JPS643765Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、バーチカル形小形内燃機関のブリー
ザ装置に関するものである。

〔従来の技術とその課題〕

周知のごとく、内燃機関におけるピストンとシ
リンダとの間隙において、混合気や燃焼ガスの混
入したものの一部がピストンリングから漏れてク
ランクケースへ流出する。この漏れたガスをブロ
ーバイガスと呼び、その中の2/3は未燃混合気で
あつて、したがつて、HC濃度がきわめて高く、
大気へ放出することは許されない。そのため、ク
ランクケースから吸気通路へこのブローバイガス
を還流させている。かかる還流装置は、オープン
タイプ、シートタイプおよびクローズトタイプに
大別されている。これらのいずれのタイプにおい
ても潤滑油をクランク室内に貯有していることか
ら、このブローバイガスはこの潤滑油のミストを
連れ出し、吸気通路系へ導いている。そのため、
潤滑油消費量が増大し、しかも、ブローバイガス
は内燃機関の負荷による影響が大きく、その発生
量と負圧形成能力とは相反する現象も呈すること
から、ブリーザ通路に各種のブリーザ弁（例え
ば、コントロールバルブや逆止弁）を装着し、そ
の対策に当てている。

一方、小形汎用ガソリン機関において、傾斜形
機関やバーチカル形機関は知られている。これら
の機関は、シリンダを前方に傾斜または水平に構
成して、機関高を低くし、重心位置を低下させて
安定性を向上せしめ、農用小形管理機やテイラー
積載用の、特に傾斜地作業機用の内燃機関に欠か
せないものとなつている。

ところで、かかるバーチカル形小形内燃機関に
おけるブリーザ装置については、例えば、弁室と
クランクケースとを連通するブリーザ穴を上下に
２箇所設けたもの（例えば実開昭58−25603号公
報）や、弁室とクランクケース油中とを連通する
ブリーザ穴を設けたものが知られている。これら
の従来のブリーザ装置は、いずれも、クランク室
内に貯有している潤滑油が弁室に揚がるおそれが
ある。

〔課題を解決するための手段〕

そこで本考案は、従来のかかる不都合を解消す
るために案出されたもので、その要旨とするとこ
ろは、弁室とクランクケースとを連通するブリー
ザ穴を設けたバーチカル形小形内燃機関のブリー
ザ装置において、前記ブリーザ穴を上部および下
部ブリーザ穴とし、該上部ブリーザ穴をクランク
ケース上部と連通し、該下部ブリーザ穴をクラン
クケース内の油中に連通するとともに、該下部ブ
リーザ穴の途中にバイパスを設け、該バイパスの
開口部を、オイルパン内の潤滑油の油面上方で、
かつ、クランクケース内のカムギヤの歯面近傍に
開口したことを特徴とするバーチカル形小形内燃
機関のブリーザ装置にある。

〔実施例〕

以下、本考案の構成を添付図面に示す実施例に
より詳細に説明する。

第１図に示す実施例は、農用管理機等に搭載す
る空冷バーチカル形ガソリン機関で、カム軸減速
方式となつている。すなわち、１は動力取出用の
垂直状カム軸で、図示しないクランク軸より約1/
２の減速をして回転するようになつている。２は
クランクケース、３は通常の汎用ガソリン機関の
側蓋に相当する部分を用いたオイルパン、４はカ
ムギヤで、クランクギヤ（図示せず）からの回転
を受けるとともに、ガバナ装置５へ回転を伝えて
いる。６，６′は吸・排気カム、７，８は吸９・
排気タペツト、９，１０は吸・排気バネ、１１，
１２は吸・排気弁、１３は弁室、１４はシリンダ
ヘツドを示す。

以上の構成は通常のバーチカル形ガソリン機関
で、オイルパン３に潤滑油を貯有し、コンロツド
大端部に設けたデイツパ（図示せず）によつて、
潤滑油を掻揚げ、クランクケース２内で油ミスト
を形成し所要部位を潤滑するようになつている。

ここにおいて、本実施例では、弁室１３の上部
にクランクケース２と連通する上部ブリーザ穴１
５を穿設するとともに、弁室１３の底部にオイル
パン３と連通する下部ブリーザ穴１６を穿設して
いる。この下部ブリーザ穴１６の途中、すなわ
ち、クランクケース２とオイルパン３との合せ面
には、第２図に示すごとく、パツキン１７を切欠
き、この切欠きと連通したバイパス１８を形成
し、このバイパス１８の開口部を、前記カムギヤ
４の歯面４ａの下部近傍に開口している。

そして、弁室１３には、図示しないがブリーザ
通路を開口し、このブリーザ通路はブリーザ弁を
介してエアクリーナと連通し、クランクケース
２、ひいては弁室１３内のブローバイガスをこの
ブリーザ通路を介してエアクリーナに導入し、機
関吸気系に還流するようにしている。

本実施例の構成は叙上のごとくなつているの
で、クランクケース２内の潤滑油は、弁室１３内
へ、デイツパの掻き揚げ作用とブローバイガスの
連れ出しとによつて、上部ブリーザ穴１５を介し
て、導入され、弁室１３内に貯有される。貯有さ
れた潤滑油は、下部ブリーザ穴１６よりオイルパ
ン３に流下するが、流下に際し、バイパス１８を
設けたことにより、短時間に流下することが判明
した。すなわち、かかる現象を分析してみると、
本来、弁室１３に貯有された除滑油は、バイパス
１８が形成されていなければ、潤滑油の自重によ
る圧力や下部ブリーザ穴１６の管路抵抗で徐々に
クランクケース２内に戻り平衡を保つことにな
る。特に、掻き揚げられた潤滑油が、弁室１３か
らクランクケース２内に戻るのが遅い場合には、
上部ブリーザ穴１５まで貯有され、この上部ブリ
ーザ穴１５を介してエアークリーナから機外に流
出したり、吸気弁隙間を通じ、燃焼室へ流れ込ん
だりする、ことが判明した。そこで、この下部ブ
リーザ穴１６の途中（オイルパン３内の潤滑油の
油面より上方）にバイパス１８を設けたところ、
弁室１３に貯有された潤滑油は、その自重による
圧力や下部ブリーザ穴１６の管路抵抗に左右され
ず、迅速に流下することが判明した。つまり、バ
イパス１８を設けなければ、弁室１３に貯有され
た潤滑油は流下が遅れ、いわゆる潤滑油消費量が
大きいのである。また、弁室１３の底部より直接
クランクケース２にブリーザ穴を開口すると、折
角液化した潤滑油がカムギヤ４の腹部に滴下し
て、はね返り、再びミスト化し、このブリーザ穴
を逆流して弁室１３に貯有され、依然として潤滑
油消費量は大きいことも判明した。

ところが、本実施例の場合、下部ブリーザ穴１
６とバイパス１８の存在、更に、バイパス１８の
開口部はカムギヤ４の歯面４ａ下部近傍に開口さ
れていて、その近傍の負圧（カムギヤ４の回転に
よるもの）により、弁室１３に貯有されている潤
滑油をオイルパン３に迅速に流下し、潤滑油消費
量を下げることができる。

第３図イ，ロは、バイパス１８の別の実施例を
示し、この実施例はパツキン１７はそのままで、
クランクケース２またはオイルパン３の端面を切
欠いたものである。

〔考案の効果〕

本考案によれば、弁室に貯有されて液化した潤
滑油が、バイパスの存在により、自重による圧力
や下部ブリーザ穴の管路抵抗を受けることなく、
そのままオイルパンに迅速に流下するので、潤滑
油消費を従来のものに比べ低減することができ
る。加えて、ブリーザ通路に介在させているブリ
ーザ弁の開閉も正確に行うことができ、しかも、
単なるバイパスであるので、構造はきわめて簡単
化することができる。

なお、本考案は、クランクケース軸がPTO方
式の空冷バーチカル形ガソリン機関に実施するこ
ともできる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例の断面図、第２図は第
１図のＡ部平面図、第３図イ，ロは第２図の別の
実施例を示す。 ２……クランクケース、４……カムギヤ、１３
……弁室、１５……上部ブリーザ穴、１６……下
部ブリーザ穴、１８……バイパス。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 弁室とクランクケースとを連通するブリーザ穴
   を設けたバーチカル形小形内燃機関のブリーザ装
   置において、 前記ブリーザ穴を上部および下部ブリーザ穴と
   し、該上部ブリーザ穴をクランクケース上部と連
   通し、該下部ブリーザ穴をクランクケース内の油
   中に連通するとともに、該下部ブリーザ穴の途中
   にバイパスを設け、該バイパスの開口部を、オイ
   ルパン内の潤滑油の油面上方で、かつ、クランク
   ケース内のカムギヤの歯面近傍に開口したことを
   特徴とするバーチカル形小形内燃機関のブリーザ
   装置。