JP2008029320A - キナーゼの活性測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜貫通型キナーゼが活性化の際に形成しうる立体構造を保持した状態で回収し、この膜貫通型キナーゼの酵素活性による基質のリン酸化を検出することにより、膜貫通型キナーゼの活性を測定することのできる方法を提供すること。
【解決手段】細胞から細胞質を分離して膜貫通型キナーゼを含む試料を調製する工程と、前記試料中の膜貫通型キナーゼとこれに対応する基質とを接触させ、膜貫通型キナーゼの活性により基質をリン酸化させる工程と、標識物質をリン酸化した基質(リン酸化基質)に結合させる工程と、リン酸化基質に結合した標識物質の検出結果に基づいて膜貫通型キナーゼの活性を測定する工程と、を含む測定方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、キナーゼの活性測定方法及びキナーゼの活性を測定するための試薬キットに関する。
細胞膜に存在する膜貫通型のキナーゼ(以下、膜貫通型キナーゼとする)には、細胞のがん化に関わるものが多く、がん細胞において、膜貫通型キナーゼの活性が高く(あるいは低く)なることが知られている。例えばヒト上皮細胞増殖因子受容体(human epithelial growth factor receptor、以下、HERとする)ファミリーの1つであるHER1は、主に肺癌において活性が高くなっていることが知られている。同じファミリーに属するHER2は、主に乳癌において活性が高くなっていることが知られている。HER1及びHER2等の膜貫通型キナーゼは、リガンドが結合することにより活性化して自己リン酸化し、基質をリン酸化することができる。基質がリン酸化されると、下流のシグナル伝達系において、細胞内の特定のタンパク質にシグナルが伝達され、これによって細胞増殖や細胞死などが制御されている。例えば細胞増殖に関わるシグナル伝達系に異常が起こると、細胞の異常な増殖が引き起こされ、がん化につながることがある。したがって、キナーゼの活性を測定することは、細胞のがん化を判定するための指標となる。
膜貫通型キナーゼの活性を測定する方法として、例えば非特許文献1に記載の技術が知られている。これによると、膜貫通型キナーゼのひとつであるインスリンレセプターの自己リン酸化を検出することができる。具体的には、インスリンと培養細胞をインキュベートした後に、この培養細胞の細胞膜からインスリンレセプターを回収し、放射性物質で標識したリン酸化チロシン認識抗体を用いて自己リン酸化を検出する。しかしながら、非特許文献1記載の技術では、活性化した膜貫通型キナーゼの酵素活性によって基質がリン酸化される否かを判定することはできない。したがって、膜貫通型キナーゼの活性を測定するには、膜貫通型キナーゼの自己リン酸化ではなく、基質のリン酸化を検出できる技術の開発が望まれている。
Victoria P Knutson and Ruth Ann Buck(1991)Archieves of Biochemistry and Biophysics 285(2):197〜204
本発明は、活性化した膜貫通型キナーゼの酵素活性による基質のリン酸化を検出することのできる方法及び試薬キットを提供することを目的とする。
本発明は、細胞から細胞質を分離して膜貫通型キナーゼを含む試料を調製する工程と、前記試料中の膜貫通型キナーゼとこれに対応する基質とを接触させ、膜貫通型キナーゼの活性により基質をリン酸化させる工程と、標識物質をリン酸化した基質(以下、リン酸化基質とする)に結合させる工程と、リン酸化基質に結合した標識物質の検出結果に基づいて膜貫通型キナーゼの活性を測定する工程と、を含む測定方法を提供する。
さらに本発明は、膜貫通型キナーゼに対応する基質と、膜貫通型キナーゼの活性により基質に導入されうるリン酸基を含むリン酸基供与体と、リン酸基を導入した基質に結合可能な標識物質と、を備える試薬キットを提供する。
本発明によれば、活性化した膜貫通型キナーゼの酵素活性による基質のリン酸化を検出することのできる方法及び試薬キットを提供することができる。これによると、膜貫通型キナーゼの酵素活性によってリン酸化された基質を検出することができ、この検出結果に基づいて膜貫通型キナーゼの活性を測定することが可能となる。
本実施形態は、細胞から回収した膜貫通型キナーゼの酵素活性による基質のリン酸化を検出することにより、膜貫通型キナーゼの活性を測定する方法である。
測定対象となるキナーゼは、膜貫通型のキナーゼであれば特に限定されない。具体的には例えば、膜貫通型チロシンキナーゼ、膜貫通型セリン/スレオニンキナーゼ等が挙げられる。膜貫通型チロシンキナーゼとしては、インシュリン受容体(insulin receptor;IR)、インシュリン様成長因子受容体(insulin-like growth factor receptor;IGFR)、血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor;PDGF)、線維芽細胞増殖因子受容体(fibroblast growth factor;FGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(human epithelial growth factor receptor;HER)、血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor;VEGFR)などの増殖因子受容体が挙げられる。なお、HERファミリーは、HER1、HER2、HER3、及びHER4を含む。
測定対象となる膜貫通型キナーゼは、細胞から回収される。細胞は、生体から採取された生体試料に含まれる細胞であってもよいし、生体から採取された細胞を株化した培養細胞であってもよい。膜貫通型キナーゼを回収する方法は、細胞から細胞質を分離して膜貫通型キナーゼを含む試料を調製するような方法であれば特に限定されない。膜貫通型キナーゼは、例えば以下の方法を用いて回収することができる。まず、細胞の細胞膜を適当な緩衝液(ホモジナイズ試薬)中で破砕し、遠心分離によって上清と沈殿物とに分離して上清を除去する。この上清には、細胞質由来のタンパク質等が含まれており、沈殿物には膜貫通型キナーゼを保持した細胞膜の断片が含まれている。この沈殿物と、界面活性剤を含む溶液(可溶化処理液)とを混合し、遠心分離によって上清と沈殿物に分離する。上清には界面活性剤によりミセル化した、膜貫通型キナーゼを含む細胞膜が含まれており、沈殿物には不溶性タンパク質及びDNA等が含まれている。そして、この上清を、膜貫通型キナーゼを含む試料とする。このようにして調製された試料中では、断片化された細胞膜に膜貫通型キナーゼが貫通した状態で、その細胞膜が界面活性剤によりミセル化されている。
なお、膜貫通型キナーゼの中には、リガンドが結合することによってホモ2量体又はヘテロ2量体を形成するものがあることが知られている。上述した方法により調製された試料には、このような2量体を形成可能な程度に立体構造を保持した状態で膜貫通型キナーゼが含まれている。したがって、上述した方法により調製された試料を用いることにより、より正確に膜貫通型キナーゼの活性を測定することができる。例えばHER1は、リガンドであるEGFが結合することによって2分子のHER1が結合し、2量体を形成する。上記の反応用試料には、立体構造を保持した状態の2量体が含まれる。
ホモジナイズ試薬は、細胞を破砕する際に、膜貫通型キナーゼが変性するのを防ぐために用いられる。pHとしては、膜貫通型キナーゼを変性させたり失活させたりすることなく、安定した状態で回収できる範囲であれば特に限定されないが、好ましくは4.0〜9.0、より好ましくは4.5〜8.5、さらに好ましくは5.0〜8.0である。ホモジナイズ試薬は、緩衝剤を含むことが好ましい。緩衝剤としては例えば、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、MOPS(3−モルホリノプロパンスルホン酸)、HEPES(2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、またはトリシン(N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン)等が挙げられる。可溶化処理液も、上記のような緩衝剤を含み、ホモジナイズ試薬と同程度のpHであることが好ましい。
なお、ホモジナイズ試薬及び/または可溶化処理液に、プロテアーゼインヒビター、脱リン酸化酵素阻害剤、SH基の酸化を防ぐための試薬(以下、SH基安定剤とする)等を添加して用いてもよい。
細胞膜の破砕の方法としては、細胞膜を断片化することができれば特に限定されない。例えば、ピペットによる吸引排出、ボルテックスミキサーによる攪拌、ブレンダーによる破砕、ペッスルによる加圧、超音波処理装置による超音波処理等が挙げられる。
界面活性剤は、断片化した細胞膜を可溶化するために用いることができる。ただし、膜貫通型キナーゼを分解したり変性したりしないものを用いることが好ましい。電荷を有する界面活性剤は、膜貫通型キナーゼに結合して立体構造を変化させる可能性があるため、膜貫通型キナーゼに実質的に結合しない非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。非イオン性界面活性剤としては例えば、ドデシルエーテル、セチルエーテル、ステアリルエーテル、またはp−t−オクチルフェニルエーテル等を基本構造として有するものが挙げられる。具体的には、ノニデットP−40(NP−40、Shell International Petroleum Company Limitedの登録商標)、Triton−X(Union Carbide Chemicals and Plastics Inc.の登録商標)、トゥイーン(ICI Americas Inc.の登録商標)、Brij(ICI Americas Inc.の登録商標)、Emulgen(花王の登録商標)等が挙げられる。可溶化処理液中の含有濃度としては、好ましくは0.05〜5%、より好ましくは0.1〜3%、さらに好ましくは0.1〜1%である。
プロテアーゼインヒビターは、膜貫通型キナーゼが、細胞に含まれるプロテアーゼによって分解されることを防ぐために用いることができる。プロテアーゼインヒビターとしては例えば、EDTAやEGTA等のようなメタロプロテアーゼインヒビター、PMSFやトリプシンインヒビターやキモトリプシン等のようなセリンプロテアーゼインヒビター、ヨードアセトアミドやE−64等のようなシステインプロテアーゼインヒビター等が挙げられる。これらのプロテアーゼインヒビターは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。また、プロテアーゼインヒビターカクテル(シグマ社)のような、あらかじめ複数のプロテアーゼインヒビターが混合された市販品を用いることもできる。
脱リン酸化酵素阻害剤は、膜貫通型キナーゼの酵素活性が、細胞内に含まれる脱リン酸化酵素によって低下させられることを防ぐために用いることができる。脱リン酸化酵素阻害剤としては、チロシン脱リン酸化酵素阻害剤(例えばオルトバナジン酸ナトリウム(Na3VO4))、セリン/スレオニン脱リン酸化酵素阻害剤(例えばフッ化ナトリウム(NaF))等が挙げられる。これらの脱リン酸化阻害剤は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
SH基安定剤は、膜貫通型キナーゼの失活を防ぐために用いることができる。酵素に含まれるSH基は、酸化されてより安定なジスルフィドを形成しやすい。ジスルフィドの形成は、酵素の構造を変化させるため、酵素の失活の原因となることがある。SH基の酸化は、SH基を含有する試薬によって防ぐことができる。SH基安定化剤としては例えばジチオスレイトール(DTT)、2−メルカプトエタノール、グルタチオン、システイン、ホモシステイン、補酵素A、ジヒドロリポ酸等が挙げられる。ホモジナイズ試薬及び/または可溶化処理液中の含有濃度としては、例えばDTTは、好ましくは0.05〜2mM、より好ましくは0.07〜1.7mM、さらに好ましくは、0.1〜1.5mMである。例えば2−メルカプトエタノールは、好ましくは0.1〜15mM、より好ましくは0.3〜13mM、さらに好ましくは、0.5〜12mMである。
細胞から回収した膜貫通型キナーゼと基質とを接触させることにより、酵素反応させることができる。好ましくは、先述した試料(膜貫通型キナーゼを含む試料)と、測定対象の膜貫通型キナーゼに対応する基質と、リン酸基供与体と、を混合して接触させることにより、キナーゼ活性により酵素反応させることができる。
酵素反応に用いる基質は、測定対象とする膜貫通型キナーゼによりリン酸化されるものであれば特に限定されず、測定対象とする膜貫通型キナーゼにより適宜選択しうる。例えば、測定対象がHER1である場合、基質はGrb2、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ヒストンH2B(HH2B)、ホスホリパーゼC ガンマ等を用いることができる。また、特定の膜貫通型キナーゼに対して特異性の高い基質を使用してもよい。例えば、測定対象がHER1である場合、HER1に対して特異性の高い基質としてGST EGFR−substrate(ストラタジーン社)のような市販の基質を用いることもできる。GST−EGFR substrateは、GSTと、HER1の酵素活性によってリン酸化されるよう人為的に作製された基質との融合タンパク質である。測定においてこのような基質を使用することにより、複数種類の膜貫通型キナーゼの中からHER1の活性を特異的に検出することが可能になる。
一方、複数種類の膜貫通型キナーゼを測定対象とする場合、測定対象となっている膜貫通型キナーゼの基質を組み合わせて用いてもよいし、それら全ての膜貫通型キナーゼによりリン酸化されうる基質を用いてもよい。このような基質としては、複数種類の膜貫通型キナーゼの酵素活性によってリン酸化されるよう人為的に作製された公知の合成ペプチドが挙げられる。例えば、複数種類の膜貫通型チロシンキナーゼによりリン酸化されうる基質としては、Norio Sasaki et al, 1985, The Journal of Biological Chemistry, Vol.260, No.17, 9793〜9804、Sergei Braun et al, 1984, The Journal of Biological Chemistry, Vol.259, No.4, 2051〜2054、及びM. Abdel-Ghany et al, 1990, Proceeding of The National Academy of Science, Vol.87, 7061〜7065等の文献において、チロシンキナーゼの基質として使用されている合成ペプチドが挙げられる。これら文献に開示されている合成ペプチドは、グルタミン酸(以下、Gluと省略する)及びチロシン残基(以下、Tyrと省略する)を含むアミノ酸配列からなり、Tyrが複数種類のチロシンキナーゼによりリン酸化されうるよう人為的に作製された合成ペプチドである。上記アミノ酸配列としては、具体的には、4つのGluと1つのTyrからなる配列が2回以上繰り返されたアミノ酸配列(以下、アミノ酸配列aとする)、1つのGluと1つのTyrからなる配列が2回以上繰り返されたアミノ酸配列(以下、アミノ酸配列bとする)、6つのGluと1つのTyrと3つのアラニン残基(以下、Alaと省略する)からなる配列が2回以上繰り返されたアミノ酸配列(以下、アミノ酸配列cとする)、1つのGluと1つのTyrと1つのAlaからなる配列が2回以上繰り返されたアミノ酸配列(以下、アミノ酸配列dとする)、2つのGluと1つのTyrと6つのAlaと5つのリジン残基(以下、Lysと省略する)からからなる配列が2回以上繰り返されたアミノ酸配列(以下、アミノ酸配列eとする)などが例示できる。なお、文献Tony Hunter, 1982, The Journal of Biological Chemistry, Vol.257, No.9, 4843〜4848において、チロシンキナーゼによるTyrのリン酸化には酸性アミノ酸残基が重要であるいう報告があり、これより、特に、酸性のアミノ酸残基であるGluを多く含有するアミノ酸配列aやアミノ酸配列cが好ましい。測定においてこのようなアミノ酸配列からなるペプチドを基質として使用することにより、膜貫通型キナーゼの総活性値を測定することが可能になる。
酵素反応では、自己リン酸化により活性化した膜貫通型キナーゼの酵素活性により、リン酸基供与体のリン酸基が基質に取り込まれる。例えば測定対象がチロシンキナーゼである場合、基質中のチロシン残基をリン酸化させる。
リン酸基供与体としては例えば、アデノシン三リン酸(ATP)、アデノシン5’−O−(3−チオトリホスフェート)(ATP−γS)、32P標識したアデノシン5’−O−(3−トリホスフェート)(γ−〔32P〕−ATP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン一リン酸(AMP)等が挙げられる。
酵素反応に用いる基質は、アフィニティータグを有することが好ましい。アフィニティータグと、アフィニティータグと結合可能な結合物質を有する固相(以下、固相とする)を用いて、基質を回収することができる。具体的には、アフィニティータグを有する基質と、固相とが結合した複合体を回収し、回収した複合体におけるアフィニティータグと結合物質との結合を解離させることにより、最終的に基質を回収することができる。
アフィニティータグは、結合物質に結合可能であり、基質の膜貫通型キナーゼへの結合や基質のリン酸化を妨害することのない物質であれば特に限定されない。例えばポリペプチド、ハプテン等を用いることができる。具体的には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(以下、GSTとする)、ヒスチジン、マルトース結合タンパク質、FLAGペプチド(シグマ社)、 Mycタグ、HAタグ、Strepタグ(IBA GmbH社)ビオチン、アビジン、ストレプトアビジン等を用いることができる。
アフィニティータグを有する基質としては例えば、基質とアフィニティータグとの融合タンパク質を用いることができる。融合タンパク質としては、アフィニティータグと基質とを結合させたものを用いてもよいし、アフィニティータグと基質との融合タンパク質を発現する組み換え遺伝子を有するベクターを宿主に導入させ、宿主が産生した融合タンパク質を回収して用いてもよい。測定対象がHER1である場合、上述したGST−EGFR substrateが好適に用いられる。
結合物質は、アフィニティータグと解離可能に結合できるものであれば特に限定されない。例えばグルタチオン、ニッケル、アミロース、FLAG抗体(シグマ社)、Myc抗体、ヘマグルチニン(HA)抗体、Strep−Tactin(IBA GmbH社)等が挙げられる。
固相は、結合物質と結合可能である担体であれば特に限定されない。固相の材質としては例えば、多糖類、プラスチック、ガラス等が挙げられる。固相の形状としては例えば、ビーズ、ゲル等が挙げられる。固相の具体例としては、セファロースビーズ、アガロースビーズ、磁性ビーズ、ガラスビーズ、シリコーンゲル等が挙げられる。また、上述したビーズやゲルをカラムに充填して用いることもできる。
先述のように基質がGST−EGFR substrateである場合、固相としては例えば、グルタチオンセファロースビーズ(以下、グルタチオンビーズとする)を用いることができる。その場合、膜貫通型キナーゼの酵素活性によってリン酸化したGST−EGFR substrateとグルタチオンビーズとを結合させる。GST−EGFR substrateとグルタチオンビーズを回収し、回収したグルタチオンビーズに還元型グルタチオンを添加すると、GSTとグルタチオンビーズとの結合を解離させることができる。これにより、リン酸化したGST−EGFR substrateを回収することができる。
リン酸化したGST−EGFR substrateを回収する際には、あらかじめGST−EGFR substrateとグルタチオンビーズとを結合させて酵素反応に用いてもよいし、酵素反応後にGST−EGFR substrateとグルタチオンビーズとを結合させてもよい。
上記の他、アフィニティータグと固相との組み合わせとしては、以下のような例が挙げられる。
アフィニティータグとしてヒスチジンを選択した場合、固相は例えばニッケルアガロースビーズを用いることができる。ヒスチジンとニッケルとの結合は例えば、Glycine−HCl等の酸や、イミダゾールを用いて解離させることができる。
アフィニティータグとしてマルトース結合タンパク質を選択した場合、固相は例えばアミロース磁性ビーズを用いることができる。マルトース結合タンパク質とアミロースとの結合は例えば、遊離のアミロースを添加することにより解離させることができる。
アフィニティータグとしてFLAGペプチドを選択した場合、固相は、シグマ社のFLAGアフィニティーゲルを用いることができる。FLAGペプチドとFLAGアフィニティーゲルの結合は例えば、Glycine−HCl等の酸や、3×FLAGペプチド(シグマ社)を用いて解離させることができる。
アフィニティータグとしてMycタグを選択した場合、固相は例えばMyc抗体を結合したアガロースビーズを用いることができる。また、アフィニティータグとしてHAタグを選択した場合、HA抗体を結合したアガロースビーズを用いることができる。MycタグとMyc抗体との結合、HAタグとHA抗体との結合はどちらも例えば、酸やアルカリを加えてタンパク質を変性させることにより、解離させることができる。この時、変性したタンパク質を元の状態に戻すことのできる酸またはアルカリを選択することが好ましい。具体的には例えば、酸では塩酸等、アルカリでは水酸化ナトリウム等が挙げられる。
アフィニティータグとしてStrepタグを選択した場合、固相としてはIBA GmbH社のStrep−Tactin固相化ゲルカラムを用いることができる。StrepタグとStrep−Tactinの結合は例えば、ストレプトアビジンと可逆的に反応するデスチオビオチンを用いて解離させることができる。
試料中の膜貫通型キナーゼと基質とを酵素反応させた後、基質を回収する前に、加熱処理、冷却処理、またはキナーゼの阻害剤等を用いて酵素反応を停止させてもよい。基質の回収工程において、さらに酵素反応が進んでしまうことがあり、試料ごとに測定結果にバラつきを生じさせる原因となる可能性がある。しかし、基質を回収する前に酵素反応を停止させることにより、これを回避することができる。例えばHER1の阻害剤としては、PD168393、PD153035(いずれもカルビオケム社)等が挙げられる。
リン酸化基質を検出するため、標識物質を用いる。標識物質としては例えば、蛍光物質、酵素、放射性同位元素等が挙げられるが、これに限定されない。蛍光物質としては例えば、フルオレセイン、クマリン、エオシン、フェナントロリン、ピレン、ローダミン等が挙げられる。酵素としては例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ等が挙げられる。放射性同位元素としては例えば、32P、33P、131I、125I、3H、14C、35S等が挙げられる。
リン酸化基質を検出するため、リン酸化基質に標識物質を結合させる。例えば標識物質を有し、且つリン酸化基質に特異的に結合可能な抗体を用いることにより、リン酸化基質に標識物質を結合させることができる。
または、リン酸化基質に特異的に結合可能な抗体(以下、リン酸化基質認識抗体とする)と、リン酸化基質認識抗体に結合可能であり、標識物質を有する抗体(以下、リン酸化基質認識抗体に結合可能な抗体を二次抗体とする)とを用いることにより、リン酸化基質認識抗体と二次抗体を介して、標識物質をリン酸化基質に実質的に結合させることもできる。
または、リン酸化基質認識抗体と、ビオチンを有する二次抗体と、標識物質を有するアビジンとを用い、リン酸化基質認識抗体と二次抗体とビオチンとアビジンを介して、標識物質をリン酸化基質に実質的に結合させることもできる。この場合、二次抗体がアビジンを有し、ビオチンが標識物質を有していてもよい。
または、ビオチンを有するリン酸化基質認識抗体と、標識物質を有するアビジンを用いてもよいし、アビジンを有するリン酸化基質認識抗体と、標識物質を有するビオチンを用いてもよい。
標識物質を検出することにより、リン酸化された基質を検出することができ、これにより最終的に膜貫通型キナーゼの活性を測定することができる。
上述したリン酸化基質認識抗体及び二次抗体は、動物に抗原を接触させて免疫を促し、この動物の血液を精製して得られた抗体、遺伝子組み換えによって得られた抗体、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等を用いることができる。また、これらの抗体のうち少なくとも2種類を混合したものを用いることもできる。ここでいう抗体とは、抗体のフラグメント及びその誘導体も含む。具体例としては、Fabフラグメント、F(ab’)フラグメント、F(ab)2フラグメント、及びsFvフラグメント等(Blazar et al., 1997, Journal of Immunology, 159 : 5821−5833及びBird et al., 1988, Science, 242 : 423−426)が挙げられる。抗体のクラスはIgG、IgM等を用いることができるが、これに限定されない。
リン酸化基質の検出方法は、標識物質の種類により適宜選択しうる。標識物質が蛍光物質である場合、ウエスタンブロッティングによって基質のリン酸化を検出することができる。リン酸化基質をメンブレンで分離し、リン酸化基質認識抗体を加えてリン酸化基質と結合させ、さらに蛍光物質を有する二次抗体をリン酸化基質認識抗体に結合させ、この蛍光を検出すればよい。リン酸化基質を、上述したアフィニティータグを用いてあらかじめ分離した場合は、ウエスタンブロッティングの代わりにスロットブロット法を用いて基質のリン酸化を検出することもできる。標識物質として、蛍光物質の代わりに酵素を用いることもできる。この場合、二次抗体の有する酵素を、基質を加えて発色反応させ、この発色を検出すればよい。
また、リン酸化基質を含む溶液をチューブに収容し、蛍光物質を有するリン酸化基質認識抗体を加えてリン酸化基質と結合させ、蛍光強度を測定することにより、基質のリン酸化を検出することもできる。
標識物質が酵素である場合、固相酵素免疫検定法(以下、ELISA法とする)によって基質のリン酸化を検出することができる。ELISA法には、直接吸着法とサンドイッチ方が含まれる。
直接吸着法では、リン酸化基質を固相の表面に吸着させ、酵素を有するリン酸化基質認識抗体を加え、リン酸化基質と結合させる。次に、リン酸化基質認識抗体が有する酵素を、基質を加えて発色反応させ、この発色を検出すればよい。
サンドイッチ法では、固相にリン酸化基質認識抗体を結合させ(以下、固相抗体とする)、リン酸化基質を加えて固相抗体と結合させる。次に、酵素を有するリン酸化基質認識抗体(以下、標識抗体とする)を加え、リン酸化基質と結合させる。標識抗体の有する酵素を、基質を加えて発色反応させ、この発色を検出すればよい。
例えば酵素がアルカリホスファターゼである場合、基質としてニトロテトラゾリウムブルークロライド(NBT)及び5−ブロモ−4−クロロ−3−インドキシルホスフェイト(BCIP)の混合溶液を用いて反応させ、発色させることができる。酵素がペルオキシダーゼである場合、基質としてジアミノベンジジン(DAB)を用いて反応させ、発色させることができる。
サンドイッチ法を用いる場合、固相抗体と標識抗体とは、リン酸化基質の異なる部位に結合することが好ましい。すなわち、リン酸化基質に複数の抗体結合部位があるか、用いる2種類の抗体がリン酸化基質の異なる抗原決定基を認識することが好ましい。
標識物質が放射性同位元素である場合、放射線免疫検定法(以下、RIAとする)によって基質のリン酸化を検出することができる。具体的には、放射性同位元素を有するリン酸化基質認識抗体をリン酸化基質に結合させ、放射線をシンチレーションカウンター等によって測定し、基質のリン酸化を検出することができる。
本実施形態のキナーゼ活性測定法を用いて得られた測定結果に基づき、細胞のがん化の有無を推定してもよい。従来、細胞のがん化に関わるタンパク質の発現量を測定し、がん細胞の有無を判定する方法が知られているが、これらのタンパク質は活性が高いまたは低い場合にがん化を引き起こすことが多く、発現量が多いまたは少ないというだけでがん化を判定することは困難である。したがって、本実施形態のキナーゼ活性測定法を用いて得られたキナーゼ活性の測定結果は、単にキナーゼの発現量を測定した場合とは異なり、細胞のがん化の有無を推定しうる情報となる可能性がある。または、キナーゼの活性値と発現量の双方を測定してもよい。
本実施形態のキナーゼ活性測定法を用いて得られた測定結果に基づき、細胞のがん化の原因を推定してもよい。例えば、本実施形態のキナーゼ活性測定法を用いて、細胞膜に存在する膜貫通型チロシンキナーゼの総活性値を測定し、この総活性値が、膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因であるかどうかを推定しうる情報となる可能性がある。具体的には、本実施形態のキナーゼ活性測定法に複数種類の膜貫通型チロシンキナーゼによりリン酸化されうる基質を用いて、がん細胞の細胞膜に存在する膜貫通型チロシンキナーゼの総活性値を測定し、その総活性値とこれに対応する閾値とを比較し、総活性値が閾値以上であれば膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因であると推定でき、閾値未満であれば膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因ではないと推定できる可能性がある。なお、閾値の設定としては、例えば、膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因であるがん患者集団と膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因ではないがん患者集団から採取したそれぞれの腫瘍細胞の膜貫通型チロシンキナーゼの総活性値を測定し、各がん患者集団の総活性値を対比させて、膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因であるがん患者集団と膜貫通型チロシンキナーゼががん化の原因ではないがん患者集団を高率に分類できる総活性値を閾値とすることができる。
本実施形態の膜貫通型キナーゼの活性を阻害する阻害剤(以下、キナーゼ阻害剤とする)の影響を推定する方法を用いて得られた結果に基づき、キナーゼ阻害剤の阻害能を推定しうる情報を得てもよい。キナーゼ阻害剤としては例えば、キナーゼ活性を阻害することにより薬効を示す抗がん剤が挙げられる。このような抗がん剤としては例えば、イレッサ(アストラゼネカ社)やハーセプチン(ジェネンテック社)が挙げられる。イレッサはHER1の阻害剤であり、ハーセプチンはHER2の阻害剤である。
キナーゼ阻害剤の阻害能を推定するには例えば、以下のような方法が挙げられる。まず生体から採取された細胞のキナーゼ活性値を測定し、この細胞と阻害剤とを接触させ、接触後の細胞のキナーゼ活性値を測定する。活性値は標識物質や検出方法によって求め方が異なるが、例えば標識物質に蛍光物質を用いた場合、蛍光強度を測定して求めることができる。キナーゼ阻害剤接触前の細胞のキナーゼ活性値と、キナーゼ阻害剤接触後の細胞のキナーゼ活性値とを比較し、活性値の有意な低下が認められれば阻害剤との接触によってキナーゼ活性が阻害されたと推定すればよい。活性値の有意な低下が認められなければ、阻害剤との接触の影響がないと推定すればよい。
本実施形態の膜貫通型キナーゼを活性化するリガンドの影響を推定する方法を用いて得られた結果に基づき、リガンドに対応する膜貫通型キナーゼの存在を推定しうる情報を得てもよい。リガンドとしては、公知の膜貫通型キナーゼのリガンドを使用することができる。例えば、上皮増殖因子(EGF)、Heregulin、インスリン様成長因子(IGF)、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)などが挙げられる。EGFやHeregulinはHERに結合し、IGFはIGFRに結合し、FGFはFGFRに結合し、VEGFはVEGFRに結合し、PDGFはPDGFRに結合する。リガンドが膜貫通型キナーゼに結合すると、膜貫通型キナーゼの二量体化が誘導され、膜貫通型キナーゼの二量体が形成されると膜貫通型キナーゼの細胞内ドメインに存在するチロシンキナーゼ部位が活性化される。
リガンドに対応する膜貫通型キナーゼの存在を推定するには、例えば以下のような方法が挙げられる。まず生体から採取された細胞のキナーゼ活性値を測定する。次に、この細胞とリガンドとを接触させ、接触後の細胞のキナーゼ活性値を測定する。活性値は標識物質や検出方法によって求め方が異なるが、例えば標識物質に蛍光物質を用いた場合、蛍光強度を測定して求めることができる。リガンド接触前の細胞のキナーゼ活性値と、リガンド接触後の細胞のキナーゼ活性値とを比較し、活性値の有意な上昇が認められれば、細胞にリガンドに対応する膜貫通型キナーゼが存在し、これがリガンドとの接触によって活性化されたと推定すればよい。
膜貫通型キナーゼの活性測定に用いられる試薬類を試薬キットとすることができる。このキットは、膜貫通型キナーゼに対応する基質と、膜貫通型キナーゼの活性により基質に導入されうるリン酸基を含むリン酸基供与体と、リン酸基を導入した基質に結合可能な標識物質と、を備える。上記成分は、単一の容器に収容してもよいし、少なくとも1つの成分を別の容器に収容してもよい。好ましくは、基質とリン酸基供与体とを含有する試薬を第1容器に収容し、標識物質を含有する試薬を第2容器に収容する。また、標識物質が、基質に結合可能な一次抗体と、一次抗体に結合可能であり標識物質を有する二次抗体からなる場合、これらの一次抗体と二次抗体はそれぞれ別の容器に収容することが好ましい。上記試薬には、pHを調整するため緩衝液を含有させてもよい。緩衝液は、先述したものを用いることができる。試薬キットは、ホモジナイズ試薬、及び/または可溶化試薬を備えていてもよい。
以下、本発明の膜貫通型キナーゼの活性測定法について、実施例に基づき、より具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
(実施例1)HER1の活性化による基質のリン酸化の検出
1.反応用試料の調製法
乳癌由来の培養細胞(MDA−MB468)を、225cm2のフラスコにおいて80%コンフルエント(約107個)となるよう培養した。この培養細胞と細胞処理液(20mM HEPES pH7.4、20mM MnCl2、1mM DTT、0.2%プロテアーゼインヒビター(以下、PIとする)、10% グリセロール、100μM Na3VO4、及び50mM NaFを含む)1mlとを混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を破壊し、細胞溶液を調製した。PIは、プロテアーゼインヒビターカクテルFor Mammalian Tissues(シグマ社)を用いた。得られた細胞溶液を遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿物と、細胞膜可溶化液(20mM HEPES pH7.4、20mM MnCl2、1mM DTT、1% NP−40、0.2% PI、10% グリセロール、100μM Na3VO4、及び50mM NaFを含む)とを混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を可溶化し、遠心分離して上清を回収した。この上清を、反応用試料として以下の反応に用いた。
2.酵素反応及び反応基質の溶出
i)サンプル1、サンプル2の調製
上記の方法で得た反応用試料25μlと、基質溶液1(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% グリセロール、100μM Na3VO4、50mM NaF 、200μM ATP、及び5μg 基質を含む)25μlとを混合し、25℃で30分間インキュベートした。これをサンプル1とした。
反応用試料25μlと、基質溶液2(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% グリセロール、100μM Na3VO4、及び5μg 基質を含む)25μlとを混合し、25℃で30分間インキュベートした。これをサンプル2とした。基質は、粒径45〜165μmのセファロース4Bビーズ(アマシャム社)に結合した GST EGFR−substrate(ストラタジーン社)を用いた。
ii)サンプル3、サンプル4の調製
サンプル1またはサンプル2と、反応停止液(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% グリセロール、100μM Na3VO4、及び10μM PD168393(EGFR 阻害剤、カルビオケム社)を含む)50μlと、をそれぞれ混合し、遠心分離した。サンプル1の上清をサンプル3、サンプル2の上清をサンプル4とした。
iii)サンプル5、サンプル6の調製
上清を廃棄した後、サンプル3の沈殿物またはサンプル4の沈殿物と、第1洗浄液(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% グリセロール、100μM Na3VO4、及び100nM PD168393を含む)200μlとをそれぞれ混合し、遠心分離した。上清を廃棄した後、サンプル3の沈殿物またはサンプル4の沈殿物と、第2洗浄液(25mM Tris pH7.4、0.2% PI 、100μM Na3VO4、及び150mM NaClを含む)200μlとをそれぞれ混合し、遠心分離した。上清を廃棄した後、サンプル3の沈殿物またはサンプル4の沈殿物と、溶出液(50mM Tris pH8.0、10mM 還元型グルタチオン、100μM Na3VO4、及び0.2% PIを含む)190μlとをそれぞれ混合した。サンプル3の沈殿物と溶出液との混合液をサンプル5、サンプル4の沈殿物と溶出液との混合液をサンプル6とした。
iv)サンプル7、サンプル8の調製
サンプル5及びサンプル6を遠心分離した。サンプル5の上清をサンプル7、サンプル6の上清をサンプル8とした。
v)サンプル9、サンプル10の調製
ivで得たサンプル5の沈殿物をサンプル9、サンプル6の沈殿物をサンプル10とした。
3.ウエスタンブロッティングによるリン酸化された基質の検出
SDS−PAGEにて、サンプル1〜10に含まれるタンパク質の分離を行った。サンプル1及びサンプル2に12.5μlずつ、サンプル3〜6、サンプル9及び10に10μlずつ、サンプル7及び8に5μlずつ、SDS サンプルバッファー pH6.8(200mM Tris、40% グリセロール、8% SDS、及び10% 2−メルカプトエタノールを含む)を加え、100℃で5分間ボイルした。各サンプルをポリアクリルアミドゲル(PAGミニ「第一」4/20(13W)(第一化学薬品株式会社))の各ウエルに注入し、泳動槽(カセット電気泳動槽「第一」DPE−1020(ミニ2連式)(第一化学薬品株式会社))を用いて25mAで70分間電気泳動した。電気泳動によって分離したタンパク質を、ミニトランスブロットセル(バイオラッド社)を用いて100Vで1時間電圧をかけ、ポリアクリルアミドゲルからポリビニリデンフロライド(PVDF)メンブレン(Immobilon−FL 0.45μm ポアサイズ(ミリポア社))に転写した。
このPVDFメンブレンを、4%ブロックエース(大日本住友製薬株式会社)溶液で60分間ブロッキングした。ブロッキングしたPVDFメンブレンを、一次抗体溶液(0.4%ブロックエース及び0.5μg/ml Anti−Phosphotyrosine clone 4G10(upstate社)を含む)2ml中で60分間振蕩した後、TBS−T(25mM Tris、150mM NaCl及び0.1% Tween−20を含む)で3回洗浄した。次に、このPVDFメンブレンを、二次抗体溶液(0.4%ブロックエース及び2.7μg/ml抗マウスイムノグロブリン・ウサギポリクローナル抗体 FITC標識(DAKO社)を含む)2ml中で60分間振蕩した後、TBS−Tで3回洗浄した。このPVDFメンブレンを乾燥させ、画像解析装置(Pharos FX system(バイオラッド社))を用いて解析し、蛍光を検出した。
4.結果
図1は、ウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。サンプル1〜10の各写真において、奇数番号のサンプルはATPを含まない反応液を用いた。偶数番号のサンプルはATPを含む反応液を用いた。
サンプル1、3、5、及び7にバンドが見られないのは、反応液にATPが含まれず、基質がリン酸化されなかったためであると考えられる。サンプル1、サンプル3におけるリン酸化は、内在するATPからのリン酸基の供与によるものであると考えられる。
p−HER1の枠内に見られるバンドは、自己リン酸化したHER1である。p−GST−substrateの枠内に見られるバンドは、HER1の活性化によってリン酸化された基質(EGFR−substrate)である。サンプル2及びサンプル4のレーンのほぼ中央に見られるバンドは、リン酸化されたチロシンを有する何らかのタンパク質であると考えられる。
サンプル2及び4の結果より、複数のリン酸化基質が混在していても、ウエスタンブロッティングによって分離し、目的の基質のリン酸化を検出できることがわかった。また、リン酸化基質は、酵素反応後に遠心分離した反応液の上清に含まれることがわかった。
サンプル5及び6は、セファロースビーズに結合した基質以外のタンパク質を除去し、セファロースビーズに結合した基質を回収したものである。サンプル6の結果より、セファロースビーズに結合したリン酸化基質のみを回収できたことがわかった。
サンプル7及び8は、セファロースビーズに結合した基質を溶出し、基質を回収したものである。サンプル8の結果より、リン酸化基質をビーズから解離させ、リン酸化基質のみを回収できたことがわかった。
サンプル9及びサンプル10は、タンパク溶出後のセファロースビーズであり、リン酸化されたチロシンを含むタンパクを示すバンドはみられなかった。この結果より、基質が有するGSTとセファロースビーズとの結合を解離させることができたことがわかった。
以上より、本実施例の測定法を用いて、キナーゼの活性化による基質のリン酸化の有無を検出できることがわかった。
(実施例2)スロットブロットによるリン酸化された基質の検出
実施例1で調製したサンプル7、サンプル8を用いて、スロットブロットによるリン酸化チロシンの検出を行った。
底面にPVDFメンブレン(Immobilon−P SQ 0.2μm pore size(ミリポア社))を有するスロットブロッター(BIO−DOT SF(バイオラッド社))の別々のウエルにサンプル7、サンプル8を180μlずつ収容した。PVDFメンブレンの裏側からサンプル7、サンプル8を、真空ポンプを用いて吸引し、各サンプルに含まれるタンパクをPVDFメンブレンに吸着させた。PVDFメンブレンをスロットブロッターから取り外し、実施例1と同様の一次抗体溶液2ml中で60分間振蕩した後、TBS(25mM Tris、及び150mM NaClを含む)で3回洗浄した。次にこのPVDFメンブレンを実施例1と同様の二次抗体溶液2ml中で60分間振蕩した後、TBSで3回洗浄した。PVDFメンブレンを乾燥させ、画像解析装置を用いて解析し、蛍光を検出した。
図2は、スロットブロットの結果を示す蛍光写真である。左がサンプル7、右がサンプル8のブロッティング結果である。サンプル7では、リン酸化を示すシグナルが確認できなかった。これは、反応液にATPが含まれておらず、HER1のキナーゼ活性によって基質に取り込まれるリン酸基が不足し、基質のリン酸化が起こらなかったためである。サンプル8では、リン酸化を示すシグナルが確認できた。これは、HER1のキナーゼ活性によって反応液に含まれるATPのリン酸基が基質に取り込まれ、リン酸化が起こったためである。
以上の結果から、スロットブロットによって、キナーゼの活性化による基質のリン酸化の有無を検出できることがわかった。
(実施例3)HER1阻害剤によるHER1のキナーゼ活性への影響
実施例1と同様の方法で得た反応用試料を用いて、HER1阻害剤によるHER1のキナーゼ活性への影響を調べた。
上記反応用試料25μをそれぞれ2本のチューブに収容した。一方にHER1阻害剤であるPD168393(カルビオケム社)200nMを含む反応液(20mM PIPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% glycerol、100μM Na3VO4、20μM ATP、及び3μg Grb2を含む)25μl、他方にPD168393を含まない反応液25μlを添加し、25℃で30分間インキュベートした。PD168393を含む反応液をPD+、含まない反応液をPD−とする。このPD+、PD−を用いて、実施例1と同様の方法でウエスタンブロッティングを行った。
なお、Grb2は以下の方法で作製した。Grb2mRNAの塩基配列を基に設計したフォワードプライマー(5’CGCGGATCCCATATGGAAGCCATCGCCAAATATG 3’:配列番号1)及びアウタープライマー(5’CCCAAGCTTTTAGACGTTCCGGTTCAC 3’:配列番号2)、ヒトcDNA、及びProof Start(キアゲン社)を用いて、PCRを行った。得られた増幅産物(以下、Grb2cDNAとする)及びプラスミドベクターであるpGEM3Z(プロメガ社)を制限酵素(Sma)処理した。Grb2cDNAを、ligation kit(TAKARA社)を用いてpGEM3Zに組み込み、増幅用組換えプラスミドを作製した。この増幅用組換えプラスミドをプラスミド増幅用大腸菌(DH5−α)にトランスフォームし、この大腸菌を16時間培養した。培養した大腸菌を溶菌して増幅用組換えプラスミドを回収した。
回収した増幅用組換えプラスミド及びプラスミドベクターであるpET−28a(+)(ノバジェン社)を制限酵素(EcoRI、HindIII)処理した。処理した増幅用組換えプラスミドから、組み込んだGrb2cDNAを回収した。ligation kit(TAKARA社)を用いてGrb2cDNAをpET−28a−c(+)に組み込み、発現用組み換えプラスミドを作製した。発現用組み換えプラスミドを発現用大腸菌(BL21−AI)にトランスフォームし、この大腸菌を16時間培養した。培養した大腸菌に1mM IPTG及び0.2%アラビノース(いずれも培養液中の濃度)を添加して、さらに4時間培養し、発現を誘導した。次に大腸菌を溶菌し、ニッケルアガロースビーズを用いてGrb2を回収した。得られたGrb2の濃度は0.6μg/μlであったため、反応液には5μlを用いた。
図3は、ウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。左のレーンがPD−、右のレーンがPD+のブロッティング結果である。
p−HER1の枠内に見られるバンドは、自己リン酸化したHER1である。なお、PD+のレーンにもリン酸化を示すバンドが現われているが、これは細胞を反応用試料として調製する以前に既に起こっていたリン酸化がシグナルとして検出されたものと思われる。PD−のレーンのp−Grb2の枠内に見られるバンドは、HER1の酵素活性によってリン酸化されたGrb2である。PD+のレーンのp−Grb2の枠内にバンドが見られないのは、HER1の酵素活性がPD168393によって阻害されたためであると考えられる。
PD−のレーンのほぼ中央に見られるバンドは、HER1の活性化によってリン酸化された何らかのタンパク質であると考えられる。一方、PD+のレーンの同じ位置にバンドが見られないのは、HER1の酵素活性がPD168393によって阻害されたためであると考えられる。
以上の結果から、本実施例の測定法を用いて、HER1の酵素活性に対するHER1阻害剤阻害能を推定しうることがわかった。
次に、複数種類の膜貫通型チロシンキナーゼの基質を作製し、この基質を用いた本実施形態の測定方法の実施例を以下に示す。
(実施例4)チロシンキナーゼの基質の作製
4つのグルタミン酸残基と1つのチロシン残基からなる配列が5回繰り返されたアミノ酸配列(配列番号3)からなるペプチド(以下、poly(Glu、Tyr)ペプチドとする)とGSTとの融合タンパク質を作製し、この融合タンパク質を、複数種類のチロシンキナーゼによりリン酸化されうる基質として用いた。以下、この融合タンパク質をGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質とする。
GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質は、以下の方法で作製した。poly(Glu、Tyr)ペプチドのアミノ酸配列(配列番号3)をコードするDNA(配列番号4)、このDNAの塩基配列を基に設計したセンスプライマー(配列番号5)及びアンチセンスプライマー(配列番号6)及びKODplusDNApolymerase(東洋紡株式会社)を用いて、PCRを行った。PCRにより得られた増幅産物(以下、poly(Glu,Tyr)DNAとする)及びGST融合タンパク質発現用のプラスミドベクターであるpGEX-4T-3(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を制限酵素(BamH1及びEcoR1)で処理し、poly(Glu,Tyr)DNAをpGEX-4T-3に組み込み、組換えプラスミドを作製した。この組換えプラスミドを大腸菌JM109にトランスフォームし、この大腸菌を、液体培地(LB培地)中で培養液の吸光度(600nm)が0.6になるまで培養した。この培養した大腸菌に1mM IPTG(培養液中の濃度)を添加して4時間培養し、発現を誘導した。次に、大腸菌を溶菌し、グルタチオンセファロース4B(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社)を用いてGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を回収した。このGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質のアミノ酸配列を配列番号7に示した。
(実施例5)受容体型チロシンキナーゼの細胞内ドメインを用いた場合のウエスタンブロッティングによる融合タンパク質のリン酸化の検出
ここでは、市販の受容体型チロシンキナーゼの細胞内ドメイン(intracellular domain;ICD)を用いて、実施例4で作製したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質をリン酸化し、ウエスタンブロッティングによりリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を検出した。なお、受容体型チロシンキナーゼは、細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、細胞内ドメインから構成されており、細胞内ドメインにチロシンキナーゼの活性を示す部位が存在する。
1.反応用試料の調製方法
緩衝液1(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1% NP40、1mM DTT、0.2%プロテアーゼインヒビター(以下、PIとする)、10% グリセロール、200μM Na3VO4及び50mM NaFを含む)50μlと市販の受容体型チロシンキナーゼのICD 0.5pmolを混合し、これを反応用試料として以下の酵素反応に用いた。本実施例では、ICDとして、PDGF Recepter β Kinase(以下、PDGFR-βとする)、VEGF Recepter 1 Kinase(以下、VEGFR1とする)、VEGF Recepter 2 Kinase(VEGFR2)、EGF Recepter 1 Kinase(以下、HER1とする)、ErbB2 Kinase(以下、HER2とする)、ErbB4 Kinase(以下、HER4とする)、IGF-1Receptor Kinase(IGF1R)(全てCell Signaling Technology社)を用いた。なお、緩衝液1とPDGFR-βとを混合したものを反応用試料iとし、緩衝液1とVEGFR1とを混合したものを反応用試料ii、緩衝液1とVEGFR2とを混合したものを反応用試料iii、緩衝液1とHER1とを混合したものを反応用試料iv、緩衝液1とHER2とを混合したものを反応用試料v、緩衝液1とHER3とを混合したものを反応用試料vi、緩衝液1とIGF1Rとを混合したものを反応用試料viiとする。
2.酵素反応
反応用試料i 25μlと、実施例4において調製したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む基質溶液3(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、1% NP40、0.2% PI、10% グリセロール、200μM Na3VO4、50mM NaF、40μM ATP、及び5μg GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む)25μlとを混合し、25℃で60分間インキュベートした。この反応液に、実施例1で用いたSDSサンプルバッファー 25μlを加え、100℃で5分間ボイルして酵素反応を停止した。このようにして調製された溶液をSDS用試料i(+)とする。同様にして、反応用試料ii〜viiからSDS用試料ii(+)〜vii(+)を調製した。
また、反応用試料i 25μlと、ATPを含まない基質溶液4(20mM HEPES pH7.4、10mM MnCl2、1mM DTT、1% NP40、0.2% PI、10% グリセロール、200μM Na3VO4、50mM NaF、及び5μg GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む)25μlとを混合し、25℃で60分間インキュベートした。この反応液に、実施例1で用いたSDSサンプルバッファー 25μlを加え、100℃で5分間ボイルして酵素反応を停止した。このようにして調製された溶液をSDS用試料i(−)とする。同様にして、反応用試料ii〜viiからSDS用試料ii(−)〜vii(−)を調製した。基質溶液4は、ATPが含有されていない点を除いて、基質溶液3と同じ組成である。そして、SDS用試料i(−)〜vii(−)は、SDS用試料i(+)〜vii(+)のネガティブコントロールとして使用した。
3.ウエスタンブロッティングによるリン酸化された融合タンパク質の検出
実施例1と同様にして、ウエスタンブロッティングにより、SDS用試料i(+)〜vii(+)及びSDS用試料i(−)〜vii(−)に含まれるリン酸化されたGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を検出した。
4.結果
図4は、ウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。図中のiはチロシンキナーゼとしてPDGFR-βを、iiはVEGFR1を、iiiはVEGFR2を、ivはHER1を、vはHER2を、viはHER4を、viiはIGF1Rを用いた場合の結果を示す。また、i〜viiの各写真において、−はATPを含まない基質溶液4を用いて調製したSDS用試料から得られた結果である。+はATPを含む基質溶液3を用いて調製したSDS用試料から得られた結果である。P-ICDは、自己リン酸化したチロシンキナーゼが出現する位置を示し、P-GST-poly(Glu、Tyr)はリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置を示す。
全て(i〜vii)の+において、リン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置に単一のバンドが見られた。これより、実施例4で作製されたGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が、種々のチロシンキナーゼによりリン酸化されることがわかった。
なお、ii、iii、iv、vi及びviiの−において、リン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置にバンドが見られないのは、酵素反応において反応液にATPが含まれず、GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質がリン酸化されなかったためであると考えられる。一方、i及びvの−において、リン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置に非常に薄いバンドが見られたが、検出に用いた抗体が非特異的に結合したため、又は、測定で使用した製品に微量のATPが混在していたため、などが考えられる。
(実施例6)細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いた場合のウエスタンブロッティングによる融合タンパク質のリン酸化の検出
ここでは、乳癌由来の培養細胞の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いて、実施例4で作製したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質をリン酸化し、ウエスタンブロッティングによりリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を検出した。
1.反応用試料の調製方法
乳癌由来の培養細胞(MDA−MB231)を、225cm2のフラスコにおいて80%コンフルエント(約107個)となるよう培養した。この培養細胞と細胞処理液(20mM HEPES pH7.4、0.2% PI、10% グリセロール、200μM Na3VO4、及び50mM NaFを含む)1mlとを混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を破壊し、細胞溶液を調製した。得られた細胞溶液を遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿物と、細胞膜可溶化液(20mM HEPES pH7.4、1% NP40、0.2% PI、10% グリセロール、200μM Na3VO4、及び50mM NaFを含む)とを混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を可溶化し、遠心分離して上清を回収した。この上清を、反応用試料として以下の酵素反応に用いた。同様にして、乳癌由来の培養細胞であるMDA−MB468及びSKBr3から、それぞれ反応用試料を調製した。ここで、MDA−MB231から調製したものを反応用試料i、MDA−MB468から調製したものを反応用試料ii、SKBr3から調製したものを反応用試料iiiとする。なお、いずれも反応用試料も、含有されるタンパク質濃度が0.8mg/mlとなるように調製された。
2.酵素反応
上記の方法で得た反応用試料i 25μlと、基質溶液5(20mM HEPES pH7.4、20mM MnCl2、2mM DTT、1% NP40、0.2% PI、10% グリセロール、200μM Na3VO4、50mM NaF、100μM ATP、及び5μg GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む)25μlとを混合し、25℃で30分間インキュベートした。この反応液に、実施例1で使用したSDSサンプルバッファー25μlを加え、100℃で5分間ボイルして酵素反応を停止した。このようにして調製された溶液をSDS用試料iとする。同様にして、反応用試料ii及び反応用試料iiiからSDS用試料ii及びSDS用試料iiiを調製した。
3.ウエスタンブロッティングによるリン酸化された融合タンパク質の検出
実施例1と同様にして、ウエスタンブロッティングにより、SDS用試料(i〜iii)に含まれるリン酸化されたGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を検出した。
4.結果
図5は、ウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。図中のiはMDA−MB231の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを、iiはVEGFR1をMDA−MB468の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを、iiiはSKBr3の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いた場合の結果を示す。P-GST-poly(Glu、Tyr)はリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置を示す。
全て(i〜iii)において、リン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が出現する位置に単一のバンドが見られた。これより、GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が、細胞膜に存在するチロシンキナーゼによりリン酸化されることがわかった。また、実施例5で示されたように、GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質は種々のチロシンキナーゼによりリン酸化されることから、ここで検出されたバンドは、細胞膜に存在する種々のチロシンキナーゼによりリン酸化されたGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質であると考えられる。
図6は、ウエスタンブロッティングの蛍光写真で検出されたリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質のバンドの蛍光強度を、専用の解析ソフトを用いて数値化した結果を示すグラフである。図中のiはMDA−MB231の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを、iiはVEGFR1をMDA−MB468の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを、iiiはSKBr3の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いた場合の結果を示す。縦軸はバンドの蛍光強度を示す。
i〜iiiをそれぞれ比較すると、iとii及びiiiとの間で蛍光強度に大きな差異がみられた。これは、MDA−MB231とMDA−MB468及びSKBr3との間で、膜貫通型チロシンキナーゼの発現レベル又は/及び酵素活性レベルに大きな差があることを示している。MDA−MB231、MDA−MB468及びSKBr3は、いずれも乳癌由来の培養細胞である。以上のことから、比較的大きな蛍光強度を示したMDA−MB468及びSKBr3は、膜貫通型チロシンキナーゼの異常ががん化の原因の一つであると推定することが可能であると考えられる。一方、比較的小さな蛍光強度を示したMDA−MB231は、膜貫通型チロシンキナーゼの異常ががん化の原因となっていないと推定することが可能でありと考えられる。
(実施例7)細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いた場合のELISAによる融合タンパク質のリン酸化の検出
ここでは、乳癌由来の培養細胞の細胞膜から抽出した受容体型チロシンキナーゼを用いて、実施例4で作製したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質をリン酸化し、ELISAによりリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を検出した。
1.反応用試料の調製方法
乳癌由来の培養細胞(MDA−MB468)を、225cm2のフラスコにおいて80%コンフルエント(約107個)となるよう培養した。この培養細胞と実施例6で使用した細胞処理液 1mlとを混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を破壊し、細胞溶液を調製した。得られた細胞溶液を遠心分離し、上清を廃棄した。沈殿物と、実施例6で使用したと細胞膜可溶化液を混合し、ペッスルを用いて加圧することにより細胞膜を可溶化し、遠心分離して上清を回収した。この上清を細胞膜可溶化液で希釈し、タンパク質濃度が0.02g/ml、0.04g/ml及び0.08g/mlとなる反応用試料それぞれ調製した。このようにして調製した各反応用試料及びタンパク質を含有しない反応用試料として細胞膜可溶化液を以下の酵素反応に用いた。
2.ELISA用プレートへの融合タンパク質の結合
ELISA用のプレートとして、グルタチオンコートプレート(Reacti-Bind Clear Glutathione Coated Plates, 8-well Strip(PIERCE社))を用いた。まず、プレートの各ウェルをTBS−T(25mM Tris、150mM NaCl及び0.05% Tween−20を含む)で3回洗浄した。次に、各ウェルに、実施例4において調製したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む基質溶液6(5μg/mlのGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含むTBS)50μlを入れ、軽く震蕩しながら25℃で1時間インキュベートした。インキュベート後、各ウェルをTBS-Tで2回洗浄し、さらに20mM HEPES pH7.4(0.05% Tween20を含む)で1回洗浄した。このようにして、ELISA用プレートのウェルの表面にGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を結合させた。このELISA用プレートを以下の酵素反応に使用した。
3.酵素反応及びリン酸化された融合タンパク質の検出
各反応溶液 50μlをELISA用プレートの別々のウェルに入れ、25℃でおよそ30分間インキュベートした。インキュベーション後、各ウェルに反応停止液(1mM EDTAを含むTBS-T)100μlを添加し、さらにTBS-Tで3回洗浄した。次に、各ウェルをStartingBlock T20 (TBS) Blocking Buffer(PIERCE社)300μlで洗浄した後、StartingBlock T20 (TBS) Blocking BufferでHRP標識一次抗体(p-Tyr (PY20), sc-508 HRP(SANTA Cruz Biotechnology社))を1000倍希釈した一次抗体液を各ウェルに100μl入れ、25℃でおよそ1時間30分間軽く震蕩しながらインキュベートした。インキュベーション後、各ウェルをTBS-Tで5回洗浄し、TMB溶液(3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine (TMB) Liquid Substrate System for ELISA (Sigma社))150μlを各ウェルに入れ、室温で遮光しながら5〜30分の間で適度に呈色させたのち、VersaMax(Molecular Device社)で吸光度(650nm)を測定した。
4.結果
図7は、ELISAの結果を示すグラフである。図中の縦軸は吸光度(650nm)を、横軸は1ウェル(50μl)あたりのタンパク質量(μg)を示す。
図7では、タンパク質量が高くなるにつれ、すなわちチロシンキナーゼ量が高くなるにつれ、測定値も増大した。これより、GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質が、細胞膜に存在するチロシンキナーゼによりリン酸化されることがわかった。また、実施例5で示されたように、GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質は種々のチロシンキナーゼによりリン酸化されることから、ここで検出されたバンドは、細胞膜に存在する種々のチロシンキナーゼによりリン酸化されたGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質であると考えられる。
(実施例8)阻害剤による膜貫通型チロシンキナーゼのキナーゼ活性への影響
ここでは、実施例6と同様の方法で得た反応用試料(i〜iii)を用いて、種々の阻害剤による膜貫通型チロシンキナーゼのキナーゼ活性への影響を調べた。
1.反応用試料の調製方法
実施例6と同様の方法で得た反応用試料(i〜iii)を用いた。
2.酵素反応
反応用試料25μをそれぞれ4本のチューブに収容した。4本のうち、1本にはHER1及びHER2の阻害剤であるPD158780(カルビオケム社)100μMを含む反応液(20mM HEPES pH7.4、20mM MnCl2、2mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% glycerol、100μM Na3VO4、100μM ATP、及び5μg GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む)25μlを、別の1本にはHER1及びHER2の阻害剤であるW4557(カルビオケム社)100μMを含む反応液25μlを、別の1本にはHER1及びHER2の阻害剤であるAG1478(カルビオケム社)100μMを含む反応液25μlを、残りの1本には阻害剤を含まない反応液25μlを添加し、25℃で30分間インキュベートした。PD158780を含む反応液をPD、W4557を含む反応液をW、AG1478を含む反応液をAG、阻害剤を含まない反応液をCとする。
3.ウエスタンブロッティングによるリン酸化された融合タンパク質の検出
このPD、W、AG、Cを用いて、実施例6と同様の方法でウエスタンブロッティングを行った。結果は、ウエスタンブロッティングの蛍光写真において検出されたリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質のバンドの蛍光強度を、専用の解析ソフトを用いて数値化したグラフで示した。
図8は、反応用試料iを用いて調製されたPD、W、AG、Cを用いて得られた結果である。図9は、反応用試料iiを用いて調製されたPD、W、AG、Cを用いて得られた結果である。図10は、反応用試料iiiを用いて調製されたPD、W、AG、Cを用いて得られた結果である。縦軸は、各バンドの蛍光強度を、阻害剤を含まない反応液(C)を用いた場合のバンドの蛍光強度を100%としたときの値で示した。
4.結果
図9及び10において、Cに比べて、PD、W及びAGの蛍光強度が低下していた。これは、PD158780、W4557、AG1478の各阻害剤によって、MDA−MB468及びSKBr3の細胞膜に存在する一部の膜貫通型チロシンキナーゼの酵素活性が阻害されたためであると考えられる。一方、図8では、PD、W及びAGの蛍光強度の低下がみられなかった。これは、PD158780、W4557、AG1478の各阻害剤によって、MDA−MB231の細胞膜に存在する膜貫通型チロシンキナーゼの酵素活性が阻害されなかったためであると考えられる。以上の結果から、本実施例の測定法を用いて、膜貫通型キナーゼの酵素活性に対する阻害剤の阻害能を推定しうることがわかった。
(実施例9)リガンドによる膜貫通型チロシンキナーゼのキナーゼ活性への影響
ここでは、実施例6と同様の方法で得た反応用試料iiiを用いて、HER3及びHER4のリガンドによる膜貫通型チロシンキナーゼのキナーゼ活性への影響を調べた。
1.反応用試料の調製方法
実施例6と同様の方法で得た反応用試料iiiを用いた。
2.酵素反応
2本のチューブに反応用試料iiiをそれぞれ25μlずつ収容した。そのうちの1本にはHER3のリガンドであるHeregulin(シグマ社)100ngを含む反応液(20mM HEPES pH7.4、20mM MnCl2、2mM DTT、0.1% NP−40、0.2% PI、10% glycerol、100μM Na3VO4、100μM ATP、及び5μg GST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質を含む)25μlを、他の1本にはリガンドを含まない反応液25μlを添加し、25℃で30分間インキュベートした。Heregulinを含む反応液をH、Heregulinを含まない反応液をCとする。
3.ウエスタンブロッティングによるリン酸化された融合タンパク質の検出
このH及びCを用いて、実施例6と同様の方法でウエスタンブロッティングを行った。そして、蛍光写真において検出されたリン酸化したGST-poly(Glu、Tyr)融合タンパク質のバンドの蛍光強度を、専用の解析ソフトを用いて数値化した。
図11は、反応用試料iiiを用いて調製されたH及びCを用いて得られた結果である。縦軸は、バンドの蛍光強度を示す。
4.結果
図11において、Cに比べてHの蛍光強度が高くなっていた。これは、HeregulinによってSKBr3の細胞膜に存在する膜貫通型チロシンキナーゼが活性化されたためであると考えられる。HeregulinはHER3及びHER4のリガンドである。HeregulinがHER3の細胞外ドメインに結合すると、HER3とHER3以外のHER(HER1、HER2又はHER4)との二量体化が誘導され、それによりチロシンキナーゼ活性を示すことが知られている。また、HeregulinがHER4の細胞外ドメインに結合することによりHER4を活性させることが知られている。SKBr3では、HER2及びHER3の発現が強く見られるのに対し、HER1及びHER4の発現は極めて少量であることが知られている。以上のことから、図11における蛍光強度の増加は、HeregulinがHER3の細胞外ドメインに結合し、HER3がHER2と複合体を形成することにより生じていることが考えられる。
また、HER3のチロシンキナーゼ部位はリン酸化活性を有していないことが知られている。従って、HER3は、それ単独ではチロシンキナーゼの活性を示さず、HER1、HER2又はHER4との二量体を形成してはじめてチロシンキナーゼの活性を示すと考えられている。図11において、Heregulinによる膜貫通型チロシンキナーゼの活性化がみられたことから、HER2とHER3との二量体が形成されたと考えられる。これより、本実施例の測定法において、膜貫通型キナーゼが、活性化の際に形成しうる立体構造を形成する機能を保持した状態で回収されていると考えられる。
実施例1のウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。 実施例2のスロットブロットの結果を示す蛍光写真である。 実施例3のウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。 実施例5のウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。 実施例6のウエスタンブロッティングの結果を示す蛍光写真である。 実施例6のウエスタンブロッティングの結果を示すグラフである。 実施例7のELISAの結果を示すグラフである。 実施例8のウエスタンブロッティングの結果を示すグラフである。 実施例8のウエスタンブロッティングの結果を示すグラフである。 実施例8のウエスタンブロッティングの結果を示すグラフである。 実施例9のウエスタンブロッティングの結果を示すグラフである。

Claims (19)

  1. 生体から採取された細胞の細胞膜に存在する膜貫通型のキナーゼの活性を測定する方法であって、
    前記細胞から細胞質を分離して膜貫通型キナーゼを含む試料を調製する工程と、
    前記試料中の膜貫通型キナーゼとこれに対応する基質とを接触させ、前記膜貫通型キナーゼの活性により基質をリン酸化させる工程と、
    標識物質を前記リン酸化した基質(リン酸化基質)に結合させる工程と、
    前記リン酸化基質に結合した標識物質の検出結果に基づいて前記膜貫通型キナーゼの活性を測定する工程と、を含む測定方法。
  2. 前記調製工程において、
    前記細胞を緩衝液中で破砕し、
    破砕された細胞を含む前記緩衝液と、界面活性剤とを混合し、
    得られた混合液の上清を採取することにより、膜貫通型キナーゼを含む試料を調製する、請求項1に記載の測定方法。
  3. 前記緩衝液のpHが4.0〜9.0である請求項2に記載の測定方法。
  4. 前記界面活性剤が、前記膜貫通型キナーゼと実質的に結合しない非イオン性界面活性剤である請求項2または3に記載の測定方法。
  5. 前記基質がアフィニティータグを有し、
    前記アフィニティータグを有する基質と、前記アフィニティータグと結合可能な結合物質を有する固相とを接触させて複合体を形成させる工程と、
    この複合体を回収する工程と、
    結合物質とアフィニティータグとの結合を解離させることにより、前記複合体から前記基質を回収する工程とをさらに含む請求項1〜4のいずれかに記載の測定方法。
  6. 前記標識物質が、前記リン酸化基質に結合することができる一次抗体と、前記第一抗体に結合することができる二次抗体と、を介して前記リン酸化基質に結合する請求項1〜5のいずれかに記載の測定方法。
  7. 前記膜貫通型キナーゼが膜貫通型チロシンキナーゼである請求項1〜6のいずれかに記載の測定方法。
  8. 前記膜貫通型チロシンキナーゼが、インシュリン様成長因子受容体(insulin-like growth factor receptor;IGFR)、血小板由来増殖因子受容体(platelet-derived growth factor receptor;PDGFR)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体(human epithelial growth factor receptor;HER)及び血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor;VEGFR)からなる群より選択される少なくとも1つである請求項7に記載の測定方法。
  9. 前記基質が、膜貫通型チロシンキナーゼに対応する基質である請求項7または8に記載の測定方法。
  10. 前記基質が、増殖因子受容体結合タンパク質2(Grb2)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ヒストンH2B(HH2B)、及びホスホリパーゼC ガンマからなる群より選択される少なくとも1つである請求項9に記載の測定方法。
  11. 前記基質が、複数種類の膜貫通型チロシンキナーゼによりリン酸化されうる基質である請求項9に記載の測定方法。
  12. 前記基質が、グルタミン酸残基及びチロシン残基を含むアミノ酸配列からなるペプチドを含む請求項11に記載の測定方法。
  13. 前記アミノ酸配列が、
    グルタミン酸残基及びチロシン残基からなり、グルタミン酸残基とチロシン残基の比率が4:1であるアミノ酸配列A、
    グルタミン酸残基及びチロシン残基からなり、グルタミン酸残基とチロシン残基の比率が1:1であるアミノ酸配列B、
    グルタミン酸残基、チロシン残基及びアラニン残基からなり、グルタミン酸残基とアラニン残基とチロシン残基の比率が6:1:3であるアミノ酸配列C、
    グルタミン酸残基、チロシン残基及びアラニン残基からなり、グルタミン酸残基とアラニン残基とチロシン残基の比率が1:1:1であるアミノ酸配列D、及び
    グルタミン酸残基、チロシン残基、アラニン残基及びリジン残基からなり、グルタミン酸残基とチロシン残基とアラニン残基とリジン残基の比率が2:1:6:5であるアミノ酸配列E、
    からなる群から選択される少なくとも一つである請求項12に記載の測定方法。
  14. 前記標識物質が、蛍光または酵素である請求項1〜13のいずれかに記載の測定方法。
  15. 細胞の細胞膜に存在する膜貫通型キナーゼの活性を、請求項1に記載の方法により測定して第1の測定結果を取得し、
    膜貫通型キナーゼ阻害剤と接触させた前記細胞の前記膜貫通型キナーゼの活性を、請求項1に記載の方法により測定して第2の測定結果を取得し、
    第1及び第2測定結果に基づいて細胞に対する膜貫通型キナーゼ阻害剤の影響を推定することを特徴とする膜貫通型キナーゼの阻害剤の影響を推定する方法。
  16. 細胞の細胞膜に存在する膜貫通型キナーゼの活性を、請求項1に記載の方法により測定して第1の測定結果を取得し、
    膜貫通型キナーゼリガンドと接触させた前記細胞の前記膜貫通型キナーゼの活性を、請求項1に記載の方法により測定して第2の測定結果を取得し、
    第1及び第2測定結果に基づいて細胞に対する膜貫通型キナーゼリガンドの影響を推定することを特徴とする膜貫通型キナーゼリガンドの影響を推定する方法。
  17. 生体から採取された細胞の細胞膜に存在する膜貫通型のキナーゼの活性を測定する試薬キットであって、
    前記膜貫通型キナーゼに対応する基質と、
    前記膜貫通型キナーゼの活性により前記基質に導入されうるリン酸基を含むリン酸基供与体と、
    リン酸基を導入した前記基質に結合可能な標識物質と、を備える試薬キット。
  18. pHが4.0〜9.0であり、前記細胞を破砕するために添加される緩衝液と、
    細胞膜を可溶化しうる界面活性剤と、をさらに備える請求項17に記載の試薬キット。
  19. 前記リン酸基供与体が、ATPまたはADPである請求項17または18に記載の試薬キット。
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