JPWO2003004653A1 - 酵素改変方法および酸化還元酵素変異体 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、酸化還元酵素の補酵素依存性の改変法、特にカルボニル化合物を不斉的に還元して光学活性アルコールを生成する活性を有する酵素(以下、CRD酵素という)の補酵素依存性の改変法、補酵素依存性が、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPHと省略)から還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと省略)への変換である酵素改変法に関する。また、本発明は、該改変法により得られるNADH依存性を有するCRD酵素変異体、該酵素変異体をコードするDNA、このDNAを有するプラスミド、このプラスミドで形質転換された形質転換細胞、該酵素の製造方法、ならびに該酵素またはこの形質転換細胞を用いる光学活性アルコールの製造方法に関する。
背景技術
光学活性な(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、医薬品などの中間体に利用される化合物であり、光学的に純粋な対掌体をいかにして製造するかが、産業上重要な課題となっている。そのため、4−ハロアセト酢酸エステルなどのカルボニル化合物を不斉的に還元するCRD酵素を用いて、(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルなどの光学活性アルコールを製造するためプロセス開発が盛んに行われている。
4−ハロアセト酢酸エステルから(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルを生成するCRD酵素として、3α−ヒドロキシステロイド脱水素酵素(特開平1−277494)、グリセロール脱水素酵素(Tetrahedron Lett.29、2453−2454(1988))、シュードモナス・エスピーPED(Pseudomonas sp.PED)由来のアルコール脱水素酵素(J.Org.Chem.57、1526−1532(1992))、キャンディダ・マセドニエンシス(Candida macedoniensis)由来のケトパントテン酸エステル還元酵素(Arch.Biochem.Biophys.294、469−474(1992))、ゲオトリカム・キャンディダム(Geotrichum candidum)由来の4−クロロアセト酢酸エチルエステル還元酵素(Enzyme Microb.Technol.14、731−738(1992))、クライベロマイセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)由来のカルボニル還元酵素(特願平9−357969)、クラベロマイセス・アエスチュアリ(Kluyveromyces aestuarii)由来のカルボニル還元酵素(特開平2000−236883)などが報告されている。
これら酵素の中には、還元反応だけでなく、酸化(脱水素)反応も行うものもあり、生成物である(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの光学純度、蓄積濃度が低いなどの問題がある場合が多かった。本発明者の一部らが報告しているキャンディダ・マグノリアエ(Candida magnoliae)由来のCRD酵素(以下、CMCRD酵素という)によって、初めて実用的な(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの製造法が提供されるようになった(WO 98/35025)。このCMCRD酵素は、熱安定性、有機溶剤耐性に優れ、また酵素活性の高さも満足のいくものである。しかしながら、補酵素としてNADPHを利用する還元酵素であるため、より安価な(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステル製造法を確立するためには、高価でかつ化学的に不安定なNADPHの替わりに、安価で化学的に安定な他の補酵素、例えばNADHを利用できることが望ましいと考えられる。
一般的に、酸化還元酵素を用いた光学活性アルコール類の製造においては、酸化還元酵素が利用する補酵素の効率的な再生もまた、重要な課題である。例えば、β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPという)やβ−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADという)などのピリジンジヌクレオチド補酵素を再生する方法として、例えば、グルコース脱水素酵素(以下、GDHという)、ギ酸脱水素酵素(以下、FDHという)、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などを含む微生物、その処理物、ならびに部分精製もしくは精製酵素を用いる方法が知られている。ここで、例えばGDHにはNADPを再生できるものとNADを再生できるものとがあり、FDHはNADしか再生できないなど、補酵素の種類によってそれを再生する酵素の組み合わせにはある程度の制限がある。
すなわち、CMCRD酵素のような優れた物性(安定性、溶剤耐性、酸化耐性)、比活性を有する酵素の補酵素依存性を、上記補酵素を再生する酵素の補酵素依存性に最適化することが可能となれば、光学活性アルコール等の製造におけるプロセスの最適化が容易となり、より効率的な製造方法を提供し得ると考えられる。優れた物性、比活性を有し、かつ所望の基質特異性および補酵素依存性を有する酵素をスクリーニングすることは、膨大な労力を要するが、すでに知られている優れた酵素の補酵素依存性、基質特異性などの機能を自在に制御することができれば、迅速にかつ効率よく製造方法の改良、確立が可能となる。
これまでにも、酵素の基質特異性や補酵素依存性を改変しようとする試みが行われており、酸化還元酵素の補酵素依存性を変換した例として、バチルス・ステアロサーモフィラス由来の(Bacillus stearothermophilus)の乳酸脱水素酵素(Biochem.Biophys.Res.Commun.166、667−672(1990)、大腸菌由来のグルタチオン還元酵素(Nature、343、38−43(1990))、大腸菌由来のイソクエン酸脱水素酵素(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、92、11666−11670(1995))、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)由来のイソプロピルリンゴ酸脱水素酵素(Proc.Natl.Acad.Sci.USA、93、12171−12176(1996))、シュードモナス・メバロニイ(Pesudomonas mevalonii)由来のHMG−CoAレダクターゼ(Biochemistry、55,11945−11950(1996))、サーモアクチノマイセス・インターメダス(Thermoactinomyces intermedius)由来のロイシン脱水素酵素(Protein.Eng.10、687−690(1997))、シュードモナス・フルオレッセンス(Pesudomonas fluorescens)由来のp−ヒドロキシ安息香酸ヒドロキシラーゼ(J.Mol.Biol.292、87−96(1999))などの酵素に関するものについて報告されている。
しかしながら、これら報告例の多くはアミノ酸配列から得られる配列類似性の情報を中心とした試行錯誤的なアミノ酸変異によって行われている。一般に、酵素の有する機能および物理化学的性質は、立体構造と密接なつながりを持っているため、アミノ酸配列から得られる情報を中心とした試行錯誤的なアミノ酸変異方法では、反応性を厳密に制御するような改変を酵素に施す場合には、極めて非効率的な方法であると言わざるを得ない。
酵素の立体構造に基づいた合理的なアミノ酸変異の設計を唱っている酵素改変の報告例もあるが、所望の補酵素依存性を有する類縁酵素の補酵素結合部位と入れ替える(キメラ酵素を作成する手法)、結合に関与する残基をその立体構造から推定し、置換するアミノ酸残基種の選択においては類縁酵素とのアミノ酸配列の類似性を参考にして行う方法が採用されていることが多い。このような例では、置換するアミノ酸残基を選択する指標は、設計者の経験、主観に左右される。また、特定した各アミノ酸残基の寄与を客観的な指標に基づいて見積もることは行っておらず、真に合理的な酵素改変設計と言えるものではない。そのため、得られた変異体が所望の機能を有しない、あるいは不十分な場合は、試行錯誤の実験を繰り返す必要が生じ、極めて効率が悪いと考えられる。
このような技術的な問題から、従来の改変方法では補酵素依存性に変化が見られるものの、得られた改変酵素が、実用的に十分な酵素活性を有してなかったり、例えば、NADPとNADの両方を補酵素として利用できる変異体が得られ、補酵素依存性を厳密に制御することができないなどの課題が残されており、工業利用に供される実用的な改変酵素の取得は達成されていない。これら課題を解決するために有効な合理的な酵素改変設計法、より好ましくは客観的な自動設計手法の開発が望まれている。
発明の開示
本発明は、上述したような課題を解決するための、酸化還元酵素の補酵素依存性を変換する合理的な酵素改変方法の提供を目的とする。また本発明は、該改変方法によりNADHを補酵素として利用しうるCRD酵素変異体、該CRD酵素変異体をコードするDNAおよびそれを導入した組み換え体を提供し、それらを用いた光学活性(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、酸化還元酵素の補酵素依存性を変換する酵素改変方法を新に開発し、該酵素改変方法によりNADHを補酵素として利用しうるCRD酵素変異体の作製に成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、酸化還元酵素の補酵素依存性を変換させるための酵素改変方法であって、該酸化還元酵素のあらかじめ選択された部位の単数または複数の任意のアミノ酸残基を置換、挿入もしくは欠失またはそれらを組み合わせることにより、補酵素分子の結合エネルギーの大きさを制御することを特徴とする酵素改変方法に関する。
その好ましい実施態様としては、酸化還元酵素の活性部位を特定する工程と、該活性部位近傍において補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基を決定する工程と、該決定残基に対して補酵素分子の結合エネルギーの大きさを制御するための変異処理を行う工程を包含する上記酵素改変方法に関する。
さらに好ましい実施態様としては、前記活性部位を特定する工程において、分子モデリング法による立体構造予測を行い、補酵素分子を収容するために可能な体積を有するクレフト部を検索し、さらに、類縁酵素タンパク質とのアミノ酸配列比較を行い、該クレフト部を構成するアミノ酸残基の中から酵素と補酵素分子の結合に重要であると推定されるアミノ酸残基を抽出する処理をさらに包含する、上記酵素改変方法に関する。
別の好ましい実施態様としては、酸化還元酵素が、補酵素分子としてピリジンヌクレオチド補酵素を利用する酸化還元酵素である上記酵素改変方法に関する。
さらに別の好ましい実施態様としては、酸化還元酵素が、カルボニル還元酵素である上記酵素改変方法に関し、特に好ましくは、キャンディダ・マグノリエ(Candida magnoliae)IFO 0705由来のカルボニル還元酵素である上記酵素改変方法に関する。
また本発明は、野生型カルボニル還元酵素から、アミノ酸残基の置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組合せによって得られ、そして、次に示す理化学的性質を有するカルボニル還元酵素変異体:
(1)作用:
NADHを補酵素として、4−クロロアセト酢酸エチルに作用し、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを生成する、
(2)基質特異性:
・4−クロロアセト酢酸エチルに対して強い活性を示し、アセト酢酸エチルには実質的に活性を示さない、
・4−クロロアセト酢酸エステルに対して強い活性を示すが、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルに対して実質的に脱水素酵素活性を有しない、および
(3)補酵素依存性
補酵素として、NADHを与えた場合に強い活性を示すが、NADPHを与えた場合に実質的に活性を示さない。に関し、好ましくはさらに、以下の(4)から(7)の理化学的性質を有するカルボニル還元酵素変異体:
(4)至適pH:pH4.0−7.0、
(5)熱安定性:pH7.0で30分間処理したときに約45℃まで安定である、
(6)有機溶剤耐性:酢酸エチル、酢酸ブチル、またはジイソプロピルエーテルで、pH7.0、25℃、30分間処理したときに、少なくとも85%の酵素活性を保持している、および
(7)分子量:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動分析において、約32,000に関し、さらに好ましくは、上記野生型カルボニル還元酵素が、キャンディダ・マグノリエIFO 0705由来のカルボニル還元酵素であるカルボニル還元酵素変異体に関する。
さらに本発明は、上記酵素改変方法により得られた酸化還元酵素変異体、その酵素変異体をコードするDNA、そのDNAを有するプラスミド、そのプラスミドにより形質転換された形質転換細胞に関する。
さらに本発明は、上記形質転換細胞を培養・増殖させる工程を含むカルボニル還元酵素変異体の製造方法に関する。
さらに本発明は、上記酵素変異体と、該酵素変異体が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素および/又はその変異体と、カルボニル化合物とを反応させる工程、ならびに生成した光学活性アルコールを採取する工程を包含する光学活性アルコールの製造方法に関する。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明を詳細に説明する。
本明細書中において、「酸化還元酵素」とは、酸化還元反応を触媒する酵素であって、酸化還元反応の電子(水素)供与体として、例えばNADP、NADなどのピリジンジヌクレオチド補酵素、ユビキノンなどのキノン類、グルタチオンなどのジスルフィド化合物、シトクロム類、プテリジン化合物、酸素、過酸化水素などを利用する酵素をいう。本明細書中において、「カルボニル還元酵素」とは、カルボニル化合物を不斉的に還元して光学活性アルコールを生成する活性を有する酵素(CRD酵素)をいう。
本明細書において、アミノ酸、ペプチド、タンパク質は下記に示すIUPAC−IUB生化学命名委員会(CBN)で採用された略号を用いて表される。また、特に明示しない限りペプチド及びタンパク質のアミノ酸残基の配列は、左端から右端にかけてN末端からC末端となるように、またN末端が1番になるように表される。アミノ酸残基のつながりは“−”により表される。例えば、Ala−Gly−Leuのように示される。同じアミノ酸残基が連続する場合には、例えば(Ala)3と表され、これはAla−Ala−Alaと同義である。
A=Ala=アラニン、C=Cys=システイン、D=Asp=アスパラギン酸、E=Glu=グルタミン酸、F=Phe=フェニルアラニン、G=Gly=グリシン、H=His=ヒスチジン、I=Ile=イソロイシン、K=Lys=リシン、L=Leu=ロイシン、M=Met=メチオニン、N=Asn=アスパラギン、P=Pro=プロリン、Q=Gln=グルタミン、R=Arg=アルギニン、S=Ser=セリン、T=Thr=スレオニン、V=Val=バリン、W=Trp=トリプトファン、Y=Tyr=チロシン、B=Asx=AspまたはAsn、Z=Glx=GluまたはGln、X=Xaa=任意のアミノ酸。
本発明により、作製されまたは考慮されるCRD酵素変異体を記述するに際して、参照を容易にするため、(もとのアミノ酸;位置;置換したアミノ酸)の命名法を適用する。従って、位置64におけるチロシンのアスパラギン酸への置換はTyr64Asp、またはY64Dと示される。多重変異については、スラッシュ記号(“/”)により分けることで表記する。例えば、S41A/Y64Dとは、位置41のセリンをアラニンへ、かつ、位置64のチロシンをアスパラギン酸へ置換することを示す。
本明細書において、酵素の「変異体」とは、もとの酵素のアミノ酸配列のアミノ酸が少なくとも1つ以上置換、付加、もしくは欠失、または修飾されたアミノ酸配列を有し、もとの酵素の活性の少なくとも一部を保持する改変された酵素をいう。
本明細書中において、変異体の設計に利用されるアミノ酸変異としては、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた挙げられる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個のアミノ酸を欠失させることをいう。
以下、変異体を生成するためのタンパク質のアミノ酸の変異について説明する。アミノ酸の置換などを実施する方法は、化学合成、または遺伝子工学を利用する技術においてアミノ酸をコードするDNA配列のコドンを変化させることを含むが、これらに限定されない。
本明細書において、変異体分子の「設計方法」または「分子設計手法」とは、変異前のタンパク質またはポリペプチド分子(例えば、天然型分子)のアミノ酸配列および立体構造を解析することによって、各アミノ酸がどのような特性(例えば、触媒活性、他の分子との相互作用など)を担うかを予測し、所望の特性の改変(例えば、触媒活性の向上、タンパク質の安定性の向上など)をもたらすために適切なアミノ酸変異を算出することをいう。この設計方法は、好ましくはコンピューターを用いて行われる。このような設計方法で用いられるコンピュータープログラムの例としては、変異導入モデリングのためのプログラムとして、Swiss−PDBViewer(Swiss Institute of Bioinformatics(SIB)、ExPASy Molecular Biology Server(http://www.expasy.ch/ より入手可能))、タンパク質のエネルギー極小化、分子動力学計算を含む構造最適化のためのプログラムとして、AMBER(D.A.Pearlman etal.、AMBER4.1、University of California、San Francsico、1995)、PRESTO(Morikami K.et al.、Comput.Chem.、16、243−248(1992))、最適アミノ酸変異を算出するプログラムとして、Shrike(特願平11−368498:特開2001−184381)などが挙げられる。
本発明における酸化還元酵素の補酵素依存性を変換する酵素改変方法について、CMCRD酵素を例にして下記に詳しく説明する。なお、本発明は、特に下記に詳述するCMCRD酵素に限定されるものではなく、同様の方法を用いれば、CRD酵素をはじめとする種々の酸化還元酵素に適用できることは、当業者には明らかである。
ところで、CMCRD酵素の立体構造に関して、X線結晶構造解析をはじめとする構造解析等の実験は行われておらず、その立体構造は未知である。本発明の酵素改変方法は、酵素の立体構造を利用することにより、より効率的な酵素変異体の分子設計を達成している。したがって、まず野生型CMCRD酵素と補酵素分子の結合した複合体の立体構造を得る必要があるため、本発明では分子モデリングによるCMCRD酵素の立体構造予測、およびモデリングを行う。
CMCRD酵素と補酵素との複合体の立体構造は、以下の手順で構築しうる。
(ステップ1) CMCRD酵素のアミノ酸配列を元に、アミノ酸配列ホモロジーを有し、かつ立体構造がプロテインデータバンク(PDB)に登録されている酵素との多重アミノ酸配列アラインメントを、プログラムClustalX(Thompson、J.D.et al.Nucleic Acid Res.22、4673−80(1994))により作成する。分子モデリングに利用するCMCRD酵素とアミノ酸配列ホモロジーを有するタンパク質は、PDBに登録されたタンパク質のアミノ酸配列を対象に、プログラムFASTA(Perason W.R.et al.、Genomics、46、24−36(1997))やBLAST(Altschul、Stephen F.et al.、Nucleic Acids Res.25、3389−3402(1997))を用いたアミノ酸配列ホモロジーの検索を行うことで選択しうる。多重アミノ酸配列アラインメントに利用する立体構造既知のタンパク質としては、CMCRD酵素のアミノ酸配列と少なくともホモロジースコア(プログラムBLASTでのE値)が、1×10−5以下、より好ましくはE値が1×10−10以下のものが用い得る。例えば、PDBコードが、1AE1、2AE2、1FMC、1CYD、1HDC、1YBV、1BDB、1EDOであるタンパク質が用いられ得る。
(ステップ2) 次にこれら立体構造既知のタンパク質の3次元アラインメント(立体構造アラインメント)をプログラムMAPS(G.Lu、J.Appl.Cryst.(2000)、33:176−183)により行い、先にアミノ酸配列のみから得られた多重アラインメントを立体構造の類似性に基づいて修正し、分子モデリングに用いる最終多重配列アラインメントを得ることができる。配列アラインメント修正は、立体構造の類似性を元に、α−ヘリックスやβ−シートなどの2次構造に挿入や欠失が入らないように施すことが望ましい。
(ステップ3) 得られた配列アラインメントに基づいて、挿入、欠失部位ができるかぎり少なく立体構造の類似性が高いと推定されるタンパク質を分子モデリングの雛形タンパク質として選択しうる。例えば、PDBコードが1AE1、2AE2、1FMC、1CYD、1HDC、1YBV、1BDB、1EDO等の酵素、より好ましくは1YBV、1EDOおよび1FMCの立体構造が雛形として利用し得る。これら雛形タンパク質を3次元グラフィックスプログラムSwiss PDB−Viewerで表示させ、ステップ2で得られた配列アラインメントに従って、CMCRD酵素のアミノ酸配列にアミノ酸残基の置換を行いうる。
(ステップ4) 挿入、欠失部位については、PDBから最適な類似部分構造を検索し、その部分構造に置換することにより立体構造モデルを構築することができる。挿入、欠失部位の分子モデリングは、PDBに登録されている高分解能の立体構造、好ましくは分解能2.0Å以下のタンパク質の立体構造に対して、挿入、欠失部位の周辺を含む雛形タンパク質の主鎖の部分構造に、最も適合する部分構造を探索することで行うことができる。例えば、雛形タンパク質の主鎖の部分構造の原子座標に対して、最小自乗重ね合わせ操作を行った場合の、最小自乗偏差(RMSD)が2.0Å以下となるタンパク質の部分構造を用いることができる。
(ステップ5) CMCRD酵素に結合しうる補酵素NADPの構造については、CMCRD酵素の立体構造上でNADP分子を収容可能な体積を有する空間、すなわちクレフト部を同定、さらにクレフト部に存在するアミノ酸残基群とNADP分子の相互作用を同定することで、NADPの原子座標を決定しうる。NADPの原子座標を決定する方法として、例えば、上記立体構造類似のタンパク質の中から、NADPを結合しているもの、PDBコード、1AE1、2AE2、1CYD、1YBVおよび1EDOを選択し、好ましくは1YBVを選択し、このNADPの原子座標を代用する方法が挙げられる。また、補酵素の結合していないCMCRD酵素のみの立体構造モデルを構築した後、Autodock((Oxford Molecular)、Guex、N,およびPeitsch,M.C.(1997))等の分子ドッキングのプログラムを用いて、構造エネルギー等を指標にNADP分子を収容可能な体積を有する空間、すなわちクレフト部の同定、クレフト部に存在するアミノ酸残基群とNADP分子の相互作用を同時に同定し、NADP分子の原子座標を決定することができる。これら方法により、CMCDR酵素−NADP複合体の立体構造モデルを構築することができる。
(ステップ6) 最終的に構築した立体構造モデルは、エネルギー極小化計算および分子動力学計算により、構造最適化を行うことができる。構造最適化プログラムとしては、プログラムAMBER、PRESTO等を用いることができる。
前記立体構造予測、モデリングの手法を適用することによって、CMCRD酵素のアミノ酸配列と30%以上、より好ましくは50%以上、さらにより好ましくは70%以上の相同性を有するアミノ酸配列を含むCMCRD酵素の酵素改変方法に供する立体構造モデルを構築しうる。
次にCMCRD酵素の活性部位(触媒部位および結合部位)の特定、該活性部位近傍において、補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基の特定を、以下の方法によって行うことができる。
野生型CMCRD酵素−補酵素複合体の立体構造モデルおよび類縁酵素の多重配列アラインメントから、アミノ酸配列の保存性が高い補酵素(NADおよび/またはNADP)結合に関与する共通アミノ酸配列、NAD(NADP)結合モチーフを見出した。CMCRD酵素および類縁のCRD酵素の共通アミノ酸配列は、(GlyまたはAla)−(Xaa)3−(Gly、AlaまたはThr)−(IleまたはLeu)−(Gly、AlaまたはSer)−(Xaa)10−(GlyまたはAsn)であり得る。さらに、3次元グラフィックスを用いて、この共通アミノ酸配列を含む領域に複合体の立体構造上で近接する領域、言い換えれば、酵素と補酵素の結合に重要な領域を同定することができる。酵素と補酵素の結合に重要な領域に変異を導入することで、補酵素依存性を改変することができる。このようにして選択した部位として、CMCRD酵素のアミノ酸残基位置40〜69、位置87〜92および位置225〜228、より好ましくは位置40〜69が挙げられる。さらにより好ましくは、アミノ酸残基位置41〜43、位置47、位置63〜66、位置69が選択部位として挙げられる。また、距離を指標にして、補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基を選択することも可能である。例えば、補酵素結合部位から12Å以内、より好ましくは8Å以内の距離を指標にして、変異を導入する部位を選択することも可能である。
次に、同定した選択領域に存在するアミノ酸残基の中から、補酵素NADPもしくはNADPHの結合に対する寄与の大きいアミノ酸残基を、構造エネルギー計算による補酵素分子との非結合相互作用の評価、静電相互作用に注目した静電ポテンシャル計算等により同定する。例えば、以下に示す静電ポテンシャル計算によって、補酵素NADPもしくはNADPHの結合に対する選択領域の各アミノ酸残基の寄与を見積もることができる。
まず、CMCRD酵素−NADP複合体構造において、NADPの2’リン酸残基(NADの場合、このリン酸残基は存在しない)のリン原子の位置にマイナス1の負電荷のみ(その他のすべての原子の点電荷はゼロ)を置き、この電荷のつくる静電ポテンシャルを求める(静電ポテンシャル計算(中村ら、(1987)、J.Phys.Soc.Jpn.56,1609−1622)。次に、求めた静電ポテンシャルに対して、すべてのアミノ酸残基の原子に点電荷を与え、NADPの2’リン酸以外のすべての残基のリン酸残基に置かれたマイナス1の電荷に対する静電的な寄与を計算する。この計算により、各アミノ酸残基のNADPの結合安定化の大きさを求めることができる。例えば、Ser42、Tyr64、Asn65、Ser66は、NADPの2’リン酸残基に対して正の静電場を形成し、NADPとの結合の安定化に寄与することが推定しうる。
これらNADP結合の安定化に寄与していると推定された残基を、NAD結合に適したアミノ酸に置換すれば、CMCRD酵素の補酵素依存性を変換することが可能となる。アミノ酸置換の候補は、上記残基部位について、CMCRD酵素−NADP複合体およびCMCRD酵素−NAD複合体構造モデルに対して、例えば、プログラムShrike(特願平11−368498:特開2001−184381)を用いた計算機スクリーニングにより行いうる。計算変異実験では、NADPに対する結合エネルギーとNADに対する結合エネルギーの差、およびアミノ酸置換に伴う酵素の(熱)安定性の指標である変性自由エネルギーを指標にアミノ酸変異候補を算出しうる。また、立体構造既知のCRD酵素の補酵素結合部位の多重アミノ酸配列アラインメントもアミノ酸置換の参考に利用しうる。
本発明の酵素改変方法によれば、CRD酵素に組み合わせる補酵素再生に供する酵素の補酵素依存性もまた改変しうる。さらに、着目する分子を補酵素から基質に変えれば、同様の設計手法を適用することによって、CRD酵素の基質特異性の変換もまた可能となることは明らかである。
CMCRD酵素において、本方法により設計したアミノ酸置換残候補のうち、NADに対する結合が強くなると推定された各部位での変異候補は、
−位置41において、A、G、またはS;
−位置42において、A、G、S、T、RまたはK;
−位置43において、A、G、S、T、Q、RまたはK;
−位置64において、D;
−位置47において、A、S、T、Y、L、Q、E、RまたはK;
−位置63において、A、S、L、I、V、M、F、W、C、T、S、NまたはG;
−位置65において、L、I、V、M、F、W、A、C、SまたはT;
−位置66において、L、I、V、A、C、S、T、N、Q、RまたはK;
−位置69において、A、E、DまたはSである。
好ましくは、S41A、S42A、S42R、S43Q、S43G、S43R、W63I、W63L、W63V、W63F、W63M、Y64D、N65I、N65V、S66N、S66L、Y47R、A69Eが変異候補として挙げられ、さらに好ましくは、CRD酵素変異体として、上記単数の変異を組み合わせた変異体が設計されうる。
本発明における好ましいCMCRD酵素変異体として、天然のCMCRD酵素から、アミノ酸残基の置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組合せによって得られる次の変異体が挙げられる。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65V/S66L。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43G/W63I/Y64D/N65I/S66L。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43R/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43Q/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43R/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42R/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42R/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N。
・CMCRD酵素変異体S41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65I/S66N/A69E。
以上の方法によって得られる本発明のCRD酵素変異体は、以下の(1)〜(3)の理化学的性質を有する:
(1)作用:
NADHを補酵素として、4−クロロアセト酢酸エチルに作用し、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを生成する、
(2)基質特異性:
・4−クロロアセト酢酸エチルに対して強い活性を示し、アセト酢酸エチルには実質的に活性を示さない、
・4−クロロアセト酢酸エステルに対して強い活性を示すが、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルに対して実質的に脱水素酵素活性を有しない、および
(3)補酵素依存性:
補酵素としてNADHを与えた場合に強い活性を示すが、NADPHを与えた場合には実質的に活性を示さない。
一つの実施態様において、前記CRD酵素変異体は、さらに付加的に、次の理化学的性質(4)〜(7)を有する:
(4)至適pH:pH4.0−7.0、
(5)熱安定性:pH7.0で30分間処理したときに約45℃まで安定である(45℃で30分処理したときに75%以上の酵素活性を保持している)、
(6)有機溶剤耐性:酢酸エチル、酢酸ブチル、またはジイソプロピルエーテルで、pH7.0、25℃、30分間処理したときに、少なくとも85%の酵素活性を保持している、および
(7)分子量:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド−ポリアクリルアミド電気泳動分析において、約32,000。
本発明のCRD酵素変異体は、
a)CRD酵素についてコードする遺伝子に1以上の変異、好ましくは上記変異を導入し、
b)工程a)で得られた変異遺伝子をクローニングベクターにクローン化し、
c)工程b)で得られた組換えベクターで宿主株を形質転換し、
d)工程c)のように形質転換された宿主株を適切な培地で培養し、最後に、
e)こうして得られたCRD酵素変異体を分離、精製することを含む方法で該変異体を製造することができる。
遺伝子への変異の導入は、特に限定されないが部位特異的変異法などの公知のインビトロ変異技術の1つを利用して行うことができる。例えば上記CMCRD酵素変異体の場合、変異導入は以下のように行いうる。導入されるべきアミノ酸変異は、すべて、野生型CMCRD酵素遺伝子の長さ約170bpの制限酵素EcoO109I−EcoO109I部位間に存在する。従って、この部位に相当する変異導入されたDNA断片を合成し、野生型CMCRD酵素の遺伝子を含む組換えプラスミドpNTS1(W098/35025)のEcoO109I−EcoO109I部位を該DNA断片で置換することで変異を導入しうる。そのようにして得られた、配列番号1〜9のヌクレオチド配列を有するDNAを合成、pUC18のPstIサイトにサブクローニングしたプラスミドpUCSYN181〜pUCSYN189を用いて、大腸菌JM109またはHB101を形質転換し得る。目的のDNA断片は、得られた形質転換体からプラスミドを回収、EcoO109Iで消化後、分取用ポリアクリルアミド電気泳動で単離しうる。一方、プラスミドpNTS1をEcoO109Iで消化後、分取用アガロースゲル電気移動により、約3.2kbのDNA断片を回収しうる。両DNA断片をライゲーションすることにより、pNTS1のEcoO109I−EcoO109I部位に変異遺伝子を挿入した組換えプラスミドpNTS1M1、pNTS1M2、pNTS1M3、pNTS1M4、pNTS1M5、pNTS1M6、pNTS1M7、pNTS1M8およびpNTS1M9を構築しうる。導入されるアミノ酸変異は、組換えプラスミドに対して、PCRにより変異部位を含むDNA断片を調製し、塩基配列を確認することにより行い得る。CMCRD酵素遺伝子は、プラスミドpNTS1のNdeI−EcoRI部位に挿入されているので、NdeIサイト上流の塩基配列を有するプライマーが、塩基配列解析用のDNA断片の調製に好適に用いられ得る。
得られたCRD酵素遺伝子を有する組換えプラスミドは、常法により宿主細胞に導入され得る。宿主細胞としては、特に限定されず、細菌、酵母、糸状菌、植物細胞、動物細胞などが使用されるが、大腸菌の使用が特に好ましい。宿主へのプラスミドの導入は、当業者に周知の方法、例えば、コンピテント(competent)状態にされた宿主細胞と組換えプラスミドとを混合する工程を包含する方法、ヘルパー・プラスミドを用いて接合伝達により移入する工程を包含する方法などが挙げられる。例えば、大腸菌JM109またはHB101を、上記プラスミドで形質転換し、CRD酵素変異体を生産する形質転換体を得ることができる。
本発明において、4−クロロアセト酢酸エステルに対する還元活性は、次のようにして確認することができる。4−クロロアセト酢酸エステルに対する還元活性測定法:0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、NADHまたはNADPH−0.167mM、4−クロロアセト酢酸エチル−1mM及び酵素を合む反応液中30℃で反応させ、NADHまたはNADPHの減少にともなう340nmの吸光度の減少を測定する。1Uは、1分間に1μmolのNADHまたはNADPHの減少を触媒する酵素量とする。一方、補酵素としてNADHまたはNADPHを利用しえない場合には、この条件では340nmにおける吸光度の減少はわずかしか観察されない。また、タンパク質の定量は、バイオラッド社製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行う。
本発明の酵素改変方法を用いて、補酵素としてNADHを与えるときに高い酵素活性を示すが、NADPHを与えるときにはまったく酵素活性を示さない、すなわち、補酵素としてNADHを厳格に認識、利用することを特徴とする、CRD酵素変異体を得ることができる。
上記CRD酵素変異体は、4−クロロアセト酢酸エステルに対して高い還元活性を有する一方、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルのいずれの光学異性体に対しても実質的に脱水素酵素活性(すなわち酸化活性)を示さない。脱水素酵素活性を実質的に示さないことは、基質となる4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルにNAD存在下で接触させたときに、NADHの増減にともなう340nmの吸光度の単位時間当たりの変化率が4−クロロアセト酢酸エステルを100とする相対活性として5%以下、より望ましくは1%以下である場合に、脱水素酵素活性を実質的に示さないと言うことができる。
また上記CRD酵素変異体は、アセト酢酸エステルに対する還元酵素活性を実質的に示さない。これらの酵素活性の指標についても先に述べたものと同様に、4−クロロアセト酢酸エステルを100とする相対活性として5%以下、より望ましくは1%以下である場合に、脱水素酵素活性、あるいは還元酵素活性を実質的に示さないと言うことができる。
本発明において、CRD酵素変異体の酵素活性および補酵素依存性の解析は、例えば、該酵素をコードするDNAが導入された形質転換体を用いて、次のようにして行いうる。一例として、形質転換体が組換え大腸菌HB101(pNTS1M1)の場合は、50μg/mlのアンピシリンを含む適切な組成の培地、好ましくはLB培地および2×YT培地、より好ましくは2×YT培地で培養しうる。遠心分離などにより集菌後、適切なpHを示す緩衝液、例えば10〜100mMリン酸緩衝液pH6〜8、10〜100mMトリス緩衝液pH6〜8、より好ましくは100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁し、超音波破砕により無細胞抽出液を調製しうる。無細胞抽出液中のCMCRD酵素活性を、上記測定法により行い、同様の方法で調製した野生型CMCRD酵素遺伝子を有するプラスミドで形質転換した大腸菌HB101(pNTS1)の活性を測定、これらを比較する。例えば、上記CMCRD酵素変異体は、補酵素としてNADHを利用して4−クロロアセト酢酸エステルの還元反応を行い、補酵素としてNADPHを用いた場合、まったく還元活性を示さない。このことから、目的の補酵素依存性の変換(反転)に成功したことを確認しうる。
得られた培養物からの酵素の抽出および精製のためには、当業者に通常用いられ得る酵素の抽出精製法が用いられ得る。例えば、培養液から菌体を遠心分離後、菌体を適当な緩衝液中に懸濁し、該菌体をグラスビーズ、超音波等の物理的手法、酵素等の生化学的手法等を用いて破砕または溶解し、さらに遠心分離により該溶液中の固形物を除去することにより、酵素の粗酵素液を得ることができる。上記粗酵素液を当業者が通常用いる手法、例えば、硫酸アンモニウム沈殿、透析、クロマトグラフィーを単独でまたは組み合わせて用いてさらに精製し得る。クロマトグラフィーは、疎水クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、DEAEセファロース)、ゲル濾過等の各種クロマトグラフィーを単独で、または組み合わせて用いることにより、本発明のCRD酵素変異体を得ることができる。
本発明では、前記CRD酵素変異体を利用して、ケトンを還元してアルコールを製造することができる。例えば、本発明のCRD酵素変異体は、NADPHに比べて安価で安定なNADHを補酵素として利用しうることから、工業的な利用において有利である。酵素分子、その処理物、酵素分子を含む培養物、あるいは酵素を生成する微生物等の形質転換体が生きた状態で反応溶液と接触させることにより、目的とする酵素反応を行わせることができる。なお、酵素と反応溶液の接触形態はこれらの具体例に限定されるものではない。反応溶液は、基質や酵素反応に必要な補酵素であるNADHを酵素活性の発現に望ましい環境を与える適当な溶媒に溶解したものである。本発明におけるCRD酵素変異体を含む微生物の処理物には、具体的には界面活性剤やトルエンなどの有機溶媒処理によって細胞膜の透過性を変化させた微生物、あるいはガラスビーズ、超音波や酵素処理によって菌体を破砕した無細胞抽出液やそれを部分精製したものなどが含まれる。
本発明によるアルコールの製造方法における原料となるケトンとしては、隣接するジケトンを有する2、3−ブタンジオンや4−ハロアセト酢酸エステル誘導体が好適に用いられる。4−ハロアセト酢酸エステル誘導体のハロゲンとしては、臭素、塩素、ヨウ素があげられ、特に塩素が好適に用いられる。エステルとしては、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、オクチルエステル、ベンジルエステルなどの直鎖、分岐鎖、芳香族置換を含むアルコールのエステルがあげられるが、エチルエステルがもっとも好適に用いられる。4−ハロアセト酢酸エステル誘導体としては、2位に直鎖もしくは分岐鎖を含むアルキル基、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを含む誘導体などがあげられる。
光学活性アルコールの一種である光学活性4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、例えば以下のようにして取得される。基質としては、以下の一般式:
(式中、R1はハロゲンであり、R2は水素であり、そしてR3は置換または非置換のアルキル基またはアリール基を表す)で表される4−ハロアセト酢酸エステルが用いられ得る。R3がアルキル基である場合、R3は例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、およびイソプロピル基などである。R3がアリール基である場合、R3は例えば、フェニル基またはトリル基等である。これらのR3が置換されたアリール基である場合、R3は例えば、フルオロフェニル基、クロロフェニル基などである。
好適にはR1が塩素または臭素であり、R3が炭素数1〜4のアルキル基である。より好適には、前記基質が、4−クロロアセト酢酸メチル、4−クロロアセト酢酸エチル、4−ブロモアセト酢酸メチル、または4−ブロモアセト酢酸エチルである。また、前記基質として、4−ヨードアセト酢酸エチル、4−ヒドロキシアセト酢酸エチル、2−クロロ−3−オキソ酪酸エチル、2−メチル−3−オキソ酪酸エチル、4−アジドアセト酢酸エチルなども用いることができる。
この4−ハロアセト酢酸エステルは、例えば、特開昭61−146191に記載の方法により調製され得る。例えば4−ハロアセト酢酸エステルは、ジケテンを出発原料として、これにハロゲンを反応させ、4−ハロ−アセト酢酸ハライドとした後、これにアルコールを作用させる方法、あるいは、アセト酢酸エステルを出発原料として、アセト酢酸エステルの4位を直接ハロゲン化する方法などにより調製される。
反応は、水中もしくは水に溶解しにくい有機溶媒、たとえば、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、クロロホルム、n−ヘキサンなどの有機溶媒中、もしくは、水性媒体との2相系などの適当な溶媒中に、基質4−ハロアセト酢酸エステル、補酵素NADH、および該形質転換微生物の培養物またはその処理物等を添加し、pH調整下撹拌することにより行い得る。反応は温度10℃〜70℃、pH4〜10で行う。また、基質の仕込み濃度は0.1%〜90%(w/v)であるが、基質を連続的に添加し得る。反応はバッチ方式または連続方式で行い得る。本発明の反応は、固定化酵素、膜リアクターなどを利用して行うことも可能である。
ここで、微生物の処理物等とは、例えば、粗抽出液、培養菌体、凍結乾燥生物体、アセトン乾燥生物体、またはそれらの菌体の磨砕物等を意味する。更にそれらは、酵素自体あるいは菌体のまま公知の手段で固定化されて用いられ得る。固定化は、当業者に周知の方法(例えば、架橋法、物理的吸着法、包括法など)で行い得る。
これら還元反応に付随してNADHから生成するNADの、NADHへの再生は、微生物の持つNAD還元能(解糖系、メチロトローフのC1化合物資化経路など)を用いて行うことができる。これらNAD還元能は、反応系にグルコースやエタノール、ギ酸などを添加することにより増強することが可能である。また、NADからNADHを生成する能力を有する微生物やその処理物、酵素を反応系に添加することによっても行うことができる。たとえば、GDH、FDH、アルコール脱水素酵素、アミノ酸脱水素酵素、又は有機酸脱水素酵素(リンゴ酸脱水素酵素など)などの部分精製もしくは精製酵素、これら酵素を含む微生物、並びにその処理物を用いてNADHの再生を行うことができる。
一つの実施態様において、高価な補酵素の使用量を大幅に減少させるための代表的なNADH再生系としては、例えば、GDHおよびグルコースを用いる方法が挙げられる。反応条件は用いる酵素、微生物またはその処理物、基質濃度などによって異なるが、基質濃度約0.1〜90重量%、反応温度10〜50℃、pH4〜8、反応時間、1〜60時間である。
CRD酵素変異体遺伝子およびこの酵素が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素(例えば、GDHやFDH)の遺伝子を同一宿主微生物内に導入した形質転換微生物の培養物またはその処理物等を用いて同様の反応を行えば、別途に補酵素の再生に必要な酵素源を調製する必要がないため、より低コストで(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルが製造され得る。
反応で生じた4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、常法により精製され得る。例えば、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルは、微生物を用いた場合などには必要に応じ遠心分離、濾過などの処理を施して菌体等の懸濁物を除去し、次いで酢酸エチル、トルエン等の有機溶媒で抽出し、硫酸ナトリウム等の脱水剤で脱水し、有機溶媒を減圧下で除去し、そして減圧蒸留またはクロマトグラフィー等(例えば、シリカゲルカラムクロマトグラフィー)の処理を行うことにより、精製され得る。
4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルはガスクロマトグラフィーで定量され得る。例えば、4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルの定量は、PEG−20M Chromosorb WAWDMCS 10% 80/100mesh(ジーエルサイエンス社製)を充填したガラスカラム(ID 3mm×1m)を用い、150℃でクロマトグラフィーを行い、FIDにより検出することにより行い得る。
(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルの光学純度の測定は、光学分離カラムCHIRALCEL OB(ダイセル化学社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行い得る。
以上のように、本発明に従って、CMCRD酵素変異体の大量生産が可能である。さらに、この酵素変異体を利用することにより、(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルをはじめとする光学活性アルコールの優れた製造法が提供される。
以下の実施例にて、本発明をさらに詳細に説明するが、これらは本発明の例示の目的で提供されるものであり、なんら本発明を限定するものではない。
(実施例1) キャンディダ・マグノリエIFO 0705由来のCRD酵素の立体構造モデリング
キャンディダ・マグノリエIFO 0705由来のCRD酵素(CMCRD酵素)のアミノ酸配列(WO98/35025)を元に、プロテインデータバンク(PDB)に登録されている立体構造既知の還元酵素(PDBコード:1AE1、2AE2、1FMC、1CYD、1HDC、1YBV、1BDB))との多重アミノ酸配列アラインメントを、プログラムClustalX(Thompson、J,D.et al.Nucleic Acid Res.22、4673−80(1994))により作成した。次にこれら構造既知の還元酵素の3次元アラインメント(立体構造アラインメント)をプログラムMAPS(G.Lu、J.Appl.Cryst.(2000)、33:176−183)により行い、立体構造が類似している部分のアミノ酸配列との対応を調べた。先にアミノ酸配列のみから得られた多重アラインメントを、この立体構造情報に基づいて修正し、モデリングに用いる最終多重配列アラインメントを得た。修正は、立体構造情報を元に、α−ヘリックスやβ−シートなどの2次構造に挿入や欠失が入らないように行った。得られたアラインメントに基づいて、元になる立体構造にl1YBVと1FMCの2つの酵素の立体構造を選択し3次元グラフィックスプログラムSwiss PDB−Viewer(Swiss Institute of Bioinformatics(SIB)、ExPASy Molecular Biology Server(http://www.expasy.ch/ より入手可能))上で、アミノ酸残基の置換を行い、挿入、欠失部位については、PDBから最適な類似部分構造を検索し、その部分構造に置換することにより原子座標を構築した。補酵素NADPの原子座標については、1YBVのNADPの原子座標を代用することで構築した。最終的に構築した立体構造モデルは、エネルギー極小化計算および分子動力学計算により、構造最適化を行った。以下、分子モデリングの詳細な手順を示す。
(1)1YBVの位置14−215のアミノ酸配列(CMCRD酵素の位置18−227に対応)をCMCRD酵素の配列にSwiss PDB−Viwerでアミノ酸置換を行った。アミノ酸側鎖のコンフォメーションについては、周辺残基との接触のないものをSwiss PDB−Viwerが保有するロータマーライブラリーからグラフィックス上で選択した。
(2)プログラムMAPSにて、1FMCの立体構造を1YBVの立体構造に最小自乗重ね合わせ操作を行った。
(3)1FMCの位置197−249のアミノ酸配列(CMCRD酵素の位置228−279に対応)をCMCRD酵素のアミノ酸配列にSwiss PDB−Viwerでアミノ酸置換を行った。アミノ酸置換においては、近傍残基との立体障害を考慮して、SwissPDB−Viewerが内蔵しているアミノ酸側鎖のコンフォメーションデータベース(ロータマーライブラリー)から、最も接触エネルギーの少ない側鎖コンフォメーションを選択した。
(4)CMCRD酵素のC末端領域(位置280−283)は、1HDCのC末端領域(位置242−245)の主鎖構造を利用して、CMCRD酵素のアミノ酸配列にSwiss PDB−Viwerでアミノ酸置換を行った。
(5)次に、以下の部位での挿入、欠失部位のモデリングを行った。挿入、欠失は、PDBから最適な類似部分構造を検索し、その部分構造に置換することにより主鎖原子座標を構築した。
・CMCRD酵素の位置64−65間での1残基の欠失
・CMCRD酵素の位置119−138の2残基の欠失
・CMCRD酵素の位置154−171での7残基の挿入
・CMCRD酵素の位置181−190での1残基の挿入
・CMCRD酵素の位置207−215での1残基の欠失
・CMCRD酵素の位置233−234での1残基の欠失
(6)挿入、欠失を終えた1YBVからモデリングしたCMCRD酵素の前半部分、1FMCからのCMCRD酵素の後半部分、1HDCからのC末端領域の原子座標をマージすることで、初期立体構造モデルを構築した。
(1)再度すべての残基について、アミノ酸側鎖のコンフォメーションをチェックして、立体障害などを取り除いた。
(2)最終的には、プログラムAMBER4.1(D.A.Pearlman et al.、AMBER4.1、University of California、San Francsico、1995)を用いて、CMCRD酵素(位置14−283)とNADPH複合体を水中でのエネルギー極小化計算および分子動力学計算により、モデルの構造最適化を行い、これを分子設計に供した。図1に、CMCRD酵素−NADP複合体の立体構造を模式図で示した。
(実施例2) CRD酵素変異体の設計
実施例1で得られた野生型CMCRD酵素(NADPH依存)の立体構造モデルおよび類縁酵素の立体構造から、補酵素結合領域にNAD(NADP)結合モチーフ(Gly−(X)3−Gly−(Ile/Leu)−Gly−(X)10−Gly)を同定した。さらに、この結合ループ上に存在するアミノ酸残基の中から、NADPの結合に対する寄与の大きいアミノ酸残基を、静電ポテンシャル計算により、以下の手順で同定した。まず、CMCRD酵素−NADP複合体構造において、NADPの2’リン酸残基のリン原子の位置にマイナス1の負電荷のみ(その他のすべての原子の点電荷はゼロ)を置き、この電荷のつくる静電ポテンシャルを求めた。次に、求めた静電ポテンシャルに対して、すべてのアミノ酸残基の原子に点電荷を与え、NADPの2’リン酸以外のすべての残基のリン酸残基に置かれたマイナス1の電荷に対する静電的な寄与を計算した。マイナスの寄与の大きい順に並べ替え、上位、下位それぞれ5番目までを表1に示した。
Ser42、Tyr64、Asn65、Ser66は、NADPの2’リン酸残基に対して正の静電場をつくることから、NADPとの結合を安定化するのに寄与していることが推定された。これら残基を、NAD結合に適したアミノ酸に置換するれば、CMCRD酵素の補酵素依存性を変換することが可能となる。アミノ酸置換の候補は、上記部位について、CMCRD酵素−NADP複合体構造モデルに対して、プログラムShrike(特開2001−184381)を用いた計算機スクリーニングにより行った。計算変異実験では、NADPに対する結合エネルギーとNADに対する結合エネルギーの差、およびアミノ酸置換に伴う酵素の(熱)安定性の指標である変性自由エネルギーを指標にアミノ酸変異候補を算出した。また、表2に示す立体構造既知のカルボニル還元酵素の補酵素結合部位の多重アミノ酸配列アラインメントもアミノ酸置換の参考に利用した。
本方法により、設計したアミノ酸置換残候補のうち、NADに対する結合が強くなると推定された上位のものは、S41A、S42AまたはS42R、S43Q、S43GまたはS43GまたはS43R、W63I、W63L、W63V、W63FまたはW63M、Y64D、N65IまたはN65V、S66NまたはS66L、Y47R、A69Eなどである。これらアミノ酸置換残基候補のCα炭素原子位置は、CMCRD酵素−NADP複合体構造において、補酵素分子NADPの2’リン酸残基のリン原子から、それぞれS41では6.9Å、S42では5.1Å、S43では6.1Å、Y47では9.2Å、W63では8.3Å、Y64では5.1Å、N65では4.5Å、S66では4.3Å、A69では8.0Åの距離であり、いずれも補酵素分子から12Å以内の距離にあるアミノ酸残基である。最終的に、これら変異を組み合わせたS41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M1)、S41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65V/S66L変異体(S1M2)、S41A/S42A/S43G/W63I/Y64D/N65I/S66L変異体(S1M3)、S41A/S42A/S43R/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M4)、S41A/S42A/S43Q/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M5)、S41A/S42A/S43R/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M6)、S41A/S42R/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M7)、S41A/S42R/Y47R/W63I/Y64D/N65I/S66N変異体(S1M8)、S41A/S42A/S43Q/W63I/Y64D/N65I/S66N/A69E変異体(S1M9)を設計した。
IDは、プロテインデータバンク(PDB)の登録番号を表す。上段4種のカルボニル還元酵素はNAD依存性、CMCRD酵素を含む下段5種のカルボニル還元酵素は、NADP依存性の酵素である。
(実施例3) CRD酵素変異体の作製
配列番号1のヌクレオチド配列を有するDNAを合成、pUC18のPstIサイトにサブクローニングしたプラスミドpUCSYN181(宝酒造社製)0.2μgを用いて、大腸菌JM109(宝酒造社製)を形質転換した。得られた形質転換体からFlexiPrep(ファルマシア社製)を用いてプラスミドを回収、EcoO109Iで消化後、分取用ポリアクリルアミド電気泳動で167bpのDNA断片を単離した。一方、プラスミドpNTS1(WO098/35025)をEcoO109Iで消化後、分取用アガロースゲル電気移動により、約3.2kbのDNA断片を回収、BAP処理を行った。両DNA断片をTakara ligation Kit Ver.2(宝酒造社製)を用いてライゲーションすることにより、pNTS1のEcoO109I−EcoO109I部位に変異遺伝子を挿入した組換えプラスミドpNTS1M1を得た。このプラスミドを用いて、大腸菌HB101(宝酒造社製)を形質転換し、大腸菌HB101(pNTS1M1)を得た。同様に、配列番号2〜9のヌクレオチド配列を有する合成DNAを用いて、pNTS1のEcoO109I−EcoO109I部位変異遺伝子を挿入したプラスミドを調製し、各々から組換え大腸菌HB101(pNTS1M2)、HB101(pNTS1M3)、HB101(pNTS1M4)、HB101(pNTS1M5)、HB101(pNTS1M6)、HB101(pNTS1M7)、HB101(pNTS1M8)およびHB101(pNTS1M9)を得た。こうして得られた形質転換体のうち、大腸菌HB101(pNTS1M1)、HB101(pNTS1M2)およびHB101(pNTS1M3)は、それぞれ、受託番号FERM P−18388、FERM P−18389およびFERM P−18390として、2001年6月22日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に寄託され、FERM P−18388については、2002年5月27日付けでFERM BP−8059としてブタペスト条約に基づく寄託に移管されている。また、大腸菌HB101(pNTS1M4)およびHB101(pNTS1M6)は、それぞれ、受託番号FERM P−18647およびFERM P−18648として、2001年12月4日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に寄託され、FERM P−18647については、2002年5月27日付けでFERM BP−8060としてブタペスト条約に基づく寄託に移管されている。
導入したアミノ酸変異は、組換えプラスミドに対して、NdeIサイト上流の塩基配列を有するプライマーを用いてPCRにより、変異部位を含むDNA断片を調製し、ABI373A DNA Sequencer(アプライドバイオシステム社製)を用いて塩基配列を確認した。
(実施例4) 組換え大腸菌におけるCMCRD酵素変異体の発現
実施例3で得た組換え大腸菌HB101(pNTS1M1)、HB101(pNTS1M2)、HB101(pNTS1M3)、HB101(pNTS1M4)、HB101(pNTS1M5)、HB101(pNTS1M6)、HB101(pNTS1M7)、HB101(pNTS1M8)およびHB101(pNTS1M9)を、それぞれ、50μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地で培養し、集菌後、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁し、超音波破砕により無細胞抽出液を得た。この無細胞抽出液のCMCRD酵素活性を以下のように測定した。酵素活性の測定は、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に、基質4−クロロアセト酢酸エチル1mM、補酵素NADHまたはNADPH0.167mMおよび酵素を添加し、30℃で波長340nmの吸光度の減少を測定することにより行った。この反応条件において、1分間に1μmolのNADH(NADPH)をNAD+(NADP+)に酸化する酵素活性を1unitと定義した。この様に測定した無細胞抽出液中のCMCRD酵素活性を比活性(抽出液に含まれる蛋白質1mg当たりの酵素活性)として表し、同様の方法で調製した野生型CMCRD酵素遺伝子を有するプラスミドで形質転換した大腸菌HB101(pNTS1)の活性についても同様に比較した。それらの結果を表3に示す。得られたCMCRD酵素変異体はすべて、NADHを補酵素として4−クロロアセト酢酸エチルを還元する酵素活性を有していた。一方、NADPHを補酵素として場合には、上記測定条件において測定したものはすべて、全く還元活性を示さなかった。このことから、本発明の酵素改変方法によって、CMCRD酵素の補酵素依存性の変換が達成されたことが確認できた。
(実施例5) CRD酵素変異体S1M1の精製
実施例4において得た組換え大腸菌のうち、大腸菌HB101(pNTS1M1)を50μg/mlのアンピシリンを含む2Lの2×YT培地(バクトトリプトン16g、バクトイーストエキス10g、食塩5g/L)で培養し、遠心分離により菌体を調製した。得られた湿菌体を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.5)、100μMフオイパイン(FOI、小野薬品工業社製)に懸濁し、超音波破砕後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。この上清に硫安を40%飽和になるまで添加し、これを溶解させ、次いで生じた沈殿を遠心分離により除去した。この上清に、さらに硫安を70%飽和になるまで添加、溶解し、生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈殿を、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解し(45ml)、これを100μMFOIを含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に対して透析した。これを同一緩衝液で予め平衡化したDEAE−Sepharose(ファルマシア社製)カラム(3.2×22cm、175ml)に供し、酵素変異体を吸着させた後、同一緩衝液約600mlでカラムを洗浄した。同一緩衝液を用い、食塩(0から0.2Mまで)のリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。活性画分250mlを集め、これに硫安を70%飽和になるまで添加、溶解し、生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈殿を、4M食塩を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解し(30ml)、同一緩衝液で予め平衡化したPhenyl−Sepharose(ファルマシア社製)カラム(3×20cm、160ml)に供して、酵素変異体を吸着させた。同一緩衝液(約300ml)で洗浄した後、10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)を用い、食塩(4Mから0Mまで)およびエチレングリコール(0%から50%(w/v)まで)のリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。活性画分(約220ml)を集め、限外濾過膜YM−10(アミコン社製)にて、0.2M食塩を含む10mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)へ緩衝液の交換を行った後、9mlにまで濃縮し、精製酵素変異体標品(約280mg)を得た。ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)により、純度を解析した結果、単一バンドであった。また、タンパク質の定量は、バイオラッド社製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行った。精製酵素S1M1の比活性は、約3U/mgであった。
(実施例6) CMCRD酵素変異体の性質の測定
実施例5において得られたCMCRD酵素変異体(S1M1)の酵素学的性質について検討した。
酵素活性の測定は、実施例3に記載の測定条件を用いて行った。
(1)作用:NADHを補酵素として、4−クロロアセト酢酸エチルに作用し、光学純度99%e.e.以上の(S)−4−ヒドロキシ酪酸エチルを生成した。酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に依存した(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル脱水素酵素活性は、NAD+を0.33〜3mM、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを2〜20mM、pHを7.0および8.0に変化させて、波長340nmの吸光度の増加を測定することで行ったが、脱水素酵素活性は全く認められなかった。
(2)pHプロフィール:緩衝液としてリン酸カリウム緩衝液を用いてpH5.0〜8.0の範囲で、上記方法で酵素活性を測定した。その結果、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルに作用する至適pHは5.0付近であり、酸性側でより高い酵素活性を示した(図2)。
(4)作用至適温度:20℃〜60℃の温度で1分間の、4−クロロアセト酢酸エチルを基質とした場合の本願発明の酵素の活性を測定して、至適温度を求めた。その結果、至適温度は40℃〜55℃であった。
(5)熱安定性:本酵素をpH7.0で30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃および60℃の温度で30分間放置した後、4−クロロアセト酢酸エチルの還元活性を測定した。結果は、未処理の活性を100とした残存活性で表し、図3に示した。本発明によるカルボニル還元酵素は、40℃まで85%、45℃まで75%以上の残存活性を示した。
(6)分子量
酵素の分子量の測定はTSK−G3000SWカラムを用い、溶離液として0.1MNa2SO4、0.05%NaN3を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いた場合、約76,000であった。酵素のサブユニットの分子量は、2%(v/v)の2−メルカプトエタノール存在下、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、そして標準タンパクの相対移動度から算出することにより決定した。その結果、本酵素のサブユニットの分子量は約32,000であった。
(7)有機溶媒耐性:本酵素変異体が溶解しているpH7.0のリン酸カリウム緩衝液に等量の酢酸エチル、酢酸ブチルまたはジイソプロピルエーテルを添加し、25℃で30分間振とうした後、遠心分離を行い、水相中の酵素の残存活性を、4−クロロアセト酢酸エチルを基質として測定した。その結果、酢酸エチルを添加した場合では89%、酢酸ブチルを添加した場合では94%、ジイソプロピルエーテルの場合では100%の活性が残存していた(図4)。
(実施例7) CMCRD酵素変異体遺伝子を導入した組換え大腸菌による4−ハロアセト酢酸エステルからの(S)−4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルの合成
実施例3で得た組換え大腸菌HB101(pNTS1M1)を、500ml容坂口フラスコ(4本)中で滅菌した100mlの2×YT培地に接種し、37℃で44時間振とう培養し、遠心分離により菌体を調製した。得られた湿菌体を25mlの10mMリン酸緩衝液(pH6.5)に澱懸し超音波破砕し、酵素液を得た。酵素液10mlに、グルコース脱水素酵素(GDH、天野エンザイム社製)溶液10ml、グルコース7.1g、NAD+3.2mg、4−クロロアセト酢酸エチル5gを添加し、イオン交換水5ml、酢酸ブチル25mlを加えて総量50mlに調製した。5Mの水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5に調製しつつ30℃で撹拌しながら、5.5時間反応を行った。反応終了後、反応液を酢酸エチルで抽出し、脱溶剤した後抽出物の分析を行ったところ、転換率98%で99%e.e.以上の(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルが生成していた。
4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルの定量はガスクロマトグラフィーにより行った。PEG−20M Chromosorb WAW DMCS 10%80/100mesh(ジーエルサイエンス社製)を充填したガラスカラム(ID3mm×1m)を用い、150℃でクロマトグラフィーを行い,検出はFIDにより行った。(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルの光学純度の測定は光学分離カラムCHIRALCEL OB(0.46×25cm)(ダイセル化学会社製)を用いたHPLCにより行った。移動相としてヘキサン:イソプロパノール=9:1の混合溶媒を用い,移動相の流速は0.8ml/minでクロマトグラフィーを行った。検出は、215nmの吸光度を測定することにより行った。
(実施例8) CRD酵素変異体S1M4の精製
実施例4において酵素活性が高かった大腸菌HB101(pNTS1M4)を50μg/mlのアンピシリンを含む500mlの2×YT培地(バクトトリプトン16g、バクトイーストエキス10g、食塩5g/L)で培養し、遠心分離により菌体を調製した。得られた湿菌体から実施例5と同様の手順により精製酵素変異体標品を得た。精製酵素は、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)により、純度を解析した結果、単一バンドであった。また、タンパク質の定量は、バイオラッド社製タンパク質アッセイキットを用いた色素結合法により行った。精製酵素S1M4の比活性は、約10U/mgであった。
(実施例9) CMCRD酵素変異体の性質の測定(2)
実施例8において得られたCMCRD酵素変異体(S1M4)の酵素学的性質について検討した。
酵素活性の測定は、実施例3に記載の測定条件を用いて行った。
(1)作用:NADHを補酵素として、4−クロロアセト酢酸エチルに作用し、光学純度99%e.e.以上の(S)−4−ヒドロキシ酪酸エチルを生成した。酸化型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)に依存した(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチル脱水素酵素活性は、NAD+を0.33〜3mM、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを2〜20mM、pHを7.0および8.0に変化させて、波長340nmの吸光度の増加を測定することで行ったが、脱水素酵素活性は全く認められなかった。
(2)pHプロフィール:緩衝液としてリン酸カリウム緩衝液を用いてpH5.0〜8.0の範囲で、上記方法で酵素活性を測定した。その結果、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルに作用する至適pHは5.0付近であり、CMCRD酵素変異体(S1M1)と同様に酸性側でより高い酵素活性を示した(図5)。
(4)作用至適温度:20℃〜60℃の温度で1分間の、4−クロロアセト酢酸エチルを基質とした場合の本願発明の酵素の活性を測定して、至適温度を求めた。その結果、CMCRD酵素変異体(S1M1)と同様に至適温度は40℃〜55℃であった。
(5)熱安定性:本酵素をpH7.0で30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃および60℃の温度で30分間放置した後、4−クロロアセト酢酸エチルの還元活性を測定した。結果は、未処理の活性を100とした残存活性で表し、図6に示した。本発明によるカルボニル還元酵素は、CMCRD酵素変異体(S1M1)と同様に45℃まで75%以上の残存活性を示した。
(6)分子量:酵素の分子量の測定はTSK−G3000SWカラムを用い、溶離液として0.1MNa2SO4、0.05%NaN3を含む0.1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)を用いた場合、約76,000であった。酵素のサブユニットの分子量は、2%(v/v)の2−メルカプトエタノール存在下、10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、そして標準タンパクの相対移動度から算出することにより決定した。その結果、本酵素のサブユニットの分子量は約32,000であった。
(7)有機溶媒耐性:本酵素変異体が溶解しているpH7.0のリン酸カリウム緩衝液に等量の酢酸エチル、酢酸ブチルまたはジイソプロピルエーテルを添加し、25℃で30分間振とうした後、遠心分離を行い、水相中の酵素の残存活性を、4−クロロアセト酢酸エチルを基質として測定した。その結果、酢酸エチルを添加した場合では84%、酢酸ブチルを添加した場合では103%、ジイソプロピルエーテルの場合では106%の活性が残存しており、CMCRD酵素変異体(S1M1)と同等の有機溶媒耐性を示した(図7)。
産業上の利用の可能性
補酵素の結合エネルギーを制御することを特徴とする酸化還元酵素の酵素改変方法、工業生産に有利なNADH依存性のカルボニル還元酵素変異体ならびにそれらをコードするDNA、このDNAを有するプラスミド、このプラスミドで形質転換された形質転換細胞、ならびにこの酵素変異体および/またはこの形質転換細胞を用いる光学活性アルコールの製造方法が提供された。さらには、本酵素改変方法は、本発明のカルボニル還元酵素と類縁関係にある酵素群の補酵素依存性の変換に有意義に応用され得ることは明らかである。
なお、本件明細書には、本件出願の優先権基礎出願である日本国特許出願2001−200417号及び特許出願2002−006303号の明細書及び又は図面に記載された内容を引用により含めるものである。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、CMCRD酵素−NADP複合体の立体構造モデルの模式図。ただし、N末端領域である位置1−17の残基を除く。
図2は、CMCRD酵素変異体S1M1のpHプロフィール。
図3は、CMCRD酵素変異体S1M1の温度安定性。
図4は、CMCRD酵素変異体S1M1の有機溶剤耐性。
図5は、CMCRD酵素変異体S1M4のpHプロフィール。
図6は、CMCRD酵素変異体S1M4の温度安定性。
図7は、CMCRD酵素変異体S1M4の有機溶剤耐性。
Claims (45)
- 酸化還元酵素の補酵素依存性を変換させるための酵素改変方法であって、該酸化還元酵素のあらかじめ選択された部位の単数または複数の任意のアミノ酸残基を置換、挿入もしくは欠失またはそれらを組み合わせることにより、補酵素分子の結合エネルギーの大きさを制御することを特徴とする酵素改変方法。
- 酸化還元酵素の活性部位を特定する工程と、該活性部位近傍において補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基を決定する工程と、該決定残基に対して補酵素分子の結合エネルギーの大きさを制御するための変異処理を行う工程を包含する、請求項1に記載の酵素改変方法。
- 前記活性部位を特定する工程において、分子モデリング法による立体構造予測を行い、補酵素分子を収容するために可能な体積を有するクレフト部を検索し、さらに、類縁酵素タンパク質とのアミノ酸配列比較を行い、該クレフト部を構成するアミノ酸残基の中から酵素と補酵素分子の結合に重要であると推定されるアミノ酸残基を抽出する処理をさらに包含する、請求項2に記載の酵素改変方法。
- 前記補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基を決定する工程が、補酵素分子から12Å以内の距離に存在するアミノ酸残基を選択する処理である、請求項2に記載の酵素改変方法。
- 酸化還元酵素が、補酵素分子としてピリジンヌクレオチド補酵素を利用する酸化還元酵素である請求項1〜4に記載の酵素改変方法。
- 酸化還元酵素が、補酵素分子と結合するために必要な共通アミノ酸配列として、(GlyまたはAla)−(Xaa)3−(Gly、AlaまたはThr)−(IleまたはLeu)−(Gly、AlaまたはSer)−(Xaa)10−(GlyまたはAsn)を有する酸化還元酵素である請求項5に記載の酵素改変方法。
- 補酵素分子と相互作用するアミノ酸残基を決定する工程が、前記共通アミノ酸配列とそのN末端側およびC末端側各15残基とからなる領域、より好ましくは前記共通アミノ酸配列とC末端側15残基とからなる領域からアミノ酸残基を選択する処理をさらに包含する、請求項6に記載の酵素改変方法。
- 請求項1〜7に記載の酵素改変方法により得られた酸化還元酵素変異体。
- 酸化還元酵素が、キャンディダ・マグノリエ(Candida magnoliae)IFO 0705由来のカルボニル還元酵素である請求項1〜7に記載の酵素改変方法。
- 前記酵素のアミノ酸残基位置40〜69、位置87〜92および位置225〜228においてアミノ酸を置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組み合わせることを特徴とする請求項9に記載の酵素改変方法。
- 前記酵素のアミノ酸残基位置41〜43、位置47、位置63〜66、位置69においてアミノ酸を置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組み合わせることを特徴とする請求項9に記載の酵素改変方法。
- 請求項9〜11のいずれかに記載の酵素改変方法を利用することにより、補酵素依存性が変換されたカルボニル還元酵素変異体。
- 野生型カルボニル還元酵素から、アミノ酸残基の置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組合せによって得られ、そして、次に示す理化学的性質を有するカルボニル還元酵素変異体:
(1)作用:
還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを補酵素として、4−クロロアセト酢酸エチルに作用し、(S)−4−クロロ−3−ヒドロキシ酪酸エチルを生成する、
(2)基質特異性:
・4−クロロアセト酢酸エチルに対して強い活性を示し、アセト酢酸エチルには実質的に活性を示さない、・4−クロロアセト酢酸エステルに対して強い活性を示すが、4−ハロ−3−ヒドロキシ酪酸エステルに対して実質的に脱水素酵素活性を有しない、および
(3)補酵素依存性:
補酵素として、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドを与えた場合に強い活性を示すが、還元型β−ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸を与えた場合には実質的に活性を示さない。 - さらに、以下の(4)から(7)の理化学的性質を有する請求項13に記載のカルボニル還元酵素変異体:
(4)至適pH:pH4.0−7.0、
(5)熱安定性:pH7.0で30分間処理したときに45℃まで安定である、
(6)有機溶剤耐性:酢酸エチル、酢酸ブチル、またはジイソプロピルエーテルで、pH7.0、25℃、30分間処理したときに、少なくとも85%の酵素活性を保持している、および
(7)分子量:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミド電気泳動分析において、約32,000。 - 前記野生型カルボニル還元酵素が、キャンディダ・マグノリエIFO 0705由来のカルボニル還元酵素である請求項13〜14に記載のカルボニル還元酵素変異体。
- 前記変異体が、野生型カルボニル還元酵素から、アミノ酸残基の置換、挿入もしくは欠失またはそれらの組合せによって得られ、そして、位置41において、アラニン残基(A)、グリシン残基(G)、またはセリン残基(S)を保持し;位置42において、アラニン残基(A)、グリシン残基(G)、セリン残基(S)、スレオニン残基(T)、アルギニン残基(R)、またはリジン残基(K)を保持し;位置43において、アラニン残基(A)、グリシン残基(G)、セリン残基(S)、スレオニン残基(T)、グルタミン残基(Q)、アルギニン残基(R)、またはリジン残基(K)を保持し;位置64において、アスパラギン酸残基(D)を保持する、ことを特徴とする請求項15に記載の酵素変異体。
- さらに付加的に、位置47において、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、チロシン(Y)、ロイシン(L)、グルタミン(Q)、グルタミン酸(E)、アルギニン(R)、およびリジン(K)からなる群から選択されるアミノ酸残基を保持することを特徴とする請求項16に記載の酵素変異体。
- さらに付加的に、位置63において、アラニン(A)、セリン(S)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、システイン(C)、スレオニン(T)、セリン(S)、アスパラギン(N)、およびグリシン(G)からなる群から選択されるアミノ酸残基を保持することを特徴とする請求項16または17に記載の酵素変異体。
- さらに付加的に、位置65において、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、メチオニン(M)、フェニルアラニン(F)、トリプトファン(W)、アラニン(A)、システイン(C)、セリン(S)、およびスレオニン(T)からなる群から選択されるアミノ酸残基を保持することを特徴とする請求項16〜18に記載の酵素変異体。
- さらに付加的に、位置66において、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、バリン(V)、アラニン(A)、システイン(C)、セリン(S)、スレオニン(T)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)およびリジン(K)からなる群から選択されるアミノ酸残基を保持することを特徴とする請求項16〜19に記載の酵素変異体。
- さらに付加的に、位置69において、アラニン(A)、グルタミン酸(E)、アスパラギン酸(D)およびセリン(S)からなる群から選択されるアミノ酸残基を保持することを特徴とする請求項16〜20に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43Q、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43Q、W63I、Y64D、N65V、S66Lが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43G、W63I、Y64D、N65I、S66Lが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43R、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43Q、Y47R、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43R、Y47R、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42R、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42R、Y47R、W63I、Y64D、N65I、S66Nが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 次の変異:S41A、S42A、S43Q、W63I、Y64D、N65I、S66N、A69Eが導入されている請求項16に記載の酵素変異体。
- 請求項22〜30のいずれかに記載の酵素変異体をコードするDNA。
- 請求項31に記載のDNAを有するプラスミド。
- 前記プラスミドがpNTS1M1、pNTS1M2、pNTS1M3、pNTS1M4、pNTS1M5、pNTS1M6、pNTST17、pNTS1M8およびpNTS1M9である請求項32に記載のプラスミド。
- 請求項33に記載のプラスミドにより形質転換された形質転換細胞。
- 前記形質転換細胞が大腸菌である、請求項34に記載の形質転換細胞。
- 前記形質転換細胞が、E.coli HB101(pNTS1M1)、E.coli HB101(pNTS1M2)、E.coli HB101(pNTS1M3)、E.coli HB101(pNTS1M4)、E.coli HB101(pNTS1M5)、E.coli HB101(pNTS1M6)、E.coli HB101(pNTS1M7)、E.coli HB101(pNTS1M8)およびE.coli HB101(pNTS1M9)である請求項35に記載の形質転換細胞。
- 請求項34〜36の形質転換細胞を培養・増殖させる工程を含む請求項22〜30に記載のカルボニル還元酵素変異体の製造方法。
- 前記ハロゲン原子が塩素または臭素であり、前記R3が炭素数1〜4のアルキル基である、請求項38に記載の方法。
- 前記4−ハロアセト酢酸エステルが、4−クロロアセト酢酸メチル、4−クロロアセト酢酸エチル、4−ブロモアセト酢酸メチル、または4−ブロモアセト酢酸エチルである、請求項39に記載の方法。
- 前記微生物が、請求項34〜36のいずれかに記載の形質転換細胞である、請求項38〜40のいずれかに記載の方法。
- 光学活性アルコールの製造方法であって、請求項12〜30のいずれかに記載の酵素変異体と、該酵素変異体が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素および/又はその変異体と、カルボニル化合物とを反応させる工程、ならびに生成した光学活性アルコールを採取する工程を包含する、方法。
- 前記補酵素を再生する能力を有する酵素がグルコース脱水素酵素およびその変異体である、請求項42に記載の方法。
- 前記補酵素を再生する能力を有する酵素がギ酸脱水素酵素およびその変異体である、請求項42に記載の方法。
- 請求項12〜30のいずれかに記載の酵素変異体をコードするDNAおよび該酵素変異体が依存する補酵素を再生する能力を有する酵素をコードするDNAを有するプラスミドで形質転換された形質転換細胞と、カルボニル化合物とを反応させる工程、ならびに生成した光学活性アルコールを採取する工程を包含する、方法。
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