JPS648215B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は自動車用デイスクブレーキに用いるパ
ツドの改良に関し、主に鳴き性能の向上を目的と
したものである。 自動車の高速化、混雑状態でのブレーキ使用頻
度の増大、ブレーキ機構の軽量化によつてデイス
クブレーキ用パツドは従来に比べ極めて高い性能
水準を要求されるようになつて来ている。デイス
クブレーキ用パツドとして要求される主な性能
は、(1)摩擦係数（μ）が高く安定していること、
(2)摩耗が少ないこと、(3)ペダルストロークの関係
で圧縮変形量が少ないこと、(4)鳴きがないことが
挙げられるが、これらの性能の改良は相反するた
め全ての性能を改良することは従来非常な困難が
あつた。なかでも鳴き性能を向上させることは難
かしく他の３つの性能の大巾な低下なくしては改
良ができなかつた。 すなわち、鳴き性能を改良すれば圧縮変形量や
摩擦が大巾に増大したり摩擦係数が大きく低下し
た。 そこで発明者らは他の３つの性能を損なわない
で、鳴き性能の改良を試みるためデイスクブレー
キ用パツドとして必要な特性とパツド材の充填率
との関係を研究した結果パツド内の気孔率がこれ
ら４つの性能を大きく支配していることを見いだ
し、気孔率の大きい層を摩擦面の中央に気孔率の
小さい層を摩擦面の周辺にして、摩擦面がデイス
クロータ側からパツクプレート側に移動するに従
つて気孔率の大きい層の摩擦面積が減少する様な
構造をとることによつて、摩擦係数や摩耗量、圧
縮変形量を低下させないで鳴き性能を改良できる
ことを見いだした。 本発明者らが研究実験した結果得たデイスクブ
レーキ用パツドとして必要な特性とパツド材との
関係は第１図ａ，ｂ，ｃ，ｄのようになつた。こ
れは強化繊維としてアスベストはもちろんガラス
繊維、スチール繊維、カーボン繊維等に関して同
様な結果となつた。また結合剤樹脂としてフエノ
ール樹脂、ポリイミド樹脂等を用いて実験しても
ほぼ同様の結果となつた。また充填剤として、樹
脂硬化粉末、無機物粉末、金属粉、グラフアイト
等の量を増減して実験しても絶対値は変化したが
気孔率のデイスクブレーキとして必要な４つの性
能との関係は変らなかつた。すなわち、気孔率を
減少すると、摩擦係数はやや低下するにとどまる
が、摩耗量は減少し圧縮変形量は小さくなりまた
鳴き性能は悪化した。また従来より鳴きはデイス
クブレーキ用パツド装着初期に鳴きやすく、使い
込んでいくと鳴き難くなることがわかつている。
これはデイスクブレーキ用パツド使用初期におい
てはパツド中に樹脂の未反応物がまだ多く含まれ
ているためそれが鳴きの原因となるが、使い込ん
でいくと樹脂の未反応物が硬化したり飛散するた
め鳴かなくなると考えられている。 そこで本発明者らは第２図に示すように気孔率
の大きい層を摩擦面の中央に気孔率の小さい層を
摩擦面の周辺にして摩擦面がデイスクロータ側か
らバツクプレート側に移動するにしたがつて気孔
率の大きい層の摩擦面積が減少していくような構
造を考案した。 このような構造にすることにより摺動摩擦中高
温になりやすいパツド中央部は気孔率が大きいの
で、鳴きを少なくすることができ、また摩耗量も
抑えることができる。また圧縮変形量は全体の厚
さとして大きくならなかつた。また摩擦係数とし
ては使用中において少しの変化、すなわち肉厚が
減少してくると低下する傾向は認められたが、そ
の変化量は極く小さくほとんど問題とならなかつ
た。 また、気孔率の小さいパツド部は接強度が大き
いため鉄製のバツクプレート側にこの部分がある
とパツクプレートとの接着強度が従来品より大き
くなり安全上非常な改良となつた。 本発明は気孔率の大きい層が摩擦面の中央部に
あり、気孔率の小さい層が摩擦面の周辺にあり摩
擦面がデイスクロータ側からバツクプレート側に
移動するにしたがつて気孔率の大きい層の摩擦面
積が減少していくような構造をとれば効果がある
ので気孔率の大きい層の形状は別に色々と変える
ことが可能である。たとえば台錐体（円錐体、多
角錐体を水平に頭部を切りはなしたもの）、直方
体形段々状の台錐体などにすればよい。 また、摩擦面中央部の気孔率の大きい層の気孔
率は25vol％から10vol％が最も鳴きに対して効果
があつた。これが25vol％を越えると摩耗が急激

【表】 表―１に示すように従来の空隙率が一定のパツ
ドは装着初期に鳴きが発生したが、実施例のパツ
ドは初期、後期にわたつて鳴かなかつた。また摩
擦係数は実施例において摺動初期には0.45、後期
には0.40と少し変化したが実用性能上何ら問題と
ならなかつた。また全厚が摩耗する回数も従来よ
り改良された。圧縮変形量は従来と同等の値であ
つた。 以上のように本発明は鳴き性能の改良を他の性
能を損なうことなく実現することができた。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ，ｂ，ｃ，ｄは気孔率と摩擦係数、摩
耗量、圧縮変形量、鳴き係数との関係を示すグラ
フである。第２図は本発明のデイスクブレーキ用
パツドの実施例の構造説明図、第３図ａ，ｂは本
発明のデイスクブレーキ用パツドの実施例の平面
図及び断面図である。第４図は本発明のデイスク
ブレーキ用パツドを成形する方法を示す説明図で
ある。 符号の説明、１……気孔率の小の層、２……気
孔率の大の層、３……バツクプレート。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 気孔率の大きな層が摩擦面の中央にあり、気
   孔率の小さな層が摩擦面の周辺にあり摩擦面がデ
   イスクロータ側からバツクプレート側に移動する
   にしたがつて気孔率の大きい層の摩擦面積が減少
   するようにしたことを特徴とするデイスクブレー
   キ用パツド。 ２ 気孔率の大きな層の気孔率が25vol％〜3vol
   ％で、気孔率の小さな層の気孔率が15vol％〜
   3vol％である特許請求の範囲第１項記載のデイス
   クブレーキ用パツド。