JPWO2002053899A1 - 内燃機関 - Google Patents
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Abstract
アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包んだシリンダブロックを備え、スリーブの線膨張係数をシリンダ本体の線膨拡係数より小さくした内燃機関である。また、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納した内燃機関であり、ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体としたものである。
Description
技術分野
この発明は、スリーブをシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備える内燃機関に関する。
背景技術
内燃機関には、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めし、スリーブ内面に所定のメッキを施すようにして製造する内燃機関用のシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納したものがある。内燃機関用シリンダブロックは軽量で良好な熱伝導性によって高性能エンジンを成立させる重要な要素である。
この内燃機関用のシリンダブロックに、鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めされるアルミニウム合金製のスリーブは、例えば鋳造パイプや連続鋳造押し出しパイプ材に所定の加工を施して製作していた。
また、従来スリーブ材には、12Si−3Cu−アルミニウム材等の材料を使用していた。シリンダ本体は鋳造性の良い金型鋳造の場合にはJIS AC2B等、ダイカスト製造の場合にはJIS ADC12材等鋳造性の良い材料を使用していた。
ところで、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体に鋳包む場合、スリーブの外周にシリンダ本体側の溶湯が取り囲み、スリーブが加熱されて熱膨張する一方、シリンダ本体が湯込め後次第に冷却されるに伴ってスリーブも冷却されて熱収縮する。シリンダ本体側の溶湯は、冷却凝固するとき収縮し、さらに温度が低下するに伴って熱収縮する。スリーブの線膨張係数が高いと、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が緩和されてしまう。
また、内燃機関の運転状態においてもスリーブの温度は鋳包む時の温度(アルミニウム合金の溶融温度に近い値)より低くなる(空冷、水冷がなされるので、100℃〜300℃程度)。内燃機関では、スリーブの線膨張係数が高いと、スリーブ締め付け力が緩和されたままであり、シリンダ本体との間で隙間が発生する場合がある。このシリンダ本体との間で隙間でスリーブからシリンダ本体側への熱伝達が阻害され、ホットスポット化し、ピストンとの焼き付きが発生したりする。
また、鋳造み完了後(常温状態)、所定のメッキを施し、ホーニング仕上げをしてスリーブ内周の円筒度、真円度を上げても、シリンダブロックにクランク軸やピストン等を組み付け、さらにシリンダヘッドをボルト締結して内燃機関として組み立て完了した後、内燃機関を運転すると、スリーブが熱膨張する。この時シリンダヘッドがボルト締結されるスリーブ外周のシリンダ本体の複数のボルト穴回りは剛性が上がり、熱膨張に抵抗する一方、スリーブ外周のボルト穴の中間部となるシリンダ本体は熱膨張に対しての抵抗性は小さいので、スリーブの線膨張係数が高いとスリーブ内周の円筒度、真円度が維持されず、ピストンリングによる燃焼室とクランク室との隔離性が低下し、オイル消費量の増大、燃焼ガスの吹き抜けによる燃費悪化、オイル劣化が起きる。
また、メッキ層を介して加わる燃焼圧力、ピストンリングの張力等により、メッキ層を支えるスリーブ材が降伏劣化し、メッキ層がスリーブ材から剥離する可能性があった。
また、シリンダヘッド締め付けによる剛性アップがあり、運転時の熱膨張がスリーブの円周方向の各部で均一になされない。特に、硬度が不足する場合は剛性が低く、シリンダヘッド締め付けボルト穴の中間部での熱膨張による変形が大きくなる等の問題がある。
また、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体に鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めするシリンダブロックは、軽量で良好な熱伝導性によって高性能エンジンを成立させる重要な要素である。ところで、スリーブ基材には、例えば溶製押し出し材が用いられる場合があり、この場合溶製押し出し材は比較的低いシリコン(Si)含有量をもち、線膨張係数は周囲のシリンダ本体等のアルミニウム鋳物材料と同等かそれ以下である。
この組み合わせのシリンダブロックを製造する際、例えばスリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳包む際に、アルミニウムダイカスト鋳物が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがある。
さらに、隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっている。
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、ピストンとの焼き付きを防止し、また燃費悪化、オイル劣化を防止することを課題とするものである。
また、この発明は、スリーブ材が降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することを課題とし、また出力性能を維持したまま、オイル消費量の低減を可能とすることを課題とするものである。
発明の開示
この発明は、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包んだシリンダブロックを備え、
前記スリーブの線膨張係数を前記シリンダ本体の線膨拡係数より小さくしたことを特徴とする内燃機関である。スリーブの線膨張係数がシリンダ本体の線膨張係数より小さいことから、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が低下することがなく、スリーブとシリンダ本体との間で隙間がなくなり、スリーブからシリンダ本体側への熱伝達が良好でホットスポット化し、ピストンとの焼き付きを防止することができる。
また、前記スリーブの線膨張係数を前記シリンダ本体の線膨張係数より少なくとも10%小さな値にすることが好ましく、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力がより低下することがなく、さらにスリーブとシリンダ本体との間で隙間がなくなる。
また、前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させることが好ましく、また前記シリコン(Si)を平均粒径が2〜10μmの初晶シリコン(Si)とすることが好ましく、また前記スリーブを平均粒径が20〜100μmのアルミニウム含金粉末を凝集固化して形成することが好ましく、スリーブの線膨張係数をより小さくすることができ、しかも熱伝導性、加工性、メッキ性を損なうことがない。
また、この発明は、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納した内燃機関であり、
前記ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体としたことを特徴とする。ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体とすることで、内燃機関を運転すると、ピストンの熱膨張に伴うピストンクリアランスの変化を理想的な状態に保つことができ、これによって、ロス及び騒音の低減をはかることができ、出力性能を維持したまま、オイル消費量を低減することができる。
また、前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下を含有させ、前記スリーブはロックウェル硬度(HRB)40〜70であることが好ましく、また前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)のいずれか少なくとも1つあるいは複数を合計で1.7〜8.3重量%含有させることが好ましく、スリーブの降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
また、前記スリーブの内周面にアルカリエッチング処理をした後、メッキを施すことが好ましく、また前記スリーブの基材外表面に、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行が連続した突起を形成すると共に、表面に深さ10μm〜最大でスリーブの基材厚さの20%の微小クラックを一様に分布させることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、この発明の内燃機関の実施の形態について図面に基づいて説明する。
この発明は、内燃機関用のシリンダブロックを備える水冷式あるいは空冷式の4サイクル内燃機関及び2サイクル内燃機関に適用され、またスリーブは湿式構造あるいは乾式構造に適用される。
この内燃機関の一例として、図1及び図2にスリーブが乾式構造の水冷式4サイクル内燃機関を示すが、この発明はこの実施の形態に限定されない。
車両の4サイクルエンジン1は、直列4気筒エンジンが用いられる。4サイクルエンジン1のシリンダブロック2は、シリンダ本体2aとスリーブ3から構成され、このスリーブ3にピストン4が往復動可能に設けられている。このピストン4の往復動でコンロッド5を介してクランク室7に配置された図示しないクランク軸が回転する。シリンダブロック2にはシリンダヘッド6が設けられ、ボルト8によりシリンダブロック2に締付固定されている。ピストン4には、ピストンリング4bが設けられている。シリンダヘッド6にはヘッドカバー80が設けられている。
シリンダブロック2のスリーブ3、ピストン4の頭部4aと、シリンダヘッド6とで燃焼室12が形成されている。シリンダヘッド6には燃焼室12に臨むように点火プラグ86が取り付けられている。
また、シリンダヘッド6には吸気通路13と排気通路14が形成され、吸気通路13には集合吸気管15が接続される。また、排気通路14には集合排気管16が接続される。
吸気通路13の燃焼室12に臨む開口部は吸気弁18で開閉され、排気通路14の燃焼室12に臨む開口部は排気弁19で開閉される。吸気弁18及び排気弁19のタペット30,31には、カム軸32,33のカム32a,33aが当接しており、カム軸32,33の回転によってカム32a,33aがタペット30,31を介して吸気弁18及び排気弁19を押動し、これにより吸気通路13と排気通路14を開閉する。
シリンダブロック2のシリンダ本体2aには水ジャケット20が形成され、この水ジャケット20に連通してシリンダヘッド6に水ジャケット21が形成されている。この水ジャケット20,21の冷却水により燃焼室12の周りを冷却するようになっており、スリーブ3が乾式構造である。
図3はスリーブが湿式構造の水冷式4サイクル内燃機関であり、水ジャケット20の冷却水により燃焼室12の周りを冷却すると共に、冷却水によりスリーブ3を直接冷却するようになっている。水ジャケット20の下部には、シリンダ本体2aとスリーブ3との間にOリング85を設けてシールしている。
次に、内燃機関用のシリンダブロックの製造を、図4の内燃機関用シリンダブロックの製造工程を示す図に基づいて説明する。
急冷凝固粉末材料を形成し(ステップS1)、この急冷凝固粉末材料を冷間静水圧プレスしてスリーブ素材(ビレット)を成形し(ステップS2)、真空焼結する(ステップS3)。その後、加熱・熱間押し出し、スリーブ中空素形材を形成し、冷却する(ステップS4)。必要に応じて熱処理し、このスリーブ中空素形材を切断・加工し(ステップS5)、スリーブ3を形成する。このスリーブ3をシリンダ本体2aに鋳包み(ステップS6)、焼鈍(ステップS7)、メッキを行ない(ステップS8)、ホーニング処理する(ステップS9)。
ステップS1における急冷凝固粉末材料は、例えばアルミニウム(Al)の基材に対してシリコン(Si)、鉄(Fe)及びその他の成分を含有させたアルミニウム合金のインゴットを準備して、これを約700℃以上で溶解してから、霧状に散布して冷却速度100℃/sec以上で急激に冷やして凝固させることで、アルミニウム合金の急冷凝固粉末(パウダーメタル)として形成する。
スリーブ素材(ビレット)を形成するためのアルミニウム合金粉末材料としては、例えば、初晶シリコンの平均粒径が、20μm以下、好ましくは2〜10μmであるシリコン(Si)を15〜38重量%の範囲で含むようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末が使用される。
このようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末として、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.5重量%以下、銅(Cu)を6.8重量%以下、マグネシウム(Mg)を0.2〜2重量%、マンガン(Mn)を1.5重量%以下、クロム(Cr)を0.4重量%以下、亜鉛(Zn)を0.3重量%以下の範囲で含むようなものがある。
このようなJISに規定の2000番台あるいは6000のアルミニウム合金をベースにSi含有量を増加させて15〜38重量%としたアルミニウム合金の急冷凝固粉末の含有成分において、シリコン(Si)は、金属組織中に硬質の初晶や共晶のシリコン粒を晶出させることで耐摩耗性及び耐焼付性を高めるために添加され、鉄(Fe)は、金属組織を分散強化して200℃以上で高い強度を得るために添加され、また、銅(Cu)及びマグネシウム(Mg)は、200℃以下での強度を高めるために添加されるものであって、それらの添加量については、前記の範囲で所望の耐摩耗性や耐焼付性及び高温での必要な強度を得ることができる。
前記のようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末を固化したスリーブ素材では、溶解したアルミニウム合金を霧状に散布して急冷凝固させることにより粉末化しているため、アルミニウム合金粉末は平均粒径で約20〜100μm程度となり、その中に含まれているシリコン(Si)は、粉末化しつつ凝固するアルミニウム合金の金属組織中に晶出させた硬質の初晶シリコン(Si)が平均粒径が、20μm以下、好ましくは2〜10μmとなるように微細化されていて、各アルミニウム合金粒子毎に分散されている。
ステップS2において、一方あるいは複数方向に開放口を有する型内に上記アルミニウム合金の急冷凝固粉末材を込め、エアー抜きしつつプランジャーを開放口から型内に挿入し、しかる後プランジャーと型とを水密状態に保ったまま、プランジャーに静水圧を負荷する、静水圧プレスが実施され、急冷凝固粉末材料が固められる。
ステップS3において、予固めされた急冷凝固粉末材料が焼結型内に収容され、型内部の真空引きが実施されるとともに加熱加圧され、空気の混入のほとんど無いより緻密な固形塊とされる。
ステップS4において、押し出し型に固形塊が収容されて加熱され、押し出し型の口金部から中空の丸棒状すなわち中空素形状に押し出され、冷却された部分で切断されて、所定長の中空丸棒とされる。なお、このステップS4において、押し出し・冷却後のスリーブ中空素形材の硬度をロックウェル硬度(HRB)40以上となるように工程上のパラメータを調整する。
ステップS5において、スリーブ素材長さに切断され、内外形及び端部が加工されて、鋳包み用スリーブが形成される。
ステップS6におけるスリーブ3のシリンダ本体2aへの鋳包みは、スリーブ3を鋳包むシリンダダイカスト成形が実施される。この場合の鋳包みはスリーブ3を金型内に収容し、スリーブ内周の一部を支持部材で支えた状態で、金型とスリーブ外周との間の空隙に、所定のアルミニウム合金の溶湯を高圧で導くことにより行う。そしてシリンダブロック2の各部及びシリンダボアの機械加工が実施される。
スリーブの鋳包み前にスリーブ外周面に凹凸を形成することにより、運転中の母材とスリーブの熱膨張率の違いにより締め付け力が低下しても、スリーブの抜けを確実に防止できる。このようなスリーブ外周面の凹凸は、ビレットを押し出し成形する際に、押し出し速度と温度などの成形条件を調整することにより、人工的に微細なクラックを形成することができる。またショットブラストを用いることも可能である。ショットブラスト以外にも他の機械加工あるいはスリーブ全体の酸洗い(エッチング)等により形成することができる。また、ショットブラスト等によりスリーブ外周に凹凸を形成して母材との接合性を高める方法に代えて、低融点半田を用いてスリーブと母材とを接合しスリーブの抜け防止を図ってもよい。
ここでショットブラストとは、粒径が50〜150μmの鋼球、超硬ビーズ、ステンレス鋼球、亜鉛ビーズ、ガラスビーズや、粒径はもう少し大きい石英を多く含む川砂等を、投射機で、例えば40〜80m/sの投射速度でワークを投射するものを言う。
ステップS7において焼鈍が実施される。この焼鈍後のスリーブ3の硬度をロックウェル硬度(HRB)40以上となるように熱処理条件を調整する。
ステップS8におけるメッキ処理は、スリーブ内面のメッキであり、基本的には、脱脂処理、アルカリエッチング処理、混酸エッチング処理からなる前処理と、下地処理のアルマイト処理と、複合メッキ処理の5つの工程からなり、各工程の後に水洗処理が施される。
そして以上のメッキ処理(ステップS8)の後、ホーニング(ステップS9)でスリーブ内周面のメッキ層にホーニング仕上げを施し、メッキ皮膜の厚みを望ましくは約50μm、場合によっては20μm〜100μmとするとともに、メッキ層の面粗さを1.0μmRz以下にする。これにより、確実にメッキ層表面を滑らかにすることができてピストン4及びピストンリング4bの摺動時の摩擦係数を小さくすることができるとともに、エンジンオイルの保持性が向上し潤滑性を向上させることができる。なお、RzとはJIS規格のB0601に定められたものである。
この発明の実施の形態では、アルミニウム合金製のスリーブ3を、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体2aに鋳包んだ内燃機関用シリンダブロック2であるが、圧入、焼き嵌めによって配置しても良い。
従来のスリーブ基材には、溶製押し出し材が用いられ、この溶製押し出し材は比較的低いシリコン含有量をもち、熱膨張係数は周囲のシリンダ本体のアルミニウム鋳物材料と同等かそれ以下であり、このシリンダブロックを製造する際、スリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳込む際に、鋳物材が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがあり、さらに隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっている。
このようにシリコン(Si)含有量を15〜38重量%としたアルミニウム合金鋳物でスリーブ3を形成ることがスリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じさせないことで有効であるが、通常の鋳物材料では初晶Si粒が数10μm以上にもなってしまうため、表面にめっき層を形成しようとしても、密着性が悪く、加工時にめっき剥離を生じることがあるだけでなく、運転中にもめっき剥離を生じるなど充分な耐久性が得られない。
このためスリーブ3は平均粒径が20〜100μmのアルミニウム合金粉末を凝集固化して形成することで、このシリコン(Si)を平均粒径が2〜10μmの初晶シリコン(Si)としている。また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金には、前記したようにシリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数を15〜22(200℃にて)とし、シリンダ本体2aの線膨張係数より小さく(例えば、JISダイカスト用アルミニウム合金ADC12の線膨張係数20(200℃にて)と)し、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値にしている。
したがって、アルミニウム合金製のスリーブ3を、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体2aに鋳包む場合、スリーブ3の外周にシリンダ本体2a側の溶湯が取り囲み、スリーブ3が加熱されて熱膨張する一方、シリンダ本体2aが湯込め後次第に冷却されるに伴ってスリーブ3も冷却されて熱収縮し、シリンダ本体2a側の溶湯は、冷却凝固するとき収縮し、さらに温度が低下するに伴って熱収縮するが、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、シリンダ本体2a側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が緩和されず、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間に隙間が生じない。
また、スリーブ基材に、アルミニウム合金にシリコン(Si)を加えた化学組成をもつ急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いて押出加工により形成し、この押出加工条件、例えば押出速度、温度等を調整することによって中空丸棒、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行な連続した突起を形成する、あるいは及び、表面に深さ10μm〜1mmの微小クラックを一様に分布させ、または表面に深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%の微小クラックを一様に分布させ、スリーブに加工した後も外周表面に突起、あるいは及び微小クラックを残すようにすることで、シリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
また、運転状態においてもスリーブ3の温度は鋳包む時の温度(アルミニウム合金の溶融温度に近い値)より低くなるが(空冷、水冷がなされるので、100℃〜300℃程度)、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、スリーブ締め付け力が維持され、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間で隙間が発生することがなく、スリーブ内周の円筒度、真円度が維持され、スリーブ3円周表面からの熱は、メッキ層、スリーブ3本体内を経てシリンダ本体側へ良好に熱伝達されるのでホットスポットができにくく、ピストン4との焼き付きを防止することができる。
また、鋳造み完了後(常温状態)、所定のメッキを施し、ホーニング仕上げをしてスリーブ3内周の円筒度、真円度を上げて、シリンダブロック2にクランク軸やピストン等を組み付け、さらにシリンダヘッド6をボルト8により締結して内燃機関として組み立て完了した後、内燃機関を運転すると、スリーブ3が熱膨張し、この時シリンダヘッド6がボルト締結されるスリーブ外周のシリンダ本体2の複数のボルト穴回りは剛性が上がり、熱膨張に抵抗する一方、スリーブ外周のボルト穴の中間部となるシリンダ本体2aは熱膨張に対しての抵抗性は小さいが、シリコン(Si)を15〜35重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、スリーブ3が熱膨張が小さくてスリーブ内周の円筒度、真円度が維持され、ピストンリング4bによる燃焼室12とクランク室7との隔離性が向上し、オイル消費量の増大、燃焼ガスの吹き抜けによる燃費悪化、オイル劣化を防止することができる。
また、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間に隙間が生じないようにすることができるだけでなく、メッキの密着性も確保することができる。これは、メッキの前処理であるアルカリエッチング工程において、シリコン(Si)粒径が2〜10μmと十分小さいために、Ni−Pメッキの析出が阻害されないためである。
このように発明では、スリーブ3を構成するアルミニウム合金にシリコン(Si)を含有させ、このシリコン(Si)を平均粒度が2〜10μmの初晶シリコン(Si)とし、スリーブ3の内周面にアルカリエッチング処理することで、スリーブ内周面のシリコン(Si)がアルカリエッチング処理で除去されて、スリーブ内周面に凹凸が形成され、しかもシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能で、凹凸によるアンカー効果があり、さらに結合面積の増加で熱伝達面積が増加し、メッキ層に加えられる燃焼ガスの熱を速やかに放熱可能で、メッキ層の剥離を起こしにくい。
また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜35重量%含有させることで、シリコン(Si)含有量が多く、かつシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、より微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能である。すなわち、スリーブ3内周表面からの熱は、メッキ層、スリーブ3本体を経て、シリンダ本体側へ良好に熱伝達されるので、スリーブ3表面にホットスポットができにくく、ピストン4との焼き付きを防止することができる。
また、この発明では、メッキ層を介して加わる燃焼圧力、ピストンリングの張力等により、メッキ層を支えるスリーブ材が降伏劣化し、メッキ層がスリーブ材から剥離する可能性があり、またシリンダヘッド締め付けによる剛性アップがあり、運転時の熱膨張がスリーブの円周方向の各部で均一になされないで、特に硬度が不足する場合は剛性が低く、シリンダヘッド締め付けボルト穴の中間部での熱膨張による変形が大きくなる等の問題があるが、スリーブを構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%と、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下を含有させ、スリーブはロックウェル硬度(HRB)40〜70とすることで、スリーブ3の降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
また、スリーブを構成するアルミニウム合金に、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)のいずれか少なくとも1つあるいは複数を合計で1.7〜8.3重量%含有させたから、スリーブの降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
さらに、シリンダブロック2を製造する際、例えばスリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳包む際に、アルミニウムダイカスト鋳物が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがあり、さらに、隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっているが、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aを、シリコン(Si)を含有するアルミニウム合金で形成し、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aの線膨張係数の比を、16〜17:17〜18:20〜21とする。例えば、シリコン(Si)を含有量を調整し、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aのシリコン(Si)含有率の比を、25:17:12としてピストン4、スリーブ3、シリンダ本体2aの線膨張係数の比を、16:18:20とすることで、内燃機関を運転すると、ピストン4の熱膨張に伴うピストンクリアランスの変化を理想的な状態に保つことができ、これによって、ロス及び騒音の低減をはかることができ、出力性能を維持したまま、オイル消費量を低減することができる。
また、シリコン(Si)含有量を15〜38重量%としたアルミニウム合金鋳物を使用することがスリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じさせないことで有効であるが、通常の鋳物材料では初晶Si粒が数10μm以上にもなってしまうため、表面にメッキ層を形成しようとしても、密着性が悪く、加工時にメッキ剥離を生じることがあるだけでなく、運転中にもメッキ剥離を生じるなど充分な耐久性が得られない。
このためスリーブ3は平均粒径が20〜100μmのアルミニウム合金粉末を凝集固化して形成することで、このシリコン(Si)を平均粒径が20μm以下の初晶シリコン(Si)としている。メッキの前処理であるアルカリエッチング工程において、シリコン(Si)粒径が20μm以下と十分小さいために、Ni−Pメッキの析出が阻害されない。このためメッキの密着性が確保することができる。
このように、スリーブ3を構成するアルミニウム合金にシリコン(Si)を含有させ、このシリコン(Si)を平均粒径が20μm以下の初晶シリコン(Si)とし、スリーブ3の内周面にアルカリエッチング処理することで、スリーブ内周面のシリコン(Si)がアルカリエッチング処理で除去されて、スリーブ内周面に凹凸が形成され、しかもシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能で、凹凸によるアンカー効果があり、さらに結合面積の増加で熱伝達面積が増加し、メッキ層に加えられる燃焼ガスの熱を速やかに放熱可能で、メッキ層の剥離を起こしにくい。
また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させることで、シリコン(Si)含有量が多く、かつシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、より微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能である。
また特に、メッキ層を支持するスリーブ3はステップS3の真空焼結時の加圧加熱条件及充分に各粉未が結合した後の冷却条件、あるいはステップS4の加熱・熱間押し出しにおける温度環境及び押し出しにおける縮径率、金型の押し出し口形状、押し出し後の冷却条件、あるいは鋳包む時におけるスリーブ温度管理(加熱、保温、あるいは冷却等)条件、あるいは焼鈍条件等を設定することにより、鋳包み状態でロックウェル硬度(HRB)40〜70とする。このことにより、爆発圧力やピストンピンの張力がメッキ層を介してスリーブ3に作用しても、スリーブ3のメッキ層支持部は塑性変形することがないので、メッキ層の剥離を起こしにくい。すなわち、メッキ層が脱落してスリーブ3が異常磨耗するようなエンジンの耐久性に悪影響するようなことを防止できる。
実施例としては、スリーブ基材に、JIS2000系またはJIS6000系の基本化学成分に25重量%のシリコン(Si)を加えた化学組成をもつ急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いるときの製造工程を、図4の工程によって製造した。
このJIS2000系をベースとし過共晶組成となる量のシリコン(Si)を加えたアルミニウム合金の急冷凝固粉末は、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.5重量%以下、銅(Cu)を1.5〜6.8重量%、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下、マンガン(Mn)を0.2〜1.2重量%、クロム(Cr)を0.1重量%以下、亜鉛(Zn)0.3重量%以下、チタン(Ti)0.2重量%以下とした。
このJIS6000系をベースとし過共晶組成となる量のシリコン(Si)を加えたアルミニウム合金の急冷凝固粉末は、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.0重量%以下、銅(Cu)を0.4重量%以下、マグネシウム(Mg)を0.35〜1.5重量%以下、マンガン(Mn)を0.8重量%以下、クロム(Cr)を0.35重量%以下、亜鉛(Zn)0.25重量%以下、チタン(Ti)0.15重量%以下とした。
実施例1は、JIS6000系で6061−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
実施例2は、JIS6000系で6061+2〜4Fe−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
実施例3は、JIS2000系で2017または2024−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
この実施例では、オイル消費量低減はシリンダ変形の改善であり、これに鋳込み後スリーブ密着を改善することに着目した。スリーブ密着の改善には、低線膨張係数スリーブ材へ変更することに着目し、通常の低線膨張係数材は鉄系から軽量、熱伝達良好材の選定を行ない、アルミニウム複合材とした。
このスリーブ材の物性、機械的性質を比較して表1に示し、低線膨張係数アルミニウムを基材とし、内表面に硬質皮膜を形成したスリーブであり、表1に示すようにスリーブ基材の線膨張係数αを12Si−3Cuのアルミニウム合金材、シリンダ本体ADC12と比較して低減した。鋳包み材であるシリンダ本体ADC12の線膨張係数との比率は0.85であり、スリーブの鋳込み時の締め付け変形が改善された。
また、250℃×1時間の加熱後除冷する焼鈍により鋳包み時の界面隙間が表2に示すように減少する。スリーブの円周方向に8箇所でスリーブとシリンダ本体との界面隙間を測定した。ボアNo4のものは異常として金型冷却を停止する。
鋳包み時の界面隙間が減少すると、表1に示すように、ライナー基材のヤング率が向上し、ホーニング後のシリンダの真円度、円筒度が改善され、ピストンリングの追従性、シール性が改善される。
また、鋳包み時の界面隙間が減少すると、熱伝達性の均一化と改善が行なわれ、運転中の局部変形の改善が可能になり、ホーニング後のシリンダの真円度、円筒度が改善され、ピストンリングの追従性、シール性が改善され、オイル消費の改善された。
前記実施例1乃至実施例3において、急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いて押出加工し、この押出加工条件、例えば押出速度、温度等を調整することによって、図5に示すように、スリーブ基材の外表面に、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行な連続した突起100を形成すると共に、表面に深さ10μm〜1mmの微小クラック101を一様に分布させた。
図6はスリーブ表面き烈深さとスリーブ強度及び界面隙間の関係を示す図であり、表面に深さ10μm〜1mmがスリーブ強度が大きく、界面隙間を小さくすることができ烈深さの最適範囲であり、この深さ10μm〜1mmの微小クラック101を一様に分布させることで、鋳物のシリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
また、表面に深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%がスリーブ強度が大きく、界面隙間を小さくすることができ烈深さの最適範囲であり、この深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%の微小クラック101を一様に分布させることで、鋳物のシリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
前記実施例1乃至実施例3において、リン及び共析物を含むニッケル系の分散メッキを高速で行ない、ニッケル(Ni)−リン(P)−シリコンカーバイト(SiC)の分散メッキを高速で行うものであるが、このNi−P−SiC分散メッキは、次のような性質を有する。
スリーブ3の内周面にNi−P−SiC分散メッキを施した場合に、スリーブ3の内周面に、図7に示すようなNi−Pマトリックス51及びSiCの共析粒子52を含むメッキ膜50が形成される。このメッキ膜50の表面には、潤滑のためにホーニング目からなるオイルポケット53が形成される(図7(a))が、さらに、運転によるピストン5の摺動が繰り返されると、図7(b)のように、硬いシリコンカーバイト(SiC)の共析粒子52は残つてNi−Pマトリックス51が摩耗することにより、新たなオイルポケット54が生じる。従つて、長期間にわたつてオイル潤滑を良好に行わせることができる。
また、温度とメッキ硬度との関係を、上記のNi−P−SiC分散メッキと、Ni−SiC分散メッキと、ハードクロムメッキとについて調べると、Ni−P−SiC分散メッキは、とくに350℃程度で熱処理すれば、ハードクロムメッキよりも硬度が高く、リン(P)を含まないNi−SiC分散メッキと比べると硬度が大幅に高められる。このことから、リンを含有させることで熱処理後の硬度が高められることがわかる。
この実施例では、板状試験片にメッキを施したものについてやすり試験、ドリル孔あけ試験、加熱急冷試験等によりメッキの密着性を評価したところ、溶製材に比べ明らかに密着性が向上していることが確認された。また、内燃機関の耐久試験を行なったところ、出力性能を維持したまま、オイル消費量が、従来の約1/2に低減することが確認され、メッキ剥離等のトラブルはまったく発生しなかった。
産業上の利用可能性
以上のように、スリーブをシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備える内燃機関において、ピストンとの焼き付きを防止し、また燃費悪化、オイル劣化を防止することができた。また、スリーブ材が降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができた。さらに、内燃機関の出力性能を維持したまま、オイル消費量の低減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1はスリーブが乾式構造の水冷式4サイクル内燃機関の断面図である。
図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
図3はスリーブが湿式構造の水冷式4サイクル内燃機関の断面図である。
図4は内燃機関用シリンダブロックの製造工程を示す図である。
図5はスリーブ基材の外表面の状態を示す図である。
図6はスリーブ表面き烈深さとスリーブ強度及び界面隙間の関係を示す図である。
図7はNi−P−SiC分散複合メッキを示す図である。
この発明は、スリーブをシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備える内燃機関に関する。
背景技術
内燃機関には、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めし、スリーブ内面に所定のメッキを施すようにして製造する内燃機関用のシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納したものがある。内燃機関用シリンダブロックは軽量で良好な熱伝導性によって高性能エンジンを成立させる重要な要素である。
この内燃機関用のシリンダブロックに、鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めされるアルミニウム合金製のスリーブは、例えば鋳造パイプや連続鋳造押し出しパイプ材に所定の加工を施して製作していた。
また、従来スリーブ材には、12Si−3Cu−アルミニウム材等の材料を使用していた。シリンダ本体は鋳造性の良い金型鋳造の場合にはJIS AC2B等、ダイカスト製造の場合にはJIS ADC12材等鋳造性の良い材料を使用していた。
ところで、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体に鋳包む場合、スリーブの外周にシリンダ本体側の溶湯が取り囲み、スリーブが加熱されて熱膨張する一方、シリンダ本体が湯込め後次第に冷却されるに伴ってスリーブも冷却されて熱収縮する。シリンダ本体側の溶湯は、冷却凝固するとき収縮し、さらに温度が低下するに伴って熱収縮する。スリーブの線膨張係数が高いと、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が緩和されてしまう。
また、内燃機関の運転状態においてもスリーブの温度は鋳包む時の温度(アルミニウム合金の溶融温度に近い値)より低くなる(空冷、水冷がなされるので、100℃〜300℃程度)。内燃機関では、スリーブの線膨張係数が高いと、スリーブ締め付け力が緩和されたままであり、シリンダ本体との間で隙間が発生する場合がある。このシリンダ本体との間で隙間でスリーブからシリンダ本体側への熱伝達が阻害され、ホットスポット化し、ピストンとの焼き付きが発生したりする。
また、鋳造み完了後(常温状態)、所定のメッキを施し、ホーニング仕上げをしてスリーブ内周の円筒度、真円度を上げても、シリンダブロックにクランク軸やピストン等を組み付け、さらにシリンダヘッドをボルト締結して内燃機関として組み立て完了した後、内燃機関を運転すると、スリーブが熱膨張する。この時シリンダヘッドがボルト締結されるスリーブ外周のシリンダ本体の複数のボルト穴回りは剛性が上がり、熱膨張に抵抗する一方、スリーブ外周のボルト穴の中間部となるシリンダ本体は熱膨張に対しての抵抗性は小さいので、スリーブの線膨張係数が高いとスリーブ内周の円筒度、真円度が維持されず、ピストンリングによる燃焼室とクランク室との隔離性が低下し、オイル消費量の増大、燃焼ガスの吹き抜けによる燃費悪化、オイル劣化が起きる。
また、メッキ層を介して加わる燃焼圧力、ピストンリングの張力等により、メッキ層を支えるスリーブ材が降伏劣化し、メッキ層がスリーブ材から剥離する可能性があった。
また、シリンダヘッド締め付けによる剛性アップがあり、運転時の熱膨張がスリーブの円周方向の各部で均一になされない。特に、硬度が不足する場合は剛性が低く、シリンダヘッド締め付けボルト穴の中間部での熱膨張による変形が大きくなる等の問題がある。
また、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体に鋳包み、圧入、あるいは焼き嵌めするシリンダブロックは、軽量で良好な熱伝導性によって高性能エンジンを成立させる重要な要素である。ところで、スリーブ基材には、例えば溶製押し出し材が用いられる場合があり、この場合溶製押し出し材は比較的低いシリコン(Si)含有量をもち、線膨張係数は周囲のシリンダ本体等のアルミニウム鋳物材料と同等かそれ以下である。
この組み合わせのシリンダブロックを製造する際、例えばスリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳包む際に、アルミニウムダイカスト鋳物が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがある。
さらに、隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっている。
この発明は、かかる実情に鑑みてなされたもので、ピストンとの焼き付きを防止し、また燃費悪化、オイル劣化を防止することを課題とするものである。
また、この発明は、スリーブ材が降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することを課題とし、また出力性能を維持したまま、オイル消費量の低減を可能とすることを課題とするものである。
発明の開示
この発明は、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包んだシリンダブロックを備え、
前記スリーブの線膨張係数を前記シリンダ本体の線膨拡係数より小さくしたことを特徴とする内燃機関である。スリーブの線膨張係数がシリンダ本体の線膨張係数より小さいことから、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が低下することがなく、スリーブとシリンダ本体との間で隙間がなくなり、スリーブからシリンダ本体側への熱伝達が良好でホットスポット化し、ピストンとの焼き付きを防止することができる。
また、前記スリーブの線膨張係数を前記シリンダ本体の線膨張係数より少なくとも10%小さな値にすることが好ましく、シリンダ本体側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力がより低下することがなく、さらにスリーブとシリンダ本体との間で隙間がなくなる。
また、前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させることが好ましく、また前記シリコン(Si)を平均粒径が2〜10μmの初晶シリコン(Si)とすることが好ましく、また前記スリーブを平均粒径が20〜100μmのアルミニウム含金粉末を凝集固化して形成することが好ましく、スリーブの線膨張係数をより小さくすることができ、しかも熱伝導性、加工性、メッキ性を損なうことがない。
また、この発明は、アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納した内燃機関であり、
前記ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体としたことを特徴とする。ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体とすることで、内燃機関を運転すると、ピストンの熱膨張に伴うピストンクリアランスの変化を理想的な状態に保つことができ、これによって、ロス及び騒音の低減をはかることができ、出力性能を維持したまま、オイル消費量を低減することができる。
また、前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下を含有させ、前記スリーブはロックウェル硬度(HRB)40〜70であることが好ましく、また前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)のいずれか少なくとも1つあるいは複数を合計で1.7〜8.3重量%含有させることが好ましく、スリーブの降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
また、前記スリーブの内周面にアルカリエッチング処理をした後、メッキを施すことが好ましく、また前記スリーブの基材外表面に、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行が連続した突起を形成すると共に、表面に深さ10μm〜最大でスリーブの基材厚さの20%の微小クラックを一様に分布させることが好ましい。
発明を実施するための最良の形態
以下、この発明の内燃機関の実施の形態について図面に基づいて説明する。
この発明は、内燃機関用のシリンダブロックを備える水冷式あるいは空冷式の4サイクル内燃機関及び2サイクル内燃機関に適用され、またスリーブは湿式構造あるいは乾式構造に適用される。
この内燃機関の一例として、図1及び図2にスリーブが乾式構造の水冷式4サイクル内燃機関を示すが、この発明はこの実施の形態に限定されない。
車両の4サイクルエンジン1は、直列4気筒エンジンが用いられる。4サイクルエンジン1のシリンダブロック2は、シリンダ本体2aとスリーブ3から構成され、このスリーブ3にピストン4が往復動可能に設けられている。このピストン4の往復動でコンロッド5を介してクランク室7に配置された図示しないクランク軸が回転する。シリンダブロック2にはシリンダヘッド6が設けられ、ボルト8によりシリンダブロック2に締付固定されている。ピストン4には、ピストンリング4bが設けられている。シリンダヘッド6にはヘッドカバー80が設けられている。
シリンダブロック2のスリーブ3、ピストン4の頭部4aと、シリンダヘッド6とで燃焼室12が形成されている。シリンダヘッド6には燃焼室12に臨むように点火プラグ86が取り付けられている。
また、シリンダヘッド6には吸気通路13と排気通路14が形成され、吸気通路13には集合吸気管15が接続される。また、排気通路14には集合排気管16が接続される。
吸気通路13の燃焼室12に臨む開口部は吸気弁18で開閉され、排気通路14の燃焼室12に臨む開口部は排気弁19で開閉される。吸気弁18及び排気弁19のタペット30,31には、カム軸32,33のカム32a,33aが当接しており、カム軸32,33の回転によってカム32a,33aがタペット30,31を介して吸気弁18及び排気弁19を押動し、これにより吸気通路13と排気通路14を開閉する。
シリンダブロック2のシリンダ本体2aには水ジャケット20が形成され、この水ジャケット20に連通してシリンダヘッド6に水ジャケット21が形成されている。この水ジャケット20,21の冷却水により燃焼室12の周りを冷却するようになっており、スリーブ3が乾式構造である。
図3はスリーブが湿式構造の水冷式4サイクル内燃機関であり、水ジャケット20の冷却水により燃焼室12の周りを冷却すると共に、冷却水によりスリーブ3を直接冷却するようになっている。水ジャケット20の下部には、シリンダ本体2aとスリーブ3との間にOリング85を設けてシールしている。
次に、内燃機関用のシリンダブロックの製造を、図4の内燃機関用シリンダブロックの製造工程を示す図に基づいて説明する。
急冷凝固粉末材料を形成し(ステップS1)、この急冷凝固粉末材料を冷間静水圧プレスしてスリーブ素材(ビレット)を成形し(ステップS2)、真空焼結する(ステップS3)。その後、加熱・熱間押し出し、スリーブ中空素形材を形成し、冷却する(ステップS4)。必要に応じて熱処理し、このスリーブ中空素形材を切断・加工し(ステップS5)、スリーブ3を形成する。このスリーブ3をシリンダ本体2aに鋳包み(ステップS6)、焼鈍(ステップS7)、メッキを行ない(ステップS8)、ホーニング処理する(ステップS9)。
ステップS1における急冷凝固粉末材料は、例えばアルミニウム(Al)の基材に対してシリコン(Si)、鉄(Fe)及びその他の成分を含有させたアルミニウム合金のインゴットを準備して、これを約700℃以上で溶解してから、霧状に散布して冷却速度100℃/sec以上で急激に冷やして凝固させることで、アルミニウム合金の急冷凝固粉末(パウダーメタル)として形成する。
スリーブ素材(ビレット)を形成するためのアルミニウム合金粉末材料としては、例えば、初晶シリコンの平均粒径が、20μm以下、好ましくは2〜10μmであるシリコン(Si)を15〜38重量%の範囲で含むようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末が使用される。
このようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末として、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.5重量%以下、銅(Cu)を6.8重量%以下、マグネシウム(Mg)を0.2〜2重量%、マンガン(Mn)を1.5重量%以下、クロム(Cr)を0.4重量%以下、亜鉛(Zn)を0.3重量%以下の範囲で含むようなものがある。
このようなJISに規定の2000番台あるいは6000のアルミニウム合金をベースにSi含有量を増加させて15〜38重量%としたアルミニウム合金の急冷凝固粉末の含有成分において、シリコン(Si)は、金属組織中に硬質の初晶や共晶のシリコン粒を晶出させることで耐摩耗性及び耐焼付性を高めるために添加され、鉄(Fe)は、金属組織を分散強化して200℃以上で高い強度を得るために添加され、また、銅(Cu)及びマグネシウム(Mg)は、200℃以下での強度を高めるために添加されるものであって、それらの添加量については、前記の範囲で所望の耐摩耗性や耐焼付性及び高温での必要な強度を得ることができる。
前記のようなアルミニウム合金の急冷凝固粉末を固化したスリーブ素材では、溶解したアルミニウム合金を霧状に散布して急冷凝固させることにより粉末化しているため、アルミニウム合金粉末は平均粒径で約20〜100μm程度となり、その中に含まれているシリコン(Si)は、粉末化しつつ凝固するアルミニウム合金の金属組織中に晶出させた硬質の初晶シリコン(Si)が平均粒径が、20μm以下、好ましくは2〜10μmとなるように微細化されていて、各アルミニウム合金粒子毎に分散されている。
ステップS2において、一方あるいは複数方向に開放口を有する型内に上記アルミニウム合金の急冷凝固粉末材を込め、エアー抜きしつつプランジャーを開放口から型内に挿入し、しかる後プランジャーと型とを水密状態に保ったまま、プランジャーに静水圧を負荷する、静水圧プレスが実施され、急冷凝固粉末材料が固められる。
ステップS3において、予固めされた急冷凝固粉末材料が焼結型内に収容され、型内部の真空引きが実施されるとともに加熱加圧され、空気の混入のほとんど無いより緻密な固形塊とされる。
ステップS4において、押し出し型に固形塊が収容されて加熱され、押し出し型の口金部から中空の丸棒状すなわち中空素形状に押し出され、冷却された部分で切断されて、所定長の中空丸棒とされる。なお、このステップS4において、押し出し・冷却後のスリーブ中空素形材の硬度をロックウェル硬度(HRB)40以上となるように工程上のパラメータを調整する。
ステップS5において、スリーブ素材長さに切断され、内外形及び端部が加工されて、鋳包み用スリーブが形成される。
ステップS6におけるスリーブ3のシリンダ本体2aへの鋳包みは、スリーブ3を鋳包むシリンダダイカスト成形が実施される。この場合の鋳包みはスリーブ3を金型内に収容し、スリーブ内周の一部を支持部材で支えた状態で、金型とスリーブ外周との間の空隙に、所定のアルミニウム合金の溶湯を高圧で導くことにより行う。そしてシリンダブロック2の各部及びシリンダボアの機械加工が実施される。
スリーブの鋳包み前にスリーブ外周面に凹凸を形成することにより、運転中の母材とスリーブの熱膨張率の違いにより締め付け力が低下しても、スリーブの抜けを確実に防止できる。このようなスリーブ外周面の凹凸は、ビレットを押し出し成形する際に、押し出し速度と温度などの成形条件を調整することにより、人工的に微細なクラックを形成することができる。またショットブラストを用いることも可能である。ショットブラスト以外にも他の機械加工あるいはスリーブ全体の酸洗い(エッチング)等により形成することができる。また、ショットブラスト等によりスリーブ外周に凹凸を形成して母材との接合性を高める方法に代えて、低融点半田を用いてスリーブと母材とを接合しスリーブの抜け防止を図ってもよい。
ここでショットブラストとは、粒径が50〜150μmの鋼球、超硬ビーズ、ステンレス鋼球、亜鉛ビーズ、ガラスビーズや、粒径はもう少し大きい石英を多く含む川砂等を、投射機で、例えば40〜80m/sの投射速度でワークを投射するものを言う。
ステップS7において焼鈍が実施される。この焼鈍後のスリーブ3の硬度をロックウェル硬度(HRB)40以上となるように熱処理条件を調整する。
ステップS8におけるメッキ処理は、スリーブ内面のメッキであり、基本的には、脱脂処理、アルカリエッチング処理、混酸エッチング処理からなる前処理と、下地処理のアルマイト処理と、複合メッキ処理の5つの工程からなり、各工程の後に水洗処理が施される。
そして以上のメッキ処理(ステップS8)の後、ホーニング(ステップS9)でスリーブ内周面のメッキ層にホーニング仕上げを施し、メッキ皮膜の厚みを望ましくは約50μm、場合によっては20μm〜100μmとするとともに、メッキ層の面粗さを1.0μmRz以下にする。これにより、確実にメッキ層表面を滑らかにすることができてピストン4及びピストンリング4bの摺動時の摩擦係数を小さくすることができるとともに、エンジンオイルの保持性が向上し潤滑性を向上させることができる。なお、RzとはJIS規格のB0601に定められたものである。
この発明の実施の形態では、アルミニウム合金製のスリーブ3を、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体2aに鋳包んだ内燃機関用シリンダブロック2であるが、圧入、焼き嵌めによって配置しても良い。
従来のスリーブ基材には、溶製押し出し材が用いられ、この溶製押し出し材は比較的低いシリコン含有量をもち、熱膨張係数は周囲のシリンダ本体のアルミニウム鋳物材料と同等かそれ以下であり、このシリンダブロックを製造する際、スリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳込む際に、鋳物材が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがあり、さらに隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっている。
このようにシリコン(Si)含有量を15〜38重量%としたアルミニウム合金鋳物でスリーブ3を形成ることがスリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じさせないことで有効であるが、通常の鋳物材料では初晶Si粒が数10μm以上にもなってしまうため、表面にめっき層を形成しようとしても、密着性が悪く、加工時にめっき剥離を生じることがあるだけでなく、運転中にもめっき剥離を生じるなど充分な耐久性が得られない。
このためスリーブ3は平均粒径が20〜100μmのアルミニウム合金粉末を凝集固化して形成することで、このシリコン(Si)を平均粒径が2〜10μmの初晶シリコン(Si)としている。また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金には、前記したようにシリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数を15〜22(200℃にて)とし、シリンダ本体2aの線膨張係数より小さく(例えば、JISダイカスト用アルミニウム合金ADC12の線膨張係数20(200℃にて)と)し、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値にしている。
したがって、アルミニウム合金製のスリーブ3を、アルミニウム合金鋳造のシリンダ本体2aに鋳包む場合、スリーブ3の外周にシリンダ本体2a側の溶湯が取り囲み、スリーブ3が加熱されて熱膨張する一方、シリンダ本体2aが湯込め後次第に冷却されるに伴ってスリーブ3も冷却されて熱収縮し、シリンダ本体2a側の溶湯は、冷却凝固するとき収縮し、さらに温度が低下するに伴って熱収縮するが、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、シリンダ本体2a側の凝固収縮及び凝固後の熱収縮によるスリーブ締め付け力が緩和されず、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間に隙間が生じない。
また、スリーブ基材に、アルミニウム合金にシリコン(Si)を加えた化学組成をもつ急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いて押出加工により形成し、この押出加工条件、例えば押出速度、温度等を調整することによって中空丸棒、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行な連続した突起を形成する、あるいは及び、表面に深さ10μm〜1mmの微小クラックを一様に分布させ、または表面に深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%の微小クラックを一様に分布させ、スリーブに加工した後も外周表面に突起、あるいは及び微小クラックを残すようにすることで、シリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
また、運転状態においてもスリーブ3の温度は鋳包む時の温度(アルミニウム合金の溶融温度に近い値)より低くなるが(空冷、水冷がなされるので、100℃〜300℃程度)、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、スリーブ締め付け力が維持され、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間で隙間が発生することがなく、スリーブ内周の円筒度、真円度が維持され、スリーブ3円周表面からの熱は、メッキ層、スリーブ3本体内を経てシリンダ本体側へ良好に熱伝達されるのでホットスポットができにくく、ピストン4との焼き付きを防止することができる。
また、鋳造み完了後(常温状態)、所定のメッキを施し、ホーニング仕上げをしてスリーブ3内周の円筒度、真円度を上げて、シリンダブロック2にクランク軸やピストン等を組み付け、さらにシリンダヘッド6をボルト8により締結して内燃機関として組み立て完了した後、内燃機関を運転すると、スリーブ3が熱膨張し、この時シリンダヘッド6がボルト締結されるスリーブ外周のシリンダ本体2の複数のボルト穴回りは剛性が上がり、熱膨張に抵抗する一方、スリーブ外周のボルト穴の中間部となるシリンダ本体2aは熱膨張に対しての抵抗性は小さいが、シリコン(Si)を15〜35重量%含有させ、スリーブ3の線膨張係数をシリンダ本体2aの線膨張係数より少なくとも10%小さな値であり、スリーブ3が熱膨張が小さくてスリーブ内周の円筒度、真円度が維持され、ピストンリング4bによる燃焼室12とクランク室7との隔離性が向上し、オイル消費量の増大、燃焼ガスの吹き抜けによる燃費悪化、オイル劣化を防止することができる。
また、スリーブ3とシリンダ本体2aとの間に隙間が生じないようにすることができるだけでなく、メッキの密着性も確保することができる。これは、メッキの前処理であるアルカリエッチング工程において、シリコン(Si)粒径が2〜10μmと十分小さいために、Ni−Pメッキの析出が阻害されないためである。
このように発明では、スリーブ3を構成するアルミニウム合金にシリコン(Si)を含有させ、このシリコン(Si)を平均粒度が2〜10μmの初晶シリコン(Si)とし、スリーブ3の内周面にアルカリエッチング処理することで、スリーブ内周面のシリコン(Si)がアルカリエッチング処理で除去されて、スリーブ内周面に凹凸が形成され、しかもシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能で、凹凸によるアンカー効果があり、さらに結合面積の増加で熱伝達面積が増加し、メッキ層に加えられる燃焼ガスの熱を速やかに放熱可能で、メッキ層の剥離を起こしにくい。
また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜35重量%含有させることで、シリコン(Si)含有量が多く、かつシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、より微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能である。すなわち、スリーブ3内周表面からの熱は、メッキ層、スリーブ3本体を経て、シリンダ本体側へ良好に熱伝達されるので、スリーブ3表面にホットスポットができにくく、ピストン4との焼き付きを防止することができる。
また、この発明では、メッキ層を介して加わる燃焼圧力、ピストンリングの張力等により、メッキ層を支えるスリーブ材が降伏劣化し、メッキ層がスリーブ材から剥離する可能性があり、またシリンダヘッド締め付けによる剛性アップがあり、運転時の熱膨張がスリーブの円周方向の各部で均一になされないで、特に硬度が不足する場合は剛性が低く、シリンダヘッド締め付けボルト穴の中間部での熱膨張による変形が大きくなる等の問題があるが、スリーブを構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%と、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下を含有させ、スリーブはロックウェル硬度(HRB)40〜70とすることで、スリーブ3の降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
また、スリーブを構成するアルミニウム合金に、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)のいずれか少なくとも1つあるいは複数を合計で1.7〜8.3重量%含有させたから、スリーブの降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができる。
さらに、シリンダブロック2を製造する際、例えばスリーブ基材をアルミニウムダイカスト鋳物によって鋳包む際に、アルミニウムダイカスト鋳物が凝固する過程において、スリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じ、このために後工程における内径研削加工時の精度が悪化することがあり、さらに、隙間の存在は、熱伝導性が部分的に悪くなることから、スリーブの円筒度、真円度などの形状の悪化を招き、オイル消費の増大、性能の劣化の原因となっているが、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aを、シリコン(Si)を含有するアルミニウム合金で形成し、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aの線膨張係数の比を、16〜17:17〜18:20〜21とする。例えば、シリコン(Si)を含有量を調整し、スリーブ3、ピストン4、シリンダ本体2aのシリコン(Si)含有率の比を、25:17:12としてピストン4、スリーブ3、シリンダ本体2aの線膨張係数の比を、16:18:20とすることで、内燃機関を運転すると、ピストン4の熱膨張に伴うピストンクリアランスの変化を理想的な状態に保つことができ、これによって、ロス及び騒音の低減をはかることができ、出力性能を維持したまま、オイル消費量を低減することができる。
また、シリコン(Si)含有量を15〜38重量%としたアルミニウム合金鋳物を使用することがスリーブ基材とアルミニウム鋳物の間に隙間が生じさせないことで有効であるが、通常の鋳物材料では初晶Si粒が数10μm以上にもなってしまうため、表面にメッキ層を形成しようとしても、密着性が悪く、加工時にメッキ剥離を生じることがあるだけでなく、運転中にもメッキ剥離を生じるなど充分な耐久性が得られない。
このためスリーブ3は平均粒径が20〜100μmのアルミニウム合金粉末を凝集固化して形成することで、このシリコン(Si)を平均粒径が20μm以下の初晶シリコン(Si)としている。メッキの前処理であるアルカリエッチング工程において、シリコン(Si)粒径が20μm以下と十分小さいために、Ni−Pメッキの析出が阻害されない。このためメッキの密着性が確保することができる。
このように、スリーブ3を構成するアルミニウム合金にシリコン(Si)を含有させ、このシリコン(Si)を平均粒径が20μm以下の初晶シリコン(Si)とし、スリーブ3の内周面にアルカリエッチング処理することで、スリーブ内周面のシリコン(Si)がアルカリエッチング処理で除去されて、スリーブ内周面に凹凸が形成され、しかもシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能で、凹凸によるアンカー効果があり、さらに結合面積の増加で熱伝達面積が増加し、メッキ層に加えられる燃焼ガスの熱を速やかに放熱可能で、メッキ層の剥離を起こしにくい。
また、スリーブ3を構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させることで、シリコン(Si)含有量が多く、かつシリコン(Si)粒子の平均粒径は小さいので、より微細な凹凸を緻密に形成でき、スリーブ内周面とメッキ層との結合面積が増加し結合性のより一層の向上が可能である。
また特に、メッキ層を支持するスリーブ3はステップS3の真空焼結時の加圧加熱条件及充分に各粉未が結合した後の冷却条件、あるいはステップS4の加熱・熱間押し出しにおける温度環境及び押し出しにおける縮径率、金型の押し出し口形状、押し出し後の冷却条件、あるいは鋳包む時におけるスリーブ温度管理(加熱、保温、あるいは冷却等)条件、あるいは焼鈍条件等を設定することにより、鋳包み状態でロックウェル硬度(HRB)40〜70とする。このことにより、爆発圧力やピストンピンの張力がメッキ層を介してスリーブ3に作用しても、スリーブ3のメッキ層支持部は塑性変形することがないので、メッキ層の剥離を起こしにくい。すなわち、メッキ層が脱落してスリーブ3が異常磨耗するようなエンジンの耐久性に悪影響するようなことを防止できる。
実施例としては、スリーブ基材に、JIS2000系またはJIS6000系の基本化学成分に25重量%のシリコン(Si)を加えた化学組成をもつ急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いるときの製造工程を、図4の工程によって製造した。
このJIS2000系をベースとし過共晶組成となる量のシリコン(Si)を加えたアルミニウム合金の急冷凝固粉末は、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.5重量%以下、銅(Cu)を1.5〜6.8重量%、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下、マンガン(Mn)を0.2〜1.2重量%、クロム(Cr)を0.1重量%以下、亜鉛(Zn)0.3重量%以下、チタン(Ti)0.2重量%以下とした。
このJIS6000系をベースとし過共晶組成となる量のシリコン(Si)を加えたアルミニウム合金の急冷凝固粉末は、アルミニウム(Al)を基材とし、全体中に、シリコン(Si)を15〜38重量%、鉄(Fe)を1.0重量%以下、銅(Cu)を0.4重量%以下、マグネシウム(Mg)を0.35〜1.5重量%以下、マンガン(Mn)を0.8重量%以下、クロム(Cr)を0.35重量%以下、亜鉛(Zn)0.25重量%以下、チタン(Ti)0.15重量%以下とした。
実施例1は、JIS6000系で6061−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
実施例2は、JIS6000系で6061+2〜4Fe−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
実施例3は、JIS2000系で2017または2024−25Si急冷凝固粉末固化押し出し材をスリーブ基材として、この内面にNi−P−SiC分散複合メッキを施した。
この実施例では、オイル消費量低減はシリンダ変形の改善であり、これに鋳込み後スリーブ密着を改善することに着目した。スリーブ密着の改善には、低線膨張係数スリーブ材へ変更することに着目し、通常の低線膨張係数材は鉄系から軽量、熱伝達良好材の選定を行ない、アルミニウム複合材とした。
このスリーブ材の物性、機械的性質を比較して表1に示し、低線膨張係数アルミニウムを基材とし、内表面に硬質皮膜を形成したスリーブであり、表1に示すようにスリーブ基材の線膨張係数αを12Si−3Cuのアルミニウム合金材、シリンダ本体ADC12と比較して低減した。鋳包み材であるシリンダ本体ADC12の線膨張係数との比率は0.85であり、スリーブの鋳込み時の締め付け変形が改善された。
また、250℃×1時間の加熱後除冷する焼鈍により鋳包み時の界面隙間が表2に示すように減少する。スリーブの円周方向に8箇所でスリーブとシリンダ本体との界面隙間を測定した。ボアNo4のものは異常として金型冷却を停止する。
鋳包み時の界面隙間が減少すると、表1に示すように、ライナー基材のヤング率が向上し、ホーニング後のシリンダの真円度、円筒度が改善され、ピストンリングの追従性、シール性が改善される。
また、鋳包み時の界面隙間が減少すると、熱伝達性の均一化と改善が行なわれ、運転中の局部変形の改善が可能になり、ホーニング後のシリンダの真円度、円筒度が改善され、ピストンリングの追従性、シール性が改善され、オイル消費の改善された。
前記実施例1乃至実施例3において、急冷凝固粉末固化押し出し形成材料を用いて押出加工し、この押出加工条件、例えば押出速度、温度等を調整することによって、図5に示すように、スリーブ基材の外表面に、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行な連続した突起100を形成すると共に、表面に深さ10μm〜1mmの微小クラック101を一様に分布させた。
図6はスリーブ表面き烈深さとスリーブ強度及び界面隙間の関係を示す図であり、表面に深さ10μm〜1mmがスリーブ強度が大きく、界面隙間を小さくすることができ烈深さの最適範囲であり、この深さ10μm〜1mmの微小クラック101を一様に分布させることで、鋳物のシリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
また、表面に深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%がスリーブ強度が大きく、界面隙間を小さくすることができ烈深さの最適範囲であり、この深さ10μm〜最大でスリーブ基材厚さの20%の微小クラック101を一様に分布させることで、鋳物のシリンダ本体2aとの接合を強固にし、かつ熱の伝達を均一にすることができる。
前記実施例1乃至実施例3において、リン及び共析物を含むニッケル系の分散メッキを高速で行ない、ニッケル(Ni)−リン(P)−シリコンカーバイト(SiC)の分散メッキを高速で行うものであるが、このNi−P−SiC分散メッキは、次のような性質を有する。
スリーブ3の内周面にNi−P−SiC分散メッキを施した場合に、スリーブ3の内周面に、図7に示すようなNi−Pマトリックス51及びSiCの共析粒子52を含むメッキ膜50が形成される。このメッキ膜50の表面には、潤滑のためにホーニング目からなるオイルポケット53が形成される(図7(a))が、さらに、運転によるピストン5の摺動が繰り返されると、図7(b)のように、硬いシリコンカーバイト(SiC)の共析粒子52は残つてNi−Pマトリックス51が摩耗することにより、新たなオイルポケット54が生じる。従つて、長期間にわたつてオイル潤滑を良好に行わせることができる。
また、温度とメッキ硬度との関係を、上記のNi−P−SiC分散メッキと、Ni−SiC分散メッキと、ハードクロムメッキとについて調べると、Ni−P−SiC分散メッキは、とくに350℃程度で熱処理すれば、ハードクロムメッキよりも硬度が高く、リン(P)を含まないNi−SiC分散メッキと比べると硬度が大幅に高められる。このことから、リンを含有させることで熱処理後の硬度が高められることがわかる。
この実施例では、板状試験片にメッキを施したものについてやすり試験、ドリル孔あけ試験、加熱急冷試験等によりメッキの密着性を評価したところ、溶製材に比べ明らかに密着性が向上していることが確認された。また、内燃機関の耐久試験を行なったところ、出力性能を維持したまま、オイル消費量が、従来の約1/2に低減することが確認され、メッキ剥離等のトラブルはまったく発生しなかった。
産業上の利用可能性
以上のように、スリーブをシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備える内燃機関において、ピストンとの焼き付きを防止し、また燃費悪化、オイル劣化を防止することができた。また、スリーブ材が降伏劣化を防止すると共に、剛性が向上し、かつ熱膨張による変形が軽減することができた。さらに、内燃機関の出力性能を維持したまま、オイル消費量の低減を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
図1はスリーブが乾式構造の水冷式4サイクル内燃機関の断面図である。
図2は図1のII−II線に沿う断面図である。
図3はスリーブが湿式構造の水冷式4サイクル内燃機関の断面図である。
図4は内燃機関用シリンダブロックの製造工程を示す図である。
図5はスリーブ基材の外表面の状態を示す図である。
図6はスリーブ表面き烈深さとスリーブ強度及び界面隙間の関係を示す図である。
図7はNi−P−SiC分散複合メッキを示す図である。
Claims (10)
- アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体に鋳包んだ内燃機関用のシリンダブロックであり、
前記スリーブの線膨張係数をシリンダ本体の線膨拡係数より小さくしたことを特徴とする内燃機関。 - 前記スリーブの線膨張係数をシリンダ本体の線膨張係数より少なくとも10%小さな値にしたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
- 前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、シリコン(Si)を15〜38重量%含有させたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の内燃機関。
- 前記シリコン(Si)を平均粒径が2〜10μmの初晶シリコン(Si)としたことを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
- 前記スリーブを平均粒径が20〜100μmのアルミニウム含金粉末を凝集固化して形成したことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の内燃機関。
- アルミニウム合金製のスリーブを、アルミニウム合金鋳造製のシリンダ本体内に配置して構成したシリンダブロックを備え、このシリンダブロックのシリンダ内にピストンを往復動可能に収納した内燃機関であり、
前記ピストン、スリーブ、シリンダ本体の線膨張係数を、スリーブ<ピストン<シリンダ本体としたことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の内燃機関。 - 前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、マグネシウム(Mg)を1.8重量%以下を含有させ、前記スリーブはロックウェル硬度(HRB)40〜70であることを特徴とする請求項3項乃至請求項6のいずれか1項に記載の内燃機関。
- 前記スリーブを構成するアルミニウム合金に、銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)のいずれか少なくとも1つあるいは複数を合計で1.7〜8.3重量%含有させたことを特徴とする請求項7に記載の内燃機関。
- 前記スリーブの内周面にアルカリエッチング処理をした後、メッキを施したことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の内燃機関。
- 前記スリーブの基材外表面に、高さ0.1〜2mmの長さ方向に平行が連続した突起を形成すると共に、表面に深さ10μm〜最大でスリーブの基材厚さの20%の微小クラックを一様に分布させたことを特徴とする請求項5乃至請求項9のいずれか1項に記載の内燃機関。
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