JPWO2003076623A1 - Cdc7−ASKキナーゼ複合体、該キナーゼ複合体の基質、及び該基質に特異的な抗体、並びにこれらを用いたCdc7−ASKキナーゼ阻害能を有する化合物のスクリーニング方法 - Google Patents

Cdc7−ASKキナーゼ複合体、該キナーゼ複合体の基質、及び該基質に特異的な抗体、並びにこれらを用いたCdc7−ASKキナーゼ阻害能を有する化合物のスクリーニング方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、Cdc7−ASKキナーゼ複合体の基質であるMCMの、被リン酸化部位におけるリン酸化のレベルを指標とする、Cdc7−ASKキナーゼ複合体のリン酸化酵素活性測定方法を提供する。この測定方法に基づいて、被験化合物のCdc7−ASKキナーゼ複合体のリン酸化酵素活性に与える影響を評価することもできる。当該リン酸化酵素活性を阻害する化合物は、がんに対する特異性に優れた制がん剤として有用である。

Description

技術分野
本発明は、Cdc7−ASKキナーゼ複合体のリン酸化酵素活性測定方法に関する。
背景技術
細胞は増殖する際に、そのゲノムDNAを複製し、娘細胞へ均等に分配した後分裂するという過程を周期的に繰り返す。このような周期は細胞周期と呼ばれている。細胞周期はG1期(DNA合成準備期)、S期(DNA合成期)、G2期(分裂準備期)、M期(分裂期)に分けることができ、各段階を順番に経て細胞は分裂する。細胞周期の進行は数多くの分子により精緻な調節を受け、不必要な細胞の増殖を制御している。これまでに細胞周期の進行に関与する分子のクローニングや機能解析が数多く行われ、多くの癌においてこれらの細胞周期の進行に関する分子の異常が報告され、それが発癌の原因となっていると考えられている。
これまで、種々の制癌剤ないしは抗癌剤が開発されてきた。癌細胞の増殖異常の原因の多くが、細胞周期の進行の異常に由来することが認識されるにしたがって、細胞周期進行制御因子を標的とした制癌剤が精力的に開発されている。中でも、機能の解析が進んでいるCdk−Cyclinは、抗癌剤の標的として最も広く研究されている。そしてCdk−Cyclinを標的とする多くの制癌剤の候補分子が既に報告されている。
Cdkは多くの構造類似分子がファミリーを構成し、それぞれが種々の細胞周期特異的なCyclin分子と複合体を形成して、細胞周期の種々のステージを制御する。現状では、これらの構造類似分子の中で、特定のCdk−Cyclinのみを特異的に阻害する分子の特定には至っていない。つまり、Cdk−Cyclinを標的として、癌細胞に対して特異的かつ選択的に作用する分子を得ることは難しかった。また、これまでのところ細胞分裂、あるいはG1(休止)期の制御因子を標的とした制癌剤は多く探索されてきたが、細胞増殖のもうひとつの重要な制御点であるDNA複製の過程を標的とした創薬は少なかった。
さて、S期の開始時(G1−S移行)においては、Cdk−Cyclinとは別のセリン/スレオニンキナーゼが重要な役割を果たしていることが明らかになっている。すなわち、細胞分裂周期変異株の一つとして単離されたCdc7変異株(J.Mol.Biol.59:183−194,1971)において、Cdc7蛋白質キナーゼは染色体DNAの複製の開始直前に機能すること、そしてS期を通じて各複製起点の活性化に必要であることが明らかにされた(Mol.Cell.Biol.6:1590−1598,1986;Genes Dev.15:480−490,1998;Genes Dev.15:491−501,1998)。また酵母Cdc7のキナーゼ活性は、制御サブユニットであるDbf4に依存することも知られている(Genetics 131:21−29,1992;Mol.Cell.Biol.13:2899−2908,1993)。
酵母におけるDbf4の発現は周期的で、転写レベルおよび翻訳後レベルの両方で制御されている(Exp.Cell Res.180:419−428,1989)。G1−S境界期におけるCdc7キナーゼ活性の増加の少なくとも一部は、Dbf4の発現がG1後期に増加することによって説明されている(Mol.Cell.Biol.13:2899−2908,1993;Exp.Cell Res.180:419−428,1989)。更にDbf4は細胞内で複製起点と相互に作用する(Science265:1243−1246,1994)ことから、Cdc7は複製起点上に形成される複製装置を直接的に活性化することによりS期の開始をトリガーしていると考えられている。
本発明者は、既にヒトにおける酵母Dbf4のヒトにおけるホモログH37蛋白質とそれをコードするDNAの単離に成功している(特開2000−135090号公報、J.Biol.Chem.Vol.275,No.37,29042−29052,2000)。H37は、DNA複製の開始のon/offを司る重要な制御因子である。H37は、後にヒトactivator of S phase kinase(ASK)と名付けられた。
ASKはヒト染色体上のユニークな遺伝子で、その機能は染色体複製に必須である。マウスを用いた発生工学的遺伝解析から、Cdc7の機能は細胞レベル及び動物レベルで必須であることが証明された。Cdc7はキナーゼ触媒サブユニットをコードし、ASKは活性サブユニットをそれぞれコードする。両者は複合体を形成し、活性を有するキナーゼとなる。Cdc7−ASKキナーゼの活性は細胞周期で厳密に制御されており、DNAの複製が起こるS期に上昇する。そのキナーゼ活性はS期を通じて高く保たれるが、M期からG1期には検出されなくなる。この活性制御は、主にASK蛋白質の発現レベルの変動に依存している。すなわち、ASK蛋白質はその量が細胞周期で変動し、その結果ASKが結合し制御するヒトCdc7キナーゼの活性も細胞周期中に変動する。
また増殖の盛んな癌細胞においては、一般にヒトCdc7−ASKの発現レベル、およびその活性の昂進が観察される。このような癌細胞ではASK蛋白質の発現の昂進によって、ヒトCdc7キナーゼ活性が増加していると考えられる。さらに興味深いことに、本発明者らはASKの発現レベルが種々の培養癌細胞においてその増殖能の上昇に呼応して増加していることを見出している。
本発明者のその後の研究によって、Cdc7−ASK複合体によってリン酸化される特異的な基質が、染色体の複製開始に必須なMCM(minichromosome maintenance)複合体(ヘテロ6量体)であることが証明された(J.Biol.Chem.Vol.275,No.37,29042−29052,2000)。このような知見を踏まえ、本発明者らは、Cdc7−ASKは複製開始複合体内に存在するMCMをリン酸化し、その結果サブユニット構造の再構成を誘導して複製開始に必須な二本鎖DNAの開裂を引き起こすというモデルを提唱している。
このような背景から、Cdc7−ASK複合体による基質蛋白質のリン酸化は、がん細胞の増殖制御における重要な現象であると認識されている。しかし、そのリン酸化の機構には、今なお解明すべき点が多く残されている。
発明の開示
本発明は、Cdc7−ASK複合体による基質蛋白質のリン酸化の機構を明らかにし、その活性を評価するための方法の提供を課題とする。また本発明は、前記評価方法に基づいて、被験化合物のCdc−ASK複合体による基質のリン酸化作用に与える影響を測定するための方法の提供を課題とする。更に本発明は、これらの方法に有用な、基質、抗体、あるいはCdc7−ASK複合体の提供を課題とする。
本発明者らはCdc7−ASK複合体は制癌剤の新規かつ重要な標的になると考えた。つまり、Cdc7−ASK複合体のリン酸化作用に対する阻害剤は、癌細胞の増殖を選択的に抑制することができ、有効な制癌剤の候補になると考えた。
Cdc7−ASK複合体のリン酸化作用の阻害作用を評価するには、まずCdc7−ASK複合体のリン酸化作用を評価する方法の確立が必須である。この課題を解決するために、まず本発明者らは、Cdc7−ASK複合体による基質蛋白質のリン酸化の機構を明らかにした。そしてこの知見に基づいて、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を測定しうることを確認して本発明を完成した。
次に、このキナーゼ活性の測定方法を応用して、被験化合物のCdc7−ASK複合体による基質蛋白質のリン酸化作用に与える影響を評価できることを見出した。この知見に基づいて、Cdc7−ASKキナーゼに対する被験化合物の阻害(または促進)作用を評価する方法と、このような作用を有する化合物のスクリーニング方法を確立し、本発明を完成した。
更に本発明者らは、これらの方法の確立を通じて、これらの方法に有用な新規な基質化合物、抗体、あるいはCdc7−ASK複合体等を見出し本発明を完成した。すなわち本発明は、以下のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の測定方法に関する。あるいは本発明は、被験化合物がCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を評価する方法、およびこの方法に基づくスクリーニング方法に関する。更に本発明は、これらの方法に有用な、基質化合物、抗体、あるいはCdc7−ASK複合体、若しくはそれらの調製方法に関する。
〔1〕次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の測定方法。
a)基質蛋白質を、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件下でCdc7−ASK複合体と接触させる工程、;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である、
b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
c)前記リン酸化のレベルをを指標としてCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を測定する工程
〔2〕リン酸化のレベルを、前記セリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体の結合のレベルに基づいて測定する〔1〕に記載の方法。
〔3〕Cdc7−ASK複合体が、生体試料に由来する〔1〕に記載の方法。
〔4〕次の工程を含む、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響の測定方法。
a)被験化合物、基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを、次のi)〜iii)のいずれかに記載の順序で接触させる工程、;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である
i)被験化合物と基質蛋白質とを接触後にCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる
ii)被験化合物の共存下で、基質蛋白質とCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる、
iii)基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを接触後に、被験化合物を接触させる
b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
c)前記リン酸化のレベルをを指標として、被験化合物のCdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程
〔5〕次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を調節する作用を有する化合物のスクリーニング方法。
a)〔4〕に記載の方法によって、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程、および
b)被験化合物を接触させない対照と比較して、リン酸化レベルが高い、または低い被験化合物を選択する工程
〔6〕〔5〕のb)において、リン酸化レベルが低い化合物を選択する、〔5〕に記載のスクリーニング方法。
〔7〕〔6〕のスクリーニング方法によって選択される化合物を有効成分として含有する、細胞増殖の抑制剤。
〔8〕次の要素を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性測定用キット。
a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列の17位のセリン残基を含み、かつ当該アミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する基質蛋白質、および
b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体
〔9〕次の要素を含む、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を評価するためのキット。
a)Cdc7−ASK複合体活性物質、および
b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列の17位のセリン残基を含み、かつ当該アミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する基質蛋白質、
〔10〕次の工程を含むCdc7−ASK複合体活性物質の製造方法。
a)ヒトCdc7蛋白質をコードするDNAと、配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAとを、モノシストロニックに発現可能な状態で原核細胞に導入する工程、
b)前記2つのDNAを発現させる工程、および
c)発現された蛋白質を回収する工程、
〔11〕配列番号:1に示すアミノ酸配列を有する蛋白質の17位セリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体
〔12〕以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の蛋白質。
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、
(b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列から選択され、かつ17位のセリンを含む連続するアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
(d)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
〔13〕配列番号:10に記載のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:9に記載のアミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する蛋白質。
〔14〕配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる、〔13〕に記載のポリペプチド。
あるいは本発明は、〔6〕のスクリーニング方法によって選択される化合物を投与する工程を含む、細胞増殖の抑制方法に関する。また本発明は、〔6〕のスクリーニング方法によって選択される化合物の、細胞増殖の抑制剤の製造における使用に関する。
本発明は、次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の測定方法に関する。
a)基質蛋白質を、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件下でCdc7−ASK複合体と接触させる工程;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である
b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
c)前記リン酸化のレベルをを指標としてCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を測定する工程
本発明において、基質蛋白質としては、配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質が用いられる。
MCM2蛋白質の構造は公知である。ヒトMCM2のアミノ酸配列とそれをコードするcDNAの塩基配列を、配列番号:2および配列番号:3にそれぞれ示した。Cdc7−ASK複合体は、配列番号:3に示すヒトMCM2の、特定のアミノ酸残基をリン酸化する。Cdc7−ASK複合体が、MCM複合体、あるいはフリーのMCM2をリン酸化することは、既に本発明者らによって明らかにされている。しかし、MCM2のN末端から数えて17番目に位置するセリンが、Cdc7−ASK複合体によって特異的にリン酸化されることは、本発明者らが明らかにした新規な知見である。
したがって、17位セリンを含み、配列番号:3に示すアミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を含む蛋白質は、Cdc7−ASK複合体によるリン酸化が可能な限り、本発明における基質蛋白質に用いることができる。この他本発明の基質蛋白質として、たとえば次の蛋白質を用いることができる。基質蛋白質には、タグを付加することができる。また後に述べるように、基質蛋白質を固相に結合させておくこともできる。
(a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、
(b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列から選択され、かつ17位のセリンを含む連続するアミノ酸配列からなる蛋白質、
(c)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
(d)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
本発明において、ある蛋白質がCdc7−ASK複合体によってリン酸化されることは、たとえば実施例に記載したような反応の結果に基づいて、確認することができる。すなわち、リン酸化合物およびCdc7−ASK複合体とともに、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件(後述)の元でその蛋白質をインキュベートする。次に、その蛋白質の配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する。測定されたリン酸化のレベルが、たとえば配列番号:1に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質を基質蛋白質に用いた場合と有意な差が見られないとき、その蛋白質は、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質であると判定される。
本発明の基質蛋白質を構成するアミノ酸は、通常5以上、通常10以上、好ましくは50以上とすることができる。また基質蛋白質の大きさには制限はないが、たとえば400、通常300、あるいは200以下の短い断片とすることもできる。基質蛋白質を短い断片とすることによって、Cdc7−ASK複合体によるリン酸化をより特異的に観察することができる。
本発明において、好ましい基質蛋白質として、例えば配列番号:1のアミノ酸配列を含む蛋白質を示すことができる。配列番号:1のアミノ酸配列は、配列番号:3に示したヒトMCM2のN末端側の130アミノ酸からなる断片配列である。N末端から数えて17番目に位置するセリンが、Cdc7−ASK複合体によってリン酸化される。
この他、配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質を基質蛋白質として用いることができる。本発明において変異の対象となるアミノ酸の数は、例えば1〜10個であり、好ましくは1〜6個、更に好ましくは1〜3個である。
アミノ酸配列の変異は、人為的なものであっても、自然において生じる変異であってもよい。アミノ酸を置換する場合には、保存的置換を利用することができる。一般に蛋白質の機能の維持のためには、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸であることが好ましい。このようなアミノ酸残基の置換が、保存的置換と呼ばれている。
例えば、Ala、Val、Leu、Ile、Pro、Met、Phe、Trpは、いずれも非極性アミノ酸に分類されるため、互いに似た性質を有する。また、非荷電性のアミノ酸としては、Gly、Ser、Thr、Cys、Tyr、Asn、Glnが挙げられる。あるいは、酸性アミノ酸としては、AspおよびGluが挙げられる。更に、塩基性アミノ酸としては、Lys、Arg、Hisが挙げられる。これらの各グループを構成するアミノ酸は、互いに似た性質を有している。そのため、グループ内の他のアミノ酸に置換したときに、蛋白質の機能が維持される可能性が高い。
このような蛋白質は、配列番号:1に記載のヒトMCM2のcDNAの塩基配列に変異を導入することによって得ることができる。既知の塩基配列からなる遺伝子に変異を導入する技術は公知である。あるいは、化学合成によって目的とするアミノ酸配列からなる蛋白質を調製することもできる。
本発明の基質蛋白質において、配列番号:1に示すアミノ酸配列における17位に相当する位置にあるセリンは、Cdc7−ASK複合体のリン酸化の標的として重要である。したがって、アミノ酸配列に変異を有する蛋白質を基質蛋白質として用いる場合であっても、17位、または17位に相同な位置にあるセリンは、保存することが重要である。17位に相同な位置とは、あるアミノ酸配列を配列番号:1のアミノ酸配列と整列させたときに、配列番号:1のアミノ酸配列における17位に相当する位置に配置される位置を言う。複数のアミノ酸配列を整列させる方法は公知である。たとえば、blastなどのアルゴリズムに基づいて、異なるアミノ酸配列を整列させるさまざまなソフトウエアが実用化されている。
また本発明の基質蛋白質として、配列番号:3に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質を用いることもできる。たとえばヒトCdc7−ASK複合体は、ヒトMCM2のみならず、マウスのMCM2もリン酸化する。したがって、マウスMCM2は、本発明における基質蛋白質として利用することができる。マウスMCM2のアミノ酸配列は配列番号:5に、このアミノ酸配列をコードする塩基配列を配列番号:4に示した。マウスMCM2とヒトMCM2のホモロジーは、99%である。したがって、ヒト配列番号:3に記載のアミノ酸配列(ヒトMCM2の全長アミノ酸配列)と99%以上のホモロジーを有する蛋白質は、本発明の基質蛋白質として有用である。
ただし、本発明においては、ヒトMCM2の17位のセリン、またはこのセリンに相同な位置にあるセリンにおけるリン酸化のレベルを指標として測定している。配列番号:1や配列番号:3に示したアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列からなる蛋白質を基質蛋白質とする場合には、配列番号:1における17位、または17位に相同な位置にあるセリンを保存することが重要である。たとえばマウスのMCM2においては、26位のセリンが、17位に相同な位置にあるセリンとなる。したがって、マウスのMCM2断片を基質蛋白質に利用する場合には、26位のセリンを含むアミノ酸配列からなる蛋白質を用いるのが望ましい。
本発明の基質蛋白質は、遺伝子工学的な手法に基づいて得ることができる。すなわち、MCM2をコードするDNAを適当な発現系によって発現させることにより、目的とするアミノ酸配列を有する蛋白質を得ることができる。MCM2をコードするDNAの塩基配列は、配列番号:2に示した。
たとえば、大腸菌によってMCM2遺伝子を発現させた例を実施例に示した。発現産物は、塩析、ゲルろ過、あるいはイオン交換クロマトグラフィー等の手法を利用して精製することができる。MCM2に結合親和性を有するタグを融合させておき、このタグに対する結合親和性物質を利用したアフィニティクロマトグラフィーによる精製を利用することもできる。結合性のタグとしては、数個のヒスチジンからなるヒスチジンタグ(His−Tag)、β−D−ガラクトシダーゼ、GST(Glutathione S−transferase)、チオレドキシン、マルトース結合タンパク、Myc、Xpress、FLAG等を用いることができる。例えば、GSTを用いれば、発現した蛋白質をGlutathione Sepharose 4Bカラムなどで容易に精製することができる。
なお発現系によっては、MCM2がリン酸化された状態で回収される場合がある。基質蛋白質が発現系においてリン酸化されてしまった場合には、フォスファターゼ等のリン酸基に作用する酵素で処理することによって、蛋白質を脱リン酸化しておくこともできる。本発明の測定方法は、基質蛋白質のリン酸化を指標として測定する工程を含む。したがって、基質蛋白質の、特にCdc7−ASK複合体によってリン酸化される部位は、リン酸化されていない方が望ましい。また、目的とするアミノ酸配列からなる蛋白質を、化学的に合成する方法も公知である。
本発明のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の測定方法は、前記基質蛋白質と、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を測定すべき試料とを、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件下で接触させる工程を含む。本発明において、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件とは、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の発現に好適な条件下を言う。より具体的には、酵素活性の発現に適した温度、塩濃度、pHに調節され、かつ基質蛋白質のリン酸化のためのリン酸化合物を共存させる。酵素活性に適した条件とは、たとえば次のような条件を示すことができる。すなわち、pH7.0−7.5に調節されたHEPES緩衝液中で、上記成分を接触させることによって、このような反応条件を与えることができる。
また本発明において、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件とは、基質蛋白質のリン酸化に必要なリン酸基を有する化合物の存在下で、試料と基質蛋白質とを接触させることを言う。リン酸基は、たとえばアデノシン3リン酸(以下、ATPと記載する)を共存させることにより、供給することができる。
前記反応を構成する基質蛋白質とリン酸化合物は、試料中のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に対して過剰となるように添加するのが望ましい。一般的には、試料に含まれるCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を正確に予測することは難しい。しかし当業者は、反応に必要な成分が酵素反応に不足しないように、予め十分量の基質化合物、あるいはリン酸化合物を経験的に設定することができる。たとえば、ヒトに由来する生体試料を測定する場合には、基質蛋白質としてたとえば0.1μg以上、通常0.2〜1μgを用いる。またリン酸化合物は、ATPとしてたとえば0.01mM以上、通常0.1〜1mMとなるように添加すれば良い。なおリン酸化合物は、反応系に用いられる基質蛋白質のリン酸化に必要かつ十分な量を添加するようにする。
またリン酸化のための反応時間は、一般に10分以上、好ましくは30分以上、たとえば50−100分間の反応により、基質蛋白質の確実なリン酸化が期待できる。リン酸化に必要な時間は、基質蛋白質の使用量、反応液中のCdc−ASK複合体の活性のレベルによって変動する。当業者は、与えられた条件の元で、リン酸化に必要な反応時間を適宜設定することができる。
本発明の測定方法においては、一定時間内での基質蛋白質リン酸化のレベルが、試料中のリン酸化活性と相関する。あるいは、基質蛋白質を所定のレベルまでリン酸化するのに必要な反応時間を指標として、試料中のリン酸化活性を測定することもできる。すなわち、試料中のリン酸化活性が大きいほど、基質蛋白質のリン酸化は短時間で所定のレベルに達する。更に、基質蛋白質を所定のレベルまでリン酸化するのに必要な試料の量を指標として、試料中のリン酸化活性を測定することもできる。この態様においては、試料中のリン酸化活性の大きさに逆比例して、リン酸化に必要な試料の量は小さくなる。
なお試料中のリン酸化活性が予想をはるかに超える場合には、短時間のうちに基質蛋白質の大部分がリン酸化されてしまうことになる。このような状態では、正確にリン酸化活性を評価することができない可能性がある。したがって、このような結果となった場合には、反応に加える試料の量を少なくしたうえで改めてリン酸化活性を測定するのが望ましい。
本発明の測定方法は、基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程を含む。当該部位におけるリン酸化のレベルは、たとえば、17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化の状態を識別する抗体を使って、免疫学的に測定することができる。
より具体的には、17位に相当するセリンを含むアミノ酸配列からなる蛋白質の、リン酸化されたセリン残基を含む抗原決定基に対する結合活性と比較して、セリンの脱リン酸化によって結合活性が低下する抗体を用いることができる。あるいは逆に、リン酸化されていないセリン残基を含む抗原決定基に結合するが、当該セリン残基のリン酸化によって結合活性が低下する抗体を用いることもできる。
本発明の測定方法において、リン酸化のレベルを測定するために用いる、前記セリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体は、たとえば次のようにして得ることができる。まず免疫原には、当該セリン残基を含む連続したアミノ酸配列からなる合成ペプチドを用いることができる。免疫原とする合成ペプチドの長さは、少なくとも3以上、たとえば5以上、通常10以上、好ましくは10〜20アミノ酸とすることができる。たとえば、17位のセリンを含み、配列番号:1に記載のアミノ酸配列から選択された連続する15のアミノ酸で構成されるアミノ酸配列は、免疫原として好ましい。セリンの位置は、任意とすることができる。たとえば実施例においては、15アミノ酸の中央にセリンが位置するアミノ酸配列からなる合成ペプチドを免疫原としている。合成ペプチドは、キャリアー蛋白質と結合させることができる。キャリアー蛋白質としては、たとえばキーホールリンペットヘモシアニン等が用いられる。
免疫原における17位に相当するセリン残基は、リン酸化しておくことができる。特定のアミノ酸をリン酸化した合成ペプチドを得る方法は公知である。免疫原におけるセリンがリン酸化されていた場合には、リン酸化されたセリンに対する結合活性を有する抗体を得ることができる。
免疫原は、適当なアジュバントと混合して、免疫動物に投与される。免疫は、通常、複数回行われ、抗体価の十分な上昇を確認して、免疫動物の血液を採取する。採取された血液から回収された血清は、本発明の抗体を含む抗血清として用いることができる。抗血清からは、イムノグロブリンを精製することによって、精製抗体を得ることができる。
あるいは、免疫動物の抗体産生細胞を不死化し、目的とする反応性を有する抗体を産生するクローンを選択することによって、モノクローナル抗体を産生する細胞を樹立することもできる。たとえば、抗体産生細胞をミエローマなどと細胞融合させてハイブリドーマを作成すれば、抗体産生細胞を不死化することができる。
抗体が目的とする反応性を有することは、免疫原として用いた合成ペプチドを用いて確認することができる。たとえば、リン酸化されたセリンを含む合成ペプチドに結合する抗体を選択することによって、リン酸化した基質蛋白質を認識する抗体を得ることができる。更に、この抗体から、リン酸化していないセリンを含む合成ペプチドに結合する抗体を除くことにより、リン酸化した基質蛋白質に特異的に結合する抗体を得ることができる。このような選択工程によって、抗血清や精製抗体を処理することによって、本発明に必要な基質蛋白質のリン酸化状態を識別する抗体を得ることができる。
同様の選択工程にしたがってハイブリドーマが産生する抗体をスクリーニングすれば、基質蛋白質のリン酸化状態を識別しうるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することができる。
本発明の測定方法において、前記抗体は予め標識しておくことができる。抗体の標識によって、リン酸化部位に結合した抗体を容易に検出することができる。また、標識に由来するシグナルを増幅することができれば、より高感度な測定を期待することができる。
抗体の標識には、任意の標識成分を用いることができる。たとえば、蛍光色素、酵素、あるいは放射性物質等を標識として用いることができる。また、フェリチン、コロイド金等の電子密度の高い物質を標識に用いることもできる。
蛍光色素としては、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ローダミンβイソチオシアネート(RITC)、フィコエリトリン(PE)等が挙げられる。酵素としては、ペルオキシシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、シトクロムc等が挙げられる。放射性物質としては、125I、14C、H等が挙げられる。これらの標識成分で抗体を標識する方法は公知である。
また、リン酸化状態を識別する抗体(一次抗体)に対して結合する抗体(以下、「二次抗体」という)を用いて抗体を標識することもできる。例えば、基質蛋白質にリン酸化状態を識別する抗体を接触させた後、二次抗体を反応させる。そして、間接的に基質に結合した2次抗体量を測定し、この測定量から一次抗体の結合量を求め、そして基質のリン酸化レベルを知ることができる。たとえば一次抗体にマウスモノクローナル抗体を用いる場合には、抗マウスIgGヤギ抗体を二次抗体として用いることができる。
あるいは、一次抗体を結合親和性物質で標識しておき、この親和性物質に対する結合パートナーの親和性を利用して、抗体を間接的に標識することもできる。たとえば一次抗体をアビジン化しておけば、ビオチン化した酵素をアビジン−ビオチン間の親和性によって、抗体に酵素を結合することができる。
本発明の測定方法においては、Cdc7−ASKの基質蛋白質を予め不溶性支持体に結合させ、固相化した状態で用いることができる。基質蛋白質を固相化することにより、前記リン酸化状態を識別する抗体との結合を容易に検出することができる。つまり、基質蛋白質に抗体を接触させた後、液相を分離して固相を洗浄することにより、結合した抗体と結合しなかった抗体は容易に分離される。その後、固相(または液相)における抗体を測定すれば、基質蛋白質に結合した(またはしなかった)抗体の量を容易に測定することができる。基質蛋白質の固相への固定化は、基質蛋白質の安定化にも貢献する。
基質蛋白質を固定化するための不溶性支持体としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ナイロン樹脂等の樹脂、ガラス、やミセル粒子等の水に不溶性の物質が用いられ、特にその材質は限定されない。また、不溶性支持体の形状も特に限定されず、トレイ状、球状、棒状、繊維状、セル状、試験管状等の形状のものを採用することができる。基質蛋白質は、物理吸着、または化学結合によって不溶性支持体に固相化することができる。基質蛋白質を固相化した不溶性支持体は、必要に応じてブロッキングすることができる。ブロッキングには、アルブミンやスキムミルクなどが用いられる。不溶性支持体のブロッキングにより、抗体の不溶性支持体に対する非特異的な結合が抑制される。また、ブロッキングによって基質蛋白質の保護作用も期待できる。
本発明において、基質蛋白質と結合した(またはしなかった)抗体の量は、試料中に存在するCdc7−ASK複合体のリン酸化酵素活性と関連付けられる。より具体的には、たとえば基質蛋白質のリン酸化されたセリンを含む抗原決定基に結合する抗体を用いた場合には、基質蛋白質に結合した抗体の量は、試料中のCdc7−ASK複合体のリン酸化酵素活性の大きさに比例する。リン酸化酵素活性のレベルが予めわかっているCdc7−ASK複合体標品による測定結果との対比によって、試料中のリン酸化酵素活性を定量的に知ることもできる。
本発明は、基質蛋白質のCdc7−ASKによる被リン酸化領域におけるリン酸化の状態に基づいて、そのキナーゼ活性を測定している。したがって、試料中に共存する可能性があるその他のリン酸化作用を有する物質の影響を受けることなく、Cdc7−ASKのキナーゼ活性を特異的に測定することができる。その結果、本発明の方法に基づいてCdc7−ASKのキナーゼ活性を測定することによって、細胞増殖の状態を特異的に検知することができる。
Cdc7−ASKは、細胞周期においては、特にS期に高い活性を維持し、G1期には活性が低下する。したがって、Cdc7−ASKのキナーゼ活性の測定は、細胞のG1期からS期への移行の指標として有用である。S期は細胞の増殖に備えて核酸の複製が進行する時期である。したがって、たとえばある生体試料中の細胞にS期にある細胞が多く見出されることは、その試料では、細胞の増殖が進行していることを意味している。より具体的には、癌組織中に本発明の測定方法によってCdc7−ASKのキナーゼ活性の高い細胞が多く見出されれば、その癌組織には活発に増殖している細胞が多く含まれることを示している。つまり、悪性度の高い癌である可能性がある。
また本発明は、次の工程を含む、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響の測定方法に関する。
a)被験化合物、基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを、次のi)〜iii)のいずれかに記載の順序で接触させる工程、;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である
i)被験化合物と基質蛋白質とを接触後にCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる
ii)被験化合物の共存下で、基質蛋白質とCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる、
iii)基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを接触後に、被験化合物を接触させる
b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
c)前記リン酸化のレベルをを指標として、被験化合物のCdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程
上記方法において、Cdc7−ASK複合体活性物質とは、Cdc7−ASK複合体と機能的に同等な複合体を言う。より具体的には、Cdc7−ASK複合体活性物質とは、基質蛋白質における被リン酸化セリンをリン酸化する作用を有する複合体と定義される。したがって、複合体を構成するCdc7、あるいはASKが、ヒト由来の蛋白質とは異なる構造を有するものであっても、当該活性を有する複合体を構成する場合には、本発明のCdc7−ASK複合体活性物質として利用することができる。
ある蛋白質複合体が、基質蛋白質における被リン酸化セリンをリン酸化する作用を有することは、たとえば実施例に示すような方法に基づいて確認することができる。すなわち、前記基質蛋白質とその蛋白質複合体とを、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件下でインキュベートする。インキュベート後の基質蛋白質のリン酸化のレベルが、ヒトCdc7−ASK複合体とインキュベートした場合と比較して、有意な差が見られない場合に、その蛋白質複合体は、Cdc7−ASK複合体と機能的に同等であると判定される。
ヒトに由来するCdc7とASKの構造は公知である。ヒトCdc7をコードするcDNAの塩基配列を塩基配列:6に、またヒトCdc7のアミノ酸配列を配列番号:7に示した。またヒトASKをコードするcDNAの塩基配列を配列番号:8に、またヒトASKのアミノ酸配列を配列番号:9に示した。これら公知のCdc7、あるいはASKに対して、本発明のCdc7−ASK複合体活性物質を構成する各サブユニットとして、たとえば次のような蛋白質を用いることができる。本発明において、天然のヒトCdc7、あるいはヒトASKと異なる構造を有するが、キナーゼ活性を有するCdc7−ASK複合体活性物質を構成することができるサブユニットを、それぞれCdc7サブユニット、およびASKサブユニットと言う。
まずCdc7サブユニットとしては、以下のポリヌクレオチドによってコードされ、前記ヒトASKとの複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質を用いることができる。
(a)配列番号:6に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:7に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号:7に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、前記ヒトASKとの複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号:6に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記ヒトASKとの複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
本発明において、上記ポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質が、前記ヒトASKとの複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成することは、次のようにして確認することができる。すなわち、まず上記ポリヌクレオチドをヒトASKをコードする塩基配列からなるDNAとともに適当な宿主細胞で共発現させる。得られた発現産物について、たとえば実施例に記載したような方法によって、リン酸化活性を評価し、Cdc7−ASKが有するリン酸化活性と比較する。その結果、両者のリン酸化活性に有意な差が見られない場合には、その複合体を構成するCdc7サブユニットは、前記ヒトASKとの複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質であると判断される。
一方、ASKサブユニットとしては、以下のポリヌクレオチドによってコードされ、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質は、本発明のCdc7−ASK複合体活性物質を構成するASKサブユニットとして用いることができる。
(a)配列番号:8に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチド、
(b)配列番号:9に記載のアミノ酸配列をコードする塩基配列を含むポリヌクレオチド、
(c)配列番号:9に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
(d)配列番号:8に記載の塩基配列のコード領域を含むポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質をコードするポリヌクレオチド
本発明において、上記ポリヌクレオチドによってコードされる蛋白質が、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成することは、次のようにして確認することができる。すなわち、まず上記ポリヌクレオチドをヒトCdc7をコードする塩基配列からなるDNAとともに適当な宿主細胞で共発現させる。得られた発現産物について、たとえば実施例に記載したような方法によって、リン酸化活性を評価し、Cdc7−ASKが有するリン酸化活性と比較する。その結果、両者のリン酸化活性に有意な差が見られない場合には、その複合体を構成するASKサブユニットは、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質であると判断される。
たとえば本発明者らは、ヒトASKを構成する674個のアミノ酸配列中、N末端側からカウントして174−349の位置に相当するアミノ酸配列からなる蛋白質は、Cdc7との複合体の形成と、キナーゼ活性の発現に必須の領域であることを明らかにした。当該領域を構成するアミノ酸配列を配列番号:10に示した。このようなヒトASK蛋白質の断片は、前記活性を有する限り、本発明におけるCdc7−ASK複合体活性物質を構成するASKサブユニットとして用いることができる。
本発明において、上記のCdc7サブユニット、あるいはASKサブユニットをコードするポリヌクレオチドは、任意のcDNAライブラリからPCRやハイブリダイズスクリーニングによって取得することができる。cDNAライブラリーとしては、ヒトをはじめとして、マウスやラットなどのヒト以外の哺乳動物、あるいは線虫や分裂酵母などの真核細胞に由来するライブラリーを用いることができる。
本発明のCdc7−ASK複合体活性物質は、細胞から抽出することもできるし、遺伝子工学的手法によって製造することもできる。遺伝子工学的な手法による製造方法は、多量の蛋白質を容易に得ることができるので望ましい。本発明のCdc7−ASK複合体活性物質として、たとえば昆虫細胞で発現させたヒトCdc7とASKからなる複合体を用いることができる。
たとえば本発明者らは、このような複合体の製造に既に成功している(J.Biol.Chem.Vol.275,No.37,29042−29052,2000)。より具体的には、たとえば次の工程a)−c)にしたがって昆虫細胞を利用して、本発明に用いるCdc7−ASK複合体活性物質を得ることができる。
a)ヒトCdc7サブユニットをコードするDNAと、ヒトASKサブユニットをコードするDNAとを昆虫細胞に導入するステップ、
b)前記昆虫細胞において、導入した前記二つのDNAを共発現させるステップ、及び
c)発現された蛋白質(複合体)を精製するステップ、
前記ステップa)で用いられるヒトCdc7サブユニットをコードするDNAは、前記a)−e)に記載のいずれかのポリヌクレオチドを用いることができる。また、その形態も限定されず、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAが含まれる。例えば、ヒトCdc7サブユニットをコードするDNAとして、配列番号:6に示した塩基配列を有するDNAを利用することができる。
同様に、ステップa)で用いられるヒトASKサブユニットをコードするDNAは、前記a)−e)に記載のいずれかのポリヌクレオチドを用いることができる。例えば、ヒトASK蛋白質をコードするDNAとして、配列番号:8に示した塩基配列を有するDNAを利用することができる。
昆虫細胞には、Spodoptera Frugiperda由来のSf9細胞やSf21細胞、Trichoplusiani由来のTn5細胞を用いることができる。これらの細胞は市販されており(Invitrogen社製、Phamingen社製)、またATCCから入手することもできる。Cdc7サブユニット、およびASKサブユニットをコードするDNAは、バキュロウイルスを利用して昆虫細胞へ導入することができる。たとえば、トランスファーベクターへこれらのDNAをサブクローニングし、得られたプラスミドとバキュロウイルスDNAとを同時に昆虫細胞にトランスフェクションすることによって、相同組み換えにより組換え体ウイルスが作製される。この組換え体ウイルスを昆虫細胞に感染させ、昆虫細胞内でCdc7サブユニットとASKサブユニットとを共発現させる。発現される蛋白質量を増大させるために、この蛋白質の発現に先立って組換え体ウイルスの精製、増幅などを行うことが好ましい。
トランスファーベクターとしては、市販のpVL1392(Pharmingen社製)、pPAK8(Clontech社製)、pAcUW51(Pharmingen社製)、pAcUW31(Clontech社製)、pAcAB3(Pharmingen社製)などを用いることができる。特に、Cdc7サブユニットおよびASKサブユニットを同時にサブクローニングできるものはトランスファーベクターとして好ましい。たとえば、pAcUW51(Pharmingen社製)などのプロモーターを2つ有するトランスファーベクターや、pAcAB3(Pharmingen社製)などのプロモーターを3つ有するトランスファーベクターを利用することにより、2つの遺伝子をサブクローニングすることができる。あるいは、Cdc7サブユニット、およびASKサブユニットをサブクローニングするトランスファーベクターとしてそれぞれ異なるものを利用することもできる。
また、バキュロウイルスDNAとしては、BaculoGold Linearized Baculovirus DNA(商品名、Pharmingen社製)、野生型Baculovirus AcNV DNA(Pharmingen社製、Invitrogen社製)などを用いることができる。尚、バキュロウイルスを利用した発現系については各種キットが市販されており、それらを利用してもよい。
以上のトランスファーベクターとバキュロウイルスとを用いて、外来遺伝子であるCdc7サブユニットとASKサブユニットの遺伝子を昆虫細胞において共発現させることができる。発現可能な条件下で形質転換細胞を培養し、発現生成物を回収することにより、本発明に用いるCdc7−ASK複合体活性物質を得ることができる。回収を容易にするために、Cdc7およびASKのいずれか、あるいは両方に、適当なタグを融合させておくこともできる。
また、次に述べる方法にしたがって、原核細胞において、Cdc7サブユニットとASKサブユニットの複合体を得ることもできる。たとえば原核細胞として大腸菌を用いる場合には、以下の工程により、Cdc7−ASKキナーゼ複合体活性物質を調製することができる。
A)ヒトCdc7サブユニットをコードするDNAと、配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAとを、モノシストロニックに発現可能な状態で大腸菌に導入する工程、
B)前記二つのDNAを発現させる工程、および
C)発現された蛋白質を回収する工程、
本発明者らの検討によれば、大腸菌の系においてはヒトASK蛋白質の全長ではなく部分ASK(配列番号:10)を導入して発現させることにより、最終的にキナーゼ活性を有するCdc7−ASK複合体活性物質を取得することができた。また本発明において、配列番号:10に示すアミノ酸配列からなる蛋白質と機能的に同等な蛋白質とは、Cdc7サブユニットと複合体を構成してキナーゼ活性を発現することができる蛋白質を言う。
ある蛋白質がCdc7サブユニットと複合体を構成してキナーゼ活性を発現することは、次のようにして確認することができる。すなわち、まずその蛋白質をコードするDNAをヒトCdc7をコードする塩基配列からなるDNAとともに適当な宿主細胞で共発現させる。得られた発現産物について、たとえば実施例に記載したような方法によって、リン酸化活性を評価し、Cdc7−ASKが有するリン酸化活性と比較する。その結果、両者のリン酸化活性に有意な差が見られない場合には、その複合体を構成するASKサブユニットは、前記ヒトCdc7との複合体を形成して基質蛋白質のリン酸化作用を有する複合体を構成する蛋白質であると判断される。
機能的に同等な蛋白質として、配列番号:10に示すアミノ酸配列と90%以上の相同性を有し、前記活性を保持した蛋白質を示すことができる。また、配列番号:10に示すアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、前記活性を保持した蛋白質は、機能的に同等な蛋白質に含まれる。変異を加えるアミノ酸の数は、通常20以下、たとえば10以下、好ましくは5以下、たとえば1〜3である。アミノ酸は、保存的置換により置換することができる。本発明における機能的に同等な蛋白質には、配列番号:10に示すアミノ酸配列にタグを融合させた蛋白質が含まれる。
工程A)では、上記と同様のヒトCdc7サブユニットをコードするDNAと、ヒトASKサブユニットの断片配列をコードするDNA(以下、略して「部分ASK」ともいう)が使用される。断片配列からなる蛋白質には、配列番号:10に示すアミノ酸配列からなる蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質を用いる。配列番号:10のアミノ酸配列は、配列番号:9に示すアミノ酸中、174番目のアミノ酸から349番目のアミノ酸までのアミノ酸配列に相当する部分配列である。配列番号:11に記載のアミノ酸配列は、配列番号:10に記載の塩基配列によってコードされている。配列番号:10に記載の塩基配列は、配列番号:8に示す塩基配列の1027位〜1564位の塩基に相当する部分塩基配列である。このアミノ酸配列を含む蛋白質の断片は、ヒトCdc7と複合体を形成しキナーゼ活性の発現に必要な領域である。ここで、部分ASKは部分ASK蛋白質をコードする限りその配列は限定されず、コドンの縮重を考慮した任意の塩基配列を有するDNAが含有される。また、その形態も限定されず、cDNA、ゲノムDNA、合成DNAが含有される。
本発明において、モノシストロニックに発現可能な状態とは、Cdc7サブユニットをコードするDNAとASKサブユニットをコードするDNAとが、1つのmRNA分子として転写され、2つの蛋白質分子に翻訳されることを言う。モノシストロニックに発現させるためには、これらのDNAを共通の転写制御領域の制御下に発現できるように配置する。また、2つの遺伝子の間にターミネータなどの転写を終結させる塩基配列が介在しないようにデザインする。更に、2つの遺伝子は接近して配置することが望ましい。ただし、両者の翻訳フレームが連続すると、1つの融合蛋白質として翻訳されてしまうので、両者の間には終止コドンを配置する。
またmRNA上の2つの蛋白質コード領域に対してそれぞれの翻訳を効率的に行わせるために、2つの遺伝子の間にRBS(リボソーム結合配列−Shine−Dalgano配列)を配置することは有効である。実施例において、ヒトCdc7と、配列番号:10にアミノ酸配列からなるヒト部分ASK蛋白質とを、大腸菌においてモノシストロニックに発現させるためのコンストラクトを示した。コンストラクトの構築に用いるベクターは、制限されない。具体的には、たとえば、実施例に示したようなpGEX−2Tなどの市販のベクターのクローニングサイトに、Cdc7サブユニットと、ASKサブユニットをコードするDNAを順次クローニングすることによって、これらをモノシストロニックに発現可能なベクターとすることができる。
このようなベクターコンストラクトを、定法により大腸菌に形質転換し、その培養物から発現産物を回収することにより、目的とするCdc7−ASK複合体活性物質を得ることができる。
発現産物は、塩析、ゲルろ過、あるいはイオン交換クロマトグラフィー等の手法を利用して精製することができる。これらの遺伝子工学的手法による複合体の製造方法においては、複合体を構成するサブユニットのいずれか、あるいは両方に、タグを融合させることができる。サブユニットに結合親和性を有するタグを融合させておき、このタグに対する結合親和性物質を利用したアフィニティクロマトグラフィーによる精製を利用することもできる。結合性のタグとしては、数個のヒスチジンからなるヒスチジンタグ(His−Tag)、β−D−ガラクトシダーゼ、GST(Glutathione S−transferase)、チオレドキシン、マルトース結合タンパク、Myc、Xpress、FLAG等を用いることができる。例えば、GSTを用いれば、発現した蛋白質をGlutathione Sepharose 4Bカラムなどで容易に精製することができる。
本発明の測定方法に用いる基質蛋白質としては、先に述べた本発明によるキナーゼ活性測定用の基質蛋白質を用いることができる。本発明において、被験化合物は、前記のi)−iii)に記載のいずれかの順序で、基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質と接触させられる。
i)被験化合物と基質蛋白質とを接触後にCdc7−ASK複合体活性物質を接触させることによって、被験化合物の基質蛋白質に作用してキナーゼ活性を修飾する作用を見出すことができる。ii)被験化合物の共存下で、基質蛋白質とCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる場合には、Cdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性に対する競合阻害活性を評価することができる。更に、iii)基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを接触後に、被験化合物を接触させることにより、リン酸化された基質蛋白質に対する被験化合物の脱リン酸化作用を検出することができる。
本発明において、基質蛋白質のリン酸化のレベルは、先に述べた本発明のキナーゼ活性の測定方法と同様の方法にしたがって測定することができる。たとえば、基質蛋白質の被リン酸化部位におけるリン酸化の状態を識別する抗体によって、リン酸化のレベルが測定される。
リン酸化のレベルの測定の結果は、被験化合物のCdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性に与える影響と関連付けられる。たとえば、被験化合物を接触させない対照と比較してリン酸化のレベルが低下した場合、被験化合物はリン酸化に対して阻害的に作用する活性を有すると結論付けられる。また被験化合物によってリン酸化のレベルが上昇する場合には、当該化合物がCdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性を促進する作用を有すると結論付けられる。
リン酸化レベルは、被験化合物を接触させない対照のみならず、キナーゼ活性に対する作用が明らかな化合物の測定結果と比較することもできる。たとえば、キナーゼ活性に対する阻害作用を見出すことを目的とする場合、一定の阻害作用を有することが予め確認されている化合物との比較によって、被験化合物の阻害作用の大きさを評価することもできる。更に、予めキナーゼ活性に対する阻害作用が明らかな物質について上記測定方法を実施しておき、その結果を被験化合物の測定結果と対比させることによって、その作用を定量的に評価することもできる。
本発明による被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響の測定方法に基づいて、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を調節する作用を有する化合物のスクリーニング方法を実施することができる。すなわち本発明は、次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を調節する作用を有する化合物のスクリーニング方法に関する。
a)前記方法によって、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程、および
b)対照と比較して、リン酸化レベルが高い、または低い被験化合物を選択する工程
本発明のスクリーニング方法において、リン酸化レベルは、被験化合物を接触させない対照のみならず、キナーゼ活性に対する作用が明らかな化合物の測定結果と比較することもできる。たとえば、キナーゼ活性に対する阻害作用を見出すことを目的とする場合、一定の阻害作用を有することが予め確認されている化合物との比較によって、被験化合物の阻害作用の大きさを評価することもできる。比較の結果、より阻害作用の大きな化合物を選択することによって、一定の水準以上の阻害作用を有する化合物をスクリーニングすることができる。
本発明のスクリーニング方法において、被験化合物としては、たとえば天然または合成された蛋白質、ペプチド、抗体、動植物や細菌の細胞抽出物、培養上清、あるいは低分子化合物などを用いることができる。これらの被験化合物は、化合物ライブラリーや、遺伝子ライブラリーから得ることもできる。
天然成分を被験化合物に用いる場合には、当業者に公知の方法(例えば、各種クロマトグラフィー)によりこれらを分画して、それぞれ検出を行うことにより、キナーゼ活性を阻害する単一の化合物を最終的に特定することが可能である。これらスクリーニングにより単離されたキナーゼ活性を阻害もしくは促進する化合物は、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の活性調整剤として利用することができる。
Cdc7−ASK複合体は、生体内においては細胞増殖におけるキーポイントとなっている。したがって、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の調節によって、細胞増殖を制御することができる。たとえば、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を阻害する化合物は、細胞増殖の抑制剤として有用である。より具体的には、本発明のスクリーニング方法によって選択されたCdc7−ASK複合体に対する阻害作用を有する化合物は、がんのような増殖を抑制すべき細胞の制御に有用である。
本発明のスクリーニング方法では、Cdc7−ASK複合体による基質蛋白質のリン酸化を特異的に検出している。その結果、本発明のスクリーニング方法によって選択される化合物のCdc7−ASK複合体に対する作用は、より特異的であると言うことができる。このような化合物は、たとえば癌の制御に用いる場合も、増殖段階にある細胞に対して特異的に作用することから、増殖性の細胞に対する選択性の高い薬剤として期待できる。
これらの化合物は、特にがん治療薬の候補化合物として有用である。本発明のスクリーニング法により単離される化合物を、キナーゼ活性の活性調整剤として用いる場合には、公知の製剤学的製造法により製剤化して用いることも可能である。例えば、薬理学上許容される担体または媒体(生理食塩水、植物油、懸濁剤、界面活性剤、安定剤など)とともに患者に投与される。投与は、化合物の性質に応じて、経皮的、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、静脈内、または経口的に行われる。投与量は、患者の年齢、体重、症状、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適宜適当な投与量を選択することが可能である。
加えて本発明は、上記測定方法、またはスクリーニングに用いる、質基質のリン酸化状態を識別することができる抗体を含むキットに関する。本発明のキットは、キナーゼ活性の検出に用いる場合には、前記抗体以外に、例えば基質蛋白質および緩衝液等で構成される。またキナーゼ活性を阻害もしくは促進する化合物のスクリーニングに用いる場合には、さらにCdc7−ASK複合体活性物質を組み合わせる。基質蛋白質、あるいは前記抗体のいずれかは、上記のような標識を付与することができ、他方を固相化しておくことができる。
キットには、Cdc7−ASK複合体活性物質の活性や、測定系そのものの検定のために、酵素標品や基質蛋白質標品を組み合わせることができる。これらの標品や、前記抗体には、安定化などのための他の成分を加えることができる。例えば、1%程度のBSA、および終濃度0.2〜10%(好ましくは1%)のシュークローズ、フルクトースなどのポリオール類を、標品中に凍結乾燥後の蛋白質変性防止剤として添加することができる。
なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
実施例を構成する汎用されている手法は、全て下記の成書に従って行った。実施例で用いられている実験方法は、様々な成書に紹介されている方法を用いれば良く、何ら制限は無い。
J.Sambrook,E.F.Fritsch & T.Maniatis(1989)Molecular Cloning,a laboratory manual,second edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press Ed Harlow and David Lane(1988)Antibodies,a laboratory manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press
大海忍、辻村邦夫、稲垣昌樹(1994)細胞工学別冊 実験プロトコールシリーズ抗ペプチド抗体実験プロトコール 株式会社 秀潤社
右田俊介、紺田進、本庶佑、濱岡利之(1995)免疫実験操作法I・II,株式会社 南江堂
(1)ASK活性ドメインの特定
本発明者らは、分裂酵母のHsk1−Him1/Dfp1を材料として、詳細な変異体解析を行った結果、Dbf4−motif−mとDbf4−motif−Cのみあれば、キナーゼ活性化に十分であることを報告している(Ogino K.et al.,J Biol.Chem.276:31376−31387,2001)。分裂酵母のHsk1−Him1/Dfp1は、ヒトCdc7−Dbf4に相当する複合体である。この事実に基づいて、ヒトASKにおいてもmotif−Mとmotif−Cのみを含む最小ドメインでキナーゼ活性化に十分であろうと予想した。ヒトASK、出芽酵母Dbf4、および分裂酵母Him1/Cfp1における、motif−Mとmotif−Cの配置を比較した結果を図1に示す。
具体的には、配列番号:9に示すヒトASKのアミノ酸配列から、173から349番目に相当するアミノ酸配列(配列番号:10)を選択した。この領域をコードするDNAは、ちょうどintronで分断されている。イントロンの存在箇所は、機能的ドメインあるいは機能的モジュールの切れ目であることが多いと提唱されているため、この領域を選択した。
(2)Cdc7−ASK複合体活性物質発現用のベクター
大腸菌において、ヒトCdc7とASKの活性ドメインを発現させるために、GST−TAT−ASK(minimum)−HA−huCdc7というプラスミドを作製した。まずGST−TAT−ASK融合蛋白質発現ベクターGST−TAT11を作製した。その後、ASKの下流に制限酵素サイト(NotI)を導入し、このサイトにHA−Cdc7を挿入した。そのさい、HA−Cdc7の直前にRBS(リボソーム結合配列−Shine−Dalgano配列)を付加した。強力なRBSの付加により、GST−TAT−ASKからHA−Cdc7まで一続きで転写され、ひとつの転写産物から2つの蛋白質をともに効率良く翻訳することができた。具体的な操作は次に示すとおりである。
以下の2つのプライマーを用いて、ヒトASKのcDNAから173から349番目のアミノ酸をコードする領域をPCR法によって増幅した。
Figure 2003076623
得られた増幅生成物を精製し、GST−TAT11ベクターにクローニングした。このベクターには、GST−TAT−HindIII−ASK−EcoRIの順に各領域が配置されている。GST−TAT11ベクターとしては、pGEX−2T−Tat11−TKベクターを用いた。このベクターは、11アミノ酸からなるTAT配列(YGRKKRRQRRR/配列番号:13)がGSTベクターに挿入された構造を有している。TKのHindIII−EcoRIサイトを消化して、別にPCRで増幅しておいたminimum ASKを挿入することができる。HindIIIのフレームはAAG CTTとなることから、このベクターではEcoRIサイトのすぐ下流に3FRAMEで停止コドンに達するため、翻訳はすぐに終了する。
次にEcoRI−NotIアダプター(AATTGCGGCCGC/配列番号:14)を用いて、GST−TAT−HimdIII−ASK−EcoRIのEcoRIをNotIに置換した。続いて、次のプライマーを用いてヒトCdc7のcDNAからコード領域の全長を増幅した。
Figure 2003076623
huCdc7−RBS−N(NotI)の塩基配列中、RBSとATGに相当する領域を小文字で示した。ATG以下の塩基配列でコードされるアミノ酸配列は、MYPYDVPDYAFSPQRD(配列番号:17)となり、このうちMYPYDVPDがHAエピトープに相当する。このベクターでは、HAタグに続いてヒトCdc7の14番目以降のアミノ酸配列を連結したアミノ酸配列からなる蛋白質が発現される。先に述べたように強力なRBSを付加したため、2つの遺伝子はともに翻訳される。
なお、Cdc7については野生型とキナーゼ失活型を作製した。キナーゼ失活型はK90Eと呼ばれる、90番目のアミノ酸リジン(K)をグルタミン酸(E)に変異させたアミノ酸配列をからなる。
(3)細菌におけるCdc7−ASK複合体活性物質の発現と精製
(2)で構築したベクターGST−TAT−ASK(minimum)−HA−huCdc7を、大腸菌C600lon−に常法により形質転換した。C600lon−は、大腸菌の主要なプロテアーゼであるlonを欠損した大腸菌株である。
形質転換した大腸菌は、40μg/mlのアンピシリンを含有するLB培地200mlに接種し、37℃で培養した。培養液のOD600が0.5になったところで、IPTGを1mMになるように添加し、さらに3時間培養した。菌を遠心で回収し、洗浄後、20mlのbufferA(40mM Hepes/KOH[pH7.6]1mM EDTA,40mM potassium glutamate,10% glycerol,1mM DTT)に懸濁した。超音波処理で細胞を破壊した後、遠心で可溶性画分と沈澱(不溶性画分)に分画した。可溶性画分に1mlのglutathione Sepharose 4Bを添加した。4℃で1時間かくはんした後、遠心によってglutathione Sepharose 4Bを回収し、簡易カラムに詰めてbufferAでよく洗浄した。カラムボルームの20倍量以上のbufferAを用い、溶出液のOD280が0.01以下になるまで洗浄した。その後、20mM glutathioneを含有するbufferA、引き続いて50mM glutathioneを含有するbuffer Aで溶出した。
最終的に溶出された画分をSDS−PAGEで分離後に銀染色したところ、GST−ASK(約50kDa)および、HA−Cdc7(約65kDa)が精製されていることが確認された。
(4)細菌によるMCM2(1−130)の発現と精製
Jurkat cellから、ISOGEN(ニッポンジーンCat No.311−02501)を用いてtotal RNAを調製し、You−Prime First−Strand Beads(アマシャムファルマシア社Cat No.27−9264−01)を用いてcDNAを作製した。このcDNAを鋳型として、Expand High Fidelity PCR System(ベーリンガーマンハイム社Ca No.1732−650)と下記のプライマーを用いてヒトMcm2(1−130)のcDNAを増幅した。得られた390bpのPCR産物を制限酵素BamHIとXhoIで消化後、大腸菌の発現ベクターであるpGEX−4T−1(アマシャムファルマシア社)のBamHI/XhoIサイトにクローニングした。塩基配列を決定し、得られたcDNAの配列がヒトMCM2(1−130)であることを確認した。PCRに使用したプライマーを以下に示す。
Figure 2003076623
MCM2(1−130)/pGEX−4T−1を大腸菌DH5aに、形質転換した。その大腸菌を30℃で約5時間培養した後、吸光度(600nm)が0.8になったところで培養温度を20℃に下げ、終濃度が0.2mMになるようにIPTGを加え、20℃、16時間培養後、集菌した。集めた大腸菌は、氷冷の可溶化緩衝液(PBS,0.1%TritonX100,1mM PMSF)でけん濁し、氷中で超音波破砕機を用いて溶解した。溶解した粗抽出液を高速遠心機で15000回転30分間遠心して、可溶性画分と不溶性画分とを分離した。それぞれをSDS−PAGE電気泳動を行ってGST−fusion Mcm2(1−130)が可溶性画分にあることを確認した。2mlのGSH−Sepharose 4B(アマシャムファルマシア)充填したカラムに可溶性画分を添加した後、洗浄液(20mM Tris−HCl pH7.9,0.5M NaCl,5mM imidazole)50mlで洗浄し、溶出液(10mM Glutathione,50mm Tris−HCl,pH9.6)で2mlずつ10本溶出した。吸光度(A280nm)を測定し0.1以上を集めて氷冷のPBSに一晩透析した。透析した蛋白は、抗MCM2特異抗体を用いたWestern Blottingにより、GST−fusion MCM2(1−130)であることを確認した。
(5)MCM2の被リン酸化部位の特定
まずヒト、マウス、カエル、ショウジョウバエ、分裂酵母、出芽酵母などの、MCM2の一次構造をアラインし、保存されているセリン、スレオニン残基を同定した。機能的に重要なリン酸化部位は種を越えて保存されているだろうという仮定に基づいている。これらの保存セリン、スレオニン残基が比較的クラスターを形成して数多く存在する部を8ケ所(F1,F2,F3,F4,F5,F6 NF1,NF2)選定した。
各領域について、それぞれの部位で4−7残基のセリン、スレオニン残基をアラニンあるいは、グルタミン酸に置換した変異MCM2を作製した。変異体の作製は、オリゴヌクレオチドを用いた方法によった。これを、昆虫細胞発現ベクターUW31上にクローン化した。UW31は2種類の遺伝子産物を同時に発現することが可能なベクターであり、histidine−tagのついたMCM7とともに、各種変異MCM2を共発現する組み換えウィルス溶液を得た。Histidine−tagのMCM4とMCM6を共発現する組み換えウィルス溶液とともに、昆虫細胞Sf9に共感染し、細胞抽出液を作製した。これから、ニッケルカラムによりMCM2−4−6−7複合体のaffinity精製をおこなった。
目的のMCM2−4−6−7複合体が溶出している画分をプールした。次にmonoQカラム(PharmaciaのSMARTシステムを使用)によりさらに、MCM2−4−6−7複合体を精製した。0.3−0.35M NaClに溶出されるピーク画分をプールし、透析し塩濃度を低下させてから、in vitroリン酸化反応の基質として使用した。
また、同時に、これらの保存部位の一部を含むポリペプチドをhistidine−tagあるいはGST−tag付きで作製し、大腸菌で発現し、精製した。これらの作製は、制限酵素サイトを付加したプライマーオリゴヌクレオチドで目的のコード領域を増幅し、histidine−tag発現ベクター(pT7−7/pQE30)あるいは、GST−fusion発現ベクター(pGEX−5X−3)にクローン化した。野生型およびアラニン置換変異体を発現した。これらの発現ベクターをDE3あるいは、C600lon−株にそれぞれ導入し、発現誘導し、ニッケルカラムあるいはglutathione Sepharose beadsカラムでaffinity精製をおこなった。これらの蛋白質もin vitroリン酸化反応の基質として使用した。
変異体MCM2を含むMCM2−4−6−7蛋白質複合体を基質として用いた場合には、どの変異体においても、リン酸化が完全に消失することはなかった。そこで、リン酸化された野生型および変異体MCM2をトリプシン消化の後、2次元クロマトグラフィーにより展開し、スポットが消失するかどうかを解析し、リン酸化部位を限定した。
また、MCM2はin vivoにおいてもin vitroにおいても、Cdc7によりリン酸化される結果SDS−PAGE上で移動度が下方にシフトする。この現象を指標として、シフトが消失する変異体の同定を試みた。
これらの結果から、MCM2のN端のCdkおよびCdc7によるリン酸化部位(S27/S41およびS26/S40)があることを同定した。さらにこのリン酸化が、SDS−PAGE上でシフトの原因となっていることを明らかにした。マウスMCM2の26位のセリン残基(S26)に相当するヒトMCM2の17位のセリン残基(S17)は、N末端130アミノ酸ポリペプチドを基質にした場合に効率よくCdc7によりリン酸化されることが明らかとなった。この結果に基づいて、ヒトMCM2のN末端130アミノ酸(配列番号:1)からなる蛋白質を、後述のELISA測定法のための基質蛋白質として使用することにした。
(6)抗リン酸化ペプチド抗体の作製
Cdc7−ASK複合体はヒトMcm2の17番目のセリン残基を特異的にリン酸化することが明らかになったので、次に17番目のセリン残基のリン酸化を検出するための道具として、リン酸化された17番目のセリン残基を特異的に認識する抗リン酸化特異抗体を作製した。
被リン酸化部位として確定したヒトMCM2タンパク質の17番目のセリン残基を含む、10番目から20番目までのアミノ酸配列に相当する以下の2本のペプチドをペプチド合成機を用いて作製した。
リン酸化ペプチド(Mcm2−phospho−S17と記す):CRGNDPLTS(p)S(配列番号:20)
非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17と記す):CRGNDPLTSS(配列番号:21)
上記のペプチド配列は、一文字表記で、アミノ末端からカルボキシル末端方向に記されている。S(p)は、リン酸化セリン残基を示す。アミノ末端のシステイン(C)残基は、ペプチドをキャリアータンパク質に共有結合させるために導入したものである。これらのペプチドは、HPLCにより、95%以上の純度であることを確認した。リン酸化ペプチドは免疫原に用い、抗体力価の測定及び抗体精製にリン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドを用いた。
合成した短いペプチド単独では抗原性が低いので、通常ペプチドをキャリアータンパク質に結合させて動物に免疫する。キャリアータンパク質としては、アルブミン、ミオグロビン、ヘモシアニン等が用いられるが、今回はヘモシアニン(keyhole limpet hemocyanin,以下KLH、CALBIOCHEM社製)を用いた。成書に従いphospho−Hs−S83とKLHを架橋剤であるMBS(m−maleimidobenzoyl−N−hydroxysuccinimide ester,SIGMA社製)を用いて共有結合させ、KLH−Mcm2−phospho−S17を合成した。
KLH−Mcm2−phospho−S17 20μg/100μlおよび10μg/100μlをそれぞれウサギおよびマウスの1回あたりの免疫に用いた。これに100μlのフロイト完全アジュバント(ヤトロン社製)を加え、エマルジョン化し免疫原とした。ウサギの背部への皮下注射にて免疫を行った。免疫は2週間ごと3回から5回行い、耳朶静脈から採血後その血清を回収した。抗体力価は、Mcm2−phospho−S17とMcm2−S17を固相化したマイクロタイタープレートを用いたELISA法で測定した。
十分な抗体力価の確認の後、翌週より、採血(最初の1週間)、休息(次の1週間)、免疫(最後の1週間)を1サイクルとし、これを4回繰り返した。採血は、抗体力価の確認の際と同様に、耳朶静脈より行った。1回の採血あたり、およそ60〜70mlの血液を採取した。最後の採血では、カテーテルを用いて心臓より直接血液を回収した。
採取した血液は、4℃で一晩静置し、血清と血餅に分離させ、上澄み部分の血清を回収した。分離回収した血清に、終濃度50%となるように、硫酸アンモニウムを添加し攪拌後、遠心分離を行い、IgG分画を含む沈澱物に最小限のPBSを加え完全に溶解した後、PBSに対して透析を行った。完全にPBSに平衡化した後、この粗精製抗体分画をカラムにかけて、抗体を精製した。
特異化カラム作製には、Mcm2−phospho−S17合成ペプチドを用い、吸収用カラム作製には、Mcm2−S17合成ペプチドを用いた。合成ペプチド1mgを5mlの0.1M炭酸緩衝液に溶解し、1mM塩酸で平衡化したCNBr活性化セファロース4B(ファルマシア社製)を加えた。4℃で一晩穏やかに混和し、これをカラムに充填した。5〜10倍量のPBSでカラムを洗浄後、セファロース4B表面に残っている活性基をブロッキングするために1M Tris−HCl(pH7.5)でカラムを平衡化した。ブロッキング後、PBSで洗浄および平衡化し、抗体精製に使用した。
抗リン酸化ペプチド抗体を精製するため、前述の粗精製抗体分画を特異化カラムに通した。PBS/0.1% TritonX100で洗浄した後、カラムに吸着している抗リン酸化ペプチド抗体を、0.17M glycine−HCl(pH2.5)で溶出した。溶出した抗体は直ちに1M Tris−HCl(pH8.0)を適量加えて中和し、PBSに対して透析し、抗Mcm2−phospho−S17抗体分画とした。完全にPBSに平衡化させた後、これを吸収用カラムであるMcm2−S17セファロース4Bカラムに通した。吸収用カラムに通すことにより、抗Mcm2−phospho−S17抗体画分中に存在する非リン酸化ペプチドとも反応する抗体を取り除くことができる。一方、抗リン酸化ペプチド特異抗体は、カラムに吸着せずに、カラムを素通りする。吸収カラムをPBS/0.1% TritonX100で洗浄し、吸収用カラムに結合した抗体は、0.17M glycine−HCl(pH2.5)で溶出した。溶出後、カラムは、再びPBS/0.1% TritonX100で平衡化し、非リン酸化ペプチド抗体がほぼ完全に吸収されるまで、抗Mcm2−phospho−S17抗体分画を吸収用カラムに、繰り返して通した。非リン酸化ペプチド感作プレートを用いたELISAによって、非リン酸化ペプチドとも反応する抗体が除去できている事を確認した。リン酸化ペプチド感作プレートを用いたELISAによって、そのリン酸化ペプチドに対する特異性を最終的に確認した。
ペプチドを1μg/mlになるように0.1M炭酸緩衝液に溶かした。これをELISA用の96穴マイクロタイタープレートに、1穴あたり50μlずつ分注した。これを4℃で一晩放置し感作した。感作後、ペプチド溶液を除き、ブロッキング溶液(1% BSA,5% Sucrose,0.1% NaN/PBS)を、1穴あたり200μlずつ分注して、室温で1時間程度放置した。ブロッキング液を完全に除去し、ドラフト内で風乾させた(固相化)。
リン酸化ペプチド(Mcm2−phospho−S17)固相化プレートは、それぞれ抗体力価の測定、抗リン酸化セリン残基特異抗体の吸収確認、抗リン酸化ペプチド抗体の特異性の確認に用いた。また、非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17)固相化プレートは、カラムによる非特異抗体の吸収の確認に用いた。
力価検定用の血清は、PBSを用いて200倍希釈から、精製抗体は1μg/mlから、4倍ずつ段階的に希釈し、希釈したサンプルは、感作プレート1穴あたり50μl添加した。添加後、室温に1時間静置した(1次抗体反応)。反応液を捨て、各穴を、PBSで4回以上洗浄した。Horseradish Peroxidase(HRP)で標識された抗ウサギ免疫グロブリン抗体(2次抗体)をPBSで適当に希釈し、これを各ウェルに50μlずつ添加し、室温で30〜60分間反応させた(2次抗体反応)。2次抗体はanti−Rabbit IgG(H+L−chain)conj.Peroxidase(MBL社製)を用いた。2次抗体反応液を捨て、各穴を、PBSで4回以上洗浄した。発色基質(750μM TMB,Tetramethylbenzidine)溶液を1穴あたり50μl添加し、30℃で5〜20分間発色させた(発色反応)。反応停止液(1.5N HPO)を50μlずつ加えて、発色反応を停止させた。最後に、マイクロプレートリーダーを用いて、450nmにおける吸光度を測定した。
抗Mcm2−phospho−S17抗体を、それぞれ4μg/ml(抗体)から4倍ずつ段階的に希釈し、リン酸化ペプチド(Mcm2−phospho−S17)固相化プレートと非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17)固相化プレートを用いて、ELISA法にて特異性を確認した。
図2は抗Mcm2−phospho−S17ポリクローナル抗体の特異性を確認した結果である。この結果、抗体濃度が高くなるに従い、Mcm2−phospho−S17リン酸化ペプチド固相化プレートでは吸光度が高くなる一方で、Mcm2−S17非リン酸化ペプチド固相化プレートでは吸光度がほぼゼロを維持していることがわかる。したがって、当抗体はヒトの17番目のセリン残基のリン酸化を特異的に認識する抗体であることが証明された。
(7)Cdc7−ASK複合体リン酸化酵素活性測定用ELISA系の構築
96穴マイクロタイータープレート内でCdc7−ASK複合体リン酸化酵素活性を測定するために、用いる基質となるヒトの17番目のセリン残基を含む領域の選択を行った。具体的には放射性同位元素を用いたリン酸化アッセイにおいてCdc7−ASK複合体の良い基質となることが分かったヒトMCM2の1−130番目までおよび1−80番目のアミノ酸領域のGST融合タンパク質と、10番目から20番目までのアミノ酸配列に相当する非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17)を基質として検討した。
0.1M炭酸緩衝液を用いてGST−Mcm2(1−130aa)およびGST−Mcm2(1−80aa)を5μg/mlに希釈し、ELISA用マイクロタイタープレートに、1穴あたり50μlずつ分注して、4℃にて一晩感作した。感作溶液を除き、ブロッキング溶液(1% BSA,5% Sucrose,0.1% NaN/PBS)を、1穴あたり200μlずつ分注して、室温で1時間程度放置した。ブロッキング溶液を完全に除去し、ドラフト内で風乾させ、使用まで4℃で保存した。この操作によりマイクロタイタープレートの内壁にGST−Mcm2(1−130aa)およびGST−Mcm2(1−80aa)を固相化した。
リコンビナントタンパク質GST−Mcm2(1−130aa)、GST−Mcm2(1−80aa)あるいは非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17)を固相化したウェル中において、タンパク質リン酸化反応を行う。その後、同じウェル中で、連続してELISAを行う。
1倍(x1)から2倍ずつ64倍まで希釈したリコンビナントCdc7−ASK複合体希釈系列をリン酸化緩衝液を用いて調整した。これを50μlずつ固相化プレートのウェル中に添加した(タンパク質リン酸化反応)。30℃で一定時間保温した後、リン酸化反応液を捨て、各ウェルをPBSで4回以上十分に洗浄した。1μg/mlとなるように、抗体希釈液(1% BSA,0.1% NaN/PBS)で希釈した一次抗体、すなわち抗Mcm2−phospho−S17ポリクローナル抗体を、各ウェルに50μlずつ添加して、室温で30〜60分間反応させた(1次抗体反応)。1次抗体反応液を捨て、各ウェルをPBSで4回以上十分に洗浄した。Horseradish Peroxidase(HRP)で標識された抗ウサギ免疫グロブリン抗体(2次抗体、MBL社)をPBSで1000倍に希釈し、これを各ウェルに50μlずつ添加し、室温で30〜60分間反応させた(2次抗体反応)。2次抗体反応液を捨て、各ウェルを、PBSで4回以上洗浄した。発色基質溶液を1ウェルあたり50μl添加し5〜20分間発色させた(発色反応)。反応停止液を50μlずつ加えて、発色反応を停止させ、マイクロプレートリーダーを用いて、450nmにおける吸光度を測定した。
結果を図3に示した。この結果より、本発明で提供される、抗リン酸化ペプチド抗体を用いたELISA法によって、Cdc7−ASK複合体活性物質のタンパク質リン酸化酵素活性を測定できることが明らかになった。このリン酸化酵素活性測定系に用いる基質は、リコンビナントタンパク質GST−Mcm2(1−130aa)が最も好ましいことが明らかになった。非リン酸化ペプチド(Mcm2−S17)がこの活性測定系に利用できない原因としてはリン酸化部位を含む領域が短く、Cdc7−ASK複合体が標的とする17番目のセリン残基を認識することが難しい事が予想される。また同様な考察を行うことによって、GST−Mcm2(10−20aa)も本測定系における基質の1つとして提供することも可能と考えられる。
上記のGST−Mcm2(1−130aa)と抗Mcm2−phospho−S17ポリクローナル抗体を用いるCdc7−ASK複合体の活性測定方法において、リン酸化反応液中に添加するATPの終濃度を1μMから2mMまで変化させたときの反応性の変化を調べた結果を図4に示す。酵素活性は2mMにおける反応性を100とする相対的活性値(%)で示した。0.1mMでは90%の活性を示し、1mMにおいてほぼ反応はプラトーに達している。低濃度のATP存在下においても、最大活性値の30%以上の活性を示すものの、明らかに、ATP依存的な反応性を示した。
Cdc7−ASK複合体の活性測定方法において、リン酸化反応時間を0から150分間まで変化させたときの反応性の変化を調べた結果を図5に示す。反応時間依存的な吸光度の上昇が見られ、90分間においてほぼ反応はプラトーに達している。
本測定系において、他のリン酸化酵素を用いた場合の検討を行った。GST−Mcm2(1−130aa)感作プレートと抗Mcm2−phospho−S17ポリクローナル抗体を用いた。酵素には前述のCdc7−ASK複合体(野生型、WT)、非活性型Cdc7−ASK複合体(KD)を用い、それぞれの希釈系列にて活性測定を行った。
結果を図6に示す。Cdc7−ASK複合体WTは酵素を4倍まで希釈するに従い、吸光度すなわち17番目のセリン残基のリン酸化が低下することが観察された。これはリン酸化酵素活性が存在しないCdc7−ASK複合体KDでは観察されなかった。以上の事より、本測定系においてCdc7−ASK複合体特異的なリン酸化活性の測定が可能であることが証明された。
ラジオフィルターアッセイは、酸不溶性画分への放射性同位元素[γ−32P]ATPの取り込みを利用して、基質に対するリン酸化を検出する方法であり、リン酸化活性を測定する場合に頻用される。この方法と本発明で提供されるELISA測定系における感度を比較した。
1μgのリコンビナントタンパク質GST−Mcm2(1−130aa)に、1倍(x1)から2倍ずつ64倍まで希釈したリコンビナントCdc7−ASK複合体希釈系列をリン酸化緩衝液を用いて調整し、全量を50μlにした。30℃で一定時間保温した後、1mlの10%トリクロロ酢酸、0.2% Naを加え反応を停止させた。この酸不溶性画分をGFCフィルター(Whatman社製)にトラップし、2%トリクロロ酢酸、0.02% Naを用いて3回洗浄した。基質に取りこまれた[γ−32P]ATPのカウントを液体シンチレーションカウンターで測定した。
結果を図7に示す。それぞれ1倍のCdc7−ASK複合体酵素濃度における、ラジオフィルターアッセイではカウント(cpm)をELISAでは吸光度を100%として相対値(%)にて示した結果である。ELISA法による測定においては、x8まで100%であることより、放射性同位元素[γ−32P]ATPを用いた測定系と比較して、約1/8の酵素量で測定できることが示された。またELISA法で用いる基質の量は1ウェルに計算上0.25μgであるのに対し、ラジオフィルターアッセイでは約4倍量の1μg必要とする点、また酵素量ゼロにおけるバックグランドがELISA法ではほとんど存在しない事からも、放射性同位元素を使用せずに測定できる利点以上に、感度も高く、かつ用いる基質と酵素も少なくでき、本発明で提供されるELISA測定系がいかに優れているかが証明された。
リン酸化酵素の阻害剤として知られるK−252a(CALBIOCHEM社製)およびstaurosporineは、CaMキナーゼIIやプロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、プロテインキナーゼGなど、様々なリン酸化酵素の阻害剤として知られている。K−252aとstaurosporineをを用いて、本発明で提供されるELISA系にて検討した。それぞれの希釈系列を調製し、これとリン酸化アッセイ緩衝液で調製したCdc7−ASK複合体とを混合し、全量を50μlにした。これをGST−Mcm2(1−130aa)を固相化したウェルに添加し、前述の方法でCdc7−ASK複合体リン酸化活性をELISA法にて検討した。
結果を図8に示す。図8は、阻害剤を加えない場合の活性値を100とする相対的阻害値(%)で示した。各阻害剤のK−252aとstaurosporineは特異性の低いキナーゼの阻害剤であることから、Cdc7−ASK複合体によるリン酸化活性を濃度依存的に抑制する結果が得られた。IC50は両者とも2μMであった。一方、Roscovitine、Olomoucine、およびU0126では、Cdc7−ASK複合体に対する濃度依存的な阻害作用が観察されなかった。Roscovitine、およびOlomoucineは、cdk2 inhibitorである。またU0126はMAP kinase inhibitorである。これらのキナーゼ阻害剤はCdc7−ASK複合体の活性を阻害しないことを示している。このことから、実際にCdc7−ASK複合体のリン酸化活性阻害剤の薬剤スクリーニングにも有効であることが示された。
産業上の利用の可能性
本発明によって、Cdc7−ASK複合体による基質蛋白質であるMCM2のリン酸化機構が明らかにされた。この知見に基づいて、基質蛋白質のCdc7−ASK複合体によるリン酸化を、より特異的に評価することが可能となった。つまり、本発明のリン酸化作用の測定方法は、Cdc7−ASK複合体のリン酸化作用を、特異的に評価しうる方法として有用である。たとえば増殖の盛んな癌細胞におけるCdc7−ASKのキナーゼ活性が亢進していることが明らかにされている(Gene 1998 Apr 28;211(1):133−40 A human homolog of the yeast CDC7 gene is overexpressed in some tumors and transformed cell lines.Hess GF,Drong RF,Weiland KL,Slightom JL,Sclafani RA,Hollingsworth RE.Cancer Research,Pharmacia,Upjohn,Inc.,301 Henrietta Street,Kalamazoo,MI 49001,USA.)。したがって、ある癌細胞の増殖能を、Cdc7−ASKのキナーゼ活性に基づいて予測することができる。また本発明者らも多くのヒト癌細胞パネルでCdc7の発現量を正常細胞と比較し、ほとんどの培養癌細胞(繊維芽細胞系もリンホイド系も)でCdc7がきわめて強く発現されていることを確認した。したがって、本発明の方法によって評価することができるCdc7−ASKのキナーゼ活性は、癌化のマーカーとして有用である。本発明によれば、Cdc7−ASKのキナーゼ活性を特異的に評価することができる。したがって、癌細胞の増殖能をより特異的に評価することができる。
更に本発明は、上記測定方法を応用した、被験化合物のCdc7−ASK複合体のリン酸化作用に与える影響を評価する方法と、この評価方法に基づくスクリーニング方法を実現した。
本発明のCdc7−ASKキナーゼ活性の測定方法、あるいはその活性を調節する化合物のスクリーニング方法は、Cdc7−ASKを標的とした癌に対する創薬の開発や治療方法の開発に有用である。Cdc7−ASKを標的とすることは、公知の細胞内キナーゼ(Cdk−Cyclinなど)や蛋白質を標的とすることに比べて次のような利点を有する。
第一に、Cdc7−ASKを標的とすることにより、より確実な活性の制御を期待することができる。Cdk−Cyclinが多くの類似遺伝子によってファミリーを構成していることに比べて、Cdc7−ASKはより限られた構造の分子で構成されている。したがって、Cdc7−ASKを標的とすることで、その活性を確実に制御することができる。
第二に、Cdc7−ASKを標的とすることにより、細胞増殖を特異的に制御することができる。Cdc7−ASKはS期の開始と進行に必要な因子である。その活性の喪失は直ちにS期進行の停止に至り、細胞の増殖が停止する。さらに遺伝子操作を施したマウスを用いた実験から、S期、すなわちDNAの複製の停止はDNA上に異常な構造を蓄積し、それはDNA損傷として感知されてp53の誘導、さらには細胞死が誘導される可能性が示唆されている。つまり、Cdc7−ASKの活性阻害により、癌細胞のS期進行を効果的にブロックし、さらに細胞死を誘導することにより効率よく癌細胞を除去できる可能性がある。
第三に、Cdc7−ASKを標的とすることにより、まったく新しい細胞増殖の阻害剤の発見が期待される。Cdc7−ASKのキナーゼとしての構造は、キナーゼファミリーのなかでもユニークである。またASKの構造もこれまで多くの研究がされてきたCyclin分子とは異なっており、キナーゼ活性化についてもこれまで知られていない新規の機構によるものと予測される。したがって、Cdc7−ASKを標的とした活性阻害物質の探索により、これまでの種々のキナーゼに対するスクリーニングでは見出されなかった全く新規な物質が見出される可能性が高い。このことは、たとえば制がん剤の研究開発において、新たなリード化合物の発見につながる可能性があることを意味している。
そして第四に、Cdc7−ASKを標的とすることにより、細胞死への誘導が期待できる。予期しないDNA複製の停止に対して細胞はATM、Chk1、Cds1などのいわゆるチェックポイントキナーゼを活性化し、細胞周期進行の遅延などを引き起こして対処する。Cdc7−ASKの阻害物質と共に、これらのチェックポイントキナーゼに対する阻害物質も併用すれば、Cdc7−ASKの活性阻害によって引き起こされる、S期進行阻害による細胞死への誘導を増強できることが期待される。
このように、Cdc7−ASK複合体は、細胞周期において細胞増殖の初期の段階において重要な役割を果たしている。しかも、そのリン酸化活性は、がん細胞の増殖能と比例している。つまり、Cdc7−ASK複合体の活性の制御によって、がん細胞の増殖をより特異的に制御することができる。したがって、本発明のスクリーニング方法は、がん細胞の増殖を特異的に制御しうる化合物を得る方法として有用である。
更に本発明のスクリーニング方法は、被験化合物のCdc7−ASK複合体のリン酸化作用に与える影響を、より特異的に評価することができる。その結果、がんに対してより特異的に作用する化合物を選択することができる。
本発明はまた、上記の各種の方法に必要な、Cdc7−ASK複合体活性物質の調製方法を提供した。本発明の方法によれば、原核細胞を利用して、Cdc7−ASK複合体と同様の活性を有する複合体を、容易に、かつ多量に調製することができる。
また発明は、Cdc7−ASK複合体によってリン酸化される基質蛋白質を提供する。本発明の基質蛋白質は、Cdc7−ASK複合体(あるいはCdc7−ASK複合体活性物質)による被リン酸化に必要な構造を有する蛋白質である。このような基質蛋白質の利用により、Cdc7−ASK複合体のリン酸化作用をより特異的に評価することができる。本発明に基づいて調製されたCdc7−ASK複合体活性物質や基質蛋白質は、上記方法に有用である。
加えて本発明は、Cdc7−ASK複合体あるいはCdc7−ASK複合体活性物質によってリン酸化された基質蛋白質の、リン酸化レベルを識別する抗体を提供した。本発明の抗体は、基質蛋白質の特定の部位におけるリン酸化のレベルを識別する。この抗体によって、Cdc7−ASK複合体あるいはCdc7−ASK複合体活性物質のリン酸化作用を、より特異的に評価することが可能となる。また、本発明の抗体の利用によって、Cdc7−ASK複合体あるいはCdc7−ASK複合体活性物質のリン酸化作用を、イムノアッセイの原理に基づいて容易に評価することができる。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、ヒトASK、出芽酵母Dbf4、および分裂酵母Him1/Cfp1における、motif−Mとmotif−Cの配置を示した。
図2は、抗Mcm2−phospho−S17ポリクローナル抗体の特異性を確認した結果を示す。図中、縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は抗体濃度(ng/ml)を示す。
図3は、Cdc7−ASK複合体活性物質の蛋白質リン酸化酵素活性を測定した結果を示す。図中、縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は酵素量(μL)を示す。
図4は、Cdc7−ASK複合体の活性測定方法において、リン酸化反応液中に添加するATPの濃度を変化させたときの反応性の変化を調べた結果を示す。図中、縦軸は2mMにおける反応性を100とする相対的活性値(%)を、横軸は反応液中のATPの終濃度(mM)を示す。
図5は、Cdc7−ASK複合体の活性測定方法において、リン酸化反応時間を変化させたときの反応性の変化を調べた結果を示す。図中、縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は反応時間(分)を示す。
図6は、Cdc7−ASK複合体(野生型、WT)、および非活性型Cdc7−ASK複合体(KD)を用いた、ELISAによるリン酸化酵素活性の測定方法の評価結果を示す図。図中、縦軸は450nmにおける吸光度を、横軸は酵素量(μL)を示す。
図7は、ラジオフィルターアッセイとELISA法による、リン酸化酵素活性の測定結果を示す図。図中、縦軸/左はELISAにおける測定結果(450nmにおける吸光度)を、縦軸/右はラジオフィルターアッセイにおける測定結果(放射活性;cpm)を、また横軸は酵素量(μL)を示す。
図8は、既知のタンパク質リン酸化阻害剤の、Cdc7−ASK複合体リン酸化活性への影響の測定結果を示す図。図中、縦軸は相対的阻害値(%)、横軸は阻害剤の濃度(μM)を示す。

Claims (14)

  1. 次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性の測定方法。
    a)基質蛋白質を、基質蛋白質のリン酸化が可能な条件下でCdc7−ASK複合体と接触させる工程、;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である、
    b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
    c)前記リン酸化のレベルを指標としてCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を測定する工程
  2. リン酸化のレベルを、前記セリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体の結合のレベルに基づいて測定する請求項1に記載の方法。
  3. Cdc7−ASK複合体が、生体試料に由来する請求項1に記載の方法。
  4. 次の工程を含む、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響の測定方法。
    a)被験化合物、基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを、次のi)〜iii)のいずれかに記載の順序で接触させる工程、;ただし基質蛋白質は、配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質である
    i)被験化合物と基質蛋白質とを接触後にCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる
    ii)被験化合物の共存下で、基質蛋白質とCdc7−ASK複合体活性物質を接触させる、
    iii)基質蛋白質、およびCdc7−ASK複合体活性物質とを接触後に、被験化合物を接触させる
    b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを測定する工程、および
    c)前記リン酸化のレベルをを指標として、被験化合物のCdc7−ASK複合体活性物質のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程
  5. 次の工程を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性を調節する作用を有する化合物のスクリーニング方法。
    a)請求項4に記載の方法によって、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を測定する工程、および
    b)被験化合物を接触させない対照と比較して、リン酸化レベルが高い、または低い被験化合物を選択する工程
  6. 請求項5のb)において、リン酸化レベルが低い化合物を選択する、請求項5に記載のスクリーニング方法。
  7. 請求項6のスクリーニング方法によって選択される化合物を有効成分として含有する、細胞増殖の抑制剤。
  8. 次の要素を含む、Cdc7−ASK複合体のキナーゼ活性測定用キット。
    a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列の17位のセリン残基を含み、かつ当該アミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する基質蛋白質、および
    b)基質蛋白質の、配列番号:1に示すアミノ酸配列において17位に相当する位置のセリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体
  9. 次の要素を含む、被験化合物のCdc7−ASK複合体のキナーゼ活性に与える影響を評価するためのキット。
    a)Cdc7−ASK複合体活性物質、および
    b)配列番号:1に記載のアミノ酸配列の17位のセリン残基を含み、かつ当該アミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する基質蛋白質、
  10. 次の工程を含むCdc7−ASK複合体活性物質の製造方法。
    a)ヒトCdc7蛋白質をコードするDNAと、配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる蛋白質または該蛋白質と機能的に同等な蛋白質をコードするDNAとを、モノシストロニックに発現可能な状態で原核細胞に導入する工程、
    b)前記2つのDNAを発現させる工程、および
    c)発現された蛋白質を回収する工程、
  11. 配列番号:1に示すアミノ酸配列を有する蛋白質の17位セリン残基におけるリン酸化のレベルを識別する抗体
  12. 以下の(a)〜(d)のいずれかに記載の蛋白質。
    (a)配列番号:1に記載のアミノ酸配列を含む蛋白質、
    (b)配列番号:3に記載のアミノ酸配列から選択され、かつ17位のセリンを含む連続するアミノ酸配列からなる蛋白質、
    (c)配列番号:1に記載のアミノ酸配列において、1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
    (d)配列番号:3に記載のアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、ヒトCdc7−ASK複合体によってリン酸化される蛋白質
  13. 配列番号:10に記載のアミノ酸配列を含み、かつ配列番号:9に記載のアミノ酸配列から選択された連続するアミノ酸配列を有する蛋白質。
  14. 配列番号:10に記載のアミノ酸配列からなる、請求項13に記載のポリペプチド。
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