JP2004222728A - ヒトサイクリンe - Google Patents
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Abstract
【課題】 特定のヒトサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮(stringent)条件下でハイブリッド形成できる核酸分子を単離すること。
【解決手段】 以下の配列の1位から1185位の配列またはその相補鎖の、少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む、サイクリンE遺伝子の発現を阻害し得る、アンチセンス核酸分子。アンチセンス核酸分子を用いて細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入する工程を含む、哺乳動物細胞の細胞周期を長くする方法。
【選択図】 なし
【解決手段】 以下の配列の1位から1185位の配列またはその相補鎖の、少なくとも15の連続するヌクレオチドを含む、サイクリンE遺伝子の発現を阻害し得る、アンチセンス核酸分子。アンチセンス核酸分子を用いて細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入する工程を含む、哺乳動物細胞の細胞周期を長くする方法。
【選択図】 なし
Description
本出願は1991年9月20日に出願された出願番号第07/764,309号の一部継続出願である。
本発明は米国立保健研究所によって認められた援助金CA47818による政府の支援でなされた。政府は本発明に一定の権利を有している。
本発明は組換え体DNA技術に係わる遺伝子工学、そして特に細胞周期のG1期での進行およびS期への進入を制御することによって細胞の増殖速度を制御するヒトサイクリンEをコードするヌクレオチド配列の同定に関するものである。
(発明の背景)
高等真核細胞の増殖および分化を研究する主要な目標は細胞周期、特にG1期からS期およびG2期からM期への移行による進行を調節する経路、酵素および補因子を生化学用語で記載することである。現在サイクリンとして知られているタンパク質は、受精したウニおよび二枚貝の卵中で、受精後に合成が非常に刺激され(添付の引用文献:Evans等、1983年)そして各有糸分裂時に値が減少する少数のタンパク質のメンバーとして記載された。サイクリンA(Swenson等、1986年)およびB(PinesおよびHunt、1987年)は有糸分裂細胞中に周期的に蓄積することが発見されたので、生化学的根拠は不明であったけれども、有糸分裂過程での役割があり得ると考えられた(Evans等、1983年)。遺伝子および生化学分析の結果は現在減数分裂および有糸分裂での或る種のサイクリンの役割を支持している。減数分裂1およびIIから細胞を誘導させるためには二枚貝またはウニのサイクリンB1 mRNAをツメガエルの卵母細胞に注入することで十分であると報告されており(PinesおよびHunt、1987年;Westondorf等、1989年〕、そしてサイクリンBはツメガエルの初期胚での各有糸分裂周期で合成されなければならない唯一のタンパク質であると思われる(MurrayおよびKirschner、1989年)。逆に、サイクリンB1およびB2mRNAを破壊すると、ツメガエルの受精卵をDNA複製後ではあるが有糸分裂の前に停止させることができる(Mishull等、1989年)。ツメガエルの他に、酵母の中でS.ポンベ(pombe)およびS.セレビシエ(corevisae)がサイクリンBがp34CDC2タンパク質キナーゼ(Nurse、1990年;Cross、1989年、で総説された)の活性化に対して有糸分裂制御を発揮することによって有糸分裂の移行の調節で役割を果たしていると報告されている(Hugan等、1988年;Ghiara等、1991年;Surana等、1991年;BooherおよびBeach、1987年;Booher等、1989年;Husan等、188年;Ghiara等、1991年;Surana等、1991年)。後者の場合には、CDC2キナーゼはモノマーとしては触媒的に活性でないが、サイクリンBとの結合および一連のリン酸化および脱リン酸化段階の後にキナーゼ活性が生じる(SimanisおよびNurse、1986年;DraettaおよびBeach、1988年;Pondaven等、1990;Solomon等、1990年;GouldおよびNurse、1989年;EnochおよびNurse、1990年;Solmon等、1992年)。
高等真核細胞の増殖および分化を研究する主要な目標は細胞周期、特にG1期からS期およびG2期からM期への移行による進行を調節する経路、酵素および補因子を生化学用語で記載することである。現在サイクリンとして知られているタンパク質は、受精したウニおよび二枚貝の卵中で、受精後に合成が非常に刺激され(添付の引用文献:Evans等、1983年)そして各有糸分裂時に値が減少する少数のタンパク質のメンバーとして記載された。サイクリンA(Swenson等、1986年)およびB(PinesおよびHunt、1987年)は有糸分裂細胞中に周期的に蓄積することが発見されたので、生化学的根拠は不明であったけれども、有糸分裂過程での役割があり得ると考えられた(Evans等、1983年)。遺伝子および生化学分析の結果は現在減数分裂および有糸分裂での或る種のサイクリンの役割を支持している。減数分裂1およびIIから細胞を誘導させるためには二枚貝またはウニのサイクリンB1 mRNAをツメガエルの卵母細胞に注入することで十分であると報告されており(PinesおよびHunt、1987年;Westondorf等、1989年〕、そしてサイクリンBはツメガエルの初期胚での各有糸分裂周期で合成されなければならない唯一のタンパク質であると思われる(MurrayおよびKirschner、1989年)。逆に、サイクリンB1およびB2mRNAを破壊すると、ツメガエルの受精卵をDNA複製後ではあるが有糸分裂の前に停止させることができる(Mishull等、1989年)。ツメガエルの他に、酵母の中でS.ポンベ(pombe)およびS.セレビシエ(corevisae)がサイクリンBがp34CDC2タンパク質キナーゼ(Nurse、1990年;Cross、1989年、で総説された)の活性化に対して有糸分裂制御を発揮することによって有糸分裂の移行の調節で役割を果たしていると報告されている(Hugan等、1988年;Ghiara等、1991年;Surana等、1991年;BooherおよびBeach、1987年;Booher等、1989年;Husan等、188年;Ghiara等、1991年;Surana等、1991年)。後者の場合には、CDC2キナーゼはモノマーとしては触媒的に活性でないが、サイクリンBとの結合および一連のリン酸化および脱リン酸化段階の後にキナーゼ活性が生じる(SimanisおよびNurse、1986年;DraettaおよびBeach、1988年;Pondaven等、1990;Solomon等、1990年;GouldおよびNurse、1989年;EnochおよびNurse、1990年;Solmon等、1992年)。
サイクリンB依存性のp34CDC2キナーゼの活性化は或る種の体細胞で有糸分裂を開始させるためにも必要である(Nurse、1990年;Cross、1989年;Mal1er等、1991年)が、活性化だけが唯一の必要なことではないと思われる(Lamb等、1990年;Osmani等、1991年;Amon等、1992年;Sorger等、1992年)。S.セレビシエは明らかにCDC28と称されるCDC2相同体を有している。CDC2とCDC28遺伝子生成物は構造的に類似しており(LouinczおよびReed、1984年;HindleyおよびPhear、1984年)そして機能的に相同性であると思われる(Beach等、1982年;BooherおよびBeach、1987年)。これらは、脊椎動物および無脊椎動物の有糸分裂促進因子中の34kDaのタンパク質キナーゼの相同体であるセリン/スレオニンタンパク質キナーゼをコードする(MPF;LeeおよびNurse、1987年;Arion等、1988年;Dunphy等、1988年;Gautier等、1988年;Labbe等、1988年)。G2/M期およびG1/S期での細胞周期移行でCDC28は種々のサイクリンを必要とする;即ち、報告によれば、G2/MCDC28ではBタイプのサイクリンと結合してこれにより活性化され(Ghiara等、1991年;Surana等、1991年)、一方報告によればG1/SCDC28ではCLN−タイプのサイクリン(即ち、CLN1、CLN2およびCLN3;Sudbery等、1980年;Nash等、1988年;Cross、1988、1990年;Hadwiger等、1989年;Richafdson等、1989年;Wittenberg等、1990年)によって活性化される。
CLN1およびCLN2サイクリンは細胞周期中に周期的に現れ、G1/S移行点で発生量のピークに達し(Wittenberg等、1990年;CrossおよびTinkelenberg、1991年)そして酵母細胞でのCLNタンパク質の蓄積は細胞周期のG1からS期への移行速度を限定するものと思われる。
本開示の目的では、用語「CDCタンパク質キナーゼ」は最近採用された「細胞分裂キナーゼ(CDK)」の命名と同義語として使用する。
p34 CDC2キナーゼ活性は細胞周期中で明らかに変動し(Mendenhall等、1987年;DraettaおよびBeach;1988年;Labbe等、1989年b;Moreno等、1989年;PinesおよびHunter、1990年)、そしてこの活性の変動は細胞中に存在するCDC2遺伝子産生物の量の変動に起因するものではない(Durkacz等、1986年;SimanisおよびNurse、1986年;DreatteおよびBeach、1988年〕。むしろ、CDC2キナーゼ活性はキナーゼと(上記した)サイクリンを含む他のタンパク質との相互作用によって影響を受けると思われる(Rosenthal等、1980年;Evans等、1983年;Swenson等、1986年;Drette等、1989年;Meijor等、1989年;Minshull等、1989年;MurrayおよびKirschner、1989年;Labbe等、1989年a;Soloman等、1990年;Gautier等、1990年;MurrayおよびKiuschnerで総説された、1989年;Hunt、1989年〕。明らかに、酵母を含む広範囲の生物(BooherおよびBeach、1989年;Hagan等、1989年;Moreno等、1989年;Soloman等、1988年;Boher等、1989年;Surana等、1991年;Ghiara等、1991年)およびヒト(DraettaおよびBeach、1988年;PinesおよびHunter、1989年;Riabowol等、1989年)での有糸分裂の開始時にp34キナーゼを活性化するためにはp34 CDC2タンパク質とBタイプサイクリン間の会合が必要である。
発芽酵母においては、細胞増殖の主要な制御決定点は報告によればG1期中、即ちスタート(START)と称される点で生起し、ここで細胞は、或る条件が充足されるまでS期に入ることが制限される(Hartwell、1974年)。このスタート移行にはCDC28またはcdc2遺伝子産生物が必要であるように思われる(Hartwell等、1973、1974年;NurseおよびBiser、1981年)が、スタートでCDC28を活性化する生化学的経路は完全には理解されていない。CLN1、CLN2およびCLN3サイクリンの全てを欠いている細胞はスタートで停止し;そして細胞は増殖し続けるが、S期に入ることはできないので、後者の生化学的経路は、上記の3つのCLNタンパク質と、CDq28の活性化に係わっているものと思われる(Sudberry等、1980年;Nash等、1988年;Cros、1988、1990年;Hadwiger等、1989年;Richardson等、1989年;Wittenberg等、1990年)。CLN2、そして多分CLN1およびCLN3はスタート前またはスタート時にCDC28キナーゼとのコンプレックスを形成すると思われる(Wittenberg等、1990年〕。CLN1およびCLN2は細胞周期中に変動するが、最大値は報告によればG1後期(即ちG2後期ではなくて;Wittenberg等、1990年)に観察される。
高等真核細胞においてDNA合成の開始を制御する生化学的経路、またはこれらの経路が酵母での経路と類似する程度については現在殆ど知られていない。しかし乍ら、ヒト細胞では(発芽酵母と同様に)細胞増殖を制御する優先的な態様は細胞周期のG1期中に生起するように思われる(ZetterbergおよびLarson、1985年;Zetterberg、1990年)。哺乳動物細胞におけるG1からの移動の動力学は、DNA合成を開始させるために細胞の拘束を制御する「制限点」と称される単一の決定点を示唆している(Pardee、1974年)。制限点より前ではG1の進行は細胞の増殖状態に対し敏感である(例えば、タンパク質合成の速度を低下させるかまたは成長因子を除去すると明らかにS期への移行が遅延しそして細胞周期を停止させることさえできる)が、制限点より後では細胞周期は実質的にこれらのシグナルに対する応答が小さくなる(Pardee、1989年、で総説された)。酵母とは異なって、CDC2サイクリンは哺乳動物細胞では小さいタンパク質群に多様化させられるように思われ(Paris等、1991年;ElledgeおよびSpotswood、1991年;Tsai等、1991年;Koff等、1991年)そしてCDC2/28活性も幾つかの異なるキナーゼ群のメンバーに分けられよう(FangおよびNewport、1991年)。或る種のサイクリンは高等真核生物でのG1規制において酵母で報告された役割と同様な役割を有すると思われる。例えば、サイクリンA合成は報告によればG1後期に始まり、そしてこれはp34CDC2と或る種の関連p33 CDK2キナーゼの両方を活性化することができる(Giordano等、1989年;PinegおよびHunter、1990年;Marnaccino等、1992年;Tsai等、1991年)。報告によれば、サイクリンA機能の阻害は或る種の細胞ではS期のスタート様機能も阻止することがあり(Girard等、1991年)、そして報告によれば、サイクリンAは或る種の形質転換および増殖抑制因子と会合することができる(HunterおよびPinee、1991年)。しかしながら、高等真核生物でのスタート様機能の制御におけるサイクリンAの役割を支持するこれらの明らかな結果にも拘わらず、サイクリンAが発芽酵母CLNタンパク質と機能的に相同性であることを疑う幾つかの理由もある。幾つかの研究室が、酵母には存在しない哺乳動物中の2つの新規なサイクリン、即ちサイクリンCおよびサイクリンDを最近同定している。サイクリンD遺伝子は、G1後期にネズミマクロファージでCSF−1によって誘導された遺伝子として報告され(Matsushime等、1991年)そしてこの遺伝子は、ヒト傍甲状腺腫瘍で起こり得る転位による破壊点に染色体位置を有していると思われる(Motokura等、1991年)。報告によれば、サイクリンD
のみならずサイクリンCもS,セレビシエCLN遺伝子の突然変異を相補うことができる遺伝子をスクリーニングすることによってヒトおよびショウジョウバエ属cDNAライブラリーで同定されている(Laheu等、1991年;Lew等、1991年;LeopoldおよびOFarrell、1991年;Xiong等、1991年)。これらの結果はサイクリンCおよびサイクリンDのG1機能と一致しているが、サイクリンB(有糸分裂サイクリン)は後者のS,セレビシエCLN変異体も保護できることが見い出され、酵母の相補性アッセイが高等真核細胞で類似する機能を果たすサイクリンを必ずしも同定するとは限らないことを示している。
のみならずサイクリンCもS,セレビシエCLN遺伝子の突然変異を相補うことができる遺伝子をスクリーニングすることによってヒトおよびショウジョウバエ属cDNAライブラリーで同定されている(Laheu等、1991年;Lew等、1991年;LeopoldおよびOFarrell、1991年;Xiong等、1991年)。これらの結果はサイクリンCおよびサイクリンDのG1機能と一致しているが、サイクリンB(有糸分裂サイクリン)は後者のS,セレビシエCLN変異体も保護できることが見い出され、酵母の相補性アッセイが高等真核細胞で類似する機能を果たすサイクリンを必ずしも同定するとは限らないことを示している。
哺乳動物細胞の制限点と酵母のスタートとの間の類似性はp34CDC2キナーゼの考えられる役割を示唆していた。この仮説を支持して、ヒトCDC2遺伝子は、G1/SおよびG2/Mの両方の役割でS,ポンベcdc2遺伝子の活性を代替できることが見い出された(LeeおよびNurse、1987年)。更に、S期の細胞がG1細胞に融合されたとき、拡散性のトランス作用因子はDNA合成の活性化に係わっていると報告されているので、細胞融合実験によって、上記仮説を支持する環境的証拠が提供される(RaoおよびJohnson、1987年)。しかし乍ら、S後期アクチベーターとp34 CDC2キナーゼ間の関係は依然として不明のままである。報告によれば、最近、サイクリン−CDC2コンプレックスをヒトS期細胞から単離しそしてG1細胞の抽出物に添加したときSV40−DNA複製の誘導に活性であることが示された(D’Urso等、1990年〕。ヒトCDC2mRNAに向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドはS期への移行時にヒトPHA−活性化T細胞を阻止すると報告されている(Furakawa等、1990年)。他の高等真核細胞では、ツメガエル抽出物からCDC2タンパク質を枯渇させるとDNA複製を阻害できることが報告されている(BlowおよびNurse、1990年)。最近の示唆的な報告にも拘わらず、ヒトの細胞周期のG1期にp34キナーゼを活性化させる経路は現在わかっていない。
酵母のスタート時でのCDC28のCLN依存性活性化と同様にして、特定のG1サイクリンはG1からS期への移行中にヒトp34キナーゼの制御で役割を果たすことができる。この考えを試験するために、本明細書で実験を行ってヒト細胞が酵母S.セレビシエCLNタンパク質を代替できる特定のサイクリンを含有しているかどうかを測定した。このアッセイによって新しいヒトサイクリン、サイクリンEが同定された。
(発明の要約)
本発明は、図2に示されるヒトサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮(stringent)条件下でハイブリッド形成できる核酸分子を単離して提供する。このような核酸分子は好ましくは、細胞分裂キナーゼ(例えば、CDC2、CDC28、CDK2−XL、CDC2−HSおよびCDK2−HS)と結合しそしてこれを活性化させ得るサイクリンEポリペプチドをコードする。サイクリンEポリペプチドは典型的には細胞周期のG1期を短縮することもできる。本発明はまた、上記の核酸分子でコードされたポリペプチドおよび該ポリペプチドと特異的に結合できる免疫学的に結合するパートナーも提供する。
本発明は、図2に示されるヒトサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮(stringent)条件下でハイブリッド形成できる核酸分子を単離して提供する。このような核酸分子は好ましくは、細胞分裂キナーゼ(例えば、CDC2、CDC28、CDK2−XL、CDC2−HSおよびCDK2−HS)と結合しそしてこれを活性化させ得るサイクリンEポリペプチドをコードする。サイクリンEポリペプチドは典型的には細胞周期のG1期を短縮することもできる。本発明はまた、上記の核酸分子でコードされたポリペプチドおよび該ポリペプチドと特異的に結合できる免疫学的に結合するパートナーも提供する。
サイクリンEは、CDC2に関連したタンパク質キナーゼ、CDK2と結合しそしてこれを活性化することによって細胞周期のG1後期およびS前期に特異的に機能する。サイクリンE/CDK2ポリペプチドコンプレックスの値によって細胞周期が制御され、そして細胞周期のG1後期に発生量のピークに達する。細胞中のサイクリンEの構造発現だけで細胞周期のG1期を短縮させそして細胞の増殖を促進するのに十分である。細胞中のサイクリンE値の増加または減少はそれぞれ細胞増殖を増加させまたは減少させる。腫瘍細胞のような細胞中のサイクリンE値を検出することによって増殖速度に関する情報を提供することができる。染色体の破壊点でのサイクリンEの位置の再配置は細胞増殖の速度を変えることができる。
従って、本発明は、以下を提供する:
(1)図2に示されるヒトサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列またはその相補的ストランドと緊縮条件下でハイブリッド形成できる単離された核酸分子。
(2)サイクリンEポリペプチドをコードする、項目1に記載の単離された核酸分子。
(3)サイクリンEポリペプチドが細胞分裂キナーゼと結合し、それを活性化することができる、項目2に記載の単離された核酸分子。
(4)細胞分裂キナーゼが、CDC2、CDC28、CDK2-XL、CDC2-HSおよびCDK2-HSからなる群から選択される項目3に記載の単離された核酸分子。
(5)サイクリンEポリペプチドが真核生物細胞周期のG1期を短縮化することができる、項目2に記載の単離された核酸分子。
(6)図2に示されるサイクリンEポリペプチドと結合する抗体に結合し得るポリペプチドをコードする項目1に記載の単離された核酸分子。
(7)適当な制御配列に作動可能に結合された項目1に記載の単離された核酸分子を含む組換え発現ベクター。
(8)項目7に記載の組換え発現ベクターでトランスフェクションするか形質導入した細胞。
(9)項目8に記載の細胞を培養して上記の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生させる工程を含む、細胞周期のG1期を短縮する細胞分裂キナーゼを活性化し得るポリペプチドを産生させる方法。
(10)項目7に記載の組換え発現ベクターで細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入する工程を含む、哺乳動物細胞の細胞周期を短縮させる方法。
(11)項目1に記載の、単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
(12)項目11に記載のポリペプチドと特異的に結合し得る免疫学的結合パートナー。
(13)項目12に記載の免疫学的結合パートナーとサイクリンEとの間で複合体を形成させるのに適当な条件下で免疫学的結合パートナーを生物学的液体とともにインキュベートし、遊離の結合パートナーまたは液体から複合体を分離し、そして分離した複合体中でサイクリンEまたは結合パートナーを検出することを含む生物学的液体中でサイクリンEの値を検出するためのアッセイ。
(14)生物学的液体から複合体を分離しそして分離した複合体をアッセイしてサイクリンEまたは細胞分裂キナーゼの量を測定することを含む生物学的液体中のサイクリンE:細胞分裂キナーゼ複合体の発生量を測定するためのアッセイ。
(15)図2に示されるヒトサイクリンEアミノ酸配列と結合し得る抗体によって認識されるポリペプチド。
(16)項目1に記載のcDNAまたは項目1に記載の単離された核酸分子から転写されたmRNAと結合しそして上記cDNAの転写または上記mRNAの翻訳を阻止し得るアンチセンスヌクレオチド配列。
(17)項目16に記載のアンチセンスヌクレオチド配列で細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入することを含む、哺乳動物細胞の細胞周期を長くする方法。
(18)図2に示されるサイクリンE cDNA疎水性αヘリックス配列の631位から936位の配列に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(19)図2に示されるサイクリンE cDNA保存MRAIL配列の385位から645位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(20)CDCタンパク質キナーゼと結合し得る項目19に記載のポリペプチド。
(21)図2に示されるサイクリンE cDNA C末端配列の640位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(22)図2に示されるサイクリンE cDNA C末端保存配列の1048位から1080位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(23)clnl、cln2およびcln3を欠くゲノムを有し、かつ選択可能なマーカーおよび制御要素に作動可能に連結されたエピソームCLN3コード化ヌクレオチド配列を有し、細胞が哺乳動物サイクリン核酸で形質転換されるとき細胞周期のG1期の短縮化を示す、遺伝子変換酵母細胞。
(24)項目23に記載の酵母株589−5(ATCC No.74098)の細胞。
(25)候補核酸分子を項目23に記載の遺伝子変換酵母細胞中に導入し、そして細胞周期のG1期が少なくとも1時間短縮されているかどうかをスクリーニングすることからなる哺乳動物サイクリン核酸分子のクローニング法。
(26)cdc28−13遺伝子、G1 cln遺伝子、有糸分裂clbサイクリン遺伝子およびサイクリンE遺伝子を含むゲノムを有し、細胞が哺乳動物細胞分裂キナーゼコード化核酸で形質転換されるとき細胞周期のG1期の短縮化を示す遺伝子変換酵母細胞。
(27)候補核酸を項目26に記載の遺伝子変換酵母細胞に導入しそして細胞周期のG1期が少なくとも1時間短縮されているかどうかをスクリーニングすることからなる、サイクリンEタンパク質と結合しそしてそれによって活性化され得るCDCタンパク質をコードする哺乳動物cdc遺伝子のクローニング法。
(28)項目26に記載の1238−14 C−cycE株(ATCC No.74099)の細胞。
(29)clnl、cln2およびcln3を欠くゲノムを有し、エピソームCLN3コード化ヌクレオチド配列、ならびに選択可能なマーカーおよび制御要素に作動可能に連結された哺乳動物サイクリン核酸配列を有し、その際上記哺乳動物サイクリン核酸は、図2に示されるサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成することができ、かつ細胞周期のG1期を短縮することができる遺伝子変換酵母細胞。
(30)候補核酸分子を項目29に記載の遺伝sに変換酵母細胞中に導入し、そして細胞周期のG1期の持続の復活についてスクリーニングすることを含む哺乳動物サイクリン核酸分子のインヒビターをクローニングする方法。
(31)図2に示されるcDNA配列によってコードされるサイクリンEの活性より大きいかまたは小さい活性を有するポリペプチドをコードし、その際該活性はCDK2キナーゼポリペプチドに対するポリペプチドまたはサイクリンEの結合親和性、ポリペプチドまたはサイクリンEおよびCDK2が一緒にポリペプチドまたはサイクリンE:CDK2複合体中に存在するときのCDK2キナーゼの酵素活性、およびサイクリンE:CDK2複合体と比較したときのポリペプチド:CDK2複合体の変化した安定性の中から選択される項目1に記載の単離された核酸分子。
(1)図2に示されるヒトサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列またはその相補的ストランドと緊縮条件下でハイブリッド形成できる単離された核酸分子。
(2)サイクリンEポリペプチドをコードする、項目1に記載の単離された核酸分子。
(3)サイクリンEポリペプチドが細胞分裂キナーゼと結合し、それを活性化することができる、項目2に記載の単離された核酸分子。
(4)細胞分裂キナーゼが、CDC2、CDC28、CDK2-XL、CDC2-HSおよびCDK2-HSからなる群から選択される項目3に記載の単離された核酸分子。
(5)サイクリンEポリペプチドが真核生物細胞周期のG1期を短縮化することができる、項目2に記載の単離された核酸分子。
(6)図2に示されるサイクリンEポリペプチドと結合する抗体に結合し得るポリペプチドをコードする項目1に記載の単離された核酸分子。
(7)適当な制御配列に作動可能に結合された項目1に記載の単離された核酸分子を含む組換え発現ベクター。
(8)項目7に記載の組換え発現ベクターでトランスフェクションするか形質導入した細胞。
(9)項目8に記載の細胞を培養して上記の単離された核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生させる工程を含む、細胞周期のG1期を短縮する細胞分裂キナーゼを活性化し得るポリペプチドを産生させる方法。
(10)項目7に記載の組換え発現ベクターで細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入する工程を含む、哺乳動物細胞の細胞周期を短縮させる方法。
(11)項目1に記載の、単離された核酸分子によってコードされるポリペプチド。
(12)項目11に記載のポリペプチドと特異的に結合し得る免疫学的結合パートナー。
(13)項目12に記載の免疫学的結合パートナーとサイクリンEとの間で複合体を形成させるのに適当な条件下で免疫学的結合パートナーを生物学的液体とともにインキュベートし、遊離の結合パートナーまたは液体から複合体を分離し、そして分離した複合体中でサイクリンEまたは結合パートナーを検出することを含む生物学的液体中でサイクリンEの値を検出するためのアッセイ。
(14)生物学的液体から複合体を分離しそして分離した複合体をアッセイしてサイクリンEまたは細胞分裂キナーゼの量を測定することを含む生物学的液体中のサイクリンE:細胞分裂キナーゼ複合体の発生量を測定するためのアッセイ。
(15)図2に示されるヒトサイクリンEアミノ酸配列と結合し得る抗体によって認識されるポリペプチド。
(16)項目1に記載のcDNAまたは項目1に記載の単離された核酸分子から転写されたmRNAと結合しそして上記cDNAの転写または上記mRNAの翻訳を阻止し得るアンチセンスヌクレオチド配列。
(17)項目16に記載のアンチセンスヌクレオチド配列で細胞をトランスフェクションするかまたは形質導入することを含む、哺乳動物細胞の細胞周期を長くする方法。
(18)図2に示されるサイクリンE cDNA疎水性αヘリックス配列の631位から936位の配列に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(19)図2に示されるサイクリンE cDNA保存MRAIL配列の385位から645位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(20)CDCタンパク質キナーゼと結合し得る項目19に記載のポリペプチド。
(21)図2に示されるサイクリンE cDNA C末端配列の640位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(22)図2に示されるサイクリンE cDNA C末端保存配列の1048位から1080位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子によってコードされたポリペプチド。
(23)clnl、cln2およびcln3を欠くゲノムを有し、かつ選択可能なマーカーおよび制御要素に作動可能に連結されたエピソームCLN3コード化ヌクレオチド配列を有し、細胞が哺乳動物サイクリン核酸で形質転換されるとき細胞周期のG1期の短縮化を示す、遺伝子変換酵母細胞。
(24)項目23に記載の酵母株589−5(ATCC No.74098)の細胞。
(25)候補核酸分子を項目23に記載の遺伝子変換酵母細胞中に導入し、そして細胞周期のG1期が少なくとも1時間短縮されているかどうかをスクリーニングすることからなる哺乳動物サイクリン核酸分子のクローニング法。
(26)cdc28−13遺伝子、G1 cln遺伝子、有糸分裂clbサイクリン遺伝子およびサイクリンE遺伝子を含むゲノムを有し、細胞が哺乳動物細胞分裂キナーゼコード化核酸で形質転換されるとき細胞周期のG1期の短縮化を示す遺伝子変換酵母細胞。
(27)候補核酸を項目26に記載の遺伝子変換酵母細胞に導入しそして細胞周期のG1期が少なくとも1時間短縮されているかどうかをスクリーニングすることからなる、サイクリンEタンパク質と結合しそしてそれによって活性化され得るCDCタンパク質をコードする哺乳動物cdc遺伝子のクローニング法。
(28)項目26に記載の1238−14 C−cycE株(ATCC No.74099)の細胞。
(29)clnl、cln2およびcln3を欠くゲノムを有し、エピソームCLN3コード化ヌクレオチド配列、ならびに選択可能なマーカーおよび制御要素に作動可能に連結された哺乳動物サイクリン核酸配列を有し、その際上記哺乳動物サイクリン核酸は、図2に示されるサイクリンE cDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成することができ、かつ細胞周期のG1期を短縮することができる遺伝子変換酵母細胞。
(30)候補核酸分子を項目29に記載の遺伝sに変換酵母細胞中に導入し、そして細胞周期のG1期の持続の復活についてスクリーニングすることを含む哺乳動物サイクリン核酸分子のインヒビターをクローニングする方法。
(31)図2に示されるcDNA配列によってコードされるサイクリンEの活性より大きいかまたは小さい活性を有するポリペプチドをコードし、その際該活性はCDK2キナーゼポリペプチドに対するポリペプチドまたはサイクリンEの結合親和性、ポリペプチドまたはサイクリンEおよびCDK2が一緒にポリペプチドまたはサイクリンE:CDK2複合体中に存在するときのCDK2キナーゼの酵素活性、およびサイクリンE:CDK2複合体と比較したときのポリペプチド:CDK2複合体の変化した安定性の中から選択される項目1に記載の単離された核酸分子。
(好ましい実施態様の詳細な説明)
サイクリンEと命名された新規なヒトサイクリンは、S.セレビシエにおけるトリプルcln欠失を相補うことによって単離した。サイクリンEはCDC28遺伝子との相互作用を示し、サイクリンEがCDC28タンパク質との相互作用によってスタート時に機能を果たしたことを示唆していた。サイクリンEと相互作用してcdc28突然変異を有する酵母でスタートを行い得る2つのヒト遺伝子を同定した。1つはcdc2−HSでありそして2番目はツメガエルCDK2のヒト相同体であった。サイクリンEは大腸菌で産生され、ヒトG1細胞から得られた抽出物中のCDC2タンパク質と結合しそしてこれを活性化させ、そしてサイクリンEに対する抗体はHeLa細胞から得られるヒストンH1キナーゼを免疫沈降させた。サイクリンEとCDC2またはCDK2との間の相互作用はヒト細胞におけるG1期からS期への移行で重要であると思われる。
サイクリンEと命名された新規なヒトサイクリンは、S.セレビシエにおけるトリプルcln欠失を相補うことによって単離した。サイクリンEはCDC28遺伝子との相互作用を示し、サイクリンEがCDC28タンパク質との相互作用によってスタート時に機能を果たしたことを示唆していた。サイクリンEと相互作用してcdc28突然変異を有する酵母でスタートを行い得る2つのヒト遺伝子を同定した。1つはcdc2−HSでありそして2番目はツメガエルCDK2のヒト相同体であった。サイクリンEは大腸菌で産生され、ヒトG1細胞から得られた抽出物中のCDC2タンパク質と結合しそしてこれを活性化させ、そしてサイクリンEに対する抗体はHeLa細胞から得られるヒストンH1キナーゼを免疫沈降させた。サイクリンEとCDC2またはCDK2との間の相互作用はヒト細胞におけるG1期からS期への移行で重要であると思われる。
本発明は、図2の1位から1185位までで示されるヒトサイクリンE cDNAと緊縮(stringent)条件下でハイブリッド形成し得る核酸分子を提供する。図2ではcDNAの一本(+)ストランドだけしか示されていないが、当該技術分野の熟練者はこれによってその相補的(−)ストランドも同様に開示されていると認識するであろう。核酸分子によって、DNA、RNAおよび/または合成ヌクレオチド配列、例えば、示されたサイクリンEヌクレオチド配列の少なくとも1つの螺旋ターン(約10から15個のヌクレオチド)と同一、相同または相補的であるオリゴヌクレオチドが意味される。本発明は、サイクリンE mRNAsの代替的スプライシング、遺伝的多型性および腫瘍原の転位から生じる3つ以上のサイクリンE cDNAsを提供する。当該技術分野の熟練者は、サイクリンE核酸の密接に関連する群のメンバーが、図2のヌクレオチド配列またはその相補的(−)ストランドの全部または部分と緊縮(stringent)条件下でハイブリッド形成し得ることによって容易に同定されると認識するであろう。緊縮条件下でのハイブリッド形成可能性によって、標準的な条件下、例えば相補的ヌクレオチド配列のハイブリッド形成に不利益である高温および/または低塩含量下で、開示されたサイクリンE核酸配列(cDNA、mRNAまたはゲノムDNAのいずれかとして)の少なくとも1領域またはその相補的ストランドに対する核酸分子のアニーリングが意味される。適当なプロトコール(0.1×SSCを含有する、68℃で2時間)はマニアチス(Maniatis)T.等の分子クローニング:実験室マニュアル、コールドスプリングスハーバーラボラトリー(Cold Springs Harbor Lboratory)、1982年、387〜389頁に記載されている。このようなハイブリッド形成核酸分子は欠失、点変異、塩基置換、フレームシフト、代替的ORFs、mRNAスプライシングおよびプロセッシング、または転写後修正(例えば、メチル化等)によって開示された配列に関連することができる。例えば、アンチセンス核酸が提供され、これはサイクリンE配列と相補的なヌクレオチド配列を有しておりそして例えば、サイクリンE mRNAと結合しそしてその転写を阻止することによってサイクリンE遺伝子の発現を阻害できることを特徴としている。アンチセンス核酸は、例えば、アンチセンス核酸をコードするベクターDNAまたはRNA配列を用いて細胞を形質導入(transduction)させるかまたはトランスフェクション(transfection)した後に宿主細胞内でコードさせるか、或いはアンチセンス核酸は合成オリゴヌクレオチドであることができる。このようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは多様な手段によって、例えばアンチセンスmRNAを細胞内にコードするレトロウイルスベクターを用いて、または細胞とアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有するリボソームを融合させること等によって細胞中に導入される。主題のアンチセンス核酸分子は緊縮条件下で示されたサイクリンE核酸、その相補的ストランド、サイクリンE遺伝子の5’転写制御領域またはサイクリンE mRNAの転写制御領域とハイブリッド形成できることを特徴としている。
本発明の単離された核酸は好ましくはサイクリンEポリペプチドをコードする。当該技術分野の熟練者は開示されたサイクリンEヌクレオチド配列によって種々の合成ポリペプチドの構築が可能になることを知っているので、上記の単離された核酸分子は必ずしも上記ポリペプチドをコードしなくても良い。このような合成ポリペプチドは長さが変動し(例えば約5個のアミノ酸から数百個のアミノ酸まで)、そしてコードされたサイクリンEポリペプチドの選択された領域に対応して構築される。かくして、主題のサイクリンEポリペプチドは単離されたサイクリンEポリペプチド(即ち、正常な細胞中に見られる)、突然変異ポリペ,プチド(例えば、変異原から生じるかまたは腫瘍細胞中に見られる)および化学的に修飾されたポリペプチド(例えば、1つまたはそれ以上の化学的に改変されたアミノ酸、その際指示されたアミノ酸を別のアミノ酸に変更することができる、または化学的に置換されたか若しくは誘導された等)を包含する。サイクリンEポリペプチドの機能部位は、例えばサイクリンE核酸の変異体を構築し、そしてCDCタンパク質キナーゼと結合しないか若しくはこれを活性化しないかまたは細胞周期を進行させないような機能特性の変化を有している発現産生物の構成を試験して同定される。このような変異体を構築するのに特に有用なものは、例えば、サイクリンA、B、C、DおよびE間で保存されるかまたはサイクリンE属のメンバーの間で保存されている保存ヌクレオチドまたはアミノ酸配列領域である。サイクリンEの保存領域は機能的でありそしてポリペプチドのタンパク質の構造領域である。
実例的な好ましい特徴において、細胞内でサイクリンEポリペプチドが発現するとサイクリンEがCDCタンパク質キナーゼと結合してこれを活性化させ、そして細胞周期のG1期から細胞を進行させる或る種の成長因子および血清要件を消失させる点まで、細胞内のサイクリンE値を上昇させることができる。その結果として、細胞周期のG1期が短縮される。G1期は一般的に約8から約12時間継続し、そして細胞内でサイクリンEポリペプチドが発現すると(または細胞をサイクリンEポリペプチドに暴露すると)G1期を約1時間から数時間短縮させることができる。本発明のサイクリンが細胞周期のG1期を短縮させることは、以下の実施例で提供されるようなモデル試験系を使用して、例えば酵母の「598−5」または「1238−14C」株によって当該技術分野の熟練者は容易に測定することができる。或いは、NIH3T3細胞のような哺乳動物細胞は、サイクリンEハイブリッド形成核酸を含有する発現ベクターでトランスフェクションするかまたは形質導入することができ、そしてその後3T3の細胞周期のG1期の長さは、以下に提供する説明的な実施例のような動力学的細胞周期アッセイで測定することができる。例えば、当該技術分野の熟練者は、M期からS期への細胞の進行が三重水素化チミジンまたはブロモデオキシウリジン(BrdU)の導入を測定する(時間および分で)ことによって測定できることを知っているであろう。サイクリンE核酸は、試験細胞中にトランスフェクションされるかまたは形質導入されたとき、M期からS期への細胞のより早い進行を誘導し;または外因性刺激物、即ち血清または成長因子等を必要としないでM期からS期への細胞の進行を誘導する。どちらの場合にも、主題のサイクリンを試験細胞中に導入するとG1期の短縮およびM期からS期へのより急速な進行をもたらす。
サイクリンEが結合するCDCタンパク質キナーゼの代表的な例にはCDC2、CDC28、CDCK2−XL、CDC2−HSおよびCDK2−HSが含まれる。(この専門用語「HS」はホモサピエンスを示しそして「XL」はアフリカツメガエルを示すことに注意されたい。)本発明はまた、サイクリンEと結合しそしてそれによって活性化される他のCDCキナーゼの同定法およびクローニング法も提供する(以下の実施例10参照)。当該技術分野の熟練者は、開示されたアミノ酸配列を修正し、そして変化した機能特性、即ち変化したCDCタンパク質キナーゼとの結合、その活性化および/または細胞周期のG1期の変化した短縮化能力を試験することによって合成サイクリンEポリペプチドが容易に構築されることを理解するであろう。このような合成サイクリンEポリペプチドは、正常若しくは変異サイクリンE(即ち、正常若しくは変異細胞に由来する)またはそのCDCタンパク質キナーゼ結合パートナーの有用な競合的および非競合的インヒビターである。このような合成ポリペプチドには、例えば、a)CDCタンパク質キナーゼによって活性化されるホスホリラーゼ活性;b)例えば、CDCタンパク質キナーゼを活性化させるサイクリンEの活性;c)サイクリンE:細胞分裂キナーゼコンプレックスの細胞周期促進活性;および/またはd)サイクリンE遺伝子の5’領域と結合する転写制御因子を増加させ、減少させまたはそうでない場合修正し若しくは調節することによって、サイクリンE:CDCタンパク質キナーゼコンプレックスの機能特性を変化させるのに有用なポリペプチドアンタゴニストまたはアゴニストも含まれる。
熟練技術者は更に、組換え体サイクリンE核酸、細胞およびインビトロアッセイに関する本明細書の開示は細胞中のサイクリンEタンパク質またはサイクリンE核酸の機能的活性を調節するかまたは完全に変化させる化合物をスクリーニングする機会を提供すると理解するであろう。この文脈で、「調節する」とは、主題化合物が1つまたはそれ以上のサイクリンEタンパク質または核酸の機能的活性を増加させるかまたは減少させることを意味するように意図するものであり、一方「変化させる」とは、主題化合物がサイクリンEタンパク質または核酸の機能的活性を別の機能的活性に完全に変化させることを意味するように意図する。この文脈で、サイクリンEタンパク質の活性を「調節する」化合物の例は、サイクリンEをCDCキナーゼに結合させた後にCDCキナーゼ活性値を減少させ得るインヒビターであり;そしてサイクリンEタンパク質の活性を「変化させる」化合物の例はCDK2の代わりにCDC2と結合するようにサイクリンEを誘導する化合物である。
実施例(以下)で説明するスクリーニングアッセイには、生化学的アッセイ(例えば、CDC2およびCDK2ホスホリラーゼ活性に与えるサイクリンEタンパク質の影響の測定)、および細胞のインビトロアッセイ(例えば、細胞増殖に与えるサイクリンE発現の影響の測定)が含まれる。実例的な生化学的アッセイはサイクリンE分子活性を調節する化合物をスクリーニングする際に特に有用であると思われ、一方細胞アッセイは細胞内のサイクリンE活性を変化させる化合物をスクリーニングする際に特に有用であるとおもわれる。例えば、増殖中の細胞では、サイクリンEは、環境に対する細胞の増殖応答を制御する際に他のサイクリン、CDCキナーゼ、成長因子第2メッセンジャー、転写制御因子等と一緒に関与する。当該技術分野の熟練者は、分子結合部位でのリガンドの結合が、間接的な態様で変化する(例えば、遠位の別の(異なる)リガンドと結合した後に誘導される高次構造の変化によって)だけでなく直接的な態様で調節され得る(例えば、部位をブロックすることによって)と理解するであろう。この点に関しては、特定のCDCキナーゼ(または、以下で検討する幾つかの他の細胞制御因子)に対するサイクリンEの結合部位特異性はサイクリンEポリペプチドの遠位で結合する物質によって完全に変化させる(例えば、異なるリガンドと結合するように)ことができる。後者の幾つかのアッセイでスクリーニングできる化合物の例には少なくとも1つの核酸(例えば、タンパク質と結合してそれらの機能を変化させるDNAオリゴヌクレオチドアプタマー(aptamer)、タンパク質、炭水化物、レクチン、有機化学品等が含まれる。このようなスクリーニングアッセイは動物およびヒトで有用な医薬品を提供する候補となる治療剤を確認するために有用であると思われる。
更になお、細胞周期でサイクリンEおよびサイクリンE:CDCタンパク質キナーゼが重要であるため、サイクリンEまたはサイクリンE含有コンプレックスと結合することによってこれらの活性を制御する固有の制御メカニズムが細胞内に存在していると理解されている。このような制御因子には、少なくとも:a)コンプレックスと結合しそしてコンプレックスを脱安定化させるかまたは安定化させることによって制御作用を発揮する補因子;b)コンプレックス中で一緒に結合されているようなCDCタンパク質キナーゼおよび/またはサイクリンEポリペプチドにおいて高次構造の変化を誘導してコンプレックスの活性を調節するかまたは変化させる物質;c)コンプレックスのメンバーの1つまたは両者を不活性化させる酵素;および、d)サイクリンEまたはサイクリンEコンプレックスと結合して機能活性を調節するかまたは変化させる細胞制御因子(例えば、シグナル形質導入セカンドメッセンジャー、転写制御因子等)を含めることができる。かくして、このような制御因子の活性を抑制するかまたは促進することによって細胞内のサイクリンE:CDCタンパク質キナーゼコンプレックスの活性を制御するポリペプチドを構築することができる。当該技術分野の熟練者は、サイクリンEの機能領域が三次元分子モデルおよび模倣化合物、例えば、サイクリンEとそのCDCタンパク質キナーゼ結合パートナーとの間の三次元的相互作用を模倣するように構築された有機化学品の構成に対して特に魅力ある標的を表わしていると認識するであろう。特に好ましい実施態様では、本発明は、CDCタンパク質キナーゼと結合するがこれを活性化させない人工的なサイクリンEポリペプチドをコードする単離された核酸分子を提供する。
本発明の他の好ましい実施態様では、サイクリンEヌクレオチド配列の次の領域(即ち、サイクリンA、BおよびEの間で保存されている領域)に対応する核酸によってコードされるポリペプチドが提供される:即ち、a)カルボキシ末端ロイシン繰り返し配列(即ち、図2に示されるサイクリンE cDNAの640位から1185位の間、そして更に詳細には631位から936位の間に存在する);b)MRAIL配列(即ち、図2に示されるサイクリンE cDNAの385位から645位の間に存在する);およびc)C末端配列領域(即ち、図2に示されるサイクリンE cDNAの1048位から1080位の間に存在する)。MRAIL配列は必要であるが、細胞分裂キナーゼと結合するには十分ではない。
更に、突然変異サイクリンEヌクレオチド配列は図2に示された配列から構築させることができると理解される。主題の突然変異サイクリンEヌクレオチド配列は、サイクリンEポリペプチドが非形質転換哺乳動物細胞中のCDCキナーゼに対して示すより高いかまたは低い結合親和性をCDCキナーゼ(例えば、CDK2)ポリペプチドに対して有していることができる突然変異サイクリンEポリペプチドをコードする能力によって認識される。主題の突然変異ポリペプチドはまた、主題の突然変異サイクリンEポリペプチドとCDK2がコンプレックス中に一緒に存在しているとき、CDK2キナーゼの酵素活性を変化させる(即ち、増加させるかまたは減少させる)こともできる。酵素活性の変化の実例には:a)酵素活性(例えば、Km、Vmax、kcat等)の増加または減少;b)コンプレックス中のキナーゼの安定性の変化(例えば、コンプレックスまたは酵素活性の時間依存性の低下);c)キナーゼのタンパク質分解不活性化を受ける影響の変化;d)サイクリンE:CDK2コンプレックスと制御因子(上記した)の結合に応答して該コンプレックスからCDK2の解離を受ける影響の変化;またはe)競合的または非競合的インヒビターに対するコンプレックス中のキナーゼの感受性の変化。熟練した技術者は、図2の配列を変異させ(例えば、化学物質または照射を用いて)、そして変異させたサイクリンEヌクレオチド配列を含有する細胞のクローンを同定しおよび/または選択する種々の方法を知っているであろう。主題の変異サイクリンEヌクレオチド配列は細胞内のサイクリンE:CDK2コンプレックスの活性を調節するかまたは変化させるのに有用である。例えば、腫瘍細胞内でCDK2キナーゼ活性を低下させそして細胞増殖を緩慢化させるかまたは最終的に分化した細胞でCDK2キナーゼを増加させそして増殖を刺激する。主題の変異サイクリンEヌクレオチド配列は、実施例9の実例的なレトロウイスルベクターのようなベクターを使用して導入することができる。
人工のサイクリンEポリペプチド、有機模倣化学品、アンチセンスRNAおよびオリゴヌクレオチド等は、組織内の継続中の回復有糸分裂活性を抑制しないで、成長因子、マイトジェン、サイトカイン等で誘発される細胞増殖の選択的インヒビターとして広範な有用性が見い出されている。かくして、本発明の合成ペプチド、模倣物およびアンチセンス実施態様は種々の抑制活性を望ましくは示すと考えられよう;例えば、主題インヒビターを2つの細胞(1つはサイトカインで誘発されて増殖し、そして第2のものは有糸分裂している)に導入するとき、最初の細胞は抑制されるが2番目の細胞は抑制されない。本発明の主題の合成サイクリンEポリペプチドは、G1期からS期に移行している細胞を抑制するだけで、既に有効に有糸分裂しているような細胞は抑制しない。かくして、当該技術分野の熟練者は、有用性の代表的な例には免疫応答の誘導の抑制;継続中の免疫応答のクローン増大(即ち、TかまたはBリンパ球のどちらか)の中断;G1期からS期に移行しつつある腫瘍細胞または転移細胞の成長因子で誘導される増殖の抑制;そして成長因子で誘導される組織肥大(例えば、アテローム性動脈硬化症プラークにおけるような血管平滑筋細胞の増殖、リウマチ性関節におけるような線維芽細胞や結合組織細胞の間葉肥大等の抑制)が含まれることを知っているであろう。主題の選択的インヒビターは、例えば、a)インビトロの試験細胞中のサイクリンEポリペプチドまたはmRNAの値を減少させる(または増加させる)(即ち、向じタイプの対照細胞と比べて);b)CDK2とコンプレ
ックスを形成することができるサイクリンEの値を減少させる(または増加させる);またはc)哺乳動物細胞中の細胞周期依存性キナーゼのCDK2属のメンバーに対するサイクリンEポリペプチドの結合親和性を減少させる(または増加させる)能力によって都合良く認識される。熟練した技術者は、主題の選択的インヒビターの活性の低下(または上昇)の測定は非同調または同調細胞培養物を使用して達成することができる;例えば、細胞の同調培養物では、サイクリンE値および活性は細胞周期のG1期中に試験される。
ックスを形成することができるサイクリンEの値を減少させる(または増加させる);またはc)哺乳動物細胞中の細胞周期依存性キナーゼのCDK2属のメンバーに対するサイクリンEポリペプチドの結合親和性を減少させる(または増加させる)能力によって都合良く認識される。熟練した技術者は、主題の選択的インヒビターの活性の低下(または上昇)の測定は非同調または同調細胞培養物を使用して達成することができる;例えば、細胞の同調培養物では、サイクリンE値および活性は細胞周期のG1期中に試験される。
本発明の特徴には、哺乳動物細胞用のウイルスベクター(例えば、実施例9に示したものと類似するレトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、CMV等)のような組換え体発現ベクター、並びに核酸を原核細胞および真核細胞にトランスフェクションしそして形質導入するのに有用なプラスミドまたはコスミドベクターが含まれる。本発明の組換え体発現ベクターは例えばサイクリンE核酸を適当な対照配列に操作して結合させることによって構築させる。操作的に結合するとは本明細書では、好ましくは、発現ベクター内の対照配列(即ち、サイクリンE遺伝子の発現、過剰発現および構成発現を行い得る制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー、オペレーター配列等を有している)が現す予め定められた陽性(または陰性)の制御対照下でサイクリンEの転写および翻訳に適する方法でサイクリンE核酸を発現ベクター核酸に結合させることを意味するように使用される。選択可能なマーカーは一般的には発現ベクターに含まれている。このような選択可能なマーカーの代表的な例には酵素、抗原、医薬品耐性マーカーまたは細胞の増殖要件を充足させるマーカーが含まれる。或る種の細胞では、サイクリンE核酸によるトランスフェクションまたは形質導入が選択可能なマーカーの1つのタイプとして働く選択的増殖/成長の利益を提供する(例えば、以下の実施例に記載した代表的な酵母株「598−5」または「1238−14C」のような、細胞周期の進行を停止された変異株において)ことも評価されよう。主題の発現ベクターはサイクリンEポリペプチド、突然変異サイクリンEポリペプチド、およびアンチセンス核酸を生じさせるために細胞をトランスフェクションしそして形質転換するのに有用である。例えば、本発明の特徴には、CDCタンパク質キナーゼを活性化しそしてG1期からS期までの制限点の細胞周期を進行させ得るポリペプチドを生じさせるために、トランスフェクションされそして形質導入された細胞を使用する方法が含まれる。サイクリンE核酸によってコードされたポリペプチドが細胞周期を進行させ得ることを測定するために幾つかの方法が利用可能である。酵母細胞および哺乳動物細胞に係わる代表的な例は以下の実施例に記載する。
本発明はまた、サイクリン(例えば、サイクリンE)発現ベクターを用いて形質導入するかまたはトランスフェクションされている細胞タイプも提供する。1つの好ましい実施態様では、サイクリンEを構成的に過剰発現する細胞はその親細胞より速い速度で増殖する。下記実施例14で説明した、サイクリンEを形質導入したヒト二倍体線維芽細胞は対照の形質導入細胞または正常細胞より長さおよび幅が20〜50%小さかった。熟練した技術者は小さい急速に増殖している細胞、例えば、費用効率的な態様で増殖させることができそしてプログラムされた老化現象をそれらの正常な対応物より速く受けると思われる細胞の遺伝子治療での利点を理解するであろう。遺伝子変換動物(例えば、実験動物および家畜動物)はこのような小さい急速に増殖する細胞から構築させることができるということも理解されよう。熟練した技術者は、主題細胞によって提供される利点には、a)通常は培養することが困難であるかまたは不可能である最終的に分化された細胞タイプ(例えば、幹細胞)の組織培養物の増殖の改善;およびb)細胞増殖用(例えば、筋肉または神経細胞のようなインビトロでは増殖することが困難である細胞用)の成長因子に対する依存性の低下(または非依存性)が含まれ、低血清(または血清不含)培地中で哺乳動物細胞の培養物(例えば、生物療法剤を製造する細胞の産生培養物)をより急速に増殖させることができることも理解するであろう。本明細書での開示は、幾つかの決定点の各々で細胞周期の進行を測定する際にサイクリンの並々ならぬ重要性を確認する。用語「決定点」とは、細胞周期を進行させるために適当なシグナルを受け取るときまで細胞がその増殖を停止すると思われる細胞周期中の点を意味すると当該技術分野では良く理解されている。下記実施例14に表わした結果は、細胞周期のG1期内の決定点で潜在的なCDK2キナーゼ活性を活性化させる際のサイクリンEの重要性を示すものである。幾つかの決定点が細胞周期の種々の期に存在する。本明細書の開示は、少数のサイクリン、即ち1つのサイクリンを細胞周期で操作して各決定点で細胞周期を進行させることができる。かくして、細胞内で比較的少数のサイクリンを過剰発現させると、細胞を外来性成長因子にほぼ完全に非依存性とするのに十分であると思われる。
他の実施態様では、本発明は、サイクリンEポリペプチドと特異的に結合できるポリクローナルおよびモノクローナル抗体分子のようなサイクリンEポリペプチドの免疫学的結合パートナー並びにそれらの種々の抗原結合フラグメントを提供する。このような免疫学的結合パートナーはハイブリドーマまたはrDNA発現技術によって生成させることができそして治療、精製および診断適用での有用性が見い出されている。治療適用には、サイクリンEとそのCDCタンパク質キナーゼの結合を抑制する結合パートナー;CDCタンパク質キナーゼを調節する結合パートナー;および細胞内でサイクリンEの制御調節を変化させる結合パートナーが含まれる。精製適用の代表的な例には免疫化学法および免疫アフィニティークロマトグラフィーが含まれる。診断適用の代表的な例には酵素結合および放射性同位元素イムノアッセイ、免疫蛍光法、蛍光イムノアッセイ、時間解析蛍光イムノアッセイ等が含まれる。これらのアッセイに使用された特異的な結合パートナーは遊離サイクリンEポリペプチドと、CDCタンパク質キナーゼとのコンプレックスで結合したサイクリンEとを区別することができると思われる。当該技術分野の熟練者は、高次構造が変化したポリペプチドによって「ネオ」(新規)抗原が獲得されることを知っており、そして更にはサイクリンEとCDCタンパク質キナーゼとの間の結合が両ポリペプチドでのこのような高次構造の変化を誘導することも認識しているであろう。サイクリンEに特異的な結合パートナーは、腫瘍細胞のような細胞で遊離サイクリンE(またはコンプレックス会合サイクリンE)の値(例えば、タンパク質または抗原)および機能活性(例えば、ホスホリラーゼキナーゼ活性化)を検出しそして定量する診断アッセイで一般的に有用であることが見い出されている。主題の診断アッセイには、a)非同調細胞集団(例えば、腫瘍剖検標本)でのサイクリンEの絶対的な値および活性を検出し;b)同調細胞集団(例えば、チミジン停止によって同調された細胞集団)の細胞周期の種々の期のサイクリンEの値および活性を比較し;そしてc)生物学的液体(即ち、血液、血清、血漿、粘液分泌物、CNS液体、細胞抽出物等)中のサイクリンEの値および活性を測定するためのアッセイが含まれる。悪性の生物学的液体(例えば、腫瘍細胞抽出物、癌患者の血清等)に発現されるサイクリンEの絶対的な値および活性並びに細胞周期の種々の期で調製された細胞抽出物に発現される値および活性は、細胞増殖速度に関する情報を提供することができる。この点に関して、アッセイされたサイクリンEの値および活性は、
a)分化した細胞は形質転換した細胞より緩慢に増殖し;形質転換した細胞より低いサイクリンEタンパク質値および活性値を示し;そして(形質転換した細胞とは対照的に)分化した細胞は細胞周期のG1期にだけサイクリンEを発現するので、腫瘍を段階化させ;
b)転移可能な急速に増殖している悪性細胞は一般的に分化した細胞より速く増殖し;指数的に増殖する細胞はより高い絶対的な値(または活性)のサイクリンEを発現するか、或いはより高い値(活性)のサイクリンEが細胞周期の特定の期、例えばS、G1またはG2期に存在することができるので、予後を決定し、即ち、患者の生存性および腫瘍の再発時間を予測し;そして/または
c)より緩慢に増殖している細胞はより低い値(または活性)のサイクリンEを発現することができ(即ち、急速に増殖している転移細胞より)そして更にはそれほど徹底的でなく且つより長期間の治療規制に対して一層応答性でもあるので、療法、即ち特定の治療規制の成功を予測する、
ための診断マーカーとして役立てることができる。
a)分化した細胞は形質転換した細胞より緩慢に増殖し;形質転換した細胞より低いサイクリンEタンパク質値および活性値を示し;そして(形質転換した細胞とは対照的に)分化した細胞は細胞周期のG1期にだけサイクリンEを発現するので、腫瘍を段階化させ;
b)転移可能な急速に増殖している悪性細胞は一般的に分化した細胞より速く増殖し;指数的に増殖する細胞はより高い絶対的な値(または活性)のサイクリンEを発現するか、或いはより高い値(活性)のサイクリンEが細胞周期の特定の期、例えばS、G1またはG2期に存在することができるので、予後を決定し、即ち、患者の生存性および腫瘍の再発時間を予測し;そして/または
c)より緩慢に増殖している細胞はより低い値(または活性)のサイクリンEを発現することができ(即ち、急速に増殖している転移細胞より)そして更にはそれほど徹底的でなく且つより長期間の治療規制に対して一層応答性でもあるので、療法、即ち特定の治療規制の成功を予測する、
ための診断マーカーとして役立てることができる。
細胞中のサイクリンEの値(または活性)を測定する主題アッセイは、細胞周期のG1期の細胞に影響を与える特定の治療用薬剤に対する患者の腫瘍の応答性も示唆することができる。当該技術分野の熟練者は、主題の診断アッセイが、腫瘍を段階化させる方法、適当な治療規制を選択する方法、療法の成功を評価する方法および患者の危険性または生存性を評価する方法を決定する際に開業医に有用である可能性がある。
他の実施態様では、本発明は非同調細胞でのサイクリンE:CDK2ポリペプチドコンプレックスの絶対的な値(または機能活性)および細胞周期の種々の段階でのサイクリンE:CDK2コンプレックスの値(または活性)を測定する診断アッセイを提供する。非形質転換細胞では、サイクリンE:CDK2コンプレックスのピーク量は細胞周期のG1後期に生じ、例えば細胞周期の他の期より4倍から6倍高い値である。形質転換細胞では、サイクリンEおよび/またはCDK2の構成の過剰発現によって、細胞周期のG1、G2、MおよびS期で種々に検出され得るサイクリンE:CDK2コンプレックスの値と相違するようになる。細胞中のサイクリンE/CDK2コンプレックスの値を測定する主題のアッセイは患者の悪性細胞を、例えば上記したようにして、評価するのに有用であると思われる。
他の実施態様では、本発明は細胞内のサイクリンEおよびCDK2の染色体転移を測定する診断アッセイを提供する。サイクリンEおよびCDK2遺伝子の染色体位置はオリゴヌクレオチドプローブまたはcDNA等とのその場でのハイブリッド形成により染色体塗抹標本で都合良く測定される。サイクリンE遺伝子またはCDK2の転移、即ち正常細胞で見られる染色体位置から形質転換細胞で見られる位置への転移は、サイクリン、例えばサイクリンEかまたはCDCキナーゼ、例えばCDK2かのどちらかの遺伝子発現の正常な転写調節制御を除くことによって、制御されていない細胞増殖の表現型に寄与することができる。本明細書で開示された所見は、多数の成長因子に由来する第2のメッセンジャーシグナルが少数の異なるサイクリン:CDCキナーゼコンプレックスに集中する、これまでに認識されていない共通の結合点を示唆している。第2のメッセンジャーとサイクリン:CDCキナーゼコンプレックスの分子相互作用の結果は、細胞が細胞周期を進行させるかどうかを決定する。かくして、細胞内でのサイクリン遺伝子の転移は劇的な結末を有する。転移が過剰発現を誘導する場合には、細胞は悪性(即ち、制御されていない)の増殖表現型を獲得することができ、そして転移が過少発現を誘導する場合には、細胞は早期老化を受けると思われる。個人からの細胞試料のサイクリンEまたはCDK2染色体転移可能性をスクリーニングすると癌を発生させる可能性の相対的な危険因子を示唆することができる。このような転移が検出された場合には、転移した染色体位置のサイクリン遺伝子(例えば、サイクリンE)またはCDCキナーゼ遺伝子(例えば、CDK2)の正常な制御を回復させると、形質転換細胞の悪性表現型を逆転させることができる。例えば、サイクリンE遺伝子(CDK2遺伝子の)およびその制御因子は、転移遺伝子を、例えばその場に向けられた組み換え/突然変異または標的化した統合を使用して転移遺伝子を中断させて、不活性化させるように設計した遺伝子療法ベクターの標的として役立てることができる。
本発明はまた、細胞周期の進行に必要なcln1、cln2およびcln3遺伝子を欠いているがCLN3をコードし得るエピソーム核酸を有しているゲノムを含有するように操作される酵母細胞の突然変異株も提供する。代表的な実施態様は酵母株「589−5」であり、これは哺乳動物サイクリン遺伝子を確認するために有用である。株「589−5」は、受理番号74098でメリーランド州ロックビルの米国菌培養収集所(American Type Culture Collection:ATCC)に寄託されている。サイクリンE核酸をこの株の突然変異酵母細胞に導入するとき、細胞はスタートから細胞周期を経由してS期に進行する。他のものは以前に、酵母cdc遺伝子を同定しそしてクローン化するには幾分類似する突然変異酵母の構成が有用であることを示しているが、哺乳動物のサイクリンE cDNAを同定しそしてクローン化するためには、そしてまた哺乳動物のcdcタンパク質キナーゼcDNAsを同定しそしてクローン化するためにも主題の株が有用である。
本発明は、cdc28−13遺伝子、調節プロモーター(例えばGAL)の制御下の内在性G1 CLN(例えばCLN3)、有糸分裂CLBサイクリン(例えばCBC)およびサイクリンE遺伝子を有する酵母細胞の他の突然変異株、例えば代表的な酵母株「1238−14 C−サイクリンE」も提供する。この場合に、調節プロモーターは、代謝または増殖に必要な因子(「調節」)の存在下でG1サイクリンを発現させる。次に、G1サイクリンはcdc28−13遺伝子によってコードされる細胞分裂キナーゼと結合してそれを活性化させ、そしてCDKの活性化は細胞が増殖しそして継代することを可能にする。株「1238−14 C−サイクリンE」は、受理番号74099でメリーランド州ロックビルの米国菌培養物収集所(Amefican Type Culture Collection:ATCC)に寄託されている。細胞周期は、cdcタンパク質キナーゼ核酸が導入されるまで停止される。かくして、突然変異細胞のこの株は、真核宿主細胞中でサイクリンEと会合しそして細胞周期をG1期からS期に進行させるcdcタンパク質キナーゼを同定しそしてクローニングするのに有用である。
本発明はまた、サイクリンE:CDCタンパク質キナーゼコンプレックスと結合しそして該コンプレックスの活性を抑制するか若しくは促進するかまたは該コンプレックスの半減期を変える等を行うポリペプチドのような制御剤をクローニングする方法も提供する。このような制御剤をコードする核酸は候補核酸分子を酵母細胞、または哺乳動物細胞の突然変異株に導入することによって同定され、その際細胞のG1からS期への進行は、サイクリンE:CDCタンパク質キナーゼの活性に依存する。この態様で有用な突然変異酵母株の代表的な例は、下記実施例で更に詳細に記載されている株HU4のような、サイクリンE遺伝子でトランスフェクションされるか形質導入された株598−5によって提供される。制御剤をコードする核酸は、G1からS期の細胞の進行を阻止する能力が知られている。かくして、記載した突然変異酵母株の場合には、任意の候補cDNAでトランスフェクションまたは形質導入された後に、スタート点で細胞周期を進行し得ない細胞、例えば哺乳動物、昆虫、鳥類、爬虫類、両生類のクローンを同定するために、重複スクリーニング技術を使用することができる。
以下に記載するデータは、サイクリンEがS.セレビシエCLN遺伝子にとって代わり、そしてCDC28と相互作用してスタートを実施することを示している。ヒトCDC2遺伝子属の少なくとも2つの異なるメンバーがサイクリンEと相互作用して発芽酵母、CDC2−HSおよびCDK2−HS内でスタートを制御することができよう。我々は、サイクリンEタンパク質がヒトリンパ球G1細胞から得られる抽出物でp34CDC2タンパク質と結合してそれを活性化したことおよびサイクリンEがHeLa細胞内でHIキナーゼ活性と関係していることも示した。他の者はサイクリンE mRNAがHeLaの細胞周期のG1後期中に特異的に存在していたことを見い出した(Lew等、1991年)。これらの結果を合わせると、サイクリンEがヒトの細胞周期のG1期からS期への移行でp34 CDC2キナーゼの制御因子として機能することができる。
サイクリンEがトリプルcln欠失を救ったとの本発明者の結果に関する解釈は、有糸分裂サイクリンであるヒトサイクリンBも酵母CLN遺伝子を代替するという事実によって複雑になった。サイクリンBがCLNタンパク質として機能するメカニズムに関係なく、サイクリンBがこの役割を果たしたという事実によって、我々の相補性アッセイがCLNタイプのサイクリンを特異的に同定したわけではなかったことが暗示された。それ故、サイクリンEの機能を更に完全に理解するためには、正常なヒト細胞の細胞周期中のサイクリンEタンパク質の発生量の分析およびCDC2またはCDC2関連タンパク質と該タンパク質の会合の分析を待たなければならない。
酵母、そして多分大部分の生物では、CDC2タンパク質は細胞周期中少なくとも2回;G1/S期、そして更にはG2/M期でも機能する。各時点で、CDC2タンパク質は特有のタイプのサイクリン:G2MではBタイプのサイクリンそしてG1/SではCLNs(少なくとも発芽酵母で)と会合する。それ故、各制御点で集合した特有のサイクリン−CDC2コンプレックスはCDC2キナーゼに必要な特異性を付与してS期かまたは有糸分裂を活性化するであろうと期待されていた。例えば、CDC2キナーゼの基質特異性または細胞内局在化はその特別のサイクリンパートナーによって決定されよう。ヒトサイクリンBがCLNタンパク質を代替する能力は、この単純な仮説とは反対に、表面に見られる。或いは、細胞周期の種々の時点でのp34 CDC2の作用の特異性は、少なくとも1部、CDC2タンパク質それ自体によって測定することができよう。これはCDC2タンパク質の細胞周期特異性修正による(SimanisおよびNurse、1986年;Lee等、1998年;GouldおよびNurse、1989年;KrekおよびNigg、1991年)かまたは、高等真核細胞では、細胞周期の種々の時点でのCDC2遺伝子属の種々のメンバーの活性化による(Paris等、1991年;PinesおよびHunter、1990年)ものであろう。CDC2遺伝子属の少なくとも2つの異なるメンバーが酵母内でスタートを実施することができるという本発明者の観察はこの考え方と一致する。このモデルでは、サイクリンタンパク質の周期的な蓄積と破壊によってp34キナーゼ活性化のタイミングは決定されるがその特異性は決定されないであろう。これに類似するモデルは、S.ポンベでの或る種のcdc2変異体の表現型に基づいて以前に提案されたことがある(Bfock等、1981年)。代替法としては、SまたはM期を誘導するためにCDC2またはCDC28に必要な特別の基質が細胞周期に依存する態様で利用可能になることである。しかし乍ら、本発明者は、本発明者の実験の設計ではサイクリン特異性に関する全ての正常な対照が観察されるようにはできないことを指摘する。例えば、強力なADHプロモーターによるヒトサイクリンBの発現は、通常はサイクリンB−CDC28の活性をG2/M移行に限定する或る種の制御過程を圧倒していたと思われる。
ヒトサイクリンEは発芽酵母CLNタンパク質よりヒトサイクリンAおよびBに密接に関連している。サイクリンのボックス内では、CLN1に対する同一性の値は21%でありCLN3に対しては17%である。これはヒトサイクリンAに対する49%の同一性およびヒトサイクリンBに対する44%に匹敵する。サイクリンのボックス領域外では、サイクリンEはヒトサイクリンまたは酵母CLNタンパク質のどちらとも広範な相同性を全く示さない。このことに基づくと、サイクリンEは酵母CLN遺伝子の直接的な相同体であるようには思われない。しかし乍ら、これらの機能的差異を決定する種々のサイクリン内の正確な領域は確認されていないので、上記の比較は注意して行わなければならない。更に、ヒトサイクリン間の類似性は、或る程度まで、ヒトCDC2タンパク質のような通常の標的との同時進化を反映すると思われる。
サイクリンE配列の他の2つの特徴に注目すべきである。本発明者のサイクリンEのクローンはサイクリンAとBの両方で見られるN末端配列を欠いており、これは有糸分裂での破壊を仲介するユビキチン化酵素の認識主要素であると考えられる(Glotzer等、1991年)。更に、サイクリンAおよびBと比較するとき、サイクリンEはC末端伸長を有している。このC末端領域は塩基性残基が側面にあり、そしてP(Pro)、E(Glu)、S(Ser)およびT(Thr)残基に富んでいる。このような「PEST」領域はタンパク質転換の制御に係わっていた(Rogers等、1986年〕。実際、酵母CLNタンパク質の安定性は、P、E、Sおよび丁残基に富むC末端領域によって決定することができる(Nash等、1988年;Cross、1990年;Hadwiger等、1989年)。これらの観察は、細胞周期中のサイクリンEの安定性が有糸分裂サイクリンとは異なって制御され得ることを示唆している。
高等真核生物では、細胞周期のG1期進行中のCDC2タンパク質の役割はあまり良くは理解されていない。多数の独立した観察は、CDC2タンパク質が細胞周期の上記部分に必須の機能を有していることを示唆している。アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して(Furukawa等、1990年)ヒト細胞内のインビボで、または免疫沈降法によって(BlowおよびNurse、1990年)ツメガエル抽出物内のインビトロでCDC2タンパク質を枯渇させると、DNA合成の開始を阻止することができる。ヒトS期細胞から得られるサイクリン−CDC2コンプレックスをGI細胞から得られる抽出物に添加するとDNA合成を活性化することができる(D’Urso等、1990年)。しかし乍ら、ネズミCDC2遺伝子り熱不安定性の突然変異は、非許容温度では有糸分裂への進入は阻止するがS期への進入は阻止しない(Th’ng等、1990年)。更に、酵
母CDC2タンパク質の抗体をヒト細胞へ顕微鏡下注射すると、G2/M移行を阻止するが、G1/S移行は阻止しない(Riabowol等、1989年)。CDC2遺伝子属の少なくとも2つの異なるメンバーがS.セレビシエでG1/S移行を制御するという我々の観察はこれらの明らかに矛盾する結果を説明するのに役立つと思われる。これらの1つのヒトCDK2遺伝子はG2/M期と対照させたときG1/S期で優先的に作用することができよう。それ故、高等真核生物では、酵母での状況とは対照的に、CDC2遺伝子属の多数のメンバーがG1/S制御に寄与することができる。或る状況下では、それらの役割は余分のものであり、一方他の状況下ではそれらは全て必須であると思われよう。
母CDC2タンパク質の抗体をヒト細胞へ顕微鏡下注射すると、G2/M移行を阻止するが、G1/S移行は阻止しない(Riabowol等、1989年)。CDC2遺伝子属の少なくとも2つの異なるメンバーがS.セレビシエでG1/S移行を制御するという我々の観察はこれらの明らかに矛盾する結果を説明するのに役立つと思われる。これらの1つのヒトCDK2遺伝子はG2/M期と対照させたときG1/S期で優先的に作用することができよう。それ故、高等真核生物では、酵母での状況とは対照的に、CDC2遺伝子属の多数のメンバーがG1/S制御に寄与することができる。或る状況下では、それらの役割は余分のものであり、一方他の状況下ではそれらは全て必須であると思われよう。
G1からSの間でのCDC2キナーゼの活性化はサイクリンとの会合を必要とすると思われる。S.セレビシエではCLNタイプのサイクリンの蓄積がスタートから移行する速度を限定する段階である(Nash等、1988年;Cross脇、1988年;Hadwiger等、1989年)。ヒト細胞では、S期の開始時のp34キナーゼの活性化は該キナーゼの高分子量コンプレックスヘの集合と関係があり(D’Urso等、1990年;Marraccino等、未発表データ)、p34とサイクリンタンパク質との会合が細胞周期のこの部分でのp34の活性を制御することを暗示している。本発明者はまた、SV40 DNA複製を活性化するためには、精製された組換え体二枚貝サイクリンAをヒトG1細胞抽出物に添加することで十分であったことも見い出した。これはサイクリンの蓄積がS期の開始時にp34キナーゼの活性化を限定する段階であることを示唆していた。
少なくとも4つの異なるヒトサイクリンは細胞周期のG1期またはS期で役割を果たすことが示唆されていた。これらにはサイクリンA(Giordano等、1989年;Wang等、1990年)、C(Lew等、1991年〕、D(またはpradl;Motokura等、1991年;Xiong等、1991年;Matsushimi等、1991年)およびE(本開示;Lew等、1991年)が含まれる。酵母では、ヒトサイクリンEはCDC2−HSかまたはCDK2−HSのどちらかと会合してスタートを行うことができる。インビトロでサイクリンEはCDC2−HSと結合してそれを活性化することができるが、G1細胞のCDK2を活性化する能力は未だ試験されていない。ヒトサイクリンAもCDC2遺伝子属の2つの異なるメンバー、CDC2−HSおよびCDK2であると思われる33kDaのタンパク質と会合することが見い出されている(Giordano等、1989年;PinesおよびHunter、1990年;R.MarraccinoおよびJ.R.、未発表所見〕。対照的に有糸分裂サイクリンBはp34CDC2とだけ会合して見い出されている(Hunt、1989年参照)。
G1制御に寄与する細胞内および細胞外シグナルの多様な配列を伝達するためには多数のサイクリンとCDC2−様タンパク質が必要であると思われる。CDC2タンパク質属の種々のメンバーが特別のサイクリンと優先的に相互作用すると思われる(PinesおよびHuntef、1990年〕。更に、各サイクリン−CDC2コンプレックスはスタートが生起するために必要な部分的な事象しか遂行しない。最後に、タンパク質のCDC2属がG1期の1つ以上の点で機能することが考えられる。酵母でのスタート決定は細胞周期のG1期でのCDC28の唯一の明確に特定された実行点である。スタートは高等真核生物の細胞周期の制限点と一定の類似性を有しているが、制限点はS期が開始する何時間も前に生起することができる。本発明者のインビトロでの複製実験は、CDC2キナーゼがDNA合成を直接活性化できることを示唆している(D’Urso等、1990年)。それ故、CDC2または関連タンパク質はG1期で2回、最初は細胞増殖と同時点でそしてDNA合成の開始時に再度、機能すると思われる。各制御点ではサイクリンタンパク質の固有の組が必要であると思われる;例えば、CLNタイプのサイクリンは制限点で機能しそして他のサイクリン、例えばサイクリンEはG1/S移行で作用することができよう。
(実施例1:CLN1、−2および−3を欠く酵母株とヒトcDNAライブラリーの相補性)
本発明者の最初の目標は、酵母CLNタンパク質を代替し得るタンパク質をコードするヒトcDNAを同定することであった。酵母株、589−5が構築されたが、その際3つの染色体CLN遺伝子は全て欠失されておりそしてエピソームのGAL1プロモーターの制御下でCLN3遺伝子を含有していた。CLNタンパク質はスタートを通過するのに必要であるので,この株はGALIプロモーターが誘導されるガラクトースで増殖し;この株をグルコースで増殖させるとき、GAL1プロモーターは抑制され、CLNaタンパク質は製造されず、そして細胞はスタートで抑止する(Cross、1990年)。cDNAライブラリー(ColicelliおよびM.Wiglerの寄贈品)は、ヒト膠芽腫細胞株U118から調製されたmRNAを使用して、ヒトcDNAsの発現用の構成酵母ADHプロモーターを含有するS.セレビシエベクター内で構築させた(Colicelli等、1989年)。このライブラリーを株589−5にトランスフェクションさせ、そして105個の独立形質転換体は、レプリカ培養によって、それらのグルコースでの増殖可能性についてスクリーニングした。1つの形質転換体、HU4を単離し、その際HU4のグルコースでの増殖はヒトcDNAの発現に依存していた(図1)。更なる実験の詳細については添付した材料および方法の項を参照のこと。
本発明者の最初の目標は、酵母CLNタンパク質を代替し得るタンパク質をコードするヒトcDNAを同定することであった。酵母株、589−5が構築されたが、その際3つの染色体CLN遺伝子は全て欠失されておりそしてエピソームのGAL1プロモーターの制御下でCLN3遺伝子を含有していた。CLNタンパク質はスタートを通過するのに必要であるので,この株はGALIプロモーターが誘導されるガラクトースで増殖し;この株をグルコースで増殖させるとき、GAL1プロモーターは抑制され、CLNaタンパク質は製造されず、そして細胞はスタートで抑止する(Cross、1990年)。cDNAライブラリー(ColicelliおよびM.Wiglerの寄贈品)は、ヒト膠芽腫細胞株U118から調製されたmRNAを使用して、ヒトcDNAsの発現用の構成酵母ADHプロモーターを含有するS.セレビシエベクター内で構築させた(Colicelli等、1989年)。このライブラリーを株589−5にトランスフェクションさせ、そして105個の独立形質転換体は、レプリカ培養によって、それらのグルコースでの増殖可能性についてスクリーニングした。1つの形質転換体、HU4を単離し、その際HU4のグルコースでの増殖はヒトcDNAの発現に依存していた(図1)。更なる実験の詳細については添付した材料および方法の項を参照のこと。
(実施例2:HU4はサイクリンタンパク質属の新しいメンバーをコードする)
1.7kbのHU4 cDNAのDNA配列は図2に示し、そしてこの配列の、ヒトサイクリンAおよびBに対するタンパク質値の相同性は図3に示す。このDNA配列によって、395個のアミノ酸および45,120ダルトンの分子量を有するタンパク質が予測される。HU4cDNAのインビトロ転写/翻訳によって予測された分子量を有するタンパク質が産生される(図8参照)。既知のサイクリンは全て、約87個のアミノ酸の高度に保存された中心領域を有している。HU4はこの領域内で、ヒトサイクリンAに対して49%の同一性であり、そしてヒトサイクリンBに対して44%の同一性である。このことに基づいて、本発明者はHU4タンパク質をサイクリン属の範囲内に入れた。この保存された領域のN末端のサイクリンAとの相同性は5%の同一性になり、そしてサイクリンBに対しては4%の同一性になる。この領域のC末端のサイクリンAとの同一性は14%であり、そしてサイクリンBとの同一性は10%である。保存された中心領域のN末端およびC末端の両方での相同性のこの低い値は、HU4が新しいクラスのサイクリンタンパク質を表わしていることを示唆しており、そして本発明者はこのクラスをサイクリンEと命名した。本発明者は、オープン読み取り枠が配列決定されたcDNAの5’末端にまで伸びているので、本発明者のサイクリンE cDNAクローンがサイクリンEタンパク質全体をコードする配列を有していることを確かめることはできない。しかし乍ら、MANCA細胞ライブラリーから得られたサイクリンE cDNAクローンは本明細書で記載したものと同一の5’末端を示した。
1.7kbのHU4 cDNAのDNA配列は図2に示し、そしてこの配列の、ヒトサイクリンAおよびBに対するタンパク質値の相同性は図3に示す。このDNA配列によって、395個のアミノ酸および45,120ダルトンの分子量を有するタンパク質が予測される。HU4cDNAのインビトロ転写/翻訳によって予測された分子量を有するタンパク質が産生される(図8参照)。既知のサイクリンは全て、約87個のアミノ酸の高度に保存された中心領域を有している。HU4はこの領域内で、ヒトサイクリンAに対して49%の同一性であり、そしてヒトサイクリンBに対して44%の同一性である。このことに基づいて、本発明者はHU4タンパク質をサイクリン属の範囲内に入れた。この保存された領域のN末端のサイクリンAとの相同性は5%の同一性になり、そしてサイクリンBに対しては4%の同一性になる。この領域のC末端のサイクリンAとの同一性は14%であり、そしてサイクリンBとの同一性は10%である。保存された中心領域のN末端およびC末端の両方での相同性のこの低い値は、HU4が新しいクラスのサイクリンタンパク質を表わしていることを示唆しており、そして本発明者はこのクラスをサイクリンEと命名した。本発明者は、オープン読み取り枠が配列決定されたcDNAの5’末端にまで伸びているので、本発明者のサイクリンE cDNAクローンがサイクリンEタンパク質全体をコードする配列を有していることを確かめることはできない。しかし乍ら、MANCA細胞ライブラリーから得られたサイクリンE cDNAクローンは本明細書で記載したものと同一の5’末端を示した。
(実施例3:ヒトサイクリンBはトリプルcln欠失を相補う)
本発明者は、ヒトサイクリンA、BおよびE cDNAが株589−5内でのトリプルcln欠失を相補う能力を比較した。ヒトサイクリンA(PinesおよびHunter,1990年)およびB1(PinesおよびHunter、1989年)をコードする完全な長さのcDNAは、上記したライブラリーの構築に使用されたADH発現ベクターにクローン化させた。種々のサイクリンE発現プラスミドはロイシン原栄養株性について選択することによって酵母内にトランスフェクションさせた。形質転換体を取り、そしてCLNタンパク質の欠如を相補うヒトサイクリンの能力はグルコースでの増殖によって試験した。サイクリンAベクターを使用してもロイシン原栄養株は得られず、S.セレビシエ内での完全な長さのヒトサイクリンAの発現が致死的であることを示唆している。図4は、サイクリンBかまたはE発現プラスミドのどちらかを含有しているとき、グルコース対ガラクトースでの589−5の相対的平板効率を表わす。驚いたことには、有糸分裂サイクリンBはCLNタンパク質の欠如を相補った。この実験は、CLN機能の相補性がCLNタイプのサイクリンに限定されないことを証明した。
本発明者は、ヒトサイクリンA、BおよびE cDNAが株589−5内でのトリプルcln欠失を相補う能力を比較した。ヒトサイクリンA(PinesおよびHunter,1990年)およびB1(PinesおよびHunter、1989年)をコードする完全な長さのcDNAは、上記したライブラリーの構築に使用されたADH発現ベクターにクローン化させた。種々のサイクリンE発現プラスミドはロイシン原栄養株性について選択することによって酵母内にトランスフェクションさせた。形質転換体を取り、そしてCLNタンパク質の欠如を相補うヒトサイクリンの能力はグルコースでの増殖によって試験した。サイクリンAベクターを使用してもロイシン原栄養株は得られず、S.セレビシエ内での完全な長さのヒトサイクリンAの発現が致死的であることを示唆している。図4は、サイクリンBかまたはE発現プラスミドのどちらかを含有しているとき、グルコース対ガラクトースでの589−5の相対的平板効率を表わす。驚いたことには、有糸分裂サイクリンBはCLNタンパク質の欠如を相補った。この実験は、CLN機能の相補性がCLNタイプのサイクリンに限定されないことを証明した。
(実施例4:サイクリンEとCDC28の間の相互作用)
本発明者は、容認される30℃の温度で、CDC28かまたはcdc2H3対立遺伝子のどちらかを含有する同系遺伝子型株におけるトリプル6h欠失をサイクリンEが助ける能力を比較した。図4は、サイクリンEがcdc28−13の背景ではCLNタンパク質を有意には殆ど代替しないことを示している。サイクリンEとCDC28遺伝子との間のこの遺伝的相互作用は、サイクリンEタンパク質がCDC29タンパク質との相互作用によってその機能を果たすことを示唆していた。サイクリンCはcdc28−13対CDC28株でほぼ同じように有効であり、サイクリンBがサイクリンEとは異なってCDC28と相互作用するであろうと示唆していた。
本発明者は、容認される30℃の温度で、CDC28かまたはcdc2H3対立遺伝子のどちらかを含有する同系遺伝子型株におけるトリプル6h欠失をサイクリンEが助ける能力を比較した。図4は、サイクリンEがcdc28−13の背景ではCLNタンパク質を有意には殆ど代替しないことを示している。サイクリンEとCDC28遺伝子との間のこの遺伝的相互作用は、サイクリンEタンパク質がCDC29タンパク質との相互作用によってその機能を果たすことを示唆していた。サイクリンCはcdc28−13対CDC28株でほぼ同じように有効であり、サイクリンBがサイクリンEとは異なってCDC28と相互作用するであろうと示唆していた。
(実施例5:ヒトサイクリンEとヒトCDC2はS.セレビシエでスタートを実施することができる)
cdc28−13と内在性G1(CLN)を含有する株および有糸分裂(CLB)サイクリンは30℃で生存可能である。それ故、cdc28−13タンパク質は両タイプのサイクリンと機能的に相互作用できるはずである。上記したように、CLN遺伝子の代わりにサイクリンEを有するcdc28−13株は30℃では増殖しなかった。本発明者は、多分、cdc28−13突然変異がサイクリンEと生産的に相互作用する能力を消失させたので、この株はCDC28タンパク質のスタート機能を特異的に欠いており、そしてそのG2/M役割は欠いていないと推測した。サイクリンE−cdc28−13株のこれらの特徴は図5に示す。本発明者はこの株を、サイクリンEと相互作用してスタートを実施させ得るヒト遺伝子をスクリーニングする宿主として使用した。ヒト遺伝子がCDC28を完全に代替することを要求するスクリーニングとは異なって、このスクリーニングはヒト遺伝子がG2/M期で機能することを要求しなくても良い。本発明者はこの株を上記したヒトcDNA発現ライブラリーでトランスフェクションさせ、そして105個の独立コロニーをそれらがグルコースで増殖する能力について試験した。本発明者は、両ヒトcDNA8(サイクリンEおよび新しいサイクリン)の発現に依存して増殖する5つの酵母クローンを同定した(図6)。これらの各クローン内のヒトcDNAを制限マップに作成した(データは示していない)。これらのうち4つ(S2−6a2、S2−103、S2−112、S2−227)はCDC2−HS遺伝子を含有していた(LeeおよびNurse、1987年)。S.ポンベcdc+遺伝子もこの株でヒトサイクリンEと一緒にスタートを行った(F.C,およびA.Tinkelenberg、未発表の所見)。これらの結果は、サイクリンEタンパク質がCDC2またはCDC28タンパク質との相互作用によってスタートを制御するという更なる証拠を提供する。S.セレビシエCDC28およびCLN遺伝子がヒトタンパク質によって同時的に置換され得るという事実も、その程度まで基本的な細胞周期の機構が進化中に保存されたことを強調している。
cdc28−13と内在性G1(CLN)を含有する株および有糸分裂(CLB)サイクリンは30℃で生存可能である。それ故、cdc28−13タンパク質は両タイプのサイクリンと機能的に相互作用できるはずである。上記したように、CLN遺伝子の代わりにサイクリンEを有するcdc28−13株は30℃では増殖しなかった。本発明者は、多分、cdc28−13突然変異がサイクリンEと生産的に相互作用する能力を消失させたので、この株はCDC28タンパク質のスタート機能を特異的に欠いており、そしてそのG2/M役割は欠いていないと推測した。サイクリンE−cdc28−13株のこれらの特徴は図5に示す。本発明者はこの株を、サイクリンEと相互作用してスタートを実施させ得るヒト遺伝子をスクリーニングする宿主として使用した。ヒト遺伝子がCDC28を完全に代替することを要求するスクリーニングとは異なって、このスクリーニングはヒト遺伝子がG2/M期で機能することを要求しなくても良い。本発明者はこの株を上記したヒトcDNA発現ライブラリーでトランスフェクションさせ、そして105個の独立コロニーをそれらがグルコースで増殖する能力について試験した。本発明者は、両ヒトcDNA8(サイクリンEおよび新しいサイクリン)の発現に依存して増殖する5つの酵母クローンを同定した(図6)。これらの各クローン内のヒトcDNAを制限マップに作成した(データは示していない)。これらのうち4つ(S2−6a2、S2−103、S2−112、S2−227)はCDC2−HS遺伝子を含有していた(LeeおよびNurse、1987年)。S.ポンベcdc+遺伝子もこの株でヒトサイクリンEと一緒にスタートを行った(F.C,およびA.Tinkelenberg、未発表の所見)。これらの結果は、サイクリンEタンパク質がCDC2またはCDC28タンパク質との相互作用によってスタートを制御するという更なる証拠を提供する。S.セレビシエCDC28およびCLN遺伝子がヒトタンパク質によって同時的に置換され得るという事実も、その程度まで基本的な細胞周期の機構が進化中に保存されたことを強調している。
(実施例6:ヒトサイクリンEおよびCDC2遺伝子属のメンバーであるヒトまたはツメガエルCDK2を含有する酵母でのスタートからの移行)
5番目のクローン、S2−124の制限マップはCD2−HSの制限マップとは適合しなかった。最近、ツメガエルCDK2遺伝子(正式にはEg−1と称される、Paris等、1991年)のヒト相同体をクローン化する(S.Elledge、個人的通信)と、S2−124の制限マップはCDK2’−HSの制限マップと適合した。更に本発明者は、ツメガエルCDK2遺伝子もCDC28の代わりに使用すると、サイクリンEと結合してスタートを行った。それ故、ヒトおよびツメガエルは、酵母内でG1/S移行を制御することができるCDC2遺伝子属の少なくとも2つのメンバーを含有する。ヒトCDC2遺伝子またはCDC2相同体CDK2がcdc28−12を完全に相補したかどうかを試験するために、本発明者はこれら形質転換体を38℃で増殖させた(図5)。38℃では、cdc28−13はG1/SとG2/Mの両方の野生型CDC肥に比べて不完全である(ReedおよびWittenberg、1990年)。予想された(WittenbergおよびReed、1989年)ように、CDC2−HS遺伝子を含有する細胞は30°または38℃で等しく良好に増殖し、CDC2−HS遺伝子が、cdc28−13のG1/SおよびG2/Mの機能の両方を相補できたことを示していた。興味深いことに、38℃ではヒトまたはツメガエルCDK2遺伝子およびヒトサイクリンEを含有する株は増殖しなかった。それ故、これらの実験条件下で、ヒトまたはッメガエルCDK2遺伝子だけをCDC28の代わりに部分的に使用した。更に、GAL−CDC28株をCDK2−HSで相補する(グルコースで)最初の試みは、CDC2−HSによる相補性と比べて相補性が非常に乏しかったことを示した。CDK2−HSがcdc29一月またはGAL−CDC28のどちらかを十分に相補できないことは、ツメガエルCDK2遺伝子がcdc28−13またはcdc2の温度感受性対立遺伝子のどちらも相補しなかったことを示す以前の報告(Paris等、1991年)と一致する。CDK2によるcdc28−13の部分的救済に関する説明は明らかでないが、1つの可能性としては、CDK2タンパク質がG1/Sは効果的に相補するがCDC28のG2/M機能は相補しないということである。この問題に明確に着手するためには、上記した株の細胞周期抑制点を決定することが必須であろう。このことは、プラスミドの不安定性によって選択的培地であっても3つの全てのプラスミドを含有する少数の細胞が生じた(データは示していない)ので可能ではなかった。
5番目のクローン、S2−124の制限マップはCD2−HSの制限マップとは適合しなかった。最近、ツメガエルCDK2遺伝子(正式にはEg−1と称される、Paris等、1991年)のヒト相同体をクローン化する(S.Elledge、個人的通信)と、S2−124の制限マップはCDK2’−HSの制限マップと適合した。更に本発明者は、ツメガエルCDK2遺伝子もCDC28の代わりに使用すると、サイクリンEと結合してスタートを行った。それ故、ヒトおよびツメガエルは、酵母内でG1/S移行を制御することができるCDC2遺伝子属の少なくとも2つのメンバーを含有する。ヒトCDC2遺伝子またはCDC2相同体CDK2がcdc28−12を完全に相補したかどうかを試験するために、本発明者はこれら形質転換体を38℃で増殖させた(図5)。38℃では、cdc28−13はG1/SとG2/Mの両方の野生型CDC肥に比べて不完全である(ReedおよびWittenberg、1990年)。予想された(WittenbergおよびReed、1989年)ように、CDC2−HS遺伝子を含有する細胞は30°または38℃で等しく良好に増殖し、CDC2−HS遺伝子が、cdc28−13のG1/SおよびG2/Mの機能の両方を相補できたことを示していた。興味深いことに、38℃ではヒトまたはツメガエルCDK2遺伝子およびヒトサイクリンEを含有する株は増殖しなかった。それ故、これらの実験条件下で、ヒトまたはッメガエルCDK2遺伝子だけをCDC28の代わりに部分的に使用した。更に、GAL−CDC28株をCDK2−HSで相補する(グルコースで)最初の試みは、CDC2−HSによる相補性と比べて相補性が非常に乏しかったことを示した。CDK2−HSがcdc29一月またはGAL−CDC28のどちらかを十分に相補できないことは、ツメガエルCDK2遺伝子がcdc28−13またはcdc2の温度感受性対立遺伝子のどちらも相補しなかったことを示す以前の報告(Paris等、1991年)と一致する。CDK2によるcdc28−13の部分的救済に関する説明は明らかでないが、1つの可能性としては、CDK2タンパク質がG1/Sは効果的に相補するがCDC28のG2/M機能は相補しないということである。この問題に明確に着手するためには、上記した株の細胞周期抑制点を決定することが必須であろう。このことは、プラスミドの不安定性によって選択的培地であっても3つの全てのプラスミドを含有する少数の細胞が生じた(データは示していない)ので可能ではなかった。
(実施例7:サイクリンEによるp34 CDC2の活性化)
サイクリンEタンパク質をG1細胞抽出物と混合することによって、サイクリンEがヒトCDC2タンパク質とインビトロで結合することができそしてこの会合がCDC2キナーゼの活性化を導くことが直接証明された。本発明者はヒトG1細胞が活性のp34 CDC2キナーゼを含有していないことを以前に示した;細胞に存在するp脳タンパク質は単量体であり、どんなサイクリンとも会合していない(DuraettaおよびBeach、1988年;D’Urso等、1990年)。G1抽出物はMANCA細胞、ヒトバーキット(Burkitt)リンパ球細胞株から調製された。本発明者はこれらのG1抽出物が検出可能なCDC2キナーゼを含有していることを確認した。この抽出物を、CDC2タンパク質に関連して大過剰のp13−セファロースと、CDC2タンパク質がp13−セファロースに確実に定量的に結合する条件下で混合した。ヒストンHlキナーゼ活性がp13−セファロースビーズと特異的に会合していることは検出できなかった(図7B参照)。更に、これらのG1抽出物は、CDC2キナーゼの特異的なペプチド基質を使用するキナーゼアッセイでは不活性であった(Marshak等、1991年)。
サイクリンEタンパク質をG1細胞抽出物と混合することによって、サイクリンEがヒトCDC2タンパク質とインビトロで結合することができそしてこの会合がCDC2キナーゼの活性化を導くことが直接証明された。本発明者はヒトG1細胞が活性のp34 CDC2キナーゼを含有していないことを以前に示した;細胞に存在するp脳タンパク質は単量体であり、どんなサイクリンとも会合していない(DuraettaおよびBeach、1988年;D’Urso等、1990年)。G1抽出物はMANCA細胞、ヒトバーキット(Burkitt)リンパ球細胞株から調製された。本発明者はこれらのG1抽出物が検出可能なCDC2キナーゼを含有していることを確認した。この抽出物を、CDC2タンパク質に関連して大過剰のp13−セファロースと、CDC2タンパク質がp13−セファロースに確実に定量的に結合する条件下で混合した。ヒストンHlキナーゼ活性がp13−セファロースビーズと特異的に会合していることは検出できなかった(図7B参照)。更に、これらのG1抽出物は、CDC2キナーゼの特異的なペプチド基質を使用するキナーゼアッセイでは不活性であった(Marshak等、1991年)。
サイクリンEとCDC2との相互作用を試験するために、サイクリンEを大腸菌内でグルタチオントランスフェラーゼ融合タンパク質(GT−サイクリンE)として発現させそしてグルタチオン−セファロースによるアフィエティークロマトグラフィーで精製した。本発明者はG1細胞抽出物をGT−サイクリンE−セファロース、GT−セファロース、p13−セファロースおよびブランクセファロースビーズと共にインキュベートした。GT−サイクリンE−セファロースとp13−セファロースは、C末端特異性のp34 CDC2抗血清を使用する免疫ブロット法で検出するとき、等量のp34 CDC2タンパク質と結合した(図7A)。本発明者はp34CDC2とGT−セファロースまたはブランクセファローズとの結合は検出しなかった。
G1抽出物中でインキュベーションした後、セファロースビーズはヒストンH1キナーゼ活性についてアッセイした。p13−セファロースとGT−サイクリンE−セファロースビーズは等量のp34 CDC2タンパク質と結合したけれども、GT−サイクリンE−セファロースビーズしかヒストンH1キナーゼ活性を有していなかった(図7B)。本発明者はまた、サイクリンE融合タンパク質が結合キナーゼによってリン酸化された(phosphorylated)ことも観察した。サイクリンE融合タンパク質と正確に一緒に移動するタンパク質はH1キナーゼ反応の間にリン酸化され、そしてこのリンタンパク質はサイクリンE抗血清によって免疫沈降された(図7B)。リン酸化GT−サイクリンEとトロンビンとの融合タンパク質の開裂は、融合タンパク質のサイクリンE部分がリン酸化されたことを示した(データは示していない)。サイクリンサブユニットの自動リン酸化がサイクリン−CDC2コンプレックスの特徴である(DraettaおよびBeach、1988年;PinesおよびHunter、1989年)ので、GT−サイクリンE融合タンパク質のリン酸化は多分結合CDC2キナーゼによるものであった(下記参照)。
上記の実験はGT−サイクリンE−会合キナーゼがp34CDC2キナーゼであることは直接証明しなかった。このことを試験するために、本発明者は、遊離のグルタチオンと共にインキュベーションすることによってGT−サイクリンE−会合タンパク質をセファロースビーズから放出させた。放出したp34 CDC2タンパク質はC末端特異性p34 CDC2抗血清により免疫沈降され、そしてヒストンH1キナーゼ活性を有することが示された(図7C)。対照として、本発明者はGT−セファロースビーズから放出されたタンパク質からキナーゼは全く免疫沈降されなかったことを示した(図7C)。本発明者はGT−サイクリンE−結合キナーゼのどのフラクションがp34 CDC2抗血清で免疫沈降され得るのかを知っていないので、他のキナーゼ(CDK2のような)がGT−サイクリンE−結合キナーゼ活性に寄与するということを排除することはできない。
本発明者の結果はサイクリンEがp脳CDC2キナーゼと結合したことを示し、そして該キナーゼがサイクリンEによって活性化されたことを支持している。最初のG1抽出物中でCDC2キナーゼが全く検出されなかったという事実はCDC2タンパク質とGT−サイクリンE−セファロースとの会合がそれまでは不活性だったタンパク質を活性化に導いたことを示唆している。これらの実験は粗製の細胞抽出物中で行ったので、サイクリンEとCDC2タンパク質との会合がCDC2キナーゼを活性化するのに十分であったかどうか言及することはできなかった。CDC2かまたはサイクリンタンパク質のどちらかを更に修正することが活性化経路で必要な工程であることがある。
GT−サイクリンE融合タンパク質に対して抗体をウサギで生じさせた。これらの抗体は、インビトロで翻訳されたサイクリンEを免疫沈降させたがヒトサイクリンAまたはBは沈降させなかったので、サイクリンEを特異的に認識した(図8A)。この抗血清はHeLs細胞からH1キナーゼ活性を免疫沈降させた(図8B)。これはインビボでサイクリンEがキナーゼと会合したことを示したが、もっとも本発明者はどのCDC2属のメンバーがこれらのコンプレックス中に存在したかは知らない。
(実施例8:サイクリンEおよびサイクリンAと会合したタンパク質キナーゼの細胞周期依存性の活性化)
前記の実施例は指数的に増殖するMANCA細胞(ヒトB細胞系)から得られるサイクリンEの免疫沈降物が細胞分裂キナーゼを含有していることを示している。細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼの活性は、遠心水力分級を使用して指数的に増殖するMANCA細胞を8つのフラクションに分離して調べた。遠心水力分級は細胞を種々の細胞周期フラクションに物理的に分離し、それによって、誘導された同調法と関係があることが知られている潜在的な人工物を回避する。本発明者はプロピジウムヨージッドで染色した核の流動細胞計測法分析によって核DNA含量を測定することによって、水力分級フラクションの位置を決定した(図9A)。8つの異なる細胞周期フラクションの各々から得られた細胞抽出物は)抗サイクリンEポリクローナル抗血清を使用して免疫沈降させた。同じ動物から得られる前免疫血清(αPI)を陰性対照として使用した。各フラクションで、対照の免疫沈降物中のキナーゼ活性を特異的な抗サイクリンE免疫沈降物中で観察された活性から差し引いた。図9Bに示されたデータは、サイクリンEと会合したH1キナーゼの活性によって触媒されたヒストンH1リン酸化の値を測定することによって決定される、細胞の水力分級フラクション中のサイクリンE−キナーゼコンプレックス発現値を示している(図9A)。各フラクションから同じ数の細胞を溶解させ、そして溶解物中のサイクリンEをアフィニティー精製抗サイクリンE抗体(αcyc E)で免疫沈降させた。リンイメージングによって定量した結果は、サイクリンE会合キナーゼの活性が細胞周期依存性であり、そして3つの実験では、細胞周期中に4倍から8倍の間で変動したことを示唆している。サイクリンE会合キナーゼの活性ピークは、G1後期およびS前期の最大数の細胞を有する細胞の水力分級フラクションに対応していた。或る実験では、本発明者はまた、水力分級細胞のG2/Mフラクション中のサイクリンEと会合した活性のより小さい第2のピークも観察した(データは示していない)。
前記の実施例は指数的に増殖するMANCA細胞(ヒトB細胞系)から得られるサイクリンEの免疫沈降物が細胞分裂キナーゼを含有していることを示している。細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼの活性は、遠心水力分級を使用して指数的に増殖するMANCA細胞を8つのフラクションに分離して調べた。遠心水力分級は細胞を種々の細胞周期フラクションに物理的に分離し、それによって、誘導された同調法と関係があることが知られている潜在的な人工物を回避する。本発明者はプロピジウムヨージッドで染色した核の流動細胞計測法分析によって核DNA含量を測定することによって、水力分級フラクションの位置を決定した(図9A)。8つの異なる細胞周期フラクションの各々から得られた細胞抽出物は)抗サイクリンEポリクローナル抗血清を使用して免疫沈降させた。同じ動物から得られる前免疫血清(αPI)を陰性対照として使用した。各フラクションで、対照の免疫沈降物中のキナーゼ活性を特異的な抗サイクリンE免疫沈降物中で観察された活性から差し引いた。図9Bに示されたデータは、サイクリンEと会合したH1キナーゼの活性によって触媒されたヒストンH1リン酸化の値を測定することによって決定される、細胞の水力分級フラクション中のサイクリンE−キナーゼコンプレックス発現値を示している(図9A)。各フラクションから同じ数の細胞を溶解させ、そして溶解物中のサイクリンEをアフィニティー精製抗サイクリンE抗体(αcyc E)で免疫沈降させた。リンイメージングによって定量した結果は、サイクリンE会合キナーゼの活性が細胞周期依存性であり、そして3つの実験では、細胞周期中に4倍から8倍の間で変動したことを示唆している。サイクリンE会合キナーゼの活性ピークは、G1後期およびS前期の最大数の細胞を有する細胞の水力分級フラクションに対応していた。或る実験では、本発明者はまた、水力分級細胞のG2/Mフラクション中のサイクリンEと会合した活性のより小さい第2のピークも観察した(データは示していない)。
細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼの活性はサイクリンA会合キナーゼとは顕著に異なっている。C160抗サイクリンAモノクローナル抗体を使用して、サイクリンE会合キナーゼ活性を測定するために使用されたのと同じ細胞抽出物からサイクリンAおよびその会合タンパク質を免疫沈降させた(図9C)。上記したように、サイクリンA会合キナーゼの活性はS期の開始時に先ず検出される(PinesおよびHunter、1990年;Marraccino等、1992年)。サイクリンE会合キナーゼの活性とは対照的に、サイクリンA会合キナーゼの活性はS期中に上昇し続け、そしてG2期でピークに達する。これらの結果も、サイクリンA会合キナーゼのピーク値がサイクリンE会合キナーゼのピーク活性値より約5倍から10倍大きいことを示唆している(データは示していない〕。しかし乍ら、絶対値は、本明細書で示された値が僅かに異なる会合定数(Ka)を有することができる2つの抗体に依存しているので、変動させることができる。これらの結果は、明確なサイクリン依存性キナーゼ活性が連続してが細胞周期中に活性化される;サイクリンEのキナーゼ活性は上昇し、続いてサイクリンA会合キナーゼ活性、次にサイクリンB会合キナーゼ活性が増加することを示唆している。
サイクリンE会合キナーゼ活性が細胞周期のG1期に蓄積する動力学は、酵素的に活性のサイクリンE:キナーゼコンプレックスの発生量の相対的測定として研究した。MANCA細胞はノコダゾールにより細胞周期の中期段階で3時間抑止され、そしてこの時点で細胞の75%が細胞質分裂を完了していた。次に、残存する有糸分裂細胞から水力分級で分離された細胞を3、4、5、6または7時間細胞周期のGI期に解放させた。これら細胞は、核DNA含量の流動細胞計測法測定(9D)および染色体DNAへの三重水素化チミジン導入の両方で測定するとき、約6または7時間後に同調してS期に進行した(データは示していない)。次に、細胞を遠心水力分級によって細胞周期の種々の期のサブ集団に分画した。サイクリンE会合キナーゼ活性はG1期中に上昇することが見られ、細胞が丁度S期に入ったときにピーク活性に達した(図9D)。対照的に、本発明者はサイクリンA会合キナーゼがG1期には存在せず、そして細胞がS期に入ったとき最初に検出されたことを見い出した(図9E)。この実験では、サイクリンA会合H1キナーゼ活性は、サイクリンA会合キナーゼ活性を免疫沈降させるためにC160抗サイクリンAモノクローナル抗体を使用して測定した。細胞の水力分級G1フラクション(フラクション2)は32.5℃で培養して細胞周期のG1期を拡張させた。細胞分別物は、細胞がS期に近づきそしてS期に入る点まで、核DNA含量並びにサイクリンA−およびサイクリンE会合キナーゼ活性を測定するために1時間毎に採取した。
サイクリンE会合キナーゼは増殖中のラット208 F細胞では容易に検出可能であるが、血清除去後の静止期に入ったときに消失する(図10A)。同様に、NGFに暴露してラットPC12細胞をニューロンに分化するように誘導したとき、サイクリンE会合キナーゼは低い値になった(図10B)。これらの実験では、本発明者は増殖中および静止中のラット208F細胞並びに増殖中のPC−12細胞から得られた溶解物中のH1キナーゼ活性をアッセイした。免疫沈降物はサイクリンE(αE)、ヒトp34 CDC2(αp34)のC末端または対照として前免疫抗サイクリンE抗血清(αPI)に対するアフィニティー精製抗体を使用して調製した。細胞は10%の仔ウシ血清(10%CS、図10A)を使用して増殖させそしてNGF(+NGF、図10B)を使用して分化させるように誘導した。静止対照は0.1%の仔ウシ血清(0.1%CS、図10A)中で増殖させた。非分化対照はNGFの不存在下(−NGF、図10B)で増殖させた。これらの結果は、サイクリンE会合キナーゼ活性がサイクリンEの発現値と同様に増殖を制御していることを証明している。
(実施例9:サイクリンEの構成発現はG1を短縮する)
細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼ活性のパターンは、サイクリンEによって介在された生理学的機能が細胞周期のG1期に生起することを示唆している。この可能性を試験するために、レトロウイルスLTRプロモーターからヒトサイクリンEを構成的に発現させた安定な細胞株を構築させた。細胞および細胞周期動力学に与える構成サイクリンE発現の影響を試験した。
細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼ活性のパターンは、サイクリンEによって介在された生理学的機能が細胞周期のG1期に生起することを示唆している。この可能性を試験するために、レトロウイルスLTRプロモーターからヒトサイクリンEを構成的に発現させた安定な細胞株を構築させた。細胞および細胞周期動力学に与える構成サイクリンE発現の影響を試験した。
ヒトサイクリンE cDNAをレトロウイルス発現ベクター、LXSN(MillerおよびRosman、1989年)中にクローン化した。これは5’LTR由来の挿入cDNAを発現しそして選択可能なマーカーとしてネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有している。この構成体によって、アンホトロピック(amphotropic)またはエコトロピック(ecotrogic)宿主範囲特異性を有するレトロウイルスベクター粒子を産生することができる。本発明者はベクター粒子のエコトロピックストックを使用してRat−1線維芽細胞株を感染させ、そして選択培地を含有するG−418中で2週間増殖させて1万個以上の独立して感染させられた細胞のプールを選択した。同時に、LXSN対照ベクターで感染させた細胞のプールを生じさせた。個々の選択した細胞クローンではなくて感染細胞のプールを試験して、Rat−1細胞株内部に存在すると思われるクローン変動の可能性を最小にした。図11A(a)で示された結果はLXSN−サイクリンE感染細胞が、対照のLXSNウイルスベクターで感染した細胞で検出されるものより約5から10倍多いサイクリンEタンパク質を含有していたことを示している。45kDa(完全な長さのサイクリンEの大きさ)および40kD2の2つのサイクリンEバンドがサイクリンEを形質導入した細胞で特異的に現れた。サイクリンE:キナーゼ活性の増加はLXSN−サイクリンEを形質導入した細胞でも見い出された。図11A(b)の結果は指数的に増殖するRat−1細胞の培養物中でサイクリンE会合ヒストンH1キナーゼ活性の値の3乃至5倍の増加を示している。対照細胞で検出されたサイクリンEおよびサイクリンE会合キナーゼのより低い値は多分、内在性ラットサイクリンEによるものであった。細胞周期に与えるサイクリンEの影響を評価するために、指数的に増殖するLXSN−サイクリンEを形質導入した細胞を遠心水力分級で集めた。形質導入した細胞の細胞周期での分布はプロピジウムヨウジッドでDNA染色した後に流動細胞計測法で測定した(図11B)。LXSN−サイクリンEにより形質導入された細胞は、対照ベクター、LXSNで形質導入された対照細胞と比較して細胞周期のG1期の細胞フラクション中で減少したことを示していた。サイクリンE形質導入細胞はまた細胞周期のS期の細胞のフラクションにおける増加も示した。細胞周期の種々の期でのサイクリンE形質導入細胞のフラクションにおけるこれらの観察された変化は細胞周期のG1期からの細胞の移行の加速と一致する。このことは、サイクリンE感染細胞でG1期の長さを直接測定することによって確認された。サイクリンE感染細胞はノコダゾールに暴露して擬似中期に同調させ、そして有糸分裂細胞を採集した。有糸分裂細胞を培養に戻し、そしてS期への進入はBrdU(5−ブロモデオキシウリジン)でパルス標識することによって監視した。BrdUは免疫化学法を使用して検出した。図11Cで示された結果は、LXSN−サイクリンE感染細胞のG1期の長さ(即ち、有糸分裂の終結からS期でのDNA合成が再開されるまで)はLXSNで形質導入された細胞より実質的に短かった。
独立した2対のトランスフェクションした細胞集団を使用した5つの別々の実験で、G1の期間はLXSN−サイクリンEレトロウイルスベクターで感染させた細胞ではLXSN対照ベクターで感染させた細胞より平均して33%短かった。同様に、核DNAに導入されたBUDRの免疫化学検出を使用してサイクリンE−形質導入細胞のS期への進入速度を測定するために試験を行い、LXSN−サイクリンE形質導入細胞ではS期の短縮化が確認された(データは示していない)。有糸分裂追放法によって得ることができる細胞数が限られているため、感染したRat−1細胞集団の有糸分裂からS期への進行中の各時点でサイクリンE会合キナーゼ活性の値を測定することはできなかった。
(実施例10:サイクリンE会合タンパク質)
前記実施例は、タンパク質を発芽酵母と一緒に発現させるとき、サイクリンEがヒトp34CDC2およびヒトまたはツメガエルp33 CDK2を活性化できることを示している。更に、これらの結果は、サイクリンEがインビトロで(即ち、細胞不含系で)ヒトCDC2およびヒトCDK2の両者と結合してこれらを活性化できることを示している。キナーゼとサイクリンEの会合はインビボ研究で(即ち、細胞内で)試験し、その際細胞抽出物は、[35S]−メチオニンを用いて生合成で3時間放射標識させた指数的に増殖するMANCA細胞の水力分級した細胞周期フラクションから調製した。抽出物はSDS−RIPA緩衝液中で調製しそして特定のタンパク質はアフィニティー精製した抗サイクリンE抗体(GST−サイクリンE融合タンパク質に対して調製した)およびヒトCDC2(p34)のC末端に対する抗血清を使用して免疫沈降させた。免疫沈降物を集め、洗浄し、そして12%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離する前にSDS緩衝液中で沸騰させた。ゲル内の放射標識したポリペプチドの検出はサリチル酸ナトリウムを使用して促進し、そしてその後ゲルをオートラジオグラフィー用に乾燥させた。図12はp34会合タンパク質(レーン1)並びに指数的に増殖する細胞中(レーン2)、G1期中(レーン3)、G1/S(レーン4)、S(レーン45〜8)、S/G2(レーン9〜10)およびM期(レーン11)のサイクリンE会合タンパク質(レーン2〜11)を示す。図12のアッセイでのサイクリンE:CDCキナーゼコンプレックスと会合しているタンパク質の分子量は下記の表1に要約する。l3KdのポリペプチドはS期の中期でコンプレックスと会合し;17Kdのポリペプチドは全細胞周期で会合し;32Kdのダブレットは大部分G1後期およびS期で会合し;26KdのポリペプチドはG1およびG2/M期でだけ会合し;70Kdのポリペプチドは主としてS期で会合し;85Kdのポリペプチド(即ち、トリプレット中の最も低いバンド)は全細胞周期で会合し;そして107KdのポリペプチドはS期およびS期の丁度前後に会合する。32Kdのダブルの発現パターンの差異はこれがCDK2またはCDC2ではないことを示唆しており、そしてこれは免疫沈降コンプレックスと会合したバンド「x」と称されるCDK2、CDC2および32kDのバンドのトリプシン消化フラグメントをマップ化することによって確認された。
前記実施例は、タンパク質を発芽酵母と一緒に発現させるとき、サイクリンEがヒトp34CDC2およびヒトまたはツメガエルp33 CDK2を活性化できることを示している。更に、これらの結果は、サイクリンEがインビトロで(即ち、細胞不含系で)ヒトCDC2およびヒトCDK2の両者と結合してこれらを活性化できることを示している。キナーゼとサイクリンEの会合はインビボ研究で(即ち、細胞内で)試験し、その際細胞抽出物は、[35S]−メチオニンを用いて生合成で3時間放射標識させた指数的に増殖するMANCA細胞の水力分級した細胞周期フラクションから調製した。抽出物はSDS−RIPA緩衝液中で調製しそして特定のタンパク質はアフィニティー精製した抗サイクリンE抗体(GST−サイクリンE融合タンパク質に対して調製した)およびヒトCDC2(p34)のC末端に対する抗血清を使用して免疫沈降させた。免疫沈降物を集め、洗浄し、そして12%のSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離する前にSDS緩衝液中で沸騰させた。ゲル内の放射標識したポリペプチドの検出はサリチル酸ナトリウムを使用して促進し、そしてその後ゲルをオートラジオグラフィー用に乾燥させた。図12はp34会合タンパク質(レーン1)並びに指数的に増殖する細胞中(レーン2)、G1期中(レーン3)、G1/S(レーン4)、S(レーン45〜8)、S/G2(レーン9〜10)およびM期(レーン11)のサイクリンE会合タンパク質(レーン2〜11)を示す。図12のアッセイでのサイクリンE:CDCキナーゼコンプレックスと会合しているタンパク質の分子量は下記の表1に要約する。l3KdのポリペプチドはS期の中期でコンプレックスと会合し;17Kdのポリペプチドは全細胞周期で会合し;32Kdのダブレットは大部分G1後期およびS期で会合し;26KdのポリペプチドはG1およびG2/M期でだけ会合し;70Kdのポリペプチドは主としてS期で会合し;85Kdのポリペプチド(即ち、トリプレット中の最も低いバンド)は全細胞周期で会合し;そして107KdのポリペプチドはS期およびS期の丁度前後に会合する。32Kdのダブルの発現パターンの差異はこれがCDK2またはCDC2ではないことを示唆しており、そしてこれは免疫沈降コンプレックスと会合したバンド「x」と称されるCDK2、CDC2および32kDのバンドのトリプシン消化フラグメントをマップ化することによって確認された。
C2(αCDC2)の7個のC末端アミノ酸に向けられたアフィニティー精製抗体またはヒトp33CDK2(αCDK2)の15個のC末端アミノ酸に向けられた抗血清を使用して免疫ブロット法を行った。図13では、レーン1および2は全細胞抽出物の免疫ブロットであり;レーン3および4では、全細胞抽出物は最初にアフィニティー精製抗p34CDC2抗体で免疫沈降させ、次に指示された抗体でブロットとし;レーン5および6では、全細胞抽出物をp33CDK2のC末端に対する抗血清を用いて先ず免疫沈降させ、次に指示された抗体でブロットとした。50から80kDaの間の免疫沈降抗体から誘導された非特異的シグナルの存在に注目されたい。アフィジコリンを用いてG1/S境界で抑止されたMANCA細胞から得た抽出物はヒトサイクリンEに対するアフィニティー精製抗体を使用して免疫沈降させそしてその後同一の抗体を使用してプロットとした。45kDaのシグナルタンパク質バンドが検出された。それ故、サイクリンE免疫沈降物中の会合タンパク質はサイクリンEと結合している可能性が最も多いように思われ、そしてこの抗体との非特異的交差反応性のために検出されなかった。
これらの結果を確認するために、免疫プロット法を使用してサイクリンEと、指数的に増殖するかまたはアフィジコリンでG1/S境界に抑止されたMANCA細胞から調製した抽出物中のp33CDK2およびp34CDC2の両者との間の会合を試験した。サイクリンE会合キナーゼの活性はG1からS期への移行で最大であるので、アフィジコリンで阻止した細胞を選択した。細胞抽出物は、アフィニティー精製抗サイクリンE抗体を使用して免疫沈降させ、そして免疫沈降物はCDC2およびCDK2特異的抗血清の両方を使用してウエスターンブロット法を実施した。全ての免疫沈降物について、抗体はセファロースに交差結合していた。免疫沈降法は前免疫血清(「αPI」)、ブランクセファロースビーズ(「SEPH」)、アフィニティー精製抗p34CDC2C末端(「αp34」)およびアフィニティー精製抗サイクリンE(「αE」)を用いて実施した(図14A)。「−−」で標識したレーンの組は細胞抽出物を含有していなかった。両抗血清はそれぞれのタンパク質のC末端に対応するペプチドに対して生じさせた。CDC2に関連したタンパク質のC末端は高度には保存されていない。これらの結果は、抗C末端CDC2抗血清はCDC2を認識してCDK2を認識せず、そして逆に抗C末端CDK2抗血清はCDK2を認識してCDC2を認識しなかったことを示している(図13)。
全細胞抽出物の免疫プロット法は2つの形態のCDK2を示している(Rosenblatt等、1992年;図14Aも参照のこと)。両アフィジコリン抑止細胞(図14A)および指数的増殖細胞(示していない;図15参照)において、サイクリンEはより急速に移動している形態のCDK2と優先的に会合した。サイクリンE免疫沈降物中でのCDK2の同定は、ヒトCDK2のC末端に対して独立して生じさせた3つの異なる抗血清を使用して確認された。3つの抗血清は全てCDK2を認識してCDC2を認識しない(Rosenblatt等、1992年;Elledge等、1992年;図13)。更に急速に移動している形態のCDK2は一層高度にリン酸化されると現在考えられている(Rosenblatt等、1992年)。これは、[35S]−メチオニンで標識した細胞抽出物中で検出されたCDK2のサイクリンEと会合したアイソフォームが全て[32P]−オルソフオスフエトで標識した細胞抽出物由来の抗サイクリンE免疫沈降物中でも検出されたとの本発明者の観察と一致する。
これらの結果は、p34CDC2の量はCDK2の量より実質的に少なかったけれども、p34CDC2はサイクリンE免疫沈降物中でも検出されたことを示している。指数的に増殖する細胞では、主としてハイポリン酸化された形態のp34CDC2が検出され、一方アフィジコリンで抑止した細胞では、サイクリンEと会合し一層高度にリン酸化された形態のp34CDC2も存在した(図14B)。両事例で、サイクリンEと会合した非常に少量のp24CDC2を検出することができた。
(実施例11:サイクリンE:CDK2コンプレックスの細胞周期依存性の形成)
サイクリンEとCDK2が酵素的に活性のコンプレックスを形成する細胞周期の期を調べた。指数的に増殖するMANCA細胞は遠心水力分級によって8つの細胞周期フラクションに分離しそして細胞抽出物を調製した。各フラクションの細胞の細胞周期の位置は核DNA含量の流動細胞計測法測定によって決定した(図15A)。サイクリンEとその会合タンパク質はアフィニティー精製抗サイクリンE抗体を使用して免疫沈降させた。本発明者はCDK2のC末端に特異的な抗血清を使用してウエスターンブロット法によってCDK2の存在を視覚化した(図15B1〜B4)。ごれらの結果は、酵素的に活性のサイクリンE:CDK2コンプレックスの値がG1後期およびS前期中にピークに達し、そして細胞が細胞周期の残りの期を進行するにつれて発生量が低下したことを示している。サイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量はサイクリンE会合キナーゼの細胞周期の周期性に密接に対応していた(上記の実施例に記載したように)。更に、現在の結果は指数的増殖細胞ではサイクリンE:CDK2コンプレックスがG1後期で活性化されるまで不活性形態で蓄積しなかったことを示唆している。外観および活性化のパターンはサイクリンA会合キナーゼ活性、即ち、報告によればサイクリンAの量と正比例して増加した活性に関して報告されたパターンと類似していることが観察された(PinesおよびHunter、1990年;Marracino等、1992年)。しかし乍ら、現在の結果はサイクリンB:P34CDC2コンプレックスで得られた結果とは、報告されているように、サイクリンBCDC2コンプレックスがSおよびG2で蓄積し、それらが有糸分裂の開始時に活性化されるまでは不活性で高度にリン酸化されている(GouldおよびNurse、1989年;Pondaven等、1990年;Solomon等、1990年)点で異なっている。
サイクリンEとCDK2が酵素的に活性のコンプレックスを形成する細胞周期の期を調べた。指数的に増殖するMANCA細胞は遠心水力分級によって8つの細胞周期フラクションに分離しそして細胞抽出物を調製した。各フラクションの細胞の細胞周期の位置は核DNA含量の流動細胞計測法測定によって決定した(図15A)。サイクリンEとその会合タンパク質はアフィニティー精製抗サイクリンE抗体を使用して免疫沈降させた。本発明者はCDK2のC末端に特異的な抗血清を使用してウエスターンブロット法によってCDK2の存在を視覚化した(図15B1〜B4)。ごれらの結果は、酵素的に活性のサイクリンE:CDK2コンプレックスの値がG1後期およびS前期中にピークに達し、そして細胞が細胞周期の残りの期を進行するにつれて発生量が低下したことを示している。サイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量はサイクリンE会合キナーゼの細胞周期の周期性に密接に対応していた(上記の実施例に記載したように)。更に、現在の結果は指数的増殖細胞ではサイクリンE:CDK2コンプレックスがG1後期で活性化されるまで不活性形態で蓄積しなかったことを示唆している。外観および活性化のパターンはサイクリンA会合キナーゼ活性、即ち、報告によればサイクリンAの量と正比例して増加した活性に関して報告されたパターンと類似していることが観察された(PinesおよびHunter、1990年;Marracino等、1992年)。しかし乍ら、現在の結果はサイクリンB:P34CDC2コンプレックスで得られた結果とは、報告されているように、サイクリンBCDC2コンプレックスがSおよびG2で蓄積し、それらが有糸分裂の開始時に活性化されるまでは不活性で高度にリン酸化されている(GouldおよびNurse、1989年;Pondaven等、1990年;Solomon等、1990年)点で異なっている。
(実施例12:サイクリンEの発生量が細胞周期を調節する)
サイクリンEタンパク質の発生量は細胞周期の種々の期で測定した。MANCA細胞は遠心水力分級によって細胞周期の各期を代表するフラクションに分離した。本発明者は、免疫沈降物中でサイクリンEの発生量を測定するためにも使用したアフィニティー精製抗サイクリンE抗体を使用して免疫沈降法によって各フラクションから得られた細胞溶解物を分析した。これらの結果は、サイクリンE値がG1後期で最大でありそしてS、G2およびMで低下したことを示している(図15B1〜B4)。検出されたサイクリンEタンパク質の量が免疫沈降法で使用された細胞抽出物の量に直線的に依存していたので、イムノアッセイ法は各細胞周期フラクションにおけるサイクリンEの相対的な値を正確に反映すると思われた(図15C)。要するに、これらの結果はサイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量、そしてそれ故サイクリンE会合キナーゼ活性の周期性はサイクリンEの値によって直接制御されると思われる。
サイクリンEタンパク質の発生量は細胞周期の種々の期で測定した。MANCA細胞は遠心水力分級によって細胞周期の各期を代表するフラクションに分離した。本発明者は、免疫沈降物中でサイクリンEの発生量を測定するためにも使用したアフィニティー精製抗サイクリンE抗体を使用して免疫沈降法によって各フラクションから得られた細胞溶解物を分析した。これらの結果は、サイクリンE値がG1後期で最大でありそしてS、G2およびMで低下したことを示している(図15B1〜B4)。検出されたサイクリンEタンパク質の量が免疫沈降法で使用された細胞抽出物の量に直線的に依存していたので、イムノアッセイ法は各細胞周期フラクションにおけるサイクリンEの相対的な値を正確に反映すると思われた(図15C)。要するに、これらの結果はサイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量、そしてそれ故サイクリンE会合キナーゼ活性の周期性はサイクリンEの値によって直接制御されると思われる。
(実施例13:インビトロでのサイクリンE:CDC2およびサイクリンE:CDK2コンプレックスの集合物)
示されたように、ヒトの細胞中でサイクリンEはp34 CDC2よりむしろp33 CDK2と優先的に会合する。これに対する1つの考えられる説明は、サイクリンEの親和性がCDK2に対してとCDC2に対してとでは異なっているということである。これの可能性はCDC2およびCDK2キナーゼを含有する組換え体サイクリンEの細胞不含系と細胞抽出物中で評価した。サイクリンEはバクロウイルスベクターを使用してSf9昆虫細胞内で発現させた。サイクリンEタンパク質を形質導入昆虫細胞内で過剰発現させ、細胞内濃度は48時間後に約5〜10μMであり(Desai等、1992年)、そしてこれらの細胞を採取してタンパク質を分析するために抽出した。サイクリンE、CDC2およびCDK2間の結合は、サイクリンEの供給源として希釈昆虫細胞抽出物を、そしてCDC2およびCDK2の供給源としてG1細胞の抽出物を使用して評価した。CDC2およびCDK2キナーゼに与えるサイクリンEの影響における細胞周期依存性の差異を測定するために、細胞抽出物は、2mMのヒドロキシウレア(S期の細胞は停止させそして他の細胞は全てS期の次に集積させる)を含有する培地中で増殖を12時間抑止させ(即ち、S期より前に)、次に3.5時間増殖を解除して細胞を全てS期に入らせた細胞(「HU」、図16A〜16B);並びに、ノコダゾールで停止させ、3時間解除してG1に入らせ、そしてその後遠心水力分級で更に選択した細胞(「G1」、図16Aおよび16B)から調製した。細胞抽出物は全て低張緩衝液中で調製した。インキュベーション混合物は3種のタンパク質濃度を約0.2μMの通常の生理的値に近づけるように設計した。指示されたサイクリンE、CDC2およびCDK2を含有する希釈溶解物は単独でまたは組み合わせて、プラスミドを含有するSV40のインビトロ複製に適する条件下で37℃で30分間インキュベートした(D’Urso、1990年)。インキュベーション混合物中のサイクリンE:CDC2およびサイクリンE:CDK2コンプレックスの形成は、CDC2に対する(抗−CDC2)、CDK2のC末端に対する(抗−CDK2)またはサイクリンEに対する(抗−サイクリンE)抗血清のいずれかによる免疫沈降法、続いてSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーを使用して測定した(図16A、16B、16C)。種々の各免疫沈降物と会合したキナーゼの活性はH1キナーゼアッセイ(上記実施例に記載したような)で測定した。
示されたように、ヒトの細胞中でサイクリンEはp34 CDC2よりむしろp33 CDK2と優先的に会合する。これに対する1つの考えられる説明は、サイクリンEの親和性がCDK2に対してとCDC2に対してとでは異なっているということである。これの可能性はCDC2およびCDK2キナーゼを含有する組換え体サイクリンEの細胞不含系と細胞抽出物中で評価した。サイクリンEはバクロウイルスベクターを使用してSf9昆虫細胞内で発現させた。サイクリンEタンパク質を形質導入昆虫細胞内で過剰発現させ、細胞内濃度は48時間後に約5〜10μMであり(Desai等、1992年)、そしてこれらの細胞を採取してタンパク質を分析するために抽出した。サイクリンE、CDC2およびCDK2間の結合は、サイクリンEの供給源として希釈昆虫細胞抽出物を、そしてCDC2およびCDK2の供給源としてG1細胞の抽出物を使用して評価した。CDC2およびCDK2キナーゼに与えるサイクリンEの影響における細胞周期依存性の差異を測定するために、細胞抽出物は、2mMのヒドロキシウレア(S期の細胞は停止させそして他の細胞は全てS期の次に集積させる)を含有する培地中で増殖を12時間抑止させ(即ち、S期より前に)、次に3.5時間増殖を解除して細胞を全てS期に入らせた細胞(「HU」、図16A〜16B);並びに、ノコダゾールで停止させ、3時間解除してG1に入らせ、そしてその後遠心水力分級で更に選択した細胞(「G1」、図16Aおよび16B)から調製した。細胞抽出物は全て低張緩衝液中で調製した。インキュベーション混合物は3種のタンパク質濃度を約0.2μMの通常の生理的値に近づけるように設計した。指示されたサイクリンE、CDC2およびCDK2を含有する希釈溶解物は単独でまたは組み合わせて、プラスミドを含有するSV40のインビトロ複製に適する条件下で37℃で30分間インキュベートした(D’Urso、1990年)。インキュベーション混合物中のサイクリンE:CDC2およびサイクリンE:CDK2コンプレックスの形成は、CDC2に対する(抗−CDC2)、CDK2のC末端に対する(抗−CDK2)またはサイクリンEに対する(抗−サイクリンE)抗血清のいずれかによる免疫沈降法、続いてSDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーを使用して測定した(図16A、16B、16C)。種々の各免疫沈降物と会合したキナーゼの活性はH1キナーゼアッセイ(上記実施例に記載したような)で測定した。
免疫沈降物は、免疫沈降物をヒストンH1およびγ−32Pオルトホスフェートと混合することによってヒストンH1のリン酸化を介在する能力(即ち、H1キナーゼ活性)について試験した。32P−放射標識ヒストンH1はSDS−PAGEおよびリンイメージングによって検出した(図16A、16B、16C)。(図16A〜16Cのリンイメージングを定量し、そして結果は図17に図示する。)CDC2キナーゼ活性は、HU抑止細胞(図16C“HU”)から調製した免疫沈降物で低い値であるのは明らかであるが、G1期(図16C、G1抽出物、「0」)には殆ど検出できない値にまで低下しそしてキナーゼ活性の値は細胞抽出物に種々の量のサイクリンEを添加しても変わらなかった(即ち、図16A、16B、16C;「5、1、0.2」)。対照的に、HU抑止細胞抽出物(図16A、「HU」)で低い値で存在するCDK2キナーゼ活性はG1(図16A、G1抽出物、「0」)では検出できない値に低下したが、サイクリンEをG1細胞抽出物(図16A、「5、1、0.2」)に添加したときCDK2キナーゼ活性は回復した。これらの結果は、サイクリンEを添加した後のG1期の細胞抽出物で潜在的なCDK2キナーゼ活性が活性化することを示しており、そしてキナーゼ活性がサイクリンEの発生量によって制御されることを示唆している。これらの研究の量的な特徴は図17に示し、その際CDK2キナーゼ活性のサイクリンE介在活性化の値はG1期の細胞抽出物に添加したサイクリンEの量(「HU抽出物中のサイクリンEの値の倍数」、図17)の関数として測定された(即ち、上記の図16A、16Bおよび16Cで示されたSDS−PAGEのリンイメージングを使用して)。(図17のサイクリンEを含有するSf9溶解物の種々の量は図16A、16Bおよび16Cの「5、1および0.2」の量に相当する。)CDC2、CDK2およびサイクリンE免疫沈降物の各々のキナーゼ活性に関するリンイメージングデ一夕はHUで抑止した対照細胞の細胞溶解物中に見られる活性(即ち、「ヒドロキシウレアH1キナーゼの活性%」を100%とする;図17)のパーセントとして活性を計算することによって一般化した。図17に示した結果は、CDK2キナーゼ活性値がG1抽出物に添加されたサイクリンEの量に依存しており、そしてHU抑止細胞抽出物に見られた値より22倍以上大きいCDK2キナーゼ活性値が達成されたことを示している(即ち、5倍のサイクリンEでのサイクリンE免疫沈降物;図17)。更に、これらの結果は、サイクリンE免疫沈降物と会合したキナーゼ活性がCDC2免疫沈降物と会合した活性より一定して大きかったことを示している。これらの結果はまた、CDC2活性に関しては低い値しかG1期の細胞抽出物に存在せずそしてこれらの抽出物に存在すると思われる潜在的CDC2がサイクリンEの添加によってそれほど活性化しないというこれまでの調査結果(上記)も確認している。
これらの結果を総合すると、サイクリンE:CDK2コンプレックスの形成から生じるサイクリンEによるキナーゼ活性の活性化を示唆している。他の研究(示していない)では、サイクリンEとCDC2またはCDK2との会合はセファロース12によるモレキュラーシーブゲルクロマトグラフィーを使用して証明された。p34CDC2およびp33CDK2モノマーは30〜40kDaで溶出しそしてヒストンH1キナーゼ活性は無視できるほどであった。組換え体サイクリンEを含有する昆虫細胞抽出物をCDK2含有溶解物と混合したとき、大部分のCDK2タンパク質は約160kDaの分子サイズで溶出し、サイクリンE:CDK2コンプレックスの形成を示唆していた。対照的に、同様な量のCDC2を含有する抽出物をサイクリンE溶解物と混合したとき、小フラクションのCDC2タンパク質しかサイクリンEと安定な形態では会合しなかった。モレキュラーシーブカラムから溶出されたサイクリンE:CDC2およびサイクリンE:CDK2コンプレックスはキナーゼ活性を示した。
(実施例8〜13に関する考察:サイクリンEはG1サイクリンである。)
真核細胞の増殖は主として細胞周期のG1期に生じる1回の決定によって制御される−−細胞周期に入りそして分裂するかまたは細胞周期から引き上げそして静止状態に入る(Baserga、1995年;Pardee、1989年)。酵母では、この細胞決定の基礎にある生化学的過程はCDC8タンパク質キナーゼとCLNタイプのサイクリンとの間のコンプレックスの集合物および活性化である(Nurse、1990年;Hartwe11、1992年で検討された)。種々のモデル系での最近の実験は、CDC2関連キナーゼの役割が進化論的に保存されているという考え方を支持している(D’Urso等、1990年;BlowおよびNurse、1990年;Furakawa等、1990年;FangおよびNowport、1991年)。本明細書に示された観察は、ヒトサイクリンEが細胞周期のG1後期にCDC2関連キナーゼを特異的に活性化しそしてサイクリンEの蓄積がG1移行の速度を限定するということを証明している。それ故、本発明者は全ての真核生物で細胞増殖を制御する生化学的経路での臨界的段階がサイクリンE/CDKコンプレックス(用語CDKはCDC2タンパク質属におけるサイクリン依存性キナーゼを呼称するために使用される)の集合物であることを提案する。
真核細胞の増殖は主として細胞周期のG1期に生じる1回の決定によって制御される−−細胞周期に入りそして分裂するかまたは細胞周期から引き上げそして静止状態に入る(Baserga、1995年;Pardee、1989年)。酵母では、この細胞決定の基礎にある生化学的過程はCDC8タンパク質キナーゼとCLNタイプのサイクリンとの間のコンプレックスの集合物および活性化である(Nurse、1990年;Hartwe11、1992年で検討された)。種々のモデル系での最近の実験は、CDC2関連キナーゼの役割が進化論的に保存されているという考え方を支持している(D’Urso等、1990年;BlowおよびNurse、1990年;Furakawa等、1990年;FangおよびNowport、1991年)。本明細書に示された観察は、ヒトサイクリンEが細胞周期のG1後期にCDC2関連キナーゼを特異的に活性化しそしてサイクリンEの蓄積がG1移行の速度を限定するということを証明している。それ故、本発明者は全ての真核生物で細胞増殖を制御する生化学的経路での臨界的段階がサイクリンE/CDKコンプレックス(用語CDKはCDC2タンパク質属におけるサイクリン依存性キナーゼを呼称するために使用される)の集合物であることを提案する。
サイクリンEがヒト細胞周期のG1期に機能するという証拠は次のように要約することができる:サイクリンEは酵母CLN遺伝子において突然変異を相補うことができるので、酵母CLNタンパク質のスタート機能を実施することができる(Koff等、1991年;Lew等、1991年)。更に、本発明者はヒトCDC2かまたはヒトCDK2のどちらかと組み合わせたサイクリンEがCLNおよびCDC2B両機能用に二重に突然変異させた酵母株を救済できるであろうということを示した(Koff等、1991年)。しかし乍ら、有糸分裂中には明らかに機能するがG1中には機能しないヒトサイクリンBもCLN突然変異を救済できるであろうから、このアッセイの特異性は疑わしかった(Koff等、1991年;Lew等、1991年;Xiong等、1991年)。本明細書で報告したように、サイクリンEはヒト細胞ではタンパク質キナーゼと会合しそしてこのキナーゼは細胞周期を制御する。サイクリンEの発生量のみならずサイクリンE会合タンパク質キナーゼの活性もG1後期およびS初期にピークに達し、そしてその後細胞がS期、G2期および有糸分裂を進行するにつれて下降する。このキナーゼは細胞周期に入りそして分化するかまたは静止している細胞には存在しないので、このキナーゼも成長を制御する。サイクリンEおよびサイクリンA活性の相対的なタイミングは重要である。サイクリンAタンパク質およびサイクリンAと会合したキナーゼの活性はS期が開始するとすぐに検出可能であり(Marraccino等、1992年)、そしてS期であるためにはサイクリンA機能が必要である(Girard等、1991年)。本発明者は、サイクリンEがサイクリンAの前に蓄積しそしてサイクリンE会合キナーゼがサイクリンA会合キナーゼより早く細胞周期に現れることも示した。G1期のサイクリンEのこの生化学的機能は、サイクリンEの生理学的機能がサイクリンAのS期での役割に先行するであろうことを示唆していた。このことは、ラット線維芽細胞株、Rat−1内でヒトサイクリンEを構成的に発現させることによって直接示された。本発明者は、サイクリンEの5乃至10倍の過剰発現がサイクリンE会合キナーゼの活性値を3乃至5倍上昇させたことを見い出した。サイクリンEのこの過剰発現の値は細胞周期のG1期の長さを30〜35%減少させた。
サイクリンEタンパク質の発生量は通常は細胞周期を制御する−−これはG1後期で鋭いピークを示す。これは、サイクリンE mRNA値が細胞周期中にサイクリンEタンパク質の値と平行して影響を与えるので、多分サイクリンE mRNAの値の制御(Lew等、1991年)によるものであろう。サイクリンE、AおよびBをコードするmRNAは細胞周期を制御しそしてそれぞれのサイクリンタンパク質の蓄積パターンを予測する(PinesおよびHunter、1989年、1990年)。発芽酵母では、CLN mRNAの蓄積はプラスのフィードバック制御によるものであり、そしてスタートでのCLN mRNAおよびタンパク質値が急速に増加する(CrossおよびTinkelenberg、1991年;DirickおよびNasmyth、1991年)。哺乳動物細胞内でのサイクリンタンパク質と転写因子の会合は、細胞周期中のサイクリン遺伝子発現のタイミングを制御する同様な機構の1部であると思われる(Bandara、1991年;Mudryj等、1991年;DeVoto等、1992年;Shirodkar等、1992年)。サイクリンの蓄積はそれぞれのmRNAの値によって1部決定されるが、サイクリンの発生量はタンパク質転換によって制御することもできる(MurrayおよびKirschner、1999年;Glotzer等、1991年)。サイクリンEタンパク質の安定性が細胞周期中に制御されるかどうかは知られていないが、このタンパク質はサイクリンAおよびBの有糸分裂転換を介在する遍在性酵素によって認識されるコンセンサス配列を欠いている(Glotzer等、1991年)。
(サイクリンE:CDK2コンプレックス)
データは、主要なサイクリンE−会合タンパク質キナーゼがCDK2であることを示唆している。32Pまたは35S−メチオニン標識タンパク質の二次元ゲル分析は、ヒトの細胞の中でサイクリンEと会合した主要なCDC2に関連するタンパク質がCDK2であることを示している。サイクリンE:CDK2コンプレックスがインビボで活性のキナーゼであるという直接的な証拠はないが、これが最もあり得そうな結論である。サイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量は細胞周期を制御しそしてサイクリンE会合キナーゼの値と良く適合する。更に、サイクリンEと結合したCDK2タンパク質は主として、一次元PAGEによって検出可能な2つの形態が一層急速に移行しているものである。この下方への移動性のシフトはCDK2とサイクリンの結合およびCDK2キナーゼの活性化の両方に関係があることが知られている(Rosenblatt等、1992年)。これはスレオニン160のリン酸化を示すものぞあると考えられ、CDK2キナーゼ活性化の必要条件である(Y.GuおよびD.M.、未発表の所見)。S.セレビシエではサイクリンE:CDK2コンプレックスをCLN/CDC28コンプレックスの代わりに使用することができ(Koff、1991年)、そしてサイクリンE:CDK2コンプレックスがインビトロで活性のキナーゼであることも示されている。
データは、主要なサイクリンE−会合タンパク質キナーゼがCDK2であることを示唆している。32Pまたは35S−メチオニン標識タンパク質の二次元ゲル分析は、ヒトの細胞の中でサイクリンEと会合した主要なCDC2に関連するタンパク質がCDK2であることを示している。サイクリンE:CDK2コンプレックスがインビボで活性のキナーゼであるという直接的な証拠はないが、これが最もあり得そうな結論である。サイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量は細胞周期を制御しそしてサイクリンE会合キナーゼの値と良く適合する。更に、サイクリンEと結合したCDK2タンパク質は主として、一次元PAGEによって検出可能な2つの形態が一層急速に移行しているものである。この下方への移動性のシフトはCDK2とサイクリンの結合およびCDK2キナーゼの活性化の両方に関係があることが知られている(Rosenblatt等、1992年)。これはスレオニン160のリン酸化を示すものぞあると考えられ、CDK2キナーゼ活性化の必要条件である(Y.GuおよびD.M.、未発表の所見)。S.セレビシエではサイクリンE:CDK2コンプレックスをCLN/CDC28コンプレックスの代わりに使用することができ(Koff、1991年)、そしてサイクリンE:CDK2コンプレックスがインビトロで活性のキナーゼであることも示されている。
細胞内でのサイクリンEタンパク質の周期的な蓄積はサイクリンE:CDK2の蓄積と適合し、一方CDK2タンパク質は細胞周期中一定の値で存在している(Rosenblatt等、1992年)。それ故、サイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量は主としてサイクリンEタンパク質の値で制御される。しかし乍ら、サイクリンEのリン酸化状態もコンプレックスの集合を制御できるであろう。
CDK2の少なくとも6つのリン酸化されたアイソフォームがサイクリンEと会合している。この複雑さは、これらのアイソフォームの2つしかサイクリンAと結合して検出されていないので、驚くべきことであった。予備的な証拠は、CDK2が、CDC2のリン酸化と同様に3残基−−T14、Y15およびT160でリン酸化される。(Y.GuおよびD.M.、未発表の観察)ことを示している。これら部位の組合せリン酸化が6つのCDK2アイソフォームと考えることができよう。しかし乍ら、抗CDK2抗体との免疫沈降物がCDK2の2つの追加的リン酸化アイソフォームを有しており、検出される総数は8つになる(図11D)ので、他のリン酸化部位も存在していることが一層ありそうに思われる。1つの解釈は、サイクリンE:CDK2コンプレックスが、例えばシグナル形質導入に係わる別のメッセンジャーを結合することによって、細胞増殖を制御する多数のシグナルによって提供される情報を統合するということである。CDK2の複数的にリン
酸化された形態はサイクリンE:CDK2コンプレックスの活性化に与える種々の有糸分裂シグナルの影響を反映すると思われる。複数のCDK2ホスフェートがCDK2の活性に対してプラスとマイナスの影響の両方を有することができ、そして特定のリン酸化状態には特定の機能が必要であると思われる。細胞周期への付託がなされた後に生起するサイクリンA:CDK2コンプレックスの下流の活性化ははるかに少数のファクターにしか応答し得ず、そしてそれ故生化学的には殆ど説明できない。
酸化された形態はサイクリンE:CDK2コンプレックスの活性化に与える種々の有糸分裂シグナルの影響を反映すると思われる。複数のCDK2ホスフェートがCDK2の活性に対してプラスとマイナスの影響の両方を有することができ、そして特定のリン酸化状態には特定の機能が必要であると思われる。細胞周期への付託がなされた後に生起するサイクリンA:CDK2コンプレックスの下流の活性化ははるかに少数のファクターにしか応答し得ず、そしてそれ故生化学的には殆ど説明できない。
CDK2が細胞周期のG1からS期の間に役割を果たすという他の証拠が提案される。細胞周期進行中の細胞では、CDK2キナーゼ活性がCDC2キナーゼ活性に先行する(Rosenblatt等、1992年)。S.セレビシエでの1つの実験は、或る種の遺伝子背景で、CDK2がCDC28のG1/S機能を相補いそしてG2/M機能を相補わないことを示していた(Koff等、1991年)。更に、活性化したツメガエルの卵の抽出物からCDK2を枯渇させるとDNA複製の開始を妨げる(FangおよびNewport、1991年)。これらの結果は全て、細胞を細胞周期に付託する際のCDK2の役割と一致する。
(サイクリンE:CDC2コンプレックス)
サイクリンEは、タンパク質を酵母内で一緒に発現させるとき、ヒトCDK2およびヒトCDC2の両者と相互作用することができ、そしてサイクリンEはCDK2およびCDC2キナーゼの両者をインビトロで活性化することができる(上記の実施例)。本発明者は、ヒト細胞ではサイクリンE:CDK2コンプレックスの方がより多量であるが、サイクリンE:CDC2コンプレックスも存在することを示した。更に、サイクリンEを潜在的に調節するかまたは変化させることができる他のタンパク質とサイクリンEとのコンプレックスが観察された(図12;表1)。細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼ活性のパターンはサイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量との相異を幾らか示した。これらの違いはサイクリンE:CDC2または他のサイクリンEコンプレックスに起因すると思われる。
サイクリンEは、タンパク質を酵母内で一緒に発現させるとき、ヒトCDK2およびヒトCDC2の両者と相互作用することができ、そしてサイクリンEはCDK2およびCDC2キナーゼの両者をインビトロで活性化することができる(上記の実施例)。本発明者は、ヒト細胞ではサイクリンE:CDK2コンプレックスの方がより多量であるが、サイクリンE:CDC2コンプレックスも存在することを示した。更に、サイクリンEを潜在的に調節するかまたは変化させることができる他のタンパク質とサイクリンEとのコンプレックスが観察された(図12;表1)。細胞周期中のサイクリンE会合キナーゼ活性のパターンはサイクリンE:CDK2コンプレックスの発生量との相異を幾らか示した。これらの違いはサイクリンE:CDC2または他のサイクリンEコンプレックスに起因すると思われる。
インビボでのサイクリンE:CDC2コンプレックスの低い値はCDC2に対するサイクリンEの比較的低い親和性の結果であるように思われる。本明細書に提示した再構築実験は、サイクリンE:CDK2コンプレックスが、非常に少しのサイクリンEしかCDC2に結合していない条件下で容易に形成されることを示している。しかし乍ら、本発明者はサイクリンEがインビボで多数のリン酸化状態で存在していることを見い出した。それ故、もう1つの可能性はサイクリンEの或る比較的まれなアイソフォームがCDC2に結合し得るということである。
本発明者は、酵母CDC28遺伝子における突然変異がサイクリンEの能力は非常に削減するがサイクリンBの能力は削減しないでCLN機能を救済することをこれまでに観察し、そしてその結果、本発明者はサイクリンEがサイクリンBとは異なってCDC28と相互作用するであろうと提案した(Koff等、1991年)。インビトロでの再構築実験は、サイクリンBはCDC2と効果的に結合した(Desai等、1992年)が、少量のサイクリンE:CDC2コンプレックスしか検出できなかったということを示すことによってこの考え方を支持している。
(他のサイクリンE:CDC2コンプレックス)
上記の図12および表1に示した結果は、サイクリンEと会合しているこれまでには認識されなかった他の細胞分裂キナーゼの存在の可能性を示していると解釈することもできる。32Kdのバンド「x」タンパク質(表1、図12)は、既知のCDC2およびCDC2キナーゼとの大きさの類似性並びにサイクリンEとの明白な会合の両者に基づいて、確かにこのような新規なキナーゼタンパク質の候補である。
上記の図12および表1に示した結果は、サイクリンEと会合しているこれまでには認識されなかった他の細胞分裂キナーゼの存在の可能性を示していると解釈することもできる。32Kdのバンド「x」タンパク質(表1、図12)は、既知のCDC2およびCDC2キナーゼとの大きさの類似性並びにサイクリンEとの明白な会合の両者に基づいて、確かにこのような新規なキナーゼタンパク質の候補である。
(哺乳動物細胞におけるG1制御)
1974年にパルディ(Pardee)は哺乳動物細胞の増殖が、制限点と呼ばれる細胞周期のG1期の或る点で細胞外の分裂誘発因子シグナルによって制御されることを提案した(Pardee、1974年)。これらのシグナルが存在しなかった場合、または細胞がこれらシグナルに適切に応答できなかった場合(例えば、タンパク質合成が阻止されている場合)には、細胞は制限点を越えずそしてG0と呼ばれる静止状態に入るであろう(Zetterberg、1990年、で総説された)。細胞は細胞外分裂誘発シグナルの広い列に応答することはできるが、これらのシグナルによって誘発される細胞内結果には多様性が殆どないという印象を受ける(Cantley、1991年;Chao、1992年参照)。実際、多様な分裂誘発因子経路が通過しなければならない最終的な共通点がありそしてこれが制限点であると期待することは不合理ではない(Pardee、1974年)。
1974年にパルディ(Pardee)は哺乳動物細胞の増殖が、制限点と呼ばれる細胞周期のG1期の或る点で細胞外の分裂誘発因子シグナルによって制御されることを提案した(Pardee、1974年)。これらのシグナルが存在しなかった場合、または細胞がこれらシグナルに適切に応答できなかった場合(例えば、タンパク質合成が阻止されている場合)には、細胞は制限点を越えずそしてG0と呼ばれる静止状態に入るであろう(Zetterberg、1990年、で総説された)。細胞は細胞外分裂誘発シグナルの広い列に応答することはできるが、これらのシグナルによって誘発される細胞内結果には多様性が殆どないという印象を受ける(Cantley、1991年;Chao、1992年参照)。実際、多様な分裂誘発因子経路が通過しなければならない最終的な共通点がありそしてこれが制限点であると期待することは不合理ではない(Pardee、1974年)。
制限点制御に関する分子の詳細は殆どない。正常な細胞では、制限点からの進行はタンパク質合成速度に非常に感受性である(Rossow等、1979年、Schneiderman等、1971年;Brooks、1977年)。制限点より前における(しかし後ではない)タンパク質合成の少しで且つ一時的な減少はG1の長さを実質的により長く増加させる(ZetterbergおよびLarson、1985年)。細胞外分裂誘発因子刺激を除去しそして細胞タンパク質合成を阻止すると、事実上、同一の細胞周期の生起を妨げると考えられる(Pardee等、1981年)。タンパク質合成速度の比較的小さい変化によるG1の長さに与える不釣り合いな大きい影響を考慮して、細胞が制限点を越えるためには、不安定なタンパク質がG1中に蓄積しなければならないと提案された(Pardee、1989年、によって総説された)。
サイクリンが制限点のこの不安定な調節因子でありそしてサイクリン/CDKコンプレックスの形成および/または活性化がG1進行においても速度を限定するものであると推測することは興味がある。細胞周期中にサイクリンEが周期的に蓄積することは、サイクリンEが比較的短い生存タンパク質であることを示唆しており、そしてその発生量のG1ピークは制限点での役割と一致していると思われる。更に、構成サイクリンE発現によるG1の長さの減少は、S期への進入がサイクリンEの発生量によって制限されることを示唆している。しかし乍ら、構成サイクリンE発現によってG1が全て消失されるわけではないことを覚えておくことが重要である。G1の継続がサイクリンEの発生量によって影響を受けない必須のG1期が幾らか存在すると最も考えられる。この例には、染色体の脱縮合や核膜集合が含まれると思われる。更に、或る状況下ではG1制限点はS期の開始前1時間未満で生起する(Wynford−Thomas等、1985年)が、他の場合には制限点はG1よりかなり早い時期に生起する(Pardee、1974年)ことが報告されている。本発明者の測定は、最大のサイクリンE会合キナーゼ値がG1の比較的遅い時期に到達することを示唆している。このことは、G1の殆どがサイクリンE−会合キナーゼが検出されるより前に完結する血清刺激細胞で特に明白である(A.K.およびJ.R.、未発表の所見)。サイクリンDおよびサイクリンCのような他のサイクリンはG1中に発現することもでき(Matsushime等、1991年;Motokura等、1991年;Lew等、1991年)、そして多数のサイクリン:CDKコンプレックスの連続的形成が細胞がG1を越えるために必要であることも考えられる。その場合には、構成サイクリンE発現はG1後期しか短縮しないであろう。
S.セレビシエでは、スタートの通過を制御する因子はCLN機能に、明らかに多数の値で、影響を与えることができる(ChangeおよびHerskowitz、1990年;CrossおよびTinkelenberg、1991年)。類推によって、本発明者は哺乳動物細胞におけるG1サイクリン機能が細胞増殖を調節するタンパク質によって制御されると予想することができよう。例えば、サイクリンEとRbタンパク質属のメンバーとの間の直接的相互作用を観察することは驚くべきことではなかったろう(Bandara等、1991年;Mudryj等、1991年;Shirodkar等、1992年;DeVoto等、1992年)。更に、サイクリンE遺伝子の発現は1つまたはそれ以上の腫瘍原性転写因子によって制御されよう。
(実施例14:構成的にサイクリンEを発現する細胞の成長因子依存性)
全ての正常な高等真核生物細胞の細胞分裂周期は、細胞分裂に必要な特異的な細胞外成長因子によって制御される。既知の成長因子の属はさまざまであり、そしてインスリン、PDGF、IGF、EGF、GM−CSF、TGF、エリスロポエチンおよび他の幹細胞因子のようなタンパク質が含まれる。種々の細胞タイプは、それらの細胞表面に発現された成長因子レセプターによってそしてそれらの分化の状態によって部分的に決定される特別の成長因子要件を示す。典型的には、細胞培養物中の細胞は増殖するためには動物血清(即ち、ウシ胎児血清)中に外来性の成長因子を要求する;または化学的に特定された血清不含培地中に特定の成長因子を添加しなければならない。必要な成長因子の不存在下では、細胞は分裂を停止しそしてG1で抑止される。上記実施例で示された結果は、サイクリンEの値および/またはサイクリンE:細胞分裂キナーゼコンプレックスの活性がG1から細胞を移行させるのに速度限定である可能性を示した。それ故、細胞増殖がサイクリンの活性化(例えば、サイクリン遺伝子の転写または翻訳の増加;またはサイクリン:キナーゼコンプレックス活性の増加)を必要とする段階によって制御されそして成長因子がサイクリンを活性化させることによって細胞に作用するのであろうと理由づけられた。増殖にはサイクリンの活性化が必要であると仮定して、2つの仮説が考えられた:分化の特別の段階の細胞が1つの成長因子によって誘発させることができる1つのサイクリンを有しているという単一仮説;および1つの成長因子が多数のサイクリンを活性化しそして細胞の増殖を誘発するためには細胞内の全てのサイクリンの作用を組み合わせることが必要であるという多様仮説。単一仮説の単純な原因と結果の論理が真実であると思われる場合には、細胞内のサイクリンE値を修正すると細胞がインビトロで増殖する成長因子要件を変えるであろう;一方多様仮説が真実であると思われる場合には、1つのサイクリンの何らかの変更は細胞内の他の全てのサイクリンの作用によって隠蔽されるであろうと理由づけられた。これらの2つの仮説を試験するために、細胞はLXSN−サイクリンEベクター配列を用いて形質導入した。
全ての正常な高等真核生物細胞の細胞分裂周期は、細胞分裂に必要な特異的な細胞外成長因子によって制御される。既知の成長因子の属はさまざまであり、そしてインスリン、PDGF、IGF、EGF、GM−CSF、TGF、エリスロポエチンおよび他の幹細胞因子のようなタンパク質が含まれる。種々の細胞タイプは、それらの細胞表面に発現された成長因子レセプターによってそしてそれらの分化の状態によって部分的に決定される特別の成長因子要件を示す。典型的には、細胞培養物中の細胞は増殖するためには動物血清(即ち、ウシ胎児血清)中に外来性の成長因子を要求する;または化学的に特定された血清不含培地中に特定の成長因子を添加しなければならない。必要な成長因子の不存在下では、細胞は分裂を停止しそしてG1で抑止される。上記実施例で示された結果は、サイクリンEの値および/またはサイクリンE:細胞分裂キナーゼコンプレックスの活性がG1から細胞を移行させるのに速度限定である可能性を示した。それ故、細胞増殖がサイクリンの活性化(例えば、サイクリン遺伝子の転写または翻訳の増加;またはサイクリン:キナーゼコンプレックス活性の増加)を必要とする段階によって制御されそして成長因子がサイクリンを活性化させることによって細胞に作用するのであろうと理由づけられた。増殖にはサイクリンの活性化が必要であると仮定して、2つの仮説が考えられた:分化の特別の段階の細胞が1つの成長因子によって誘発させることができる1つのサイクリンを有しているという単一仮説;および1つの成長因子が多数のサイクリンを活性化しそして細胞の増殖を誘発するためには細胞内の全てのサイクリンの作用を組み合わせることが必要であるという多様仮説。単一仮説の単純な原因と結果の論理が真実であると思われる場合には、細胞内のサイクリンE値を修正すると細胞がインビトロで増殖する成長因子要件を変えるであろう;一方多様仮説が真実であると思われる場合には、1つのサイクリンの何らかの変更は細胞内の他の全てのサイクリンの作用によって隠蔽されるであろうと理由づけられた。これらの2つの仮説を試験するために、細胞はLXSN−サイクリンEベクター配列を用いて形質導入した。
ヒト線維芽細胞およびラットRat−1細胞の初代培養物はLXSN一サイクリンEベクター粒子で感染させるか、または対象としてLXSNで感染させた(実施例9に記載したようにして)。形質導入した細胞はサイクリンEの発現について試験し(上記したようにして)、そしてLXSN−サイクリンE−形質導入したRat−1およびヒト線維芽細胞はそれらが由来する細胞より3乃至5倍多い(そして対照のLXSN−形質導入細胞より3乃至5倍多い)値のサイクリンEタンパク質を発現することが見い出された。LXSN−サイクリンE−形質導入したヒト細胞の成長因子依存性は血清不含培地(D−MEM)または10%、1%、0.1%または0.01%(v/v)ウシ胎児血清(表2)を補充した培地中で三重水素化チミジンのDNAへの導入を測定することによって決定しそしてRat−1細胞の成長因子依存性は10%、1.0%または0.1%血清中でBrdUの導入を測定して決定した(図18A〜18B)。BrdUアッセイでは、DNAを合成している細胞(即ち、S期の細胞)だけがBrdUをDNAに導入しそしてアッセイで陽性と記録される。それ故、BrdU陽性細胞の蓄積速度は、1つの有糸分裂の終結からG1期を経由しそして次の回のDNA合成(即ち、S期)に移行する速度の相対的な尺度と考えることができる。図18Aおよび18Bに示した結果は、LXSN−形質導入した対照Rat−1細胞(「RAT1/LX」、白丸)およびLXSN−サイクリンE−形質導入した細胞(「RAT1/サイクリンE」、黒丸)の培養物中でBrdUで標識した総細胞核のパーセントをノコダゾール処理によって誘導された有糸分裂抑止を解除した後の時間の関数として示す。細胞の成長因子依存性は10%のウシ胎児血清中(図18A)または1%若しくは0.1%血清中(図18B)で細胞を培養することによって評価した。図18Aおよび18Bの結果は、a)培養培地中の血清のパーセントに関係なく、LXSN−サイクリンE−形質導入細胞は対照細胞より急速にDNA合成を開始し;そしてb)LXSN−サイクリンE−形質導入細胞は低い血清(即ち、0.1%)に対する耐性の増加を示しそしてDNA合成を対照細胞より約10〜12時間早く開始したことを示している(図18B)。
同様な方法で、表2に示した結果はLXSN−サイクリンE−形質導入ヒト線維芽細胞およびRat−1細胞が増殖の成長因子要件の減少を表わしていることを示している。対照細胞(即ち、LXSN−形質導入細胞)では、血清を10%から0.1%に低下させたとき、速度は低下したが、細胞は増殖しそしてDNAにチミジンを導入し続け、最適の成長因子値(即ち、10%血清)の存在下では11%の値が観察された。対照的に、LXSN−サイクリンE−形質導入細胞の増殖は最大値の19%に減少した(10%血清で見られた)がこの値は対照のLXSN−血清導入細胞で見られた値より2倍以上高かった。更に、0.1%血清中で増殖しているサイクリンE−形質導入細胞にPDGF(10ng/ml)を添加したとき、増殖値は10%血清の存在下で生起する最大値の50%であった(表2)。対照的に、0.1%血清中で増殖している対照のヒト線維芽細胞にPDGFを添加したとき、チミジン導入の刺激は観察されなかった。
0=PDGFなし;
b)3H−TdR、培養培地に1〜2μCi/mlの3H−TdRを添加して36時間後に測定した三重水素化したチミジンの導入;
c)最大CPMパーセント、3H−TdR CPMの最大パーセント=(0.1%でのCPM)/(10%血清でのCPM)
(流動細胞計測法分析によって、0.1%血清の存在下LXSN−サイクリンE形質導入Rat−1およびヒト線維芽細胞中で細胞周期進行中の細胞の継続的な存在が確認された。)
これらの結果を組み合わせると、LXSN−サイクリンE−形質導入Rat−1細胞は細胞周期のG1期移行に関して成長因子依存性が減少している。
これらの組み合わせた結果は1つのサイクリン、即ちサイクリンEが3〜5倍過剰に発現すると成長因子の不存在下で細胞が増殖する能力を部分的に(しかし完全にではない)回復することができ、そして1つの成長因子、PDGFの存在下では増殖を完全に回復するという仮説を支持している。かくして、これらの結果は1つのサイクリンと1つの成長因子が特別の分化段階で細胞の増殖を制御するという単一仮説を支持することとなる;しかし乍ら、この解釈はデータの量的な特徴では支持されない。即ち、過剰発現は細胞を完全には成長因子非依存性としなかった。それ故、PDGFの存在下ではサイクリンE以外のサイクリンが細胞増殖の刺激に関与している可能性も存在する。(かくして、これらの結果は幾つかのサイクリンと成長因子の活性を組み合わせて細胞増殖を促進するという細胞増殖の多様モデルに対する支持を提供していると解釈することができよう。)
要約すると、これらの結果は細胞増殖に関する単一モデルかまたは多様モデルのどちらかに対する支持を提供すると解釈することができる。解釈は別として、これらの結果は、インビトロで細胞を増殖させるのに必要な条件を劇的に変更するには、細胞内での1つのサイクリンの遺伝子操作および1つの成長因子による処理で十分であることを証明するのに重要である。これらの結果から、特定の細胞内でG1サイクリン発現を適当に組み合わせると、a)増殖が外来性成長因子の不存在下で非常に抑制される細胞株を製造することができ、そしてb)増殖が1つまたはそれ以上の選択された成長因子に依存性である細胞株を製造することができるように思われる。現在の調査結果に関する潜在的な長期間の重要性を考慮すると、サムハンクス(Sam Hanks)はハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)を開発する研究にほぼ10年かかり;イーグルがイーグル最少必須培地(MEM)を開発するのに更に約3〜5年かかり;そしてレーンダルベッコ(Rene Dulbecco)がD−MEM処方を達成するのに更に長期間かかったことを思い出す価値があると思われる。(RPMI1640およびM199のような培地もやはりそれらの開発にどの位多くの処方が先行したかを意味する数を有している。)それ故、本明細書に記載した調査結果は、血清成長因子のほぼ完全な不存在下のインビトロで細胞の増殖を促進するためには細胞内で1つのタンパク質を簡単に操作することで十分であることを示しているので、非常に重要である。
要約すると、これらの結果は細胞増殖に関する単一モデルかまたは多様モデルのどちらかに対する支持を提供すると解釈することができる。解釈は別として、これらの結果は、インビトロで細胞を増殖させるのに必要な条件を劇的に変更するには、細胞内での1つのサイクリンの遺伝子操作および1つの成長因子による処理で十分であることを証明するのに重要である。これらの結果から、特定の細胞内でG1サイクリン発現を適当に組み合わせると、a)増殖が外来性成長因子の不存在下で非常に抑制される細胞株を製造することができ、そしてb)増殖が1つまたはそれ以上の選択された成長因子に依存性である細胞株を製造することができるように思われる。現在の調査結果に関する潜在的な長期間の重要性を考慮すると、サムハンクス(Sam Hanks)はハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)を開発する研究にほぼ10年かかり;イーグルがイーグル最少必須培地(MEM)を開発するのに更に約3〜5年かかり;そしてレーンダルベッコ(Rene Dulbecco)がD−MEM処方を達成するのに更に長期間かかったことを思い出す価値があると思われる。(RPMI1640およびM199のような培地もやはりそれらの開発にどの位多くの処方が先行したかを意味する数を有している。)それ故、本明細書に記載した調査結果は、血清成長因子のほぼ完全な不存在下のインビトロで細胞の増殖を促進するためには細胞内で1つのタンパク質を簡単に操作することで十分であることを示しているので、非常に重要である。
(材料および方法)
プラスミドおよびライブラリー:ヒトcDNAライブラリーはJ.コリセリ(Colicelli)およびM.ビグラー(Wigler)からの贈与品であった。これはベクターpADNS内でヒト膠芽腫細胞様U118から調製した(Colicelli等、1988年)。これらの実験で使用したライブラリーの部分は>2kbであるように選択されたcDNA挿入物を含有していた。ヒトCDC2相同体の単離に係わる実験では、サイクリンE cDNAをベクターpMACに移植させた。この2μ系ベクターはADHプロモーターを使用してヒトcDNAの発現を行わせ、そしてTRP1選択マーカーを含有している。大腸菌でサイクリンEを発現させるためには、全サイクリンEコード化領域を含有するSmaI−PvuIIフラグメントをベクターpGEX−3T(Amgen)内の非反復Sma1部位にクローン化させた。インビトロ転写/翻訳反応では、サイクリンEのSmaI−NotIフラグメントをベクターpCITE−1(Novagen)内のMscI部位にクローン化させた。ヒトサイクリンAおよびBのインビトロ翻訳では、開始メチオニンで遺伝子操作されたNcoI部位を有するcDNAはジョナサンパインズ(Jonathan Pines)およびトニーハンター(Tony Hunter)によって豊富に提供された。PCITEベクターをSaIIで開裂し、クレノウ酵素でブラント末端とし、そしてその後非反復NcoI部位で開裂させた。サイクリンcDNAはEcoRI(サイクリンAに対して)またはBamHI(サイクリンBに対して)で開裂して単離し、クレノウでブラント末端とし、そしてその後非反復NcoI部位で開裂させた。ツメガエルCDK2クローン、pEMBLY830/2は以前に記載されている(Paris等、1991年)。酵母での幾つかのアッセイでは、サイクリンA、BおよびE cDNAsは、ADHタンパク質の最初の10個のアミノ酸を融合させて発現タンパク質にすることを除いてpADNSと同一であるベクターpADNS中にクローン化させた。
プラスミドおよびライブラリー:ヒトcDNAライブラリーはJ.コリセリ(Colicelli)およびM.ビグラー(Wigler)からの贈与品であった。これはベクターpADNS内でヒト膠芽腫細胞様U118から調製した(Colicelli等、1988年)。これらの実験で使用したライブラリーの部分は>2kbであるように選択されたcDNA挿入物を含有していた。ヒトCDC2相同体の単離に係わる実験では、サイクリンE cDNAをベクターpMACに移植させた。この2μ系ベクターはADHプロモーターを使用してヒトcDNAの発現を行わせ、そしてTRP1選択マーカーを含有している。大腸菌でサイクリンEを発現させるためには、全サイクリンEコード化領域を含有するSmaI−PvuIIフラグメントをベクターpGEX−3T(Amgen)内の非反復Sma1部位にクローン化させた。インビトロ転写/翻訳反応では、サイクリンEのSmaI−NotIフラグメントをベクターpCITE−1(Novagen)内のMscI部位にクローン化させた。ヒトサイクリンAおよびBのインビトロ翻訳では、開始メチオニンで遺伝子操作されたNcoI部位を有するcDNAはジョナサンパインズ(Jonathan Pines)およびトニーハンター(Tony Hunter)によって豊富に提供された。PCITEベクターをSaIIで開裂し、クレノウ酵素でブラント末端とし、そしてその後非反復NcoI部位で開裂させた。サイクリンcDNAはEcoRI(サイクリンAに対して)またはBamHI(サイクリンBに対して)で開裂して単離し、クレノウでブラント末端とし、そしてその後非反復NcoI部位で開裂させた。ツメガエルCDK2クローン、pEMBLY830/2は以前に記載されている(Paris等、1991年)。酵母での幾つかのアッセイでは、サイクリンA、BおよびE cDNAsは、ADHタンパク質の最初の10個のアミノ酸を融合させて発現タンパク質にすることを除いてpADNSと同一であるベクターpADNS中にクローン化させた。
(抗体:) ヒトCDC2のC末端に対応するペプチドYLDNQIKKM(配列ID.No.3)を化学的に合成し、ウサギヘの注射用にチロシン残基を介してBSAに共有結合させた。アフィニティー精製用に、ウサギ血清を50%硫酸アンモニウムで沈降させ、10mMリン酸ナトリウム(pH8.0)に再懸濁させ、そして10mMリン酸ナトリウム、0.15M NaCl、pH7.2(PBS)で徹底的に透析した。アフィニティーカラムはファルマシアが推奨する条件を使用してペプチドをCNBr活性化セファロースにカップリングさせて調製した。透析物はPBS中で平衡化したアフィニティーカラムに適用した。続いてこの実施を2回実施した。カラムをカラム容量の10倍のPBS+2M KClで洗浄し、そして続けてカラム容量の10倍の5M NaI+1mMチオ硫酸ナトリウム(使用前に新たに作成した)で溶出した。免疫グロブリンを含有するフラクションは290での吸光度で決定し、集め、そしてPBSに対して徹底的に透析した。CDC2遺伝子属の保存「PSTAIRE」領域に対応するペプチドCEGVPSTAIREISLLKE(配列ID.No.4)を化学的に合成しそしてシステイン残基を介してアオガイヘモシアニン(KLH)にカップリングさせ、そしてウサギで抗体を作らせて上記したようにしてアフィニティー精製した。ヒトサイクリンAの残基104〜123に対応するペプチドYDEAEKEAQKKPAESQKIERE(配列ID.No.5)を化学的に合成し、そしてBSAにカップリングさせ、そしてウサギで抗体を作らせて上記したようにしてアフィニティー精製した。
CDK2に向けた抗体はアオガイヘモシアニンにカップリングさせたヒトCDK2の15C末端アミノ酸に対応するペプチドに対して生じさせた。ヒトCDK2の9C末端アミノ酸に対する他の2つの抗血清もこれらの実験の途中で使用した(Elledge等、1992年;Rosenblatt等、1992年)。ポリクローナル抗サイクリンE抗血清は記載されている(Koff等、1991年)。
サイクリンE抗体の調製には、GEX−cycEを含有する大腸菌(以下参照)をOD600が0.4〜0.6になるまで増殖させ、そして融合タンパク質発現は10mM IPTGで誘導した。30℃で更に3時間増殖させた後、大腸菌をペレット化し、PBSで1回洗浄し、そしてGEX緩衝液A(60mM トリス−HCl、pH8.0、25%スクロース、10mM EDTA)で再度洗浄し、そして−75℃で貯蔵した。細胞は、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)、10μg/mlのロイペプチン、100μg/mlの大豆トリプシンインヒビター(SBT1)および10μg/mlのN−トシル−L−フェニルアラニン クロロメチルケトン(TPCK)を含有するGEX緩衝液A中で元の培養物容量の1/30で再懸濁した。プロテアーゼインヒビターを以後の全ての段階で使用した。SDSを0.03%となるように添加し、そして音波処理して細胞を溶解させた。溶解物は13,000Xgで遠心して清明とし、そして0.03%SDSを有するGEX緩衝液C(0.02M HEPES−KOH(pH7.6)、100mM KCl、1.2mM EDTA、20%グリセリンおよびlmM DTT)中でセファロースCL4Bと1:1になるように添加し、4℃で1時間インキュベートし、そして低速遠心によってセファロースを除去した。清明溶解物はグルタチオン−アガロースビーズ(SIGMA#G4510)(グルタチオン−アガロースビーズ1ml当たり約360μgのGEX−サイクリンE)と共に4℃で1時間インキュベートした。アガロースビーズをペレット化し、そして0.03%のSDSを有する10倍容量のGEX緩衝液Cで5回洗浄し、そして0.03%のSDSと5mMのグルタチオンを有する緩衝液CでサイクリンE融合タンパク質(GEX−E)を溶出した。GEX−Eを含有するフラクションはSDS−PAGE電気泳動およびクーマシーブルー染色で確認した。フロイントの完全アジュバント中400μgの総GEX−Eタンパク質をウサギに注射した:320μgを皮下注射しそして80μgを筋肉内注射した。ウサギは、フロイントの不完全アジュバントを使用した以外同じレジメンを使用して3週間毎に追加抗原刺激した。注射後7日間瀉血して血液を得、そしてそれらがウサギ網状赤血球溶解物(Promega)中で産生されたサイクリンEを免疫沈降させる能力によって分析した。
サイクリンE抗血清の特異性はインビトロで翻訳されたサイクリンE、AおよびBの免疫沈降によって証明された。インビトロで翻訳されたサイクリンは製造者の指示に従って製造した。簡単に言えば、プラスミドをNheI(サイクリンB/サイクリンE)またはPstI(サイクリンA)のいずれかで直線化した。続いてサイクリンAは、転写反応の前にクレノウ(Klonw)酵素でブラント末端とした。転写はT7 RNAポリメラーゼを使用して実施し、そしてRNAはエタノール沈降で単離した。ウサギ網状赤血球溶解物はRNAでプログラミングし、そして30℃で2時間インキュベートした。プログラミングした溶解物(5μl)は500μlの50mM トリス−HCI、pH7.4、250mM NaClおよび0.1% NP−40中10μlのサイクリンE抗血清と共に4℃で1時間インキュベートした。タンパク質A−セファロースを添加し、そしてインキュベーションを1時間継続した。タンパク質Aビーズをペレット化し、そして50mMトリス−HCl、pH7.4、10mM MgCl2、1mM DTTおよび0.1mg/ml BSAで4回洗浄した。免疫沈降物を試料緩衝液に再懸濁し、そして12%SDS−PAGEゲルにかけた。ゲルを固定しそして1Mのサリチル酸ナトリウムで強化した後、乾燥しそしてオートラジオグラフィーにかけた。
サイクリンE抗体はGST−サイクリンE融合タンパク質のカラムでアフィニティー精製した。約100mlのウサギ血清は50%の硫酸アンモニウムで沈降させた。この沈降物を8,000Xgで集めそして10mMのリン酸ナトリウム、pH8.0に再懸濁し、そしてPBSで透析した。透析物は10%のグリセリンに調整し、そしてグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)カラムで予め清明化した。流出フラクションを集め、そしてカラムは0.2Mグリセリン、pH2.2で洗浄して再生させた。カラムはPBSで再度平衡化し、そしてこの方法を3回繰り返した。
続いて清明な血清をGST−サイクリンEカラムに適用した。吸着後、カラムは先ずPBSでそしてその後2M KCl−PBSで洗浄し、そして結合抗体は記載されたようにしてNaI−チオ硫酸ナトリウムで溶出した(Koff等、1991年)。溶出物はカップリング緩衝液(0.1M NaHCO3、pH8.3、0.5M NaCl)で透析し、そしてセントリコン(Centricon)10濃縮器(Amicon)を使用して5〜10倍に濃縮した。
(DNA配列決定:) サイクリンE cDNAの重なり合った欠失はジデオキシチェーンターミネーター法を使用して両ストランドの配列を決定した。
(キナーゼアッセイ:) GEX−サイクリンE(GEX−E)はグルタチオン−アガロースに結合したGEX−Eの洗浄まで上記したようにして精製した。この実験では、ビーズは0.03%SDSを有する5容量のGEX緩衝液Cで3回、0.5%のトリトンX−100を有する10容量の緩衝液Cで5回、10容量の緩衝液D(30mM HEPES−KOH、pH7.6、7mM MgCl2、100mM NaCl、1mM DTT)で5回洗浄した。100μlのGT−サイクリンE−セファロースビーズ、p13−セファロース(セファロース1ml当たり5mgのp13)、GT−セファロースまたはブランクセファローズは、SV40 DNAのインビトロ複製で使用した条件(緩衝液Dに3μgのクレアチンホスホキナーゼ、40mMのホスホクレアチン、0.25mMのdNTPs、0.5mMのCTP、UTPおよびGTP、3mMのATPを加える)下でヒトMANCA G1細胞(RobertsおよびD’Urso、1988年)から得た100μgのS−100抽出物と共にインキュベートした。次に、ビーズをペレット化し、そして0.1mg/mlのBSAを加えたキナーゼ緩衝液(50mMトリス−HCl、pH
7.4、10mM MgCl2、1mM DTT)中で5回洗浄した。キナーゼアッセイでは、ビーズを50μlのキナーゼ緩衝液+30μMのATP、5μCiγ−32P−ATPおよび1μgのヒストンH1中に再懸濁し、そして37℃で30分間インキュベートした。産生物はSDS−PAGE、続いてオートラジオグラフィーで分析した。
7.4、10mM MgCl2、1mM DTT)中で5回洗浄した。キナーゼアッセイでは、ビーズを50μlのキナーゼ緩衝液+30μMのATP、5μCiγ−32P−ATPおよび1μgのヒストンH1中に再懸濁し、そして37℃で30分間インキュベートした。産生物はSDS−PAGE、続いてオートラジオグラフィーで分析した。
SDS−GT−サイクリンE−セファロースビーズに結合したキナーゼを試験するために、GT−サイクリンEビーズおよびGTビーズを調製し、そしてG1抽出物と共にインキュベートし、そして記載したようにして洗浄した。TNT(25mM トリス−HCl、pH7.5、150mM NaCl、0.05% トゥイーン−20)および5mMのグルタチオン(還元型)中37℃で30分間ビーズをインキュベーションすると、グルタチオンとの相互作用によってビーズに結合したタンパク質を放出させるのに十分であった。上清液を新たな管に移し、そしてp34cdc2のC末端に向けられアフィニティー精製した抗血清で免疫沈降させた。免疫沈降物(タンパク質A−セファロースを有する)はTNT中で3回洗浄し、そして記載されたヒストンH1キナーゼアッセイで使用した。
結合CDC2キナーゼによるGT−サイクリンEタンパク質のリン酸化を示すために、GT−サイクリンEビーズを調製し、そしてG1抽出物と共にインキュベートし、そしてヒストンH1に関して上記したキナーゼアッセイで使用した;しかし乍ら、このアッセイにはヒストンH1は含めなかった。インキュベーション後に、ペレットはH1キナーゼ緩衝液+0.lmg/mlのBSA、その後30mM HEPES−KOH、pH7.5、7mM MgCl2、1mM DTT、0.1mg/mlBSA、0.2M NaClで、そして最後にTNTで洗浄する。次に、ビーズはlmlのTNTおよび5mMグルタチオン(pH7.5)と共に37℃で30分間インキュベートしてGT−サイクリンE融合タンパク質を放出させた。次に、上清液を集めそしてサイクリンEに向けられた抗血清で免疫沈降させた。続いて免疫コンプレックスをタンパク質A−セファロースに付着させて集めた。免疫沈降物はTNTで3回洗浄し、そして生成物は12%のSDS−PAGEゲル、続いてオートラジオグラフィーで分析した。
HeLa細胞抽出物から得られるサイクリンEを免疫沈降させるために、2×106個の細胞は50mMトリス−HCl、pH7.4、256mM NaClおよび0.1% NP−40に溶解させ、そして100,000Xgで30分間の超遠心によって清明化した。試料は、正常なウサギ血清またはサイクリンE融合タンパク質に対して産生させた血清15μlを用いてタンパク質A−セファロースを使用して免疫沈降させた。免疫沈降物はキナーゼ緩衝液および0.lmg/m1のBSAで洗浄し、そしてキナーゼアッセイは上記したようにして実施した。
T−ペプチドキナーゼアッセイは以前に記載されたようにして実施した(D’Urso等、1990年)。
(酵母株:) 使用した酵母株は株YH110と同系であった(Richardson等、1989)。CLN1、CLN2およびCLN3のマークされていない欠失はこの株のバックグラウンドで構築された。これらの欠失はCLN1およびCLN2におけるサイクリン相同性の重要な.部分を除去する(Hadwiger等、1989年;CrossおよびTinklenberg、1991年)と、CLN3コード化配列は完全に欠失した(Cross、1990年)。欠失対立遺伝子は全て以前に記載されたアッセイによりヌル(null)対立遺伝子であった(Richardson等、1989年)。これらの欠失対立遺伝子は最初に記載されたcln破壊(Richardson等、1989年)とは異なって、マークされておらず、そしてそれ故本明細書で実施したプラスミド形質転換実験と適合した。cln欠失株は以前に記載されたGAL−CLN3プラスミドで生存し続けた(Cross、1990年)。この同系株のバックグラウンドのcdc28−13対立遺伝子はD.リュー(Lew)によって提供され、そして対合および四分子分析によって3っのcln欠失と組み合わせた。
(酵母トランスフェクション:) トランスフェクションはシーストル(Schiestl)およびギーツ(Gietz)(1989年)の方法に従って酢酸リチウム法を使用して実施した。ガラクトース中で増殖させた酵母細胞は、2μgのライブラリーDNAを用いて50個の別々の各分別物中でトランスフェクションさせた。形質転換体はロイシン原栄養株についてガラクトースで選択しそして典型的にはプレート当たり1000〜2000個の数であった。コロニーを2日間増殖させ、そしてその後レプリカをYEP−グルコースにプレーティングした。グルコースで増殖したコロニーはFOA培地(Boeke等、1984年)にパッチとしてGAL−CLN3プラスミドがなくても増殖できるコロニーを確認した。プラスミドDNAは、このスクリーンで生き残ったコロニーからエレクトロポーレーションによって大腸菌中に取り戻し、そしてミニ調製物を589−5株酵母細胞中に再度トランスフェクションさせてトリプルcln欠失のプラスミド依存性の相補性を同定した。ヒトCDC2相同体を同定するスクリーンに対して、グルコースで増殖するコロニーは、グルコース増殖の同時分離およびトランスフェクションさせたプラスミドの保持について試験した。
(サイクリンEレトロウイルスベクターの構築) サイクリンEレトロウイルスベクター(LXSN−サイクリンE)はヒトサイクリンE cDNA HU4のブラント末端のHindIIIフラグメント(Koff等、1991年)(これは完全なオープン読み取り枠を有している)をLXSNのHpaI部位、ネズミレトロウイルスに基づくベクター(MillおよびRosman、1989年)中にセンス方向に挿入して構築させた。
(細胞)
MANCA細胞は、5%のCO2を含有する雰囲気中2〜5×105個の細胞/(RPMI+10%仔ウシ血清)mlで維持した。指数的増殖集団から遠心水力分級によって細胞を分画した(Marraccino等、1992年)。G1/S境界で同調させるため、約1x108個のG1細胞を、MANCA細胞の指数的増殖集団から水力分級によって集め、そして10%仔ウシ血清および5μg/mlのアフィジコリンを含有するRPMI中に接種し、そして8時間増殖させた。細胞DNA含量の流動細胞計測法測定を使用して細胞集団の同調を証明した。G1で同調したMANCA細胞は、以前に記載されたのと全く同じようにして調製した(Marraccino等、1992年)。
MANCA細胞は、5%のCO2を含有する雰囲気中2〜5×105個の細胞/(RPMI+10%仔ウシ血清)mlで維持した。指数的増殖集団から遠心水力分級によって細胞を分画した(Marraccino等、1992年)。G1/S境界で同調させるため、約1x108個のG1細胞を、MANCA細胞の指数的増殖集団から水力分級によって集め、そして10%仔ウシ血清および5μg/mlのアフィジコリンを含有するRPMI中に接種し、そして8時間増殖させた。細胞DNA含量の流動細胞計測法測定を使用して細胞集団の同調を証明した。G1で同調したMANCA細胞は、以前に記載されたのと全く同じようにして調製した(Marraccino等、1992年)。
Rat PC−12細胞は、10%のCO2を含有する雰囲気中5%のウシ胎児血清および10%のウマ血清を含有するDMEM中で維持した。ニューロン分化を誘導するために、集密細胞を1:20に分け、そして2日目に培地を血清不含培地に置き換えた。細胞は血清不含培地中で24時間インキュベートし、そしてその後培地は50ng/mlのNGFを含有する完全培地に変えた。NGFは2日毎に加えそして細胞は4〜5日後に採取した。
Rat 208F細胞は、5%のCO2を含有する雰囲気中10%仔ウシ血清を加えたDMEM中で維持した。静止細胞を産生させるために、細胞はPBSで2回洗浄し、そして続いて0.1%仔ウシ血清を有するDMEM中で48時間増殖させた。
Rat−1細胞でのG1の長さを測定するために、細胞は100ng/mlのノコダゾールを添加して擬似中期で4時間同調させた。有糸分裂細胞は静かにピペットで取って集めた。次に、細胞はDMEMで洗浄し、そしてDMEM+10%仔ウシ血清を用いて2×104/35mm皿でプレーティングした。細胞は各時点で三重水素化チミジン(80Ci/ミリモル;2μCi/ml)を用いて30分間パルス標識した。DNA中へのチミジンの導入は記載されたようにして測定した(RobertsおよびD’Urso、1988年)。
サイクリンEを構造的に発現させたRat−1細胞は記載されたようにして産生させた(MillerおよびRosman、1989年)。PA317アンホトロピックレトロウイルスパッケージング細胞は1日目に60mmの皿当たり5×105個の細胞でプレーティングした。2日目に、リン酸カルシウム法(Ohtsubo等、1991年)の修正を使用して1μgのLXSN−サイクリンEまたは対照DNA LXSNを細胞内にトランスフェクションさせた。3日目に、培養培地を新鮮な培地に取り替え、そしてPE501エコトロピックパッケージング細胞を60mmの皿当たり105個の細胞をプレーティングした。4日目に、PE501細胞に、ポリブレンを含有する新鮮培地4mlを与えた。PA317細胞からウイルスを採取し、そしてこの材料を5μlから1ml使用してPE501細胞を感染させた。5日目に、PE501細胞をトリプシン処理し、そして0.8mg/mlのG−418を含有する培地中で10cmの皿にプレーティングした。クローニングリングを使用して個々のクローンを単離するために少数のコロニーを有する皿を使用した。次に、これらのクローン株をサザーンブロット分析法で分析し、そしてウイルス産生細胞株として増殖した再転移していないレトロウイルスゲノムを含有するベクターの力価および適当なクローン株についてアッセイした。LXSNおよびLXSN−サイクリンEウイルスを使用してRat−1細胞を感染させ、そして更に研究するためにG−418耐性細胞集団を使用した。
(GSTおよびGST−Eカラムの調製)
プラスミドpGEX−2TまたはpGEX−2TcycE(GEN−サイクリンE)を含有する大腸菌は、OD600=0.4になるまで増殖させ、そして0.4mMのIPTGを用いて30℃で4時間誘導させた。細胞を採取し、そしてPBS中で1回洗浄し、そして−70℃で貯蔵した。pGEX−2TでコードされるGSTは以前に記載されたようにしで調製した(Koff等、1991年)。pGEX−2TcycEでコードされる融合タンパク質GT−サイクリンE(GT−cycE)はグロッツァ(Glotzer)等(1991年)の方法の修正を使用して調製した。500mlの培養物から得られた細胞ペレットは、プロテアーゼインヒビターを有する7mlの10mM トリス−HCl、pH7.4、0.1M NaCl、lmM MgCl2、5mM DTT中で音波処理した。抽出物は13,000Xgで遠心して清明化し、そして上清液は廃棄した。ペレットを7mlのTND緩衝液(0.2Mトリス−HCl、pH8.2、0.5M NaCl、5mM DTT)中で再懸濁し、そして再度ペレット化した。上清液を廃棄した後、ペレットは5mM DTTを含有する8Mのウレア中に再懸濁し、4℃で4時間静かに混合した。
得られた抽出物は13,000Xgで10分間清明化し、そして上清液はTN緩衝液(即ち、5mMのDTTの変わりに1mMのDTTを含有するTND緩衝液)で透析した。
プラスミドpGEX−2TまたはpGEX−2TcycE(GEN−サイクリンE)を含有する大腸菌は、OD600=0.4になるまで増殖させ、そして0.4mMのIPTGを用いて30℃で4時間誘導させた。細胞を採取し、そしてPBS中で1回洗浄し、そして−70℃で貯蔵した。pGEX−2TでコードされるGSTは以前に記載されたようにしで調製した(Koff等、1991年)。pGEX−2TcycEでコードされる融合タンパク質GT−サイクリンE(GT−cycE)はグロッツァ(Glotzer)等(1991年)の方法の修正を使用して調製した。500mlの培養物から得られた細胞ペレットは、プロテアーゼインヒビターを有する7mlの10mM トリス−HCl、pH7.4、0.1M NaCl、lmM MgCl2、5mM DTT中で音波処理した。抽出物は13,000Xgで遠心して清明化し、そして上清液は廃棄した。ペレットを7mlのTND緩衝液(0.2Mトリス−HCl、pH8.2、0.5M NaCl、5mM DTT)中で再懸濁し、そして再度ペレット化した。上清液を廃棄した後、ペレットは5mM DTTを含有する8Mのウレア中に再懸濁し、4℃で4時間静かに混合した。
得られた抽出物は13,000Xgで10分間清明化し、そして上清液はTN緩衝液(即ち、5mMのDTTの変わりに1mMのDTTを含有するTND緩衝液)で透析した。
少なくとも2.5mgのGTかまたはGT−cycEのいずれかを1mlのグルタチオンアガロースビーズと共に4℃で2時間インキュベートし、そして続いて1000Xgで集め、そして1mMのDTTを含有するTN緩衝液で3回洗浄した。GTまたはGT融合タンパク質とグルタチオンアガロース支持体とのカップリングは次のプロトコールを使用して実施した。この支持体をカラムに移し、そして0.1Mのホウ酸塩緩衝液、pH8.0、続いて0.2Mのトリエタノールアミン、pH8.2で洗浄した。ジメチルピメリミデート(DMP)交差結合剤(40mM DMP、0.2Mトリエタノールアミン、pH8.2)をカラムに入れ,メニスカスだけを残した。室温でカップリングを1時間継続させた。カップリング後に、カラムを4℃とし、そして40mMのエタノールアミン、pH8.2、続いて0.lMのホウ酸緩衝液、pH8.0で洗浄した。カップリングしていないタンパク質を溶出するために、カラムは20mMのグルタチオンを含有するPBS、pH7.5で洗浄し、そして続いて0.5%のアジドを含有するPBS中で貯蔵した。
(H1キナーゼアッセイ)
8.3×106個の細胞はプロテアーゼインヒビター(1mM PMSF、20μg/ml TPCK、20μg/ml SBTI、10μg/ml ロイペプチン)を含有する100μlのH1溶解緩衝液(50mM トリス−HCl pH7.4、0.25M NaCl、0.5% NP40)中で音波処理して溶解させた。音波処理した溶解物は13,000Xgで10分間4℃で清明化し、そして上清液を新たな管に移し、そして新鮮なH1溶解緩衝液で2倍に希釈した。
8.3×106個の細胞はプロテアーゼインヒビター(1mM PMSF、20μg/ml TPCK、20μg/ml SBTI、10μg/ml ロイペプチン)を含有する100μlのH1溶解緩衝液(50mM トリス−HCl pH7.4、0.25M NaCl、0.5% NP40)中で音波処理して溶解させた。音波処理した溶解物は13,000Xgで10分間4℃で清明化し、そして上清液を新たな管に移し、そして新鮮なH1溶解緩衝液で2倍に希釈した。
50μlの抽出物は、サイクリンEまたはp34CDC2のC末端に対するポリクローナル抗血清2μlで1時間免疫沈降させた。サイクリンA免疫沈降では、溶解物は5μlのC160モノクローナル抗体と共に30分間、そして2μlのウサギ抗マウス抗体を添加した後更に30分間インキュベートした。免疫コンプレックスはタンパク質Aセファロースで採集し、溶解緩衝液で2回そしてH1キナーゼ緩衝液(20mM トリス−HCl pH7.4、7.5mM MgCl2、1mM DTT)で4回洗浄した。H1キナーゼ反応は以前に記載されたようにして実施した(Koff等、1991年)。
(免疫沈降−ウエスターンプロット分析法用溶解物の調製)
細胞(8.3×106/100μl)は、プロテアーゼインヒビターを含有するSDS−RIPA(1% デオキシコレート、1% トリトンX−100、0.1% SDS、50mM トリス−HCl pH8.0、0.3M NaCl、0.1mM オルトバナデート、50mM NaF)中で音波処理して溶解させた。これらの実験では、製造者の推奨に従って、約1mgのアフィニティー精製した抗体または1mlのサイクリンE前免疫血清を1mlのCNBr−活性化セファロースとカップリングさせた。G1/S境界で抑止された細胞を使用する実験では、2.5×107個の細胞および100μlの抗体結合セファロースを使用して、CNBr−活性化セファロースにカップリングしたアフィニティー精製抗体により免疫沈降法を実施した。遠心水力分級によって得られた細胞周期フラクションの試験では、本発明者は30μlの抗サイクリンEセファロースを有する1×107個の細胞を使用した。
細胞(8.3×106/100μl)は、プロテアーゼインヒビターを含有するSDS−RIPA(1% デオキシコレート、1% トリトンX−100、0.1% SDS、50mM トリス−HCl pH8.0、0.3M NaCl、0.1mM オルトバナデート、50mM NaF)中で音波処理して溶解させた。これらの実験では、製造者の推奨に従って、約1mgのアフィニティー精製した抗体または1mlのサイクリンE前免疫血清を1mlのCNBr−活性化セファロースとカップリングさせた。G1/S境界で抑止された細胞を使用する実験では、2.5×107個の細胞および100μlの抗体結合セファロースを使用して、CNBr−活性化セファロースにカップリングしたアフィニティー精製抗体により免疫沈降法を実施した。遠心水力分級によって得られた細胞周期フラクションの試験では、本発明者は30μlの抗サイクリンEセファロースを有する1×107個の細胞を使用した。
免疫コンプレックスは4℃で3時間形成させ、そしてその後5mg/mlのBSAを含有するSDS−RIPAで2回、そしてSDS−RIPAで3回洗浄した。試料はレムリ(Laemmli)試料緩衝液中に懸濁し、そして12%PAGEゲルで分離した。ゲルは、半乾燥エレクトロブロット法でニトロセルロ一スに移し、そして膜は、CDC2若しくはCDK2に対してTNT(25mM トリス−HCIpH7.5、150mM NaCl、0.05% トゥイーン−20)中2%のミルクかまたはサイクリンEに対してTNT中1%のゼラチンでブロックした。ブロットはアフィニティー精製した抗CDC2の1:300希釈、または抗CDK2血清の1:1000希釈、またはアフィニティー精製したサイクリンE抗体の1:1000希釈のいずれかを使用して室温で一夜探査した。続いて、125I−タンパク質Aを用いて結合抗体を検出した。
(引用文献)
(引用文献)
図に示されるヒトサイクリンEcDNA配列の1位から1185位の間に存在するヌクレオチド配列と緊縮条件下でハイブリッド形成することができる核酸分子とこのような核酸分子によってコードされたポリペプチドおよびこのようなポリペプチドに向けられた免疫学的結合パートナーに関するものである。本発明の合成サイクリンEポリペプチドは、G1期からS期に移行している細胞を抑制するだけで、既に有効に有糸分裂しているような細胞は抑制しない。かくして、免疫応答の誘導の抑制;継続中の免疫応答のクローン増大(即ち、TかまたはBリンパ球のどちらか)の中断;G1期からS期に移行しつつある腫瘍細胞または転移細胞の成長因子で誘導される増殖の抑制;そして成長因子で誘導される組織肥大(例えば、アテローム性動脈硬化症プラークにおけるような血管平滑筋細胞の増殖、リウマチ性関節におけるような線維芽細胞や結合組織細胞の間葉肥大等の抑制)において利用可能である。本発明の選択的インヒビターは、例えば、a)インビトロの試験細胞中のサイクリンEポリペプチドまたはmRNAの値を減少させる(または増加させる)(即ち、向じタイプの対照細胞と比べて);b)CDK2とコンプレックスを形成することができるサイクリンEの値を減少させる(または増加させる);またはc)哺乳動物細胞中の細胞周期依存性キナーゼのCDK2属のメンバーに対するサイクリンEポリペプチドの結合親和性を減少させる(または増加させる)ことにおいて利用可能である。
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