JP2001161398A - タンパク質リン酸化酵素の活性測定方法およびタンパク質リン酸化酵素の活性測定キット - Google Patents

タンパク質リン酸化酵素の活性測定方法およびタンパク質リン酸化酵素の活性測定キット

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JP2001161398A
JP2001161398A JP34572999A JP34572999A JP2001161398A JP 2001161398 A JP2001161398 A JP 2001161398A JP 34572999 A JP34572999 A JP 34572999A JP 34572999 A JP34572999 A JP 34572999A JP 2001161398 A JP2001161398 A JP 2001161398A
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peptide
protein kinase
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phosphorylated
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JP34572999A
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English (en)
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Akira Ogawa
晃 小川
Toshiko Kobayashi
稔子 小林
Katsuyuki Tamai
克之 玉井
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IGAKU SEIBUTSUGAKU KENKYUSHO K
Medical and Biological Laboratories Co Ltd
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IGAKU SEIBUTSUGAKU KENKYUSHO K
Medical and Biological Laboratories Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 簡易かつ迅速な、Chk1およびChk2のリン酸化
酵素活性の測定方法および測定キットの提供。 【解決手段】 ヒトChk1またはヒトChk2から選択される
タンパク質リン酸化酵素と、その酵素によってリン酸化
される基質ペプチドとを反応させて、リン酸化基質ペプ
チドを合成するリン酸化ステップ(S1)と、リン酸化
基質ペプチドと、そのリン酸化基質ペプチドと特異的に
結合しうる抗リン酸化ペプチド抗体とを結合させる抗体
結合ステップ(S2)と、この結合物を定量化する定量
化ステップ(S4)とを含むタンパク質リン酸化酵素の
活性測定方法。また、Chk1またはChk2から選択されるタ
ンパク質リン酸化酵素によってリン酸化される基質ペプ
チドをコートした容器と、そのタンパク質リン酸化酵素
によって基質ペプチドをリン酸化して得られるリン酸化
基質ペプチドと特異的に結合しうる抗リン酸化ペプチド
抗体とを備えた活性測定キット。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質のリン
酸化状態を識別する抗体を利用した、タンパク質リン酸
化酵素の活性測定方法およびタンパク質リン酸化酵素の
活性測定キットに関する。
【0002】
【従来の技術】細胞は、増殖の際に、そのゲノムDNAを
複製し、複製したゲノムDNAを娘細胞へ均等に分配し、
その後に分裂するという過程を、周期的に繰り返す。こ
のような周期は、細胞周期と呼ばれている。細胞周期
は、G1期(DNA合成準備期)、S期(DNA合成期)、G2期
(分裂準備期)、M期(分裂期)の4つの段階に大きく
分けられる。細胞は、この4つの段階を順番に経て、分
裂する。
【0003】哺乳動物細胞において、DNAが、紫外線照
射、電離放射線照射あるいはDNA損傷誘因性薬剤により
損傷を受けると、その損傷を修復して生命を維持するた
めに、細胞分裂は、G1期、S期またはG2期からM期への
移行過程で停止することが知られている。この細胞分裂
の停止現象は、チェックポイントと呼ばれている。紫外
線照射、電離放射線照射あるいは薬剤によりDNAが損傷
を受けてから、細胞分裂が停止するまでの情報伝達経路
は、図11に示すとおりである。
【0004】DNAがDNA損傷誘因性薬剤により損傷を受け
ると、DNA二本鎖切断によって、DNA依存性プロティンキ
ナーゼ(以下、DNA-PKという)という酵素が、活性化さ
れる。また、DNAが電離放射線により損傷を受けると、A
TM(AT mutated)という酵素が活性化される。また、DNA
が紫外線照射により損傷を受けると、ATR(ATM and rad3
related)という酵素が活性化される。DNA-PK、ATMお
よびATRは、いずれもセリン/トレオニンリン酸化酵素
と呼ばれている。
【0005】上記3種のセリン/トレオニンリン酸化酵
素は、ガン抑制遺伝子の発現産物であるp53のリン酸化
を行う。したがって、上記3種のセリン/トレオニンリ
ン酸化酵素が活性化すると、次に示すp53のリン酸化が
促進される。すなわち、活性化したATMは、p53の15番目
のセリン残基(以下、Ser15という)を、リン酸化する
(S.Banin et al.Science Vol 281,p1674,1998、C.E.Can
man et al.Science Vol 281,p1677,1998)。また、活性
化したATRは、ATMと同様に、p53のSer15をリン酸化する
(C.E.Canman et al.Science Vol 281,p1677,1998)。さ
らに、DNA-PKは、p53のSer15およびp53の37番目のセリ
ン残基(以下、Ser37という)をリン酸化する(S.P.LEES
-MILLER et al.Mol.Cell.Biol.Vol 12,p5041,1992)。
【0006】DNA-PK、ATMおよびATRによる、p53のSer15
のリン酸化は、p53からのMdm2の解離を引き起こす(S.Sh
ieh et al.Cell Vol 91,p325,1997)。この結果、p21CIP
1/WAF1および14-3-3σを発現誘導する(S.J.Elledge .Sc
ience Vol 274,p1664,1996、Paul Nurse.Cell Vol 91,p
865,1997)。p21CIP1/WAF1は、G1期の進行に必要なCycli
n E-Cdk2およびCyclin D-Cdk4,6と結合して、Cyclin E-
Cdk2、Cyclin D-Cdk4,6のタンパク質リン酸化酵素とし
ての活性を阻害する(S.J.Elledge .Science Vol 274,19
96、D.O.Morgan .Nature Vol 374,p131,1995)。
【0007】一方、14-3-3σは、Cdc25C(フォスフォセ
リン216)に結合する。すると、Cdc25C(フォスフォセリ
ン216)は、核外移行する。これにより、Cdc25Cが不活性
になる(Paul Nurse.Cell Vol 91,p865,1997)。Cdc25C
(フォスフォセリン216)は、Cdc25Cプロテインフォスフ
ァターゼ(以下、単に、Cdc25Cという)を、タンパク質
リン酸化酵素であるChk1またはChk2によってリン酸化さ
れたタンパク質である。したがって、Chk1またはChk2が
活性化される程、Cdc25Cのセリン216は、リン酸化され
る。
【0008】一方、活性型Cyclin B-Cdc2複合体は、G2
期からM期への進行に必要なタンパク質である。活性型C
yclin B-Cdc2複合体は、Wee1キナーゼによりリン酸化さ
れて、不活性型Cyclin B-Cdc2(フォスフォチロシン1
5)になる。逆に、不活性型Cyclin B-Cdc2(フォスフォ
チロシン15)は、Cdc25Cにより脱リン酸化されて、活性
型Cyclin B-Cdc2複合体に戻る(Paul Nurse .Cell Vol 9
1,p865,1997)。したがって、Chk1またはChk2が活性化さ
れると、リン酸化によりCdc25Cが活性化される。これに
より、M期の進行に必須なCyclin B-Cdc2が不活性化され
る。この結果、G2期からM期への進行が抑制されること
になる。なお、S期からG2期への移行は、chk2キナーゼ
を経て、抑制される(S.Matsuoka et al.Science Vol 28
2,p1893,1998)。
【0009】ところで、現在の癌治療では、通常、放射
線療法、化学療法あるいは免疫療法などが行われてい
る。これらの内、放射線療法および化学療法において、
癌細胞のDNA損傷のチェックポイントを欠如または機能
低下させる薬剤が存在すると、癌細胞を選択的に殺すこ
とが可能になると推定される。また、正常細胞のチェッ
クポイントを機能上昇させる薬剤も、放射線治療の際に
有効であると考えられる。
【0010】Cdc25CのSer216を含むペプチドを細胞培養
上清に添加すると、DNA損傷誘因性薬剤によるG2期阻止
が解除されたことが、報告されている(M.Suganuma et
al.日本癌学会総会記事第58回,p165,1999)。この
事実から、DNA損傷誘因性薬剤存在下において通常生じ
るCdc25Cのリン酸化が阻害された結果、核内のCdc25Cが
Cyclin B-Cdc2を活性化し得る状況が維持されたもの
と、理解できる。また、Cdc25CのSer216をリン酸化する
タンパク質リン酸化酵素群(以下、Cdc25Cキナーゼ)を
阻害したときに生じる結果とも理解できる。いずれにし
ても、Cdc25Cキナーゼの阻害剤は、放射線療法および化
学療法の効果を著しく高めることのできる薬剤となるこ
とを示唆している。
【0011】チェックポイント機構から考えると、Chk1
と Chk2は、上記薬剤開発の標的分子として重要な役割
を占める。また、薬剤開発のためにChk1およびChk2に対
する活性測定系を構築することも、重ねて重要である。
酵素の選択的阻害剤は、各酵素の生体内における機能を
明らかにするモレキュラープローブとなり、それらモレ
キュラープローブによって解き明らかにされる新たな情
報伝達経路および情報伝達分子の発見は、学術的および
社会的財産となり得る。さらには、抗癌剤の開発のみな
らずモレキュラープローブの作出に寄与する意味でも、
Chk1およびChk2酵素の活性測定系の構築は、意義深い。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来のタンパ
ク質リン酸化酵素の活性測定においては、放射性同位元
素である32Pで標識されたγ-32P-ATPを用いている。こ
のため、活性測定を実施するにあたり、廃液処理および
特別な施設が必要である。また、放射性同位元素を使用
するには、放射性同位元素の厳重な管理、使用者の制
限、定期的な健康チェックなどの多くの制約が課せられ
る。したがって、簡易で迅速な阻害物質のスクリーニン
グを行うことが困難である。
【0013】本発明は、かかる問題を解決すべく、簡易
かつ迅速に、ヒトChk1およびヒトChk2のリン酸化酵素活
性を測定できる、タンパク質リン酸化酵素の活性測定方
法およびタンパク質リン酸化酵素の活性測定キットを提
供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、請求項1記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定
方法は、ヒトChk1またはヒトChk2から選択されるタンパ
ク質リン酸化酵素と、そのタンパク質リン酸化酵素によ
ってリン酸化される基質ペプチドとを反応させて、リン
酸化基質ペプチドを合成するリン酸化ステップと、リン
酸化基質ペプチドと、そのリン酸化基質ペプチドと特異
的に結合しうる抗リン酸化ペプチド抗体とを結合させる
抗体結合ステップと、リン酸化基質ペプチドと、抗リン
酸化ペプチド抗体との結合物を定量化する定量化ステッ
プとを含む方法とするようにしている。これによって、
32Pのような放射性元素を用いることなく、簡易で迅速
に、さらには安全に、タンパク質リン酸化酵素Chk1また
はChk2の活性を測定することができる。この結果、Chk1
またはChk2の活性を阻害する阻害剤、あるいはChk1また
はChk2の活性を促進させる促進剤のスクリーニングを迅
速に行うことができ、抗癌剤の早期開発が可能となる。
【0015】また、請求項2記載の発明は、請求項1記
載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方法において、
抗体結合ステップの次に、抗リン酸化ペプチド抗体を認
識する標識抗体を前記結合物と反応させる二次抗体結合
ステップを行うようにしている。そうした免疫反応を固
相で行い、酵素活性を利用して検出する方法は、イムノ
ソルベント検定法または固相酵素免疫検定法(ELISA)
という。ELISAは、一種の間接免疫法である。一次抗体
結合ステップによって固相化された抗原(すなわち、リ
ン酸化基質ペプチド)に結合した抗体が、多数の標識抗
体(二次抗体)に識別される。この結果、一次抗体の量
が少なくても、一次抗体に多数の二次抗体が結合する。
したがって、リン酸化を高感度で検出可能となる。ただ
し、必ずしも二次抗体結合ステップは、必要ではなく、
一次抗体結合によって、リン酸化部位を十分明確に標識
できれば良い。
【0016】また、請求項3記載の発明は、請求項1ま
たは2記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方法に
おいて、タンパク質リン酸化酵素は、それをコードする
遺伝子を発現して得るリコンビナントタンパク質とする
ようにしている。このため、天然の、ヒトChk1あるいは
ヒトChk2を入手する必要がない。人工的に多くのChk1お
よびChk2を測定に供することができる。
【0017】また、請求項4記載の発明は、請求項1か
ら3のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素の活
性測定方法において、基質ペプチドをCdc25Cの216番
目のセリンを含むペプチド(以下、Cdc25C-S216とす
る)とし、抗リン酸化ペプチド抗体を抗リン酸化Cdc25C
-S216抗体とするようにしている。Chk1またはChk2によ
るCdc25Cのリン酸化は、細胞周期のG2期からM期への移
行を阻害する。このため、Cdc25C-S216であって216
番目のセリンがリン酸化されたCdc25C-S216(以下、pho
spho-Cdc25C-S216とする)と抗原抗体反応をする抗リン
酸化Cdc25C-S216抗体を用いることによって、リン酸化
の割合を測定できる。このことは、Chk1またはChk2の活
性度を測定できることを意味する。Chk2は、シグナル伝
達上、ATMの下流で活性化されるタンパク質リン酸化酵
素である。したがって、放射線治療における有効な薬剤
の開発を促進できることとなる。
【0018】また、請求項5記載の発明は、請求項1か
ら4のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素の活
性測定方法において、抗リン酸化ペプチド抗体を、ポリ
クローナル抗体またはモノクロナール抗体とするように
している。ポリクローナル抗体を用いることによって、
少量の添加でも、酵素活性を調べることができる。一
方、モノクローナル抗体は、1種類の抗原部位のみを識
別する特性を有する抗体である。このため、ポリクロー
ナル抗体の場合と異なり、非リン酸化ペプチドを反応液
中に添加する必要がなくなる。したがって、Chk1または
Chk2が、Cdc25C-S216の216番目のアミノ酸をリン酸化し
たことを、容易に識別することができる。
【0019】また、請求項6記載の発明は、請求項1か
ら5のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素の活
性測定方法において、タンパク質リン酸化酵素は、マン
ガンイオンまたはマグネシウムイオンの内、少なくとも
いずれか一方の金属イオンを、その活性中心にキレート
したものとするようにしている。これによって、タンパ
ク質リン酸化酵素Chk1,Chk2のリン酸化する能力(酵素
活性)を大きくすることができる。
【0020】また、請求項7記載の発明は、請求項6記
載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方法において、
タンパク質リン酸化酵素は、そのタンパク質リン酸化酵
素に対して2分の1以下の量のマグネシウムイオンのみ
を、キレートしたものとするようにしている。これによ
って、タンパク質リン酸化酵素、特にChk2の活性度を著
しく高めることができる。したがって、少量のChk2を用
いることによって、活性測定が可能となる。また、少量
のChk2を用いることによって、抗癌剤のスクリーニング
を行うことができる。
【0021】また、請求項8記載のタンパク質リン酸化
酵素の活性測定キットは、少なくとも、Chk1またはChk2
から選択されるタンパク質リン酸化酵素によってリン酸
化される基質ペプチドをコートした容器と、そのタンパ
ク質リン酸化酵素によって基質ペプチドをリン酸化して
得られるリン酸化基質ペプチドと特異的に結合しうる抗
リン酸化ペプチド抗体とを備えるようにしている。これ
によって、誰でも、タンパク質リン酸化酵素の活性測定
を、再現良く実施できる。
【0022】また、請求項9記載の発明は、請求項8記
載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キットにおい
て、Chk1またはChk2から選択されるタンパク質リン酸化
酵素を、さらに備えるようにしている。これによって、
タンパク質リン酸化酵素を準備する必要がなくなる。こ
の測定キットを使用すれば、簡単に、タンパク質リン酸
化酵素の活性を測定できる。
【0023】また、請求項10記載の発明は、請求項8
または9記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キッ
トにおいて、抗リン酸化ペプチド抗体を認識する標識抗
体を、さらに備えるようにしている。これによって、一
次抗体の量が少なくても、一次抗体に多数の二次抗体が
結合する。したがって、この測定キットを使用すること
によって、誰でも、リン酸化を高感度で検出可能とな
る。
【0024】また、請求項11記載の発明は、請求項8
から10のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素
の活性測定キットにおいて、タンパク質リン酸化酵素
は、それをコードする遺伝子を発現して得るリコンビナ
ントタンパク質とするようにしている。このため、天然
の、ヒトChk1あるいはヒトChk2を入手する必要がない。
人工的に多くのChk1およびChk2を測定に供することがで
きる。したがって、安価に、この測定キットを提供する
ことができる。
【0025】また、請求項12記載の発明は、請求項8
から11のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素
の活性測定キットにおいて、基質ペプチドをCdc25Cの2
16番目のセリンを含むペプチドとし、抗リン酸化ペプ
チド抗体を抗リン酸化Cdc25C-S216抗体とするようにし
ている。これによって、誰でも、再現良く、放射線治療
における有効な薬剤の開発を促進できることとなる。
【0026】また、請求項13記載の発明は、請求項8
から12のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素
の活性測定キットにおいて、抗リン酸化ペプチド抗体
は、ポリクローナル抗体またはモノクロナール抗体とす
るようにしている。ポリクローナル抗体を用いることに
よって、少量の添加でも、酵素活性を調べることができ
る。一方、モノクローナル抗体は、1種類の抗原部位の
みを識別する特性を有する抗体である。このため、ポリ
クローナル抗体の場合と異なり、非リン酸化ペプチドを
反応液中に添加する必要がなくなる。したがって、モノ
クローナル抗体を用いることによって、誰でも、簡単
に、Chk1またはChk2が、Cdc25C-S216の216番目のアミノ
酸をリン酸化したことを、容易に識別することができ
る。
【0027】また、請求項14記載の発明は、請求項8
から13のいずれか1項記載のタンパク質リン酸化酵素
の活性測定キットにおいて、タンパク質リン酸化酵素
は、マンガンイオンまたはマグネシウムイオンの内、少
なくともいずれか一方の金属イオンを、その活性中心に
キレートしたものとするようにしている。これによっ
て、タンパク質リン酸化酵素Chk1,Chk2のリン酸化する
能力(酵素活性)を大きくすることができる。
【0028】また、請求項15記載の発明は、請求項1
4記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キットにお
いて、タンパク質リン酸化酵素は、そのタンパク質リン
酸化酵素に対して2分の1以下の量のマグネシウムイオン
のみを、キレートしたものとするようにしている。これ
によって、タンパク質リン酸化酵素、特にChk2の活性度
を著しく高めることができる。したがって、少量のChk2
を用意した測定キットによって、活性測定が可能とな
る。また、少量のChk2を用いることによって、効率的
に、抗癌剤のスクリーニングを行うことができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るタンパク質リ
ン酸化酵素の活性測定方法およびタンパク質リン酸化酵
素の活性測定キットの、好適な実施の形態について説明
する。
【0030】図1は、本発明に係るタンパク質リン酸化
酵素の活性測定方法の好適な実施の形態について、測定
手順の概略を示す図である。タンパク質リン酸化酵素の
活性測定は、タンパク質リン酸化反応、一次抗体反応、
二次抗体反応、定量化の4つのステップで、行われる。
【0031】最初のタンパク質リン酸化反応を行うリン
酸化ステップは、Chk1あるいはChk2というタンパク質リ
ン酸化酵素と、活性測定用の基質ペプチドとを反応させ
ることにより、リン酸化基質ペプチドを得るステップで
ある(ステップS1)。この実施の形態では、活性測定
用の基質ペプチドとして、リコンビナントタンパク質GS
T-Cdc25C(167-267a.a)を用いている。なお、基質に、ヒ
ストンH3を使用しても良い。
【0032】次に、リン酸化ステップで得られた反応物
に、抗リン酸化ペプチド抗体を添加して、抗原抗体反応
(一次抗体反応)を起こさせる抗体結合ステップを行う
(ステップS2)。この実施の形態では、活性測定用の
基質ペプチドとして、リコンビナントタンパク質GST-Cd
c25C(167-267a.a)を用いているため、抗体として、抗ph
ospho-Cdc25C-S216抗体を用いている。抗phospho-Cdc25
C-S216抗体は、基質ペプチドのリン酸化を識別して、リ
ン酸化基質ペプチドに特異的に結合する。
【0033】次に、標識抗体を、リン酸化ペプチドに結
合した抗phospho-Cdc25C-S216抗体に結合させる二次抗
体結合ステップを行う(ステップS3)。このステップ
は、抗phospho-Cdc25C-S216抗体に結合する標識抗体を
添加して、結合部位のみを発色させるためのステップで
ある。この実施の形態では、標識抗体として、HRP標識
ヤギ抗マウス抗体を用いている。この結果、その後のHR
P基質液の添加によって、上記標識抗体の結合した部分
のみが発色する。なお、標識抗体として、HRPの他に、
ビチオン化抗体を用い、その上にアビジン化ペルオキシ
ターゼを用いることによって、さらに感度を上げること
もできる。
【0034】最後に、上記発色反応を停止させた後、45
0nmにおける吸光度を測定する定量化ステップを行う
(ステップS4)。この測定によって、リン酸化基質ペ
プチドの割合を定量化できる。こうして、Chk1,Chk2の
リン酸化酵素としての活性が測定できることになる。
【0035】また、リン酸化酵素の活性測定に供するタ
ンパク質は、次に示す各工程から作製される。抗リン酸
化ペプチド抗体の作製は、図2に示すように、免疫原の
作製から開始される。次に、作製した免疫原を、マウス
とウサギに免疫する。マウスへの免疫は、モノクローナ
ル抗体の作製を目的とする免疫である。一方、ウサギへ
の免疫は、ポリクローナル抗体の作製を目的とする免疫
である。マウスおよびウサギへの免疫の結果得られた各
抗体は、抗体力価等の検定に供される。詳細な手順につ
いては、後述する。
【0036】また、基質ペプチドは、図3に示す手順で
作製される。まず、ヒトCdc25Cのアミノ酸167番目か
ら267番目をコードするcDNA配列を、大腸菌発現ベク
ターpGEX4T-1に組み込む。大腸菌内でpGEX4T-1に組み込
まれたDNA断片は、グルタチオン−s−トランスフェラ
ーゼ(以後、GSTという)との融合タンパク質(GST-Cdc
25C(167-267))として、転写・翻訳される。次に、作ら
れたGST-Cdc25C(167-267)を、カラム吸着等を経て精製
する。詳細な手順については、後述する。
【0037】また、リン酸化酵素Chk1,Chk2は、それぞ
れ図4および図5の手順で作製される。まず、Chk1の作
製は、Chk1をコードするcDNAの切り出しから開始され
る。切り出したcDNAは、pFASTBACHTベクターにサブクロ
ーニングされる。次に、pFASTBACHTのプラスミドクロー
ンを大腸菌に移す。次に、転移の起きた白いコロニーか
ら、リコンビナントbacmidDNAを取り出し、これを精製
する。一方、Chk2の作製は、Chk2をコードするcDNAを切
り出し、その後、大腸菌発現ベクターpGEX4T-1に組み込
む。pGEX4T-1では、GSTとの融合タンパク質(GST-Chk
2)が作られる。次に、作られたGST-Chk2を、カラム吸
着等を経て精製する。詳細な手順については、後述す
る。
【0038】タンパク質リン酸化酵素の活性測定の手順
と、活性測定に供するタンパク質の作製工程の大まかな
流れは、上述の通りである。以下、活性測定および酵素
および抗体等の作製の詳細について、説明する。
【0039】
【実施例】1.抗リン酸化ペプチド抗体の作製
【0040】(1)免疫原の作製 ペプチドの作製 リン酸化サイトとして報告されたヒトCdc25Cのアミノ酸
216番目のセリン残基を含む、以下の 2本のペプチド
を、ペプチド合成機を用いて作製した。 リン酸化ペプチド(phospho-Cdc25C-S216):CGLYR SPS(p)MP ENLN 非リン酸化ペプチド(Cdc25C-S216) :GLYRS PSMPE NLNRR R
【0041】上記のペプチド配列は、一文字表記で、ア
ミノ末端からカルボキシル末端方向に記されている。S
(p)は、リン酸化セリン残基を示す。これらのペプチド
は、HPLCにより、95%以上の純度であることが確認され
ている。phospho-Cdc25C-S216は、ヒトCdc25Cの210番目
から222番目までのアミノ酸配列に相当する。また、Cdc
25C-S216は、ヒトCdc25Cの210番目から223番目までのア
ミノ酸配列に相当する。phospho-Cdc25C-S216のカルボ
キシル末端のシステイン残基は、ペプチドをキャリアー
タンパク質に共有結合させるために導入したものであ
る。
【0042】ペプチドのキャリアータンパク質への結
合 次に、phospho-Cdc25C-S216を、キャリアータンパク質
である keyhole limpethemocyanin ( 以下、KLHという
) と共有結合させる。phospho-Cdc25C-S216とKLHとの
結合には、m-maleimidobenzoyl- N-hydroxysuccinimide
ester (以下、MBSという) を架橋物質として用いる。
KLHとphospho-Cdc25C-S216とは、1:1のモル比で架橋
する。こうして作製されたペプチド-KLH を、免疫原と
して使用する。
【0043】免疫原の調整と免疫方法 キャリアータンパク質 KLH と結合したペプチド(ペプ
チド−KLH )20ug(100ul) を、ウサギの1回あたりの
免疫原として用いる。また、ペプチド−KLH10ug(100u
l) を、マウスの1回あたりの免疫原として用いる。ウ
サギあるいはマウスに注射する前に、100ulのフロイト
完全アジュバントとペプチド-KLH( 各100ul )とを、1
ml シリンジと 21 ゲージ注射針を用いて、完全にエマ
ルジョン化するまで混合した。
【0044】次に、ウサギ (Japanese white) の背後
部皮下の7または8箇所に、26ゲージ注射針を使用して、
上記のエマルジョンを免疫する。免疫は、1週間ごとに
1回づつ、合計 5回行う。抗体力価をチェックするた
め、5回目の免疫の際に、ウサギの耳朶静脈より数 ml
採血する。抗体力価の確認は、ELISA法により行われ
る。
【0045】(2)抗phospho-Cdc25C-S216モノクロー
ナル抗体の作製 ハイブリドーマの作製 十分な抗体力価の確認の後、マウスより脾臓を摘出し、
ポリエチレングリコールを用いてミエローマ細胞と細胞
融合させる。ハイブリドーマの選別は、HAT(hypoxanth
ine, aminoprerin, thymidine)セレクションで行う。
ハイブリドーマの培養上清を用いたELISA法により、非
リン酸化ペプチド(Cdc25C-S216)よりもリン酸化ペプ
チド(phospho-Cdc25C-S216)に対して反応性の高いク
ローンのスクリーニングを行う。
【0046】腹水の取得と抗体の精製 限界希釈法により得られたハイブリドーマクローンを、
75cm2フラスコで培養した後、マウスの腹腔に注射す
る。ハイブリドーマを注射する10日前に1mlのプリスタ
ン(Sigma)をマウスに注射しておく。また、3日前に
は、0.5mlのプリスタン(Sigma)をマウスに注射してお
く。1〜2週間後、マウスの状態を見ながら、腹水の採
取を行う。終濃度 50 % になるように、腹水に硫安を添
加する。そして、4℃で一時間以上攪拌する。
【0047】攪拌後、高速にて遠心分離を行い、沈澱物
を回収する。最小限の純水で沈澱を完全に溶解した後、
透析膜を用いて PBS に対して透析する。そして、完全
に PBS に平衡化させた後、protein Aセファロース(フ
ァルマシア社製)と複合体を形成させる。洗浄によって
余分なタンパク質を除いた後、最後に、proteinAセファ
ロースから、抗体を溶出させる。
【0048】(3)抗phospho-Cdc25C-S216ポリクロー
ナル抗体の作製 ウサギからの本採血 十分な抗体力価の確認の後、翌週より、採血(最初の1
週間)、休息(次の1週間)、免疫(最後の1週間)を
1サイクルとする合計3週間を、4回繰り返す。採血は、
抗体力価の確認の際と同様に、耳朶静脈より行う。1回
の採血あたり、およそ60〜70mlの血液を採取する。5回
目の採血において、カテーテルを用いて心臓より可能な
かぎりの血液を回収した。
【0049】ウサギ血清の回収、保存及び抗体分画の
分離 採取した血液は、4℃に一晩静置する。この結果、分離
した上澄み部分の血清を、凝固分から分離回収する。次
に、分離回収した血清に、終濃度 0.1 %となるように、
アジ化ナトリウムを添加する。その後、4 ℃で保存す
る。また、抗体分画を分離濃縮するため、分離回収した
血清に、終濃度 50 %となるように、硫安を添加する。
その後、4 ℃で一時間以上攪拌する。そして、高速にて
遠心分離を行い、できた沈澱物を回収する。最小限の純
水で沈澱を完全に溶解した後、透析膜を用いて、PBSに
対して透析する。完全に PBS に平衡化した後、この抗
体分画を以下の特異化カラム及び吸収用カラムにかけ
て、抗体の精製を行う。
【0050】特異化カラム及び吸収用カラムの作製 5〜10 ml の 0.1M 炭酸バッファー中において、ローテ
ーターを用いて、1 〜2gのCNBr活性化セファロース 4B
とペプチド1mgとを、4℃にて一晩混和する。これによっ
て、セファロース 4B とペプチドとを結合させることが
できる。翌日、セファロース4B をカラムに充填し、そ
のカラムの体積に対して4 〜10 倍量の PBSによって、
セファロース 4Bを洗浄する。洗浄後、1M Tris-HCl ( p
H7.0 )でカラムを平衡化する。そして、セファロース 4
B 表面に残っている活性基をブロッキングするため、そ
のまま 1時間以上、30℃に放置する。ブロッキング後、
PBSで洗浄および平衡化し、使用する。特異化カラム作
製には、phospho-Cdc25C-S216を用いる。また、吸収用
カラム作製には、Cdc25C-S216を用いる。
【0051】特異化カラム及び吸収用カラムによる抗
phospho-Cdc25C-S216抗体の精製 抗リン酸化ペプチド抗体を精製するため、抗phospho-Cd
c25C-S216抗体分画を特異化カラムに通す。PBS-0.1% Tw
een 20 で洗浄した後、カラムに吸着している抗リン酸
化ペプチド抗体を、0.1M glycine-HCl ( pH3.0 )で溶
出する。次に、特異化カラムより溶出された抗phospho-
Cdc25C-S216抗体分画を、吸収用カラムであるCdc25C-S2
16セファロース 4B カラムに通す。吸収用カラムに通す
ことにより、抗体画分中に存在する非リン酸化ペプチド
とも反応する抗体を、吸収用カラムに吸収させることが
できる。
【0052】一方、抗リン酸化ペプチド特異抗体は、吸
収用カラムに吸着せずに、カラムを素通りする。吸収用
カラムは、PBS-0.1%Tween 20で洗浄される。カラムに吸
着している抗非リン酸化ペプチド抗体は、0.1M glycin
e-HCl ( pH3.0 ) で溶出される。溶出後、カラムは、再
び PBS-0.1%Tween 20 で平衡化される。非リン酸化ペプ
チド抗体がほぼ完全に吸収されるまで、抗体分画を吸収
用カラムに、繰り返して通す。吸収の進み具合は、非リ
ン酸化ペプチド感作プレートを用いた ELISAによって確
認される。吸収用カラムで吸収した抗体(抗リン酸化ペ
プチド特異抗体)を PBS に対して透析した後、リン酸
化ペプチド感作プレートを用いたELISAによって、その
リン酸化ペプチドに対する特異性を最終的に確認する。
【0053】(4)抗体の検定 抗体力価及び抗体の特異化検定用ELISAプレートの作
製及び使用 リン酸化ペプチド(phospho-Cdc25C-S216)または非リ
ン酸化ペプチド(Cdc25C-S216)を 10 ug/ml になるよ
うに PBS に溶かす。そして、 ELISA 用マイクロタイタ
ープレートに、PBSに溶かしたペプチドを、 1 ウェルあ
たり 50ul づつ分注する。そして、4 ℃で 一晩、感作
する。感作後、各ペプチド溶液を除き、1 %BSA-0.1% Tw
een 20-PBSを、 1 ウェルあたり 200ul づつ分注する。
そして、室温で1 時間以上のブロッキングを行う。
【0054】リン酸化ペプチド(phospho-Cdc25C-S21
6)感作プレートは、それぞれ抗体力価の測定、抗リン
酸化セリン残基特異抗体の吸収、抗リン酸化ペプチド抗
体の特異性の確認に用いられる。また、非リン酸化ペプ
チド(Cdc25C-S216)感作プレートは、カラムによる非
特異抗体の吸収の確認に用いられる。
【0055】血清および抗体は、0.1% Tween 20-PBSを
用いて、必要に応じ希釈される。希釈したサンプルは、
各ペプチド感作プレート 1ウェルあたり100ul添加す
る。添加後、室温に1 時間静置する(一次抗体反応)。
一次抗体反応の後、洗浄瓶を用いて、各ウェルを、PBS
で 4 回以上、十分に洗浄する。次に、0.1% Tween 20-P
BS によって 3000 倍に希釈したHorseradish Peroxidas
e(HRP) 標識ヤギ抗ウサギIgG (H+L) 抗体 ( MBL社製45
8 ) を、各ウェルに100ul づつ分注し、室温に1時間静
置する(二次抗体反応)。
【0056】二次抗体反応の後、PBS で洗浄して、750u
M TMB ( Tetramethylbenzidine )溶液を1 ウェルあたり
100ul 添加する。この後、30℃で 5 〜 20 分間、発色
させる(発色反応)。そして、1.5NH3PO4を100ulづつ
加えて、発色反応を停止させる。最後に、マイクロタイ
タープレートリーダーを用いて、450nmにおける吸光度
を測定する。
【0057】特異性の確認 次に、抗phospho-Cdc25C-S216 特異モノクローナル抗
体、抗phospho-Cdc25C-S216 特異ポリクローナル抗体
を、それぞれ希釈する。そして、各ペプチド感作プレー
トを用いて、上記の抗体の特異性を確認する。図6およ
び図7は、それぞれ、抗phospho-Cdc25C-S216 特異モノ
クローナル抗体および抗phospho-Cdc25C-S216 特異ポリ
クローナル抗体の特異性を確認した結果を示す図であ
る。
【0058】両図から、抗体の量が多くなるに従い、ph
ospho-Cdc25C-S216の吸光度が上昇する一方で、Cdc25C-
S216の吸光度がほぼゼロを維持していることがわかる。
したがって、両抗体とも、phospho-Cdc25C-S216に対し
て特異的な抗体であることが理解できる。なお、両抗体
で、抗体の量に対する吸光度の大きさを比較すると、抗
phospho-Cdc25C-S216 特異ポリクローナル抗体の方が、
感度に優れることもわかる。
【0059】2.リコンビナントChk1及びChk2の作製
【0060】(1)PCR法によるChk1及びChk2のcDNA単
離 Chk1及びChk2増幅用プライマーの設定 Chk1(全長476アミノ酸)をコードするcDNA配列を増幅す
るため、以下に示すChk1-FとChk1-Rプライマーを設定す
る。また、Chk2(全長543アミノ酸)をコードするcDNA配
列を増幅するため、以下に示すChk2-FとChk2-Rプライマ
ーを設定する。
【0061】「Chk1増幅用プライマー」 Forward primer (Chk1-F) ;5'-CAC GAA TTC ATG GCA GT
G CCC TTT GTG GAA G-3'( 5' 側 3つの塩基 (CAC) は
制限酵素処理を円滑におこなわせるためのもので、5'
側 3 番目から 8 番目 (GAATTC) は制限酵素 EcoRIサイ
トである。) Reverse primer (Chk1-R) ; 5'-TTA CTC GAG TGT GGC A
GG AAG CCA AAC CTT C-3'( 5' 側 3つの塩基 (TTA)
は、制限酵素処理を円滑におこなわせるためのもので、
5' 側 4 番目から 9 番目 (CTCGAG) は、制限酵素 XhoI
サイトである。)
【0062】「Chk2増幅用プライマー」 Forward primer (Chk2-F) ;5'-CAT GAATTC ATG TCT CG
G GAG TCG GAT GTT-3'(5' 側 3 つの塩基 (CAT) は、
制限酵素処理を円滑におこなわせるためのもので、5'
側 4 番目から 9番目 (GAATTC) は、制限酵素 EcoRIサ
イトである。) Reverse primer (Chk2-R);5'-CAT CTC GAG CAA CAC AG
C AGC ACA CAC AGC-3'( 5' 側 3 つの塩基 (CAT) は、
制限酵素処理を円滑におこなわせるためのもので、5'
側 4 番目から9番目 (CTCGAG) は、制限酵素 XhoIサイ
トである。)
【0063】鋳型DNAの調整 Chk1及びChk2をコードする遺伝子を PCR法で増幅するた
めの鋳型として、急性リンパ芽球性白血病患者の末梢血
由来ヒトT細胞株であるJurkat細胞の cDNAが用いられ
る。まず、cDNAを作製するため、フェノール-チオシア
ン酸グアニジン法(ニッポンジーン、ISOGEN)を用い
て、Jurkat細胞より total RNA を抽出し、精製する。
次に、オリゴdTまたはオリゴランダムプライマーを用い
て、total RNAに基づきcDNAを合成する(逆転写反
応)。
【0064】PCR反応の条件 PCR反応は、次の3段階の条件で行う。 第1段階;95℃−5分間(変性)、52℃−1分間(アニー
ル)、72℃−2分間(伸長)を、1サイクルだけ行う。 第2段階;94 ℃−30秒間(変性)、62℃−30秒間(ア
ニール)、72℃−2分間(伸長)を、35サイクル行
う。 第3段階;72 ℃ −10 分を、1 サイクルだけ行う。
【0065】発現ベクターへのクローニング Chk1-F, Chk1-Rプライマーセットで増幅されたPCR産物
およびChk2-F,hChk2-Rプライマーセットで増幅されたPC
R産物を、EcoRIと XhoIでそれぞれ消化する。制限酵素
消化DNAは、アガロースゲル電気泳動に供した後、EASYT
RAP Ver.2(TAKARA社製)で精製する。精製DNAは、予め
PCR産物の両末端と同じ制限酵素 EcoRIおよびXhoIによ
り消化された大腸菌発現ベクターpGEX4T-1 (Pharmacia
社製)へ、ライゲーションされる。ライゲーションの
後、Molecular Cloningの方法に従って、大腸菌(DH5
α)株を形質転換する。こうして、複数のシングルコロ
ニーを取得する。
【0066】塩基配列の確認 次に、Molecular Cloningの方法に従い、各シングルコ
ロニーからプラスミドDNAを精製する。そのインサートD
NAの塩基配列の決定は、サンガー法に基づき、オートシ
ークエンサーで行われる。次に、インサートDNAの配列
とデータベース上に公開されている配列を比較し、ヒト
Chk1およびヒトChk2のcDNA配列であることを確認する。
【0067】(2)リコンビナントChk1,Chk2のリン酸
化酵素活性の確認 活性測定用基質(基質ペプチド)の作製 ヒトChk1およびChk2は、ヒトCdc25Cの216番目のセリン
残基をリン酸化することが知られている(S. Matsuoka e
t al. (1998). Science Vol 282, p1893;Y. Sanchez
et al. (1997) Science Vol 277, p1497)。ヒトCdc25C
のアミノ酸167番目から267番目をコードするcDNA配列
を、発現ベクターpGEX4T-1に組み込む。pGEX4T-1ベク
ターでは、リコンビナントタンパク質は、GSTとの融合
タンパク質として作られる。この結果、大腸菌内で発現
されるグルタチオン-s-トランスフェラーゼ(GST)とCd
c25C (167-267)との融合タンパク質GST-Cdc25C (167-26
7a.a.)が得られる。得られたGST-Cdc25C (167-267a.a.)
は、Chk1およびChk2の活性測定用基質として使用され
る。
【0068】このGST酵素は、グルタチオン(GSH)に対
してアフィニティを持っている。この性質を利用して、
リコンビナントタンパク質の精製を行う。リコンビナン
トタンパク質の発現を確認した後、その菌体を1% Tween
20 - PBS, pH8.5 に懸濁する。その後、超音波処理に
より菌体を破砕する。高速にて遠心分離を行い、分離し
た上清を、リコンビナントタンパク質を含む可溶性分画
とする。
【0069】この可溶性分画は、 GSH - セファロース
4B カラム(Pharmacia社製)に通される。この結果、GS
T-Cdc25C(167-267a.a.)タンパク質が、カラムに吸着さ
れる。次に、カラムを、WE buffer ( 10 mM 2-mercapto
ethnol, 2 mM MgCl2, 20 mMTris-HCl pH7.5 ) で洗浄す
る。その後、リコンビナントタンパク質を、G buffer
( 10 mM GSH, 50 mM Tris-HCl pH9.6 )を用いて、溶出
する。そして、溶出したGST-Cdc25C(167-267a.a.)タン
パク質を、PBS, 50%glycerolに対して透析する。透析し
た後、GST-Cdc25C(167-267a.a.)タンパク質を、−20℃
で保存する。
【0070】リコンビナントChk1の発現と精製 −1 リコンビナントバキュロウイルス液の調整 ヒトChk1をコードするcDNA断片を、EcoRIとXhoIで切り
出す。切り出したcDNA断片は、pFASTBACHTベクター(GI
BCO BRL社製)に、サブクローニングされる。pFASTBACH
Tのプラスミドクローンを大腸菌(DH10BAC株)へと、ト
ランスフォーメーションする。こうして、pFASTBACHTの
プラスミドクローンは、Luria agar plate (10g/L pept
one, 5g/L yeast extract, 10g/L NaCl, 12g/L agar, 2
00 ug/mlX-Gal, 40ug/ml IPTG、10ug/ml tetracyclin,
7ug/ml gentamycin, 50ug/ml kanamycin)上で、生育さ
れる。
【0071】DH10BAC内では、部位特異的トランスポジ
ションによって、pFASTBACHT内の発現カセットが、bacm
id DNAへと転移する。次に、転移の起きたシングルの白
いコロニーからリコンビナントbacmid DNAを精製する。
次に、リコンビナントbacmidDNAをCELLFECTIN (GIBCO B
RL)を用いて、Spodoptera frugiperda (Sf9)細胞のトラ
ンスフェクションを行う。リコンビナントバキュロウイ
ルスは、培養液中に産生される。このため、約1週間後
に培養液を遠心分離し、その上清をウイルス液とする。
以上の操作は、基本的にBAC-TO-BAC Baculovirus Expre
ssion System(GIBCO BRL社製)により行われる。
【0072】−2 リコンビナントタンパク質の精製 次に、Sf9細胞を、75cm2のフラスコにほぼコンフルエン
トな状態にまで培養する。そして、その培養液に、リコ
ンビナントバキュロウイルス液を加える。感染後3〜4日
目に、細胞を氷冷PBSに懸濁し、遠心洗浄を行う。細胞
をHGN buffer(-DTT)に懸濁し、氷冷しながら超音波処
理を行う。続いて、遠心分離を行い、得られた上清を可
溶性画分として精製に用いる。なお、HGN bufferの組成
は、表1に示す通りである。
【0073】
【表1】
【0074】pFASTBACHTベクターの発現カセットでは、
N末端側に6つのHis残基(6xHis)が付加される。抽出液
の一部を用いてウエスタンブロットを行った後、抗5xHi
s抗体(GIAGEN社製)によりタンパク質の発現を確認す
る。可溶性分画を Ni-キレーティングセファロースカラ
ム(Pharmacia社製)に通し、6xHis-Tag を介して組換え
タンパク質をカラムに吸着させる。6xHis-Tag は、Ni2+
と錯体を形成するため、カラムのNi2+にリコンビナント
タンパク質が吸着する。カラムを HGN buffer(-DTT)で
洗浄した後、リコンビナントタンパク質をElution buff
er ( 50 mM 〜1M imidazole, 0.5 M NaCl, 20 mM Tris
-HCl pH7.9 ) で溶出する。その際のimidazole の濃度
は、10mM, 25mM, 50 mM, 100 mM, 250 mM, 500mM, 1 M
と段階的に変化させて溶出を行う。
【0075】各イミダゾール画分について、ウエスタン
ブロットで抗5xHis抗体により検出されるリコンビナン
トタンパク質の存在する画分を、透析液[50mM HEPES
(pH7.5), 1mM DTT, 1mM EDTA (pH8.0)、50% glycerol]
に対して、一晩透析する。次に、透析後のサンプルをMo
noQカラム (Pharmacia社製) に通す。FPLC (Pharmacia
社製) を用いて吸着されたタンパク質は、0〜1M NaClを
含む10mM Tris-HCl (pH7.5), 1mM DTT, 10% glycerolで
濃度勾配をかけながら溶出される。次に、ウエスタンブ
ロットで抗5xHis抗体により検出されたリコンビナント
タンパク質が存在する画分について、透析液に対する透
析を行う。透析後のChk1は、−70℃にて保存する。
【0076】リコンビナントChk2の発現と精製 pGEX4T-1にクローニングされたヒトChk2とGSTとの融合
タンパク質を発現させ、2(2)と同様に精製を行
う。ただし、溶出されたGST-Chk2は、20mM Tris/HCl, p
H7.2, 1mM DTT, 1mM EDTA, 50%glycerolに対して透析を
行い、透析後は、−70℃にて保存する。
【0077】ウエスタンブロットによるリン酸化反応
生成物の検出 上記精製リコンビナントChk1, GST-Chk2およびGST-Cdc2
5C(167-267a.a.)を含む1x kinase buffer(20mM Hepe
s, pH7.5, 10mM MgCl2, 10mM MnCl2, 100uM ATP, 1mM D
TT)を30℃に保温する。保温から30分後、当量の2 x SD
S化bufferと混合して反応を停止させる。得られた反応
物は、SDS-PAGEに供される。そして、ウエスタンブロッ
トを行う。SDSは、タンパク質をマイナスにチャージす
るための役割を有する。
【0078】なお、本実施の形態において、MgCl2,の他
にMnCl2を混在させた1x kinase bufferを採用してい
る。しかし、MnCl2を少なくして、MgCl2を多くする方
が、Chk2の活性が高くなる知見が得られた。特に、MgCl
2のみをキレートさせて、MnCl2を加えない条件におい
て、Chk2の活性が極めて高くなることがわかった。一般
に、ATMについては、Mnイオンのキレートが不可欠であ
ることが知られている。しかし、Chk2については、Mnイ
オンよりも、Mgイオンの方が活性を高める効果がある。
【0079】一次抗体(抗phospho-Cdc25C-S216ポリク
ローナル抗体または抗 phospho-Cdc25C-S216モノクロー
ナル抗体)は、0.5 ug/ml になるよう抗体希釈用 buffe
r (100mM Tris/HCl pH7.6, 150mM NaCl, 0.05% Tween2
0, 1% BSA, 0.1% NaN3)で希釈して、使用される。ポリ
クローナル抗体の使用時には、Cdc25C-S216ペプチド
を、終濃度100ug/mlとなるよう添加して、一次抗体反応
を行う。一次抗体反応の後、メンブレンを0.05%Triton
X100-PBSで洗浄する。0.05%Triton X100-PBSで3000倍
に希釈したHRP標識ヤギ抗マウス 抗体( MBL社製330)ま
たは2000倍に希釈したHRP標識 ヤギ抗ウサギ 抗体( MBL
社製458 )を、 室温で1時間、抗原抗体反応させる(二
次抗体反応)。
【0080】二次抗体反応の後、0.05%Triton X100-PB
Sでメンブレンを洗浄する。洗浄後、ECL検出キット(Am
ersham社製)でリン酸化部位の検出を行う。こうして、
リコンビナントChk1, GST-Chk2は、GST-Cdc25C(167-26
7a.a.)のS216残基をリン酸化することが確認される。
その典型的な例は、図8に示す通りである。この図は、
GST-Chk2の活性を確認するために行ったウェスタンブロ
ットの結果である。抗体には、ウサギからの抗phospho-
Cdc25C-S216ポリクローナル抗体を用いている。この結
果から、GST-Chk2の量が多くなるに従い、リン酸化物の
生成量が増加することがわかる。したがって、GST-Chk2
は、測定に有効なリン酸化酵素であることが確認された
ことになる。
【0081】3.Chk1, Chk2の活性測定用 ELISA 系の
構築
【0082】(1)GST-Cdc25C (167-267a.a.)感作プレ
ートの作製 GST-Cdc25C (167-267a.a.)を20 ug/ml になるように PB
S に溶かし、ELISA 用マイクロタイタープレートに、1
ウェルあたり 50ulづつ分注して、4 ℃で一晩感作す
る。感作後、GST-Cdc25C (167-267a.a.)溶液を除き、1
% BSA - 0.1% Tween20 - PBS を 、1 ウェルあたり 100
ulづつ分注して、室温で1 時間以上ブロッキングを行
う。こうして、内壁にGST-Cdc25C (167-267a.a.)がコー
トされたマイクロカップができる。
【0083】(2)リコンビナントChk1またはChk2の活
性測定手順 リコンビナントタンパク質GST-Cdc25C (167-267a.a.)を
固相化したウェル中において、タンパク質リン酸化反応
を行う。その後、同じウェル中で、連続してELISA を行
う。リコンビナントChk1またはChk2を含む1x kinase re
action bufferを調整し、50 ul づつGST-Cdc25C (167-2
67a.a.) 感作プレートのウェル中に添加する(タンパク
質リン酸化反応)。30 ℃で一定時間保温した後、200ul
の75mM H3PO4溶液を各ウェルに添加して、反応を停止
させる。
【0084】そして、各ウェルをPBSで4 回以上十分に
洗浄する。一次抗体(抗 phospho-Cdc25C-S216モノクロ
ーナル抗体またはポリクローナル抗体)を、0.5 ug/ml
となるように、抗体希釈用 buffer (1% BSA, 0.1% NaN
3)で希釈する。次に、希釈した一次抗体を、洗浄後の
各ウェルに 100 ul づつ添加して、室温で 1 時間静置
する(一次抗体反応)。ポリクローナル抗体を使用する
時には、Cdc25C-S216ペプチドを、終濃度100ug/mlとな
るよう添加して、一次抗体反応を行う。
【0085】一次反応後、PBSで4回以上、十分に洗浄す
る。そして、0.05%Triton+X100-PBSで 3000倍に希釈し
たHRP標識ヤギ抗マウス 抗体またはヤギ抗ウサギ抗体(
MBL社製)を各ウェルに100ulづつ添加し、さらに室温で1
時間静置する(二次抗体反応)。PBSで洗浄後、各ウェ
ルに、HRP基質液を 100 ul づつ添加し、37℃で発色さ
せる。そして、1.5NH3PO4を100 ul づつ加えて、発色
反応を停止させる。最後に、マイクロタイタープレート
リーダーを用いて、450 nm における吸光度を測定す
る。
【0086】(3)測定結果 上記 ELISA法を用いて、リコンビナントChk1,Chk2のタ
ンパク質リン酸化酵素活性を測定した結果を、図9およ
び図10にそれぞれ示す。図9および図10共に、
(A)は、ポリクローナル抗体を用いた結果であり、
(B)は、モノクローナル抗体を用いた結果である。い
ずれの結果も、抗リン酸化ペプチド特異抗体を用いた E
LISA 法によって、Chk1およびChk2のタンパク質リン酸
化酵素活性を測定できることを示している。特に、ポリ
クローナル抗体を用いた場合には、pgオーダーの微量の
Chk1あるいはChk2で測定可能である。すなわち、ポリク
ローナル抗体とモノクローナル抗体の使い分けによっ
て、pgからugまでの幅広い範囲で測定することができ
る。
【0087】なお、上述したタンパク質リン酸化酵素の
活性測定の実施の形態は、活性測定用の基質ペプチドと
して、融合タンパク質GST-Cdc25C(167-267a.a.)を使用
している。しかし、基質に、Cdc25C以外のCdc25(例え
ば、Cdc25A、Cdc25B)を用いることもできる。この場
合、抗体は、Cdc25AあるいはCdc25Bのリン酸化基に結合
し得る抗リン酸化ペプチド特異抗体を用いることができ
る。
【0088】また、上述したタンパク質リン酸化酵素の
活性測定の実施の形態では、タンパク質リン酸化酵素と
して、Chk1あるいはChk2を用い、その活性を測定する方
法について、説明している。しかし、Cdc25Cの216番
目のセリン残基をリン酸化する酵素(これを、Cdc25Cキ
ナーゼという)であって、Chk1およびChk2以外の酵素に
ついても、その活性を測定することができる。すなわ
ち、Cdc25Cのリン酸化を促進あるいは阻害する酵素につ
いて、広く適用できる。
【0089】4.タンパク質リン酸化酵素の活性測定キ
ット
【0090】上記のように、抗リン酸化ペプチド抗体を
用いることによって、Chk1,Chk2のリン酸化酵素活性を
測定できる。このような酵素活性の測定は、抗癌剤等の
薬剤の開発におけるスクリーニングにおいて、非常に有
効な手段と成りうる。したがって、誰がスクリーニング
を行っても、また同じ人が時を隔てて複数回行っても、
再現性ある結果が得られることが、要望される。
【0091】かかる要望に応えるべく、上述のタンパク
質リン酸化酵素の活性測定に必要な、標準化された酵素
あるいは抗体等を、測定キットとして提供することがで
きる。具体的には、基質ペプチドを内壁にコートさせた
マイクロカップと、タンパク質リン酸化酵素Chk1,Chk2
と、標識抗体であるHRP標識ヤギ抗マウス 抗体またはヤ
ギ抗ウサギ抗体とを、セットで提供することが好まし
い。この中で、基質ペプチドを内壁にコートさせたマイ
クロカップを、予め測定キットに含めておくと、上記測
定を簡易に実施できる。また、抗リン酸化ペプチド抗体
を含ませておくと、作製の手間を省くことができる。
【0092】このため、かかるマイクロカップと、抗リ
ン酸化ペプチド抗体とを最低限含む測定キットとして、
タンパク質リン酸化酵素および標識抗体については、少
なくともいずれか一方を選択的に含むキットとするよう
にしても良い。なお、基質ペプチドをコートさせたマイ
クロカップと、抗リン酸化ペプチド抗体の内、いずれか
一方を、測定キットに含ませるようにしても良い。
【0093】また、測定キットに、抗リン酸化ペプチド
抗体を含ませるのではなく、抗リン酸化ペプチド抗体の
作製に必要な薬剤等を含ませるようにしても良い。具体
的には、免疫原、カラム等を測定キットに含めて、使用
者が、簡単に抗リン酸化ペプチド抗体を作製できるよう
にしても良い。
【0094】
【発明の効果】本発明によれば、以下の効果が得られ
る。すなわち、これまで放射性同位元素32Pで標識され
たγ-32P-ATPを用いるために、廃液の処理といった手続
きや特別の施設等を必要としていた。しかし、実施例に
示した活性測定系では放射性同位元素を使用しないた
め、これらの測定系の酵素反応液中に各種の化学合成物
質や細胞及び細菌抽出液、培養上清などを添加すること
によって、Chk1およびChk2の簡便で迅速な阻害物質の検
索を通常の実験室で行うことが可能である。
【0095】また、抗リン酸化ペプチド特異抗体を用い
た ELISA 法によって、Chk1およびChk2のタンパク質リ
ン酸化酵素活性をpgからugまで幅広く測定することがで
きる。
【0096】また、本Chk1,Chk2のリン酸化酵素活性測
定ELISA系では、基質にCdc25C(167-267a.a.)、検出抗
体に抗phospho-Cdc25C-S216抗体を使用しているため、C
dc25CのS216をリン酸化する酵素群(Cdc25Cキナーゼ)
についても広くその酵素活性を測定することが可能とな
る。
【0097】また、細胞抽出液を用いて細胞内全Cdc25C
キナーゼ活性を測定することが可能となるので、放射線
療法や化学療法の際に使用される薬剤が及ぼすチェック
ポイント機構への影響を、Cdc25Cキナーゼ活性により調
べることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタンパク質リン酸化酵素の活性測
定方法の実施の形態における、概略的な測定手順を示す
図である。
【図2】図1に示す抗リン酸化ペプチド抗体の概略的な
作製手順を示す図である。
【図3】図1に示す基質ペプチド抗体の概略的な作製手
順を示す図である。
【図4】図1に示すタンパク質リン酸化酵素Chk1の概略
的な作製手順を示す図である。
【図5】図1に示すタンパク質リン酸化酵素Chk2の、GS
Tとの融合タンパク質の概略的な作製手順を示す図であ
る。
【図6】図2に示す抗体の検定において、抗phospho-Cd
c25C-S216特異モノクローナル抗体の特異性を確認した
結果を示す図である。
【図7】図2に示す抗体の検定において、抗phospho-Cd
c25C-S216特異ポリクローナル抗体の特異性を確認した
結果を示す図である。
【図8】図5に基づいて作製したGST-Chk2の活性を確認
するために行ったウェスタンブロットの結果である。
【図9】図1に示す ELISA法を用いて、リコンビナント
Chk1のタンパク質リン酸化酵素活性を測定した結果を示
す図であり、(A)は、ポリクローナル抗体を用いた結
果であり、(B)は、モノクローナル抗体を用いた結果
である。
【図10】図1に示す ELISA法を用いて、リコンビナン
トChk2のタンパク質リン酸化酵素活性を測定した結果を
示す図であり、(A)は、ポリクローナル抗体を用いた
結果であり、(B)は、モノクローナル抗体を用いた結
果である。
【図11】DNA損傷チェックポイントによる細胞周期の
制御を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/21 C12N 1/21 4B065 5/10 9/12 4H045 9/12 C12P 21/08 15/02 (C12N 1/21 15/09 ZNA C12R 1:19) C12P 21/08 1:91) //(C12N 1/21 ) C12R 1:19) ) (C12N 5/10 C12N 5/00 B C12R 1:91) 15/00 C (C12N 15/02 ZNAA C12R 1:91) C12R 1:91) (C12N 15/09 ZNA C12R 1:91) (72)発明者 玉井 克之 長野県伊那市大字手良沢岡字大原1063− 103 株式会社医学生物学研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA11 BA10 BA42 BA80 CA04 CA07 CA20 DA02 DA06 EA04 GA03 GA11 GA27 HA03 4B029 AA07 AA08 AA21 BB16 BB17 CC01 CC02 CC03 CC08 FA13 FA15 GA03 GB10 4B050 CC03 DD11 EE01 FF03E FF05E FF09E FF11E FF14E LL03 LL05 4B063 QA01 QA05 QQ27 QR48 QR57 QS35 QX02 4B064 AG01 AG27 CA02 CA10 CA19 CA20 CC01 CC24 CE02 CE03 CE06 CE09 CE11 CE12 DA13 4B065 AA26X AA90X AA91X AA93Y AA95X AB01 AB05 AC14 AC15 AC16 BA02 BA08 BD01 BD14 BD15 CA24 CA25 CA29 CA46 4H045 AA10 AA11 AA20 AA30 BA41 BA42 BA52 CA40 DA75 DA76 EA50 FA20 FA71 FA72 FA74 GA01 GA05 GA26

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒトChk1またはヒトChk2から選択
    されるタンパク質リン酸化酵素と、上記タンパク質リン
    酸化酵素によってリン酸化される基質ペプチドとを反応
    させて、リン酸化基質ペプチドを合成するリン酸化ステ
    ップと、 上記リン酸化基質ペプチドと、上記リン酸化基質ペプチ
    ドと特異的に結合しうる抗リン酸化ペプチド抗体とを結
    合させる抗体結合ステップと、 上記リン酸化基質ペプチドと、上記抗リン酸化ペプチド
    抗体との結合物を定量化する定量化ステップと、を含む
    ことを特徴とするタンパク質リン酸化酵素の活性測定方
    法。
  2. 【請求項2】前記抗体結合ステップの次に、前記抗リン
    酸化ペプチド抗体を認識する標識抗体を前記結合物と反
    応させる二次抗体結合ステップを行うことを特徴とす
    る、請求項1記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定
    方法。
  3. 【請求項3】前記タンパク質リン酸化酵素は、それをコ
    ードする遺伝子を発現して得るリコンビナントタンパク
    質としたことを特徴とする、請求項1または2記載のタ
    ンパク質リン酸化酵素の活性測定方法。
  4. 【請求項4】前記基質ペプチドをCdc25Cの216
    番目のセリンを含むペプチドとし、前記抗リン酸化ペプ
    チド抗体を抗リン酸化Cdc25C−S216抗体とし
    たことを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項記
    載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方法。
  5. 【請求項5】前記抗リン酸化ペプチド抗体は、ポリクロ
    ーナル抗体またはモノクローナル抗体であることを特徴
    とする請求項1から4のいずれか1項記載のタンパク質
    リン酸化酵素の活性測定方法。
  6. 【請求項6】前記タンパク質リン酸化酵素は、マンガン
    イオンまたはマグネシウムイオンの内、少なくともいず
    れか一方の金属イオンを、その活性中心にキレートして
    いることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記
    載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方法。
  7. 【請求項7】前記タンパク質リン酸化酵素は、そのタン
    パク質リン酸化酵素に対して2分の1以下の量のマグネ
    シウムイオンのみを、キレートしていることを特徴とす
    る請求項6記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定方
    法。
  8. 【請求項8】少なくとも、ヒトChk1またはヒトCh
    k2から選択されるタンパク質リン酸化酵素によってリ
    ン酸化される基質ペプチドをコートした容器と、上記タ
    ンパク質リン酸化酵素によって上記基質ペプチドをリン
    酸化して得られるリン酸化基質ペプチドと特異的に結合
    しうる抗リン酸化ペプチド抗体と、を備えることを特徴
    とする、タンパク質リン酸化酵素の活性測定キット。
  9. 【請求項9】前記タンパク質リン酸化酵素を、さらに備
    えたことを特徴とする請求項8記載のタンパク質リン酸
    化酵素の活性測定キット。
  10. 【請求項10】前記抗リン酸化ペプチド抗体を認識する
    標識抗体を、さらに備えたことを特徴とする、請求項8
    または9記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キッ
    ト。
  11. 【請求項11】前記タンパク質リン酸化酵素は、それを
    コードする遺伝子を発現して得るリコンビナントタンパ
    ク質としたことを特徴とする、請求項8から10のいず
    れか1項記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キッ
    ト。
  12. 【請求項12】前記基質ペプチドをCdc25Cの21
    6番目のセリンを含むペプチドとし、前記抗リン酸化ペ
    プチド抗体を抗リン酸化Cdc25C−S216抗体と
    したことを特徴とする、請求項8から11のいずれか1
    項記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キット。
  13. 【請求項13】前記抗リン酸化ペプチド抗体は、ポリク
    ローナル抗体またはモノクロナール抗体であることを特
    徴とする請求項8から12のいずれか1項記載のタンパ
    ク質リン酸化酵素の活性測定キット。
  14. 【請求項14】前記タンパク質リン酸化酵素は、マンガ
    ンイオンまたはマグネシウムイオンの内、少なくともい
    ずれか一方の金属イオンを、その活性中心にキレートし
    ていることを特徴とする請求項8から13のいずれか1
    項記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測定キット。
  15. 【請求項15】前記タンパク質リン酸化酵素は、そのタ
    ンパク質リン酸化酵素に対して2分の1以下の量のマグ
    ネシウムイオンのみを、キレートしていることを特徴と
    する請求項14記載のタンパク質リン酸化酵素の活性測
    定キット。
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Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2003076623A1 (fr) * 2002-03-12 2003-09-18 Japan Science And Technology Agency Complexe de cdc7-ask kinase, son substrat, anticorps specifique pour ce substrat et procede de criblage d'un compose capable d'inhiber cdc7-ask kinase
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JP2008029320A (ja) * 2006-03-31 2008-02-14 Sysmex Corp キナーゼの活性測定方法
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JP2009519006A (ja) * 2005-11-14 2009-05-14 イエダ リサーチ アンド デベロップメント カンパニー リミテッド 改善された色素上皮由来因子変異体及びその使用
US8062887B2 (en) 2005-04-01 2011-11-22 National University Corporation, Hokkaido University Monoclonal antibody specifically recognizing modification site after translation of p53 and kit for assaying modification site containing the same

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