JP4696100B2 - 炭水化物ポリマーの比較分析のための方法 - Google Patents

炭水化物ポリマーの比較分析のための方法 Download PDF

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Description

(発明の分野)
本発明は、一般に、多糖類を含む分子を分析するための方法に関し、そしてよ
り特定すると、レクチンのような糖類結合因子を使用することに基づく多糖類の
分析方法に関する。
(発明の背景)
多糖類は、グリコシド結合を介してお互いに結合した単糖類(糖)単位を含む
ポリマーである。これらのポリマーは、単糖類サブユニットの直鎖状配列に関し
て記載され得る構造を有し、このことは多糖類の二次元構造として公知である。
多糖類はまた、それらの成分の単糖類サブユニットにより空間的に形成される構
造に関して記載され得る。
多糖類を形成する一連の単糖類は、2つの異なる末端を有する。一方の末端は
アルデヒド基を含み、そして還元性末端として公知である。もう一方の末端は非
還元性末端として公知である。多糖類の鎖はまた、多糖類鎖に結合される糖単位
がヘキソースの場合、C1、C2、C3、C4またはC6原子のうちの任意のも
のと結合され得る。さらに、ある所定の単糖類は2を超える異なる単糖類と結合
され得る。その上、C1原子への結合は、α配置またはβ配置のどちらかであり
得る。従って、炭水化物ポリマーの二次元構造および三次元構造の両者は、高度
に複雑であり得る。
多糖類の構造決定は、糖生物学の発展に基本的に重要である。糖生物学におけ
る研究は、細菌の細胞壁合成に影響する抗生物質の同定および特定、血液グリカ
ンの同定および特定、ウイルス疾患および自己免疫疾患(例えば、インスリン依
存性糖尿病、慢性関節リウマチおよび(例えば、癌で起こる)異常細胞増殖)に
関係する増殖因子および細胞表面レセプター構造の同定および特定と同程度に多
岐に渡る課題と関係する。
多糖類はまた、コンタクトレンズ、人工皮膚およびプロテーゼデバイス用の生
物材料の開発において使用されている。さらに、多糖類は多くの非医療分野(例
えば、製紙業)において使用される。さらに、無論、食料産業および薬品産業が
莫大な量の様々な多糖類および少糖類を使用する。
上記分野の全てにおいて、改良された糖類分析技術が必要である。糖類分析情
報は、例えば、品質管理、研究における構造決定、および構造−機能分析を実施
することに対して、有用である。
多糖類の構造的な複雑さは、それらの分析の障害となっている。例えば、糖類
は鋳型非依存的な機構にて合成されると考えられる。従って、構造情報の無い場
合、研究者は、今日まで公知であるあらゆる糖類単位から構成単位が選択される
ことを想定しなければならない。さらに、これらの単位は、合成中に、例えば硫
酸基の付加によって、改変され得る。
第2に、糖類は、糖類に結合される糖単位がヘキソースである場合、あらゆる
炭素部分(例えば、C1原子、C2原子、C3原子、C4原子、またはC6原子
)で結合され得る。さらに、C1原子への結合は、α配置またはβ配置のどちら
かであり得る。
第3に、糖類は分岐し得、このことは、糖単位の判明した数および種類を有す
る、糖類の構造および可能性ある構造の数をさらに複雑にする。
第4の困難は、糖単位がヒドロキシル基(エピマー)の位置によってのみ別の
ものと区別され得るように、多くの糖の間の構造における差異が微細であるとい
う事実より提供される。
そのような糖類結合因子の複数の使用は、基盤に固定されるにせよ、そして/
または第2(可溶性の)糖類結合因子として使用されるにせよ、単糖類の「フィ
ンガープリント」を提供することにより、目的の炭水化物ポリマーを同定する。
次いで、そのようなフィンガープリントは、その炭水化物ポリマーについてのさ
らなる情報を得るために分析され得る。残念ながら、炭水化物ポリマーのフィン
ガープリントについてのデータの特徴付け過程および解読過程は、例えばDNA
のような、他の生物学的ポリマーについてよりもさらにずっと複雑である。特徴
付けを目的として、DNAサンプルに対してDNAプローブを結合させることと
は異なり、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、必ずしも炭水化物ポリマ
ー自身の成分の直接的な表示でない。適切な条件下において、プローブがDNA
を認識し、そして結合することは、かなり直接的な過程であるので、DNAプロ
ーブの結合は、DNAサンプル自身の配列について、比較的直接的な情報を提供
する。従って、プローブの結合より得られる、DNA「フィンガープリント」は
、サンプル中の実際のDNA配列についての直接的な情報を生み出し得る。
対照的に、炭水化物ポリマーへの薬剤の結合は、あまり直接的でありそうでは
ない。これまでに記載されるように、炭水化物ポリマーは分岐し得るので、炭水
化物ポリマーの二次元構造(配列)ですら、DNAの配列よりも複雑である。こ
れらの分岐は明らかにポリマーの三次元構造に影響し、そしてそれ故に結合因子
に対する認識部位の構造に影響する。さらに、結合因子による炭水化物ポリマー
上の結合性エピトーブの認識は、エピトーブを囲む分子の部位の「近隣のもの」
によって影響され得る。従って、目的の炭水化物ポリマーへの薬剤の結合につい
ての、そのような「フィンガープリント」データの分析は、例えばDNAプロ−
ブの結合に対するデータよりも、明らかにより困難である。
この問題に対する有用な解決策があれば、フィンガープリントデータが炭水化
物ポリマーを特徴付けるために分析されることが可能となる。そのような分析は
、糖類結合因子を炭水化物ポリマーとインキュベートする従来記載された工程よ
り得られる生データを、それ自身が情報を含むフィンガープリントへと変換する
必要がある。フィンガープリントはまた、異なる組み合わせの実験条件にわたる
比較のために、そして異なる型の糖類結合因子のために、標準化される必要があ
る。残念ながら、そのような解決策は現在では使用可能ではない。
これらの困難にもかかわらず、糖類の構造分析のための多くの方法が開発され
た。例えば、PCT出願第WO93/24503号は、還元性末端の単糖類をそ
のケト型またはアルデヒド型に変換し、次いで少糖類鎖中の単糖類とその隣の単
糖類との間のグリコシド結合をヒドラジンを使用して切断することにより、少糖
類の還元性末端より単糖類単位が連続して外されるという方法を開示する。遊離
した単糖類は少糖類鎖から分離され、そしてクロマトグラフィー方法により同定
される。この工程は、全ての単糖類が切断されるまで次いで繰り返される。
PCT出願第WO93/22678号は、未知の少糖類の基本構造についての
仮説を立て、そして次いで多くの配列決定ツール(例えば、グリコシダーゼ)か
ら最も多量の構造情報を得ると予測されるツールを選択することにより、未知の
少糖類の配列決定を行う方法を開示する。この方法は、少糖類の構造に関して幾
つかの基礎情報(通常は単糖類の組成)を必要とする。この方法はまた、配列決
定用の試薬を用いた反応が高額で時間が掛かり、そして従ってこれらの費用を低
下させる方法の必要性があるという事実を例示する。
PCT出願第WO93/22678号は、VLSIチップ上に固定化されたプ
ローブ(例えば、オリゴデオキシヌクレオチド)のモノリシックアレイをプロー
ブすることにより分子を検出する方法を開示する。この公報は、非常に多くのプ
ローブが固定化された表面に結合され得ること、およびVLSIチップ上の論理
的回路を使用する様々な方法により、分析物とのそれらプローブの反応が検出さ
れることを教示する。
欧州特許出願第421,972号は、少糖類の1つの末端を標識すること、標
識された少糖類をアリコートに分配すること、およびそれぞれのアリコートを異
なる試薬混合物(例えば、グリコシダーゼ混合物)と処理すること、異なる反応
混合物を溜めること、そして次いでクロマトグラフィー方法を使用して反応生成
物を分析することによる、少糖類の配列決定の方法を開示する。この方法は、糖
鎖がタンパク質に連結する部位でN結合型グリカンが共通の構造を有するような
N結合型グリカンに対してのみ有用である。O結合型グリカンはより多様であり
、そしてこの方法は、基本構造により広い多様性を有する、O結合型グリカンの
ような少糖類に対しては未だ適応されていない。
従って、多糖類に結合する薬剤を同定するための正確なハイスループットの方
法を使用した、多糖類を特徴付けるための系および方法が必要とされる。

本発明によって以下が提供される:
(1) 第1の糖タンパク質および第2の糖タンパク質の関連性を決
定するための方法であって、以下:
第1の糖タンパク質の第1のフィンガープリントを提供する工程であって、該
第1のフィンガープリントが、少なくとも、該第1の糖タンパク質についての第
1の糖類結合因子、および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
第2の糖タンパク質の第2のフィンガープリントを提供する工程であって、該
第2のフィンガープリントが、少なくとも、該第2の糖タンパク質についての該
第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程

該第1のフィンガープリントおよび該第2のフィンガープリントを比較する工
程であって、該比較する工程が、該第1の糖タンパク質および該第2の糖タンパ
ク質が該第1の糖類結合因子に結合するか否か、ならびに、該第1の糖タンパク
質および該第2の糖タンパク質が、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決
定する工程を包含する、工程、
これによって、該第1の糖タンパク質および該第2の糖タンパク質の関連性を
決定する工程、
を包含する、方法。
(2) 項目1に記載の方法であって、前記第1のフィンガープリ
ントが、以下:
第1の炭水化物ポリマーを含む第1の糖タンパク質を提供する工程、
該第1の炭水化物ポリマーと前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第1の炭水化物ポリマーが、該第1の糖類結合因子に結合するか否かを決定
する工程、
該炭水化物ポリマーと前記第2の糖類結合因子を接触させる工程であって、該
第2の糖類結合因子が検出可能な標識を含む、工程;および
該第1の炭水化物ポリマーが、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定
する工程、
これによって、該第1の糖タンパク質のフィンガープリントを生成する工程、
を包含する方法によって同定される、方法。
(3) 項目2に記載の方法であって、前記第2のフィンガープリ
ントが、以下:
第2の炭水化物ポリマーを含む第2の糖タンパク質を提供する工程、
前記炭水化物ポリマーと前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第2の炭水化物ポリマーが前記糖類結合因子と結合するか否かを決定する工
程;
該第2の炭水化物ポリマーと前記第2の糖類結合因子を接触させる工程であっ
て、該第2の糖類結合因子が、検出可能な標識を含む、工程;および
該炭水化物ポリマーが、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工
程、
これによって、該第2の糖タンパク質のフィンガープリントを生成する工程、
を包含する方法によって同定される、方法。
(4) 項目2に記載の方法であって、前記第1の炭水化物ポリマ
ーと、少なくとも5つの糖類結合因子を接触させる工程、および前記炭水化物ポ
リマーが、該少なくとも5つの糖類結合因子の各々に結合するか否かを決定する
工程を、さらに包含する、工程。
(5) 項目2に記載の方法であって、前記第1の糖類結合因子お
よび前記第2の糖類結合因子の結合が、以下:
a)表面上の前決定された位置に付着する、少なくとも1つの第1の糖類結合因
子を含む、該表面を提供する工程;
b)該表面を、該第1の糖類結合因子と炭水化物ポリマーの間での第1の複合体
の形成を可能にする条件下で、該炭水化物ポリマーと接触させる工程;
c)該表面を、該第1の複合体と第2の糖類結合因子の間での第2の複合体の形
成を可能にする条件下で、少なくとも1つの該第2の糖類結合因子と接触させる
工程;および
d)該第2の複合体において、該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因
子を同定する工程、
によって決定される、方法。
(6) 項目2に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因子が
、さらに、検出可能な標識を含み、そして、該第2の糖類結合因子が、該標識を
検出することによって同定され、そして、前記第1の糖類結合因子が、基質上の
該検出された標識の位置を決定することによって同定される、方法。
(7) 項目6に記載の方法であって、前記検出可能な標識が、色
素生産性標識、放射標識、蛍光標識およびビオチン化標識からなる群から選択さ
れる、方法。
(8) 項目6に記載の方法であって、前記表面が、該表面上に付
着された、少なくとも5つの糖類結合因子を含む、方法。
(9) 項目6に記載の方法であって、前記表面が、少なくとも5
つの第2の糖類結合因子と接触される、方法。
(10) 項目6に記載の方法であって、前記表面が、少なくとも
5つの第2の糖類結合因子と接触される、方法。
(11) 項目6に記載の方法であって、前記第1の糖類結合因子
が、レクチン、糖類切断酵素、および糖類に対する抗体からなる群から選択され
る、方法。
(12) 項目6に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因子
が、レクチン、多糖類切断酵素、または多糖類修飾酵素および糖類に対する抗体
からなる群から選択される、方法。
(13) 項目6に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマーが
、糖類切断因子によって消化された後に提供される、方法。
(14) 項目6に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマーが
、前記糖類と前記第2の糖類結合因子を接触させる前に、糖類切断因子によって
消化される、方法。
(15) 項目1に記載の方法であって、前記第1のフィンガープ
リントおよび前記第2のフィンガープリントが、少なくとも5つの糖類結合因子
に関する情報を含む、方法。
(16) 項目1に記載の方法であって、試験糖タンパク質が生物
学的流体中に存在する、方法。
(17) 項目16に記載の方法であって、前記生物学的流体が、
血液、血清、尿、唾液、乳、導管流体、涙、および精液からなる群から選択され
る、方法。
(18) 糖タンパク質を同定するための方法であって、以下:
試験糖タンパク質の第1のフィンガープリントを提供する工程であって、該第
1のフィンガープリントが、第1の糖タンパク質についての、少なくとも、第1
の糖類結合因子、および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントと、少なくとも1つの参照フィンガープリントを
比較する工程であって、該参照糖タンパク質フィンガープリントが、少なくとも
1つの参照糖タンパク質についての、少なくとも、該第1の糖類結合因子、およ
び該第2の結合因子に関する結合情報を含む、工程、
これによって、該試験糖タンパク質を同定する工程、
を包含する、方法。
(19) 項目18に記載の方法であって、前記第1のフィンガー
プリントおよび前記参照フィンガープリントが、少なくとも5つの糖類結合因子
に関する情報を包含する、方法。
(20) 項目18に記載の方法であって、前記第1のフィンガー
プリントが、以下:
第1の炭水化物ポリマーを含む、第1の糖タンパク質を提供する工程、
該第1の炭水化物ポリマーと前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第1の炭水化物ポリマーが該第1の糖類結合因子に結合するか否かを決定す
る工程;
前記炭水化物ポリマーと前記第2の糖類結合因子を接触させる工程であって、
該第2の糖類結合因子が、検出可能な標識を含む、工程;および
該第1の炭水化物ポリマーが、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定
する工程、
これによって、該第1の糖タンパク質のフィンガープリントを生成する、工程

を包含する方法によって同定される、方法。
(21) 項目18に記載の方法であって、前記参照フィンガープ
リントが、以下:
第2の炭水化物ポリマーを含む、第2の糖タンパク質を提供する工程
前記炭水化物ポリマーと前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第2の炭水化物ポリマーが、該糖類結合因子に結合するか否かを決定する工
程;
該第2の炭水化物ポリマーと前記第2の糖類結合因子を接触させる工程であっ
て、該第2の糖類結合因子が、検出可能な標識を含む、工程;および
該炭水化物ポリマーが、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工
程、
これによって、該第2の糖タンパク質のフィンガープリントを生成する工程
を包含する方法によって同定される、方法。
(22) 項目21に記載の方法であって、前記第1の炭水化物ポ
リマーと少なくとも5つの糖類結合因子を接触させる工程、および、該炭水化物
ポリマーが、該少なくとも5つの糖類結合因子の各々に結合するか否かを決定す
る工程を、さらに包含する、方法。
(23) 項目22に記載の方法であって、前記第1の糖類因子お
よび前記第2の糖類因子の結合が、以下:
a)表面上の前決定された位置に付着される、少なくとも1つの第1の糖類結
合因子を含む該表面を提供する工程;
b)該第1の糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間での第1の複合体の形成
を可能とする条件下で、該表面と該炭水化物ポリマーとを接触させる、工程;
c)該第1の複合体と前記第2の糖類結合因子との間での第2の複合体の形成
を可能とする条件下で、該表面と少なくとも1つの第2の糖類結合因子を接触さ
せる工程;および
d)該第2の複合体における、該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合
因子を同定する工程、
によって決定される、方法。
(24) 項目23に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因
子が検出可能な標識をさらに含み、そして、該第2の糖類結合因子が該標識を検
出する工程によって同定され、そして、前記第1の糖類結合因子が基質上の該検
出された標識の位置を決定する工程によって同定される、方法。
(25) 項目24に記載の方法であって、前記検出可能な標識が
、色素生産性標識、放射標識、蛍光標識およびビオチン化標識からなる群から選
択される、方法。
(26) 項目23に記載の方法であって、前記表面が、該表面上
に付着「された、少なくとも5つの糖類結合因子を含む、方法。
(27) 項目23に記載の方法であって、前記表面が、少なくと
も5つの第2の糖類結合因子と接触する、方法。
(28) 項目26に記載の方法であって、前記表面が、少なくと
も5つの第2の糖類結合因子と接触する、方法。
(29) 項目23に記載の方法であって、前記第1の糖類結合因
子が、レクチン、糖類切断酵素、および糖類に対する抗体からなる群から選択さ
れる、方法。
(30) 項目23に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因
子が、レクチン、多糖類切断酵素、または多糖類修飾酵素および糖類に対する抗
体からなる群から選択される、方法。
(31) 項目23に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマー
が、糖類切断因子によって消化された後に提供される、方法。
(32) 項目25に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマー
が、前記糖類と前記第2の糖類結合因子を接触させる前に、糖類切断因子によっ
て消化される、方法。
(33) 糖タンパク質を改変する方法であって、以下:
試験糖タンパク質の第1のフィンガープリントを提供する工程であって、該第
1のフィンガープリントが、第1の糖タンパク質についての少なくとも第1の糖
類結合因子、および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントと、少なくとも1つの参照フィンガープリントを
比較する工程であって、該参照フィンガープリントが、少なくとも1つの参照糖
タンパク質についての、少なくとも該第1の糖類結合因子、および該第2の糖類
結合因子に関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントおよび該参照フィンガープリントにおける差異を
同定する、工程;および
該第1のフィンガープリントおよび該参照フィンガープリントにおける差異を
減少または増加させるために、試験糖タンパク質を変化させる工程であって、こ
れによって、該糖タンパク質を改変する工程、
を包含する、方法。
(34) 項目33に記載の方法であって、前記変させる工程が、
前記第1のフィンガープリントと前記参照フィンガープリントとの間の差異を減
少させる、方法。
(35) 項目33に記載の方法であって、前記変化させる工程が
、前記第1のフィンガープリントと前記参照フィンガープリントとの間の差異を
増加させる、方法。
(36) 項目33に記載の方法であって、前記変化させる工程が
、該変化した試験糖タンパク質のフィンガープリントを生成する工程、および前
記変化した試験糖タンパク質のフィンガープリントと前記参照フィンガープリン
トを比較する工程、を包含する、方法。
(37) 第1の多糖類および第2の多糖類の関係性を決定するため
の方法であって、以下:
第1の多糖類の第1のフィンガープリントを提供する工程であって、該第1の
フィンガープリントが、該第1の多糖類についての、少なくとも第1の糖類結合
因子、および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
第2の多糖類の第2のフィンガープリントを提供する工程であって、該第2の
フィンガープリントが、該第2の多糖類についての、少なくとも該第1の糖類結
合因子、および該第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントおよび該第2のフィンガープリントを比較する工
程であって、該比較する工程が、該第1の多糖類および該第2の多糖類が該第1
の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工程、ならびに該第1の多糖類およ
び該第2の多糖類が該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工程、こ
れによって、該第1の多糖類および該該2の多糖類の関係性を決定する工程を包
含する、工程、
を包含する、方法。
(38) 項目37に記載の方法であって、前記第1の多糖類が、
より大きい多糖類のフラグメントとして提供される、方法。
(39) 項目37に記載の方法であって、前記第2の多糖類が、
既知の生物的特性に関連する、方法。
(40) 項目37に記載の方法であって、前記第1のフィンガー
プリントおよび前記第2のフィンガープリントが、少なくとも5つの糖類結合因
子に関する情報を含む、方法。
(41) 項目37に記載の方法であって、前記第1のフィンガー
プリントが、以下
前記第1の多糖類を提供する工程、
該第1の多糖類と、前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第1の多糖類が、該第1の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工程;
該第1の多糖類と、前記第2の糖類結合因子とを接触させる工程であって、該
第2の糖類結合因子が、検出可能な標識を含む、工程;および
該第1の多糖類が、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工程、
これによって、該第1の糖類のフィンガープリントを生成する工程、
を包含する方法によって同定される、方法。
(42) 項目41に記載の方法であって、前記第2のフィンガー
プリントが、以下:
第2の炭水化物ポリマーを含む、第2の多糖類を提供する工程、
前記炭水化物ポリマーと前記第1の糖類結合因子を接触させる工程;
該第2の炭水化物ポリマーが、前記糖類結合因子に結合するか否かを決定する
工程;
該第2の炭水化物ポリマーと前記第2の糖類結合因子を接触させる工程であっ
て、該第2の糖類結合因子が、検出可能な標識を含む、工程;および
該炭水化物ポリマーが、該第2の糖類結合因子に結合するか否かを決定する工
程、
これによって、該第2の多糖類のフィンガープリントを生成する、工程
を包含する方法によって同定される、方法。
(43) 項目41に記載の方法であって、前記第1の炭水化物ポ
リマーと少なくとも5つの糖類結合因子を接触させる工程、および、該炭水化物
ポリマーが、該少なくとも5つの糖類結合因子の各々に結合するか否かを決定す
る工程を、さらに包含する、方法。
(44) 項目41に記載の方法であって、前記第1の糖類因子お
よび前記第2の糖類因子の結合が、以下:
a)表面上の前決定された位置に付着される、少なくとも1つの第1の糖類結
合因子を含む該表面を提供する工程;
b)該第1の糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間での第1の複合体の形成
を可能とする条件下で、該表面と該炭水化物ポリマーとを接触させる工程;
c)該第1の複合体と該第2の糖類結合因子との間での第2の複合体の形成を
可能とする条件下で、該表面と少なくとも1つの第2の糖類結合因子とを接触さ
せる、工程;および
d)該第2の複合体における、該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合
因子を同定する、工程、
によって決定される、方法。
(45) 項目44に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因
子が検出可能な標識をさらに含み、そして、該第2の糖類結合因子が該標識を検
出する工程によって同定され、そして、前記第1の糖類結合因子が基質上の該検
出された標識の位置を決定する工程によって同定される、方法。
(46) 項目45に記載の方法であって、前記検出可能な標識が
、色素生産性標識、放射標識、蛍光標識およびビオチン化標識からなる群から選
択される、方法。
(47) 項目44に記載の方法であって、前記表面が、該表面上
に付着された、少なくとも5つの糖類結合因子を含む、方法。
(48) 項目44に記載の方法であって、前記表面が、少なくと
も5つの第2の糖類結合因子と接触する、方法。
(49) 項目44に記載の方法であって、前記表面が、少なくと
も5つの第2の糖類結合因子と接触する、方法。
(50) 項目44に記載の方法であって、前記第1の糖類結合因
子が、レクチン、多糖類切断酵素、および糖類に対する抗体からなる群から選択
される、方法。
(51) 項目44に記載の方法であって、前記第2の糖類結合因
子が、レクチン、多糖類切断酵素、または多糖類修飾酵素および糖類に対する抗
体からなる群から選択される、方法。
(52) 項目44に記載の方法であって、前記第1の多糖類が、
糖類切断因子によって消化された後に提供される、方法。
(53) 項目44に記載の方法であって、前記第1の多糖類が、
該第1の多糖類と前記第2の糖類結合因子とを接触させる前に、糖類切断因子に
よって消化される、方法。
(54) 多糖類を改変するための方法であって、以下:
試験多糖類の第1のフィンガープリントを提供する工程であって、該第1のフ
ィンガープリントが、第1の多糖類についての、少なくとも第1の糖類結合因子
および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントと少なくとも1つの参照フィンガープリントを比
較する工程であって、該参照フィンガープリントが、少なくとも1つの参照多糖
類についての、少なくとも該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因子に
関する結合情報を含む、工程;
該第1のフィンガープリントおよび該参照フィンガープリントにおける差異を
同定する工程;および
該第1のフィンガープリントおよび該参照フィンガープリントにおける差異を
減少または増加させるために、該試験多糖類を変化させる工程であって、これに
よって、該多糖類を改変する、工程、
を包含する、方法。
(55) 項目54に記載の方法であって、前記変化させる工程が
、前記変化した試験多糖類のフィンガープリントを生成する工程、および、該変
化した試験多糖類のフィンガープリントと前記参照フィンガープリントを比較す
る工程を包含する、方法。
(56) 項目54に記載の方法によって生成される、多糖類。
(57) 項目56に記載の多糖類を含む、複数の多糖類。
(58) 項目57に記載の複数を含む、基質。
(59) 被験体中の炭水化物ポリマーに関連する病理を診断する方
法であって、以下:
該病理を有すると疑われる被験体から、炭水化物ポリマーの試験フィンガープ
リントを提供する工程;および
該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって
、該試験フィンガープリントが、病理症状が既知の参照サンプルにおける炭水化
物ポリマー由来であって、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリン
トの間の一致が、該被験体および該参照サンプルが同じ病理状態を有することを
示す、工程、
を包含する、方法。
(60) 項目59に記載の方法であって、前記参照サンプルがデ
ータベースを含む、方法。
(61) 項目59に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマー
が、糖タンパク質、多糖類または糖脂質である、方法。
(62) 項目59に記載の方法であって、前記被験体がヒトであ
る、方法。
(63) 炭水化物ポリマーに関連する機能を同定する方法であって
、以下:
試験サンプルから、炭水化物ポリマーの試験フィンガープリント提供する、工
程;および
該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって
、該試験フィンガープリントが、機能的状態が既知である炭水化物ポリマー由来
であって、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリントの間の一致が
、被験体および参照サンプルが同じ機能的状態を有することを示す、工程、
を包含する、方法。
(64) 項目63に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマー
が、糖タンパク質、多糖類、または糖脂質である、方法。
(65) 項目63に記載の方法であって、前記炭水化物ポリマー
が、糖タンパク質である、方法。
(66) 炭水化物ポリマーを同定する方法であって、以下:
炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントを提供する工程;および
該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって
、該試験フィンガープリントが、本体が既知である参照炭水化物ポリマー由来で
あり、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリントの間の一致が、被
験体および参照炭水化物サンプルが同一であることを示す、工程、
を包含する、方法。
(67) 炭水化物ポリマーの構造を調節する因子を同定する方法で
あって、以下:
該炭水化物ポリマーを含む生物学的サンプルを提供する工程;
該サンプルと試験因子を接触させる工程;
該サンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープ
リントを同定する、工程;
該炭水化物ポリマーフィンガープリントと該因子と接触していないサンプル中
の該1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリントを比較
する、工程;
試験フィンガープリントおよび参照フィンガープリントでの該炭水化物フィン
ガープリントの性質における差異を、存在する場合、同定する工程、
これによって、炭水化物ポリマーの構造を調節する因子を同定する工程、
を包含する、方法。
(68) 炭水化物ポリマーに関連する病態生理学のための候補治療
因子を同定する方法であって、以下:
該炭水化物ポリマーを発現できる細胞を含む、試験生物学的サンプルを提供す
る工程;
該試験生物学的サンプルと試験因子を接触させる工程;
該生物学的サンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの、炭水化物ポリマーフ
ィンガープリントを同定する工程;
該炭水化物ポリマーフィンガープリントと、病態生理学的状態が既知である少
なくとも1つの細胞を含む参照生物学的サンプルにおける、1つ以上の炭水化物
ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリントを比較する工程;および
該試験生物学的サンプルおよび該参照生物学的サンプルでの該炭水化物フィン
ガーの性質における差異を、存在する場合、同定する工程、
これによって、該炭水化物ポリマーに関連する病態生理学のための、治療因子
を同定する、工程
を包含する、方法。
(69) 被験体中の炭水化物ポリマーに関連する病態生理学の処置
に適する、個別化された治療因子を同定する方法であって、以下:
該炭水化物ポリマーを含む生物学的サンプルを、該被験体から提供する工程;
該試験生物学的サンプルと試験因子を接触させる工程;
該生物学的サンプルにおいて、1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマ
ーフィンガープリントを同定する工程;
該炭水化物ポリマーフィンガープリントと、病態生理学的状態が既知である参
照生物学的サンプルにおける、該1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマ
ーフィンガープリントを比較する工程;および
該試験生物学的サンプルおよび参照生物学的サンプルでの該炭水化物フィンガ
ーの性質における差異を、存在する場合、同定する工程、
これによって、該被験体のための個別化された治療因子を同定する工程、
を包含する、方法。
(70) 炭水化物ポリマーに関連する病態生理学の処置の効果を評
価する方法であって、以下:
該炭水化物ポリマーを含む試験生物学的サンプルを、被験体から提供する工程

該炭水化物ポリマーの炭水化物フィンガープリントを決定する工程;および
該ポリマーの炭水化物フィンガープリントと、参照炭水化物ポリマーフィンガ
ープリントを比較する工程であって、該参照炭水化物ポリマーフィンガープリン
トが、病態生理学的状態が既知である炭水化物ポリマー由来である、工程;
これによって、該被験体における病態生理学の処置の効果を評価する工程、
を包含する、方法。
(71) 被験体中の炭水化物ポリマー媒介経路に関連する、病態生
理学を処置する方法であって、患者中の炭水化物ポリマーを調節する因子を該被
験体に投与する工程を包含し、該調節が、該患者中の炭水化物ポリマーフィンガ
ープリントを変化させる、方法。

(発明の要旨)
本発明は、所定の炭水化物ポリマーに結合する薬物を短時間で正確に同定する
方法の発見に一部基づく。また、本発明により、糖類結合因子に対する結合パタ
ーンに基づいた炭水化物ポリマーのフィンガープリントを作製する方法も提供さ
れる。
1つの局面では、本発明は、第1炭水化物ポリマーおよび第2炭水化物ポリマ
ー(例えば、第1糖タンパク質および第2糖タンパク質、または、第1多糖類お
よび第2多糖類)の関連性を決定する方法を特徴とする。その方法は、第1炭水
化物ポリマーの第1フィンガープリントを提供する工程を包含し、ここで第1フ
ィンガープリントは、第1炭水化物ポリマーに関する、少なくとも第1糖類結合
因子の結合情報、および第2糖類結合因子の結合情報を包含する。第2炭水化物
ポリマーの第2フィンガープリントもまた提供される。第2フィンガープリント
は、第2炭水化物ポリマーに関する、少なくとも第1糖類結合因子および第2糖
類結合因子の結合情報を含む。
第1フィンガープリントおよび第2フィンガープリントは、第1糖タンパク質
および第2糖タンパク質が第1糖類結合因子に結合するかどうか、ならびに、第
1糖タンパク質および第2糖タンパク質が第2糖類結合因子に結合するかどうか
を決定することにより比較される。第1フィンガープリントと第2フィンガープ
リントとの間の類似性は、第1糖タンパク質および第2糖タンパク質の関連性を
示す。
さらなる局面において、本発明は、試験炭水化物ポリマーの第1フィンガープ
リントを提供することにより炭水化物ポリマー(例えば、糖タンパク質、多糖類
、または糖脂質)を同定する方法を特徴とし、ここで、第1フィンガープリント
は、第1炭水化物ポリマーに関する、少なくとも第1糖類結合因子の結合情報お
よび第2糖類結合因子の結合情報を含む。第1フィンガープリントは少なくとも
1つの参照フィンガープリントと比較され、ここで、参照炭水化物ポリマーのフ
ィンガープリントは、少なくとも1つの参照炭水化物ポリマーに関する、少なく
とも第1糖類結合因子および第2糖類結合因子の結合情報を含む。同様に、第1
フィンガープリントと参照フィンガープリントとの間で類似の(例えば、同一な
)フィンガープリントは、試験炭水化物ポリマーが参照炭水化物ポリマーに類似
であること、例えば同一であること、を示す。
なおさらなる局面において、本発明は、試験炭水化物ポリマーの第1フィンガ
ープリントを提供することにより、炭水化物ポリマー(例えば、糖タンパク質、
多糖類、または糖脂質)を改変する方法を包含する。第1フィンガープリントは
、第1炭水化物ポリマーに関する、少なくとも第1糖類結合因子の結合情報およ
び少なくとも第2糖類結合因子の結合情報を含む。
第1フィンガープリントは、少なくとも1つの参照フィンガープリントと比較
される。参照フィンガープリントは、参照炭水化物ポリマーに関する、少なくと
も第1糖類結合因子の結合情報および第2糖類結合因子の結合情報を包含し得る
。第1フィンガープリントと参照フィンガープリントとの間の差異が同定される
。試験炭水化物ポリマーは、次いで、そのフィンガープリントが所望される場合
、参照炭水化物ポリマーのフィンガープリントに関して増加または減少されるよ
うに改変される。
本発明において、炭水化物ポリマーを含む化合物(例えば、糖タンパク質)の
合成方法もまた包含される。例えば、1つの実施形態において、本発明は、ポリ
ペプチドを提供すること、および/またはポリペプチドに炭水化物ポリマーを結
合させて、所望される改変糖タンパク質を作製することにより、糖タンパク質を
作製する工程を包含する。
さらなる局面において、本発明は、炭水化物ポリマーを特徴付ける方法を特徴
とする。炭水化物ポリマーは、第1糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間で第
1複合体の形成を可能とする条件下において、表面上の予め決定された位置に結
合した少なくとも1つの第1糖類結合因子を含む表面と接触される。その表面は
次いで、第1複合体と第2糖類結合因子との間で第2複合体の形成を可能とする
条件下において、少なくとも1つの第2糖類結合因子と接触される。第1糖類結
合因子および第2糖類結合因子はついで同定され、それによって炭水化物ポリマ
ーを特徴付ける。
本発明により、炭水化物ポリマーを第1糖類結合因子と接触させる工程、この
炭水化物ポリマーが糖類結合因子に結合するかどうかを決定する工程、炭水化物
ポリマーを第2糖類結合因子と接触させる工程、および炭水化物ポリマーが第2
糖類結合性試薬に結合するかどうかを決定する工程により、炭水化物ポリマーの
フィンガープリントを製作する方法が提供される。第1糖類結合因子および第2
糖類結合因子の同定は、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを製作するため
に使用される。
好ましい実施形態において、本明細書に記載される方法にて使用されるフィン
ガープリントは、炭水化物ポリマーを提供する工程、および炭水化物ポリマーを
第1糖類結合因子と接触させる工程を包含する方法により同定される。次いで、
炭水化物ポリマーが第1糖類結合因子と結合するか否かに関して決定がなされる
炭水化物ポリマーはまた、好ましくは検出可能な標識を含む第2糖類結合因子
と接触される。炭水化物ポリマーが第2糖類結合因子と結合するか否かについて
もまた、決定がなされる。第1糖類結合因子および第2糖類結合因子の結合に関
して集められた情報は、炭水化物ポリマーのフィンガープリントを製作するため
に編集される。
より好ましい実施形態において、第1および第2の糖類結合因子の結合は、表
面上の予め決定された位置に結合された、少なくとも1つの第1糖類結合因子を
含む表面を提供すること、および第1糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間で
第1複合体の形成を可能とする条件下において、表面を炭水化物ポリマーと接触
させることにより、決定される。表面はまた、第1複合体と第2糖類結合因子と
の間で第2複合体の形成を可能とする条件下において、少なくとも1つの第2糖
類結合因子と接触される。表面上の特定の位置での第2結合因子の同定は、表面
のその位置に結合された、対応する第1糖類結合因子の同定もまた可能とする。
別の局面において、本発明は、(炭水化物ポリマー)を含む生物学的サンプル
を試験薬剤と接触させること、およびサンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマー
の1つの炭水化物ポリマーフィンガープリントを同定することにより、炭水化物
ポリマーの構造を調節する薬剤を同定する方法が提供される。炭水化物ポリマー
フィンガープリントは、薬剤と接触されない試料中の炭水化物ポリマーの1つの
炭水化物ポリマーフィンガープリントと比較される。炭水化物ポリマープロフィ
ールにおける差異は、存在する場合には、試験フィンガープリントおよび参照フ
ィンガープリントにおいて同定される。フィンガープリントプロフィールにおけ
る差異は、試験薬剤が炭水化物ポリマーの構造を調節することを示す。
本発明によりまた、炭水化物ポリマーに関連した病態生理学のための候補治療
剤を同定する方法を特徴とする。その方法は、炭水化物ポリマーを含む試験生物
学的サンプルを提供する工程、および試験の生物学的サンプルを試験薬剤と接触
させる工程を包含する。生物学的サンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭
水化物ポリマーフィンガープリントは、同定され、そして病態生理学的機能が既
知である参照生物学的サンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーからの1つの炭
水化物ポリマープロフィールフィンガープリントと比較される。炭水化物フィン
ガープロフィールにおける差異は、存在する場合は、試料生物学的サンプルおよ
び参照の生物学的サンプル中にて同定され、それにより炭水化物ポリマーと関連
した病体生理学についての治療剤を同定する。
さらなる局面において、本発明は、被験体より炭水化物ポリマーを含む生物学
的サンプルを提供すること、および試験生物学的サンプルを試験薬剤と接触させ
ることにより、被験体において炭水化物ポリマーに関連する病態生理を処置する
ためにふさわしい、個別に処方した治療剤を同定する方法を特徴とする。生物学
的サンプルにおける1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガー
プリントは同定され、病態生理学的な状態が既知である参照生物学的サンプル中
の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリントに対して
比較される。そして試験生物学的サンプル中に炭水化物フィンガープリントのプ
ロフィールおよび参照の生物学的サンプルにおける差異を、存在する場合には同
定する。
また本発明中に、炭水化物ポリマーに関連した病態生理の処置の有効性を評価
する方法がある。その方法は、被験体より炭水化物ポリマーを含む試験生物学的
サンプルを提供する工程、およびを炭水化物ポリマーの炭水化物フィンガープリ
ントを決定する工程を包含する。炭水化物フィンガープリントは、参照炭水化物
フィンガープリント(ここで参照炭水化物ポリマーフィンガープリントは、病態
生理学的状況が既知である炭水化物ポリマーに由来する)と比較され、それによ
り被験体において病態生理の処置の有効性が評価される。
また本発明中に、被験体中の炭水化物ポリマー媒介性の経路と関連した病態生
理学の処置の方法があり、この方法は、患者中の炭水化物ポリマーを調節する薬
剤を被験体に投与する工程を包含し、ここで、その調節は患者中の炭水化物フィ
ンガープリントを変更する。患者は好ましくはヒトの患者である。
また本発明中に、炭水化物ポリマーの構造を調節する薬剤を同定する方法があ
る。その方法は、炭水化物ポリマーを含む生物学的サンプルを提供する工程、お
よび試験薬剤とサンプルとを接触させる工程を包含する。サンプル中の1つ以上
の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリントが同定され、薬剤と
接触されないサンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィ
ンガープリントに対して比較される。炭水化物フィンガープリントプロフィール
における差異は、存在する場合は、試験フィンガープリントおよび参照フィンガ
ープリントにおいて同定され、これによって炭水化物ポリマーの構造を調節する
薬剤を同定する。
本発明はまた、炭水化物ポリマーを発現し得る細胞を含む試験生物学的サンプ
ルを提供すること;生物学的サンプルを試験薬剤と接触させること;生物学的サ
ンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリント
を同定すること;この炭水化物ポリマーフィンガープリントを、病態生理学的状
態が既知の少なくとも1つの細胞を含む参照生物学的サンプル中の1つ以上の炭
水化物ポリマーの炭水化物ポリマーフィンガープリントと比較すること;そして
試験生物学的サンプルおよび参照生物学的サンプル中の炭水化物フィンガープリ
ントプロフィールにおける差異(存在する場合)を同定し、それにより、炭水化
物ポリマーに関連する病態生理のための治療剤を同定することによって、炭水化
物ポリマーに関連した病態生理に対する候補治療剤の候補を同定する方法を提供
する。
本明細書においてまた、被験体中の炭水化物ポリマーに関連する病態生理を処
置するために適した個々に処方した治療剤を同定する方法が提供される。その方
法は、被験体より炭水化物ポリマーを含む生物学的サンプルを提供する工程;試
験生物学的サンプルを試験薬剤と接触させる工程;生物学的サンプル中の1つ以
上の炭水化物ポリマーの1つの炭水化物ポリマーフィンガープリントを同定する
工程;この炭水化物ポリマーフィンガープリントを、病態生理学的な状態が既知
である参照の生物学的サンプル中の1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物の炭
水化物ポリマーフィンガープリントと比較する工程;そして存在する場合には試
験生物学的サンプルおよび参照生物学的サンプル中の炭水化物フィンガープリン
トプロフィールにおける差異を同定し、それによって被験体のための個別に処方
した治療剤を同定する工程、を包含する。
さらなる局面において、本発明は炭水化物ポリマーに関連する病態生理の処置
の有効性を評価する方法を包含する。その方法は、被験体より炭水化物ポリマー
を含む試験生物学的サンプルを提供する工程;炭水化物ポリマーの炭水化物フィ
ンガープリントを決定する工程;そしてこのポリマーの炭水化物フィンガープリ
ントを参照炭水化物フィンガープリントと比較し(ここで、参照炭水化物ポリマ
ーフィンガープリントは、病態生理状態が既知である炭水化物ポリマーに由来す
る)、それにより、被験体における病態生理の処置の有効性を評価する工程を包
含する。
さらなる局面において、本発明は、患者における炭水化物ポリマーの活性また
はレベルを調節する薬剤を被験体に投与することにより、被験体における炭水化
物ポリマー媒介性の経路に関連する病態生理の処置の方法を包含する。ここで、
この調節は、患者における炭水化物ポリマーフィンガープリントを変更する。
好ましい実施形態において、本明細書に記載された方法にて同定されまたは利
用されるフィンガープリントの少なくとも1つは、複数のアドレス(各々のアド
レスは糖類結合因子の炭水化物ポリマーに対する結合に関係する多くの数値を含
む)を特徴とし、そしてフィンガープリントは以下の工程を包含する方法によっ
て分析される:(a)フィンガープリントの第1アドレスを少なくとも他のアド
レスと結びつけて、マップを作成する工程;(b)第1アドレスが少なくとも1
つの他のアドレスと一致する場合、マップが内部的に一致すると決定する工程;
(c)工程(a)および工程(b)を少なくとも1度繰り返して、少なくともも
う1つのマップを形成する工程;(d)上記マップを少なくとももう1つのマッ
プと比較して、これらのマップが相互に一致するかどうかを決定する工程;なら
びに(e)任意の相互に一致しないマップを除外する工程。好ましい実施形態に
おいて、その方法はさらに次の工程を包含する:(f)第2アッセイより実験デ
ータを受取る工程;(g)実験データを変換して第2フィンガープリントを形成
する工程;(h)第2フィンガープリントを用いて工程(a)および工程(b)
を実施して、第2フィンガープリントマップを形成する工程;(i)上記マップ
を第2フィンガープリントマップと比較して、これらのマップが相互に一致する
かどうかを決定する工程;ならびに(j)任意の相互に一致しないマップを排除
する工程。
所望される場合、工程(g)は、(i)実験データの形式を分析する工程;(
ii)形式が数値の形式ではない場合、実験データを少なくとも1つの数値に変
換する工程;ならびに(iii)少なくとも1つの数値より第2フィンガープリ
ントを作出する工程、をさらに包含し得る。
いくつかの実施形態において、第2アッセイからの実験データは、既知の機能
、既知の配列またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを有する既知の
炭水化物ポリマーに対して、糖類結合因子を接触させることにより得られる。
いくつかの実施形態において、第2アッセイは炭水化物ポリマーに関して同一
な実験条件下で実施される。
いくつかの実施形態において、第2アッセイは、炭水化物ポリマーに対する特
定の炭水化物ポリマー物質(糖類結合因子の炭水化物ポリマーへの結合に関して
同一である特定の炭水化物ポリマー物質)について、実施される。
いくつかの実施形態において、比較する工程は、外部データをサンプルの炭水
化物ポリマーフィンガープリントに組み込む工程を包含し、ここでフィンガープ
リントは複数のアドレスを特徴とし、各々のアドレスは糖類結合因子の、サンプ
ルの炭水化物ポリマーへの結合に関係する数値であり、その方法は以下の工程を
包含する:(a)外部データを変換して、外部フィンガープリントを形成する工
程であって、この外部データは、炭水化物ポリマーに対して行われた少なくとも
1つのアッセイを含む、工程;(b)外部フィンガープリントを、サンプルの炭
水化物ポリマーに対するフィンガープリントと比較する工程;ならびに(c)外
部のフィンガープリントが、サンプルの炭水化物ポリマーのフィンガープリント
と一致するかどうかを決定する工程。
いくつかの実施形態において、工程(a)はさらに以下の工程を包含する:(
i)外部データの形式を分析する工程;(ii)形式が数値形式でない場合、外
部データを少なくとも1つの数値に変換する工程;および(iii)少なくとも
1つの数値から外部のフィンガープリントを作出する工程。
あるいは、形式が数値の形式でない場合、外部フィンガープリントは外部デー
タより直接作出され得る。
いくつかの実施形態において、その方法は、さらに以下の工程により、炭水化
物ポリマーを特徴付けるためのマップを製作する工程を包含する:(a)炭水化
物ポリマーをフィンガープリントを用いて特徴付ける工程であって、そのフィン
ガープリントは多くのアドレスを特徴とし、各々のアドレスは炭水化物ポリマー
について実施された実験アッセイからのアッセイデータより得られる数値を含む
、工程;(b)フィンガープリントに従い、多くのマップを製作する工程;(c
)炭水化物ポリマーを特徴付けるために追加データを獲得する工程;(d)各々
のマップが追加データに一致するかどうかを決定する工程;および(e)マップ
が追加データに一致しない場合、マップを棄却する工程。好ましくは、各々のマ
ップは複数の要素を含み、各々の要素は、炭水化物ポリマーの少なくとも一部分
の機能、炭水化物ポリマーの少なくとも一部分の配列の炭水化物ポリマーの少な
くとも一部分の構造、およびそれらの組み合わせ、からなる群より選択される、
炭水化物ポリマーの少なくとも1つの機能を含む。
いくつかの実施形態において、炭水化物ポリマーは複数の単糖類を有する配列
の特徴とし、マップがその配列の少なくとも一部を特徴とするような配列の、少
なくとも一部分に対する配列情報に従って、工程(b)が実施される。
いくつかの実施形態において、炭水化物ポリマーの少なくとも1つの機能性エ
ピトープに従って工程(b)が実施され、少なくとも1つの機能性エピトープは
、マップが機能性エピトープを特徴とするような機能を有する炭水化物ポリマー
の少なくとも一部分である。
いくつかの実施形態において、炭水化物ポリマーは複数の単糖類を有する配列
の特徴とし、そして、マップが機能性エピトープおよび少なくとも配列の一部の
両方を特徴とするような、配列の少なくとも一部の配列情報に従って工程(b)
がまた実施される。
好ましくは、工程(c)は、炭水化物ポリマー上で実行される少なくとも1つ
のさらなる実験的アッセイからのアッセイデータを用いて実行される。
いくつかの実施形態において、少なくとも1つのアッセイが、炭水化物ポリマ
ーへの糖類結合因子の結合を決定するためであり、その結果、このアッセイデー
タは、炭水化物ポリマーへの糖類結合因子の結合が生じるか否かの検出から得ら
れる。
いくつかの実施形態において、この実験的アッセイは、炭水化物ポリマーに対
して特異的な炭水化物ポリマー材料において実行され、そして少なくとも1つの
さらなる異なるアッセイがまた、フィンガープリントに対するさらなるデータの
直接的な比較のために工程(c)に対して特異的な炭水化物ポリマー材料におい
て実行される。
好ましい実施形態において、この炭水化物ポリマーは、複数の単糖類を有する
配列を特徴とし、そしてここで工程(c)は、既知の機能、既知の配列、または
それらの組み合わせの少なくとも1つを有する既知の炭水化物ポリマーにおいて
実行される。
好ましい実施形態において、この実験的なアッセイは、炭水化物ポリマーに対
して特異的な炭水化物ポリマー材料において実行され、そしてこの実験的なアッ
セイはまた、フィンガープリントに対するさらなるデータの直接的な比較のため
に工程(c)について既知の炭水化物ポリマー上において実行される。いくつか
の実施形態において、このマップは、炭水化物ポリマーの全体的な特徴に関連す
る。
好ましくは、同定する工程はさらに、炭水化物ポリマーについてのマップを構
築する工程を包含し、この方法は以下の工程を包含する:(a)炭水化物ポリマ
ーにおいて実行される少なくとも1つの実験的アッセイから得られるアッセイデ
ータに従って、炭水化物ポリマーを特徴付ける工程;(b)アッセイデータを、
各アドレスがアッセイデータの値を特徴付ける複数のアドレスに分解する工程;
(c)各アドレスを少なくとも1つの他のアドレスと結びつけることによって、
複数のマップを形成する工程;および(d)炭水化物ポリマーの少なくとも1部
の機能、炭水化物ポリマーの少なくとも1部の配列、炭水化物ポリマーの少なく
とも1つの構造、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される炭水化物
ポリマーの特徴に対して、各アドレスでの値を相関させることによって、各マッ
プを特性ベクトルに変換する工程。
好ましい実施形態において、工程(c)は、マップのためのアドレスの組み合
わせ全てを決定するために徹底的に実行される。あるいは、またはさらに、工程
(c)は、帰納的に実行される。
好ましい実施形態において、工程(c)は、この特性が存在するか否かを決定
するために、特性ベクトルのための少なくとも1つのテンプレートに対して、こ
のアッセイを比較することによって実行される。
この方法は、さらに以下の工程を含む方法によって炭水化物ポリマーについて
マップを構築する工程を含み得る:(a)炭水化物ポリマーについての特徴デー
タを提供する工程;(b)特徴データから複数のマップを誘導する工程;(c)
炭水化物ポリマーを特徴付けるためのさらなるデータを得る工程;(d)さらな
るデータが複数のマップのそれぞれと一致するか否かを決定する工程;(e)さ
らなるデータがマップと一致しない場合、そのマップを除外する工程;および(
f)さらなるマップがさらなるデータおよび各残りのマップと一致する場合に限
り、さらなるマップを加える工程。
この方法は、既知の機能、既知の配列、またはこれらの組み合わせの少なくと
も1つを有する既知の炭水化物ポリマーに従って、サンプルの炭水化物ポリマー
を特徴付ける工程をさらに含み得る。この方法は、以下の工程を含む:(a)ア
ッセイデータを得るために、サンプルの炭水化物ポリマーについて少なくとも1
つの実験的アッセイを実行する工程;(b)比較のアッセイデータを得るために
、既知の炭水化物ポリマーについて同一の実験アッセイを実行する工程;および
(c)アッセイデータを比較のアッセイデータを比較することによって、既知の
炭水化物ポリマーに照らしてサンプルの炭水化物ポリマーを特徴付ける工程。
好ましくは、少なくとも1つの実験アッセイが、同一の実験アッセイとして同
一のアッセイ条件下で実行される。
特定の好ましい実施形態において、少なくとも1つの実験的アッセイは、炭水
化物ポリマーおよび既知の炭水化物ポリマーに対する糖類結合因子の結合を測定
するための少なくとも1つのアッセイを含む。
好ましい実施形態において、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは以下を
包含する方法によって同定される:第1の炭水化物ポリマーを提供する工程;第
1の炭水化物ポリマーを第1の糖類結合因子と接触させる工程;第1の炭水化物
ポリマーが第1の糖類結合因子と結合するか否かを測定する工程;炭水化物ポリ
マーを、第2の糖類結合因子と接触させる工程で、ここで第2の糖類結合因子が
、検出可能な標識を包含する工程;および第1の炭水化物ポリマーが、第2の糖
類結合因子に結合するか否かを決定する工程で、これによって炭水化物ポリマー
のフィンガープリントを作成する工程。
本明細書中に開示されるように、この方法は、炭水化物ポリマーを、少なくと
も5つの糖類結合因子と接触させる工程、および炭水化物ポリマーが少なくとも
5つの各糖類結合因子に結合するか否かを測定する工程をさらに含み得る。
いくつかの実施形態において、フィンガープリントは、実験データから得られ
るマップに従って炭水化物ポリマーを特徴付けるためのシステムおよび方法を用
いて、同定および比較される。好ましくは、このデータは、炭水化物ポリマーを
特徴付けるための複数の異なる型の実験アッセイから得られる。より好ましくは
、少なくとも1つのこのようなアッセイは、糖類結合因子が炭水化物ポリマーに
結合する工程を含む。次いで、好ましくは、1つ以上の炭水化物ポリマーの特徴
が特徴付けられる。
これらの特徴は、好ましくは、サンプルの炭水化物ポリマーを含むアッセイか
ら得られるデータのマップに由来する。より好ましくは、これらのマップは、よ
り抽象的な生物学的情報を提供する各レベルとともに複数のレベルで分析される
。最も好ましくは、データのより複雑な分析を支持するために、新しい型の実験
データが、各レベルで分析のプロセスに導入される。必要に応じて、そして最も
好ましくは、マップは、各レベルで、実験データと一貫性がないとして除外され
る。データ分析の連続的なレベルでの組み合わせ的爆発を予防するために、新し
いマップが、高いレベルで導入されている新しい実験的データに由来する場合に
限り、新しいマップは、最も好ましくは高いレベルで添加される。
本発明に従って、炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントを分析する
ための方法が提供され、このフィンガープリントは、複数のアドレスを特徴とし
、各アドレスは、炭水化物ポリマーに糖類結合因子が結合する工程に関する数値
を含み、この方法は、以下の工程を包含する:(a)第1のアドレスを、マップ
を形成するフィンガープリントの少なくとも1つの他のアドレスに接触させる工
程;(b)第1のアドレスについての値が、少なくとも1つの他のアドレスにつ
いての値と相反しない場合、内部干渉されるマップを測定する工程;(c)少な
くとも1つのさらなるマップを形成するために、少なくとも1度(a)および(
b)を反復する工程;(d)マップが、相互干渉するか否かを測定するために、
このマップを、少なくとも1つのさらなるマップと比較する工程;および(e)
任意の相互に相反するマップを除外する工程。
好ましくは、この方法は以下の工程をさらに包含する:(f)第2のアッセイ
から実験データを受け取る工程;(g)第2のフィンガープリントを形成するた
めに、実験データを変換する工程;(h)第2のフィンガープリントマップを形
成するために、第2のフィンガープリントを用いて(a)および(b)の工程を
実行する工程;(i)マップが相互干渉するか否かを決定するために、マップを
、第2のフィンガープリントマップと比較する工程;および(j)任意の相互に
相反するマップを除外する工程。
より好ましくは、工程(g)は、以下の工程をさらに包含する:(i)実験デ
ータの形式を分析する工程;(ii)形式が、数値の形式でない場合、実験デー
タを少なくとも1つの数値に変換する工程;および(iii)少なくとも1つの
数値から第2のフィンガープリントを作成する工程。
本発明の別の実施形態に従って、サンプルの炭水化物ポリマーについてのフィ
ンガープリントに外部データを統合するための方法が提供され、このフィンガー
プリントは複数のアドレスを特徴とし、各々のアドレスは、サンプルの炭水化物
ポリマーへの糖類結合因子の結合に関する数値を含み、この方法は以下の工程を
包含する:(a)外部フィンガープリントを形成するために外部データを変換す
る工程で、この外部データが炭水化物ポリマーにおいて実行されるアッセイの少
なくとも1つを含む工程;(b)外部フィンガープリントを、サンプルの炭水化
物ポリマーについてのフィンガープリントと比較する工程;および(c)外部フ
ィンガープリントが、サンプルの炭水化物ポリマーについてのフィンガープリン
トと一致するか否かを決定する工程;(d)フィンガープリントにおけるデータ
を用いて、外部データを、新しく決定されたフィンガープリントまたは「構造ベ
クトル」に組み込む工程。
本明細書中以下で、用語「糖分子」は、多糖類成分を有する任意の分子を含む
。例としては、多糖類、糖タンパク質、および糖脂質が挙げられる。
本明細書中以下で、用語「糖類結合因子」は、単糖類、少糖類、多糖類、また
はこれらの組み合わせである糖に結合し得る任意の実体をいい、レクチン、抗体
、糖質に結合するか、さもなくば認識する別のタンパク質、および多糖類を切断
するか、または改変する酵素を含むが、これらに限定されない。
本明細書中以下で、用語「炭水化物ポリマー」は、任意の多糖類、または少糖
類、または複数の結合した単糖類単位を含む他の構造をいう。
本明細書中以下で、用語「サンプルの炭水化物ポリマー」は、さらなる分析の
目的のために実験データが誘導される試験下の炭水化物ポリマーをいう。
本明細書中以下で、用語「比較炭水化物ポリマー」は、そのデータが、サンプ
ルの炭水化物ポリマーとの比較のために得られる炭水化物ポリマーをいう。この
対照の炭水化物ポリマーは、必要に応じて、その構造が既知である標準的な既知
の炭水化物ポリマーであり得る。
本明細書中以下で、用語「コンピュータのデバイス」は、操作システム(例え
ば、DOS、Windows(登録商標)TM、OS/2TMもしくはLinu
x)を有するパソコン(PC);MacintoshTMコンピュータ;操作シ
ステムとしてJAVA(登録商標)TM−OSを有するコンピュータ;図面のワ
ークステーション(例えば、Sun MicrosystemsTMおよびSi
licon GraphicsTMのコンピュータ、およびいくつかのバージョ
ンのUNIX(登録商標)操作システム(例えば、AIXTMもしくはSun
MicrosystemsTMのSOLARISTM)を有する他のコンピュー
タ);または任意の他の公知かつ利用可能な操作システム、またはラップトップ
、携帯型のコンピュータ、向上された携帯電話(例えば、WAPを可能にする携
帯電話)、前記で定義されたようなネットワークに結合され得、そして操作シス
テムを有する任意の分類の装着型コンピュータを含むがこれらに限定されない、
任意のデバイスを含むがこれらに限定されない。本明細書中以下で、用語「Wi
ndows(登録商標)TM」は、Windows(登録商標)95TM、Wi
ndows(登録商標)NTTM、Windows(登録商標)98TM、Wi
ndows(登録商標)CETM、Windows(登録商標)2000TM
およびMicrosoft Corp.(USA)による任意のアップグレード
されたバージョンのこれらの操作システムを含むが、これらに限られない。
本発明について、ソフトウェアアプリケーションは、実質的に任意の適切なプ
ログラミング言語に書き込まれ得、これは、当業者によって容易に選択され得る
。この選択されたプログラミング言語は、ソフトウェアアプリケーションが実行
されるものに従うコンピュータのデバイスと互換性があるべきである。適切なプ
ログラミング言語の例としては、C,C++およびJava(登録商標)が挙げ
られるが、これらに限られない。
加えて、本発明は、ソフトフェア、ファームウェアもしくはハードウェア、ま
たはこれらの組み合わせとして実行され得る。任意のこれらの実行について、方
法によって実行される機能的工程は、データプロセッサによって実行される複数
の命令として記載され得る。
特に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての技術用語および科学用
語は、本発明が属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
本明細書中に記載されるものと類似または等価の方法および材料が、本発明の実
行または試験において用いられ得るが、適切な方法および材料は、以下に記載さ
れる。本明細書中に記載される刊行物、特許明細書、特許および他の参考文献の
全ては、その全体を参考として援用される。コンフリクトの場合、定義を含む本
明細書を調節する。加えて、材料、方法、および例は、例示のみで限定を意図さ
れない。
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から
明らかにされる。
(発明の詳細な説明)
糖類結合因子に対する炭水化物ポリマーの結合状態を記載する情報を用いる炭
水化物ポリマーの同定および改変のための方法が、本発明によって提供される。
本明細書中で記載する方法において使用される炭水化物ポリマーは、多糖類部分
を含む任意の分子であり得る。従って、炭化水素は、多糖類および多糖類が第2
の分子に結合する(例えば、共有結合によって)分子であり得る。第2の分子は
、例えば、硫酸塩またはポリマーであり得る。炭水化物ポリマーは、例えば、糖
タンパク質または糖脂質であり得る。糖タンパク質の例は、増殖因子(例えば、
エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン(インターフェロンα、インタ
ーフェロンβ、インターフェロンγを含む)、ヒト慢性ゴナドトロピン(hCG
)、GCSF、抗トロンビンIII、インターロイキン(例えば、IL−2)お
よびhCG)を含む。
多糖類の例としては、例えば、グリコーゲン、デンプンセルロース、ヘパリン
、硫酸ヘパリン、硫酸ヘパリンのフラグメント、および細胞壁成分(例えば、細
菌のリポ多糖類または酵母の細胞壁において見出されるグルカン)が挙げられる
(炭水化物ポリマーの分析のための一般的な方法)
好ましい実施形態において、本明細書中に記載する方法において同定、改変ま
たは使用される炭水化物ポリマーは、多糖類の異型(例えば、ヘパリンまたは硫
酸ヘパリン)であり得る。例えば、炭水化物ポリマーの異型は、炭水化物ポリマ
ーの所望される構造的特性または機能的特性に基づいて選択され得る。例えば、
ヘパリンもしくは硫酸ヘパリンの異型、またはこれらの分子のフラグメント(例
えば、ヘパラナーゼによる切断に続いて生成されるもの)は、それらの高められ
た異型の能力に基づいて選択され得、細胞外基質の解離を調節するか、細胞移動
を促進するか、ケモカインのようなポリペプチドまたは増殖因子に結合するか、
炎症、脈管新生、腫瘍の転移、再狭窄、もしくは細胞増殖を調節するか、または
ヘパラナーゼの活性を調節する。
1つの局面において、本発明は、第1の炭水化物ポリマーおよび第2の炭水化
物ポリマー(例えば、2つ以上の糖タンパク質)の関連性を決定するための方法
を提供する。2つ以上の糖タンパク質の関連性を決定するために、第1の糖タン
パク質の第1のフィンガープリントが、第2の糖タンパク質の第2のフィンガー
プリントと比較される。第1のフィンガープリントは、第1の糖タンパク質につ
いて、少なくとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子についての結合
情報を含む。第2のフィンガープリントは、第2の糖タンパク質について、少な
くとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子についての結合情報を含む
第1のフィンガープリントおよび第2のフィンガープリントは、第1の糖タン
パク質および第2の糖タンパク質が、第1の糖類結合因子に結合するか否か、な
らびに第1の糖タンパク質および第2の糖タンパク質が、第2の糖類結合因子に
結合するか否かを測定することによって比較される。第1の糖タンパク質および
第2の糖タンパク質が、第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子について
同じ結合状態(すなわち、結合または非結合)を共有する程度は、第1の糖タン
パク質と第2の糖タンパク質との関連性を示す。
多糖類の関連性を決定するために、第1の多糖類の第1のフィンガープリント
が提供される。第1のフィンガープリントは、第1の多糖類に対する少なくとも
1つの第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子についての結合情報を含む
。第1のフィンガープリントは、第2の多糖類の第2のフィンガープリントと比
較され、ここで、第2のフィンガープリントは、第2の多糖類に対する少なくと
も第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子についての結合情報を含む。こ
の比較は、第1の多糖類および第2の多糖類が第1の糖類結合因子に結合するか
否か、ならびに第1の多糖類および第2の多糖類が第2の糖類結合因子に結合す
るか否かを決定する工程を含む。
本発明によって、炭水化物ポリマーのフィンガープリント情報を用いて炭水化
物ポリマーを同定するための方法もまた提供される。例えば、1つの実施形態に
おいて、試験糖タンパク質の第1のフィンガープリントが提供される。第1のフ
ィンガープリントは、第1の糖タンパク質について、少なくとも第1の糖類結合
因子および第2の糖類結合因子についての結合情報を含む。この第1のフィンガ
ープリントは、少なくとも1つの参照フィンガープリントと比較され、ここで、
参照糖タンパク質フィンガープリントは、少なくとも1つの参照糖タンパク質に
ついて、少なくとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子についての結
合情報を含む。
試験フィンガープリントと参照フィンガープリントとの間のフィンガープリン
トパターンにおける類似性は、試験糖タンパク質と参照糖タンパク質が関連する
ことを示す。例えば、同一のパターンは、試験糖タンパク質が参照糖タンパク質
と同一であることを示す。
フィンガープリント分析の情報は、所望の特性を含むか、または欠失する糖タ
ンパク質を改変するために用いられ得る。改変された糖タンパク質を作製するた
めに、第1の糖タンパク質について、少なくとも1つの第1の糖類結合因子およ
び第2の糖類結合因子についての結合情報を含む、第1のフィンガープリントが
、少なくとも1つの参照フィンガープリントと比較される。参照フィンガープリ
ントは、少なくとも1つの参照糖タンパク質について、少なくとも第1の糖類結
合因子および第2の糖類結合因子についての結合情報を含む。目的の特性に関す
る参照糖タンパク質の状態は、好ましくは既知である。第1のフィンガープリン
トおよび参照フィンガープリントにおける差異が検出され、そしてこの情報は、
試験糖タンパク質の炭水化物ポリマー成分を変更して第1のフィンガープリント
および参照フィンガープリントにおける差異を減少または増加するために用いら
れる。
いくつかの実施形態において、変更された試験糖タンパク質のフィンガープリ
ントが、生成され、そして参照フィンガープリントと比較される。
本発明によって、糖タンパク質の所望のアミノ酸配列を含むポリペプチドを提
供し、そして炭水化物ポリマーをこのポリペプチドに付着して所望の改変糖タン
パク質を生成することによって、糖タンパク質を合成する方法がまた提供される
。このポリペプチドは、所望される場合、化学的に合成され得る。あるいは、ペ
プチドは、組み換え的に発現され得る。
本明細書中に記載される方法の1つによって生成された炭水化物ポリマーもま
た、本発明内である。この炭水化物ポリマーは、その糖質剤結合特性についての
情報を用いて精製され得る。例えば、3つの異なる糖質剤に結合する既知の炭化
水素は、これらの薬剤を含むアフィニティーカラムを用いて精製され得る。
本発明はまた、被験体における炭水化物ポリマーと関連する病理を診断する方
法を含む。この病理を診断するために、病原性を有すると疑われる被験体からの
炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントが、参照フィンガープリントと比較
される。試験フィンガープリントは、その病理学的状態が既知の参照サンプルに
おける炭水化物ポリマーに由来する。試験フィンガープリントと参照フィンガー
プリントとの間の一致は、対象および参照サンプルが同じ病理学的状態を有する
ことを示す。例えば、参照サンプルが、病原性を有しない被験体(または被験体
の集団)に由来する場合、次いで試験対象と参照フィンガープリントとの間のフ
ィンガープリントにおける類似性は、試験対象が病理学的状態を有しないことを
示す。この参考のサンプルは、データベースから引き出され得る。
試験サンプルから炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントを提供し、そし
て試験フィンガープリントを参照フィンガープリントと比較することによって、
炭水化物ポリマーと関連する機能を同定する方法もまた、本発明内である。この
試験フィンガープリントは、その機能的状態が既知である炭水化物ポリマーに由
来する。試験フィンガープリントと参照フィンガープリントとの一致は、対象と
参照サンプルが同じ機能的状態を有することを示す。
(炭水化物ポリマーフィンガープリントの同定)
フィンガープリントはまた、既知でない炭水化物ポリマーサンプルからの試験
フィンガープリントを、その同一性が既知の炭水化物ポリマーに由来する参考の
フィンガープリントと比較することによって、炭水化物ポリマーを同定するため
に用いられ得る。試験フィンガープリントと参考のフィンガープリントとの間の
一致は、対象と参照炭化水素サンプルが同じであることを示す。
本明細書中で使用される場合、炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭
水化物ポリマーおよび複数の散在した結合剤の結合状態についての情報の編集物
である。いくつかの実施形態において、フィンガープリントは、糖類結合因子に
よる炭水化物ポリマーへの結合の存在の検出の数値表現である。
炭水化物ポリマーのフィンガープリントは、炭水化物ポリマーを第1の糖類結
合因子と接触させる工程および炭水化物ポリマーが糖類結合因子に結合するか否
かを測定する工程によって、生成され得る。この炭水化物ポリマーはまた、第2
の糖類結合因子と接触させられ、そして、測定は、第2の結合剤が炭水化物ポリ
マーと結合するか否かに従う。
炭水化物ポリマーは、好ましくは、少なくとも5つの糖類結合因子と接触させ
られ、そして測定は、炭水化物ポリマーが、少なくとも5つの各糖類結合因子に
結合するか否かに従う。好ましい実施形態において、少なくとも10、15、2
0、または25以上の薬剤に対する炭水化物ポリマーの結合が、測定される。
好ましい実施形態において、第1および第2の糖類結合因子の結合は、表面上
の所定の位置に付着された少なくとも1つの第1の糖類結合因子を含む表面を提
供する工程、および表面を、第1の糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間の第
1の複合体の形成を可能にする条件下で、炭水化物ポリマーと接触させる工程に
よって、測定される。非結合ポリマーは、所望される場合、除去され、そして表
面は、第1の複合体と第2の糖類結合因子との間で第2の複合体の形成を可能に
する条件下で、少なくとも1つの第2の糖類結合因子と接触させられる。次いで
、第1および第2の糖類結合因子は、同定され、そして発生した情報は、炭水化
物ポリマーについてのフィンガープリントを提供する。複数の第1および/また
は第2糖類結合因子を含むことによって、炭水化物ポリマーの詳細なフィンガー
プリントを作成することが可能である。当然、炭水化物ポリマーに第1または第
2の糖質剤が結合しないことがまた、多糖類について生成されるフィンガープリ
ントに役立つことが、当業者に明らかである。
第2の糖質剤は、好ましくは検出可能な標識を含む。第2の糖類結合因子が標
識される場合、第2の標識の同一性は、第2の糖類結合因子の同一性を測定する
。基質上の第2の標識の位置は、次に第1の糖類結合因子の同一性を明らかにす
る。
結合状態を評価するために、炭水化物ポリマーは、表面の所定の位置に付着さ
れる少なくとも1つの糖類結合因子を含む表面に添加される。炭水化物ポリマー
は、第1の糖類結合因子と炭水化物ポリマーとの間での複合体の形成を可能にす
る条件下で、表面と共にインキュベートされる。次いで、結合していない炭水化
物ポリマーを除去することが所望される場合、この表面は、洗浄され得る。次い
で、この表面は、第1の複合物と第2の糖類結合因子との間で第2の複合体の検
出を可能にする条件下で、第2の糖類結合因子と接触させられる。第2の薬剤は
、好ましくは、第2の複合体の形成を可能にする検出可能な標識を保有する。所
定の結合剤の位置に対応する基質上の位置での第2の複合物の検出は、第1およ
び第2の結合剤を炭水化物ポリマーに結合する薬剤として同定することを可能に
する。第1および第2の結合剤を検出する工程は、炭水化物ポリマーについての
構造の情報を提供する。
この方法は、第1に炭水化物ポリマーを表面と接触させ、次いで検出可能な標
識を添加することによって、説明されている一方で、この順序が必須でないこと
が理解される。従って、いくつかの実施形態において、第2の薬剤は、炭水化物
ポリマーと混合され、そしてこの複合体が、表面に添加される。
いくつかの実施形態において、複数の糖類結合因子が、表面に付着される。同
様に、複数の第2の検出可能な糖類結合因子が、用いられ得る。好ましい実施形
態において、複数の第1および第2の糖類結合因子の両方が、用いられる。
従って、種々の実施形態において、少なくとも5、10、15、25、30、
または50以上の、第1の糖類結合因子が、表面に結合される。好ましくは、第
1の糖類結合因子は、基質の、空間的に別の領域に結合される。他の実施形態に
おいて、少なくとも5、10、15、25、30、または50以上の第2の糖類
結合因子が、用いられる。好ましくは、各々の第2の糖類は、区別できるレベル
でそれに対して結合される(すなわち、一方の第2の糖類結合因子と他方の第2
の糖類結合因子を区別するレベル)。
本明細書中に使用される場合、「炭水化物ポリマー」は、多糖類成分を有する
任意の分子を含む。例としては、多糖類、糖タンパク質、および糖脂質が挙げら
れる。炭水化物ポリマーは、2つ以上の連結された単糖類残基を含む任意の糖類
分子を含むが、ほとんどの実施形態において、炭水化物ポリマーは、10、25
、50、1000、または10,000以上の単糖類単位を含むことが理解され
る。所望される場合、炭化水素ポリマーは、糖類切断因子を用いた消化の後に、
その表面に付加され得る。あるいは、その炭化水素ポリマーは、その表面に付加
され得、表面に結合された第1の糖類結合因子への結合を可能とし得、次いで、
糖類切断因子を用いて消化され得る。
一般的に、多糖類に結合する任意の因子は、第1の糖類結合因子または第2の
糖類結合因子として用いられ得る。当該分野において知られるように、糖類に結
合する多くの因子が、記載されている。1つのクラスの因子は、レクチンである
。これらのタンパク質の多くは、特定の短い少糖類配列に、特異的に結合する。
第2のクラスの因子は、糖類構造を特異的に認識する抗体である。第3のクラス
の糖類結合因子は、炭水化物残基に結合するタンパク質である。例えば、グリコ
シダーゼは、糖類鎖の中のグリコシル結合を切断する酵素である。いくつかのグ
リコシダーゼは、特定の少糖類配列を特異的に認識し得る。別のクラスの酵素は
、グリコシルトランスフェラーゼであり、この酵素は、糖類鎖を、切断するが、
さらに、1つの新しく作製された末端に、1単位の糖を移動させる。
本出願の目的のために、用語「レクチン」はまた、動物種由来の糖類結合タン
パク質(例えば、「哺乳動物レクチン」)を包含する。従って、DNAまたはタ
ンパク質のような炭水化物ポリマーは、より詳細に研究されるべき重要な生物学
的機能を、明白に有する。
好ましくは、糖類結合因子は、実質的に配列特異的因子である。本明細書中に
使用される場合、「実質的に配列特異的因子」とは、糖類に結合し得る因子を意
味する。その結合は、通常、配列特異的である(すなわち、その因子は、単糖類
単位の特定の配列にのみ結合する)。しかし、この因子は、他の関連する配列(
例えば、1つ以上の糖類が欠失、変更、または挿入された単糖類配列)に結合し
得るので、この配列特異性は、絶対的であり得ない。この因子はまた、所定の配
列の単糖類に加えて、1つ以上の関連しない配列、または単糖類と結合し得る。
実質的に配列特異的な因子は、通常、タンパク質(例えば、レクチン、サッカ
リッド特異的抗体、またはグリコシダーゼもしくはグリコシルトランスフェラー
ゼ)である。
糖類結合因子レクチンの例としては、以下の植物から単離されたレクチンが挙
げられる:
Figure 0004696100

他の生物学的に活性な、炭水化物結合化合物としては、サイトカイン、ケモカ
イン、および増殖因子が挙げられる。これらの化合物もまた、本特許出願に関す
るレクチンであると考えられる。
グリコシダーゼの例としては、α−ガラクトシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ
、N−アセチルヘキソサミニダーゼ、α−マンノシダーゼ、β−マンノシダーゼ
、α−フルコシダーゼ等が挙げられる。いくつかのこれらの酵素は、それらの単
離物の供給源に依存して、異なる特異性を有する。上記の酵素は、例えば、Ox
ford Glycosystems Ltd.、Abington、OX14
1RG、UK、Sigma Chemical Co.、St.Lois、M
o.、USA、またはPieace、POB.117、Rockford、61
105 USAから市販されている。
糖類結合因子はまた、切断因子でもあり得る。「切断因子」とは、その認識配
列で、糖類鎖を切断する、実質的に配列特異的な因子である。代表的な切断因子
は、グリコシダーゼであり、このグリコシダーゼとしては、エキソグリコシダー
ゼおよびエンドグリコシダーゼ、ならびにグリコシルトランスフェラーゼが挙げ
られる。しかし、グリコシド結合を切断し得る化学物試薬もまた、それらが実質
的に配列特異的である限り、切断因子として作用し得る。用語「切断因子(cl
eaving agent)」または「切断因子(cleavage agen
t)」とは、本明細書の文脈において、用語「切断し得る、実質的に配列特異的
な因子」と同意である。
切断因子は、認識配列で、作用し得る。本明細書中に使用される場合、「認識
配列」とは、実質的に配列特異的な因子によって認識される単糖類の配列である
。認識配列は、通常、2〜4の単糖類単位を含む。認識配列の例は、Galβ1
〜3 GalNAcであり、この配列は、Arachis hypogaeaよ
り精製されたレクチンによって認識される。本開示の目的のために、単一単糖類
は、実質的に配列特異的な因子によって特異的に認識される場合、認識配列とし
て定義され得る。
種々の実質的に配列特異的な因子についての反応条件は、当該分野において公
知である。あるいは、当業者は、各々の実質的に配列特異的な因子を用いる一連
の試験を、容易に実施し得、種々の反応条件下で、それらの結合活性を測定し得
る。有利には、特定の実質的に配列特異的な因子が反応する反応条件およびそれ
が不活性のままである条件の知見は、多数の実質的に配列特異的な因子が存在す
る反応を制御するために用いられ得る。例えば、第2の配列特異的試薬および第
3の配列特異的試薬は、この反応に同時に添加され得るが、反応条件の変化を介
して、第2の実質的に配列特異的な因子のみが、活性であることを可能とされ得
る。次いで、反応条件のさらなる変化は、第2の実質的に配列特異的な因子を不
活性化するためおよび第3の実質的に配列特異的な因子を活性化するために選択
され得る。反応条件のいくつかの例示的な例を、以下の表1に列挙する。表1に
列挙したpHおよび温度のデータに加えて、他の要因(例えば、Znのような金
属の存在、またはMn、Ca、Naのようなカチオンの塩(例えば、塩化ナトリ
ウム塩)の存在)は、最適な反応条件または特定の実質的に配列特異的な因子が
活性であり、一方で他の因子が不活性である条件を見出すために調査され得る。
Figure 0004696100

Figure 0004696100

・記号は、外因的な条件によって分離可能である酵素群を表す。
・Diversa Corp.は、種々のpHおよび温度において広範な種類の
活性を有するThermophilic Endo/Exoグリコシダーゼを生
産する。
・可能な条件はまた、金属および他のZn、Mn、Ca、NaClであり得る。
第1の糖類結合因子は、任意の当該分野で認識された方法を用いて、固定化さ
れ得る。例えば、固定化は、タンパク質の官能基(例えば、アミノ基、カルボキ
シ基、ヒドロキシル基、またはチオール基)を使用し得る。例えば、ガラス支持
体は、上記のPCT出願に記載されるように、エポキシシランとの反応によって
、エポード(epode)基で官能基化される。エポード基は、リジン残基の遊
離ε−アミノ基のようなアミノ基と反応する。別の機構は、PCT出願に記載さ
れるように、金のような電位計物質で表面を覆うことにある。そのような物質が
、チオール基と安定な結合体を形成する場合、タンパク質は、システイン残基の
遊離チオール基によってそのような物質に直接的に連結され得る。あるいは、チ
オール基は、従来の化学物質によってか、1つ以上のチオール基および遊離アミ
ノ基(例えば、システインのN−ヒドロキシルスクシンイミジルエステル)と反
応する基を含む分子との反応によってタンパク質へと導入され得る。チオール切
断可能な架橋剤(例えば、ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート))は
、タンパク質のアミノ基と反応し得る。続くスルフヒドリル剤での還元は、架橋
剤の遊離チオール基を曝露する。
いくつかの適用のために、特定の目的の炭水化物ポリマーに結合することが知
られているか、または結合することが予想される複数の糖類結合因子を含む基質
を設計することが、好ましい。例えば、ヘパリン、硫酸ヘパリン、またはフラグ
メント(例えば、ヘパラナーゼ消化によって産生されたフラグメント)、および
それらの多糖類の改変体形態は、それらの1種類以上のタンパク質(例えば、a
FGF、bFGF、PDGF、VEGF、VEGF−R、HGF、EGF、TG
F−β、MCP−1、MCP−2、およびMCP−3、IL−1、IL−2、I
L−3、IL−6、IL−7、IL−8、IL−10、およびIL−12、アネ
キシンIV、アネキシンV、およびアネキシンVI、MIP−1 α、MIP−
1 β、エコタキシン(ecotaxin)、トロンボスポンジン、PF−4、
IP−10、インターフェロンα、インターフェロンγ、スレクチンL、および
スレクチンP、アンチトロンビン、プラスミノーゲン活性化因子、ビトロネクチ
ン(vitronectin)、CD44、SOD、リポプロテインリパーゼ、
ApoE、フィブロネクチン、およびラミニン)と結合する能力についてスクリ
ーニングされ得る。これらの推定の因子は、表面に結合され得る(すなわち、第
1の糖類結合因子)。
他の実施形態において、特定の炭水化物ポリマーに結合することが知られてい
るか、または予想される糖類結合因子は、第2の糖類結合因子として提供され得
る。
第2の糖類結合因子に結合される標識は、検出されるか、または検出され得る任
意の標識であり得る。適切な標識の例としては、例えば、色素性標識、放射性標
識、蛍光標識、およびビオチン化標識が挙げられる。従って、その標識は、例え
ば、有色のレクチン、蛍光レクチン、ビオチン標識化レクチン、蛍光標識、蛍光
抗体、ビオチン標識化抗体、および酵素標識化抗体であり得る。好ましい実施形
態において、その標識は、色素性標識である。本明細書中に使用される場合、用
語「染色体結合因子」とは、糖類に結合する全ての因子を含み、そしてその因子
は、明確な色または他の検出可能なマーカーを有し、その結果、糖類への結合の
後、その糖類は、色または他のマーカーを得る。固有の、可視領域内で容易に観
察可能な色を有する化学的構造に加えて、用いられる他のマーカーとしては、蛍
光基、ビオチンタグ、酵素(これは、有色の生成物の形成を生じる反応に用いら
れ得る)、磁性および同位体性マーカーなどが挙げられる。前出の検出可能なマ
ーカーのリストは、例示目的のためのみのものであり、そして限定も、網羅も意
図されない。類似する文脈において、本明細書中に使用される場合(例えば、上
記の方法の工程(e)の文脈において)、用語「色」はまた、任意の検出可能な
マーカーを含む。
標識は、当該分野において公知の方法を用いて、第2の糖類結合因子に結合さ
れ得る。標識は、糖類または実質的に配列特異的な因子に結合され、その機能を
妨害しない、任意の検出可能な基を含む。標識は、ペルオキシダーゼおよびホス
ファターゼのような酵素であり得る。原理的には、グルコースオキシダーゼ、お
よびβ−ガラクトシダーゼのような酵素もまた用いられ得る。その際、糖類が、
そのような酵素と反応する単糖類単位を含む場合、その糖類は、改変され得るこ
とが考慮されなくてはならない。用いられ得るさらなる標識としては、Fluo
rescein、Texas Red、Lucifer Yellow、Rho
damine、Nile−red、テトラメチル−ローダミン−5−イソチオシ
アネート、1,6−ジフェニル−1,3,5−ヘキサトリエン、cis−Par
inaric acid、Phycoerythrin、Allophycoc
yanin、4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)、H
oechst 33258、2−アミノベンズアミドなどのような蛍光標識が挙
げられる。さらなる標識は、高電子密度金属(例えば、金)、リガンド、ハプテ
ン(例えば、ビオチン)、放射性標識が挙げられる。
第2の糖類結合因子は、酵素標識を用いて検出され得る。酵素標識の検出は、
ELISAおよび酵素的検出が通常用いられる他の技術の分野において周知であ
る。酵素は、商業的に入手可能である(例えば、Pierceのような会社より
)。
いくつかの実施形態において、その標識は、蛍光標識を用いて検出される。蛍
光標識は、特定の波長での励起および異なる波長での検出を必要とする。蛍光検
出のための方法は、当該分野において周知であり、そして多くの論文および教科
書が出版されている。この主題の刊行物のセレクションは、Pierceの19
94年のカタログ中、p.O−124〜O−126に見出され得る。蛍光標識は
、例えば、SIGMAのような会社、または上記のPierceのカタログより
商業的に入手可能である。
第2の糖類結合因子自体は、炭水化物部分および/またはタンパク質部分を含む
。タンパク質および糖への標識の結合は、当該分野において周知の技術である。
例えば、蛍光標識または放射性標識を用いて糖類を標識するための商業的なキッ
トは、Oxford Glycosystems、Abingdon、UKより
入手可能である。タンパク質を標識するためのそれらの使用に関する試薬および
指示は、上記のPierceのカタログより入手可能である。
結合は、通常、ヒドロキシル、アルデヒド、ケト、アミノ、スルフヒドリル、
カルボン酸などの基のような、官能基を用いて実施される。それらの基と反応す
る、多くの標識(例えば、蛍光標識)は、商業的に入手可能である。さらに、一
方で標識と反応し、そして他方でタンパク質または糖類と反応する、二機能架橋
剤が、用いられ得る。この架橋剤の使用は、タンパク質または糖類の機能の損失
を回避するために、有利であり得る。
この標識は、当該分野において公知の方法を用いて検出され得る。いくつかの
検出方法は、上記のWO 93/22678に記載され、その開示は、その全体
が、本明細書中に参考として援用される。CCD検出機法は、本発明の方法に特
に適し、それは、本出願に記載される。本方法は、特定の周波数の光を吸収する
標識と組み合わせて用いられ得、そしてVLSI表面への試験光源の経路をブロ
ックし、その結果、CCDセンサーは、標識された因子が結合した領域中の減少
された光量を検出する。この方法はまた、蛍光標識と共に用いられ得、そのよう
な標識が励起周波数の光を吸収するという事実を利用する。あるいは、このCC
Dセンサーは、励起後の蛍光標識の発光を検出するために用いられ得る。発光シ
グナルの、励起光からの分離は、異なる波長についての異なる感度を有するセン
サーを用いてか、または時間的分解能によって、あるいはそれらの両方の組み合
わせによって達成され得る。
いくつかの実施形態において、本方法は、さらに、第1の糖類結合因子および
糖類結合因子の1つ以上の画像を得ることを含む。その情報は、例えば、写真ま
たはデジタル化された画像として保存され得る。あるいは、第1の結合の画像お
よび第2の結合の画像によって提供される情報は、データベース中に保存され得
る。
本発明はまた、複数の複合体を含む基質を含む。各々の複合体は、基質上の予
め決定された位置に結合されている第1の糖類結合因子を含む。その基質はまた
、必要に応じて、第1の糖類結合因子および/または検出可能な第2の糖類結合
因子に結合されている糖類結合因子を含む。いくつかの実施形態において、この
基質は、固体支持体の形態で提供され、その基質は、予め規定された配列の、複
数の可視マーカーあるいは糖類または糖類配列もしくはフラグメントを代表する
他の検出可能マーカーを含む。好ましい基質は、ニトロセルロースである。
所望の場合、複数の第1の糖類結合因子を含む基質は、キットの形態で提供さ
れ得る。本発明の方法を用いる診断手順は、診断研究所、実験的研究所、開業医
、または私的な個人によって実施され得る。本発明は、これらの施設で用いられ
得る診断キットを提供する。特定の炭水化物ポリマーの存在または非存在は、糖
類結合因子とのその反応パターンによって明らかされるように、提供されたサン
プルにおいて明らかにされ得る。そのサンプルは、例えば、個体サンプルまたは
他のサンプルより得られる臨床サンプルであり得る。
好ましくは、各々のキットは、手順を特定にする糖類結合因子を含む。好まし
くは、その試薬は、棚での保存、その後、試験が実施される場合の反応培地との
置換または反応培地への添加に適切な固体形態または液体緩衝液で供給される。
適切な包装が、提供される。そのキットは、必要に応じて、その手順に有用なさ
らなる成分を提供し得る。これらの任意の成分としては、緩衝液、補足剤、展開
剤、標識、反応表面、検出のための方法、コントロールサンプル、指示、および
解釈の情報が挙げられる。
そのキットは、必要に応じて、検出可能な第2の糖類結合因子、および所望の
場合、第2の結合因子を検出する試薬を含む。好ましくは、複数の第1の糖類結
合因子は、基質上の予め決定された位置および検出可能な第2の糖類結合因子に
結合されている。他の実施形態において、基質およびその基質に結合され得る第
1の糖類結合因子、ならびに第2の糖類結合因子を備える、キットが、提供され
る。
本明細書中に記載されるフィンガープリントにおいて提供される情報はまた、
目的の炭水化物ポリマーを精製するために用いられ得る。例えば、炭水化物ポリ
マーは、それが結合する糖類結合因子に基づき精製機構を設計することによって
精製され得る。1つの実施形態において、その糖類結合因子は、カラム中に提供
され、そして炭水化物ポリマーを含む溶液は、そのカラムに導入される。目的の
炭水化物ポリマーは、カラム上に保持される。次いで、目的の炭水化物ポリマー
は、カラムより溶出され得る。1つの実施形態において、目的の炭水化物ポリマ
ーは、糖類結合因子が結合するカラムへのさらなる糖類結合因子の添加によって
用い、その因子は、目的の炭水化物ポリマーをカラムから取り除く。
少なくとも1つの共通の機能または構造的特徴あるいはその両方を共有する、
複数の炭水化物ポリマーまたはそのライブラリーを作製する方法もまた、本発明
の範囲内にある。いくつかの実施形態において、その炭水化物ポリマーは、集団
として提供される。所望の場合、それらは基質上に提供される。
好ましい実施形態において、その炭水化物ポリマーは、フォーカスライブラリ
(focus library)の形態で提供される(例えば、それらが共通の
リガンドに結合するか、または別の共通の機能的特徴もしくは構造的特徴を共有
することに起因して、そのフォーカスライブラリのメンバーは、選択される)。
例えば、種々の実施形態において、炭水化物ポリマーのライブラリーは、種々
の形態の多糖類(例えば、ラミナリン、ラミナリンスルフェート、ヘパリン、ま
たは硫酸ヘパリン)を含む。ヘパリンまたは硫酸ヘパリンの多糖類の改変体形態
に基づくライブラリーのメンバーは、その候補形態がヘパリンに関連する変更さ
れた特性を実証する能力に基づいて、選択され得る。例えば、その改変体は、細
胞外マトリクスの分離を調節すること、細胞の移動を促進すること、細胞の移動
を促進すること、ポリペプチド(例えば、ケモカインまたは増殖因子)に結合す
ること、炎症、血管新生、腫瘍転移、再狭窄または細胞増殖を調節すること、あ
るいはヘパラナーゼ活性を調節することについてのそれらの増強された能力に基
づき選択され得る。あるいは、そのライブラリーは、糖タンパク質の炭水化物ポ
リマー部分の改変体形態を含み得る。
そのライブラリーは、炭水化物ポリマーの集団を提供することによって構築さ
れる。いくつかの実施形態において、その炭水化物ポリマーの集団は、コンビナ
トリアルケミストリーに関する分野において公知の技術を用いて構築され得る。
炭水化物フィンガープリントは、その集団のうちの1つ以上のメンバーについて
作製される。その集団のメンバーまた、それが目的の機能または構造を示す程度
を決定するためにアッセイされる。所望の特性を有する集団のメンバーは、所望
される場合、さらなる特徴づけまたは改変について選択される。さらに、さらな
る改変体炭化水素ポリマーは、獲得した情報に基づき設計され得、所望される特
性を有する、改変された炭化水素ポリマー、またはフォーカスされたライブラリ
ーの集団を生じ得る。
本明細書中に記載される方法に関して作製されたフィンガープリントデータは
、さらに、USSN 60/246,009(2000年11月3日出願);お
よびUSSN 60/258,887(2000年11月3日出願)(これらの
内容は、その全体が、参考として援用され、そしてそれらは、以下に概説される
)に記載される手順を用いて分析され得る。
例えば、複数のアドレスを特徴とするフィンガープリント(各々のアドレスは
、炭水化物ポリマーへの、糖類結合因子の結合に関連する絶対値を有する)は、
第1のアドレスを、そのフィンガープリントの少なくとも1つの他のアドレスに
関連させることによって、マップを形成し得(第1のアドレスが少なくとも1つ
の他のアドレスと一致する場合)、そのマップが内部で一致していることを決定
し、そして少なくとも1回、その関連付けおよび決定を繰り返して、少なくとも
1つのさらなるマップを形成し;そのマップを少なくとも1つのさらなるマップ
と比較し、そしてそのマップが、相互に一致するか否かを決定し;そして任意の
相互に一致しないマップを除去する。
あるいは、またはさらに、フィンガープリントデータ分析は、複数のアドレス
を特徴とするフィンガープリントを用いて、サンプルの炭水化物ポリマーについ
てのフィンガープリントに、外部データをあわせる方法を用いて実施され得る。
各々のアドレスは、外部データを変換して外部フィンガープリントを形成するこ
とによる、サンプルの炭水化物ポリマーへの糖類結合因子の結合に関する絶対値
を含み、そしてその外部データは、炭水化物ポリマー上で実施される少なくとも
1つのアッセイを含む。その外部フィンガープリントは、サンプル炭水化物ポリ
マーについてのフィンガープリントと比較され;そしてその決定は、その外部フ
ィンガープリントがサンプルについての炭水化物ポリマーと首尾一貫するか否か
で行われる。
本明細書中に記載される方法に関するフィンガープリントはまた、フィンガー
プリントを有する炭水化物ポリマーを特徴付けることによって構築され得る。そ
のフィンガープリントは、複数のアドレスを特徴とし得、各々のアドレスは、炭
水化物ポリマーについて実施された実験的アッセイからのアッセイデータより得
られる値を含む。その特徴づけは、フィンガープリントに従い複数のマップを構
築すること;炭水化物ポリマーを特徴づけするためのさらなるデータを得ること
;そのマップがさらなるデータと一致するか否かを決定すること;および各々の
マップがさらなるデータと一致しない場合、そのマップを却下することを含む。
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される方法に用いられるフ
ィンガープリントは、炭水化物ポリマーについてのマップを構築することによっ
て分析され得、ここでこのマップは、以下を含む:その炭水化物ポリマーについ
て実施された少なくとも1つの実験的アッセイから得られたアッセイデータに従
い、炭水化物ポリマーを特徴づけすること;そのアッセイデータを複数のアドレ
スに分解すること(各々のアドレスは、アッセイデータの値を特徴とする);少
なくとも1つの他のアドレスに、各々のアドレスを関連させることによって複数
のマップを形成すること;およびその炭水化物ポリマーの少なくとも一部分、炭
水化物ポリマーの少なくとも一部分の配列、炭水化物ポリマーの少なくとも一部
分の構造、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、炭水化物ポリ
マーの特徴に、各々のアドレスでの値を関連させることによって適切なベクトル
に各々のマップを変換させること。
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される方法に用いられるフ
ィンガープリントは、以下の工程を包含する方法でマップを構築することによっ
て分析され得る:炭水化物ポリマーの特徴づけデータを提供する工程;この特徴
づけデータから複数のマップを導く工程;炭水化物ポリマーを特徴付けるための
さらなるデータを得る工程;そのさらなるデータが複数のマップの各々と一致す
るか否かを決定する工程;そのさらなるデータがマップと一致しない場合、その
マップを却下する工程;およびそのさらなるマップがさらなるデータおよび各々
の残っているマップと一致する場合のみさらなるマップを加える工程。
別の好ましい実施形態において、その炭水化物ポリマーは、少なくとも1つの
公知の機能、公知の配列、およびそれらの組合せのうち1つを有する公知の炭水
化物ポリマーに従ってサンプル炭水化物ポリマーの特徴づけに関連して特徴付け
られ得る。その方法は、以下の工程を含む:サンプル炭化水素ポリマーについて
の少なくとも1つの実験的アッセイを実施して、アッセイデータを得る工程;公
知の炭水化物ポリマーについての同一の実験的アッセイを実施し、比較アッセイ
データを得る工程;およびそのアッセイデータと比較アッセイデータとを比較す
ることによって、サンプルの炭水化物ポリマーを、公知の炭水化物ポリマーに従
い特徴付けする工程。
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される方法に用いられるフ
ィンガープリントは、以下の工程によって構築される:炭水化物ポリマーへの糖
類結合因子の結合を決定するための実験的アッセイを提供する工程;炭水化物ポ
リマーへの糖類結合因子が存在したか否かを生データとして検出する工程;その
生データを絶対値に変換する工程;およびその絶対値をフィンガープリントのア
ドレスとして配置し、フィンガープリントを形成する工程。
別の好ましい実施形態において、本明細書中に記載される方法に用いられるフ
ィンガープリントは、複数のフィンガープリントと少なくとも1次炭水化物ポリ
マーおよび2次炭水化物ポリマーとを比較する方法を用いて比較され、各々のフ
ィンガープリントは、複数のアドレスを特徴とし、各々のアドレスは、炭水化物
ポリマーへの糖類結合因子の結合に関する絶対値を特徴とする。その方法は、以
下の工程を含む:1次炭水化物ポリマーについての少なくとも1つのアドレスに
ついての数値と、2次炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントの対応す
るアドレスについての絶対値を比較する工程;および1次炭水化物ポリマーと2
次炭水化物ポリマーとの間の類似性を、それらのアドレスについての数値の間の
類似に従い決定する工程。
別の好ましい実施形態において、そのフィンガープリントは、サンプルの炭水
化物ポリマーのフィンガープリントを有するフィンガープリントデータのデータ
ベースを通して検査する方法を用いて比較される(そのデータベースは、複数の
類似の炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントデータを含む)。その方
法は、以下の工程を含む:アドレシングシステム(addressing sy
stem)に従いデータベースを構築する工程、(そのアドレッシングシステム
は、少なくとも部分的に、複数の比較炭水化物ポリマーについてのフィンガープ
リントデータから得られる);サンプルの炭水化物ポリマーのフィンガープリン
トをキーに変換する工程;そのキーを用い、そのアドレシングシステムを通して
調査する工程;および少なくとも1つの比較炭水化物ポリマーからフィンガープ
リントデータを検索する工程。
別の好ましい実施形態において、フィンガープリントは、炭水化物ポリマー(
複数のアドレスの特徴をなすフィンガープリントで、各アドレスは、糖類結合因
子の炭水化物ポリマーへの結合に関する数値を含む)のに関するフィンガープリ
ントデータを広げるためのフィンガープリントを内部的に解析する方法を使用し
て、内部的に解析される。本方法は以下を包含する:パターンを形成するために
第1のアドレスを、少なくとも1つの他のフィンガープリントのアドレスに結合
する工程;第1のアドレスに対する値が、少なくとも1つの他のアドレスに対す
る値と矛盾していない場合、内部干渉性となるパターンを決定する工程;および
拡大されたフィンガープリントデータとしてのフィンガープリントに、各内部干
渉パターン添加する工程。
別の好ましい実施形態において、フィンガープリントは、炭水化物ポリマーサ
ンプルのためのフィンガープリントを構築するための系によって、提供される。
この系は、以下を含む:(a)付着された複数の糖類結合因子を有する基質を含
む湿式アレイで、各糖類結合因子を、湿式アレイの前決定されたアレイ部分に配
置し、その結果、炭水化物ポリマーサンプルが湿式アレイとインキュベートされ
、糖類結合因子と複合体を形成する、湿式アレイ;(b)生データを形成するた
めに複合体を検出するための、検出デバイス;および(c)フィンガープリント
のアドレスに対する各アレイ部分の生データを変換するための、変換モジュール
いくつかの好ましい実施形態において、フィンガープリントは、炭水化物ポリ
マーサンプルに対するフィンガープリントを構築するための系において、炭水化
物ポリマーに対するフィンガープリントを構築するための方法を使用して生成さ
れ、この系は湿式アレイを特徴とし、この湿式アレイは、付着された複数の糖類
結合因子を有する基質を含み、付着された各糖類結合因子は、湿式アレイの前決
定されたアレイ部分、および検出デバイスに配置される。この方法は、以下を包
含する:炭水化物ポリマーと糖類結合因子の結合が生じるような条件下で、炭水
化物ポリマーと湿式アレイをインキュベートする工程;糖類結合因子と炭水化物
ポリマーの結合が生じたか否かを、検出デバイスによって検出する工程;および
、結合が生じたか否かによってフィンガープリントにアドレスを添加する工程。
別の好ましい実施形態において、フィンガープリントは、少なくとも1つの炭
水化物含有物質を含むサンプルを分析するための方法で、分析される。この方法
は、サンプル中の炭水化物含有物質の少なくとも1つの特徴を決定するための、
候補スペースを定義する工程を、包含する。
(一般的なスクリーニング法および診断法)
本明細書中で開示された種々の方法は、試験生物学的サンプルおよび参照生物
学的サンプル由来の細胞中の、炭水化物ポリマーフィンガープリントを比較する
工程に関する。従って、その様々な局面および実施形態において、本発明は、1
つ以上の目的炭水化物ポリマーを含むか、または含むと疑われる生物学的サンプ
ルを少なくとも1つ含む、試験生物学的サンプルを提供する工程を包含する。
目的のポリマーに対する炭水化物フィンガープリントは、炭水化物ポリマーの
ための1つ以上の糖類結合因子に関する結合状態を決定することによって、同定
される。次いで、試験生物学的サンプルにおける1つ以上の炭水化物ポリマーの
炭水化物フィンガープリントは、1つ以上の参照生物学的サンプル由来である炭
水化物ポリマーの炭水化物フィンガープリントと、比較される。様々な実施形態
において、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個
、20個、25個、28個、30個、35個、40個または全ての糖類結合因子
の発現が、決定される。
参照生物学的サンプルは、比較されるパラメータの状態が既知である細胞、ま
たは組織サンプル由来である1つ以上の炭水化物ポリマーを、含む。測定された
パラメータの様式(試験生物学的サンプル中の炭水化物フィンガープリントの存
在または程度が明かされるような、様式)は、参照生物学的サンプルの組成物に
依存する。例えば、参照生物学的サンプルが、目的のパラメータを有することが
既知の細胞由来である場合、試験生物学的サンプルおよび参照生物学的サンプル
中の類似した炭水化物フィンガープリントは、試験生物学的サンプルが目的のパ
ラメータを有していることを、示唆する。
種々の実施形態において、試験生物学的サンプル中の炭水化物ポリマーが、1
個、2個、3個、5個、10個、15個、20個または25個よりも大きい糖類
結合因子の差で、参照生物学的サンプル中の対応するフィンガープリントと異な
る場合、これは、改変されたと見なされる。
いくつかの実施形態において、試験生物学的サンプルの炭水化物フィンガープ
リントは、多数の参照生物学的サンプル由来の炭水化物フィンガープリントと、
比較される。この比較は、個々の炭水化物ポリマーについてのフィンガープリン
トに関してか、または複数のポリマーについて作製された情報に基づく複合性の
フィンガープリントに関して、なされ得る。
試験リガンドに曝される(すなわち、接触される)試験生物学的サンプルは、
かなり多数の細胞または組織(すなわち、1つ以上の細胞)から単離され得、そ
して、インビトロ、インビボ、またはエキソビボで提供され得る。様々な実施形
態において、生物学的サンプルは、体液(例えば、血液、血液画分(例えば、血
清または血漿)、尿、唾液、乳、腺液、涙および精液)由来であり得る。多糖類
の精製は、当該分野において公知の方法を使用して、実施され得る。
所望される場合、試験生物学的サンプルは、2つ以上の亜集団へ分割され得る
。この亜集団は、できる限り同一である亜集団を作製するために、細胞、細胞抽
出物、または画分を含む他の炭水化物ポリマーの第1集団を分割することによっ
て、作製され得る。これは、例えば、インビトロ、またはエキソビボのスクリー
ニング法に適する。いくつかの実施形態において、種々の亜集団は、コントロー
ル因子および/または試験因子、複数の試験因子、あるいは、例えば、一緒にか
もしくは種々の組合せかで処方される、1つもしくは複数の種々の用量の試験因
子に曝され得る。
好ましくは、参照生物学的サンプルは、試験生物学的サンプルとできる限り類
似した組織型由来である。いくつかの実施形態において、コントロール生物学的
サンプルは、試験サンプルと同じ被験体由来(例えば、被験体の明確な領域由来
、または異なる時期に採取された同じ被験体由来(例えば、サンプルは、治療を
始める前、および後に、被験体から取られ得る))であり得る。他の実施形態に
おいて、参照生物学的サンプルは、複数の細胞由来である。例えば、参照生物学
的サンプルは、本明細書に記載されたパラメータまたは状態(例えば、スクリー
ニング、診断、または治療適用)の1つが既知である、以前試験された細胞由来
の発現パターンのデータベースであり得る。
被験体は、好ましくは哺乳動物である。その哺乳動物は、例えば、ヒト、非ヒ
ト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり得る。
(炭水化物ポリマーに関連する病態生理学の治療または予防に関する候補治療
因子の同定)
本明細書中に開示された方法はまた、特定の炭水化物ポリマーフィンガープリ
ントに関連する病態生理学に関する候補治療因子を同定するために、使用され得
る。病態生理学への治療的応答または予防的応答に関連する炭水化物フィンガー
プリントプロフィールの特性を有する試験生物学的試験サンプルにおいて、この
方法は、候補治療因子が炭水化物フィンガープリントプロフィールを誘導するか
否かを決定するために、候補治療因子のスクリーニングに基づく。
この方法において、試験生物学的サンプルは、標的因子または標的因子の組合
せ(経時的にまたは継続的に)に曝露され、そして、1つ以上の試験因子の炭水
化物フィンガープリントが決定される。試験生物学的サンプル中のこの炭水化物
フィンガープリントは、参照生物学的サンプル中の炭水化物フィンガープリント
と比較される。炭水化物フィンガープリントプロフィールの誘導は、病態生理学
への治療的または予防的応答を示す。
標的因子は、以前記載されていない化合物であり得るか、または以前から既知
の化合物であり得る。目的の炭水化物フィンガープリントをもたらすこと、また
は炭水化物ポリマー含有化合物の出現を抑制することにおいて有効な因子はさら
に、病態生理学を予防または回復するための能力、およびこのような病態生理学
の治療に対して潜在的に治療上有用であるものとしての能力を試験され得る。こ
のような化合物の臨床上の有用性のさらなる評価は、治療因子の毒性および臨床
的有効性を評価するための標準的方法を使用して、実施され得る。
(特定の被検体に適切な炭水化物ポリマー治療因子の選択)
個々の遺伝的性質の差異は、種々の薬物を代謝するための相対的能力の差異を
生じ得る。炭水化物ポリマー治療因子として作用するような、被検体中で代謝さ
れる因子は、病態生理的状態に特有の炭水化物フィンガープリントパターンから
非病態生理学状態に特有の遺伝子発現パターンへの変化を誘導することによって
、それ自身を明示し得る。従って、本明細書中で開示される炭水化物フィンガー
プリントは、特定の被検体に適切な推定治療因子または推定予防因子が選択され
ることを可能にする。
特定の被検体に適する因子を同定するために、この被検体からの試験生物学的
サンプルは治療因子に曝され、そして、1つ以上の炭水化物ポリマーの炭水化物
フィンガープリントが、決定される。いくつかの実施形態において、試験生物学
的サンプルは、特定の細胞型(例えば、肝細胞または含脂肪細胞)を含む。他の
実施形態において、この因子は、最初に細胞抽出物(例えば、脂肪細胞抽出物)
と混合され、この細胞抽出物は薬物を活性形態に代謝する酵素を含む。次いで、
治療因子の活性化形態は、試験生物学的サンプルと混合され得、そして、遺伝子
発現が測定され得る。好ましくは、生物学的サンプルは、エキソビボで、因子ま
たは活性化形態の因子と接触される。
次いで、試験生物学的サンプル中の炭水化物フィンガープリントは、参照生物
学的サンプル中の炭水化物ポリマーの炭水化物フィンガープリントと比較される
。参照生物学的サンプルは、病理学的状態が公知の細胞集団または組織から、単
離される。参照生物学的サンプルが病理学に関連しない場合、試験生物学的サン
プルと参照生物学的サンプルとの間の類似炭水化物フィンガープリントプロフィ
ールは、この因子が、被検体中の病態生理学の処置に適していることを、示す。
対照的に、試験生物学的サンプル中の配列と参照生物学的サンプル中の配列との
間の発現の差異は、因子が被検体中の病態生理学の処置に適していないことを、
示す。
参照細胞が病理学に関連する場合、試験生物学的サンプルと参照生物学的サン
プルとの間の炭水化物ポリマーフィンガープリントパターンの類似性は、因子が
被検体中の病態生理学の処置に適していないことを、示す。この場合における遺
伝子発現パターンの差異は、この因子が被検体の処置に適していることを、示す
(被検体における炭水化物ポリマーの改変体に関連する病態生理学を処置する
ための方法および組成物)
処置法(例えば、病態生理学に関する、1つまたは種々の炭水化物ポリマーの
発現または活性を調節する因子を被検体に投与することによって、被検体中の炭
水化物ポリマーに関連する病態生理学の開始を阻害、予防、または遅延すること
)もまた、本発明中に含まれる。用語「調節する」は、炭水化物ポリマーの発現
または活性の増加または減少を含むことを意味する。好ましくは、調節が、被検
体中の炭水化物ポリマーの発現または活性を病態生理学に羅患されていない患者
と類似なまたは同一なレベルまで改変する変質を、生じる。この被検体は、例え
ば、ヒト、げっ歯類(例えば、マウスもしくはラット、またはイヌもしくはネコ
)であり得る。
いくつかの実施形態において、因子は、炭水化物ポリマーの有効な形態である
これらの因子、ならびに他のポリペプチド、抗体、アゴニスト、およびアンタ
ゴニストは、治療的に使用される場合、本明細書中で「治療剤」といわれる。治
療剤の投与方法としては、以下が含まれるが、これらに限定されない:皮内、筋
内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口。本発明の治療は、任
意の便利な経路(例えば、注入またはボーラス注入、上皮または粘膜上皮を介し
た吸入(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など))によって投与され得
、そして、他の生物学的活性因子とともに投与され得る。投与は、全身性または
局所性であり得る。さらに、任意の適切な経路(心室注入および鞘内注入を含む
)によって、治療を剤中枢神経系投与することは、好都合であり得る。心室注入
は、リザーバー(例えば、Ommayaリザーバー)を装着された心室カテーテ
ルによって、容易にされ得る。肺投与はまた、吸入器または噴霧器、およびエア
ロゾル化剤を用いる処方の使用によって、使用され得る。治療剤を、処置が必要
な領域に局所的に投与することもまた、所望され得る;これは、例えば、以下に
よって達成され得るが、これらに限定されない:手術中の局所注入、局所適用、
注入、カテーテル、坐剤、または移植。特定の実施形態において、投与は、悪性
腫瘍もしくは悪性新生物、または全新生物組織の部位(または前部位)に直接注
入することによるものであり得る。
種々の送達システムが公知であり、そして、このシステムを利用して、以下を
含む本発明の治療剤を投与し得る:例えば、(i)リポソーム中のカプセル化、
微粒子、マイクロカプセル;(ii)治療を発現できる組換え細胞;(iii)
レセプター媒介エンドサイトーシス(例えば、WuおよびWu、1987.J
Biol Chem 262:4429〜4432参照のこと);(iv)レト
ロウイルスまたは他のベクターの一部としての治療核酸の構築、など。本発明の
1つの実施形態において、治療剤は、小胞(特定のリポソーム中の)中に送達さ
れ得る。リポソームにおいて、本発明のタンパク質は、他の薬学的に受容可能な
キャリアに加えて、両親媒性因子(例えば、水溶液中で、ミセル、不溶性単分子
層、液晶、または葉状層として凝集形態で存在する脂肪)と合わせられる。リポ
ソーム処方に適する脂質としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない
:モノグリセリド、ジグリセリド、スルファチド、リゾレシチン、リン脂質、サ
ポニン、胆汁酸など。このようなリポソーム処方の調製は、例えば、米国特許第
4,837,028号;および同第4,737,323号(全て本明細書中で参
考として援用される)中に開示されるように、当業者のレベルの範囲内である。
なお別の実施形態において、治療剤は、以下を含む制御された放出システムにお
いて、送達され得る:例えば、送達ポンプ(例えば、Saudekら、1989
.New Engl J Med 321:574参照のこと)および半透明の
ポリマー剤(例えば、Howardら、1989.J Neurosurg 7
1:105参照のこと)。さらに、制御された放出システムは、治療標的(例え
ば、脳)の近傍に配置され得、従って、わずかな全身用量のみを必要とする。例
えば、Goodson、Medical Applications of C
ontrolled Release 1984.(CRC Press、Bo
cca Raton、FL)を参照のこと。
本明細書中で使用する場合、用語「治療的有効量」は、有意な患者の利益(す
なわち、関連する医療状態の処置、治療、予防もしくは回復、またはこのような
状態の処置率、治療率、予防率または回復率の増加)を示すのに十分な薬学的組
成物または薬学的方法の各活性成分の全量を、意味する。個々の活性成分が適用
され、単独で投与される場合、この用語は、その成分だけをいう。組み合わせて
適用される場合、この用語は、組合せの投与、連続投与または同時投与であろう
となかろうと、治療上の効果を生じる活性成分の合わせた量をいう。
特定の障害または状態の処置に有効な本発明の治療の量は、その障害または状
態の性質に依存し、そして、当該分野の標準的臨床技術によって、決定され得る
。さらに、インビボアッセイは、必要に応じて、最適な投与量範囲の同定を介助
するために、使用され得る。処方物において使用される正確な投与量はまた、投
与経路および疾患または障害の総体的な重篤度に依存し、そして、医師の判断お
よび各患者の状況に従って、決定されるべきである。最終的に、主治医は個々の
患者を処置するための、本発明のタンパク質量を決定する。最初は、主治医は低
投与量の本発明のタンパク質を投与し、そして、患者の応答を確認する。より多
い投与量の本発明のタンパク質は、最適な治療効果がその患者に対して得られる
まで投与され得、その時、投与量はさらに増加されない。しかし、本発明の治療
剤の静脈内投与についての適切な投与量範囲は、一般に、体重1kgに対して約
20μg〜約500μgの活性化合物である。鼻腔内投与についての適切な投与
量の範囲は、一般に、約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有
効な投与量は、インビトロまたは動物モデル試験系から誘導される、投与量応答
曲線から、推定され得る。坐剤は一般に、0.5重量%〜10重量%の範囲の活
性成分を含む;経口処方物は、好ましくは、10%〜95%の活性成分を含む。
本発明の薬学的組成物を使用する静脈内治療の継続期間は、処置される疾患の
重篤度、および各個々の患者の状態および潜在的に特有な応答に依存して、変化
する。本発明のタンパク質についての各適用の継続期間は、12時間〜24時間
の範囲内の連続静脈内投与であることが企図される。最終的に、主治医は、本発
明の薬学的組成物を使用する静脈内治療の適切な継続期間を決定する。
細胞はまた、このような細胞中の所望の効果、または細胞中の所望の活性を増
殖するか、または生成するために、本発明の治療因子またはタンパク質の存在下
で、エキソビボで培養される。次いで、処置された細胞は、治療の目的のために
、インビボへ導入され得る。
(炭水化物ポリマーに関連する病態生理学の処置の効率の評価)
本明細書中に開示されるような差次的なフィンガープリントの同定もまた、炭
水化物ポリマーに関連する病態生理学の処置の経過の測定を、可能にする。この
方法において、試験生物学的サンプルは、炭水化物ポリマーに関連する病態生理
学に対する処置を受けている被験体から、提供され得る。所望される場合、試験
生物学的サンプルは、処置前、処置中、または処置後の種々の時点にて、被験体
から採取され得る。1つ以上の炭水化物ポリマーについての1つ以上の炭水化物
フィンガープリントが、決定される。このフィンガープリントは、病態生理学の
状態が公知である細胞を含む参照生物学的サンプル由来のフィンガープリントと
、比較される。
参照生物学的サンプルが、病態生理学が欠如する細胞由来である場合、試験生
物学的サンプルと参照生物学的サンプルとの間の炭水化物フィンガープリント中
の類似性は、処置が有効であることを示す。しかし、試験集団とこの参照生物学
的サンプルにおける炭水化物フィンガープリント中の差異は、処置が有効でない
事を示す。
「有効」は、処置が被験体中の病態生理学の減少を導くことを、意味する。処
置が予防的に適用される場合、「有効」は、この処置が病態生理学を遅延するか
、または予防することを意味する。有効性は、特定の病態生理学処置するための
、任意の公知の方法に関連して、決定され得る。
(フィンガープリントマップ)
所望される場合、フィンガープリントは、実験データから得られたマップに従
う炭水化物ポリマーを特徴付けるための系および方法を使用して、同定され得、
そして比較され得る。好ましくは、このデータは、炭水化物ポリマーを特徴付け
るための実験アッセイの複数の異なる型から、取得される。より好ましくは、こ
のような少なくとも1つのアッセイは、糖類結合因子の炭水化物ポリマーへの結
合に関する。次いで、複数の因子による結合マップは、炭水化物ポリマーを少な
くとも部分的に特徴付けるために、分析される。炭水化物ポリマーの1つ以上の
特色の少なくとも部分的な特徴付けのために、結合マップは、フィンガープリン
トを形成するために使用され、これはまた、アッセイの他の型からデータを取り
入れる。
これらの特色は、好ましくは、炭水化物ポリマーサンプルに関するアッセイか
ら取得されたデータのマップから、誘導される。これらのマップは、より好まし
くは、複数のレベル(各レベルは、より抽象的な生物学的情報を提供する)にて
、分析され得る。最も好ましくは、実験データの新規な型は、データのより複雑
な分析を支援するために、各レベルでの分析プロセスに導入され得る。必要に応
じておよび最も好ましくは、実験データに適していないようなマップは、各レベ
ルにて除外される。最も好ましくは、連続レベルのデータ分析での組合せ的爆発
を避けるために、新規なマップがより高いレベルで導入された新規な実験データ
から誘導される場合にのみ、新規なマップは、そのレベルにて添加され得る。
基本レベルにて、分析された結合データは、炭水化物ポリマーのためのフィン
ガープリントを決定するために、使用される。このフィンガープリントは、実際
は、糖類結合因子による炭水化物ポリマーへの結合の存在の検出についての数値
表現である。従って、フィンガープリント自体により、あるレベルにて、炭水化
物ポリマーを特徴付ける。
次に、フィンガープリントは、必要に応じて、実験データに適する種々の可能
なマップを取得するために、内部的に分析される。例えば、モデル糖類結合因子
のセットと特異的に結合するレクチンの特定のマップは、炭水化物ポリマーの特
定の型または分類の存在を、示し得る。別の特定のマップは、特定の部位に結合
するが、実際は結合していないレクチンまたは他の糖類結合因子に関して、偽陰
性または「孔」の存在を、示し得る。偽陰性の存在は、糖類「近傍」の特定の型
の存在を示し得、この糖類「近傍」は糖類結合因子の結合に影響を与え、その結
果、特定の配列が存在したとしても、因子自体のその配列への結合は妨げられる
分析のこのレベルでは、別々で、相互に矛盾する多くのマップが考えられ得る
。好ましくは、これらのマップに対するカットオフまたは確率的閾値は、可能な
限り多くのマップが考えられるために、低い。次いで、これらのマップは、以下
でより詳細に記載するように、好ましくは検査され、必要に応じて、分析の引き
続くレベルにおいて排除される。
分析の次のレベルでは、アッセイの他の型からの好ましい情報が、取り込まれ
る。これらのアッセイは、必要に応じて、そして好ましくは、実験上の人為的結
果を減少、またはさらに排除するために、フィンガープリントデータに対するも
のと同一または類似な実験材料を用いて、実施される。さらに、少なくとも類似
な実験材料の使用は、実験アッセイの正確な精度ではなく再現性のみを必要とす
ることで、サンプル炭水化物ポリマーの結果が標準的で既知の炭水化物ポリマー
と比較され得る。例えば、このアッセイは、必要に応じて、グルコシダーゼ、還
元末端の排除、および炭水化物ポリマーサンプルの他の改変の使用を含む。より
好ましくは、以前取得されたマップは、実験データと矛盾するデータとして、こ
のレベルで排除される。
次のレベルは、好ましくは、データが外部のデータベースから組み込まれるこ
とを可能にし、その結果、必要に応じて、データは異なる実験材料から使用され
る。このような情報は、糖類、その供給源、および同様に可能な他の情報に組成
に関連し得る。例えば、この情報は、この炭水化物サンプルが糖タンパク質の一
部であろうとなかろうと、糖類結合因子(例えばサイトカイン)の他の型などの
使用を含み得る。例えば、以前の段階から取得されたデータのマップは、明らか
に糖類の供給源または組成に適合せず、次いで、これらのマップは排除されるべ
きである。このようなデータの導入は、好ましくは、既知の炭水化物ポリマーか
らの情報を用いて、少なくとも部分的に実施される。例えば、未知の糖類は、「
EPO様」として分類され得、さらなる実験を導くことを助け得る。
分析のさらなるレベルでは、データのマップが変換され、その結果、本来の生
データについてのいずれの参考も、排除される。このような変換は、好ましくは
、炭水化物ポリマーサンプル内の目的の特性部分を位置付けることによって、実
施される。これらの目的の特性部分は、必要に応じて、より大きいポリマー配列
内の単糖類の短い配列またはその配列の一部であり得る。このような特性部分の
非常に単純な例は、グリコシダーゼ認識部位である。このような特性部分はまた
、必要に応じて、「配列に基づく(基づいた)」特性部分として記載され、その
時、これらは、少なくとも炭水化物ポリマーの配列の一部として、特徴付けられ
る。このような特性は、単なる再現性よりも、むしろ、実験データの絶対的正確
さを必要とする不利さを有する。しかし、この特性は、かつて記載された外部の
データベースから得られるデータを介して、広範の種々の公知の異なる炭水化物
ポリマーを通じて比較可能であるという有点を有する。
あるいはおよび/またはさらに、ならびに好ましくは、これらの目的の特性部
位は、目的の生物学的機能を有する機能的エピトープ、および/または配列に基
づくエピトープに関する。「機能的」エピトープとは、炭水化物ポリマーの実際
の配列に関係なく、少なくとも一部の炭水化物ポリマーが特定の機能および/ま
たは機能の型に関連しているようであることを、意味する。このような機能的エ
ピトープは、必要に応じて、絶対的正確度よりもむしろ再現性の必要性のみを用
いた複数の炭水化物ポリマーに関する同一のアッセイの実施を通じて、位置され
得る。もちろん、機能的エピトープはまた、必要に応じて、配列によって特徴付
けられ得、その結果、同一のエピトープはまた、必要に応じて、配列に基づくエ
ピトープと機能的エピトープの両方であり得る。
あるいはおよび/またはさらに、ならびに好ましくは、これらの目的の特徴部
位は、「特徴付けられた」特性に関する。これらの特徴部位は、炭水化物ポリマ
ーの分散した部分である必要は必ずしもないが、むしろ全ポリマーまたはそれら
のいくつかの組合せの分類、機能または性質を示す。例えば、このような特徴付
けられた特性は、炭水化物ポリマーが「EPO様」であることが決定されること
を可能とし得る。この決定は、ポリマー内の特定の機能的エピトープの部位を直
ちに生じる必要は必ずしもないが、例えば、炭水化物ポリマーが、このような機
能的エピトープが存在する可能性についてさらに試験されるべきであるというこ
との指標を提供し得る。
本発明の原理および操作は、図面および添付の説明を参照して、より理解され
得る。
ここで図面について言及すると、図4は、目的の炭水化物ポリマーについての
フィンガープリントを決定するための生データを取得するために、先に援用され
たPCT出願番号PCT/IL00/00256に従った模範的な実験系を示す
。示されるように、系10は湿式アレイ12を特徴とし、ここで、実際のアッセ
イが複数の固定化糖類結合因子を用いて実施される。このような各固定化因子は
、前決定されたアレイ部分14に位置し、これは、基質16上の前決定された位
置にある。好ましくは、各アレイ部分14は、異なる固定化糖類結合因子を特徴
とする。示される複数のアレイ部分14は、湿式アレイ12の全体を含む。従っ
て、各アレイ部分14は、湿式アレイ12上のアドレスである;このアドレスか
ら取得されたデータは、以下でより詳しく記載するように、目的の炭水化物ポリ
マーについてのフィンガープリントの一部を形成する。
次いで、炭水化物ポリマーが1つ以上の固定化された糖類結合因子に特異的に
結合可能な条件の下で、炭水化物ポリマーを、湿式アレイ12を用いてインキュ
ベートした。このような特異的結合は、特定のアレイ部分14での炭水化物ポリ
マーと固定化された糖類結合因子との複合体形成を導く。
次いで、複合体の存在を、湿式アレイ12を用いる可溶化された第2の糖類結
合因子のインキュベーションにより検出する。可溶化された第2の因子は、検出
のための標識を特徴とする。従って、可溶化された因子が、任意の特定のアレイ
部分14で複合体に結合した場合、このような複合体の存在は、標識を検出する
ことにより検出され得る。次いで、検出デバイス18は、標識の存在を検出する
ために使用され、その結果、任意の特定の検出デバイス18の選択は、標識の性
質に依存する。例えば、励起されそして蛍光を発するようになる色素のような色
素標識は、検出デバイス18のためのカメラまたは他の画像化デバイスを用いて
随意的に検出され得る。検出デバイス18は、各アレイ部分14からの標識から
のシグナル間を識別可能であり得る。
一旦各アレイ部分14からのシグナルが、検出デバイス18によって集められ
、電子(デジタル)データに変換されると、得られた生データは、フィンガープ
リントの各アドレスについての数値が、湿式アレイ12についてのアドレスと一
致するように、好ましくはフィンガープリントについて数値に変換される。この
変換の過程は、必要に応じてそして好ましくは、コンピュータデバイス22によ
って操作するためのソフトウェアモジュールとして必要に応じて実行され得る、
変換モジュール20によって行われる。次いで、このフィンガープリントデータ
は、データベース24に好ましくは保存され、より好ましくはコンピュータデバ
イス22によっても制御される。当然、コンピュータデバイスのネットワークに
わたって分散する実装もまた、本発明の範囲内であり得る(示さない)。
本発明の好ましい実施形態に従って、糖類結合因子のモデルセットが、このア
ッセイのために使用される。このモデル因子は、炭水化物ポリマーサンプルの個
々の特徴付けを提供するために、好ましくは前もって選択される。例えば、前も
ってEPOから得られた結果に基づいて炭水化物ポリマーサンプルを特徴付ける
ために、モデル糖類結合因子は、「EPO様」であるために必要に応じて選択さ
れ得る。特に、このような因子のモデルセットは、このような特徴付けを個別に
示すデータを提供するために選択されるべきである。この因子は、必要に応じて
、そしてより好ましくは、既知の標準的な炭水化物ポリマーに対して、異なる糖
類結合因子を用いる実験を行い、次いで炭水化物ポリマーサンプルの特徴付けの
ために最も有用なデータを提供するそれらの因子を選択することにより選択され
る。
因子のこれらの異なる型のモデルセットの1つの例は、病巣ライブラリーであ
る。病巣ライブラリーの構成要素は、共通のリガンドと結合するか、または別の
共通の機能的プロパティーもしくは構造的プロパティーを共有するので、選択さ
れる。後者の例としてはEPO、インターフェロンα、CGSFおよびHCGの
ような糖タンパク質の改変体形態が挙げられる。
次に、必要に応じそして好ましくは、炭水化物ポリマーサンプルのフィンガー
プリントと少なくとも1つの他のフィンガープリントとを比較するための比較方
法が実行される。より好ましくは、比較のためのフィンガープリントは、標準的
な既知の炭水化物ポリマーから得られるか、あるいは、他のフィンガープリント
もまた、必要に応じて別の炭水化物ポリマーサンプルから得られ得る。このよう
な方法の例が、図5に関して記載されている。
第1の工程では、比較フィンガープリントを得る。上記に記載されるように、
比較フィンガープリントは、好ましくは標準的な既知の炭水化物ポリマーから得
られる。しかし、フィンガープリントデータの由来に関わらず、好ましくは比較
フィンガープリントデータは、そのデータを得るために使用された少なくとも糖
類−結合因子セットを含む、実験条件についての情報を含み、より好ましくは、
洗浄条件、インキュベーション条件のストリンジェンシー、可溶化された糖類結
合因子の標識の型などについての情報を含む。
第2の工程では、フィンガープリントの実際のアドレスを、比較する。必要に
応じて比較をアドレス毎に行い、少なくとも1つの比較の肯定的な結果が、正の
数値を与えられる。より好ましくは、比較の否定的な結果は、負の数値が与えら
れる。次いで、第2の工程は、好ましくは比較される全てのアドレスについて繰
り返される。
第3の工程では、アドレス毎の比較についての全ての数値が、いくつかの関数
に基づいて好ましくは類似因子(similarity factor)に変換
される。この関数は、必要に応じて単純であり、例えばアドレス毎の比較プロセ
スからの全ての正の値と負の値を加算するものである。あるいは、そして好まし
くは、この結果は、重みがつけられ得る。より好ましくは、この結果は、前に記
載された実験条件に由来する解釈用の情報に基づいて重みづけられ得、その結果
、例えばより大きな重みが、フィンガープリントの2つのアドレスの間の比較の
結果として必要に応じて与えられ、ここでさらなる確実性が、実験結果に対して
割り当てられ得る。
2つのフィンガープリントを比較するための定量的ツールの例は、必要に応じ
て、そしてより好ましくは、類似性/非類似性の単なる数値測定とは対照的に、
2つ以上のフィンガープリント間の距離を再帰する利点を有する系統的な分析を
使用する。生物学的配列(例えば、タンパク質配列またはDNA配列)間の進化
的関係を調べるために最初に使用される、系統的分析は、2つ以上の配列間の距
離の定量的測定、または2つ以上の配列間の差異の程度を提供する。系統的分析
の使用は、本発明の任意であるが好ましい実施形態に対して特に好ましく、この
本発明の任意であるが好ましい実施形態において、サンプル炭水化物ポリマーの
フィンガープリントは、多数のこのようなフィンガープリントを含むデータベー
スと比較される。より好ましくは、フィンガープリントデータは、標準的な炭水
化物ポリマーのフィンガープリントデータである。いかなる場合においても、本
発明のこの好ましい実施形態について、工程3は、異なる関数で置換され、これ
は必要に応じて、データベース中の各フィンガープリントについて工程2を反復
することを必要とする。
系統的分析は、長年研究されていて、そして当該分野における周知の話題であ
るので、多くの異なる方法が当該分野で公知である。さらに、多数の企業が、系
統的情報を分析するための多数の製品および有用物を提供している。
本発明に従って、必要に応じて、そしてより好ましくは、系統的情報を計算す
るために以下の関数が使用され、ここで、フィンガープリントの情報は、距離の
行列として表現される。これらの距離は、必要に応じて、いくつかの公知の関数
(例えば、Hamming関数など)に従って得られる。本発明の好ましい実施
形態に従って、距離は、以下のように得られる:
Figure 0004696100

ここで:
Dは、距離についての表示であり;
Nは、フィンガープリント1およびフィンガープリント2の中のアドレスの数
であり;
Cは、フィンガープリントのアドレスiにおいて識別され得る最大のカラー数
であり;
Viは、フィンガープリント1のアドレスi中に見出されるカラーがフィンガ
ープリント2中の同じアドレスに存在する場合、1であり、そうでなければ、V
iは、0である。
先の2つの図は、実験的フィンガープリントデータを得るため、そして2つ以
上の炭水化物ポリマー間のフィンガープリントデータを比較するための、いくつ
かの基礎的なツールを記載する。次の図は、フィンガープリントデータからのよ
り高レベルの情報(例えば、サンプル炭水化物ポリマーを特徴付けるマップなど
)を誘導するための方法を記載する。後の各図の方法は、サンプル炭水化物ポリ
マーのマップまたは他の特徴付け(これは、排除される実験データに適合しない
)を獲得し、そしてまた必要に応じて、サンプル炭水化物ポリマーのマップまた
は他の特徴付けを可能にする、高レベルの情報を増大させることを可能にする。
好ましくは、各高レベルにおいて、さらなる実験データおよび分析を、マップを
獲得および調べるためのプロセスに取り込み、可能な限りサンプル炭水化物ポリ
マーを特徴づけ、そしてまた、個々の実験から誘導され得る有用な情報を拡張す
る。
本発明の好ましい実施形態に従って、サンプル炭水化物ポリマーのフィンガー
プリントは、図6の方法に関して記載されるように、それ自体内的に分析されて
、フィンガープリントデータを拡張する。この例示的な方法に従って、フィンガ
ープリントアドレスは、最初に、再帰的に分析されて、簡単なマップまたはマッ
プフラグメントを見出す。次に、このマップフラグメントは、好ましくは再び再
帰的分析を介して、大きなマップに集合される。必要に応じて、そしてより好ま
しくは、このマップは、QSAR(定量的構造−活性関係)アルゴリズムにおけ
る使用のために、プロパティベクトル、またはプロパティデスクリプターに変換
される。これは、フィンガープリントデータを構造プロパティ(すなわち、シア
ル酸含有量レベル、特定のモノマーまたはダイマーの存在または非存在など)を
直接記載する数値のセットに変換する。QSARは次に、必要に応じて分子薬物
設計における活性の推定のために使用され得る。
図6に関して示されるように、この方法の第1段階において、サンプル炭水化
物を特徴付ける第1セットのマップが、好ましくは、必要に応じてフィンガープ
リントデータの再帰的分析を介して作製される。このような再帰的分析は、必要
に応じて単純に、フィンガープリントの各アドレスを工程1における1つ以上の
他のアドレスの配列と連続的に組み合わせる形態をとり得る。次に工程2におい
て、このような各組み合わせを分析して、このマップ(またはマップのフラグメ
ント)が内的に整合するか否かを決定する。工程3において、内的に整合するこ
とが示されたマップまたはマップのフラグメントを、次の段階の分析のために保
持する。
この型の分析の例として、マップは、サンプル炭水化物ポリマーが切断剤を用
いて最初に消化され、その後の工程において結合剤と反応させる実験から獲得さ
れ得る。このようなアッセイは、PCT出願PCT/IL00/00256に関
してより詳細に記載される。しかし、簡単な例として、還元末端において標識さ
れるサンプル炭水化物ポリマーを、第1の糖結合剤(これは、必要に応じて、認
識配列aを有するグリコシダーゼであり得る)と反応させる。コントロール反応
において、標識されたサンプル炭水化物ポリマーを、未処理のままにする。次い
でこの反応を、固定された糖結合剤(これは、必要に応じて、認識配列bを有す
るレクチンであり得る)と独立してさらに反応させる。未結合のサンプル炭水化
物ポリマーを洗浄除去した後、検出工程を実施する。標識の存在は、部位bがサ
ンプル炭水化物ポリマー中に存在することを示す。
第1の糖結合剤が存在する反応を第1の糖結合剤が存在しない独立したコント
ロール反応と比較することによって、標識の存在下におけるグルコシダーゼの効
果が決定され得る。例えば、標識が、認識配列bを有するレクチンに対する結合
後にコントロール反応の中で検出されるが、第1の糖結合剤が認識配列aを有す
るグリコシダーゼである反応中で検出されない場合、認識部位の配列は、b−a
還元末端である。他方、標識がコントロール反応およびグリコシダーゼ反応の両
方に存在する場合、これは、認識部位の配列が、a−b還元末端であることを示
す。認識部位aは、サンプル炭水化物ポリマーの内側に位置し得ず、すなわち、
認識部位aは、糖配列中に存在し得ない。
本発明の好ましい実施形態に従って、工程1は、階層的な木(hierarc
hical tree)の上の節(node)としてフィンガープリントの各ア
ドレスを最初に配置することによって実施される。フィンガープリントアドレス
によって示されるデータの型に依存して、このアドレスは、必要に応じて、1つ
より多くの節の上に現れ得る。好ましくは、この木の階層は、多数のデータカテ
ゴリーに従って構築される。例えば、この木の一部は、必要に応じて、サンプル
炭水化物ポリマーに対する糖結合剤の単純な結合を示し得る。次いで、この木の
この部分は、好ましくは、各糖結合剤の特徴付けに従って、例えば、薬剤の型(
レクチン、抗体など)に従って、サンプル炭水化物ポリマーに対するその薬剤の
効果(結合、切断など)に従って、可溶化された糖結合因子に対する標識の型に
従って、構築される。
次に、工程2において、この木は、例えば、根の節(root node)と
して木の各アドレスを使用することによってか、あるいは、木の各節からその木
の他の節へと移動することによって再帰的に調べられて、マップまたはマップの
フラグメントを確立し得る。この方法の利点は、この木が、生物学的に有用なカ
テゴリーおよび/またはパラメーターに従って構築される場合、この木の節から
構築されるマップは、内的に整合するはずである。このプロセスは、必要に応じ
て、何回も繰り返され、大きなマップを構築し得る。
このような木を構築および調べるための手順の例は、必要に応じて、そして好
ましくは、以下のように実施される。レクチンは、必要に応じて、実験アッセイ
(例えば、図4に関して記載されるアッセイ)のための糖結合剤として使用され
得る。好ましくは、このようなレクチンは、レクチンの対として使用される:炭
水化物ポリマーが最初に結合して複合体を形成する、固体支持体の表面上に固定
された第1のレクチン;および、複合体への結合のための、第2の可溶化された
レクチン。第2のレクチンは、好ましくは、標識を特徴とし、複合体の存在が検
出されることを可能にする。レクチンのこれらの対は、必要に応じて、クラスタ
ーアルゴリズムを用いて相関付けられ得、その結果、レクチン対についての結果
の間の「関連性」または距離が、炭水化物ポリマーに対するそれらの結合挙動か
ら決定され得る。次いで、このような相互関係は、必要に応じて、木を形成する
ために使用され得、その結果、この木の各節は、相対的な距離に従って、他の節
に対して関連付けられる。あるいは、この相互関係は、必要に応じて、標準的な
既知の炭水化物ポリマーに関するレクチンの挙動に従って、木の節を構築するた
めに使用され得る。
レクチンが木において系統付けられ得る測定の1つの例は、以前に記載された
、Hamming距離、またはJaccard類似性測定である。non−ze
roベクトルであるvとvとの間のJaccard類似性測定は、以下:
Jaccard測定=a11/(a11+a01+a10
のように規定され、ここで、aijは、vが値iを有し、vが値jを有する
次元の数である。この類似性測定は、レクチン対間の結果の類似性、ならびに異
なるフィンガープリント間の結果の類似性を決定するための使用され得る。例え
ば、木は、必要に応じて、既知の炭水化物ポリマーについての異なるフィンガー
プリントから構築され得、これは次いで、サンプル炭水化物ポリマーについての
結果に対して、その類似性について調べられる。
好ましくは、多数の型のフィンガープリントデータが、これらのマップに取り
込まれ、必要に応じて、このアッセイが実施される前にサンプル炭水化物ポリマ
ーの改変を含むフィンガープリントデータも含む。例えば、ポリマーは、必要に
応じて、分子を切断するためのグリコシダーゼ;還元末端の排除;および必要に
応じて標識を有する1つ以上の糖をサンプル炭水化物ポリマーに対して付加する
ためのグリコシルトランスフェラーゼを用いて、改変され得る。標識を有する糖
での改変が、「二重標識」実験に対して特に好ましく、ここで、図4のアッセイ
の第2の糖結合剤は、第2の標識を有する。従って、2つの標識のマップは、サ
ンプル炭水化物ポリマーの構造に関するさらなる情報を提供する。
これら異なる型の実験データが、必要に応じて、サンプル炭水化物ポリマーに
ついての単一フィンガープリントに取り込まれ得るが、このような取り込みは必
要とは限らないことに留意するべきである。
あるいは、異なる型のデータが、そのポリマーについてのマップを作製するた
めにフィンガープリントの補助として使用され得る。いかなる場合においても、
これら異なる型の実験データは、少なくとも類似の条件を用いて少なくとも類似
の実験材料に対して実施された実験アッセイから得られるべきである。より好ま
しくは、この実験材料および条件は、特に異なるポリマーの間(例えば、標準の
既知の炭水化物ポリマーとサンプル炭水化物ポリマーとの間)の比較について、
同一である。
必要に応じて、そしてより好ましくは、マップは、例えば、QSAR(定量的
構造−活性関係)アルゴリズムにおける使用のために、プロパティベクトル、ま
たはプロパティデスクリプターに変換される。各適切なベクトルは、サンプル炭
水化物ポリマーの構造的プロパティおよび/またはフィーチャーの定量的な描写
である。ベクトル中の各数値は、好ましくはプロパティまたはフィーチャー(例
えば、シアル酸含有量レベル、その炭水化物配列中の特定のモノマーまたはダイ
マーの存在または非存在など)に対応する。このようなプロパティベクトルはま
た、必要に応じて、より定性的なプロパティを記載するためのデータを特徴とし
得る。
変換プロセスは、好ましくは、マップを構築するためにフィンガープリントの
多数の数値を関連付けることによって実施される。このような相関は、必要に応
じて、フィンガープリントデータを「テンプレート」と比較し、プロパティまた
はフィーチャーが存在するか否かを決定することによって実行される。あるいは
、プロパティベクトル中の値は、必要に応じて、以下の図7に関してより詳細に
記載されるように、他の型の実験からの結果を統合することによって獲得され得
る。例えば、プロパティベクトル中の値は、必要に応じて、サンプル炭水化物ポ
リマーの糖含有量から誘導され得る。
このようなさらなる情報によって、多数の局面でのデータの解釈が高められ得
る。第1に、必要に応じてこれを使用して、異なる型の実験アッセイ由来の可能
性のある部位であると同定された部位から、不可能な認識部位または少なくとも
非常に可能性が低い認識部位を排除し得る。例えば、レクチンが糖結合剤として
使用されるアッセイについて、多くのレクチンがグルコース(Glc)およびマ
ンノース(Man)の両方に特異的に結合するが、多くのグリカンは、Glcを
含まない。従って、これらのレクチンへの結合の存在は、Manのみの存在を示
す。
さらに、このような情報は、必要に応じて、データ解釈における多義性を示唆
し得、そのデータ中に存在しない情報を付加し得る。後者の機能の例は、Kdo
(これは、LPS(リポポリ多糖)中の単糖である)の存在の検出であるが、こ
れは、レクチン結合データに従って検出することはできない。このような情報は
また、特定の仮説を確認/却下するための強力な手がかりを示し得る。
しかし、このような情報は、単糖組成物に限定されるべきではない。なぜなら
、この単糖組成物は、単に非限定的な例示の例として意図されるからである。そ
の代わり、この情報は、必要に応じて、実験アッセイからのデータ;構造情報(
例えば、どれくらいの長さの種が、ポリマーの特定の切断によって作製されるか
);医薬情報および起源の情報(なぜなら、例えば、哺乳動物炭水化物ポリマー
は、植物炭水化物ポリマーよりも単糖組成物により限定され、そして両方とも、
細菌炭水化物ポリマーよりも限定されるからである)を含み得る。
図7は、外部データベースからのデータを統合することによってフィンガープ
リントデータを拡張するための、本発明に従う例示的な方法のフローチャートで
ある。「外部データベース」とは、そのデータが、同じ材料に対して実施されて
いない実験から得られることを意味し、その結果、同じ実験条件がデータセット
の両方に対して適切される必要はない。このような情報は、糖の組成、その供給
源、および可能性のある他の情報も同様に、関連し得る。
例えば、この情報は、サンプル炭水化物が糖タンパク質の一部であるか否か、
炭水化物結合剤の他の型(例えば、サイトカイン)の使用などを含み得る。この
ようなデータの導入は、好ましくは、少なくとも部分的に、例えば、標準の参照
炭水化物ポリマーとしての既知の炭水化物ポリマー(例えば、EPO)からの情
報を用いて実行される。
図7に関して示されるように、工程1において、データは、外部データベース
から読み出され、そしてデータのフォーマットが分析される。工程2において、
データのフォーマットがそのポリマーの特定の局面を特徴付ける1つ以上の数値
を含む場合、これらの値は、必要に応じて、サンプル炭水化物ポリマーについて
の「フィンガープリント」を作製するために使用される。例えば、アッセイがサ
ンプル炭水化物ポリマーを用いて実施されて、糖含有量を決定する場合、相対量
および異なる型の糖の同定が、このようなデータのフィンガープリントに明確に
変換される。
あるいは、工程3において、データのフォーマットが生の実験結果を含む場合
(例えば、グリコシダーゼを用いた炭水化物ポリマーの切断後の、PAGE(ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動)ゲル上のバンドのマップなど)、そのデータは
、好ましくは、1つ以上の数値に変換される。例えば、バンドのマップは、特定
の分子量でのバンドの存在または非存在を決定し、次いで各分子量において二値
(正/負)を用いて「フィンガープリント」を作製することによって、必要に応
じて変換され得る。あるいは、フィンガープリントは、必要に応じて、一連の数
値としてバンドの一連の分子量を含み得る。PAGEゲルアッセイが、単に非限
定的な例として意図され、そして他の型のアッセイデータ(例えば、カラムクロ
マトグラフィーデータ)もまた、必要に応じて組み込まれ得ることに留意するべ
きである。
データの形式はまた、必要に応じて、2つの異なる型の実験結果を含み得、こ
れらはその後好ましくは相関付けられて、フィンガープリントを形成する。例え
ば、PAGEゲルアッセイは、種々の型のグリコシルトランスフェラーゼを用い
た末端標識または他の末端標識機構の付加によって実施され得る。そしてこのゲ
ルは、2つの型のデータを含む:特定の分子量でのバンドの存在;および特異的
な標識バンドの存在。次いで、フィンガープリントは、必要に応じて、数値とし
て(例えば、標識の効果を示すための二値(正/負)を用いたバンドの分子量と
して)両方の型のデータを示すように作製され得る。
好ましくは、これらの外部「フィンガープリント」はまた、サンプル炭水化物
ポリマーについてのデータ比較のための参照として、標準的な既知の炭水化物ポ
リマーについて作製される。このような外部「フィンガープリント」は、必要に
応じて、標準的な炭水化物ポリマーに対する特別な実験アッセイの性能によって
誘導され得るか、あるいは、既存のデータをフィンガープリント形式に変換する
ことによって誘導され得る。
工程4において、これらのフィンガープリントは、好ましくは、サンプル炭水
化物ポリマーについて、図6中の以前のレベルから誘導されたマップに対して比
較される。これらのマップのいずれかは、さらなるフィンガープリントデータと
整合し、これらは必要に応じてかつ好ましくは、除外される。例えば、レクチン
結合情報は、単糖Fuc(フコース)が存在しない可能性を示し得る。他方で、
このような可能性は、炭水化物ポリマーの単糖組成物(これは、Fucの存在を
示し得る)によって直接否定され得る。このような状況において、後者のデータ
の付加は、必要に応じて、Fucを含まないマップが好ましくはさらなるデータ
と矛盾するとして除外されるべきであることを示し得る。
工程5において、必要に応じてかつより好ましくは、さらなるフィンガープリ
ントデータを使用して、新規マップを作製する。これらの新規マップは、最も好
ましくは、図6の方法に従って作製され、この方法は、実験データの供給源にか
かわらず、この形式のフィンガープリントデータを用いた使用に適している。
新規マップの任意の作製または既存するマップの任意の除外の両方が、炭水化
物ポリマーについての確率空間の試験例である。以下に記載される方法とは異な
り、これらのマップはなお、必要に応じて、フィンガープリントまたは他の実験
データと直接関連し得る。しかし、この確率空間は、他の型の生物学的ポリマー
(例えば、DNAなど)についてよりも検索がより困難である。なぜなら、実験
データの再現性に対する要求のみで精度に対する要求がないからである。従って
、確率空間または組み合わせ空間は、他の型の生物学的ポリマーについて検索す
ることよりもはるかに増大する。
図8は、サンプル炭水化物ポリマー内に目的のフィーチャーを配置するための
、本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。この点において、このマ
ップは、本来の生のデータに対するいかなる参照をももはや含むべきではなく、
代わりに配列エレメントを含むべきである。いくつかの生のデータは、いかなる
有用な情報も生じ得ない。配列エレメントは、ここで、3次元データベース(こ
れは、3次元(構造)情報の断片を保存している)と比較され得る。
このプロセスは、実際に、組み合わせ検索、すなわち、組み合わせ空間におけ
る検索である。なぜなら、マップの各々が、炭水化物ポリマーの配列、構造、機
能、またはこれらのいくつかの組み合わせを記載する関連するエレメントの可能
性のある組み合わせを表すからである。これらのマップは、次に、炭水化物ポリ
マーの異なるより高いレベルのフィーチャー(これは、そのポリマー内の目的の
特定の配列、構造、および/または機能に関連する)について検索するために使
用され得る。
図8に関して示されるように、工程1において、残ったマップは、必要である
場合(この工程は、必要に応じて、マップを作製するプロセスの一部として既に
実行されているかもしれない)、高いレベルのフィーチャーに最初に変換される
。例えば、このマップは、好ましくは種々の機能的エピトープおよび/または配
列ベースのフィーチャーに適合するように変換され、そしてフィーチャーを特徴
付ける。この工程は、特に、標準的な参照炭水化物ポリマーに対する先の比較か
らのデータの存在によって補助される。なぜなら、このような比較は、機能的フ
ィーチャーを配置するために特に有用であるからである。
これらの目的のフィーチャーは、必要に応じて、より大きいポリマー配列内の
短い配列または単糖配列の一部であり得る。このようなフィーチャーの非常に簡
単な例は、グルコシダーゼ認識部位である。このようなフィーチャーはまた、必
要に応じて、これらが炭水化物ポリマーの配列の少なくとも一部によって特徴付
けられるという点で、「配列ベース」のフィーチャーとして記載され得る。この
ようなフィーチャーは、単なる再現性よりも、実験データの完全な精度を必要と
するという不利な点を有する。しかし、これらは、以前に記載された外部データ
ベースから得られるデータを介して、広範な種々の異なる公知の炭水化物ポリマ
ーに対して比較可能であるという利点を有する。
あるいは、および/またはさらに、そして好ましくは、目的のこれらのフィー
チャーは、目的の生物学的機能を有する機能的エピトープおよび/または配列ベ
ースのエピトープに関する。「機能的」エピトープとは、炭水化物ポリマーの実
際の配列にかかわらず、特定の機能および/または機能の型と関連するようであ
る、炭水化物ポリマーの少なくとも一部を意味する。このような機能的エピトー
プは、必要に応じて、完全な精度よりも、再現性のみを必要としながら、複数の
炭水化物ポリマーに対する同じアッセイの性能を介して位置付けられ得る。当然
、この機能的エピトープはまた、必要に応じて、配列によって特徴付けられ得、
その結果、同じエピトープが、必要に応じて、配列ベースのエピトープおよび機
能的エピトープの両方であり得る。
さらにあるいは、および/またはさらに、そして好ましくは、目的のこれらの
フィーチャーは、「特徴付け」フィーチャーに関する。これらのフィーチャーは
、炭水化物ポリマーの分離した部分である必要はないが、むしろ、ポリマー全体
の分類、機能もしくは性質、またはこれらの組み合わせを示す。例えば、このよ
うな特徴付けフィーチャーは、炭水化物ポリマーが「EPO様」であることを決
定されることを可能にし得る。この決定は、ポリマー内の特定の機能的エピトー
プの位置をすぐに生じる必要はないが、例えば、その炭水化物ポリマーが、この
ような機能的エピトープが存在する可能性についてさらに調べられるべきである
ことの指標を提供し得る。
工程2において、これらのより高いレベルの特徴は、内部整合性について比較
される。任意の2つのこのような特徴が矛盾するか、または相互排除的である場
合、どちらが正しいかを決定することは不可能であるので、必要に応じて、そし
て好ましくは、このような特徴は両方とも、さらなる考察から除去される。しか
し、さらなるデータが利用可能になる場合、例えば前記のように、このデータに
従って、これらの特徴の2つに1つが保持され得る。
工程3において、これらのより高いレベルの特徴は、このような特徴のデータ
ベースと比較され、このデータベースは、好ましくは、炭水化物ポリマーの構造
的要素および/または機能的要素を含む三次元データベースとして実施される。
例えば、このような特徴は、目的のエピトープを位置付けるために、必要に応じ
て用いられ得、次いでこのエピトープは、サンプル炭水化物ポリマーの型または
機能に関する情報を提供し得る。
本発明は、以下の実施例においてさらに例示され、これらの実施例は、添付の
特許請求の範囲を限定しない。
(実施例1)
(第1および第2の配列特異性因子として抗体を用いる糖分子分析)
この実施例は、本発明に従う糖分子分析技術をさらに例示する。第1および第
2の配列特異性因子として、抗体を用いる。以下の表は、例示目的で示される2
つの異なる糖類(HSおよびNS)での反応結果を列挙する。
糖類の構造は以下の通りである:
Figure 0004696100

Figure 0004696100

表2は、糖類と、本質的に配列特異的な第1および第2の因子との、反応結果
を列挙し、これらの因子はT抗原、Lewis(Le)、またはLewis
抗原(Le)に対する抗体である。本質的に配列特異的な第1の因子をマト
リクス(好ましくは、固相微小粒子)に固定する。本質的に配列特異的な第2の
因子を、蛍光因子(すなわち、ナイル(nile)赤色または緑色)で標識する
。さらに、本質的に配列特異的な第2の因子に対するマーカーとして作用する、
ナイル赤色標識または緑色標識と明確に識別可能な標識を用いて、糖類の還元末
端を標識する。表2は糖類HSに対する反応を列挙し、それに対し表3は、糖類
NSに対する反応を列挙する。
Figure 0004696100
Figure 0004696100

まとめると、本質的に配列特異的な第1の因子として示される抗体(列)を用
いる場合、糖類HSまたはNS(行)の反応において、ここで以下のシグナルが
検出可能である:
Figure 0004696100

この標識を検出し、各反応についての結果を記録した後、本質的に配列特異的
な第3の因子を添加する。この実施例において、本質的に配列特異的な第3の因
子での2つの独立した反応を用いる。ここで、糖分子を保有する固相を、α1−
2フコシダーゼまたはエキソβガラクトシダーゼ(本質的に配列特異的な第3の
因子)のどちらかでの反応のために、アリコートに有利に分割し得る。あるいは
、本質的に配列特異的な第1および第2の因子での3組の反応を、実行し得る。
Figure 0004696100
Figure 0004696100
Figure 0004696100

Figure 0004696100

ここで、上に示したように収集されたデータから、糖分子同一性(GMID)
カードを作成し得る。このような情報の例を、糖類HSについて表8に、そして
糖類NSについて表9に列挙する。
Figure 0004696100
Figure 0004696100

本質的に配列特異的な第2および第3の因子の同一性は、このようなデータリ
ストで開示される必要はない。比較目的のために、特定のコード番号(上記の表
の1、2または3)が常に試薬の特定の組み合わせを同定することは、十分であ
る。
(実施例2)
(還元末端を連続的に標識するためのスキーム)
上記の説明および実施例において示しているように、本発明の方法は、研究さ
れる糖の還元末端での標識化を有利に用いる。しかし、この標識化技術は、糖内
部の部位に及び得、従って、さらなる情報を提供することによって、本発明の方
法に寄与し得る。エンドグリコシダーゼを用いる切断に続く、還元末端の標識化
によって、鎖内の糖を標識することが可能であるので、従って、糖鎖内に標識さ
れた還元末端を得ることが可能である。この還元末端は、本来の還元末端と比較
した場合、第1、第2および第3の、本質的に配列特異的な因子に対する結合部
位と本質的により近いので、内部に作製された標識還元末端の使用は、さらなる
情報を提供する。さらに、以下にさらに記載される方法に従う、還元末端の連続
的な標識によって、研究される糖の鎖上において連続的な順序にある、異なるグ
リコシダーゼに対する部位を、同定することが可能である。
ここで、還元末端の連続的な標識の方法を、以下の工程においてより詳細に記
載する。
(1.ブロッキング)
還元末端を有する多糖を、NaBH/NaOHを含むpH11.5の溶液中
で、インキュベートする。
この処理は、還元末端をブロックし、それによってこの多糖はここで、還元末
端(RE)を欠く。
(2.露出)
工程1の多糖を、エンドグリコシダーゼで処理する。このエンドグリコシダー
ゼに対する認識部位が多糖内に存在する場合、多糖の切断によって、新しい還元
末端が作製される。ここで、この溶液は2つの糖を含む:エンドグリコシダーゼ
部位に、新しく露出されたREを有するフラグメント、および、REがブロック
されている第2のフラグメント。
(3:還元末端の標識化)
この反応は、例えば、2−アミノベンズアミド(Oxford Glycos
ystems Inc.によって、糖を標識するためのキットの形態で市販され
ている(1994年カタログ、62頁))を用いて行われ得る。高い水素濃度お
よび高い温度(H+/T)の条件下での反応に続き、還元が完了した後、この混
合物は、2つのフラグメント(このうち一方は還元末端において標識されている
が、他方は、還元末端がブロックされているという事実に起因して、標識されな
いままで残る)を含む。
還元末端を標識する別の方法は、還元アミノ化である。アリールアミン基を含
む蛍光化合物を、還元末端のアルデヒド官能基で反応させる。次いで、得られた
CH=N二重結合を、例えば水素化ホウ素ナトリウムを用いて、CH−N単結
合へと還元する。この技術は、例えばGlyko,Inc.カタログの8〜13
頁(これは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるような、Gly
ko Inc.、Novato、CA、USAから入手可能なFACE(蛍光団
補助炭水化物電気泳動)キットの一部である。
(4.第2のエンドグリコシダーゼとの反応)
ここで、第2のエンドグリコシダーゼを、糖混合物と反応させ得る。この新し
い反応混合物は、ここで3つのフラグメント(インタクトな還元末端を有する1
つのフラグメント、2−アミノベンズイミドによって標識された還元末端を有す
る第2のフラグメント、およびブロックされた還元末端を有する第3のフラグメ
ント)を有する。
(実施例3)
(本質的に配列特異的な因子での一連の反応からの構造的情報の誘導)
この実施例は、本発明の方法をさらに例証する(すなわち、上にさらに記載さ
れる一連の反応を用いることによる、糖の構造に関連するデータの生成)。この
実施例は、さらに、この一連の反応から配列情報が推論され得ることを実証する
いくつかの場合において、用いられる試薬は、公開されたデータ(例えば、カ
タログから取り出されたデータ)から予測されるとおり、厳密に反応しなくても
よい。例えば、以下にさらに記載されるレクチンDatura stramon
ium凝集素は、GlcNacに結合するとしてSigmaカタログに挙げられ
る。しかし、以下でさらに詳述される反応において、DSAは、クマリン120
誘導Glc(Glc−AMC)に結合することが示される。これらの化合物の間
の、構造的な類似性に起因して、Glc−AMCが全ての目的のためにGlcN
acと同様に作用することは明白である。さらに、以下の結果から明白なように
、用いられたエンドガラクトシダーゼは、ガラクトース残基でだけではなく、G
lc−AMC基を残りの糖と結合させている結合をも、切断する。
本発明の実施において用いられる、本質的に配列特異的な因子が、いくつかの
場合、公開されている材料(例えば、カタログ)に与えられるこれらの因子の特
異性と異なる、優れた特異性を有し得ることは、明白である。このような反応を
、公知の構造の糖を用いる本発明の方法を使用することによって、迅速に同定し
得る。次いで、見出した結果を、予測した結果と比較し得、そしてその差異は、
用いた本質的に配列特異的な因子の、異なる特異性の同定を可能にする。次いで
、本質的に配列特異的な因子の優れた特異性における、公表されたデータからの
このような変動を、これらの因子を使用する、未知の糖構造の将来の解析のため
に保存し得る。
以下に、本発明の方法を、末端を標識された五糖ならびに種々のレクチンおよ
びグリコシダーゼを用いて、例示する。この五糖は、構造Gal−β(1,4)
−[Fuc−α(1,3)]−GlcNAc−β(1,3)−Galβ(1,4
)−Glcを有する。この五糖は、それぞれ3位および4位でこの五糖に結合す
る、フコースおよびガラクトースを有する、GlcNAc位で分枝される。この
五糖を、その還元末端(Glc)にて、クマリン−120(7−アミノ−4−メ
チルクマリン、例えば、Sigma(カタログ番号A9891)から入手可能)
で標識する。アリールアミン官能基を用いることによる還元末端の標識のために
、上記のようにカップリング反応を行い得る。クマリン−120は、312nm
で励起される際、青色の蛍光を発する。第1および第2の、本質的に配列特異的
な因子として、エンド−β−ガラクトシダーゼ(EG、Boehringer
Mannheim)およびエキソ−1,3−フコシダーゼ(FD、New En
gland Biolabs)を用いる。両方の試薬に対する反応条件は、エキ
ソ−1,3−フコシダーゼのためのNEBカタログに記載される通りである。
3つの反応を行った。第1の反応は、フコシダーゼ(FD)およびエンドガラ
クトシダーゼ(EG)を含み、第2の反応はFDのみを含み、そして第3の反応
物はEGのみを含んだ。酵素を欠く第4の反応は、コントロールとして役立った
酵素が糖を消化したことを確認するために、薄層クロマトグラフィー(TLC
)を用いて、種々の反応系をサイズ分離した。
分離の後、TLCプレート上の糖を、このプレートを紫外線に露光することに
よって、検出し得る。この結果を、以下の図に示す。
Figure 0004696100

反応4において、グリコシダーゼを添加しなかったので、糖はインタクトであ
って、そしてプレート上の短い距離しか移動しない。反応2のフラグメントは、
2番目の分子量であり、それに対して反応1および反応3のフラグメントは、等
分子量であるようである。これらのデータから、糖におけるグリコシダーゼ部位
の配列が、FD−EG−還元末端(クマリン標識)であることが結論され得る。
ここで、上記の五糖を、さらに上に記載されるような一連の反応によって、試
験し得る。第1および第2の、本質的に配列特異的な因子として、レクチンを用
いた。レクチン(Anguilla Anguilla凝集素(AAA)(カタ
ログ番号L4141)、Arachis Hypogaea凝集素(PNA)(
カタログ番号L0881)、Ricinus communis凝集素(RCA
I)(カタログ番号L9138)、Lens Culinaris凝集素(LC
A)(カタログ番号L9267)、Arbus Precatorius凝集素
(APA)(カタログ番号L9758))は、Sigmaから入手可能である。
レクチンはまた、他の企業からも入手可能である。例えば、RCAIはPier
ce(カタログ番号39913)から得られ得る。レクチンを、ニトロセルロー
スフィルター上へのブロッティングによって固定する。
反応緩衝液は、1mMのCaClおよび1mMのMgClを含む、リン酸緩衝
化生理食塩水(PBS)である。レクチンの結合の後、このフィルターを、反応
緩衝液中において1%のBSAでブロックした。コントロールとして、レクチン
を含まず、かつ固定されたタンパク質として10μgのBSAを含む、反応物を
用いた。
この反応の結果を、表10に示す。プラスは、312nm蛍光の存在を示し、
この蛍光は、クマリン標識還元末端の存在を示す。この表中の数字1〜4は、上
で定義されたとおりの反応を示す。
Figure 0004696100

表10に挙げられた結果(反応物4−コントロール)から、レクチンAAA、
PNA、DSAおよびRCA−Iが糖に結合することは、明白である。従って、
フコース、Gal(1−3)GlcNAc、GlcNAc、およびガラクトース
/GalNAcは、それぞれAAA、PNA、DSAおよびRCA−Iに認識さ
れる糖構造であるので、この糖中に存在するはずである。上記のグリコシダーゼ
(フコシダーゼおよびエンド−β−ガラクトシダーゼ)が、この糖中の切断配列
を認識することはさらに明白である。これらの配列は、それぞれ、Fuc(1−
3/1−4)GlcNAcおよびGlcNAcβ(1−3)Galβ(1−3/
4)Glc/GlcNAcである。
AAA(これは、フコースに結合する)が固定されたレクチンとして用いられ
る場合、還元末端はいずれかのグリコシダーゼによって切断されるので、両方の
グリコシダーゼ部位がフコース糖と還元末端との間に位置することが、さらに推
論され得る。一方、DSAとの反応は、DSAが固定された因子として用いられ
る場合、いずれのグリコシダーゼも還元末端を切断しないので、GlcNAc単
糖が、グリコシダーゼ部位と還元末端との間に位置するか、または、Glcがク
マリンに直接結合するかの、いずれかの推論を可能にする。
さらに、固定された因子としてPNAを用いる反応は、エンド−βガラクトシ
ダーゼを用いた場合(反応物1および反応物3)のみ、還元末端が切断されるこ
とを示す。このことは、エンド−βガラクトシダーゼ部位が、PNAのための部
位と還元末端との間に位置することを示す。一方、フコシダーゼ部位は、PNA
部位と、糖のもう一方の末端との間に位置するはずである。
上記のデータを考慮すると、ここで、以下のような糖の配列を提唱することが
可能である:
Figure 0004696100

上記の実験は、本発明の方法が、比較的少ない反応に基づく種々のデータ(配
列情報を含む)を与え得ることを、明白に実証する。配列情報における詳細のい
くらか(例えば、上記の糖における、フコースとGlcNAcとの間の(1−3
)または(1−4)結合)は、完全でなくてもよい。五糖の単糖組成が知られて
いる場合、上記の分析は、この五糖の詳細の全てを与えている。それにも関わら
ず、単糖組成データの非存在下で得られた情報でさえ、先行技術の方法と比較し
て非常に正確である。
(実施例4)
(部分的かまたは完全な配列情報の誘導)
本発明の方法は、自動化に適する。従って、上記の(例えば、実施例1〜3に
おける)工程を、混合、等分、反応、および検出のための自動システムを用いて
行い得る。次いで、このような自動プロセスから得られたデータを、部分的かま
たは完全な配列情報へと、マッピング情報を「落とし込む(collapse)
」ために、さらに処理し得る。このようなデータ処理のための方法は、以下にさ
らに詳細に記載される。
全てのデータを収集した後、グリコシダーゼの添加の前の反応から得られた検
出シグナルと、グリコシダーゼの添加(およびグリコシダーゼとの反応)の後に
得られたシグナルとを比較する。グリコシダーゼの反応後に消失するそれらのシ
グナルを、マークする。このことは、それらのシグナルのリスト(以後、本明細
書中で第1リストと呼ばれる)を準備することによって、有利に行われ得る。こ
こで多糖上の2つの部位のアイデンティティは、それぞれのこのようなデータエ
ントリーについて確立され得る。(必要に応じて仮想的な)アレイにおける位置
は、第1の本質的に配列特異的な因子を示す。グリコシダーゼとの反応の前にシ
グナルが検出された場合、その因子に対する認識部位は、その多糖中に存在する
はずである。ここで、シグナル(例えば、第2の本質的に配列特異的な因子と関
連するシグナル)の消失は、このグリコシダーゼが、第1および第2の本質的に
配列特異的な因子の認識部位の間を切断することを示す。従って、認識部位の配
列は、(第1の本質的に配列特異的な因子)−(グリコシダーゼ)−(第2の本
質的に配列特異的な因子)である。還元末端に対するシグナルが、グリコシダー
ゼでの消化の後もまだ存在する場合、還元末端に対する、認識配列の相対的な順
序が確立され得る;さもなければ、両方の可能性(a−b−cおよびc−b−a
)を考慮しなければならない。例示の目的のために、用語「第1の本質的に配列
特異的な因子の認識部位」は、以下で「第1認識部位」と表され、用語「第2の
本質的に配列特異的な因子の認識部位」は、「第2認識部位」と表され、そして
用語「グリコシダーゼに対する認識部位」は、「グリコシダーゼ」と表される。
ここで、上記の型の認識部位のトリプレットの第2のリストを作成することが
、可能である(1型のトリプレット):
(第1の認識部位)−(グリコシダーゼ)−(第2の認識部位)。
同様に、ここで、全てのシグナルがグリコシダーゼの添加後に残る(必要に応
じて仮想的な)アレイ位置に関連する第3のリストを、作成し得る(2型のトリ
プレット):
(グリコシダーゼ)−(第1認識部位)−(第2認識部位)。
明らかに、十分な数のトリプレットが、分子をその配列で規定し、すなわち、
見出された全てのトリプレットを含む1つの糖配列のみが存在し得る。分子の長
さについての情報が有用可能である場合、より少ない数のトリプレットが、必要
とされ得る。必要なトリプレットの数は、その分子の総糖含有量が既知である場
合、さらになお小さくなり得る。糖類の分子量および総単糖類含有量の両方は、
当業者に周知の先行技術から導かれ得る。
配列情報を得る工程(すなわち、認識部位のマップへトリプレットを崩壊する
(collapsing)工程)が、以下に記載される。
トリプレット認識部位の第2および第3のリストは、同一性(3つの認識部位
のうち3つが同一である)、高い類似性(3つの認識部位のうち2つが同一であ
る)、および低い類似性(3つの認識部位のうち1つが同一である)で評価され
る。例示の目的で、ここでは、多糖類が、例えば、グリカンヘパリンの糖部分の
ような直鎖の多糖類であると仮定する。
次いで、上記の第2のリストおよび第3のリストは、それから一セットのトリ
プレットのリストを作成するのに使用され、ここでこのリストのセット中の各リ
ストは、同じグリコシダーゼ認識配列を共有するトリプレットを含有する。第2
のグリコシダーゼ認識配列を含有する全てのトリプレットと、特定のグリコシダ
ーゼ認識配列を含む全てのトリプレットを比較することで、分子の第1の末端か
らグリコシダーゼ1まで(フラグメントa)、グリコシダーゼ1からグリコシダ
ーゼ2まで(フラグメントb)、グリコシダーゼ2から分子の第2の末端まで(
フラグメントc)の範囲にわたる、4つの領域に多糖類配列を分割することが可
能である:
<第1の末端><グリコシダーゼ1><グリコシダーゼ2><第2の末端>。
異なるグリコシダーゼ部位を有する、2型のトリプレット内における同一の認
識部位であって、これらの認識部位が、それぞれのグリコシダーゼ部位に対して
、同じ方向に位置決めされる、同一の認識部位は、その位置に依存して、領域a
またはcのいずれかに位置決めされる候補である。異なるグリコシダーゼ部位を
有する2型のトリプレット内における同一の認識部位であって、これらの認識部
位が、異なる方向(例えば、還元末端の方向と、他のトリプレットと、非還元末
端の方向と)に位置決めされる、同一の認識部位は、領域b(すなわち、2つの
グリコシダーゼ部位の間)に位置決めされる候補である。
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型のトリプレット内の同一の認識部位は
、領域a(またはc)における第1の認識部位または第2の認識部位のうちの一
方を位置決めするための候補であり、そしてその第1の認識部位または第2の認
識部位のうちの他方が、領域c(またはa)に位置決めされる。つまり、第1の
認識部位または第2の認識部位のうちの一方が領域aに位置決めされる場合、そ
の第1の認識部位または第2の認識部位の他方が、領域bに位置決めされるべき
であり、その逆もあり得る。第1の認識部位または第2の認識部位のいずれも、
領域bに位置決めされないかもしれない。
異なるグリコシダーゼ部位を有する1型のトリプレット内の同一の認識部位で
あって、所定の認識部位が、これらのトリプレットのうちの一方において、還元
末端の方向に位置決めされ、そしてこれらのトリプレットの他方において、非還
元の方向に位置決めされる、同一の認識部位は、領域b内に認識部位を位置決め
するための候補である。
トリプレット内の多くの認識部位に対する上記の位置関係を確立して、ここで
、全ての認識配列は、論理的な推論を用いて特定の順で配列され得る。この段階
は、配列マップとして言及される。十分な数の認識配列が配列される場合、糖類
の全配列は、そこから導かれ得る。その方法が、糖類の分子量を決定しないので
、その鎖長は知られない。従って、様々な認識部位間の重複の程度が不十分であ
る場合、その配列中に、さらなる糖単位が存在し得る領域が存在し得る。そのよ
うな糖単位は、これらが、使用された本質的に配列特異性の薬剤のいずれかの認
識部位に当てはまらない場合、検出されないかもしれない。しかしながら、この
場合、全体的な配列情報はまた、最初に、糖の分子量(これは鎖長を示す)を得
、第2に、その総単糖含有量を得ることによって得られ得る。
配列マップにおけるギャップを閉じる別の可能性は、実施例2の方法であり、
ここで、グリコシダーゼによる連続的な分解が、配列情報を誘導するために使用
される。
糖類における分枝点の存在は、上記の概要のように、この方法を複雑化し得る
。その1つの対策としては、グリコシダーゼを使用して分子の画分を調製し、こ
れらの部分的な構造を分析することが挙げられる。そのような部分構造における
分枝の程度は、全体の分子における分枝の程度に比べて明らかに低いものである
。加えて、分枝点を特異的に認識する試薬が、使用され得る。そのような試薬の
例としては、例えば、上記の実施例1において使用された抗体が挙げられる。こ
れらの各抗体は、少なくとも1つの分枝点を含む糖配列に結合する。さらに、分
枝糖構造を認識する特定の酵素およびレクチンが、利用可能である。例えば、酵
素プラナーゼ(EC 3.2.1.41)が、分枝構造を認識する。加えて、抗
体は、分枝した糖構造を抗原として使用することによって産生され得る。さらに
、分枝構造を含む、特定の糖構造に結合するペプチドを産生することが可能であ
る(例えば、Deng SJ,MacKenzie CR,Sadowska
J,Michniewicz J,Young NM,Bundle DR,N
arang;Selection of antibody single−c
hain variable fragments with improve
d carbohydrate binding by phage disp
lay.J.Biol.Chem.239,9533−38,1994、参照)
加えて、多くの場合において、既存の糖質の構造の知識は、分枝点の存在を正
確に予測する。例えば、N結合型グリカンは、oxford Glycosys
tems catalogの6ページに列挙されたように、限定された数の構造
を有する。これらの構造は、1アンテナ型から5アンテナ型の範囲にある。より
複雑化された構造は、さらなる糖残基が付加された、より単純な構造に類似する
。従って、1つのアンテナ構造が同定された場合、さらなる残基を同定し、そし
てこれらのデータをN結合型グリカン構造のライブラリーと比較することによっ
て、より複雑化された構造における分枝点の全てを簡単に予測することが可能で
ある。
さらに、本発明の方法に従って集められたデータを分析することによって、分
枝点の存在および位置を論理的に推論することが、しばしば可能である。例えば
、aおよびbで示される2つの認識部位が、異なる枝に位置決めされる場合、そ
の部位が還元末端と分枝点との間に位置決めされるグリコシダーゼでの消化は、
還元末端マーカーの損失を生じる。しかしながら、認識部位aとbの両方に対す
るマーカーは、残る。分枝点と認識部位aとの間に位置決めされたグリコシダー
ゼが使用される場合、認識部位bに対するマーカー、および還元末端マーカーが
、切断される。分枝点の可能性を考慮に入れないとすると、認識部位bが、認識
部位aと還元末端との間に位置決めされることを示す。しかしながら、認識部位
bと分枝点との間に位置決めされたグリコシダーゼが使用される場合、還元末端
マーカーおよび認識部位aは、切断される。再び、分枝の可能性を考慮に入れな
いとすると、これは、認識部位aが、還元末端と認識部位bとの間に位置決めさ
れることを示す。これらの推論は、明らかに互いに不適合であり、そして認識部
位aおよびbが2つの異なる分枝に位置決めされることが想定される場合にのみ
、解決され得る。その分枝点は、認識部位aおよびbと、第1の上記グリコシダ
ーゼとの間に位置決めされる。使用される他方の上記グリコシダーゼは、各分枝
上に、分枝点とそれぞれの認識部位(aまたはb)との間に位置決めされる。
従って、本質的に配列特異的な薬剤として、本発明の方法において分枝構造を
認識する薬剤を使用する場合、糖分子における分枝点の存在および位置の情報を
誘導することは、可能である。次いで、この情報は、その構造の各分枝の配列マ
ップを作成し、分枝構造全体の配列マップを得るために使用され得る。次いで、
このような構造におけるギャップは、本発明に従って(すなわち、さらなる反応
の使用によって、グリコシダーゼでの消化によって(それにより、ギャップの存
在する分子の領域は、本発明の方法に従うさらなる分析のために特異的に単離さ
れる)、および上にさらに記載するような連続的なグリコシダーゼ消化によって
、非分枝糖類の場合のように閉じられ得る。
要約すると、本発明に従って糖類の配列を決定する方法および/または糖類の
構造をマッピングするための方法は、以下の工程:
1.1型および2型のトリプレットの回収
2.類似性に従うトリプレットの分類
3.異なるグリコシダーゼ認識部位を有するトリプレットの比較
4.糖類上への発生の順でのトリプレットの配列
5.グリコシダーゼ認識部位の配列
6.トリプレットに対する適合性のチェック
7.単一のファイル順序(single file order)でのグリコシ
ダーゼの認識配列ならびに第1および第2の本質的に配列特異的な薬剤の認識配

8.多糖配列への認識配列(部位)の翻訳
9.「重複」問題の補正
10.配列の出力
11.全ての有効データに対するチェック
を包含する。
上記の工程5が実施された後、グリコシダーゼ部位の予備的な順番がたてられ
る。工程6において、ここで、これらに基づいた予測がその順番と一致するか否
かを各トリプレットに対してチェックする。次いで、そのデータにおける矛盾に
基づいて、トリプレットのデータに合う新しいモデルが、作成される。次いで、
このモデルが、全てのトリプレットのデータに対して試験される。さらに、その
トリプレットを含有する認識部位に関するさらなる方向的な情報を抽出するため
に、さらなる反応が実施され得る。
上記の工程8(ここで、連続的に配列された認識部位が、実際の単糖単位の配
列に翻訳される)の後、この糖配列のモデルが示され得る。そのモデルを試験す
るために、多くの質問に答える必要がある。第1の質問は、同一の配列マップを
なお有する最小配列はどれか、ということである。この段階において、分子量お
よび単糖組成の情報(利用可能である場合)は、考慮されない。このアプローチ
は、単に、できる限り少ない矛盾で利用可能なデータの全てを援用する、配列の
作成に役立つのみである。この観点において、答えるべき第2の質問は、その最
小配列が、この点において全ての利用可能なデータ(任意の分子量および単糖成
分データを除く)になお一致するか、ということである。答えるべき第3の質問
は、確立されたような配列マップに適合する他の配列が存在するか、ということ
である。肯定する場合、次いで、そのさらなる配列が、以下の質問を使用して試
験され得る:各配列モデルが、このトリプレット情報およびさらなる任意のデー
タ(例えば、分子量、単糖組成、および生物学からの公知の糖構造モデル)とど
のように一致するか。
最後に、上記の工程1〜10に従って最良であると見出された配列モデルは、
次いで、全てのトリプレット、単糖組成、その糖類の分子量および構造組成にお
ける先行知識、および生物学的に存在する類似の構造からの予測に対して試験さ
れる。このような繰り返し試験によって、利用可能なデータと配列モデルとの間
の矛盾が同定され、可能な場合、その配列モデルが、データをより良く示すよう
に適合される。
(実施例5)
(乳サンプルの糖分子同定(GMID)分析)
この実施例の目的は、乳サンプルの分析および比較に対するGMID技術の適
用を実証することである。
A.膜および第一層のレクチン:
本明細書中、以下に記載される実験において使用した支持表面は、ニトロセル
ロース膜である。この膜を以下のように調製した:
1.ニトロセルロース膜を切り出し、それらの表面を9×6の四角(各四角は、
3mm)の配列に区画した。次いで、その膜を吸い取り紙に置き、それぞれの
膜の左上の四角をペンでマークした。
2.凍結乾燥されたレクチンを水に再懸濁し、最終濃度を1mg/mlとした。
その再懸濁されたレクチン(およびコントロール溶液:5%ウシ血清アルブミン
)をボルテックスで撹拌し、そして1μlの各溶液を、以下の典型的なブロット
の例示に影をつけることによって示されるように、このブロット上の28個の四
角のうちの1つに加えた。
Figure 0004696100

本実験に使用したレクチンは、表11に列挙される。
(表11)
Figure 0004696100

3.調製されたブロットを90mmのペトリ皿に置いた。
4.そのブロットを、各ペトリ皿に当業者に周知の任意の適切なブロック溶液1
0ml(例えば、5%のウシ血清アルブミン)を加えることによってブロックし
た。
5.ブロック溶液中のブロットを含有する皿を、室温で2時間、回転台(50r
pm)上で回転させることによって穏やかに撹拌させた(または回転させずに4
℃で一晩おく)。
6.次いで、そのブロットを、10mlの洗浄溶液を各ペトリ皿に加えることに
よって洗浄した。任意の通常利用される緩衝溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食
塩水)をこの洗浄工程を実施するのに使用し得る。この皿を5分間、穏やかに回
転させる(50rpm)ことによって洗浄した。この手順を、古い洗浄溶液を廃
棄し、その都度新しい溶液に置き換えて、計3度実施した。
B:乳サンプルの添加:
使用した乳サンプルは以下のとおりであった:
1.Ramat haGolan dairies(Israel)製のウシU
HTのロングライフ(日持ちする)乳(脂肪分3%)(ロット番号522104
);
2.Mechek dairies(Israel)製の低温殺菌されたヤギの
乳(ロット番号1および2);
3.2と同じであるが、低温殺菌されていないヤギの乳(ロット番号3および4

これらの乳サンプルを10%(v/v)に溶解し、約5mlの各サンプルを、
別々のブロットに適用した。
二連のブロットを、前記の乳サンプルの各々に対して調製した。さらに、さら
なるブロット対を、糖を加えずに調製した(ネガティブコントロール)。
次いで、そのブロットを1時間撹拌しながら、室温でインキュベートした。
C.着色レクチン:
試験される乳の単糖類成分の先行知識から、そして本明細書中下記の実施例7
に記載されるアルゴリズムに基づいたコンピュータプログラムの適用によって、
以下の着色レクチンを選択した:Con A、VVA。
これらの2つのレクチンの混合物を、各着色レクチンの濃度が2mg/mlで
あるように、洗浄溶液中で調製した。
500μlの各レクチン混合物を、上記のように調製されたブロット上でイン
キュベートした。各ブロットを、520nmでのフルオレセインの蛍光を測定す
ること、そしてビオチン標識されたレクチンの場合には、HRP−ストレプトア
ビジン溶液とのビオチンの反応後に生成されたTMBの青色のシグナルを測定す
ることの両方によって読み取った。
FITC標識されたレクチンおよびビオチン標識されたレクチンについて得ら
れた結果を、それぞれ表12および表13に示す。これらの表に示される結果は
、0〜3のスケールで測定され、ここで、0は、ノイズレベル以下であるシグナ
ルを示し、1〜3の結果は、糖無しのコントロールで得られた結果を差し引いて
後のポジティブシグナル(ノイズより上の)を示す。
低温殺菌されたヤギの乳(ロット番号1および2)、低温殺菌されていないヤ
ギの乳(ロット番号3および4)およびウシの乳に対するこれらの結果から得ら
れた糖分子同定(GMID)カードを、図1のA〜Eそれぞれに示す。レクチン
1〜24の位置は、それぞれのカード1の上部に左から右へ1列に示される。
D.結果の解釈:
得られたウシの乳サンプルは、サンプル中の多糖類が、以下に特異的なレクチ
ンに対して陽性の結果を与える糖類を含有することを示すGMIDをもたらした

a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GluNac(WGAおよびDSA)。
低温殺菌されたヤギの乳サンプルは、以下に対して陽性の結果を生じた:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GluNac(DSA)。
試験されたこれらのロットの間にはレクチンの反応性の差異がないことが観察
された。
低温殺菌されていないヤギの乳サンプルは、以下に対して陽性反応を示した:
a.グルコース/マンノース(ConA、PSAおよびLCA);
b.GluNac(DSA)。
要約すると、ウシの乳は、ウシの乳のみが、WGAと反応したという点でヤギ
の乳と異なった。低温殺菌されたサンプルにおいてシグナル強度が有意に低いこ
とを除けば、本質的には、低温殺菌されたヤギの乳サンプルと低温殺菌されてい
ないヤギの乳サンプルとの間に差異はなかった。
(実施例6)
(リポ多糖類の糖分子同定(GMID)分析)
GMID分析を、Sigma Chemical Co.から入手した5つの
異なる細菌性リポ多糖類(St.Louis,Missouri,USA)(L
PS#1、7、10、15および16)に対して、本質的に上記の実施例5に記
載されたような方法を使用して実施した。使用した着色レクチンは、ECL、W
GA、VVAおよびSBAであった。
サンプルLPS#1、7、10、15および16について得られたGMIDカ
ードを、図2のA〜Eにそれぞれ示す。この図より、このGMIDカードは、異
なるリポ多糖類のそれぞれに固有の「フィンガープリント」を提供し、そして、
細菌またはこれらの産物の混合物を含有するサンプル中でこれらの化合物の存在
を同定するのに使用され得ることが理解され得る。
(実施例7)
(着色レクチンを選択する方法)
多くの因子が、実施例5および6に例示される多糖類分析の方法に使用される
着色レクチンを選択する場合に考慮されるべきである。これらの考慮の中でもと
りわけ、選択されたレクチンのそれぞれが、識別可能な色または他の検出可能な
マーカーを有することが必要であり、そしてレクチン間の相互作用を減少するこ
とが必要である。着色マーカー選択に使用するためのアルゴリズムを示したフロ
ーチャートを、図3に示す。図3に示されるこのアルゴリズムは、n個の着色レ
クチン(または他の検出可能なマーカー)の選択101で始まり、この初期選択
は、分析される糖類の部分的な単糖組成または完全な単糖組成に関して得られた
情報に従って作成される。
次の工程102において、選択されたレクチンの色を、選択された色の同一性
/非同一性に関してチェックするために試験する。選択した群に同一の色が存在
する場合、次いで、そのプロセスは工程103に進み、そうでなければ、工程1
04に進む。工程103において、非固有の色を有することを見出されたレクチ
ンの1つは、同じ結合カテゴリーに属する(すなわち、同じ単糖への結合特異性
を有する)別のレクチンに置き換えられ;工程102に進む。
工程104において、このn個の選択されたレクチンは、互いとの、および本
明細書中の実施例5に記載された方法の第1の段階で使用された着色されていな
いレクチンとの、任意の交差反応を検出するために試験される。交差反応が検出
された場合、次いでそのプロセスは工程105に進み、そうでなければ工程10
6に進み、ここで、このアルゴリズムが終了する。
工程105において、別のレクチンとの交差反応を検出されたレクチンの1つ
は、交差反応のないレクチンに置きかえられ、次いで、102に進む。このアル
ゴリズムは、工程106で終了する。
強調される点は、小さいnの値について、そして単純な単糖組成を有する糖類
について、上記のアルゴリズムは、操作者自身が選択手順の各工程を通して手動
で操作することによって適用され得るということである。あるいは(特にnが大
きい数であるかまたは単糖組成がより複雑である場合)、本明細書中の上記のア
ルゴリズムプロセスは、このプロセスを実行するように設計されたコンピュータ
プログラムによって実施され得る。
上記の実施例は、本明細書中に記載される方法の有用性を立証した。しかしな
がら、それらは例示のみの目的で加えられている。当業者には、多くの変更が、
使用される本質的に配列特異的な薬剤において、反応条件において、固定化の技
術において、ならびに配列の標識、反応工程、および検出工程において、全てが
、本発明の範囲から逸脱することなくなされ得ることが、明らかである。
(他の実施形態)
本発明は、その詳細な説明と関連して記載されるが、前述の説明は、例示を目
的とし、そして添付の特許請求の範囲により定義される、本発明の範囲を限定す
ることを意図されないことが理解される。他の局面、利点、および改変は、上記
の特許請求の範囲内にある。
図1は、均質化されたヤギの乳(AおよびB)、均質化されていないヤギの乳(CおよびD)ならびにウシの乳(E)について得られる糖分子同一性カード(GMID)の例示である。 図2は、種々のリポ多糖類サンプルについて得られるGMIDカードの複製物である。カードA〜Eは、LPS#1、7、10、15、および16にそれぞれ対応する。 図3は、1セットの着色したレクチンを選択するためのアルゴリズムを例示する高レベルの論理フローチャートである。 図4は、本発明について目的の炭水化物ポリマーについてのフィンガープリントを決定するための生データを得るための例示的な実験系を示す。 図5は、サンプルの炭水化物ポリマーのフィンガープリントを、少なくとも1つの他のフィンガープリントと比較するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。 図6は、フィンガープリントのデータを伸長するために、サンプルの炭水化物ポリマーのフィンガープリントを内部的に分析するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。 図7は、外部のデータベースからのデータの統合によって、フィンガープリントのデータを伸長するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。 図8は、目的の特徴を、サンプルの炭水化物ポリマー内に位置するための本発明に従う例示的な方法のフローチャートである。

Claims (8)

  1. 被験体中の炭水化物ポリマーに関連する病理検査方法であって、以下:
    該病理を有すると疑われる被験体から、第1の炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントを提供する工程であって、該試験フィンガープリントは、該第1の炭水化物ポリマーについての少なくとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;および
    該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって、該参照フィンガープリントが、病理症状が既知の参照サンプルにおける第2の炭水化物ポリマー由来であって、該参照フィンガープリントは、該第2の炭水化物ポリマーについての少なくとも該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因子に関する結合情報を含み、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリントの間の一致が、該被験体および該参照サンプルが同じ病理状態を有することを示す、工程、
    を包含する、方法。
  2. 請求項1に記載の方法であって、前記参照サンプルがデータベースを含む、方法。
  3. 請求項1に記載の方法であって、前記第1および第2の炭水化物ポリマーの各々が、共に、糖タンパク質、多糖類または糖脂質から選択される、方法。
  4. 請求項1に記載の方法であって、前記被験体がヒトである、方法。
  5. 炭水化物ポリマーに関連する機能を同定する方法であって、以下:
    試験サンプルから、第1の炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントを提供する工程であって、該試験フィンガープリントは、該第1の炭水化物ポリマーについての少なくとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;および
    該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって、該参照フィンガープリントが、参照サンプルにおける、機能的状態が既知である第2の炭水化物ポリマー由来であって、該参照フィンガープリントは、該第2の炭水化物ポリマーについての少なくとも該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因子に関する結合情報を含み、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリントの間の一致が、該試験サンプルおよび該参照サンプルが同じ機能的状態を有することを示す、工程、
    を包含する、方法。
  6. 請求項5に記載の方法であって、前記第1および第2の炭水化物ポリマーの各々が、共に、糖タンパク質、多糖類、または糖脂質から選択される、方法。
  7. 請求項5に記載の方法であって、前記第1または第2の炭水化物ポリマーの各々が、糖タンパク質である、方法。
  8. 炭水化物ポリマーを同定する方法であって、以下:
    試験サンプルから、第1の炭水化物ポリマーの試験フィンガープリントを提供する工程であって、該試験フィンガープリントは、該第1の炭水化物ポリマーについての少なくとも第1の糖類結合因子および第2の糖類結合因子に関する結合情報を含む、工程;および
    該試験フィンガープリントと参照フィンガープリントを比較する工程であって、該参照フィンガープリントが、参照サンプルにおける、本体が既知である第2の炭水化物ポリマー由来であり、該参照フィンガープリントは、該第2の炭水化物ポリマーについての少なくとも該第1の糖類結合因子および該第2の糖類結合因子に関する結合情報を含み、該試験フィンガープリントと該参照フィンガープリントの間の一致が、該試験サンプルおよび該参照サンプルが同一であることを示す、工程、
    を包含する、方法。
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