JPH0212162B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は屋内、特に接続した複数の区画室を貫
通して設置される給排水管などに好適な合成樹脂
管、例えば硬質塩化ビニル管などの外周面部を水
硬性無機質材料で被覆して耐火性を付与し、火災
時に硬質塩化ビニル管などを伝つて他の区画室へ
延焼することを防止する多層管に関するものであ
る。

従来、建築物に使用する給排水管としては、施
工が容易であることと低価格等のため、硬質塩化
ビニル管等の合成樹脂管が広く使用されている
が、合成樹脂管をそのまま用いた場合は通常可燃
性のため、火災時、それらの管を伝つて隣室や上
階へと延焼させたり、有毒ガスを発生したりする
ことが多く被害を増大させることから、給排水の
用途には適さない面があつた。

一方、耐火性を有し強靭な事から金属管も使用
されることもあるが、重量もあり、切断等の加工
がしにくい上に通常高価でもあり、更に内側に錆
や水垢が付着し流水率が低下したり、管の外周面
に結露現象が生じたりする欠点がある。

そこで硬質塩化ビニル管等の合成樹脂管からな
る内管とセメント等の無機質材料で構成された耐
火性の外層管とを組合せた多層管が提案され、施
工が容易であり、しかも断熱性、結露防止などの
性能にも優れていることから近年めざましく普及
しつつある。

しかし、この種の多層管の製造にあたつて、技
術的に難しい問題は内管が熱膨張の著しく大きな
合成樹脂管であり、外層管が熱膨張の比較的小さ
な無機質材料から構成されているために、例えば
熱湯の流下時等の合成樹脂管の膨張にもとづく熱
応力により、外層管に有害な亀裂が発生するのを
防止することである。このための最も簡便な方法
は内管と外層管との間に一定の空隙を与えておく
事であるがその空隙を作り維持する方法としては
それぞれ別個に精密な径を有するように製造され
た外層管と内管とを組合わせそれら両管に２〜３
本の合成樹脂製バンドやクツシヨン性合成樹脂発
泡体シートを介在させて複合化する方法がとられ
ている。また前記合成樹脂発泡シートを内管の外
周にまきつけて後外層を塗布形成する方法もとら
れている。

しかし、叙述したような外層管の製造方法は極
めて複雑であり、精度を必要とする煩雑さがある
他、前記のごとく内管に、あらかじめ前記発泡体
シートをまきつける方法をとる場合は、発泡体シ
ート特有の弾発性に基き、該シートを均一平担な
層に捲きつけ固定することは枝付継手管の場合等
の如き異形の場合には特に困難で、外層の塗布層
の不均一化を招きやすい。

本発明の目的はこのような従来の外層管の欠点
に鑑み、これを改良した外層管を製造する方法を
見出すことにある。本発明者等はこのような目的
に従つて鋭意研究を重ねた結果、水に膨潤性の材
料の粉粒体に水を添加して膨潤させた粉粒体を合
成樹脂製内管の外周面部の少なくとも一部に付着
せしめ、該粉粒体の付着部分を少なくとも含めた
合成樹脂製内管の外周面部を水硬性無機質材料と
水とを主成分とする混練物で被覆成形し養成、硬
化、乾燥せしめれば、例えば85℃以上のような熱
湯の流下時等の熱膨張にもとづく熱応力にも耐え
ることを見出し、本発明を完成するに至つた。

本発明における吸脱水時に体積変化のある材料
とは、例えば次のようなものが挙げられる。

アスベスト、珪藻土、フライアツシユ、各種粘
土鉱物、エトリンジヤイト系物質、澱粉及び澱粉
の誘導体、CMC、MC、HEC、HPCなどのセル
ロース誘導体、ゼラチンやカゼインなどのたんぱ
く質、タンニン、リグニン、アルギン酸、アラビ
ヤゴム、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオ
キサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリアク
リル酸、ポリメタクリル酸、水溶性ポリエステ
ル、ポリエポキシ化合物、ケトンホルムアルデヒ
ド樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリアミン、ポ
リ電解質物ユリアホルムアルデヒド樹脂、メラミ
ンホルムアルデヒド樹脂、フエノールホルムアル
デヒド樹脂等であるが、本発明においては勿論上
記の材料を２種以上複合して用いても良い。

また本発明の構成はこれら例示の材料に何ら限
定されるものではない。本発明において前記特性
を有する材料の粉末または粒子の膨潤したものを
合成樹脂製内管の外周面部に付着せしめる方法と
してはそのまま直接にまたは予め合成樹脂管外周
面に接着または粘着性物質を塗布処理しておく方
法、或いは接着または粘着性材料と混合して合成
樹脂管外周面にコートする方法等が考えられる。

前記膨潤した材料の粉粒体は合成樹脂管の外周
面全面に処理してもよいが必要に応じ外周面の一
部に例えば帯状、環状もしくは螺旋状に処理して
も良く、合成樹脂管の端部まで被覆層を設ける管
継手では受口外周面のみの処理でも充分効果的で
ある。

また本発明における水硬性無機質材料とは、例
えばポルトランドセメント、シリカセメント、高
炉セメント、フライアツシユセメント、アルミナ
セメント、各種エトリンジヤイト系セメント、炭
酸マグネシウム、各種石膏類などが挙げられ、必
要ならばこれらに補強、耐火性の向上、軽量化、
増量などを目的として、石綿、岩綿、ガラス繊
維、木毛、合成繊維、天然繊維、スチールフアイ
バー、銅線、雲母、パーライト、焼成蛭石、火山
レキ、珪砂、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウ
ム、珪酸カルシウム等を添加するのも効果的であ
る。

本発明における合成樹脂管の外周面に付着せし
めた前記水膨潤後の粉粒体の効果は、その外周面
部に被覆される水硬性無機質材料と水との混練物
が硬化し、構造を形成するまでの間、外層管と内
管との間にあり脱水後よりも広い空間を保持し水
硬性無機質材料が硬化後、この外層管が乾燥する
過程で上記の水膨潤材料は水を放出して、収縮し
外層管と内管との間には一定の空隙が生ずること
にある。本発明に用いる、上記材料の紛粒体の付
着厚みは、その乾燥時の収縮の程度と必要とする
間隙を考慮して選定すれば良い。

水硬性無機質材料と水との混練物で被覆成形す
る方法としては、例えば上記水膨潤材料の粉粒体
を付着せしめた合成樹脂管を予め上下分割可能
で、所望の内側形状を有する型枠の中にセツトし
ておき、該型と前記処理済合成樹脂管との間に前
記水硬性無機質材料のスラリーを鋳込む方法、あ
るいは該材料を前記処理済合成樹脂管の周囲に押
出し、被覆層を成形する方法更には該材料のシー
ト状物を上記合成樹脂管外周に１ないし複数層巻
く方法などが挙げられる。

水硬性無機質材料の養生硬化方法としては、常
温または加熱養生のいずれでもよく、湿空状態で
この間保持するのが望ましい。この外層管は次に
乾燥される。

本発明によつて製造される外層管状構成体は、
配管に高温の流体が通る時の熱膨張に基く熱応力
によつて被覆層に何らの悪影響を生じないだけで
なく直管の場合は施工時に簡単に内管のみを移動
せしめたり、抜き出したりする事ができる。

以下、本発明を実施例に従い、更に詳しく説明
する。

実施例 １ 硬質塩化ビニル管（外径114mm、内径107mm、長
さ2100mm）の外周面部にポリ酢酸ビニル系の接着
剤を刷毛塗りし、その硬化前にCMCの粉末の水
膨潤したものを全面にわたつて約２mm厚みで均一
に塗布して付着せしめた。次に下記に示す組成の
モルタルを寒冷紗（材質ビニロン）上に厚さ約３
mmに被着せしめたものを３周巻きつけ、回転させ
ながら中心軸方向に押圧して真円に近づけた。

モルタル組成 （重量部） 普通ポルトランドセメント 45 耐アルカリガラス繊維チヨツプドストランド
1.4 クリソタイルアスベスト 3.5 珪石粉 10 軽量骨材（パーライト） ７ 増粘剤（メチルセルロース） 0.1 水 33 このものを常温で30分間放置後、50℃80％RH
の養生室に入れ６時間保持した。気乾乾燥３週間
後このものを後記実施例２の管継手及び比較例１
の外層管状構成体と接続配管し、85℃の熱湯を20
／minの速度で20分間流下せしめ、その後下端
を閉じ満水状態として10分間保持した。この試験
中及び試験後被覆層及び内管には何らの異常も見
られず、内管の熱膨張による応力の悪影響は全く
ないことが確かめられた。

なお、上記多層管の内管と被覆層の間には
CMCが乾燥収縮して生じた空隙が厚み約0.7mmあ
りこの空間が本発明の外層管状構成体に熱応力吸
収機能を付与しているものと考えられる。

実施例 ２ 三方の開口部を有する硬質塩化ビニル管継手
（呼び径100）の各受口外周表面部にのみ実施例１
と同じ接着剤を刷毛塗りし、直ちにポリビニルア
ルコール粉末の水膨潤状態のものを厚み約２mmに
なるように付着せしめた。この管継手を上下に分
割し得、該管継手よりも直径が15mm大である内形
を有するウレタンゴム製型枠中に、各受口をホル
ダーを用いて外部から固定し、型枠底部に設けた
注入孔から下記組成のモルタルを圧入し、型枠と
管継手との間の空間を充満させた後、養生室に入
れ50℃に昇温せしめ５時間保持する。

モルタル組成 （重量部） 普通ポルトランドセメント 45 珪石粉 ９ 軽量骨材（パーライト） ６ クリソタイル石綿 ４ 耐アルカリ性ガラス繊維 １ 増粘剤（メチルセルロース） 0.1 水 35 自然放冷後脱型し、気乾乾燥３週間後、このも
のを実施例１及び比較例１の外層管状構成体と接
続配管し、実施例１と同じ熱湯流下のテストを行
なつた。この試験中及び試験後被覆層には何らの
異常も見られなかつた。また受口部には実施例１
の場合と同じように内管と外層管の間に約0.6mm
の空隙がみられた。

比較例 １ 実施例１におけるCMCの水膨潤物を使用する
工程を経ない以外は実施例１と全く同じ処法、操
作により多層管状構成体を製造した。このものを
気乾乾燥３週間後、実施例１の外層管状構成体及
び実施例２の管継手と接続し熱湯流下の試験を行
なつたところ、内管には何ら異常は認められない
ものの被覆層にたて構に幅0.5mm程度の数本の亀
裂を生じた。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 水に膨潤性の材料の粉粒体に水を添加して膨
   潤させた粉粒体を合成樹脂製内管の外周面の少な
   くとも一部に付着せしめ、該粉粒体の付着部分を
   少なくとも含めて合成樹脂製内管の外周面部を水
   硬性無機質材料と水とを主成分とする混練物で被
   覆成形し養生、硬化、乾燥せしめる事を特徴とす
   る多層管状構成体の製造方法。