JPWO2003077363A1 - アンテナカバー - Google Patents
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Abstract
優れた電気特性を有するポリテトラフルオロエチレン系樹脂を使用した、高周波数領域においても誘電損失の少ないアンテナカバーを提供する。ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は特定の条件で算出される誘電正接が2.0×10−4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるアンテナカバーである。前記誘電正接が、1.50×10−4以下であることが好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重が、2.192以上であることが好ましい。
Description
技術分野
本発明は、アンテナカバーに関する。詳細には、携帯電話基地局などに使用されるアンテナのアンテナカバーに関する。
背景技術
携帯電話基地局アンテナは、都市部ではマンションなど高層建築物の屋上に設置されており、低誘電損失樹脂基板の両面に銅箔を貼り付けてエッチングされたアンテナ素子部により形成されている。
現在、この携帯電話は第2世代から第3世代へと移行中である。第2世代携帯電話では1〜2GHz、第3世代では2〜4GHz、さらに第4世代では5〜8GHzの周波数領域が使用されており、高周波ほど絶縁体の誘電正接(以下、tanδと称す)による誘電損失(電力ロス)が大きくなる。さらに、アンテナ素子の樹脂基板には数百ワットの電力がかかるため、tanδがおおむね1.5×10−4以下のレベルの低誘電損失材料を使用する必要がある。そして、この誘電損失を低下させるためにインピーダンスを入出力にあわせる必要があり、低誘電率であることも求められる。
前記樹脂基板材料として、従来、成形性、接着性および価格の点でシアネート樹脂が使用されている。この電気特性は、tanδが約10−3であり、耐用年数は15年であるといわれている。
また、シアネート樹脂基板の両面に銅箔を接着する場合、基板を表面処理する、非フッ素樹脂接着剤を使用する、あるいは、これらを併用する方法があげられる。しかし、これらの方法には、工程が複雑で生産効率が悪い、初期接着強度は得られるが、温度変化や高温下での接着強度低下が大きく、最高80℃から最低零下数℃までと温度変化の大きい屋外でのアンテナ素子に用いられた場合には剥離が生じる、非フッ素樹脂接着剤を用いた場合、風雨、直射日光にさらされるため剥離が生じたり、誘電損失が発生するなどの問題がある。
ところで、前記アンテナは、屋外に設置されているために、雨、雪、塵などにさらされる。とくに水分が、アンテナに付着すると、水による透過損失が発生し、また電磁波伝搬に拡散が生じるという問題がある。
そこで、屋外で使用されるアンテナは、アンテナカバーにより保護されている。そして、同様に前記アンテナカバーにも、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性が求められる。
本発明は、前記課題を解決するものであり、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性をもつアンテナカバーを提供することを目的とする。
発明の開示
すなわち本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は下記条件(1)によって算出される誘電正接が2.0×10−4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるアンテナカバーに関する。
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
(誘電正接測定方法)
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により前記サンプルシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおける誘電正接を次式にしたがって算出する。
式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
前記誘電正接は、1.50×10−4以下であることが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。
前記シートの比重は、2.192以上であることが好ましい。
前記シートは、未焼成または結晶転化率が90%以下であることが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
前記シートに金属箔は熱融着により接着されてなることが好ましい。
前記シートを表面処理したのち、熱融着することが好ましい。
前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記シートと金属箔とが、シートを表面処理したのち、樹脂接着剤を介して接着されることが好ましい。
前記表面処理は、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
また、本発明は、(A)前記条件(1)で測定した12GHzにおける誘電正接が1.5×10−4以下であり、標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属箔を接着されてなるアンテナカバーに関する。
前記組成物はシアネート樹脂を含むことが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
前記金属箔はステンレス箔またはアルミニウム箔であることが好ましい。
前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記シートを成形したのち、金属箔を接着して得られることが好ましい。
前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形して得られることが好ましい。
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いたシートからなるアンテナカバーに関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン系樹脂(以下、PTFE系樹脂と称す)は、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはテトラフルオロエチレン99.9〜99.9999モル%と、式(I):
CX2=CY(CF2)nZ (I)
(式中、X、YおよびZは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、nは1〜5の整数)で示されるフルオロオレフィンおよび式(II):
CF2=CF−ORf 1 (II)
(式中、Rf 1は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマー0.0001〜0.1モル%との共重合体である変性量0.1重量%以下の変性ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
前記式(I)で示されるフルオロオレフィンとしては、たとえばヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと略す)などのパーフルオロオレフィン;パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロオレフィンなどがあげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、HFPが好ましい。
また、前記式(II)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEと略す)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、PEVEと略す)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEと略す)があげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、PMVEが好ましい。
本発明で使用するPTFE系樹脂の形状としては、モールディングパウダー、ファインパウダー、水性ディスパージョンなどがあげられる。
前記ファインパウダーは、乳化剤、特に含フッ素系の乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて乳化分散重合することにより得られる。乳化重合において、得られる重合体の分子量を低分子量化するには、重合開始剤の量を増やす、連鎖移動剤を添加する、変性モノマーの添加などの方法が採用される。
重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム(APS)、ジコハク酸パーオキサイド(DSP)などが、連鎖移動剤としてはたとえば水素、メタン、エタンなどの炭化水素などがあげられる。
乳化重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
さらに乳化重合法で得られるコロイド一次粒子を芯−殻構造とすることにより、成形性、とりわけペースト押出成形性を向上させることもできる。芯−殻構造としては、たとえば芯をTFEの単独重合体で構成し、殻を変性PTFEで構成したものが、ペースト押出成形性が良好な点から好ましい。
前記モールディングパウダーは、分散剤の存在下に重合開始剤を用いて懸濁重合して得られる。
重合開始剤としては、過硫酸塩、亜硫酸塩などをあげることができ、例えば、過硫酸アンモニウムなどをあげることができる。
懸濁重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
前記水性ディスパージョンとしては、前記乳化重合にて得られた水性分散液をそのまま使用できるが、含フッ素重合体の濃度を高め、かつ安定性を向上させるために、界面活性剤を添加して安定化させたのち、層分離濃縮法や膜分離濃縮法などにより重合体固形分濃度を40〜70重量%にまで濃縮し、ついで純水、アンモニア水とポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を加えて、30〜65重量%に希釈することが好ましい。
使用する界面活性剤としては、式:
R−O−A−H
(式中、Rは直線状または分岐鎖状の炭素数5〜18、好ましくは10〜16のアルキル基、Aはオキシエチレン基を5〜20個およびオキシプロピレン基を0〜6個有するポリオキシアルキレン鎖である)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。アルキル基Rとしては、デシル、ラウリル、トリデシル、セチル、ステアリルなどが例示でき、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。特に、界面活性能が優れている点、水溶性である点、入手が容易である点から、Rが炭素数10〜16のアルキル基で、ポリオキシアルキレン鎖が7〜15個のオキシエチレン基と0〜3個のオキシプロピレン基とからなるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。この界面活性剤の製造原料は、天然または合成した高級アルコールを使用してもよいが、アルキルフェノール類を全く含まないことが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の添加量は、PTFE系樹脂100重量部(以下、「部」という)あたり3〜20部であることが好ましい。
なお、希釈のために、純水や水溶性溶剤、アルキルフェノールを含まない炭化水素系の各種界面活性剤などを適宜添加してもよいし、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤を加えたり、増粘剤、レオロジーコントロール剤、各種水溶性電解質を含む塩類などで粘度調整してもよい。
PTFE系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。標準比重が2.300のPTFE系樹脂は、完全に結晶化されており、現実には存在しない。すなわち本発明で用いるPTFE系樹脂は、高結晶化度のものであることが好ましい。標準比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、シートのtanδが高くなったり、成形加工性に劣る傾向にある。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。なお、前記標準比重は、温度25℃の条件下、空気中のサンプル重量(W1)と水中でのサンプル重量(W2)の差から、サンプルの密度(ρs)を求める方法で、下記の式で表される。
ρs:サンプルの密度(g/cm3)
ρw:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
前記標準比重を満たすPTFE系樹脂の分子量は、500万以下であると考えられ、本発明では、このような低分子量のPTFE系樹脂が好ましく使用される。
また、前記PTFE系樹脂をフッ素ラジカル源と接触させることによりフッ素化処理して、末端不安定基を安定化することが好ましい。前記末端不安定基をフッ素化すると、熱安定性だけでなく、加工特性、tanδなどの高周波特性も改善される。さらに、それから得られるアンテナカバーの高周波特性および機械的特性も改善される。
フッ素化処理の反応温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、110〜200℃である。反応温度が100℃より低いと、反応速度が遅くなる傾向にある。反応温度が250℃をこえると、PTFE系樹脂同士が融着したり分解揮散する傾向にある。
フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスのほか、ClF、ClF3、BrF3、IF3などのハロゲン化フッ化物;XeF2、XeF4、KrF2などの希ガスのフッ化物;NF3、NF2などの含窒素フッ素化合物など前記反応温度でガス状の化合物があげられる。なかでも、取扱い性、価格の点からフッ素ガスが最も好ましい。フッ素ガスを用いてフッ素化処理をする場合、PTFE系樹脂を110〜250℃にて、フッ素ガスと1〜10時間接触させる。好ましくは、反応温度180〜230℃である。また反応時間は、2〜5時間であることが好ましい。反応圧力は0.1〜1MPa程度でよく、好ましくは大気圧である。フッ素ガスは純粋なフッ素ガスでもよく、また窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで5〜25容量%、好ましくは7〜20容量%に希釈して使用してもよい。
フッ素ラジカル源の添加量は、反応温度や反応時間、フッ素ラジカル源の種類などによって異なるが、フッ素原子に換算して、PTFE系樹脂100部に対し、0.01〜1部が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5部である。フッ素ラジカル源の添加量が0.01部より少ないと、原料PTFEのフッ素化が不充分となる傾向にある。またフッ素ラジカル源の添加量が1部をこえても、フッ素化の効果は向上せず、不経済となる傾向にある。
フッ素化処理に使用する反応装置としては、固−気接触を充分に行なうことができる装置であれば問題なく使用できる。具体的には流動床型、棚段型の固−気接触反応装置があげられる。
本発明で使用されるPTFE系樹脂は、12GHzでのtanδが2.0×10−4以下を示し、1.5×10−4以下であることが好ましい。tanδが2.0×10−4をこえると、アンテナカバーの誘電損失(電力ロス)が大きくなる。
また、本発明におけるtanδ測定方法は、以下の条件(1)でサンプルを作製し、測定する。
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンを円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
ただし、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にしてからシート成形する。
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたフィルムの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。次式は、埼玉大学工学部の小林禧夫氏および佐藤純也氏が開発された計算式(小林禧夫、佐藤純也「誘電体平板材料のマイクロ波複素誘電率測定」信学技報、MW87−7、1987年5月号)にしたがっている。ただし、12GHzの空洞共振器にサンプルを挿入すると、サンプルにより共振周波数が変化し、12GHzよりも低くなる。その共振周波数の値は、PTFE500μm厚のサンプルでおよそ11.74GHzである。この場合、無サンプル状態での共振周波数をもってtanδを表記する。
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
本発明のアンテナカバーに使用されるPTFE系樹脂からなるシートとしては、厚さ200μm以上のシート状のものだけでなく、200μm未満のフィルム状のものも含む。
本発明のアンテナカバーとしては、PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーや、PTFE系樹脂からなるシートをアンテナ素子および反射板に直接コーティングしているアンテナカバーをさすものである。
PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーである場合、その立体形状は、円筒形、多角形、円錐形など、とくに限定されない。
前記アンテナカバーの厚さは、特に限定されないが、1〜6mmであることが好ましい。1mmより小さいと、機械的な強度不足となる傾向にある。
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合には、そのアンテナカバーの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。膜厚が、5μm未満であると、撥水性が低下する傾向にあり、50μmをこえるとクラックが発生して水がしみ込み、撥水性が低下する傾向にある。
本発明のアンテナカバーは、前記PTFE系樹脂のシートからなり、比重が2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、tanδが高くなったり、成形加工性に劣る。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。
比重が2.192以上のシートを得るには、標準比重が2.192以上である前記PTFE系樹脂を20重量%以上、さらには70重量%以上含んでいることが好ましい。
また、本発明は、(A)前記条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10−4以下であり、標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属箔が接着されているアンテナカバーに関する。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)は、条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10−4以下であり、好ましくは、1.0×10−4以下である。この範囲をはずれると、誘電損失が大きくなる傾向にある。
また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であり、105ポイズ以下であることが好ましい。溶融粘度が106ポイズをこえると、徐冷条件での作製時に誘電損失が大きくなる傾向にある。
ここで、徐冷条件は、例えば、焼成後の冷却速度が、60℃/時間より小さくすることができる。
また、前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)および/またはポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、シートの10重量%以上含み、30重量%以上含むことが好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末が10重量%より少ないと、誘電損失が小さくなる効果が得られにくい傾向にある。
前記組成物は、徐冷成形時の誘電正接の低さの点から、溶融粘度が106ポイズ以下のPTFE系樹脂を含むことが好ましく、さらに低損失の点から、末端基がフッ素化されているポリテトラフルオロエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
また、本発明は、PTFE系樹脂からなるシートを用いたアンテナカバーに関する。
本発明で使用されるPTFE系樹脂は溶融加工できないため、プレス成形法、シートまたはチューブ(パイプ)押出などの押出成形法、圧縮成形法などの成形法によって成形加工する。
得られた成形物は、通常、続いて焼成される。焼成温度は360〜400℃が適当である。
また、前記焼成を行わなくてもよく、また結晶転化率90%以下に半焼成化してもよい。未焼成および結晶転化率90%以下の半焼成化することで、誘電損失が下がる傾向にある。
その後、プレス処理、ペースト押出し、あるいはスカイブなどにより、PTFE系樹脂からなるシート状の成形体が得られる。そして、得られた平面成形体を熱プレスまたはチューブ押出しなどにより、立体形状として、本発明のアンテナカバーを得ることができる。
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合、アンテナ素子およびアンテナ反射板に水溶性ディスパージョンをスプレーコートし、3〜20分間乾燥したのち、焼成をおこなうことが好ましい。焼成温度は360〜400℃が適当である。
かくして得られる本発明で使用されるアンテナカバーは、マイクロ波領域(3〜30GHz)、特に高周波領域における電気特性に優れたものであり、tanδは12GHzで2.0×10−4以下、好ましくは1.50×10−4以下である。tanδが、2.0×10−4をこえると、誘電損失が増加する傾向にある。
アンテナカバーおよびその周辺機器には、伝送損失を小さく抑えることが求められている。そして、その伝送損失は、以下の式により求められる。
伝送損失=導体損+誘電体損(αd)
ここで誘電体損(αd)は、
誘電体損(αd)=
27.3×(周波数)/(光速)×√(誘電率)×tanδ
で表される。誘電体損はtanδに比例しており、アンテナの伝送損失低減のためには、tanδの低減による効果が大きいことがわかる。
したがって、本発明のアンテナカバーのtanδが1.50×10−4以下に低減されているので、伝送損失を大きく低減することができる。
また、本発明のアンテナカバーは、フッ素系樹脂からなるため、雨や雪などの水分をはじく。そのため、水分によるアンテナの受発信中心周波数のずれが生じにくくなり、安定した受発信性能が得られる。
本発明のアンテナカバーは、固定の点から、前記シートの少なくとも片面に金属箔が接着されていることが好ましい。
前記金属箔としては、腐食防止の点から、ステンレス箔、アルミニウム箔などが好ましい。金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.05〜1.0mmであることが好ましい。
前記金属箔は、接着強度の点から、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面に熱融着により接着されてなることが好ましい。
また、接着強度の点から、前記金属箔は、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面にエポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる3種の接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種以上を用いて、2層以上の接着層としてもよい。例えば、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体層とエポキシ樹脂層からなる2層の接着層などをあげられる。
前記接着方法としては、樹脂接着剤の1層、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体の1層、または樹脂接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体からなる2層を介して接着されることをさす。
これらの中でも、容易に接着できる点、金属との接着強度について、初期接着力だけでなく、激しい温度変化や高温下においても接着強度が低下しないため、熱処理を伴う後加工が可能である点、フッ素樹脂が主鎖であるため耐候性に優れ、屋外での寿命が長い点、および誘電損失が発生しにくい点で、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体が好ましい。
前記官能基含有フッ素エチレン性重合体は、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と(b)該官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体のうちの少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。
前記(a)成分の含有率は、0.05〜30モル%が好ましく、接着される基材の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力、接着剤の形態と接着方法などの違いにより適宜選択されるが、より好ましくは0.05〜20モル%、とくに好ましくは0.1〜10モル%である。前記含有率が0.05モル%未満であると他の基材との接着性が充分得られにくく、薬品の浸透や温度変化などによる剥離などをおこしやすい。また、30モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出などを起こしやすい。
前記官能基含有含フッ素エチレン性重合体(a)としては、
CX2=CX1−Rf 2−Y (1)
(式中、XおよびX1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす)
で示される少なくとも1種の単量体があげられる。より具体的には、
CF2=CF−Rf 3−CH2OH (2)
[式中、Rf 3は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または−ORf 4(Rf 4は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす]、
CF2=CFCF2−ORf 5−CH2OH (3)
[式中、−Rf 5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CH2=CFCF2−Rf 6−CH2OH (4)
[式中、−Rf 6は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または−ORf 7(Rf 7は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価のアルキレン基)を表わす]、または
CH2=CH−Rf 8−CH2OH (5)
[式中、Rf 8は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CX2=CX1−Rf 9−COOY1 (6)
(X、X1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Y1は水素原子、NH4もしくはI、II、III、IVa、VIII類元素から選ばれる金属原子、Rf 9は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の単量体があげられる。前記−COOY1は、より具体的には、−COOH、−COONH4、−COONa、−COOK、−COOLi、−COOZn、−COOAl、−COOMg、−COOCaなどが好ましくあげられる。
前記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体(b)としては、テトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン85〜99.7モル%と
CF2=CF−Rf 10 (7)
(式中、Rf 10はCF3またはORf 11(Rf 11は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))
で示される単量体0.3〜15モル%との混合単量体などがあげられる。
また、エポキシ樹脂を使用する場合は、前記シートをナトリウムエッチング、プラズマ処理、エキシマレーザ処理、放電処理などの表面処理したのち、エポキ
シ樹脂を付与することが好ましい。
前記官能基を有する含フッ素エチレン性重合体、および接着剤の塗布量は特に限定されないが、0.004〜0.04g/cm2であることが好ましい。0.004g/cm2よりすくないと、接着強度不足となる傾向にある。0.04g/cm2をこえると、伝送損失が増える傾向にある。また、あらかじめフィルム状にした接着剤を前記シートに付与してもよい。このとき、前記フィルムの厚さは、0.02〜0.2mmであることが好ましい。0.02mmより小さいと、接着強度不足となる傾向にある。0.2mmをこえると、伝送損失が増える傾向にある。
また、接着剤の形態としては、フィルム状に限られるものではなく、粉体、分散液としても使用できる。
また、前記表面処理は、接着強度の点から、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
本発明のアンテナカバーは、前記接着剤によりアンテナや金属製の反射板などと接着することができる。
本発明のアンテナカバーの一例を図1〜4に示す。
図1では、アンテナ3が接合された金属製反射板2が、接着剤4を介してアンテナカバー1と接着されている。なお、前記金属製反射板は、本発明のアンテナカバーによって全体が保護されている。また、前記シートに金属箔を接着する場合、前記シートを成形したのち、金属箔を接着もよいし、前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形してもよい。
図2では、アンテナ3を囲む3辺をおよび上部をアンテナカバー1により保護している。他の1辺は、アンテナ3が接合された金属製反射板2である。アンテナカバー1と金属製反射板2とは、接着剤4により接着されている。
図3では、アンテナ3が接合された半球状の金属製反射板2と、円錐状のアンテナカバー1とが、接着剤4により接着されている。
図4では、アンテナ3およびアンテナに接合された半球状の金属製反射板2が、アンテナカバー1によりコーティングされている。
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
なお、本発明の実施例で測定した各物性値はつぎの方法で測定したものである。
(標準比重)
ASTM D4895−89にしたがって作製されたサンプルを用い、水置換法によって測定する。
ρs:サンプルの密度(g/cm3)
ρw:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
(誘電率および誘電正接)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含む原料を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
また、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にする必要がある。
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
実施例1
標準比重が2.216、12GHzでの誘電率が2.12、条件(1)で測定したtanδが1.10×10−4のPTFEファインパウダー(TFE/HFP=99.9970/0.0030(モル比)、連鎖移動剤:エタン)を圧縮成形機により円柱状に圧縮成形し、熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷した。その後、常温にまで放冷した前記円柱から、2mm厚のシートを切り出し、アンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.1×10−4であり、比重は、2.24であった。
実施例2
実施例1同様のPTFEファインパウダーに、押出し助剤としてアイソパーG(エッソ化学株式会社製)を17重量%の割合で混合した。これを、押出し成形機により、外径φ120mm、内径φ116mmのパイプを成形した。前記パイプを、常温の平面プレスにて平面化し、100℃で10分間の乾燥した。ついで、乾燥機にて250℃で10分間加熱して、押出し助剤を除去し、厚さ1.7mmのフィルムを得た。得られたフィルムを360℃の熱板プレスで50kg/cm3の圧力にて、10分間加圧した。ついで、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷しアンテナカバー(厚さ1.7mm)を得た。tanδを測定したところ、0.5×10−5であり、比重は、2.26であった。
実施例3
標準比重が2.17であり、条件(1)で測定したtanδが1.9×10−4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、溶融粘度(380℃、7kg荷重、ノズル径10mmφ)が35万ポイズPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)とを、8:2の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ2mmのシート(フィルム)を切り出した。得られたフィルムから、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.4×10−4であり、比重は、2.22であった。
実施例4
標準比重が2.25であり、条件(1)で測定したtanδが1.4×10−4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)を電気炉内に入れ、200℃にてフッ素ラジカル源(フッ素ガス)に大気圧、5時間の条件下で接触させ、フッ素化PTFEファインパウダーを得た。標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、前記フッ素化PTFEファインパウダーとを、9:1の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ1.5mmのシート(フィルム)を切り出し、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.3×10−4であり、比重は、2.25であった。
実施例5
標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)を使用したこと以外は実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.6×10−4であり、比重は、2.19であった。
実施例6
水性ディスパージョン(ダイキン工業株式会社製、商品名:D−2、固形分標準比重:2.22)を80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にし、条件(1)でtanδを測定したところ1.7×10−4であった。この水性ディスパージョンを、アンテナ反射板にスプレーコートし、30分間乾燥した後、380℃30分間焼成を行なって、1℃/分の冷却速度で270℃まで徐冷、常温にまで放冷し、アンテナカバー(厚さ20μm)が形成されているアンテナ反射板を得た。シートのtanδを測定したところ、1.0×10−4であり、比重は、2.26であった。
ただし、このアンテナカバーは、剥離することが困難であるため、前記パウダーを用いて、下記方法により作製したシートのtanδで代用した。
前記水分を蒸発させたパウダーを円柱状に圧縮成形して、厚さ0.5mmのシートを切り出したのち、380℃5分間焼成を行なって、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷し、シートを作製した。
産業上の利用可能性
本発明によれば、特定の条件で測定した12GHzにおけるtanδが2.0×10−4以下であるPTFE系樹脂を使用することにより、優れた低誘電損失のアンテナカバーを得ることができる。また、水分をはじくため、安定したアンテナ受発信性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はA−A線による断面図である。
図2は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はB−B線による断面図である。
図3は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はC−C線による断面図である。
図4は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。アンテナ素子部分、反射板に直接コーティングした例である。
本発明は、アンテナカバーに関する。詳細には、携帯電話基地局などに使用されるアンテナのアンテナカバーに関する。
背景技術
携帯電話基地局アンテナは、都市部ではマンションなど高層建築物の屋上に設置されており、低誘電損失樹脂基板の両面に銅箔を貼り付けてエッチングされたアンテナ素子部により形成されている。
現在、この携帯電話は第2世代から第3世代へと移行中である。第2世代携帯電話では1〜2GHz、第3世代では2〜4GHz、さらに第4世代では5〜8GHzの周波数領域が使用されており、高周波ほど絶縁体の誘電正接(以下、tanδと称す)による誘電損失(電力ロス)が大きくなる。さらに、アンテナ素子の樹脂基板には数百ワットの電力がかかるため、tanδがおおむね1.5×10−4以下のレベルの低誘電損失材料を使用する必要がある。そして、この誘電損失を低下させるためにインピーダンスを入出力にあわせる必要があり、低誘電率であることも求められる。
前記樹脂基板材料として、従来、成形性、接着性および価格の点でシアネート樹脂が使用されている。この電気特性は、tanδが約10−3であり、耐用年数は15年であるといわれている。
また、シアネート樹脂基板の両面に銅箔を接着する場合、基板を表面処理する、非フッ素樹脂接着剤を使用する、あるいは、これらを併用する方法があげられる。しかし、これらの方法には、工程が複雑で生産効率が悪い、初期接着強度は得られるが、温度変化や高温下での接着強度低下が大きく、最高80℃から最低零下数℃までと温度変化の大きい屋外でのアンテナ素子に用いられた場合には剥離が生じる、非フッ素樹脂接着剤を用いた場合、風雨、直射日光にさらされるため剥離が生じたり、誘電損失が発生するなどの問題がある。
ところで、前記アンテナは、屋外に設置されているために、雨、雪、塵などにさらされる。とくに水分が、アンテナに付着すると、水による透過損失が発生し、また電磁波伝搬に拡散が生じるという問題がある。
そこで、屋外で使用されるアンテナは、アンテナカバーにより保護されている。そして、同様に前記アンテナカバーにも、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性が求められる。
本発明は、前記課題を解決するものであり、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性をもつアンテナカバーを提供することを目的とする。
発明の開示
すなわち本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は下記条件(1)によって算出される誘電正接が2.0×10−4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるアンテナカバーに関する。
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
(誘電正接測定方法)
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により前記サンプルシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおける誘電正接を次式にしたがって算出する。
式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
前記誘電正接は、1.50×10−4以下であることが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。
前記シートの比重は、2.192以上であることが好ましい。
前記シートは、未焼成または結晶転化率が90%以下であることが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
前記シートに金属箔は熱融着により接着されてなることが好ましい。
前記シートを表面処理したのち、熱融着することが好ましい。
前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記シートと金属箔とが、シートを表面処理したのち、樹脂接着剤を介して接着されることが好ましい。
前記表面処理は、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
また、本発明は、(A)前記条件(1)で測定した12GHzにおける誘電正接が1.5×10−4以下であり、標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属箔を接着されてなるアンテナカバーに関する。
前記組成物はシアネート樹脂を含むことが好ましい。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
前記金属箔はステンレス箔またはアルミニウム箔であることが好ましい。
前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記シートを成形したのち、金属箔を接着して得られることが好ましい。
前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形して得られることが好ましい。
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いたシートからなるアンテナカバーに関する。
発明を実施するための最良の形態
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン系樹脂(以下、PTFE系樹脂と称す)は、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはテトラフルオロエチレン99.9〜99.9999モル%と、式(I):
CX2=CY(CF2)nZ (I)
(式中、X、YおよびZは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、nは1〜5の整数)で示されるフルオロオレフィンおよび式(II):
CF2=CF−ORf 1 (II)
(式中、Rf 1は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマー0.0001〜0.1モル%との共重合体である変性量0.1重量%以下の変性ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
前記式(I)で示されるフルオロオレフィンとしては、たとえばヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと略す)などのパーフルオロオレフィン;パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロオレフィンなどがあげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、HFPが好ましい。
また、前記式(II)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEと略す)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、PEVEと略す)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEと略す)があげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、PMVEが好ましい。
本発明で使用するPTFE系樹脂の形状としては、モールディングパウダー、ファインパウダー、水性ディスパージョンなどがあげられる。
前記ファインパウダーは、乳化剤、特に含フッ素系の乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて乳化分散重合することにより得られる。乳化重合において、得られる重合体の分子量を低分子量化するには、重合開始剤の量を増やす、連鎖移動剤を添加する、変性モノマーの添加などの方法が採用される。
重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム(APS)、ジコハク酸パーオキサイド(DSP)などが、連鎖移動剤としてはたとえば水素、メタン、エタンなどの炭化水素などがあげられる。
乳化重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
さらに乳化重合法で得られるコロイド一次粒子を芯−殻構造とすることにより、成形性、とりわけペースト押出成形性を向上させることもできる。芯−殻構造としては、たとえば芯をTFEの単独重合体で構成し、殻を変性PTFEで構成したものが、ペースト押出成形性が良好な点から好ましい。
前記モールディングパウダーは、分散剤の存在下に重合開始剤を用いて懸濁重合して得られる。
重合開始剤としては、過硫酸塩、亜硫酸塩などをあげることができ、例えば、過硫酸アンモニウムなどをあげることができる。
懸濁重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
前記水性ディスパージョンとしては、前記乳化重合にて得られた水性分散液をそのまま使用できるが、含フッ素重合体の濃度を高め、かつ安定性を向上させるために、界面活性剤を添加して安定化させたのち、層分離濃縮法や膜分離濃縮法などにより重合体固形分濃度を40〜70重量%にまで濃縮し、ついで純水、アンモニア水とポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を加えて、30〜65重量%に希釈することが好ましい。
使用する界面活性剤としては、式:
R−O−A−H
(式中、Rは直線状または分岐鎖状の炭素数5〜18、好ましくは10〜16のアルキル基、Aはオキシエチレン基を5〜20個およびオキシプロピレン基を0〜6個有するポリオキシアルキレン鎖である)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。アルキル基Rとしては、デシル、ラウリル、トリデシル、セチル、ステアリルなどが例示でき、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。特に、界面活性能が優れている点、水溶性である点、入手が容易である点から、Rが炭素数10〜16のアルキル基で、ポリオキシアルキレン鎖が7〜15個のオキシエチレン基と0〜3個のオキシプロピレン基とからなるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。この界面活性剤の製造原料は、天然または合成した高級アルコールを使用してもよいが、アルキルフェノール類を全く含まないことが好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の添加量は、PTFE系樹脂100重量部(以下、「部」という)あたり3〜20部であることが好ましい。
なお、希釈のために、純水や水溶性溶剤、アルキルフェノールを含まない炭化水素系の各種界面活性剤などを適宜添加してもよいし、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤を加えたり、増粘剤、レオロジーコントロール剤、各種水溶性電解質を含む塩類などで粘度調整してもよい。
PTFE系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。標準比重が2.300のPTFE系樹脂は、完全に結晶化されており、現実には存在しない。すなわち本発明で用いるPTFE系樹脂は、高結晶化度のものであることが好ましい。標準比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、シートのtanδが高くなったり、成形加工性に劣る傾向にある。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。なお、前記標準比重は、温度25℃の条件下、空気中のサンプル重量(W1)と水中でのサンプル重量(W2)の差から、サンプルの密度(ρs)を求める方法で、下記の式で表される。
ρs:サンプルの密度(g/cm3)
ρw:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
前記標準比重を満たすPTFE系樹脂の分子量は、500万以下であると考えられ、本発明では、このような低分子量のPTFE系樹脂が好ましく使用される。
また、前記PTFE系樹脂をフッ素ラジカル源と接触させることによりフッ素化処理して、末端不安定基を安定化することが好ましい。前記末端不安定基をフッ素化すると、熱安定性だけでなく、加工特性、tanδなどの高周波特性も改善される。さらに、それから得られるアンテナカバーの高周波特性および機械的特性も改善される。
フッ素化処理の反応温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、110〜200℃である。反応温度が100℃より低いと、反応速度が遅くなる傾向にある。反応温度が250℃をこえると、PTFE系樹脂同士が融着したり分解揮散する傾向にある。
フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスのほか、ClF、ClF3、BrF3、IF3などのハロゲン化フッ化物;XeF2、XeF4、KrF2などの希ガスのフッ化物;NF3、NF2などの含窒素フッ素化合物など前記反応温度でガス状の化合物があげられる。なかでも、取扱い性、価格の点からフッ素ガスが最も好ましい。フッ素ガスを用いてフッ素化処理をする場合、PTFE系樹脂を110〜250℃にて、フッ素ガスと1〜10時間接触させる。好ましくは、反応温度180〜230℃である。また反応時間は、2〜5時間であることが好ましい。反応圧力は0.1〜1MPa程度でよく、好ましくは大気圧である。フッ素ガスは純粋なフッ素ガスでもよく、また窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで5〜25容量%、好ましくは7〜20容量%に希釈して使用してもよい。
フッ素ラジカル源の添加量は、反応温度や反応時間、フッ素ラジカル源の種類などによって異なるが、フッ素原子に換算して、PTFE系樹脂100部に対し、0.01〜1部が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5部である。フッ素ラジカル源の添加量が0.01部より少ないと、原料PTFEのフッ素化が不充分となる傾向にある。またフッ素ラジカル源の添加量が1部をこえても、フッ素化の効果は向上せず、不経済となる傾向にある。
フッ素化処理に使用する反応装置としては、固−気接触を充分に行なうことができる装置であれば問題なく使用できる。具体的には流動床型、棚段型の固−気接触反応装置があげられる。
本発明で使用されるPTFE系樹脂は、12GHzでのtanδが2.0×10−4以下を示し、1.5×10−4以下であることが好ましい。tanδが2.0×10−4をこえると、アンテナカバーの誘電損失(電力ロス)が大きくなる。
また、本発明におけるtanδ測定方法は、以下の条件(1)でサンプルを作製し、測定する。
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンを円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
ただし、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にしてからシート成形する。
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたフィルムの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。次式は、埼玉大学工学部の小林禧夫氏および佐藤純也氏が開発された計算式(小林禧夫、佐藤純也「誘電体平板材料のマイクロ波複素誘電率測定」信学技報、MW87−7、1987年5月号)にしたがっている。ただし、12GHzの空洞共振器にサンプルを挿入すると、サンプルにより共振周波数が変化し、12GHzよりも低くなる。その共振周波数の値は、PTFE500μm厚のサンプルでおよそ11.74GHzである。この場合、無サンプル状態での共振周波数をもってtanδを表記する。
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
本発明のアンテナカバーに使用されるPTFE系樹脂からなるシートとしては、厚さ200μm以上のシート状のものだけでなく、200μm未満のフィルム状のものも含む。
本発明のアンテナカバーとしては、PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーや、PTFE系樹脂からなるシートをアンテナ素子および反射板に直接コーティングしているアンテナカバーをさすものである。
PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーである場合、その立体形状は、円筒形、多角形、円錐形など、とくに限定されない。
前記アンテナカバーの厚さは、特に限定されないが、1〜6mmであることが好ましい。1mmより小さいと、機械的な強度不足となる傾向にある。
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合には、そのアンテナカバーの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。膜厚が、5μm未満であると、撥水性が低下する傾向にあり、50μmをこえるとクラックが発生して水がしみ込み、撥水性が低下する傾向にある。
本発明のアンテナカバーは、前記PTFE系樹脂のシートからなり、比重が2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、tanδが高くなったり、成形加工性に劣る。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。
比重が2.192以上のシートを得るには、標準比重が2.192以上である前記PTFE系樹脂を20重量%以上、さらには70重量%以上含んでいることが好ましい。
また、本発明は、(A)前記条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10−4以下であり、標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属箔が接着されているアンテナカバーに関する。
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)は、条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10−4以下であり、好ましくは、1.0×10−4以下である。この範囲をはずれると、誘電損失が大きくなる傾向にある。
また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であり、105ポイズ以下であることが好ましい。溶融粘度が106ポイズをこえると、徐冷条件での作製時に誘電損失が大きくなる傾向にある。
ここで、徐冷条件は、例えば、焼成後の冷却速度が、60℃/時間より小さくすることができる。
また、前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)および/またはポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、シートの10重量%以上含み、30重量%以上含むことが好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末が10重量%より少ないと、誘電損失が小さくなる効果が得られにくい傾向にある。
前記組成物は、徐冷成形時の誘電正接の低さの点から、溶融粘度が106ポイズ以下のPTFE系樹脂を含むことが好ましく、さらに低損失の点から、末端基がフッ素化されているポリテトラフルオロエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
また、本発明は、PTFE系樹脂からなるシートを用いたアンテナカバーに関する。
本発明で使用されるPTFE系樹脂は溶融加工できないため、プレス成形法、シートまたはチューブ(パイプ)押出などの押出成形法、圧縮成形法などの成形法によって成形加工する。
得られた成形物は、通常、続いて焼成される。焼成温度は360〜400℃が適当である。
また、前記焼成を行わなくてもよく、また結晶転化率90%以下に半焼成化してもよい。未焼成および結晶転化率90%以下の半焼成化することで、誘電損失が下がる傾向にある。
その後、プレス処理、ペースト押出し、あるいはスカイブなどにより、PTFE系樹脂からなるシート状の成形体が得られる。そして、得られた平面成形体を熱プレスまたはチューブ押出しなどにより、立体形状として、本発明のアンテナカバーを得ることができる。
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合、アンテナ素子およびアンテナ反射板に水溶性ディスパージョンをスプレーコートし、3〜20分間乾燥したのち、焼成をおこなうことが好ましい。焼成温度は360〜400℃が適当である。
かくして得られる本発明で使用されるアンテナカバーは、マイクロ波領域(3〜30GHz)、特に高周波領域における電気特性に優れたものであり、tanδは12GHzで2.0×10−4以下、好ましくは1.50×10−4以下である。tanδが、2.0×10−4をこえると、誘電損失が増加する傾向にある。
アンテナカバーおよびその周辺機器には、伝送損失を小さく抑えることが求められている。そして、その伝送損失は、以下の式により求められる。
伝送損失=導体損+誘電体損(αd)
ここで誘電体損(αd)は、
誘電体損(αd)=
27.3×(周波数)/(光速)×√(誘電率)×tanδ
で表される。誘電体損はtanδに比例しており、アンテナの伝送損失低減のためには、tanδの低減による効果が大きいことがわかる。
したがって、本発明のアンテナカバーのtanδが1.50×10−4以下に低減されているので、伝送損失を大きく低減することができる。
また、本発明のアンテナカバーは、フッ素系樹脂からなるため、雨や雪などの水分をはじく。そのため、水分によるアンテナの受発信中心周波数のずれが生じにくくなり、安定した受発信性能が得られる。
本発明のアンテナカバーは、固定の点から、前記シートの少なくとも片面に金属箔が接着されていることが好ましい。
前記金属箔としては、腐食防止の点から、ステンレス箔、アルミニウム箔などが好ましい。金属箔の厚さは、特に限定されないが、0.05〜1.0mmであることが好ましい。
前記金属箔は、接着強度の点から、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面に熱融着により接着されてなることが好ましい。
また、接着強度の点から、前記金属箔は、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面にエポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる3種の接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種以上を用いて、2層以上の接着層としてもよい。例えば、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体層とエポキシ樹脂層からなる2層の接着層などをあげられる。
前記接着方法としては、樹脂接着剤の1層、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体の1層、または樹脂接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体からなる2層を介して接着されることをさす。
これらの中でも、容易に接着できる点、金属との接着強度について、初期接着力だけでなく、激しい温度変化や高温下においても接着強度が低下しないため、熱処理を伴う後加工が可能である点、フッ素樹脂が主鎖であるため耐候性に優れ、屋外での寿命が長い点、および誘電損失が発生しにくい点で、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体が好ましい。
前記官能基含有フッ素エチレン性重合体は、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と(b)該官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体のうちの少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。
前記(a)成分の含有率は、0.05〜30モル%が好ましく、接着される基材の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力、接着剤の形態と接着方法などの違いにより適宜選択されるが、より好ましくは0.05〜20モル%、とくに好ましくは0.1〜10モル%である。前記含有率が0.05モル%未満であると他の基材との接着性が充分得られにくく、薬品の浸透や温度変化などによる剥離などをおこしやすい。また、30モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出などを起こしやすい。
前記官能基含有含フッ素エチレン性重合体(a)としては、
CX2=CX1−Rf 2−Y (1)
(式中、XおよびX1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす)
で示される少なくとも1種の単量体があげられる。より具体的には、
CF2=CF−Rf 3−CH2OH (2)
[式中、Rf 3は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または−ORf 4(Rf 4は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす]、
CF2=CFCF2−ORf 5−CH2OH (3)
[式中、−Rf 5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CH2=CFCF2−Rf 6−CH2OH (4)
[式中、−Rf 6は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または−ORf 7(Rf 7は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価のアルキレン基)を表わす]、または
CH2=CH−Rf 8−CH2OH (5)
[式中、Rf 8は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CX2=CX1−Rf 9−COOY1 (6)
(X、X1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Y1は水素原子、NH4もしくはI、II、III、IVa、VIII類元素から選ばれる金属原子、Rf 9は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の単量体があげられる。前記−COOY1は、より具体的には、−COOH、−COONH4、−COONa、−COOK、−COOLi、−COOZn、−COOAl、−COOMg、−COOCaなどが好ましくあげられる。
前記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体(b)としては、テトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン85〜99.7モル%と
CF2=CF−Rf 10 (7)
(式中、Rf 10はCF3またはORf 11(Rf 11は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))
で示される単量体0.3〜15モル%との混合単量体などがあげられる。
また、エポキシ樹脂を使用する場合は、前記シートをナトリウムエッチング、プラズマ処理、エキシマレーザ処理、放電処理などの表面処理したのち、エポキ
シ樹脂を付与することが好ましい。
前記官能基を有する含フッ素エチレン性重合体、および接着剤の塗布量は特に限定されないが、0.004〜0.04g/cm2であることが好ましい。0.004g/cm2よりすくないと、接着強度不足となる傾向にある。0.04g/cm2をこえると、伝送損失が増える傾向にある。また、あらかじめフィルム状にした接着剤を前記シートに付与してもよい。このとき、前記フィルムの厚さは、0.02〜0.2mmであることが好ましい。0.02mmより小さいと、接着強度不足となる傾向にある。0.2mmをこえると、伝送損失が増える傾向にある。
また、接着剤の形態としては、フィルム状に限られるものではなく、粉体、分散液としても使用できる。
また、前記表面処理は、接着強度の点から、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
本発明のアンテナカバーは、前記接着剤によりアンテナや金属製の反射板などと接着することができる。
本発明のアンテナカバーの一例を図1〜4に示す。
図1では、アンテナ3が接合された金属製反射板2が、接着剤4を介してアンテナカバー1と接着されている。なお、前記金属製反射板は、本発明のアンテナカバーによって全体が保護されている。また、前記シートに金属箔を接着する場合、前記シートを成形したのち、金属箔を接着もよいし、前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形してもよい。
図2では、アンテナ3を囲む3辺をおよび上部をアンテナカバー1により保護している。他の1辺は、アンテナ3が接合された金属製反射板2である。アンテナカバー1と金属製反射板2とは、接着剤4により接着されている。
図3では、アンテナ3が接合された半球状の金属製反射板2と、円錐状のアンテナカバー1とが、接着剤4により接着されている。
図4では、アンテナ3およびアンテナに接合された半球状の金属製反射板2が、アンテナカバー1によりコーティングされている。
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
なお、本発明の実施例で測定した各物性値はつぎの方法で測定したものである。
(標準比重)
ASTM D4895−89にしたがって作製されたサンプルを用い、水置換法によって測定する。
ρs:サンプルの密度(g/cm3)
ρw:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
(誘電率および誘電正接)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含む原料を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
また、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にする必要がある。
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
実施例1
標準比重が2.216、12GHzでの誘電率が2.12、条件(1)で測定したtanδが1.10×10−4のPTFEファインパウダー(TFE/HFP=99.9970/0.0030(モル比)、連鎖移動剤:エタン)を圧縮成形機により円柱状に圧縮成形し、熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷した。その後、常温にまで放冷した前記円柱から、2mm厚のシートを切り出し、アンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.1×10−4であり、比重は、2.24であった。
実施例2
実施例1同様のPTFEファインパウダーに、押出し助剤としてアイソパーG(エッソ化学株式会社製)を17重量%の割合で混合した。これを、押出し成形機により、外径φ120mm、内径φ116mmのパイプを成形した。前記パイプを、常温の平面プレスにて平面化し、100℃で10分間の乾燥した。ついで、乾燥機にて250℃で10分間加熱して、押出し助剤を除去し、厚さ1.7mmのフィルムを得た。得られたフィルムを360℃の熱板プレスで50kg/cm3の圧力にて、10分間加圧した。ついで、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷しアンテナカバー(厚さ1.7mm)を得た。tanδを測定したところ、0.5×10−5であり、比重は、2.26であった。
実施例3
標準比重が2.17であり、条件(1)で測定したtanδが1.9×10−4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、溶融粘度(380℃、7kg荷重、ノズル径10mmφ)が35万ポイズPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)とを、8:2の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ2mmのシート(フィルム)を切り出した。得られたフィルムから、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.4×10−4であり、比重は、2.22であった。
実施例4
標準比重が2.25であり、条件(1)で測定したtanδが1.4×10−4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)を電気炉内に入れ、200℃にてフッ素ラジカル源(フッ素ガス)に大気圧、5時間の条件下で接触させ、フッ素化PTFEファインパウダーを得た。標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、前記フッ素化PTFEファインパウダーとを、9:1の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ1.5mmのシート(フィルム)を切り出し、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.3×10−4であり、比重は、2.25であった。
実施例5
標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)を使用したこと以外は実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.6×10−4であり、比重は、2.19であった。
実施例6
水性ディスパージョン(ダイキン工業株式会社製、商品名:D−2、固形分標準比重:2.22)を80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にし、条件(1)でtanδを測定したところ1.7×10−4であった。この水性ディスパージョンを、アンテナ反射板にスプレーコートし、30分間乾燥した後、380℃30分間焼成を行なって、1℃/分の冷却速度で270℃まで徐冷、常温にまで放冷し、アンテナカバー(厚さ20μm)が形成されているアンテナ反射板を得た。シートのtanδを測定したところ、1.0×10−4であり、比重は、2.26であった。
ただし、このアンテナカバーは、剥離することが困難であるため、前記パウダーを用いて、下記方法により作製したシートのtanδで代用した。
前記水分を蒸発させたパウダーを円柱状に圧縮成形して、厚さ0.5mmのシートを切り出したのち、380℃5分間焼成を行なって、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷し、シートを作製した。
産業上の利用可能性
本発明によれば、特定の条件で測定した12GHzにおけるtanδが2.0×10−4以下であるPTFE系樹脂を使用することにより、優れた低誘電損失のアンテナカバーを得ることができる。また、水分をはじくため、安定したアンテナ受発信性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はA−A線による断面図である。
図2は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はB−B線による断面図である。
図3は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はC−C線による断面図である。
図4は、本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。アンテナ素子部分、反射板に直接コーティングした例である。
【書類名】明細書
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナカバーに関する。詳細には、携帯電話基地局などに使用されるアンテナのアンテナカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話基地局アンテナは、都市部ではマンションなど高層建築物の屋上に設置されており、低誘電損失樹脂基板の両面に銅箔を貼り付けてエッチングされたアンテナ素子部により形成されている。
【0003】
現在、この携帯電話は第2世代から第3世代へと移行中である。第2世代携帯電話では1〜2GHz、第3世代では2〜4GHz、さらに第4世代では5〜8GHzの周波数領域が使用されており、高周波ほど絶縁体の誘電正接(以下、tanδと称す)による誘電損失(電力ロス)が大きくなる。さらに、アンテナ素子の樹脂基板には数百ワットの電力がかかるため、tanδがおおむね1.5×10-4以下のレベルの低誘電損失材料を使用する必要がある。そして、この誘電損失を低下させるためにインピーダンスを入出力にあわせる必要があり、低誘電率であることも求められる。
【0004】
前記樹脂基板材料として、従来、成形性、接着性および価格の点でシアネート樹脂が使用されている。この電気特性は、tanδが約10-3であり、耐用年数は15年であるといわれている。
【0005】
また、シアネート樹脂基板の両面に銅箔を接着する場合、基板を表面処理する、非フッ素樹脂接着剤を使用する、あるいは、これらを併用する方法があげられる。しかし、これらの方法には、工程が複雑で生産効率が悪い、初期接着強度は得られるが、温度変化や高温下での接着強度低下が大きく、最高80℃から最低零下数℃までと温度変化の大きい屋外でのアンテナ素子に用いられた場合には剥離が生じる、非フッ素樹脂接着剤を用いた場合、風雨、直射日光にさらされるため剥離が生じたり、誘電損失が発生するなどの問題がある。
【0006】
ところで、前記アンテナは、屋外に設置されているために、雨、雪、塵などにさらされる。とくに水分が、アンテナに付着すると、水による透過損失が発生し、また電磁波伝搬に拡散が生じるという問題がある。
【0007】
そこで、屋外で使用されるアンテナは、アンテナカバーにより保護されている。そして、同様に前記アンテナカバーにも、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するものであり、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性をもつアンテナカバーを提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は下記条件(1)によって算出される誘電正接が2.0×10-4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0010】
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0011】
(誘電正接測定方法)
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により前記サンプルシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおける誘電正接を次式にしたがって算出する。
【0012】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0013】
【数1】
【0014】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0015】
【数2】
【0016】
式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0017】
前記誘電正接は、1.50×10-4以下であることが好ましい。
【0018】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。
【0019】
前記シートの比重は、2.192以上であることが好ましい。
【0020】
前記シートは、未焼成または結晶転化率が90%以下であることが好ましい。
【0021】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
【0022】
前記シートに金属製反射板は熱融着により接着されてなることが好ましい。
【0023】
前記シートを表面処理したのち、熱融着することが好ましい。
【0024】
前記シートと金属製反射板とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0025】
前記シートと金属製反射板とが、シートを表面処理したのち、樹脂接着剤を介して接着されることが好ましい。
【0026】
前記表面処理は、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、(A)標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属製反射板を接着されてなり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0028】
前記組成物はシアネート樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
【0030】
前記金属製反射板はステンレス製またはアルミニウム製であることが好ましい。
【0031】
前記シートと金属製反射板とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0032】
前記シートを成形したのち、金属製反射板を接着して得られることが好ましい。
【0033】
前記シートと金属製反射板とを接着したのち、熱処理により成形して得られることが好ましい。
【0034】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いたシートからなるアンテナカバーに関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、特定の条件で測定した12GHzにおけるtanδが2.0×10-4以下であるPTFE系樹脂を使用することにより、優れた低誘電損失のアンテナカバーを得ることができる。また、水分をはじくため、安定したアンテナ受発信性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン系樹脂(以下、PTFE系樹脂と称す)は、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはテトラフルオロエチレン99.9〜99.9999モル%と、式(I):
CX2=CY(CF2)nZ (I)
(式中、X、YおよびZは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、nは1〜5の整数)で示されるフルオロオレフィンおよび式(II):
CF2=CF−ORf 1 (II)
(式中、Rf 1は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマー0.0001〜0.1モル%との共重合体である変性量0.1重量%以下の変性ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0037】
前記式(I)で示されるフルオロオレフィンとしては、たとえばヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと略す)などのパーフルオロオレフィン;パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロオレフィンなどがあげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、HFPが好ましい。
【0038】
また、前記式(II)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEと略す)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、PEVEと略す)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEと略す)があげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、PMVEが好ましい。
【0039】
本発明で使用するPTFE系樹脂の形状としては、モールディングパウダー、ファインパウダー、水性ディスパージョンなどがあげられる。
【0040】
前記ファインパウダーは、乳化剤、特に含フッ素系の乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて乳化分散重合することにより得られる。乳化重合において、得られる重合体の分子量を低分子量化するには、重合開始剤の量を増やす、連鎖移動剤を添加する、変性モノマーの添加などの方法が採用される。
【0041】
重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム(APS)、ジコハク酸パーオキサイド(DSP)などが、連鎖移動剤としてはたとえば水素、メタン、エタンなどの炭化水素などがあげられる。
【0042】
乳化重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
【0043】
さらに乳化重合法で得られるコロイド一次粒子を芯−殻構造とすることにより、成形性、とりわけペースト押出成形性を向上させることもできる。芯−殻構造としては、たとえば芯をTFEの単独重合体で構成し、殻を変性PTFEで構成したものが、ペースト押出成形性が良好な点から好ましい。
【0044】
前記モールディングパウダーは、分散剤の存在下に重合開始剤を用いて懸濁重合して得られる。
【0045】
重合開始剤としては、過硫酸塩、亜硫酸塩などをあげることができ、例えば、過硫酸アンモニウムなどをあげることができる。
【0046】
懸濁重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
【0047】
前記水性ディスパージョンとしては、前記乳化重合にて得られた水性分散液をそのまま使用できるが、含フッ素重合体の濃度を高め、かつ安定性を向上させるために、界面活性剤を添加して安定化させたのち、層分離濃縮法や膜分離濃縮法などにより重合体固形分濃度を40〜70重量%にまで濃縮し、ついで純水、アンモニア水とポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を加えて、30〜65重量%に希釈することが好ましい。
【0048】
使用する界面活性剤としては、式:
R−O−A−H
(式中、Rは直線状または分岐鎖状の炭素数5〜18、好ましくは10〜16のアルキル基、Aはオキシエチレン基を5〜20個およびオキシプロピレン基を0〜6個有するポリオキシアルキレン鎖である)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。アルキル基Rとしては、デシル、ラウリル、トリデシル、セチル、ステアリルなどが例示でき、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。特に、界面活性能が優れている点、水溶性である点、入手が容易である点から、Rが炭素数10〜16のアルキル基で、ポリオキシアルキレン鎖が7〜15個のオキシエチレン基と0〜3個のオキシプロピレン基とからなるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。この界面活性剤の製造原料は、天然または合成した高級アルコールを使用してもよいが、アルキルフェノール類を全く含まないことが好ましい。
【0049】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の添加量は、PTFE系樹脂100重量部(以下、「部」という)あたり3〜20部であることが好ましい。
【0050】
なお、希釈のために、純水や水溶性溶剤、アルキルフェノールを含まない炭化水素系の各種界面活性剤などを適宜添加してもよいし、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤を加えたり、増粘剤、レオロジーコントロール剤、各種水溶性電解質を含む塩類などで粘度調整してもよい。
【0051】
PTFE系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。標準比重が2.300のPTFE系樹脂は、完全に結晶化されており、現実には存在しない。すなわち本発明で用いるPTFE系樹脂は、高結晶化度のものであることが好ましい。標準比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、シートのtanδが高くなったり、成形加工性に劣る傾向にある。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。なお、前記標準比重は、温度25℃の条件下、空気中のサンプル重量(W1)と水中でのサンプル重量(W2)の差から、サンプルの密度(ρs)を求める方法で、下記の式で表される。
【0052】
【数3】
【0053】
ρS:サンプルの密度(g/cm3)
ρW:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
【0054】
前記標準比重を満たすPTFE系樹脂の分子量は、500万以下であると考えられ、本発明では、このような低分子量のPTFE系樹脂が好ましく使用される。
【0055】
また、前記PTFE系樹脂をフッ素ラジカル源と接触させることによりフッ素化処理して、末端不安定基を安定化することが好ましい。前記末端不安定基をフッ素化すると、熱安定性だけでなく、加工特性、tanδなどの高周波特性も改善される。さらに、それから得られるアンテナカバーの高周波特性および機械的特性も改善される。
【0056】
フッ素化処理の反応温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、110〜200℃である。反応温度が100℃より低いと、反応速度が遅くなる傾向にある。反応温度が250℃をこえると、PTFE系樹脂同士が融着したり分解揮散する傾向にある。
【0057】
フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスのほか、ClF、ClF3、BrF3、IF3などのハロゲン化フッ化物;XeF2、XeF4、KrF2などの希ガスのフッ化物;NF3、NF2などの含窒素フッ素化合物など前記反応温度でガス状の化合物があげられる。なかでも、取扱い性、価格の点からフッ素ガスが最も好ましい。フッ素ガスを用いてフッ素化処理をする場合、PTFE系樹脂を110〜250℃にて、フッ素ガスと1〜10時間接触させる。好ましくは、反応温度180〜230℃である。また反応時間は、2〜5時間であることが好ましい。反応圧力は0.1〜1MPa程度でよく、好ましくは大気圧である。フッ素ガスは純粋なフッ素ガスでもよく、また窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで5〜25容量%、好ましくは7〜20容量%に希釈して使用してもよい。
【0058】
フッ素ラジカル源の添加量は、反応温度や反応時間、フッ素ラジカル源の種類などによって異なるが、フッ素原子に換算して、PTFE系樹脂100部に対し、0.01〜1部が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5部である。フッ素ラジカル源の添加量が0.01部より少ないと、原料PTFEのフッ素化が不充分となる傾向にある。またフッ素ラジカル源の添加量が1部をこえても、フッ素化の効果は向上せず、不経済となる傾向にある。
【0059】
フッ素化処理に使用する反応装置としては、固−気接触を充分に行なうことができる装置であれば問題なく使用できる。具体的には流動床型、棚段型の固−気接触反応装置があげられる。
【0060】
本発明で使用されるPTFE系樹脂は、12GHzでのtanδが2.0×10-4以下を示し、1.5×10-4以下であることが好ましい。tanδが2.0×10-4をこえると、アンテナカバーの誘電損失(電力ロス)が大きくなる。
【0061】
また、本発明におけるtanδ測定方法は、以下の条件(1)でサンプルを作製し、測定する。
【0062】
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンを円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0063】
ただし、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にしてからシート成形する。
【0064】
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたフィルムの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。次式は、埼玉大学工学部の小林禧夫氏および佐藤純也氏が開発された計算式(小林禧夫、佐藤純也「誘電体平板材料のマイクロ波複素誘電率測定」信学技報、MW87−7、1987年5月号)にしたがっている。ただし、12GHzの空洞共振器にサンプルを挿入すると、サンプルにより共振周波数が変化し、12GHzよりも低くなる。その共振周波数の値は、PTFE500μm厚のサンプルでおよそ11.74GHzである。この場合、無サンプル状態での共振周波数をもってtanδを表記する。
【0065】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0066】
【数4】
【0067】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0068】
【数5】
【0069】
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0070】
本発明のアンテナカバーに使用されるPTFE系樹脂からなるシートとしては、厚さ200μm以上のシート状のものだけでなく、200μm未満のフィルム状のものも含む。
【0071】
本発明のアンテナカバーとしては、PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーや、PTFE系樹脂からなるシートをアンテナ素子および反射板に直接コーティングしているアンテナカバーをさすものである。
【0072】
PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーである場合、その立体形状は、円筒形、多角形、円錐形など、とくに限定されない。
【0073】
前記アンテナカバーの厚さは、特に限定されないが、1〜6mmであることが好ましい。1mmより小さいと、機械的な強度不足となる傾向にある。
【0074】
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合には、そのアンテナカバーの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。膜厚が、5μm未満であると、撥水性が低下する傾向にあり、50μmをこえるとクラックが発生して水がしみ込み、撥水性が低下する傾向にある。
【0075】
本発明のアンテナカバーは、前記PTFE系樹脂のシートからなり、比重が2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、tanδが高くなったり、成形加工性に劣る。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。
【0076】
比重が2.192以上のシートを得るには、標準比重が2.192以上である前記PTFE系樹脂を20重量%以上、さらには70重量%以上含んでいることが好ましい。
【0077】
また、本発明は、(A)標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属製反射板が接着されてなり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0078】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)は、条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10-4以下であり、好ましくは、1.0×10-4以下である。この範囲をはずれると、誘電損失が大きくなる傾向にある。
【0079】
また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であり、105ポイズ以下であることが好ましい。溶融粘度が106ポイズをこえると、徐冷条件での作製時に誘電損失が大きくなる傾向にある。
【0080】
ここで、徐冷条件は、例えば、焼成後の冷却速度が、60℃/時間より小さくすることができる。
【0081】
また、前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)および/またはポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、シートの10重量%以上含み、30重量%以上含むことが好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末が10重量%より少ないと、誘電損失が小さくなる効果が得られにくい傾向にある。
【0082】
前記組成物は、徐冷成形時の誘電正接の低さの点から、溶融粘度が106ポイズ以下のPTFE系樹脂を含むことが好ましく、さらに低損失の点から、末端基がフッ素化されているポリテトラフルオロエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0083】
また、本発明は、PTFE系樹脂からなるシートを用いたアンテナカバーに関する。
【0084】
本発明で使用されるPTFE系樹脂は溶融加工できないため、プレス成形法、シートまたはチューブ(パイプ)押出などの押出成形法、圧縮成形法などの成形法によって成形加工する。
【0085】
得られた成形物は、通常、続いて焼成される。焼成温度は360〜400℃が適当である。
【0086】
また、前記焼成を行わなくてもよく、また結晶転化率90%以下に半焼成化してもよい。未焼成および結晶転化率90%以下の半焼成化することで、誘電損失が下がる傾向にある。
【0087】
その後、プレス処理、ペースト押出し、あるいはスカイブなどにより、PTFE系樹脂からなるシート状の成形体が得られる。そして、得られた平面成形体を熱プレスまたはチューブ押出しなどにより、立体形状として、本発明のアンテナカバーを得ることができる。
【0088】
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合、アンテナ素子およびアンテナ反射板に水溶性ディスパージョンをスプレーコートし、3〜20分間乾燥したのち、焼成をおこなうことが好ましい。焼成温度は360〜400℃が適当である。
【0089】
かくして得られる本発明で使用されるアンテナカバーは、マイクロ波領域(3〜30GHz)、特に高周波領域における電気特性に優れたものであり、tanδは12GHzで2.0×10-4以下、好ましくは1.50×10-4以下である。tanδが、2.0×10-4をこえると、誘電損失が増加する傾向にある。
【0090】
アンテナカバーおよびその周辺機器には、伝送損失を小さく抑えることが求められている。そして、その伝送損失は、以下の式により求められる。
【0091】
伝送損失=導体損+誘電体損(αd)
ここで誘電体損(αd)は、
誘電体損(αd)=
27.3×(周波数)/(光速)×√(誘電率)×tanδ
で表される。誘電体損はtanδに比例しており、アンテナの伝送損失低減のためには、tanδの低減による効果が大きいことがわかる。
【0092】
したがって、本発明のアンテナカバーのtanδが1.50×10-4以下に低減されているので、伝送損失を大きく低減することができる。
【0093】
また、本発明のアンテナカバーは、フッ素系樹脂からなるため、雨や雪などの水分をはじく。そのため、水分によるアンテナの受発信中心周波数のずれが生じにくくなり、安定した受発信性能が得られる。
【0094】
本発明のアンテナカバーは、固定の点から、前記シートの少なくとも片面に金属製反射板が接着されていることが好ましい。
【0095】
前記金属製反射板としては、腐食防止の点から、ステンレス製、アルミニウム製などが好ましい。金属製反射板の厚さは、特に限定されないが、0.05〜1.0mmであることが好ましい。
【0096】
前記金属製反射板は、接着強度の点から、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面に熱融着により接着されてなることが好ましい。
【0097】
また、接着強度の点から、前記金属製反射板は、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面にエポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0098】
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる3種の接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種以上を用いて、2層以上の接着層としてもよい。例えば、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体層とエポキシ樹脂層からなる2層の接着層などをあげられる。
【0099】
前記接着方法としては、樹脂接着剤の1層、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体の1層、または樹脂接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体からなる2層を介して接着されることをさす。
【0100】
これらの中でも、容易に接着できる点、金属との接着強度について、初期接着力だけでなく、激しい温度変化や高温下においても接着強度が低下しないため、熱処理を伴う後加工が可能である点、フッ素樹脂が主鎖であるため耐候性に優れ、屋外での寿命が長い点、および誘電損失が発生しにくい点で、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体が好ましい。
【0101】
前記官能基含有フッ素エチレン性重合体は、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と(b)該官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体のうちの少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。
【0102】
前記(a)成分の含有率は、0.05〜30モル%が好ましく、接着される基材の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力、接着剤の形態と接着方法などの違いにより適宜選択されるが、より好ましくは0.05〜20モル%、とくに好ましくは0.1〜10モル%である。前記含有率が0.05モル%未満であると他の基材との接着性が充分得られにくく、薬品の浸透や温度変化などによる剥離などをおこしやすい。また、30モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出などを起こしやすい。
【0103】
前記官能基含有含フッ素エチレン性重合体(a)としては、
CX2=CX1−Rf 2−Y (1)
(式中、XおよびX1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす)
で示される少なくとも1種の単量体があげられる。より具体的には、
CF2=CF−Rf 3−CH2OH (2)
[式中、Rf 3は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または−ORf 4(Rf 4は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす]、
CF2=CFCF2−ORf 5−CH2OH (3)
[式中、−Rf 5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CH2=CFCF2−Rf 6−CH2OH (4)
[式中、−Rf 6は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または−ORf 7(Rf 7は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価のアルキレン基)を表わす]、または
CH2=CH−Rf 8−CH2OH (5)
[式中、Rf 8は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CX2=CX1−Rf 9−COOY1 (6)
(X、X1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Y1は水素原子、NH4もしくはI、II、III、IVa、VIII類元素から選ばれる金属原子、Rf 9は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の単量体があげられる。前記−COOY1は、より具体的には、−COOH、−COONH4、−COONa、−COOK、−COOLi、−COOZn、−COOAl、−COOMg、−COOCaなどが好ましくあげられる。
【0104】
前記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体(b)としては、テトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン85〜99.7モル%と
CF2=CF−Rf 10 (7)
(式中、Rf 10はCF3またはORf 11(Rf 11は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))
で示される単量体0.3〜15モル%との混合単量体などがあげられる。
【0105】
また、エポキシ樹脂を使用する場合は、前記シートをナトリウムエッチング、プラズマ処理、エキシマレーザ処理、放電処理などの表面処理したのち、エポキシ樹脂を付与することが好ましい。
【0106】
前記官能基を有する含フッ素エチレン性重合体、および接着剤の塗布量は特に限定されないが、0.004〜0.04g/cm2であることが好ましい。0.004g/cm2よりすくないと、接着強度不足となる傾向にある。0.04g/cm2をこえると、伝送損失が増える傾向にある。また、あらかじめフィルム状にした接着剤を前記シートに付与してもよい。このとき、前記フィルムの厚さは、0.02〜0.2mmであることが好ましい。0.02mmより小さいと、接着強度不足となる傾向にある。0.2mmをこえると、伝送損失が増える傾向にある。
【0107】
また、接着剤の形態としては、フィルム状に限られるものではなく、粉体、分散液としても使用できる。
【0108】
また、前記表面処理は、接着強度の点から、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
【0109】
本発明のアンテナカバーは、前記接着剤によりアンテナや金属製の反射板などと接着することができる。
【0110】
本発明のアンテナカバーの一例を図1〜4に示す。
【0111】
図1では、アンテナ3が接合された金属製反射板2が、接着剤4を介してアンテナカバー1と接着されている。なお、前記金属製反射板は、本発明のアンテナカバーによって全体が保護されている。また、前記シートに金属製反射板を接着する場合、前記シートを成形したのち、金属製反射板を接着もよいし、前記シートと金属製反射板とを接着したのち、熱処理により成形してもよい。
【0112】
図2では、アンテナ3を囲む3辺をおよび上部をアンテナカバー1により保護している。他の1辺は、アンテナ3が接合された金属製反射板2である。アンテナカバー1と金属製反射板2とは、接着剤4により接着されている。
【0113】
図3では、アンテナ3が接合された半球状の金属製反射板2と、円錐状のアンテナカバー1とが、接着剤4により接着されている。
【0114】
図4では、アンテナ3およびアンテナに接合された半球状の金属製反射板2が、アンテナカバー1によりコーティングされている。
【実施例】
【0115】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0116】
なお、本発明の実施例で測定した各物性値はつぎの方法で測定したものである。
【0117】
(標準比重)
ASTM D4895−89にしたがって作製されたサンプルを用い、水置換法によって測定する。
【0118】
【数6】
【0119】
ρS:サンプルの密度(g/cm3)
ρW:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
【0120】
(誘電率および誘電正接)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含む原料を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0121】
また、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にする必要がある。
【0122】
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。
【0123】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0124】
【数7】
【0125】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0126】
【数8】
【0127】
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0128】
実施例1
標準比重が2.216、12GHzでの誘電率が2.12、条件(1)で測定したtanδが1.10×10-4のPTFEファインパウダー(TFE/HFP=99.9970/0.0030(モル比)、連鎖移動剤:エタン)を圧縮成形機により円柱状に圧縮成形し、熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷した。その後、常温にまで放冷した前記円柱から、2mm厚のシートを切り出し、アンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.1×10-4であり、比重は、2.24であった。
【0129】
実施例2
実施例1同様のPTFEファインパウダーに、押出し助剤としてアイソパーG(エッソ化学株式会社製)を17重量%の割合で混合した。これを、押出し成形機により、外径φ120mm、内径φ116mmのパイプを成形した。前記パイプを、常温の平面プレスにて平面化し、100℃で10分間の乾燥した。ついで、乾燥機にて250℃で10分間加熱して、押出し助剤を除去し、厚さ1.7mmのフィルムを得た。得られたフィルムを360℃の熱板プレスで50kg/cm3の圧力にて、10分間加圧した。ついで、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷しアンテナカバー(厚さ1.7mm)を得た。tanδを測定したところ、0.5×10-5であり、比重は、2.26であった。
【0130】
実施例3
標準比重が2.17であり、条件(1)で測定したtanδが1.9×10-4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、溶融粘度(380℃、7kg荷重、ノズル径10mmφ)が35万ポイズPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)とを、8:2の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ2mmのシート(フィルム)を切り出した。得られたフィルムから、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.4×10-4であり、比重は、2.22であった。
【0131】
実施例4
標準比重が2.25であり、条件(1)で測定したtanδが1.4×10-4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)を電気炉内に入れ、200℃にてフッ素ラジカル源(フッ素ガス)に大気圧、5時間の条件下で接触させ、フッ素化PTFEファインパウダーを得た。標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、前記フッ素化PTFEファインパウダーとを、9:1の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ1.5mmのシート(フィルム)を切り出し、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.3×10-4であり、比重は、2.25であった。
【0132】
実施例5
標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)を使用したこと以外は実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.6×10-4であり、比重は、2.19であった。
【0133】
実施例6
水性ディスパージョン(ダイキン工業株式会社製、商品名:D−2、固形分標準比重:2.22)を80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にし、条件(1)でtanδを測定したところ1.7×10-4であった。この水性ディスパージョンを、アンテナ反射板にスプレーコートし、30分間乾燥した後、380℃30分間焼成を行なって、1℃/分の冷却速度で270℃まで徐冷、常温にまで放冷し、アンテナカバー(厚さ20μm)が形成されているアンテナ反射板を得た。シートのtanδを測定したところ、1.0×10-4であり、比重は、2.26であった。
【0134】
ただし、このアンテナカバーは、剥離することが困難であるため、前記パウダーを用いて、下記方法により作製したシートのtanδで代用した。
【0135】
前記水分を蒸発させたパウダーを円柱状に圧縮成形して、厚さ0.5mmのシートを切り出したのち、380℃5分間焼成を行なって、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷し、シートを作製した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はA−A線による断面図である。
【図2】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はB−B線による断面図である。
【図3】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はC−C線による断面図である。
【図4】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。アンテナ素子部分、反射板に直接コーティングした例である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナカバーに関する。詳細には、携帯電話基地局などに使用されるアンテナのアンテナカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話基地局アンテナは、都市部ではマンションなど高層建築物の屋上に設置されており、低誘電損失樹脂基板の両面に銅箔を貼り付けてエッチングされたアンテナ素子部により形成されている。
【0003】
現在、この携帯電話は第2世代から第3世代へと移行中である。第2世代携帯電話では1〜2GHz、第3世代では2〜4GHz、さらに第4世代では5〜8GHzの周波数領域が使用されており、高周波ほど絶縁体の誘電正接(以下、tanδと称す)による誘電損失(電力ロス)が大きくなる。さらに、アンテナ素子の樹脂基板には数百ワットの電力がかかるため、tanδがおおむね1.5×10-4以下のレベルの低誘電損失材料を使用する必要がある。そして、この誘電損失を低下させるためにインピーダンスを入出力にあわせる必要があり、低誘電率であることも求められる。
【0004】
前記樹脂基板材料として、従来、成形性、接着性および価格の点でシアネート樹脂が使用されている。この電気特性は、tanδが約10-3であり、耐用年数は15年であるといわれている。
【0005】
また、シアネート樹脂基板の両面に銅箔を接着する場合、基板を表面処理する、非フッ素樹脂接着剤を使用する、あるいは、これらを併用する方法があげられる。しかし、これらの方法には、工程が複雑で生産効率が悪い、初期接着強度は得られるが、温度変化や高温下での接着強度低下が大きく、最高80℃から最低零下数℃までと温度変化の大きい屋外でのアンテナ素子に用いられた場合には剥離が生じる、非フッ素樹脂接着剤を用いた場合、風雨、直射日光にさらされるため剥離が生じたり、誘電損失が発生するなどの問題がある。
【0006】
ところで、前記アンテナは、屋外に設置されているために、雨、雪、塵などにさらされる。とくに水分が、アンテナに付着すると、水による透過損失が発生し、また電磁波伝搬に拡散が生じるという問題がある。
【0007】
そこで、屋外で使用されるアンテナは、アンテナカバーにより保護されている。そして、同様に前記アンテナカバーにも、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性が求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するものであり、低誘電率、低tanδといった優れた電気特性をもつアンテナカバーを提供することを目的とする。
【発明を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は下記条件(1)によって算出される誘電正接が2.0×10-4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0010】
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0011】
(誘電正接測定方法)
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により前記サンプルシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおける誘電正接を次式にしたがって算出する。
【0012】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0013】
【数1】
【0014】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0015】
【数2】
【0016】
式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0017】
前記誘電正接は、1.50×10-4以下であることが好ましい。
【0018】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。
【0019】
前記シートの比重は、2.192以上であることが好ましい。
【0020】
前記シートは、未焼成または結晶転化率が90%以下であることが好ましい。
【0021】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
【0022】
前記シートに金属製反射板は熱融着により接着されてなることが好ましい。
【0023】
前記シートを表面処理したのち、熱融着することが好ましい。
【0024】
前記シートと金属製反射板とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0025】
前記シートと金属製反射板とが、シートを表面処理したのち、樹脂接着剤を介して接着されることが好ましい。
【0026】
前記表面処理は、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
【0027】
また、本発明は、(A)標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属製反射板を接着されてなり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0028】
前記組成物はシアネート樹脂を含むことが好ましい。
【0029】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基はフッ素化されていることが好ましい。
【0030】
前記金属製反射板はステンレス製またはアルミニウム製であることが好ましい。
【0031】
前記シートと金属製反射板とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0032】
前記シートを成形したのち、金属製反射板を接着して得られることが好ましい。
【0033】
前記シートと金属製反射板とを接着したのち、熱処理により成形して得られることが好ましい。
【0034】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いたシートからなるアンテナカバーに関する。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、特定の条件で測定した12GHzにおけるtanδが2.0×10-4以下であるPTFE系樹脂を使用することにより、優れた低誘電損失のアンテナカバーを得ることができる。また、水分をはじくため、安定したアンテナ受発信性能を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明で使用されるポリテトラフルオロエチレン系樹脂(以下、PTFE系樹脂と称す)は、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはテトラフルオロエチレン99.9〜99.9999モル%と、式(I):
CX2=CY(CF2)nZ (I)
(式中、X、YおよびZは同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、nは1〜5の整数)で示されるフルオロオレフィンおよび式(II):
CF2=CF−ORf 1 (II)
(式中、Rf 1は炭素数1〜3のパーフルオロアルキル基)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)よりなる群から選ばれた少なくとも1種のモノマー0.0001〜0.1モル%との共重合体である変性量0.1重量%以下の変性ポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0037】
前記式(I)で示されるフルオロオレフィンとしては、たとえばヘキサフルオロプロピレン(以下、HFPと略す)などのパーフルオロオレフィン;パーフルオロブチルエチレンなどのフルオロオレフィンなどがあげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、HFPが好ましい。
【0038】
また、前記式(II)で示されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)としては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(以下、PMVEと略す)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(以下、PEVEと略す)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(以下、PPVEと略す)があげられる。これらのうちでは電気特性に優れる点から、PMVEが好ましい。
【0039】
本発明で使用するPTFE系樹脂の形状としては、モールディングパウダー、ファインパウダー、水性ディスパージョンなどがあげられる。
【0040】
前記ファインパウダーは、乳化剤、特に含フッ素系の乳化剤の存在下に重合開始剤を用いて乳化分散重合することにより得られる。乳化重合において、得られる重合体の分子量を低分子量化するには、重合開始剤の量を増やす、連鎖移動剤を添加する、変性モノマーの添加などの方法が採用される。
【0041】
重合開始剤としては、たとえば過硫酸アンモニウム(APS)、ジコハク酸パーオキサイド(DSP)などが、連鎖移動剤としてはたとえば水素、メタン、エタンなどの炭化水素などがあげられる。
【0042】
乳化重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
【0043】
さらに乳化重合法で得られるコロイド一次粒子を芯−殻構造とすることにより、成形性、とりわけペースト押出成形性を向上させることもできる。芯−殻構造としては、たとえば芯をTFEの単独重合体で構成し、殻を変性PTFEで構成したものが、ペースト押出成形性が良好な点から好ましい。
【0044】
前記モールディングパウダーは、分散剤の存在下に重合開始剤を用いて懸濁重合して得られる。
【0045】
重合開始剤としては、過硫酸塩、亜硫酸塩などをあげることができ、例えば、過硫酸アンモニウムなどをあげることができる。
【0046】
懸濁重合の方法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
【0047】
前記水性ディスパージョンとしては、前記乳化重合にて得られた水性分散液をそのまま使用できるが、含フッ素重合体の濃度を高め、かつ安定性を向上させるために、界面活性剤を添加して安定化させたのち、層分離濃縮法や膜分離濃縮法などにより重合体固形分濃度を40〜70重量%にまで濃縮し、ついで純水、アンモニア水とポリオキシエチレンアルキルエーテル系界面活性剤を加えて、30〜65重量%に希釈することが好ましい。
【0048】
使用する界面活性剤としては、式:
R−O−A−H
(式中、Rは直線状または分岐鎖状の炭素数5〜18、好ましくは10〜16のアルキル基、Aはオキシエチレン基を5〜20個およびオキシプロピレン基を0〜6個有するポリオキシアルキレン鎖である)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。アルキル基Rとしては、デシル、ラウリル、トリデシル、セチル、ステアリルなどが例示でき、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。特に、界面活性能が優れている点、水溶性である点、入手が容易である点から、Rが炭素数10〜16のアルキル基で、ポリオキシアルキレン鎖が7〜15個のオキシエチレン基と0〜3個のオキシプロピレン基とからなるポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤が好ましい。この界面活性剤の製造原料は、天然または合成した高級アルコールを使用してもよいが、アルキルフェノール類を全く含まないことが好ましい。
【0049】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル系界面活性剤の添加量は、PTFE系樹脂100重量部(以下、「部」という)あたり3〜20部であることが好ましい。
【0050】
なお、希釈のために、純水や水溶性溶剤、アルキルフェノールを含まない炭化水素系の各種界面活性剤などを適宜添加してもよいし、レベリング剤としてフッ素系界面活性剤やシリコン系界面活性剤を加えたり、増粘剤、レオロジーコントロール剤、各種水溶性電解質を含む塩類などで粘度調整してもよい。
【0051】
PTFE系樹脂の標準比重は、2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。標準比重が2.300のPTFE系樹脂は、完全に結晶化されており、現実には存在しない。すなわち本発明で用いるPTFE系樹脂は、高結晶化度のものであることが好ましい。標準比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、シートのtanδが高くなったり、成形加工性に劣る傾向にある。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。なお、前記標準比重は、温度25℃の条件下、空気中のサンプル重量(W1)と水中でのサンプル重量(W2)の差から、サンプルの密度(ρs)を求める方法で、下記の式で表される。
【0052】
【数3】
【0053】
ρS:サンプルの密度(g/cm3)
ρW:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
【0054】
前記標準比重を満たすPTFE系樹脂の分子量は、500万以下であると考えられ、本発明では、このような低分子量のPTFE系樹脂が好ましく使用される。
【0055】
また、前記PTFE系樹脂をフッ素ラジカル源と接触させることによりフッ素化処理して、末端不安定基を安定化することが好ましい。前記末端不安定基をフッ素化すると、熱安定性だけでなく、加工特性、tanδなどの高周波特性も改善される。さらに、それから得られるアンテナカバーの高周波特性および機械的特性も改善される。
【0056】
フッ素化処理の反応温度は、100〜250℃であることが好ましく、より好ましくは、110〜200℃である。反応温度が100℃より低いと、反応速度が遅くなる傾向にある。反応温度が250℃をこえると、PTFE系樹脂同士が融着したり分解揮散する傾向にある。
【0057】
フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスのほか、ClF、ClF3、BrF3、IF3などのハロゲン化フッ化物;XeF2、XeF4、KrF2などの希ガスのフッ化物;NF3、NF2などの含窒素フッ素化合物など前記反応温度でガス状の化合物があげられる。なかでも、取扱い性、価格の点からフッ素ガスが最も好ましい。フッ素ガスを用いてフッ素化処理をする場合、PTFE系樹脂を110〜250℃にて、フッ素ガスと1〜10時間接触させる。好ましくは、反応温度180〜230℃である。また反応時間は、2〜5時間であることが好ましい。反応圧力は0.1〜1MPa程度でよく、好ましくは大気圧である。フッ素ガスは純粋なフッ素ガスでもよく、また窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスで5〜25容量%、好ましくは7〜20容量%に希釈して使用してもよい。
【0058】
フッ素ラジカル源の添加量は、反応温度や反応時間、フッ素ラジカル源の種類などによって異なるが、フッ素原子に換算して、PTFE系樹脂100部に対し、0.01〜1部が好ましい。より好ましくは0.1〜0.5部である。フッ素ラジカル源の添加量が0.01部より少ないと、原料PTFEのフッ素化が不充分となる傾向にある。またフッ素ラジカル源の添加量が1部をこえても、フッ素化の効果は向上せず、不経済となる傾向にある。
【0059】
フッ素化処理に使用する反応装置としては、固−気接触を充分に行なうことができる装置であれば問題なく使用できる。具体的には流動床型、棚段型の固−気接触反応装置があげられる。
【0060】
本発明で使用されるPTFE系樹脂は、12GHzでのtanδが2.0×10-4以下を示し、1.5×10-4以下であることが好ましい。tanδが2.0×10-4をこえると、アンテナカバーの誘電損失(電力ロス)が大きくなる。
【0061】
また、本発明におけるtanδ測定方法は、以下の条件(1)でサンプルを作製し、測定する。
【0062】
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンを円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0063】
ただし、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にしてからシート成形する。
【0064】
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたフィルムの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。次式は、埼玉大学工学部の小林禧夫氏および佐藤純也氏が開発された計算式(小林禧夫、佐藤純也「誘電体平板材料のマイクロ波複素誘電率測定」信学技報、MW87−7、1987年5月号)にしたがっている。ただし、12GHzの空洞共振器にサンプルを挿入すると、サンプルにより共振周波数が変化し、12GHzよりも低くなる。その共振周波数の値は、PTFE500μm厚のサンプルでおよそ11.74GHzである。この場合、無サンプル状態での共振周波数をもってtanδを表記する。
【0065】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0066】
【数4】
【0067】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0068】
【数5】
【0069】
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0070】
本発明のアンテナカバーに使用されるPTFE系樹脂からなるシートとしては、厚さ200μm以上のシート状のものだけでなく、200μm未満のフィルム状のものも含む。
【0071】
本発明のアンテナカバーとしては、PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーや、PTFE系樹脂からなるシートをアンテナ素子および反射板に直接コーティングしているアンテナカバーをさすものである。
【0072】
PTFE系樹脂からなるシートがアンテナ素子または反射板から離れて位置するアンテナカバーである場合、その立体形状は、円筒形、多角形、円錐形など、とくに限定されない。
【0073】
前記アンテナカバーの厚さは、特に限定されないが、1〜6mmであることが好ましい。1mmより小さいと、機械的な強度不足となる傾向にある。
【0074】
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合には、そのアンテナカバーの厚さは、5〜50μmであることが好ましい。膜厚が、5μm未満であると、撥水性が低下する傾向にあり、50μmをこえるとクラックが発生して水がしみ込み、撥水性が低下する傾向にある。
【0075】
本発明のアンテナカバーは、前記PTFE系樹脂のシートからなり、比重が2.192以上であることが好ましい。より好ましくは2.200以上である。また、その上限は、2.300、好ましくは2.280である。比重が2.192より小さいと、結晶化度が低くなり、tanδが高くなったり、成形加工性に劣る。一方、標準比重が高いと機械的強度が低下する点で問題がある。
【0076】
比重が2.192以上のシートを得るには、標準比重が2.192以上である前記PTFE系樹脂を20重量%以上、さらには70重量%以上含んでいることが好ましい。
【0077】
また、本発明は、(A)標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属製反射板が接着されてなり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
【0078】
前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)は、条件(1)で作製、測定した12GHzにおけるtanδが1.5×10-4以下であり、好ましくは、1.0×10-4以下である。この範囲をはずれると、誘電損失が大きくなる傾向にある。
【0079】
また、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であり、105ポイズ以下であることが好ましい。溶融粘度が106ポイズをこえると、徐冷条件での作製時に誘電損失が大きくなる傾向にある。
【0080】
ここで、徐冷条件は、例えば、焼成後の冷却速度が、60℃/時間より小さくすることができる。
【0081】
また、前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(A)および/またはポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末(B)は、シートの10重量%以上含み、30重量%以上含むことが好ましい。前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末が10重量%より少ないと、誘電損失が小さくなる効果が得られにくい傾向にある。
【0082】
前記組成物は、徐冷成形時の誘電正接の低さの点から、溶融粘度が106ポイズ以下のPTFE系樹脂を含むことが好ましく、さらに低損失の点から、末端基がフッ素化されているポリテトラフルオロエチレン系樹脂を含むことが好ましい。
【0083】
また、本発明は、PTFE系樹脂からなるシートを用いたアンテナカバーに関する。
【0084】
本発明で使用されるPTFE系樹脂は溶融加工できないため、プレス成形法、シートまたはチューブ(パイプ)押出などの押出成形法、圧縮成形法などの成形法によって成形加工する。
【0085】
得られた成形物は、通常、続いて焼成される。焼成温度は360〜400℃が適当である。
【0086】
また、前記焼成を行わなくてもよく、また結晶転化率90%以下に半焼成化してもよい。未焼成および結晶転化率90%以下の半焼成化することで、誘電損失が下がる傾向にある。
【0087】
その後、プレス処理、ペースト押出し、あるいはスカイブなどにより、PTFE系樹脂からなるシート状の成形体が得られる。そして、得られた平面成形体を熱プレスまたはチューブ押出しなどにより、立体形状として、本発明のアンテナカバーを得ることができる。
【0088】
また、PTFE系樹脂からなるシートによりアンテナ素子および反射板を直接コーティングしているアンテナカバーである場合、アンテナ素子およびアンテナ反射板に水溶性ディスパージョンをスプレーコートし、3〜20分間乾燥したのち、焼成をおこなうことが好ましい。焼成温度は360〜400℃が適当である。
【0089】
かくして得られる本発明で使用されるアンテナカバーは、マイクロ波領域(3〜30GHz)、特に高周波領域における電気特性に優れたものであり、tanδは12GHzで2.0×10-4以下、好ましくは1.50×10-4以下である。tanδが、2.0×10-4をこえると、誘電損失が増加する傾向にある。
【0090】
アンテナカバーおよびその周辺機器には、伝送損失を小さく抑えることが求められている。そして、その伝送損失は、以下の式により求められる。
【0091】
伝送損失=導体損+誘電体損(αd)
ここで誘電体損(αd)は、
誘電体損(αd)=
27.3×(周波数)/(光速)×√(誘電率)×tanδ
で表される。誘電体損はtanδに比例しており、アンテナの伝送損失低減のためには、tanδの低減による効果が大きいことがわかる。
【0092】
したがって、本発明のアンテナカバーのtanδが1.50×10-4以下に低減されているので、伝送損失を大きく低減することができる。
【0093】
また、本発明のアンテナカバーは、フッ素系樹脂からなるため、雨や雪などの水分をはじく。そのため、水分によるアンテナの受発信中心周波数のずれが生じにくくなり、安定した受発信性能が得られる。
【0094】
本発明のアンテナカバーは、固定の点から、前記シートの少なくとも片面に金属製反射板が接着されていることが好ましい。
【0095】
前記金属製反射板としては、腐食防止の点から、ステンレス製、アルミニウム製などが好ましい。金属製反射板の厚さは、特に限定されないが、0.05〜1.0mmであることが好ましい。
【0096】
前記金属製反射板は、接着強度の点から、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面に熱融着により接着されてなることが好ましい。
【0097】
また、接着強度の点から、前記金属製反射板は、前記シートを表面処理したのち、あるいは表面処理せずに、シート表面にエポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着されることが好ましい。
【0098】
前記エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる3種の接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体は、それぞれ単独で用いてもよいが、2種以上を用いて、2層以上の接着層としてもよい。例えば、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体層とエポキシ樹脂層からなる2層の接着層などをあげられる。
【0099】
前記接着方法としては、樹脂接着剤の1層、官能基を有する含フッ素エチレン性重合体の1層、または樹脂接着剤と官能基を有する含フッ素エチレン性重合体からなる2層を介して接着されることをさす。
【0100】
これらの中でも、容易に接着できる点、金属との接着強度について、初期接着力だけでなく、激しい温度変化や高温下においても接着強度が低下しないため、熱処理を伴う後加工が可能である点、フッ素樹脂が主鎖であるため耐候性に優れ、屋外での寿命が長い点、および誘電損失が発生しにくい点で、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体が好ましい。
【0101】
前記官能基含有フッ素エチレン性重合体は、(a)ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する官能基含有含フッ素エチレン性単量体と(b)該官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体のうちの少なくとも1種との共重合体であることが好ましい。
【0102】
前記(a)成分の含有率は、0.05〜30モル%が好ましく、接着される基材の種類、形状、接着の目的、用途、必要とされる接着力、接着剤の形態と接着方法などの違いにより適宜選択されるが、より好ましくは0.05〜20モル%、とくに好ましくは0.1〜10モル%である。前記含有率が0.05モル%未満であると他の基材との接着性が充分得られにくく、薬品の浸透や温度変化などによる剥離などをおこしやすい。また、30モル%を超えると耐熱性を低下させ、高温での加工時の接着不良や着色や発泡、高温での使用時の分解による、剥離や着色・発泡、溶出などを起こしやすい。
【0103】
前記官能基含有含フッ素エチレン性重合体(a)としては、
CX2=CX1−Rf 2−Y (1)
(式中、XおよびX1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Yは−CH2OH、−COOH、カルボン酸塩、カルボキシエステル基またはエポキシ基、Rf 2は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル基を含む含フッ素オキシアルキレン基を表わす)
で示される少なくとも1種の単量体があげられる。より具体的には、
CF2=CF−Rf 3−CH2OH (2)
[式中、Rf 3は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または−ORf 4(Rf 4は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基)を表わす]、
CF2=CFCF2−ORf 5−CH2OH (3)
[式中、−Rf 5は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CH2=CFCF2−Rf 6−CH2OH (4)
[式中、−Rf 6は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または−ORf 7(Rf 7は炭素数1〜39の2価の含フッ素アルキレン基、または炭素数1〜39のエーテル結合を含む2価のアルキレン基)を表わす]、または
CH2=CH−Rf 8−CH2OH (5)
[式中、Rf 8は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基を表わす]、
CX2=CX1−Rf 9−COOY1 (6)
(X、X1は同じかまたは異なりいずれも水素原子またはフッ素原子、Y1は水素原子、NH4もしくはI、II、III、IVa、VIII類元素から選ばれる金属原子、Rf 9は炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基、炭素数1〜40の2価の含フッ素オキシアルキレン基、または炭素数1〜40のエーテル結合を有する2価の含フッ素アルキレン基を表わす)で示される少なくとも1種の単量体があげられる。前記−COOY1は、より具体的には、−COOH、−COONH4、−COONa、−COOK、−COOLi、−COOZn、−COOAl、−COOMg、−COOCaなどが好ましくあげられる。
【0104】
前記官能基を有さない含フッ素エチレン性単量体(b)としては、テトラフルオロエチレン、または、テトラフルオロエチレン85〜99.7モル%と
CF2=CF−Rf 10 (7)
(式中、Rf 10はCF3またはORf 11(Rf 11は炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基))
で示される単量体0.3〜15モル%との混合単量体などがあげられる。
【0105】
また、エポキシ樹脂を使用する場合は、前記シートをナトリウムエッチング、プラズマ処理、エキシマレーザ処理、放電処理などの表面処理したのち、エポキシ樹脂を付与することが好ましい。
【0106】
前記官能基を有する含フッ素エチレン性重合体、および接着剤の塗布量は特に限定されないが、0.004〜0.04g/cm2であることが好ましい。0.004g/cm2よりすくないと、接着強度不足となる傾向にある。0.04g/cm2をこえると、伝送損失が増える傾向にある。また、あらかじめフィルム状にした接着剤を前記シートに付与してもよい。このとき、前記フィルムの厚さは、0.02〜0.2mmであることが好ましい。0.02mmより小さいと、接着強度不足となる傾向にある。0.2mmをこえると、伝送損失が増える傾向にある。
【0107】
また、接着剤の形態としては、フィルム状に限られるものではなく、粉体、分散液としても使用できる。
【0108】
また、前記表面処理は、接着強度の点から、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理であることが好ましい。
【0109】
本発明のアンテナカバーは、前記接着剤によりアンテナや金属製の反射板などと接着することができる。
【0110】
本発明のアンテナカバーの一例を図1〜4に示す。
【0111】
図1では、アンテナ3が接合された金属製反射板2が、接着剤4を介してアンテナカバー1と接着されている。なお、前記金属製反射板は、本発明のアンテナカバーによって全体が保護されている。また、前記シートに金属製反射板を接着する場合、前記シートを成形したのち、金属製反射板を接着もよいし、前記シートと金属製反射板とを接着したのち、熱処理により成形してもよい。
【0112】
図2では、アンテナ3を囲む3辺をおよび上部をアンテナカバー1により保護している。他の1辺は、アンテナ3が接合された金属製反射板2である。アンテナカバー1と金属製反射板2とは、接着剤4により接着されている。
【0113】
図3では、アンテナ3が接合された半球状の金属製反射板2と、円錐状のアンテナカバー1とが、接着剤4により接着されている。
【0114】
図4では、アンテナ3およびアンテナに接合された半球状の金属製反射板2が、アンテナカバー1によりコーティングされている。
【実施例】
【0115】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されない。
【0116】
なお、本発明の実施例で測定した各物性値はつぎの方法で測定したものである。
【0117】
(標準比重)
ASTM D4895−89にしたがって作製されたサンプルを用い、水置換法によって測定する。
【0118】
【数6】
【0119】
ρS:サンプルの密度(g/cm3)
ρW:水の密度(g/cm3)
W1:空気中でのサンプル重量(g)
W2:水中でのサンプル重量(g)
【0120】
(誘電率および誘電正接)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーを含む原料を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
【0121】
また、PTFE樹脂が水性ディスパージョンである場合は、圧縮成形前に、80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にする必要がある。
【0122】
(tanδ測定方法)
ネットワークアナライザー(ヒューレットパッカード社製、HP8510C)を使用し、空洞共振器により前記作製されたシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおけるtanδを次式にしたがって算出する。
【0123】
tanδ=(1/Qu)×{1+(W2/W1)}−(Pc/ωW1)
【0124】
【数7】
【0125】
XtanX=(L/2M)YcosY
【0126】
【数8】
【0127】
ただし、式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171
【0128】
実施例1
標準比重が2.216、12GHzでの誘電率が2.12、条件(1)で測定したtanδが1.10×10-4のPTFEファインパウダー(TFE/HFP=99.9970/0.0030(モル比)、連鎖移動剤:エタン)を圧縮成形機により円柱状に圧縮成形し、熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷した。その後、常温にまで放冷した前記円柱から、2mm厚のシートを切り出し、アンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.1×10-4であり、比重は、2.24であった。
【0129】
実施例2
実施例1同様のPTFEファインパウダーに、押出し助剤としてアイソパーG(エッソ化学株式会社製)を17重量%の割合で混合した。これを、押出し成形機により、外径φ120mm、内径φ116mmのパイプを成形した。前記パイプを、常温の平面プレスにて平面化し、100℃で10分間の乾燥した。ついで、乾燥機にて250℃で10分間加熱して、押出し助剤を除去し、厚さ1.7mmのフィルムを得た。得られたフィルムを360℃の熱板プレスで50kg/cm3の圧力にて、10分間加圧した。ついで、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷しアンテナカバー(厚さ1.7mm)を得た。tanδを測定したところ、0.5×10-5であり、比重は、2.26であった。
【0130】
実施例3
標準比重が2.17であり、条件(1)で測定したtanδが1.9×10-4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、溶融粘度(380℃、7kg荷重、ノズル径10mmφ)が35万ポイズPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)とを、8:2の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ2mmのシート(フィルム)を切り出した。得られたフィルムから、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ2mm)を得た。tanδを測定したところ、1.4×10-4であり、比重は、2.22であった。
【0131】
実施例4
標準比重が2.25であり、条件(1)で測定したtanδが1.4×10-4のPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE系重合体、商品名:ルブロンL−2)を電気炉内に入れ、200℃にてフッ素ラジカル源(フッ素ガス)に大気圧、5時間の条件下で接触させ、フッ素化PTFEファインパウダーを得た。標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)と、前記フッ素化PTFEファインパウダーとを、9:1の重量比で、常温空気中で混合し、圧縮成形機により円柱状に圧縮成形した。前記成形物を熱風循環式電気炉で380℃にて60分間加熱焼成し、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷した。この円柱から厚さ1.5mmのシート(フィルム)を切り出し、実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.3×10-4であり、比重は、2.25であった。
【0132】
実施例5
標準比重が2.17であるPTFEファインパウダー(ダイキン工業株式会社製、TFE単独重合体、商品名:ポリフロンF104)を使用したこと以外は実施例1同様にしてアンテナカバー(厚さ1.5mm)を得た。tanδを測定したところ、1.6×10-4であり、比重は、2.19であった。
【0133】
実施例6
水性ディスパージョン(ダイキン工業株式会社製、商品名:D−2、固形分標準比重:2.22)を80℃にて加熱して、水分を蒸発させてパウダー状にし、条件(1)でtanδを測定したところ1.7×10-4であった。この水性ディスパージョンを、アンテナ反射板にスプレーコートし、30分間乾燥した後、380℃30分間焼成を行なって、1℃/分の冷却速度で270℃まで徐冷、常温にまで放冷し、アンテナカバー(厚さ20μm)が形成されているアンテナ反射板を得た。シートのtanδを測定したところ、1.0×10-4であり、比重は、2.26であった。
【0134】
ただし、このアンテナカバーは、剥離することが困難であるため、前記パウダーを用いて、下記方法により作製したシートのtanδで代用した。
【0135】
前記水分を蒸発させたパウダーを円柱状に圧縮成形して、厚さ0.5mmのシートを切り出したのち、380℃5分間焼成を行なって、冷却速度1℃/時間にて270℃にまで徐冷、常温にまで放冷し、シートを作製した。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はA−A線による断面図である。
【図2】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はB−B線による断面図である。
【図3】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。(a)は斜視図、(b)はC−C線による断面図である。
【図4】本発明のアンテナカバーの一例を示す図である。アンテナ素子部分、反射板に直接コーティングした例である。
また、本発明は、(A)標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属製反射板を接着されてなり、アンテナカバーの比重が2.192以上であるアンテナカバーに関する。
Claims (22)
- ポリテトラフルオロエチレン系樹脂シートからなるアンテナカバーであって、該ポリテトラフルオロエチレン系樹脂は下記条件(1)によって算出される誘電正接が2.0×10−4以下のポリテトラフルオロエチレン系樹脂であるアンテナカバー。
条件(1)
(シートの作製条件)
ポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を円柱状に圧縮成形する。この円柱から切出した厚さ0.5mmのシートを熱風循環式電気炉で380℃にて5分間加熱焼成する。ついで60℃/時間の冷却速度で常温にまで放冷してサンプルシートを作製する。
(誘電正接測定方法)
ネットワークアナライザーを使用し、空洞共振器により前記サンプルシートの共振周波数およびQ値の変化を22〜25℃にて測定し、12GHzにおける誘電正接を次式にしたがって算出する。
式中の記号はつぎのものである。
D:空洞共振器直径(mm)
M:空洞共振器片側長さ(mm)
L:サンプル長さ(mm)
c:光速(m/s)
Id:減衰量(dB)
F0:共振周波数(Hz)
F1:共振点からの減衰量が3dBである上側周波数(Hz)
F2:共振点からの減衰量が3dBである下側周波数(Hz)
ε0:真空の誘電率(H/m)
εr:サンプルの比誘電率
μ0:真空の透磁率(H/m)
Rs:導体空洞の表面粗さも考慮した実効表面抵抗(Ω)
J0:−0.402759
J1:3.83171 - 前記誘電正接が、1.50×10−4以下である請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の標準比重が、2.192以上である請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートの比重が、2.192以上である請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートが、未焼成または結晶転化率が90%以下である請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基がフッ素化されている請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートに金属箔が熱融着により接着されてなる請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートを表面処理したのち、熱融着する請求の範囲第7項記載のアンテナカバー。
- 前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着される請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートを表面処理したのち、接着される請求の範囲第9項記載のアンテナカバー。
- 前記表面処理が、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理である請求の範囲第8項記載のアンテナカバー。
- 前記表面処理が、(イ)官能基を有する有機化合物を含む不活性ガス雰囲気中での放電処理、(ロ)エキシマレーザ照射、(ハ)プラズマ処理、または(ニ)金属ナトリウムを用いた化学的エッチング処理である請求の範囲第10項記載のアンテナカバー。
- (A)前記条件(1)で測定した12GHzにおける誘電正接が1.5×10−4以下であり、標準比重が2.192以上であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末、および/または(B)380℃における溶融粘度が106ポイズ以下であるポリテトラフルオロエチレン系樹脂粉末を、10重量%以上含む組成物からなるシートの少なくとも片面に金属箔を接着されてなるアンテナカバー。
- 前記組成物がシアネート樹脂を含む請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- 前記ポリテトラフルオロエチレン系樹脂の末端基がフッ素化されている請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- 前記金属箔がステンレス箔またはアルミニウム箔である請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- 前記シートと金属箔とが、エポキシ樹脂、フェノール樹脂およびシアネート樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種の樹脂接着剤、および/またはヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボン酸塩、カルボキシルエステル基およびエポキシ基からなる群より選ばれた少なくとも1種の官能基を有する含フッ素エチレン性重合体を介して接着される請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- 前記シートを成形したのち、金属箔を接着して得られる請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートを成形したのち、金属箔を接着して得られる請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- 前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形して得られる請求の範囲第1項記載のアンテナカバー。
- 前記シートと金属箔とを接着したのち、熱処理により成形して得られる請求の範囲第13項記載のアンテナカバー。
- ポリテトラフルオロエチレン系樹脂を用いたシートからなるアンテナカバー。
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