JPWO2002057656A1 - トロイダル型無段変速機用摺動回転体及びその評価方法 - Google Patents
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Abstract
トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され、他の部材に対して摺動する摺動回転体であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、表面から最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に、平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まない。
Description
技術分野
本発明は、トロイダル型無段変速機(CVT)に用いられるディスクおよびパワーローラ軸受などの高信頼性CVT用摺動回転体及びその評価方法に関する。
背景技術
トロイダル型無段変速機(CVT)に用いられる入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受、その使用環境が高荷重、高面圧であり、かつ重要保安部品と位置付けられており、割損および短時間での剥離を防止するため、耐久性向上に向けられた数多くの技術が提案されている。例えば特開平13−032900号公報(以下、先行文献1という)には、入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受に用いられる合金鋼の化学成分や機能面表面の炭素量、窒素量および表面硬さなどを限定するなど耐久性を向上させるために好適な合金成分、熱処理品質等が開示されている。
また、特開2001−026840号公報(以下、先行文献2という)には、鋼中の大型非金属介在物が起点となって短期間で発生する割損および剥離を防止するために、高清浄度鋼を採用するとともに、さらに、図9に示す入出力ディスクのトラクション面62とその表層部位、および図10に示すパワーローラ軸受の内輪のトラクション面67とその表層部位に大型非金属介在物が存在しないことを保証するために、超音波探傷検査を行う方法を用いて、例えば表面から0.5mm以内に最大0.1mm以上の非金属介在物が存在しないことを保証したCVT用部材が開示されている。
また、トロイダル型無段変速機ディスクおよびパワーローラの使用環境は後述するその性質から他の形式の無段変速機に比べて高いトルクの伝達能力が要求され、非常に大きな曲げ応力、および繰り返し応力を受けるため、これにより破損しない耐久性の高い材料の適応が必要とされている。このため、本発明者らは特開平11−193855号公報(以下、先行文献3という)においてCVTディスクおよびパワーローラに特に必要な耐久性を満足する鋼の管理法を求め提案してきた。
従来、軸受リングの素材として使用される鋼材の内部欠陥の検出については、製鋼工程において超音波探傷法による欠陥検査が行われているのみであった。この探傷法は圧延後の鋼材を水中または台上で鋼材の外周面から内部へ超音波を伝達させて探傷を行うものであり、例えば「特殊鋼46巻6号第31頁、(社)特殊鋼倶楽部」(以下、先行文献4という)に記載された垂直探傷法などが知られている。
製鋼メーカーでの、鋼材の欠陥(非金属介在物等)に対する検査では、その性格上幅数百μmおよび長さ数mm以上の大きな欠陥のみの検出にとどまっており、加えて代表検査(抜取り検査)を行うことにより全体として高清浄度の鋼が管理されているとはいえ、現状技術では有害となる介在物の有無を全数について把握しで保証するところ(全数検査)までには至っていない。
また、近年の非破壊検査技術の進歩を背景として、超音波探傷法では高い周波数を用いることにより例えば0.01mm(10μm)程度の微小サイズの非金属介在物まで検出可能になってきている。ただし、超音波探傷法では周波数を高くすると鋼材内部での超音波の減衰が増大して実用的ではなく、とくに鋼材表面の粗さが粗くなると超音波の減衰がさらに大きくなるため、実用的には未だ製品として全量検査の可能な介在物の大きさの範囲としては、幅数百μmおよび長さ数mm以上の大きな欠陥のみの検出にとどまっているのが現状である。
トロイダル型無段変速機(CVT)ディスクおよびパワーローラ軸受部材の内部(特に表面近傍)に大きな欠陥があった場合は、曲げ応力を繰り返し受けることで比較的短時間で破損に至ることがある。とくに大型CVTの摺動部材は高い曲げ応力を繰り返し受けるので、従来の汎用転がり軸受が受けている最大応力発生位置よりも深いところを起点として剥離や割れを生じる傾向にある。具体的には、大型CVTの入・出力ディスク31,32においては、図11中に斜線で示した部位(トラクション面62及びその表層部位)に大きな繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。また、大型CVTのパワーローラ軸受の内輪においては、図12中に斜線で示した部位(トラクション面67、内周面68、転動面69及びその表層部位)に大きな繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。このため、これらの面62,67,68,69や表層部位を起点として剥離や割れが発生しやすい。
ところで、上記の先行文献1には、剥離や割れの発生を防止するために合金成分の好適化や熱処理品質を特定化することが提案されている。しかし、この先行文献1の発明は、図11に示す入・出力ディスク31,32のトラクション面62及びその表層部位の強化と、図12に示すパワーローラ内輪36a,37aのトラクション面67、内周面68、転動面69及びその表層部位の強化とを図ることにより、全体的な強度向上を狙ったものであり、剥離や割れの起点となる大型介在物そのものを改善することに向けられた提案ではない。
また、上記の先行文献2には、図11に示す入・出力ディスク31,32のトラクション面62、内周面63とその表層部位、および図12に示すパワーローラ内輪36a,37aのトラクション面67、内周面68、転動面69のうち、特にトラクション面62,67に当たる表層部位の大型介在物を検出し、保証することで割損および短時間での剥離を防止することが提案されている。しかし、この先行文献2の発明はトラクション面62,67の表層部位のみは精密検査(又は全数検査)の対象とするものであるが、トラクション面以外の面63,68,69の表層部位を精密検査(又は全数検査)の対象とするものではない。
今後CVTに求められる要求として、ディスクおよびパワーローラの長寿命化、割損防止はもとより、突発的に発生する短寿命な軸受の撲滅が求められている。これは、これからの自動車の保障期間延長化に伴い、従来よりも更に厳しい条件下であっても短寿命品の発生のおそれが無い、高信頼性のCVT用部材が要望されているものである。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、摺動面に剥離を生じにくい長寿命のCVT用摺動回転体および、CVT構成部材の稼動時に特に応力の高くなる内径端部の表層部位に存在する欠陥(特に、非金属介在物)を高精度に全数検出することができる高信頼性のCVT用摺動回転体の評価方法を提供することを目的とする。
発明の開示
トロイダル型CVTは、その他のCVT(例えばベルト型CVT)より大きな入力トルクにも耐えることができるのが特徴の一つである。大きなトルクを発生する大排気量車を対象とした場合に、トロイダル型CVTはより大きな入力トルクを受けることとなる。トロイダル型CVTはベルト式CVTに比べて大きな荷重を受けることが可能な方式であるため、さらに高い荷重や面圧がディスクおよびパワーローラにかかることとなる。今後将来的には、トロイダル型CVTでは繰り返し曲げ疲労を受ける部位がさらに深いところに位置することが予想される。
本発明者らは、先行文献2において、トラクション面の直下0.5mm以内に存在する最大径0.1mm以上の非金属介在物を制限することにより、これら部材の割損を防止できることを提案している。すなわち本発明者らは、鋭意研究の結果、トラクション面から0.5mm以内に存在する最大径0.1mm以上の非金属介在物(欠陥)がCVT部品の曲げ疲労破壊の起点となるということが判明し、その知見に基づく具体的解決手段を先行文献2において提案した。
しかし、その後の研究の結果、非金属介在物の位置が上記の先行文献2で示した位置よりも深いところであっても、トロイダル型CVT部品の使用条件がさらに厳しくなると曲げ疲労破壊(以下、単に「破損」という)が発生することが判明した。すなわち、本発明者らが従来に比べてより厳しい応力条件下で研究を行った結果、先行文献2に開示した深さよりもさらに深い位置においても破損を生じる場合があること、および同文献2に開示した大きさよりもさらに小さな欠陥においても破損を生じる場合があることが判明した。
そこで、本発明者らは、入力トルクと破損および非金属介在物の大きさとの関係について鋭意研究した。その結果、トロイダル型CVT部品が受ける最大せん断応力位置(Z0)の2倍の深さ以内の領域に平方根長さで0.1mm以上(より好ましくは0.05mm以上)の欠陥を存在させないようにすると、トロイダル型CVT部品の破損を防止できるということが判明した。
さらに、摺動面は、ディスクとパワーローラとの間で、転がり疲労を受けており、摺動面直下に大型の非金属介在物が存在すると、短寿命で剥離を生じるという問題があった。トロイダル型CVT部品に剥離が生じると、自動車の走行に障害が生じることになることから、転がり疲労に対して長寿命化を図るのはもとより、短寿命品の撲滅が重要である。本発明者らはこれらの課題を解決するために、入力トルクと剥離、非金属介在物の大きさとの関係について鋭意研究した結果、トロイダル型CVT部品が受ける最大せん断応力位置(Z0)の2倍の深さ以内に平方根長さで0.05mm以上の非金属介在物を無くすることで、短期間での剥離を防止できることが判明した。
一方、本発明者らは、CVTのディスクとパワーローラ軸受の摺動面下に存在する非金属介在物を評価する方法として超音波探傷法に注目し、検査法の改良に鋭意努力した結果、斜角法(表面波法)を適応することで、表面から0.5mm以内に存在する0.1mm以下の非金属介在物を検出することが可能なことを見出し、これを上記の先行文献2において開示した。しかし、先行文献2に開示した発明では主として表面から0.5mm以内と比較的浅い位置の欠陥検出を目的としていたため、本発明の(Z0)の2倍の深さになると、入力トルクの大小にもよるものの、例えば2mmから3mmの深さまでが対象となり、これは、従来の対象深さの6倍にも達する深い位置で、さらに平方根長さで0.05mm以上または0.1mm以上の欠陥(非金属介在物、地きず(macro−streak flow)、開口クラックを含む)も検出する必要がある。
上記の先行文献2は表面下0.5mmまでの深さの欠陥検出方法を開示するものでもあるが、さらに本発明者らは表面下0.5mm以上の深い部位を高精度に検査することができる超音波探傷方法について鋭意研究を積み重ね、本発明を完成させるに至った。
本発明に係るトロイダル型無断変速機は、入力軸に設けられた入力ディスクと、出力軸に設けられた出力ディスクと、内輪、外輪及び複数の転動体を含みかつ前記入力ディスク及び出力ディスクに前記内輪が係合して前記入力軸の動力を前記出力軸に伝達するパワーローラ軸受と、を含んで構成したトロイダル形無段変速機において、前記入力ディスクとパワーローラ軸受の内輪が前記トロイダル形無段変速機の最大減速状態で係合し動力を伝達するときの条件で求められる最大せん断応力深さをZoと定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記入力ディスクおよびパワーローラ軸受の内輪のうち少なくとも一方が、トラクション面から前記Zoの2倍の深さ範囲内に前記平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。
本発明に係るトロイダル型無断変速機用摺動回転体は、トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され、他の部材に対して摺動する摺動回転体であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、その表面から前記Z0の2倍の深さ範囲内に、前記平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。
欠陥には、非金属介在物、地きず(macro−streak flow)、開口クラックが含まれる。CVT部品から検出される欠陥の大部分は非金属介在物であるので、図7,8に斜線で示す部位に大型の非金属介在物が存在しないようにすることが肝要である。大型の非金属介在物とは一般的には最大径が0.05mm以上のものをいうが、非金属介在物には種々の形状のものが存在する。そこで、本発明全体において欠陥のサイズを平方根長さで定義することとした。
ここで「平方根長さ」は、欠陥の形状に応じて次の1)および2)のようにそれぞれ求められる。
1)欠陥の形状が線状である場合(線状欠陥)は、その長さLと幅Dとの積の平方根(L×D)1/2を平方根長さとする。
2)欠陥の形状が粒状、球状または塊状である場合(非線状欠陥)は、その最大径(長軸径)D1と最小径(短軸径)D2との積の平方根(D1×D2)1/2を平方根長さとする。
第1の発明では、摺動回転体(入力ディスク、パワーローラ軸受の内輪)の表面が摺動面(トラクション面)である場合は、その摺動面(トラクション面)から最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に存在する欠陥を対象とし、それを表面波探傷法、斜角探傷法及び垂直探傷法の組み合せを用いて検出し、その検出結果に基づいて合否を判定し、前記深さ範囲の部位に平方根長さで0.10mm以上の欠陥を含ませないものとする(請求項1)。この場合に、0.05mm以上の欠陥(特に非金属介在物)を含ませないようにすることが品質保証上さらに好ましい(請求項2)。
また、上記他の部材がパワーローラ軸受の内輪である場合、すなわち摺動回転体が入力ディスク又は出力ディスクである場合は、図7に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL1で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3にある部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが好ましい(請求項3)。
また、上記他の部材が入力ディスク又は出力ディスクである場合、すなわち摺動回転体がパワーローラ軸受内輪である場合は、図8に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL2で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2にある部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが好ましい(請求項4)。
本発明に係るトロイダル型無段変速機用摺動回転体の評価方法は、トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され他の部材に対して摺動して用いられる摺動回転体を、超音波探触子とともに伝達媒体中に浸漬させ、前記超音波探触子から前記伝達媒体を介して前記摺動回転体に超音波を入射し、前記摺動回転体から反射される超音波エコーの波形に基づいて該摺動回転体の表面および内部に存在する欠陥を評価する方法において、
(a)表面波探傷法および斜角探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の表面および表面直下の部位を探傷する工程と、
(b)斜角探傷法および垂直探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の内部であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義したときに、前記表面から前記最大せん断応力深さZ0の2倍の深さまでの部位を探傷する工程と、
(c)欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.10mm以上(好ましくは0.05mm以上)であるときは該摺動回転体を不合格と判定し、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.10mm未満(好ましくは0.05mm未満)であるときは該摺動回転体を合格と判定することを特徴とする。
超音波が入射する表面(入射面)は、摺動回転体のトラクション面または端面である。トラクション面は、他の部材との相互摺動接触により動的繰り返し応力を受ける面である。
上記摺動回転体が入力ディスク又は出力ディスクである場合は、超音波は端面から摺動回転体の内部に入射される(請求項5)。この端面は、支軸に接触又は対面する内周面とトラクション面との間に挟まれたところに位置し、かつ支軸に実質的に直交する面である。図15および図16に示すように、内周面63側から端面70の径方向長さWの半分(L1)で、かつ端面70側から内周面63の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3にある部位に対して、端面70側から超音波4を入射し、端面70の直下で、かつ内周面63の直下の表層部位を探傷する。
上記摺動回転体がパワーローラ軸受の内輪である場合も、超音波は端面から摺動回転体の内部に入射される(請求項6)。この端面は、ピボット軸50が接触又は対面する内周面と、ピボット軸と転動溝とに挟まれたところに位置し、かつピボット軸に実質的に直交する面である。図17および図18に示すように、内周面68側から端面75の径方向長さGの半分(L2)で、かつ端面75側から内周面68の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2にある部位に対して、端面75側から超音波4を入射し、端面75の直下で、かつ内周面68の直下の表層部位を探傷する。
この場合に、工程(a)および(b)では、5MHz〜30MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いることが好ましく、さらに好ましくは工程(a)では5MHz〜15MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用い、前記工程(b)では10MHz〜25MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いることが望ましい。
具体例では、表面から0.5mmまでの深さの検査には斜角法または表面波法を使用して、周波数5MHzから30MHz、好ましくは5MHzから15MHzにて探傷する。さらに超音波が材料内部で減衰して検出が困難となる表面から0.5mmを超える深さの検査には斜角法または垂直探傷法を用いる。
また、具体例では、表面から0.5mmを超え、最大せん断応力深さZ0の2倍までの範囲(実用的には2〜3mm深さ)を検査する場合は、斜角法または垂直探傷法を使用して、周波数5MHzから30MHz、好ましくは10MHzから25MHzにて探傷する。このように両者を組み合わせることにより上記課題を解決することができる。
なお、深い範囲を検出するために用いられる方法として、一般的には垂直探傷法(水浸法)であるが、0.5mmより浅い位置は、音波が表面で反射する表面エコーにより検出不可能な領域(不感帯)となり、垂直探傷法では探傷することができない。そこで、本発明者らは、表面直下の表層域に存在する非金属介在物を検出するために特定の表面から超音波を入射してCVT部材を高精度に探傷することができる最適の方法を見出したものである。
これまで、超音波探傷での検出限界は一般的に1/2波長と言われているが、本発明法によると表面近傍では平方根長さで0.05mmまでの欠陥の検出は可能となる。しかし、その場合に5MHz以下の周波数では目的の大きさの欠陥が検出することが困難となり、また、30MHzを超える周波数では音波の減衰が大きく、目的の深さまでの探傷が困難なことから、探傷周波数は5MHz以上30MHz以下の範囲に限定した。さらに好ましくは表面から0.5mmまでの範囲では5MHz以上15MHz以下の周波数が好ましく、0.5mmから最大せん断応力深さZ0の2倍の範囲(実用的には2〜3mm深さ)までの範囲では10MHz以上25MHz以下の周波数が好ましい。これらの特定周波数域の超音波を探傷深さに応じてそれぞれ使い分けることにより、所望の大きさの検出強度が最大となる。上記は、トラクション面以外で、高い曲げ応力を受ける部位を探傷する場合に適している。
(作用)
トロイダル型無段変速機(CVT)は、その使用環境が高荷重、高面圧であるので、汎用の転がり軸受よりもはるかに大きな負荷を受ける。特に入・出力ディスクでは図11中の斜線部位(面62,63及びその直下の表層部位)に繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。また、同様にパワーローラ軸受内輪では図12中の斜線部位(面67,68,69及びその直下の表層部位)に繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。このため、これらの部位を起点として入・出力ディスク及びパワーローラ軸受内輪に剥離や割れを生じやすい。
このような剥離や割れを防止するために、先行文献2では入出力ディスクのトラクション面62、パワーローラ軸受内輪のトラクション面67及びこれらの直下の表層部位に大型の非金属介在物が存在しないことを保証する超音波探傷検査方法を開示している。しかし、同文献2の検査方法は、トラクション面62,67からの深さが浅いところの部位を対象にしており、トラクション面からさらに深さが深いところの部位は対象としていない。また、同文献2の検査方法はトラクション面直下の表層部位のみを対象にしており、トラクション面から離れたその他の表層部位は対象としていない。
トロイダル型CVTの主な用途は乗用車であるが、万一、入・出力ディスクやパワーローラ軸受に損傷(剥離や割れ)を生じた場合は、CVT機構内の他の部品が致命的なダメージを受けて重大な事故につながるおそれがある。特に、乗用車の走行中に入・出力ディスク又はパワーローラ軸受内輪が割れると、大事故に発展する可能性があるので、これら部品に割れがまったく発生しないように品質保証する必要がある。
本発明者らは、CVT実機内での入・出力ディスク及びパワーローラ軸受内輪に繰り返し曲げ応力が加わった場合を想定して、それぞれの部材に発生する応力分布についてコンピュータグラフィックスシミュレーションを利用した有限要素法(FEM)により解析した。その結果、図13,14に示すようにトラクション面62,67以外の面63,68,69,70,75の表層部位(内周面の一方端部)にも高応力発生領域71,76が存在することが判明した。すなわち、入・出力ディスク31,32においては、図13に示すように内周面63と端面70とが交叉するコーナーエッジ71及びその近傍に局部応力集中が発生しやすいことが判明し、パワーローラ軸受内輪36a,37aにおいては、図14に示すように内周面68と端面75とが交叉するコーナーエッジ76及びその近傍に高応力が発生しやすいことが判明した。
そこで本発明者らは、これらの高応力発生領域71,76に着目し、この表層部位に含まれる大型非金属介在物の大きさと深さ位置と割れ(剥離)との相関について鋭意研究した結果、図7および図8の斜線で示す領域に平方根長さで0.2mm以上の大型非金属介在物を含まないようにすることにより、ディスクおよびパワーローラ軸受内輪の各サイズに拘わらず割れ(剥離)を防止できることを見出した。すなわち、入・出力ディスク31,32の高応力発生領域71は図7に斜線で示す部位61にあたり、パワーローラ軸受内輪36a,37aの高応力発生領域76は図8に斜線で示す部位66にあたる。
なお、本発明者らは、入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受のサイズの大小に拘わることなく、図7,8に斜線で示す領域の部位が、ある一定の清浄(実質的に無欠陥)であれば、保証寿命の期間中は剥離や割れを生じないことを確認している。
ここで「表層部位」というときは、表面直下のみを指すのではなく、表面からある程度の深さまで少し入った部位をも含み、さらに表面そのものをも含む。
本発明者らは、トロイダル型CVT設計条件から下記の手順に従って最大せん断応力深さZoを求め、求めたZo値を基準として垂直探傷法、斜角探傷探傷法、表面波探傷法の各種超音波探傷法を入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪に適用して調べた。その結果、表3に示すように表面からの深さがZoの1倍から2倍の範囲には斜角探傷法が最も適し、表面からの深さがZoの2倍以上の範囲には表面波探傷法又は垂直探傷法が最も適していることが判明した。
このトロイダル型CVTの入出力ディスクとパワーローラ軸受内輪とが回転接触する際のZ0そのものについて、およびZ0の求めかたについて、図19および図20を参照して説明する。
トロイダル型CVTの入出力ディスク及びパワーローラ軸受の構成部材には大きな繰返し剪断応力と大きな繰返し曲げ応力とが複合的に重なりあって作用するため、汎用の転がり軸受とは異なる厳しい応力負荷状態となり、CVT構成部材に動的最大剪断応力が発生する位置は汎用転がり軸受のそれよりも深くなる。
ここでは、動的最大剪断応力が作用する深さ位置を「最大せん断応力深さZ0」と呼ぶこととする。この最大せん断応力深さZ0は、CVTを設計するときに、各構成部材の転がり寿命の計算に用いられる。
Hertzの接触理論を用いて最大せん断応力深さZ0の求めかたについて説明する。物体1と物体2が弾性接触したときに、第1面(回転方向に直交する面I)と第2面(回転方向に直交する面II)とに対応する物体1,2の曲率半径をそれぞれρ11,ρ12,ρ21,ρ22と表示することとする。ここで、TCVT軸受のディスク(物体1)とパワーローラ(物体2)との接触に適用したときに、両物体1,2の接触は次式(1),(2),(3),(4)で与えられる。
a=(50.5×10−3)μ・(P/Σρ)1/3 …(1)
b=(50.5×10−3)ν・(P/Σρ)1/3 …(2)
b/a={(t2−1)(2t−1)}1/2=k1 …(3)
cosτ=|ρ11−ρ12+ρ21−ρ22|/Σρ …(4)
ただし、記号aは接触楕円長軸半径を、記号bは接触楕円短軸半径を、記号τは補助角を、記号μとνはそれぞれcosτに関する定数を、記号Pは荷重を、そして記号Σρ(=ρ11+ρ12+ρ21+ρ22)は2つの弾性体の接触点で互いに直角をなす主曲率の総和をそれぞれ表わす。
なお、上記のパラメータμ,ν,k1は次の関係にある。
μ={2E(k2)/πk12}1/3
ν={2E(k2)k1/π}1/3
k1=b/a
k2=(1−k12)1/2
したがって、パラメータμ,νは第2種完全だ円積分により求まる定数である。
上式(1)から接触楕円長軸半径aを、上式(2)から接触楕円短軸半径bをそれぞれ求め、これらを上式(3)に代入してパラメータtについて解くと、動的最大剪断応力発生位置Zo(表面からの深さ)は下式(5)で与えられることが「軸受潤滑便覧(日刊工業新聞社;軸受潤滑便覧編集委員会編;昭和36年発行)」(以下、文献5という)の第230〜240頁に記載されている。
Zo=b{(t+1)(2t−1)1/2}−1 …(5)
なお、上記のZoは下式(6)の関係から最大接触圧力Pmaxを用いても求めることができる。
Pmax=[188×{P(Σρ)2}1/3]/μν
…(6)
(計算事例)
次に、上式(1)〜(6)に具体的に各パラメータの数値を代入して最大せん断応力深さZoと最大接触圧力Pmaxをそれぞれ求めてみる。各パラメータの数値の一例を列挙する。
ディスク半径ro=40mm
パワーローラ半径R22=32mm
接触角φ=35.4°(CVTの最大減速時の接触条件)
荷重P=52200N
パワーローラ回転中心間距離D=2r1=130mm
係数ko={(φD/2)−ro}/ro=0.625
上記の数値を用いて曲率半径ρ11,ρ12,ρ21,ρ22をそれぞれ求める。但し、ρ11,ρ12,ρ21,ρ22の値は小数点下5桁を四捨五入した。
ρ11=cosφ/{ro(1+ko−cosφ)}=0.0252
ρ12=−1/ro=−0.025
ρ21=1/ro=0.025
ρ22=1/R22=0.0313
よって、
Σρ=ρ11+ρ12+ρ21+ρ22=0.0565
|ρ11−ρ12+ρ21−ρ22|=0.0439
これらの数値を上式(4)に代入してcosτの値を求める。但し、cosτの値は小数点下3桁を四捨五入した。
cosτ=0.0439/0.0565=0.78
文献5の付表(楕円積分表)を用いてcosτ=0.78に対応するパラメータμとνをそれぞれ求める。但し、文献5の付表に載っていない中間値は比例計算法により算出した。
μ=2.196, ν=0.5581
これらμ,νの値とP,Σρの各値を上式(1),(2)にそれぞれ代入して、接触楕円の長軸半径aおよび短軸半径bをそれぞれ求める。
a=5.05, b=1.283
これらの数値を上式(3)に代入し、パラメータtについて三次方程式の解(実数解)を求める。
t=1.03
求めたtの値を上式(5)に代入して最大せん断応力深さZoを求める。
Zo=0.614(mm)
さらに、μ,ν,P,Σρの各値を上式(6)に代入して最大接触圧力Pmaxを求める。
Pmax=4.05(GPa)
以上の計算事例では、Zo値は0.614mm、Pmax値は4.05GPaとなる。
以上説明したように、本発明によれば、トロイダル型CVT部材のなかで最も破壊を生じやすい部位を重点的に検査することにより、CVT部材を高精度に品質保証することができる。特に、表面からの深さに応じて最適の超音波探傷方法を採用することにより、欠陥の探傷精度が飛躍的に向上するので、品質保証のレベルアップを図ることができる。
また、本発明によれば、CVT部材に含まれる欠陥を非破壊的に探傷するので、CVT部材の全数を検査することができ、高信頼性の品質保証が可能になる。特に、本発明の方法では欠陥から反射されるエコーに基づいて真の欠陥の大きさと形状を把握することができるので、従来の顕微鏡を用いて切断面にあらわれた欠陥を二次元的に観察する方法に比べて高い信頼性が得られる。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は超音波探傷検査装置の概略図である。図中の符号11は超音波伝達媒体としての水が貯留された水槽である。その水槽11内に被検体2としてのCVTディスク(又はパワーローラ軸受内輪でもよい)および超音波探触子3がそれぞれ水中に浸漬された状態で配置されている。
超音波探触子3は、指向性が強く被検体2(31,32,36a,37a)の曲率の影響を受けにくい焦点機構を内蔵した焦点型探触子を用いる。焦点型探触子は高いS/N比を有する。被検体2は回転テーブル15(16)上にディスク表面を探触子3の側に向けて設置されている。被検体2はターンテーブル15(16)の回転軸と同軸であり、両者はサーボモータ14により同期回転駆動されるようになっている。なお、符合18はサーボモータ14駆動用の制御アンプである。
図2および図3に示すように、探触子3はスイングアーム23の先端に取付板13により取り付けられている。スイングアーム23は被検体2の半径方向と軸方向にも移動可能な2軸制御のXYテーブル22により支持されている。XYテーブル22はコントローラ26により制御される2つのドライバ22a,22bを備えている。これらドライバ22a,22bによりXYテーブル22と共に探触子3が被検体2(31,32)の摺動面2a(62)に沿って移動されるようになっている。
さらに、XYテーブル22はリニアガイド装置20により可動に支持されている。リニアガイド装置20はリニアガイド用コントローラ26によって制御されるサーボモータ(図示せず)を介して超音波探傷用探触子3を被検体2の軸方向に移動させるようになっており、リニアガイド用コントローラ26は被検体2の外周面に設置されたロータリエンコーダ25によって被検体2が一回転(360°)したことが検知されると、制御装置19からの指令に基づいてサーボモータを制御して探触子3を被検体2の軸方向に所定距離だけ移動させる。これにより、被検体2の全断面の探傷がなされるようになっている。
なお、斜角探傷の場合は、その角度に応じて被検体2の直径(中心を通る)上から平行に探触子3をプラスマイナス数mmオフセットさせて行うようにしてもよい。また、被検体2の直径上で探触子3をスイングさせて行うこともできる。
探触子3は超音波探傷装置24の入力部および出力部にともに接続されている。探触子3は、超音波探傷装置24からの電圧信号に応じた超音波パルスを被検体の外周表面2aに向けて送信すると共に、その反射エコーを受信し、これを電圧信号に変換して超音波探傷装置24に送り返すようになっている。
超音波探傷装置24は、制御装置としてのパーソナルコンピュータ19からの指令に基づいて超音波探触用探触子3に電圧信号からなる指令信号を送信するとともに、送信した信号と受信した信号とを基にして得られた探傷情報を制御装置19に送り返すようになっている。これにより制御装置19はCRT画面上に超音波エコーを波形表示する。
探触子3は予め被検体2のサイズに応じて決められた曲線上を所定距離移動し、被検体2の摺動面2aに沿ってスキャン走査されるようになっている。これにより被検体2の全表面が探傷される。
次に、図4を参照しながらトロイダル型CVT装置30について説明する。
図外のハウジング内に、入力ディスク31と出力ディスク32とが、同軸上に対向設置された構造を有している。この入力ディスク31および出力ディスク32を有するトロイダル変速部の軸心部分には、入力軸33が貫通されている。この入力軸33の一端には、ローディングカム34が配設されている。そして、このローディングカム34が、カムローラ35を介して入力ディスク31に、入力軸33の動力(回転力)を伝達する構造となっている。
入力ディスク31および出力ディスク32は、略同一形状を有して対象に配設され、それらの対向面が協働して軸方向断面でみて、略半円形となるようにトラクション面に形成されている。そして、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62で形成されるトロイダルキャビティ内に、入力ディスク31および出力ディスク32に接して一対の運転伝達用のパワーローラ軸受36およびパワーローラ軸受37が配設された構造を有している。
なお、パワーローラ軸受36は、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62を転走するパワーローラ軸受の内輪36a、外輪36bおよび複数の転動体(鋼球)36cを具備する。同様に、他方のパワーローラ軸受37は、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62を転走するパワーローラ内輪37a、外輪37bおよび複数の転動体(鋼球)37cを具備する。
すなわち、パワーローラ軸受内輪36a,37aは、パワーローラ軸受36,37の転動体の役割をそれぞれ兼ねている。一方のパワーローラ軸受内輪36aは、枢軸38、外輪36bおよび複数の転動体36cを介して、トラニオン40に回転自在に枢着されると共に、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面の中心となるピボット軸50を中心として、傾転自在に支持されている。
他方のパワーローラ軸受内輪37aは、枢軸39、外輪37bおよび複数の転動体37cを介して、トラニオン41に回転自在に枢着されると共に、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面の中心となるピボット軸50を中心として、傾転自在に支持されている。さらに、入力及び出力ディスク31,32と両パワーローラ軸受内輪36a,37aとの相互接触面には粘性摩擦抵抗の大きい潤滑油が供給されている。このような潤滑状態で、入力ディスク31に入力される動力が、潤滑油膜と両パワーローラ内輪36a,37aとを介して出力ディスク32に伝達されるようになっている。
なお、入力ディスク31および出力ディスク32は、ニードル45を介して入力軸33とは独立した状態(すなわち、回転軸33の動力に直接影響されない状態)となっている。出力ディスク32には、入力軸33と平行に配設されると共に、アンギュラ軸受42を介して図示しないハウジングに回転自在に支持された出力軸44が配設されている。
このトロイダル形無段変速機30では、入力軸33の動力が、ローディングカム34に伝達される。そして、この動力の伝達により、ローディングカム34が回転すると、この回転による動力が、カムローラ35を介して入力ディスク31に伝達され、入力ディスク31が回転する。さらに、この入力ディスク31の回転により発生した動力は、両パワーローラ内輪36a,37aを介して、出力ディスク32に伝達される。そして、出力ディスク32は、出力軸44と一体となって回転する。
変速時には、トラニオン40およびトラニオン41をピボット軸50方向に微小距離だけ移動させる。すなわち、このトラニオン40およびトラニオン41の軸方向移動で、両パワーローラ軸受内輪36a,37aの回転軸と、入力ディスク31および出力ディスク32の軸との交差が、わずかに外れる。すると、両パワーローラ軸受内輪36a,37aの回転周速度と、入力ディスク31の回転周速度との均衡が崩れ、かつ入力ディスク31の回転駆動力の分力によって、両パワーローラ軸受内輪36a,37aがピボット軸50の回りに傾転する。
このため、両パワーローラ軸受内輪36a,37aが、入力ディスク31および出力ディスク32の曲面上を傾転し、その結果、速度比が変わり、減速または増速が行われる。
次に、本発明において超音波の入射角の限界について説明する。すなわち斜角探傷法で入射角が30°を越える場合について述べる。
超音波が入射角iLで鉄、鋼である被検査物の中に入ると横波と縦波に分かれ、縦波の屈折角θLのほうが横波の屈折角θSよりも大きくなる。水と鉄を超音波が伝わる場合、入射角と屈折角の関係は横波だけでみると下式(7)および(8)に示す関係にある。
sinθS=V2/V1・siniL …(7)
sinθS=3230/1500・sin(iL) …(8)
ただし、θS<90°
V1:水中での音速1500m/秒
V2:鉄中での音速3230m/秒
超音波探傷用探触子3は発信子と同時に受信子でもあるが、受信の場合(傷信号)は逆経路(発信と同じ経路を逆にたどって)で返ってくる。エコーの強さは鉄、鋼から水に返ってくるが、返ってくる信号は横波、縦波のどちらでもよく、また、横波と縦波の両方が返ってもよい。
入射角iLがある値以上になると鉄、鋼中の屈折角が90°以上となり、傷信号が表面を走るか或いは表面を反射するだけで超音波探傷用探触子3に戻ってこない。
上述したように入射角iLに対し縦波の屈折角θL>横波の屈折角θSであり、しかもθLとθSのいずれかが戻ってくればよいとすると、θSが返ってくる入射角の限界を考えればよいことになる。
その時の入射角の限界は理論的にはθS:90°として上式(7)及び(8)より約28°となるが、実際には音波はある程度の幅を特って出されており、30°までは十分に探傷可能になる。
なお、一般的には横波の屈折角θSが90°となる場合を表面波法というが、実際には音波はある程度の幅(広がり)をもって振動子から発振されることから、本発明では入射角iLで26°〜30°となる場合を「表面波法」と定義する。また、一般的には入射角が0°となる場合を垂直波法というが、実際には焦点型探触子から発振される超音波は光軸に対してある程度の角度をもって入射することから、本発明では入射角iLで0〜5°となる場合を「垂直波法」と定義する。また、本発明では入射角iLで6〜25°となる場合を「斜角法」と定義する。
(実施例1)
次に、実施例1として、トロイダル型CVTのディスク中の欠陥を検出し、検出した欠陥を評価する方法について説明する。
実施例1の探傷条件を次に示す。
探傷方法:表面波探傷法、斜角探傷法、垂直探傷法
探触子:焦点型探触子(焦点距離水中にて30〜40mm位置)
周波数:10〜25MHz
表3に平方根長さ0.05mmの欠陥を検出できるか否かの評価を、超音波の入射角を変えて行った結果を示す。検査方法としてはディスクをそれぞれの入射角別に探傷し、欠陥が検出された場合、実際にディスクの表面より追い込み研削にて位置と大きさを特定し、検出強度と深さとの関係を導き出し、それに基づいて評価を行った。
表3において、各々の入射角位置で、平方根長さ0.05mmの介在物を検出できた場合をマル(○)で表示し、平方根長さ0.05mmの介在物を検出できなかった場合をバツ(×)で表示した。さらに検出できた場合のうち最も反射エコーの強度が強かった位置については二重マル(◎)で表示した。また、検出できた場合のうちエコーが不鮮明になる位置については三角(△)で表示した。用いた探触子の周波数は、10MHz〜25MHzであった。また、摺動面からの距離は後述する実施例の試験条件での最大せん断応力深さZ0を基準(本実施例1の場合、Z0は約1mm)として計算した。
表3に示すように、Z0×2(mm)未満は入射角0°(垂直波)では表面層の不感態により平方根長さ0.05mm未満の小欠陥は検出することができない。これに対して入射角17°(斜角)および入射角30°(表面波)では逆にZ0×2(mm)未満は検出が可能であるが、Z0×2(mm)を超える深さ領城では超音波の減衰が著しいために検出が困難なことが判明した。さらに、入射角の選定により最高反射エコー強度となる深さに違いが認められ、表面波法はより表面近傍が、斜角法はやや内部に入ったところが得意な領域になる。従って、検査を行うディスクの深さにより超音波の被検査面での入射条件を選択することが必要である。
上記の実施例1によれば、垂直波法と斜角または表面波法を組み合わせることで、表面からZ0×2(mm)までの深さまでの部位に存在する平方根長さ0.05mm以上の大きさの欠陥を検出できる。
(実施例2)
CVTディスクのトラクション面に対して上記実施例1と同様の超音波探傷検査を行い、検出した欠陥が平方根長さ0.05mmから0.07mmまでのディスクと、平方根長さ0.10mmから0.12mmまでのディスクとを取り出し、さらに、摺動面からの深さ別に分類したものを試験片とし、耐久性試験を行った。なお、欠陥の存在する深さは下記の耐久条件における最大せん断応力発生位置Z0の倍数で整理した。
(試験条件)
入力の回転数:4000rpm
入力トルク:450N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル:合成潤滑油(トラクション油)
オイル温度:100℃
その試験結果を図5および表1に示す。図5は横軸に欠陥の表面からの位置をとり、縦軸に耐久性試験での部材の破損時間をとって、欠陥の大きさと位置とが破損時間(寿命)に及ぼす影響について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線Aは平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体について破損時間を調べた結果を示し、特性線Bは平方根長さ0.10〜0.13mmの大きさの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍弱、2倍強、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体について破損時間を調べた結果を示した。図から明らかなように、平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥(小欠陥)は深さ位置に拘わらず破損寿命に影響を及ぼさないが、平方根長さ0.10〜0.13mmの欠陥(大欠陥)は最大せん断応力深さZ0の2倍までの深さに位置すると破損寿命が著しく短くなった。
また、表1に示すように、欠陥の存在する深さ位置が、Z0×2以内のNo.1〜No.3の被検体については平方根長さ0.10mm以上の大欠陥を有しているため、それぞれ40時間、90時間、175時間と短時間のうちに破損してしまうことが判明した。これに対して、平方根長さ0.10mm以上の大欠陥を有している場合であっても、その欠陥の存在する深さ位置がZ0×2を超えZ0×3以上となるNo.4およびNo.5の被検体では500時間を超えても破損は生じなかった。また、欠陥の存在する深さ位置がZ0×2以内であっても、その欠陥の平方根長さが0.05mm〜0.07mmの被検体(No.6〜No.7)では500時間を超えても破損は生じなかった。
従って、高負荷を受けるCVT部材の破損を防止するためには、表面から最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に平方根長さ0.10mm以上の非金属介在物を含まないことが肝要である。
次に、上記と同様にCVTディスクに超音波探傷検査を行い、検出した欠陥の平方根長さが0.05mm〜0.07mmであったディスクを選び出し、さらに、摺動面からの深さ別に分類したものを試験片とし、上記の試験条件にてディスクの転がり疲労寿命を求めた。なお、試験数は各深さ条件各々n=20とし、ディスクが剥離したもののL10寿命を求めた。
その寿命評価結果を図6および表2に示す。図6は横軸に欠陥の表面からの位置をとり、縦軸にL10寿命試験での部材のはくり寿命L10(時間)をとって、平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥の位置がL10寿命に及ぼす影響について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線Cは平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体についてL10寿命を調べた結果をプロットして結線したものである。図から明らかなように平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の2倍以内の深さに位置するとL10寿命が著しく短くなるという結果が得られた。なお、同サイズの欠陥は最大せん断応力深さZ0の3倍以上の深さでは疲労はくり強度には実質的に無害である(600時間で剥離を発生しない)ことが確認された。
なお、破損には至らなかった平方根長さ0.05〜0.07mmの小欠陥であっても、それが最大せん断応力深さZ0の2倍以内に存在するNo.8およびNo.9の被検体についてはL10寿命がそれぞれ100時間、230時間となり短寿命であった(表2参照)。これに対して、平方根長さ0.05mm以上の欠陥を有している場合であっても、その欠陥の存在する深さ位置が、Z0×2を超えZ0×3以上となるNo.10およびNo.11の被検体では3倍近いL10寿命(600時間以上)を有することが判明した(表2参照)。
従って、短寿命はくりを防止するには、トロイダル型CVTディスクのトラクション面から最大せん断応力深さ(Z0)の2倍の深さ範囲内に平方根長さ0.05mm以上の欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが肝要である。
次に、本発明の実施例3,4として、トロイダル型CVTの入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪のトラクション面以外で応力が高くなる部位を検査する方法について、図7,8,15〜18および表4,表5を参照してそれぞれ説明する。なお、入・出力ディスク31,32およびパワーローラ軸受内輪36a,37aの各々は異なる材料チャージから溶解された素材を用いてそれぞれ製作し、完成後組み立て前に斜角探傷法および垂直探傷法を用いて、図7,8中にて斜線で示した部位に平方根長さで0.20mm以上の大型非金属介在物が存在するか否かをそれぞれ検査した。
入力ディスク31及びパワーローラ軸受内輪36a,37aの素材にはJIS SCM435の鋼材を使用した。この鋼材を、表面の炭素と窒素の合計濃度が0.9〜1.2%になるように浸炭窒化処理した後に、焼入れ焼戻しを施し、表面を仕上加工した。仕上加工後の表面硬さはビッカース硬さHv720〜780であった。なお、肌焼鋼の場合、上記のような表面硬化処理を施し、同様の硬さを有する場合は、例えばJIS SCM420,SCM440,SCR420等を用いてもよい。また、上記の浸炭窒化処理の代わりに浸炭処理した場合であっても、割れ寿命は同様の結果が得られる。なお、出力ディスク32およびパワーローラ軸受外輪36b,37bにも同様の素材を用いる。
入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪のトラクション面以外で応力が高くなる部位を検査する共通の評価方法として、図1〜3に示す装置を用いて該部位を超音波探傷した。入力ディスク31では、図15に示すように、入射角28°(屈折角90°)にて端面70から3mm深さ(探傷ゲート)まで探傷した。パワーローラ軸受内輪36aでは、図17に示すように、入射角19°(屈折角45°)にて端面75から3mm深さ(探傷ゲート)まで探傷した。端面から3mm以上の深さについては、図16,18に示すように、入射角0°で垂直探傷した。上記の入射角になるように探触子を操作し、自動探傷にてX−Y軸座標およびR軸角度、欠陥エコーの高さとエコーの反射範囲、エコーからのビーム露呈距離などの情報より欠陥の大きさ(幅と長さ)および位置を推定評価した。
(実施例3)
実施例3としてディスク31(32)の内周面/端面直下の表層部位61を検査する方法を図15,16および表4を参照して説明する。
ディスクの検査対象部位61は、図7に示すように、内周面63側から端面70の径方向長さの半分の深さL1(端面70の約半分(例えば6mm))で、かつ端面70側から内周面63の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3までの範囲とした。
先ず、超音波伝達媒体としての水中にディスク31を浸漬し、図示しない探触子の超音波発振面をディスク31の端面70に対して入射角θが28°(屈折角90°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に表面波が入射するところに探触子が正しく位置決めされたことを確認した後に、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら表面波探触子(図示せず)を外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。これによりディスク31の内周面63から幅L1の範囲まで端面70が探傷される。
次に、アーム23に取り付けた探触子3aの超音波発振面をディスク31の端面70に対して入射角θが19°(屈折角45°)となるように位置決めする。次いで、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら探触子3aを外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。
図15に示すように、回転中のディスク31に対して端面70から入射角19°(θ)で超音波4を入射させつつ、斜角探触子3aを図中の左方から右方に向けて端面70に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面70のコーナーエッジに到達するところで斜角探触子3aの平行移動を停止させる。これにより端面70から深さd1(例えば2〜3mm)までで、かつ内周面63から深さL1(端面70の幅Wの半分(例えば6〜8mm))までの範囲の第1の部位61aが探傷される。
次に、アーム23から斜角探触子3aを取り外し、垂直探触子3bに交換する。垂直探触子3bをディスク31の端面70に対して位置決めする。探傷開始箇所に垂直探触子3bが正しく位置決めされたことを確認した後に、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら垂直探触子3bを外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。
図16に示すように、回転中のディスク31に対して端面70から入射角0°で超音波4を入射させつつ、垂直探触子3bを図中の左方から右方に向けて端面70に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面70のコーナーエッジに到達するところで垂直探触子3bの平行移動を停止させる。これにより端面70から深さd1+d2(=C/3)までで、かつ内周面63から深さL1(端面70の幅Wの半分(例えば6〜8mm))までの範囲の第2の部位61bが探傷される。
割れ寿命(L10寿命)評価に先立って、欠陥の大きさと位置は次のようにして推定した。いくつかの欠陥エコーが得られたディスクを切断し、切断面を詳細に顕微鏡観察することにより、大型非金属介在物の大きさ(幅と長さ)及び表面からの深さ位置と超音波エコー強度との関係(キャリブレーション)を把握した。このキャリブレーションと実測した欠陥エコーとを用いて、部材内部に存在するであろう欠陥の大きさと位置を推定した。
表4に、割れ寿命評価に供した入力ディスクに事前に検出されていた欠陥(大型非金属介在物)の位置と大きさをそれぞれ示す。なお、入力ディスクは出力ディスクよりも大きい負荷が掛かる(厳しい応力条件で使用される)ので、入力ディスクを代表的に供試した。これらの供試材を用いてトロイダル型CVTの実機のシミュレーション耐久試験を行ない、割れが発生するか否かを評価した。なお、耐久試験に供した供試材以外に対して使用するディスクおよびパワーローラ軸受内輪(他の部材)は、事前に超音波探傷検査を受けて、大型の非金属介在物が該供試材よりも少ないことを確認した上で使用した。
上記の処理を行なった後に、ディスクの表面は研削加工し、超音波探傷に供した。
試験条件を下記に示す。
入力軸の回転速度;4000rpm
入力トルク;392N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル;合成潤滑油
オイル温度;100℃
耐久試験においては、各供試材である入力ディスクが割れに至るまでの時間をそれぞれ調査した。表4から明らかなように、欠陥の検出位置が図7の斜線領域内であっても、欠陥サイズが平方根長さで0.20mm以下であれば、100時間を超えても割れは発生しないことが判明した(例1〜例5−2)。
また、平方根長さ0.2mmを超える大型介在物が存在する場合であっても、端面70からの深さ(距離)又は内周面63からの深さ(距離)が図7の斜線領域外であれば、100時間を超えても割れは発生しないことが判明した(例6〜例10)。すなわち、表4と図7において、ディスクの端面75からの高さ方向での距離がC/3以下で、かつ支軸がはめ込まれるべき貫通孔48の内周面63からの距離L1(W/2)以内の部位(図7の斜線領域61)に平方根長さで0.20mmを超える大型介在物が存在しないようにすると、ディスクが長寿命となる。なお、上記のパラメータCはディスクの全高さサイズであり、パラメータWはディスクの頭頂部の外径Aと孔48の径BとしたときにW=(A−B)/2で定義されるサイズである。
一方、端面70からの深さ(距離)又は内周面63からの深さ(距離)が図7の斜線領域61内であり、かつ平方根長さで0.20mmを超える大型介在物が存在する場合は、60時間で割れたもの(例11)と45時間で割れたもの(例12)とがあった。これらの割れの起点は超音波探傷試験により欠陥が発見されていた位置とそれぞれ一致していた。
なお、探傷周波数は15MHz以下が好適であり、本発明者らは周波数10MHzの焦点型探触子を使用した場合でも同様の結果が得られることを確認した。
(実施例4)
次に、実施例4としてCVTパワーローラ軸受内輪36a(37a)の内周面/端面直下の表層部位66を検査する方法を図17,18および表5を参照して説明する。
パワーローラ軸受内輪の検査対象部位66は、図8に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL2で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2までの範囲とした。
先ず、超音波伝達媒体としての水中にパワーローラ軸受内輪36aを浸漬し、図示しない探触子3aの超音波発振面をパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して入射角θが28°(屈折角90°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に表面波が入射するところに探触子が正しく位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、パワーローラ軸受内輪36aの端面75に向けて超音波を発振させながら表面探触子3a(図示せず)を外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。これにより内周面68から幅L2(幅Gの半分)の範囲の端面75が探傷される。
次に、アーム23に取り付けた探触子3aの超音波発振面をパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して入射角θが19°(屈折角45°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に斜角波が正しく入射するように探触子3aが位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、端面75に向けて超音波を発振させながら探触子3aを外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。
図17に示すように、回転中のパワーローラ軸受内輪36aに対して端面75から入射角19°で超音波4を入射させつつ、斜角探触子3aを図中の左方から右方に向けて端面75に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面75のコーナーエッジに到達するところで斜角探触子3aの平行移動を停止させる。これにより端面75から深さd3(例えば1mm)までで、かつ内周面68から深さL2(端面75の幅Gの半分(例えば6mm))までの範囲の第1の部位66aが探傷される。
次に、アーム23から斜角探触子3aを取り外し、垂直探触子3bに交換する。垂直探触子3bをパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して位置決めする。探傷開始箇所に垂直探触子3bが正しく位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、パワーローラ軸受内輪36aの端面75に向けて超音波を発振させながら垂直探触子3bを外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。
図18に示すように、回転中のパワーローラ軸受内輪36aに対して端面75から入射角0°で超音波4を入射させつつ、垂直探触子3bを図中の左方から右方に向けて端面75に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面75のコーナーエッジに到達するところで垂直探触子3bの平行移動を停止させる。これにより端面75から深さd3+d4(=F/2)までで、かつ内周面68から深さL2(端面75の約半分(例えば6mm))までの範囲の第2の部位66bが探傷される。
割れ寿命(L10寿命)評価に先立って、欠陥の大きさと位置は次のようにして推定した。いくつかの欠陥エコーが得られたパワーローラ軸受内輪を切断し、切断面を詳細に顕微鏡観察することにより、大型非金属介在物の大きさ(幅と長さ)と超音波エコー強度との関係(キャリブレーション)を把握した。このキャリブレーションと実測した欠陥エコーとを用いて、部材内部に存在するであろう欠陥の大きさと位置を推定した。
表5に、割れ寿命評価に供した入力ディスクに事前に検出されていた欠陥(大型非金属介在物)の位置と大きさをそれぞれ示す。これらの供試材を用いてトロイダル型CVTの実機のシミュレーション耐久試験を行ない、割れが発生するか否かを評価した。なお、耐久試験に供した供試材以外に対して使用するディスクおよびパワーローラ軸受内輪(他の部材)は、事前に超音波探傷検査を受けて、大型の非金属介在物が該供試材よりも少ないことを確認した上で使用した。
上記の処理を行なった後に、パワーローラ軸受の表面は研削加工し、超音波探傷に供した。
次に、パワーローラ軸受内輪について11個の供試材(例13〜23)を作製し、斜角探傷および垂直探傷を用いて各サンプルの内輪部位を検査した。その結果を表5に示す。耐久試験においては、各供試材であるパワーローラ軸受内輪が割れに至るまでの時間をそれぞれ調査した。
試験条件を下記に示す。
入力軸の回転速度;4000rpm
入力トルク;392N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル;合成潤滑油
オイル温度;100℃
表5から明らかなように、欠陥の検出位置が図8の斜線領域66内であっても、その大きさが平方根長さで0.20mm以下であれば100時間を超えても割れは発生せず、長寿命であることが判明した(例13〜例17)。
また、欠陥サイズが平方根長さで0.20mmを超える場合であっても、その検出位置が図8の斜線領域66を外れていれば100時間を超えても割れは発生せず、長寿命であることがわかる(例18〜例21)。なお、上記のパラメータFはパワーローラ軸受内輪の全高さサイズであり、パラメータGはパワーローラ軸受内輪の頭頂部の外径Dと孔51の径EとしたときにG=(D−E)/2で定義されるサイズである。
一方、表5の例22および例23は、斜線領域66内にある欠陥サイズが平方根長さで0.20mmを超えているため、それぞれ66時間と40時間で割れが発生し、短寿命であった。
なお、上記の実施例1〜4において、単一の探触子3aを表面波法と斜角法とで共用することとし、垂直法では別の探触子3bを用いた。これらの探触子3a,3bは、アーム23に1セットで取り付けることが望ましく、アーム23上で超音波発振面をそれぞれの角度に変えられるように可動支持することが好ましい。このようにすると、表面波法から斜角探傷法へ切り替える時間が短縮されるとともに、第1の探触子3aから第2の探触子3bに交換する時間も省略され、全体として検査時間が大幅に短縮される。
以上のように本発明では大型介在物の大きさそのもののみではなく、その存在する影響領域を限定することにより、さらに高信頼性の部品が提供される。超音波探傷範囲を影響領域のみに限定することにより全数検査を短時間で実施することが可能となる。
なお、探傷周波数は15MHz以下が好適であり、本発明者らは、この他に10MHzの焦点型探触子を使用した場合でも同様の結果が得られることを確認した。
また、上記実施例ではパワーローラ軸受の内輪について説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、パワーローラ軸受の外輪において転動体保持溝内周面面側と並行方向にも本発明を適用することができる。
本発明によれば、トロイダル型CVT部材のなかで最も破壊を生じやすい部位を重点的に検査することにより、トロイダル型CVT部材を高精度に品質保証することができる。特に、表面からの深さに応じて最適の超音波探傷方法を採用することにより、欠陥の探傷精度が飛躍的に向上するので、品質保証のレベルアップを図ることができる。
また、本発明によれば、トロイダル型CVT部材の全数を検査するので、高信頼性の品質保証が可能になる。特に、本発明の方法では欠陥から反射されるエコーに基づいて真の欠陥の大きさと形状を把握することができるので、従来の顕微鏡を用いて切断面にあらわれた欠陥を二次元的に観察する方法に比べて高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は、評価試験装置の概要を示す構成ブロック図。
図2は、評価試験装置の要部およびCVTパワーディスクを示す拡大正面図。
図3は、評価試験装置の要部およびCVTパワーディスクを示す拡大側面図。
図4は、CVTの断面図。
図5は、評価試験結果を示す特性線図。
図6は、評価試験結果を示す特性線図。
図7は、入出力ディスクの検査部位を示す断面模式図。
図8は、パワーローラ軸受内輪の検査部位を示す断面模式図。
図9は、入出力ディスクのトラクション面の検査部位を示す断面模式図。
図10は、パワーローラ軸受内輪のトラクション面の検査部位を示す断面模式図。
図11は、入出力ディスクの検査部位を示す断面模式図。
図12は、パワーローラ軸受内輪の検査部位を示す断面模式図。
図13は、有限要素法(FEM)を用いたコンピュータシミュレーションにより応力解析された入出力ディスクを示す三次元画像図。
図14は、有限要素法(FEM)を用いたコンピュータシミュレーションにより応力解析されたパワーローラ軸受内輪を示す三次元画像図。
図15は、入力ディスクの最表層部位(第1領域)の検査に用いられる斜角探傷法を説明するための模式図。
図16は、入力ディスクの準表層部位(第2領域)の検査に用いられる垂直探傷法を説明するための模式図。
図17は、パワーローラ軸受内輪の最表層部位(第1領域)の検査に用いられる斜角探傷法を説明するための模式図。
図18は、パワーローラ軸受内輪の準表層部位(第2領域)の検査に用いられる垂直探傷法を説明するための模式図。
図19は、接触状態にある入出力ディスクとパワーローラ軸受部材とを示してヘルツの弾性接触理論を説明するための模式図。
図20は、図19の一部を拡大して示す模式図。
本発明は、トロイダル型無段変速機(CVT)に用いられるディスクおよびパワーローラ軸受などの高信頼性CVT用摺動回転体及びその評価方法に関する。
背景技術
トロイダル型無段変速機(CVT)に用いられる入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受、その使用環境が高荷重、高面圧であり、かつ重要保安部品と位置付けられており、割損および短時間での剥離を防止するため、耐久性向上に向けられた数多くの技術が提案されている。例えば特開平13−032900号公報(以下、先行文献1という)には、入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受に用いられる合金鋼の化学成分や機能面表面の炭素量、窒素量および表面硬さなどを限定するなど耐久性を向上させるために好適な合金成分、熱処理品質等が開示されている。
また、特開2001−026840号公報(以下、先行文献2という)には、鋼中の大型非金属介在物が起点となって短期間で発生する割損および剥離を防止するために、高清浄度鋼を採用するとともに、さらに、図9に示す入出力ディスクのトラクション面62とその表層部位、および図10に示すパワーローラ軸受の内輪のトラクション面67とその表層部位に大型非金属介在物が存在しないことを保証するために、超音波探傷検査を行う方法を用いて、例えば表面から0.5mm以内に最大0.1mm以上の非金属介在物が存在しないことを保証したCVT用部材が開示されている。
また、トロイダル型無段変速機ディスクおよびパワーローラの使用環境は後述するその性質から他の形式の無段変速機に比べて高いトルクの伝達能力が要求され、非常に大きな曲げ応力、および繰り返し応力を受けるため、これにより破損しない耐久性の高い材料の適応が必要とされている。このため、本発明者らは特開平11−193855号公報(以下、先行文献3という)においてCVTディスクおよびパワーローラに特に必要な耐久性を満足する鋼の管理法を求め提案してきた。
従来、軸受リングの素材として使用される鋼材の内部欠陥の検出については、製鋼工程において超音波探傷法による欠陥検査が行われているのみであった。この探傷法は圧延後の鋼材を水中または台上で鋼材の外周面から内部へ超音波を伝達させて探傷を行うものであり、例えば「特殊鋼46巻6号第31頁、(社)特殊鋼倶楽部」(以下、先行文献4という)に記載された垂直探傷法などが知られている。
製鋼メーカーでの、鋼材の欠陥(非金属介在物等)に対する検査では、その性格上幅数百μmおよび長さ数mm以上の大きな欠陥のみの検出にとどまっており、加えて代表検査(抜取り検査)を行うことにより全体として高清浄度の鋼が管理されているとはいえ、現状技術では有害となる介在物の有無を全数について把握しで保証するところ(全数検査)までには至っていない。
また、近年の非破壊検査技術の進歩を背景として、超音波探傷法では高い周波数を用いることにより例えば0.01mm(10μm)程度の微小サイズの非金属介在物まで検出可能になってきている。ただし、超音波探傷法では周波数を高くすると鋼材内部での超音波の減衰が増大して実用的ではなく、とくに鋼材表面の粗さが粗くなると超音波の減衰がさらに大きくなるため、実用的には未だ製品として全量検査の可能な介在物の大きさの範囲としては、幅数百μmおよび長さ数mm以上の大きな欠陥のみの検出にとどまっているのが現状である。
トロイダル型無段変速機(CVT)ディスクおよびパワーローラ軸受部材の内部(特に表面近傍)に大きな欠陥があった場合は、曲げ応力を繰り返し受けることで比較的短時間で破損に至ることがある。とくに大型CVTの摺動部材は高い曲げ応力を繰り返し受けるので、従来の汎用転がり軸受が受けている最大応力発生位置よりも深いところを起点として剥離や割れを生じる傾向にある。具体的には、大型CVTの入・出力ディスク31,32においては、図11中に斜線で示した部位(トラクション面62及びその表層部位)に大きな繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。また、大型CVTのパワーローラ軸受の内輪においては、図12中に斜線で示した部位(トラクション面67、内周面68、転動面69及びその表層部位)に大きな繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。このため、これらの面62,67,68,69や表層部位を起点として剥離や割れが発生しやすい。
ところで、上記の先行文献1には、剥離や割れの発生を防止するために合金成分の好適化や熱処理品質を特定化することが提案されている。しかし、この先行文献1の発明は、図11に示す入・出力ディスク31,32のトラクション面62及びその表層部位の強化と、図12に示すパワーローラ内輪36a,37aのトラクション面67、内周面68、転動面69及びその表層部位の強化とを図ることにより、全体的な強度向上を狙ったものであり、剥離や割れの起点となる大型介在物そのものを改善することに向けられた提案ではない。
また、上記の先行文献2には、図11に示す入・出力ディスク31,32のトラクション面62、内周面63とその表層部位、および図12に示すパワーローラ内輪36a,37aのトラクション面67、内周面68、転動面69のうち、特にトラクション面62,67に当たる表層部位の大型介在物を検出し、保証することで割損および短時間での剥離を防止することが提案されている。しかし、この先行文献2の発明はトラクション面62,67の表層部位のみは精密検査(又は全数検査)の対象とするものであるが、トラクション面以外の面63,68,69の表層部位を精密検査(又は全数検査)の対象とするものではない。
今後CVTに求められる要求として、ディスクおよびパワーローラの長寿命化、割損防止はもとより、突発的に発生する短寿命な軸受の撲滅が求められている。これは、これからの自動車の保障期間延長化に伴い、従来よりも更に厳しい条件下であっても短寿命品の発生のおそれが無い、高信頼性のCVT用部材が要望されているものである。
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、摺動面に剥離を生じにくい長寿命のCVT用摺動回転体および、CVT構成部材の稼動時に特に応力の高くなる内径端部の表層部位に存在する欠陥(特に、非金属介在物)を高精度に全数検出することができる高信頼性のCVT用摺動回転体の評価方法を提供することを目的とする。
発明の開示
トロイダル型CVTは、その他のCVT(例えばベルト型CVT)より大きな入力トルクにも耐えることができるのが特徴の一つである。大きなトルクを発生する大排気量車を対象とした場合に、トロイダル型CVTはより大きな入力トルクを受けることとなる。トロイダル型CVTはベルト式CVTに比べて大きな荷重を受けることが可能な方式であるため、さらに高い荷重や面圧がディスクおよびパワーローラにかかることとなる。今後将来的には、トロイダル型CVTでは繰り返し曲げ疲労を受ける部位がさらに深いところに位置することが予想される。
本発明者らは、先行文献2において、トラクション面の直下0.5mm以内に存在する最大径0.1mm以上の非金属介在物を制限することにより、これら部材の割損を防止できることを提案している。すなわち本発明者らは、鋭意研究の結果、トラクション面から0.5mm以内に存在する最大径0.1mm以上の非金属介在物(欠陥)がCVT部品の曲げ疲労破壊の起点となるということが判明し、その知見に基づく具体的解決手段を先行文献2において提案した。
しかし、その後の研究の結果、非金属介在物の位置が上記の先行文献2で示した位置よりも深いところであっても、トロイダル型CVT部品の使用条件がさらに厳しくなると曲げ疲労破壊(以下、単に「破損」という)が発生することが判明した。すなわち、本発明者らが従来に比べてより厳しい応力条件下で研究を行った結果、先行文献2に開示した深さよりもさらに深い位置においても破損を生じる場合があること、および同文献2に開示した大きさよりもさらに小さな欠陥においても破損を生じる場合があることが判明した。
そこで、本発明者らは、入力トルクと破損および非金属介在物の大きさとの関係について鋭意研究した。その結果、トロイダル型CVT部品が受ける最大せん断応力位置(Z0)の2倍の深さ以内の領域に平方根長さで0.1mm以上(より好ましくは0.05mm以上)の欠陥を存在させないようにすると、トロイダル型CVT部品の破損を防止できるということが判明した。
さらに、摺動面は、ディスクとパワーローラとの間で、転がり疲労を受けており、摺動面直下に大型の非金属介在物が存在すると、短寿命で剥離を生じるという問題があった。トロイダル型CVT部品に剥離が生じると、自動車の走行に障害が生じることになることから、転がり疲労に対して長寿命化を図るのはもとより、短寿命品の撲滅が重要である。本発明者らはこれらの課題を解決するために、入力トルクと剥離、非金属介在物の大きさとの関係について鋭意研究した結果、トロイダル型CVT部品が受ける最大せん断応力位置(Z0)の2倍の深さ以内に平方根長さで0.05mm以上の非金属介在物を無くすることで、短期間での剥離を防止できることが判明した。
一方、本発明者らは、CVTのディスクとパワーローラ軸受の摺動面下に存在する非金属介在物を評価する方法として超音波探傷法に注目し、検査法の改良に鋭意努力した結果、斜角法(表面波法)を適応することで、表面から0.5mm以内に存在する0.1mm以下の非金属介在物を検出することが可能なことを見出し、これを上記の先行文献2において開示した。しかし、先行文献2に開示した発明では主として表面から0.5mm以内と比較的浅い位置の欠陥検出を目的としていたため、本発明の(Z0)の2倍の深さになると、入力トルクの大小にもよるものの、例えば2mmから3mmの深さまでが対象となり、これは、従来の対象深さの6倍にも達する深い位置で、さらに平方根長さで0.05mm以上または0.1mm以上の欠陥(非金属介在物、地きず(macro−streak flow)、開口クラックを含む)も検出する必要がある。
上記の先行文献2は表面下0.5mmまでの深さの欠陥検出方法を開示するものでもあるが、さらに本発明者らは表面下0.5mm以上の深い部位を高精度に検査することができる超音波探傷方法について鋭意研究を積み重ね、本発明を完成させるに至った。
本発明に係るトロイダル型無断変速機は、入力軸に設けられた入力ディスクと、出力軸に設けられた出力ディスクと、内輪、外輪及び複数の転動体を含みかつ前記入力ディスク及び出力ディスクに前記内輪が係合して前記入力軸の動力を前記出力軸に伝達するパワーローラ軸受と、を含んで構成したトロイダル形無段変速機において、前記入力ディスクとパワーローラ軸受の内輪が前記トロイダル形無段変速機の最大減速状態で係合し動力を伝達するときの条件で求められる最大せん断応力深さをZoと定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記入力ディスクおよびパワーローラ軸受の内輪のうち少なくとも一方が、トラクション面から前記Zoの2倍の深さ範囲内に前記平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。
本発明に係るトロイダル型無断変速機用摺動回転体は、トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され、他の部材に対して摺動する摺動回転体であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、その表面から前記Z0の2倍の深さ範囲内に、前記平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。
欠陥には、非金属介在物、地きず(macro−streak flow)、開口クラックが含まれる。CVT部品から検出される欠陥の大部分は非金属介在物であるので、図7,8に斜線で示す部位に大型の非金属介在物が存在しないようにすることが肝要である。大型の非金属介在物とは一般的には最大径が0.05mm以上のものをいうが、非金属介在物には種々の形状のものが存在する。そこで、本発明全体において欠陥のサイズを平方根長さで定義することとした。
ここで「平方根長さ」は、欠陥の形状に応じて次の1)および2)のようにそれぞれ求められる。
1)欠陥の形状が線状である場合(線状欠陥)は、その長さLと幅Dとの積の平方根(L×D)1/2を平方根長さとする。
2)欠陥の形状が粒状、球状または塊状である場合(非線状欠陥)は、その最大径(長軸径)D1と最小径(短軸径)D2との積の平方根(D1×D2)1/2を平方根長さとする。
第1の発明では、摺動回転体(入力ディスク、パワーローラ軸受の内輪)の表面が摺動面(トラクション面)である場合は、その摺動面(トラクション面)から最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に存在する欠陥を対象とし、それを表面波探傷法、斜角探傷法及び垂直探傷法の組み合せを用いて検出し、その検出結果に基づいて合否を判定し、前記深さ範囲の部位に平方根長さで0.10mm以上の欠陥を含ませないものとする(請求項1)。この場合に、0.05mm以上の欠陥(特に非金属介在物)を含ませないようにすることが品質保証上さらに好ましい(請求項2)。
また、上記他の部材がパワーローラ軸受の内輪である場合、すなわち摺動回転体が入力ディスク又は出力ディスクである場合は、図7に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL1で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3にある部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが好ましい(請求項3)。
また、上記他の部材が入力ディスク又は出力ディスクである場合、すなわち摺動回転体がパワーローラ軸受内輪である場合は、図8に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL2で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2にある部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが好ましい(請求項4)。
本発明に係るトロイダル型無段変速機用摺動回転体の評価方法は、トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され他の部材に対して摺動して用いられる摺動回転体を、超音波探触子とともに伝達媒体中に浸漬させ、前記超音波探触子から前記伝達媒体を介して前記摺動回転体に超音波を入射し、前記摺動回転体から反射される超音波エコーの波形に基づいて該摺動回転体の表面および内部に存在する欠陥を評価する方法において、
(a)表面波探傷法および斜角探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の表面および表面直下の部位を探傷する工程と、
(b)斜角探傷法および垂直探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の内部であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義したときに、前記表面から前記最大せん断応力深さZ0の2倍の深さまでの部位を探傷する工程と、
(c)欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.10mm以上(好ましくは0.05mm以上)であるときは該摺動回転体を不合格と判定し、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.10mm未満(好ましくは0.05mm未満)であるときは該摺動回転体を合格と判定することを特徴とする。
超音波が入射する表面(入射面)は、摺動回転体のトラクション面または端面である。トラクション面は、他の部材との相互摺動接触により動的繰り返し応力を受ける面である。
上記摺動回転体が入力ディスク又は出力ディスクである場合は、超音波は端面から摺動回転体の内部に入射される(請求項5)。この端面は、支軸に接触又は対面する内周面とトラクション面との間に挟まれたところに位置し、かつ支軸に実質的に直交する面である。図15および図16に示すように、内周面63側から端面70の径方向長さWの半分(L1)で、かつ端面70側から内周面63の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3にある部位に対して、端面70側から超音波4を入射し、端面70の直下で、かつ内周面63の直下の表層部位を探傷する。
上記摺動回転体がパワーローラ軸受の内輪である場合も、超音波は端面から摺動回転体の内部に入射される(請求項6)。この端面は、ピボット軸50が接触又は対面する内周面と、ピボット軸と転動溝とに挟まれたところに位置し、かつピボット軸に実質的に直交する面である。図17および図18に示すように、内周面68側から端面75の径方向長さGの半分(L2)で、かつ端面75側から内周面68の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2にある部位に対して、端面75側から超音波4を入射し、端面75の直下で、かつ内周面68の直下の表層部位を探傷する。
この場合に、工程(a)および(b)では、5MHz〜30MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いることが好ましく、さらに好ましくは工程(a)では5MHz〜15MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用い、前記工程(b)では10MHz〜25MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いることが望ましい。
具体例では、表面から0.5mmまでの深さの検査には斜角法または表面波法を使用して、周波数5MHzから30MHz、好ましくは5MHzから15MHzにて探傷する。さらに超音波が材料内部で減衰して検出が困難となる表面から0.5mmを超える深さの検査には斜角法または垂直探傷法を用いる。
また、具体例では、表面から0.5mmを超え、最大せん断応力深さZ0の2倍までの範囲(実用的には2〜3mm深さ)を検査する場合は、斜角法または垂直探傷法を使用して、周波数5MHzから30MHz、好ましくは10MHzから25MHzにて探傷する。このように両者を組み合わせることにより上記課題を解決することができる。
なお、深い範囲を検出するために用いられる方法として、一般的には垂直探傷法(水浸法)であるが、0.5mmより浅い位置は、音波が表面で反射する表面エコーにより検出不可能な領域(不感帯)となり、垂直探傷法では探傷することができない。そこで、本発明者らは、表面直下の表層域に存在する非金属介在物を検出するために特定の表面から超音波を入射してCVT部材を高精度に探傷することができる最適の方法を見出したものである。
これまで、超音波探傷での検出限界は一般的に1/2波長と言われているが、本発明法によると表面近傍では平方根長さで0.05mmまでの欠陥の検出は可能となる。しかし、その場合に5MHz以下の周波数では目的の大きさの欠陥が検出することが困難となり、また、30MHzを超える周波数では音波の減衰が大きく、目的の深さまでの探傷が困難なことから、探傷周波数は5MHz以上30MHz以下の範囲に限定した。さらに好ましくは表面から0.5mmまでの範囲では5MHz以上15MHz以下の周波数が好ましく、0.5mmから最大せん断応力深さZ0の2倍の範囲(実用的には2〜3mm深さ)までの範囲では10MHz以上25MHz以下の周波数が好ましい。これらの特定周波数域の超音波を探傷深さに応じてそれぞれ使い分けることにより、所望の大きさの検出強度が最大となる。上記は、トラクション面以外で、高い曲げ応力を受ける部位を探傷する場合に適している。
(作用)
トロイダル型無段変速機(CVT)は、その使用環境が高荷重、高面圧であるので、汎用の転がり軸受よりもはるかに大きな負荷を受ける。特に入・出力ディスクでは図11中の斜線部位(面62,63及びその直下の表層部位)に繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。また、同様にパワーローラ軸受内輪では図12中の斜線部位(面67,68,69及びその直下の表層部位)に繰り返し曲げ応力が加わり、高い引張り応力が発生する。このため、これらの部位を起点として入・出力ディスク及びパワーローラ軸受内輪に剥離や割れを生じやすい。
このような剥離や割れを防止するために、先行文献2では入出力ディスクのトラクション面62、パワーローラ軸受内輪のトラクション面67及びこれらの直下の表層部位に大型の非金属介在物が存在しないことを保証する超音波探傷検査方法を開示している。しかし、同文献2の検査方法は、トラクション面62,67からの深さが浅いところの部位を対象にしており、トラクション面からさらに深さが深いところの部位は対象としていない。また、同文献2の検査方法はトラクション面直下の表層部位のみを対象にしており、トラクション面から離れたその他の表層部位は対象としていない。
トロイダル型CVTの主な用途は乗用車であるが、万一、入・出力ディスクやパワーローラ軸受に損傷(剥離や割れ)を生じた場合は、CVT機構内の他の部品が致命的なダメージを受けて重大な事故につながるおそれがある。特に、乗用車の走行中に入・出力ディスク又はパワーローラ軸受内輪が割れると、大事故に発展する可能性があるので、これら部品に割れがまったく発生しないように品質保証する必要がある。
本発明者らは、CVT実機内での入・出力ディスク及びパワーローラ軸受内輪に繰り返し曲げ応力が加わった場合を想定して、それぞれの部材に発生する応力分布についてコンピュータグラフィックスシミュレーションを利用した有限要素法(FEM)により解析した。その結果、図13,14に示すようにトラクション面62,67以外の面63,68,69,70,75の表層部位(内周面の一方端部)にも高応力発生領域71,76が存在することが判明した。すなわち、入・出力ディスク31,32においては、図13に示すように内周面63と端面70とが交叉するコーナーエッジ71及びその近傍に局部応力集中が発生しやすいことが判明し、パワーローラ軸受内輪36a,37aにおいては、図14に示すように内周面68と端面75とが交叉するコーナーエッジ76及びその近傍に高応力が発生しやすいことが判明した。
そこで本発明者らは、これらの高応力発生領域71,76に着目し、この表層部位に含まれる大型非金属介在物の大きさと深さ位置と割れ(剥離)との相関について鋭意研究した結果、図7および図8の斜線で示す領域に平方根長さで0.2mm以上の大型非金属介在物を含まないようにすることにより、ディスクおよびパワーローラ軸受内輪の各サイズに拘わらず割れ(剥離)を防止できることを見出した。すなわち、入・出力ディスク31,32の高応力発生領域71は図7に斜線で示す部位61にあたり、パワーローラ軸受内輪36a,37aの高応力発生領域76は図8に斜線で示す部位66にあたる。
なお、本発明者らは、入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受のサイズの大小に拘わることなく、図7,8に斜線で示す領域の部位が、ある一定の清浄(実質的に無欠陥)であれば、保証寿命の期間中は剥離や割れを生じないことを確認している。
ここで「表層部位」というときは、表面直下のみを指すのではなく、表面からある程度の深さまで少し入った部位をも含み、さらに表面そのものをも含む。
本発明者らは、トロイダル型CVT設計条件から下記の手順に従って最大せん断応力深さZoを求め、求めたZo値を基準として垂直探傷法、斜角探傷探傷法、表面波探傷法の各種超音波探傷法を入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪に適用して調べた。その結果、表3に示すように表面からの深さがZoの1倍から2倍の範囲には斜角探傷法が最も適し、表面からの深さがZoの2倍以上の範囲には表面波探傷法又は垂直探傷法が最も適していることが判明した。
このトロイダル型CVTの入出力ディスクとパワーローラ軸受内輪とが回転接触する際のZ0そのものについて、およびZ0の求めかたについて、図19および図20を参照して説明する。
トロイダル型CVTの入出力ディスク及びパワーローラ軸受の構成部材には大きな繰返し剪断応力と大きな繰返し曲げ応力とが複合的に重なりあって作用するため、汎用の転がり軸受とは異なる厳しい応力負荷状態となり、CVT構成部材に動的最大剪断応力が発生する位置は汎用転がり軸受のそれよりも深くなる。
ここでは、動的最大剪断応力が作用する深さ位置を「最大せん断応力深さZ0」と呼ぶこととする。この最大せん断応力深さZ0は、CVTを設計するときに、各構成部材の転がり寿命の計算に用いられる。
Hertzの接触理論を用いて最大せん断応力深さZ0の求めかたについて説明する。物体1と物体2が弾性接触したときに、第1面(回転方向に直交する面I)と第2面(回転方向に直交する面II)とに対応する物体1,2の曲率半径をそれぞれρ11,ρ12,ρ21,ρ22と表示することとする。ここで、TCVT軸受のディスク(物体1)とパワーローラ(物体2)との接触に適用したときに、両物体1,2の接触は次式(1),(2),(3),(4)で与えられる。
a=(50.5×10−3)μ・(P/Σρ)1/3 …(1)
b=(50.5×10−3)ν・(P/Σρ)1/3 …(2)
b/a={(t2−1)(2t−1)}1/2=k1 …(3)
cosτ=|ρ11−ρ12+ρ21−ρ22|/Σρ …(4)
ただし、記号aは接触楕円長軸半径を、記号bは接触楕円短軸半径を、記号τは補助角を、記号μとνはそれぞれcosτに関する定数を、記号Pは荷重を、そして記号Σρ(=ρ11+ρ12+ρ21+ρ22)は2つの弾性体の接触点で互いに直角をなす主曲率の総和をそれぞれ表わす。
なお、上記のパラメータμ,ν,k1は次の関係にある。
μ={2E(k2)/πk12}1/3
ν={2E(k2)k1/π}1/3
k1=b/a
k2=(1−k12)1/2
したがって、パラメータμ,νは第2種完全だ円積分により求まる定数である。
上式(1)から接触楕円長軸半径aを、上式(2)から接触楕円短軸半径bをそれぞれ求め、これらを上式(3)に代入してパラメータtについて解くと、動的最大剪断応力発生位置Zo(表面からの深さ)は下式(5)で与えられることが「軸受潤滑便覧(日刊工業新聞社;軸受潤滑便覧編集委員会編;昭和36年発行)」(以下、文献5という)の第230〜240頁に記載されている。
Zo=b{(t+1)(2t−1)1/2}−1 …(5)
なお、上記のZoは下式(6)の関係から最大接触圧力Pmaxを用いても求めることができる。
Pmax=[188×{P(Σρ)2}1/3]/μν
…(6)
(計算事例)
次に、上式(1)〜(6)に具体的に各パラメータの数値を代入して最大せん断応力深さZoと最大接触圧力Pmaxをそれぞれ求めてみる。各パラメータの数値の一例を列挙する。
ディスク半径ro=40mm
パワーローラ半径R22=32mm
接触角φ=35.4°(CVTの最大減速時の接触条件)
荷重P=52200N
パワーローラ回転中心間距離D=2r1=130mm
係数ko={(φD/2)−ro}/ro=0.625
上記の数値を用いて曲率半径ρ11,ρ12,ρ21,ρ22をそれぞれ求める。但し、ρ11,ρ12,ρ21,ρ22の値は小数点下5桁を四捨五入した。
ρ11=cosφ/{ro(1+ko−cosφ)}=0.0252
ρ12=−1/ro=−0.025
ρ21=1/ro=0.025
ρ22=1/R22=0.0313
よって、
Σρ=ρ11+ρ12+ρ21+ρ22=0.0565
|ρ11−ρ12+ρ21−ρ22|=0.0439
これらの数値を上式(4)に代入してcosτの値を求める。但し、cosτの値は小数点下3桁を四捨五入した。
cosτ=0.0439/0.0565=0.78
文献5の付表(楕円積分表)を用いてcosτ=0.78に対応するパラメータμとνをそれぞれ求める。但し、文献5の付表に載っていない中間値は比例計算法により算出した。
μ=2.196, ν=0.5581
これらμ,νの値とP,Σρの各値を上式(1),(2)にそれぞれ代入して、接触楕円の長軸半径aおよび短軸半径bをそれぞれ求める。
a=5.05, b=1.283
これらの数値を上式(3)に代入し、パラメータtについて三次方程式の解(実数解)を求める。
t=1.03
求めたtの値を上式(5)に代入して最大せん断応力深さZoを求める。
Zo=0.614(mm)
さらに、μ,ν,P,Σρの各値を上式(6)に代入して最大接触圧力Pmaxを求める。
Pmax=4.05(GPa)
以上の計算事例では、Zo値は0.614mm、Pmax値は4.05GPaとなる。
以上説明したように、本発明によれば、トロイダル型CVT部材のなかで最も破壊を生じやすい部位を重点的に検査することにより、CVT部材を高精度に品質保証することができる。特に、表面からの深さに応じて最適の超音波探傷方法を採用することにより、欠陥の探傷精度が飛躍的に向上するので、品質保証のレベルアップを図ることができる。
また、本発明によれば、CVT部材に含まれる欠陥を非破壊的に探傷するので、CVT部材の全数を検査することができ、高信頼性の品質保証が可能になる。特に、本発明の方法では欠陥から反射されるエコーに基づいて真の欠陥の大きさと形状を把握することができるので、従来の顕微鏡を用いて切断面にあらわれた欠陥を二次元的に観察する方法に比べて高い信頼性が得られる。
発明を実施するための最良の形態
以下、添付の図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
図1は超音波探傷検査装置の概略図である。図中の符号11は超音波伝達媒体としての水が貯留された水槽である。その水槽11内に被検体2としてのCVTディスク(又はパワーローラ軸受内輪でもよい)および超音波探触子3がそれぞれ水中に浸漬された状態で配置されている。
超音波探触子3は、指向性が強く被検体2(31,32,36a,37a)の曲率の影響を受けにくい焦点機構を内蔵した焦点型探触子を用いる。焦点型探触子は高いS/N比を有する。被検体2は回転テーブル15(16)上にディスク表面を探触子3の側に向けて設置されている。被検体2はターンテーブル15(16)の回転軸と同軸であり、両者はサーボモータ14により同期回転駆動されるようになっている。なお、符合18はサーボモータ14駆動用の制御アンプである。
図2および図3に示すように、探触子3はスイングアーム23の先端に取付板13により取り付けられている。スイングアーム23は被検体2の半径方向と軸方向にも移動可能な2軸制御のXYテーブル22により支持されている。XYテーブル22はコントローラ26により制御される2つのドライバ22a,22bを備えている。これらドライバ22a,22bによりXYテーブル22と共に探触子3が被検体2(31,32)の摺動面2a(62)に沿って移動されるようになっている。
さらに、XYテーブル22はリニアガイド装置20により可動に支持されている。リニアガイド装置20はリニアガイド用コントローラ26によって制御されるサーボモータ(図示せず)を介して超音波探傷用探触子3を被検体2の軸方向に移動させるようになっており、リニアガイド用コントローラ26は被検体2の外周面に設置されたロータリエンコーダ25によって被検体2が一回転(360°)したことが検知されると、制御装置19からの指令に基づいてサーボモータを制御して探触子3を被検体2の軸方向に所定距離だけ移動させる。これにより、被検体2の全断面の探傷がなされるようになっている。
なお、斜角探傷の場合は、その角度に応じて被検体2の直径(中心を通る)上から平行に探触子3をプラスマイナス数mmオフセットさせて行うようにしてもよい。また、被検体2の直径上で探触子3をスイングさせて行うこともできる。
探触子3は超音波探傷装置24の入力部および出力部にともに接続されている。探触子3は、超音波探傷装置24からの電圧信号に応じた超音波パルスを被検体の外周表面2aに向けて送信すると共に、その反射エコーを受信し、これを電圧信号に変換して超音波探傷装置24に送り返すようになっている。
超音波探傷装置24は、制御装置としてのパーソナルコンピュータ19からの指令に基づいて超音波探触用探触子3に電圧信号からなる指令信号を送信するとともに、送信した信号と受信した信号とを基にして得られた探傷情報を制御装置19に送り返すようになっている。これにより制御装置19はCRT画面上に超音波エコーを波形表示する。
探触子3は予め被検体2のサイズに応じて決められた曲線上を所定距離移動し、被検体2の摺動面2aに沿ってスキャン走査されるようになっている。これにより被検体2の全表面が探傷される。
次に、図4を参照しながらトロイダル型CVT装置30について説明する。
図外のハウジング内に、入力ディスク31と出力ディスク32とが、同軸上に対向設置された構造を有している。この入力ディスク31および出力ディスク32を有するトロイダル変速部の軸心部分には、入力軸33が貫通されている。この入力軸33の一端には、ローディングカム34が配設されている。そして、このローディングカム34が、カムローラ35を介して入力ディスク31に、入力軸33の動力(回転力)を伝達する構造となっている。
入力ディスク31および出力ディスク32は、略同一形状を有して対象に配設され、それらの対向面が協働して軸方向断面でみて、略半円形となるようにトラクション面に形成されている。そして、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62で形成されるトロイダルキャビティ内に、入力ディスク31および出力ディスク32に接して一対の運転伝達用のパワーローラ軸受36およびパワーローラ軸受37が配設された構造を有している。
なお、パワーローラ軸受36は、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62を転走するパワーローラ軸受の内輪36a、外輪36bおよび複数の転動体(鋼球)36cを具備する。同様に、他方のパワーローラ軸受37は、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面62を転走するパワーローラ内輪37a、外輪37bおよび複数の転動体(鋼球)37cを具備する。
すなわち、パワーローラ軸受内輪36a,37aは、パワーローラ軸受36,37の転動体の役割をそれぞれ兼ねている。一方のパワーローラ軸受内輪36aは、枢軸38、外輪36bおよび複数の転動体36cを介して、トラニオン40に回転自在に枢着されると共に、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面の中心となるピボット軸50を中心として、傾転自在に支持されている。
他方のパワーローラ軸受内輪37aは、枢軸39、外輪37bおよび複数の転動体37cを介して、トラニオン41に回転自在に枢着されると共に、入力ディスク31および出力ディスク32のトラクション面の中心となるピボット軸50を中心として、傾転自在に支持されている。さらに、入力及び出力ディスク31,32と両パワーローラ軸受内輪36a,37aとの相互接触面には粘性摩擦抵抗の大きい潤滑油が供給されている。このような潤滑状態で、入力ディスク31に入力される動力が、潤滑油膜と両パワーローラ内輪36a,37aとを介して出力ディスク32に伝達されるようになっている。
なお、入力ディスク31および出力ディスク32は、ニードル45を介して入力軸33とは独立した状態(すなわち、回転軸33の動力に直接影響されない状態)となっている。出力ディスク32には、入力軸33と平行に配設されると共に、アンギュラ軸受42を介して図示しないハウジングに回転自在に支持された出力軸44が配設されている。
このトロイダル形無段変速機30では、入力軸33の動力が、ローディングカム34に伝達される。そして、この動力の伝達により、ローディングカム34が回転すると、この回転による動力が、カムローラ35を介して入力ディスク31に伝達され、入力ディスク31が回転する。さらに、この入力ディスク31の回転により発生した動力は、両パワーローラ内輪36a,37aを介して、出力ディスク32に伝達される。そして、出力ディスク32は、出力軸44と一体となって回転する。
変速時には、トラニオン40およびトラニオン41をピボット軸50方向に微小距離だけ移動させる。すなわち、このトラニオン40およびトラニオン41の軸方向移動で、両パワーローラ軸受内輪36a,37aの回転軸と、入力ディスク31および出力ディスク32の軸との交差が、わずかに外れる。すると、両パワーローラ軸受内輪36a,37aの回転周速度と、入力ディスク31の回転周速度との均衡が崩れ、かつ入力ディスク31の回転駆動力の分力によって、両パワーローラ軸受内輪36a,37aがピボット軸50の回りに傾転する。
このため、両パワーローラ軸受内輪36a,37aが、入力ディスク31および出力ディスク32の曲面上を傾転し、その結果、速度比が変わり、減速または増速が行われる。
次に、本発明において超音波の入射角の限界について説明する。すなわち斜角探傷法で入射角が30°を越える場合について述べる。
超音波が入射角iLで鉄、鋼である被検査物の中に入ると横波と縦波に分かれ、縦波の屈折角θLのほうが横波の屈折角θSよりも大きくなる。水と鉄を超音波が伝わる場合、入射角と屈折角の関係は横波だけでみると下式(7)および(8)に示す関係にある。
sinθS=V2/V1・siniL …(7)
sinθS=3230/1500・sin(iL) …(8)
ただし、θS<90°
V1:水中での音速1500m/秒
V2:鉄中での音速3230m/秒
超音波探傷用探触子3は発信子と同時に受信子でもあるが、受信の場合(傷信号)は逆経路(発信と同じ経路を逆にたどって)で返ってくる。エコーの強さは鉄、鋼から水に返ってくるが、返ってくる信号は横波、縦波のどちらでもよく、また、横波と縦波の両方が返ってもよい。
入射角iLがある値以上になると鉄、鋼中の屈折角が90°以上となり、傷信号が表面を走るか或いは表面を反射するだけで超音波探傷用探触子3に戻ってこない。
上述したように入射角iLに対し縦波の屈折角θL>横波の屈折角θSであり、しかもθLとθSのいずれかが戻ってくればよいとすると、θSが返ってくる入射角の限界を考えればよいことになる。
その時の入射角の限界は理論的にはθS:90°として上式(7)及び(8)より約28°となるが、実際には音波はある程度の幅を特って出されており、30°までは十分に探傷可能になる。
なお、一般的には横波の屈折角θSが90°となる場合を表面波法というが、実際には音波はある程度の幅(広がり)をもって振動子から発振されることから、本発明では入射角iLで26°〜30°となる場合を「表面波法」と定義する。また、一般的には入射角が0°となる場合を垂直波法というが、実際には焦点型探触子から発振される超音波は光軸に対してある程度の角度をもって入射することから、本発明では入射角iLで0〜5°となる場合を「垂直波法」と定義する。また、本発明では入射角iLで6〜25°となる場合を「斜角法」と定義する。
(実施例1)
次に、実施例1として、トロイダル型CVTのディスク中の欠陥を検出し、検出した欠陥を評価する方法について説明する。
実施例1の探傷条件を次に示す。
探傷方法:表面波探傷法、斜角探傷法、垂直探傷法
探触子:焦点型探触子(焦点距離水中にて30〜40mm位置)
周波数:10〜25MHz
表3に平方根長さ0.05mmの欠陥を検出できるか否かの評価を、超音波の入射角を変えて行った結果を示す。検査方法としてはディスクをそれぞれの入射角別に探傷し、欠陥が検出された場合、実際にディスクの表面より追い込み研削にて位置と大きさを特定し、検出強度と深さとの関係を導き出し、それに基づいて評価を行った。
表3において、各々の入射角位置で、平方根長さ0.05mmの介在物を検出できた場合をマル(○)で表示し、平方根長さ0.05mmの介在物を検出できなかった場合をバツ(×)で表示した。さらに検出できた場合のうち最も反射エコーの強度が強かった位置については二重マル(◎)で表示した。また、検出できた場合のうちエコーが不鮮明になる位置については三角(△)で表示した。用いた探触子の周波数は、10MHz〜25MHzであった。また、摺動面からの距離は後述する実施例の試験条件での最大せん断応力深さZ0を基準(本実施例1の場合、Z0は約1mm)として計算した。
表3に示すように、Z0×2(mm)未満は入射角0°(垂直波)では表面層の不感態により平方根長さ0.05mm未満の小欠陥は検出することができない。これに対して入射角17°(斜角)および入射角30°(表面波)では逆にZ0×2(mm)未満は検出が可能であるが、Z0×2(mm)を超える深さ領城では超音波の減衰が著しいために検出が困難なことが判明した。さらに、入射角の選定により最高反射エコー強度となる深さに違いが認められ、表面波法はより表面近傍が、斜角法はやや内部に入ったところが得意な領域になる。従って、検査を行うディスクの深さにより超音波の被検査面での入射条件を選択することが必要である。
上記の実施例1によれば、垂直波法と斜角または表面波法を組み合わせることで、表面からZ0×2(mm)までの深さまでの部位に存在する平方根長さ0.05mm以上の大きさの欠陥を検出できる。
(実施例2)
CVTディスクのトラクション面に対して上記実施例1と同様の超音波探傷検査を行い、検出した欠陥が平方根長さ0.05mmから0.07mmまでのディスクと、平方根長さ0.10mmから0.12mmまでのディスクとを取り出し、さらに、摺動面からの深さ別に分類したものを試験片とし、耐久性試験を行った。なお、欠陥の存在する深さは下記の耐久条件における最大せん断応力発生位置Z0の倍数で整理した。
(試験条件)
入力の回転数:4000rpm
入力トルク:450N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル:合成潤滑油(トラクション油)
オイル温度:100℃
その試験結果を図5および表1に示す。図5は横軸に欠陥の表面からの位置をとり、縦軸に耐久性試験での部材の破損時間をとって、欠陥の大きさと位置とが破損時間(寿命)に及ぼす影響について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線Aは平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体について破損時間を調べた結果を示し、特性線Bは平方根長さ0.10〜0.13mmの大きさの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍弱、2倍強、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体について破損時間を調べた結果を示した。図から明らかなように、平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥(小欠陥)は深さ位置に拘わらず破損寿命に影響を及ぼさないが、平方根長さ0.10〜0.13mmの欠陥(大欠陥)は最大せん断応力深さZ0の2倍までの深さに位置すると破損寿命が著しく短くなった。
また、表1に示すように、欠陥の存在する深さ位置が、Z0×2以内のNo.1〜No.3の被検体については平方根長さ0.10mm以上の大欠陥を有しているため、それぞれ40時間、90時間、175時間と短時間のうちに破損してしまうことが判明した。これに対して、平方根長さ0.10mm以上の大欠陥を有している場合であっても、その欠陥の存在する深さ位置がZ0×2を超えZ0×3以上となるNo.4およびNo.5の被検体では500時間を超えても破損は生じなかった。また、欠陥の存在する深さ位置がZ0×2以内であっても、その欠陥の平方根長さが0.05mm〜0.07mmの被検体(No.6〜No.7)では500時間を超えても破損は生じなかった。
従って、高負荷を受けるCVT部材の破損を防止するためには、表面から最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に平方根長さ0.10mm以上の非金属介在物を含まないことが肝要である。
次に、上記と同様にCVTディスクに超音波探傷検査を行い、検出した欠陥の平方根長さが0.05mm〜0.07mmであったディスクを選び出し、さらに、摺動面からの深さ別に分類したものを試験片とし、上記の試験条件にてディスクの転がり疲労寿命を求めた。なお、試験数は各深さ条件各々n=20とし、ディスクが剥離したもののL10寿命を求めた。
その寿命評価結果を図6および表2に示す。図6は横軸に欠陥の表面からの位置をとり、縦軸にL10寿命試験での部材のはくり寿命L10(時間)をとって、平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥の位置がL10寿命に及ぼす影響について調べた結果を示す特性線図である。図中にて特性線Cは平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の1倍、2倍、3倍、4倍の深さ位置にそれぞれ存在する被検体についてL10寿命を調べた結果をプロットして結線したものである。図から明らかなように平方根長さ0.05〜0.07mmの欠陥が最大せん断応力深さZ0の2倍以内の深さに位置するとL10寿命が著しく短くなるという結果が得られた。なお、同サイズの欠陥は最大せん断応力深さZ0の3倍以上の深さでは疲労はくり強度には実質的に無害である(600時間で剥離を発生しない)ことが確認された。
なお、破損には至らなかった平方根長さ0.05〜0.07mmの小欠陥であっても、それが最大せん断応力深さZ0の2倍以内に存在するNo.8およびNo.9の被検体についてはL10寿命がそれぞれ100時間、230時間となり短寿命であった(表2参照)。これに対して、平方根長さ0.05mm以上の欠陥を有している場合であっても、その欠陥の存在する深さ位置が、Z0×2を超えZ0×3以上となるNo.10およびNo.11の被検体では3倍近いL10寿命(600時間以上)を有することが判明した(表2参照)。
従って、短寿命はくりを防止するには、トロイダル型CVTディスクのトラクション面から最大せん断応力深さ(Z0)の2倍の深さ範囲内に平方根長さ0.05mm以上の欠陥(特に非金属介在物)を含まないことが肝要である。
次に、本発明の実施例3,4として、トロイダル型CVTの入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪のトラクション面以外で応力が高くなる部位を検査する方法について、図7,8,15〜18および表4,表5を参照してそれぞれ説明する。なお、入・出力ディスク31,32およびパワーローラ軸受内輪36a,37aの各々は異なる材料チャージから溶解された素材を用いてそれぞれ製作し、完成後組み立て前に斜角探傷法および垂直探傷法を用いて、図7,8中にて斜線で示した部位に平方根長さで0.20mm以上の大型非金属介在物が存在するか否かをそれぞれ検査した。
入力ディスク31及びパワーローラ軸受内輪36a,37aの素材にはJIS SCM435の鋼材を使用した。この鋼材を、表面の炭素と窒素の合計濃度が0.9〜1.2%になるように浸炭窒化処理した後に、焼入れ焼戻しを施し、表面を仕上加工した。仕上加工後の表面硬さはビッカース硬さHv720〜780であった。なお、肌焼鋼の場合、上記のような表面硬化処理を施し、同様の硬さを有する場合は、例えばJIS SCM420,SCM440,SCR420等を用いてもよい。また、上記の浸炭窒化処理の代わりに浸炭処理した場合であっても、割れ寿命は同様の結果が得られる。なお、出力ディスク32およびパワーローラ軸受外輪36b,37bにも同様の素材を用いる。
入・出力ディスクおよびパワーローラ軸受内輪のトラクション面以外で応力が高くなる部位を検査する共通の評価方法として、図1〜3に示す装置を用いて該部位を超音波探傷した。入力ディスク31では、図15に示すように、入射角28°(屈折角90°)にて端面70から3mm深さ(探傷ゲート)まで探傷した。パワーローラ軸受内輪36aでは、図17に示すように、入射角19°(屈折角45°)にて端面75から3mm深さ(探傷ゲート)まで探傷した。端面から3mm以上の深さについては、図16,18に示すように、入射角0°で垂直探傷した。上記の入射角になるように探触子を操作し、自動探傷にてX−Y軸座標およびR軸角度、欠陥エコーの高さとエコーの反射範囲、エコーからのビーム露呈距離などの情報より欠陥の大きさ(幅と長さ)および位置を推定評価した。
(実施例3)
実施例3としてディスク31(32)の内周面/端面直下の表層部位61を検査する方法を図15,16および表4を参照して説明する。
ディスクの検査対象部位61は、図7に示すように、内周面63側から端面70の径方向長さの半分の深さL1(端面70の約半分(例えば6mm))で、かつ端面70側から内周面63の軸方向長さの少なくとも三分の一の深さC/3までの範囲とした。
先ず、超音波伝達媒体としての水中にディスク31を浸漬し、図示しない探触子の超音波発振面をディスク31の端面70に対して入射角θが28°(屈折角90°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に表面波が入射するところに探触子が正しく位置決めされたことを確認した後に、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら表面波探触子(図示せず)を外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。これによりディスク31の内周面63から幅L1の範囲まで端面70が探傷される。
次に、アーム23に取り付けた探触子3aの超音波発振面をディスク31の端面70に対して入射角θが19°(屈折角45°)となるように位置決めする。次いで、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら探触子3aを外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。
図15に示すように、回転中のディスク31に対して端面70から入射角19°(θ)で超音波4を入射させつつ、斜角探触子3aを図中の左方から右方に向けて端面70に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面70のコーナーエッジに到達するところで斜角探触子3aの平行移動を停止させる。これにより端面70から深さd1(例えば2〜3mm)までで、かつ内周面63から深さL1(端面70の幅Wの半分(例えば6〜8mm))までの範囲の第1の部位61aが探傷される。
次に、アーム23から斜角探触子3aを取り外し、垂直探触子3bに交換する。垂直探触子3bをディスク31の端面70に対して位置決めする。探傷開始箇所に垂直探触子3bが正しく位置決めされたことを確認した後に、ディスク31を軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、ディスク31の端面70に向けて超音波を発振させながら垂直探触子3bを外周側から内周側に向けてディスク31の半径方向に平行移動させる。
図16に示すように、回転中のディスク31に対して端面70から入射角0°で超音波4を入射させつつ、垂直探触子3bを図中の左方から右方に向けて端面70に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面70のコーナーエッジに到達するところで垂直探触子3bの平行移動を停止させる。これにより端面70から深さd1+d2(=C/3)までで、かつ内周面63から深さL1(端面70の幅Wの半分(例えば6〜8mm))までの範囲の第2の部位61bが探傷される。
割れ寿命(L10寿命)評価に先立って、欠陥の大きさと位置は次のようにして推定した。いくつかの欠陥エコーが得られたディスクを切断し、切断面を詳細に顕微鏡観察することにより、大型非金属介在物の大きさ(幅と長さ)及び表面からの深さ位置と超音波エコー強度との関係(キャリブレーション)を把握した。このキャリブレーションと実測した欠陥エコーとを用いて、部材内部に存在するであろう欠陥の大きさと位置を推定した。
表4に、割れ寿命評価に供した入力ディスクに事前に検出されていた欠陥(大型非金属介在物)の位置と大きさをそれぞれ示す。なお、入力ディスクは出力ディスクよりも大きい負荷が掛かる(厳しい応力条件で使用される)ので、入力ディスクを代表的に供試した。これらの供試材を用いてトロイダル型CVTの実機のシミュレーション耐久試験を行ない、割れが発生するか否かを評価した。なお、耐久試験に供した供試材以外に対して使用するディスクおよびパワーローラ軸受内輪(他の部材)は、事前に超音波探傷検査を受けて、大型の非金属介在物が該供試材よりも少ないことを確認した上で使用した。
上記の処理を行なった後に、ディスクの表面は研削加工し、超音波探傷に供した。
試験条件を下記に示す。
入力軸の回転速度;4000rpm
入力トルク;392N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル;合成潤滑油
オイル温度;100℃
耐久試験においては、各供試材である入力ディスクが割れに至るまでの時間をそれぞれ調査した。表4から明らかなように、欠陥の検出位置が図7の斜線領域内であっても、欠陥サイズが平方根長さで0.20mm以下であれば、100時間を超えても割れは発生しないことが判明した(例1〜例5−2)。
また、平方根長さ0.2mmを超える大型介在物が存在する場合であっても、端面70からの深さ(距離)又は内周面63からの深さ(距離)が図7の斜線領域外であれば、100時間を超えても割れは発生しないことが判明した(例6〜例10)。すなわち、表4と図7において、ディスクの端面75からの高さ方向での距離がC/3以下で、かつ支軸がはめ込まれるべき貫通孔48の内周面63からの距離L1(W/2)以内の部位(図7の斜線領域61)に平方根長さで0.20mmを超える大型介在物が存在しないようにすると、ディスクが長寿命となる。なお、上記のパラメータCはディスクの全高さサイズであり、パラメータWはディスクの頭頂部の外径Aと孔48の径BとしたときにW=(A−B)/2で定義されるサイズである。
一方、端面70からの深さ(距離)又は内周面63からの深さ(距離)が図7の斜線領域61内であり、かつ平方根長さで0.20mmを超える大型介在物が存在する場合は、60時間で割れたもの(例11)と45時間で割れたもの(例12)とがあった。これらの割れの起点は超音波探傷試験により欠陥が発見されていた位置とそれぞれ一致していた。
なお、探傷周波数は15MHz以下が好適であり、本発明者らは周波数10MHzの焦点型探触子を使用した場合でも同様の結果が得られることを確認した。
(実施例4)
次に、実施例4としてCVTパワーローラ軸受内輪36a(37a)の内周面/端面直下の表層部位66を検査する方法を図17,18および表5を参照して説明する。
パワーローラ軸受内輪の検査対象部位66は、図8に示すように、内周面側から端面の径方向長さの少なくとも半分の深さL2で、かつ端面側から内周面の軸方向長さの少なくとも半分の深さF/2までの範囲とした。
先ず、超音波伝達媒体としての水中にパワーローラ軸受内輪36aを浸漬し、図示しない探触子3aの超音波発振面をパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して入射角θが28°(屈折角90°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に表面波が入射するところに探触子が正しく位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、パワーローラ軸受内輪36aの端面75に向けて超音波を発振させながら表面探触子3a(図示せず)を外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。これにより内周面68から幅L2(幅Gの半分)の範囲の端面75が探傷される。
次に、アーム23に取り付けた探触子3aの超音波発振面をパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して入射角θが19°(屈折角45°)となるように位置決めする。探傷開始箇所に斜角波が正しく入射するように探触子3aが位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、端面75に向けて超音波を発振させながら探触子3aを外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。
図17に示すように、回転中のパワーローラ軸受内輪36aに対して端面75から入射角19°で超音波4を入射させつつ、斜角探触子3aを図中の左方から右方に向けて端面75に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面75のコーナーエッジに到達するところで斜角探触子3aの平行移動を停止させる。これにより端面75から深さd3(例えば1mm)までで、かつ内周面68から深さL2(端面75の幅Gの半分(例えば6mm))までの範囲の第1の部位66aが探傷される。
次に、アーム23から斜角探触子3aを取り外し、垂直探触子3bに交換する。垂直探触子3bをパワーローラ軸受内輪36aの端面75に対して位置決めする。探傷開始箇所に垂直探触子3bが正しく位置決めされたことを確認した後に、パワーローラ軸受内輪36aを軸まわりに所定回転速度で回転させるとともに、パワーローラ軸受内輪36aの端面75に向けて超音波を発振させながら垂直探触子3bを外周側から内周側に向けてパワーローラ軸受内輪36aの半径方向に平行移動させる。
図18に示すように、回転中のパワーローラ軸受内輪36aに対して端面75から入射角0°で超音波4を入射させつつ、垂直探触子3bを図中の左方から右方に向けて端面75に対して平行に移動させる。超音波4の入射部が端面75のコーナーエッジに到達するところで垂直探触子3bの平行移動を停止させる。これにより端面75から深さd3+d4(=F/2)までで、かつ内周面68から深さL2(端面75の約半分(例えば6mm))までの範囲の第2の部位66bが探傷される。
割れ寿命(L10寿命)評価に先立って、欠陥の大きさと位置は次のようにして推定した。いくつかの欠陥エコーが得られたパワーローラ軸受内輪を切断し、切断面を詳細に顕微鏡観察することにより、大型非金属介在物の大きさ(幅と長さ)と超音波エコー強度との関係(キャリブレーション)を把握した。このキャリブレーションと実測した欠陥エコーとを用いて、部材内部に存在するであろう欠陥の大きさと位置を推定した。
表5に、割れ寿命評価に供した入力ディスクに事前に検出されていた欠陥(大型非金属介在物)の位置と大きさをそれぞれ示す。これらの供試材を用いてトロイダル型CVTの実機のシミュレーション耐久試験を行ない、割れが発生するか否かを評価した。なお、耐久試験に供した供試材以外に対して使用するディスクおよびパワーローラ軸受内輪(他の部材)は、事前に超音波探傷検査を受けて、大型の非金属介在物が該供試材よりも少ないことを確認した上で使用した。
上記の処理を行なった後に、パワーローラ軸受の表面は研削加工し、超音波探傷に供した。
次に、パワーローラ軸受内輪について11個の供試材(例13〜23)を作製し、斜角探傷および垂直探傷を用いて各サンプルの内輪部位を検査した。その結果を表5に示す。耐久試験においては、各供試材であるパワーローラ軸受内輪が割れに至るまでの時間をそれぞれ調査した。
試験条件を下記に示す。
入力軸の回転速度;4000rpm
入力トルク;392N・m(最大減速時のトルク)
使用オイル;合成潤滑油
オイル温度;100℃
表5から明らかなように、欠陥の検出位置が図8の斜線領域66内であっても、その大きさが平方根長さで0.20mm以下であれば100時間を超えても割れは発生せず、長寿命であることが判明した(例13〜例17)。
また、欠陥サイズが平方根長さで0.20mmを超える場合であっても、その検出位置が図8の斜線領域66を外れていれば100時間を超えても割れは発生せず、長寿命であることがわかる(例18〜例21)。なお、上記のパラメータFはパワーローラ軸受内輪の全高さサイズであり、パラメータGはパワーローラ軸受内輪の頭頂部の外径Dと孔51の径EとしたときにG=(D−E)/2で定義されるサイズである。
一方、表5の例22および例23は、斜線領域66内にある欠陥サイズが平方根長さで0.20mmを超えているため、それぞれ66時間と40時間で割れが発生し、短寿命であった。
なお、上記の実施例1〜4において、単一の探触子3aを表面波法と斜角法とで共用することとし、垂直法では別の探触子3bを用いた。これらの探触子3a,3bは、アーム23に1セットで取り付けることが望ましく、アーム23上で超音波発振面をそれぞれの角度に変えられるように可動支持することが好ましい。このようにすると、表面波法から斜角探傷法へ切り替える時間が短縮されるとともに、第1の探触子3aから第2の探触子3bに交換する時間も省略され、全体として検査時間が大幅に短縮される。
以上のように本発明では大型介在物の大きさそのもののみではなく、その存在する影響領域を限定することにより、さらに高信頼性の部品が提供される。超音波探傷範囲を影響領域のみに限定することにより全数検査を短時間で実施することが可能となる。
なお、探傷周波数は15MHz以下が好適であり、本発明者らは、この他に10MHzの焦点型探触子を使用した場合でも同様の結果が得られることを確認した。
また、上記実施例ではパワーローラ軸受の内輪について説明したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、パワーローラ軸受の外輪において転動体保持溝内周面面側と並行方向にも本発明を適用することができる。
本発明によれば、トロイダル型CVT部材のなかで最も破壊を生じやすい部位を重点的に検査することにより、トロイダル型CVT部材を高精度に品質保証することができる。特に、表面からの深さに応じて最適の超音波探傷方法を採用することにより、欠陥の探傷精度が飛躍的に向上するので、品質保証のレベルアップを図ることができる。
また、本発明によれば、トロイダル型CVT部材の全数を検査するので、高信頼性の品質保証が可能になる。特に、本発明の方法では欠陥から反射されるエコーに基づいて真の欠陥の大きさと形状を把握することができるので、従来の顕微鏡を用いて切断面にあらわれた欠陥を二次元的に観察する方法に比べて高い信頼性が得られる。
【図面の簡単な説明】
図1は、評価試験装置の概要を示す構成ブロック図。
図2は、評価試験装置の要部およびCVTパワーディスクを示す拡大正面図。
図3は、評価試験装置の要部およびCVTパワーディスクを示す拡大側面図。
図4は、CVTの断面図。
図5は、評価試験結果を示す特性線図。
図6は、評価試験結果を示す特性線図。
図7は、入出力ディスクの検査部位を示す断面模式図。
図8は、パワーローラ軸受内輪の検査部位を示す断面模式図。
図9は、入出力ディスクのトラクション面の検査部位を示す断面模式図。
図10は、パワーローラ軸受内輪のトラクション面の検査部位を示す断面模式図。
図11は、入出力ディスクの検査部位を示す断面模式図。
図12は、パワーローラ軸受内輪の検査部位を示す断面模式図。
図13は、有限要素法(FEM)を用いたコンピュータシミュレーションにより応力解析された入出力ディスクを示す三次元画像図。
図14は、有限要素法(FEM)を用いたコンピュータシミュレーションにより応力解析されたパワーローラ軸受内輪を示す三次元画像図。
図15は、入力ディスクの最表層部位(第1領域)の検査に用いられる斜角探傷法を説明するための模式図。
図16は、入力ディスクの準表層部位(第2領域)の検査に用いられる垂直探傷法を説明するための模式図。
図17は、パワーローラ軸受内輪の最表層部位(第1領域)の検査に用いられる斜角探傷法を説明するための模式図。
図18は、パワーローラ軸受内輪の準表層部位(第2領域)の検査に用いられる垂直探傷法を説明するための模式図。
図19は、接触状態にある入出力ディスクとパワーローラ軸受部材とを示してヘルツの弾性接触理論を説明するための模式図。
図20は、図19の一部を拡大して示す模式図。
Claims (15)
- 入力軸に設けられた入力ディスクと、出力軸に設けられた出力ディスクと、内輪、外輪及び複数の転動体を含みかつ前記入力ディスク及び出力ディスクに前記内輪が係合して前記入力軸の動力を前記出力軸に伝達するパワーローラ軸受と、を含んで構成したトロイダル形無段変速機において、
前記入力ディスクとパワーローラ軸受の内輪が前記トロイダル形無段変速機の最大減速状態で係合し動力を伝達するときの条件で求められる最大せん断応力深さをZoと定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記入力ディスクおよびパワーローラ軸受の内輪のうち少なくとも一方が、トラクション面から前記Zoの2倍の深さ範囲内に前記平方根長さで0.10mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。 - 請求項1において、
前記入力ディスクおよびパワーローラ軸受の内輪のうち少なくとも一方が、前記表面から前記Zoの2倍の範囲内に平方根長さで0.05mm以上の欠陥を含まない。 - トロイダル形無段変速機の入力ディスクと出力ディスクのうち少なくとも1つを摺動部材とし、該摺動部材の検査すべき被検面と、該被検面に対向させた超音波探傷用探触子とを超音波伝達媒体中に浸漬させ、前記摺動部材を軸線周りに回転させ、前記超音波探傷用探触子を、前記摺動部材の軸線を含む断面において軸線方向に進退させつつ、かつ被検面の形状に沿うように前記摺動部材と超音波探傷用探触子とを相対的に走査しつつ、超音波探傷用探触子から媒体を介して摺動部材に超音波を伝播させ、摺動部材から反射される超音波エコーの波形に基づいて摺動部材の表面及び内部に存在する欠陥を評価する方法であって、
表面探傷法又は斜角探傷法のうちのいずれか一方を用いて被検面の表面直下の範囲を探傷する方法と、
斜角探傷法又は垂直探傷法のいずれか一方を用いて上記被検面の表面直下を探傷する方法にて超音波が及ばない範囲から最大せん断応力深さZoの2倍の深さ範囲を検査する方法を組み合わせることで表面から探傷する方法と、を用いて、
最大せん断応力深さZoの2倍の深さ範囲以内を探傷し、検出された欠陥の平方根長さが0.05mm以上となるときは該摺動部材を不合格と判定することを特徴とする。 - 入力軸に設けられた入力ディスクと、出力軸に設けられた出力ディスクと、内輪、外輪及び複数の転動体を含みかつ前記入力ディスク及び出力ディスクに前記内輪が係合して前記入力軸の動力を前記出力軸に伝達するパワーローラ軸受と、を含んで構成したトロイダル形無段変速機において、
前記入力ディスク、出力ディスクのうち少なくとも1つは、前記入力軸又は出力軸が挿通するディスク中心孔を有し、かつ端面からディスク中心孔の軸線に沿う方向に、ディスク幅寸法の3分の1以下の深さで、かつディスク中心孔の軸線に直交する方向で端面が有する幅の2分の1以下の距離だけディスク中心孔の内周面から半径方向外方に伸びた範囲の部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥を含まないことを特徴とする。 - 入力軸に設けられた入力ディスクと、出力軸に設けられた出力ディスクと、内輪、外輪及び複数の転動体を含みかつ前記入力ディスク及び出力ディスクに前記内輪が係合して前記入力軸の動力を前記出力軸に伝達するパワーローラ軸受と、を含んで構成したトロイダル形無段変速機において、
前記パワーローラ軸受の内輪・外輪のうち少なくとも1つは、傾転軸が挿通する傾転軸孔を有し、転動溝のある端面から傾転軸孔の軸線に沿う方向に、前記内輪外軸の幅寸法の2分の1以下の深さで、かつ前記端面における転動溝の内縁溝から傾転軸孔の幅寸法の2分の1以下の深さでかつ、前記端面における転動溝の内縁溝から傾転軸孔の内周面までの距離の2分の1以下、内周面から半径方向外方に伸びた範囲の部位に、平方根長さで0.20mmを超える欠陥を含まないことを特徴とする。 - トロイダル形無段変速機の入力ディスク及び出力ディスクのうち少なくとも1つを摺動部材とし、該摺動部材の検査すべき被検面と、該被検面に対向させた超音波探傷用探触子とを超音波伝達媒体中に浸漬させ、前記摺動部材を軸線周りに回転させ、前記超音波探傷用探触子を、前記摺動部材の軸線を含む断面において軸線に進退させ、かつ被検面であるディスクの頂部にある端面の形状に沿うように前記摺動部材と超音波探傷用探触子とを相対的に走査しつつ、超音波端子から媒体を介して摺動部材に超音波を伝播させ、摺動部材から反射される超音波エコーの波形に基づいて摺動部材の表面及び内部に存在する欠陥を評価する方法であって、
表面探傷法又は斜角探傷法のうちのいずれか一方を用いて被検面の表面下の範囲を探傷する方法と、斜角探傷法又は垂直探傷法のいずれか一方を用いて上記被検面の表面下を探傷する方法にて超音波が及ばない範囲で前記端面から探傷する方法と、を用いて、
前記端面からディスク中心孔の軸縁に沿う方向に、ディスク幅寸法の3分の1以下の深さで、かつディスク中心孔の軸線に直交する方向で、端面が有する幅の2分の1以下の距離だけ、ディスク中心孔の内周面から半径方向外方に伸びた範囲の部位に検出された欠陥が平方根長さで0.20mmを超えるときは、当該摺動部品を不合格と判定することを特徴とする。 - パワーローラ軸受の内輪及び外輪のうち少なくとも1つを摺動部材とし、該摺動部材の検査すべき被検面と、該被検面に対向させた超音波探傷用探触子とを超音波伝達媒体中に浸漬させ、前記摺動部材を軸線周りに回転させ、前記超音波探傷用探触子を、前記摺動部材の軸線を含む断面において軸線に進退させ、かつ被検面である転動溝のある側の端面の形状に沿うように、前記摺動部材と超音波探傷用探触子とを相対的に走査しつつ、超音波端子から媒体を介して摺動部材に超音波を伝播させ、摺動部材から反射される超音波エコーの波形に基づいて摺動部材の表面及び内部に存在する欠陥を評価する方法であって、
表面探傷法又は斜角探傷法のうちのいずれか一方を用いて被検面の表面直下の範囲を探傷する方法と、斜角探傷法又は垂直探傷法のいずれか一方を用いて上記被検面の表面直下を探傷する方法に超音波が及ばない範囲で、前記端面から探傷する方法と、を用いて、
前記端面から傾転軸孔の軸線に沿う方向に、前記内輪・外輪の幅寸法の2分の1以下の深さで、かつ前記端面における転動溝の内縁溝から傾転軸孔の内周面までの距離の2分の1以下、内周面から半径方向外方に伸びた範囲の部位に検出された欠陥サイズが平方根長さで0.20mmを超えるときは、当該摺動部品を不合格と判定することを特徴とする。 - トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され、他の部材に対して摺動する摺動回転体であって、
トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義し、非破壊検査法で検出される欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、表面から前記最大せん断応力深さZ0の2倍の深さ範囲内に、前記平方根長さで0.10mm以上の欠陥を含まないことを特徴とする。 - 請求項8において、
前記表面は、前記他の部材との相互摺動接触により動的繰り返し応力を受けるトラクション面である。 - 請求項8において、
前記他の部材は、パワーローラ軸受の内輪である。 - 請求項8において、
前記他の部材は、入力ディスク又は出力ディスクである。 - トロイダル型無段変速機内に支軸に回転可能に支持され他の部材に対して摺動して用いられる摺動回転体を、超音波探触子とともに伝達媒体中に浸漬させ、前記超音波探触子から前記伝達媒体を介して前記摺動回転体に超音波を入射し、前記摺動回転体から反射される超音波エコーの波形に基づいて該摺動回転体の表面および内部に存在する欠陥を評価する方法において、
(a)表面波探傷法および斜角探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の表面および表面直下の部位を探傷する工程と、
(b)斜角探傷法および垂直探傷法のうちの少なくとも一方を用いて前記摺動回転体の内部であって、トロイダル型無段変速機の最大減速時に発生する最大せん断応力深さをZ0と定義したときに、前記表面から前記最大せん断応力深さZ0の2倍の深さまでの部位を探傷する工程と、
(c)欠陥の形状に応じて求められる該欠陥のサイズを平方根長さと定義したときに、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.05mm以上であるときは該摺動回転体を不合格と判定し、前記工程(a)および(b)で検出される欠陥が前記平方根長さで0.05mm未満であるときは該摺動回転体を合格と判定することを特徴とする。 - 請求項12において、
前記工程(a)および(b)では、5MHz〜30MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いる。 - 請求項12において、
前記工程(a)では、5MHz〜15MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いる。 - 請求項12において、
前記工程(b)では、10MHz〜25MHzの範囲内で所定周波数の超音波を用いる。
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