JPS63399Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は筒体の全断面積を有効揚水断面積と
すると共に、加圧空気を速かに一の空気塊とする
ことを目的とした揚水筒に関するものである。従
来湖沼等の水質改善として、水を強制対流させる
と共に酸素を供給する揚水筒方式が知られてお
り、移多の湖沼等に設置されているが、その多く
は筒体の下部に空気室を連設し、筒体の下部内側
に仕切板を設置し、この仕切板の中央部に穿設し
た連通管を介して加圧空気を浮上させると共に、
前記仕切板設置部の上部の筒体壁に設けた吸水管
から吸水して深部（往々20m以上の水深がある）
の水を筒体内に吸入し、これを表層に導き、結果
的に上下対流を生起させている。

然し乍ら吸入管は筒体側壁に連結されている為
に、吸入に際し、相応の流動抵抗の発生は免れ
ず、かつ連通管は筒体より小径であるから、連通
管から上昇した空気塊が筒体内を塞ぐまで膨張す
るには若干の距離を必要とし（上昇し乍ら膨張す
る為）必然的に筒体の長さ制限が厳しくなる傾向
があつた。

然るにこの考案は筒体の外側へ空気室を設け、
空気室と筒体内とは筒体壁へ円周方向に穿設した
連通孔によつて連通させたので、筒体内を上昇す
る水は、筒体下端よりその全断面が有効上昇断面
となるので抵抗が少なく、かつ筒体内へ入つた空
気は速かに膨張して一団の空気塊となるなど前記
従来の問題点を解決したのである。

この考案における空気室の位置は筒体のほヾ中
央より下方とするが、水深の大きい湖沼（例えば
20m以上）においては、空気室の位置を筒体の中
央部又は中央部より若干上部にすることによつて
加圧空気の送気圧力を低下し、ランニングコスト
を低減することができる。即ちこの考案のように
空気塊を自動間欠式に給送する装置においては、
空気室の水深によつて給送空気の圧力が定まり、
その圧力と容量とによつて空気ポンプの容量が定
まる。従つて比較的上部に空気室があればそれだ
け低い圧力で空気を送ることが可能となり、ポン
プの容量も小さく、従つて消費電力も少なくなる
など、ランニングコストを低減することができ
る。次にこの考案の実施例について説明する。

筒体１の中央部より若干下方に（例えば全長の
下より1/3〜2/5の位置）空気室用の外筒２を嵌装
固着し、前記外筒２の内壁と、筒体１の外壁との
間に二つの中間筒よりなる仕切壁３，４を同心的
かつ等間隔に嵌挿して外側空間５、中間空間６お
よび内側空間７を並列縦設する。

前記外側空間５と中間空間６の仕切壁４には上
部で連通する連通孔８を設け、中間空間６と内側
空間７との仕切壁３には下部で連通する連通孔９
を設け、筒体１の内側と内側空間の上部との筒体
壁には、連通溝１０を円周に沿つて幅広に設け
る。この連通溝１０は筒体壁を一定の長さに亘つ
て切断してもよいが、強度上若干の連結部１１を
複数箇所設ける方が好ましい。また連通溝１０の
高さは中間空間６の頂部より上方へ一定距離（例
えば200mm〜500mm）上昇した位置が好ましい。こ
のようにすれば、内側空間を上昇する空気塊に方
向性（第２図中矢示１２）が付与され、水の逆流
を防止して間欠上昇する空気量を外側空間と中間
空間の容積の和に可及的に近接させることができ
るので、揚水筒を設計通りに動作させることがで
きる。前記における連通溝の高さが、中間空間の
頂部に近接すると、連通溝１０より筒体内の水が
逆流し、外側空間および中間空間の空気の排出が
不完全になり、結局筒体内を上昇（第２図中矢示
１３）する空気量が少なくなるから、揚水能力の
低下又は揚水の減速を生じるおそれがある。図中
１４は筒体１上端部外側に固定した浮子、１５は
筒体１の下端に固定した重錘、１６は筒体の補強
リブ、１７は送気ホースである。

前記実施例において、送気ホース１７から外側
空間５内へ加圧空気（例えば空気室の水圧より10
〜20％高い圧力）を矢示１８のように給送すれ
ば、給送された加圧空気は外側空間および内側空
間の頂部より溜り始め、該部の水面を逐次押し下
げる。かくて水面１９が連通孔９に達すると、外
側空間５と中間空間６内に溜つた空気は一団とな
つて矢示２０，２１のように移動し、内側空間を
矢示２２のように上昇して連通溝１０より矢示２
３のように筒体１内へ排出される。この場合に連
通溝１０は幅広く設けてある為に、空気は筒体壁
の周辺より一度に筒体内へ入るので、速かに空気
塊を形成し、第２図中鎖線図示のような砲弾型の
空気塊２４となつて筒体１内を矢示１２のように
上昇する。そこで、前記空気塊２４の下方の水は
空気塊２４の上昇につれて上昇し、上昇水流を生
起し、筒体下端から水を吸い上げる。前記のよう
にして上昇した水は、筒体上端より吹き出され、
水面空気に接触して曝気効果を奏すると共に、水
面付近の溶存酸素量の多い水は水平方向へ流動す
ると共に矢示２６のように逐次下降し、広水域に
おいて対流を生起し、曝気効果を高める。前記に
おいて、筒体１の外側下部へ空気室を嵌装したの
で、筒体は全断面を揚水断面として使用し得る効
果がある。従つて深部の水は何等の防害物なく、
筒体内を上昇させることができる。また空気室の
内側空間の上部を中間空間の頂部より若干高くし
たので、外側空間と中間空間の空気塊は一団とな
つて内側空間を上昇し、比較的速かに一つの空気
塊となつて筒体内へ排出されるので、筒体の長さ
制限を大幅に緩和し得る効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案の実施例の一部を省略した正
面図、第２図は同じく空気室付近の断面拡大図で
ある。 １……筒体、２……外筒、３，４……仕切壁、
５……外側空間、６……中間空間、７……内側空
間、８，９……連通孔、１０……連通溝。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 筒体の外側下部へ空気室用の有頂の外筒を嵌
   装固着し、前記外筒の内壁と前記筒体の外壁と
   の間へ二つの中間筒よりなる仕切壁を同心的に
   嵌挿して外側、中間および内側の三つの空間を
   縦設し、前記外側空間と中間空間の仕切壁には
   上部で連通孔を設け、中間空間と内側空間は下
   端を閉鎖すると共に、その仕切壁には下部で連
   通孔を設け、内側空間の頂部を中間空間の頂部
   より上方に設けると共に、内側空間の上部の筒
   体壁に連通孔を設け、前記外側空間へ送気管連
   結口を設けた揚水筒。 ２ 筒体壁の連通孔は、同一円周上へ円周方向に
   幅広い溝として穿設した実用新案登録請求の範
   囲第１項記載の揚水筒。