JPS6313228Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は、溶銑予備処理装置に関し、とくに
転炉へ装入する溶銑について予め脱珪、脱硫およ
び脱燐するのに好適に用いられる装置についての
提案である。

最近、製錬炉ことに高炉から出た溶銑は、ユー
ザーの品質要求が厳しくなつてきたこともあつ
て、次工程の精錬炉とくに転炉へ供給するに先立
ち、安定した性状のものが要求されること、ある
いは省エネルギーや歩止りの向上を目的として、
脱珪、脱硫、脱燐などを目的とした予備処理が施
されるのが普通である。

こうして採用されている溶銑予備処理に関する
代表的な従来技術としては、高炉から転炉へ向う
輸送途中で、例えばその運搬手段であるトピード
カーや取鍋に対してフラツクスをキヤリアガスに
て吹込むものがある。しかし、この従来技術は、
運搬の途中でかかる処理を実施するために、設備
的な問題点がある上に、撹拌効果が不十分で溶銑
の温度低下が激しいという欠点、さらには処理時
に生成したスラグの分離除去が難しく、稼動効率
も低いことが大きな欠点とされていた。

これに対し、運搬の途中でなく、高炉鋳床部で
上記予備処理を行う方法も考えられているが、必
要な処理をするのに十分な時間（滞留させる時
間）を確保するには貯留槽としてかなり大きなも
のを用意しなければならず、この要求を満足させ
るには、鋳床の配置、高さ等の基本的な構造の変
更が不可欠であり、適用には種々の困難が伴うと
いう問題点があつた。

この考案は、上述した従来技術のもつ欠点なら
びに問題点に鑑み、それらの欠点、問題点を有利
に克服できる溶銑予備処理装置の提供を目的とし
て案出したものである。以下にその構成の詳細を
好適実施例を示す図面にもとづいて説明する。

図面は、いずれも高炉１の溶銑樋２の末端部鋳
床３下に、揺動可能にかつ架空状態に支持してな
る本考案溶銑予備処理装置を示すものである。こ
の装置は、開口する槽上部の揺動中心になるとこ
ろに揺動側両端部を仕切る堰４を設け、その堰４
を介在させたもとで下部では堰４を挟む両側が互
いに連通する構造としたｕ形、ｖ形等を好適例と
する処理槽５と、その処理槽５内を指向する向き
に動かすことができる吹込みランス６および鋳床
３上移動可能なランス支持具７よりなるフラツク
ス吹込み機とで構成されるものである。

上記処理槽５は、槽底部の中央に固定した揺動
軸８を中心にして揺動可能に支持されるものであ
る。その揺動機構としては、上記揺動軸８の軸端
に回動リンク９を枢支する一方、その回動リンク
９の遊端に油圧シリンダー１０の伸縮するロツド
１１を連結したもので構成し、該油圧シリンダー
１０の作動によつて揺動させる。

揺動可能に支持された上記の処理槽５は、堰４
で仕切られたその一方がスラグ溜りとなる処理室
５ａとなつていて、他方が溶銑溜りとなる溶銑払
出し室５ｂとして分けられている。前記のフラツ
クスの吹込みランス６ならびに溶銑樋２は、上記
の処理室５ａを臨む位置にあり、フラツクス吹込
みによつて生成した脱硫・脱燐・脱珪のスラグ１
２が溶銑１３上に浮ぶが、このスラグ１２は堰４
があるために他方の溶銑払出し室４側へ移ること
はない。これは、処理槽５を揺動したときにも同
じで両者の峻別はいささかも阻害されない。

溶銑１３およびスラグ１２の払出しは、処理室
５ａ側に欠設したスラグ排出口１６あるいは溶銑
払出し室５ｂ側に欠設した溶銑排出口１７を通じ
て、それぞれ該処理槽５をいずれか一方に揺動さ
せて傾けることにより、既に落下位置に待機させ
てあるトピードカー１５またはスラグポツト１４
に向けて落入させることで行う。

第４図はフラツクス使用量と脱珪率との関係を
示す図であり、比較例は溶銑鍋を使つてフラツク
ス（CaO30％＋Ore50％＋CaF₂5％＋CaCO₃15
％）を吹込んだものであり、本考案は同成分フラ
ツクスを本考案処理槽内に吹込んだ例である。両
者を比較すると、本考案装置を使つた方が時間的
には遅くなる溶銑鍋段階での処理よりも溶焼の温
度が高く活量も大きいので脱珪率がよい。例え
ば、溶銑中の〔％Si〕を0.05％にするのに、本考
案だとフラツクスを30Kg／ｔで済むのに、比較例
だと40Kg／ｔも必要となる。

以上説明したように本考案によれば、溶銑と予
備処理で生成するスラグとの分離除去が確実にで
きる利点がある上、溶銑樋からトピードカーへ落
下するその途中で溶銑予備処理を行うので熱経済
的に有利で温度降下も小さい。したがつて、次工
程での精錬負荷が著しく軽減され、性状の安定性
が達せられる他省エネルギーや歩止り向上にも効
果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は、高炉鋳床部の一部を切欠いて示す正
面図、第２図は本考案装置の部分断面図、第３図
は処理槽と揺動機構の詳細を示す斜視図、第４図
は銑中Si％とフラツクス使用量との関係について
本考案と比較例とを対比して示すグラフである。 １……高炉、２……溶銑樋、３……鋳床、４…
…堰、５……処理槽、５ａ……処理室、５ｂ……
溶銑払出し室、６……吹込みランス、７……ラン
ス支持具、８……揺動軸、９……回動リンク、１
０……油圧シリンダー１１……ロツド、１２……
スラグ、１３……溶銑、１４……スラグポツト、
１５……トピードカー、１６……スラグ排出口、
１７……溶銑排出口。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 高炉の溶銑樋末の鋳床下に、槽内上部に揺動中
   心位置でスラグ溜りと溶銑溜りとに仕切る堰を有
   しかつその堰下では連通する形の処理槽を揺動可
   能に支持し、かつ該処理槽に臨んで出入できるフ
   ラツクス吹込み機を鋳床上移動可能に支持したも
   のによつて構成された溶銑予備処理装置。