JPWO2003004649A1 - 根と茎頂で外来遺伝子を発現するプロモーター - Google Patents
根と茎頂で外来遺伝子を発現するプロモーター Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2003004649A1 JPWO2003004649A1 JP2003521672A JP2003521672A JPWO2003004649A1 JP WO2003004649 A1 JPWO2003004649 A1 JP WO2003004649A1 JP 2003521672 A JP2003521672 A JP 2003521672A JP 2003521672 A JP2003521672 A JP 2003521672A JP WO2003004649 A1 JPWO2003004649 A1 JP WO2003004649A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- plant
- promoter
- seq
- root
- sequence
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/11—DNA or RNA fragments; Modified forms thereof; Non-coding nucleic acids having a biological activity
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07K—PEPTIDES
- C07K14/00—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
- C07K14/415—Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from plants
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8216—Methods for controlling, regulating or enhancing expression of transgenes in plant cells
- C12N15/8222—Developmentally regulated expression systems, tissue, organ specific, temporal or spatial regulation
- C12N15/8223—Vegetative tissue-specific promoters
- C12N15/8226—Stem-specific, e.g. including tubers, beets
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C12—BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
- C12N—MICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
- C12N15/00—Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
- C12N15/09—Recombinant DNA-technology
- C12N15/63—Introduction of foreign genetic material using vectors; Vectors; Use of hosts therefor; Regulation of expression
- C12N15/79—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts
- C12N15/82—Vectors or expression systems specially adapted for eukaryotic hosts for plant cells, e.g. plant artificial chromosomes (PACs)
- C12N15/8216—Methods for controlling, regulating or enhancing expression of transgenes in plant cells
- C12N15/8222—Developmentally regulated expression systems, tissue, organ specific, temporal or spatial regulation
- C12N15/8223—Vegetative tissue-specific promoters
- C12N15/8227—Root-specific
Landscapes
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Genetics & Genomics (AREA)
- Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
- Engineering & Computer Science (AREA)
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Biomedical Technology (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Wood Science & Technology (AREA)
- Biotechnology (AREA)
- General Engineering & Computer Science (AREA)
- Zoology (AREA)
- Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
- Molecular Biology (AREA)
- General Health & Medical Sciences (AREA)
- Biophysics (AREA)
- Biochemistry (AREA)
- Microbiology (AREA)
- Plant Pathology (AREA)
- Physics & Mathematics (AREA)
- Cell Biology (AREA)
- Botany (AREA)
- Gastroenterology & Hepatology (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
- Breeding Of Plants And Reproduction By Means Of Culturing (AREA)
- Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
Abstract
本発明によって根および茎頂の少なくとも1つの部位において特異的に発現を誘導するプロモーターが提供される。このプロモーターを用いて、線虫または土壌病原体に対する抵抗性物質を根で合成させたり、根の発達を促進する物資を根で合成させたり、あるいは遺伝子組換え植物の作成時に、再分化植物体の選抜マーカーの発現を幼植物の根に限定し成熟時の発現を抑制することなどが可能になる。また茎頂の発現能力を利用して、増殖の盛んな細胞の遺伝子発現を制御する技術の開発にも利用し得る。
Description
技 術 分 野
本発明は、植物に外来遺伝子を導入して根および/または茎頂で発現させるプロモーターに関する。さらに詳しくは、イネのカタラーゼ遺伝子B(以下、CatBという)のプロモーター領域の一部を用いて根および/または茎頂で外来遺伝子を発現させる方法に関する。
背 景 技 術
根は植物が倒れないように支える役目のほかに、水および養分の吸収という大きな役目を果たしている。根は分枝することにより表面積を広げて吸収できる面積を大きくしている。物質を吸収しやすいように有機酸を分泌して、リンまたは鉄などと結合させてリンまたは鉄を吸収する機能もある。根の先端が土の中を伸びるのを助けるように潤滑油のような物質を合成して分泌する機能もある。根には植物ホルモンを合成し貯蔵する役目もある。根には光合成で得たエネルギーを蓄えたり、あるいは若いときにリンを蓄えてその後転流させたりするなどの機能がある。動物のように動くことができない植物は、環境から多くのストレスを受けており、多くの対抗策を持っており、特に根も多くの対抗策を備えている。
これらの根の機能に関連して、イネでは、サイクロフィリン(cyclophyllin;Cyp)遺伝子(Buchholz et al.,Plant Mol.Biol.25:837−843(1994))、リピッドトランスファータンパク質(LTP)遺伝子(Vignols et al.,Gene 16:265−270(1994))、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL−ZB8遺伝子(Zhu et al.,Plant Mol.Biol.29:535−550(1995))、ヒストンH3遺伝子(Terada et al.,Plant Mol.Biol.27:17−26(1995))、塩基性キチナーゼ(RC24)遺伝子(Xu et al.,Plant Mol.Biol.30:387−401(1996))、カレオシン(caleosin)遺伝子(Naested et al.,Plant Mol.Biol.44:463−476(2000))などの遺伝子が根で発現することが既に知られている。
イネ以外では、アラビドプシス(Arabidopsis)の延長因子eEF1A遺伝子(Tremousaygue et al.,Plant J 20:553−561(1999)、ミロシナーゼ(myrosinase)遺伝子Pyk10(Nitz et al.,Plant Science 161:337−346(2001))、鉄トランスポーター(IRT2)遺伝子Vert et al.,Plant J 26:181−189(2001))など、タバコのグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)遺伝子(Klinedinst et al.,Plant Mol Biol 42:679−688(2000))、硝酸還元酵素(nitrate reductase)(Hansch et al.,J Exp Bot 52:1251−1258(2001))など、また亜麻(flax)のペクチンメチルエステラーゼ(Roger et al.,Plant Science 160:713−721(2001))などが既に根で発現する遺伝子として知られている。
茎頂とは栄養成長期にある茎の先端およびその近傍部を指す。高等植物では、新しく細胞をつくり出す分裂機能を持つ。茎頂で発現する遺伝子としては例えば以下の遺伝子が知られている。タバコ(Nicotiana tabacum)では、リピッドトランスファータンパク質(Itp1)遺伝子(Canevascini et al.,Plant Physiol.,112:513−524(1996))、ホメオボックス(NTH15)遺伝子(Tamaoki et al.,Plant Cell Physiol.,38:917−927(1997))、gibberellin 3beta−hydroxylase遺伝子(Itoh et al.,Plant J.,20:15−24(1999))、アラビドプシスではpyrroline−5−carboxylate reductase遺伝子(Hua et al.,Plant Physiol.,114:1215−1224(1997))、ERECTA遺伝子(Yokoyama et al.,Plant J.,15:301−310(1998))、ATML1遺伝子(Sessions et al.,Plant J.,20:259−263(1999))、FAD3遺伝子(Matsuda et al.,Planta,213:833−840(2001))である。これらの遺伝子の発現の組織特異性はそのプロモーターによって規定されていることが、これらの研究によって明らかになっている。
最近になって、バイオテクノロジーを利用した方法として、根で発現するプロモーターに根の発達、耐病性または耐ストレス性を助ける機能を持つ遺伝子をつなげて植物に導入する方法が有望視されている。
根で外来遺伝子を発現させるために植物ウイルスの遺伝子のプロモーターを利用する試みもある(例えばMacFarlane and Popovich,Virology 267:29−35(2000);Mazithulela et al.,Plant Science 155:21−29(2000))が、ウイルスは感染後に拡散するので、遺伝子発現部位を細胞レベルで限定するには、植物遺伝子由来のプロモーターの方が優れている。
根で発現する遺伝子のプロモーターはトウモロコシなどで数種類が知られている。組換えDNA技術による耐病性付与の例として、線虫抵抗性付与の例(米国特許6,284,948:Genes and methods for control of nematodes in plants)においては、線虫抵抗性の遺伝子を植物ユビキチン遺伝子のプロモーターで発現させているが、このユビキチンプロモーターは器官特異性が低く、恒常的に発現する。
根特異的プロモーターの例としては、米国特許第6,271,437号:Soybean gene promoters(大豆遺伝子プロモーター)があるが、これは大豆のシスト線虫抵抗性遺伝子のプロモーターを、根での外来遺伝子発現に用いるために使用する方法である。また、根特異的プロモーターの例としては、米国出願2001/0016954:Root specific promoters(根特異的プロモーター)がある。この例では、アラビドプシス由来のb1−チューブリン遺伝子のプロモーター、リボソームタンパク質RPL16A遺伝子のプロモーター、ARSK1遺伝子のプロモーター、およびエンドウ豆のメタロチオネイン様遺伝子のプロモーターが含まれている。これらのプロモーターも利用法として、線虫に対する抵抗性の付与が記載されている。
これらのプロモーターの活性は、一般的に実用に用いられるには低い、イネ等の穀類を含む単子葉植物では機能しない、あるいは器官特異性が低い等の問題点がある。
従って、穀類の各発生段階に機能するプロモーターを多数単離し、それぞれの特徴を明らかにした上で、異なる組織特異性および高い活性を持ったプロモーターカセットを作成すれば、イネ等の作物の品種改良に非常に有用である。
(発明が解決しようとする課題)
本発明の課題は、根および/または茎頂で高い活性を有する植物用プロモーターを提供することにある。より詳細には、本発明は、従来のプロモーターの活性が有する問題点(一般的に実用に用いられるには低い、イネ等の穀類を含む単子葉植物では機能しない、あるいは器官特異性が低い等)を克服し、実用的なプロモーターを提供することを課題とする。
発 明 の 要 旨
(課題を解決するための手段)
上記課題は、本発明は、イネのカタラーゼB(CatB)遺伝子のプロモーター領域の一部の塩基配列を用いることによって、外来遺伝子を根で発現させることができることを見いだして完成されたものである。
本発明は、以下を提供する。
1. 配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
2. 項目1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
3. 項目1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
4.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための組成物であって、該組成物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、組成物。
5. 項目4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
6. 項目4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
7.前記植物は、単子葉植物または双子葉植物である、項目4に記載の組成物。
8.前記植物は、単子葉植物である、項目4に記載の組成物。
9.前記植物は、イネ、アラビドプシス、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、トマト、キュウリ、ナス、ジャガイモ、レタス、ダイコンまたはニンジンである、項目4に記載の組成物。
10.前記所望の遺伝子は、抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子である、項目4に記載の組成物。
11.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、根端部を含む、項目4に記載の組成物。
12.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、単子葉植物の幼生植物の分裂組織領域を含む、項目4に記載の組成物。
13.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、茎頂部を含む、項目4に記載の組成物。
14.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための植物発現カセットであって、該カセットは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物発現カセット。
15.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるためのプラスミドであって、該プラスミドは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含し、ここで、該プロモーターは、該所望の遺伝子に作動可能に連結される、プラスミド。
16.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物細胞であって、該植物細胞は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物細胞。
17.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物組織であって、該植物組織は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物組織。
18.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、トランスジェニック植物であって、該トランスジェニック植物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、トランスジェニック植物。
19.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物種子であって、該植物種子は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物種子。
20.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、方法。
21.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法によって得られる遺伝子産物であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、
遺伝子産物。
22.根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現するように改変された植物を生産する方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターを含むプラスミドを提供する工程;
2)該プラスミドで植物細胞を形質転換する工程;および
3)該形質転換された植物細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
上記項目14〜22は、項目5〜13の特徴事項で特定され得る。
発 明 の 詳 細 な 説 明
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「le」、「la」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(配列の説明)
配列番号1は、CatBのプロモーター領域の核酸配列(1364bp)(cDNAの開始点を+1として−1066〜+298;図5を参照)を示す。
配列番号2は、CatB遺伝子の核酸配列(4985bp)を示す。
配列番号3は、BΔ3断片(866bp)を示す。
配列番号4は、B1断片(627bp)を示す。1〜6位は、CatBカタラーゼ遺伝子塩基配列中のAAAAAAをAAGCTTに変換し、HindIII切断部位を作成した。460位は、TをCに置換し、CatBカタラーゼ遺伝子の翻訳開始コドンを壊した。
配列番号5は、B2断片(524bp)を示す。1〜6位は、CatBカタラーゼ遺伝子塩基配列中のAAAAAAをAAGCTTに変換し、HindIII切断部位を作成した。357位は、TをCに置換して、CatBCatBカタラーゼ遺伝子の翻訳開始コドンを壊した。
配列番号6は、CatB cDNAの102−131に相当する配列である。
配列番号7は、CatB cDNAの484−455に相当する配列である。
配列番号8は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマー3D3−F1である。
配列番号9は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマー3D3−F2である。
配列番号10は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマーBD3−MRである。
配列番号11は、CatB遺伝子の−329〜+298のプロモーター領域を示す。
配列番号12は、CatB遺伝子の−329〜−227のプロモーター領域を示す。
(用語の定義)
本明細書において使用される「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める遺伝エレメントまたは因子をいう。本明細書において、「プロモーター領域」とは、ある構造遺伝子配列付近の領域であって、プロモーター活性を有する領域をいう。プロモーター領域は、遺伝子の転写が開始される際にRNAポリメラーゼが結合する通常遺伝子上流の塩基配列で特定される領域である。本明細書において、ある因子が「プロモーター活性」を有するとは、その因子がRNAポリメラーゼなどに作用し、転写が開始する活性をいう。
本明細書において用いられる「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。好ましい植物のほかの例としては、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、白菜、レタス、モモ、ジャガイモおよびリンゴが挙げられる。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
本明細書において使用される「根および茎頂の少なくとも1つの部位」は、根および茎頂からなる部位群の少なくとも1つの部位を指す。従って、「根および茎頂の少なくとも1つの部位」には、根の一部または茎頂の一部が包含される。「根および茎頂の少なくとも1つの部位」にはまた、分裂組織も含まれる。
本明細書において使用される「分裂組織(メリステム、meristem)」とは、分化細胞からなる植物の形成組織で,分化して他の分裂細胞または特殊な型の細胞をつくる能力をもつ部位をいう。分裂組織は主に、生長部分にみられる。分裂組織としては、生長点(growth point)、茎頂(シュート頂;shoot apex)、根端(root apex,root tip)、根端分裂組織(root apical meristem)、頂端分裂組織(apical meristem)などが挙げられる。
本明細書において使用される「根」(root)とは、地下部にあり,体支持と水吸収をする器官をいう。先端は根冠(root cap)といい、内部は表皮にかこまれて中心柱という。中心柱の中に導管と篩管が通る。根端の少し後方に表皮細胞の一部が突起した根毛がある。根毛およびその付近の細胞の表皮細胞で水分吸収が盛んであるが、根毛の寿命は数日から数週間で、根は常に伸長するので,その位置は常に前進する。本明細書では、根全体を根系(root system)ともいう。例えば、イネでは,種子根は1本の鞘葉節以上の節から不定根が各節あたり約5〜20本出る。節から出る根を冠根という。根は上位節で多く出る。上位節から1次、2次の分枝根が出る。根は、最長1m程度になる。根は分裂組織を含む。
本明細書において使用される「茎頂」とは、シュート頂とも呼ばれ、茎の頂端分裂組織とその周辺の部位をいう。茎頂には、茎および側生的に葉を形成する栄養期茎頂と花序または花を形成する生殖期茎頂とがある。茎頂は分裂組織を含む。茎頂は、栄養成長期にある茎の先端及びその近傍部を指す。高等植物では、新しく細胞をつくり出す分裂機能を持つ。
本明細書において使用される「カタラーゼ」とは、過酸化水素を分解する反応を触媒する酵素をいう(EC1.11.1.6)。カタラーゼはまた、H2O2,CH3OOH,C2H5OOHの存在で、C2H5OH、CH3OH、CH3COOH、HCOOH、HNO2などを酸化し得る。動物、植物、微生物を問わず好気的細胞にはすべて存在し、動物では肝臓、腎臓、赤血球に特に多い。ウシの肝臓のカタラーゼは分子量約23万で,酵素1分子に作用基として4個のプロトヘマチンが含まれている。植物では、本発明者らが単離したカタラーゼBなどがある。
本明細書において、核酸分子の「断片」とは、参照核酸分子の全長よりも短く、少なくともプローブまたはプライマーとしての使用に充分な長さを有するポリヌクレオチドをいう。ある核酸分子の断片を、それが由来した元の核酸分子に対する選択的プローブまたは選択的プライマーとして使用するためには、特異的にハイブリダイズし得る断片である必要がある。本明細書においてあるDNAが「特異的にハイブリダイズ」するとは、提供された核酸分子を互いに区別して検出または増幅し得ることをいう。選択的プローブには、代表的には、少なくとも10ヌクレオチド長であり、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは少なくとも30、40または50ヌクレオチド長であり得、50を超えるヌクレオチド長も使用され得る。選択的プローブは、選択的プライマーを用いたPCR増幅産物として入手され得る。1対のプライマーの少なくとも一方に、選択的プライマーをPCRに使用する場合、選択的プライマーは、代表的には少なくとも9ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、30または50ヌクレオチド長であり得る。
本明細書において、核酸分子の「ホモログ」とは、参照核酸分子のヌクレオチド配列と相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸分子をいう。ホモログは、代表的には、参照核酸分子と、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。本発明のプロモーターについていう場合、「ホモログ」とは、プロモーター配列と相同性を有する核酸配列を有する核酸分子であって、その発現特性(例えば、部位特異性、時期特異性、ストレス応答性など)が本発明のプロモーターと同一または類似する核酸分子をいう。
遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、またはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
本明細書では塩基配列の同一性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
従って、本発明のプロモーター配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子は、本発明のプロモーターと同一または類似の活性を有し得る。そのような活性は、ベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、またはGFPの遺伝子をレポーター遺伝子として使うアッセイ、生化学的あるいは細胞組織学的な検定により確認することができる。そのようなアッセイは、当該分野における周知慣用技術に属することから(Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);Jefferson,Plant Molec.Biol.Reporter 5:387(1987);Ow et al.,Science 234:856(1986);Sheen et al.,Plant J.8:777−784(1995))、当業者は何ら困難を伴わずに、本発明の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子が本発明のプロモーターと同一または類似のあるいは実質的に同等以上の活性を有することを確認することができる。本明細書では、上記アッセイにおいて、検出誤差範囲内で同じプロモーター活性を有することが判定されたときに実質的に同等以上のプロモーター活性を有するという。
本発明のプロモーターの長さは、通常10ヌクレオチド以上であるが、好ましくは、20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、60ヌクレオチド以上、70ヌクレオチド以上、80ヌクレオチド以上、90ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
本発明のプロモーターは、従来のプロモーター(例えば、ミニマムプロモーター(35Sプロモーター由来の約80塩基対からなるプロモーター(Hatton et al.,Plant J.,7:859−876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435−440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1−12(1999))など)につなげて利用することができる。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す、あるいは別の特異性を示すプロモーターであっても、本発明のプロモーターまたはその断片を付加することによって、根および/または茎頂に組織特異的に強く機能するプロモーターを作製することができる(Hatton et al.,Plant J.,7:859−876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435−440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1−12(1999))。
本発明のプロモーターは、単子葉植物だけでなく双子葉植物および他の生物の改変にも利用し得る。これは、両植物間で転写調節の基本的な機構が類似していることにより説明される。例えばトウモロコシのzein遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Schernthaner et al.,EMBO J.,7:1249−1255(1988))、イネのグルテリン遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Leisy et al.,Plant Mol.Biol.,14:41−50(1989))が報告されている。特に好ましい対象植物としては、イネのほか、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ソルガム、カンキツ類、白菜、レタス、タバコ、モモ、ジャガイモ、トマト、およびリンゴなどが挙げられる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。植物細胞に対する「組み換えベクター」としては、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等が例示される。
ベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、以下を用いた形質転換などが挙げられる:アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。
本発明のプロモーターによる発現の「検出または定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンプロット法、ドットプロット法またはPCR法等が例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等が例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法等が例示される。
「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、本発明のタンパク質またはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等の免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンプロット法、ドットプロット法、PCR法等の分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。発現量の絶対量または相対量を観察することにより、あるプロモーターが特異的に作用しているかどうかを検出することができる。
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。
本明細書において発現される「遺伝子」とは、当該分野における通常の意味で用いられ、遺伝形質を規定する因子をいう。本発明の方法において発現される、所望の遺伝子は特異的に発現させることが所望される遺伝子であればなんでもよいが、例としては、例えば、線虫または土壌病原体などに対する抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーなどが挙げられる。
本明細書において「再分化する」とは、個体の一部分から個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞および葉または根などの組織片から植物体が形成される。
形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法としては、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);_Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995)などが挙げられる。従って、当業者は、上記周知方法を目的とするトランスジェニック植物に応じて適宜使用して、再分化させることができる。
再分化した形質転換体が、所望の改変された特性を有することは、当該特性の種類に応じて適切なアッセイを行うことにより確認し得る。例えば、レポーター遺伝子としてGUS遺伝子とプロモーターとを融合し、植物体に導入して形質転換体を作出し、GUS活性の組織染色で検出することが可能である。ここでは、蛍光タンパク質であるGFPの遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として使うことも可能である。これらはいずれも各種プロモーターのアッセイに使われている。詳細は下記実施例に記載される。また、ストレス耐性として病原性細菌に対する耐性の付与が意図される場合、再分化した植物体にモデル菌、例えばタバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv.tabaci)を接種し、コントロールの植物体と比較して接種による変化の有無を観察することで、特性の変化を評価し得る。
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28−32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33−40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、本明細書では詳述しない。例えば、シロイヌナズナの栽培は土耕、ロックウール耕、水耕いずれでも行うことができる。白色蛍光灯(6000ルクス程度)の下、恒明条件で栽培すれば播種後4週間程度で最初の花が咲き、開花後16日程度で種子が完熟する。1さやで40〜50粒の種子が得られ、播種後2〜3ケ月で枯死するまでの間に10000粒程度の種子が得られる。種子の休眠期間は短く、完熟種子は1週間程度乾燥させれば吸水後2〜3日で発芽する。ただし、吸水・播種後2〜4日間4℃で低温処理を行うと発芽が斉一化される。
(発明を実施する最良の形態)
1つの局面において、本発明は、配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸配列に関する。この配列は、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。好ましくは、この核酸配列は、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み得る。
より好ましくは、本発明は、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。この核酸分子は、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。この核酸分子は、分裂組織を含む根での発現を特異的に促進させるプロモーター活性を有する。本発明者の知る限りこのようなプロモーター活性を付与する配列は特に、イネでもアラビドプシスでもこれまで見い出されていないことから、本発明は、当該分野において顕著な効果を奏することを達成したといえる。
上述の特定の配列の範囲は、本発明において1つの好ましい配列範囲を示すものであり、本発明はそれらに限定されないことを付言しておく。従って、本発明は、本明細書に記載される方法に従って、当業者が選択した他に適切な領域に特定することも可能である。そのような選択方法は本明細書の他の記載または当該分野において周知慣用技術を参酌することにより過度な実験を要することなく実施することができる。
別の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための組成物を提供する。この組成物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する。上述のように1)のプロモーターは、根および茎頂の少なくとも1つの部位で特異的な発現を促進させることから、このような組成物は根および茎頂の少なくとも1つの部位で特異的に発現する系を提供するという当該分野において顕著な有用性を提供する。
1つの実施形態において、上記プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。
別の実施形態において、上記プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。別の実施形態において、上記植物は、単子葉植物または双子葉植物であり得るが、生物は、単子葉植物または双子葉植物に限定されることはない。従って、本発明のプロモーターが同様な効果を奏する限り、生物は、動物などの植物以外の生物、または単子葉植物および双子葉植物以外の植物であり得る。好ましい実施形態において、上記植物は、単子葉植物であり得る。より好ましくは、上記植物は、イネ、アラビドプシス、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、トマト、キュウリ、ナス、ジャガイモ、レタス、ダイコンまたはニンジンであり得る。
別の好ましい実施形態において、本発明のプロモーターの長さは、20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、60ヌクレオチド以上、70ヌクレオチド以上、80ヌクレオチド以上、90ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
別の実施形態において、本発明のプロモーターは、他のプロモーターにつなげて提供され得る。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す、あるいは別の特異性を示すプロモーターであっても、本発明のプロモーターまたはその断片を付加することによって、根および茎頂の少なくとも1つの部位に組織特異的に強く機能するプロモーターを作製することができる
別の実施形態において、上記所望の遺伝子は、例えば、線虫または土壌病原体に対する抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子であり得る。
別の実施形態において、上記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、根端部を含み得る。別の実施形態において、上記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、茎頂部を含み得る。根および茎頂の少なくとも1つの部位は、単子葉植物(例えば、イネ)の幼生植物の分裂組織を含み得る。幼生植物のみでの発現を促進することによって、作物(例えば、イネ)では導入した遺伝子産物が発現または残留しない植物を作製することができる。
他の局面において、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための植物発現カセットを提供する。このカセットは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含し得る。植物発現カセットは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。そのような作製方法は、本明細書の実施例においても例示されている。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるためのプラスミドを提供する。このプラスミドは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。ここで、上記プロモーターは、上記所望の遺伝子に作動可能に連結される。このようなプラスミド(またはベクター)を作製する方法は当該分野において周知慣用であり、本明細書の実施例にも例示されている。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物細胞を提供する。この植物細胞は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。そのような植物細胞を作製する方法は当該分野で周知であり、例えば、本発明のプラスミドを用いた形質転換、トランスフェクション、形質導入などによって実施することができる。そのような方法は、本明細書においても上記に具体的に記載し、かつ、実施例においても例示されている。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物組織を提供する。この植物組織は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。植物組織は、例えば、本発明の植物細胞から再分化することにより作出することができる。あるいは、植物組織に直接本発明の組成物を注入することによって作製することも可能である。そのような方法は、当該分野において周知である。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、トランスジェニック植物を提供する。このトランスジェニック植物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。トランスジェニック植物は、例えば、本発明の植物細胞を再分化することによって作出することができる。そのような再分化方法は、当該分野において周知であり、例えば、タバコやアラビドプシス等の双子葉植物については、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);_Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);_Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);イネについては、Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Hiei et al.,Plant J.6:271−282(1994);Toki,Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997)など。)などが挙げられる。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物種子を提供する。この植物種子は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。このような植物種子は、上記トランスジェニック植物を稔性を保つようにして再分化することによって作出することができる。そのような再分化方法は、当該分野において周知であり、例えば、タバコやアラビドプシス等の双子葉植物については、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);イネについては、Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Hiei et al.,Plant J.6:271−282(1994);Toki,Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997)など。)などが挙げられる。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法を提供する。この方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を上記植物に提供する工程;
2)上記植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)上記植物を上記プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する。このような方法は、本発明のプロモーターさえ特定されれば、当業者に周知慣用の技術を用いて行うことができる。そのような発現方法は、本明細書において上述した。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法によって得られる遺伝子産物を提供する。ここで、上記方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を上記植物に提供する工程;
2)上記植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)上記植物を上記プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する。根および茎頂の少なくとも1つの部位は、新生の盛んな組織であることから、この方法によって所望の遺伝子が多量に得られる。
他の局面において、本発明は、根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現するように改変された植物を生産する方法を提供する。この方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターを含むプラスミドを提供する工程;
2)上記プラスミドで植物細胞を形質転換する工程;および
3)上記形質転換された植物細胞を培養する工程、
を包含する。プラスミドを提供する方法、形質転換する方法、および培養する方法は当該分野において周知であり、本明細書においてすでに説明した。
既に本発明者らは、イネ・カタラーゼCatB遺伝子を単離して構造解析した(DDBJ登録番号D64013)。さらに、その5’上流のプロモーター領域(cDNA開始点を+1として、−1066から+298:本文ではこのDNA断片をBΔ0と呼ぶ)をレポーター遺伝子(ベータグルクロニダーゼ(GUS))と融合し、イネの培養細胞系統(Oc細胞)から調製したプロトプラストにエレクトロポレーションで導入して一過性遺伝子発現によるGUS酵素活性を指標にしてプロモーター活性を測定したところ、植物の遺伝子導入によく使用されるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターの約20倍の活性を示すことを見いだした。これにより、本プロモーターが有用遺伝子の発現のためのプロモーターカセットの作出に利用できることを明らかにして発明を完成し、特許出願した(特許第2955644号「イネCatB遺伝子プロモーター」)。
さらに本発明者らは、ノーザンハイブリダイゼーション分析により、CatBはイネ幼植物の根で強く発現しているが、成熟個体の根では発現がしないこと、葉、茎、花では強い発現はないことを明らかにした(Iwamoto et al.Plant Science 151:39−46(2000))(表1)。
上記の結果をヒントに、本発明において、CatB遺伝子プロモーター領域(特許登録2955644)の中の器官特異性を制御する部分の同定を試みた。
具体的には、CatB遺伝子プロモーター領域BΔ0を5’側から欠損して作成した各種DNA断片にレポーター遺伝子(GUS)を融合してベクターに組み込み(図1、2)、イネおよびアラビドプシスに導入して形質転換し、再分化当代あるいは後代の植物の各組織をGUS組織染色して発現部位を調べた。
その結果、cDNA開始点(+1)の上流−329から+298までの短いプロモーターDNA断片(B1)でもイネの幼植物の根(図3、表2、3)、およびアラビドプシスの幼植物の根および茎頂(図4、表4)でのレポーター遺伝子の発現を可能にすることを明らかにした。
形質転換植物では個体間で発現の器官特異性の程度にばらつきがあるが、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したイネ再分化当代の約半数でレポーター遺伝子を根で強く発現していた。イネでも同様に茎頂において特異的に発現するものと考えられる。
イネ幼植物の根における発現の特異性はプロモーター領域を5‘側から欠損すると減少し、その順は高い方から、BΔ0(71%)=BΔ3(75%)>B1(48%)>B2(19%)である(表2)。プロモーター領域は長い方が発現特異性は強いが、B1でも再分化個体の集団からから望ましい個体を選抜すれば,特異的発現をしている植物体を得ることができるので、目的に応じてBΔ0、BΔ3あるいはB1の中から選ぶことができる。
−329から−227を欠損したプロモーター(B2)では、イネおよびアラビドプシスの根での発現は大きく減少するので(表2、4)、この−329から−227の領域は根での発現に必要である。この領域には、根での発現に関与する既知のシスエレメントは存在しないので、新規のシスエレメントがある可能性が高い。
この結果から先に特許出願したイネ・カタラーゼCatB遺伝子由来の1,364塩基のプロモーター領域のうち、約630塩基の長さまでの各配列を用いることによって、イネ等の単子葉およびアラビドプシスなどの双子葉において、幼植物の根および茎頂で外来遺伝子を発現させることを可能にする方法が開発された。
一般的にプロモーター塩基配列は保存度が低く、数百塩基のプロモーター塩基配列を用いてのスクリーニングで類似した活性を持つプロモーターを検出するのは容易ではない。プロモーター領域の中の、転写調節因子(タンパク質)が結合するサイト(シスエレメント)は保存性が高いことから、本発明の特定の配列を参酌し、シスエレメントデータベースを用いて電子計算機によるサーチを行うと、シスエレメント候補はたくさん出てくる。どれが実際に機能しているかの判断は、バイオインフォーマティクス技術により行うことができるものと考えられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
実 施 例
(実施例1:イネカタラーゼCatB遺伝子の単離)
イネカタラーゼCatB遺伝子の単離方法は、「イネCatB遺伝子プロモーター」(平成11年7月特許登録2955644)に記載されている。簡潔には以下のとおりである。
(ゲノミックライブラリーからのスクリーニング)
CatAcDNAの一部を、CatB遺伝子のクローニングに用いた。CatAcDNAのクローニングの過程で得られた不完全長cDNA(全長約1.8kbpのうち、5’非翻訳領域及び若干のコード領域の合計約450bpを欠損する3’末端側の1.35kbp)を含むラムダファージ(クローン#51)のインサート部分をPCRで増幅した。同ファージよりDNAを調製してこれをテンプレートとし、プライマーとしてλgtl1−Forward Primer及びλgtl1 Reverse Primer(東洋紡)を用いた。生成物をセントリコン−100(amicon)で精製し、濃度を25ng/10μlにして、マルチプライムラベル法(Amersham)のプローブとした。
米国クローンテック社(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)から購入したイネのゲノミックDNAライブラリー(RICE Genomic Library)を用いて、CatB遺伝子をスクリーニングした。ゲノミックライブラリーを構成するファージλEMBL−3を常法に従って、E.coli NM538株に感染させ、ファージプラークを形成させた。このファージプラークをナイロンメンブレンに移し、下記の標準的条件で上記プローブとハイブリダイズさせた。なお、プローブは、32Pで標識した。
ハイブリダイズ溶液:6x SSC−0.1% SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:65℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
次に、メンブレンを、以下の比較的緩い条件で洗浄した。洗浄条件:2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間。
洗浄後、常法に従って、ナイロンメンブレンをオートラジオグラフィーにかけ、プローブとハイブリダイズしたクローンを検出した。ハイブリダイズすることが確認されたファージからそれぞれDNAを調製した。
上記ファージのDNAをSal IとSca Iの制限酵素を組み合わせて消化し、その消化物をアガロースゲル電気泳動で分離した。分離したDNA断片をナイロンメンブレンに移して、上述のCatAcDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせた。ハイブリダイズの条件は上記と同じであり、メンブレン洗浄は以下の条件で行った。洗浄条件:2x SSC室温5−10分 2回;2x SSC−0.1% SDS 65℃、30分。
洗浄後、当該分野で周知の常法に従って、ナイロンメンブレンをオートラジオグラフィーにかけ、プローブとハイブリダイズしたDNA断片を検出した。
シグナルの強さとバンドのパターンがほぼ同一の、従って同じ構造を持つと推定される一群のクローンと、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンとがある。前者のシグナルの強さとバンドのパターンがほぼ一致するクローンはCatA遺伝子に対応すると考えられた。実際、No.74のクローンは、CatAcDNAに対応する遺伝子であった。他方、後者のバンドのパターンが一部しか一致しないクローンは、CatA遺伝子の欠損クローン、あるいはCatA以外の別のカタラーゼ遺伝子のクローンである可能性がある。そこで、CatAcDNAをプローブとして用いて、下記のような緩い条件と厳しい条件でのハイブリダイゼーションを行って、パターンを比較した。
緩いハイブリダイズ条件:50% フォルムアミドを添加した、6x SSC−0.1% SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:37℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
メンブレン洗浄条件は上記と同じであり、2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間であった。
ストリンジェントハイブリダイズの条件:50% フォルムアミドを添加した、6x SSC−0.1%SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:42℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
メンブレン洗浄条件は、2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間であった。
ストリンジェント条件でのハイブリダイズの結果、標準的ハイブリダイズのパターンと同じ数のバンドが検出された。他方、緩い条件のハイブリダイズでは、厳しい条件のハイブリのパターンよりも多数のバンドを示した。これらの結果から、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンは、CatA遺伝子の欠損クローンではなく、CatAに似てはいるが、塩基配列が異なる部分を持つDNA、すなわちCatA以外の別のカタラーゼ遺伝子である可能性が高いことが判った。
約20個の、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンを、カタラーゼアイソザイム遺伝子候補としてさらに解析した。この内のNo.7クローンは、詳細なサザン分析、部分塩基配列の解析、CatA塩基配列に基づくPCR分析などから、CatAとは異なるカタラーゼ遺伝子であると結論した。また、CatBcDNAとも異なる配列であることがわかり、CatCと命名された。CatCの塩基配列は、日本農芸化学会誌68、404(1994)に記載される。
CatAともNo.7クローン(CatC)とも異なるパターンを示すクローンがあり、その中からNo.6クローンをさらに詳細に解析した。No.6クローンのDNAについては、部分的に塩基配列も解析した。この配列は、CatB遺伝子のcDNA配列(Plant Physiol.(1994)105:1015−1016)と一致した。
これらの情報を基に、CatB遺伝子の5’非翻訳領域を得るために二つのDNAオリゴマーを合成した。
他方、イネカルスから、cDNAライブラリーを調製した。このcDNAライブラリーのDNAをテンプレートとし、上記二つの合成DNAをプライマーとして、標準的条件でPCRを行った。約400bpのDNA断片が増幅された。この400bp DNA断片をプローブとして用い、上記CatB遺伝子と思われるクローン群を再度スクリーニングし、ハイブリダイスする数個のクローンを得た。
この中の、上記No.6クローンは、PCR増幅した400bpの上流に、約1kbp以上の5’上流域を持ち、且つ全長が約5kbp以上であることがわかった。このクローンをクローンU6と命名した。クローンU6の制限酵素地図を作製した(示さず)。
クローンU6から、5’上流域を約1kbp含む断片(Sal I−Eco RI消化断片)とその下流の断片(Eco RI−Eco RI消化断片)を切り出し、シーケンス解析用のベクター(pUC18)に挿入し、5’側から及び3’側からの段階的欠損プラスミドを多数作成し、塩基配列決定を行った。そのうち、CatBの核酸配列(4985bp)は配列番号2に示される。
(実施例2:CatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121の構築)
CatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121の構築は、「イネCatB遺伝子プロモーター」(特許2955644号)に記載されるように行った。簡潔には以下のとおりである。
得られたCatB遺伝子は、4985bpであった。そして、配列番号2の1073番目から1216番目に第1エクソン、1333番目から1429番目に第2エクソン、2341番目から2618番目に第3エクソン、2970番目から3746番目に第4エクソン、3968番目から4057番目に第5エクソン、4252番目から4319番目に第6エクソン、4410番目から4503番目に第7エクソン、および4616番目から4881番目に第8エクソンが存在すること、および、それぞれのエクソンの間に、第1から第7イントロンが存在することがわかった。上記配列から、プロモーター領域は、1073番目より前の配列と推定された。この配列情報に基づいて、プロモーター領域を切り出すことができる。イネCatB遺伝子プロモーターを有するプラスミド、CatB−GUS−Δ0の作製は以下のとおりである。
クローンU6をSalIおよびEcoRIで切断し、2.3Kbpの断片を切り出した。この断片を、SalI−EcoRI切断したpUC18に連結した。得られた組換えプラスミドを、Eco47I(東洋紡(株)製)で消化し、約2kbpの断片を回収した。この断片をDNAポリメラーゼのKlenow断片で消化し、ついで、PstIで消化した。クローンU6の7番目から1370番目までの配列(配列番号2)を有する断片Aが得られた。この断片Aには、第1エクソンの上流側の配列、第1エクソン、第1イントロン、および、第2エクソンの一部が含まれていた。断片Aの5’末端側は、PstI部位であり、3’末端は平滑末端である。
植物細胞用発現ベクターpBI221(Clonetech)は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、β−グルクウロナーゼ(GUS)コーディング領域およびノパリンシンセターゼのターミネーター(NOS・T)を有している。このpBI221を、PstIおよびSmaIで消化し、PstI−SmaI大断片Bを回収する。この大断片Bは、pBI221から、CaMVの35Sプロモーター領域が削除されている断片である。この大断片Bと、上記クローンU6の7番目から1370番目までの配列を有する断片Aとを連結させ、CatB−GUS−Δ0を作製した。
(イネ細胞の形質転換とGUS遺伝子の発現)
300mlのフラスコに、以下の組成のAA培地を70ml入れ、イネOc細胞を、緩やかに攪拌(90rpm)しながら、28℃で、懸濁培養した。
AA培地の組成(Mol.Gen.Genet.161:67−76(1978))
1)無機塩 濃度(mg/l)
MnSO4・4−6H2O 10
H3BO3 3
ZnSO4・7H2O 2
Na2MoO4・2H2O 0.25
CuSO4・2H2O 0.025
CoCl2.6H2O 0.025
Kl 0.75
CaCl2・2H2O 150
MgSO4・7H2O 250
NaH2PO4・H2O 150
KCl 3,000
2)鉄分 Fe−EDTA 40
3)ビタミン・有機物
蔗糖 20,000
ニコチン酸1塩酸チアミン 10
塩酸ピリドキシン 1
myo−イノシトール 100
L−アルギニン 177
L−グリシン 7.5
L−グルタミン 900
L−アスパラギン酸 300
4)ホルモン酸
2,4−D 1
カイネチン 0.2
GA3 0.1
1週間毎に、10mlの培養物を70mlの新鮮な培地に移した。移してから5日目の細胞を用いて、プロトプラストを作製した。プロトプラストの作製は、Mol Gen.Genet 206:408−413(1987)に記載の方法に従った。継代後5日目のカルス細胞サスペンジョンを直径10cmプラスチックシャーレに移し、アスピレーターで培地を除いて酵素液(4% セルラーゼRS(ヤクルト)、1% マセロザイムR10(ヤクルト)、0.4M マンニトール、0.5% CaCl2.2H2O、0.5% Potassium Dextran Sulfate)20mlを加えた。パラフィルムをして28℃の暗所に静置した。約5時間後にナイロンメッシュで濾過して未消化物を取り除き、洗浄操作を繰り返した。
得られたプロトプラストをEP緩衝液(5mM MgCl2、70mM KCl、0.1% MES、0.4M マンニトール、蒸留水を加えてpH5.6とし、フィルターで滅菌する:Nature338:274−276(1989))に懸濁し、その一部(0.5ml)をとり、上記プラスミドDNA20μg/mlおよびキャリアDNAとしてのサケ精子DNA30μg/mlと混合した。次に、Gene−Pulser(Bio−Rad、CA)を用いて,電極間距離0.4cmのディスポーサブルキュベット中で、500μFのキャパシタンスおよび100Ωの抵抗で、300V/cmでエレクトロポレーションした。氷上で10分インキュベートした後、プロトプラストに1.5mlのR2P培養液を添加してMillicell(Millipore,CA)に入れ、これを5mlのR2P培地(Plant Cell Physiol.14:1113−1121(1973))を含む6cmプラスチックディシュに入れる。Millicellの外側にナースセルを添加し、28℃、暗条件で培養した。なお、ナースセルの有無は、CatA−GUS−Δ0、CatB−GUS−Δ0、およびCatC−GUS−Δ0の発現には影響を及ぼさなかった。
R2P培地の組成
(1)主要成分(mg/l)
KNO3 4000
(NH4)2SO4 335
MgSO4・7H2O 250
CaCl2・2H2O 150
NaH2PO4・H2O 273
(2)マイナー成分(mg/ml)
MnSO4・4H2O 1.6
ZnSO4・7H2O 2.2
CuSO4・5H2O 0.125
H3BO3 3.0
NaMoO4・2H2O 0.125
Na2EDTA 7.5
FeSO4・7H2O 5.5
(3)有機成分(mg/ml)
イノシトール 100
ニコチン酸 1.0
ピリドキシン塩酸 1.0
チアミン塩酸 10
蔗糖(g/l) 137
2,4−D(mg/l) 2.0
pH5.6
GUS活性用のプロトプラストの処理は、基本的には、ラボマニュアル:植物遺伝子の機能解析(岩淵雅樹・志村令郎編、丸善、1992)p.55の記述に従って行った。エレクトロポレーション処理後、4日間、28℃、暗所にて培養したプロトプラストを、1mlファルコン・ピペット(#7521)で1.5mlマイクロチューブにとり、室温で9,000rpm、3分間遠心し、ペレットを分析まで−80度の保存した。
ペレットに200μlの抽出バッファー(50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)、10mM Na2 EDTA、0.1% TritonX−100、0.1% Sodium Lauryl Sarcosine、10mM β−メルカプトエタノール)を加え、氷水中で5分、凍結したペレットを融解した。超音波処理装置(Branson Sonifier model 250)を用いて、Output control 2、Dutycycle 10%の条件で、1分間処理した。処理後、15,000rpm、20分間、4℃で遠心分離した。上清(プロトプラスト抽出液)をとり、GUS活性測定用のサンプルとした。サンプル中のタンパク質濃度はBradford法(AnalBiochem 72:248−254(1976))で決定した。
GUS活性は、上記のJeffersonらの方法に従った。内在性のGUS活性は、反応液に20%(V/V)のメタノールを加えることにより最少にした。実験結果は、少なくとも2回の実験の結果であり、それぞれの実験には、同一試料について3つのサンプル(トリプリケート)が含まれていた。
これらの結果、CatB遺伝子プロモーターは、コントロールであるCaMV、CatAおよびCatCのプロモーターに比べて、非常に高い活性を示していた(示さず)。
(実施例3:PCR法による開始コドンの塩基改変とCatBの5’上流DNA断片(B1断片、B2断片)の作成とプラスミド構築)
PCR法により開始コドンに点変異を導入させたイネ・カタラーゼ遺伝子CatBの5’上流DNA断片(B1断片、B2断片)を作成した。B1断片(−329〜+298、cDNA開始点を+1とする)はCatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121をテンプレートとし、プライマー3D3−F1(5’−GTG AAG CTT TCG ATC ACG ATG AGC GAG−3’(配列番号8)、DNA断片の5’末端付近にHindIII切断部位を導入するプライマー)およびBD3−MR(5’−GTA GGG ATC CGT GGC GTG ATT TG−3’(配列番号9)、CatBの開始コドンATGのTをCに置換するプライマー)、Pfu DNA polymerase(Promega)を用いて増幅させた。
B2断片(−226〜+298)は、プライマー3D3−F2(5’−GTT AAG CTT GTC TTA TCT CCT CGT GAT CC−3’(配列番号10)、DNA断片の5’末端付近にHindIII切断部位を導入するプライマー)とBD3−MRを用いて増幅させた。
増幅させたDNA断片は制限酵素HindIIIとBamHIで処理した後、DNA ligation kit Ver.2(宝酒造)を用いてHindIIIとBamHIで処理したベクターCatBΔ0−GUS/pBI221のGUS遺伝子の上流に組み込み、形質転換用の大腸菌competent high DH5alpha(東洋紡績)に導入した。大腸菌から精製したベクターは塩基配列を決定して確認した後、制限酵素HindIIIとEcoRIで処理してB1断片もしくはB2断片とGUS遺伝子、ノパリンシンターゼ遺伝子ターミネーター(nopaline synthase gene terminator)(NOS−ter)を含むDNA断片を切り出し、HindIIIとEcoRIで処理したバイナリーベクターpTN2(FukuokaらPlant Cell Reports 19:815−820(2000))に組み込んだ。
(実施例5:植物への遺伝子導入)
pTN2のイネ(品種;日本晴)への導入は、Hieiら(Plant J.6:271−282(1994))、Toki(Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997))の方法に従って、アグロバクテリウム(EHA105)を用いて行った。
pTN2のアラビドプシス(品種;Columbia)への導入は、「モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;減圧湿潤法による形質転換(荒木崇)pp.109−113(監修 島本功、岡田清孝)に記載の方法をもとに、一部改変した方法で行った。
(実施例6:植物のGUS組織染色法)
GUS活性の観察は、「植物の細胞を観る実験プロトコール:遺伝子発現から細胞内構造・機能まで」;細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ62−3;細胞レベルでGUS活性を観る方法(高橋美佐、森川弘道)pp.71−79(監修 福田裕穂、西村幹夫、中村研三)に記載の方法をもとに一部改変した方法で行った。
▲1▼X−Gluc溶液[100mM リン酸バッファー(pH7.0)、1mM X−Gluc,0.3mM フェリシアン化カリウム、0.3mM フェロシアン化カリウム、0.2% Triton−X100]を調製する。
▲2▼X−Gluc溶液500μLを24穴タイタープレートの各ウエルに分注する。
▲3▼イネおよびアラビドプシスの各組織あるいは切片をウエルに入れ、28℃、16時間処理する。
▲4▼X−Gluc溶液を除去し、70%エタノールを加えて脱色する。
▲5▼70%エタノールを除去し、組織・切片を50%グリセロール溶液に浸す。
▲6▼顕微鏡あるいは実体顕微鏡で観察する。
(結果)
形質転換植物では個体間で発現の器官特異性の程度にばらつきがあるが、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したイネ再分化当代の約半数でレポーター遺伝子が根で強く発現していた。一方形質転換アラビドプシスでは、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したアラビドプシスT2世代の多くでレポーター遺伝子が根と茎頂で強く発現していた。。
産 業 上 の 利 用 可 能 性
このプロモーターを利用して、線虫または土壌病原体に対する抵抗性物質を根で合成させたり、根の発達を促進する物資を根で合成させたり、あるいは遺伝子組換え植物の作成時に、再分化植物体の選抜マーカーの発現を幼植物の根に限定し成熟時の発現を抑制することなどが可能になる。また茎頂の発現能力を利用して、増殖の盛んな細胞の遺伝子発現を制御する技術の開発にも利用しうる。
本発明のCatB遺伝子プロモーター領域の一部の塩基配列を用いれば、外来遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位で発現させることができる。従ってこのプロモーターを用いて、根および茎頂の少なくとも1つの部位で合成されるタンパク質または細胞外に分泌される物質を利用した遺伝子操作による植物(例えば、イネ等)の品種改良のための根および茎頂の少なくとも1つの部位に特異的なプロモーターの開発に有用である。
例えば、このプロモーターを利用して、線虫または土壌病原体に対する抵抗性物質を根で合成させたり、根の発達を促進する物資を根で合成させたり、あるいは遺伝子組換え植物の作成時に、再分化植物体の選抜マーカーの発現を根に限定し成熟時の発現を抑制することなどが可能になる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、実験に用いた各種DNAの構築物(コンストラクト)である。
図2は、B1(=CatBD1−GUS/pTN2)およびB2(=CatBD2−GUS/pTN2)の作成方法である。
図3は、B1を導入したイネ(To、再分化当代)の幼植物のGUS染色写真である。
図4は、B1を導入したアラビドプシス(T2世代)の幼植物のGUS染色写真である((a)暗い背景;(b)明るい背景)。
図5は、CatBプロモーター領域を示す。
本発明は、植物に外来遺伝子を導入して根および/または茎頂で発現させるプロモーターに関する。さらに詳しくは、イネのカタラーゼ遺伝子B(以下、CatBという)のプロモーター領域の一部を用いて根および/または茎頂で外来遺伝子を発現させる方法に関する。
背 景 技 術
根は植物が倒れないように支える役目のほかに、水および養分の吸収という大きな役目を果たしている。根は分枝することにより表面積を広げて吸収できる面積を大きくしている。物質を吸収しやすいように有機酸を分泌して、リンまたは鉄などと結合させてリンまたは鉄を吸収する機能もある。根の先端が土の中を伸びるのを助けるように潤滑油のような物質を合成して分泌する機能もある。根には植物ホルモンを合成し貯蔵する役目もある。根には光合成で得たエネルギーを蓄えたり、あるいは若いときにリンを蓄えてその後転流させたりするなどの機能がある。動物のように動くことができない植物は、環境から多くのストレスを受けており、多くの対抗策を持っており、特に根も多くの対抗策を備えている。
これらの根の機能に関連して、イネでは、サイクロフィリン(cyclophyllin;Cyp)遺伝子(Buchholz et al.,Plant Mol.Biol.25:837−843(1994))、リピッドトランスファータンパク質(LTP)遺伝子(Vignols et al.,Gene 16:265−270(1994))、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL−ZB8遺伝子(Zhu et al.,Plant Mol.Biol.29:535−550(1995))、ヒストンH3遺伝子(Terada et al.,Plant Mol.Biol.27:17−26(1995))、塩基性キチナーゼ(RC24)遺伝子(Xu et al.,Plant Mol.Biol.30:387−401(1996))、カレオシン(caleosin)遺伝子(Naested et al.,Plant Mol.Biol.44:463−476(2000))などの遺伝子が根で発現することが既に知られている。
イネ以外では、アラビドプシス(Arabidopsis)の延長因子eEF1A遺伝子(Tremousaygue et al.,Plant J 20:553−561(1999)、ミロシナーゼ(myrosinase)遺伝子Pyk10(Nitz et al.,Plant Science 161:337−346(2001))、鉄トランスポーター(IRT2)遺伝子Vert et al.,Plant J 26:181−189(2001))など、タバコのグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)遺伝子(Klinedinst et al.,Plant Mol Biol 42:679−688(2000))、硝酸還元酵素(nitrate reductase)(Hansch et al.,J Exp Bot 52:1251−1258(2001))など、また亜麻(flax)のペクチンメチルエステラーゼ(Roger et al.,Plant Science 160:713−721(2001))などが既に根で発現する遺伝子として知られている。
茎頂とは栄養成長期にある茎の先端およびその近傍部を指す。高等植物では、新しく細胞をつくり出す分裂機能を持つ。茎頂で発現する遺伝子としては例えば以下の遺伝子が知られている。タバコ(Nicotiana tabacum)では、リピッドトランスファータンパク質(Itp1)遺伝子(Canevascini et al.,Plant Physiol.,112:513−524(1996))、ホメオボックス(NTH15)遺伝子(Tamaoki et al.,Plant Cell Physiol.,38:917−927(1997))、gibberellin 3beta−hydroxylase遺伝子(Itoh et al.,Plant J.,20:15−24(1999))、アラビドプシスではpyrroline−5−carboxylate reductase遺伝子(Hua et al.,Plant Physiol.,114:1215−1224(1997))、ERECTA遺伝子(Yokoyama et al.,Plant J.,15:301−310(1998))、ATML1遺伝子(Sessions et al.,Plant J.,20:259−263(1999))、FAD3遺伝子(Matsuda et al.,Planta,213:833−840(2001))である。これらの遺伝子の発現の組織特異性はそのプロモーターによって規定されていることが、これらの研究によって明らかになっている。
最近になって、バイオテクノロジーを利用した方法として、根で発現するプロモーターに根の発達、耐病性または耐ストレス性を助ける機能を持つ遺伝子をつなげて植物に導入する方法が有望視されている。
根で外来遺伝子を発現させるために植物ウイルスの遺伝子のプロモーターを利用する試みもある(例えばMacFarlane and Popovich,Virology 267:29−35(2000);Mazithulela et al.,Plant Science 155:21−29(2000))が、ウイルスは感染後に拡散するので、遺伝子発現部位を細胞レベルで限定するには、植物遺伝子由来のプロモーターの方が優れている。
根で発現する遺伝子のプロモーターはトウモロコシなどで数種類が知られている。組換えDNA技術による耐病性付与の例として、線虫抵抗性付与の例(米国特許6,284,948:Genes and methods for control of nematodes in plants)においては、線虫抵抗性の遺伝子を植物ユビキチン遺伝子のプロモーターで発現させているが、このユビキチンプロモーターは器官特異性が低く、恒常的に発現する。
根特異的プロモーターの例としては、米国特許第6,271,437号:Soybean gene promoters(大豆遺伝子プロモーター)があるが、これは大豆のシスト線虫抵抗性遺伝子のプロモーターを、根での外来遺伝子発現に用いるために使用する方法である。また、根特異的プロモーターの例としては、米国出願2001/0016954:Root specific promoters(根特異的プロモーター)がある。この例では、アラビドプシス由来のb1−チューブリン遺伝子のプロモーター、リボソームタンパク質RPL16A遺伝子のプロモーター、ARSK1遺伝子のプロモーター、およびエンドウ豆のメタロチオネイン様遺伝子のプロモーターが含まれている。これらのプロモーターも利用法として、線虫に対する抵抗性の付与が記載されている。
これらのプロモーターの活性は、一般的に実用に用いられるには低い、イネ等の穀類を含む単子葉植物では機能しない、あるいは器官特異性が低い等の問題点がある。
従って、穀類の各発生段階に機能するプロモーターを多数単離し、それぞれの特徴を明らかにした上で、異なる組織特異性および高い活性を持ったプロモーターカセットを作成すれば、イネ等の作物の品種改良に非常に有用である。
(発明が解決しようとする課題)
本発明の課題は、根および/または茎頂で高い活性を有する植物用プロモーターを提供することにある。より詳細には、本発明は、従来のプロモーターの活性が有する問題点(一般的に実用に用いられるには低い、イネ等の穀類を含む単子葉植物では機能しない、あるいは器官特異性が低い等)を克服し、実用的なプロモーターを提供することを課題とする。
発 明 の 要 旨
(課題を解決するための手段)
上記課題は、本発明は、イネのカタラーゼB(CatB)遺伝子のプロモーター領域の一部の塩基配列を用いることによって、外来遺伝子を根で発現させることができることを見いだして完成されたものである。
本発明は、以下を提供する。
1. 配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
2. 項目1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
3. 項目1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
4.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための組成物であって、該組成物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、組成物。
5. 項目4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
6. 項目4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
7.前記植物は、単子葉植物または双子葉植物である、項目4に記載の組成物。
8.前記植物は、単子葉植物である、項目4に記載の組成物。
9.前記植物は、イネ、アラビドプシス、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、トマト、キュウリ、ナス、ジャガイモ、レタス、ダイコンまたはニンジンである、項目4に記載の組成物。
10.前記所望の遺伝子は、抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子である、項目4に記載の組成物。
11.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、根端部を含む、項目4に記載の組成物。
12.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、単子葉植物の幼生植物の分裂組織領域を含む、項目4に記載の組成物。
13.前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、茎頂部を含む、項目4に記載の組成物。
14.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための植物発現カセットであって、該カセットは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物発現カセット。
15.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるためのプラスミドであって、該プラスミドは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含し、ここで、該プロモーターは、該所望の遺伝子に作動可能に連結される、プラスミド。
16.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物細胞であって、該植物細胞は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物細胞。
17.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物組織であって、該植物組織は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物組織。
18.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、トランスジェニック植物であって、該トランスジェニック植物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、トランスジェニック植物。
19.所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物種子であって、該植物種子は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物種子。
20.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、方法。
21.植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法によって得られる遺伝子産物であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、
遺伝子産物。
22.根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現するように改変された植物を生産する方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターを含むプラスミドを提供する工程;
2)該プラスミドで植物細胞を形質転換する工程;および
3)該形質転換された植物細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
上記項目14〜22は、項目5〜13の特徴事項で特定され得る。
発 明 の 詳 細 な 説 明
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「le」、「la」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
(配列の説明)
配列番号1は、CatBのプロモーター領域の核酸配列(1364bp)(cDNAの開始点を+1として−1066〜+298;図5を参照)を示す。
配列番号2は、CatB遺伝子の核酸配列(4985bp)を示す。
配列番号3は、BΔ3断片(866bp)を示す。
配列番号4は、B1断片(627bp)を示す。1〜6位は、CatBカタラーゼ遺伝子塩基配列中のAAAAAAをAAGCTTに変換し、HindIII切断部位を作成した。460位は、TをCに置換し、CatBカタラーゼ遺伝子の翻訳開始コドンを壊した。
配列番号5は、B2断片(524bp)を示す。1〜6位は、CatBカタラーゼ遺伝子塩基配列中のAAAAAAをAAGCTTに変換し、HindIII切断部位を作成した。357位は、TをCに置換して、CatBCatBカタラーゼ遺伝子の翻訳開始コドンを壊した。
配列番号6は、CatB cDNAの102−131に相当する配列である。
配列番号7は、CatB cDNAの484−455に相当する配列である。
配列番号8は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマー3D3−F1である。
配列番号9は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマー3D3−F2である。
配列番号10は、本明細書の1実施形態で使用されるプライマーBD3−MRである。
配列番号11は、CatB遺伝子の−329〜+298のプロモーター領域を示す。
配列番号12は、CatB遺伝子の−329〜−227のプロモーター領域を示す。
(用語の定義)
本明細書において使用される「プロモーター」とは、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める遺伝エレメントまたは因子をいう。本明細書において、「プロモーター領域」とは、ある構造遺伝子配列付近の領域であって、プロモーター活性を有する領域をいう。プロモーター領域は、遺伝子の転写が開始される際にRNAポリメラーゼが結合する通常遺伝子上流の塩基配列で特定される領域である。本明細書において、ある因子が「プロモーター活性」を有するとは、その因子がRNAポリメラーゼなどに作用し、転写が開始する活性をいう。
本明細書において用いられる「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。好ましい植物のほかの例としては、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、白菜、レタス、モモ、ジャガイモおよびリンゴが挙げられる。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
本明細書において使用される「根および茎頂の少なくとも1つの部位」は、根および茎頂からなる部位群の少なくとも1つの部位を指す。従って、「根および茎頂の少なくとも1つの部位」には、根の一部または茎頂の一部が包含される。「根および茎頂の少なくとも1つの部位」にはまた、分裂組織も含まれる。
本明細書において使用される「分裂組織(メリステム、meristem)」とは、分化細胞からなる植物の形成組織で,分化して他の分裂細胞または特殊な型の細胞をつくる能力をもつ部位をいう。分裂組織は主に、生長部分にみられる。分裂組織としては、生長点(growth point)、茎頂(シュート頂;shoot apex)、根端(root apex,root tip)、根端分裂組織(root apical meristem)、頂端分裂組織(apical meristem)などが挙げられる。
本明細書において使用される「根」(root)とは、地下部にあり,体支持と水吸収をする器官をいう。先端は根冠(root cap)といい、内部は表皮にかこまれて中心柱という。中心柱の中に導管と篩管が通る。根端の少し後方に表皮細胞の一部が突起した根毛がある。根毛およびその付近の細胞の表皮細胞で水分吸収が盛んであるが、根毛の寿命は数日から数週間で、根は常に伸長するので,その位置は常に前進する。本明細書では、根全体を根系(root system)ともいう。例えば、イネでは,種子根は1本の鞘葉節以上の節から不定根が各節あたり約5〜20本出る。節から出る根を冠根という。根は上位節で多く出る。上位節から1次、2次の分枝根が出る。根は、最長1m程度になる。根は分裂組織を含む。
本明細書において使用される「茎頂」とは、シュート頂とも呼ばれ、茎の頂端分裂組織とその周辺の部位をいう。茎頂には、茎および側生的に葉を形成する栄養期茎頂と花序または花を形成する生殖期茎頂とがある。茎頂は分裂組織を含む。茎頂は、栄養成長期にある茎の先端及びその近傍部を指す。高等植物では、新しく細胞をつくり出す分裂機能を持つ。
本明細書において使用される「カタラーゼ」とは、過酸化水素を分解する反応を触媒する酵素をいう(EC1.11.1.6)。カタラーゼはまた、H2O2,CH3OOH,C2H5OOHの存在で、C2H5OH、CH3OH、CH3COOH、HCOOH、HNO2などを酸化し得る。動物、植物、微生物を問わず好気的細胞にはすべて存在し、動物では肝臓、腎臓、赤血球に特に多い。ウシの肝臓のカタラーゼは分子量約23万で,酵素1分子に作用基として4個のプロトヘマチンが含まれている。植物では、本発明者らが単離したカタラーゼBなどがある。
本明細書において、核酸分子の「断片」とは、参照核酸分子の全長よりも短く、少なくともプローブまたはプライマーとしての使用に充分な長さを有するポリヌクレオチドをいう。ある核酸分子の断片を、それが由来した元の核酸分子に対する選択的プローブまたは選択的プライマーとして使用するためには、特異的にハイブリダイズし得る断片である必要がある。本明細書においてあるDNAが「特異的にハイブリダイズ」するとは、提供された核酸分子を互いに区別して検出または増幅し得ることをいう。選択的プローブには、代表的には、少なくとも10ヌクレオチド長であり、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長であり、より好ましくは少なくとも20ヌクレオチド長であり、さらに好ましくは少なくとも30、40または50ヌクレオチド長であり得、50を超えるヌクレオチド長も使用され得る。選択的プローブは、選択的プライマーを用いたPCR増幅産物として入手され得る。1対のプライマーの少なくとも一方に、選択的プライマーをPCRに使用する場合、選択的プライマーは、代表的には少なくとも9ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも10ヌクレオチド長、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチド長、さらに好ましくは少なくとも17、18、19、20、21、22、23、24、25、30または50ヌクレオチド長であり得る。
本明細書において、核酸分子の「ホモログ」とは、参照核酸分子のヌクレオチド配列と相同性を有するヌクレオチド配列を有する核酸分子をいう。ホモログは、代表的には、参照核酸分子と、ストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。本発明のプロモーターについていう場合、「ホモログ」とは、プロモーター配列と相同性を有する核酸配列を有する核酸分子であって、その発現特性(例えば、部位特異性、時期特異性、ストレス応答性など)が本発明のプロモーターと同一または類似する核酸分子をいう。
遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、またはストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
本明細書では塩基配列の同一性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。
従って、本発明のプロモーター配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子は、本発明のプロモーターと同一または類似の活性を有し得る。そのような活性は、ベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、またはGFPの遺伝子をレポーター遺伝子として使うアッセイ、生化学的あるいは細胞組織学的な検定により確認することができる。そのようなアッセイは、当該分野における周知慣用技術に属することから(Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);Jefferson,Plant Molec.Biol.Reporter 5:387(1987);Ow et al.,Science 234:856(1986);Sheen et al.,Plant J.8:777−784(1995))、当業者は何ら困難を伴わずに、本発明の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子が本発明のプロモーターと同一または類似のあるいは実質的に同等以上の活性を有することを確認することができる。本明細書では、上記アッセイにおいて、検出誤差範囲内で同じプロモーター活性を有することが判定されたときに実質的に同等以上のプロモーター活性を有するという。
本発明のプロモーターの長さは、通常10ヌクレオチド以上であるが、好ましくは、20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、60ヌクレオチド以上、70ヌクレオチド以上、80ヌクレオチド以上、90ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
本発明のプロモーターは、従来のプロモーター(例えば、ミニマムプロモーター(35Sプロモーター由来の約80塩基対からなるプロモーター(Hatton et al.,Plant J.,7:859−876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435−440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1−12(1999))など)につなげて利用することができる。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す、あるいは別の特異性を示すプロモーターであっても、本発明のプロモーターまたはその断片を付加することによって、根および/または茎頂に組織特異的に強く機能するプロモーターを作製することができる(Hatton et al.,Plant J.,7:859−876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435−440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1−12(1999))。
本発明のプロモーターは、単子葉植物だけでなく双子葉植物および他の生物の改変にも利用し得る。これは、両植物間で転写調節の基本的な機構が類似していることにより説明される。例えばトウモロコシのzein遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Schernthaner et al.,EMBO J.,7:1249−1255(1988))、イネのグルテリン遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Leisy et al.,Plant Mol.Biol.,14:41−50(1989))が報告されている。特に好ましい対象植物としては、イネのほか、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ソルガム、カンキツ類、白菜、レタス、タバコ、モモ、ジャガイモ、トマト、およびリンゴなどが挙げられる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。植物細胞に対する「組み換えベクター」としては、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等が例示される。
ベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、以下を用いた形質転換などが挙げられる:アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59−140885、特開昭60−70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60−251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。
本発明のプロモーターによる発現の「検出または定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンプロット法、ドットプロット法またはPCR法等が例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等が例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法等が例示される。
「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、本発明のタンパク質またはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等の免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンプロット法、ドットプロット法、PCR法等の分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。発現量の絶対量または相対量を観察することにより、あるプロモーターが特異的に作用しているかどうかを検出することができる。
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。
本明細書において発現される「遺伝子」とは、当該分野における通常の意味で用いられ、遺伝形質を規定する因子をいう。本発明の方法において発現される、所望の遺伝子は特異的に発現させることが所望される遺伝子であればなんでもよいが、例としては、例えば、線虫または土壌病原体などに対する抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーなどが挙げられる。
本明細書において「再分化する」とは、個体の一部分から個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞および葉または根などの組織片から植物体が形成される。
形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法としては、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);_Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995)などが挙げられる。従って、当業者は、上記周知方法を目的とするトランスジェニック植物に応じて適宜使用して、再分化させることができる。
再分化した形質転換体が、所望の改変された特性を有することは、当該特性の種類に応じて適切なアッセイを行うことにより確認し得る。例えば、レポーター遺伝子としてGUS遺伝子とプロモーターとを融合し、植物体に導入して形質転換体を作出し、GUS活性の組織染色で検出することが可能である。ここでは、蛍光タンパク質であるGFPの遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として使うことも可能である。これらはいずれも各種プロモーターのアッセイに使われている。詳細は下記実施例に記載される。また、ストレス耐性として病原性細菌に対する耐性の付与が意図される場合、再分化した植物体にモデル菌、例えばタバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv.tabaci)を接種し、コントロールの植物体と比較して接種による変化の有無を観察することで、特性の変化を評価し得る。
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28−32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33−40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、本明細書では詳述しない。例えば、シロイヌナズナの栽培は土耕、ロックウール耕、水耕いずれでも行うことができる。白色蛍光灯(6000ルクス程度)の下、恒明条件で栽培すれば播種後4週間程度で最初の花が咲き、開花後16日程度で種子が完熟する。1さやで40〜50粒の種子が得られ、播種後2〜3ケ月で枯死するまでの間に10000粒程度の種子が得られる。種子の休眠期間は短く、完熟種子は1週間程度乾燥させれば吸水後2〜3日で発芽する。ただし、吸水・播種後2〜4日間4℃で低温処理を行うと発芽が斉一化される。
(発明を実施する最良の形態)
1つの局面において、本発明は、配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸配列に関する。この配列は、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。好ましくは、この核酸配列は、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み得る。
より好ましくは、本発明は、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子を提供する。この核酸分子は、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。この核酸分子は、分裂組織を含む根での発現を特異的に促進させるプロモーター活性を有する。本発明者の知る限りこのようなプロモーター活性を付与する配列は特に、イネでもアラビドプシスでもこれまで見い出されていないことから、本発明は、当該分野において顕著な効果を奏することを達成したといえる。
上述の特定の配列の範囲は、本発明において1つの好ましい配列範囲を示すものであり、本発明はそれらに限定されないことを付言しておく。従って、本発明は、本明細書に記載される方法に従って、当業者が選択した他に適切な領域に特定することも可能である。そのような選択方法は本明細書の他の記載または当該分野において周知慣用技術を参酌することにより過度な実験を要することなく実施することができる。
別の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための組成物を提供する。この組成物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する。上述のように1)のプロモーターは、根および茎頂の少なくとも1つの部位で特異的な発現を促進させることから、このような組成物は根および茎頂の少なくとも1つの部位で特異的に発現する系を提供するという当該分野において顕著な有用性を提供する。
1つの実施形態において、上記プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。
別の実施形態において、上記プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有し得る。別の実施形態において、上記植物は、単子葉植物または双子葉植物であり得るが、生物は、単子葉植物または双子葉植物に限定されることはない。従って、本発明のプロモーターが同様な効果を奏する限り、生物は、動物などの植物以外の生物、または単子葉植物および双子葉植物以外の植物であり得る。好ましい実施形態において、上記植物は、単子葉植物であり得る。より好ましくは、上記植物は、イネ、アラビドプシス、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、トマト、キュウリ、ナス、ジャガイモ、レタス、ダイコンまたはニンジンであり得る。
別の好ましい実施形態において、本発明のプロモーターの長さは、20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、60ヌクレオチド以上、70ヌクレオチド以上、80ヌクレオチド以上、90ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
別の実施形態において、本発明のプロモーターは、他のプロモーターにつなげて提供され得る。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す、あるいは別の特異性を示すプロモーターであっても、本発明のプロモーターまたはその断片を付加することによって、根および茎頂の少なくとも1つの部位に組織特異的に強く機能するプロモーターを作製することができる
別の実施形態において、上記所望の遺伝子は、例えば、線虫または土壌病原体に対する抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子であり得る。
別の実施形態において、上記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、根端部を含み得る。別の実施形態において、上記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、茎頂部を含み得る。根および茎頂の少なくとも1つの部位は、単子葉植物(例えば、イネ)の幼生植物の分裂組織を含み得る。幼生植物のみでの発現を促進することによって、作物(例えば、イネ)では導入した遺伝子産物が発現または残留しない植物を作製することができる。
他の局面において、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための植物発現カセットを提供する。このカセットは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含し得る。植物発現カセットは、当該分野において周知の技術を用いて作製することができる。そのような作製方法は、本明細書の実施例においても例示されている。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるためのプラスミドを提供する。このプラスミドは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。ここで、上記プロモーターは、上記所望の遺伝子に作動可能に連結される。このようなプラスミド(またはベクター)を作製する方法は当該分野において周知慣用であり、本明細書の実施例にも例示されている。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物細胞を提供する。この植物細胞は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。そのような植物細胞を作製する方法は当該分野で周知であり、例えば、本発明のプラスミドを用いた形質転換、トランスフェクション、形質導入などによって実施することができる。そのような方法は、本明細書においても上記に具体的に記載し、かつ、実施例においても例示されている。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物組織を提供する。この植物組織は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。植物組織は、例えば、本発明の植物細胞から再分化することにより作出することができる。あるいは、植物組織に直接本発明の組成物を注入することによって作製することも可能である。そのような方法は、当該分野において周知である。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、トランスジェニック植物を提供する。このトランスジェニック植物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。トランスジェニック植物は、例えば、本発明の植物細胞を再分化することによって作出することができる。そのような再分化方法は、当該分野において周知であり、例えば、タバコやアラビドプシス等の双子葉植物については、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);_Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);_Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);イネについては、Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Hiei et al.,Plant J.6:271−282(1994);Toki,Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997)など。)などが挙げられる。
他の局面において、本発明は、所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物種子を提供する。この植物種子は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)上記所望の遺伝子、
を包含する。このような植物種子は、上記トランスジェニック植物を稔性を保つようにして再分化することによって作出することができる。そのような再分化方法は、当該分野において周知であり、例えば、タバコやアラビドプシス等の双子葉植物については、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627−640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73−82(1987);Shaw,Plant Molecular Biology:A practical approach.IRL press(1988);Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);イネについては、Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Hiei et al.,Plant J.6:271−282(1994);Toki,Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997)など。)などが挙げられる。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法を提供する。この方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を上記植物に提供する工程;
2)上記植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)上記植物を上記プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する。このような方法は、本発明のプロモーターさえ特定されれば、当業者に周知慣用の技術を用いて行うことができる。そのような発現方法は、本明細書において上述した。
他の局面において、本発明は、植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法によって得られる遺伝子産物を提供する。ここで、上記方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を上記植物に提供する工程;
2)上記植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)上記植物を上記プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する。根および茎頂の少なくとも1つの部位は、新生の盛んな組織であることから、この方法によって所望の遺伝子が多量に得られる。
他の局面において、本発明は、根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現するように改変された植物を生産する方法を提供する。この方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターを含むプラスミドを提供する工程;
2)上記プラスミドで植物細胞を形質転換する工程;および
3)上記形質転換された植物細胞を培養する工程、
を包含する。プラスミドを提供する方法、形質転換する方法、および培養する方法は当該分野において周知であり、本明細書においてすでに説明した。
既に本発明者らは、イネ・カタラーゼCatB遺伝子を単離して構造解析した(DDBJ登録番号D64013)。さらに、その5’上流のプロモーター領域(cDNA開始点を+1として、−1066から+298:本文ではこのDNA断片をBΔ0と呼ぶ)をレポーター遺伝子(ベータグルクロニダーゼ(GUS))と融合し、イネの培養細胞系統(Oc細胞)から調製したプロトプラストにエレクトロポレーションで導入して一過性遺伝子発現によるGUS酵素活性を指標にしてプロモーター活性を測定したところ、植物の遺伝子導入によく使用されるカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターの約20倍の活性を示すことを見いだした。これにより、本プロモーターが有用遺伝子の発現のためのプロモーターカセットの作出に利用できることを明らかにして発明を完成し、特許出願した(特許第2955644号「イネCatB遺伝子プロモーター」)。
さらに本発明者らは、ノーザンハイブリダイゼーション分析により、CatBはイネ幼植物の根で強く発現しているが、成熟個体の根では発現がしないこと、葉、茎、花では強い発現はないことを明らかにした(Iwamoto et al.Plant Science 151:39−46(2000))(表1)。
上記の結果をヒントに、本発明において、CatB遺伝子プロモーター領域(特許登録2955644)の中の器官特異性を制御する部分の同定を試みた。
具体的には、CatB遺伝子プロモーター領域BΔ0を5’側から欠損して作成した各種DNA断片にレポーター遺伝子(GUS)を融合してベクターに組み込み(図1、2)、イネおよびアラビドプシスに導入して形質転換し、再分化当代あるいは後代の植物の各組織をGUS組織染色して発現部位を調べた。
その結果、cDNA開始点(+1)の上流−329から+298までの短いプロモーターDNA断片(B1)でもイネの幼植物の根(図3、表2、3)、およびアラビドプシスの幼植物の根および茎頂(図4、表4)でのレポーター遺伝子の発現を可能にすることを明らかにした。
形質転換植物では個体間で発現の器官特異性の程度にばらつきがあるが、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したイネ再分化当代の約半数でレポーター遺伝子を根で強く発現していた。イネでも同様に茎頂において特異的に発現するものと考えられる。
イネ幼植物の根における発現の特異性はプロモーター領域を5‘側から欠損すると減少し、その順は高い方から、BΔ0(71%)=BΔ3(75%)>B1(48%)>B2(19%)である(表2)。プロモーター領域は長い方が発現特異性は強いが、B1でも再分化個体の集団からから望ましい個体を選抜すれば,特異的発現をしている植物体を得ることができるので、目的に応じてBΔ0、BΔ3あるいはB1の中から選ぶことができる。
−329から−227を欠損したプロモーター(B2)では、イネおよびアラビドプシスの根での発現は大きく減少するので(表2、4)、この−329から−227の領域は根での発現に必要である。この領域には、根での発現に関与する既知のシスエレメントは存在しないので、新規のシスエレメントがある可能性が高い。
この結果から先に特許出願したイネ・カタラーゼCatB遺伝子由来の1,364塩基のプロモーター領域のうち、約630塩基の長さまでの各配列を用いることによって、イネ等の単子葉およびアラビドプシスなどの双子葉において、幼植物の根および茎頂で外来遺伝子を発現させることを可能にする方法が開発された。
一般的にプロモーター塩基配列は保存度が低く、数百塩基のプロモーター塩基配列を用いてのスクリーニングで類似した活性を持つプロモーターを検出するのは容易ではない。プロモーター領域の中の、転写調節因子(タンパク質)が結合するサイト(シスエレメント)は保存性が高いことから、本発明の特定の配列を参酌し、シスエレメントデータベースを用いて電子計算機によるサーチを行うと、シスエレメント候補はたくさん出てくる。どれが実際に機能しているかの判断は、バイオインフォーマティクス技術により行うことができるものと考えられる。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、実施例のみに限定されるものではなく、請求の範囲によってのみ限定される。
実 施 例
(実施例1:イネカタラーゼCatB遺伝子の単離)
イネカタラーゼCatB遺伝子の単離方法は、「イネCatB遺伝子プロモーター」(平成11年7月特許登録2955644)に記載されている。簡潔には以下のとおりである。
(ゲノミックライブラリーからのスクリーニング)
CatAcDNAの一部を、CatB遺伝子のクローニングに用いた。CatAcDNAのクローニングの過程で得られた不完全長cDNA(全長約1.8kbpのうち、5’非翻訳領域及び若干のコード領域の合計約450bpを欠損する3’末端側の1.35kbp)を含むラムダファージ(クローン#51)のインサート部分をPCRで増幅した。同ファージよりDNAを調製してこれをテンプレートとし、プライマーとしてλgtl1−Forward Primer及びλgtl1 Reverse Primer(東洋紡)を用いた。生成物をセントリコン−100(amicon)で精製し、濃度を25ng/10μlにして、マルチプライムラベル法(Amersham)のプローブとした。
米国クローンテック社(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)から購入したイネのゲノミックDNAライブラリー(RICE Genomic Library)を用いて、CatB遺伝子をスクリーニングした。ゲノミックライブラリーを構成するファージλEMBL−3を常法に従って、E.coli NM538株に感染させ、ファージプラークを形成させた。このファージプラークをナイロンメンブレンに移し、下記の標準的条件で上記プローブとハイブリダイズさせた。なお、プローブは、32Pで標識した。
ハイブリダイズ溶液:6x SSC−0.1% SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:65℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
次に、メンブレンを、以下の比較的緩い条件で洗浄した。洗浄条件:2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間。
洗浄後、常法に従って、ナイロンメンブレンをオートラジオグラフィーにかけ、プローブとハイブリダイズしたクローンを検出した。ハイブリダイズすることが確認されたファージからそれぞれDNAを調製した。
上記ファージのDNAをSal IとSca Iの制限酵素を組み合わせて消化し、その消化物をアガロースゲル電気泳動で分離した。分離したDNA断片をナイロンメンブレンに移して、上述のCatAcDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせた。ハイブリダイズの条件は上記と同じであり、メンブレン洗浄は以下の条件で行った。洗浄条件:2x SSC室温5−10分 2回;2x SSC−0.1% SDS 65℃、30分。
洗浄後、当該分野で周知の常法に従って、ナイロンメンブレンをオートラジオグラフィーにかけ、プローブとハイブリダイズしたDNA断片を検出した。
シグナルの強さとバンドのパターンがほぼ同一の、従って同じ構造を持つと推定される一群のクローンと、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンとがある。前者のシグナルの強さとバンドのパターンがほぼ一致するクローンはCatA遺伝子に対応すると考えられた。実際、No.74のクローンは、CatAcDNAに対応する遺伝子であった。他方、後者のバンドのパターンが一部しか一致しないクローンは、CatA遺伝子の欠損クローン、あるいはCatA以外の別のカタラーゼ遺伝子のクローンである可能性がある。そこで、CatAcDNAをプローブとして用いて、下記のような緩い条件と厳しい条件でのハイブリダイゼーションを行って、パターンを比較した。
緩いハイブリダイズ条件:50% フォルムアミドを添加した、6x SSC−0.1% SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:37℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
メンブレン洗浄条件は上記と同じであり、2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間であった。
ストリンジェントハイブリダイズの条件:50% フォルムアミドを添加した、6x SSC−0.1%SDS,5x Denhardt’s,100μg/ml salmon sperm DNA;ハイブリダイズ温度:42℃;ハイブリダイズ時間:overnight。
メンブレン洗浄条件は、2x SSC−0.1% SDS室温5分プラス30分;1x SSC−0.1% SDS 68℃、1時間であった。
ストリンジェント条件でのハイブリダイズの結果、標準的ハイブリダイズのパターンと同じ数のバンドが検出された。他方、緩い条件のハイブリダイズでは、厳しい条件のハイブリのパターンよりも多数のバンドを示した。これらの結果から、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンは、CatA遺伝子の欠損クローンではなく、CatAに似てはいるが、塩基配列が異なる部分を持つDNA、すなわちCatA以外の別のカタラーゼ遺伝子である可能性が高いことが判った。
約20個の、バンドのパターンが一部しか一致しないクローンを、カタラーゼアイソザイム遺伝子候補としてさらに解析した。この内のNo.7クローンは、詳細なサザン分析、部分塩基配列の解析、CatA塩基配列に基づくPCR分析などから、CatAとは異なるカタラーゼ遺伝子であると結論した。また、CatBcDNAとも異なる配列であることがわかり、CatCと命名された。CatCの塩基配列は、日本農芸化学会誌68、404(1994)に記載される。
CatAともNo.7クローン(CatC)とも異なるパターンを示すクローンがあり、その中からNo.6クローンをさらに詳細に解析した。No.6クローンのDNAについては、部分的に塩基配列も解析した。この配列は、CatB遺伝子のcDNA配列(Plant Physiol.(1994)105:1015−1016)と一致した。
これらの情報を基に、CatB遺伝子の5’非翻訳領域を得るために二つのDNAオリゴマーを合成した。
他方、イネカルスから、cDNAライブラリーを調製した。このcDNAライブラリーのDNAをテンプレートとし、上記二つの合成DNAをプライマーとして、標準的条件でPCRを行った。約400bpのDNA断片が増幅された。この400bp DNA断片をプローブとして用い、上記CatB遺伝子と思われるクローン群を再度スクリーニングし、ハイブリダイスする数個のクローンを得た。
この中の、上記No.6クローンは、PCR増幅した400bpの上流に、約1kbp以上の5’上流域を持ち、且つ全長が約5kbp以上であることがわかった。このクローンをクローンU6と命名した。クローンU6の制限酵素地図を作製した(示さず)。
クローンU6から、5’上流域を約1kbp含む断片(Sal I−Eco RI消化断片)とその下流の断片(Eco RI−Eco RI消化断片)を切り出し、シーケンス解析用のベクター(pUC18)に挿入し、5’側から及び3’側からの段階的欠損プラスミドを多数作成し、塩基配列決定を行った。そのうち、CatBの核酸配列(4985bp)は配列番号2に示される。
(実施例2:CatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121の構築)
CatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121の構築は、「イネCatB遺伝子プロモーター」(特許2955644号)に記載されるように行った。簡潔には以下のとおりである。
得られたCatB遺伝子は、4985bpであった。そして、配列番号2の1073番目から1216番目に第1エクソン、1333番目から1429番目に第2エクソン、2341番目から2618番目に第3エクソン、2970番目から3746番目に第4エクソン、3968番目から4057番目に第5エクソン、4252番目から4319番目に第6エクソン、4410番目から4503番目に第7エクソン、および4616番目から4881番目に第8エクソンが存在すること、および、それぞれのエクソンの間に、第1から第7イントロンが存在することがわかった。上記配列から、プロモーター領域は、1073番目より前の配列と推定された。この配列情報に基づいて、プロモーター領域を切り出すことができる。イネCatB遺伝子プロモーターを有するプラスミド、CatB−GUS−Δ0の作製は以下のとおりである。
クローンU6をSalIおよびEcoRIで切断し、2.3Kbpの断片を切り出した。この断片を、SalI−EcoRI切断したpUC18に連結した。得られた組換えプラスミドを、Eco47I(東洋紡(株)製)で消化し、約2kbpの断片を回収した。この断片をDNAポリメラーゼのKlenow断片で消化し、ついで、PstIで消化した。クローンU6の7番目から1370番目までの配列(配列番号2)を有する断片Aが得られた。この断片Aには、第1エクソンの上流側の配列、第1エクソン、第1イントロン、および、第2エクソンの一部が含まれていた。断片Aの5’末端側は、PstI部位であり、3’末端は平滑末端である。
植物細胞用発現ベクターpBI221(Clonetech)は、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、β−グルクウロナーゼ(GUS)コーディング領域およびノパリンシンセターゼのターミネーター(NOS・T)を有している。このpBI221を、PstIおよびSmaIで消化し、PstI−SmaI大断片Bを回収する。この大断片Bは、pBI221から、CaMVの35Sプロモーター領域が削除されている断片である。この大断片Bと、上記クローンU6の7番目から1370番目までの配列を有する断片Aとを連結させ、CatB−GUS−Δ0を作製した。
(イネ細胞の形質転換とGUS遺伝子の発現)
300mlのフラスコに、以下の組成のAA培地を70ml入れ、イネOc細胞を、緩やかに攪拌(90rpm)しながら、28℃で、懸濁培養した。
AA培地の組成(Mol.Gen.Genet.161:67−76(1978))
1)無機塩 濃度(mg/l)
MnSO4・4−6H2O 10
H3BO3 3
ZnSO4・7H2O 2
Na2MoO4・2H2O 0.25
CuSO4・2H2O 0.025
CoCl2.6H2O 0.025
Kl 0.75
CaCl2・2H2O 150
MgSO4・7H2O 250
NaH2PO4・H2O 150
KCl 3,000
2)鉄分 Fe−EDTA 40
3)ビタミン・有機物
蔗糖 20,000
ニコチン酸1塩酸チアミン 10
塩酸ピリドキシン 1
myo−イノシトール 100
L−アルギニン 177
L−グリシン 7.5
L−グルタミン 900
L−アスパラギン酸 300
4)ホルモン酸
2,4−D 1
カイネチン 0.2
GA3 0.1
1週間毎に、10mlの培養物を70mlの新鮮な培地に移した。移してから5日目の細胞を用いて、プロトプラストを作製した。プロトプラストの作製は、Mol Gen.Genet 206:408−413(1987)に記載の方法に従った。継代後5日目のカルス細胞サスペンジョンを直径10cmプラスチックシャーレに移し、アスピレーターで培地を除いて酵素液(4% セルラーゼRS(ヤクルト)、1% マセロザイムR10(ヤクルト)、0.4M マンニトール、0.5% CaCl2.2H2O、0.5% Potassium Dextran Sulfate)20mlを加えた。パラフィルムをして28℃の暗所に静置した。約5時間後にナイロンメッシュで濾過して未消化物を取り除き、洗浄操作を繰り返した。
得られたプロトプラストをEP緩衝液(5mM MgCl2、70mM KCl、0.1% MES、0.4M マンニトール、蒸留水を加えてpH5.6とし、フィルターで滅菌する:Nature338:274−276(1989))に懸濁し、その一部(0.5ml)をとり、上記プラスミドDNA20μg/mlおよびキャリアDNAとしてのサケ精子DNA30μg/mlと混合した。次に、Gene−Pulser(Bio−Rad、CA)を用いて,電極間距離0.4cmのディスポーサブルキュベット中で、500μFのキャパシタンスおよび100Ωの抵抗で、300V/cmでエレクトロポレーションした。氷上で10分インキュベートした後、プロトプラストに1.5mlのR2P培養液を添加してMillicell(Millipore,CA)に入れ、これを5mlのR2P培地(Plant Cell Physiol.14:1113−1121(1973))を含む6cmプラスチックディシュに入れる。Millicellの外側にナースセルを添加し、28℃、暗条件で培養した。なお、ナースセルの有無は、CatA−GUS−Δ0、CatB−GUS−Δ0、およびCatC−GUS−Δ0の発現には影響を及ぼさなかった。
R2P培地の組成
(1)主要成分(mg/l)
KNO3 4000
(NH4)2SO4 335
MgSO4・7H2O 250
CaCl2・2H2O 150
NaH2PO4・H2O 273
(2)マイナー成分(mg/ml)
MnSO4・4H2O 1.6
ZnSO4・7H2O 2.2
CuSO4・5H2O 0.125
H3BO3 3.0
NaMoO4・2H2O 0.125
Na2EDTA 7.5
FeSO4・7H2O 5.5
(3)有機成分(mg/ml)
イノシトール 100
ニコチン酸 1.0
ピリドキシン塩酸 1.0
チアミン塩酸 10
蔗糖(g/l) 137
2,4−D(mg/l) 2.0
pH5.6
GUS活性用のプロトプラストの処理は、基本的には、ラボマニュアル:植物遺伝子の機能解析(岩淵雅樹・志村令郎編、丸善、1992)p.55の記述に従って行った。エレクトロポレーション処理後、4日間、28℃、暗所にて培養したプロトプラストを、1mlファルコン・ピペット(#7521)で1.5mlマイクロチューブにとり、室温で9,000rpm、3分間遠心し、ペレットを分析まで−80度の保存した。
ペレットに200μlの抽出バッファー(50mMリン酸ナトリウムバッファー(pH7.0)、10mM Na2 EDTA、0.1% TritonX−100、0.1% Sodium Lauryl Sarcosine、10mM β−メルカプトエタノール)を加え、氷水中で5分、凍結したペレットを融解した。超音波処理装置(Branson Sonifier model 250)を用いて、Output control 2、Dutycycle 10%の条件で、1分間処理した。処理後、15,000rpm、20分間、4℃で遠心分離した。上清(プロトプラスト抽出液)をとり、GUS活性測定用のサンプルとした。サンプル中のタンパク質濃度はBradford法(AnalBiochem 72:248−254(1976))で決定した。
GUS活性は、上記のJeffersonらの方法に従った。内在性のGUS活性は、反応液に20%(V/V)のメタノールを加えることにより最少にした。実験結果は、少なくとも2回の実験の結果であり、それぞれの実験には、同一試料について3つのサンプル(トリプリケート)が含まれていた。
これらの結果、CatB遺伝子プロモーターは、コントロールであるCaMV、CatAおよびCatCのプロモーターに比べて、非常に高い活性を示していた(示さず)。
(実施例3:PCR法による開始コドンの塩基改変とCatBの5’上流DNA断片(B1断片、B2断片)の作成とプラスミド構築)
PCR法により開始コドンに点変異を導入させたイネ・カタラーゼ遺伝子CatBの5’上流DNA断片(B1断片、B2断片)を作成した。B1断片(−329〜+298、cDNA開始点を+1とする)はCatBΔ0(−1066〜+298)−GUS/pBI121をテンプレートとし、プライマー3D3−F1(5’−GTG AAG CTT TCG ATC ACG ATG AGC GAG−3’(配列番号8)、DNA断片の5’末端付近にHindIII切断部位を導入するプライマー)およびBD3−MR(5’−GTA GGG ATC CGT GGC GTG ATT TG−3’(配列番号9)、CatBの開始コドンATGのTをCに置換するプライマー)、Pfu DNA polymerase(Promega)を用いて増幅させた。
B2断片(−226〜+298)は、プライマー3D3−F2(5’−GTT AAG CTT GTC TTA TCT CCT CGT GAT CC−3’(配列番号10)、DNA断片の5’末端付近にHindIII切断部位を導入するプライマー)とBD3−MRを用いて増幅させた。
増幅させたDNA断片は制限酵素HindIIIとBamHIで処理した後、DNA ligation kit Ver.2(宝酒造)を用いてHindIIIとBamHIで処理したベクターCatBΔ0−GUS/pBI221のGUS遺伝子の上流に組み込み、形質転換用の大腸菌competent high DH5alpha(東洋紡績)に導入した。大腸菌から精製したベクターは塩基配列を決定して確認した後、制限酵素HindIIIとEcoRIで処理してB1断片もしくはB2断片とGUS遺伝子、ノパリンシンターゼ遺伝子ターミネーター(nopaline synthase gene terminator)(NOS−ter)を含むDNA断片を切り出し、HindIIIとEcoRIで処理したバイナリーベクターpTN2(FukuokaらPlant Cell Reports 19:815−820(2000))に組み込んだ。
(実施例5:植物への遺伝子導入)
pTN2のイネ(品種;日本晴)への導入は、Hieiら(Plant J.6:271−282(1994))、Toki(Plant Mol.Biol.Rep.15:16−21(1997))の方法に従って、アグロバクテリウム(EHA105)を用いて行った。
pTN2のアラビドプシス(品種;Columbia)への導入は、「モデル植物の実験プロトコール−イネ・シロイヌナズナ編−」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;減圧湿潤法による形質転換(荒木崇)pp.109−113(監修 島本功、岡田清孝)に記載の方法をもとに、一部改変した方法で行った。
(実施例6:植物のGUS組織染色法)
GUS活性の観察は、「植物の細胞を観る実験プロトコール:遺伝子発現から細胞内構造・機能まで」;細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ62−3;細胞レベルでGUS活性を観る方法(高橋美佐、森川弘道)pp.71−79(監修 福田裕穂、西村幹夫、中村研三)に記載の方法をもとに一部改変した方法で行った。
▲1▼X−Gluc溶液[100mM リン酸バッファー(pH7.0)、1mM X−Gluc,0.3mM フェリシアン化カリウム、0.3mM フェロシアン化カリウム、0.2% Triton−X100]を調製する。
▲2▼X−Gluc溶液500μLを24穴タイタープレートの各ウエルに分注する。
▲3▼イネおよびアラビドプシスの各組織あるいは切片をウエルに入れ、28℃、16時間処理する。
▲4▼X−Gluc溶液を除去し、70%エタノールを加えて脱色する。
▲5▼70%エタノールを除去し、組織・切片を50%グリセロール溶液に浸す。
▲6▼顕微鏡あるいは実体顕微鏡で観察する。
(結果)
形質転換植物では個体間で発現の器官特異性の程度にばらつきがあるが、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したイネ再分化当代の約半数でレポーター遺伝子が根で強く発現していた。一方形質転換アラビドプシスでは、B1::GUSコンストラクト(図1のB1)を導入したアラビドプシスT2世代の多くでレポーター遺伝子が根と茎頂で強く発現していた。。
産 業 上 の 利 用 可 能 性
このプロモーターを利用して、線虫または土壌病原体に対する抵抗性物質を根で合成させたり、根の発達を促進する物資を根で合成させたり、あるいは遺伝子組換え植物の作成時に、再分化植物体の選抜マーカーの発現を幼植物の根に限定し成熟時の発現を抑制することなどが可能になる。また茎頂の発現能力を利用して、増殖の盛んな細胞の遺伝子発現を制御する技術の開発にも利用しうる。
本発明のCatB遺伝子プロモーター領域の一部の塩基配列を用いれば、外来遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位で発現させることができる。従ってこのプロモーターを用いて、根および茎頂の少なくとも1つの部位で合成されるタンパク質または細胞外に分泌される物質を利用した遺伝子操作による植物(例えば、イネ等)の品種改良のための根および茎頂の少なくとも1つの部位に特異的なプロモーターの開発に有用である。
例えば、このプロモーターを利用して、線虫または土壌病原体に対する抵抗性物質を根で合成させたり、根の発達を促進する物資を根で合成させたり、あるいは遺伝子組換え植物の作成時に、再分化植物体の選抜マーカーの発現を根に限定し成熟時の発現を抑制することなどが可能になる。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、実験に用いた各種DNAの構築物(コンストラクト)である。
図2は、B1(=CatBD1−GUS/pTN2)およびB2(=CatBD2−GUS/pTN2)の作成方法である。
図3は、B1を導入したイネ(To、再分化当代)の幼植物のGUS染色写真である。
図4は、B1を導入したアラビドプシス(T2世代)の幼植物のGUS染色写真である((a)暗い背景;(b)明るい背景)。
図5は、CatBプロモーター領域を示す。
Claims (22)
- 配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
- 請求項1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
- 請求項1に記載のプロモーターであって、該プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター。
- 植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための組成物であって、該組成物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、組成物。 - 請求項4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号11に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
- 請求項4に記載の組成物であって、前記プロモーターは、配列番号12に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、組成物。
- 前記植物は、単子葉植物または双子葉植物である、請求項4に記載の組成物。
- 前記植物は、単子葉植物である、請求項4に記載の組成物。
- 前記植物は、イネ、アラビドプシス、トウモロコシ、コムギ、オオムギ、トマト、キュウリ、ナス、ジャガイモ、レタス、ダイコンまたはニンジンである、請求項4に記載の組成物。
- 前記所望の遺伝子は、抵抗性付与ポリペプチドおよび根の発達を促進するポリペプチドおよび再分化植物体の選抜マーカーからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドをコードする遺伝子である、請求項4に記載の組成物。
- 前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、根端部を含む、請求項4に記載の組成物。
- 前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、単子葉植物の幼生植物の分裂組織領域を含む、請求項4に記載の組成物。
- 前記根および茎頂の少なくとも1つの部位は、茎頂部を含む、請求項4に記載の組成物。
- 植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるための植物発現カセットであって、該カセットは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物発現カセット。 - 植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させるためのプラスミドであって、該プラスミドは、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含し、ここで、該プロモーターは、該所望の遺伝子に作動可能に連結される、プラスミド。 - 所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物細胞であって、該植物細胞は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物細胞。 - 所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物組織であって、該植物組織は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物組織。 - 所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、トランスジェニック植物であって、該トランスジェニック植物は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、トランスジェニック植物。 - 所望の遺伝子を根および茎頂の少なくとも1つの部位において発現するように改変された、植物種子であって、該植物種子は、
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーター;および
2)該所望の遺伝子、
を包含する、植物種子。 - 植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、方法。 - 植物の根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現させる方法によって得られる遺伝子産物であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターをコードする核酸を該植物に提供する工程;
2)該植物に所望の遺伝子をコードする核酸を提供する工程;および
3)該植物を該プロモーターが作動する条件下に置く工程、
を包含する、
遺伝子産物。 - 根および茎頂の少なくとも1つの部位で所望の遺伝子を発現するように改変された植物を生産する方法であって、該方法は、以下の工程:
1)配列番号1に記載の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含み、配列番号1で示される配列と実質的に同等以上のプロモーター活性を有する、プロモーターを含むプラスミドを提供する工程;
2)該プラスミドで植物細胞を形質転換する工程;および
3)該形質転換された植物細胞を培養する工程、
を包含する、方法。
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
PCT/JP2002/000573 WO2003064649A1 (fr) | 2002-01-25 | 2002-01-25 | Promoteur exprimant un gene etranger dans une racine ou l'apex d'une pousse |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2003004649A1 true JPWO2003004649A1 (ja) | 2005-07-21 |
Family
ID=27639247
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003521672A Pending JPWO2003004649A1 (ja) | 2002-01-25 | 2002-01-25 | 根と茎頂で外来遺伝子を発現するプロモーター |
Country Status (7)
Country | Link |
---|---|
US (1) | US7790872B2 (ja) |
JP (1) | JPWO2003004649A1 (ja) |
KR (1) | KR20030077526A (ja) |
CN (1) | CN1476477A (ja) |
AU (1) | AU2002226733A1 (ja) |
CA (1) | CA2425623A1 (ja) |
WO (1) | WO2003064649A1 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020533000A (ja) * | 2017-09-11 | 2020-11-19 | アルトリア クライアント サーヴィシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー | 吸枝が減少又は消失したタバコ植物及びタバコ製品を生産する組成物及び方法 |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016128519A1 (en) | 2015-02-12 | 2016-08-18 | Bayer Cropscience Nv | Shoot apex-preferential promoters and uses thereof |
CN107815452A (zh) * | 2017-12-06 | 2018-03-20 | 新疆农垦科学院 | 一种植物叶片特异性表达的启动子及其应用 |
CN110577925B (zh) * | 2019-10-16 | 2021-09-07 | 中国农业科学院生物技术研究所 | 一种制备水稻根原生质体的组合物和方法 |
Family Cites Families (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2955644B2 (ja) | 1995-09-26 | 1999-10-04 | 農林水産省農業生物資源研究所長 | イネCatB遺伝子プロモーター |
AU3514700A (en) * | 1999-03-08 | 2000-09-28 | Pioneer Hi-Bred International, Inc. | Maize metallothionein gene and promoter |
WO2001081606A2 (en) | 2000-04-26 | 2001-11-01 | Akkadix Corporation | Polynucleotide sequences from rice |
-
2002
- 2002-01-25 AU AU2002226733A patent/AU2002226733A1/en not_active Abandoned
- 2002-01-25 CN CNA028031873A patent/CN1476477A/zh active Pending
- 2002-01-25 KR KR10-2003-7000946A patent/KR20030077526A/ko not_active Application Discontinuation
- 2002-01-25 CA CA002425623A patent/CA2425623A1/en not_active Abandoned
- 2002-01-25 US US10/344,982 patent/US7790872B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2002-01-25 JP JP2003521672A patent/JPWO2003004649A1/ja active Pending
- 2002-01-25 WO PCT/JP2002/000573 patent/WO2003064649A1/ja not_active Application Discontinuation
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020533000A (ja) * | 2017-09-11 | 2020-11-19 | アルトリア クライアント サーヴィシーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー | 吸枝が減少又は消失したタバコ植物及びタバコ製品を生産する組成物及び方法 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
KR20030077526A (ko) | 2003-10-01 |
US7790872B2 (en) | 2010-09-07 |
US20060230470A1 (en) | 2006-10-12 |
AU2002226733A1 (en) | 2003-09-02 |
CN1476477A (zh) | 2004-02-18 |
CA2425623A1 (en) | 2003-07-25 |
WO2003064649A1 (fr) | 2003-08-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Walter et al. | Bean ribonuclease‐like pathogenesis‐related protein genes (Ypr10) display complex patterns of developmental, dark‐induced and exogenous‐stimulus‐dependent expression | |
US5633363A (en) | Root preferential promoter | |
ES2279524T3 (es) | Promotor de un gen especifico de la corteza radicular. | |
US9163251B2 (en) | Mature leaf-specific promoter | |
Szabados et al. | Functional analysis of the Sesbania rostrata leghemoglobin glb3 gene 5'-upstream region in transgenic Lotus corniculatus and Nicotiana tabacum plants. | |
US6593513B2 (en) | Endoglucanase gene promoter upregulated by the root-knot nematode | |
KR102677434B1 (ko) | 벼 Os03g52870 유전자 유래 화분 특이적 발현 프로모터 및 이의 용도 | |
US7790872B2 (en) | Rice catalase B promoter | |
US20040088760A1 (en) | Gossypium hirsutum tissue-specific promoters and their use | |
CN106399312B (zh) | 一种诱导启动子NtPCS1P及其应用 | |
WO2012090500A1 (en) | Dna involved in gene expression regulation in photosynthetic tissue | |
CN117660451B (zh) | 一种紫花苜蓿根尖特异启动子及其应用 | |
AU2006202386A1 (en) | Promoter promoting expression of a foreign gene in root and shoot apex | |
US6613960B1 (en) | Phloem-loading-specific promoter | |
JP4179217B2 (ja) | 新規ベクター及びこのベクターを用いて行う植物形質転換体の作出方法 | |
JP4439844B2 (ja) | 植物の鉄欠乏応答性及び/又は根特異的発現を付与するシスエレメント | |
JP3772974B2 (ja) | 植物由来のプロモーター | |
JP3931997B2 (ja) | 植物プロモーター | |
JP3882952B2 (ja) | 植物プロモーター | |
JP4118385B2 (ja) | 植物プロモーター | |
JP3885901B2 (ja) | 植物プロモーター | |
JP4474542B2 (ja) | 構成的発現プロモーター | |
KR101437613B1 (ko) | 벼 유래 프로모터 및 이의 이용 | |
KR20240018732A (ko) | 벼 Os09g03890 유전자 유래 화분 특이적 발현 프로모터 및 이의 용도 | |
CN116479010A (zh) | 二色补血草基因Lb3G20842及其应用 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050620 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050714 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20050811 |