JPS644841Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 Ａ 産業上の利用分野 この考案は、時計ケース、時計バンド、メガネ
フレーム、装身具等に使用する外装部品に関す
る。

Ｂ 考案の概要 この考案は、時計ケース、時計バンド、メガネ
フレーム、装身具等の外装部品において、基材を
金属、セラミツク、プラスチツク等の耐熱性基材
とし、その表面上に全面または一部に金色を有す
る窒化チタンを主成分とする層、金色を有する窒
化ジルコニウムを主成分とする層、さらに最外層
に金または金合金層を順次形成することにより、
三層構造からなる被膜を有する外装部品、とくに
金色外装部品に関するものである。

Ｃ 従来の技術 従来、金色外装部品として、金または金合金材
そのものや、そのめつき品が使われてきたが、近
年、物理蒸着法とよばれる気相めつき法が発達し
窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル等
の金色を有する非常に高い耐摩耗性を有する超硬
化合物被膜が開発され、外装部品についても広く
使われ始めている。また、この窒化チタン被膜の
特性と金の持つ特性をあわせた金色外装部品とし
て窒化チタン被膜を下地層として、その上に金や
金合金被膜を形成した金色外装部品も作られるよ
うになつてきた。例えば、特開昭50−139037号公
報や特公昭59−26664号公報にこのような外装部
品が開示されている。

Ｄ 考案が解決しようとする問題点 しかし、従来の金ムク材では高価な金を使うた
めコスト高となり、金めつきについても耐摩耗
性、耐食性等機能面においていくつかの問題があ
るため、かなりの膜厚（10μm程度以上）を必要
とするため、結果としてコスト高になつていた。
また窒化チタン被膜では、金に比べ緑色かつ暗さ
があり質感で劣るという欠点を有していた。さら
に窒化チタン被膜以外では窒化ジルコニウム、窒
化タンタル等の被膜が窒化チタン被膜に比べ質感
のある金色を有しているものの、やはり金に比べ
劣つたものであり、さらに、これらの被膜を形成
するに当り窒化チタン被膜形成に比べその被膜形
成速度が非常に遅いため同程度の性能を有する膜
厚を得るためには処理時間が長いため、結果とし
て歩留りの低下やコスト高をまねくこととなりほ
とんど実用化されていなかつた。

窒化チタン被膜上へ金や金合金被膜を形成した
ものでは、金や金合金層が摩耗した場合、下層の
窒化チタン層が現われ、その緑色味や暗さによる
金との色調の違いが不快感を与えてしまうという
欠点を持つていた。

そこで、この考案は従来のこのような欠点、問
題点を解決するため、低コストでかつ摩耗に対す
る色調変化をできるかぎり小さくした金色を有す
る外装部品を得ることを目的としている。

Ｅ 問題点を解決するための手段 上記問題を解決するために、この考案は、まず
金属等耐熱基材でできた外装部品上イオンブレー
テイング、スパツタリング等の物理蒸着法または
熱化学反応やプラズマ等を利用した化学蒸着法に
より金色を有する窒化チタンや炭窒化チタンをは
じめとする窒化チタンを主成分とした被膜を形成
し、さらにその上に、より金や金合金の色調に近
い窒化ジルコニウムや炭窒化ジルコニウムをはじ
めとする窒化ジルコニウムを主成分とする被膜を
同様な方法で形成した後、真空蒸着、イオンプレ
ーテイング、スパツタリング等の気相めつき法ま
たは電気めつき、無電解めつき等の湿式めつき法
により金または金合金被膜を形成することによ
り、三層の被膜構造の金色の外装部品を得るもの
である。

Ｆ 作用 上記のように金色被膜を形成した外装部品は、
最上層である金または金合金被膜がたとえ部分的
に摩耗しても中間層である窒化ジルコニウムを主
成分とする金色被膜が極めて最上層の金や金合金
被膜に近い色調であるため不快感を与えることが
少ないのである。この窒化ジルコニウム系被膜は
耐摩耗性の高い超硬被膜ではあるがその被膜形成
速度が小さい、そこで被膜形成速度の大きい窒化
チタンを主成分とする被膜を最下層に形成するこ
とにより全体の膜厚を厚くし、耐摩耗性の他、耐
食性、耐擦傷性等の機能の向上が図られるのであ
る。

Ｇ 実施例 第１図は、この考案にかかわる外装部品の代表
的な例である腕時計ケースの断面図である。１は
金属または耐熱基材からなる腕時計ケース、２は
金色を有する窒化チタンを主成分とする被膜、３
は金色を有する窒化ジルコニウムを主成分とする
被膜、４は金または金合金被膜である。以下に第
１図の構成からなるこの考案に関して、腕時計ケ
ースを例にあげ実施例に基づいて説明する。

実施例 １ ステンレス鋼製の腕時計ケースを有機溶剤及び
酸、アルカリで洗浄した後、活性反応蒸着方式と
よばれるイオンプレーテイング装置内に備えられ
た治具にセツトし、５×10^-5Torrまで真空排気
した後、窒素分圧１×10^-3Torrの雰囲気の状態
でチタンを電子ビームにより加熱蒸発し具備され
たイオンブレーテイング機構により放電プラズマ
を形成し、セツトされている腕時計ケース上に金
色を有する窒化チタン被膜を約0.05ミクロン／分
の被膜形成速度で約１ミクロン形成した。次いで
同一装置内に別に備えられた電子ビーム蒸発装置
よりジルコニウムを蒸発し、窒素分圧５×
10^-4Torrの雰囲気でイオンブレーテイングを行
い金色を有する窒化ジルコニウムを約0.01ミクロ
ン／分の被膜形成速度で約0.1ミクロン形成した。
さらにその後、ニツケルを重量比で３％含有した
金を別の電子ビーム蒸発装置により蒸発し、金−
ニツケル合金被膜を約0.05ミクロン形成したとこ
ろ、腕時計ケースは、いわゆるハミルトンゴール
ドと呼ばれる腕時計で一般に使われる金色を有し
たものとなつていた。

この試料を牛皮摺動摩耗テストを荷重500ｇで
５万回行つたところ一部で最上層の金−ニツケル
合金が摩耗したものの中間層の窒化ジルコニウム
は全く摩耗せず、ほとんど色調変化を生じなく人
の目に対しても不快感を与えることはなかつた。
また、試料は５％塩水噴霧テスト48時間に対して
も何ら変化を生ぜず、耐食性も極めて良好である
ことが確認された。

〔実施例 ２〕 ステンレス鋼製の腕時計ケースを実施例１と同
様、洗浄後イオンブレーテイング装置内にセツト
し、５×10^-5Torrまで真空排気した後、窒素分
圧1.5×10^-3Torr、アセチレン分圧２×10^-4Torr
の雰囲気でチタンを電子ビームで蒸発し、イオン
ブレーテイング機構により、放電プラズマを形成
しイオンブレーテイングを行い腕時計ケース上に
金色を有する炭窒化チタン被膜を約0.05ミクロ
ン／分の被膜形成速度で約１ミクロン形成した。
次に別の電子ビーム蒸発装置によりジルコニウム
を蒸発し、窒素分圧５×10^-4Torr、アセチレン
分圧１×10^-4Torrの雰囲気でイオンブレーテイ
ングを行い。金色を有する炭窒化ジルコニウムを
約0.01ミクロン／分の被膜形成速度で約0.05ミク
ロン形成した。さらにその後、別の電子ビーム蒸
発装置によりコバルトを蒸発し、炭窒化ジルコニ
ウム被膜上に約0.01ミクロンのコバルト被膜を形
成した。この後、試料をイオンブレーテイング装
置より取出し、湿式めつき法により純金めつきを
約0.05ミクロン形成し、非酸化性雰囲気中で500
℃、30分間の熱処理を行つたところ、コバルトと
金は相互拡散をし、ほぼ均一な合金となり、実施
例１と同様、ハミルトンゴールド色となつた。

この試料を牛皮摺動摩耗テストを荷重500ｇで
５万回行つたところ一部で最上層の金−コバルト
合金層が摩耗したものの中間層の炭窒化ジルコニ
ウムに全く摩耗せず、色調の変化もほとんど生じ
なかつた。また、炭窒化ジルコニウムと湿式めつ
き法による純金めつきの間に形成したコバルト層
は熱処理により完全に金と合金を作つており、コ
バルトの色調も現れることもなかつた。耐食性に
ついても５％塩水噴霧テスト48時間によつても変
化を生ぜず良好なものであつた。

〔実施例 ３〕 黄銅製の腕時計ケースにニツケルめつきを
2μm、ニツケル−パラジウム合金めつきを1μm湿
式めつきにより形成した後、イオンブレーテイン
グ装置内に備えられた治具にセツトし、５×
10^-5Torrまで真空排気した後、窒素分圧２×
10^-3Torr、アセチレン分圧１×10^-4Torrの雰囲
気の状態でチタンを電子ビームにより加熱蒸発
し、イオンブレーテイング機構により放電ブラズ
マを形成し、上記めつきを施こした腕時計ケース
上に金色を有する炭窒化チタン被膜を約0.1ミク
ロン／分の被膜形成速度で約0.5ミクロン形成し
た。次いで、同一装置内に別に備えられた電子ビ
ーム蒸発装置によりジルコニウムを蒸発し、窒素
分圧７×10^-4Torr、アセチレン雰囲気５×
10^-5Torrの雰囲気で同様にイオンブレーテイン
グを行い金色を有する炭窒化ジルコニウム被膜を
約0.02ミクロン／分の被膜形成速度で約0.05ミク
ロン形成した。さらにその後、タングステン製の
蒸着用ボートに電流を流すことによつて、ボート
上のニツケル１％、コバルト２％を重量比で含有
する金合金を蒸発し、腕時計ケース上に金合金被
膜を0.1ミクロン形成した。その後、装置より取
出したところ美しい金色をしていた。

この試料を牛皮摺動摩耗テストを荷重500ｇで
５万回行つたところほとんど色調の変化を生じな
かつた。また耐食性試験として５％塩水噴霧テス
トを48時間行つたところ、ほとんど腐食を生じな
く良好な結果が得られた。

Ｆ 考案の効果 この考案は以上説明したように金色を有する窒
化チタンを主成分とする被膜、金色を有する窒化
ジルコニウムを主成分とする被膜、さらに金また
は金合金被膜の三つの被膜を順次形成することに
より、たとえ金または金合金被膜が部分的に摩耗
しても中間層である極めて金に近い金色を有する
窒化ジルコニウムを主成分とする耐摩耗性の高い
被膜が存在するため色調変化を極めて小さくする
ことができる。さらに窒化ジルコニウム系被膜
は、被膜形成速度が小さく、膜厚を厚くするため
には処理時間長くしなければならないという欠点
があり、歩留り、コスト等で不利であつたが最下
層に比較的被膜形成速度の速い金色を有する窒化
チタンを主成分とする被膜を形成することによ
り、耐食性、耐擦傷性等の特性を出すことができ
るため、中間層の窒化ジルコニウム系被膜の膜厚
を薄くすることができ、窒化ジルコニウム系被膜
形成における欠点をカバーすることができるので
ある。

以上、本考案によれば、従来、金めつきでは約
10ミクロン以上の膜厚が必要であつたのが、数十
分の一から数百分の一の金の使用量ですむことな
どを考えあわせれば、すぐれた金色を有する外装
部品を極めて安価で提供することが可能である。

なお実施例では、処理物としてステンレス鋼製
腕時計ケース及びニツケル及びニツケル−パラジ
ウム合金めつきを処した黄銅製腕時計ケースをあ
げたが、材質については金属をはじめとする耐熱
性材料が、また処理物としては、時計バンド、メ
ガネフレーム、ライター、万年筆等の装飾的要素
の大きい品物があげられる。さらに処理方法とし
ては、イオンブレーテイング、真空蒸着、湿式め
つき、熱処理の組合めを記したが、その他スパツ
タリング、熱化学反応やプラズマを利用した化学
蒸着法などと組合せた方法もこの考案に適用でき
ることは明らかである。

【図面の簡単な説明】

図面はこの考案にかかる外装部品の例として実
施例であげた腕時計ケースの断面図である。 １……腕時計ケース、２……金色を有する窒化
チタンを主成分とする被膜、３……金色を有する
窒化ジルコニウムを主成分とする被膜、４……全
または金合金被膜。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 素材が金属等耐熱性基材であり、その表面上に
   金色を有する窒化チタンを主成分とする層、金色
   を有する窒化ジルコニウムを主成分とする層、お
   よび金または金合金層の三層構造からなる被膜を
   有することを特徴とする外装部品。