JPS6316823Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は内燃機関用排気消音装置に関するも
のである。

従来から、内燃機関用排気消音装置として吸音
材を用いたものがあり、その吸音材としては、グ
ラスウールや金属多孔体などがあつた。しかし、
これらのものを吸音材としてそのまま使用した場
合、内燃機関運転時にガソリン等の燃料の燃焼残
渣であるすすやタールが吸音材内部に流入・堆積
することにより生じる。したがつて、吸音材内部
にすすやタールが流入するのを防止するには、排
気ガスと接しない位置に吸音材を配置するか、あ
るいは、吸音材内部に排気ガスが流入しない吸音
材構造が必要となる。

前者の手段については、一般に排気ガス流れと
離れる位置に吸音材を配置すればするほど、排気
ガスと共に伝搬してくる音波と吸音材との接触度
合が低下し、排気消音装置の消音能力が低下して
くる。また、排気ガス流れに触れない位置に吸音
材を配置することは通常、構造的にも不可能であ
る。従つて、この方式の実現性は極めて低いもの
となる。

後者の手段については、吸音材内部に排気ガス
が流入しない構造にするためには、吸音材の表面
に通気性のない薄膜を形成すれば流れを遮断する
ことができる。しかし、薄膜を形成することは音
波自身も吸音材内部に伝搬しにくくなり吸音率を
低下させることになるが、薄膜の厚さなどの調整
により薄膜と吸音材の空孔などで形成される機械
−音響インピーダンス系の固有値を高吸音率が望
まれる低周波領域に設定することにより従来の吸
音材より低周波領域の吸音率を向上させることが
可能となる。

この考案は上記した点に着目してなされたもの
であり、排気通路の構成する筒形多孔質吸音体の
排気通路壁面に薄膜を形成させることにより、こ
の薄膜の作用で排気ガス中のタールやすすが多孔
質吸音体の内部に侵入するのを阻止させると同時
に、薄膜にタールやすすが付着した場合でも、こ
れらを排気流によつて直ちに吹き飛ばして除去す
ることができるような排気消音装置の提供を目的
とする。

つぎに、この考案の実施例を図面にしたがつて
説明する。

第１図において、１は筐体、２は排気入口管、
３は排気出口管であり、排気出口管３は拡大管に
よつて構成されている。４は多孔質吸音体を示し
ており、この吸音体４は筒形多孔性材料よりな
り、その内部の排気通路５によつて、上記入口管
２と出口管３とを直線状に連通させ、また、その
排気通路５の壁面に薄膜６を有する。第１図から
明らかなように、上記吸音体４はその長手方向、
すなわち、排気流方向中央部で二分割されてその
各分割単位体４ａ，４ｂを構成している。そし
て、排気流の上流側に位置する分割単位体４ａの
薄膜６ａよりもその下流側に位置する分割単位体
４ｂの薄膜６ｂの方が薄くなるように構成されて
いる。具体的には、薄膜６ａが200μm、薄膜６ｂ
が100μmに設定されている。また、多孔質吸音体
４の分割部には隔板７が配置されて、筐体１の内
部を前段室８ａと後段室８ｂとに二分している。

このような排気消音装置において、排気ガスＡ
は入口管２を経て多孔質吸音体４の排気通路５に
導入され、さらに出口管３を経て外部へ放出され
る。この場合において、排気ガスに同伴するター
ルやすすが多孔質吸音体４の薄膜６に付着して
も、これらタールやすすは付着後直ちに排気流に
よつて薄膜６から剥離されてこの排気流とともに
外部へ放出される。また、音波は多孔質吸音体４
に吸収されて消音される。

第１図で説明した排気消音装置における前段室
８ａと後段室８ｂとの各個別の吸音特性を調べた
結果が、第２図にそれぞれ曲線ａとｂとで示さ
れ、また、全体としての消音特性が曲線ｃで示さ
れる。この図から明らかなように、厚みの大きな
薄膜６ａを有する前段室８ａでは高周波特性が良
好であり、これに対して、厚みの小さな薄膜６ｂ
を有する後段室８ｂでは低周波特性が良好にあら
われ、そして、全体としては、両者が合成された
特性となつている。すなわち、排気消音装置全体
では、低周波から高周波にわたる広い周波数帯域
においてすぐれた吸音特性が発揮されている。

つぎに、この考案に係る排気消音装置と、吸音
材が薄膜を有していない従来の排気消音装置との
消音性能を比較した。

第３図、第４図は国産乗用車（1800c.c.）に各消
音装置を装装着して約１万Kmの実走行を行なつた
後の消音性能を測定し、実走行前の初期値と比較
した図であり、第３図はその考案による消音装置
を、また第４図は従来の消音装置による初期値を
実走行後の消音性能を比較したものである。

なお、図中ｄ，ｅは初期値、ｆ，ｇは実走行後
の初期値である。これ等の図で示されている通
り、この考案による消音装置ではほとんど消音性
能の劣化が見られないのに対して、従来の消音装
置のそれは、特に高周波領域において著しく劣化
していることがわかる。

また、消音性能測定後に両者の吸音材を取り出
して目視観察を行なつたところ、この考案に係る
消音装置の吸音材の表面には多少すすの付着が確
認されただけであり吸音材の骨格間の隙間には全
く浸透していないことが判明した。しかし、従来
の吸音材はその表面にタールやすすが多量に付着
し、さらにその内部にまで浸透しほぼ完全に目詰
りを起こしていた。

すなわち、この結果からわかるように、この考
案に係る消音装置の吸音材は排気流と接する面に
設けた薄膜の存在によりタールやすすが全く吸音
材内に浸透する事がない。また、排気流と接する
面が非常に滑かであるためすすの付着力が弱く、
いつたん付着したすすの大半が再び排気流により
はぎとられることから、吸音特性に影響する程の
すすは吸音材の表面にも付着しない。

この考案において、多孔質吸音体の排気通路壁
面に薄膜を形成させる方法としては、スプレー法
や塗布法その他の方法が適宜採用されるが、その
場合の薄膜材料としては、排気ガスによる高温雰
囲気でも剥離が生じないもの、すなわち、熱膨張
係数が多孔質吸音体骨格と同等のものを用いるこ
とが望まれる。なお、この考案において使用する
ことができる多孔質吸音体としては、セラミツク
もしくはガラスからなる多孔体、あるいは、発泡
金属、金属繊維もしくは無機繊維強化金属のよう
な市販されている金属多孔体がある。上記金属多
孔体の材質としては、Ni，Cu，Al，Ni−Cr，
Fe−Cr，Fe−Ni−Cr，Fe−Cr−Al，Ni−Fe−
Cr−Alなどが適している。

以上のように、この考案によれば、圧力損失が
小さいうえ、吸音体の目詰りを有効に防止でき、
周波数特性の良い消音性能を発揮し得る内燃機関
用排気消音装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案に係る内燃機関用排気消音装
置の一例を示す側面断面図、第２図はこの考案の
消音装置の周波数特性図、第３図および第４図は
この考案の消音装置と従来の消音装置の吸音性能
を比較した特性図である。 １……筐体、２……排気入口管、３……排気出
口管、４……吸音材、４ａ，４ｂ……分割単位
体、５……排気通路、６……薄膜。なお、図中同
一符号は同一もしくは相当部分を示す。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 筐体に形成された排気入口と排気出口とを直
   線状に連通させる筒形多孔質吸音体を上記筐体
   内部に収納し、この多孔質吸音体を排気流方向
   で複数に分割するとともに、多孔質吸音体の各
   分割単位体の排気通路壁面に、各分割単位体相
   互間において厚みの異なる薄膜を形成してなる
   内燃機関用排気消音装置。 (2) 薄膜の厚みが、排気流の下流側の分割単位体
   のものほど薄くなるように構成されている実用
   新案登録請求の範囲第１項記載の内燃機関用排
   気消音装置。