JPWO2002098866A1 - チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその成形体 - Google Patents
チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその成形体 Download PDFInfo
- Publication number
- JPWO2002098866A1 JPWO2002098866A1 JP2003501990A JP2003501990A JPWO2002098866A1 JP WO2002098866 A1 JPWO2002098866 A1 JP WO2002098866A1 JP 2003501990 A JP2003501990 A JP 2003501990A JP 2003501990 A JP2003501990 A JP 2003501990A JP WO2002098866 A1 JPWO2002098866 A1 JP WO2002098866A1
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- formula
- represented
- general formula
- following general
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
- 0 CSC1=NC(*)=NC(*)N1 Chemical compound CSC1=NC(*)=NC(*)N1 0.000 description 2
Images
Classifications
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08K—Use of inorganic or non-macromolecular organic substances as compounding ingredients
- C08K5/00—Use of organic ingredients
- C08K5/36—Sulfur-, selenium-, or tellurium-containing compounds
- C08K5/37—Thiols
- C08K5/378—Thiols containing heterocyclic rings
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C07—ORGANIC CHEMISTRY
- C07D—HETEROCYCLIC COMPOUNDS
- C07D251/00—Heterocyclic compounds containing 1,3,5-triazine rings
- C07D251/02—Heterocyclic compounds containing 1,3,5-triazine rings not condensed with other rings
- C07D251/12—Heterocyclic compounds containing 1,3,5-triazine rings not condensed with other rings having three double bonds between ring members or between ring members and non-ring members
- C07D251/26—Heterocyclic compounds containing 1,3,5-triazine rings not condensed with other rings having three double bonds between ring members or between ring members and non-ring members with only hetero atoms directly attached to ring carbon atoms
- C07D251/38—Sulfur atoms
-
- C—CHEMISTRY; METALLURGY
- C08—ORGANIC MACROMOLECULAR COMPOUNDS; THEIR PREPARATION OR CHEMICAL WORKING-UP; COMPOSITIONS BASED THEREON
- C08L—COMPOSITIONS OF MACROMOLECULAR COMPOUNDS
- C08L2312/00—Crosslinking
Landscapes
- Chemical & Material Sciences (AREA)
- Organic Chemistry (AREA)
- Health & Medical Sciences (AREA)
- Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
- Medicinal Chemistry (AREA)
- Polymers & Plastics (AREA)
- Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)
- Organic Low-Molecular-Weight Compounds And Preparation Thereof (AREA)
Abstract
本発明は、下記一般式(1)で表され、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)で表される基であるチオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその組成物からなる成形体に関する。詳しくは、本発明は、チオール誘導体置換基と反応性を有する高分子に配合して、硬化性組成物を与えるチオール化合物誘導体、該誘導体と架橋可能なハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有する硬化性組成物およびその架橋成形体に関する。
Description
技術分野
本発明は、チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその組成物からなる成形体に関する。詳しくは、本発明は、チオール誘導体置換基と反応性を有する高分子に配合して、硬化性組成物を与えるチオール化合物誘導体、該誘導体と架橋可能なハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有する硬化性組成物およびその架橋成形体に関する。
背景技術
従来、エピクロロヒドリンゴム、塩素含有アクリルゴムなどは、耐油性、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、圧縮永久歪みなどに優れることから、ホース、シール部品などの成型品に広く用いられてきている。
このようなエピクロロヒドリンゴム、塩素含有アクリルゴムなどのハロゲン含有架橋性ポリマーは、一般に、架橋剤、架橋促進剤などの架橋系配合剤を添加してその組成物を貯蔵しておくことが多い。
一般に、加硫剤、加硫促進剤などの加硫系配合剤を添加したジエン系ゴム組成物あるいは塩素系ゴム組成物を貯蔵しておくと、徐々に加硫が進行し、その結果粘度の上昇、スコーチタイムの減少、加硫速度の低下などの変化をきたし、組成物の製品への加工性、加硫物の物性が低下することがある。貯蔵安定性の維持という観点からは、これらの変化が小さいことが望ましい。加硫系配合剤を添加しなければ、これらの変化は小さいが、生産性の観点から、加硫系配合剤を予め添加した状態の硬化性組成物が一般に用いられ、加硫系配合剤が添加された状態での貯蔵安定性の向上が重要となっている。
従来、ジエン系ゴム、塩素系ゴムなどの加硫系配合剤としては、ジチオール化合物、トリチオール化合物などの多価チオール化合物が知られている。
しかし、これらの多価チオール化合物は、反応性が大きいため、ゴム等と加硫系配合剤とを混練して加工する際に早期加硫を起こしたり、あるいは早期加硫なく混練をスムーズに行うことができても、その後の保存中にゲル化することがあり、得られる硬化物の物性は優れていても、貯蔵安定性に欠けるという問題点があった。
また、ハロゲン含有架橋性ポリマーの架橋系配合剤としては、トリアジンチオール類が知られている。
しかしながら、トリアジンチオール類は、反応性が大きく架橋速度が速いため、ゴム等と架橋系配合剤とを混練して加工する際に早期架橋を起こしたり、あるいは早期架橋なく混練をスムーズに行うことができても、その後の保存中にゲル化して貯蔵中に粘度が上昇したり、あるいは部分的な架橋が進行するなど、スコーチしやすいため、成型に支障が出ることがあった。
このため、早期加硫防止剤などを併用して貯蔵安定性を向上させる試みがなされているが、早期加硫防止剤の併用により加硫速度が低下したり、耐熱性が悪化するなどの問題点があった。
また、架橋速度の調節のため、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、有機酸塩などを配合し、ハロゲン含有架橋性ポリマーの反応性およびトリアジンチオール類の反応性に応じて、金属の種類、対イオンの種類などを選択して使用することも行われていたが、十分な架橋速度を得ようとすると、スコーチが短くなることがあった。
このため、ジエン系ゴム組成物、塩素系ゴム(ハロゲン含有架橋性ポリマー)組成物等の硬化物の物性に悪影響を及ぼす早期加硫防止剤を使用することなく、貯蔵安定性に優れるとともに、加工性、硬化性に優れるゴム組成物あるいは樹脂組成物を与える新規なチオール化合物誘導体の出現が望まれており、また、貯蔵安定性、適度な架橋速度、得られる架橋物について優れた物理的性質をバランスよく有する硬化性組成物が望まれていた。
本願発明者は上記問題点を解決すべく鋭意研究し、チオール化合物をビニルエーテル等の保護基で保護したチオール化合物誘導体を架橋剤として用いると、ハロゲン含有架橋性ポリマーあるいはジエン系ゴム組成物の硬化物の物性に悪影響を及ぼす早期架橋防止剤を使用することなく、貯蔵安定性、架橋速度に優れ、しかもその架橋物の物理的性質にも優れた硬化性組成物が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
本発明は、貯蔵安定性、加工性、硬化性に優れたゴム組成物あるいは樹脂組成物を与える新規なチオール化合物誘導体を提供すること、貯蔵安定性、架橋速度、架橋物の物理的性質などのバランスに優れたハロゲン含有架橋性ポリマーからなる硬化性組成物を提供することおよびその成形体を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(1)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(1)中、X1、X2、X3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、式(2)中、Aは酸素原子またはイオウ原子であり、
R1は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R2は、下記(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種の基であり、
R3は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R1とR2とは環を形成していてもよい:
(a)アルキル基、ハロゲン化アルキル基、少なくとも1個の水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基から選ばれる1種の基;
(b)アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコール、アリルアルコール類、ケトオキシム類、アルカノールアミン類、ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類、トリアルキルシラノール、脂環式アルコールおよびナフチルアルコール類から選ばれる1種の水酸基含有化合物から、水酸基を除いた残基;
(c)下記一般式(3)
(式(3)中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アセトキシ基またはピペリジノ基のいずれかを示し、Yは水素原子またはハロゲン原子を示す。)で表される基;
(d)下記一般式(4)
(式(4)中、Zは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基またはアシル基のいずれかを示し、nは、1〜3の整数であり、式(4)で表されるフェニル基骨格と結合する置換基Zの数を示す。)で表される基;
(e)−CH2−C6H5または−CHCH3−C6H5で表される基;
(f)下記一般式(5)
下記一般式(6)
(式(6)中、R1、R3は、それぞれ前記式(2)中のR1、R3と同じであり、式(5)および(6)中、Aは、酸素原子またはイオウ原子であり、R4は、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
のいずれかを示す。)で表される基)。
前記チオール化合物誘導体では、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることが好ましい。
また、前記一般式(2)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、下記一般式(8)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(8)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、式(2)は上記と同様である。)。
さらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(9)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(9)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、式(2)は上記と同様である。)。
またさらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(10)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(10)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(2)は上記と同様であり、式(10)中、X1、X2は、互いに同一であっても異なってもよく、R5は、下記(g)〜(k)で表される基から選ばれる1種の基である:
(g)水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基および−NH2から選ばれる基;
(h)下記一般式(11)
(ただし、R6、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基で、R6とR7とは互いに同一であっても異なってもよい。)で表されるジアルキルアミノ基:
(i)下記一般式(12)
(ただし、R8はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アニリノ基、ヒドロキシアニリノ基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表されるモノアルキルアミノ基:
(j)下記一般式(13)
(ただし、R9はアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表される基:
(k)下記一般式(14)
(ただし、R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。)で表される基)。
このようなチオール化合物誘導体では、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることが好ましい。
またこのようなチオール化合物誘導体では、前記一般式(2)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
またさらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(15)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(15)中、R5は式(10)中のR5と同じであり、式(2)は上記と同様である。)。
さらにまた本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(16)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(16)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(16)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、R5は、式(10)中のR5と同じであり、式(2)は上記と同様である。)。
本発明の硬化性組成物は、上記いずれかの本発明のチオール化合物誘導体を含有することを特徴としている。
また、本発明の硬化性組成物は、
ハロゲン含有架橋性ポリマーと、
下記一般式(17)で表される官能基を1分子中に少なくとも1個有するチオール化合物誘導体と
を含有することを特徴としている:
(式(17)中、A、R1、R2、R3は、それぞれ、上記式(2)中のA、R1、R2、R3と同じである。)。
前記一般式(17)で表される官能基は、チオール基(−SH)を有する化合物と、ビニルエーテル類とを反応させて形成されることが好ましい。
前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(1)
で表される化合物であって、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(1)および式(2)は、上記と同様である。)。
また、前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(8)
で表される化合物であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい:
(式(8)中、X1、X2は互いに同一でも異なってもよく、式(2)は上記と同様である。)。
さらに、前期硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(9)
で表される化合物であり、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(9)および式(2)は、上記と同様である。)。
またさらに、前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(10)
で表される化合物誘導体であり、式(10)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(10)および式(2)は、上記と同様である。)。
さらにまた、前期硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(15)
で表される化合物であり、式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(15)および式(2)は、上記と同様である。)。
また前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(16)
で表される化合物であり、式(16)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(16)および式(2)は、上記と同様である)。
これらの本発明の硬化性組成物では、前記一般式(2)および(17)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることも好ましい。
また、前記一般式(2)および(17)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
また本発明の硬化性組成物は、トリアジンチオールと多価ビニルエーテルとを接触させて得られる化合物と、ハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有することを特徴としている。
前記トリアジンチオールは、下記式(18)
で表されることも好ましい。
また前記トリアジンチオールは、下記一般式(19)
で表されることも好ましい(式(19)中、R5は、上記式(10)中のR5と同じである。)。
前記多価ビニルエーテルは、ジビニルエーテル類、トリビニルエーテル類およびテトラビニルエーテル類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、これらの本発明の硬化性組成物では、前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、アクリルゴムであることも好ましく、エピクロロヒドリンゴムであることも好ましく、クロロプレンゴムであることも好ましく、さらに、クロルスルホン化ポリエチレンであることも好ましい。
さらにこれらの本発明の硬化性組成物は、有機酸金属塩を含有することが好ましく、前記有機酸金属塩が、有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩であることも好ましい。また、有機酸金属塩に加えて、加硫促進助剤を含有することも好ましく、前記加硫促進助剤が、オニウム塩および/またはポリアルキレンオキサイドであることも好ましい。
またこれらの本発明の硬化性組成物は、アミン系老化防止剤と、硫黄化合物またはリン化合物とを含有することも好ましい。
本発明の成形体は、前記本発明の硬化性組成物を架橋してなることを特徴としている。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について具体的に説明する。
<チオール化合物誘導体>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールあるいは1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール類などの誘導体であり、該化合物のチオール基(−SH)の水素原子が、特定の置換基で置換された化合物誘導体である。このようなチオール化合物誘導体は、トリアジンチオールなどのチオール化合物とビニルエーテル類とを反応させて得ることができる。以下に具体的なチオール化合物誘導体について説明する。
・トリチオール化合物誘導体
本発明に係るチオール化合物誘導体としては、トリチオール化合物の誘導体である下記一般式(1)で表されるチオール化合物誘導体が挙げられる。
式(1)中、X1、X2、X3は、下記一般式(2)
で表される基である。
式(1)中、X1、X2、X3は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに同一であることが好ましい。
式(2)中、Aは酸素原子またはイオウ原子である。
前記R1としては、水素原子、アルキル基またはフェニル基が挙げられる。このうち、R1は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
前記R2としては、下記(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種の基が挙げられ、本発明では、下記(a)〜(e)からなる群から選ばれる1種の基が好ましい。
(a)アルキル基、ハロゲン化アルキル、水酸基を少なくとも1個有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基から選ばれる1種の基。これらのうちでは、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。
ハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子が1個以上ハロゲンで置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうち、フッ素原子が好ましい。フッ素原子を含有するハロゲン化アルキル基としては、たとえば、前記アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基、RfCH2CH2−で表されるフルオロアルキル基などが挙げられる。前記Rfとしては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられる。
水酸基を1個以上有するアルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。水酸基を1個以上有するアルキル基としては、水酸基を1個または2個有する基が好ましく、水酸基を1個有する基がさらに好ましい。このような水酸基は、1級、2級、3級のいずれであってもよい。このような水酸基を有するアルキル基としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基などの1級の水酸基を有するアルキル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−n−ブチル基などの2級の水酸基を有するアルキル基、3−ヒドロキシ−3−メチル−n−ブチル基などの3級の水酸基を有するアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基、アリル基が好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキルが挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基、メチルベンジル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチルベンジル基が好ましい。
(b)アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコール、アリルアルコール類、ケトオキシム類、トリアルカノールアミン類、ジアルカノールアミン類、アルカノールアミン類、トリアルキルシラノール、脂環式アルコールおよびナフチルアルコール類から選ばれる1種の水酸基含有化合物から、水酸基を除いた残基。これらのうちでは、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコールなどのポリアルキレングリコールが好ましい。
前記アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコールなどのグリコール類としては、具体的には、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、テトラブチレングリコールなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレングリコールが好ましい。
前記ケトオキシム類としては、アセトンケトオキシム、メチルエチルケトンケトオキシムなどが挙げられる。
前記トリアルカノールアミン類としては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられる。
前記ジアルカノールアミン類としては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどが挙げられる。
前記モノアルカノールアミン類としては、4−ジメチルアミノブタノール、3−ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記トリアルキルシラノールとしては、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコールなどが挙げられる。
前記脂環式アルコールとしては、シクロヘキシルアルコール、メントールなどが挙げられる。
前記ナフチルアルコール類としては、ナフチルアルコールが挙げられる。
(c)下記一般式(3)
で表される基。式(3)中、Xとしては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アセトキシ基、ピペリジノ基などが挙げられ、Yとしては、水素原子、ハロゲン原子が挙げられる。
Xとしては、これらのうちでは、ハロゲン原子、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基が好ましい。
このような一般式(3)で表される基としては、具体的には、たとえば、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、メトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基、2−(ジエチルアミノ)エチル基、アミノエチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシロキシエチル基、2−アセトキシエチル基、2−ピペリジノエチル基などが挙げられる。これらのうちでは、特に、2−クロロエチル基、メトキシエチル基が好ましい。
(d)下記一般式(4)
で表される基。ただし、nは、1〜3の整数であり、nが1であることが好ましい。また、nはフェニル基骨格に結合する置換基Zの数を示す。
式(4)中、Zは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基、アシル基などが挙げられる。
このような(4)で表される基としては、具体的には、たとえば、フェニル基、メトキシフェニル基、o−トリル基などのトリル基、イソプロピルフェニル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基などのフルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基などのメトキシフェニル基、p−アミノフェニル基などのアミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基などのヨードフェニル基、p−クロロフェニル基などのクロロフェニル基、p−ブロモフェニル基などのブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基、メトキシフェニル基などが好ましい。
(e)−CH2−C6H5または−CHCH3−C6H5で表される基、すなわち、1−フェニルエチル基、ベンジル基が挙げられる。
(f)下記式一般式(5)または下記一般式(6)で表される基。
ただし、前記式(6)中、R1、R3は、それぞれ前記式(2)中のR1、R3と同じであり、前記式(5)および(6)中、Aは、酸素原子またはイオウ原子であり、R4は、2価の置換基であって、
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
のいずれかを示す。
これらのうち、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(2)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。
この場合、R3は水素原子であることが好ましく、該R1とR2とにより形成される環は、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることが好ましい。また、このような環状構造部分は、置換基を有していてもよい。
本発明に係る他のチオール化合物誘導体としては、下記一般式(8)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体が挙げられる。ここで、式(6)中、X1、X2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。式(2)は上述したとおりである。
さらに、本発明に係るチオール化合物誘導体としては、下記一般式(9)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体を挙げることができる。ここで、式(9)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに同一であることが好ましい。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましく、さらにナトリウムが好ましい。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムが好ましい。これらのうちでは、ナトリウムが好ましい。式(2)は上述したとおりである。
このような、前記一般式(1)(以下「誘導体a」ということがある)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(1)中X1、X2、X3が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表1(表1−1〜1−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
なお、上記表1において、「−Ph−」とは、C6H4で表される2価の芳香族置換基を示し、「Cyclohexylene」とは、C6H10で表される2価のシクロヘキシレン骨格を有する置換基を示し、「Ph−」とは、C6H5で表される1価の芳香族置換基を示し、「Me」とはメチル基を示し、「Et」とはエチル基を示し、
(チオール化合物誘導体a97)とは、Aが酸素原子であり、置換基R1とR2とが環を形成し、R3が水素原子である置換基X1を示している。なお、チオール化合物誘導体a98〜a101もa97と同様の意味である。これらは、後述する表についても同じである。
また、前記一般式(8)(以下「誘導体b」ということがある。)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表2(表2−1〜2−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
また、前記一般式(9)(以下「誘導体c」ということがある)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中X1、X2が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表3(表3−1〜3−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
・ジチオール化合物誘導体
本発明に係るチオール化合物誘導体としては、ジチオール化合物の誘導体である下記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体(以下「誘導体d」ということがある)が挙げられる。
該式(10)中、X1、X2は、下記一般式(2)
で表される基である。
前記式(10)中、X1、X2は、前記式(1)のX1と同じであり、これらは、互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。また、式(2)は前記のとおりである。
式(10)中、R5としては、下記(g)〜(k)で表される基から選ばれる1種の基が挙げられる。
(g)水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基および−NH2から選ばれる基。
これらのうちでは、水素原子、アルキル基、フェニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基が好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基が好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基などが挙げられる。
フェニル基としては、フェニル基(C6H5−)、メトキシフェニル基、o−トリル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、2−ピペリジノエチル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基が好ましい。
(h)下記一般式(11)
で表されるジアルキルアミノ基。ただし、R6、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基およびフルオロアルキル基から選ばれる基で、R6とR7とは互いに同一であっても異なってもよい。これらのうちでは、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基などが好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基などが好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、メチルベンジル基などが挙げられる。
ベンジル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
フルオロアルキル基としては、テトラフルオロエチル基が挙げられる。
(i)下記一般式(12)
で表されるモノアミノ基。ただし、R8はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アニリノ基およびヒドロキシアニリノ基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基としては、前記R6、R7で示した基と同様の基が挙げられる。
アニリノ基としては、アニリノ基、p−メチルアニリノ基が挙げられる。
ヒドロキシアニリノ基としては、o−,m−,p−ヒドロキシアニリン誘導体に由来する基が挙げられる。
(j)下記一般式(13)
で表される基。ただし、R9はアルキル基、フェニル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基、フェニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基などが好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基などが好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基などが挙げられる。
ハロゲノフェニル基としては、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジヨードフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、p−クロロフェニル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
(k)下記一般式(14)
で表される基。ただし、R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基としては、前記R9で示したアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
フェニル基としては、フェニル基(C6H5−)、メトキシフェニル基、o−トリル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、2−ピペリジノエチル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基、メトキシフェニル基などが好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(11)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。
この場合、R3は水素原子であることが好ましく、該R1とR2とにより形成される環は、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることが好ましい。また、このような環状構造に係る構成成分は、置換基を有していてもよい。
本発明に係るチオール化合物誘導体のうちのジチオール化合物誘導体は、さらに、下記一般式(15)
で表されるチオール化合物誘導体(以下「誘導体e」ということがある)であって、該式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体が挙げられる。
式(15)中、R5は、前記式(10)中のR5と同じものが挙げられ、式(2)は前記のとおりである。
本発明に係るチオール化合物誘導体のうちのジチオール化合物誘導体は、さらに、下記一般式(16)
で表されるチオール化合物誘導体(以下「誘導体f」ということがある)が挙げられる。
式(16)中、X1は、下記一般式(2)
で表される基である。式(16)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムが挙げられる。これらのうちでは、ナトリウムが好ましい。
R5は前記一般式(10)のR5と同じであり、式(2)は前記のとおりである。
このような、前記一般式(10)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(10)中X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体の「好ましい置換基R5」としては、たとえば、水素原子、メチル基、フェニル基、アミノ基、ジヘキシルアミノ基、ビス(2−ヘキシル)アミノ基、ジエチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ基、ステアリルアミノ基、エチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、4−アニリノ−N−イソプロピルアニリノ基、メトキシ基、1−ナフチルオキシ基、m−クロロフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、フェノキシ基などが挙げられ、「さらに好ましい置換基R5」としては、水素原子、メチル基、フェニル基、ジブチルアミノ基、メトキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。
また、前記式(15)、(16)で表される誘導体e、誘導体fについても、好ましい置換基R5およびさらに好ましい置換基R5としては、上記式(10)で表されるチオール化合物誘導体dと同様のものが挙げられる。
また、これら前記(g)〜(k)のうち、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
式(10)、(15)、(16)で表されるチオール化合物誘導体d、e、fについて、X1、X2が互いに同一であって、前記好ましい置換基R5、さらには、前記さらに好ましい置換基R5を有するものとしては、具体的には、たとえば、X1についてA、R1、R2、R3が、それぞれ下記表4(表4−1〜4−4)、表5(表5−1〜5−4)、表6(表6−1〜6−4)に示す置換基であるチオール化合物誘導体(d)、(e)、(f)が挙げられる。
本発明に係るチオール化合物誘導体においては、上記トリチオール化合物誘導体およびジチオール化合物誘導体に加え、前記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体の置換基−SX1あるいは−SX2のうちの一つが、さらに−R5で置換されたモノチオール化合物誘導体も挙げられる。このようなモノチオール化合物誘導体は、R5、X1(あるいはX2)は、前記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体のR5、X1と同様である。
<チオール化合物誘導体の製造方法>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、分子中にチオール基を1〜3個有するチオール化合物のチオール基(−SH)の一部または全部と、ビニルエーテル等の二重結合部分とを結合させて得られる。換言すれば、チオール化合物のチオール基の水素原子を、ビニルエーテル等に由来する置換基で置換させて得ることができる。
このようなチオール化合物誘導体の製造方法は特に限定されず、所望の置換基を形成させることが可能な公知の方法を用いることができる。
たとえば、トリアジンチオール、トリアジンジチオールなどのチオール化合物と、モノビニルエーテル類、アルデヒド、ケトン等とを所定量接触させて、チオール基(−SH基)が所定量置換されたチオール化合物誘導体を得ることができる。
なお、多価ビニルエーテル化合物とからチオール化合物誘導体を得ることもできる。この場合、多価ビニルエーテルによりチオール化合物の架橋物が形成されることがある。
このようなチオール化合物とビニルエーテル類とを接触反応させる際、必要に応じ酸性触媒を使用することができる。
このようにして得られるチオール化合物誘導体は、チオール基とビニルエーテル類のビニル基等とが等量の割合で反応した、チオール基の水素原子が全てビニルエーテル類等に由来する置換基で置換された誘導体、チオール基が1個残留している誘導体、残留するチオール基がアルカリ金属あるいは多価金属、あるいは第4級アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、ピリジニウム塩基などのオニウム塩基により造塩された誘導体が挙げられる。
以下に、チオール化合物、ビニルエーテル類等について説明するとともに、チオール化合物とビニルエーテル類等との反応において必要に応じて用いられる触媒、およびチオール化合物誘導体の製造方法について詳説する。
・チオール化合物
本発明で用いられるチオール化合物としては、チオール基が1分子当たり2個以上結合しているものが好ましく、そのようなチオールであればいずれのチオール化合物も用いることができる。
このようなチオール化合物としては、たとえば、ジメルカプトベンゼンなどのフェニルチオール、チオカルボン酸類、チアジアゾールなどのチオール化合物、γメルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、1,10−ジメルカプトデカンなどの脂肪族ジチオール類、下記式(18)で表される1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、下記一般式(19)で表されるトリアジンチオール類が挙げられる。
また、これらのトリチオール化合物、ジチオール化合物に加え、チオール化合物として、上記一般式(19)のチオール基(−SH)の一つがさらにR5で置換された、モノチオール化合物を用いることもできる。
式(19)中、R5は、前記式(10)で示した、R5と同じである。
このような前記一般式(19)で表されるジチオール化合物としては、好ましくは、
s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−メチル−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェニル−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−アミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−[ビス(2−ヘキシル)アミノ]−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジエチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジシクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジフェニルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジベンジルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジアリルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジドデシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジメチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェニルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ステアリルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−エチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(cis−9−オクタデセニルアミノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−シクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(4−アニリノ−N−イソプロピルアニリノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−メトキシ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(1−ナフチルオキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(m−クロロフェノキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(2,4−ジメチルフェノキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェノキシ−s−トリアジン−2,4ジチオールなどが挙げられる。
これらのうちでは、6−フェニル−s−トリアジン−2,4ジチオールが好ましい。
・ビニルエーテル類等
本発明に係るチオール化合物誘導体の製造に用いることのできるビニルエーテル類、アルデヒド、ケトンのうち、反応性の観点からはビニルエーテル類を好ましく用いることができる。ビニルエーテル類は、1分子当たりビニル基が1個以上含まれていればよく、モノビニルエーテル、モノビニルチオエーテル、環状のビニルエーテル類であるピラン誘導体、フラン誘導体が挙げられる。また、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、テトラビニルエーテルなどの多価ビニルエーテルを用いることができる。
これらのうちでは、本発明では、モノビニルエーテル、モノビニルチオエーテル、環状のビニルエーテル類であるピラン誘導体、フラン誘導体が好ましい。
前記ビニルエーテルとしては、たとえば、下記一般式(20)で表されるビニルエーテルまたはビニルチオエーテルが挙げられる。
式(20)中、R1、R2、R3、Aは、前記式(2)で表されるR1、R2、R3、Aと同じである。また、R1とR2とは環を形成していてもよい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(20)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。この場合、R3は水素原子であることが好ましい。
このようなビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、下記に示す化合物が挙げられる。
メチル−1フェニルビニルエーテル、
エチル−1フェニルビニルエーテル、
メチル−1メチルビニルエーテル、
エチル−1エチルビニルエーテル、
エチル−1メチルビニルエーテル、
メチルビニルエーテル、
エチルビニルエーテル、
プロピルビニルエーテル、
イソプロピルビニルエーテル、
n−ブチルビニルエーテル、
イソブチルビニルエーテル、
sec−ブチルビニルエーテル、
tert−ブチルビニルエーテル、
ペンチルビニルエーテル、
ヘキシルビニルエーテル、
ヘプチルビニルエーテル、
オクチルビニルエーテル、
2−エチルヘキシルビニルエーテル、
デシルビニルエーテル、
セチルビニルエーテル、
ステアリルビニルエーテル、
プロパジエニルビニルエーテル、
イソプロペニルビニルエーテル、
2−プロピニルビニルエーテル、
3−ブチニルビニルエーテル、
3−メチル−2−ブテニルビニルエーテル、
アリルビニルエーテル、
エチレングリコールモノビニルエーテル、
ジエチレングリコールモノビニルエーテル、
トリエチレングリコールモノビニルエーテル、
トリエタノールアミンモノビニルエーテル、
1−クロルエチルビニルエーテル、
2−クロルエチルビニルエーテル、
アセトンオキシムビニルエーテル、
2−メチルアリルビニルエーテル、
3−フェニルプロパルギルビニルエーテル、
シクロヘキシルビニルエーテル、
2−ブロモエチルビニルエーテル、
メトキシエチルビニルエーテル、
2−ブトキシエチルビニルエーテル、
ジエチレングリコールメチルビニルエーテル、
2−アセトキシエチルビニルエーテル、
ジメチルアミノエチルビニルエーテル、
2−(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、
アミノエチルビニルエーテル、
3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、
トリメチルシロキシエチルビニルエーテル、
トリメチルシリルビニルエーテル、
トリエチルシリルビニルエーテル、
1−メンチルビニルエーテル、
2−メトキシフェニルビニルエーテル、
o−トリルビニルエーテル、
p−ニトロフェニルビニルエーテル、
2−ナフチルビニルエーテル、
フェニルビニルエーテル、
p−フルオロフェニルビニルエーテル、
p−メトキシフェニルビニルエーテル、
p−アミノフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリクロロフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリメチルフェニルビニルエーテル、
2,4−ジクロロフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリブロモフェニルビニルエーテル、
N−メチルアミノフェニルビニルエーテル、
p−(ジメチルアミノ)フェニルビニルエーテル、
4−アセチルフェニルビニルエーテル、
2−ニトロフェニルビニルエーテル、
3−ニトロフェニルビニルエーテル、
p−ヨードフェニルビニルエーテル、
p−クロロフェニルビニルエーテル、
1−フェニルエチルビニルエーテル、
ベンジルビニルエーテル、
2−ピペリジノエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
環状モノビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、
2,3−ジヒロドフラン、
3,4−ジヒドロフラン、
2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、
3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピランなどが挙げられる。
多価ビニルエーテル類としては、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、テトラビニルエーテルなどが挙げられる。
ジビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、
ジビニルエーテル、
ジビニルフォルマール、
エチレングリコールジビニルエーテル、
ジエチレングリコールジビニルエーテル、
トリエチレングリコールジビニルエーテル、
トリエタノールアミンジビニルエーテル、
1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、
1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、
1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、
4,4‘−ジハイドロキシアゾベンゼンジビニルエーテル、
ハイドロキノンジビニルエーテル、
ビスフェノールAジビニルエーテルなどが挙げられる。
トリビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、グリセロールトリビニルエーテルなどが挙げられる。
テトラビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどが挙げられる。
なお、多価ビニルエーテルを用いて製造する場合、製造条件により、多価ビニルエーテルが複数のチオール化合物と架橋して、高分子化合物となることがある。
ビニルチオエーテルとしては、前記ビニルエーテル、環状モノビニルエーテルに対応するビニルチオエーテル等が挙げられる。このようなビニルチオエーテルとしては、具体的には、たとえば、
3−(トリメチルシリル)プロピルビニルチオエーテル、
2−ハイドロキシエチルビニルチオエーテル、
2−(N−モルフォリノ)エチル−S−ビニルチオエーテル、
2−(N−β−ハイドロキシエチル)アミノエチル−S−ビニルチオエーテル、
2−アミノエチルビニルチオエーテル、
p−クロロフェニルチオエーテル、
フェニルビニルチオエーテル、
ジビニルチオエーテルなどが挙げられる。
これらのうち、前記一般式(20)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
・触媒
本発明に係るチオール化合物誘導体を、前記チオール化合物と、ビニルエーテル類等との反応により製造する場合、必要に応じ、触媒を用いることができる。触媒としては、酸性触媒が好ましく、酸性触媒としては、酸性リン酸エステル、塩化水素、チオニルクロライド、塩化亜鉛などを用いることができる。これらのうちでは、酸性リン酸エステルを好ましく用いることができる。
このような酸性リン酸エステルとしては、たとえば、下記一般式(21)
式(21)中、R11は、炭素原子数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリル基であり、mは1または2である。
このような酸性リン酸エステルは、第1アルコールあるいは第2アルコールのリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルであり、具体的には、第1アルコールとしては、たとえば、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコールなどが挙げられ、第2アルコールとしては、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
このような酸性リン酸エステルは、1種単独で、または複数を併用して用いることができる。
前記酸性リン酸エステルを用いる場合、その使用量は、前記チオール化合物に対して、好ましくは0.05〜5重量%程度である。酸性リン酸エステルの使用量が少ないと反応速度が遅くなる場合がある。
・反応溶媒
前記チオール化合物と、ビニルエーテル類等との反応は、無溶媒あるいは溶媒中で行うことができる。反応速度、操作性の観点から溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒としては、公知の有機溶剤を用いることができ、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、ケトンなどが挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトンなどが挙げられる。
・チオール化合物誘導体の製造
本発明に係るチオール化合物誘導体は、溶媒中あるいは無溶媒下で、必要に応じ酸性リン酸エステルの存在下に、好ましくは室温〜180℃の温度範囲で、前記チオール化合物と前記ビニルエーテル類と接触させて得ることができる。反応時間は通常、1〜60分程度である。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部がビニルエーテル類等で置換された化合物であり、チオール化合物とビニルエーテル類との配合比率をコントロールすることにより、所望のチオール化合物誘導体を得ることができる。具体的には、たとえば、下記の配合割合で反応させればよい。
前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子の全てをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(1)を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは3〜5モルの量を用いることが望ましい。
前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子のうちの2つをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(8)を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは1.8〜2.3モルの量を用いることが望ましい。
さらに、チオール基の水素原子がアルカリ金属で置換されたチオール化合物誘導体(9)を得る場合、トリチオール化合物(18)と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの水溶液をトリチオール化合物(18)1モルに対し、1〜1.1モル反応させて得た塩に対して、ビニルエーテル類を1.8〜2.3モル反応させることにより得られる。
前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子の全てをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(10)を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは2〜5モルの量を用いることが望ましい。
前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子のうちの1つをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(15)を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは0.8〜1.3モルの量を用いることが望ましい。
さらに、チオール基の水素原子がアルカリ金属で置換されたチオール化合物誘導体(16)を得る場合、ジチオール化合物(19)と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの水溶液をジチオール化合物(19)1モルに対して1〜1.1モル反応させて得た塩に対して、ビニルエーテル類を0.8〜1.3モル反応させることにより得られる。
・処理
得られたチオール化合物誘導体中に、活性を有する触媒が混在していると、保存条件などによっては、得られたチオール化合物誘導体が加水分解を生じる場合がある。このため、本発明のチオール化合物誘導体を、前記チオール化合物と、ビニルエーテル類との酸性触媒存在下での反応により製造する場合には、反応生成物中に混在する触媒を除去するかまたは失活させるのが好ましい。混在する触媒を除去または失活させた場合には、大気中で長期間保存した場合などにおいても、チオール化合物誘導体が分解を生じにくく安定であり、保存性に優れ、より実用的である。
前記チオール化合物と、ビニルエーテル類とを、酸性触媒、特に酸性リン酸エステルの存在下に接触させてチオール化合物誘導体を得た場合には、ハイドロタルサイトまたは金属アルコキサイドで処理することが望ましい。
ハイドロタルサイトによる処理では、酸性リン酸エステルなどの酸性触媒を含有する反応生成物と、ハイドロタルサイトとを接触させ、ハイドロタルサイトに酸性触媒を吸着させる。ハイドロタルサイトに吸着した触媒は、ろ過、沈殿などの方法により、容易に反応生成物から除去することができる。
金属アルコキサイドによる処理では、酸性リン酸エステルなどの酸性触媒を含有する反応生成物に、金属アルコキサイドを添加する。これにより、酸性触媒の酸基(酸性リン酸エステルのリン酸基など)をつぶし、反応生成物中に混在する触媒を失活させることができる。用いる金属アルコキサイドの金属は、Ti、AlおよびZrよりなる群から選ばれる金属であるのが好ましい。
<チオール化合物誘導体の用途>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、架橋剤として有用であり、各種の硬化性樹脂に配合して用いることができる。本発明に係るチオール化合物誘導体は、チオール基(−SH)がビニルエーテル等に由来する基で保護されているため、アクリルゴム等の加硫剤として用いる場合に、保存安定性がよく、たとえば、加工時あるいはその後の保存時のゲル化を抑制することができる。また、加硫成形時あるいは架橋形成時に、ビニルエーテル等に由来する保護基を加熱等により脱離させ、−SH基を有するチオール化合物を容易に再生させることができるので、本来の反応性を容易に復活させて、塩素含有アクリルゴム、エポキシ基を含有する樹脂等の加硫あるいは架橋を有効に行わせ、諸物性に優れた架橋物を得ることができる。
このようなビニルエーテル類等に由来する保護基の脱離は、酸触媒を用いて行うことが好ましい。このような酸触媒としては、たとえば、ハロゲノカルボン酸、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステルなどが挙げられる。
本発明に係るチオール誘導体は、チオール基を再生した後、二重結合への付加、エポキシ環への付加、有機性塩素の置換に対して用いることができる。
このようなチオール化合物誘導体は、単独でまたは促進剤、脱ハロゲン剤などと併用して用いることができる。
前記二重結合を有するゴム、樹脂としては、たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、不飽和ポリエステル樹脂、二重結合を導入したアクリルゴムなどが挙げられる。
エポキシ基を有するゴムあるいは樹脂としては、エポキシ樹脂オリゴマー、エポキシ基を含有するアクリルゴムなどが挙げられる。
有機性塩素を含有するゴムあるいは樹脂としては、アクリルゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、これらのゴムあるいは樹脂を、1種単独でまたは複数をブレンドあるいは多層構造にしたものに混合させて用いることができ、このような本発明に係るチオール化合物誘導体を含有するゴムあるいは樹脂は、共架橋、共加硫、金属と加硫接着された複合材料として成型するのに有用である。
<硬化性組成物>
本発明に係る硬化性組成物は、上述したチオール化合物誘導体を含有する。
また、本発明に係る硬化性組成物は、ハロゲン含有架橋性ポリマーと、上述した特定のチオール化合物誘導体とを含有している。以下、ハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体、その他の成分等について具体的に説明する。
・ハロゲン含有架橋性ポリマー
本発明に用いられるハロゲン含有架橋性ポリマーは、ハロゲンを含有する架橋可能な高分子化合物である。ハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちでは、塩素原子を含有することが好ましい。
塩素原子を含有する架橋性ポリマーとしては、塩素含有アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロプレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンなどを好ましく用いることができる。これらのうちでは、塩素含有アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴムをさらに好ましく用いることができる。
・ハロゲン含有アクリルゴム
前記ハロゲン含有アクリルゴムとしては、(A)アルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のアクリレート系モノマーと、(B)架橋点モノマーと、必要に応じ、(C)前記アクリレート系モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を好ましく用いることができる。
(A)アクリレート系モノマー
アクリレート系モノマーとしては、アクリル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10のアルキル(メタ)アクリレートを望ましく用いることができる。このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用して用いることができる。
このようなアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性に優れた硬化物を得ることができる。アルキル鎖が長いと耐寒性に有利となるが、耐油性が不利となることがあり、アルキル鎖が短いとその逆の傾向があることから、これらのうちでは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが耐油性、耐寒性のバランスの観点から特に好ましい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、アルコキシ基に係るアルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜4であり、アクリレートの酸素原子に結合するアルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを望ましく用いることができる。このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−or3−エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で又は複数を併用して用いることができる。
こられのうちでは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートをさらに好ましく用いることができる。
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性に優れた硬化物を得ることができる。
上記アルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独でまたは併用して用いることができる。アルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとを併用して用いる場合、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレートに対して、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%の量で用いることが望ましい。このような範囲でアルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性のみならず、耐熱性などの常態物性にも優れる硬化物を得ることができる。
(B)架橋点モノマー
本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムの製造に使用する架橋点モノマー(B)は、2以上の官能基を有する重合性モノマーであり、ハロゲン含有アクリルゴムの架橋点を形成する。
このような2官能反応性モノマーとしては、反応性ハロゲン含有ビニルモノマー、エポキシ基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー、ジエン系モノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミド基含有モノマーなどが挙げられる。
これらのうち、本発明では、反応性のハロゲン原子を含有する重合性モノマーを少なくとも1種用いる。すなわち、本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムの製造に使用する架橋点モノマー(B)としては、上記2官能性モノマーのうち、反応性ハロゲン含有モノマーを少なくとも1種用い、さらに、前記2官能性モノマーのうち、ハロゲン原子を含有しない2官能性モノマーを併用してもよい。
ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、このうち塩素が好ましい。
上記2官能反応性モノマーのうち、ハロゲン原子を含有する重合性モノマーとしては、たとえば、クロロエチルビニルエーテル、クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、クロロメチルスチレンなどの反応性ハロゲン含有モノマーが挙げられる。
架橋点モノマーにおいて、反応性ハロゲン含有モノマーと、ハロゲン原子を含有しない2官能性モノマーとを併用する場合、上記のうちでは、カルボキシル基含有ビニルモノマーを用いることが好ましい。
このようなカルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのジカルボン酸、モノメチルマレエート、モノエチルマレエート、モノブチルマレエート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノブチルフマレートなどのジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。これらのカルボキシル基含有ビニルモノマーは、1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
(C)エチレン性不飽和モノマー
前記アクリレート系モノマー(A)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、シクロヘキシルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレン、ピペリレン、イソプレン、ペンタジエン、ブタジエン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。
これらのエチレン性不飽和モノマー(C)は1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
また、必要に応じて、混練加工性、押し出し加工性等の改善などの目的で、多官能不飽和モノマーを使用してもよく、オリゴマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオール(メタ)ジアクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール類;ビスフェノールA、EO付加物ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレートなどを使用してもよい。
本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムは、前記アクリレート系モノマー(A)に由来する成分が、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の量で、前記架橋点モノマー(B)として反応性ハロゲン含有重合性モノマーに由来する成分が、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%の量で、前記エチレン性不飽和モノマー(C)に由来する成分が、好ましくは0〜79.9重量%、さらに好ましくは10〜60重量%の量((A)+(B)+(C)=100重量%)で含まれていることが耐寒性、耐油性、耐熱性のバランスの観点から望ましい。
このようなハロゲン含有アクリルゴムの分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、好ましくは100万以下、さらに好ましくは5万〜50万であることが、加工性、ゴムの強度などの機械的性質の観点から望ましい。
・ハロゲン含有アクリルゴムの製造
このようなハロゲン含有アクリルゴムは、公知の方法で製造することができる。たとえば、前記アクリレート系モノマー(A)は、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の量で、前記架橋点モノマー(B)として反応性ハロゲン含有重合性モノマーを好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%の量で、前記エチレン性不飽和モノマー(C)は、好ましくは0〜79.9重量%、さらに好ましくは10〜60重量%の量((A)+(B)+(C)=100重量%)でラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの各種方法によりランダム重合させればよい。
・エピクロロヒドリンゴム
本発明で使用できるエピクロロヒドリンゴムは、エピクロロヒドリンの単独重合体あるいはアルキレンオキシド、不飽和オキシドとの共重合により得ることができる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどを好ましく用いることができる。不飽和オキシドとしては、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
このようなエピクロロヒドリンゴムは公知の方法により製造することができ、また、市販のものを用いることもできる。
アルキレンオキシド、不飽和オキシドとの共重合体の場合、エピクロロヒドリンとアルキレンオキシド等とを通常等モルで反応させたものを好ましく用いることができ、アルキレンオキシド又は不飽和オキシドに由来する成分が、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜60重量%の範囲にあるものが望ましい。
エピクロロヒドリンゴムの分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、好ましくは20万以下、さらに好ましくは5000〜10万であることが、加工性、ゴムの強度などの機械的性質の観点から望ましい。
・その他のハロゲン含有架橋性ポリマー
本発明で用いることができるその他のハロゲン含有架橋性ポリマーとしては、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらは、市販のものを用いることができる。
<チオール化合物誘導体>
ハロゲン含有架橋性ポリマーを含有する本発明の硬化性組成物は、下記一般式(17)で表される官能基を1分子中に少なくとも1個有するチオール化合物誘導体を含有している。
式(17)中、A、R1、R2、R3は、それぞれ、前記一般式(2)のA、R1、R2、R3と同様である。
本発明で用いられる前記一般式(17)で表される官能基を有する具体的な化合物としては、たとえば、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールあるいは1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール類などの誘導体が挙げられ、該化合物のチオール基(−SH)の水素原子が、特定の置換基で置換された化合物である。このようなチオール化合物誘導体は、トリアジンチオールなどのチオール基(−SH)を有する化合物と、ビニルエーテル類とを反応させて得ることができる。
このようなチオール化合物誘導体としては、具体的には、上述した本発明のチオール化合物誘導体である、トリチオール化合物誘導体、ジチオール化合物誘導体およびモノチオール化合物誘導体を挙げることができる。
また、上述したチオール化合物誘導体の他、前記トリチオール化合物あるいは前記ジチオール化合物と多価ビニルエーテルとを接触させて得られるチオール化合物誘導体を挙げることがができる。このような多価ビニルエーテルとの反応により得られるチオール化合物誘導体は、高分子状の化合物である。
この場合、得られるチオール化合物誘導体は、原料となるトリアジンチオールのチオール基の水素原子の全部又は一部が多価ビニルエーテルで置換された化合物であり、通常、該多価ビニルエーテルは、さらに他のトリアジンチオールと反応して架橋構造を形成している。
本発明の硬化性組成物に含有されるチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部がビニルエーテル類等で置換された化合物であり、チオール化合物とビニルエーテル類との配合比率をコントロールすることにより、所望のチオール化合物誘導体を得ることができる。
チオール化合物誘導体は、ビニルエーテル類としてモノビニルエーテルを用いる場合には、本発明のチオール化合物誘導体を製造する上述の方法により好適に得ることができる。
また、ビニルエーテル類として多価ビニルエーテルを用いる場合には、以下のようにしてチオール化合物誘導体を製造することができる。
前記一般式(18)あるいは(19)で表されるチオール化合物、すなわち下記式(18)あるいは(19)(R5は前述のとおり)
で表されるチオール化合物と、前記多価ビニルエーテルとを接触させて得られるチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部が多価ビニルエーテルで置換された化合物であり、通常、該多価ビニルエーテルは、さらに他のチオール化合物と反応して架橋構造を形成している。
チオール化合物と多価ビニルエーテルとの配合割合は、通常、用いるチオール化合物および多価ビニルエーテルにより異なるので、以下に、チオール化合物毎の好ましい配合割合などについて説明する。
(i)トリチオール化合物(18)と多価ビニルエーテルとの反応
▲1▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子の全てまたは一部をジビニルエーテルで置換させて、チオール化合物誘導体を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ジビニルエーテルを好ましくは1.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルの量で用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成していてもよいが、ジビニルエーテルが架橋を形成せず、前記一般式(5)で表されるような官能基を有する化合物が生成していてもよい。
前述したとおり、チオール化合物と反応したジビニルエーテルは、さらに他のトリチオール化合物と反応して架橋構造を形成するものと推測される。具体的には、たとえば、前記一般式(5)で表される官能基の末端ビニル基が他のチオール化合物と反応するものと推測される。
▲2▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてトリビニルエーテルを用いる場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、トリビニルエーテルを好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは3〜10モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、トリビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、トリビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が存在していてもよい。
▲3▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてテトラビニルエーテルを用いる場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、テトラビニルエーテルを好ましくは0.75〜10モル、さらに好ましくは3〜7モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、テトラビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、テトラビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が混入していてもよい。
このようにトリチオール化合物(18)と多価ビニルエーテルから得られるチオール化合物誘導体は、架橋構造を有する複数種の分子量を有する組成物であり、通常、オリゴマー状あるいは高分子状態を呈している。
このようなチオール化合物誘導体は、粘度が、好ましくは10〜10000cps、さらに好ましくは1000〜5000cpsの範囲にあることが望ましい。
また、チオール化合物誘導体の重量平均分子量は、好ましくは400〜10000、さらに好ましくは1000〜5000の範囲にあることが望ましい。
(ii)ジチオール化合物(19)と多価ビニルエーテルとの反応
▲1▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子の全てまたは一部をジビニルエーテルで置換させて、チオール化合物誘導体を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ジビニルエーテルを好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成していてもよいが、ジビニルエーテルが架橋を形成しないチオール化合物誘導体が生成していてもよい。
▲2▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてトリビニルエーテルを用いる場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、トリビニルエーテルを好ましくは0.7〜10モル、さらに好ましくは3〜7モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、トリビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、トリビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が混入していてもよい。
▲3▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてテトラビニルエーテルを用いる場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、テトラビニルエーテルを好ましくは0.5〜7モル、さらに好ましくは1〜5モルの量を用いることが望ましい。
このようにジチオール化合物(19)と多価ビニルエーテルから得られるチオール化合物誘導体は、架橋構造を有する複数種の分子量を有する組成物であり、通常、オリゴマー状あるいは高分子状態を呈している。
このようなチオール化合物誘導体は、粘度が、好ましくは10〜10000cps、さらに好ましくは100〜1000cpsの範囲にあることが望ましい。
また、チオール化合物誘導体の重量平均分子量は、好ましくは400〜10000、さらに好ましくは1000〜5000の範囲にあることが望ましい。
<加硫促進剤>
本発明の硬化性組成物は、上述のハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体に加えて、加硫促進剤として、有機酸金属塩を用いるのが好ましく、有機カルボン酸のアルカリ金属塩および/または有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩がより好ましく用いられる。
有機カルボン酸のアルカリ金属塩としては、炭素数3〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸および芳香族カルボン酸などの有機カルボン酸のリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが用いられる。具体的には、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのうち、特に好ましいのは、炭素数8〜18の脂肪酸のカリウム塩またはナトリウム塩であり、カリウム塩の方が一般に加硫速度を早くする傾向を有している。
有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩としては、炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸および芳香族カルボン酸などの有機カルボン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などが用いられる。具体的には、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸バリウム、酒石酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、特に好ましいものとして、炭素数8〜18の脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩が挙げられる。
<加硫促進助剤>
本発明の硬化性組成物は、上記加硫促進剤とともに、加硫促進助剤を含有するのが好ましい。加硫促進助剤としては、公知の加硫促進助剤を用いることができ、たとえばMg、Ca、Ba、Zn、Na、K、Li、Fe、Cuなどの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ハイドロタルサイト、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどを挙げることができる。
具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、ジブチルチオカルバミンサン亜鉛、メタホウ酸バリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ポリエチレングリコール#600などが挙げられる。金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩などは、受酸剤として作用して加硫促進効果をうながすことができる。また、架橋反応速度の調整のため、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミドや、スルホンアミド誘導体、有機酸などの加硫遅延剤(早期架橋防止剤)を用いてもよい。
これらは、1種単独で又は複数を併用して用いることができる。
このうち本発明では、加硫促進助剤として、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、アルソニウム化合物、スチポニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、セレソニウム化合物、スタンノニウム化合物、ヨードニウム化合物などのオニウム化合物を用いるのが望ましい。
本発明で加硫促進助剤として好ましく用いることのできるオニウム化合物としては、具体的には、たとえば、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、ステアリン酸テトラブチルアンモニウム、臭化セチルメチルアンモニウムなどの四級アンモニウム化合物;メチルトリオクチルホスホニウムテトラフルオロボレート、ベンジルトリオクチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、メチルトリオクチルホスホニウムアセテート、メチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリオクチルホスホニウムクロライドなどの四級ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また本発明では、加硫促進助剤として、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド類を用いることも好ましい。
<老化防止剤>
本発明の硬化性組成物は、上述のハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体に加えて、老化防止剤を含有することも好ましい。老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、フェノール系、亜リン酸エステル系、チオエーテル系などの老化防止剤が好ましく用いられる。
一般に、アクリルゴム配合物においては、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを代表例とするジフェニルアミン系老化防止剤が単独で用いられるが、本発明では、ジフェニルアミン系老化防止剤と、イオウ系老化防止剤またはリン系老化防止剤とを併用するのが望ましい。
イオウ系老化防止剤としては、好ましくは、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などのチオエーテル系化合物が挙げられる。また、リン系老化防止剤としては、好ましくは、トリス(ノニルフェニル)フォスファイトなどの亜リン酸系化合物が挙げられる。
<その他の配合物>
本発明に係る硬化性組成物は、上述した各成分以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の添加物などを配合物として含有していてもよい。このような配合物としては、たとえば、補強剤、充填材、可塑剤、加工助剤、顔料、滑剤、ハロゲン含有架橋性ポリマー以外の樹脂などが挙げられる。
<硬化性組成物>
本発明に係る硬化性組成物は、前記ハロゲン含有架橋性ポリマーと、前記チオール化合物誘導体とを含有し、さらに、必要に応じ、有機酸金属塩、加硫促進助剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤、顔料、加工助剤、滑剤等を含有することができる。
このような前記ハロゲン含有架橋性ポリマーと、前記チオール化合物誘導体とからなる硬化性組成物は、公知の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されない。たとえば、各成分を配合し、ロール、密閉式混練機等で混練した後、公知の架橋条件に従って加硫成形することにより得られる。
このような硬化性組成物中におけるチオール化合物誘導体の配合割合は、ハロゲン含有架橋性ポリマーに対して、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは1〜3重量%の割合であることが望ましい。
チオール化合物誘導体の配合割合が0.1重量%より小さいと、架橋密度が低下することがあり、5重量%より大きいと、架橋密度が高くなりすぎて成型物が脆くなることがある。
得られた硬化性組成物は、加熱して架橋することができる。架橋成型温度は、130〜200℃程度が好ましい。架橋温度が130℃より低いと、架橋がされなかったりあるいは不十分となることがある。架橋温度が200℃より高いと、架橋反応が速く進行しすぎて成型不良を起こすことがある。
架橋時間は、架橋方法、温度、形状により異なり限定されないが、通常1分から5時間程度である。加熱方法に特に制限はなく、プレス、蒸気、オーブン、熱風などにより行うことができる。
本発明に係る硬化性組成物は、架橋剤として特定のチオール化合物誘導体を用いている。すなわち、該チオール化合物誘導体は、チオール基(−SH)がビニルエーテル等に由来する基で保護されているため、塩素含有アクリルゴム等の加硫剤として用いる場合に、保存安定性がよく、たとえば、加工時あるいはその後の保存時のゲル化を抑制することができる。また、加硫成形時あるいは架橋成形時に、ビニルエーテル等に由来する保護基を加熱等により脱離させ、−SH基を有するチオール化合物を容易に再生させることができるので、本来の反応性を容易に復活させて、塩素含有アクリルゴム、エポキシ基を含有する樹脂等の加硫あるいは架橋を有効に行わせ、諸物性に優れた架橋物を得ることができる。
このようなビニルエーテル類等に由来する保護基の脱離は、酸触媒を用いて行うことが好ましい。このような酸触媒としては、たとえば、ハロゲノカルボン酸、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステルなどが挙げられる。
このようなチオール化合物誘導体は、チオール基を再生された後、二重結合への付加、エポキシ環への付加、有機性塩素の置換に関与する。チオール化合物誘導体は、単独でまたは促進剤、脱ハロゲン剤などと併用して用いることができる。
このようにして、架橋により得られる成形体は、硬さ、引っ張り強さ、圧縮永久歪みなどに優れ、ホース、シール部品等に有用である。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、ゴム、樹脂等からなる硬化性組成物の架橋剤として有用で、本発明に係るチオール化合物誘導体を含有する組成物は、チオール化合物の反応が抑えられているので成型硬化する前の保存安定性に優れている。また、前記組成物の成型時は、反応性の高いチオール化合物を熱により容易に再生できるので、硬化を適時、迅速に行うことができる。また、本発明に係るチオール化合物誘導体を硬化性組成物の加硫剤として用いることにより、硬化物の諸物性を損なうことがある保存性あるいは硬化性を制御するための早期加硫防止剤を添加する必要がなくなるので、諸物性に優れた硬化物を得ることができる。
また、本発明に係る硬化性組成物は、硬化性組成物中で、成型物への硬化前の保存に際しては、チオール化合物誘導体が特定の保護基により保護されて反応が抑制されているので保存安定性に優れる。また、硬化性組成物の成型時は、反応性の高いチオール化合物を熱により容易に再生できるので、硬化を適時、迅速に行うことができる。また、本発明に係るチオール化合物誘導体を硬化性組成物の加硫剤として用いることにより、硬化物の諸物性を損なうことがある保存性あるいは硬化性を制御するための早期加硫防止剤を添加する必要がなくなるので、諸物性に優れた硬化物を得ることができる。さらに、本発明に係る硬化性組成物が、特定の加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤を含有する場合には、貯蔵安定性、架橋速度、架橋成形物の物理的性質にさらにバランスよく優れる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、IR測定は、日本分光工業株式会社製 FT/IR−7000形 フーリエ変換赤外分光光度計を用いて行った。
実施例1
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールを35.46g(0.2モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g、n−ブチルビニルエーテルを72.1g(0.72モル)、アセトンを190g装入し、70℃の温度で、均一な溶液になるまで攪拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を冷却して、濃縮したところ、結晶を含む黄色液体を得た。結晶を濾別し、粘性黄色液体(チオール化合物誘導体A)89.1gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図1に示した。また、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定し、測定結果チャートを図2に示した。
図1より、n−ブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1619cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図1では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体Aは、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとn−ブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加した下記式のチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物(チオール化合物誘導体A)の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
次に、得られた粘性黄色液体Aの一部を大気中で180℃の温度で5分間加熱したところ、固体になった。この固体のIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定したところ、図3に示す結果が得られた。図3のIR吸収スペクトルには、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、前記式で示される生成した化合物の保護基が熱により脱離し、原料化合物が生じたことがわかった。
実施例2
前記実施例1において、n−ブチルビニルエーテルを72.1g(0.72モル)用いた代わりに、イソブチルビニルエーテルを同量用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘性黄色液体(チオール化合物誘導体B)91.0gを得た。得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図4に示した。
図4では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に帰属される1621cm−1の吸収は消失していることがわかる。また、図2にみられる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)に帰属される1590cm−1付近の吸収についても、図4では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物Bは、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認できた。生成物(チオール化合物誘導体B)の収率は1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して、93%であった。
次に、得られた粘性黄色液体Bの一部を大気中で180℃の温度で5分間加熱したところ、固体になった。この固体のIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定したところ、図5に示す結果が得られた。図5のIR吸収スペクトルには、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、生成した化合物の保護基が熱により脱離し、原料化合物が生じたことがわかった。
実施例3〜7、比較例1〜5
実施例1で得られた粘性黄色液体A、または実施例2で得られた粘性黄色液体Bを、表7に示す割合で各成分と配合し、8インチオープンロールで混練して、硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物の硬化前のムーニースコーチは、混合直後の値および、温度40℃、相対湿度(RH)40%の条件下に7日保存後の値を、JIS K6300の方法により測定した。
硬化性組成物は、180℃で8分間加熱して一次加硫したのち、さらに175℃で4時間2次加硫して硬化させた。得られた硬化物の硬度、引っ張り強さ、伸び、圧縮永久ひずみを測定した。さらに、二次加硫物を175℃で70時間加熱し、硬度変化率、引っ張り強さ変化率、伸び変化率を測定した。各物性の測定は、JIS K6301に準じて行った。これらの結果を表8に示す。
また、各実施例および比較例の組成物の加硫速度を、(株)オリエンテック製キュラストメーターV型を用いて測定した。キュラストメーターカーブを図6に示す。
公知のトリアジントリチオールと、架橋基としてクロロメチルスチレンを共重合したアクリルゴム1を用いた場合(比較例1)あるいはクロロ酢酸ビニルを共重合したアクリルゴム2を用いた場合(比較例3)、硬化が速すぎ、ムーニー粘度、スコーチタイムの測定ができなかった。また、早期加硫防止剤を添加した場合(比較例2)であっても、40℃、40%RH保存7日後のムーニースコーチが測定不可能であり、長期保存安定性に劣っていた。
一方、実施例1,2で得られたチオール化合物誘導体を用い、架橋基としてクロロメチルスチレンを用いて共重合したアクリルゴム1あるいはクロロ酢酸ビニルを用いて共重合したアクリルゴム2を用いた場合(実施例3〜5)は、長期保存性、硬化性ともに十分であり、物性にも優れていた。
公知のトリアジントリチオールと、架橋基としてクロロエチルビニルエーテルを共重合したアクリルゴム3を用いた場合(比較例4)、実施例1で得られたチオール化合物誘導体と、アクリルゴム3を用いた場合(実施例6)に比べて、圧縮耐久歪みが劣った。
公知のトリアジントリチオールと、エピクロロヒドリンを用いた場合(比較例5)、実施例1で得られたチオール化合物誘導体と、エピクロロヒドリンゴムを用いた場合(実施例7)に比べて、保存性、硬化性、圧縮耐久歪みが劣った。
実施例3〜7、比較例2,4,5について、架橋温度180℃でのキュラストメーターカーブを測定したところ、表9の様な結果が得られた。なお、キュラストメーターカーブの測定は、JISK6300に従い、(株)オリエンテック製キュラストメーターV型を用いて行った。測定条件は、振幅±1°、振動数100cpsとした。図6に、実施例3〜7、比較例2,4,5についてのキュラストメーターカーブを示す。
実施例8〜33、比較例6
実施例2で得られた粘性黄色液体Bと、組成比が、エチルアクリレート/ブチルアクリレート/メトキシエチルアクリレート/ビニルクロロアセテート=40/40/20/2であるアクリルゴムとを、加硫剤および加硫促進剤を除く各成分とともに、神戸製鋼社製3.6リットルのバンバリーミキサーで混練し、次いで加硫剤および加硫促進剤を加えてオープンロールで混練して、表10、表11、表12に示す組成の硬化性組成物をそれぞれ調製した。
得られた硬化性組成物の硬化前のムーニースコーチは、混合直後の値および、温度40℃、相対湿度(RH)40%の条件下に7日保存後の値を、JIS K6300の方法により測定した。
硬化性組成物は、180℃で8分間プレス加硫成形することにより1次加硫したのち、さらに175℃で4時間2次加硫して硬化させた。1次加硫物および2次加硫物の物性を、表13、表14、表15にそれぞれ示す。
表10および表13より、ハロゲン含有架橋性ポリマーであるアクリルゴムと、特定のチオール化合物誘導体とを含有する組成物のうち、加硫促進剤として有機酸アルカリ金属塩または有機酸アルカリ土類金属塩を含有する組成物は、同条件で加硫成形した場合であっても加硫反応が進みやすく、加硫成形物の物性にも優れることがわかる。
また、表11および表14より、加硫促進剤として有機酸金属塩を含有するとともに、加硫促進助剤としてオニウム化合物を含有する場合には、同条件で加硫成形した場合にも、1次加硫のみであっても優れた圧縮永久歪を示すことがわかる。
さらに、表12および表15より、老化防止剤として、アミン系化合物、チオエーテル系等の硫黄化合物、あるいはフォスファイト系等のリン化合物を用いた場合には、老化が防止できるとともに、加硫物の物理的性質に優れ、特に1次加硫のみであっても優れた圧縮永久歪を示すことがわかる。
実施例34
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールを19.5g(0.11モル)、アセトンを200g、オクタデシルビニルエーテルを88.8g(0.3モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g装入し、65℃で16時間反応した。この反応液にトルエン200gを加え、不溶物をろ過した後、ろ液を濃縮して、淡黄色のワックス状物99.23gを得た。
得られたワックス状物をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図7に示した。
図7より、オクタデシルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図7では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物であるワックス状物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとオクタデシルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、オクタデシルビニルエーテルに対して93%であった。
実施例35
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールを45g(0.17モル)、アセトンを200g、n−ブチルビニルエーテルを36.6g(0.367モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g装入し、60℃で12時間反応した。この反応液を濃縮して、白色ペースト状物74.05gを得た。
得られたペースト状物をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図8に示した。また、原料である6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定し、測定結果チャートを図9に示した。
図8より、n−ブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1619cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図9に見られる、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1600cm−1付近の吸収についても、図8では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物であるペースト状物は、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールとn−ブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールに対して95%であった。
実施例36
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、イソプロピルビニルエーテル61.9g(0.72モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、79.9gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図10に示した。
図10より、イソプロピルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図10では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソプロピルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して92%であった。
実施例37
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、サイクロヘキシルビニルエーテル68.0g(0.54モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、85.9gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図11に示した。
図11より、サイクロヘキシルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図11では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとサイクロヘキシルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、サイクロヘキシルビニルエーテルに対して86%であった。
実施例38
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、4−ハイドロキシブチルビニルエーテル68.0g(0.59モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、40.2gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図12に示した。
図12より、4−ハイドロキシブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図12では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールと4−ハイドロキシブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、4−ハイドロキシブチルビニルエーテルに対して39%であった。
実施例39
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、不溶物をろ過し、ろ液を濃縮して、粘性黄色液体91gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図13に示した。
図13では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図13では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
得られた生成物である粘性黄色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したところ、黄色の固体に変化した。この黄色固体のIR吸収スペクトルを、上記赤外分光光度計を用いて、KBr錠剤法により測定したところ、図14に示す結果が得られた。図14には、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、生成物が分解したことがわかった。
実施例40
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、合成ハイドロタルサイト(キョーワード500SH、協和化学工業(株)製)4.0gを加え、10時間40℃で撹拌した後、ろ過し、ろ液を濃縮して、粘性黄色液体80gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図15に示した。
図15では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図15では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して84%であった。
得られた生成物である粘性黄色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したが、濁りなどの外観上の変化はなかった。また、この70日間放置後の粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定したところ、図16に示す結果が得られた。図16には、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属される1590cm−1付近の吸収はなく、生成物の分解は認められなかった。
実施例41
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート(オルガチックスTA−30、松本製薬工業(株)製)1.0gを加えて濃縮し、粘性褐色液体90gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図17に示した。
図17では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図17では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
得られた生成物である粘性褐色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したが、放置後の粘性褐色液体に濁りなどの外観上の変化はなかった。また、この70日間放置後の粘性褐色液体のIR吸収スペクトルを、KRS−5セルに塗布して測定したところ、図18に示す結果が得られた。図18には、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属される1590cm−1付近の吸収はなく、生成物の分解は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図2は、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図3は、実施例1で得られた合成物を大気中で加熱したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図4は、実施例2で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図5は、実施例2で得られた合成物を大気中で加熱したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図6は、実施例3〜7、比較例1,2のキュラストメーターカーブである。
図6中の1は、実施例3のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の2は、実施例4のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の3は、実施例5のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の4は、実施例6のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の5は、実施例7のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の6は、比較例2のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の7は、比較例4のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の8は、比較例5のキュラストメーターカーブを示す。
図7は、実施例34で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図8は、実施例35で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図9は、合成原料である6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのIR吸収スペクトルのチャートである。
図10は、実施例36で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図11は、実施例37で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図12は、実施例38で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図13は、実施例39で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図14は、実施例39で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図15は、実施例40で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図16は、実施例40で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図17は、実施例41で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図18は、実施例41で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
本発明は、チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその組成物からなる成形体に関する。詳しくは、本発明は、チオール誘導体置換基と反応性を有する高分子に配合して、硬化性組成物を与えるチオール化合物誘導体、該誘導体と架橋可能なハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有する硬化性組成物およびその架橋成形体に関する。
背景技術
従来、エピクロロヒドリンゴム、塩素含有アクリルゴムなどは、耐油性、耐熱性、耐候性、耐オゾン性、圧縮永久歪みなどに優れることから、ホース、シール部品などの成型品に広く用いられてきている。
このようなエピクロロヒドリンゴム、塩素含有アクリルゴムなどのハロゲン含有架橋性ポリマーは、一般に、架橋剤、架橋促進剤などの架橋系配合剤を添加してその組成物を貯蔵しておくことが多い。
一般に、加硫剤、加硫促進剤などの加硫系配合剤を添加したジエン系ゴム組成物あるいは塩素系ゴム組成物を貯蔵しておくと、徐々に加硫が進行し、その結果粘度の上昇、スコーチタイムの減少、加硫速度の低下などの変化をきたし、組成物の製品への加工性、加硫物の物性が低下することがある。貯蔵安定性の維持という観点からは、これらの変化が小さいことが望ましい。加硫系配合剤を添加しなければ、これらの変化は小さいが、生産性の観点から、加硫系配合剤を予め添加した状態の硬化性組成物が一般に用いられ、加硫系配合剤が添加された状態での貯蔵安定性の向上が重要となっている。
従来、ジエン系ゴム、塩素系ゴムなどの加硫系配合剤としては、ジチオール化合物、トリチオール化合物などの多価チオール化合物が知られている。
しかし、これらの多価チオール化合物は、反応性が大きいため、ゴム等と加硫系配合剤とを混練して加工する際に早期加硫を起こしたり、あるいは早期加硫なく混練をスムーズに行うことができても、その後の保存中にゲル化することがあり、得られる硬化物の物性は優れていても、貯蔵安定性に欠けるという問題点があった。
また、ハロゲン含有架橋性ポリマーの架橋系配合剤としては、トリアジンチオール類が知られている。
しかしながら、トリアジンチオール類は、反応性が大きく架橋速度が速いため、ゴム等と架橋系配合剤とを混練して加工する際に早期架橋を起こしたり、あるいは早期架橋なく混練をスムーズに行うことができても、その後の保存中にゲル化して貯蔵中に粘度が上昇したり、あるいは部分的な架橋が進行するなど、スコーチしやすいため、成型に支障が出ることがあった。
このため、早期加硫防止剤などを併用して貯蔵安定性を向上させる試みがなされているが、早期加硫防止剤の併用により加硫速度が低下したり、耐熱性が悪化するなどの問題点があった。
また、架橋速度の調節のため、金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩、有機酸塩などを配合し、ハロゲン含有架橋性ポリマーの反応性およびトリアジンチオール類の反応性に応じて、金属の種類、対イオンの種類などを選択して使用することも行われていたが、十分な架橋速度を得ようとすると、スコーチが短くなることがあった。
このため、ジエン系ゴム組成物、塩素系ゴム(ハロゲン含有架橋性ポリマー)組成物等の硬化物の物性に悪影響を及ぼす早期加硫防止剤を使用することなく、貯蔵安定性に優れるとともに、加工性、硬化性に優れるゴム組成物あるいは樹脂組成物を与える新規なチオール化合物誘導体の出現が望まれており、また、貯蔵安定性、適度な架橋速度、得られる架橋物について優れた物理的性質をバランスよく有する硬化性組成物が望まれていた。
本願発明者は上記問題点を解決すべく鋭意研究し、チオール化合物をビニルエーテル等の保護基で保護したチオール化合物誘導体を架橋剤として用いると、ハロゲン含有架橋性ポリマーあるいはジエン系ゴム組成物の硬化物の物性に悪影響を及ぼす早期架橋防止剤を使用することなく、貯蔵安定性、架橋速度に優れ、しかもその架橋物の物理的性質にも優れた硬化性組成物が得られることを見出し、本願発明を完成するに至った。
本発明は、貯蔵安定性、加工性、硬化性に優れたゴム組成物あるいは樹脂組成物を与える新規なチオール化合物誘導体を提供すること、貯蔵安定性、架橋速度、架橋物の物理的性質などのバランスに優れたハロゲン含有架橋性ポリマーからなる硬化性組成物を提供することおよびその成形体を提供することを目的としている。
発明の開示
本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(1)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(1)中、X1、X2、X3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、式(2)中、Aは酸素原子またはイオウ原子であり、
R1は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R2は、下記(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種の基であり、
R3は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R1とR2とは環を形成していてもよい:
(a)アルキル基、ハロゲン化アルキル基、少なくとも1個の水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基から選ばれる1種の基;
(b)アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコール、アリルアルコール類、ケトオキシム類、アルカノールアミン類、ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類、トリアルキルシラノール、脂環式アルコールおよびナフチルアルコール類から選ばれる1種の水酸基含有化合物から、水酸基を除いた残基;
(c)下記一般式(3)
(式(3)中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アセトキシ基またはピペリジノ基のいずれかを示し、Yは水素原子またはハロゲン原子を示す。)で表される基;
(d)下記一般式(4)
(式(4)中、Zは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基またはアシル基のいずれかを示し、nは、1〜3の整数であり、式(4)で表されるフェニル基骨格と結合する置換基Zの数を示す。)で表される基;
(e)−CH2−C6H5または−CHCH3−C6H5で表される基;
(f)下記一般式(5)
下記一般式(6)
(式(6)中、R1、R3は、それぞれ前記式(2)中のR1、R3と同じであり、式(5)および(6)中、Aは、酸素原子またはイオウ原子であり、R4は、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
のいずれかを示す。)で表される基)。
前記チオール化合物誘導体では、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることが好ましい。
また、前記一般式(2)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、下記一般式(8)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(8)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、式(2)は上記と同様である。)。
さらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(9)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(9)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、式(2)は上記と同様である。)。
またさらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(10)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(10)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(2)は上記と同様であり、式(10)中、X1、X2は、互いに同一であっても異なってもよく、R5は、下記(g)〜(k)で表される基から選ばれる1種の基である:
(g)水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基および−NH2から選ばれる基;
(h)下記一般式(11)
(ただし、R6、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基で、R6とR7とは互いに同一であっても異なってもよい。)で表されるジアルキルアミノ基:
(i)下記一般式(12)
(ただし、R8はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アニリノ基、ヒドロキシアニリノ基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表されるモノアルキルアミノ基:
(j)下記一般式(13)
(ただし、R9はアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表される基:
(k)下記一般式(14)
(ただし、R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。)で表される基)。
このようなチオール化合物誘導体では、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることが好ましい。
またこのようなチオール化合物誘導体では、前記一般式(2)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
またさらに本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(15)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(15)中、R5は式(10)中のR5と同じであり、式(2)は上記と同様である。)。
さらにまた本発明のチオール化合物誘導体は、下記一般式(16)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(16)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴としている:
(式(16)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属であり、R5は、式(10)中のR5と同じであり、式(2)は上記と同様である。)。
本発明の硬化性組成物は、上記いずれかの本発明のチオール化合物誘導体を含有することを特徴としている。
また、本発明の硬化性組成物は、
ハロゲン含有架橋性ポリマーと、
下記一般式(17)で表される官能基を1分子中に少なくとも1個有するチオール化合物誘導体と
を含有することを特徴としている:
(式(17)中、A、R1、R2、R3は、それぞれ、上記式(2)中のA、R1、R2、R3と同じである。)。
前記一般式(17)で表される官能基は、チオール基(−SH)を有する化合物と、ビニルエーテル類とを反応させて形成されることが好ましい。
前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(1)
で表される化合物であって、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(1)および式(2)は、上記と同様である。)。
また、前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(8)
で表される化合物であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい:
(式(8)中、X1、X2は互いに同一でも異なってもよく、式(2)は上記と同様である。)。
さらに、前期硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(9)
で表される化合物であり、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(9)および式(2)は、上記と同様である。)。
またさらに、前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(10)
で表される化合物誘導体であり、式(10)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(10)および式(2)は、上記と同様である。)。
さらにまた、前期硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(15)
で表される化合物であり、式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(15)および式(2)は、上記と同様である。)。
また前記硬化性組成物では、前記チオール化合物誘導体が、下記一般式(16)
で表される化合物であり、式(16)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であることも好ましい(式(16)および式(2)は、上記と同様である)。
これらの本発明の硬化性組成物では、前記一般式(2)および(17)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることも好ましい。
また、前記一般式(2)および(17)が、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることも好ましい。
また本発明の硬化性組成物は、トリアジンチオールと多価ビニルエーテルとを接触させて得られる化合物と、ハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有することを特徴としている。
前記トリアジンチオールは、下記式(18)
で表されることも好ましい。
また前記トリアジンチオールは、下記一般式(19)
で表されることも好ましい(式(19)中、R5は、上記式(10)中のR5と同じである。)。
前記多価ビニルエーテルは、ジビニルエーテル類、トリビニルエーテル類およびテトラビニルエーテル類から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
また、これらの本発明の硬化性組成物では、前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、アクリルゴムであることも好ましく、エピクロロヒドリンゴムであることも好ましく、クロロプレンゴムであることも好ましく、さらに、クロルスルホン化ポリエチレンであることも好ましい。
さらにこれらの本発明の硬化性組成物は、有機酸金属塩を含有することが好ましく、前記有機酸金属塩が、有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩であることも好ましい。また、有機酸金属塩に加えて、加硫促進助剤を含有することも好ましく、前記加硫促進助剤が、オニウム塩および/またはポリアルキレンオキサイドであることも好ましい。
またこれらの本発明の硬化性組成物は、アミン系老化防止剤と、硫黄化合物またはリン化合物とを含有することも好ましい。
本発明の成形体は、前記本発明の硬化性組成物を架橋してなることを特徴としている。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明について具体的に説明する。
<チオール化合物誘導体>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールあるいは1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール類などの誘導体であり、該化合物のチオール基(−SH)の水素原子が、特定の置換基で置換された化合物誘導体である。このようなチオール化合物誘導体は、トリアジンチオールなどのチオール化合物とビニルエーテル類とを反応させて得ることができる。以下に具体的なチオール化合物誘導体について説明する。
・トリチオール化合物誘導体
本発明に係るチオール化合物誘導体としては、トリチオール化合物の誘導体である下記一般式(1)で表されるチオール化合物誘導体が挙げられる。
式(1)中、X1、X2、X3は、下記一般式(2)
で表される基である。
式(1)中、X1、X2、X3は互いに同一でも異なっていてもよく、互いに同一であることが好ましい。
式(2)中、Aは酸素原子またはイオウ原子である。
前記R1としては、水素原子、アルキル基またはフェニル基が挙げられる。このうち、R1は、水素原子またはアルキル基であることが好ましく、水素原子であることがさらに好ましい。
前記R2としては、下記(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種の基が挙げられ、本発明では、下記(a)〜(e)からなる群から選ばれる1種の基が好ましい。
(a)アルキル基、ハロゲン化アルキル、水酸基を少なくとも1個有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基から選ばれる1種の基。これらのうちでは、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基、n−プロピル基が好ましい。
ハロゲン化アルキル基としては、前記アルキル基の水素原子が1個以上ハロゲンで置換された基が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、このうち、フッ素原子が好ましい。フッ素原子を含有するハロゲン化アルキル基としては、たとえば、前記アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキル基、RfCH2CH2−で表されるフルオロアルキル基などが挙げられる。前記Rfとしては、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基などが挙げられる。
水酸基を1個以上有するアルキル基としては、前記アルキル基の水素原子の少なくとも1つが水酸基で置換された基が挙げられる。水酸基を1個以上有するアルキル基としては、水酸基を1個または2個有する基が好ましく、水酸基を1個有する基がさらに好ましい。このような水酸基は、1級、2級、3級のいずれであってもよい。このような水酸基を有するアルキル基としては、たとえば、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基などの1級の水酸基を有するアルキル基、1−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシ−n−ブチル基などの2級の水酸基を有するアルキル基、3−ヒドロキシ−3−メチル−n−ブチル基などの3級の水酸基を有するアルキル基が挙げられる。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基、アリル基が好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキルが挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基、メチルベンジル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチルベンジル基が好ましい。
(b)アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコール、アリルアルコール類、ケトオキシム類、トリアルカノールアミン類、ジアルカノールアミン類、アルカノールアミン類、トリアルキルシラノール、脂環式アルコールおよびナフチルアルコール類から選ばれる1種の水酸基含有化合物から、水酸基を除いた残基。これらのうちでは、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコールなどのポリアルキレングリコールが好ましい。
前記アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコールなどのグリコール類としては、具体的には、たとえば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、トリブチレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール、テトラブチレングリコールなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレングリコールが好ましい。
前記ケトオキシム類としては、アセトンケトオキシム、メチルエチルケトンケトオキシムなどが挙げられる。
前記トリアルカノールアミン類としては、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミンなどが挙げられる。
前記ジアルカノールアミン類としては、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミンなどが挙げられる。
前記モノアルカノールアミン類としては、4−ジメチルアミノブタノール、3−ジメチルアミノプロパノールなどが挙げられる。
前記トリアルキルシラノールとしては、トリメチルシリルアルコール、トリエチルシリルアルコールなどが挙げられる。
前記脂環式アルコールとしては、シクロヘキシルアルコール、メントールなどが挙げられる。
前記ナフチルアルコール類としては、ナフチルアルコールが挙げられる。
(c)下記一般式(3)
で表される基。式(3)中、Xとしては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アセトキシ基、ピペリジノ基などが挙げられ、Yとしては、水素原子、ハロゲン原子が挙げられる。
Xとしては、これらのうちでは、ハロゲン原子、アルコキシ基、ジアルキルアミノ基が好ましい。
このような一般式(3)で表される基としては、具体的には、たとえば、1−クロロエチル基、2−クロロエチル基、1−ブロモエチル基、2−ブロモエチル基、メトキシエチル基、2−ブトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、ジメチルアミノエチル基、2−(ジエチルアミノ)エチル基、アミノエチル基、トリメチルシリルエチル基、トリメチルシロキシエチル基、2−アセトキシエチル基、2−ピペリジノエチル基などが挙げられる。これらのうちでは、特に、2−クロロエチル基、メトキシエチル基が好ましい。
(d)下記一般式(4)
で表される基。ただし、nは、1〜3の整数であり、nが1であることが好ましい。また、nはフェニル基骨格に結合する置換基Zの数を示す。
式(4)中、Zは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基、アシル基などが挙げられる。
このような(4)で表される基としては、具体的には、たとえば、フェニル基、メトキシフェニル基、o−トリル基などのトリル基、イソプロピルフェニル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基などのフルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基などのメトキシフェニル基、p−アミノフェニル基などのアミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基などのヨードフェニル基、p−クロロフェニル基などのクロロフェニル基、p−ブロモフェニル基などのブロモフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基、メトキシフェニル基などが好ましい。
(e)−CH2−C6H5または−CHCH3−C6H5で表される基、すなわち、1−フェニルエチル基、ベンジル基が挙げられる。
(f)下記式一般式(5)または下記一般式(6)で表される基。
ただし、前記式(6)中、R1、R3は、それぞれ前記式(2)中のR1、R3と同じであり、前記式(5)および(6)中、Aは、酸素原子またはイオウ原子であり、R4は、2価の置換基であって、
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
のいずれかを示す。
これらのうち、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(2)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。
この場合、R3は水素原子であることが好ましく、該R1とR2とにより形成される環は、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることが好ましい。また、このような環状構造部分は、置換基を有していてもよい。
本発明に係る他のチオール化合物誘導体としては、下記一般式(8)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体が挙げられる。ここで、式(6)中、X1、X2は、互いに同一であっても異なっていてもよく、同一であることが好ましい。式(2)は上述したとおりである。
さらに、本発明に係るチオール化合物誘導体としては、下記一般式(9)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体を挙げることができる。ここで、式(9)中、X1、X2は、互いに同一でも異なっていてもよく、互いに同一であることが好ましい。Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムが好ましく、さらにナトリウムが好ましい。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムが好ましい。これらのうちでは、ナトリウムが好ましい。式(2)は上述したとおりである。
このような、前記一般式(1)(以下「誘導体a」ということがある)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(1)中X1、X2、X3が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表1(表1−1〜1−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
なお、上記表1において、「−Ph−」とは、C6H4で表される2価の芳香族置換基を示し、「Cyclohexylene」とは、C6H10で表される2価のシクロヘキシレン骨格を有する置換基を示し、「Ph−」とは、C6H5で表される1価の芳香族置換基を示し、「Me」とはメチル基を示し、「Et」とはエチル基を示し、
(チオール化合物誘導体a97)とは、Aが酸素原子であり、置換基R1とR2とが環を形成し、R3が水素原子である置換基X1を示している。なお、チオール化合物誘導体a98〜a101もa97と同様の意味である。これらは、後述する表についても同じである。
また、前記一般式(8)(以下「誘導体b」ということがある。)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(8)中、X1、X2が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表2(表2−1〜2−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
また、前記一般式(9)(以下「誘導体c」ということがある)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(9)中X1、X2が互いに同一であり、X1が下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体のより具体的な例としては、たとえば、下記表3(表3−1〜3−4)に示すチオール化合物誘導体が挙げられる。
・ジチオール化合物誘導体
本発明に係るチオール化合物誘導体としては、ジチオール化合物の誘導体である下記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体(以下「誘導体d」ということがある)が挙げられる。
該式(10)中、X1、X2は、下記一般式(2)
で表される基である。
前記式(10)中、X1、X2は、前記式(1)のX1と同じであり、これらは、互いに同一でも異なっていてもよく、同一であることが好ましい。また、式(2)は前記のとおりである。
式(10)中、R5としては、下記(g)〜(k)で表される基から選ばれる1種の基が挙げられる。
(g)水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基および−NH2から選ばれる基。
これらのうちでは、水素原子、アルキル基、フェニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基が好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基が好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基などが挙げられる。
フェニル基としては、フェニル基(C6H5−)、メトキシフェニル基、o−トリル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、2−ピペリジノエチル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基が好ましい。
(h)下記一般式(11)
で表されるジアルキルアミノ基。ただし、R6、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基およびフルオロアルキル基から選ばれる基で、R6とR7とは互いに同一であっても異なってもよい。これらのうちでは、アルキル基、アルケニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基などが好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基などが好ましい。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、メチルベンジル基などが挙げられる。
ベンジル基としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
フルオロアルキル基としては、テトラフルオロエチル基が挙げられる。
(i)下記一般式(12)
で表されるモノアミノ基。ただし、R8はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アニリノ基およびヒドロキシアニリノ基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基としては、前記R6、R7で示した基と同様の基が挙げられる。
アニリノ基としては、アニリノ基、p−メチルアニリノ基が挙げられる。
ヒドロキシアニリノ基としては、o−,m−,p−ヒドロキシアニリン誘導体に由来する基が挙げられる。
(j)下記一般式(13)
で表される基。ただし、R9はアルキル基、フェニル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基、フェニル基が好ましい。
アルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜25、さらに好ましくは1〜18のアルキル基が挙げられる。このようなアルキル基としては、直鎖、分岐、環状のいずれも挙げられ、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、セチル基、ステアリル基、1−メンチル基などが挙げられる。これらのうちでは、メチル基、エチル基などが好ましい。
アルケニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルケニル基が挙げられる。このようなアルケニル基としては、たとえば、プロパンジエニル基、イソプロペニル基、3−メチル−2−ブテニル基、アリル基、2−メチルアリル基などが挙げられる。これらのうちでは、イソプロペニル基などが好ましい。
アラルキル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、好ましくは1〜10のアラルキル基が挙げられる。このようなアラルキル基としては、たとえば、4−フェニルブチル基などが挙げられる。
ハロゲノフェニル基としては、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、p−ブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジヨードフェニル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、p−クロロフェニル基が好ましい。
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基などが挙げられる。
(k)下記一般式(14)
で表される基。ただし、R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。これらのうちでは、アルキル基が好ましい。
アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基としては、前記R9で示したアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
アルキニル基としては、炭素原子数が好ましくは1〜20、さらに好ましくは1〜10のアルキニル基が挙げられる。このようなアルキニル基としては、たとえば、プロパルギル基、1−フェニルプロパルギル基などが挙げられる。これらのうちでは、プロパルギル基が好ましい。
フェニル基としては、フェニル基(C6H5−)、メトキシフェニル基、o−トリル基、p−ニトロフェニル基、2−ニトロフェニル基、3−ニトロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−メトキシフェニル基、p−アミノフェニル基、N−メチルアミノフェニル基、p−(ジメチルアミノ)フェニル基、4−アセチルフェニル基、p−ヨードフェニル基、p−クロロフェニル基、2−ピペリジノエチル基、2,4,6−トリクロロフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリブロモフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基、2,4−ジブロモフェニル基、2,4−ジメチルフェニル基などが挙げられる。これらのうちでは、フェニル基、メトキシフェニル基などが好ましい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(11)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。
この場合、R3は水素原子であることが好ましく、該R1とR2とにより形成される環は、下記一般式(7)
(式(7)中、nは3または4を示す。)で表されることが好ましい。また、このような環状構造に係る構成成分は、置換基を有していてもよい。
本発明に係るチオール化合物誘導体のうちのジチオール化合物誘導体は、さらに、下記一般式(15)
で表されるチオール化合物誘導体(以下「誘導体e」ということがある)であって、該式(15)中、X1が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体が挙げられる。
式(15)中、R5は、前記式(10)中のR5と同じものが挙げられ、式(2)は前記のとおりである。
本発明に係るチオール化合物誘導体のうちのジチオール化合物誘導体は、さらに、下記一般式(16)
で表されるチオール化合物誘導体(以下「誘導体f」ということがある)が挙げられる。
式(16)中、X1は、下記一般式(2)
で表される基である。式(16)中、Mはアルカリ金属またはアルカリ土類金属である。アルカリ金属としては、ナトリウム、カリウムなどが挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム、バリウムが挙げられる。これらのうちでは、ナトリウムが好ましい。
R5は前記一般式(10)のR5と同じであり、式(2)は前記のとおりである。
このような、前記一般式(10)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(10)中X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であるチオール化合物誘導体の「好ましい置換基R5」としては、たとえば、水素原子、メチル基、フェニル基、アミノ基、ジヘキシルアミノ基、ビス(2−ヘキシル)アミノ基、ジエチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、ジアリルアミノ基、ジドデシルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、フェニルアミノ基、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ基、ステアリルアミノ基、エチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、cis−9−オクタデセニルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、4−アニリノ−N−イソプロピルアニリノ基、メトキシ基、1−ナフチルオキシ基、m−クロロフェノキシ基、2,4−ジメチルフェノキシ基、フェノキシ基などが挙げられ、「さらに好ましい置換基R5」としては、水素原子、メチル基、フェニル基、ジブチルアミノ基、メトキシ基、フェノキシ基などが挙げられる。
また、前記式(15)、(16)で表される誘導体e、誘導体fについても、好ましい置換基R5およびさらに好ましい置換基R5としては、上記式(10)で表されるチオール化合物誘導体dと同様のものが挙げられる。
また、これら前記(g)〜(k)のうち、前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
式(10)、(15)、(16)で表されるチオール化合物誘導体d、e、fについて、X1、X2が互いに同一であって、前記好ましい置換基R5、さらには、前記さらに好ましい置換基R5を有するものとしては、具体的には、たとえば、X1についてA、R1、R2、R3が、それぞれ下記表4(表4−1〜4−4)、表5(表5−1〜5−4)、表6(表6−1〜6−4)に示す置換基であるチオール化合物誘導体(d)、(e)、(f)が挙げられる。
本発明に係るチオール化合物誘導体においては、上記トリチオール化合物誘導体およびジチオール化合物誘導体に加え、前記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体の置換基−SX1あるいは−SX2のうちの一つが、さらに−R5で置換されたモノチオール化合物誘導体も挙げられる。このようなモノチオール化合物誘導体は、R5、X1(あるいはX2)は、前記一般式(10)で表されるジチオール化合物誘導体のR5、X1と同様である。
<チオール化合物誘導体の製造方法>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、分子中にチオール基を1〜3個有するチオール化合物のチオール基(−SH)の一部または全部と、ビニルエーテル等の二重結合部分とを結合させて得られる。換言すれば、チオール化合物のチオール基の水素原子を、ビニルエーテル等に由来する置換基で置換させて得ることができる。
このようなチオール化合物誘導体の製造方法は特に限定されず、所望の置換基を形成させることが可能な公知の方法を用いることができる。
たとえば、トリアジンチオール、トリアジンジチオールなどのチオール化合物と、モノビニルエーテル類、アルデヒド、ケトン等とを所定量接触させて、チオール基(−SH基)が所定量置換されたチオール化合物誘導体を得ることができる。
なお、多価ビニルエーテル化合物とからチオール化合物誘導体を得ることもできる。この場合、多価ビニルエーテルによりチオール化合物の架橋物が形成されることがある。
このようなチオール化合物とビニルエーテル類とを接触反応させる際、必要に応じ酸性触媒を使用することができる。
このようにして得られるチオール化合物誘導体は、チオール基とビニルエーテル類のビニル基等とが等量の割合で反応した、チオール基の水素原子が全てビニルエーテル類等に由来する置換基で置換された誘導体、チオール基が1個残留している誘導体、残留するチオール基がアルカリ金属あるいは多価金属、あるいは第4級アンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、ピリジニウム塩基などのオニウム塩基により造塩された誘導体が挙げられる。
以下に、チオール化合物、ビニルエーテル類等について説明するとともに、チオール化合物とビニルエーテル類等との反応において必要に応じて用いられる触媒、およびチオール化合物誘導体の製造方法について詳説する。
・チオール化合物
本発明で用いられるチオール化合物としては、チオール基が1分子当たり2個以上結合しているものが好ましく、そのようなチオールであればいずれのチオール化合物も用いることができる。
このようなチオール化合物としては、たとえば、ジメルカプトベンゼンなどのフェニルチオール、チオカルボン酸類、チアジアゾールなどのチオール化合物、γメルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルトリアルコキシシラン類、1,10−ジメルカプトデカンなどの脂肪族ジチオール類、下記式(18)で表される1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、下記一般式(19)で表されるトリアジンチオール類が挙げられる。
また、これらのトリチオール化合物、ジチオール化合物に加え、チオール化合物として、上記一般式(19)のチオール基(−SH)の一つがさらにR5で置換された、モノチオール化合物を用いることもできる。
式(19)中、R5は、前記式(10)で示した、R5と同じである。
このような前記一般式(19)で表されるジチオール化合物としては、好ましくは、
s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−メチル−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェニル−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−アミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−[ビス(2−ヘキシル)アミノ]−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジエチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジシクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジフェニルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジベンジルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジアリルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジドデシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジブチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ジメチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェニルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニリノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ステアリルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−エチルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−ヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(cis−9−オクタデセニルアミノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−シクロヘキシルアミノ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(4−アニリノ−N−イソプロピルアニリノ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−メトキシ−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(1−ナフチルオキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(m−クロロフェノキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−(2,4−ジメチルフェノキシ)−s−トリアジン−2,4ジチオール、
6−フェノキシ−s−トリアジン−2,4ジチオールなどが挙げられる。
これらのうちでは、6−フェニル−s−トリアジン−2,4ジチオールが好ましい。
・ビニルエーテル類等
本発明に係るチオール化合物誘導体の製造に用いることのできるビニルエーテル類、アルデヒド、ケトンのうち、反応性の観点からはビニルエーテル類を好ましく用いることができる。ビニルエーテル類は、1分子当たりビニル基が1個以上含まれていればよく、モノビニルエーテル、モノビニルチオエーテル、環状のビニルエーテル類であるピラン誘導体、フラン誘導体が挙げられる。また、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、テトラビニルエーテルなどの多価ビニルエーテルを用いることができる。
これらのうちでは、本発明では、モノビニルエーテル、モノビニルチオエーテル、環状のビニルエーテル類であるピラン誘導体、フラン誘導体が好ましい。
前記ビニルエーテルとしては、たとえば、下記一般式(20)で表されるビニルエーテルまたはビニルチオエーテルが挙げられる。
式(20)中、R1、R2、R3、Aは、前記式(2)で表されるR1、R2、R3、Aと同じである。また、R1とR2とは環を形成していてもよい。
また、本発明に係るチオール化合物誘導体は、前記一般式(20)のR1とR2とが環を形成していてもよい。R1とR2とが環を形成する場合は、R1とR2とは、いずれもアルキル基であることが好ましく、該アルキル基は置換基を有していてもよい。この場合、R3は水素原子であることが好ましい。
このようなビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、下記に示す化合物が挙げられる。
メチル−1フェニルビニルエーテル、
エチル−1フェニルビニルエーテル、
メチル−1メチルビニルエーテル、
エチル−1エチルビニルエーテル、
エチル−1メチルビニルエーテル、
メチルビニルエーテル、
エチルビニルエーテル、
プロピルビニルエーテル、
イソプロピルビニルエーテル、
n−ブチルビニルエーテル、
イソブチルビニルエーテル、
sec−ブチルビニルエーテル、
tert−ブチルビニルエーテル、
ペンチルビニルエーテル、
ヘキシルビニルエーテル、
ヘプチルビニルエーテル、
オクチルビニルエーテル、
2−エチルヘキシルビニルエーテル、
デシルビニルエーテル、
セチルビニルエーテル、
ステアリルビニルエーテル、
プロパジエニルビニルエーテル、
イソプロペニルビニルエーテル、
2−プロピニルビニルエーテル、
3−ブチニルビニルエーテル、
3−メチル−2−ブテニルビニルエーテル、
アリルビニルエーテル、
エチレングリコールモノビニルエーテル、
ジエチレングリコールモノビニルエーテル、
トリエチレングリコールモノビニルエーテル、
トリエタノールアミンモノビニルエーテル、
1−クロルエチルビニルエーテル、
2−クロルエチルビニルエーテル、
アセトンオキシムビニルエーテル、
2−メチルアリルビニルエーテル、
3−フェニルプロパルギルビニルエーテル、
シクロヘキシルビニルエーテル、
2−ブロモエチルビニルエーテル、
メトキシエチルビニルエーテル、
2−ブトキシエチルビニルエーテル、
ジエチレングリコールメチルビニルエーテル、
2−アセトキシエチルビニルエーテル、
ジメチルアミノエチルビニルエーテル、
2−(ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、
アミノエチルビニルエーテル、
3−ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、
トリメチルシロキシエチルビニルエーテル、
トリメチルシリルビニルエーテル、
トリエチルシリルビニルエーテル、
1−メンチルビニルエーテル、
2−メトキシフェニルビニルエーテル、
o−トリルビニルエーテル、
p−ニトロフェニルビニルエーテル、
2−ナフチルビニルエーテル、
フェニルビニルエーテル、
p−フルオロフェニルビニルエーテル、
p−メトキシフェニルビニルエーテル、
p−アミノフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリクロロフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリメチルフェニルビニルエーテル、
2,4−ジクロロフェニルビニルエーテル、
2,4,6−トリブロモフェニルビニルエーテル、
N−メチルアミノフェニルビニルエーテル、
p−(ジメチルアミノ)フェニルビニルエーテル、
4−アセチルフェニルビニルエーテル、
2−ニトロフェニルビニルエーテル、
3−ニトロフェニルビニルエーテル、
p−ヨードフェニルビニルエーテル、
p−クロロフェニルビニルエーテル、
1−フェニルエチルビニルエーテル、
ベンジルビニルエーテル、
2−ピペリジノエチルビニルエーテルなどが挙げられる。
環状モノビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、
2,3−ジヒロドフラン、
3,4−ジヒドロフラン、
2,3−ジヒドロ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、
3,4−ジヒドロ−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン、
3,4−ジヒドロ−2−エトキシ−2H−ピランなどが挙げられる。
多価ビニルエーテル類としては、ジビニルエーテル、トリビニルエーテル、テトラビニルエーテルなどが挙げられる。
ジビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、
ジビニルエーテル、
ジビニルフォルマール、
エチレングリコールジビニルエーテル、
ジエチレングリコールジビニルエーテル、
トリエチレングリコールジビニルエーテル、
トリエタノールアミンジビニルエーテル、
1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、
1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、
1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、
4,4‘−ジハイドロキシアゾベンゼンジビニルエーテル、
ハイドロキノンジビニルエーテル、
ビスフェノールAジビニルエーテルなどが挙げられる。
トリビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、グリセロールトリビニルエーテルなどが挙げられる。
テトラビニルエーテルとしては、具体的には、たとえば、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどが挙げられる。
なお、多価ビニルエーテルを用いて製造する場合、製造条件により、多価ビニルエーテルが複数のチオール化合物と架橋して、高分子化合物となることがある。
ビニルチオエーテルとしては、前記ビニルエーテル、環状モノビニルエーテルに対応するビニルチオエーテル等が挙げられる。このようなビニルチオエーテルとしては、具体的には、たとえば、
3−(トリメチルシリル)プロピルビニルチオエーテル、
2−ハイドロキシエチルビニルチオエーテル、
2−(N−モルフォリノ)エチル−S−ビニルチオエーテル、
2−(N−β−ハイドロキシエチル)アミノエチル−S−ビニルチオエーテル、
2−アミノエチルビニルチオエーテル、
p−クロロフェニルチオエーテル、
フェニルビニルチオエーテル、
ジビニルチオエーテルなどが挙げられる。
これらのうち、前記一般式(20)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であるチオール化合物誘導体が特に好ましい。
・触媒
本発明に係るチオール化合物誘導体を、前記チオール化合物と、ビニルエーテル類等との反応により製造する場合、必要に応じ、触媒を用いることができる。触媒としては、酸性触媒が好ましく、酸性触媒としては、酸性リン酸エステル、塩化水素、チオニルクロライド、塩化亜鉛などを用いることができる。これらのうちでは、酸性リン酸エステルを好ましく用いることができる。
このような酸性リン酸エステルとしては、たとえば、下記一般式(21)
式(21)中、R11は、炭素原子数1〜20のアルキル基、シクロアルキル基またはアリル基であり、mは1または2である。
このような酸性リン酸エステルは、第1アルコールあるいは第2アルコールのリン酸モノエステルあるいはリン酸ジエステルであり、具体的には、第1アルコールとしては、たとえば、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、2−エチルヘキシルアルコールなどが挙げられ、第2アルコールとしては、2−プロパノール、2−ブタノール、2−ヘキサノール、2−オクタノール、シクロヘキサノールなどが挙げられる。
このような酸性リン酸エステルは、1種単独で、または複数を併用して用いることができる。
前記酸性リン酸エステルを用いる場合、その使用量は、前記チオール化合物に対して、好ましくは0.05〜5重量%程度である。酸性リン酸エステルの使用量が少ないと反応速度が遅くなる場合がある。
・反応溶媒
前記チオール化合物と、ビニルエーテル類等との反応は、無溶媒あるいは溶媒中で行うことができる。反応速度、操作性の観点から溶媒中で行うことが好ましい。このような溶媒としては、公知の有機溶剤を用いることができ、たとえば、炭化水素、エーテル、エステル、ケトンなどが挙げられ、具体的には、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、メチルプロピルケトンなどが挙げられる。
・チオール化合物誘導体の製造
本発明に係るチオール化合物誘導体は、溶媒中あるいは無溶媒下で、必要に応じ酸性リン酸エステルの存在下に、好ましくは室温〜180℃の温度範囲で、前記チオール化合物と前記ビニルエーテル類と接触させて得ることができる。反応時間は通常、1〜60分程度である。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部がビニルエーテル類等で置換された化合物であり、チオール化合物とビニルエーテル類との配合比率をコントロールすることにより、所望のチオール化合物誘導体を得ることができる。具体的には、たとえば、下記の配合割合で反応させればよい。
前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子の全てをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(1)を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは3〜5モルの量を用いることが望ましい。
前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子のうちの2つをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(8)を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは1.8〜2.3モルの量を用いることが望ましい。
さらに、チオール基の水素原子がアルカリ金属で置換されたチオール化合物誘導体(9)を得る場合、トリチオール化合物(18)と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの水溶液をトリチオール化合物(18)1モルに対し、1〜1.1モル反応させて得た塩に対して、ビニルエーテル類を1.8〜2.3モル反応させることにより得られる。
前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子の全てをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(10)を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは2〜5モルの量を用いることが望ましい。
前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子のうちの1つをビニルエーテル類等で置換させてチオール化合物誘導体(15)を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ビニルエーテル類を好ましくは0.8〜1.3モルの量を用いることが望ましい。
さらに、チオール基の水素原子がアルカリ金属で置換されたチオール化合物誘導体(16)を得る場合、ジチオール化合物(19)と水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムの水溶液をジチオール化合物(19)1モルに対して1〜1.1モル反応させて得た塩に対して、ビニルエーテル類を0.8〜1.3モル反応させることにより得られる。
・処理
得られたチオール化合物誘導体中に、活性を有する触媒が混在していると、保存条件などによっては、得られたチオール化合物誘導体が加水分解を生じる場合がある。このため、本発明のチオール化合物誘導体を、前記チオール化合物と、ビニルエーテル類との酸性触媒存在下での反応により製造する場合には、反応生成物中に混在する触媒を除去するかまたは失活させるのが好ましい。混在する触媒を除去または失活させた場合には、大気中で長期間保存した場合などにおいても、チオール化合物誘導体が分解を生じにくく安定であり、保存性に優れ、より実用的である。
前記チオール化合物と、ビニルエーテル類とを、酸性触媒、特に酸性リン酸エステルの存在下に接触させてチオール化合物誘導体を得た場合には、ハイドロタルサイトまたは金属アルコキサイドで処理することが望ましい。
ハイドロタルサイトによる処理では、酸性リン酸エステルなどの酸性触媒を含有する反応生成物と、ハイドロタルサイトとを接触させ、ハイドロタルサイトに酸性触媒を吸着させる。ハイドロタルサイトに吸着した触媒は、ろ過、沈殿などの方法により、容易に反応生成物から除去することができる。
金属アルコキサイドによる処理では、酸性リン酸エステルなどの酸性触媒を含有する反応生成物に、金属アルコキサイドを添加する。これにより、酸性触媒の酸基(酸性リン酸エステルのリン酸基など)をつぶし、反応生成物中に混在する触媒を失活させることができる。用いる金属アルコキサイドの金属は、Ti、AlおよびZrよりなる群から選ばれる金属であるのが好ましい。
<チオール化合物誘導体の用途>
本発明に係るチオール化合物誘導体は、架橋剤として有用であり、各種の硬化性樹脂に配合して用いることができる。本発明に係るチオール化合物誘導体は、チオール基(−SH)がビニルエーテル等に由来する基で保護されているため、アクリルゴム等の加硫剤として用いる場合に、保存安定性がよく、たとえば、加工時あるいはその後の保存時のゲル化を抑制することができる。また、加硫成形時あるいは架橋形成時に、ビニルエーテル等に由来する保護基を加熱等により脱離させ、−SH基を有するチオール化合物を容易に再生させることができるので、本来の反応性を容易に復活させて、塩素含有アクリルゴム、エポキシ基を含有する樹脂等の加硫あるいは架橋を有効に行わせ、諸物性に優れた架橋物を得ることができる。
このようなビニルエーテル類等に由来する保護基の脱離は、酸触媒を用いて行うことが好ましい。このような酸触媒としては、たとえば、ハロゲノカルボン酸、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステルなどが挙げられる。
本発明に係るチオール誘導体は、チオール基を再生した後、二重結合への付加、エポキシ環への付加、有機性塩素の置換に対して用いることができる。
このようなチオール化合物誘導体は、単独でまたは促進剤、脱ハロゲン剤などと併用して用いることができる。
前記二重結合を有するゴム、樹脂としては、たとえば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、不飽和ポリエステル樹脂、二重結合を導入したアクリルゴムなどが挙げられる。
エポキシ基を有するゴムあるいは樹脂としては、エポキシ樹脂オリゴマー、エポキシ基を含有するアクリルゴムなどが挙げられる。
有機性塩素を含有するゴムあるいは樹脂としては、アクリルゴム、クロロプレンゴム(CR)、エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO)、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、これらのゴムあるいは樹脂を、1種単独でまたは複数をブレンドあるいは多層構造にしたものに混合させて用いることができ、このような本発明に係るチオール化合物誘導体を含有するゴムあるいは樹脂は、共架橋、共加硫、金属と加硫接着された複合材料として成型するのに有用である。
<硬化性組成物>
本発明に係る硬化性組成物は、上述したチオール化合物誘導体を含有する。
また、本発明に係る硬化性組成物は、ハロゲン含有架橋性ポリマーと、上述した特定のチオール化合物誘導体とを含有している。以下、ハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体、その他の成分等について具体的に説明する。
・ハロゲン含有架橋性ポリマー
本発明に用いられるハロゲン含有架橋性ポリマーは、ハロゲンを含有する架橋可能な高分子化合物である。ハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、これらのうちでは、塩素原子を含有することが好ましい。
塩素原子を含有する架橋性ポリマーとしては、塩素含有アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、クロロプレンゴム、クロルスルホン化ポリエチレンなどを好ましく用いることができる。これらのうちでは、塩素含有アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴムをさらに好ましく用いることができる。
・ハロゲン含有アクリルゴム
前記ハロゲン含有アクリルゴムとしては、(A)アルキル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種のアクリレート系モノマーと、(B)架橋点モノマーと、必要に応じ、(C)前記アクリレート系モノマーと共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとの共重合体を好ましく用いることができる。
(A)アクリレート系モノマー
アクリレート系モノマーとしては、アクリル(メタ)アクリレートおよびアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。
アルキル(メタ)アクリレートとしては、アルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10のアルキル(メタ)アクリレートを望ましく用いることができる。このようなアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルが挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用して用いることができる。
このようなアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性に優れた硬化物を得ることができる。アルキル鎖が長いと耐寒性に有利となるが、耐油性が不利となることがあり、アルキル鎖が短いとその逆の傾向があることから、これらのうちでは、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルが耐油性、耐寒性のバランスの観点から特に好ましい。
アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、アルコキシ基に係るアルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜7、さらに好ましくは1〜4であり、アクリレートの酸素原子に結合するアルキル基の炭素原子数が好ましくは1〜15、さらに好ましくは1〜10であるアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを望ましく用いることができる。このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、たとえば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−or3−エトキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で又は複数を併用して用いることができる。
こられのうちでは、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレートをさらに好ましく用いることができる。
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性に優れた硬化物を得ることができる。
上記アルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、それぞれ単独でまたは併用して用いることができる。アルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートとを併用して用いる場合、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートは、アルキル(メタ)アクリレートに対して、好ましくは10〜40重量%、さらに好ましくは20〜30重量%の量で用いることが望ましい。このような範囲でアルキル(メタ)アクリレートとアルコキシアルキル(メタ)アクリレートを用いると、耐寒性、耐油性のみならず、耐熱性などの常態物性にも優れる硬化物を得ることができる。
(B)架橋点モノマー
本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムの製造に使用する架橋点モノマー(B)は、2以上の官能基を有する重合性モノマーであり、ハロゲン含有アクリルゴムの架橋点を形成する。
このような2官能反応性モノマーとしては、反応性ハロゲン含有ビニルモノマー、エポキシ基含有ビニルモノマー、カルボキシル基含有ビニルモノマー、ジエン系モノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミド基含有モノマーなどが挙げられる。
これらのうち、本発明では、反応性のハロゲン原子を含有する重合性モノマーを少なくとも1種用いる。すなわち、本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムの製造に使用する架橋点モノマー(B)としては、上記2官能性モノマーのうち、反応性ハロゲン含有モノマーを少なくとも1種用い、さらに、前記2官能性モノマーのうち、ハロゲン原子を含有しない2官能性モノマーを併用してもよい。
ハロゲンとしては塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、このうち塩素が好ましい。
上記2官能反応性モノマーのうち、ハロゲン原子を含有する重合性モノマーとしては、たとえば、クロロエチルビニルエーテル、クロロエチルアクリレート、ビニルベンジルクロライド、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、クロロメチルスチレンなどの反応性ハロゲン含有モノマーが挙げられる。
架橋点モノマーにおいて、反応性ハロゲン含有モノマーと、ハロゲン原子を含有しない2官能性モノマーとを併用する場合、上記のうちでは、カルボキシル基含有ビニルモノマーを用いることが好ましい。
このようなカルボキシル基含有ビニルモノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸等のモノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのジカルボン酸、モノメチルマレエート、モノエチルマレエート、モノブチルマレエート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、モノブチルフマレートなどのジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。これらのカルボキシル基含有ビニルモノマーは、1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
(C)エチレン性不飽和モノマー
前記アクリレート系モノマー(A)と共重合可能なエチレン性不飽和モノマーとしては、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、シクロヘキシルアクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジルアクリレート、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、エチレン、ピペリレン、イソプレン、ペンタジエン、ブタジエン、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレートなどが挙げられる。
これらのエチレン性不飽和モノマー(C)は1種単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
また、必要に応じて、混練加工性、押し出し加工性等の改善などの目的で、多官能不飽和モノマーを使用してもよく、オリゴマーとして、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオール(メタ)ジアクリレート、1,9ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート類;ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコール類;ビスフェノールA、EO付加物ジアクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、3−アクリロイルオキシグリセリンモノメタクリレートなどを使用してもよい。
本発明で用いるハロゲン含有アクリルゴムは、前記アクリレート系モノマー(A)に由来する成分が、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の量で、前記架橋点モノマー(B)として反応性ハロゲン含有重合性モノマーに由来する成分が、好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%の量で、前記エチレン性不飽和モノマー(C)に由来する成分が、好ましくは0〜79.9重量%、さらに好ましくは10〜60重量%の量((A)+(B)+(C)=100重量%)で含まれていることが耐寒性、耐油性、耐熱性のバランスの観点から望ましい。
このようなハロゲン含有アクリルゴムの分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、好ましくは100万以下、さらに好ましくは5万〜50万であることが、加工性、ゴムの強度などの機械的性質の観点から望ましい。
・ハロゲン含有アクリルゴムの製造
このようなハロゲン含有アクリルゴムは、公知の方法で製造することができる。たとえば、前記アクリレート系モノマー(A)は、好ましくは20〜85重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の量で、前記架橋点モノマー(B)として反応性ハロゲン含有重合性モノマーを好ましくは0.1〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜5重量%の量で、前記エチレン性不飽和モノマー(C)は、好ましくは0〜79.9重量%、さらに好ましくは10〜60重量%の量((A)+(B)+(C)=100重量%)でラジカル重合開始剤の存在下に、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合などの各種方法によりランダム重合させればよい。
・エピクロロヒドリンゴム
本発明で使用できるエピクロロヒドリンゴムは、エピクロロヒドリンの単独重合体あるいはアルキレンオキシド、不飽和オキシドとの共重合により得ることができる。
アルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどを好ましく用いることができる。不飽和オキシドとしては、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
このようなエピクロロヒドリンゴムは公知の方法により製造することができ、また、市販のものを用いることもできる。
アルキレンオキシド、不飽和オキシドとの共重合体の場合、エピクロロヒドリンとアルキレンオキシド等とを通常等モルで反応させたものを好ましく用いることができ、アルキレンオキシド又は不飽和オキシドに由来する成分が、好ましくは10〜90重量%、さらに好ましくは40〜60重量%の範囲にあるものが望ましい。
エピクロロヒドリンゴムの分子量に特に制限はないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量は、好ましくは20万以下、さらに好ましくは5000〜10万であることが、加工性、ゴムの強度などの機械的性質の観点から望ましい。
・その他のハロゲン含有架橋性ポリマー
本発明で用いることができるその他のハロゲン含有架橋性ポリマーとしては、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどが挙げられる。これらは、市販のものを用いることができる。
<チオール化合物誘導体>
ハロゲン含有架橋性ポリマーを含有する本発明の硬化性組成物は、下記一般式(17)で表される官能基を1分子中に少なくとも1個有するチオール化合物誘導体を含有している。
式(17)中、A、R1、R2、R3は、それぞれ、前記一般式(2)のA、R1、R2、R3と同様である。
本発明で用いられる前記一般式(17)で表される官能基を有する具体的な化合物としては、たとえば、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールあるいは1,3,5−トリアジン−2,4−ジチオール類などの誘導体が挙げられ、該化合物のチオール基(−SH)の水素原子が、特定の置換基で置換された化合物である。このようなチオール化合物誘導体は、トリアジンチオールなどのチオール基(−SH)を有する化合物と、ビニルエーテル類とを反応させて得ることができる。
このようなチオール化合物誘導体としては、具体的には、上述した本発明のチオール化合物誘導体である、トリチオール化合物誘導体、ジチオール化合物誘導体およびモノチオール化合物誘導体を挙げることができる。
また、上述したチオール化合物誘導体の他、前記トリチオール化合物あるいは前記ジチオール化合物と多価ビニルエーテルとを接触させて得られるチオール化合物誘導体を挙げることがができる。このような多価ビニルエーテルとの反応により得られるチオール化合物誘導体は、高分子状の化合物である。
この場合、得られるチオール化合物誘導体は、原料となるトリアジンチオールのチオール基の水素原子の全部又は一部が多価ビニルエーテルで置換された化合物であり、通常、該多価ビニルエーテルは、さらに他のトリアジンチオールと反応して架橋構造を形成している。
本発明の硬化性組成物に含有されるチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部がビニルエーテル類等で置換された化合物であり、チオール化合物とビニルエーテル類との配合比率をコントロールすることにより、所望のチオール化合物誘導体を得ることができる。
チオール化合物誘導体は、ビニルエーテル類としてモノビニルエーテルを用いる場合には、本発明のチオール化合物誘導体を製造する上述の方法により好適に得ることができる。
また、ビニルエーテル類として多価ビニルエーテルを用いる場合には、以下のようにしてチオール化合物誘導体を製造することができる。
前記一般式(18)あるいは(19)で表されるチオール化合物、すなわち下記式(18)あるいは(19)(R5は前述のとおり)
で表されるチオール化合物と、前記多価ビニルエーテルとを接触させて得られるチオール化合物誘導体は、原料となるチオール化合物のチオール基の水素原子の全部又は一部が多価ビニルエーテルで置換された化合物であり、通常、該多価ビニルエーテルは、さらに他のチオール化合物と反応して架橋構造を形成している。
チオール化合物と多価ビニルエーテルとの配合割合は、通常、用いるチオール化合物および多価ビニルエーテルにより異なるので、以下に、チオール化合物毎の好ましい配合割合などについて説明する。
(i)トリチオール化合物(18)と多価ビニルエーテルとの反応
▲1▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料として、3つのチオール基(−SH)の水素原子の全てまたは一部をジビニルエーテルで置換させて、チオール化合物誘導体を得る場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、ジビニルエーテルを好ましくは1.5〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルの量で用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成していてもよいが、ジビニルエーテルが架橋を形成せず、前記一般式(5)で表されるような官能基を有する化合物が生成していてもよい。
前述したとおり、チオール化合物と反応したジビニルエーテルは、さらに他のトリチオール化合物と反応して架橋構造を形成するものと推測される。具体的には、たとえば、前記一般式(5)で表される官能基の末端ビニル基が他のチオール化合物と反応するものと推測される。
▲2▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてトリビニルエーテルを用いる場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、トリビニルエーテルを好ましくは1〜15モル、さらに好ましくは3〜10モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、トリビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、トリビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が存在していてもよい。
▲3▼ 前記トリチオール化合物(18)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてテトラビニルエーテルを用いる場合、トリチオール化合物(18)1モルに対して、テトラビニルエーテルを好ましくは0.75〜10モル、さらに好ましくは3〜7モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、テトラビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、テトラビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が混入していてもよい。
このようにトリチオール化合物(18)と多価ビニルエーテルから得られるチオール化合物誘導体は、架橋構造を有する複数種の分子量を有する組成物であり、通常、オリゴマー状あるいは高分子状態を呈している。
このようなチオール化合物誘導体は、粘度が、好ましくは10〜10000cps、さらに好ましくは1000〜5000cpsの範囲にあることが望ましい。
また、チオール化合物誘導体の重量平均分子量は、好ましくは400〜10000、さらに好ましくは1000〜5000の範囲にあることが望ましい。
(ii)ジチオール化合物(19)と多価ビニルエーテルとの反応
▲1▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料として、2つのチオール基(−SH)の水素原子の全てまたは一部をジビニルエーテルで置換させて、チオール化合物誘導体を得る場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、ジビニルエーテルを好ましくは1〜20モル、さらに好ましくは3〜10モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成していてもよいが、ジビニルエーテルが架橋を形成しないチオール化合物誘導体が生成していてもよい。
▲2▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてトリビニルエーテルを用いる場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、トリビニルエーテルを好ましくは0.7〜10モル、さらに好ましくは3〜7モルの量を用いることが望ましい。この場合、ジビニルエーテルを用いる場合と同様に、トリビニルエーテルはチオール化合物と架橋構造を形成すると推測され、また、得られる生成物中には、トリビニルエーテルが架橋を形成していないチオール化合物誘導体が混入していてもよい。
▲3▼ 前記ジチオール化合物(19)を原料とし、多価ビニルエーテルとしてテトラビニルエーテルを用いる場合、ジチオール化合物(19)1モルに対して、テトラビニルエーテルを好ましくは0.5〜7モル、さらに好ましくは1〜5モルの量を用いることが望ましい。
このようにジチオール化合物(19)と多価ビニルエーテルから得られるチオール化合物誘導体は、架橋構造を有する複数種の分子量を有する組成物であり、通常、オリゴマー状あるいは高分子状態を呈している。
このようなチオール化合物誘導体は、粘度が、好ましくは10〜10000cps、さらに好ましくは100〜1000cpsの範囲にあることが望ましい。
また、チオール化合物誘導体の重量平均分子量は、好ましくは400〜10000、さらに好ましくは1000〜5000の範囲にあることが望ましい。
<加硫促進剤>
本発明の硬化性組成物は、上述のハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体に加えて、加硫促進剤として、有機酸金属塩を用いるのが好ましく、有機カルボン酸のアルカリ金属塩および/または有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩がより好ましく用いられる。
有機カルボン酸のアルカリ金属塩としては、炭素数3〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸および芳香族カルボン酸などの有機カルボン酸のリチウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩などが用いられる。具体的には、たとえば、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。これらのうち、特に好ましいのは、炭素数8〜18の脂肪酸のカリウム塩またはナトリウム塩であり、カリウム塩の方が一般に加硫速度を早くする傾向を有している。
有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩としては、炭素数1〜18の飽和脂肪酸、炭素数3〜18の不飽和脂肪酸、脂肪族ジカルボン酸および芳香族カルボン酸などの有機カルボン酸のマグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩などが用いられる。具体的には、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、オレイン酸バリウム、酒石酸マグネシウム、プロピオン酸カルシウムなどが挙げられる。これらのうち、特に好ましいものとして、炭素数8〜18の脂肪酸のカルシウム塩、バリウム塩が挙げられる。
<加硫促進助剤>
本発明の硬化性組成物は、上記加硫促進剤とともに、加硫促進助剤を含有するのが好ましい。加硫促進助剤としては、公知の加硫促進助剤を用いることができ、たとえばMg、Ca、Ba、Zn、Na、K、Li、Fe、Cuなどの金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ジアルキルジチオカルバミン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、珪酸塩、ハイドロタルサイト、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテルなどを挙げることができる。
具体的には、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、フタル酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉛、ジブチルチオカルバミンサン亜鉛、メタホウ酸バリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、ポリエチレングリコール#600などが挙げられる。金属酸化物、金属水酸化物、炭酸塩などは、受酸剤として作用して加硫促進効果をうながすことができる。また、架橋反応速度の調整のため、N−(シクロヘキシルチオ)フタルイミドや、スルホンアミド誘導体、有機酸などの加硫遅延剤(早期架橋防止剤)を用いてもよい。
これらは、1種単独で又は複数を併用して用いることができる。
このうち本発明では、加硫促進助剤として、アンモニウム化合物、ホスホニウム化合物、アルソニウム化合物、スチポニウム化合物、オキソニウム化合物、スルホニウム化合物、セレソニウム化合物、スタンノニウム化合物、ヨードニウム化合物などのオニウム化合物を用いるのが望ましい。
本発明で加硫促進助剤として好ましく用いることのできるオニウム化合物としては、具体的には、たとえば、塩化メチルトリオクチルアンモニウム、塩化ラウリルピリジニウム、塩化テトラヘプチルアンモニウム、ステアリン酸テトラブチルアンモニウム、臭化セチルメチルアンモニウムなどの四級アンモニウム化合物;メチルトリオクチルホスホニウムテトラフルオロボレート、ベンジルトリオクチルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリオクチルホスホニウムクロライド、メチルトリオクチルホスホニウムアセテート、メチルトリオクチルホスホニウムジメチルホスフェート、メチルトリオクチルホスホニウムクロライドなどの四級ホスホニウム塩などを挙げることができる。
また本発明では、加硫促進助剤として、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドなどのポリアルキレンオキサイド類を用いることも好ましい。
<老化防止剤>
本発明の硬化性組成物は、上述のハロゲン含有架橋性ポリマー、チオール化合物誘導体に加えて、老化防止剤を含有することも好ましい。老化防止剤としては、アミン系、キノリン系、フェノール系、亜リン酸エステル系、チオエーテル系などの老化防止剤が好ましく用いられる。
一般に、アクリルゴム配合物においては、4,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンを代表例とするジフェニルアミン系老化防止剤が単独で用いられるが、本発明では、ジフェニルアミン系老化防止剤と、イオウ系老化防止剤またはリン系老化防止剤とを併用するのが望ましい。
イオウ系老化防止剤としては、好ましくは、ジラウリル−3,3−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)などのチオエーテル系化合物が挙げられる。また、リン系老化防止剤としては、好ましくは、トリス(ノニルフェニル)フォスファイトなどの亜リン酸系化合物が挙げられる。
<その他の配合物>
本発明に係る硬化性組成物は、上述した各成分以外に、本発明の目的を阻害しない範囲で、他の添加物などを配合物として含有していてもよい。このような配合物としては、たとえば、補強剤、充填材、可塑剤、加工助剤、顔料、滑剤、ハロゲン含有架橋性ポリマー以外の樹脂などが挙げられる。
<硬化性組成物>
本発明に係る硬化性組成物は、前記ハロゲン含有架橋性ポリマーと、前記チオール化合物誘導体とを含有し、さらに、必要に応じ、有機酸金属塩、加硫促進助剤、老化防止剤、補強剤、充填剤、可塑剤、顔料、加工助剤、滑剤等を含有することができる。
このような前記ハロゲン含有架橋性ポリマーと、前記チオール化合物誘導体とからなる硬化性組成物は、公知の方法により製造することができ、その製造方法は特に限定されない。たとえば、各成分を配合し、ロール、密閉式混練機等で混練した後、公知の架橋条件に従って加硫成形することにより得られる。
このような硬化性組成物中におけるチオール化合物誘導体の配合割合は、ハロゲン含有架橋性ポリマーに対して、好ましくは0.1〜5重量%、さらに好ましくは1〜3重量%の割合であることが望ましい。
チオール化合物誘導体の配合割合が0.1重量%より小さいと、架橋密度が低下することがあり、5重量%より大きいと、架橋密度が高くなりすぎて成型物が脆くなることがある。
得られた硬化性組成物は、加熱して架橋することができる。架橋成型温度は、130〜200℃程度が好ましい。架橋温度が130℃より低いと、架橋がされなかったりあるいは不十分となることがある。架橋温度が200℃より高いと、架橋反応が速く進行しすぎて成型不良を起こすことがある。
架橋時間は、架橋方法、温度、形状により異なり限定されないが、通常1分から5時間程度である。加熱方法に特に制限はなく、プレス、蒸気、オーブン、熱風などにより行うことができる。
本発明に係る硬化性組成物は、架橋剤として特定のチオール化合物誘導体を用いている。すなわち、該チオール化合物誘導体は、チオール基(−SH)がビニルエーテル等に由来する基で保護されているため、塩素含有アクリルゴム等の加硫剤として用いる場合に、保存安定性がよく、たとえば、加工時あるいはその後の保存時のゲル化を抑制することができる。また、加硫成形時あるいは架橋成形時に、ビニルエーテル等に由来する保護基を加熱等により脱離させ、−SH基を有するチオール化合物を容易に再生させることができるので、本来の反応性を容易に復活させて、塩素含有アクリルゴム、エポキシ基を含有する樹脂等の加硫あるいは架橋を有効に行わせ、諸物性に優れた架橋物を得ることができる。
このようなビニルエーテル類等に由来する保護基の脱離は、酸触媒を用いて行うことが好ましい。このような酸触媒としては、たとえば、ハロゲノカルボン酸、スルホン酸、硫酸モノエステル、リン酸モノエステル、リン酸ジエステル、ホウ酸モノエステル、ホウ酸ジエステルなどが挙げられる。
このようなチオール化合物誘導体は、チオール基を再生された後、二重結合への付加、エポキシ環への付加、有機性塩素の置換に関与する。チオール化合物誘導体は、単独でまたは促進剤、脱ハロゲン剤などと併用して用いることができる。
このようにして、架橋により得られる成形体は、硬さ、引っ張り強さ、圧縮永久歪みなどに優れ、ホース、シール部品等に有用である。
本発明に係るチオール化合物誘導体は、ゴム、樹脂等からなる硬化性組成物の架橋剤として有用で、本発明に係るチオール化合物誘導体を含有する組成物は、チオール化合物の反応が抑えられているので成型硬化する前の保存安定性に優れている。また、前記組成物の成型時は、反応性の高いチオール化合物を熱により容易に再生できるので、硬化を適時、迅速に行うことができる。また、本発明に係るチオール化合物誘導体を硬化性組成物の加硫剤として用いることにより、硬化物の諸物性を損なうことがある保存性あるいは硬化性を制御するための早期加硫防止剤を添加する必要がなくなるので、諸物性に優れた硬化物を得ることができる。
また、本発明に係る硬化性組成物は、硬化性組成物中で、成型物への硬化前の保存に際しては、チオール化合物誘導体が特定の保護基により保護されて反応が抑制されているので保存安定性に優れる。また、硬化性組成物の成型時は、反応性の高いチオール化合物を熱により容易に再生できるので、硬化を適時、迅速に行うことができる。また、本発明に係るチオール化合物誘導体を硬化性組成物の加硫剤として用いることにより、硬化物の諸物性を損なうことがある保存性あるいは硬化性を制御するための早期加硫防止剤を添加する必要がなくなるので、諸物性に優れた硬化物を得ることができる。さらに、本発明に係る硬化性組成物が、特定の加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤を含有する場合には、貯蔵安定性、架橋速度、架橋成形物の物理的性質にさらにバランスよく優れる。
実施例
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例において、IR測定は、日本分光工業株式会社製 FT/IR−7000形 フーリエ変換赤外分光光度計を用いて行った。
実施例1
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールを35.46g(0.2モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g、n−ブチルビニルエーテルを72.1g(0.72モル)、アセトンを190g装入し、70℃の温度で、均一な溶液になるまで攪拌して反応させた。反応終了後、反応溶液を冷却して、濃縮したところ、結晶を含む黄色液体を得た。結晶を濾別し、粘性黄色液体(チオール化合物誘導体A)89.1gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図1に示した。また、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定し、測定結果チャートを図2に示した。
図1より、n−ブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1619cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図1では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体Aは、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとn−ブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加した下記式のチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物(チオール化合物誘導体A)の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
次に、得られた粘性黄色液体Aの一部を大気中で180℃の温度で5分間加熱したところ、固体になった。この固体のIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定したところ、図3に示す結果が得られた。図3のIR吸収スペクトルには、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、前記式で示される生成した化合物の保護基が熱により脱離し、原料化合物が生じたことがわかった。
実施例2
前記実施例1において、n−ブチルビニルエーテルを72.1g(0.72モル)用いた代わりに、イソブチルビニルエーテルを同量用いたこと以外は、実施例1と同様にして、粘性黄色液体(チオール化合物誘導体B)91.0gを得た。得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図4に示した。
図4では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に帰属される1621cm−1の吸収は消失していることがわかる。また、図2にみられる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)に帰属される1590cm−1付近の吸収についても、図4では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物Bは、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認できた。生成物(チオール化合物誘導体B)の収率は1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して、93%であった。
次に、得られた粘性黄色液体Bの一部を大気中で180℃の温度で5分間加熱したところ、固体になった。この固体のIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定したところ、図5に示す結果が得られた。図5のIR吸収スペクトルには、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、生成した化合物の保護基が熱により脱離し、原料化合物が生じたことがわかった。
実施例3〜7、比較例1〜5
実施例1で得られた粘性黄色液体A、または実施例2で得られた粘性黄色液体Bを、表7に示す割合で各成分と配合し、8インチオープンロールで混練して、硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物の硬化前のムーニースコーチは、混合直後の値および、温度40℃、相対湿度(RH)40%の条件下に7日保存後の値を、JIS K6300の方法により測定した。
硬化性組成物は、180℃で8分間加熱して一次加硫したのち、さらに175℃で4時間2次加硫して硬化させた。得られた硬化物の硬度、引っ張り強さ、伸び、圧縮永久ひずみを測定した。さらに、二次加硫物を175℃で70時間加熱し、硬度変化率、引っ張り強さ変化率、伸び変化率を測定した。各物性の測定は、JIS K6301に準じて行った。これらの結果を表8に示す。
また、各実施例および比較例の組成物の加硫速度を、(株)オリエンテック製キュラストメーターV型を用いて測定した。キュラストメーターカーブを図6に示す。
公知のトリアジントリチオールと、架橋基としてクロロメチルスチレンを共重合したアクリルゴム1を用いた場合(比較例1)あるいはクロロ酢酸ビニルを共重合したアクリルゴム2を用いた場合(比較例3)、硬化が速すぎ、ムーニー粘度、スコーチタイムの測定ができなかった。また、早期加硫防止剤を添加した場合(比較例2)であっても、40℃、40%RH保存7日後のムーニースコーチが測定不可能であり、長期保存安定性に劣っていた。
一方、実施例1,2で得られたチオール化合物誘導体を用い、架橋基としてクロロメチルスチレンを用いて共重合したアクリルゴム1あるいはクロロ酢酸ビニルを用いて共重合したアクリルゴム2を用いた場合(実施例3〜5)は、長期保存性、硬化性ともに十分であり、物性にも優れていた。
公知のトリアジントリチオールと、架橋基としてクロロエチルビニルエーテルを共重合したアクリルゴム3を用いた場合(比較例4)、実施例1で得られたチオール化合物誘導体と、アクリルゴム3を用いた場合(実施例6)に比べて、圧縮耐久歪みが劣った。
公知のトリアジントリチオールと、エピクロロヒドリンを用いた場合(比較例5)、実施例1で得られたチオール化合物誘導体と、エピクロロヒドリンゴムを用いた場合(実施例7)に比べて、保存性、硬化性、圧縮耐久歪みが劣った。
実施例3〜7、比較例2,4,5について、架橋温度180℃でのキュラストメーターカーブを測定したところ、表9の様な結果が得られた。なお、キュラストメーターカーブの測定は、JISK6300に従い、(株)オリエンテック製キュラストメーターV型を用いて行った。測定条件は、振幅±1°、振動数100cpsとした。図6に、実施例3〜7、比較例2,4,5についてのキュラストメーターカーブを示す。
実施例8〜33、比較例6
実施例2で得られた粘性黄色液体Bと、組成比が、エチルアクリレート/ブチルアクリレート/メトキシエチルアクリレート/ビニルクロロアセテート=40/40/20/2であるアクリルゴムとを、加硫剤および加硫促進剤を除く各成分とともに、神戸製鋼社製3.6リットルのバンバリーミキサーで混練し、次いで加硫剤および加硫促進剤を加えてオープンロールで混練して、表10、表11、表12に示す組成の硬化性組成物をそれぞれ調製した。
得られた硬化性組成物の硬化前のムーニースコーチは、混合直後の値および、温度40℃、相対湿度(RH)40%の条件下に7日保存後の値を、JIS K6300の方法により測定した。
硬化性組成物は、180℃で8分間プレス加硫成形することにより1次加硫したのち、さらに175℃で4時間2次加硫して硬化させた。1次加硫物および2次加硫物の物性を、表13、表14、表15にそれぞれ示す。
表10および表13より、ハロゲン含有架橋性ポリマーであるアクリルゴムと、特定のチオール化合物誘導体とを含有する組成物のうち、加硫促進剤として有機酸アルカリ金属塩または有機酸アルカリ土類金属塩を含有する組成物は、同条件で加硫成形した場合であっても加硫反応が進みやすく、加硫成形物の物性にも優れることがわかる。
また、表11および表14より、加硫促進剤として有機酸金属塩を含有するとともに、加硫促進助剤としてオニウム化合物を含有する場合には、同条件で加硫成形した場合にも、1次加硫のみであっても優れた圧縮永久歪を示すことがわかる。
さらに、表12および表15より、老化防止剤として、アミン系化合物、チオエーテル系等の硫黄化合物、あるいはフォスファイト系等のリン化合物を用いた場合には、老化が防止できるとともに、加硫物の物理的性質に優れ、特に1次加硫のみであっても優れた圧縮永久歪を示すことがわかる。
実施例34
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールを19.5g(0.11モル)、アセトンを200g、オクタデシルビニルエーテルを88.8g(0.3モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g装入し、65℃で16時間反応した。この反応液にトルエン200gを加え、不溶物をろ過した後、ろ液を濃縮して、淡黄色のワックス状物99.23gを得た。
得られたワックス状物をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図7に示した。
図7より、オクタデシルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図7では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物であるワックス状物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとオクタデシルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、オクタデシルビニルエーテルに対して93%であった。
実施例35
温度計、環流冷却器、攪拌機を備えた四つ口フラスコに、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールを45g(0.17モル)、アセトンを200g、n−ブチルビニルエーテルを36.6g(0.367モル)、酸性リン酸ブチルエステル(大八化学工業(株)製、AP−4)を0.3g装入し、60℃で12時間反応した。この反応液を濃縮して、白色ペースト状物74.05gを得た。
得られたペースト状物をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図8に示した。また、原料である6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのIR吸収スペクトルを、KBr錠剤法により測定し、測定結果チャートを図9に示した。
図8より、n−ブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1619cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図9に見られる、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1600cm−1付近の吸収についても、図8では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物であるペースト状物は、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールとn−ブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールに対して95%であった。
実施例36
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、イソプロピルビニルエーテル61.9g(0.72モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、79.9gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図10に示した。
図10より、イソプロピルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図10では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソプロピルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して92%であった。
実施例37
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、サイクロヘキシルビニルエーテル68.0g(0.54モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、85.9gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図11に示した。
図11より、サイクロヘキシルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図11では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとサイクロヘキシルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、サイクロヘキシルビニルエーテルに対して86%であった。
実施例38
前記実施例34において、n−ブチルビニルエーテル72.1g(0.72モル)の代わりに、4−ハイドロキシブチルビニルエーテル68.0g(0.59モル)を用いたこと以外は、実施例34と同様にして、40.2gの粘性黄色液体を得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図12に示した。
図12より、4−ハイドロキシブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1620cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図12では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物である粘性黄色液体は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールと4−ハイドロキシブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、4−ハイドロキシブチルビニルエーテルに対して39%であった。
実施例39
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、不溶物をろ過し、ろ液を濃縮して、粘性黄色液体91gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図13に示した。
図13では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図13では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
得られた生成物である粘性黄色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したところ、黄色の固体に変化した。この黄色固体のIR吸収スペクトルを、上記赤外分光光度計を用いて、KBr錠剤法により測定したところ、図14に示す結果が得られた。図14には、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属する1590cm−1付近の吸収があり、生成物が分解したことがわかった。
実施例40
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、合成ハイドロタルサイト(キョーワード500SH、協和化学工業(株)製)4.0gを加え、10時間40℃で撹拌した後、ろ過し、ろ液を濃縮して、粘性黄色液体80gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図15に示した。
図15では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図15では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して84%であった。
得られた生成物である粘性黄色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したが、濁りなどの外観上の変化はなかった。また、この70日間放置後の粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定したところ、図16に示す結果が得られた。図16には、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属される1590cm−1付近の吸収はなく、生成物の分解は認められなかった。
実施例41
温度計、還流冷却器および撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール35.46g(0.2mol)、酸性リン酸ブチルエステル(AP−4、大八化学工業(株)製)0.3g、イソブチルビニルエーテル72.1g(0.72mol)および、アセトン190gを装入し、65℃で16時間反応した。反応終了後、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート(オルガチックスTA−30、松本製薬工業(株)製)1.0gを加えて濃縮し、粘性褐色液体90gを得た。
得られた粘性黄色液体をKRS−5セルに塗布して、IR吸収スペクトルを測定し、測定結果チャートを図17に示した。
図17では、イソブチルビニルエーテルの二重結合の吸収に係る1621cm−1付近の吸収が消失していることがわかる。また、図2に見られる、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールのSH結合(エノール構造)またはC=S結合(ケト構造)の吸収に係る1590cm−1付近の吸収についても、図17では消失していることがわかる。この結果より、得られた生成物は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールとイソブチルビニルエーテルとの付加体、すなわちチオール基がビニル基に付加したチオール化合物誘導体であることが確認された。生成物の収率は、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに対して93%であった。
得られた生成物である粘性褐色液体を、スライドグラスに約1mm厚に塗布し、温度23±2℃、湿度50±5%の大気中に70日間放置したが、放置後の粘性褐色液体に濁りなどの外観上の変化はなかった。また、この70日間放置後の粘性褐色液体のIR吸収スペクトルを、KRS−5セルに塗布して測定したところ、図18に示す結果が得られた。図18には、原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに帰属される1590cm−1付近の吸収はなく、生成物の分解は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
図1は、実施例1で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図2は、合成原料である1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図3は、実施例1で得られた合成物を大気中で加熱したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図4は、実施例2で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図5は、実施例2で得られた合成物を大気中で加熱したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図6は、実施例3〜7、比較例1,2のキュラストメーターカーブである。
図6中の1は、実施例3のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の2は、実施例4のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の3は、実施例5のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の4は、実施例6のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の5は、実施例7のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の6は、比較例2のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の7は、比較例4のキュラストメーターカーブを示す。
図6中の8は、比較例5のキュラストメーターカーブを示す。
図7は、実施例34で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図8は、実施例35で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図9は、合成原料である6−ジブチルアミノ−S−トリアジン−2,4−ジチオールのIR吸収スペクトルのチャートである。
図10は、実施例36で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図11は、実施例37で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図12は、実施例38で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図13は、実施例39で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図14は、実施例39で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図15は、実施例40で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図16は、実施例40で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
図17は、実施例41で得られた合成物の、IR吸収スペクトルのチャートである。
図18は、実施例41で得られた合成物を大気中で保存したサンプルの、IR吸収スペクトルのチャートである。
Claims (35)
- 下記一般式(1)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(1)中、X1、X2、X3が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴とするチオール化合物誘導体:
(式(1)中、X1、X2、X3は、互いに同一であっても異なっていてもよく、式(2)中、Aは酸素原子またはイオウ原子であり、
R1は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R2は、下記(a)〜(f)からなる群から選ばれる1種の基であり、
R3は、水素原子、アルキル基またはフェニル基であり、
R1とR2とは環を形成していてもよい:
(a)アルキル基、ハロゲン化アルキル基、少なくとも1個の水酸基を有するアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアラルキル基から選ばれる1種の基;
(b)アルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、テトラアルキレングリコール、アリルアルコール類、ケトオキシム類、アルカノールアミン類、ジアルカノールアミン類、トリアルカノールアミン類、トリアルキルシラノール、脂環式アルコールおよびナフチルアルコール類から選ばれる1種の水酸基含有化合物から、水酸基を除いた残基;
(c)下記一般式(3)
(式(3)中、Xはハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、ジアルキルアミノ基、トリアルキルシリル基、アセトキシ基またはピペリジノ基のいずれかを示し、Yは水素原子またはハロゲン原子を示す。)で表される基;
(d)下記一般式(4)
(式(4)中、Zは水素原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルキル基またはアシル基のいずれかを示し、nは、1〜3の整数であり、式(4)で表されるフェニル基骨格と結合する置換基Zの数を示す。)で表される基;
(e)−CH2−C6H5または−CHCH3−C6H5で表される基;
(f)下記一般式(5)
下記一般式(6)
(式(6)中、R1、R3は、それぞれ前記式(2)中のR1、R3と同じであり、式(5)および(6)中、Aは、酸素原子またはイオウ原子であり、R4は、−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2−、
のいずれかを示す。)で表される基)。 - 前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることを特徴とする請求項1に記載のチオール化合物誘導体。
- 下記一般式(10)
で表されるチオール化合物誘導体であって、式(10)中、X1、X2が、下記一般式(2)
で表される基であることを特徴とするチオール化合物誘導体:
(式(2)は、請求項1に記載の式(2)と同様であり、式(10)中、X1、X2は、互いに同一であっても異なってもよく、R5は、下記(g)〜(k)で表される基から選ばれる1種の基である:
(g)水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基および−NH2から選ばれる基;
(h)下記一般式(11)
(ただし、R6、R7はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基で、R6とR7とは互いに同一であっても異なってもよい。)で表されるジアルキルアミノ基:
(i)下記一般式(12)
(ただし、R8はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、ベンジル基、アリル基、シクロアルキル基、フルオロアルキル基、アニリノ基、ヒドロキシアニリノ基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表されるモノアルキルアミノ基:
(j)下記一般式(13)
(ただし、R9はアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基、シクロアルキル基およびフェニル基から選ばれる基を示す。)で表される基:
(k)下記一般式(14)
(ただし、R10はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、フェニル基、アラルキル基、ハロゲノフェニル基、ナフチル基およびシクロアルキル基から選ばれる基を示す。)で表される基)。 - 前記一般式(2)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることを特徴とする請求項6に記載のチオール化合物誘導体。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のチオール化合物誘導体を含有する硬化性組成物。
- 前記一般式(17)で表される官能基が、チオール基(−SH)を有する化合物と、ビニルエーテル類とを反応させて形成されることを特徴とする請求項12に記載の硬化性組成物。
- 前記一般式(2)および(17)において、Aが酸素原子、R1が水素原子、R2がアルキル基または(ポリ)アルキレングリコールから水酸基を除いた残基、R3が水素原子であることを特徴とする請求項12〜19のいずれかに記載の硬化性組成物。
- トリアジンチオールと多価ビニルエーテルとを接触させて得られる化合物と、ハロゲン含有架橋性ポリマーとを含有することを特徴とする硬化性組成物。
- 前記多価ビニルエーテルが、ジビニルエーテル類、トリビニルエーテル類およびテトラビニルエーテル類から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項22〜24のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、アクリルゴムであることを特徴とする請求項12〜25のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、エピクロロヒドリンゴムであることを特徴とする請求項12〜25のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、クロロプレンゴムであることを特徴とする請求項12〜25のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 前記ハロゲン含有架橋性ポリマーが、クロルスルホン化ポリエチレンであることを特徴とする請求項12〜25のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 有機酸金属塩を含有することを特徴とする請求項12〜29のいずれかに記載の硬化性組成物。
- 前記有機酸金属塩が、有機酸アルカリ金属塩および/または有機酸アルカリ土類金属塩であることを特徴とする請求項30に記載の硬化性組成物。
- 加硫促進助剤を含有することを特徴とする、請求項30または31に記載の硬化性組成物。
- 前記加硫促進助剤が、オニウム塩および/またはポリアルキレンオキサイドであることを特徴とする請求項32に記載の硬化性組成物。
- アミン系老化防止剤と、
硫黄化合物またはリン化合物と
を含有することを特徴とする請求項12〜33のいずれかに記載の硬化性組成物。 - 請求項12〜34のいずれかに記載の硬化性組成物を架橋してなる成型体。
Applications Claiming Priority (5)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001168673 | 2001-06-04 | ||
JP2001168672 | 2001-06-04 | ||
JP2001168673 | 2001-06-04 | ||
JP2001168672 | 2001-06-04 | ||
PCT/JP2002/005483 WO2002098866A1 (fr) | 2001-06-04 | 2002-06-04 | Derives d'un compose de thiol, compositions de durcissement contenant ces derives et articles moules obtenus a partir de ces compositions |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPWO2002098866A1 true JPWO2002098866A1 (ja) | 2004-09-16 |
Family
ID=26616311
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003501990A Pending JPWO2002098866A1 (ja) | 2001-06-04 | 2002-06-04 | チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその成形体 |
Country Status (5)
Country | Link |
---|---|
US (3) | US7199169B2 (ja) |
EP (1) | EP1394153B1 (ja) |
JP (1) | JPWO2002098866A1 (ja) |
DE (1) | DE60238759D1 (ja) |
WO (1) | WO2002098866A1 (ja) |
Families Citing this family (7)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US7199169B2 (en) * | 2001-06-04 | 2007-04-03 | Unimatec Co., Ltd. | Thiol compound derivative, hardening compositions containing these derivatives and molded articles thereof |
JP2006272784A (ja) * | 2005-03-29 | 2006-10-12 | Toyoda Gosei Co Ltd | 繊維補強層付ゴム製品及びその製造方法 |
JPWO2007145338A1 (ja) * | 2006-06-16 | 2009-11-12 | Nok株式会社 | アクリルゴム組成物 |
EP2492259A1 (de) * | 2011-02-25 | 2012-08-29 | ecoatech GmbH | Thiolate als nicht-migrierende PVC-Weichmacher |
EP2615073B1 (de) * | 2012-01-13 | 2018-04-04 | Construction Research & Technology GmbH | Dispergiermittel für anorganische Partikel |
KR101927242B1 (ko) | 2012-03-27 | 2018-12-10 | 제온 코포레이션 | 고무 가교물의 제조 방법 |
EP4087837A4 (en) * | 2020-01-06 | 2024-01-31 | Musc Found For Res Dev | SUBSTITUTED TRIAZINE COMPOUNDS AND USES THEREOF |
Family Cites Families (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US4096206A (en) | 1976-02-09 | 1978-06-20 | Borg-Warner Corporation | Flame-retardant triazines |
EP0120411B1 (en) * | 1983-03-23 | 1987-02-04 | Nippon Zeon Co., Ltd. | Scorch-inhibited elastomeric composition |
US4596958A (en) * | 1984-09-26 | 1986-06-24 | Burr-Brown Corporation | Differential common base amplifier with feed forward circuit |
JP2511101B2 (ja) * | 1988-03-16 | 1996-06-26 | 三共有機合成株式会社 | 塩素含有樹脂の安定化法 |
DE3820969A1 (de) | 1988-06-22 | 1989-12-28 | Degussa | Bis(2,4-organylthio-s-triazin-6-yl)polysulfane, verfahren zu ihrer herstellung und sie enthaltende vulkanisierbare kautschukmischungen |
US5206304A (en) | 1988-06-22 | 1993-04-27 | Degussa Aktiengesellschaft | Vulcanizable rubber mixtures containing bis-(2,4-organylthio-triazine-6-yl) polysulfides |
EP1205498A1 (en) * | 2000-11-13 | 2002-05-15 | Nippon Shokubai Co., Ltd. | (Meth)acrylate ester-based resin composition |
US7199169B2 (en) * | 2001-06-04 | 2007-04-03 | Unimatec Co., Ltd. | Thiol compound derivative, hardening compositions containing these derivatives and molded articles thereof |
-
2002
- 2002-06-04 US US10/479,627 patent/US7199169B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2002-06-04 JP JP2003501990A patent/JPWO2002098866A1/ja active Pending
- 2002-06-04 DE DE60238759T patent/DE60238759D1/de not_active Expired - Lifetime
- 2002-06-04 WO PCT/JP2002/005483 patent/WO2002098866A1/ja active Application Filing
- 2002-06-04 EP EP02733284A patent/EP1394153B1/en not_active Expired - Fee Related
-
2007
- 2007-02-28 US US11/711,692 patent/US7812157B2/en not_active Expired - Fee Related
- 2007-02-28 US US11/711,691 patent/US7384995B2/en not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
WO2002098866A1 (fr) | 2002-12-12 |
US7812157B2 (en) | 2010-10-12 |
US20040162368A1 (en) | 2004-08-19 |
US20080227977A1 (en) | 2008-09-18 |
US7384995B2 (en) | 2008-06-10 |
EP1394153A1 (en) | 2004-03-03 |
US20070155868A1 (en) | 2007-07-05 |
US7199169B2 (en) | 2007-04-03 |
EP1394153A4 (en) | 2004-10-27 |
DE60238759D1 (de) | 2011-02-10 |
EP1394153B1 (en) | 2010-12-29 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US4417012A (en) | Organic thiosulphates and thiosulphonates useful as stabilising agents for rubber vulcanisates | |
US4650834A (en) | Vulcanizable epoxy group-containing elastomer composition | |
EP3081612B1 (en) | Photocurable composition having adhesive properties | |
US4931509A (en) | Curable acrylate-type elastomer composition | |
EP2568011B1 (en) | Acrylic rubber composition | |
CA2145261C (en) | Aqueous curable resin compositions | |
JPWO2002098866A1 (ja) | チオール化合物誘導体、該誘導体を含有する硬化性組成物およびその成形体 | |
KR20190018696A (ko) | 고무 저장 안정성의 실란-매개 향상 | |
US3732192A (en) | Rubber formulations containing thiosulfonate esters | |
WO2022117389A1 (en) | Method for producing a terminal-functional polymer | |
JPS6241617B2 (ja) | ||
HU191815B (en) | Vulcanizable caoutchouc compositions comprising organic thiosulfate or thiosulfonate derivatives as stabilizing agent | |
EP3992218A1 (en) | Acrylic rubber, acrylic rubber composition, and crosslinked rubber | |
JPH06293843A (ja) | ニトロソアミンを生成させずにゴムを硬化する組成物及び工程 | |
JP2003055353A (ja) | チオール化合物誘導体の製造方法 | |
EP0257640B1 (en) | Vulcanizable elastomer composition | |
EP3992236A1 (en) | Acrylic rubber composition and rubber crosslinked product | |
US3074900A (en) | Composition comprising a conjugated diene elastomer and phenol ether compounds and vulcanizate produced by heating same | |
CN112955429A (zh) | 新型氨基甲酸酯化合物和含有该化合物的丙烯酸类橡胶组合物 | |
JPS6112741A (ja) | 含フツ素エラストマ−組成物 | |
JPS6129620B2 (ja) | ||
JPH01188541A (ja) | 非ハロゲン化ゴム用硬化活性剤 | |
JPH06293851A (ja) | アクリルゴム組成物 | |
US3686246A (en) | Nickel compounds | |
JPH0370760A (ja) | アクリルゴム組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050307 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20081202 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20090130 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20090512 |