JPS6351084B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は屋内特に接続した複数の区画室を貫通
して設置される給排水管などに好適な多層管状構
成体の製造する方法に関する。詳しくは合成樹脂
管、例えば硬質塩化ビニル管などの外周面部を水
硬性無機質材料で被覆して耐火性を付与し、火災
時に他の区画室への延焼を防止することのできる
多層管状構成体を製造する方法に関するものであ
る。

従来、建築物に使用する給排水管としては、施
工が容易であることと低価格のため硬質塩化ビニ
ル管が広く使用されてるが、硬質塩化ビニル管を
そのまま用いた場合は可燃性のため火災時に隣室
や上階へと延焼させたり、有毒ガスを発生するこ
とにより被害を増大させることから給排水の用途
には適さない面があつた。

一方、耐火性を有し強靭な事から金属管も使用
されているが、重量も大であり、切断等の加工が
しにくい上に通常高価でもあり、更に内側に発錆
とか水垢の付着の現象を生じ易くそのため流水率
が低下したり、管の外局面に結露現象が生じたり
する欠点がある。

そこで硬質塩化ビニル管等の合成樹脂管からな
る内管とセメント等の無機質材料で構成された耐
火性の外層管とを組合せた多層管が提案され、施
工が容易であり、しかも断熱性、結露防止などの
性能にも優れている事から近年めざましく普及し
つつある。

しかしこの種の多層管の構成における技術的に
難しい問題は内管が熱膨脹の著しく大きな合成樹
脂管であり、外層管が熱膨脹の比較的小さな無機
質材料から構成されているために、例えば熱湯の
流下時等に、内管が熱膨脹して外層管を圧迫し該
外層管に有害な亀裂が発生するのを防止する技術
である。

このための最も簡便な方法は内管と外装管との
間に一定の空隙を与えておくことであり、具体的
には、それぞれ別個に精密に製造された外層管と
内管とを組合わせたりまた、合成樹脂発泡体シー
トを内管の外周にまきつけて後外層管を形成する
方法もとられているが、これらの方法も種々の問
題を持つている。即ち前述の如く内管と外層管を
別個につくり挿入する方法は製造工程としては煩
雑であるばかりか、Ｔ管、Ｙ管等の枝のある場合
は事実状実施不可能である。一方、合成樹脂発泡
体シートをあらかじめまきつけておく方法は、合
成樹脂発泡体シート特有の弾発性から内管への該
シートの均一な捲きつけが難しいため、内管と該
シートの間に外層管形成用の水硬性材料が流入
し、所期の目的を達成し難い。したがつて、本発
明の目的は、このような従来の多層管の製造技術
上の欠点に鑑み、これを改良した多層管の製造方
法にある。本発明者等はこのような目的に従つて
鋭意研究を重ねた結果、吸水時に体積膨脹を起こ
し、更に多量に吸水すると溶解する材料の水溶液
を作りこれに必要に応じ補強用繊維とか、充填剤
を加え、合成樹脂製内管の外周面の少くとも一部
に塗布し、乾燥させて薄膜を形成させその外周面
部を含め合成樹脂管外表面の少くとも一部を水硬
性無機質材料と水とを主成分とする混練物で被覆
成形し養生硬化乾燥せしめれば該薄膜が一旦吸水
して膨潤して体積を増して後脱水乾燥してほとん
どもとの厚みの薄膜に戻るため内管と外層管の間
に所望の厚みの空隙が生じ、外層管は90℃以上の
熱湯の流下時等の熱応力にも耐える事を見出し、
本発明を完成するに至つた。

本発明における吸水時に体積膨脹及び溶解する
材料の例を挙げると次のようなものがある。

即ち澱粉、澱粉の誘導体、CMC、MC、HEC、
HPC、などの水溶性セルロース誘導体、タンニ
ン、リグニン、アルギン酸とかアラビヤゴム、ゼ
ラチンやカゼインなどのたんぱく質、ポリビニル
アルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロ
ピレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリメタク
リル酸、水溶性ポリエステル、ポリエポキシ化合
物、ケトンホルムアルデヒド樹脂、ポリビニルピ
ロリドン、ポリアミン、ポリ電解質、ユリアホル
ムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹
脂、フエノールホルムアルデヒド樹脂、などであ
る。これら例示された材料は夫々水溶解度が異る
ため一概には言えないが、0.1〜10％（重量）の
範囲の水溶液に調製可能であり、このままでも使
用しうるが、均一な塗布のためには１〜４％程度
のものが好適である。勿論本発明の構成は上記例
示の物質に何ら限定されるものでない事は以下の
記述からも明白となろう。また、上記薄膜を構成
するために上記材料を２種以上混合して用いた
り、水に対して非膨潤性の材料を部分的に併用す
ることも可能である。

また本発明における水硬性無機質材料とは、例
えばポルトランドセメント、シリカセメント、高
炉セメント、フライアツシユセメント、アルミナ
セメント、各種エトリンジヤイト系セメント、各
種石膏類などが挙げられ必要ならばこれらに補
強、耐火性の向上、軽量化、増量などを目的とし
て、石綿、岩綿、ガラス繊維、木毛、合成繊維、
天然繊維、スチールフアイバー、銅線、雲母、パ
ーライト、蛭石、合成蛭石、火山レキ、珪砂、水
酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、珪酸カルシ
ウム、等を添加するのも効果的である。

本発明における吸水時に体積膨脹及び溶解する
材料を水に溶解させて合成樹脂製内管外面に塗布
して後乾燥効果は一般に接着性に乏しく疎水性で
ある合成樹脂製内管の外表面にきわめて容易に、
体積変化のある材料の薄膜を密着性よく形成でき
る点にある他、水硬性材料を塗布すると水を吸
収、膨潤してゲル化し体積を増しその層の厚みを
増した薄膜が水硬性無機質材料が硬化し構造を形
成するまでの間そのゲル状態を保持し、水硬性無
機質材料が硬化後、この多層管が乾燥する過程で
上記のゲルは水を放出し外層管と内管の間には一
定の空隙が形成されることにある。

従つて本発明に用いる水膨潤性及び水溶解性の
材料の使用量は水硬性材料の塗布後膨潤する程度
に従つて適宜決定される。

例えば該材料の水溶液の塗布、乾燥をくり返す
ことにより薄膜の厚みは自由に調節され得る。

合成樹脂管の外周面に前記塗布形成された薄膜
の上及び合成樹脂管の少なくとも一部の外表面上
に水硬性無機質材料と水との混練物を被覆形成す
る方法としは、例えば上記塗布された樹脂管を予
め上下分割可能の型枠の内にセツトしておき、該
型と合成樹脂管との間の空隙部に前記水硬性無機
質材料の混練物を鋳込む方法あるいは該材料の混
練物を合成樹脂管の周囲に押出し被覆層を成形す
る方法、更には該材料の混練物のシート状物を合
成樹脂管外層に一ないし複数層巻く方法などが挙
げられる。

水硬性無機質材料の養生硬化方法としては常温
または加熱養生のいずれでもよく、湿空状態でこ
の間保持するのが望ましい。次に乾燥されるが気
乾乾燥が望ましい。

本発明によつて製造される多層管状構成体は、
枝管の有無にかかわらず内管と外層管間に間隙が
形成されるので配管に高温の流体が通る時の熱応
力によつて被覆層に何らの悪影響を生じないだけ
でなく、直管の場合は施工時に簡単に内管と外管
の位置管係を変えたり、内管を抜き出したりする
事ができる。

なお、本発明に係る空隙の形成は内管全面に設
けることは必ずしも必要ではなく、部分的例えば
外層管端のみ空隙を設けても効果がある。したが
つて薄膜は部分的に設けても所期の効果を出しう
る。

以下本発明を実施例に従い更に詳しく説明す
る。

実施例 １ 硬質塩化ビニル管（外径114mm、内径107mm、長
さ2100mm）の外周面部にポリビニルアルコールの
２％水溶液を塗布し、気乾乾燥する工程を３度く
り返し該薄膜上に、下記組成の混練物を寒冷紗
（材質：ビニロン）上に一定厚さに被着せしめた
ものを３周巻きつけ、同方向に回転する水平に設
置された２本の平行金属ロール上に置き回転させ
ながら押圧して真円に近づけた。その時の被覆層
の厚みは９mmであつた。このものを常温で30分間
放置後50℃80％RHの養生室に入れ５時間保持し
た。気乾乾燥３週間後、このものを後記比較例の
多層管状構成体とを継手を用いて接続配管し90℃
の熱湯を20/minの速度で20分間流下せしめそ
の後下端を閉じ満水状態として10分間保持した。
この試験中及び試験後被覆層には何らの異常も見
られず、内管の熱膨脹による応力は充分吸収され
る事が確かめられた。

混練物組成 （重量部） 普通ポルトランドセメント 45 耐アルカリ性ガラス繊維チヨツプドストランド
0.5 クリソタイルアスベスト 4.5 珪 砂 ９ 軽量骨材（パーライト） ６ 増粘剤（メチルセルロース） 0.1 水 35 なお上記気乾乾燥に至るまでの間上記多層管の
切断面を観察し続けたところ水で膨潤して厚みの
増したポリビニルアルコール層が水硬性の被覆層
の硬化反応が進行して外層管を形成する間そのま
ま維持され、乾燥と共にこの膨潤ゲル化層は再び
水を失つて収縮し、外層管内表面に薄いフイルム
状となつて付着し、内管の外表面に空隙を形成す
る現象が観察された。このように水を吸収させて
体積の増した膨潤層の乾燥でできる空隙が本発明
に係る多層管状構成体に熱応力吸収機能を付与し
ているものと考えられる。

実施例 ２ 硬質塩化ビニール製管継手（実施例１で用いた
硬質塩化ビニル管用継手、長さ104mm）の外周面
部にパルプをCMCに対して20％含有するCMCの
４％水溶液を塗布及び乾燥し更にこの工程をもう
１度くり返して後このものを所望の多層管状構成
体の径と長さに合せてクロロプレンゴムで作成し
た内部中空の型枠中に両端をホルダーを用いて固
定し該型枠の下部の注入孔から水混練物即ちポル
トランドセメント60重量部、珪石粉12重量部、膨
張性混和剤（生石灰）３重量部、軽量骨材（パー
ライト）５重量部、クリソタイル石綿20重量部、
増粘剤（メチルセルロース）0.1重量部を予めブ
レンドし次に適量の水を加えて混練りした水混練
物を圧入して充填した後養生室に入れ50℃に昇温
せしめ次いで５時間保持した。自然放冷後脱型
し、気乾乾燥３週間後、このものを実施例１で得
た多層管状構成体と接続配管し実施例１と同じ熱
湯流下のテストを行なつた。この試験中及び試験
後被覆層の外層管には何らの異常も見られなかつ
た。

比較例 １ 実施例１及び実施例２における水溶液塗布の操
作を省略する以外は実施例１、２と全く同じ処
法、操作により多層管状の構成体の長尺直管及び
継手を製造した。このものを気乾乾燥３週間後、
実施例１と同じ熱湯流下の試験を行なつたとこ
ろ、多層管状構成体の長尺直管及び継手共に外層
管に複数本のクラツクが生じた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 吸水時に体積膨脹及び溶解する材料を水に溶
   解させて合成樹脂製内管の外周面の少なくとも一
   部に塗布し乾燥せしめて薄膜を形成し次に該塗布
   面部及び少なくとも合成樹脂製内管の外周面部の
   一部を水硬性無機質材料と水とを主成分とする混
   練物で被覆成形し養生硬化乾燥せしめる事を特徴
   とする多層管状構成体の製造法。