JPS6349089B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は自動車のトランスミツシヨン用クラ
ツチギアに関する。

従来の自動車のトランスミツシヨン用クラツチ
ギア（以下略してクラツチギアと呼ぶ）として
は、例えば第１，２図に示すようなものがある。
このクラツチギア１には軸孔２、延長部３が設け
られており、また外周には等分に複数個のスプラ
イン歯４が設けられている。スプライン歯４は前
端部（第１図で上方を前方、下方を後方と呼ぶこ
とにする）にクラツチスリーブの内歯スプライン
との噛合を容易にするため断面三角刃状のチヤン
フア部５を有しており、また前端部から後端部に
わたつて前記クラツチスリーブの内歯スプライン
の抜け防止用の逆テーパが施された歯面６を有し
ている。逆テーパの施された歯面６は相手側であ
るクラツチスリーブの内歯スプラインの対応した
形状の歯面と係合しクラツチスリーブの軸方向の
移動（通常抜けと呼ばれる）を防止する役目をも
つものである。チヤンフア部５の前端、すなわち
稜線部８の前端面は第２図に示すようにクラツチ
ギア１の中心軸９と直交する平面１０上にあるよ
うに形成されている。また、チヤンフア部５のス
プライン歯４の谷部７側の端部には相手側内歯ス
プラインとの干渉を避けるためにＶ溝状切り込み
からなる逃げ部１１ａ，１１ｂが切削加工によつ
て形成される。これらの逃げ部１１ａ，１１ｂの
切削加工により結果的にとんがり状の余計な部分
１２が生じる。

このような構成の従来のクラツチギア１は、例
えば特公昭47−14696号公報に開示されているよ
うな方法で製造されていた。すなわち、第３図に
示すように、第１工程(イ)のように剪断した円柱状
素材１５を第２工程(ロ)で図示のように据込み成形
し、焼きなましおよび潤滑処理を施した後、第３
工程(ハ)で押出し成形し、第４工程(ニ)に示すように
据込み成形した後、第５工程(ホ)に示すように軸孔
２を打抜き成形して素材成形工程を終了する。こ
の時点(ホ)では、スプライン歯形成部の外径Ｄは、
クラツチギア仕上り時のスプライン歯４の外径
D₁よりも小さくしてある。次に、前記素材成形
工程を終了した素材１５に焼なましおよび潤滑処
理を施した後、第６工程(ヘ)でチヤンフア成形装置
によりチヤンフア部５を形成する。第７工程(ト)で
相隣るチヤンフア部５の間に軸方向の平行歯面１
６を押出し成形し、次の第８工程(チ)で前記第７工
程(ト)で生じた押出し余肉１７を打抜き装置により
除去する。これによりスプライン歯４が形成され
たわけであり。次の第９工程(リ)で平行歯面１６を
テーパ成形装置によつて逆テーパ側面６に成形し
た後、チヤンフア部５のスプライン歯４の谷部側
の端部に逃げ部１１ａ，１１ｂを切削加工により
形成する。

しかしながら、このような従来の自動車のトラ
ンスミツシヨン用クラツチギアにあつては、チヤ
ンフア部の前端稜線部の前端面がクラツチギアの
中心軸と直交する平面上にあるように形成されて
いたため、第１乃至第５の各素材成形工程を終了
した素材を鍛造プレス装置で前記第８工程が終了
した状態にまで一気にプレス成形しようとしても
歯部に所望の形状を出し難く、前述したような各
工程をそれぞれ経て多くの工数をかけなければ成
形できないという問題点があつた。

この発明はこのような従来の問題点に着目して
なされたもので、チヤンフア部の前端稜線部の前
端面を、クラツチギアの中心部から外周方向に向
かうにつれて微小な角度で後方に傾斜するように
形成するとともに、スプライン歯の谷部に、隣接
する２個のチヤンフア部の互いに対向し合うチヤ
ンフア面の前記谷部側の端部同士を一続きに連続
する凹部を設けることにより、上記問題点を解決
することを目的としている。

以下、この発明を図面に基づいて説明する。第
４，５図は、この発明の一実施例を示す図であ
る。まず構成を説明するが従来と同一部分には同
一符号を付してその説明は省略する。２２はクラ
ツチギア２１の軸孔であり、２３は延長部であ
る。２４はスプライン歯であり、２５はチヤンフ
ア部である。２６はスプライン歯２４の逆テーパ
歯面であり、２７はスプライン歯２４の谷部であ
る。チヤンフア部２５前端の稜線部２８の前端面
は第５図に示すように前記延長部２３の付け根２
９から外周方向へ向かうにつれて微小角度、本例
では５度の角度で後方（第５図では下方向）へ傾
斜している。３０はスプライン歯２４の谷部２７
の、隣接する２個のチヤンフア部２５，２５の間
にそれぞれ形成された凹部である。この凹部３０
を構成する凹曲面は、前記隣接する２個のチヤン
フア部２５，２５の互いに対向し合うチヤンフア
面３１，３２の前記スプライン歯２４の谷部に位
置する端部同士を一続きに連続するように形成さ
れている。

以上のような構成を有するクラツチギア２１は
以下に述べる工程を経て成形される。すなわち、
素材成形工程は第３図に示す従来のクラツチギア
１と同様であり、第１工程(イ)で剪断した素材を第
２工程(ロ)で据込み成形し、焼きなまし、および潤
滑処理を施こした後、第３工程(ハ)で押出し成形
し、第４工程(ニ)で据込み成形した後、第５工程(ホ)
で軸孔を打抜き成形して終了する。この時点で素
材のスプライン歯形成部の外径は、クラツチギア
仕上り時のスプライン歯２４の部分の外径とほぼ
同径に加工されている。次に、前記素材成形工程
を終了した素材に焼なましおよび潤滑処理を施し
た後、第６工程として、図示しない鍛造プレス装
置により前記素材に一気にスプライン歯２４の歯
溝、すなわち谷部、とチヤンフア部２５とをプレ
ス成形し、前述した従来のクラツチギア１の加工
工程の第８工程(チ)が終了した状態まで加工する。
この鍛造成形に際し、前述した如くチヤンフア部
２５の稜線部２８の前端面が微小の傾斜角を有し
ているため歯部の形状が出し易く、プレス鍛造成
形により容易にチヤンフア部２５およびスプライ
ン歯２４を成形することができる。更に、前記凹
曲面状の凹部３０もこれらチヤンフア部２５およ
びスプライン歯２４と同時にプレス成形される。
次の第７工程でテーパ成形装置によりスプライン
歯２４の平行歯面にテーパ加工を施し逆テーパ歯
面２６に加工してクラツチギア２１の成形加工が
終了する。

以上説明してきたようにこの発明によれば、外
周に複数のスプライン歯を具備し、該スプライン
歯が前端に断面三角刃状のチヤンフア部を有する
自動車のトランスミツシヨン用クラツチギアの前
記チヤンフア部の前端稜線部の前端面を、該クラ
ツチギアの中心部から外周方向へ向かうにつれて
微小角度で後方に傾斜するように形成するととも
に、前記スプライン歯の谷部に、隣接する２個の
前記チヤンフア部の互いに対向し合うチヤンフア
面の前記谷部側の端部同士を一続きに連続する凹
部を設けたため、従来、逃げ部の機械加工によつ
て結果的に生じたとんがり状の余計な部分であつ
て、スプライン歯の強度に何ら寄与しなかつた部
分を廃止できるのでその分だけ重量軽減及び材料
歩留り向上を図ることができた。また、従来は素
材成形工程終了後、スプライン歯にテーパ加工を
施すまでに４工程の成形加工が必要であつたのに
対し、２工程の成形加工しか必要とせず、更にチ
ヤンフア部の逃げ部の加工もこの２工程の中に含
まれているので従来のように該逃げ部を成形する
ための切削加工、および切削後の焼なまし等の熱
処理が不要となり、クラツチギアの製作に要する
工数を大巾に削減することができるという効果が
得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の自動車のトランスミツシヨン用
クラツチギアの部分斜視図、第２図は第１図の自
動車のトランスミツシヨン用クラツチギアの正面
半断面図、第３図は従来の自動車のトランスミツ
シヨン用クラツチギアの成形加工工程図、第４図
はこの発明に係る自動車のトランスミツシヨン用
クラツチギアの一実施例の部分斜視図、第５図は
第４図の自動車のトランスミツシヨン用クラツチ
ギアの正面半断面図である。 ２１…自動車のトランスミツシヨン用クラツチ
ギア、２４…スプライン歯、２５…チヤンフア
部、２８…チヤンフアの前端、３０…凹部、３
１，３２…チヤンフア面。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 外周に複数のスプライン歯を具備し、該スプ
   ライン歯が前端に断面三角刃状のチヤンフア部を
   有する自動車のトランスミツシヨン用クラツチギ
   アにおいて、前記チヤンフア部の前端稜線部の前
   端面を、前記クラツチギアの中心部から外周方向
   に向かうにつれて微小角度で後方に傾斜するよう
   に形成するとともに、前記スプライン歯の谷部
   に、隣接する２個の前記チヤンフア部の互いに対
   向し合うチヤンフア面の前記谷部側の端部同士を
   一続きに連続する凹部を設けたことを特徴とする
   自動車のトランスミツシヨン用クラツチギア。