(Nile−red)、テトラメチル−ローダミン−5−イソチオシアネート、1.6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、シス−パリナリン酸(cis−Parinaric acid)、フィコエリトリン(Phycoerythrin)、アロフィコシアニン(Allophycocyanin)、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、Hoechst 33258、2−アミノベンズアミドなど)が挙げられる。さらなる標識としては、電子高密度金属(electron dense metal)(例えば、金)、リガンド、ハプテン(例えば、ビオチン)、放射性標識などが挙げられる。
【0046】
第2糖結合因子は、酵素標識を用いて検出され得る。酵素標識の検出は、ELISAの分野および酵素検出が慣用的に使用される他の技術分野で周知である。酵素は、例えば、Pierceのような会社から市販されている。
【0047】
いくつかの実施形態において、標識は、蛍光標識を用いて検出される。蛍光標識は、特定の波長での励起および異なる波長での検出を必要とする。蛍光標識のための方法は当該分野で周知であり、そして多くの論文および教科書が刊行されている。この議題についての刊行物の選択は、Pierceの1994年度カタログのO−124〜O−126頁に見出される。蛍光標識は、SIGMAのような会社または上記のPierceカタログから市販されている。
【0048】
第2糖結合因子はそれ自体、炭水化物部分および/またはタンパク質を含む。タンパク質および糖への標識のカップリングは当該分野で周知の技術である。例えば、糖を蛍光標識または放射性標識で標識するための市販のキットは、Oxford Glycosystems,Abingdon,UKから入手可能であり、タンパク質を標識するためのそれらの使用のための試薬および説明書は、上記のPierceカタログから入手可能である。
【0049】
カップリングは、通常、官能基(例えば、ヒドロキシル基、アルデヒド基、ケト基、アミノ基、スルフヒドリル基、カルボン酸基など)を使用することによって実施される。これらの基と反応する多数の標識(例えば、蛍光標識)が、市販されている。さらに、一方の側で標識と反応し、そして他方でタンパク質または糖と反応する二重官能性架橋剤が、用いられ得る。架橋剤の使用は、タンパク質または糖の機能の喪失を回避するために有利であり得る。
【0050】
標識は、当該分野で公知の方法を用いて検出され得る。いくつかの検出方法は、上記のWO93/22678(この開示は、その全体において本明細書中に援用される)に記載されている。本発明の特に適切な方法は、上記刊行物中に記載されているCCD検出方法である。この方法は、特定の振動数で光を吸収し、それによりVLSI表面への試験光源の通過をブロックし、その結果、CCDセンサが、標識剤が結合した領域における減少した光量を検出する標識と組み合わせて、使用され得る。この方法はまた、このような標識が励起振動数にて光を吸収するという事実を利用する蛍光標識とともに使用され得る。あるいは、CCDセンサは、励起後に、蛍光標識の放射を検出するために使用され得る。励起光からの放射シグナルの分離は、異なる波長に対して異なる感度を有するセンサを使用することによってか、または時間的な分離によってか、あるいはその両方の組合せによってかのいずれかで達成され得る。
【0051】
いくつかの実施形態において、本方法はさらに、第1糖結合因子および糖結合因子の1つ以上の画像を獲得する工程を包含する。この情報は、例えば、写真またはデジタル画像として保存され得る。あるいは、第1および第2の結合画像により提供された情報は、データベースに保存され得る。
【0052】
本発明はまた、複数の複合体を含む基質を含む。各複合体は、基質の所定の位置に結合した第1糖結合因子を含む。この基質はまた、第1糖結合因子に結合した糖および/または検出可能な第2糖結合因子を必要に応じて含む。いくつかの実施形態において、基質は、所定の順番で、糖または糖配列もしくはフラグメントの複数の可視的な表示か、そうでなければ検出可能なマーカーの表示を含む固体支持体の形態で提供される。
【0053】
所望の場合、複数の第1糖結合因子を含む基質は、キットの形態で提供され得る。本発明の方法を用いる診断手順は、診断的な研究所、実験的な研究所、開業医、または一私人により実施され得る。本発明は、これらの設定で用いられ得る診断キットを提供する。特定の炭水化物ポリマーの存在または非存在は、糖結合因子と反応するそのパターンにより明らかにされる場合、提供されるサンプルにおいて明らかにされ得る。サンプルは、例えば、個々のサンプルまたは他のサンプルから獲得される臨床サンプルであり得る。
【0054】
各キットは、糖結合因子またはその手順を特異的にする因子を必ず含む。試薬は、好ましくは、在庫保存に適切な、試験が実施される場合、後の交換または反応培地中への添加に適切な固体形態または液体緩衝液で提供される。適切な包装が提供される。このキットは、必要に応じて、この手順に有用なさらなる成分を提供し得る。これらの任意の成分として、緩衝液、捕捉試薬、展開試薬、標識、反応表面、検出のための手段、コントロールサンプル、説明書、および解析情報が挙げられる。
【0055】
キットは、必要に応じて、検出可能な第2糖結合因子を含み、そして所望の場合、この第2の結合因子を検出する試薬を含み得る。複数の第1糖結合因子は、好ましくは、基質および検出可能な第2糖結合因子の所定の位置に取り付けられる。他の実施形態において、キットは、基質およびこの基質に取り付けられ得る第1糖結合因子、ならびに第2糖結合因子と共に提供される。
【0056】
(炭水化物ポリマーのフィンガープリントの作製)
上記の方法および試薬は、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製するために用いられ得る。本明細書中で用いる場合、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭水化物ポリマーと複数の糖結合因子(scattered−binding agent)との結合状態についての情報の寄せ集めである。いくつかの実施形態において、フィンガープリントは、糖結合因子による炭水化物ポリマーへの結合の存在の検出の数字上の表示である。
【0057】
炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭水化物ポリマーと第1糖結合因子とを接触させ、そして炭水化物ポリマーがこの糖結合試薬に結合するか否かを決定することにより、作製され得る。炭水化物ポリマーはまた、第2糖結合因子と接触され、そしてこの第2の結合因子が炭水化物ポリマーに結合するか否かに関する決定がなされる。
【0058】
炭水化物ポリマーは好ましくは、少なくとも5つの糖結合因子と接触され、そしてこの炭水化物ポリマーが少なくとも5つの糖結合試薬の各々と結合するか否かに関する決定がなされる。好ましい実施形態において、少なくとも10、15、20、または25またはそれ以上の因子との炭水化物ポリマーの結合が決定される。
【0059】
好ましい実施形態において、第1および第2糖結合因子の結合が、少なくとも1つの第1糖結合因子を含む表面(第1の因子はこの表面の所定の位置に取り付けられている)を提供し、この表面と炭水化物ポリマーを、第1糖結合因子と炭水化物ポリマーとの間で第1の複合体の形成を可能にする条件下で接触させることにより決定される。非結合ポリマーは所望の場合除去され、そしてこの表面は、少なくとも1つの第2糖結合因子と、第1の複合体と第2糖結合因子との間で第2の複合体の形成を可能にする条件下で接触される。次いで、第1および第2糖結合因子が同定され、そして作成された情報は、炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントを提供する。複数の第1および/または第2糖結合因子を含有することにより、炭水化物ポリマーの詳細なフィンガープリントを作成することが可能である。当然、炭水化物ポリマーへの第1または第2糖結合因子の結合の非存在はまた、多糖について作成されるフィンガープリントに寄与することは、当業者に明らかである。
【0060】
第2の糖因子は、好ましくは、検出可能な試薬を含む。第2糖結合因子が標識されている場合、第2の標識の同定は、第2糖結合因子の同定を決定する。第2の標識の基質上の位置はまた、第1糖結合因子の同定を明らかにする。
【0061】
本発明を、以下の実施例でさらに説明するが、この実施例は添付の特許請求の範囲を限定しない。
【0062】
(実施例1)
(第1および第2の配列特異的因子として抗体を用いる糖分子の分析)
本実施例は、本発明に従い糖分子を分析する技術をさらに説明する。第1および第2の配列特異的因子として、抗体を用いる。以下の表は、説明の目的のためにHSおよびNSと命名された2つの異なる糖を用いる反応の結果を列挙する。糖の構造は、以下のようなものである。
【0063】
【表2】
表2は、糖と第1および第2の必須配列特異的因子(T抗原、Lewisx(Lex)、またはLewisb抗原(Leb)に対する抗体)との間の反応の結果を列挙する。第1必須配列特異的因子をマトリクス、好ましくは固相微粒子に固定する。第2必須配列特異的因子を蛍光試薬(すなわち、ナイルレッド、緑色)を用いて標識する。さらに、糖の還元末端を、第2必須配列特異的因子として作用する、ナイルレッドまたは緑色と明確に区別可能な標識を用いて標識する。表2は、糖HSについての反応を列挙し、表3は、糖NSについての反応を列挙する。
【0064】
【表3】
ここで、要約すると、第1必須配列特異的因子として示される抗体(列)を使用する場合、以下のシグナルが糖HSまたはNS(行)の反応において検出可能である。
【0065】
【表4】
標識を検出し、各反応について結果を記録した後、第3必須配列特異的因子を添加する。この実施例において、第3必須配列特異的因子との2つの独立した反応を用いる。ここで、糖分子を保持する固相を、α1−2フコシダーゼまたはエキソβガラクトシダーゼのいずれか(第3必須配列特異的因子)との反応のために、有利にアリコートに分割する。あるいは、3つのセットの第1および第2の必須配列特異的因子との反応を実施し得る。
【0066】
(表5:)
(α1−3,4フコシダーゼ適用後の反応:)
【0067】
【表5】
(表6:)
(D.pneumoniae(EC3.2.1.23カタログ番号1088718(Boehringer Mannheim,68298 Mannheim,Germanyより))由来のExoβガラクトシダーゼ適用後の反応)
【0068】
【表6】
(表7:)
(αl−2フコシダーゼ適用後の反応:)
【0069】
【表7】
上記に説明される集められたデータから、糖分子同一性(GMID)カードをここで作製し得る。そのような情報の例を、糖HSに関して表8にそして糖NSに関して表9に列挙する。
【0070】
(表8)
【0071】
【表8】
(表9)
【0072】
【表9】
第2および第3の本質的に配列特異的な因子の同一性は、このようなデータリストに開示される必要はない。比較目的のためには、特定のコード数(上記の表中の1、2または3)が常に試薬の特定の組合せを同定することが十分である。
【0073】
(実施例2)
(還元末端の連続標識のためのスキーム)
上記の説明および実施例に示されるように、本発明の方法は、その還元末端で探索されるべき糖の標識を有利に使用する。しかし、この標識技術は、糖内の部位まで拡張され得、従ってより多くの情報を提供することによって本発明の方法に寄与する。エンドグリコシダーゼを用いた切断、続く還元末端の標識によって鎖内の糖の標識が可能であるように、それゆえ糖鎖内に標識還元末端を得ることが可能である。還元末端は、本来の還元末端と比較して、第1、第2および第3の本質的に配列特異的な因子に対する結合部位に必然的に接近するので、内部に作製された標識還元末端の使用は、さらなる情報を提供する。さらに、以下にさらに記載される方法に従う還元末端の連続標識によって、探索される糖鎖上の連続した順序において異なるグリコシダーゼに関する部位を同定することが可能である。
【0074】
還元末端を連続標識する方法は、ここに、以下の工程でより詳細に記載される:
(1.ブロッキング:)
還元末端を有する多糖を、NaBH4/NaOHを含む溶液(pH 11.5)中でインキュベートする。
【0075】
この処理は、還元末端をブロックし、その結果、ここで多糖は還元末端(RE)を欠く。
【0076】
(2.露出:)
工程1の多糖を、エンドグリコシダーゼを用いて処理する。このエンドグリコシダーゼに対する認識部位が多糖内に存在する場合、新規の還元末端が多糖の切断によって作製される。この溶液はここで、2つの糖:エンドグリコシダーゼ部位において新規に露出されるREを有するフラグメントおよびREがブロックされる第2のフラグメントを含む。
【0077】
(3:還元末端の標識)
この反応を、例えば、2−アミノベンズアミド(Oxford Glycosystems Inc.(1994年、カタログ62頁)による糖の標識のためのキット形態で市販される)を用いて実行し得る。高濃度の水素かつ高温度(H+/T)条件下での反応、続く還元が完了した後、この混合物は2つのフラグメントを含み、これらのうちの1つはその還元末端で標識されているが、もう一方は、還元末端がブロックされているという事実に起因して標識されないままである。
【0078】
還元末端を標識するための別の方法は、還元的アミノ化による方法である。アリールアミン基を含む蛍光化合物を、還元末端のアルデヒド官能性と反応させる。次いで、得られたCH=N二重結合を、例えば、水素化ホウ素ナトリウムを用いてCH2−N単結合に還元する。この技術は、Glyko Inc.、Novato、CA、USAから入手可能なFACE(フルオロホア(fluorophore)補助の炭水化物電気泳動)キットの一部であり、例えば、Glyko、Inc.カタログ8〜13頁(これは本明細書中に参考として援用される)に詳述される。
【0079】
(4.第2のエンドグリコシダーゼとの反応)
ここで、第2のエンドグリコシダーゼを糖混合物と反応させ得る。新規の反応混合物はここで、3つのフラグメントを有する。1つ目はインタクトな還元末端を有し、2つ目は2−アミノベンズイミドによって標識される還元末端を有し、そして3つ目はブロックされた還元末端を有する。
【0080】
(実施例3)
(本質的に配列特異的な因子との一連の反応からの構造的情報の誘導)
本実施例は、本発明の方法、すなわち上記にさらに記載されるような反応セットを用いることによる糖の構造に関するデータの作製をさらに例示する。本実施例はさらに、配列情報が上記の反応セットから推定され得ることを実証する。
【0081】
いくつかの場合、使用される試薬は、刊行されたデータ(例えば、カタログから取得)から予想されるように正確には反応しなくてもよい。例えば、以下にさらに記載されるようなレクチンシロバナヨウシュチョウセンアサガオ凝集素が、結合GluNacとしてSigmaカタログに列挙される。しかし、以下にさらに詳述される反応において、DSAは、クマリン120誘導体化Glc(Glc−AMC)に結合することが示される。これらの化合物間の構造的類似性に起因して、Glc−AMCは全ての目的に対してGlcNacと同様に作用するようである。さらに、以下の結果から明らかなように、使用されるエンドガラクトシダーゼは、ガラクトース残基だけでなく、残りの糖に対してGlc−AMC基を連結する結合もまた切断する。
【0082】
本発明の実施で使用される本質的に配列特異的な因子が、いくつかの場合、刊行された材料(例えば、カタログ)中で提供されるこれらの因子の特異性と異なる良好な特異性を有し得ることが明らかである。このような反応を、既知の構造の糖を用いて本発明の方法を使用することによって、迅速に同定し得る。次いで見出された結果を予想された結果と比較し得、そしてその差異によって、使用される本質的に配列特異的な因子の種々の特異性の同定を可能にする。次いで、本質的に配列特異的な因子の良好な特異性における刊行されたデータからのこのような多様性を、これらの因子を用いた未知の糖構造のさらなる分析のために貯蔵し得る。
【0083】
以下に、本発明の方法を、末端標識五糖(pentasaccharide)および種々のレクチンおよびグリコシダーゼを用いて例示する。五糖は、構造Gal−β(1,4)[Fuc−α(1,3)]−GlcNAc−β(1,3)−Galβ(1,4)−Glcを有する。五糖は、GluNAc位で分枝し、それぞれ3位および4位において五糖に結合したフコースおよびガラクトースを有する。五糖を、その還元末端(Glu)で、クマリン−120(7−アミノ−4−メチルクマリン、例えば、Sigma、カタログ番号A9891から入手可能)を用いて標識する。カップリング反応を、アリールアミン官能基を使用することによって、還元末端の標識について上記されたように実施し得る。クマリン−120は、312nm励起される場合、青色蛍光を発する。第1および第2の本質的に配列特異的な因子として、エンド−β−ガラクトシダーゼ(EG,Boehringer Mannheim)およびエキソ−1,3−フコシダーゼ(FD,New England Biolabs)を使用する。両試薬に関する反応条件は、エキソ−1,3−フコシダーゼに関するNEBカタログ中に記載されるような条件である。
【0084】
3つの反応を実行した。第1は、フコシダーゼ(FD)およびエンド−ガラクトシダーゼ(EG)を含み、第2はFDのみを含み、そして第3はEGのみを含んだ。酵素を欠く第4の反応は、コントロールとして働いた。
【0085】
酵素が糖を消化したことを確認するために、種々の反応を、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いてサイズ分離する。
【0086】
分離後、TLCプレート上の糖を、プレートを紫外線光に対して曝露することによって検出し得る。この結果を、以下の例示に示す。
【0087】
【表10】
反応4において、グリコシダーゼを添加せず、その結果、糖はインタクトでありかつプレート上で小さい距離のみ移動する。反応2のフラグメントは、分子量が2番目であるが、反応1および3のフラグメントは、等しいように見える。これらのデータから、糖上のグリコシダーゼ部位の配列は、FD−−EG−−還元末端(クマリン標識)であると結論付けられ得る。
【0088】
ここで上記の五糖を、上記にさらに記載されるような反応セットによって試験する。第1および第2の本質的に配列特異的な因子として、レクチンを使用した。レクチン(Anguilla Anguilla凝集素(AAA)カタログ番号L4141、Arachis Hypogaea凝集素(PNA)カタログ番号L0881、Ricinus communis凝集素(RCA I)カタログ番号L9138、レンズマメ(Lens Culinaris)凝集素(LCA)カタログ番号L9267、アラブスプレカトリウス(Arabs Precatorius)凝集素(APA)カタログ番号L9758)は、Sigmaから入手可能である。レクチンはまた、他の企業から入手可能である。例えば、RCA Iは、Pierce(カタログ番号39913)から入手可能であり得る。レクチンを、ニトロセルロースフィルター上にブロッティングすることによって固定化する。
【0089】
反応緩衝液は、lmM CaClおよび1mM MgClを有するリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)である。レクチンの結合後、このフィルターを反応緩衝液中の1%BSAを用いてブロックした。コントロールとして、レクチンなしおよび固定化タンパク質として10μg BSAを含む反応を使用した。
【0090】
反応結果を表10に示す。プラス(+)は、312nmの蛍光の存在を示し、これは、クマリン標識還元末端の存在を示す。表中の番号1〜4は、上記に定義されるような反応を示す。
【0091】
(表10)
【0092】
【表11】
表10(反応4−コントロール)に列挙されるような結果から、レクチンAAA、PNA、DSAおよびRCA−Iが糖に結合することは明らかである。従って、フコース、Gal(1−3)GlcNAc、GlcNAcおよびガラクトース/GalNAcは、糖の中に存在しなければならない。なぜなら、これらは、AAA、PNA、DSAおよびRCA−Iによって認識されるそれぞれの糖構造であるからである。上記のグリコシダーゼフコシダーゼおよびエンド−β−ガラクトシダーゼが、糖の中の切断配列を認識することはさらに明らかである。これらの配列は、それぞれ、Fuc(1−3/1−4)GlcNAcおよびGlcNAcβ(1−3)Galβ(1−3/4)Glc/GlcNAcである。
【0093】
両方のグリコシダーゼ部位がフコース糖と還元末端との間に位置することがさらに推測され得る。なぜなら、AAA(これはフコースに結合する)を固定化されたレクチンとして使用する場合、上記末端は、いずれかのグリコシダーゼによって切断されるからである。一方、DSAとの反応により、GlcNAc単糖がグリコシダーゼ部位と還元末端との間に位置するか、またはGlcが直接クマリンに結合するかのいずれかの推測が可能になる。なぜなら、DSAを固定化因子として使用する場合、いずれのグリコシダーゼも還元末端を切断しないからである。
【0094】
さらに、固定化因子としてのPNAとの反応は、エンド−βガラクトシダーゼを使用する場合(反応1および3)のみ、還元末端が切断されることを示す。これは、エンド−βガラクトシダーゼ部位が、PNAに関する部位と還元末端との間に位置することを示す。一方、フコシダーゼ部位は、PNA部位と糖のもう一方の末端との間に位置しなければならない。
【0095】
上記のデータを考慮すると、ここで以下のように糖の配列を提案することが可能になる:
【0096】
【化1】
上記の実験は、本発明の方法が比較的少ない反応に基づいて種々のデータ(配列情報を含む)をもたらし得ることを明らかに実証する。配列情報におけるいくつかの詳細は、上記の糖におけるフコースとGlcNAcとの間の(1−3)または(1−4)連結のように、完全でないかもしれない。五糖の単糖組成が既知であった場合、上記の分析は上記の五糖の全ての詳細をもたらしたであろう。それにもかかわらず、単糖組成のデータの非存在下でさえ得られた情報は、先行技術の方法と比較して非常に正確である。
【0097】
(実施例4)
(部分的または完全な配列情報の誘導)
本発明の方法は、自動化に適している。従って、上記の工程(例えば、実施例1〜3)を、混合、アリコート化、反応および検出のための自動化システムを用いて実行し得る。次いで、このような自動化プロセスによって得たデータを、部分的または完全な配列情報に対するマッピング情報を「崩壊(collapse)」させるために、さらに処理し得る。このようなデータ処理のための方法を、以下にさらに詳細に記載する。
【0098】
すべてのデータを収集した後、比較を、グルコシダーゼの添加の前に反応物から得た検出シグナルとグルコシダーゼの添加(およびグルコシダーゼとの反応)の後に得たシグナルとの間で行う。グルコシダーゼとの反応後に消失したこれらのシグナルを、マークする。これは、これらのシグナルのリストを調製することによって有利に行われ得、このリストを、本明細書中以降、第1リストとしていう。多糖上の2つの部位の同一性を、ここで、各々のこのようなデータ入力について達成し得る。(必要に応じて、仮想的な)アレイにおける位置は、第1の本質的に配列特異的な因子を示す。シグナルを、グリコシダーゼとの反応の前に検出した場合、その因子についての認識部位は、多糖中に存在しなければならない。シグナル(例えば、第2の本質的な配列特異的因子に関連するシグナル)の消失は、ここで、グリコシダーゼが第1および第2の本質的に配列特異的因子の認識部位の間を切断することを示す。従って、認識部位の配列は、(第1の本質的な配列特異的因子)−(グリコシダーゼ)−(第2の本質的に配列特異的因子)である。還元末端についてのシグナルが、グリコシダーゼを用いる消化の後になお存在する場合、還元末端に関する認識配列の相対的順序が、確立され得る;そうでなければ、両方の可能性(a−b−cおよびc−b−a)を考慮しなければならない。例示の目的のために、用語「第1の本質的に配列特異的因子の認識部位」を、以下の「第1認識部位」と示し、用語「第2の本質的に配列特異的因子についての認識部位」を、「第2認識部位」と示し、そして用語「グリコシダーゼについての認識部位」を、「グリコシダーゼ」と示す。
【0099】
ここで、上記の型の認識部位の三つ組の第2のリスト(1型の三つ組)を作製することが、可能である:
(第1認識部位)−(グリコシダーゼ)−(第2認識部位)。
【0100】
同様に、第3のリスト(2型三つ組)を、ここで、(必要に応じて、仮想的な)アレイ位置に対して作製し得、ここで、すべてのシグナルは、グリコシダーゼの添加後に残存する:
(グリコシダーゼ)−(第1認識部位)−(第2認識部位)。
【0101】
明らかに、十分な数の三つ組は、その配列に関して分子を規定する、すなわち、見出されたすべての三つ組を含む糖の1つの配列が唯一存在し得る。より少数の三つ組は、分子長上の情報が利用可能である場合に必要とされ得る。必要な三つ組の数は、分子の総糖含有量が既知である場合に、さらに少なくあり得る。糖分子量および総単糖含有量の両方を、当業者に周知の先行技術の方法から導き得る。
【0102】
配列情報を得るプロセス、すなわち、三つ組を認識部位のマップへ崩壊させるプロセスを、以下に記載する。
【0103】
三つ組認識部位の第2リストおよび第3リストを、同一性(3つの認識部位の3つが同一)、高類似性(3つの認識部位の2つが同一)、および低類似性3つの認識部位の1つが同一)について評価する。例示の目的のために、ここで、多糖が、直線状の多糖(例えば、グリカンヘパリンの糖部分)であると仮定する。
【0104】
次いで、上記の第2および第3リストを使用して、これらから三つ組のリストのセットを調製する。ここで、このリストのセット中の各リストは、同じグリコシダーゼ認識配列を共有する三つ組を含む。特定のグリコシダーゼ認識配列を含有するすべての三つ組を第2のグリコシダーゼ認識配列を含有するすべての三つ組と比較することによって、ここで、多糖配列を4つの領域に分割することが可能である。この4つの領域は、分子の第1末端からグリコシダーゼ1まで(フラグメントa)、グリコシダーゼ1からグリコシダーゼ2まで(フラグメントb)、およびグリコシダーゼ2から分子の第2末端まで(フラグメントc)の範囲である:
<第1末端><グリコシダーゼ1><グリコシダーゼ2><第2末端>。
【0105】
異なるグリコシダーゼ部位を有する、2型の三つ組内の同一な認識部位(ここで、この認識部位は、それぞれのグリコシダーゼ部位に関して同一の方向で位置する)は、この位置に依存して、領域aまたはcのいずれか内の位置についての候補である。異なるグリコシダーゼ部位を有する2型の三つ組内の同一の認識部位(ここで、これらの認識部位は、異なる方向で位置する(例えば、1つは、還元末端の方向で、もう一方は、非還元末端の方向で))は、領域b内、すなわち、2つのグリコシダーゼ部位の間の位置についての候補である。
【0106】
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型の三つ組内の同一な認識部位は、領域a(またはc)における第1または第2の認識部位のうちの1つの位置についての候補であり、そしてこの第1または第2の認識部位のうちのもう一方は、領域c(またはa)に位置する。つまり、第1または第2の認識部位のうちの1つが、領域aに位置する場合、この第1または第2の認識部位のもう一方は、領域bに位置しなければならず、その逆も同様である。この第1または第2の認識部位のなかで、領域bに位置し得るものはない。
【0107】
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型の三つ組内の同一な認識部位(ここで、所定の認識部位は、三つの組のうち1つでは還元末端の方向で位置し、そしてこの三つの組のうち他方では非還元末端の方向で位置する)は、領域b内の認識部位の位置についての候補である。
【0108】
三つ組内の多くの認識部位について上記の位置関係を確立することによって、認識配列の全体は、ここで、理論的判断を用いて特定の順序で配列され得る。この段階は、配列マップといわれる。十分な数の認識配列が配列される場合、糖の完全配列を、これらから導き得る。この方法は、糖の分子量を決定しないので、鎖長は、未知である。従って、種々の認識部位の間の重複の程度が十分でない場合、さらなる糖単位が存在し得る領域が配列中に存在し得る。このような糖単位は、それらが、使用される本質的に配列特異的因子のいずれかの認識部位内にない場合、検出されないかもしれない。しかし、全配列情報をまた、この糖の分子量を最初に得ることによってこの場合において得ることができ、これは、その鎖長、および第2にその総単糖含量を示す。
【0109】
配列マップにおけるクローニングギャップの別の可能性は、実施例2の方法であり、ここで、グリコシダーゼによる配列分解を使用して、配列情報を引き出す。
【0110】
糖における分枝点の存在は、上記の概略のような方法を複雑にし得る。それに対する1つの改善法は、グリコシダーゼを使用してこの分子の画分を調製し、そしてこれらの部分的構造を分析することである。このような部分的構造における分枝の程度は、明らかに、全分子においてよりは低い。さらに、分枝点を特異的に認識する試薬を、使用し得る。このような試薬の例としては、例えば、上記の実施例1に使用された抗体である。これらの抗体の各々は、少なくとも1つの分枝点を含有する糖配列に結合する。さらに,分枝状糖構造を認識する特定の酵素およびレクチンが、利用可能である。例えば、酵素プラナーゼ(pullanase)(EC 3.2.1.41)は、分枝構造を認識する。さらに、抗体は、分枝状糖構造を抗原として使用することによって、産生され得る。さらに、分枝状構造を含む特定の糖構造に結合するペプチドを産生することが、可能である(例えば、Deng SJ,MacKenzie CR,Sadowska J,Michniewicz J,Young NM,Bundle DR,Narang;Selection of antibody single−chain variable fragments with improved carbohydrate binding by phage display.J.Biol.Chem.269,9533−38,1994を参照のこと)。
【0111】
さらに、既存の炭水化物の構造の知識は、多くの場合、分枝点の存在を正確に予測する。例えば、N結合グリカンは、oxford Glycosystemsカタログの6頁に列挙されるように、限定された数の構造を有する。これらの構造は、モノアンテナからペンタアンテナの範囲である。より複雑な構造は、添加されるさらなる糖残基とより単純な構造で似ている。従って、モノアンテナ構造が同定される場合、より複雑な構造における分枝点のすべてを予測することが可能であり、これは単に、さらなる残基を同定し、そしてこれらのデータをN結合グリカン構造のライブラリーと比較することによる。
【0112】
さらに、本発明の方法に従って集められたデータを分析することによって、理論的に分枝点の存在および位置を推定することがしばしば可能である。例えば、2つの認識部位(aおよびbと示される)が異なる分枝上に位置する場合、部位が還元末端と分枝点との間に位置するグリコシダーゼで消化することは、還元末端マーカーの損失を生じる。しかし、認識部位aおよびbの両方についてのマーカーは、残存する。分枝点と認識部位との間に位置するグリコシダーゼを使用する場合、認識部位bについてのマーカーおよび還元末端マーカーは、切断される。分枝点の可能性を考慮しない場合、これは、認識部位bが、認識部位aと還元末端との間に位置することを示す。しかし、認識部位bと分枝点との間に位置するグリコシダーゼが使用される場合、還元末端マーカーおよび認識部位aは、切断される。また、分枝の可能性を考慮しない場合、これは、認識部位aが、還元末端と認識部位bとの間に位置することを示す。これらの推定は、明らかに、互いに不適合であり、認識部位aおよびbが2つの異なる分枝上に位置すると仮定する場合にのみ、決定され得る。この分枝点は、認識部位aおよびbと第1の上記のグリコシダーゼとの間に位置する。使用される他の上記のグリコシダーゼは、各分枝上(分枝点とそれぞれの認識部位(aまたはb)との間)に位置する。
【0113】
従って、本質的に配列特異的な因子として、本発明の方法において分枝した構造を認識する因子を用いる場合、糖(サッカライド)分子中の分枝した点の存在または位置の情報を駆動することが可能である。次いで、この情報は、この構造の各分枝の配列マッピングを構築するために用いられ得、分枝した構造全体の配列マッピングを生じる。次いで、このような構造におけるギャップは、本発明に従って、すなわち、さらなる反応を用いることにより、グリコシダーゼで消化することにより(これによりギャップの存在する分子の領域が本発明の方法によってさらなる分析のために特異的に単離される)、および上記にさらに記載したように引き続くグリコシダーゼ消化によって、分枝した糖の場合のように閉じられ得る。
【0114】
要するに、本発明によって、糖の配列を決定するための方法および/またはこのような糖の構造をマッピングするための方法は、以下の工程:
1.1型および2型のトリプレットを収集する工程
2.このトリプレットを類似性によってソートする工程
3.トリプレットを異なるグリコシダーゼ認識部位と比較する工程
4.このトリプレットを糖の上での出現の順序で整列する工程
5.グリコシダーゼ認識部位を整列する工程
6.このトリプレットに対する適合性をチエックする工程
7.一列の順序でグリコシダーゼの認識配列ならびに因子特異的な第一および第二の本質配列を整列する工程
8.この認識配列(部位)を多糖配列へ変換する工程
9.「重複する」問題を補正する工程
10.配列を出力する工程
11.全ての利用可能なデータに対してチェックする工程
上記の第5工程実行後、グリコシダーゼ部位の予備的な順序を確立した。第6工程では、それに基づいた予測がその順序と一致していようといまいと各トリプレットについて、ここでチェックする。次いで、このデータにおける食い違いに基づいて、このトリプレットのデータに適合する新しいモデルを作成する。次いでこのモデルを全てのトリプレットのデータに対して試験する。さらに、このトリプレットを含む認識部位に関して、さらなる方向の情報を抽出するためにさらなる反応を実行し得る。
【0115】
上記の第8工程後(ここで、連続的に整列した認識部位を、実際の単糖類の配列に変換する)糖配列のモデルが示唆され得る。このモデルを試験するため、多数の疑問が回答される必要がある。これらの第一は、同じ配列マッピングをなおも有する最小の配列は何か?ということである。この段階では、分子量および単糖組成物に関する情報は、利用可能であっても、考慮されない。このアプローチは食い違いができるだけ少ない利用可能なデータの全てを組み込む配列を作成するようにだけ働く。その点において、回答されるべき第二の疑問は、この最小配列はなお、そのポイントで利用可能な全てのデータ(至適分子量および単糖組成物のデータを除く)に一致するか?ということである。回答されるべき第三の疑問は、確立された場合、この配列マッピングに適合する他の配列が存在するか?ということである。肯定の場合、さらなる配列を以下の疑問を用いて試験し得る:各配列モデルは、どのようにしてこのトリプレット情報に、そしてさらなる任意のデータ(例えば、分子量、単糖組成物、および生物学から公知のモデルの糖構造に対する情報)に一致するか?
最後に、上記の工程1〜10によって最高であると見出された配列モデルを、次に、全てのトリプレット、単糖組成物、この糖の分子量および構造組成物に対する事前の知識、ならびに生物学的に既存の類似の構造からの予想に対して試験する。このような反復した試験によって、利用可能なデータと配列モデルとの間の食い違いを同定し、もし可能であれば、この配列モデルを、このデータをさらによく示すように適合させる。
【0116】
(実施例5)
(ミルクサンプルの糖分子同一性(glycomolecule identity)(GMID)分析)
本実施例の目的は、ミルクサンプルの分析および比較のためのGMID技術の適用を実証することである。
【0117】
A.膜および第一層レクチン:
本明細書中において下記される実験において用いた支持表面は、ニトロセルロースメンブレン(膜)である。このメンブレンは以下のように調製した:
1.ニトロセルロースメンブレンを切り取り、そしてその表面に9×6の四角(各四角は3mm2)のアレイを印した。次いでこのメンブレンを吸収紙上に置き、そして各々のメンブレンの左上の四角をペンで記した。
2.凍結乾燥したレクチンを、水中に再懸濁して、最終濃度1mg/mlとした。再懸濁したレクチン(およびコントロール溶液:5%ウシ血清アルブミン)をボルテックスして混合し、そして各溶液の1μlをこのブロットの上の28の四角(代表的なブロットの以下の例示的図示において影付で示した)のうちの1つに添加する。
【0118】
【表12】
この実験で用いたレクチンを表11に列挙する。
【0119】
【表13】
3.調製したブロットを90mmペトリ皿中に置く
4.当業者に周知の任意の適切なブロッキング溶液10mlを各ペトリ皿に添加することによってこのブロットをブロックした(例えば、5%ウシ血清アルブミン)
5.室温で2時間、回転テーブル(50rpm)上での回転によって(または回転なしで4℃一晩)ブロッキング溶液中にこのブロットを含有する皿を穏やかに攪拌した
6.次いで各ペトリ皿への10mlの洗浄溶液の添加によってこのブロットを洗浄した。
この洗浄工程を実施するために任意の市販の緩衝液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水)を、用い得る。この皿を5分間穏やかに回転(50rpm)して洗浄する。この手順を全部で3回実施し、その都度、古い洗浄溶液を廃棄して新しい溶液で置換する。
B:ミルクサンプルの添加:
用いたミルクサンプルは以下のとおりであった:
1.Ramat haGolan dairies(酪農場)、イスラエルから入手したウシUHTロングライフミルク(脂肪分3%)(ロット522104);
2.Mechek酪農場(イスラエル)から入手した殺菌ヤギミルク(ロット1および2);
3.2と同様に入手した非殺菌ヤギミルク(ロット3および4)。
【0120】
このミルクサンプルを10%v/vに希釈して、約5mlの各サンプルを別のブロットに適用した。
【0121】
前述のミルクサンプルの各々について二連のブロットを準備した。さらに、糖の添加なし(陰性コントロール)にさらなるブロットの対を準備した。
【0122】
次いで、このブロットを1時間攪拌しながら室温にインキュベートした。
C.着色レクチン
試験したミルクの単糖組成物の以前の知識から、そして実施例7において本明細書中に前記したアルゴリズムに基づいたコンピュータープログラムの適用によって、以下の着色レクチンを選択した:ConA、VVA。
【0123】
これらの2つのレクチンの混合物を含有する洗浄溶液を、各着色レクチンの濃度が2mg/mlとなるように準備した。
【0124】
500μlの各レクチン混合物を上記のように調製したブロット上でインキュベートした。各ブロットは、520nmでのフルオレセインの蛍光を測定することによって、そしてビオチン化レクチンの場合は、HRPストレプトアビジン溶液とのビオチンの反応後に生成したTMBブルーのシグナルを測定することによって、両方とも赤であった。
【0125】
FITC標識したレクチンおよびビオチン標識レクチンについて得た結果をそれぞれ、表12および13に示す。これらの表に示される結果を0〜3のスケールで測定する。ここで0は、ノイズレベル未満のシグナルを示し、1〜3は、非糖コントロールにおいて得られた結果の差引き後の陽性シグナル(ノイズ以上)を示す。
【0126】
殺菌ヤギミルク(ロット1および2)、非殺菌ヤギミルク(ロット3および4)およびウシミルクについてこれらの結果から得た糖分子同一性(glycomolecule identity)(GMID)を図1に示す(それぞれ、A〜E)。レクチン1〜24の位置を、各カード1の上部の左から右の1列に示す。
【0127】
(D.結果の解釈)
ウシミルクサンプルは、GMIDを生じ、このことは、このサンプル中のポリサッカライドが、以下について特異的なレクチンについて陽性の結果を生じる糖を含むことを示す。
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(WGAおよびDSA)。
【0128】
殺菌ヤギミルクサンプルは、以下について陽性の結果を生じた:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(DSA)。
【0129】
試験したロットの間のレクチン反応性において差異は観察されなかった。
【0130】
非殺菌ヤギミルクサンプルは、以下について陽性の結果を生じた:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GlcNac(DSA)。
【0131】
まとめると、ウシミルクはヤギミルクとは、前者がWGAと反応した点でのみ異なる。殺菌ヤギミルクサンプルと非殺菌ヤギミルクサンプルとの間には、殺菌サンプルではシグナル強度が有意に低かったこと以外には、本質的に差異は存在しなかった。
【0132】
(実施例6)
(リポポリサッカライドの糖分子同一性(GMID)分析)
本質的には上記、実施例5に記載の方法を用いて、Sigma Chemical Co.(St.Louis,Missouri,USA)から得た5つの異なる細菌リポポリサッカライド(LPS番号1、7、10、15および16)でGMID分析を実施した。用いた着色レクチンは、ECL、WGA、VVA、およびSBAであった。
【0133】
サンプルLPS番号1、7、10、15および16から得たGMIDカードを図2に示す(それぞれA〜E)。GMIDカードが異なるリポポリサッカライドの各々について特有の「フィンガープリント」を提供し、これが細菌またはこれらの産物の混合物を含むサンプル中でこれらの化合物の存在を同定するために用いられ得ることがこの図からわかる。
【0134】
(実施例7)
(着色レクチンを選択する方法)
実施例5および6に例示されつ多糖分析の方法において用いるための着色レクチンを選択する場合、多数の因子が、考慮されなければならない。これらの検討項目の中でも、レクチンの選択の各々について必要なのは、識別可能な色素マーカーまたは他の検出可能マーカーを有すること、ならびにレクチン間の相互作用を減少することである。着色マーカー選択における使用のためのアルゴリズムを図示するフローチャートを図3に示す。図3に示すアルゴリズムは、n個の着色したレクチン(または他の検出可能マーカー)の選択101で始まり、この最初の選択は、分析されるべき糖の部分的または完全単等組成物について得られた情報と一致している。
【0135】
次の工程102において、選択したレクチンの色を選択した色の同定/非同定についてチェックするために試験する。選択した群において同一の色が存在すれば、このプロセスを工程103に進行するか、さもなければフローを工程104に進める。工程103において、非特異的な色を有することが見出されたレクチンの1つを同じ結合カテゴリーに属する別のレクチン(すなわち、同じ単糖結合特異性を有するもの)で置換する;フローを工程102に進める。
【0136】
工程104において、n個の選択したレクチンを、お互いに対する、および実施例5において本明細書中上記された方法の第一段階において用いた非着色レクチンに対するなんらかの交差反応性を検出するため、試験する。交差反応性が見出されると、このプロセスを、工程105に続けるか、さもなければフローを工程106に進めて、ここでアルゴリズムを終了する。
【0137】
工程105において、別のレクチンと交差反応するように決定したレクチンの1つを、交差反応しないレクチンで置換する;次いでこのフローは102に進む。このアルゴリズムは工程106で終了する。
【0138】
小さいnの値について、そしてシンプルな単糖組成物を有する糖について、上記のアルゴリズムが、選択手順の各工程を通じて手動で働くオペレーター自身によって適用され得ることが強調されるべきである。あるいは(nがより大きい数であるかまたは単糖組成物がより複雑である特別な場合には)、本明細書中において上記されたアルゴリズムプロセスは、このようなプロセスを執行するために設計されたコンピュータープログラムによって実施され得る。
【0139】
上記の例は、本明細書において記載された方法の有用性を実証した。しかし、それは例示のみの目的のために追加された。用いられた本質的に配列特異性の因子において、そのための反応条件において、固定、反応および検出の工程の技術において、および標識の配列において、大きいバリエーションが、本発明の範囲から逸脱することなくもたらされ得ることが当業者に明白である。
【0140】
(他の実施形態)
上記の実施例は、本発明による特定のタイプのフィンガープリントアッセイおよび方法を記載する。これらのアッセイは、データを収集しそして分析するための「ウエット」なまたは実験的アッセイのデバイス、ハードウェアおよびソフトウェアについて種々の異なる構成で必要に応じて実施され得る。図4は、GMIDカードを用いてフィンガープリントアッセイを実施するための本発明による代表的方法の図式的ブロックダイヤグラムである。これは、フィンガープリントアッセイを実施するための本発明による合成的構成および操作の1つの型を例示している。本記載は例示の目的のみであっていかなる方法でも限定を意味しないことに注意すること。
【0141】
工程1において示されるように、必要に応じて、そして好ましくは、糖結合因子(糖結合剤)を、GMIDカードを用いたアッセイにおいてそれを使用する前の効率について試験する。本実施例において、糖結合剤はレクチンとして記載されているが、このような因子(薬剤)の他のコースは本発明の範囲内で必要に応じて使用され得る。より詳細には、このようなレクチンの各々を、陽性の活性について、最も好ましくは標準的糖分子との反応性を通じて、試験する。このような反応性は、レクチンが再生可能な様式でこのような標準的糖分子に結合し得ることを示す。さらに、そしてまた好ましくは、レクチンは、好ましい実施形態のアッセイにおいて糖結合剤(因子)を操作する(固体支持体の表面に結合されてもいなくても)能力について、または可溶性形態で存在する能力について試験されるべきである。
【0142】
工程2において、レクチンを、固定された糖結合剤(因子)についてGMIDカードのために固体支持体に結合する能力について、必要に応じてそして好ましくは試験する。さらに、必要に応じて、そして好ましくは、糖結合剤の可溶化形態を試験して、固体支持体に対する任意の非特異的結合(これはバックグラウンドのレクチン結合のレベルを増大し得、これによって特異的に結合したレクチンのシグナルを低減する)が存在するか否かを決定する。
【0143】
さらに、より好ましくはGMIDカードについての固体支持体を、種々のタイプの挙動(特定のレクチン結合の非存在におけるバックグラウンドシグナルの生成、および/またはこのようなシグナルのクエンチング)についてそれ自体を試験する。本発明のGMIDカードに特に好ましい固体支持体は、例えば、ニトロセルロースのような多孔性または半多孔性のメンブレンである。あるいは、固体支持体は、例えば、ガラススライドのようなニトロセルロースコートされた固体表面、または多孔性または半多孔性の材料でコートされた任意の他の適切な固体表面であり得る。
【0144】
工程3において、一旦レクチンのセットがGMIDカードのための固体支持体上での固定のために選択されれば、そして支持体自体がまた選択されれば、GMIDカードは固定されたレクチンで調製される。必要に応じて、GMIDカードは、「アレイヤー(arrayer)」デバイスまたは「スポッティング(spotting)」デバイスを用いて準備され得る。これらのデバイスは比較的少量かつ正確な量のレクチンを固体支持体上の特定のアレイに配置し、複数の「スポット」のアレイを形成し得る。これらのデバイスはまた、「微小分注システム(microdispensing system)」として公知である。なぜなら、それらのデバイスは、ナノリットルで代表的に測定される量の材料を(例えば、このような少量の材料を堆積させるためのピンのアレイを用いて)堆積させるからである。本発明での操作に適切なデバイスの例としては、HydraTM(Robbins Inc.,USA)、MicroGrid II/TAS/ProTM(BioRobotics Ltd.,英国)およびGMS417TM(Genetic Microsystems Affymetrix Inc.,USA)が挙げられるがこれらに限定されない。
【0145】
必要に応じて、そして好ましくは、固体表面に固定されるか、または可溶化形態でGMIDカードを用いてインキュベートされる前に、レクチンを前処理する。例えば、このような前処理は、必要に応じてシグナル対ノイズ比を改善するためのレクチンの過ヨウ素酸化を含み得る。
【0146】
工程4において、必要に応じてそしてさらに好ましくは、GMIDカードとのインキュベーションの前に、糖分子を処理して、この支持体上で固定されたレクチンに結合する効率比を最小にし、そしてまた固定されたレクチン、支持体および可溶化されたレクチンに対する非特異的結合を減少する。さらに、好ましくは、この糖分子を適切な緩衝液と混合して、サンプル溶液を形成する。
【0147】
工程5において、サンプル溶液を、固定されたレクチンを含有する固体支持体と接触させる。必要に応じて、このサンプル溶液を固体支持体と接触させる前に、この固体支持体を、サンプル緩衝液のみを用いて洗浄する。次いでこの糖分子を有するこのサンプル溶液を、適切な時間固体支持体とともにインキュベートする。必要に応じてコントロール溶液をまた、非特異的結合についての測定値として、少なくとも一部分の固体支持体とともにインキュベートする。
【0148】
工程6において、次いで、複合体化した糖分子を有するこの固体支持体を、好ましくは、適切な洗浄緩衝液、および適切なブロッキング緩衝液を用いて少なくとも1回洗浄する。工程7において、次いで、この支持体を第二の糖結合剤(因子)として、可溶化した標識したレクチンとともにインキュベートする。工程8において、適切な洗浄手順を好ましくは実施する。
【0149】
工程9において、標識したレクチン由来のシグナルを適切な検出デバイスを用いて検出する。例えば、標識が色素生産性であれば、この検出デバイスはCCD(電化結合素子)カメラであり得る。明確に、当業者は、レクチン上の標識のタイプによって適切な検出デバイスを選択し得る。
【0150】
本発明の好ましい実施形態に従って、以前に記載のように、標識は蛍光色素である。このような好ましい実施形態について、検出デバイスはまた、好ましくは、蛍光色素標識を励起させる適切な波長の光源、およびまたこの光源からの光を必要に応じてフィルターし、得られたシグナルをフィルターするための適切なフィルターセット、を備える。このようなフィルターは単色の光源(例えば、レーザーなど)を必要としないことに注意すべきである。各色素または蛍光色素の光標識化の可能性および効率性の補助因子が、以下に詳細に記載するように、好ましくは分析相において考慮される。
【0151】
GMIDカードの全体または少なくとも大部分の画像は、(例えば、複数の単一シグナルの検出とは対照的に)必要に応じて入手され得る。適切な検出デバイスの例としては、複数の「スポット」由来の複数のシグナルを用いて、GMIDカードの画像の少なくとも一部を得るための「スキャナー」が挙げられる。このようなデバイスは必要に応じて単一バンド(単一波長の光が検出される);二本のバンド(別々の波長の光が検出される);またはスペクトルデバイス(少なくとも2つの光、ただし好ましくは多数の波長の光が検出される)であり得る。
【0152】
工程10において、最も好ましくは、レクチンに特異的に結合するシグナルの適切な閾値を決定するため、そしてシグナル対ノイズ比を決定するため、などのために、1つ以上のコントロール「サンプル」由来の種々のシグナルを分析する。さらに、これらの種々のシグナルを、必要に応じて、種々のアッセイ由来の結果と比較して、例えば、アッセイの質を確認し得る。
【0153】
工程11において、必要に応じてそして好ましくは、例えば、バックグラウンドシグナルの差引きによって、およびレクチンに特異的に結合する閾値を比較することによって、シグナルを試験して、もしあれば、特定の結合のレベルを決定する。バックグラウンドノイズは、好ましくは平均ノイズ±標準偏差の関数として決定される。
【0154】
工程9〜11は、必要に応じて、そして好ましくは、例えば、画像データの形式で、シグナルを捕獲するプロセスを制御する;コントロールシグナルを分析する;そして実際のアッセイデータを得るためにサンプルシグナルを分析するためのソフトウェアプログラムで実施される。適切なソフトウェアプログラムの例としては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:GeneToolsTM(BioRobotics Ltd.,United Kingdom);GenePix Pro 3.0TM(Axon Instruments Inc.)およびQuantArrayTM(GSI Lumonics Inc.)。あるいは、これらの工程は、フォームウェアおよび/またはハードウェア、またはそれらのいくつかの組み合わせで実施され得る。
【0155】
本発明の好ましい実施形態によって、これらの工程は好ましくは「スポット」のアレイをまず規定する工程を包含する。このようなアレイは、必要に応じて、そしてより好ましくは、自動的に規定され、そしてこの「スポット」由来の任意の特定のシグナルの予期される位置を決定するためのグリッドの規定を含む。次に、スポットの最初の位置は好ましくはこのグリッドに関して規定される。次いで、各々の個々のスポットを中心に集め、その後、好ましくはエッジ検出を実施して各スポットの境界を位置付ける。必要に応じて、スポットのサイズおよび形状の自由形式の決定;サイズおよび形状の固定形式の決定;あるいは固定サイズだが自由形状の決定プロセスに従って、エッジ検出を実施する。これらの工程のいずれかを自動的に実施し得るか、または手動で実施し得る。
【0156】
次に、各スポットのシグナルの強度を決定する。このような強度は好ましくは、例えば、検出デバイスによって検出される生のシグナルデータからのバックグラウンドシグナルの差引きによって、バックグラウンドシグナルおよびシグナル対ノイズ比に対して決定される。
【0157】
本発明を、その詳細な説明と組み合わせて記載してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明を例示するものであって本発明の範囲を限定する意図はない。他の局面、利点、および改変は、添付の特許請求の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、低温殺菌したヤギミルク(AおよびB)、低温殺菌していないヤギミルク(CおよびD)、およびウシミルク(E)から得られた、糖分子同一性(GMID)カードを示す。
【図2】図2は、種々のリポ多糖サンプルから得られたGMIDカードの複製である。カードA〜Eは、それぞれ、LPS番号1、7、10、15および16に対応する。
【図3】図3は、着色したレクチンのセットを選択するためのアルゴリズムを示す、高レベル論理フローチャートである。
【図4】図4は、GMIDカードを用いてフィンガープリントを実行するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。
Claims (42)
- 炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法であって、該方法は、以下:
a)表面上の予め決定した位置に付着した少なくとも1つの糖結合因子を含む膜を提供する工程;
b)該膜を炭水化物ポリマーと、該第1糖結合因子と該炭水化物ポリマーとの間の第1複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;
c)該膜を少なくとも1つの第2糖結合因子と、該複合体において該第1複合体と該第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程であって、ここで、該第1糖結合因子と該第2糖結合因子のうちの少なくとも1つは、複数の糖結合因子を含む、工程;
d)該複合体中の該第1糖結合因子と該第2糖結合因子を同定する工程;ならびに
e)該第1糖結合因子および該第2糖結合因子の結合のフィンガープリントを決定する工程、
を包含し、
これによって、該炭水化物ポリマーを特徴付ける、
方法。 - 請求項1に記載の方法であって、前記第2糖結合因子が、検出可能な標識をさらに含み、そして
該第2糖結合因子は、該標識を検出することによって同定され、そして前記第1糖結合因子は、基材上の検出可能な標識の位置を決定することによって同定される、
方法。 - 前記検出可能な標識が、発色標識、放射性標識、蛍光標識、およびビオチン化標識からなる群より選択される、請求項2に記載の方法。
- 前記表面が、該表面に付着した少なくとも5個の糖結合因子を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記表面が、該表面に付着した少なくとも15個の糖結合因子を含む、請求項1に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも5個の第2糖結合因子と接触させる、請求項1に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも15個の第2糖結合因子と接触させる、請求項1に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも5個の第2糖結合因子と接触させる、請求項4に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも15個の第2糖結合因子と接触させる、請求項5に記載の方法。
- 前記第1糖結合因子が、レクチン、糖切断酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記第2糖結合因子が、レクチン、多糖切断酵素、糖改変酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
- 前記第2糖結合因子が、レクチン、多糖切断酵素もしくは多糖改変酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項10に記載の方法。
- 前記炭水化物ポリマーが、糖切断因子を用いた消化後に提供される、請求項1に記載の方法。
- 前記糖を前記第2糖結合因子と接触させる工程の前に、前記炭水化物ポリマーを、糖切断因子を用いて消化する、請求項1に記載の方法。
- 前記表面を第2糖結合因子と接触させる工程の前に、未結合の第1糖結合因子を該表面から除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
- 前記第1糖結合因子および前記第2糖結合因子の1つ以上の画像を獲得する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
- 前記画像が保存される、請求項16に記載の方法。
- 前記画像が写真またはデジタル化画像として保存される、請求項17に記載の方法。
- 複数の複合体を含む膜であって、ここで、各複合体は、
該膜の予め決定した位置に結合した第1糖結合因子;
該第1糖結合因子に結合する糖;および
検出可能な第2糖結合因子
を含む、膜。 - 膜を備えるキットであって、該膜は、該膜上の予め決定した位置に付着した複数の第1糖結合因子、および第2の検出可能な第2糖結合因子を含む、キット。
- 予め規定された順序で、複数の視覚マーカーまたは他の検出可能なマーカーを含む膜であって、該マーカーは、糖または糖配列もしくは糖フラグメントを示す、膜。
- 炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する方法であって、該方法は、以下:
炭水化物ポリマーを提供する工程;
該炭水化物ポリマーを少なくとも1つの第1糖結合因子と接触させる工程;
該炭水化物ポリマーが該第1糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程;
該炭水化物ポリマーを少なくとも1つの第2糖結合因子と接触させる工程であって、その結果、該炭水化物ポリマーは、該第1糖結合因子および第2糖結合因のうちの少なくとも1つについての複数の異なる糖結合因子と接触する、工程;
該炭水化物ポリマーが該第2糖結合試薬に結合するか否かを決定する工程;
該第2複合体において該第1糖結合因子および該第2糖結合因子を同定する工程;ならびに
該第1糖結合因子および該第2糖結合因子への該炭水化物ポリマーの結合パターンに従って、該炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する工程であって、ここで、該糖結合因子のうちの少なくとも1つは、それらの複数の異なる糖結合因子を含む、工程
を包含する、方法。 - 請求項22に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマーを少なくとも5個の糖結合因子と接触させる工程、および該炭水化物ポリマーが該少なくとも5個の糖結合試薬の各々に結合するか否かを決定する工程をさらに包含する、方法。
- 請求項22に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマーを少なくとも15個の糖結合因子と接触させる工程、および該炭水化物ポリマーが該少なくとも糖結合試薬の各々に結合するか否かを決定する工程をさらに包含する、方法。
- 前記炭水化物ポリマーが、糖タンパク質および糖脂質からなる群より選択される、請求項22に記載の方法。
- 前記炭水化物ポリマーが、多糖である、請求項22に記載の方法。
- 請求項22に記載の方法であって、前記第1糖因子および前記第2糖因子の結合が、以下:
a)表面上の予め決定した位置に付着した少なくとも1つの第1糖結合因子を含む表面を提供する工程;
b)該表面を炭水化物ポリマーと、該第1糖結合因子と該炭水化物ポリマーとの間の第1複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;
c)該表面を少なくとも1つの第2糖結合因子と、該第1複合体と該第2糖結合因子との間の第2複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;ならびに
d)該第2複合体において該第1糖結合因子と該第2糖結合因子を同定する工程;
によって決定される、
方法。 - 請求項27に記載の方法であって、ここで、前記第2糖結合因子が、検出可能な標識をさらに含み、そして
該第2糖結合因子は、該標識を検出することによって同定され、そして前記第1糖結合因子は、基材上の検出可能な標識の位置を決定することによって同定される、
方法。 - 前記検出可能な標識が、発色標識、放射性標識、蛍光標識、およびビオチン化標識からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
- 前記表面が、該表面に付着した少なくとも5個の糖結合因子を含む、請求項27に記載の方法。
- 前記表面が、該表面に付着した少なくとも15個の糖結合因子を含む、請求項27に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも5個の第2糖結合因子と接触させる、請求項27に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも15個の第2糖結合因子と接触させる、請求項27に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも5個の第2糖結合因子と接触させる、請求項27に記載の方法。
- 前記表面を、少なくとも15個の第2糖結合因子と接触させる、請求項27に記載の方法。
- 前記第1糖結合因子が、レクチン、糖切断酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
- 前記第2糖結合因子が、レクチン、多糖切断酵素もしくは多糖改変酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
- 前記第2糖結合因子が、レクチン、多糖改変酵素もしくは多糖切断酵素、および糖に対する抗体からなる群より選択される、請求項27に記載の方法。
- 前記炭水化物ポリマーが、糖切断因子を用いた消化後に提供される、請求項27に記載の方法。
- 前記糖を前記第2糖結合因子と接触させる工程の前に、前記炭水化物ポリマーを、糖切断因子を用いて消化する、請求項27に記載の方法。
- 炭水化物ポリマーを特徴付けるための方法であって、該方法は、以下:
a)表面上の予め決定した位置に付着した少なくとも1つの特異的糖結合因子を含む表面を提供する工程;
b)該表面を炭水化物ポリマーと、該第1の特異的糖結合因子と該炭水化物ポリマーとの間の第1特異的複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;
c)該表面を少なくとも1つの第2特異的糖結合因子と、該第1特異的複合体と該第2特異的糖結合因子との間の第2特異的複合体の形成を可能にする条件下で接触させる工程;ならびに
d)該第2の特異的複合体において該第1特異的糖結合因子と該第2特異的糖結合因子を同定する工程;
を包含し、
これによって、該炭水化物ポリマーを特徴付ける、
方法。 - 複数の複合体を含む基材であって、ここで、各複合体は、
該基材上の予め決定した位置に結合する第1糖結合因子;
該第1糖結合因子に結合する糖;および
検出可能な第2糖結合因子であって、ここで、該第2糖結合因子は、該第2糖結合因子が本質的に配列特異的因子である場合のみ、該糖に結合する、因子、
を含む、基材。
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