JPS633418Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、ポンプ本体のバレル嵌装穴に密嵌さ
れたバレル内でプランジヤを往復させることによ
つて燃料を圧送可能とする一方、前記バレルの中
段部に形成した燃料室内において前記プランジヤ
の外側に摺動且つ回動自在に環状弁を嵌挿し、さ
らに前記プランジヤを機関の負荷状態に応じて適
宜に回動させることによつて前記環状弁が前記プ
ランジヤの頂部と側周面間にまたがつて形成され
た通油孔を開閉する時期を変化させもつて燃料の
噴射量を制御し得る如くするとともに、前記環状
弁を前記プランジヤの軸方向に変位せしめること
によつて燃料の噴射時期を制御し得る如くした燃
料噴射ポンプに関するものである。

従来のこの種の（ポンプ本体のバレル嵌装穴に
密嵌されたバレルの中段部に燃料室を設けた）燃
料噴射ポンプの内、特に燃料室内の燃料がプラン
ジヤとバレルとの嵌合部（この嵌合部はバレルの
内側に位置するところから以下の説明においては
内側嵌合部という）を通つてカム軸側に漏出しな
いようにした油密構造の燃料噴射ポンプにおいて
は、プランジヤとバレルとのハメアイ〓間を可及
的に小さくして両者間の内側嵌合部の油密性を良
好に維持するようにしていた。

ところが、このようにプランジヤとバレルとを
密嵌すると該内側嵌合部の油密性が向上する反
面、該内側嵌合部の〓間が小さいため温度上昇に
よるプランジヤ及びバレルの変形あるいは該内側
嵌合部の潤滑油の油膜不足時によつてバレルとプ
ランジヤとの間に焼付きが発生するという危惧が
ある。

一方、このバレルとプランジヤとの間の内側嵌
合部におけるにおけるハメアイを比較的緩くする
とともに、該内側嵌合部を通つて燃料油がカム軸
側へ漏出するのを防ぐためにはこの漏出する燃料
油をこの内側嵌合部の途中において抽出してこれ
をポンプ本体の外部へ排出する必要があるが、こ
の場合、特に上述の如くポンプ本体のバレル嵌装
穴内にバレルが密嵌される構成の燃料噴射ポンプ
においてはその構造上、上記漏出する燃料油をバ
レル嵌装穴とバレルとの間の嵌合部（以下、これ
を外側嵌合部という）を介して排出する構成を採
らざるを得ない。

ところが、このポンプ本体のバレル嵌装穴とバ
レルとの間の外側嵌合部においても上記プランジ
ヤとバレルとの間の内側嵌合部と同様に上記漏出
する燃料油が該外側嵌合部を介してカム軸側に漏
出するのを防止する必要があり、必然的にそのハ
メアイを小さくせざるを得ないが、このようにバ
レル嵌装穴とバレルとのハメアイが小さくなると
燃料噴射ポンプの分解・組立時においては該バレ
ルのバレル嵌装穴に対する脱着が困難となり、そ
の分解・組立性が悪化することとなる。

本考案は、上記の如き問題に鑑み、プランジヤ
とバレルの嵌合部に燃料室からの漏出油を抽出し
てバレル外に排出することができるようにした漏
出油排出路を形成することによつて、プランジヤ
とバレルとの間の内側嵌合部のハメアイ状態を比
較的ラフに設定しても該内側嵌合部の油密性を良
好に維持することができるとともに、該内側嵌合
部における潤滑性を向上せしめて該内側嵌合部の
焼付き等のトラブルの発生を未然に防止すること
ができ、さらにポンプ本体のバレル嵌装穴とバレ
ルとの間の外側嵌合部のハメアイ状態を比較的ラ
フに設定しても該外側嵌合部における油密性を良
好に維持し得るようにすることにより該バレル嵌
装穴に対するバレルの脱着を容易ならしめその分
解・組立性の向上を図ることができるような構造
を有する燃料噴射ポンプを提供することを目的と
してなされたものであり、ポンプ本体のバレル嵌
装穴に密嵌されたバレルの中段部に燃料室を形成
して該燃料室内においてプランジヤの外側に摺動
且つ回動自在に環状弁を嵌挿し、さらに前記プラ
ンジヤを機関の負荷状態に応じて適宜に回動させ
ることによつて前記環状弁が前記プランジヤ３の
頂部と側周面間にまたがつて形成された通油孔を
開閉する時期を変化させもつて燃料の噴射量を制
御し得る如くするとともに、前記環状弁を前記プ
ランジヤの軸方向に変位せしめることによつて燃
料の噴射時期を制御し得る如くした燃料噴射ポン
プにおいて、前記バレルにおける前記燃料室によ
りカム軸寄りの位置にある前記プランジヤとバレ
ルの嵌合部（内側嵌合部）において前記プランジ
ヤの外周を囲繞する如く環状溝を形成し該環状溝
を前記バレルの外周面とポンプ本体のバレル嵌装
穴の内面との間の環状空〓に通じる連通孔により
燃料油の戻り通路に連通せしめたことを特徴とす
るものである。

以下、本考案の燃料噴射ポンプを添付図面に示
す実施例に基づいて説明すると、第１図及び第２
図には本考案実施例に係る３気筒列型燃料噴射ポ
ンプＺが示されている。この燃料噴射ポンプＺ
は、バレル２内に形成したプランジヤ嵌挿穴４３
内でプランジヤ３を往復動させて燃料を圧送する
ようにしたポンプ単筒ユニツトＸをポンプ本体１
内に３個列設して構成されている。

ポンプ本体１は、その軸方向中心よりやや上方
位置の外周面にエンジン本体（図示省略）側への
取付部となる板状の取付フランジ１１を一体形成
するとともに、その軸心部にはポンプ単筒ユニツ
トＸ，Ｘ，Ｘを収容するための貫通穴５０を３個
列設している。この貫通穴５０は実質的にバレル
２が密嵌される嵌装穴として機能するものであ
り、以下の説明においてはこの貫通穴５０をバレ
ル嵌装穴５０という。尚、この実施例においては
このバレル嵌装穴５０とバレル２の外周面２ａと
の間のハメアイを従来に比してやや大きくしてい
る。

バレル２は、その軸心部にプランジヤ嵌挿穴４
３を貫設する一方、軸方向中段部に該プランジヤ
嵌挿穴４３と直交方向において連通しプランジヤ
嵌挿穴４３を上部プランジヤ嵌挿穴４３ａと下部
プランジヤ嵌挿穴４３ｂに区分する断面矩形の貫
通穴４０を形成している。この貫通穴４０は、そ
の外側を前記ポンプ本体１のバレル嵌装穴５０の
内周面で囲繞されて燃料室３５を形成する。この
プランジヤ嵌挿穴４３は、プランジヤ３との間で
従来に比してややラフな嵌合をし得る内径寸法を
有している。尚、この燃料室３５には、ポンプ本
体１に形成した燃料入口通路３２の一端３２ａと
燃料出口通路３３の一端３３ａがそれぞれ開口せ
しめられており、該燃料入口通路３２と燃料出口
通路３３は燃料室３５を介して相互に連通せしめ
られている。又、燃料室３５はプランジヤ３の頭
部３ａと側周面３ｂの間にまたがつて形成された
通油孔２２を介して燃料加圧室２３と連通せしめ
られている。

燃料室３５内には、該燃料室３５を貫通したプ
ランジヤ３の外側に摺動且つ回動自在に嵌挿され
た環状弁５が収容されている。この環状弁５は燃
料室３５内にその内面に沿つて収容し得る如く略
矩形状に形成されており、該燃料室３５の開口部
に対する２側面には横溝５ａと縦溝５ｂとを形成
している。この環状弁５の横溝５ａと縦溝５ｂに
は燃料室３５をはさんで対向するポンプ本体１の
側壁１ａ，１ｂを貫通して設けられたタイマーピ
ン７の偏心頭部７ａと不均率調整ピン８の偏心頭
部８ａとがそれぞれ係合せしめられており、該タ
イマーピン７によつて環状弁５をプランジヤ軸方
向に変位させて燃料噴射時期を調整し、又、不均
率調整ピン８によつて環状弁５を微少角度だけプ
ランジヤ３に対して相対回動せしめることによつ
て各ポンプ単筒ユニツトＸ，Ｘ……間の燃料噴射
量の不揃いを調整することができるようになつて
いる。尚、各ポンプ単筒ユニツトＸ，Ｘ……の本
来の燃料噴射量制御は、プランジヤ３の下端鍔部
３ｃに係合せしめられたプランジヤ回動輪４をコ
ントロールラツク６で機関の負荷状態に応じて適
宜に回動させ、プランジヤ３と環状弁５との回動
方向の相対位置を変化させることによつて行なわ
れる。

一方、バレル２の下端部２ｂと前記貫通穴４０
の間には、燃料室３５内からプランジヤ３とバレ
ル２の内側嵌合部の間〓を通つてカム軸６５側に
漏出する燃料油を該バレル下端部２ｂと下部プラ
ンジヤ嵌挿穴４３ｂの中間位置で抽出してバレル
２外に排出するための漏出油排出路４５が形成さ
れている。この漏出油排出路４５は、第３図に示
す如くプランジヤ３の外周をとりまくようにして
下部プランジヤ嵌挿穴４３ｂの内周面上に形成さ
れた環状溝４７と該環状溝４７をバレル２の外側
面２ａに連通せしめる横方向の連通孔４６より構
成されている。尚、この連通孔４６は、環状溝４
７側からバレル外側面２ａ側に向けて若干上向き
に傾斜せしめられており、環状溝４７内に常時適
量の燃料を貯溜することができるようになつてい
る。

又、連通路４６のバレル外側面２ａ側の開口端
４６ａは、該バレル外側面２ａとポンプ本体１の
バレル嵌装穴５０の内面５０ａとの間に形成され
た環状空〓４８内に開口せしめられており、さら
に該環状空〓４８はポンプ本体側壁１ｂを貫通し
て設けた貫通穴４９を通して燃料戻り通路６０に
連通している。

尚、第２図において符号７０は燃料タンク、第
３図において符号３８，３８はオイルシールをそ
れぞれ示している。

続いて、図示実施例の燃料噴射ポンプＺの作動
並びにその作用を説明すると、この燃料噴射ポン
プＺの各ポンプ単筒ユニツトＸ，Ｘ……は、それ
ぞれフイードポンプ７２から送られた燃料タンク
７０内の燃料を燃料入口通路３２から燃料室３５
内に導入せしめるようになつている。この燃料室
３５内に導入された燃料の内、その一部はプラン
ジヤ３の往復動に伴なつて該プランジヤ３の吸入
口２０から通油孔２２を介して燃料加圧室２３内
に吸入され、さらに該プランジヤ３によつて加圧
されてデリバリバルブ９から燃料噴射弁７１に送
られエンジンの各シリンダ内に噴射される。

又、燃料室３５内に導入された燃料の内、燃料
加圧室２３内に吸入されなかつた余剰燃料は燃料
出口通路３３から燃料タンク７０へ戻され再びフ
イードポンプ７２によつて燃料室３５へ送られ
る。

燃料室３５内に導入された燃料は、プランジヤ
３の往復動によつてエンジン側へ圧送されるが、
この燃料の圧送量（噴射量）は機関の負荷の変動
に応じて変位するガバナレバー３０を介してコン
トロールラツク６を進退操作し、プランジヤ３を
環状弁５に対して相対回動させて通油孔２２を介
して該プランジヤ３の頂部３ａに連通しているリ
ード２１と環状弁５のスピル孔３４との連通タイ
ミングを変化させ、もつて加圧燃料の逃し次期を
変化させることによつて調整される。

燃料の噴射時期の調整は、機関の回転数の変動
に応じて変化せしめられる調整杆２９でタイマー
用回動レバー２８を介してタイマーピン７を適宜
に回動させ、該タイマーピン７の偏心頭部７ａに
係合せしめられた環状弁５をプランジヤ軸方向に
適宜に変位させて該環状弁５５でプランジヤ３の
通油孔２２につながる吸入口２０及びリード２１
を開閉する時期を制御することによつて行なわれ
る。

各ポンプ単筒ユニツトＸ，Ｘ……間における燃
料噴射量の不揃いは、各ポンプ単筒ユニツトＸ，
Ｘ……に設けられた不均率調整ピン８によつて環
状弁５を適宜に回動させてプランジヤ３のリード
２１と環状弁５のスピル孔３４との連通タイミン
グを変化させることによつて調整される。

尚、この不均率調整ピン８は調整ネジ１９によ
つて任意の回動位置でポンプ本体１側に固定され
る。

一方、燃料室３５より下側のバレル２とプラン
ジヤ３の内側嵌合部においては、該内側嵌合部の
〓間を従来に比してやや大きくしているため、燃
料室３５内の燃料は容易に該内側嵌合部に侵入し
て該内側嵌合部を潤滑しながら降下し漏出油排出
路４５の環状溝４７内に一時的に貯溜される。こ
の環状溝４７内に貯溜された燃料によつて該環状
溝４７より下側位置の内側嵌合部も十分に潤滑さ
れる。環状溝４７内に貯溜された燃料油は連通孔
４６、環状〓間４８及び貫通穴４９を通つて燃料
タンク７０側に排出される。このように、プラン
ジヤ３とバレル２の下部プランジヤ嵌挿穴４３ｂ
との間の〓間を従来の場合よりも大きくしていれ
ばプランジヤ３とバレル２間の〓間が温度上昇に
よつて縮小しても両者が直接に接触するというこ
とがなく、しかも該内側嵌合部が燃料室３５から
漏出した燃料によつて十分に潤滑されるため、該
内側嵌合部に焼付き現象が発生するという危惧は
全くない。

さらに、ポンプ本体１のバレル嵌装穴５０の内
面５０ａとバレル２の外周面２ａの間に環状空〓
４８を形成し、この環状空〓４８を介して、バレ
ル２とプランジヤ３との間の内側嵌合部に形成さ
れた環状溝４７とポンプ本体１側の貫通穴４９と
を相互に連通せしめるようにしているため、該環
状溝４７内に抽出貯溜された燃料油をスムーズに
バレル２外に排出することができ、このため、ポ
ンプ本体１のバレル嵌装穴５０の内面とバレル２
の外周面２ａの間の外側嵌合部のハメアイ状態を
該外側嵌合部の油密性をさほど気にすることなく
従来よりも比較的ラフに設定することが可能であ
る。従つて、該外側嵌合部におけるハメアイ状態
が比較的ラフであるところから、燃料噴射ポンプ
の分解・組立時には該バレル２をポンプ本体１に
対して容易に脱着することができるこことなる。

次に、本考案の効果を説明すると、本考案の燃
料噴射ポンプはプランジヤとバレル間のハメアイ
を比較的ラフにする一方バレルの中段部に形成し
た燃料室とバレルの下端部との間に、プランジヤ
とバレルの嵌合部を通つて燃料室側からバレル下
端部に向けて漏出する燃料を抽出してバレル外へ
排出する如く作用する漏出排出部を設けているた
め、カム軸側への燃料油の漏出を防止しつつプラ
ンジヤとバレルの嵌合部の潤滑油を向上せしめる
ことができ、その結果、プランジヤとバレルの嵌
合部に発生する焼付き等のトラブルを未然に防止
することができるという効果がある。

又、プランジヤとバレル間のハメアイをラフに
し得ることによつて、プランジヤ及びバレルの加
工が容易となり、加工コストの低減化を図ること
ができるという効果もある。

さらに、本考案の燃料噴射ポンプは、プランジ
ヤとバレルとの嵌合部（内側嵌合部）に形成した
漏出燃料油抽出用の環状溝を、該バレルの外周面
とポンプ本体のバレル嵌装穴の内面との間の嵌合
部（外側嵌合部）に形成された環状空〓に通じる
連通孔を介して燃料油の戻り通路に連通せしめる
ことにより、該嵌合部（外側嵌合部）における油
密性を損ねることなく該嵌合部を介しての燃料油
の排出を円滑ならしめ、もつて該嵌合部のハメア
イ状態を従来に比して比較的ラフに設定できるよ
うにしているため、ポンプ本体１のバレル嵌装穴
に対するバレルの脱着が容易であり、それだけ燃
料噴射ポンプの分解・組立性が向上するという効
果も得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案実施例の燃料噴射ポンプの正面
図、第２図は第１図の−縦断面図、第３図は
第２図の部拡大図、第４図は第１図の燃料噴射
ポンプの要部分解斜視図である。 １……ポンプ本体、２……バレル、２ａ……バ
レル外側面、３……プランジヤ、３ａ……プラン
ジヤ頂部、３ｂ……プランジヤ側周面、５……環
状弁、２２……通油孔、３５……燃料室、４３…
…プランジヤ嵌挿穴、４５……漏出油排出路、４
６……連通路、４７……環状溝、５０……バレル
嵌装穴。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ポンプ本体１のバレル嵌装穴５０に密嵌された
   バレル２のプランジヤ嵌挿穴４３内に嵌挿したプ
   ランジヤ３をカム軸６５の回転に伴なつて往復動
   させることによつて燃料を圧送可能とする一方、
   前記バレル２の中段部に前記プランジヤ嵌挿穴４
   ３に連通した状態で燃料室３５を形成して該燃料
   室３５内において前記プランジヤ３の外側に摺動
   且つ回動自在に環状弁５を嵌挿し、さらに前記プ
   ランジヤ３を機関の負荷状態に応じて適宜に回動
   させることによつて前記環状弁５が前記プランジ
   ヤ３の頂部３ａと側周面３ｂ間にまたがつて形成
   された通油孔２２を開閉する時期を変化させもつ
   て燃料の噴射量を制御し得る如くするとともに、
   前記環状弁５を前記プランジヤ３の軸方向に変位
   せしめることによつて燃料の噴射時期を制御し得
   る如くした燃料噴射ポンプであつて、前記バレル
   ２における前記燃料室３５より前記カム軸６５寄
   りの位置にある前記プランジヤ３とバレル２の嵌
   合部において前記プランジヤ３の外周を囲繞する
   如く環状溝４７を形成しさらに該環状溝４７を前
   記バレル２の外周面２ａとポンプ本体１のバレル
   嵌装穴５０の内面５０ａとの間の環状空〓４８に
   通じる連通孔４６により燃料油の戻り通路６０に
   連通せしめたことを特徴とする燃料噴射ポンプ。