JPS645064Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［考案の技術分野］ 本考案は、内燃機関のシリンダヘツド構造に係
り、シリンダの開口部に臨んでこれを覆い吸排気
弁を着座させるバルブシート等を形成する部分を
セラミツクスにより成型することを可能にした内
燃機関のシリンダヘツド構造に関するものであ
る。

［考案の技術的背景とその問題点］ 近年、内燃機関の断熱性を可及的に向上させる
ために、燃焼室を形成するシリンダブロツク及び
シリンダヘツドをセラミツクスにより成型するこ
とが提案されている。ところでセラミツク材料は
高いヤング率を有し、変形しにくい性質を有して
いるために、シリンダヘツドにあつては全体を加
工性の優れた鋳鉄等により成型し、シリンダの開
口部を覆うシリンダヘツド下面のみにセラミツク
部材を設けることが考えられるに至つている。具
体的には鋳鉄製のシリンダヘツドの下面、即ちシ
リンダ開口部を実質的に覆う部分に受溝を形成
し、この受溝内に上記シリンダ開口部を覆うよう
にセラミツク部材を焼ばめあるいは圧入などによ
り部分的に取り付けることが考えられる。しかし
ながら、前述した通り、セラミツク材料は高いヤ
ング率を有すると共に変形しにくい性質を有する
ために、セラミツク部材以外のシリンダヘツド部
分が熱変形あるいは機械的な変形をすることにな
り、これにセラミツク部材が対応できず局部的な
応力集中を起しやすく割れを発生する原因とな
る。特にシリンダヘツドの開口部を実質的に覆う
セラミツク部材には吸排気弁を着座させるための
バルブシートを形成しなければならず、バルブシ
ートを有するセラミツク部材をシリンダヘツドに
取り付ける時に、少しでも芯がずれると吸排気弁
との接触がうまくいかず、そこから破損を招く問
題があり、シリンダヘツドに燃焼室を形成するシ
リンダの開口部を覆うようにセラミツク層を形成
することが不可能であるとされていた。尚、関連
する技術として、「エンジンのシリンダヘツド取
付構造」（実開昭56−35533号公報）が提案されて
いる。

［考案の目的］ 本考案の目的は、鋳鉄製のシリンダヘツドに、
これの熱変形あるいは機械的変形に影響を受ける
ことなく、シリンダの開口部を実質的に覆うよう
にセラミツク層を形成でき、しかもシリンダ内に
臨んだ吸排気弁との芯合せが容易に行なえる内燃
機関のシリンダヘツド構造を提供することであ
る。

［考案の概要］ 上記目的を達成すべく、本考案は、シリンダヘ
ツドにシリンダ開口部に臨んで形成された受溝
と、該受溝内に嵌合され、上記開口部を断熱して
覆うべくセラミツク材で成型され少くとも上記シ
リンダヘツドに形成される吸排気通路に連通する
バルブ孔を有するシリンダヘツド端部材と、該シ
リンダヘツド端部材のバルブ孔に嵌装され吸排気
弁を着座させるようにセラミツク材により成型さ
れたバルブシート部材とを備えてなり、吸排気弁
との芯合せを正確に行うセラミツクス製のバルブ
シート部材と、鋳鉄製のシリンダヘツドの受溝に
嵌合してシリンダ開口部を断熱するセラミツクス
製のシリンダヘツド端部材とを別個に形成するこ
とで、吸排気弁との接触すり合せが良好に行え、
しかも受溝に対しては比較的ルーズにシリンダヘ
ツド端部材を嵌め込めるようにしてシリンダヘツ
ドの熱的及び機械的変形に対してシリンダヘツド
端部材が何等影響を受けないように構成したもの
である。

［考案の実施例］ 以下、本考案に係る内燃機関のシリンダヘツド
構造の好適一実施例を添付図面に基づいて説明す
る。

第１図に示す如く、鋳鉄等の金属により、シリ
ンダヘツド本体１は成型され、このシリンダヘツ
ド本体１は、シリンダ２ａの開口部２ｂを区画す
るシリンダブロツク２上にガスケツト３を介して
載置されて接合されるよう設けられる。

このシリンダブロツク２によつて区画形成され
たシリンダ２ａ内にはシリンダヘツド１に臨んで
開口された燃焼室４を有するピストン５が昇降摺
動自在に嵌装されている。

シリンダヘツド１には、シリンダ２ａ内に燃料
を噴射する燃料噴射ノズル６が設けられ、また図
では１つにまとめて示したが、吸気または排気用
の吸排気通路７が形成される。またシリンダヘツ
ド１にはシリンダ２ａ内に臨む吸排気弁８が設け
られ、吸排気弁８の弁軸９が吸排気通路７を通し
てシリンダヘツド１に設けたガイド管１０に摺動
自在に設けられる。

シリンダヘツド１は、上記シリンダ２ａの開口
部２ｂを覆うよう形成され、その下面にはシリン
ダ２ａの内径より大きな径を有する凹状の受溝１
２が形成される。この受溝１２内には開口部２ｂ
を実質的に覆うように開口部２ｂの内径より大き
な外径を有する円盤状のセラミツクス製のシリン
ダヘツド端部材１１が嵌合される。この受溝１２
の底部１３には吸排気通路７が開口し、その開口
部を拡大し、且つガイド管１０と同軸心になるよ
うな段状のバルブシート位置決め穴１４が設けら
れる。位置決め穴１４には、シリンダヘツド端部
材１１より耐摩耗性を有するセラミツクス製の筒
状のバルブシート部材１５の上部の接合端部１８
が嵌め込まれる。バルブシート部材１５は、その
内周に吸排気通路７と連通する吸排気孔１６が設
けられ、下端内周には、吸排気弁８を着座するた
めのバルブシート１７が形成される。筒状のバル
ブシート部材１５の筒部１９は、吸排気通路７と
連通するよう設けられたシリンダヘツド端部材１
１のバルブ孔２０に嵌合され、その上部の接合端
部１８はフランジ状に形成されてバルブ孔２０の
シリンダヘツド１側の開口部上縁に係合される。

シリンダヘツド端部材１１には、シリンダヘツ
ド１１に予め設けられた燃料噴射ノズル６を、燃
焼室３に臨ませて挿通させるべく挿入孔２１が設
けられる。

バルブシート部材１５及びシリンダヘツド端部
材１１の取り付けにおいて、先ずバルブシート部
材１５の接合端部１８を位置決め穴１４に嵌入す
る。この場合バルブシート部材１５は、そのバル
ブシート１７と吸排気弁８との芯合せと接触度合
を調べながら挿入する。バルブシート１７と給排
気弁８との接触すり合せが良好でない場合は、適
宜、接触面をダイヤモンド砥粒で研磨しながら接
触面を調整する。

バルブシート部材１５を嵌め込んだのち、受溝
１２の底部１３にガスケツト２２を敷設し、シリ
ンダヘツド端部材１１を受溝１２内に嵌合する。
この場合シリンダヘツド端部材１１は、給排気弁
８と直接接触していないため、正確な位置決めは
必要とせず、シリンダ２ａの開口部２ｂを覆つて
シリンダ２ａを断熱すればよいので、受溝１２と
はややすき間をもつてルーズに嵌め込める。これ
によりシリンダヘツド１の熱的変形や機械的変形
に対して直接その変形による応力がシリンダヘツ
ド端部材１１に伝わらないようになり、応力集中
による割れを防止できる。

バルブシート部材１５の材質としてはセラミツ
クスの中でも弾性があり、且つ耐摩耗性、耐衝撃
性のある部分安定化ジルコニアが使用でき、また
シリンダヘツド端部材としては、断熱性を考慮
し、シリコンナイトライド，窒化硅素などを使用
する。

［変形実施例］ 第２図は本考案の変形実施例を示すもので、図
示の如くバルブシート位置決め穴１４にはガスケ
ツト２３が敷設されたのち、バルブシート部材１
５が嵌め込まれ、またバルブシート部材１５のフ
ランジ状の接合端部１８の下面に環状のガスケツ
ト２４が設けられたのち、シリンダヘツド端部材
１１が嵌装される。この場合受け溝１２の底部１
３とシリンダヘツド端部材１１との間には、必ず
しもガスケツトを設ける必要がなく、図示のよう
な空間２５を形成して空気で断熱するよう構成し
てもよい。

［考案の効果］ 以上詳述してきたことから明らかなように本考
案によれば次の如き優れた効果を発揮する。

(1) セラミツク製でバルブシート部材とシリンダ
ヘツド端部材とを別個に形成したので吸排気弁
との芯合せが容易に行え、しかも鋳鉄等の金属
製のシリンダヘツドに、シリンダの開口部を覆
つて内燃機関の燃焼室を区画形成するセラミツ
ク層を形成することができ、その部分の断熱性
を可及的に高めることができる。

(2) シリンダヘツド端部材は吸排気弁との位置決
めを考慮する必要がないので、シリンダヘツド
下面の受溝にルーズな状態で嵌合でき、シリン
ダヘツドの熱変形や機械的変形に対して直接そ
の応力が伝わらないため、応力集中によるセラ
ミツクスの割れを防止でき、その耐久性を可及
的に向上させることができる。

(3) バルブシート部材とシリンダヘツド端部材と
を別個に形成することにより、バルブシート部
材は耐衝撃性に富む材質を、シリンダヘツド端
部材は断熱性に富む材質を自由に選択すること
ができ、そのセラミツクスの材料の選択の自由
度が大きくなる。

(4) セラミツク層と金属製シリンダヘツド部分を
完全に断熱し得、断熱性をさらに向上させるこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る内燃機関のシリンダヘツ
ド構造の一実施例を示す断面図、第２図は本考案
に係る内燃機関のシリンダヘツド構造の他の実施
例を示す要部断面図である。 図中、１はシリンダヘツド、２はシリンダブロ
ツク、８は吸排気弁、１１はシリンダヘツド端部
材、１２は受溝、１５はバルブシート部材、１７
はバルブシートである。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) シリンダヘツドにシリンダの開口部に臨んで
   形成された受溝と、該受溝内に嵌合され、上記
   開口部を断熱して覆うべくセラミツク材で成型
   され少くとも上記シリンダヘツドに形成される
   吸排気通路に連通するバルブ孔を有するシリン
   ダヘツド端部材と、該シリンダヘツド端部材の
   バルブ孔に嵌装され吸排気弁を着座させるよう
   にセラミツク材により成型されたバルブシート
   部材とを備えたことを特徴とする内燃機関のシ
   リンダヘツド構造。 (2) 上記受溝が、上記シリンダの開口部の内径よ
   り大きな径を有して形成されると共に上記シリ
   ンダヘツド端部材が、上記開口部を区画形成す
   るシリンダブロツクの上端部上にその周縁部が
   着座するように形成された上記実用新案登録請
   求の範囲第１項記載の内燃機関のシリンダヘツ
   ド構造。 (3) 上記シリンダヘツド端部材がセラミツク材に
   より円盤状に形成された上記実用新案登録請求
   の範囲第１項又は第２項に記載の内燃機関のシ
   リンダヘツド構造。 (4) 上記バルブシート部材が、上記シリンダヘツ
   ド端部材より耐摩耗性を有するセラミツク材に
   より成型された上記実用新案登録請求の範囲第
   １項乃至第３項いずれかに記載の内燃機関のシ
   リンダヘツド構造。 (5) 上記受溝が、上記シリンダヘツドに形成され
   る吸排気通路の開口部を拡大して上記バルブシ
   ート部材の接合端部を係合させてこれに芯出し
   をさせるための位置決め穴を有する上記実用新
   案登録請求の範囲第１項乃至第４項いずれかに
   記載の内燃機関のシリンダヘツド構造。 (6) 上記バルブシート部材が上記受溝の位置決め
   穴に係合すると共に、上記シリンダヘツド端部
   材に形成されるハルブ孔のシリンダヘツド側開
   口部上縁に係合するフランジ状の接合端部を有
   した上記実用新案登録請求の範囲第１項乃至第
   ５項いずれかに記載の内燃機関のシリンダヘツ
   ド構造。