JPS6348205Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、座板が弾性に抗して後傾動するよう
に構成した椅子の改良に関するものである。

このように座板が後傾動するように構成した椅
子においては、脚体に対する座板の枢着部は座板
の前端より可成り後方に位置し、換言すると座板
の前端が当該座板の枢着部よりも可成り前方に突
出しているため、座板を後傾動したときに当該座
板の前端が大きく上昇動することになるが、座板
の高さは通常の姿勢を基準として設定されている
ため、このように座板の前端部が上昇することに
よつて座つた人の大腿部を突き上げ、大腿部に圧
迫感を与える不具合があつた。

そこで先行技術としての実開昭53−64010号公
報は、座板を前部座板と後部座板とに分割し、そ
のうち後部座板を傾動装置を介して脚体に装着す
る一方、前部座板をリンク機構を介して脚体に取
り付けると共に、該前部座板と前記後部座板とを
屈曲自在に連結することにより、後部座板の後傾
動に伴つて前部座板が略水平のままの状態で上昇
動するように構成することを提案している。しか
し、この先行技術の場合、前部座板を水平状態に
保持できるので座板の先端部で大腿部を局部的に
突き上げるような不都合は回避できるが、前部座
板は後部座板の後傾動に連動して上昇動するもの
であるから、大腿部を全体として持ち上げるよう
な状態になり、座つた人の大腿部に対する圧迫感
を完全に除くことはできず、このため後傾した姿
勢で長時間座ると疲労が蓄積してくるという欠点
があつた。

また、前記公報においては、前後各座板の動き
をスムースにするため当該座板上に配設した座面
クツシヨンも前後に分割し、その分割した座面ク
ツシヨンをそれぞれ前後各座板に固着するように
しているが、座面クツシヨンを前後に分割するこ
とは美観を悪化させるのみならず、当該座面クツ
シヨンの製造が複雑になると言う問題があり好ま
しくない。つまり、座面クツシヨンは一体のもの
に形成することが望ましいのであるが、かと言つ
て、座面クツシヨンを一体のものに形成して前後
各座板に固着した場合には、後部座板を後傾動さ
せたとき座面クツシヨンのうち前部座板と後部座
板との継目部位に引つ張り力が作用するため、当
該座面クツシヨンが破れ易くなつて座面クツシヨ
ンの耐久性が低下するのみならず、後部座板の後
傾動も阻害するという問題が生じる。

本考案は、後部座板を後傾動させても前部座板
による大腿部への圧迫感が生じないようにすると
共に、前記のような問題を招来することなく座面
クツシヨンを一体的なものに形成できるようにし
てものである。

このため本考案は、前記のように座板を前後に
分割した椅子において、前部座板を、脚体に固着
した座板支持部材にて前傾動自在に枢支する一
方、座面クツシヨンを前部座板及び後部座板の両
方について一体的とし、該座面クツシヨンを、前
記後部座板に対して固着すると共に前部座板に対
しては前後方向に移動自在に載置した構成にした
ものである。

次に本考案を実施例図面に基づいて説明する
と、図において１は本考案にかかる椅子で、該椅
子１は、下端に床面に対するキヤスタ２を備えた
脚体３と、該脚体３に傾動装置５を介して取り付
けた後部座板４ｂと、該後部座板４ｂの前方に適
宜隔てて配設した前部座板４ａ及び、前記前後両
座板４ａ，４ｂの上面に配設した座面クツシヨン
２７等にて構成されており、前記後部座板４ｂに
は背もたれ部１０を一体的に取り付けている。

このうち前部座板４ａは、脚体３に固着した断
面下向きコ字形の座板支持部材６前部にピン２８
にて枢支しており、全体としての上下動が不能で
且つ若干の角度だけ前傾し得るよう構成してい
る。この場合、前部座板４ａをピン２８枢支する
位置は、図面で示すように当該前部座板４ａの後
端部寄り部位に位置させるのが望ましい。また、
前記座板支持部材６を脚体３に固着するに当つて
は、当該座板支持部材６の後端に支持ブラケツト
９を固着し、該支持ブラケツト９に穿設した孔に
脚体３上端部を嵌着するようにしている。

一方、前記傾動装置５は、前記座板支持部材６
の外側に配設した左右一対の座板支持体７ａ，７
ｂと、該両座板支持体７ａ，７ｂを貫通して水平
横向きに配設したトーシヨンバー８等にて構成さ
れており、両座板支持体７ａ，７ｂをトーシヨン
バー８のねじり弾性力に抗して後傾動自在に構成
することによつて、当該両座板支持体７ａ，７ｂ
の上面に固着した後部座板４ｂが弾性に抗して後
傾動可能になるようにしている。

すなわち、前記両座板支持体７ａ，７ｂをその
後部において一体的に連結する一方、該両座板支
持体７ａ，７ｂのうち一方の座板支持体７ｂの外
側面には、前記脚体３の軸心から適宜寸法だけ
前側にずれた位置に、水平横向きに延びる円筒状
の支持部材１１を外向きに突出するように固着す
る。そして、該円筒状支持部材１１内に挿入した
トーシヨンバー８の一端を、金具１２を介して当
該円筒状支持部材１１の先端に回動不能に係止す
ると共に、該円筒状支持部材１１の基部には、前
記トーシヨンバー８に被嵌するようにした合成樹
脂製のフランジ付きブツシユ１３を嵌挿し、該ブ
ツシユ１３のフランジを円筒状支持部材１１と座
板支持部材６の一方の側板６ｂとの間に介挿す
る。

一方、前記座板支持部材６の左右両側板６ａ，
６ｂ及び他方の座板支持体７ａには、前記トーシ
ヨンバー８が挿通するようにした丸孔を穿設し、
該丸孔内に合成樹脂製の円筒状軸受１４，１５，
１６を各々嵌着すると共に、該各軸受１４，１
５，１６の内部には、トーシヨンバー８に被嵌す
るようにした合成樹脂製のブツシユ１７，１８，
１９を嵌挿しており、これによつて、両座板支持
体７ａ，７ｂひいては後部座板４ｂがトーシヨン
バー８を中心にして回動できるように構成する。

更に、前記他方の座板支持体７ａの外側方に左
右横長の筒状部材２０を配設して、該筒状部材２
０に前記一方の座板支持体７ｂから外向き突出し
たトーシヨンバー８を挿入し、トーシヨンバー８
の先端部を金具２１を介して筒状部材２０の先端
に回転不能に係着する。そして、前記筒状部材２
０の基端部には、前記他方の座板支持体７ａの外
側面に沿つて延びるアーム２２の基端を固着し、
該アーム２２の先端にハンドル付きねじ杆２３を
螺合する一方、前記座板支持部材６の他方の側板
６ａに固着したＬ型ブラケツト２５の先端に凹所
２６を形成し、前記ねじ杆２３の先端部２４を該
凹所２６に係合させることにより、座板支持体７
ａ，７ｂひいては後部座板４ｂの後傾動に対して
トーシヨンバー８のねじり弾性力を付与するよう
に構成する。

前記座面クツシヨン２７は、前後両座板４ａ，
４ｂについて一体のものに形成しており、該座面
クツシヨン２７は、後部座板４ｂに対しては固着
する一方、前部座板４ｂに対しては前後方向に摺
動自在となるよう載置している。

以上の構成において、椅子１に座つた人が上半
身を後方に傾けると、後部座板４ｂトーシヨンバ
ー８を回転の中心として当該トーシヨンバー８の
ねじり弾性力に抗して後傾動する一方、前部座板
４ａは、座つた人の大腿部の姿勢に倣つた状態で
若干前傾することになり、後部座板４ｂが後傾動
することによつて当該後部座板４ｂ前端部と前部
座板４ａ後端部との間に段差が生じるのが防止さ
れる。

この場合において、後部座板４ｂの前端からト
ーシヨンバー８までの距離は、座板を後部座板４
ｂと前部座板４ａとに分割したことにより、座板
を分割することなく一体のものに構成した場合に
比べて短くなるから、この後部座板４ｂの後傾動
によつて当該後部座板４ｂの前端が上昇する高さ
が低くなる。また、前部座板４ａは全体として上
昇することは無く単に前傾動するのみであるか
ら、後部座板４ｂの後傾動に伴なつて前部座板４
ａが前傾動しても、当該前部座板４ａの前端部は
通常の状態により若干下方に下がることになる。

また、座面クツシヨン２７の前部は前部座板４
ｂに対しては単に載置されているのみであるか
ら、後部座板４ｂが後傾動するのに伴つて座面ク
ツシヨン２７の前部は前部座板４ａの上面を後方
に滑ることになり、当該座面クツシヨン２７に無
理な引張力が作用することが防止される。

なお、前記第１図は、椅子における背もたれ部
１０を後部座板４ｂと一体的に形成した場合を示
したが、この背もたれ部は後部座板４ｂに対する
座板支持体７ａ，７ｂに取付けても良い。また、
後部座板４ｂの後傾動に抗して弾性を付与する手
段としては、前記トーシヨンバー８に限らずコイ
ルばね又は板ばねでも良いのである。

以上の通り本考案によると、後部座板の後傾動
に伴つて前部座板は前傾動し得るように構成した
ものであるから、後部座板の後傾動に伴つて前部
座板との間に段差が生じるのを防止でき、しかも
前部座板は全体として上昇動することはなく、前
傾動に伴つてその前部は逆に下降するものである
から、後部座板が後傾動しても前部座板によつて
座つた人の大腿部を全体的に持ち上げるようなこ
とはなく、従つて、大腿部に対する圧迫感が殆ど
無い、長時間座つても疲れない座り心地の良い椅
子を提供できる効果を有する。

更に、後部座板の後傾動に伴つて座面クツシヨ
ンが前部座板の上面をすべるようにしたから、座
面クツシヨンを前後両座板について一体的なもの
として形成した場合であつても、後部座板の後傾
動によつて座面クツシヨンに無理な引つ張り力が
作用するのを防止でき、従つて、座面クツシヨン
は前後に分割する必要がなく、座板を前後に分割
したことによつて椅子の外観が悪化したり座面ク
ツシヨンの構造が複雑になつたりする不都合も回
避できるのである。

しかも、前部座板は脚体に固着した座板支持部
材にて枢支するに過ぎず、極く簡単な構造である
から、優れた座り心地を提供できる椅子でありな
がら製造コストも低減することができるのであ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図は椅子全
体の側面図、第２図は傾動装置の側面図、第３図
は第２図の平面図、第４図は第２図の−視断
面図、第５図は座面クツシヨンと座板との関係を
示す断面図である。 １……椅子、３……脚体、４ａ……前部座板、
４ｂ……後部座板、５……傾動装置、６……座板
支持部材、７ａ，７ｂ……座板支持体、８……ト
ーシヨンバー、２７……座面クツシヨン、２８…
…ピン。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 脚体の上方に配設した座板を前部座板と後部座
   板とに分割し、前記後部座板を、弾性に抗して後
   傾動し得るよう傾動装置を介して脚体に装着する
   一方、前記前部座板及び後部座板の上面には座面
   クツシヨンを配設して成る椅子において、前記前
   部座板を、前記脚体に固着した座板支持部材にて
   前傾動自在に枢支する一方、前記座面クツシヨン
   を前部座板及び後部座板の両方について一体的と
   し、当該座面クツシヨンを、前記後部座板に対し
   て固着すると共に前部座板に対しては前後方向に
   移動自在に載置したことを特徴とする椅子。