JPS6360811B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ａ 産業上の利用分野 本発明は、円柱体又は円筒体の外周面に歯面を
形成して成る歯車を高周波通電方法により焼入れ
する装置に関するものである。

ｂ 従来技術とその課題 第１図〜第３図は、従来の歯車の高周波直接通
電焼入方法をそれぞれ示すものである。第１図は
部分焼入法を示すものであつて、この場合には、
歯車１の歯面２のうちの一部を囲むように高周波
コイル３を配置すると共にこの高周波コイルの両
端を歯車１の歯底４に図外の接触電極を介して接
続し、高周波電源５から高周波コイル３に高周波
電流を供給することによつて、高周波コイル３に
囲まれた歯車１の歯面２を高周波誘導加熱して焼
入れする。

しかしながら、第１図に示すような部分焼入法
では、１つの歯車１の歯面２の全体を焼入れする
ために上述の如き作業工程を数回行なう必要があ
るため、作業性及び生産性が著しく低いという問
題点がある。

第２図は、全体焼入法の一例を示すものであつ
て、この場合には歯車１の歯面２の全周に対応す
る高周波コイル３が用いられる。しかし、高周波
コイル３のリード部３ａ，３ｂに流れる電流は互
いに逆方向であるため、互いに打ち消し合い、こ
の付近における加熱が充分に行なわれない。この
ため、リード部３ａ，３ｂ付近の歯面２′とそれ
以外の歯面で２″とでは加熱状態が異なり、均一
厚さの焼入れを行なうことができないという問題
点がある。

また第３図は全体焼入法の別例を示すものであ
つて、この場合には、２つの高周波コイル３にて
歯面２の全体を囲むように配置すると共に、高周
波コイル３の一端をそれぞれ図外の接触電極を介
して歯底４に接続し、１度に歯面２の全部を焼入
れする。このような全体焼入法は、作業性及び生
産性が良く、均一焼入れが可能であり、大型歯車
の歯面焼入れに有効である。

しかし、モジユールの小さな小型歯車（例えば
モジユールが３以下）を焼入れする場合、歯車１
の歯底寸法Ｌに合わせて接触電極を設ける際に自
ずと寸法限界を生じる。すなわち、モジユールの
小さな歯車の歯底寸法Ｌは短いため、互いに隣接
する歯部の間に２つの接触電極を互いに離した状
態で配置し難く、従つて小型歯車の焼入れに上述
の如き全体焼入法を適用することができない場合
がある。

本発明は上述の如き実状に鑑みて発明されたも
のであつて、その目的は、簡単な構成であるにも
拘わらず、歯車の歯面を簡単な作業によつて効率
良く均一焼入れできる焼入装置を提供することに
ある。

ｃ 課題を解決するための手段 上述の課題を解決するために、本発明では、円
柱体又は円筒体の外周面に歯面を形成して成る歯
車を高周波直接通電方法により焼入れする装置に
おいて、 〈ａ〉 第１導体と第２導体との間に電気的絶縁
物を介在させて成る単位導体と、 〈ｂ〉 前記第１導体に接続され、前記歯車の歯
幅方向に対して直交する前記歯車の一端面に当
接配置される第１接触電極と、 〈ｃ〉 前記第２導体に接続され、前記歯車の歯
幅方向に対して直交する前記歯車の他端面に当
接配置される第２接触電極と、 〈ｄ〉 前記第２導体及び前記第２接触電極に接
続され、前記第１接触電極と前記第２接触電極
との間において前記歯車の歯面に近接して配設
される近接導体と、 〈ｅ〉 前記歯車に冷却水を供給する冷却水供給
手段と、 〈ｆ〉 前記第１導体と前記第２導体とに接続さ
れる高周波電源と、 をそれぞれ具備し、前記第１接触電極及び第２接
触電極を前記歯車の一端面及び他端面にそれぞれ
当接せしめてこれらの電極間に前記歯車を挾持
し、この状態下で、前記歯車の歯面に前記歯車の
歯幅方向に沿う方向の高周波電流を流すと共に、
この高周波電流を前記近接導体に導き、これによ
つて、前記歯面の高周波電流とは逆方向の高周波
電流を前記近接導体に流すように構成している。

以下、本発明の一実施例に付き第４図〜第８図
を参照して説明する。

第４図及び第５図は、円柱体又は円筒体の外周
面に歯面を形成して成る歯車３７を高周波通電方
法により焼入れするのに用いられる歯車焼入装置
１０の構成を示すものである。本装置１０は、板
状の第１導体１１及び第２導体１２との間に絶縁
板１３を介在させて成る単位導体１４を具備して
おり、この単位導体１４は装置基台１５上に配置
固定されている。そして、上述の第１及び第２導
体には高周波電源１６がリード線１７を介して接
続されている。

また単位導体１４の第１導体１１上には導電材
から成る枠体１９が配設されている。この枠体１
９は、第４図に示すように、円筒状側壁部２０、
上壁部２１及び下壁部２２から成り、上壁部２１
は昇降シリンダ２３によつて昇降されるようにな
つている。なお、図示を省略したが、側壁部２０
と上壁部２１との当接面には銅製Ｏリング等が配
設されている。

一方、枠体１９の下壁部２２のほぼ中央部には
貫通孔２４が形成され、第２導体１２にも前記貫
通孔２４に連通する貫通孔２５が形成されてい
る。そして、単位導体１４の第１導体１２の一端
上にクロム銅等から成る第１接触電極２７がビス
２６にて固定され、第１導体１１と第１接触電極
２７とが互いに電気的に接続状態となされてい
る。しかして、上述の第１接触電極２７が、第１
導体１１及び枠体１９の下壁部２２に当接しない
状態の下で前記貫通孔２４，２５内に貫通配置さ
れ、その上端部が枠体１９の内部に突出してい
る。さらに、この第１接触電極２７に対応して、
枠体１９の上壁部２１の下面にはクロム銅等から
成る第２接触電極２８がビス２９にて固定され、
この第２接触電極２８が前記上壁部２１に電気的
に接続されている。

なお、上述の第１及び第２接触電極２７，２８
の接触面２７ａ，２８ｂは平坦に成形されてい
て、被焼入体である歯車３７の上下両端面３７
ｂ，３７ｃにそれぞれ密着されるようになつてい
る。

また、枠体１９の側壁部２０の内面には、円環
状の冷却水通路３１ａ及び中空部３１ｂを有する
銅製の近接導体３２が配設されている。この近接
導体３２の内側円筒壁３３には冷却水噴射口３４
が多数設けられ、その外側円筒壁３５には枠体１
９の側壁部２０を貫通する一対の冷却水供給パイ
プ３６ａ，３６ｂが連設されている。しかして、
これらのパイプ３６ａ，３６ｂと近接導体３２と
により冷却水供給手段が構成されている。

次に本装置１０を用いて歯車３７の歯面３７ａ
を焼入れする場合に付き述べる。

まず、昇降シリンダ２３を作動させて枠体１９
の上壁部２１を上方に移動し、歯車３７の歯幅方
向（第４図において上下方向）に直交する歯車３
７の下端面３７ｃを第１接触電極２７上に載置す
る。この際、歯車３７を近接導体３２の中空部３
１ｂ内に挿入して、歯車３７の外周に形成された
歯面３７ａを近接導体３２の内側円筒壁３３に対
して均一距離となるように配置する。

しかる後に、昇降シリンダ２３を作動させて枠
体１９の上壁部２１および第２接触電極２８を下
方に移動する。これによつて、前記上壁部２１が
側壁部２０上に圧着係合すると共に、第２接触電
極２８が歯車３７の歯幅方向に対して直交する歯
車３７の上端面３７ｂに圧着係合する。この結
果、歯車３７は近接導体３２の中空部３１ｂの中
央部において、第１接触電極２７とを第２接触電
極２８との間に挟持され、これら第１及び第２接
触電極２７，２８と歯車３７の上下両端面３７ｂ
及び３７ｃとは各々の接触面において電気的に接
続される。

このような状態の下で高周波電源１６から高周
波電流を単位導体１４に供給すると、高周波電流
は第４図において矢印で示す如く第１導体１１か
ら第１接触電極２７を通つて歯車３７の歯面３７
ａ、第２接触電極２８、枠体１９の上壁部２１及
び側壁部２０、近接導体３２の内側円筒壁３３の
表面、枠体１９の側壁部２０及び下壁部２２、第
２導体１２を順次介して高周波電源１６へと流
れ、或いはその逆の経路を通つて交互に流れる。
すなわち、歯車３７の歯面３７ａには、その表面
において歯車３７の歯幅方向に沿つて高周波電流
が流れる。なお、第４図においては、高周波電源
１６より供給される電流をi₁、歯面３７ａに流れ
る電流をi₁′、近接導体３２の表面に流れる電流を
i₂として示されている。

歯車３７の歯面３７ａに沿つて流れる電流i₁′と
近接導体３２の表面に流れる電流i₂とは、発生す
る磁束が最小になるように互いに引つぱり合い、
互いに近接して流れるように電流密度が分布す
る。さらにこの際、歯車３７の歯面３７ａに誘導
電流も流れる。

第６図は歯車３７の歯面３７ａ及び近接導体３
２に流れる電流を示している。第６図において、
誘導うず電流i₁″は誘導電流の先端効果（凸部に
磁束が集中して凸部にうず電流が多く流れる効
果）により、歯先に多く発生して歯先には直接電
流i₁′とうず電流i₁″の合成電流が流れる。

高周波電流の特徴である先端効果と近接効果と
によつて、歯車３７の歯面３７ａにおける電流密
度は、歯先部分が高く歯底部分は低くなる。その
ため、歯先部分は均一に加熱され、歯底部分は薄
く加熱されることになる。

歯車３７の歯面３７ａが所定の焼入温度に達し
たら、高周波電源１６からの電流供給を遮断し、
パイプ３６ａ，３６ｂを介して冷却水を近接導体
３２の冷却水通路３１ａに供給する。これによ
り、近接導体３２の冷却水噴射口３４から歯車３
７の歯面３７ａに冷却水が噴射され、歯面３７ａ
が急速冷却される。その結果、歯面３７ａは第７
図及び第８図に示す如く所要深さの焼入硬化層４
１が形成される。

以上の如き歯車焼入装置１０によれば、極めて
簡単な構成の装置であるにも拘わらず、歯車３７
の歯面３７ａを効率良く焼入れすることができ、
作業能率の向上、作業時間の短縮及びコストの低
減を図ることができる。

また、本装置１０によれば歯車の大小にかかわ
りなく完全な焼入れを行なうことができるので、
特に、モジユールが３以下の小型歯車（全体焼入
法では焼入れできない歯車）の焼入れに適用可能
である。

ｄ 発明の効果 以上の如く、本発明は、円柱体又は円筒体の外
周面に歯面を形成して成る歯車の両端面（歯幅方
向に対して直交する両端面）に第１接触電極と第
２接触電極をそれぞれ当接させた状態でこれらの
間に挾持し、歯車の歯面に歯車の歯幅方向に沿う
方向の高周波電流を流すと共に、歯車の歯面に近
接配置された近接導体にこの高周波電流を導き、
前記歯面の高周波電流とは反対方向の高周波電流
を近接導体に流すことによつて、歯車の歯面を高
周波誘導加熱して焼入れを行なうようにしたもの
であるから、従来のように互いに隣接する歯部の
間に２つの接触電極を配置する必要がなく、歯車
のモジユール大小に拘わらず極めて効率良く全体
焼入れを行なうことができる。

従つて、従来の焼入装置による焼入れと比べ
て、作業性が格段に向上し、作業時間の短縮及び
作業のコストダウンを図ることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図及び第３図は従来の歯車焼入方
法をそれぞれ示す概念図、第４図〜第８図は本発
明の一実施例を説明するためのものであつて、第
４図は歯車焼入装置の断面図、第５図は第４図に
おける―線断面図、第６図は歯車の歯面と近
接導体とに流れる電流を示す要部拡大断面図、第
７図は歯車の歯底に形成された焼入硬化層パター
ンを示す断面図、第８図は第７図における―
線断面図である。 １０…歯車焼入装置、１１…第１導体、１２…
第２導体、１３…絶縁板、１４…単位導体、１６
…高周波電源、１９…枠体、２３…昇降シリン
ダ、２７…第１接触電極、２８…第２接触電極、
３１ａ…冷却水通路、３１ｂ…中空部、３２…近
接導体、３４…冷却水噴射口、３６ａ，３６ｂ…
冷却水供給パイプ、３７…歯車、３７ａ…歯面、
３７ｂ…上端面、３７ｃ…下端面、４１…焼入硬
化層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円柱体又は円筒体の外周面に歯面を形成して
   成る歯車を高周波直接通電方法により焼入れする
   装置において、 〈ａ〉 第１導体と第２導体との間に電気的絶縁
   物を介在させて成る単位導体と、 〈ｂ〉 前記第１導体に接続され、前記歯車の歯
   幅方向に対して直交する前記歯車の一端面に当
   接配置される第１接触電極と、 〈ｃ〉 前記第２導体に接続され、前記歯車の歯
   幅方向に対して直交する前記歯車の他端面に当
   接配置される第２接触電極と、 〈ｄ〉 前記第２導体及び前記第２接触電極に接
   続され、前記第１接触電極と前記第２接触電極
   との間において前記歯車の歯面に近接して配設
   される近接導体と、 〈ｅ〉 前記歯車に冷却水を供給する冷却水供給
   手段と、 〈ｆ〉 前記第１導体と前記第２導体とに接続さ
   れる高周波電源と、 をそれぞれ具備し、前記第１接触電極及び第２接
   触電極を前記歯車の一端面及び他端面にそれぞれ
   当接せしめてこれらの電極間に前記歯車を挾持
   し、この状態下で、前記歯車の歯面に前記歯車の
   歯幅方向に沿う方向の高周波電流を流すと共に、
   この高周波電流を前記近接導体に導き、これによ
   つて、前記歯面の高周波電流とは逆方向の高周波
   電流を前記近接導体に流すように構成したことを
   特徴とする焼入装置。 ２ 前記第１接触電極と前記第２接触電極とを相
   対的に移動可能に構成し、前記第２接触電極の相
   対的移動に伴つて、前記歯車の下端面及び上端面
   に前記第１及び第２接触電極がそれぞれ当接配置
   されるように構成したことを特徴とする特許請求
   の範囲第１項記載の焼入装置。 ３ 前記近接導体が前記冷却手段の一部として構
   成されていることを特徴とする特許請求の範囲第
   １項又は第２項記載の焼入装置。 ４ 前記近接導体に多数の冷却水噴出用口が形成
   されていることを特徴とする特許請求の範囲第３
   項記載の焼入装置。